JP2008115451A - 皮膜形成剤と皮膜形成方法及び塗装物品 - Google Patents

皮膜形成剤と皮膜形成方法及び塗装物品 Download PDF

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Abstract

【課題】 安定性に優れた皮膜形成剤、該皮膜形成剤を用いて防食性と仕上り性に優れた皮膜を有する塗装物品を提供すること。
【解決手段】
皮膜形成剤の総質量に対して、ジルコニウム化合物と、必要に応じて、チタン、コバルト、バナジウム、タングステン、モリブデン、亜鉛、アルミニウム、ビスマス、イットリウム、ランタノイド金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属(a)の金属化合物(A)を合計金属量(質量換算)で30〜5,000ppmと、樹脂成分(B)1〜40質量%及び界面活性剤(C)0.1〜10質量%及び水を含むことを特徴とする皮膜形成剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、金属被塗物を皮膜形成剤に浸漬することによって、金属被塗物表面に防食性及び仕上り性に優れた皮膜を形成できる皮膜形成剤及び該皮膜形成剤を用いた皮膜形成方法と塗装物品に関する。
従来、工業用の金属基材には、下地処理として、防食性や付着性の向上を目的にリン酸亜鉛処理が行われている。しかしながら、リン酸亜鉛処理剤による化成処理は、処理剤中にリンや窒素を多量に含んでおり、且つ形成される化成被膜の性能を向上させるためにニッケル、マンガン等の重金属を多量に含有しているため、環境への影響や、処理後にリン酸亜鉛、リン酸鉄等のスラッジが多量に発生し、産業廃棄物処理などに問題がある。
また、工業用の金属基材の防食性向上を目的として、塗装ラインにおいては、「脱脂−表面調整−化成処理−電着塗装」等の処理工程に多くのスペースや時間を要している。
特許文献1には、樹脂、水、可塑剤及び第二鉄含有化合物及びフッ化水素酸を含有する組成物が提案されている。また、特許文献2には、樹脂、乳化剤、酸と酸化剤と錯化剤から選ばれる少なくとも1種の溶解性促進剤を含有する組成物が提案されている。
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載の皮膜は、塗装工程によって塗膜を施さなくては、十分な防食性や仕上り性が確保できないという問題がある。
特許文献3には、実質的にリン酸イオンを含有せず、ジルコニウムイオン及び/又はチタニウムイオン並びにフッ素イオンを含有してなる鉄及び/又は亜鉛系基材用化成処理剤が提案されている。
しかし、特許文献3に記載の鉄及び/又は亜鉛系基材用化成処理剤を用いた処理の後には、塗装工程によって塗膜を施さなくては、十分な防食性や仕上り性が確保できないという問題がある。
特許文献4には、Ti、Zr、Hf及びSiから選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む化合物と、フッ素イオンの供給源としてフッ素含有化合物を含有する金属の表面処理用組成物を用いることにより、鉄又は亜鉛の少なくとも1種を含む金属の表面に耐食性に優れる表面処理皮膜を析出させることができ、且つ表面調整(表調)工程を必要としないため処理工程の短縮、省スペース化を図ることが開示されている。しかし、特許文献4に記載の表面処理用組成物を用いた処理の後には、塗装工程によって塗膜を施さなくては、十分な防食性や仕上り性が確保できないという問題がある。
特許文献5及び特許文献6には、アミン変性アクリル樹脂、リン酸系化合物、弗素水素酸、金属弗化水素酸及び金属弗化水素酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物、モリブデン化合物、タングステン化合物及びバナジウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する潤滑鋼板用表面処理組成物を、自動車車体や家電製品等に使用される亜鉛系めっき鋼板に被覆することにより、プレス成形性と耐食性に優れた潤滑鋼板を得ることができる潤滑鋼板用表面処理組成物が開示されている。
しかし、特許文献5や特許文献6に記載された潤滑鋼板用表面処理組成物を施した鋼板は、さらに塗装工程によって塗膜を施こさなくては、十分な防食性や仕上り性が確保できない。このため、工程の短縮化や省スペース化を図ることができない。
特許文献7には、サリチリデンアミノ基とアミノ基を有する特定の共重合体からなる金属表面処理剤用ポリマー組成物が開示されている。しかし、特許文献7に記載の金属表面処理剤用ポリマー組成物を用いた鋼板もまた、塗装工程によって塗膜を施さなくては、十分な防食性や仕上り性が確保できないことから、工程の短縮化や省スペース化を図ることができない。
これら特許文献1〜7の組成物や方法によっては、工程の短縮化や省スペース化を図り、かつ十分な防食性が得られるまでには至っていない。
特公平6−57811号公報 特開平9−169892号公報 特開2003−155578号公報 国際公開第02/05860号パンフレット 特開2003−166073号公報 特開2003−226982号公報 特開2003−293161号公報
本発明は、金属被塗物を皮膜形成剤に浸漬することによって、金属被塗物表面に防食性及び仕上り性に優れた皮膜を形成できる皮膜形成剤を見出し、該皮膜形成剤を用いた皮膜形成方法によって、塗装物品を提供することである。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、皮膜形成剤の総質量に対して、ジルコニウム化合物と、必要に応じて、チタン、コバルト、バナジウム、タングステン、モリブデン、亜鉛、アルミニウム、ビスマス、イットリウム、ランタノイド金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属(a)の金属化合物(A)を合計金属量(質量換算)で30〜5,000ppmと、樹脂成分(B)1〜40質量%及び界面活性剤(C)0.1〜10質量%及び水を含むことを特徴とする皮膜形成剤が、上記の目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、該皮膜形成剤から得られる皮膜は、皮膜の質量固形分合計を基準にして、ジルコニウム化合物と金属(a)の金属化合物(A)を合計金属量(質量換算)で25〜70質量%含有する皮膜(F1)と、該皮膜(F1)上の、皮膜の質量固形分合計を基準にして、ジルコニウム化合物と金属(a)の金属化合物(A)を合計金属量(質量換算)で25質量%未満含有し、且つ樹脂成分(B)を50〜95質量%含有する皮膜(F2)を含んでなる皮膜構造を提供するものである。
本発明の皮膜形成剤によって形成される皮膜は、防食性及び仕上り性に優れている。また、本発明の皮膜形成剤は、安定性に優れており、長期間工業用ラインにおいて使用しても防食性や仕上り性が変化することがない。
本発明の皮膜構造が防食性と仕上り性に優れている理由は、被塗物側に析出した皮膜(F1)が塗膜下腐食の抑制に寄与し、かつ厚さが0.1〜30μmの皮膜(F2)が仕上り性と腐食促進物質(例えば、O、Cl、Na)を遮断するという、機能分担が皮膜構造中において付与できているためであろうと考えられる。
さらに、本発明の皮膜形成剤は、袋構造や隙間部を有する被塗物の内部に析出が容易で、袋構造や隙間部を有する被塗物の防食性向上に有用である。このことから、自動車ボディにおいて、防錆シーラーの塗布を省略することもできる。
本発明は、金属被塗物を皮膜形成剤に浸漬することによって、金属表面に皮膜を形成できる皮膜形成剤、該皮膜形成剤を用いた皮膜形成方法による防食性及び仕上り性に優れる塗装物品を提供できることに関する。
[被塗物]
本発明の皮膜形成剤を適用することができる被塗物としては、例えば、鉄、亜鉛;これらの金属がめっき(合金化)されたシート;該金属が積層されたシート等が挙げられる。
[皮膜形成剤]
本発明に使用する皮膜形成剤は、皮膜形成剤の総質量に対して、ジルコニウム化合物と、必要に応じて、チタン、コバルト、バナジウム、タングステン、モリブデン、亜鉛、アルミニウム、ビスマス、イットリウム、ランタノイド金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属(a)の化合物からなる金属化合物成分(A)を合計金属量(質量換算)で30〜5,000ppmと、樹脂成分(B)1〜40質量%及び界面活性剤(C)0.1〜10質量%とを含んでなるものである。
さらに、皮膜形成剤は、必要に応じて、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、フェニルグリコールエーテル及びトリブトキシエチルホスフェートから選ばれる少なくとも1種の有機溶剤(D)を0.1〜10質量%含有する。
[ジルコニウム化合物]
皮膜形成剤におけるジルコニウム化合物において、ジルコニウムのオキシ金属イオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸ジルコニル、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニルなど;ジルコニウムのフルオロ金属イオンを生じる化合物としては、例えば、ジルコニウムフッ化水素酸、ジルコニウムフッ化水素酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩等)などが挙げられる。
[金属化合物(A)]
一方、金属(a)の化合物からなる金属化合物(A)において、チタンの金属イオンを生じる化合物としては、例えば、塩化チタン、硫酸チタン;チタンのフルオロ金属イオンを生じる化合物としては、例えば、チタンフッ化水素酸、チタンフッ化水素酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩等)などが挙げられ;コバルトのイオンを生じる化合物としては、例えば、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、硫酸コバルトアンモニウムなどが挙げられ;バナジウムの金属イオンを生じる化合物としては、例えば、オルソバナジン酸リチウム、オルソバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸リチウム、メタバナジン酸カリウム、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸アンモニウム、ピロバナジン酸ナトリウム、塩化バナジル、硫酸バナジルなどが挙げられ;タングステンの金属イオンを生じる化合物としては、例えば、タングステン酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、メタタングステン酸ナトリウム、パラタングステン酸ナトリウム、ペンタタングステン酸アンモニウム、ヘプタタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、ホウタングステン酸バリウムなどが挙げられ;モリブデンの金属イオンを生じる化合物としては、例えば、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸ストロンチウム、モリブデン酸バリウム、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸ナトリウム、リンモリブデン酸亜鉛などが挙げられ;亜鉛の金属イオンを生じる化合物としては、例えば、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、酸化亜鉛などが挙げられ;アルミニウムの金属イオンを生じる化合物としては、例えば、リン酸アルミニウム、アルミン酸三カルシウム、アルミン酸ナトリウムなどが挙げられ;ビスマスの金属イオンを生じる化合物としては、例えば、塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、臭化ビスマス、ケイ酸ビスマス、水酸化ビスマス、三酸化ビスマス、硝酸ビスマス、亜硝酸ビスマス、オキシ炭酸ビスマス等の無機系ビスマス含有化合物;乳酸ビスマス、トリフェニルビスマス、没食子酸ビスマス、安息香酸ビスマス、クエン酸ビスマス、メトキシ酢酸ビスマス、酢酸ビスマス、ギ酸ビスマス、2,2−ジメチロールプロピオン酸ビスマスなどが挙げられ;イットリウムの金属イオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸イットリウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、スルファミン酸イットリウム、乳酸イットリウム、ギ酸イットリウムなどが挙げられ;ネオジムの金属イオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸ネオジム、酸化ネオジウムなどが挙げられる。
また、ランタノイド金属化合物において、セリウム金属イオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸セリウム(III)、塩化セリウム(III)、酢酸セリウム(III)、シュウ酸セリウム(III)、硝酸アンモニウムセリウム(III)、硝酸二アンモニウムセリウム(IV)など;ランタン金属イオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸ランタン、フッ化ランタン、酢酸ランタン、ホウ化ランタン、リン酸ランタン、炭酸ランタンなど;プラセオジウム金属イオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸プラセオジウム、硫酸プラセオジウム、シュウ酸プラセオジウムなどが挙げられる。
アルカリ金属の金属イオンを生じる化合物としては、例えば、硫酸カリウム、硝酸カリウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムなどが挙げられる。
アルカリ土類金属の金属イオンを生じる化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、硝酸マグネシウム、酸化マグネシウム、三酸化チタンマグネシウム、オルト珪酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウムなどが挙げられる。
これらの金属化合物はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。上記金属化合物のうち、特に、ジルコニウムフッ化水素酸、チタンフッ化水素酸、硝酸ジルコニルが好適である。
[樹脂成分(B)]
本発明の皮膜処理剤に用いられる樹脂成分(B)は、従来から公知の水溶解型樹脂、水分散型樹脂、もしくは水及び乳化剤の存在下で重合性不飽和単量体を用い乳化重合して製造される、アニオン性樹脂、カチオン性樹脂もしくはノニオン性樹脂等が使用できる。具体的には、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。また必要に応じて、適宜に、アミノ化合物(メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂)、フェノール樹脂等を配合することができる。
上記の中でも、皮膜形成剤の安定性の面から水分散基を有する樹脂であることが好ましく、例えば分子中にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの水性媒体中でアニオン化可能な基を有するアニオン性樹脂、例えば分子中にアミノ基、アンモニウム塩基、スルホニウム塩基、ホスホニウム塩基などの水性媒体中でカチオン化可能な基を有するカチオン性樹脂が挙げられる。これらの中でも樹脂成分(B)としては、防食性の面からカチオン性樹脂組成物が好適である。これらの中でも樹脂成分(B)としては、防食性の面からカチオン性樹脂組成物が好適である。
カチオン性樹脂組成物としては、例えば、分子中にアミノ基、アンモニウム塩基、スルホニウム塩基、ホスホニウム塩基などの水性媒体中でカチオン化可能な基を有する基体樹脂と架橋剤を含んでなるものが挙げられ、また、該基体樹脂の樹脂種としては、例えば、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリブタジエン樹脂系、アルキド樹脂系、ポリエステル樹脂系などが挙げられ、防食性の面から、特にアミノ基含有エポキシ樹脂が好ましい。
アミノ基含有エポキシ樹脂(B1):
アミノ基含有エポキシ樹脂(B1)には、エポキシ樹脂にアミン化合物を反応させてなるものが包含され、出発材料として用いられるエポキシ樹脂は、皮膜の防食性などの観点から、特に、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリン、例えば、エピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂が好適である。
該エポキシ樹脂の形成のために用い得るポリフェノール化合物としては、それ自体既知のものを使用することができ、そのようなポリフェノール化合物の例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(いわゆる、ビスフェノールA)、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(いわゆる、ビスフェノールF)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどを挙げることができる。また、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂としては、中でも、ビスフェノールAから誘導される下記式
Figure 2008115451
式(1)
(ここで、n=0〜8)示されるものが好適である。
エポキシ樹脂としては、エポキシ当量が一般に200〜2,000、好ましくは400〜1,500の範囲内、そして数平均分子量が一般に400〜4,000、好ましくは800〜2,500の範囲内にあるものが適している。
かかるエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン株式会社からエピコート828EL、同左1002、同左1004、同左1007などの商品名で販売されているものが挙げられる。
上記エポキシ樹脂と反応させ得るアミン化合物としては、エポキシ基と反応する活性水素を少なくとも1個含有し、該エポキシ樹脂をカチオン化することができるものであればその種類を問わないが、特に、1級アミノ基を導入することができる1級アミン化合物を使用することが好ましい。
上記の1級アミノ基を導入することができる1級アミン化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、プロパノールアミン、ヒドロキシエチルアミノエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及びこれらのケチミン化物が挙げられる。
上記1級アミン化合物は、他のアミン化合物と併用することができ、そのようなアミン化合物としては、エポキシ樹脂のカチオン化のために通常用いられるものが同様に使用できるが、特に、2級アミンが好ましく、例えば、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエタノールアミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノール、モノエチルアミノエタノールなどが挙げられる。上記エポキシ樹脂とアミン化合物を、それ自体既知の方法により反応させることにより、アミノ基含有エポキシ樹脂を得る
ことができる。
かかるアミノ基含有エポキシ樹脂(B1)は、一般に30〜70mgKOH/g樹脂固形分の範囲内のアミン価を有することができ、特に、40〜60mgKOH/g樹脂固形分の範囲内のアミン価を有することが、水分散性や皮膜の防食性を確保する面から好ましい。
さらに、アミノ基含有エポキシ樹脂(B1)の水分散性を高めるために、疎水性変性剤により分子分極化を図ることが好適であり、そのような変性剤としては、エポキシ基との反応性を有するカプロラクトンポリオール化合物やキシレンホルムアルデヒド樹脂などを用いることができる。
該カプロラクトンポリオール化合物は、例えば、1分子中に複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加することにより得ることができる。ここで、活性水素基は、少なくとも1個の活性水素を含有する原子団を意味し、例えば、アルコール性水酸基、第1級アミノ基、第2級アミノ基などが包含される。
1分子中に複数の活性水素基を含有する化合物は、一般に62〜5,000、好ましくは62〜4,000、さらに好ましくは62〜1,500の範囲内の数平均分子量を有することができる。また、活性水素含有化合物は、1分子あたり、平均して、少なくとも2個ないし30個未満、特に2〜10個の活性水素基を含有するものが好適である。
1分子中に複数の活性水素基を含有する化合物としては、具体的には、例えば、(1)ポリオール化合物、(2)1級アミノ基及び/又は2級アミノ基、或いは水酸基と1級アミノ基及び/又は2級アミノ基とを有するアミン化合物、(3)線状又は分枝状のポリエーテルポリオール、(4)線状又は分枝状のポリエステルポリオールなどが挙げられる。
上記(1)のポリオール化合物は、1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を含有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメチロール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールAなどのジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトール、α−メチルグルコキシドなどのテトロール類;ソルビトール、ジペ
ンタエリスリトールなどのヘキソール類;シュークロースなどのオクトール類などが挙げられる。
上記(2)のアミン化合物としては、例えば、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
上記(3)の線状又は分枝状のポリエーテルポリオールとしては、通常62〜10,000、好ましくは62〜2,000の範囲内の数平均分子量を有する、アルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランなど)の開環付加反応によって製造されるものを挙げることができ、ポリエチレングルコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)グリコール、ビスフェノールAエチレングリコールエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコールエーテルなどが挙げられる。
上記(4)の線状または分岐状のポリエステルポリオールは、通常200〜10,000、好ましくは200〜3,000の範囲内の数平均分子量を有することができ、具体的には、例えば、有機ジカルボン酸又はその無水物と有機ジオールとの、有機ジオール過剰の条件下での重縮合反応によって得られるものが挙げられる。
ここで使用される有機ジカルボン酸としては、炭素数2〜24、特に4〜12の脂肪酸系、脂環式又は芳香族系ジカルボン酸、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、ヘキサクロロヘプタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラクロロフタル酸などが挙げられる。また、これらジカルボン酸に加えて、3個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸の無水物や不飽和脂肪酸の付加物などを少量併用することができる。有機ジオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリラクトンジオールが挙げられる。
キシレンホルムアルデヒド樹脂は、例えば、キシレン、ホルムアルデヒド及び場合によりフェノール類を、酸性触媒の存在下に縮合反応させることにより製造することができる。
上記のホルムアルデヒドとしては、工業的に入手容易なホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒドを発生する化合物などを例示することができる。なお、本明細書において、パラホルムアルデヒド、トリオキサンなどの重合体を用いる場合、その配合量の規定は、ホルムアルデヒド1分子を基準に規定するものとする。
さらに、上記のフェノール類には、2個又は3個の反応サイトを持つ1価もしくは2価のフェノール性化合物が包含され、具体的には、例えば、フェノール、クレゾール類、パラ−オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビスフェノールプロパン、ビスフェノールメタン、レゾルシン、ピロカテコール、ハイドロキノン、パラ−tert−ブチルフェノール、ビスフェノールスルホン、ビスフェノールエーテル、パラ−フェニルフェノール等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上の組合せて用いることができる。
これらのうち特にフェノール、クレゾール類が好適である。
このようにして得られるキシレンホルムアルデヒド樹脂は、一般に20〜50,000センチポイズ(25°C)、好ましくは30〜15,000センチポイズ(25°C)の範囲内の粘度を有することができ、そして一般に100〜50,000、特に200〜10,000の範囲内の水酸基当量を有していることが好ましい。
上記のポリカプロラクトンポリオール化合物及び/又はキシレンホルムアルデヒド樹脂のエポキシ樹脂への反応方法は、特に限定されないが、一般には、アミン化合物と変性剤をエポキシ樹脂のエポキシ基に同時に反応させることが好ましい。
上記のアミン化合物と変性剤のエポキシ樹脂への付加反応は、通常、適当な溶媒中で、約80〜約170°C、好ましくは約90〜約150°Cの温度で1〜6時間程度、好ましくは1〜5時間程度行なうことによって、ポリカプロラクトンポリオール化合物変性のアミノ基含有エポキシ樹脂(B11)又はキシレンホルムアルデヒド樹脂変性のアミノ基含有エポキシ樹脂(B12)を得ることができる。
上記の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系;水あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
上記の変性剤の使用割合は、厳密に制限されるものではなく、皮膜形成剤の用途などに応じて適宜変えることができるが、エポキシ樹脂の固形分質量を基準にして5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%の範囲内が適当である。これより少ないと樹脂の中和剤の必要量が多くなり、また、これより多いと水分散安定性が劣る可能性がある。
また、上記に述べたアミノ基含有エポキシ樹脂(B1)として、エポキシ樹脂にフェノール類、アミノ基含有化合物、及び複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール化合物を反応させてなるフェノール類付加タイプのポリオール変性のアミノ基含有エポキシ樹脂(B13)を用いることができる。
フェノール類付加タイプのポリオール変性のアミノ基含有エポキシ樹脂(B13)に用いるエポキシ樹脂は、ポリカプロラクトンポリオール化合物変性のアミノ基含有エポキシ樹脂(B11)又はキシレンホルムアルデヒド樹脂変性のアミノ基含有エポキシ樹脂(B12)の製造に関して前述したものと同様の樹脂を用いることができる。
フェノール類付加タイプのポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂に用い得るアルキルフェノール類としては、下記式(1)で示されるものが挙げられる。
Figure 2008115451
式(2)
[式中、Xは水素原子、−OH、−OR、−NH、−NR、C−(CH)−NR、−SH及び−SRよりなる群から選ばれる置換基を有してもよい炭素数1〜15の炭化水素基を表し、ここでR、R及びRはそれぞれ独立してアルキル基を表す]
上記式(2)において、Xで表される炭素数1〜15の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状であることができ、中でも、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、ノニル基などの炭素数1〜15、特に1〜12のアルキル基が好適である。これらの基は場合により水酸基(−OH)、アルコキシ基(−OR)、メルカプト基(−SH)及びアルキルチオ基(−SR)よりなる群から選ばれる基により置換されていてもよい。
上記式(2)のフェノール類の具体例としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、パラ−tert−ブチルフェノール、ノニルフェノールなどが挙げられる。
ポリオール化合物には、複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加したポリオール化合物が包含され、ポリカプロラクトンポリオール化合物変性のアミノ基含有エポキシ樹脂(B11)又はキシレンホルムアルデヒド樹脂変性のアミノ基含有エポキシ樹脂(B12)の製造に関して前述したポリオール化合物を用いることができる。
上記ポリオール化合物は、1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を含有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメチロール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールAなどのジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトール、α−メチルグルコキシドなどのテトロール類;ソルビトール、ジペンタエリ
スリトールなどのヘキソール類;シュークロースなどのオクトール類などが挙げられる。
アミノ基含有化合物は、ポリカプロラクトンポリオール化合物変性のアミノ基含有エポキシ樹脂(B11)又はキシレンホルムアルデヒド樹脂変性のアミノ基含有エポキシ樹脂(B12)の製造に関して前述したものと同様のアミノ基含有化合物を用いることができる。
上記アミノ基含有化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、プロパノールアミン、ヒドロキシエチルアミノエチレンジアミン、ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのアミンのケチミン化物;ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエタノールアミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノール、モノエチルアミノエタノールなどが挙げられる。
皮膜形成剤に使用される樹脂成分(B)として、下記式(3)
Figure 2008115451
式(3)
で示されるエポキシ基含有官能基を1分子中に少なくとも2個有するエポキシ樹脂と、アミノ基含有化合物及び/又はフェノール化合物とを反応させてなるアミノ基含有及び/又はフェノール化合物含有エポキシ樹脂(B14)も使用することができる。
上記式(3)で示されるエポキシ基含有官能基を有するエポキシ樹脂は、それ自体公知のものであり、例えば、特開昭60−170620号公報、特開昭62−135467号公報、特開昭60−166675号公報、特開昭60−161973号公報、特開平2−265975号公報などに記載されているものを使用することができる。
また、エポキシ樹脂には、末端に重合開始成分の残基、つまり活性水素含有有機化合物残基が結合しているものも含まれる。その前駆体である活性水素含有有機化合物としては、例えば、脂肪族1価アルコール、芳香族1価アルコール、2価以上の脂肪族もしくは脂環族の多価アルコールなどのアルコール類;フェノール類;脂肪酸;脂肪族、脂環族もしくは芳香族2塩基酸もしくは多塩基酸;オキシ酸;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル部分加水分解物、デンプン、セルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ヒドロキシエチルセルロース、アリルポリオール樹脂、スチレン−アリル
アルコール共重合体、アルキド樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリカプロラクトンポリオール樹脂などが挙げられる。また、これらの活性水素含有有機化合物は、活性水素と共にその骨格中に不飽和二重結合がエポキシ化された構造を有するものであってもよい。
他に、エポキシ樹脂としては、例えば、上記の活性水素含有有機化合物を開始剤とし、4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイド単独の存在下で又はこれと他のエポキシ基含有化合物との併存下で、それぞれに含まれるエポキシ基による開環(共)重合を行ってポリエーテル樹脂を形成せしめ、ついで該樹脂中の側鎖中に存在するビニル基を過酸類やハイドロパーオキサイド類などの酸化剤でエポキシ化することによって製造されるものを使用することもできる。
4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドは、例えば、ブタジエンの2量化反応によって得られるビニルシクロヘキセンを過酢酸によって部分的エポキシ化することによって得ることができる。
共重合させうる他のエポキシ基含有化合物としては、エポキシ基を有する化合物であれば特に制限はないが、製造上、1分子中に1個のエポキシ基を有する化合物が好ましい。
具体的には、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、下記式(4)
Figure 2008115451
式(4)
で示されるα−エポキシオレフィン;スチレンオキサイド等の末端不飽和化合物の酸化物;アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
他のグリシジル基含有化合物としては、さらに、不飽和結合を有する脂環式オキシラン基含有ビニル単量体が包含され、具体的には、以下に例示するものが挙げられる。
Figure 2008115451
以下、同様に示す。
Figure 2008115451
上記各式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表し、Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表す。
上記式において、Rによって表される炭素数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基としては、例えば、直鎖状又は分枝状のアルキレン基、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、エチルエチレン、ペンタメチレン基などを挙げることができる。
また、Rによって表わされる炭素数1〜10の2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、エチルエチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ポリメチレン、フェニレン、シクロヘキシレン、キシリレンなどを挙げることができる。
さらに、下記式(5)
Figure 2008115451
式(5)(式中、R及びRは前記と同じ意味を有する)
で示される化合物、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等;ビニルシクロヘキセンの部分エポキシ化により一部副生する下記式(6)
Figure 2008115451
式(6)
で示されるような脂環式不飽和基を有する化合物なども他のエポキシ基含有化合物として使用することができる。
さらにまた、4−ビニルシクロヘプテン(ビニルノルボルネン)なども使用することができる。
4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドの存在下又はそれと他のエポキシ基含有化合物との併存下で行なうエポキシ基の開環(共)重合反応は、活性水素含有有機化合物の存在下で且つ触媒を用いて行うことが好ましい。
触媒としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ピペラジンなどのアミン類;ピリジン類、イミダゾール類などの有機塩基類;蟻酸、酢酸、プロピオン酸などの有機酸類;硫酸、塩酸などの無機酸類;ナトリウムメチラートなどのアルカリ金属アルコラート類;KOH、NaOHなどのアルカリ類;BFSnCl、AlCl、SnClなどのルイス酸又はその錯体類;トリエチルアルミニウム、ジエチル亜鉛などの有機金属化合物を挙げることができる。
これらの触媒は、通常、反応物に対して0.001〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%の範囲内で使用することができる。開環(共)重合反応は、一般に−70〜200°C、好ましくは−30〜100°Cの範囲内の温度で行うことができる。この反応は溶媒中で行うことが好ましく、溶媒としては活性水素を有していない通常の有機溶媒を用いることができる。
このようにして得られるポリエーテル樹脂(開環(共)重合体)は、次いで、その側鎖の脂環構造の炭素原子に直結するビニル基(−CH=CH)をエポキシ化することによって、前記式(3)で示される官能基を有するエポキシ樹脂とすることができる。
エポキシ化は過酸類やハイドロパーオキサイド類を用いて行うことができる。過酸類としては、例えば、過蟻酸、過酢酸、過安息香酸、トリフルオロ過酢酸などが挙げられ、また、ハイドロパーオキサイド類としては、例えば、過酸化水素、tert−ブチルパーオキサイド、クメンパーオキサイドなどを用いることができる。エポキシ化反応は必要に応じて触媒の存在下で実施することができる。
上記開環(共)重合体中の4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドに基づくビニル基がエポキシ化されることによって、前記式(3)で示される官能基が生成する。このエポキシ化反応において、他のエポキシ基含有化合物として前記脂環式オキシラン基含有化合物などが併存すると、該化合物に含まれるビニル基もエポキシ化されることもあるが、これは前記式(3)で示される官能基とは異なったものとなる。
エポキシ化反応における溶媒使用の有無や反応温度は、用いる装置や原料物性などに応じて適宜調整することができる。エポキシ化反応の条件によって、原料重合体中のビニル基のエポキシ化と同時に原料中の下記式(7)
Figure 2008115451
式(7)
で示される置換基及び/又は生成してくる前記式(3)で示される置換基がエポキシ化剤などと副反応を起こした結果、変性された置換基が生じ、樹脂中に混在することがある。そのような樹脂の市販品として、4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドの開環重合体中のビニル基をエポキシ化した、EHPE−3150(ダイセル化学工業社製、商品名)を使用することもできる。
なお、前記式(3)で示されるエポキシ基含有官能基は、エポキシ樹脂の1分子中に少なくとも2個存在していればよく、エポキシ樹脂は、一般に、好ましくは140〜1000、より好ましくは170〜300の範囲内のエポキシ当量、及び好ましくは200〜50,000、より好ましくは1000〜10,000の範囲内の数平均分子量(注1)を有することができる。
(注1) 数平均分子量:JIS K 0124−83に準じて、分離カラムとしてTSK GEL4000HXL+G3000HXL+G2500HXL+G2000HXL(東ソー(株)製)及び溶離液としてGPC用テトラヒドロフランを用い、40°C、流速1.0ml/分にて、RI屈折計で得られたクロマトグラムと、ポリスチレンの検量線から計算により求めることができる。
前記エポキシ樹脂に反応せしめられるアミノ基含有化合物は、エポキシ樹脂基体にアミノ基を導入して、該エポキシ樹脂をカチオン性化するためのカチオン性付与成分であり、前記アミノ基含有エポキシ樹脂(B11)、アミノ基含有エポキシ樹脂(B12)、アミノ基含有エポキシ樹脂(B13)の製造に関して前述したと同様のアミノ基含有化合物を使用することができる。
また、アミノ基含有化合物として、他に、1分子中に水酸基、第2級アミノ基及びアミド基を有する下記式(8)
Figure 2008115451
(式中、nは1〜6の整数であり、Rは水素原子または炭素数1〜2のアルキル基を表し、Rは水酸基及び/又は重合性不飽和結合を有していてもよい炭素数4〜36の炭素水素基を表す)
で示される化合物を用いることができる。
上記式(8)のアミン化合物は、例えば、下記反応式:
Figure 2008115451
(式中、R、R及びnは前記と同じ意味を有する)
に示すように、約1モルのN−ヒドロキシアルキルアルキレンジアミンに、約1モルの炭素数5〜37、好ましくは8〜23のモノカルボン酸を反応させることによって製造することができる。
この反応において用いられるジアミンとしては、例えば、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、N−ヒドロキシエチルブチレンジアミン、N−ヒドロキシエチルペンチレンジアミン、N−ヒドロキシエチルヘキシレンジアミン、N−(2−ヒドロキシ)プロピルエチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシ)プロピルプロピレンジアミン、N−(2−ヒドロキシ)プロピルブチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシ)プロピルペンチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシ)プロピルヘキシレンジアミンなどが挙げられ、なかでも、ヒド
ロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルプロピレンジアミンが好適である。
また、モノカルボン酸としては、例えば、椰子油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、こめぬか油脂肪酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、あまに油脂肪酸、桐油脂肪酸などの混合脂肪酸;カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。このうち特に、ステアリン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸及びこれらの酸を含む混合脂肪酸が好ましい。
N−ヒドロキシアルキルアルキレンジアミンとモノカルボン酸との反応は、例えば、該両成分をほぼ等モル比で混合し、トルエンやメチルイソブチルケトンなどの有機溶媒を用いて規定量の反応生成水を除去し、減圧法などで残存有機溶剤を除去することによって行われる。
上記のフェノール化合物としては、フェノール性水酸基を1分子中に少なくとも1個、好ましくは1〜5個有するものを使用することができる。具体的には、例えば、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4'−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)イソブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラ(p−ヒドロキシフェ
ニル)エタン、4,4−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多価フェノール化合物が挙げられる。
さらに、フェノール、ノニルフェノール、α−もしくはβ−ナフトール、p−tert−オクチルフェノール、o−もしくはp−フェニルフェノールなどのモノフェノール化合物も使用することができる。
防食性により優れた塗膜を形成するためには、フェノール化合物として、特に、ビスフェノールA[2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン]又はビスフェノールF[ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン]などのビスフェノール類とエピクロルヒドリンとの反応生成物を用いることが好ましい。
該反応生成物のうち、特に、数平均分子量が少なくとも200、好適には約800〜約3,000の範囲内にあり且つ1分子あたり平均して2個以下、好ましくは0.8〜1.2個のフェノール性水酸基を含有する下記式で代表的に示されるものが適している。
Figure 2008115451
[式中、nは平均して0〜7の数であり、Rは活性水素化合物の残基を表す]
上記式におけるRの前駆体である活性水素含有化合物としては、例えば、第2級アミンのようなアミン類;ノニルフェノールのようなフェノール類;脂肪酸のような有機酸;チオール類;アルキルアルコール、セロソルブ、ブチルセロソルブ、カービトールのようなアルコール類;無機酸などの化合物が挙げられる。このうち、特に好ましいものとしては、第1級水酸基を有する第2級アミンであるジアルカノールアミンや、ノニルフェノール、フェニルフェノール、フェノールのようなモノフェノールである。特に、第1級水酸基含有アミンを用いると硬化性が向上し、また、モノフェノールを用いると安定性がよくなる。
さらに、フェノール化合物として、例えば、分子量が200以上、好適には380〜2000の範囲内のビスフェノールAジグリシジルエーテル型のポリエポキシド1モルと、分子量が200以上、好適には200〜2000の範囲内のビスフェノールA型ポリフェノール1モルと、活性水素を有する化合物1モルとを、必要に応じて触媒や溶媒の存在下で、30〜300°C、好適には70〜180°Cの温度で反応させるものも使用することができる。これらの反応モル比は単なる例示であって、これらに制限されるものではなく任意に選択することができる。
また、フェノール化合物として、ダイマージオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどのポリオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルグリコール類;ポリカプロラクトンのようなポリエステルポリオール類;ポリカルボン酸類;ポリイソシアネート類;モノイソシアネート類;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドなどの不飽和化合物の酸化物;アリルグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエー
テル、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどの水酸基を有する化合物のグリシジルエーテル;脂肪酸のような有機酸のグリシジルエステル;脂環式オキシラン含有化合物などをビスフェノールAに反応させたものを使用することもできる。さらに、かかる化合物に、δ−4−カプロラクトン、アクリルモノマーなどをグラフト重合させたものも使用することができる。
アミノ基含有及び/又はフェノール化合物含有エポキシ樹脂(B1−4)は、以上に述べたエポキシ樹脂に、アミノ化合物及び/又はフェノール化合物を反応させることによって得られる。
このようなアミノ基含有及び/又はフェノール化合物含有エポキシ樹脂(B14)は、従来のビスフェノールA型エポキシ樹脂との反応によって得られるものに比べて、防食性や安定性に優れるという利点を有している。
エポキシ樹脂、アミノ基含有化合物及びフェノール化合物の反応比率には、特に制限はなく、得られる塗料用樹脂の用途等に応じて適宜選択することができるが、一般には、エポキシ樹脂のエポキシ基含有官能基1モルあたり、アミノ化合物は、その第1級もしくは2級アミノ基が0.1〜1モル、特に0.4〜0.9モルの範囲内、そしてフェノール化合物は、その中のフェノール性水酸基が0.02〜0.4モル、特に0.1〜0.3モルの範囲内となるような割合で用いるのが好ましい。また、アミノ化合物の第1級もしくは2級アミノ基及びフェノール化合物のフェノール性水酸基の合計モル数は、アミノ基含有
及び/又はフェノール化合物含有エポキシ樹脂(B14)中のエポキシ基含有官能基1モルあたり、0.75〜1.5モル、特に0.8〜1.2モルの範囲内であることが好ましい。
エポキシ樹脂とアミノ基含有化合物又はエポキシ樹脂とフェノール化合物との反応は、例えば、50〜300°C、特に70〜200°Cの範囲内の温度で行うことができる。反応順序は特に制限されず、全成分を同時に仕込んで反応させるか、又はエポキシ樹脂にそれ以外の各成分を任意の順序で添加して順次反応させてもよい。
アミノ基含有エポキシ樹脂(B14)は、一般に20〜150mgKOH/g、特に30〜125mgKOH/gの範囲内のアミン価、300〜1,000mgKOH/g、特に325〜850mgKOH/gの範囲内の水酸基価、及び800〜15,000、特に900〜10,000の範囲内の数平均分子量(注1)を有することができる。
アミノ基含有エポキシ樹脂(B14)は、特に、疎水部と親水部とが共存分極化しているため水分散性に優れている。このため、アミノ基含有エポキシ樹脂(B14)を樹脂成分(B)として用いた皮膜形成剤は、特に、ジルコニウム及び場合によりさらにチタン、コバルト、バナジウム、タングステン、モリブデン、亜鉛、アルミニウム、ビスマス、イットリウム、ランタノイド金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属(a)の金属イオンが存在しても、皮膜形成剤の安定性に優れている。
アミノ基含有アクリル樹脂(B2):
また、樹脂成分(B)としては、アミノ基含有アクリル樹脂(B2)も使用することができる。出発材料として用いられるアクリル樹脂は、そのアクリル樹脂を構成するモノマー成分として、水酸基含有アクリルモノマー、アミノ基含有アクリルモノマー及びその他のモノマーなどをラジカル共重合することによって得られるものであることができる。
水酸基含有アクリルモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンとの付加生成物(例えば、ダイセル株式会社製の商品名としてプラクセルFA−2及びFM−3)などが挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
アミノ基含有アクリルモノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
その他のモノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー、;例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステルなどが挙げられる。
また、グリシジル(メタ)アクリレートを含むラジカル重合性不飽和モノマーの共重合体のグリシジル基に、活性水素を含有するアミン化合物を付加してなる樹脂も好適に用いることができ、塗料安定性の向上に寄与することができる。
上記アクリル樹脂に反応させ得るアミノ基化合物としては、該アクリル樹脂をカチオン化できるものであればとくにその種類には制限はなく、例えば、モノエタノールアミン、プロパノールアミン、ヒドロキシエチルアミノエチレンジアミン、ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのアミンのケチミン化物;ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエタノールアミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノール、モノエチルアミノエタノールなどが挙げられる。
上記のアクリル樹脂とアミノ基化合物をそれ自体既知の方法により反応させることによりアミノ基含有アクリル樹脂(B2)を得ることができる。アミノ基含有アクリル樹脂(B2)は、一般に10〜300mgKOH/g、好ましくは50〜200mgKOH/gの範囲内の水酸基価、一般に30〜70mgKOH/g樹脂固形分、好ましくは40〜60mgKOH/g樹脂固形分の範囲内のアミン価、及び一般に2,000〜100,000、好ましくは、3,000〜50,000の範囲内の数平均分子量を有することができる。
ブロック化ポリイソシアネート化合物(B3):
樹脂成分(B)は、架橋剤としてブロック化ポリイソシアネート化合物(B3)を含有することができる。ブロック化ポリイソシアネート化合物(B3)としては、芳香族、脂環族又は脂肪族のポリイソシアネート化合物などをブロック剤でブロックしたものが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、1,3−もしくは1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、クルードTDI、2,4’−もしくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、クルードMDI、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−もしくはp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、p−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などが挙げられる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネートなどが挙げられる。
これらのポリイソシアネート化合物の中、耐候性や防食性などの観点から、脂肪族ポリイソシアネートや脂環式ポリイソシアネートが好ましい。
ブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、そしてブロック剤の付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は常温において安定で、且つ一般的な電着塗膜の焼き付け温度である約100°Cないし約200°Cに加熱した際、ブロック剤を解離してイソシアネート基を再生しうるものであることが望ましい。
このような要件を満たすブロック剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノールなどの脂肪族アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール化合物;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール
、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、ジメチロール吉草酸、グリセリン酸などの水酸基含有化合物を挙げることができる。ブロックポリイソシアネート化合物として、中でも特に、メチルエチルケトオキシムでブロックされたイソホロンジイソシアネートが好ましい。
以上に述べた基体樹脂及び架橋剤を含んでなる樹脂成分(B)は、カルボン酸などの中和剤及び脱イオン水によって水分散することによって樹脂エマルションとして、皮膜形成剤の調製に用いることができる。
樹脂成分(B)における基体樹脂と架橋剤の配合割合は、基体樹脂と架橋剤の合計固形分質量を基準にして、通常、基体樹脂は50〜90質量%、好ましくは70〜85質量%、架橋剤は10〜50質量%、好ましくは15〜30質量%の範囲内とすることができる。
[界面活性剤(C)]
本発明の皮膜形成剤の安定性及び析出性の向上を目的として界面活性剤(C)を含有する。界面活性剤(C)は、アニオン系界面活性剤、又はアニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤の併用したものが好ましい。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤を使用する場合には、HLBが8以上、好ましくは約10〜約20の範囲内がよい。なお、上記HLBは、分子中の親水基と親油基との釣り合いを示す、Hydrophile−Lipophile Balanceの略である。
このようなノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどが挙げられる。アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤の併用する場合は、両成分の固形分合計を基準にして、アニオン系界面活性剤/ノニオン系界面活性剤=99.9/0.1(質量%)〜10/90(質量%)、好ましくは80/20(質量%)〜50/50(質量%)の範囲が好ましい。
本発明の皮膜形成剤における、ジルコニウム化合物と金属(a)の金属化合物(A)、樹脂成分(B)及び界面活性剤(C)の配合割合としては、皮膜形成剤の総質量に対して、ジルコニウム化合物と金属(a)の金属化合物(A)を合計金属量(質量換算)で30〜1,000ppm、好ましくは50〜800ppm、さらに好ましくは100〜600ppm含有し、樹脂成分(B)は1〜40質量%、好ましくは5〜35質量%、さらに好ましくは10〜30質量%、界面活性剤(C)0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜7質量%、さらに好ましくは1〜5質量%含有することがよい。
なお上記範囲であることによって、安定性に優れた皮膜形成剤、並びに防食性と仕上り性に優れた皮膜構造を有する塗装物品を提供できる。
[有機溶剤(D)]
皮膜形成剤は、皮膜の析出性の向上を目的として用いるものであり、本発明では有機溶剤(D)を皮膜形成剤として用いる。有機溶剤(D)としては、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール−ジ−2−エチルヘキサノエート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、フェニルグリコールエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル及びトリブトキシエチルホスフェートから選ばれる少なくとも1種の有機溶剤が挙げられる。
本発明の皮膜形成剤における、有機溶剤(D)の含有量としては、0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜7質量%、さらに好ましくは1〜5質量%含有することによって、欠陥の少ない析出膜を均一に形成させることができる。
[酸化剤(E)]
本発明の皮膜形成剤は、皮膜の析出促進および皮膜形成剤の安定性の向上を目的として酸化剤(E)を含有することができる。
酸化剤(E)としては、フッ化水素酸およびその塩、珪フッ化水素酸およびその塩、チタンフッ化水素酸およびその塩、第二鉄イオン、酢酸、燐酸、硫酸、硝酸、過酸化水素、ペルオキシ酸、クエン酸およびその塩、および酒石酸およびその塩からなる群より選択される。より好ましくは、析出促進の面から過酸化水素がよい。
本発明の皮膜形成剤における、酸化剤(E)の含有量としては、皮膜形成剤の総質量を基準にして、0.1〜5質量%、好ましくは0.05〜1質量%、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%含有することによって、皮膜形成剤の安定性が向上し、欠陥の少ない析出膜を均一に形成させることができる。
本発明の皮膜形成剤は、さらに必要に応じて、着色顔料、体質顔料、防錆顔料、有機溶剤、顔料分散剤、表面調整剤、界面活性剤、触媒などを通常使用されている配合量で含有することができる。なお、上記の顔料や触媒としては、例えば、チタン白、カーボンブラックなどの着色顔料;クレー、タルク、バリタなどの体質顔料;トリポリリン酸二水素アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウムなどの防錆顔料;ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイドなどの有機錫化合物;ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ベンゾエートオキシ、ジブチル錫ベンゾエートオキシ、ジオクチル錫ジベンゾエート、ジブチル錫ジベンゾエートなどのジアルキル錫の脂肪族もしくは芳香族カルボン酸塩などの錫化合物が挙げられる。
皮膜形成剤の調製は、例えば、以下に述べる(1)〜(3)の方法により行うことができる。
(1):樹脂成分(B)及び場合によりその他の添加剤を一緒にし、十分に混合して溶解ワニスを作製し、それに水性媒体中で、(例えば、アニオン性水性樹脂の場合では)トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアルキルアミン類;ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノールなどのアルカノールアミン類;モルホリンなどの環状アミン類;アンモニア等を添加して水分散化してなるエマルション中に、金属化合物(A)を配合する方法。
(2):金属化合物成分(A)に、顔料や触媒、その他の添加剤、水を加えて顔料分散して予め顔料分散ペーストを調製し、その顔料分散ペーストを樹脂成分(B)のエマルションに添加する方法。
(3):あらかじめ作製した皮膜形成剤の浴に、金属化合物成分(A)を水で希釈して配合する方法。
本発明の皮膜形成剤は、脱イオン水などで希釈して、浴固形分濃度が通常1〜40質量%、好ましくは5〜25質量%、pHが通常4〜9、好ましくはpHが5〜8の範囲内となるように調整し使用することができる。
本発明の皮膜形成剤を用いた皮膜形成は、皮膜形成剤を槽に入れて浴とし、金属被塗物を浸漬し、浸漬時間に応じて膜厚が増大する皮膜を形成できる。浸漬時間として、具体的には、被塗物を1〜600秒間、好ましくは30〜480秒間、さらに好ましくは60〜300秒間浸漬することによって、皮膜を形成できる。
なお、皮膜形成剤の浴温としては、通常5〜45℃、好ましくは10〜40℃、さらに好ましくは20〜35℃の範囲内が、欠陥の少ない析出膜を均一に形成させることができる。
また、金属被塗物を浸漬した被塗物を槽から出し、さらにもう一度金属被塗物を浸漬することも可能で、いっそう防食性に優れる皮膜構造を得ることができる。理由としては、緻密な酸化皮膜を形成する為と考えられる。
本発明の皮膜形成剤を用いた皮膜形成方法は、ジルコニウム化合物と金属化合物(A)を選択的に被塗物上に析出させて皮膜(F1)を形成することができ、次いで、皮膜(F1)上に、樹脂成分(B)を選択的に析出させて皮膜(F2)を形成することができる。
本発明に従い、皮膜形成剤に浸漬することによって、1層目の皮膜(F1)上に、組成が大きく異なる2層目の皮膜(F2)を連続的に形成することができ、それによって、いっそう防食性と仕上り性が良好な複層皮膜構造を形成せしめることができる。
本発明の皮膜構造の析出機構としては、まず金属被塗物が、皮膜形成剤に含まれる酸性成分(例えば、フッ化物イオン)のエッチング作用によって被塗物近傍のpHが上昇し、次にジルコニウムイオン種等(例えば、6フッ化ジルコニウムイオン)が加水分解反応を受けて、難溶性の皮膜(F1)(主に、酸化ジルコニウム)が被塗物上に析出する。
さらに、金属被塗物近傍の鉄イオン濃度が上昇すると、イオン化することによって安定化を保っている樹脂成分(B)の水分散体が不安定な状態となり、樹脂成分(B)が凝集し、かつ難溶性の酸化ジルコニウムが被塗物に析出されず、樹脂成分(B)や顔料を主成分とする皮膜(F2)が形成されて、本発明の皮膜構造を得ることができる。
上記の皮膜形成剤を用いた塗膜形成方法により、皮膜の質量固形分合計を基準にして、ジルコニウム化合物と金属(a)の金属化合物(A)を合計金属量(質量換算)で一般に25〜70質量%、特に30〜60質量%含有する皮膜(F1)と、該皮膜(F1)上の、皮膜の質量固形分合計を基準にして、ジルコニウム化合物と金属(a)の金属化合物(A)を合計金属量(質量換算)で25質量%未満、特に1〜10質量%含有し且つ樹脂成分(B)を50〜95質量%、特に70〜90質量%含有する皮膜(F2)を含んでなる皮膜構造を形成せしめることができる。
このようにして得られた皮膜の焼き付け温度は、被塗物表面で100〜200℃、好ましくは120〜180℃の範囲内の温度が適しており、焼き付け時間は5〜90分、好ましくは10〜50分程度とすることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」である。
製造例1 アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.1
PP−400(三洋化成社製、商品名、ポリプロピレングリコール 分子量400)400部に、ε−カプロラクトン300部を加えて、130℃まで昇温した。その後、テトラブトキシチタン0.01部を加え、170℃に昇温した。この温度を保ちながら経時でサンプリングし、未反応のε−カプロラクトンが実質的になくなったことを確認した時点で冷却し、変性剤1を得た。
別のフラスコに、エピコート828EL(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、エポキシ樹脂 エポキシ当量190 分子量350)1000部、ビスフェノールA 400部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が750になるまで反応させた。次に、変性剤1を200部、ジエタノールアミンを140部及びジエチレントリアミンのケチミン化物65部を加え120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテルで固形分を調整し、樹脂固形分80%のポリオール変性のアミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.1を得た。該アミノ基含有エポキシ樹脂No.1は、樹脂アミン価が56mgKOH/g、数平均分子量が2,000であった。
製造例2 アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.2
温度計、還流冷却器及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、50%ホルマリン480部、フェノール110部、98%工業用硫酸202部及びメタキシレン424部を仕込み、84〜88℃で4時間反応させた。反応終了後、静置して樹脂相と硫酸水相とを分離した後、樹脂相を3回水洗し、20〜30mmHg/120〜130℃の条件で20分間未反応メタキシレンをストリッピングして、粘度1050センチポイズ(25℃)のフェノール変性のキシレンホルムアルデヒド樹脂 480部を得た。
別のフラスコに、エピコート828EL(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、分子量350)1000部、ビスフェノールA 400部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が750になるまで反応させた。
次に、キシレンホルムアルデヒド樹脂を300部、ジエタノールアミンを137部及びジエチレントリアミンのメチルイソブチルケトンのケチミン化物を95部加え120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル403部を加え、樹脂固形分80%のキシレンホルムアルデヒド樹脂変性のアミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.2を得た。該アミノ基含有エポキシ樹脂No.2は、樹脂アミン価が57mgKOH/g、数平均分子量が2,000であった。
製造例3 アミノ基含有エポキシ樹脂溶液No.3
撹拌機、温度計、滴下ロート及び還流冷却器を取付けたフラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル397部、EHPE−3150(エポキシ当量180 ダイセル化学工業(株)製)900部、アミノ基含有化合物(注3)370部、ジエタノールアミン315部及びフェノール化合物(注4)1651部を加え、混合撹拌しながら、150℃まで昇温し、エポキシ基残量が0になるまで反応させた。さらに、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル3610部、ビスフェノールA1596部、ジエタノールアミン525部及びエチレングリコールモノブチルエーテル1433部を添加し、150℃でエポキシ基残量が0になるまで反応させて、樹脂固形分80%、アミン付加エポキシ樹脂溶液No.3を得た。該アミン付加エポキシ樹脂No.3は、樹脂アミン価が65mgKOH/g、数平均分子量が2,000であった。
(注3) アミノ基含有化合物:
温度計、撹はん機、還流冷却器及び水分離器を取り付けた反応容器に、12−ヒドロキシステアリン酸300部とヒドロキシエチルアミノエチルアミン104部及びトルエン80部を仕込み、混合撹拌しながら徐々に加熱し必要に応じてトルエンを除去し温度を上げながら反応水18部を分離除去した後残存するトルエンを減圧除去し、アミン価148mgKOH/g、凝固点69℃のアミノ基含有化合物を得た。
(注4) フェノール化合物:
撹拌機、温度計、滴下ロート及び還流冷却器を取付けたフラスコに、ジエタノールアミン105部、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル760部、ビスフェノールA456部及びエチレングリコールモノブチルエーテル330部を加し、150℃でエポキシ基残量が0になるまで反応し、固形分80%のフェノール化合物を得た。
製造例4 硬化剤の製造
イソホロンジイソシアネート222部にメチルイソブチルケトン44部を加え、70℃に昇温した。その後、メチルエチルケトキシム174部を2時間かけて滴下して、この温度を保ちながら経時でサンプリングして赤外吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネートの吸収が実質的になくなったことを確認し、樹脂固形分90%のブロックポリイソシアネート化合物である硬化剤を得た。
製造例5 エマルションNo.1の製造
上記製造例1で得た樹脂固形分80%のアミン付加エポキシ樹脂No.1
を87.5部(固形分70部)に、硬化剤No.1を33.3部(固形分30部)、酢酸1.6部及び脱イオン水190.1部を加えて水分散化し、固形分32%のエマルションNo.1を得た。
製造例6〜10 エマルションNo.2〜No.6の製造
製造例5と同様の操作にて、表1の配合内容のエマルションNo.2〜No.6を得た。
Figure 2008115451
(注5)EA−142B:第一工業製薬社製、商品名、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル。
製造例11 顔料分散用のアクリル樹脂溶液
撹拌機、温度計及び還流冷却管の備えた通常のアクリル樹脂反応槽にエチレングリコールモノブチルエーテル37部を仕込み、加熱撹拌して110℃に保持した。
その中に下記の「混合物」を3時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃で30分間熟成し、次にエチレングリコールモノブチルエーテル20部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5部からなる追加触媒混合液を1時間かけて滴下した。次いで110℃で1時間熟成したのち冷却し、樹脂固形分55%の顔料分散用アクリル樹脂溶液を得た。
「混合物」
スチレン 10部
メチルメタクリレート 35部
2−エチルヘキシルメタクリレート 20部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 10部
NFバイソマーS20W(注6) 40部
アゾビスイソブチロニトリル 1部
イソブチルアルコール 5部。
(注6)NFバイソマーS20W:第一工業製薬株式会社製、商品名、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートの50%水希釈品、分子量約2,080。
製造例12 顔料分散ペーストNo.1の製造
製造例9で得た樹脂固形分55%の顔料分散用のアクリル樹脂溶液6.3部(固形分5部)、JR−600E(注8)14部、カーボンMA−7(注9)0.3部、ハイドライトPXN(注10)9.7部、ジオクチル錫オキサイド1部、及び脱イオン水21.8部をボールミルにて20時間分散して、固形分55%の顔料分散ペーストNo.1を得た。
製造例13 顔料分散ペーストNo.2の製造例
下記表2に示す化合物を用いる以外は製造例12と同様の操作にて、顔料分散ペーストNo.2を得た。
Figure 2008115451
(注7)JR−600E:テイカ社製、商品名、チタン白
(注8)カーボンMA−7:三菱化成社製、商品名、カーボンブラック
(注9)ハイドライトPXN:ジョージアカオリン社製、商品名、カオリン。
製造例14
エマルションNo.1を312.5部(固形分100部)、製造例12で得た55%顔料分散ペーストNo.1を54.5部(固形分30部)、脱イオン水633.0部を加えて浴とし、次いでジルコニウムフッ化水素アンモニウム1.3部、硝酸マグネシウム2.1部を加えて皮膜形成剤No.1を得た。
製造例15〜32
下記表3及び表4に示す配合とする以外は、製造例14と同様にして皮膜形成剤No.2〜No.19を得た。
Figure 2008115451
Figure 2008115451
実施例1
皮膜形成剤No.1の浴を28℃に調整し、被塗物の冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を180秒間浸漬して皮膜を得た。得られた皮膜を電気乾燥機によって170℃で20分間焼付け乾燥して、試験板No.1とした。
実施例2〜9
表5の浸漬条件と皮膜形成剤する以外は、実施例1と同様にして皮膜No.2〜No.9を得た。
Figure 2008115451
実施例10〜13
表6の浸漬条件と皮膜形成剤する以外は、実施例1と同様にして皮膜No.10〜No.13を得た。
Figure 2008115451
比較例1〜6
表7の皮膜形成剤する以外は、実施例1と同様にして、試験板No.14〜No.19を得た。
Figure 2008115451
(注10)皮膜状態:試験板を切断して皮膜(F1)と皮膜(F2)の皮膜状態を、HF−2000(日立製作所製、電界放出型透過型電子顕微鏡)を用いて観察した。皮膜状態の評価は、下記の基準に従って行った。
○は、皮膜(F1)と皮膜(F2)境界がはっきりしないが、層分離が多少認められる。
×は、層分離は認められない。
(注11)Zrと金属(a)の金属量(%):皮膜(F1)における金属量(質量%)を、IX−3100RF(株式会社リガク製、商品名、蛍光X線分析装置)を用いて測定した。
(注12)樹脂成分(B)の含有量:焼付け乾燥前の皮膜(F2)を掻き取り、下記の式(2)に従って求めた。
皮膜(F2)を105℃3時間乾燥した後の質量・・・b1
800℃のるつぼに入れて5時間焼付けた後の残分質量・・・b2
樹脂成分(B)の含有量(%)=[(b1−b2)/b1]・・・式(2)。
(注13)防食性:試験板の素地に達するように電着塗膜にナイフでクロスカット傷を入れ、これを用いJISZ−2371に準じて480時間耐塩水噴霧試験を行った。評価はナイフ傷からの錆、フクレ幅によって以下の基準で評価した。
◎は、錆、フクレの最大幅がカット部より2mm未満(片側)であり、
○は、錆、フクレの最大幅がカット部より2mm以上で且つ3mm未満(片
側)であり、
△は、錆、フクレの最大幅がカット部より3mm以上で且つ4mm未満(片
側)であり、
×は、錆、フクレの最大幅がカット部より4mm以上(片側)である、
ことを示す。
(注14)耐ばくろ性:
試験板に、スプレー塗装方法で、WP−300(関西ペイント株式会社製、水性中塗り塗料)を硬化膜厚が25μmとなるように塗装した後、電気熱風乾燥器で140℃×30分焼き付けを行なった。さらに、その中塗塗膜上にスプレー塗装方法で、ネオアミラック6000(関西ペイント株式会社製、上塗り塗料)を硬化膜厚が35μmとなるように塗装した後、電気熱風乾燥器で140℃×30分焼き付けを行ない、ばくろ試験板を作製した。
得られたばくろ試験板上の塗膜に、素地に達するようにナイフでクロスカットキズを入れ、これを千葉県千倉町で、水平にて1年間暴露した後、ナイフ傷からの錆、フクレ幅によって以下の基準で評価した。
◎は、錆またはフクレの最大幅がカット部より2mm未満(片側)
○は、錆またはフクレの最大幅がカット部より2mm以上で且つ3mm未満(片側)
△は、錆またはフクレの最大幅がカット部より3mm以上で且つ4mm未満(片側)
×は、錆またはフクレの最大幅がカット部より4mm以上(片側)である、
ことを示す。
(注15)仕上り性:
試験板の塗面をサーフテスト301(株式会社ミツトヨ社製、商品名、表面粗度計)を用いて、表面粗度値(Ra)をカットオフ0.8mmにて測定した。
◎は、表面粗度値(Ra)が0.2μm未満
○は、表面粗度値(Ra)が0.25μm以上でかつ0.3μm未満、
△は、表面粗度値(Ra)が0.25μm以上でかつ0.3μm未満、
×は、表面粗度値(Ra)が0.3μm以上、を示す。
(注16)耐侯性:
乾燥膜厚20μmの各試験板を、JIS K−5400 9.8.1に規定するサンシャインカーボンアーク灯式による促進耐候性試験を行い、JIS K−5400 7.6(1990)に準じて塗面の60度鏡面反射率(%)が80%を割る時間を測定した。
◎は、60度鏡面反射率(%)が80%を割る時間が200時間以上、
○は、60度鏡面反射率(%)が80%を割る時間が150時間以上、かつ200時間未満
△は、60度鏡面反射率(%)が80%を割る時間が50時間以上、かつ150時間未満
×は、60度鏡面反射率(%)が80%を割る時間が50時間未満。
(注17)皮膜形成剤安定性:
各々の皮膜形成剤を30℃にて30日間容器を密閉して攪拌した。その後、皮膜形成剤を400メッシュ濾過網を用いて全量濾過し、残さ量(mg/L)を測定した。
◎は、5mg/L未満、
○は、5mg/L以上で、かつ10mg/L未満
△は、10mg/L以上で、かつ15mg/L未満
×は、15mg/L以上、を示す。

Claims (6)

  1. 皮膜形成剤の総質量に対して、ジルコニウム化合物と、必要に応じて、チタン、コバルト、バナジウム、タングステン、モリブデン、亜鉛、アルミニウム、ビスマス、イットリウム、ランタノイド金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属(a)の金属化合物(A)を合計金属量(質量換算)で30〜5,000ppmと、
    樹脂成分(B)1〜40質量%及び界面活性剤(C)0.1〜10質量%及び水を含むことを特徴とする皮膜形成剤。
  2. 皮膜形成剤の総質量に対して、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール−ジ−2−エチルヘキサノエート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、フェニルグリコールエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル及びトリブトキシエチルホスフェートから選ばれる少なくとも1種の有機溶剤(D)を0.1〜10質量%含有する請求項1に記載の皮膜形成剤。
  3. 皮膜形成剤の総質量に対して、酸化剤(E)を0.1〜5質量%含有する請求項1又は2に記載の皮膜形成剤。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮膜形成剤を浴として、金属被塗物を1〜600秒間浸漬することによって皮膜を形成することを特徴とする皮膜形成方法。
  5. 皮膜の質量固形分合計を基準にして、ジルコニウム化合物と金属(a)の金属化合物(A)を合計金属量(質量換算)で、25〜70質量%含有する皮膜(F1)と、該皮膜(F1)上の、皮膜の質量固形分合計を基準にして、
    ジルコニウム化合物と金属(a)の金属化合物(A)を合計金属量(質量換算)で25質量%未満含有し、且つ樹脂成分(B)を50〜95質量%含有する皮膜(F2)を含んでなる皮膜構造。
  6. 請求項5に記載の皮膜構造を有する塗装物品。
JP2006302335A 2006-11-08 2006-11-08 皮膜形成剤と皮膜形成方法及び塗装物品 Pending JP2008115451A (ja)

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