JP2008115413A - 耐熱性に優れた高強度・高靭性アルミニウム合金およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温溶体化処理を可能として十分な時効硬化を達成することができ、優れたシャルピー衝撃性をそなえた耐熱性に優れた高強度で且つ高靭性のAl−Cu−Mg系アルミニウム合金およびその製造方法を提供する。
【解決手段】Cu:2.5〜3.3%、Mg:1.5〜2.2%、Ag:0.3〜0.8%、Si:0.2〜0.4%、Fe:0.5〜1.0%、Ni:0.8〜1.3%、Mn:0.4〜0.7%、Zr:0.10〜0.20%、Ti:0.01〜0.10%を含有し、CuとMgの含有比率がCu%/Mg%=1.1〜2.2の範囲であり、残部がAlおよび不純物からなる組成を有し、 シャルピー衝撃値が13J/cm2以上であることを特徴とする。さらにY:0.1〜0.3%を含有することができる。
【選択図】なし
【解決手段】Cu:2.5〜3.3%、Mg:1.5〜2.2%、Ag:0.3〜0.8%、Si:0.2〜0.4%、Fe:0.5〜1.0%、Ni:0.8〜1.3%、Mn:0.4〜0.7%、Zr:0.10〜0.20%、Ti:0.01〜0.10%を含有し、CuとMgの含有比率がCu%/Mg%=1.1〜2.2の範囲であり、残部がAlおよび不純物からなる組成を有し、 シャルピー衝撃値が13J/cm2以上であることを特徴とする。さらにY:0.1〜0.3%を含有することができる。
【選択図】なし
Description
本発明は、とくに自動車用部品などとして好適に使用される耐熱性に優れた高強度・高靭性アルミニウム合金およびその製造方法に関する。
近年、地球環境保護の観点から、自動車の軽量化によるCO2の排出削減や内燃機関の燃費向上が求められている。アルミニウム材の適用による自動車部品の軽量化が進められる中で、内燃機関用部品などでは、従来以上に室温および高温の両域において、さらに強度に優れたアルミニウム合金への要求が高まっている。
100℃以上の高温域において優れた強度を有するアルミニウム合金として、AA規格のAA2618、AA2219合金が知られており、耐熱性が必要とされる航空機用部品や自動車用部品などに適用されている。とくに2618合金は、主要合金成分としてCu、Mgに加えてNiおよびFeを含有し、高温強度を向上させたアルミニウム合金であり、高温域では他のアルミニウム合金よりも高い強度を示すが、室温域では強度が十分ではないという問題がある。
一方、最近ではAl−Cu−Mg系合金にAgを添加してΩ相を析出させることにより高強度化する試みが行われている(特許文献1〜3参照)。しかしながら、Agの添加により高強度材が得られるが、Agを添加すると融点が低下し、高温の溶体化処理ができず、そのため、Agを添加しない合金を高温溶体化処理した場合に比較して,過飽和量が小さく大きな時効硬化が得られないという難点がある。また、共晶融解温度を超える温度で溶体化処理すると、高い強度は得られるものの、シャルピー衝撃値が低いという問題もある。
特開平11−302764号公報
特開2000−119786号公報
特開2005−82816号公報
本発明は、高強度化を可能にするAg含有Al−Cu−Mg系合金に着目し、この合金における上記の問題点を解消するために、Agと他の合金元素との組み合わせや製造手法について種々の試験、検討を行った結果としてなされたものであり、その目的は、上記従来の問題を解消し得るAg含有Al−Cu−Mg系の耐熱性に優れた高強度・高靭性アルミニウム合金およびその製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するための請求項1による耐熱性に優れた高強度・高靭性アルミニウム合金は、Cu:2.5〜3.3%、Mg:1.5〜2.2%、Ag:0.3〜0.8%、Si:0.2〜0.4%、Fe:0.5〜1.0%、Ni:0.8〜1.3%、Mn:0.4〜0.7%、Zr:0.10〜0.20%、Ti:0.01〜0.10%を含有し、CuとMgの含有比率がCu%/Mg%=1.1〜2.2の範囲であり、残部がAlおよび不純物からなる組成を有し、 シャルピー衝撃値が13J/cm2以上であることを特徴とする。
請求項2による耐熱性に優れた高強度・高靭性アルミニウム合金は、請求項1において、さらにY:0.1〜0.3%を含有することを特徴とする。
請求項3による耐熱性に優れた高強度・高靭性アルミニウム合金の製造方法は、請求項1または請求項2記載の組成を有するアルミニウム合金のビレットを400〜520℃の温度で1〜20h均質化処理した後、300〜530℃の温度で1回以上の熱間加工を行って熱間加工材を作製し、その後、測定された熱間加工材の内部の溶融開始温度より2〜10℃低い温度で0.5〜5h保持する溶体化処理と、測定された熱間加工材の表層部の溶融開始温度より2〜10℃低い温度で0.5〜5h保持する溶体化処理とを連続して行った後、焼入れを行い、150〜200℃の温度で3〜30h保持する人工時効処理を施すことを特徴とする。
本発明によれば、高温溶体化処理を可能として十分な時効硬化を達成することができ、優れたシャルピー衝撃性をそなえた耐熱性に優れた高強度で且つ高靭性のAg含有Al−Cu−Mg系アルミニウム合金およびその製造方法が提供される。
本発明のアルミニウム合金における合金成分の意義および限定理由について説明すると、Cuは、常温および高温における強度向上のために機能する。Cuの好ましい含有量は2.5〜3.3%の範囲であり、2.5%未満では強度向上の効果が小さく、3.5 %を超えると融点が大幅に低下するため溶体化処理温度を低くしなければならず、そのため溶体化処理後の合金マトリックス中の過飽和度が小さくなり、十分な強度向上が望めなくなる。
Mgは、Cu、Agと共存して常温および高温における強度を高めるよう機能する。Mgの好ましい含有量は1.5〜2.2%の範囲であり、1.5%未満ではその効果が小さく、2.2%を超えると共晶融解が生じるために溶体化処理温度を低くしなければならず、そのため溶体化処理後の合金マトリックス中の過飽和度が小さくなり、強度向上が望めなくなる。
好ましいCuとMgの含有比率(Cu%/Mg%)は1.1〜2.2の範囲であり、CuとMgの含有比率が1.1未満では、主要強化相の一つであるGPBゾーンの形成が少ないために強度が低く、2.2を超えると、Al2CuおよびAl2MgCuが形成されてAlとAl2CuとAl2MgCuの共晶融解が508℃で生じるため、508℃未満の温度で溶体化処理しなければならず、そのため溶体化処理後の合金マトリックス中の過飽和度が小さくなり、強度向上が望めなくなる。
Agは、Cu、Mgと共存して微細析出物のΩ相を形成し、常温および高温における強度を高める。Agの好ましい含有量は0.3〜0.8%の範囲であり、0.3%未満ではその効果が小さく、0.8%を超えると融点が大幅に低下するため溶体化処理温度を低くしなければならず、そのため溶体化処理後の合金マトリックス中の過飽和度が小さくなり、強度向上が望めなくなる。
上記の含有範囲のCu、Mg、Agを組み合わせることにより、GPBゾーン、S′相、Ω相が複合的に析出し強度が高められる。
Siは、MnとともにAl−Mn−Si系化合物の微細分散相を析出させて転位のピンニング効果を高め、溶体化処理中の再結晶粒の粗大化を防止する。Siの好ましい含有量は0.2〜0.4%の範囲で、0.2%未満ではその効果が小さく、0.4%を超えると粗大な化合物を形成し靭性を低下させる。
Feは、Niとの化合物を形成し、耐熱性を向上させるよう機能する元素である。Feの好ましい含有量は0.5〜1.0%の範囲で、0.5%未満ではその効果が小さく、1.0%を超えると、母相中に分散するAl−Fe系、Al−Fe−Cu系などのFe系化合物により靭性が低下する。
Niは、Feとの化合物を形成し、耐熱性を向上させるよう機能する元素である。Niの好ましい含有量は0.8〜1.3%の範囲で、0.8%未満では効果がその小さく、1.3%を超えると、母相中に分散するAl−Ni系、Al−Ni−Cu系などのNi系金属間化合物により靭性が低下する。
Mnは、前記のSiとともに微細なAl−Mn−Si系化合物を析出、分散させて合金の溶体化処理中に生じる再結晶を抑制し、組織を繊維状組織あるいは微細な再結晶組織として強度を向上させる。Mnの好ましい含有量は0.4〜0.7%の範囲で、0.4%未満ではその効果が小さく、0.7%を超えると、鋳造時に巨大晶出物が発生し易く靭性の低下を招く。
Zrは、Al3 Zr化合物の微細分散により、溶体化処理中に生じる再結晶粒の粗大化を抑制し、繊維状組織を形成して強度を高める。Zrの好ましい含有量は0.10〜0.20%の範囲で、0.10%未満ではその効果が小さく、0.20%を超えると、鋳造時に巨大晶出物が発生して靭性を低下させる。
Tiは、微細結晶粒組織を安定して得るために添加される。Tiの好ましい含有量は0.01〜0.10%で、0.01%未満ではその効果が小さく、0.10 %を超えると、Al−Ti系の巨大晶出物が発生して靭性の低下を招く。
Yは、合金の溶融開始温度を高める効果を有する。Yの添加により高温の溶体化処理が可能となり一層高強度化が達成できる。Yの好ましい含有量は0.1〜0.3%の範囲で、0.1%未満ではその効果が少なく、0.3%を超えると、粗大な化合物が形成されて靭性が低下する。
なお、本発明のアルミニウム合金においては、0.05%以下のCr、0.05%以下のZnが含有されていても、本発明の効果を損なうことはない。
以下、本発明のアルミニウム合金の製造方法について説明する。
前記の組成を有するアルミニウム合金を常法により溶解、ビレットに鋳造し、造塊されたビレットを400〜520℃の温度で1〜20h均質化処理した後、300〜530℃の温度で1回以上の熱間加工を行って熱間加工材を作製する。
前記の組成を有するアルミニウム合金を常法により溶解、ビレットに鋳造し、造塊されたビレットを400〜520℃の温度で1〜20h均質化処理した後、300〜530℃の温度で1回以上の熱間加工を行って熱間加工材を作製する。
熱間加工は押出加工、鍛造加工が好ましい。熱間加工を行わない場合は、鋳造組織であるためミクロ的な偏析が存在し、靭性を低下させる。熱間加工温度が300℃未満では、加工ひずみが材料内部に蓄積して、溶体化処理を行う際に結晶粒の粗大化が生じ強度が低下し易くなる。熱間加工温度が530℃を超えると、加工変形中の加工発熱が加わり、部分的に共晶融解が発生して靭性にバラツキが生じ易くなる。
その後、測定された熱間加工材の内部の溶融開始温度より2〜10℃低い温度で0.5〜5h保持する溶体化処理と、測定された熱間加工材の表層部の溶融開始温度より2〜10℃低い温度で0.5〜5h保持する溶体化処理を連続して行う。
熱間加工材の表層部は、熱間加工時の工具との摩擦により熱間加工材の内部よりも鍛錬度が高く、そのため化合物が微細に分散して溶融開始温度が高くなる。一方、熱間加工材の内部は、鍛錬度がより低いために溶融開始温度が低くなる。上記2段の溶体化処理を連続して行った場合、熱間加工材の内部の溶融開始温度より2〜10℃低い温度での1段目の溶体化処理により、熱間加工材の内部において鍛錬度が低いために存在したミクロ偏析を熱的になくして均質化し、熱間加工材の内部の溶融開始温度を熱間加工材の表層の溶融開始温度と同じ温度まで上げる効果が得られ、熱間加工材の表層部の溶融開始温度より2〜10℃低い温度での2段目の溶体化処理をより高温で行うことが可能となる。この高温での溶体化処理により合金マトリックス中の過飽和固溶量が増大し、人工時効による微細析出物の析出量が多くなって強度が向上する。
本発明は、熱間加工後、溶体化処理される材料の表層部と内部の溶融開始温度が異なることを見出し、これらの溶融開始温度に基づいて2段階の溶体化処理を連続して行うことにより、溶体化処理を高温で行うことを可能とし、合金マトリックス中の過飽和固溶量を増大させて、人工時効により微細析出物を多く析出させ強度を向上させることを特徴とするものである。
熱間加工材の内部および表層部の溶融開始温度は、熱間加工材から直径2mm、厚さ1.5mmの試片を採取し、JIS K 7121−1987の5.に記載の装置及び器具を用いて測定することにより行われ、試片を室温より10℃/分の条件で昇温して、その際の熱量を測定し、吸熱ピークの開始温度を求める。ここで、JIS K 7121−1987の9.に記載のDTA又はDSC曲線の読み方に準拠して、補外融解開始温度(Tim)を求め、これを溶融開始温度とする。熱間加工材の表層部の試片は、熱間加工材の表面から2mm以内の位置から採取し、熱間加工材の内部の試片は、熱間加工材の表面から5mm以上離れた位置から採取する。
熱間加工材の内部および表層部の溶融開始温度の測定は、合金組成による溶融開始温度の差異を考慮して、その都度行われるが、測定データを蓄積、管理することにより、合金組成、熱間加工方法、熱間加工度に応じて、溶融開始温度がわかるようにすることができる。
前記2段の溶体化処理を連続して行った後、焼入れを行う。第1段目の溶体化処理を、(熱間加工材の内部の溶融開始温度−2℃)を超える温度で行うと、ミクロ偏析が存在する場合には共晶融解が生じ、靭性が低下したり表面のふくれ発生の原因となる。(熱間加工材の内部の溶融温度―10℃)より低い温度で行った場合や保持時間が0.5h未満の場合には均質化が十分でなく、第2段目の溶体化処理おいて共晶融解が発生するおそれがある。5hを超える保持は炉の占有時間が長くなるため工業的に好ましくない。
第2段目の溶体化処理を、(熱間加工材の表層部の溶融開始温度−2℃)を超える温度で行うと、部分的な共晶融解を招き、シャルピー衝撃値の低下や表面のふくれ発生の原因となる。(熱間加工材の表層部の溶融開始温度−10℃)より低い温度で行った場合や保持時間が0.5h未満の場合には、合金マトリックス中に十分なCu、Mg、Agの過飽和固溶量が得られず強度が低下する。5hを超える保持は炉の占有時間が長くなるため工業的に好ましくない。
溶体化処理、焼入れ後、150〜200℃の温度で3〜30h人工時効処理する。150℃未満では析出量が少なく、また、200℃を超える温度で時効処理すると粗大な析出物が生じて共に強度が低くなる。保持時間が3h未満では析出量が少なくなって強度が劣り、30hを超える時効処理は炉の占有時間が長くなるため工業的に好ましくない。
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明するとともに、それに基づいてその効果を実証する。これらの実施例は本発明の一実施態様を示すものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
表1に示す組成(No.1〜10)を有するアルミニウム合金のビレット(直径90mm)を連続鋳造により造塊し、得られたビレットを450℃の温度で10h均質化処理した後、表2に示す条件で熱間加工を行って、熱間加工材の内部および表層部の溶融開始温度を前記の方法で測定し、測定された溶融開始温度に基づいて2段階の溶体化処理、常法に従う焼入れ処理および人工時効処理を行い、試験材とした。表2において、熱間加工1とは熱間押出(押出サイズ:直径20mm)、熱間加工2とは熱間鍛造(圧下率60%)である。
表1に示す組成(No.1〜10)を有するアルミニウム合金のビレット(直径90mm)を連続鋳造により造塊し、得られたビレットを450℃の温度で10h均質化処理した後、表2に示す条件で熱間加工を行って、熱間加工材の内部および表層部の溶融開始温度を前記の方法で測定し、測定された溶融開始温度に基づいて2段階の溶体化処理、常法に従う焼入れ処理および人工時効処理を行い、試験材とした。表2において、熱間加工1とは熱間押出(押出サイズ:直径20mm)、熱間加工2とは熱間鍛造(圧下率60%)である。
人工時効処理後の試験材について、以下に示す方法により引張強さ、シャルピー衝撃値、300℃で5h加熱して軟化した後の硬さを測定した。測定結果を、溶融開始温度とともに表3に示す。
引張強さ:JIS Z 2241に準拠した引張試験(試験片はJIS Z 2201、金属材料引張試験片4号試験片の備考2による試験片)を行い、引張性能を評価し、540MPa以上を合格とした。
引張強さ:JIS Z 2241に準拠した引張試験(試験片はJIS Z 2201、金属材料引張試験片4号試験片の備考2による試験片)を行い、引張性能を評価し、540MPa以上を合格とした。
シャルピー衝撃値:JIS Z 2242に準拠したシャルピー衝撃試験(試験温度は室温、試験片はJIS Z 2202、金属材料衝撃試験片Uノッチ試験片)を行って評価し、13J/cm2以上を合格とした。
硬さ:試験材を300℃で5h加熱、軟化し,JIS Z 2245のロックウェル硬さ試験による硬さ(HRB)測定を室温で行い、高温保持による強度低下を評価し、45HRB以上を合格とした。
硬さ:試験材を300℃で5h加熱、軟化し,JIS Z 2245のロックウェル硬さ試験による硬さ(HRB)測定を室温で行い、高温保持による強度低下を評価し、45HRB以上を合格とした。
表3にみられるように、本発明に従う試験材A1〜A14はいずれも、引張強さは540MPa以上,シャルピー衝撃値は13J/cm2以上、300℃で5h加熱後の室温硬さは45HRB以上であり、耐熱性に優れ、高強度、高靭性をそなえていた。なお、A9およびA10はYの添加により溶融開始温度が高くなり、高温の溶体化処理が可能となったため、より高い引張強さが得られた。
比較例1
表4に示す組成(No.11〜20)を有するアルミニウム合金のビレット(直径90mm)を連続鋳造により造塊し、得られたビレットを450℃の温度で10h均質化処理した後、表5に示す条件で熱間押出加工を行って、熱間加工材の内部および表層部の溶融開始温度を前記の方法で測定し、測定された溶融開始温度に基づいて2段階の溶体化処理、常法に従う焼入れ処理および人工時効処理を行い、試験材とした。なお、表4および表5において、本発明の条件を外れたものには下線を付した。
表4に示す組成(No.11〜20)を有するアルミニウム合金のビレット(直径90mm)を連続鋳造により造塊し、得られたビレットを450℃の温度で10h均質化処理した後、表5に示す条件で熱間押出加工を行って、熱間加工材の内部および表層部の溶融開始温度を前記の方法で測定し、測定された溶融開始温度に基づいて2段階の溶体化処理、常法に従う焼入れ処理および人工時効処理を行い、試験材とした。なお、表4および表5において、本発明の条件を外れたものには下線を付した。
人工時効処理後の試験材について、実施例1と同じ方法により引張強さ、シャルピー衝撃値、300℃で5h加熱して軟化した後の硬さを測定した。測定結果を、溶融開始温度とともに表6に示す。なお、表6において、測定値が不合格のものには下線を付した。
表6に示すように、試験材B1はCu、Mg量が少ないため、引張強さが低く、300℃×5h保持後の室温硬さも低かった。B5はAg量が少ないため、引張強さが低かった。B2はCu、Mg量が多いため、B6はAg量が多いため、いずれも溶融開始温度が低く、溶体化処理温度が低くなったために引張強さが劣化した。B3は(Cu%/Mg%)の比が大きいために引張強さが低く、B4は(Cu%/Mg%)の比が小さいため融解開始温度が低く、溶体化処理温度が低くなったため引張強さが劣化した。
B7はSi、Fe、Ni、Mn、Zr、Ti量が少ないため、粗大な再結晶が生じ引張強さが低くなった。さらに耐熱性が低下したため、300℃×5h保持後の室温硬さが45HRB未満となった。B8はSi、Fe、Ni、Mn、Zr、Ti量が多いため、粗大な化合物が形成しシャルピー衝撃値が低下した。B9はY量が多いために化合物が形成され、シャルピー衝撃値が低下した。B10は熱間加工温度が低いため、溶体化処理の際に粗大再結晶粒が発生し引張強さが低下した。B11は熱間加工をしなかったために引張強さ、シャルピー衝撃値、および300℃×5h保持後の室温硬さが低くなった。
B12は1段目の溶体化処理温度が低かったため均質化が不十分となり、2段目の溶体化処理の際に共晶融解が発生したためシャルピー衝撃値が低下した。B13は2段目の溶体化処理温度が低かったため十分な過飽和固溶量が得られず引張強さが低くなった。B14は溶体化処理温度が高かったため共晶融解が発生しシャルピー衝撃値が低下した。B15は人工時効処理条件が適切でなかったために引張強さが低かった。
Claims (3)
- Cu:2.5〜3.3%(質量%、以下同じ)、Mg:1.5〜2.2%、Ag:0.3〜0.8%、Si:0.2〜0.4%、Fe:0.5〜1.0%、Ni:0.8〜1.3%、Mn:0.4〜0.7%、Zr:0.10〜0.20%、Ti:0.01〜0.10%を含有し、CuとMgの含有比率がCu%/Mg%=1.1〜2.2の範囲であり、残部がAlおよび不純物からなる組成を有し、 シャルピー衝撃値が13J/cm2以上であることを特徴とする耐熱性に優れた高強度・高靭性アルミニウム合金。
- さらにY:0.1〜0.3%を含有することを特徴とする請求項1記載の耐熱性に優れた高強度・高靭性アルミニウム合金。
- 請求項1または請求項2記載の組成を有するアルミニウム合金のビレットを400〜520℃の温度で1〜20h均質化処理した後、300〜530℃の温度で1回以上の熱間加工を行って熱間加工材を作製し、その後、測定された熱間加工材の内部の溶融開始温度より2〜10℃低い温度で0.5〜5h保持する溶体化処理と、測定された熱間加工材の表層部の溶融開始温度より2〜10℃低い温度で0.5〜5h保持する溶体化処理とを連続して行った後、焼入れを行い、150〜200℃の温度で3〜30h保持する人工時効処理を施すことを特徴とする耐熱性に優れた高強度・高靭性アルミニウム合金の製造方法。
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