JP3920656B2 - ホウ素含有高剛性Al合金 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた強度、靭性および耐磨耗性を発揮すると共に、剛性率の向上を図ることのできるAl合金に関するものであり、殊にこれらの特性が要求される自動車部品の素材として有用なB含有Al合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保全や燃費向上という観点から自動車の軽量化が進められており、その一環として自動車用部品の素材に鉄系材料からAl合金材料への移行が行われつつある。しかしながら、一般的なAl合金では、鉄系材料に比べて機械的特性に劣る傾向がある。即ち、自動車用部品には、強度、靭性および耐摩耗性等の機械的特性に優れていることは勿論のこと、軽量化および小型化という観点から高い剛性率(応力/歪比)も要求されるのであるが、通常のAl合金ではこれらの特性が十分ではないという問題がある。
【0003】
こうしたことから、自動車用部品として使用されるAl合金としては、通常Siを比較的多く含有させることによって上記各特性を満足させることが行われている。即ち、Al−Si系合金では、Siを含有させることによって、熱膨張率の低下や剛性率の向上が図れると共に、優れた耐摩耗性が発揮できるといわれている。こうしたAl−Si系Al合金としては、A4032FD(JIS H4140)等の鍛造用Al合金やAC8AおよびAC9B(JIS H5202)等の鋳物用Al合金の他、粉末冶金法によるAl−Si合金等が知られている(例えば、特開平6−158211号)。しかしながら、これらのAl−Si系Al合金では、いずれも下記の様な問題を有しており、自動車用部品の素材として特性的に十分とは言えないのが実状である。
【0004】
上記各Al合金のうち、A4032FDやAC8Aでは、11〜13%程度のSiの含有によって、耐熱性や強度の点では優れたものとなるのであるが、上記程度のSiの含有では耐摩耗性の点で依然として十分ではない。また、上記AC9Bでは、18〜20%程度のSiを含むものであり、優れた耐摩耗性を発揮するものであるが、初晶Si粒子が粗大化することに起因して、切削工具が早期に摩耗して被削性の点で劣り、しかも塑性加工性や靭性が却って劣るという問題がある。
【0005】
こうした問題を解決する為に、例えば特開平6−293933号の様な技術も提案されている。この技術では、合金組成の最適化と共に、合金組織における初晶Siおよび共晶Si並びにSi析出物の粒径や分布を制御することによって、溶解鋳造法によって得られるAl合金の耐磨耗性、被削性および塑性加工性を大幅に改善すると共に、優れた強度、靭性および延性を発揮させるものである。しかしながら、こうしたAl合金を溶解鋳造法で得るには、その製造条件での制約が多く、上記の様な御を安定的に行なうことは困難である。
【0006】
また、上記技術では、初晶Siの粗大化を防止する為にPを含有させたり、共晶Siの微細化を図るためにNa,SbおよびSr等の成長抑制元素を含有させることも示されているが、これらの合金元素は基本的にAl合金の強度劣化を招くものであり、これらの合金成分の含有はAl合金の機械的特性を却って劣化させることになる。更に、上記技術では、Si含有化合物の形態を制御することによってAl合金の特性を発揮させるものであるが、Si含有化合物は高温保持時に再固溶および成長し易く、またその化合物のサイズが変動し易く、安定的に上記特性を発揮させることができないという欠点がある。
【0007】
一方、粉末冶金法によって製造されたAl合金では、固溶限以上の多量のSiを含有できるばかりでなく、Fe,Ni,Mn,Cu,Mg等の合金元素も広い範囲で含有でき、しかも初晶Siを溶解鋳造法に比べて非常に小さくできるので、耐熱強度や耐摩耗性を著しく向上できるという利点を有している。しかしながら、粉末冶金法では原料粉末が高コストであると共に、その製造工程が多いものであるので溶解鋳造法に比べて生産性が低いものとなる。
【0008】
また粉末冶金法を適用した技術として、Siの代わりに窒素化合物を含有させたAl基複合材料も提案されており(例えば、特開平6−57363号)、この複合材料では剛性率の面では優れた特性を発揮するといえるが、粉末冶金法を適用することによるコスト面や生産面での不利は避けられず、しかもマトリックス成分にも焼結助剤を混合しなければならない(Mg,Zn,Al−Cu−Mgなど)という制約があって汎用性が低く、極く限られた用途でしか使用できないという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、低コストで生産性に優れた溶解鋳造法によっても製造することができ、強度、靭性および耐摩耗性等の機械的特性に優れていることは勿論のこと、高い剛性率を発揮すると共に塑性加工性をも向上したAl合金を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成することのできた本発明のホウ素含有Al合金とは、B:1.5超〜20%を含有すると共に、結晶構造がAlB2型であるB含有化合物の平均サイズが200μm以下であり、且つ該化合物のうちサイズが50μm以下のものがAlB2型B含有化合物全体に対する個数割合で50%以上を占めるものであり、AlB2型B含有化合物が、Bを含有する全化合物に対する個数割合で80%以上を占めるものである点に要旨を有するものである。
【0011】
本発明のホウ素含有Al合金においては、基本成分としてBを含有するものであり、他の成分については特に限定されるものではないが、本発明で適用できるAl合金成分系としては下記(a)〜(g)の各種のものが好ましく、いずれもAlB2型B含有化合物の分布状態を適切に制御することによって、各種機械的特性を向上させることができる。
【0012】
(a)Bの他に、Fe:2%以下(0%を含む)および/またはSi:2%以下(0%を含む)を含有し(以下、「1000系組成」と呼ぶ)、残部がAlおよび不可避不純物からなるA1合金。
【0013】
(b)Bの他に、Cu:1.5〜7%を含有し、必要によって、(i)Mg:1.8%以下(0%を含まない),Mn:1.2%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Zn:0.5%以下(0%を含まない)およびTi:0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上や、(ii)Fe:2%以下(0%を含まない)および/またはSi:2%以下(0%を含まない)を含有し(以下、「2000系組成」と呼ぶ)、残部がAlおよび不可避不純物からなるA1合金。
【0014】
(c)Bの他に、Mn:0.3〜2%を含有し、必要によって、(i)Mg:1.8%以下(0%を含まない),Cu:0.6%以下(0%を含まない)Cr:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Zn:0.5%以下(0%を含まない)およびTi:0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上や、(ii)Fe:2%以下(0%を含まない)および/またはSi:2%以下(0%を含まない)を含有し(以下、「3000系組成」と呼ぶ)、残部がAlおよび不可避不純物からなるA1合金。
【0015】
(d)Bの他に、Si:2〜16%を含有し、必要によって、(i)Mg:11%以下(0%を含まない),Cu:5%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%を含まない),Ni:0.6%以下(0%を含まない),Mn:0.6%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Zn:0.5%以下(0%を含まない),Ti:0.3%以下(0%を含まない)およびFe:2%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有し(以下、「4000系組成」と呼ぶ)、残部がAlおよび不可避不純物からなるA1合金。
【0016】
(e)Bの他に、Mg:2〜8%を含有し、必要によって、(i)Cu:0.6%以下(0%を含まない),Mn:1%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Zn:0.5%以下(0%を含まない)およびTi:0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上や、(ii)Fe:2%以下(0%を含まない)および/またはSi:2%以下(0%を含まない)を含有し(以下、「5000系組成」と呼ぶ)、残部がAlおよび不可避不純物からなるA1合金。
【0017】
(f)Bの他に、Mg:0.3〜1.5%およびSi:0.3〜1.5%を含有し、必要によって、(i)Cu:0.6%以下(0%を含まない),Mn:1%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Zn:0.5%以下(0%を含まない),Ti:0.3%以下(0%を含まない)およびFe:2%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有し(以下、「6000系組成」と呼ぶ)、残部がAlおよび不可避不純物からなるA1合金。
【0018】
(g)Bの他に、Mg:1〜4%およびZn:0.8〜8%を含有し、必要によって、(i)Cu:3%以下(0%を含まない),Mn:1%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない)およびTi:0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上や、(ii)Fe:2%以下(0%を含まない)および/またはSi:2%以下(0%を含まない)を含有し(以下、「7000系組成」と呼ぶ)、残部がAlおよび不可避不純物からなるA1合金。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、各種機械的特性を改善したAl合金の実現を目指して、これまでの既成概念に捕われることなく、様々な角度から検討した。その結果、適切な量のBを含有させると共に、結晶構造がAlB2型であるB含有化合物(以下、単に「AlB2型B含有化合物」と呼ぶことがある)の平均サイズや所定サイズのB含有化合物の分布割合を適切に制御してやれば、上記目的が見事に達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0020】
本発明によれば、成分系の制約を受けることなく、剛性率を上げることが可能になるばかりでなく、通常の溶解鋳造法によっても、化合物サイズと形態の制御が容易に行うことができ、これによって強度、靭性および耐摩耗性等の他、被削性および塑性加工性をも向上したAl合金が生産性良く製造できるのである。
【0021】
本発明のAl合金では、上述の如く適切な量のBを含有させると共に、Bを含有する化合物のうち特にAlB2型B含有化合物の平均サイズや所定サイズのB含有化合物の分布割合を適切に制御するものであるが、まずこれらを規定した理由について説明する。
【0022】
B:1.5超〜20%
Bは、B含有化合物(特にAlB2型B含有化合物)を形成することによって、Al合金の剛性率を高めると共に、強度や耐摩耗性を高めるのに有効な元素である。また、こうしたB含有化合物は、高温保持中においてもサイズ変化が認められず、高温保持中の剛性率安定化という効果も発揮する。これらの効果を発揮させるためには、1.5%を超えて含有させる必要がある。しかしながら、B含有量が過剰になって20%を超えると、硬くなり過ぎて被削性や塑性加工性が劣化する。尚、B含有量の好ましい下限は2%程度であり、好ましい上限は19%程度である。
【0023】
AlB 2 型B含有化合物の平均サイズが200μm以下
AlB2型B含有化合物は、非常に硬い化合物であるので、少量の分散でAl合金の強度や剛性率を向上させるのに有効な成分である。例えば、AlB2の硬さはビッカース硬度Hvで1500〜2000程度であり、Si相(Hv870〜1350)に比べて強度や剛性率が高いものとなる。また、このAlB2型B含有化合物は、高温保持中においてもサイズ変化が認められない安定な化合物なので、Al合金の熱膨張率の低下という効果をもたらすことになる。これらの効果によって、Siを多量に含有させずとも、希望する機械的特性が発揮させることができるばかりか、通常の溶解鋳造法においてもB含有化合物の形態制御が可能になる。
【0024】
そして、上記の効果を発揮させるためには、上記B含有化合物の平均サイズが200μm以下である必要がある。即ち、このB含有化合物の平均サイズが200μmを超えると、上記に機械的特性(特に、延性や剛性率)が却って劣化することになる。尚、上記B含有化合物の形態は、塊状、針状あるいは板状等、様々であるが、本発明における「B含有化合物の平均サイズ」とは、板厚方向や板幅方向にかかわらず、その最長の寸法の平均値の意味である。
【0025】
サイズが50μm以下のものが、AlB 2 型B含有化合物全体に対する個数割
合で50%以上
本発明のAl合金において、高い剛性率を確保するためには、AlB2型B含有化合物のサイズ分布は微細分状態であることが必要である。こうした観点から、サイズが50μm以下のAlB2型B含有化合物が、AlB2型B含有化合物全体に対する個数割合で50%以上とする必要がある。即ち、この個数割合が、50%未満になると、B含有化合物が均一に分散しておらず(B含有化合物の希薄なマトリックス領域が増加する)、剛性率向上効果が表われない。
【0026】
本発明では、形態制御の対象とするB含有化合物をAlB2型とするものであるが、その理由は次の通りである。Al合金中のB含有化合物としては、AlB2、AlB12、TiB2、CrB、FeB、B23、B4C等、様々なものが生成することが予想されるが、このうちTiB2、CrB、FeB、B23、B4C等では通常の溶解鋳造法によっては、凝集し易くなって好ましくなく、またAlB12は粗大化合物であり、被削性や塑性加工性を却って劣化させることになる。これに対して、AlB2型B含有化合物であれば上記した要件を満足することによって、他の要因に影響されることなく上記効果が発揮されることになる。
【0027】
本発明における「AlB2型B含有化合物」とは、上記のAlB2は勿論のこと、結晶構造が同じAlB2型であれば、その効果を発揮するので、この化合物にMg,Mn,Si,Cu,Nb,Cr等の成分を所定量含有するものも(例えば、0.01〜30原子%程度)含まれるものである。また、上記効果を発揮させるためには、上記の様なAlB2型B含有化合物は、B含有化合物中の80%以上となる様に制御することが好ましい。
【0028】
本発明のAl合金は、基本的に溶解鋳造法(連続鋳造、半連続鋳造)によって製造することを想定したものであるが、粉末冶金法によって製造することもでき、いずれの方法によっても鋳物、圧延材、押し出し材として有効に利用できるAl合金材料が得られる。但し、溶解鋳造法の方が、製造工程数や製造コストの面で有利であり、またその後の圧延、押し出し加工、熱処理等によってアルミマトリックス合金の組成や固溶状態、析出状態を制御でき、総合的な特性改善という上で好ましい。
【0029】
本発明におけるB含有化合物は、Al合金溶湯にBを添加して生成したものの他、原料粉末の段階で予めB含有化合物の形態にしたものをAl合金溶湯(またはAl溶湯)に添加したものでも良く、その由来に限定されない。また、B含有化合物のサイズは、原料中のB粉末粒子のサイズ、或は予め化合物の形態にした原料粉末のサイズや、最高溶解温度(即ち、B含有化合物の溶解保持温度)や保持時間等(溶解鋳造法の場合)を調整することによって制御することができる。
【0030】
上記最高溶解温度は、B含有化合物を再固溶させて微細化させる上で重要な要件である。この溶解温度の最適な範囲はB含有量によって変わり、一概には規定できないが、一般的にはB含有量が多くなるほど高温(例えば、B含有量が5%の場合に850℃程度)になる傾向がある。但し、原料として使用するB粉末やB含有化合物粉末の粒子径が小さいほど、低温の溶解温度で制御することができる。
【0031】
一方、保持時間に関しては、長時間になるほどB含有化合物が成長し易くなって微細粒子の分散状態を悪化させる傾向があるが、実際の操業に際しては、昇温時間、成分調整、脱ガス等の処理のためにある程度の保持時間が必要になってくる。こうした観点からして、保持時間は30分以内に収めることが好ましい。
【0032】
上記の様な製造条件下において、AlB2型B含有化合物を、Bを含有する化合物中の80%以上となる様に制御するには、原料粉末の段階で予めAlB2型B含有化合物の形態にしたものをAl合金溶湯(またはAl溶湯)に添加する場合にはその段階で調整すれば良いが、Al合金溶湯にBを添加してB含有化合物を生成させる場合には、BがAlに固溶する温度にまで上げ(例えば、1200〜1300℃程度)、その冷却過程で晶出させることで生成させれば良い。
【0033】
本発明のホウ素含有Al合金においては、基本成分としてBを含有するものであり、他の成分については特に限定されるものではないが、本発明で適用できるAl合金成分系としては上記(a)〜(g)に示した各成分系(1000〜7000系の各組成)のものが挙げられる。いずれの成分系においても、Bを含有しない場合に比べて強度や剛性率を10%程度高くすることができる。これらの成分系における各元素の好ましい範囲設定理由は下記の通りである。
【0034】
(a)1000系組成[Bの他にFe:2%以下(0%を含む)および/またはSi:2%以下(0%を含む)を含有]
1000系組成においては、FeやSiはAl合金中でAl−Fe系化合物[例えば、Al13FeやAlmFe(但し、mは正の整数)等]またはAl−Fe−Si系化合物(例えば、α―AlFeSi等)の種々の晶出物や析出物を形成し、結晶粒の微細化を図って強度を高めたり、加工性(圧延、押し出し、引き抜く)を高める作用を発揮する。また、FeやSi含有させることによって、硬度や成形性を高めることができる他、Siの含有によって耐食性をも向上させることができる。但し、FeやSiは、電気伝導性や熱伝導性を高めるという点からすれば、これらの成分の含有量をできるだけ少なくしてAlの純度を高めることが好ましい。これらの観点から、FeやSiは、いずれも2%以下まで含有させることができる。
【0035】
(b)2000系組成(Bの他にCu:1.5〜7%を含有)
2000系組成において、Cuは時効析出することによって、硬化や強度の上昇に寄与する元素である。即ち、Al−Cu系Al合金において、Cuはα→GPゾーン→θ’-CuAl2相→θ-CuAl2相という一連の析出過程において、θ-CuAl2相およびその中間層であるGPゾーンやθ’-CuAl2相を形成し、硬化や強度上昇効果を発揮する。このような作用を有効に発揮させるためいは、Cu含有量は1.5%以上とするのが良い。Cu含有量のより好ましい下限は1.6%程度であり、更に好ましくは1.7%以上とするのが良い。一方、Cu含有量が過剰になって、7%を超えると粗大な析出物を形成して脆くなってしまう。Cu含有量のより好ましい上限は6.9%程度であり、更に好ましくは6.8%以下とするのが良い。
【0036】
この2000系組成においては、必要によって、Mg:1.8%以下(0%を含まない),Mn:1.2%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Zn:0.5%以下(0%を含まない)およびTi:0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有することも有効である。
【0037】
このうち、MgはAl2CuMgやAl16CuMg4等の化合物が時効析出することによって、強度や硬度の上昇に寄与する効果を発揮する。特に、Cu量が少ない範囲では、Mgによる硬化作用が支配的になってくる。しかしながら、Mgの含有量が1.8%を超えると、粗大な化合物が形成されて脆くなる。尚Mgのより好ましい上限は1.7%程度である。
【0038】
また、Mn,Cr,ZrおよびTiは、結晶粒を微細化して強度、延性および靭性等を向上させる元素である。こうした効果は、その含有量が多くなるにつれて大きくなるが、含有量が過剰になって上記の範囲を超えると粗大な化合物が形成されて脆くなってしまう。尚、これらのより好ましい上限は、Mn:1.1%、Cr:0.3%、Zr:0.2%、Ti:0.2%である。
【0039】
更に、Znは強度の向上に寄与するが、その含有量が過剰になって0.5%を超えると、粗大なAl−Zn系か化合物が形成されて脆くなってしまう。尚、Zn含有量のより好ましい上限は0.4%である。
【0040】
この2000系組成には、必要によって、更にFe:2%以下(0%を含まない)および/またはSi:2%以下(0%を含まない)を含有することも有効である。これらを含有することによって、前記1000系組成と同様の効果が得られる。特に、Al合金がMgを含む場合には、Siの含有によって、Mg2Si等の時効析出物を形成し、硬度上昇に寄与することになる。
【0041】
(c)3000系組成(Bの他にMn:0.3〜2%を含有)
3000系組成において、Mnは固溶硬化作用および加工硬化作用を発揮し、強度の上昇に寄与する元素である。こうした作用を発揮させるためには、0.3%以上含有させるのが良く、より好ましくは0.4%以上含有させるのが良い。しかしながら、2%を超えて含有させると粗大な析出物を形成して脆くなってしまう。尚、Mn含有量より好ましい上限は1.9%程度であり、更に好ましくは1.8%以下にするのが良い。
【0042】
この3000系組成においては、必要によって、Mg:1.8%以下(0%を含まない),Cu:0.6%以下(0%を含まない)Cr:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Zn:0.5%(0%を含まない)およびTi:0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有させることも有効である。
【0043】
このうち、Mgは固溶強化して硬化に寄与するのに有効な元素である。こうした効果はその含有量が増加するにつれて大きくなるが、Mg含有量が1.8%を超えると、粗大な化合物が形成されて脆くなる。尚、Mgのより好ましい上限は、1.7%程度である。
【0044】
またCuはAl2CuやAl2CuMg等を形成して硬化に寄与する寄与する元素である。しかしながら、Cu含有量が過剰になって0.6%を超えるとAl2CuMgが粗大になって脆くなる。尚、Cuのより好ましい上限は、0.5%程度である。
【0045】
Cr,ZrおよびTiは、結晶粒を微細化して強度、延性および靭性等を向上させる元素である。こうした効果は、その含有量が多くなるにつれて大きくなるが、含有量が過剰になって上記の範囲を超えると粗大な化合物が形成されて脆くなってしまう。尚、これらのより好ましい上限は、Cr:0.3%、Zr:0.2%、Ti:0.2%である。
【0046】
Znは強度の向上に寄与するが、その含有量が過剰になって0.5%を超えると、粗大なAl−Zn系化合物が形成されて脆くなってしまう。尚、Zn含有量のより好ましい上限は0.4%である。
【0047】
この3000系組成においても、上記2000系組成と同様に、必要によって、更にFe:2%以下(0%を含まない)および/またはSi:2%以下(0%を含まない)を含有することも有効であり、これらを含有することによって、前記2000系組成と同様の効果が得られる。
【0048】
(d)4000系組成(Bの他に、Si:2〜16%を含有)
4000系組成において、Siは初晶Siおよび共晶Siを形成して強度を増大させ、且つ耐食性を向上させるのに有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、2%以上含有させるのが良く、より好ましくは5%以上含有させるのが良い。しかしながら、16%を超えて含有さると初晶Siが80μm近くにまで過大に粗大化し、被削性や塑性加工性、および靭性、延性を阻害することになる。
【0049】
この4000系組成においては、必要によって、Mg:11%以下(0%を含まない),Cu:5%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%を含まない),Ni:0.6%(0%を含まない),Mn:0.6%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Zn:0.5%(0%を含まない),Ti:0.3%以下(0%を含まない)およびFe:2%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有することも有効である。
【0050】
このうちMgは、固溶強化、析出強化に寄与し、強度および硬度を向上させるのに有効な元素である。こうした効果はその含有量が増加するにつれて増大するが、過剰になって11%を超えると耐食性に悪影響が現れると共に、Al合金の鍛造性も劣化する。
【0051】
Cuは、固溶強化によって耐力および硬度を増大させ、時効処理によって耐摩耗性および疲労強度を改善するのに有効な元素である。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大するが、過剰になって5%を超えると鍛造性や耐食性が劣化することになる。尚、上記効果を発揮させるためのCuのより好ましい下限は0,5%である。
【0052】
Niは、析出物を形成し、その含有量の増加に伴って耐熱性および耐焼付き性の改善に有効な元素である。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大するが、過剰になって0.5%を超えると針状粗大析出物を多量が析出し、鍛造性、強度、靭性等が著しく低下することになる。
【0053】
Mnは、Fe析出物やAl−Fe−Si系析出物の形状を球状化且つ微細化して疲労強度を改善するのに有効な元素であるが、0.5%を超えて含有させても鍛造性および靭性を劣化させることになる。
【0054】
Feは、Niと同様に析出物を形成して、その含有量の増加に伴って耐熱強度および耐焼付き性を改善するのに有効な元素である。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大するが、過剰になって2%を超えると、組織の不均一が進行して延性や被削性が損なわれることになる。
【0055】
(e)5000系組成(Bの他に、Mg:2〜8%を含有)
5000系組成においては、Mgは固溶強化作用および加工硬化作用を発揮し、強度を高めるのに有用な元素である。このような効果を発揮させるためには、Mgは2%以上含有させるのが良い。Mg含有量のより好ましい下限は3%であり、更に好ましくは4%以上含有させるのが良い。しかしながら、Mg含有量が過剰になって8%を超えると延性が低下し、耳割れや表面割れ等を生じて圧延等の加工処理が困難になる。Mg含有量のより好ましい上限は7%程度であり、更に好ましくは6%以下とするのが良い。
【0056】
この5000系組成においては、必要によって、Cu:0.6%以下(0%を含まない),Mn:1%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Zn:0.5%(0%を含まない)およびTi:0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有させることも有効であり、これらはいずれもAl合金の機械的特性(強度、延性、靭性、硬度等)の向上に寄与する。
【0057】
このうちCuは、Al2CuMgを形成して硬化に寄与する。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大するが、過剰になって0.6%を超えるとAl2CuMgが粗大になって脆くなる。尚、Cu含有量の好ましい上限は0.5%程度である。
【0058】
またMn,Cr,ZrおよびTiは結晶粒を微細化して、強度や靭性を向上させるのに有効な元素である。これらの効果は、夫々の含有量が増加するにつれて増大するが、過剰になって上記範囲を超えると粗大な化合物が形成されて脆くなる。これらの元素のより好ましい上限は、Mn:0.9%、Cr:0.3%、Zr:0.2%、Ti:0.2%である。
【0059】
更に、Znは強度の向上に寄与する元素であり、その効果は含有量が増加するにつれて増大するが、過剰になって0.5%を超えると、粗大なAl−Zn系化合物が形成されて脆くなる。尚、この5000系組成において、Znのより好ましい上限は0.4%程度である。
【0060】
またこの5000系組成においても、上記2000系組成や3000系組成と同様に、必要によって、更にFe:2%未満(0%を含まない)および/またはSi:2%未満(0%を含まない)を含有することも有効であり、これらを含有することによって、前記2000系組成と同様の効果が得られる。
【0061】
(f)6000系組成(Bの他に、Mg:0.3〜1.5%およびSi:0.3〜1.5%を含有)
6000系組成においては、MgおよびSiはMg2Siを形成して硬化に寄与する。このような効果を発揮させるためには、夫々0.3%以上含有させるのが良く、これより少なくなると強度不足を招くことになる。しかしながら、いずれも1.5%を超えて過剰に含有されると、粗大な化合物が形成されて脆くなる。尚、これらの元素のより好ましい下限は0.4%であり、更に好ましくは0.5%以上とするのが良い。またより好ましい上限は、1.4%であり、更に好ましくは1.3%以下とするのが良い。
【0062】
この6000系組成には、必要によってCu:0.6%以下(0%を含まない),Mn:1%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Zn:0.5%(0%を含まない),Ti:0.3%以下(0%を含まない)およびFe:2%以下よりなる群から選ばれる1種以上を含有することも有効であり、これらを含有させることによって上記5000系組成と同様の効果が発揮される。
【0063】
(g)7000系組成(Bの他に、Mg:1〜4%およびZn:0.8〜8%を含有)
7000系組成において、MgおよびZnは、Mg3Zn3Al2やMgZn2若しくはこの準安定相であるη’層などの化合物を形成することによって硬化に寄与すると共に、強度向上作用を発揮するのに有効な元素である。即ち、これらの元素は、所定の熱処理(後記実施例参照)を施すと時効析出し、これによって450MPa以上の引張り強度が得られることになる。
【0064】
こうした効果を発揮させるためには、Mgで1%以上、Znで0.8%以上含有させることが好ましい。より好ましい下限はMgで1.1%、Znで0.9%であり、更に好ましくはMgで1.2%以上、Znで1.0%以上とするのが良い。しかしながら、これらの元素が過剰になってMgで4%、Znで8%を超えると、粗大なAl−Zn系化合物が形成されて脆くなるばかりか、耐応力腐食割れ性も低下することになる。より好ましい上限は、Mgで3.9%、Znで7.9%、更に好ましくはMgで3.8%以下、Znで7.8%以下とするのが良い。
【0065】
この7000系組成においては、Cu:3%以下(0%を含まない),Mn:1%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない)およびTi:0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有させることも有効である。
【0066】
このうちCuは、Al2CuMg2やAl2Cu等の化合物を形成して硬化に寄与する。Cu含有量が3%以下であると、これらの化合物は固溶しているが、3%を超えると、時効硬化熱処理を行った際に高温での過飽和度が大きくなって,粗大な化合物が形成し易くなる。こうした観点から、Cuを含有させるときには3%以下とするのが良く、より好ましいは2.9%以下とするのが良い。
【0067】
一方、Mn,Cr,ZrおよびTiは、上記5000系組成の場合と同様に、結晶粒の微細化を達成して強度、靭性、延性等を向上させるのに有効な元素である。またMn,Cr,ZrおよびTiは結晶粒を微細化して、強度や靭性を向上させるのに有効な元素である。これらの効果は、夫々の含有量が増加するにつれた増大するが、過剰になって上記範囲を超えると粗大な化合物が形成されて脆くなる。これらの元素のより好ましい上限は、Mn:0.9%、Cr:0.3%、Zr:0.2%、Ti:0.2%である。
【0068】
またこの7000系組成においても、上記2000系、3000系、5000系の各組成と同様に、必要によって、更にFe:2%以下(0%を含まない)および/またはSi:2%以下(0%を含まない)を含有することも有効であり、これらを含有することによって、前記2000系組成と同様の効果が得られる。
【0069】
本発明の各系のAl合金においては、上記成分の他は実質的にAlからなるものである。ここで、「実質的にAlからなる」とは、Al以外にも微量成分を含み得ることを意味し、こうした成分を含むものも本発明の技術的範囲に含まれるものである。こうした微量成分としては、P,Na,Sb,Sr,Ni等の許容成分や、V,Be,Ga,Sn,Ca,Sr,Co等の不可避不純物が挙げられる。
【0070】
以下、実施例によって本発明の作用・効果をより具体的に示すが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0071】
【実施例】
下記表1、2に示す各化学成分組成のAl合金鋳塊を真空・溶解鋳造法によって作製した。このときAlB2型B含有化合物のサイズ分布の影響を確認するために、下記表3に示す粒子径のB含有原料を用いると共に、最高溶解温度および保持時間を調整し、AlB2型B含有化合物のサイズを制御した。このとき、133.3Pa以下のAr雰囲気下で溶解し、真空中、インゴットケースで鋳造してインゴットとした。また、鋳造後の詳細な製造条件は、各合金系に応じて下記の様に変えて行った。
【0072】
各Al合金の鋳造後の詳細な製造条件
(1)No.1〜14(1000系組成)
上記インゴットを表面面削してから均熱処理(540℃)し、更に熱間圧延を開始温度540℃で行ない、厚さ:10mmの板材を製造した。
(2)No.15〜18(2000系組成)
上記インゴットを表面面削してから均熱処理(490℃、24時間)し、更に熱間圧延を開始温度450℃で行ない、厚さ:10mmの板材を製造した。その後、T6処理(500℃で1時間の溶体化処理および180℃で10時間の時効処理)を施した。
(3)No.19〜22(3000系組成)
上記インゴットを表面面削してから均熱処理(570℃、10時間)し、更に熱間圧延を開始温度570℃で行ない、厚さ:10mmの板材を製造した。その後、焼鈍処理(200℃で1時間)を施した。
(4)No.23〜26(4000系組成)
鋳造して押し出し用ビレットを作製し、420℃で1時間加熱し、外径:60mmの丸棒に押し出した後、480℃で1時間加熱後、水冷して焼き入れした。その後、更に170〜180℃にて6時間の焼戻しを行なった。
(5)No.27〜30(5000系組成)
上記インゴットを表面面削してから均熱処理(490℃、24時間)し、更に熱間圧延を開始温度500℃で行ない、厚さ:10mmの板材を製造した。その後、T4処理(530℃で1時間の溶体化処理および150℃で2時間の安定化処理)を施した。
(6)No.31〜34(6000系組成)
上記インゴットを表面面削してから均熱処理(550℃、8時間)し、更に熱間圧延を開始温度500℃で行ない、厚さ:10mmの板材を製造した。その後、T6処理(530℃で1時間の溶体化処理および180℃で24時間の時効処理)を施した。
(7)No.35〜38(7000系組成)
上記インゴットを表面面削してから均熱処理(480℃、24時間)し、更に熱間圧延を開始温度480℃で行ない、厚さ:10mmの板材を製造した。その後、T6処理(480℃で1時間の溶体化処理および180℃で24時間の時効処理)を施した。
【0073】
【表1】
Figure 0003920656
【0074】
【表2】
Figure 0003920656
【0075】
【表3】
Figure 0003920656
【0076】
得られたAl基合金板材について、下記の項目について調査した。
【0077】
[B含有化合物の評価方法]
(試料調整)
上記により得られたアルミニウム合金板をエミリー紙で約0.05〜0.1mmまで研磨した後、3μmおよび1μm粗さのバフ研磨を行った。ここで、バフ研磨液にはOPU(ストルアス社製)を用いた。この様にして調製した板試料を用いて、下記の化合物分散状態の観察およびAl合金の特性評価を行った。
【0078】
(B含有化合物の形態の確認)
X線回折法によって化合物の形態(AlB2型)の存在を確認した。
【0079】
(金属間化合物の分散度)
電界放出型走査電子顕微鏡(「S4500型FE−SEM」:日立製作所製)を用いて、1000倍で、約100μm×100μm程度の視野で観察した。このとき、反射電子による観察を行うと、各金属間化合物が明瞭に観察できるので好ましく、これによって約0.05μmレベル以上の金属間化合物の存在状態を観察することができる。
【0080】
(B含有化合物の同定)
上記電界放出型走査電子顕微鏡に付随のSEM−EDX(「EMAX−7000型EDX」:HORIBA製作所製)を用いて、化合物中のBの存在を確認した。
【0081】
(B含有化合物のサイズ、分布、個数割合の解析)
上記の様にして観察されたB含有化合物分布の画像を用いて、画像解析にて評価した。このときの画像解析のソフトウェアには「Image−Pro Plus」(MEDIA CYBERNETICS社製)を用いた。そのサイズは、数0.01μmレベルから数μmまで様々であるが、本発明によって制御した合金の特徴を定量的に規定できる範囲として、最小平均サイズが0.05μm以上の化合物を対象に解析を行った。従って、本発明で規定するB含有化合物の分散度は、上記電界放出型走査電子顕微鏡で観察できるサイズ以上の化合物を対象とするものである。
【0082】
(強度、伸び、剛性率の測定)
最終的に加工した板または押し出し材から、引張り試験片(JIS13号試験片)を切り出し、引張り試験(JIS Z 2241)を行なうことにより、室温強度、および伸びを測定した。また、引張り試験から、弾性係数(剛性率)を測定した。
【0083】
(線膨張係数の測定)
圧縮荷重試験法によって、室温、50〜300℃(50℃間隔)で測定し、線膨張係数を評価した。
【0084】
(耐摩耗性の評価方法)
大越式回転円盤による試験によって評価した。この試験は、回転する円盤(相手材)の側面で所定の荷重Pを負荷しつつ試験片表面を摩擦し、その比摩耗量で耐摩耗性を評価するものである。このときの条件は、下記の通りである。
相手材:鋳鉄
荷重P:2.1kg
摩擦速度V:0.1m/s
【0085】
このようにして得られた結果を下記表4、5に一括して示すが、この結果から明らかなように、本発明で規定する要件を満足するホウ素含有Al合金(No.1〜4,12,13,15,16,19,20,23,24,27,28,31,32,35,36)は、いずれも各種機械的特性が改善されていることが分かる。これに対して本発明で規定する要件のいずれかを欠くAl合金(No.5〜11,14,17,18,21,22,25,26,29,30,33,34,37,38)では、いずれかの特性が改善されていないことが分かる。
【0086】
【表4】
Figure 0003920656
【0087】
【表5】
Figure 0003920656
【0088】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、各種機械的特性が著しく改善された高剛性Al合金が実現でき、こうした高剛性Al合金は、従来の鉄系材料に代わって、自動車のエンジン部品や各種摺動部品として適用でき、軽量化と性能向上に極めて有用である。しかも、本発明のAl合金は、原料が安価で生産性に優れた溶解鋳造法によっても製造できるので、粉末冶金法によって得られたAl合金に比べて極めて低コストで製造することができるという利点もある。

Claims (18)

  1. B:1.5超〜20%(質量%の意味、以下同じ)を含有すると共に、結晶構造がAlB2型であるB含有化合物の平均サイズが200μm以下であり、且つ該化合物のうちサイズが50μm以下のものがAlB2型B含有化合物全体に対する個数割合で50%以上を占めるものであり、AlB2型B含有化合物が、Bを含有する全化合物に対する個数割合で80%以上を占めるものであることを特徴とするホウ素含有高剛性Al合金。
  2. Fe:2%以下(0%を含む)および/またはSi:2%以下(0%を含む)を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるものである請求項1に記載のホウ素含有高剛性A1合金。
  3. Cu:1.5〜7%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるものである請求項に記載のホウ素含有高剛性A1合金。
  4. 更に、Mg:1.8%以下(0%を含まない),Mn:1.2%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Zn:0.5%以下(0%を含まない)およびTi:0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有するものである請求項3に記載のホウ素含有高剛性Al合金。
  5. 更に、Fe:2%以下(0%を含まない)および/またはSi:2%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項3または4に記載のホウ素含有高剛性Al合金。
  6. Mn:0.3〜2%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるものである請求項1に記載のホウ素含有高剛性A1合金。
  7. 更に、Mg:1.8%以下(0%を含まない),Cu:0.6%以下(0%を含まない)Cr:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Zn:0.5%以下(0%を含まない)およびTi:0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有するものである請求項6に記載のホウ素含有高剛性Al合金。
  8. 更に、Fe:2%以下(0%を含まない)および/またはSi:2%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項6または7に記載のホウ素含有高剛性Al合金。
  9. Si:2〜16%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるものである請求項1に記載のホウ素含有高剛性A1合金。
  10. 更に、Mg:11%以下(0%を含まない),Cu:5%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%を含まない),Ni:0.6%以下(0%を含まない),Mn:0.6%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Zn:0.5%以下(0%を含まない),Ti:0.3%以下(0%を含まない)およびFe:2%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有するものである請求項9に記載のホウ素含有高剛性Al合金。
  11. Mg:2〜8%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるものである請求項1に記載のホウ素含有高剛性A1合金。
  12. 更に、Cu:0.6%以下(0%を含まない),Mn:1%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Zn:0.5%以下(0%を含まない)およびTi:0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有するものである請求項11に記載のホウ素含有高剛性Al合金。
  13. 更に、Fe:2%以下(0%を含まない)および/またはSi:2%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項11または12に記載のホウ素含有高剛性Al合金。
  14. Mg:0.3〜1.5%およびSi:0.3〜1.5%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるものである請求項1に記載のホウ素含有高剛性A1合金。
  15. 更に、Cu:0.6%以下(0%を含まない),Mn:1%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない),Zn:0.5%以下(0%を含まない),Ti:0.3%以下(0%を含まない)およびFe:2%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有するものである請求項14に記載のホウ素含有高剛性Al合金。
  16. Mg:1〜4%およびZn:0.8〜8%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるものである請求項1に記載のホウ素含有高剛性A1合金。
  17. 更に、Cu:3%以下(0%を含まない),Mn:1%以下(0%を含まない),Cr:0.4%以下(0%を含まない),Zr:0.3%以下(0%を含まない)およびTi:0.3%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有するものである請求項16に記載のホウ素含有高剛性Al合金。
  18. 更に、Fe:2%以下(0%を含まない)および/またはSi:2%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項16または17に記載のホウ素含有高剛性Al合金。
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