JP2008107710A - 熱欠陥発生が少なくかつ表面状態の良好な液晶表示装置用配線および電極並びにそれらを形成するためのスパッタリングターゲット - Google Patents

熱欠陥発生が少なくかつ表面状態の良好な液晶表示装置用配線および電極並びにそれらを形成するためのスパッタリングターゲット Download PDF

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守斌 張
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Abstract

【課題】ヒロックおよびボイドなどの熱欠陥の発生がなくかつ表面状態の良好な銅合金薄膜からなる液晶表示装置用配線および電極、並びにそれらを形成するためのスパッタリングターゲットを提供する。
【解決手段】希土類元素(Y、La、Ce):0.01〜3原子%を含有し、さらにAg:0.01〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜からなる熱欠陥発生が少なくかつ表面状態の良好な液晶表示装置用配線および電極、並びにこれらを形成するためのスパッタリングターゲット。
【選択図】なし

Description

この発明は、ヒロックおよびボイドなどの熱欠陥の発生がなくかつ表面状態の良好な銅合金薄膜からなる液晶表示装置用配線および電極、並びにそれらを形成するためのスパッタリングターゲットに関するものである。
一般に、フラットパネルディスプレイなどの液晶表示装置にはガラス基板表面に格子状に金属薄膜からなる配線が密着して形成されており、この金属薄膜からなる格子状配線の交差点にTFTトランジスターが設けられており、このTFTトランジスターのゲート電極にも金属薄膜で形成されている。これらガラス基板表面に形成された金属薄膜からなる配線および電極は液晶表示装置の製造工程においてアモルファスシリコンや窒化珪素等をPECVDで成膜する工程で熱履歴を受ける。前記配線および電極が純銅薄膜で構成されていると、熱履歴を受ける処理工程で液晶表示装置の配線および電極は高温に曝されてヒロックおよびボイドなどの熱欠陥が発生する。これを解決するために、近年、液晶表示装置の配線および電極に銅合金薄膜が使用されるようになり、この銅合金薄膜の一つとして希土類元素:0.1〜10原子%を含有し、残部がCuからなる銅合金薄膜が使用されている(特許文献1参照)。
特開2006−77295号公報
前記希土類元素:0.1〜10原子%を含有し、残部がCuからなる銅合金薄膜は、確かに液晶表示装置製造中の熱履歴を受ける処理工程で高温に曝されてもヒロックおよびボイドなどの熱欠陥発生が阻止される。しかし、希土類元素:3原子%以下含む銅合金薄膜は熱履歴を受ける処理工程を通過する間に前記熱欠陥発生防止効果が十分でなく、さらに銅合金薄膜の表面が荒れるという欠点があった。そのために、銅合金薄膜に含まれる希土類元素は3原子%を越えて含有させる必要があるが、希土類元素を3原子%を越えて含有させた銅合金薄膜は比抵抗が上昇し、特に30インチ以上の大型液晶パネルではガラス基板表面に形成されている配線が長くかつ益々細くなっていることから大型液晶パネル全体の配線の電気抵抗が増加するようになるので好ましくない。
そこで、本発明者等は、比抵抗が低く、さらに高温に曝されてもヒロックおよびボイドなどの熱欠陥の発生が極めて少なくかつ表面状態の良好な銅合金薄膜を開発し、これを液晶表示装置における配線および電極に適用すべく研究を行った。その結果、
(イ)純銅(特に純度:99.99%以上の無酸素銅)に、希土類元素を0.01〜3原子%を含有し、さらにAgを0.01〜4原子%を含有した成分組成を有する銅合金薄膜は、従来の希土類元素:3原子%以下含有し、残部がCuからなる銅合金薄膜に比べて、比抵抗が低く、高温に曝されてもヒロックおよびボイドの熱欠陥が発生することが一層少なくかつ表面荒れの少ないことから、かかる成分組成を有する銅合金薄膜は液晶表示装置用配線および電極として使用した場合に優れた効果を奏する、
(ロ)前記希土類元素のうちでもY、La、Ceが一層好ましい、
(ハ)前記銅合金薄膜は、前記銅合金薄膜と同じ成分組成を有するターゲットを用いてスパッタリングすることにより形成することができる、という研究結果が得られたのである。
この発明は、かかる研究結果に基づいてなされたものであって、
(1)希土類元素:0.01〜3原子%を含有し、さらにAg:0.01〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜からなる熱欠陥発生がなくかつ表面状態の良好な液晶表示装置用配線、
(2)前記希土類元素は、Y、La、Ceのうちの1種または2種以上の合計である前記(1)記載の熱欠陥発生がなくかつ表面状態の良好な液晶表示装置用配線、
(3)希土類元素:0.01〜3原子%を含有し、さらにAg:0.01〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜からなる熱欠陥発生がなくかつ表面状態の良好な液晶表示装置用電極、
(4)前記希土類元素は、Y、La、Ceのうちの1種または2種以上の合計である前記(3)記載の熱欠陥発生がなくかつ表面状態の良好な液晶表示装置用電極、
(5)希土類元素:0.01〜3原子%を含有し、さらにAg:0.01〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する熱欠陥発生がなくかつ表面状態の良好な液晶表示装置用配線または電極を形成するためのスパッタリングターゲット、
(6)前記希土類元素は、Y、La、Ceのうちの1種または2種以上の合計である前記(5)記載の熱欠陥発生がなくかつ表面状態の良好な液晶表示装置用配線または電極を形成するためのスパッタリングターゲット、に特徴を有するものである。
この発明の液晶表示装置の配線および電極を構成する銅合金薄膜は、ターゲットを用いてスパッタリングすることにより作製する。このターゲットは、まず純度:99.99%以上の無酸素銅を、不活性ガス雰囲気中、高純度グラファイトモールド内で高周波溶解し、得られた溶湯に希土類元素を0.01〜3原子%を添加し、さらにAgを0.01〜4原子%を添加して溶解し、得られた溶湯を不活性ガス雰囲気中で鋳造し急冷凝固させたのち、さらに冷間圧延と焼鈍を繰り返し、最後に歪取り焼鈍を施すことにより作製する。このようにして得られたターゲットをバッキングプレートに接合し、通常の条件でスパッタリングすることによりこの発明の液晶表示装置における配線および電極用銅合金薄膜を形成することができる。
次に、この発明の液晶表示装置における配線および電極を構成する銅合金薄膜およびターゲットの成分組成の限定理由を説明する。
希土類元素:
希土類元素はヒロックおよびボイドなどの熱欠陥の発生を抑制する作用を有するが、その含有量が0.01原子%未満では十分な熱欠陥発生防止効果が得られないので好ましくなく、一方、3原子%を越えて含むと、比抵抗が上昇し過ぎるようになるので好ましくない。したがって、希土類元素含有量を0.01〜3原子%に定めた。前記希土類元素のうちでもY、La、Ceが一層好ましい。
Ag:
Agは希土類元素と共に添加することにより比抵抗の上昇を抑制すると共に希土類元素のヒロックおよびボイドなどの熱欠陥発生防止効果を一層強化しかつ表面状態が荒れるのを抑制する効果があるが、その含有量が0.01原子%未満では十分な比抵抗上昇阻止効果および熱欠陥発生防止効果を強化することができずさらに表面荒れを防止することができない。一方、Agを4原子%を越えて含有するとかえって比抵抗が上昇するのみでなく、銅合金薄膜の表面荒れが大きくなるので好ましくない。したがって、Agの含有量を0.01〜4原子%に定めた。
この発明の液晶表示装置における配線および電極は、高温に曝されてもヒロックおよびボイドなどの熱欠陥の発生がなくまた表面荒れを抑制し、さらに電気抵抗が低いことから高精細化し大型化した液晶表示装置の配線および電極に使用しても消費電力を少なくすることができるなど優れた効果を奏するものである。
純度:99.99質量%の無酸素銅を用意し、この無酸素銅をArガス雰囲気中、高純度グラファイトモールド内で高周波溶解し、得られた溶湯に希土類元素(Y、La、Ce)およびAgを添加し溶解して表1に示される成分組成を有する溶湯となるように成分調整し、得られた溶湯を冷却されたカーボン鋳型に鋳造し、さらに冷間圧延と焼鈍を繰り返したのち最終的に歪取り焼鈍し、得られた圧延体の表面を旋盤加工して外径:200mm×厚さ:10mmの寸法を有し、表1に示される成分組成を有する本発明銅合金スパッタリングターゲット(以下、本発明ターゲットという)1〜20、比較銅合金スパッタリングターゲット(以下、比較ターゲットという)1〜6および従来スパッタリングターゲット(以下、従来ターゲットという)1〜2を作製した。
さらに、無酸素銅製バッキングプレートを用意し、この無酸素銅製バッキングプレートに前記本発明ターゲット1〜20、比較ターゲット1〜6および従来ターゲット1〜2を重ね合わせ、温度:200℃でインジウムはんだ付けすることにより本発明ターゲット1〜20、比較ターゲット1〜6および従来ターゲット1〜2を無酸素銅製バッキングプレートに接合してバッキングプレート付きターゲットを作製した。
本発明ターゲット1〜20、比較ターゲット1〜6および従来ターゲット1〜2を無酸素銅製バッキングプレートにはんだ付けして得られたバッキングプレート付きターゲットを、ターゲットとガラス基板(縦:50mm、横:50mm、厚さ:0.7mmの寸法を有するコーニング社製1737のガラス基板)との距離:70mmとなるようにセットし、
電源:直流方式、
スパッタパワー:600W、
到達真空度:5×10−5Pa、
雰囲気ガス組成:Ar、
Arガス圧:0.67Pa、
ガラス基板:150℃、
の条件でガラス基板の表面に、厚さ:300nmを有し、表2に示される成分組成を有する本発明銅合金配線用薄膜(以下、本発明配線用薄膜という)1〜20および比較銅合金配線用薄膜(以下、比較配線用薄膜という)1〜6および従来銅合金配線用薄膜(以下、従来配線用薄膜という)1〜2を形成した。
得られた本発明配線用薄膜1〜20、比較配線用薄膜1〜6および従来配線用薄膜1〜2をそれぞれ赤外線加熱炉に装入し、到達真空度:4×10−4Paの真空雰囲気中、昇温速度:5℃/min、最高温度:350℃、30分間保持の熱処理を施した。これら熱処理を施した本発明配線用薄膜1〜20、比較配線用薄膜1〜6および従来配線用薄膜1〜2の表面を5000倍のSEMで5個所の膜表面を観察し、発生したヒロックおよびボイドの個数を測定し、その結果を表2〜3に示した。
さらに、得られた本発明配線用薄膜1〜20、比較配線用薄膜1〜6および従来配線用薄膜1〜2における5点の比抵抗を四探針法により測定し、その平均値を求め、それらの結果を表2〜3に示した。
さらに、AFM(原子間力顕微鏡)で表面粗さを測定し、その結果を表2に示し、熱処理による膜の表面荒れを評価した。
Figure 2008107710
Figure 2008107710

Figure 2008107710
表1〜3に示される結果から以下の事項が分かる。
(i)希土類元素を単独で含む従来配線用薄膜1〜2に比べて希土類元素およびAgを共に含む本発明配線用薄膜1〜20はヒロックおよびボイドの発生が一層少なく、さらに比抵抗が一層小さく、さらに熱処理によって表面状態の荒れが少ないことがわかる。
(ii)しかし、この発明の条件から外れて少ないAgを含む比較配線用薄膜1、3、5はヒロックおよびボイドの発生を阻止する効果が弱く、一方、Agをこの発明の条件から外れて多く含む比較配線用薄膜2、4、6は比抵抗が大きくなり過ぎて好ましくないことが分かる。

Claims (7)

  1. 希土類元素:0.01〜3原子%を含有し、さらにAg:0.01〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜からなることを特徴とする熱欠陥発生がなくかつ表面状態の良好な液晶表示装置用配線。
  2. 前記希土類元素は、Y、La、Ceのうちの1種または2種以上の合計であることを特徴とする請求項1記載の熱欠陥発生がなくかつ表面状態の良好な液晶表示装置用配線。
  3. 希土類元素:0.01〜3原子%を含有し、さらにAg:0.01〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜からなることを特徴とする熱欠陥発生がなくかつ表面状態の良好な液晶表示装置用電極。
  4. 前記希土類元素は、Y、La、Ceのうちの1種または2種以上の合計であることを特徴とする請求項3記載の熱欠陥発生がなくかつ表面状態の良好な液晶表示装置用電極。
  5. 希土類元素:0.01〜3原子%を含有し、さらにAg:0.01〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有することを特徴とする熱欠陥発生がなくかつ表面状態の良好な液晶表示装置用配線または電極を形成するためのスパッタリングターゲット。
  6. 前記希土類元素は、Y、La、Ceのうちの1種または2種以上の合計であることを特徴とする請求項5記載の熱欠陥発生がなくかつ表面状態の良好な液晶表示装置用配線または電極を形成するためのスパッタリングターゲット。
  7. 請求項1または2記載の配線および請求項3または4記載の電極を形成した液晶表示装置。
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