しかしながら、上記従来の構成、すなわち、信号評価値としてSNRを用いる構成では、ホログラムメモリシステムの信号品質を定量的に評価することができないという問題があった。
具体的には、上記の定義によって表されるSNRは、信号とノイズの比であり、信号がどれだけ鮮明であるかを定性的に判断する尺度にはなるが、ホログラムメモリ再生システムの信号品質を定量的に評価する指標ではない。また、SNRは、信号品質についての定量的な評価値として用いられるエラーレートと1対1には対応していない。そのため、SNRは、信号品質について定量的な評価が必要とされる用途、例えば出荷前製品の合否判定や各種調整のための評価値としては用いることができない。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ホログラムメモリ再生システムなどによって再生される2次元再生信号の品質を定量的に評価できる信号評価装置、信号評価方法、信号評価プログラム、およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体を実現することにある。
本発明に係る信号評価装置は、上記課題を解決するために、第1の論理値に対応する第1再生信号と、第1の論理値とは異なる値の第2の論理値に対応し、信号レベルの平均が前記第1再生信号よりも小さい第2再生信号とから成る2次元再生信号を、前記第1再生信号と前記第2再生信号とに区分する再生信号区分手段と、前記第1再生信号の信号レベルの度数分布を特定する第1統計値と、前記第2再生信号の信号レベルの度数分布を特定する第2統計値との少なくとも1つを算出する統計値算出手段と、前記第1統計値と前記第2統計値との少なくとも1つを用いて前記2次元再生信号の品質評価値を算出する品質評価値算出手段とを備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、再生信号区分手段は、2次元再生信号を、第1の論理値に対応する第1再生信号と、第2の論理値に対応する第2再生信号に区分する。2次元再生信号は、例えば、ホログラムメモリなどに記録されているページデータについて、複数の画素からなる受光素子などを介して生成される信号であり、ページデータを構成する「1」、「0」のビット値に対応する信号である。すなわち、2次元再生信号は、「1」に対応する信号と「0」に対応する信号とからなる。
また、第1の論理値に対応する第1再生信号は、第2の論理値に対応する第2再生信号よりも、信号の大きさ(信号レベル)の平均が大きく、再生される場合には、信号レベルに応じて、第1の論理値または第2の論理値に復号される。
さらに、上記の構成によれば、統計値算出手段は、前記再生信号区分手段によって区分された第1再生信号および第2再生信号について、第1再生信号の信号レベルの度数分布を特定する第1統計値と第2再生信号の信号レベルの度数分布を特定する第2統計値との両方、または、いずれか一方を算出する。ここで、度数分布を特定する統計値として、平均や標準偏差が代表的であるが、平均の代わりに最頻値を、標準偏差の代わりに分散を用いることなどもでき、度数分布を特定できる値であればよく、特に限定はされない。
そして、上記の構成によれば、前記統計値算出手段によって算出された第1統計値と第2統計値との両方、または、いずれか一方を用いて、2次元再生信号の品質を表す品質評価値を算出する。品質評価値としては、例えば、第1再生信号のエラーレート、第2再生信号のエラーレート、第1再生信号と第2再生信号の両方のエラーレートをもとに算出される総エラーレートのほか、エラーレートと相関のある値などがある。
これにより、2次元再生信号の品質評価値によって再生信号の品質を定量的に評価することができるようになる。したがって、2次元再生信号の記録再生に用いられる記録媒体や記録装置や再生装置などの性能を定量的に評価できるようになり、出荷前の製品の合否判定や各種調整を適切に行うことができるようになる。
本発明に係る信号評価方法は、上記課題を解決するために、第1の論理値に対応する第1再生信号と、第1の論理値とは異なる値の第2の論理値に対応し、信号レベルの平均が前記第1再生信号よりも小さい第2再生信号とから成る2次元再生信号を、前記第1再生信号と前記第2再生信号とに区分する再生信号区分ステップと、前記第1再生信号の信号レベルの度数分布を特定する第1統計値と、前記第2再生信号の信号レベルの度数分布を特定する第2統計値との少なくとも1つを算出する統計値算出ステップと、前記第1統計値と前記第2統計値との少なくとも1つを用いて、前記2次元再生信号の品質評価値を算出する品質評価値算出ステップとを含んでいることを特徴としている。
上記の構成によれば、本発明に係る信号評価装置と同様の作用効果を奏する。
また、本発明に係る信号評価装置では、前記品質評価値算出手段は、前記信号評価値として第1再生信号のエラーレートBER1を算出することが好ましい。
上記の構成によれば、前記品質評価値算出手段は、前記品質評価値として第1再生信号のエラーレートBER1を算出する。
これにより、第1再生信号のエラーレートのみを算出して2次元再生信号の品質を評価できる。したがって、信号評価装置の構成を簡素にでき、コストを低減できる。
また、本発明に係る信号評価装置では、前記品質評価値算出手段は、前記信号評価値として第2再生信号のエラーレートBER2を算出することが好ましい。
上記の構成によれば、前記品質評価値算出手段は、前記品質評価値として第2再生信号のエラーレートBER2を算出する。
これにより、第2再生信号のエラーレートのみを算出して2次元再生信号の品質を評価できる。したがって、信号評価装置の構成を簡素にでき、コストを低減できる。
また、本発明に係る信号評価装置では、前記品質評価値算出手段は、前記第1統計値から前記第1再生信号のエラーレートBER1を算出し、前記第2統計値から前記第2再生信号のエラーレートBER2を算出し、前記第1再生信号の信号レベルの総度数と前記第2再生信号の信号レベルの総度数との比がn1:n2であるとき、前記品質評価値として総エラーレートBERを、
によって算出することが好ましい。
上記の構成よれば、前記品質評価値算出手段は、前記第1統計値から第1再生信号のエラーレートBER1を算出する。また、前記品質評価値算出手段は、前記第2統計値から第2再生信号のエラーレートBER2を算出する。さらに、前記品質評価値算出手段は、算出したエラーレートBER1とBER2とを用いて、上記の演算によって2次元信号の品質評価値としての総エラーレートBERを算出する。
これにより、第1再生信号のエラーレートBER1と第2再生信号のエラーレートBER2との両方のエラーレートをもとに、2次元再生信号の品質評価値としての総エラーレートBERを算出できる。しかも、総エラーレートは、第1再生信号、第2再生信号の各信号レベルの度数の割合に応じた値となるため、高精度の品質評価値を算出できる。したがって、2次元再生信号の品質を正確に評価できるようになる。
また、本発明に係る信号評価装置では、前記品質評価値算出手段は、基準値Thを取得し、前記第1再生信号について前記基準値Th以下である信号レベルの累積相対度数を前記エラーレートBER1として算出し、前記第2再生信号について前記基準値Th以上である信号レベルの累積相対度数を前記エラーレートBER2として算出することが好ましい。
上記の構成によれば、品質評価値算出手段は、基準値Thを取得し、前記第1再生信号について、基準値Th以下の信号レベルの累積相対度数をエラーレートBER1として算出し、前記第2再生信号について、基準値Th以上の信号レベルの累積相対度数をエラーレートBER2として算出する。
これにより、第1再生信号、第2再生信号について基準値Thを基準として累積相対度数を算出することによって、2次元再生信号の品質を評価できるようになる。
なお、基準値Thについてより詳細に説明すれば次のとおりである。ここでは、第1再生信号が「1」に対応し、第2再生信号が「0」に対応している場合を例として説明する。この場合、第1再生信号と第2再生信号とは、それぞれ、「1」、「0」に対応する2種類の信号レベルとなるが、各再生信号の信号レベルはある程度の誤差範囲を有する。また、上記のとおり、第2再生信号の信号レベルの平均は、第1再生信号の信号レベルの平均よりも小さい。すなわち、通常、第1再生信号は第2再生信号よりも大きい信号である。
しかしながら、ノイズなどの影響によって2次元再生信号の品質が悪化し、第1再生信号であるのに、第2再生信号よりも小さい信号レベルを示す場合がある。この場合、本来「1」に対応する第1再生信号であるのに、誤って第2再生信号と認識され「0」として復号されてしまうことになる。このようなエラーとなる信号の境界値としての信号レベルが基準値Thとなる。
つまり、第1再生信号のうち信号レベルが基準値Th以下の信号と、第2再生信号のうち信号レベルが基準値Th以上の信号については、復号する場合にエラーが生じる。したがって、第1再生信号ついて基準値Th以下である信号レベルの累積相対度数は第1再生信号におけるエラーとなる信号の割合を表しており、第2再生信号について基準値Th以上である信号レベルの累積相対度数は第2再生信号におけるエラーとなる信号の割合を表していることになる。
なお、基準値Thは、入力される基準値Thを取得する構成や、予め定められてメモリ等に記憶されている基準値Thを取得する構成や、あるいは、再生信号に応じて決定される基準値Thを取得する構成であってもよく、特に限定はされない。
また、本発明に係る信号評価装置では、前記統計値算出手段は、前記第1統計値として前記第1再生信号の信号レベルの標準偏差σ1および平均μ1を算出し、前記第2統計値として前記第2再生信号の信号レベルの標準偏差σ2および平均μ2を算出し、前記品質評価値算出手段は、下記の関数φ(z)を用いて、前記エラーレートBER1としての累積相対度数を、
によって算出し、前記エラーレートBER2としての累積相対度数を、
によって算出することが好ましい。
上記の構成によれば、前記統計値算出手段は、前記第1統計値として前記第1再生信号の信号レベルの標準偏差σ1および平均μ1を算出する。また、前記統計値算出手段は、前記第2統計値として前記第2再生信号の信号レベルの標準偏差σ2および平均μ2算出する。また、上記の構成によれば、前記品質評価値算出手段は、上記の関数φ(z)を用いて、エラーレートBER1、BER2を算出する。
これにより、第1再生信号の信号レベルの標準偏差σ1および平均μ1と、第2再生信号の信号レベルの標準偏差σ2および平均μ2とを用いて2次元再生信号の品質を評価できるようになる。
また、本発明に係る信号評価装置では、前記統計値算出手段は、前記第1再生信号についてしきい値k1_1以下の信号レベルの累積相対度数r1_1としきい値k1_2以下の信号レベルの累積相対度数r1_2とを算出し、前記第2再生信号についてしきい値k2_1以下の信号レベルの累積相対度数r2_1としきい値k2_2以下の信号レベルの累積相対度数r2_2とを算出し、前記標準偏差σ1を、
によって算出し、前記平均μ1を、
によって算出し、前記標準偏差σ2を、
によって算出し、前記平均μ2を、
によって算出することが好ましい。
上記の構成によれば、前記統計値算出手段は、前記第1再生信号についてしきい値k1_1以下の信号レベルの累積相対度数r1_1としきい値k1_2以下の信号レベルの累積相対度数r1_2とを算出する。また、前記統計値算出手段は、前記第2再生信号についてしきい値k2_1以下の信号レベルの累積相対度数r2_1としきい値k2_2以下の信号レベルの累積相対度数r2_2とを算出する。また、上記の構成によれば、前記統計値算出手段は、上記算出した累積相対度数r1_1、r1_2、r2_1、r2_2を用いて、標準偏差σ1、平均μ1、標準偏差σ2、平均μ2を上記演算によって算出する。
これにより、標準偏差σ1、平均μ1、標準偏差σ2、平均μ2を直接算出するための複雑な構成は不要であるため、2次元再生信号の品質評価値を簡易な構成によって算出できるようになる。
また、本発明に係る信号評価装置では、前記2次元再生信号に対応するビットを記憶するメモリ手段をさらに備え、前記再生信号区分手段は、前記メモリ手段が記憶するビットに基づいて、前記2次元再生信号を区分することが好ましい。
上記の構成によれば、メモリ手段は、前記2次元再生信号に対応するビットを記憶している。つまり、上記のとおり、2次元再生信号は、ホログラムメモリなどに記録されているページデータを構成する「1」、「0」のビット値に対応する信号であり、メモリ手段は、それらのビットを記憶している。また、上記の構成によれば、前記再生信号区分手段は、メモリ手段に記憶されているビット値をもとに、2次元再生信号を、第1再生信号と第2再生信号とに区分する。例えば、ホログラムメモリなどに記録されているページデータが再生されて2次元再生信号が生成されるタイミングに合わせて、再生信号区分手段はメモリ手段が記憶するページデータを表すビットを読み出し、該ビットが第1の論理値であるか第2の論理値であるかに応じて、2次元再生信号を第1再生信号と第2再生信号とに区分する構成などがある。
これにより、2次元再生信号を、第1の論理値に対応する第1再生信号と第2の論理値に対応する第2再生信号とに、正確に区分することができるため、品質評価値を精密に算出できるようになる。
また、本発明に係る信号評価装置では、前記再生信号区分手段は、前記2次元再生信号について、前記基準値Thよりも大きい信号レベルの信号を前記第1再生信号に区分し、前記基準値Thよりも小さい信号レベルの信号を前記第2再生信号に区分することが好ましい。
上記の構成によれば、前記再生信号区分手段は、前記2次元再生信号について、基準値Thより大きい信号を第1再生信号として区分し、基準値Thより小さい信号を第2再生信号として区分する。
これにより、2次元再生信号を第1再生信号と第2再生信号とに区分するために、別途、2次元再生信号に対応するビットを記憶するメモリなどを用意して、2次元再生信号の再生のタイミングに合わせて、それらのビットを読み出す仕組みを用意する必要がないため、簡易な構成によって2次元再生信号の品質評価値を算出できるようになる。
なお、この場合、2次元再生信号を、もとのページデータの「1」、「0」と正確に対応づけて区分することはできないが、「1」、「0」との対応づけが誤ってなされる信号の割合(すなわち、エラーレート)は非常に小さく10−2台であるため、平均や標準偏差などの算出結果に与える影響は微小であり、最終的に算出されるエラーレートに含まれる誤差は、ほとんど無視できるほど小さい。
本発明に係る信号評価装置は、上記課題を解決するために、差分符号によって符号化された2次元再生信号の品質を表す品質評価値を算出する信号評価装置であって、前記2次元再生信号について、符号化されたブロックごとに信号レベルの差の絶対値を差分値として算出する差分値算出手段と、前記差分値の度数分布を特定する差分値統計値を算出する差分値統計値算出手段と、前記差分値統計値を用いて前記品質評価値を算出する品質評価値算出手段とを備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、信号評価装置は、差分符号によって符号化された2次元再生信号の品質を表す品質評価値を算出する。また、上記の構成によれば、差分値算出手段が、前記2次元再生信号について、符号化されたブロックごとに信号レベルの差の絶対値を差分値として算出する。さらに、上記の構成によれば、差分値統計値算出手段が、前記差分値の度数分布を特定する差分値統計値を算出する。ここで、度数分布を特定する統計値として、平均や標準偏差などが代表的であるが、最頻値や分散を代わりに用いてもよく、特に限定はされない。そして、上記の構成によれば、品質評価値算出手段が、前記差分値統計値を用いて前記品質評価値を算出する。
ここで、差分符号によって符号化された2次元再生信号の品質評価について説明する。差分符号には、符号ブロックが2つの信号からなる1:2差分符号や符号ブロックが4つの信号からなる2:4差分符号などがある。差分符号で符号化された2次元再生信号は、差分検出方式によって復号され、例えば、1:2差分符号によって符号化された2次元再生信号の場合、2つの信号のうち、どちらの再生信号レベルが高いかによって復号ビットが決定される。つまり、差分検出方式によって復号される場合、2つの信号レベルの差が大きければ、エラーを発生しにくい信頼性の高い符号ブロックとなる。そのため、差分符号によって符号化された2次元再生信号については、符号化されたブロックごとの信号レベルの差が信号の品質を表すことになり、差分値算出手段によって算出される差分値の度数分布によって、差分符号によって符号化された2次元再生信号の品質を評価することができる。
これにより、差分符号によって符号化された2次元再生信号の品質評価値としてエラーレートやエラーレートと相関のある値などが算出されるため、差分符号によって符号化された2次元再生信号の品質を定量的に評価することができるようになる。したがって、差分符号によって符号化された2次元再生信号の記録再生に用いられる記録媒体や記録装置や再生装置などの性能を定量的に評価できるようになり、出荷前の製品の合否判定や各種調整を適切に行うことができるようになる。
本発明に係る信号評価方法は、上記課題を解決するために、差分符号で符号化された2次元再生信号の品質を表す品質評価値を算出する信号評価方法であって、前記2次元再生信号について、符号化されたブロックごとに信号レベルの差の絶対値を差分値として算出する差分値算出ステップと、前記差分値の度数分布を特定する差分値統計値を算出する差分値統計値算出ステップと、前記差分値統計値を用いて前記品質評価値を算出する品質評価値算出ステップとを含んでいることを特徴としている。
上記の構成によれば、本発明に係る信号評価装置と同様の作用効果を奏する。
また、本発明に係る信号評価装置では、前記差分値統計値算出手段は、前記差分値統計値として前記差分値の標準偏差σ3および平均μ3を算出し、前記品質評価値算出手段は、下記の関数φ(z)を用いて、前記品質評価値としてエラーレートBER3を
によって算出することが好ましい。
上記の構成によれば、前記差分値統計値算出手段は、前記差分値統計値として前記差分値の標準偏差σ3および平均μ3を算出する。また、上記の構成によれば、前記品質評価値算出手段は、上記の関数φ(z)を用いて、前記品質評価値としてエラーレートBER3を算出する。
ここで、差分符号によって符号化された2次元再生信号の復号エラーについて、説明する。例えば、上記の1:2差分符号では、符号ブロックにおける2つの信号レベルの大小関係がノイズ等の影響により逆転した場合、復号エラーを発生する。仮に、これらのエラーを発生する符合ブロックについての差分値のみを負の値とした差分値の度数分布を作成した場合、エラーを発生する符合ブロックの割合は非常に小さいため、差分値算出手段によって算出される絶対値がとられた差分値の度数分布と、ほとんど同じ度数分布であり、また、いずれも正規分布に近い形状となる。したがって、上記BER3によって標準偏差σ3および平均μ3の正規分布における0以下の累積相対度数を算出することは、復号エラーを発生する符号化ブロックの差分値の割合、すなわち、エラーレートに一致する。
これにより、差分値の標準偏差σ3および平均μ3を用いて、差分符号によって符号化された2次元再生信号の品質を評価できるようになる。
また、本発明に係る信号評価装置では、前記差分値統計値算出手段は、前記差分値統計値として前記差分値の標準偏差σ3および平均μ3を算出し、前記品質評価値算出手段は、前記品質評価値としてσ3/μ3を算出することが好ましい。
上記の構成によれば、差分値統計値算出手段は、差分値統計値として差分値の標準偏差σ3および平均μ3を算出する。また、上記の構成によれば、前記品質評価値算出手段は、品質評価値としてσ3/μ3を算出する。
ここで、σ3/μ3は、エラーレートと1対1に対応する関係にあるため、光ディスク装置などで一般的に用いられているジッタ値と同様、信号の品質評価値として用いることが可能となる。
これにより、標準偏差σ3および平均μ3を算出すれば、σ3/μ3によって2次元再生信号の品質評価値を算出できるため、簡易な構成によって、差分符号によって符号化された2次元再生信号の品質を評価することができるようになる。
また、本発明に係る信号評価装置では、前記差分値統計値算出手段は、前記差分値についてしきい値k3_1以下の累積相対度数r3_1としきい値k3_2以下の累積相対度数r3_2とを算出し、前記標準偏差σ3を、
によって算出し、前記平均μ3を、
によって算出することが好ましい。
上記の構成によれば、前記差分値統計値算出手段は、前記差分値についてしきい値k3_1以下の累積相対度数r3_1としきい値k3_2以下の累積相対度数r3_2とを算出する。また上記の構成によれば、前記差分値統計値算出手段は、上記算出した累積相対度数r3_1、r3_2を用いて、標準偏差σ3、平均μ3を上記演算によって算出する。
これにより、標準偏差σ3、平均μ3を直接算出するための複雑な構成は不要であるため、2次元再生信号の品質評価値を簡易な構成によって算出できるようになる。
なお、上記信号評価装置は、コンピュータによって実現してもよい。この場合、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記信号評価装置をコンピュータにおいて実現する制御プログラム、およびその制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
本発明に係る信号評価装置は、以上のように、前記2次元再生信号を、第1の論理値に対応する第1再生信号と、第2の論理値に対応し、信号レベルの平均が前記第1再生信号よりも小さい第2再生信号とに区分する再生信号区分手段と、前記第1再生信号の信号レベルの度数分布を特定する第1統計値と、前記第2再生信号の信号レベルの度数分布を特定する第2統計値との少なくとも1つを算出する統計値算出手段と、前記第1統計値と前記第2統計値との少なくとも1つを用いて前記2次元再生信号の品質評価値を算出する品質評価値算出手段とを備えている。
また、本発明に係る信号評価方法は、以上のように、前記2次元再生信号を、第1の論理値に対応する第1再生信号と、第2の論理値に対応し、信号レベルの平均が前記第1再生信号よりも小さい第2再生信号とに区分する再生信号区分ステップと、前記第1再生信号の信号レベルの度数分布を特定する第1統計値と、前記第2再生信号の信号レベルの度数分布を特定する第2統計値との少なくとも1つを算出する統計値算出ステップと、前記第1統計値と前記第2統計値との少なくとも1つを用いて前記2次元再生信号の品質評価値を算出する品質評価値算出ステップとを含んでいる。
これにより、2次元再生信号の品質評価値としてエラーレートやエラーレートと相関のある値が算出されるため、2次元再生信号の品質を定量的に評価することができ、2次元再生信号の記録再生に用いられる記録媒体や記録装置や再生装置などについて出荷前の製品の合否判定や各種調整を適切に行うことができるようになるという効果を奏する。
本発明に係る信号評価装置は、以上のように、前記2次元再生信号について、符号化されたブロックごとに信号レベルの差の絶対値を差分値として算出する差分値算出手段と、前記差分値の度数分布を特定する差分値統計値を算出する差分値統計値算出手段と、前記差分値統計値を用いて前記品質評価値を算出する品質評価値算出手段とを備えている。
また、本発明に係る信号評価方法は、以上のように、前記2次元再生信号について、符号化されたブロックごとに信号レベルの差の絶対値を差分値として算出する差分値算出ステップと、前記差分値の度数分布を特定する差分値統計値を算出する差分値統計値算出ステップと、前記差分値統計値を用いて前記品質評価値を算出する品質評価値算出ステップとを備えている。
これにより、差分符号によって符号化された2次元再生信号の品質評価値としてエラーレートやエラーレートと相関のある値などが算出されるため、差分符号によって符号化された2次元再生信号の品質を定量的に評価することができ、差分符号によって符号化された2次元再生信号の記録再生に用いられる記録媒体や記録装置や再生装置などについて出荷前の製品の合否判定や各種調整を適切に行うことができるようになるという効果を奏する。
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について図1乃至図7に基づいて説明する。実施形態1においては、しきい値検出方式を採用するホログラムメモリ再生装置1によって再生された信号を評価するのに適した本発明に係る信号評価装置100aおよび信号評価方法について説明する。
ここで、しきい値検出方式とは、ホログラムメモリ再生装置1において再生信号を復号する場合に、再生信号の大きさを所定のしきい値と比較して、しきい値より大きい場合には復号ビットを「1」、小さい場合には復号ビットを「0」と判別する復号方式である。
図1は、実施形態1に係るホログラムメモリ再生信号評価システム50の構成を示すブロック図である。ホログラムメモリ再生信号評価システム50は、ホログラムメモリ再生装置1、2次元イコライザ2、および信号評価装置100aによって構成される。
信号評価装置100aは、スイッチ3、テストビットメモリ4、標準偏差演算回路5、平均演算回路6、標準偏差演算回路7、平均演算回路8、(μ2−Th)/σ2演算回路9、(Th−μ1)/σ1演算回路10、しきい値出力回路11、Φ(z)演算回路12、Φ(z)演算回路13、およびエラーレート合算回路14を備えている。また、標準偏差演算回路5、平均演算回路6、標準偏差演算回路7、および平均演算回路8は、統計値算出部40aを構成している。また、(μ2−Th)/σ2演算回路9、(Th−μ1)/σ1演算回路10、しきい値出力回路11、Φ(z)演算回路12、Φ(z)演算回路13、およびエラーレート合算回路14は、品質評価値算出部45aを構成している。
なお、図1に示す信号評価装置100aは、特許請求の範囲に記載されている信号評価装置に対応している。また、図1に示す他の各部材と特許請求の範囲に記載されている各手段との対応関係は以下のとおりである。すなわち、スイッチ3は再生信号区分手段、テストビットメモリ4はメモリ手段、統計値算出部40aは統計値算出手段、品質評価値算出部41は品質評価値算出手段にそれぞれ対応している。
さて、図1に示すホログラムメモリ再生信号評価システム50における再生および信号評価の動作について図2を用いて説明すると以下の通りである。図2は本実施形態1に係るホログラムメモリ再生信号評価システム50の処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1においては、ホログラムメモリ再生装置1が既知のテストビットを再生する。すなわち、既知のテストビットに基づいて再生信号(2次元再生信号)を出力する。ホログラムメモリ再生装置1における具体的な再生動作、すなわち、ホログラム媒体に再生参照光が照射されて受光素子から2次元の再生信号が出力される動作については、背景技術において説明するとおりであり、また、その動作は本発明とは直接関係しないので詳細な説明は省略する。
前記のテストビットとしては、信号品質の評価値を求めるために十分なサンプル数を持ち、評価を適切に行えるように偏りのないパターン(通常はランダムパターン)が選ばれる。また、テストビットは予めホログラム媒体に記録されていてもよいし、信号品質の評価を行う前にホログラム媒体に記録するようにしてもよい。なお、テストビットがホログラムメモリの規格書で規定されていれば、異なるメーカーの装置間で共通のテストビットを用いることができるため、互換性が高まるなどの効果がある。
なお、テストビットメモリ4には、ホログラムメモリ再生装置1によって再生されるテストビットと同一のビットが記録されている。また、テストビットメモリ4の代わりに線形シフトレジスタを利用した擬似ランダムパターン発生回路を用いる構成にしてもよい。これによってハード量を小さくすることができる。
また、ステップS1においては、ホログラムメモリ再生装置1から出力された2次元の再生信号は、2次元イコライザ2において波形等化が施される。2次元イコライザ2は2次元FIRフィルタなどで構成され、波形間干渉の除去などを行うことによって信号品質を向上させる。そして、2次元イコライザ2から出力される波形等化が施された再生信号はスイッチ3に入力される。
なお、2次元イコライザ2の周波数特性(FIRフィルタの場合はタップ数とタップ係数で決定される)がホログラムメモリの規格書で規定されていれば、基準信号評価値を規定することができるため規格準拠の検証が容易になる。2次元イコライザ2は信号品質を改善した上で信号評価を行うために使用されることが多いため本実施形態1では構成要素としているが、本発明の構成要素としては必須ではない。以上が、ステップS1におけるホログラムメモリ再生信号評価システム50の再生処理である。
次に、ステップS2において、再生信号について統計値が算出される。ステップS2における処理内容をより具体的に説明すれば以下のとおりである。
2次元イコライザ2を通った再生信号は、スイッチ3に入力されると、テストビットメモリ4に記憶されている各テストビット(0または1)に応じて、暗ピクセル値、または明ピクセル値に区分される。ここで、明ピクセル値とは明ピクセル(記録ビット「1」に対応する受光素子の画素)の再生信号レベルを、暗ピクセル値とは暗ピクセル(記録ビット「0」に対応する受光素子の画素)の再生信号レベルを、それぞれ意味している。
なお、特許請求の範囲に記載の第1再生信号は明ピクセル値に対応し、第2再生信号は暗ピクセル値に対応する。また、本実施の形態においては、特許請求の範囲に記載の第1の論理値は記録ビット「1」に対応し、第2の論理値は記録ビット「0」に対応しているが、第1の論理値が記録ビット「0」に、第2の論理値が記録ビット「1」に対応してもよく、特に限定はされない。
つまり、ホログラム媒体に記録されているテストビットはホログラムメモリ再生装置1によって再生信号に変換されてスイッチ3に入力されるが、スイッチ3は、入力された再生信号に対応するテストビットをテストビットメモリ4から受け取り、再生信号に対応するテストビットが「1」の場合には再生信号の出力レベルを明ピクセル値として出力する端子に接続され、再生信号に対応するテストビットが「0」の場合には再生信号の出力レベルを暗ピクセル値として出力する端子に接続される。
そして、暗ピクセル値は標準偏差演算回路5と平均演算回路6に、明ピクセル値は標準偏差演算回路7と平均演算回路8に、それぞれ入力される。標準偏差演算回路5および標準偏差演算回路7は入力された値の標準偏差を求める回路であり、それぞれ暗ピクセル値の標準偏差σ2および明ピクセル値の標準偏差σ1を算出する。また、平均演算回路6および平均演算回路8は入力された値の平均を求める回路であり、それぞれ暗ピクセル値の平均μ2および明ピクセル値の平均μ1を算出する。
次に、ステップS3において、ステップS2で算出された統計値を用いた算術演算が行われる。ステップS3における処理内容をより具体的に説明すれば以下のとおりである。
ステップ2において算出された暗ピクセル値の平均μ2と標準偏差σ2とは(μ2−Th)/σ2演算回路9に、明ピクセル値の平均μ1と標準偏差σ1は(Th−μ1)/σ1演算回路10に、それぞれ入力される。(μ2−Th)/σ2演算回路9は(μ2−Th)/σ2の算術演算を行う回路であり、(Th−μ1)/σ1演算回路10は(Th−μ1)/σ1の算術演算を行う回路である。
なお、これらの回路にはしきい値出力回路11からしきい値Thも入力される。Thはμ2<Th<μ1を満たすしきい値であり、ホログラムメモリ再生システム50で採用するしきい値検出方式のしきい値と一致させておけば、エラーレートとの対応性を高めることができる。しきい値出力回路11は、記憶している固定値Thをそのまま出力する構成であってもよいし、再生信号に応じてThを決定する構成であってもよい。再生信号に応じてThを変化させる方法としては、例えばしきい値検出により復号した明ピクセルと暗ピクセルの出現割合が符号化方式で定まる所定の割合となるようにThを決定する方法や、全ての明ピクセル値と暗ピクセル値の平均値を求めてThとする方法などがある。また、再生信号の光強度変動(実施形態3において説明)に対してThを適応的に追従させる、いわゆるオートスライス機能を持たせることも可能である。
次にステップS4において、明ピクセルのエラーレートおよび暗ピクセルのエラーレートが算出される。より具体的な処理内容は、以下のとおりである。
ステップS3において算出された(μ2−Th)/σ2がΦ(z)演算回路12に入力されると、数14で表される統計演算が行われ暗ピクセルのエラーレートBER2が求められ出力される。一方、(Th−μ1)/σ1はΦ(z)演算回路13に入力されると、数15で表される統計演算が行われて明ピクセルのエラーレートBER1が求められ出力される。Φ(z)演算回路12、Φ(z)演算回路13は、数16によって表される標準正規分布(平均0、標準偏差1の正規分布)の累積密度関数Φ(z)を計算する回路である。
最後に、ステップS5において、暗ピクセルのエラーレートBER2と明ピクセルのエラーレートBER1とが、エラーレート合算回路14によって合算され、総エラーレートBERが算出される。総エラーレートBERの算出式は、数17によって表される。数17におけるn1とn2は、それぞれ暗ピクセルと明ピクセルの比率を示す係数であり、「暗ピクセル数:明ピクセル数=n2:n1」である。例えば符号化方式として暗ピクセル数と明ピクセル数が等しいバランス符号を採用するシステムの場合はn1=n2=1、16ピクセルからなる符号ブロックにおける明ピクセル数が常に3である3/16変調を採用するシステムの場合はn1=3、n2=13、とする。
以上の処理によって、最終的に、ホログラムメモリの再生信号の信号品質評価値としてのエラーレートを得ることができる。
ここで、本実施形態に係る信号評価装置100aによって、しきい値検出方式の検出原理に対応したエラーレートを求めることができる理由について詳細に説明する。図3(a)は、ホログラムメモリの再生信号(シミュレーションにより作成した)の度数分布の一例を示す図である。図3(a)には、明ピクセル、暗ピクセルごとに再生信号の度数分布を示している。図3(a)からも分かるように、明ピクセル値、暗ピクセル値ともに、ほぼ正規分布に近い分布形状を持っている。
統計学によれば、平均値μと標準偏差σの正規分布においてx以下となる確率(累積相対度数)をF(x)とすると、標準正規分布に対する累積密度関数Φ(z)とF(x)との間には、数18の関係が成立する。
一方、しきい値検出方式によれば、図3(a)に示す度数分布のうち、再生信号レベルがしきい値Thよりも小さい画素が暗ピクセルと判別されてビット「0」に、再生信号レベルがしきい値Thよりも大きい画素が明ピクセルと判別されてビット「1」に、それぞれ復号される。
そのため、本来は暗ピクセルと判別されるべき記録ビット「0」に対応する画素の再生信号レベルがノイズのためにThよりも大きくなってしまった場合、その画素はビット「1」に誤って復号されてしまう。同様に、本来は明ピクセルと判別されるべき記録ビット「1」に対応する画素の再生信号レベルがノイズのためにThよりも小さくなってしまった場合、その画素はビット「0」に誤って復号されてしまう。これらが復号エラービットとなる。
つまり、しきい値検出方式によれば、図3(a)に示す度数分布のうち、暗ピクセルの再生信号であるにもかかわらず再生信号レベルがしきい値Thより大きい再生信号と、明ピクセルの再生信号であるにもかかわらず再生信号レベルがしきい値Thより小さい再生信号については、ノイズによる影響を受けたエラー再生信号であり、復号された場合にはエラービットとなる。
すなわち、暗ピクセルのエラーレートBER2は暗ピクセル値の度数分布におけるTh以上の累積相対度数に、明ピクセルのエラーレートBER1は明ピクセル値の度数分布におけるTh以下の累積相対度数に、それぞれ一致する。
したがって、明ピクセルのエラーレートBER1は、平均μ1、標準偏差σ1の正規分布におけるTh以下の累積相対度数に一致するので、数18から数15が成り立つことが分かる。一方、暗ピクセルのエラーレートBER2は、平均μ2、標準偏差σ2の正規分布におけるTh以上の累積相対度数に一致する。ここで、図3(b)に示すように暗ピクセル値の度数分布を0に対して対称移動させた度数分布に置き換えると、BER2は平均−μ2、標準偏差σ2の正規分布における−Th以下の累積相対度数に一致すると考えられるので、数18から数14が成り立つことが分かる。
以上より、本実施形態に係る信号評価装置100aによってしきい値検出方式の検出原理に対応したエラーレートが求められることが理論的に説明された。
なお、実施形態1で説明したホログラムメモリ再生信号評価システム50では、標準偏差演算回路5にて暗ピクセル値の標準偏差σ2、平均演算回路6にて暗ピクセル値の平均μ2を求める構成で説明したが、図3(a)から分かるように暗ピクセル値の度数分布は0以下の数値がない(受光素子の出力にマイナス値がない)ので、標準偏差や平均値をそのまま求める構成では、少し誤差が生じることもある。
より高精度な信号品質評価値が求められるような場合には、この誤差を補正する手段を別途講じてもよい。例えば、暗ピクセル値の度数分布が正規分布に近似できることを利用して、平均の代わりに最頻値(正規分布の場合、両者は一致する)を求めてμ2としたり、度数分布の片側(μ2より大の部分)から標準偏差を求めてσ2としたりする構成にしてもよい。
〔実施形態2〕
実施形態1においては、再生信号の統計値として平均と標準偏差を直接測定し、これらの測定値からエラーレートを算出する構成としていた。実施形態2では、2つの異なる所定のしきい値に対する再生信号の累積相対度数を計測し、計測された2つの累積相対度数を統計演算に基づく連立方程式を解くことによって平均と標準偏差に換算し、これらの換算値からエラーレートを算出する構成について説明する。
図4は、実施形態2に係るホログラムメモリ再生信号評価システム51の構成を示すブロック図である。実施形態1に係るホログラムメモリ再生信号評価システム50における構成要素と同等の機能を有する構成要素については同じ符号を与えて説明を省略する。
ホログラムメモリ再生信号評価システム51では、信号評価装置100bによって2次元再生信号の品質を評価する。信号評価装置100bの統計値算出部40bでは、平均と標準偏差を直接測定する構成の信号評価装置100aの統計値算出部40aとは異なり、2つの異なる所定のしきい値に対する再生信号の累積相対度数をもとに、平均と標準偏差とを算出する構成である。
より具体的に説明すれば、信号評価装置100bの統計値算出部40bは、しきい値k2_1に対する累積相対度数r2_1を測定する累積相対度数測定回路15と、しきい値k2_2に対する累積相対度数r2_2を測定する累積相対度数測定回路16と、しきい値k1_1に対する累積相対度数r1_1を測定する累積相対度数測定回路17と、しきい値k1_2に対する累積相対度数r1_2を測定する累積相対度数測定回路18とを備えている。さらに、信号評価装置100bの統計値算出部40bは、累積相対度数r2_1およびr2_2を標準偏差と平均に換算する統計値演算回路19と累積相対度数r1_1およびr1_2を標準偏差と平均に換算する統計値演算回路20とを備えている。
なお、統計値算出部40bは、特許請求の範囲における統計値算出手段に対応する。
さて、図4に示した上記構成のホログラムメモリ再生信号評価システム51による再生動作を図5および図6を用いて説明すると以下の通りである。
図5は、本実施形態に係るホログラムメモリ再生信号評価システム51における処理の流れを示すフローチャートである。図2のフローチャートで示される実施形態1と同じ処理については詳細な説明を省略する。
また、図6はホログラムメモリの再生信号の度数分布の一例を示す図であり、図6を用いて累積相対度数について説明する。図6に示すように、しきい値k2_1、k2_2としては暗ピクセル値の度数分布に対して平均μ2より小さい値を、しきい値k1_1、k1_2としては明ピクセル値の度数分布に対して平均μ1より小さい値を、それぞれ設定しておく。
ホログラムメモリ再生信号評価システム51では、はじめに、ホログラムメモリ再生装置1から出力された再生信号が2次元イコライザ2を介してスイッチ3に入力される(ステップS51)。ここでの処理は、実施形態1において説明した図2のステップS1と同じである。
再生信号はスイッチ3に入力されると、暗ピクセル値または明ピクセル値に区分される。暗ピクセル値の再生信号は、累積相対度数測定回路15および累積相対度数測定回路16に入力される。暗ピクセル値は、累積相対度数測定回路15においてしきい値k2_1と、累積相対度数測定回路16においてしきい値k2_2と、それぞれ比較され、各所定のしきい値以下となる暗ピクセル値の度数が測定される。最終的に、テストビット総数に対するしきい値k2_1、k2_2以下の暗ピクセル値の累積相対度数r2_1、r2_2がそれぞれ出力される。一方、明ピクセル値の再生信号は、累積相対度数測定回路17および累積相対度数測定回路18に入力される。明ピクセル値は累積相対度数測定回路17においてしきい値k1_1と、累積相対度数測定回路18においてしきい値k1_2と、それぞれ比較されて、各しきい値以下となる明ピクセル値の度数が測定される。最終的に、テストビット総数に対するしきい値k1_1、k1_2以下の明ピクセル値の累積相対度数r1_1、r1_2がそれぞれ出力される(ステップS52)。
暗ピクセル値の累積相対度数r2_1、r2_2が統計演算回路19に入力されると、数19、数20で表される所定の統計演算(Φ-1(z)はΦ(z)の逆関数)によって暗ピクセルの平均μ2と標準偏差σ2が求められ出力される。一方、明ピクセル値の累積相対度数r1_1、r1_2が統計演算回路20に入力されると、数21、数22で表される所定の統計演算によって明ピクセルの平均μ1と標準偏差σ1が求められ出力される(ステップS53)。
以降、μ2、σ2からBER2、μ1、σ1からBER1、が求められ、最終的にホログラムメモリの再生信号の信号品質評価値としてのエラーレートが得られるまでのステップS54〜S56の処理については、実施形態1において説明した図2のステップS3〜S5の処理と同じであるので説明は省略する。
ここで、統計演算回路19において、累積相対度数r2_1、r2_2から数19、数20によって平均μ2と標準偏差σ2が求められる理由について説明する。統計演算回路20についても全く同様の議論ができるため、累積相対度数r1_1、r1_2から平均μ1と標準偏差σ1が求められる理由についての説明は省略する。
上述したとおり、正規分布に対しては数18の関係が成り立つ。また、図6に示すとおり、ホログラムメモリの再生信号の度数分布は、ほぼ正規分布に近い分布形状を示している。そこで、r2_1、r2_2、k2_1、k2_2、μ2、σ2に関して数18を適用できるため、数23、数24が成り立つ。
この連立一次方程式を解くことによって、数19、数20が導かれる。したがって、累積相対度数r2_1、r2_2を測定すれば、数19、数20によって平均μ2と標準偏差σ2を算出することができる。
以上説明した通り、本実施形態では、実施形態1のように平均や標準偏差を直接測定するために必要となる複雑な演算回路の代わりに、コンパレータやカウンタなどで構成が可能な累積相対度数測定回路15〜18を用いることによって、簡易な回路構成で本発明を実現することが可能となる。なお、数19〜数22に基づいて平均と標準偏差を求める統計演算回路19、統計演算回路20は、演算結果のルックアップテーブルを記憶させた読み出し専用メモリ(ROM)を用いれば、容易に実装が可能である。
なお、上記実施形態2では、k1_1、k1_2として平均μ1より小さい値を設定しておき、累積相対度数測定回路17、累積相対度数測定回路18において明ピクセル値をそれぞれしきい値k1_1、k1_2と比較して各しきい値以下となる度数を測定する構成であったが、明ピクセル値の度数分布が平均μ1について左右対称であることを利用して、k1_1、k1_2として平均μ1より大きい値を設定しておき、累積相対度数測定回路17、累積相対度数測定回路18において明ピクセル値をそれぞれしきい値k1_1、k1_2と比較して各しきい値以上となる度数を測定する構成に置き換えても良い。このような構成とすれば、スイッチ3による再生信号を区分する処理を省略することができる。
なお、実施形態1、実施形態2で説明したホログラムメモリ再生システムでは、テストビットメモリ4に記憶された既知のテストビットに応じて、そのテストビットに対応する再生信号をスイッチ3によって暗ピクセル値または明ピクセル値に区分する構成で説明したが、スイッチ3がしきい値Thよりも小さい再生信号を暗ピクセル値、Thよりも大きい再生信号を明ピクセル値と区分するように構成しても良い。
この場合、上記で説明したように、しきい値検出が復号エラーを起こすような再生信号レベルについては暗ピクセルと明ピクセルの区別を誤ることになる。しかし、一般的に評価対象とする信号品質は悪い場合でもせいぜいエラーレート10−2台であり、その程度のエラーに対応して暗ピクセルと明ピクセルが入れ替わったとしても、図3や図6から分かるように平均や標準偏差の算出結果に与える影響は微小であるため、エラーレート計算結果に与える誤差はほとんど無視できるほどに小さいと言える。
その一方で、このような構成とすることで、テストビットメモリ4を省略することができると共に、テストビットを予めホログラム媒体に記録しておいたり、信号品質評価を行う前にホログラム媒体に記録したりする手間が不要となる効果が得られる。更に、信号品質評価をテストビットに限らず任意のビットを対象にして行うことができる。
また、実施形態1、実施形態2で説明したホログラムメモリ再生システムでは、明ピクセル値の度数分布と暗ピクセル値の度数分布の両方に基づいて信号品質評価を行う構成で説明したが、いずれか一方の度数分布のみに基づいて信号品質評価を行う構成であってもよい。この場合、両方の度数分布を用いる場合に比べて、得られる信号品質評価値の精度は下がるものの、回路構成を簡略化できる別の長所があるので、システム設計における精度とコストのバランスに応じて、いずれか適切な構成を選べばよい。
なお、実施形態1、実施形態2において説明したホログラムメモリ再生信号評価システムでは、度数分布を特定する統計値として平均と標準偏差を用いる例で説明したが、これに限るものではなく、例えば平均の代わりに最頻値を用いたり、標準偏差の代わりに分散を用いたりするなど、度数分布を特定できる統計値であれば何を用いてもよい。本発明の主旨は明ピクセル値の度数分布と暗ピクセル値の度数分布を別個に求めて、それぞれの度数分布を特定する統計値に基づいて信号品質を評価することにある。
また、実施形態1、実施形態2で説明したホログラムメモリ再生信号評価システムでは、符号化されていないテストビットを用いて信号品質を評価する構成で説明したが、しきい値検出方式は再生信号の符号化方式によらない検出方式であるので、テストビットが符号化されていても同様に本発明の適用が可能である。
〔実施形態3〕
ホログラムメモリでは光源の強度分布や光学部品、記録媒体の媒体特性の不均一性などによって、再生画像に不均一な光強度分布が発生することがある。このような不均一な分布があると、所定のしきい値と比較することによって「1」、「0」を判別するしきい値検出方式では復号エラーが多くなってしまう。
この問題を回避するためには、差分検出方式が用いられる。差分検出方式は、再生信号が1:2差分符号や2:4差分符号などの差分符号で符号化されていることが前提となる。図7は、1:2差分符号を示す模式図である。図8は、2:4差分符号を示す模式図である。図7に示すように、1:2差分符号とは、2ビットからなる符号ブロックのどちらか一方だけが明ピクセルとなる符号である。また、図8に示すように、2:4符号とは、4ビットからなる符号ブロックのいずれか一つだけが明ピクセルとなる符号である。
また、差分検出方式とは、各符号ブロック内で最も明るい(再生信号レベルが大きい)画素の位置によって復号ビットを決定する方式である。図7の1:2差分符号の例で説明すると、右の画素の方が明るい場合は0に、左の画素の方が明るい場合は1に、それぞれ復号される。また、図8の2:4差分符号の例で説明すると、左上の画素が一番明るい場合は”00”の2ビットに、右上の画素が一番明るい場合は”01”に、左下の画素が一番明るい場合は”10”に、右下の画素が一番明るい場合は”11”に、それぞれ復号される。このような差分検出を行うことによって、光強度分布が発生した場合であっても、符号ブロック内での相対的な明暗に基づいて復号が行われるので、エラーの少ない復号を実現することができる。
実施形態3では、差分符号によって符号化されたホログラムメモリ再生信号を差分検出方式で復号するホログラムメモリ再生装置に適した本発明の信号評価装置および信号評価方法について説明する。
図9は、実施形態3のホログラムメモリ再生信号評価システム52の構成を示すブロック図である。
ホログラムメモリ再生信号評価システム52は、ホログラムメモリ再生装置21、2次元イコライザ2、および信号評価装置100bによって構成される。ホログラムメモリ再生装置21のホログラムメモリは1:2差分符号で符号化されているものとする。
信号評価装置100cは、減算回路22、絶対値回路23、標準偏差演算回路24、平均演算回路25、−μ3/σ3演算回路26、およびΦ(z)演算回路27を備えている。また、標準偏差演算回路24および平均演算回路25は、統計値算出部40cを構成している。また、−μ3/σ3演算回路26、およびΦ(z)演算回路27は、品質評価値算出部42を構成している。
なお、図9に示す各部材と特許請求の範囲に記載されている各手段との対応関係は以下のとおりである。すなわち、減算回路22と絶対値回路23とは差分値算出手段、統計値算出部40cは差分値統計値算出手段、品質評価値算出部42は品質評価値算出手段にそれぞれ対応している。
さて、図9に示した上記構成のホログラムメモリ再生信号評価システム52による再生動作について、図10を用いて説明すると以下の通りである。図10は本実施形態に係るホログラムメモリ再生信号評価システム52の処理の流れを示すフローチャートである。実施形態1に係る図2のフローチャートで示される処理と同じ内容については詳細な説明を省略する。
ホログラムメモリ再生信号評価システム52では、はじめに、ホログラムメモリ再生装置21から出力された再生信号が2次元イコライザ2を介して出力される(ステップS101)。ここでの処理は実施形態1において説明した図2のステップS1と同じである。但し、この再生信号は1:2差分符号で符号化されているので、2ビットからなる各符号ブロックに対応する2つの再生信号が出力されるようになっている。
2つの再生信号は減算回路22にて減算され、更に絶対値回路23にて前記減算の結果得られた値について絶対値が求められ出力される(ステップS102)。絶対値回路23から出力される絶対値のことを差分値と呼ぶ。
ちなみに、減算回路22から出力される信号の正負を「1」と「0」に対応づけて出力する構成要素を追加すれば、それが差分検出復号器として動作する(本発明の必須要素ではないため、図示はしていない)。
差分検出における差分値は信頼度とも呼ばれ、符号ブロック内の1番明るいピクセル値から2番目に明るいピクセル値を減算した値として定義される。1:2差分符号ブロックは2ビットからなるので、一方のピクセル値から他方のピクセル値を減算して絶対値をとったものを差分値として用いることができる。
差分値が大きい符号ブロックは、2つのビットのピクセル値が離れていることを示しており、差分検出復号エラーを起こしにくい信頼性の高い符号ブロックであると言える。一方、差分値が小さい符号ブロックは、2つのビットのピクセル値が近いことを示しており、差分検出復号エラーが発生しやすい状態にあると言える。すなわち、差分値の大小によって、各符号ブロック毎の信頼性の良し悪しについて定性的に判断することができる。
絶対値回路23から出力される差分値は標準偏差演算回路24と平均演算回路25に入力されて、標準偏差演算回路24においては標準偏差σ3が、平均演算回路25においては平均μ3が求められる(ステップS103)。さらに、算出された標準偏差σ3と平均μ3を用いて−μ3/σ3演算回路26において−μ3/σ3の算術演算が行われ、Φ(z)演算回路27に出力される(ステップS104)。最後にΦ(z)演算回路27にてΦ(−μ3/σ3)がエラーレートとして求められ出力される(ステップS105)。
以上の動作によって、最終的にホログラムメモリの再生信号の信号品質評価値としてのエラーレートが得られる。
ここで、本実施形態に係るホログラムメモリ再生信号評価システム52によって差分検出方式の検出原理に対応したエラーレートを求めることができる理由について詳細に説明する。
図11は、1:2差分符号化されたホログラムメモリの再生信号(シミュレーションにより作成した)の差分値の度数分布の一例を示す図である。実線は差分値の度数分布、破線は符号付き差分値の度数分布を表す。
符号付き差分値とは、差分値と復号エラーとの関係を説明するために便宜上用いるものであり、符号ブロック内の2つのビットのどちらが明ピクセルであるかが既知であることを前提として、その明ピクセル値から他方のピクセル値を減算した値である。復号エラーが発生する符号ブロックにおいては、ノイズによって明ピクセル値よりも他方のピクセル値の方が明るく(再生信号レベルが大きく)なってしまうため、符号付き差分値はマイナスの値となる。
一方、差分値は符号ブロック内の2つのピクセル値を減算した後に絶対値を取るため、マイナスの値になることはない。ノイズが小さく復号エラーが起きない符号ブロックの場合は、明ピクセル値の方が他方のピクセル値よりも明るい(再生信号レベルが大きい)ので差分値と符号付き差分値は一致する。これに対し、ノイズが大きく復号エラーが起きる符号ブロックの場合は、符号付き差分値はマイナスとなるため、差分値と符号付き差分値は、絶対値は等しいが符号が異なる関係となる。
しかし、一般的に評価対象とする信号品質は悪い場合でもせいぜいエラーレート10−2台であり、図11からも分かる通り、度数分布としてみれば差分値と符号付き差分値はほとんど一致する。従って、差分値と符号付き差分値の平均および標準偏差もほとんど一致する。
さて、差分検出方式を図11で考えると、符号付き差分値の度数分布において0より小さい部分は符号付き差分値がマイナスであることを意味しているので、上述したように、この符号ブロックでは復号エラーが発生する。すなわち、符号付き差分値の度数分布における0以下の累積相対度数がそのままエラーレートに一致する。
図11から分かるように、符号付き差分値はほぼ正規分布に近い分布形状を持っている。以上を考え合わせて、実施形態1と同様の考え方をすれば、差分検出方式におけるエラーレートは、平均μ3、標準偏差σ3の正規分布における0以下の累積相対度数に一致するので、数18を用いてΦ(−μ3/σ3)として求めることができる。
以上より、本実施形態に係るホログラムメモリ再生信号評価システム52によって差分検出方式の検出原理に対応したエラーレートが求められることが理論的に説明された。
なお、実施形態3で説明したホログラムメモリ再生信号評価システムでは、度数分布を特定する統計値として平均と標準偏差を用いる例で説明したが、これに限るものではなく、例えば平均の代わりに最頻値を用いたり、標準偏差の代わりに分散を用いるなど、度数分布を特定できる統計値であれば何を用いてもよい。本発明の主旨は差分値の度数分布を特定する統計値に基づいて信号品質を評価することにある。
〔実施形態4〕
実施形態3においては、Φ(−μ3/σ3)の演算結果、すなわちエラーレートを信号品質評価値として求める構成であったが、−μ3/σ3とエラーレートが1対1に対応する関係にあることは明らかである。
従って、目的によって、エラーレートそのものでなくても、エラーレートと1対1に対応する数値を信号品質評価値としても構わない場合には、−μ3/σ3そのものを信号品質評価値として用いることが可能である。
更にこれをσ3/μ3と変形しても依然、1対1の関係は維持されるため、これを信号品質評価値とすることも可能である。特に、このσ3/μ3をパーセント表示すれば、光ディスク装置などで一般的に用いられているジッタ値と同様の感覚で使用することができる。これは、図9における−μ3/σ3演算回路26の代わりにσ3/μ3を演算する演算回路を設け、その出力を信号品質評価値として取り出す構成とすることで実現可能である。
〔実施形態5〕
差分符号で符号化されたホログラムメモリ再生信号を差分検出方式で復号するホログラムメモリ再生システムに適した本発明の実施形態をもう一例、説明する。
実施形態3においては、差分値の統計値として平均と標準偏差を直接測定し、これらの測定値からエラーレートを算出する構成としていた。実施形態5では、再生信号の累積相対度数を測定し、測定した累積相対度数値から統計演算に基づく連立方程式を解くことによって平均と標準偏差に換算し、これらの換算値からエラーレートを算出する構成について説明する。
図12は、実施形態5に係るホログラムメモリ再生信号評価システム53の構成を示すブロック図である。実施形態3に係るホログラムメモリ再生信号評価システム52における構成要素と同等の機能を有する構成要素については同じ符号を与えて説明を省略する。
ホログラムメモリ再生信号評価システム53では、信号評価装置100dによって2次元再生信号の品質を評価する。信号評価装置100dの統計値算出部40dでは、平均と標準偏差を直接測定する構成の信号評価装置100cの統計値算出部40cとは異なり、2つの異なる所定のしきい値に対する再生信号の累積相対度数をもとに、平均と標準偏差とを算出する構成である。
より具体的に説明すれば、信号評価装置100dの統計値算出部40dは、しきい値k3_1に対する累積相対度数r3_1を測定する累積相対度数測定回路28と、しきい値k3_2に対する累積相対度数r3_2を測定する累積相対度数測定回路29とを備えていえる。さらに、信号評価装置100dの統計値算出部40dは、累積相対度数r3_1およびr3_2を標準偏差と平均に換算する統計値演算回路30を備えている。しきい値k3_1、k3_2としては、平均μ3よりも小さい異なる値を設定する。
なお、統計値算出部40dは、特許請求の範囲における差分値統計値算出手段に対応している。
ホログラムメモリ再生装置21から1:2差分符号で符号化された信号を再生して、絶対値回路23から差分値が出力されるまでの処理は実施形態3と同様である。
ここで、実施形態2で説明したのと全く同様の考え方から、差分値の標準偏差σ3、平均μ3、累積相対度数r3_1、r3_2に関して数18を適用すれば、σ3とμ3についての連立方程式が成り立ち、数25、数26が導出できる。
従って、累積相対度数測定回路28、累積相対度数測定回路29によってそれぞれr3_1、r3_2を測定し、統計演算回路30にて数25、数26の演算を行えば、σ3とμ3を求めることができる。以降、σ3とμ3からエラーレートを算出する処理については、実施形態3と同様であるため説明は省略する。
以上説明した通り、本実施形態5では、実施形態3のように平均や標準偏差を直接測定するために必要となる複雑な演算回路の代わりに、コンパレータやカウンタなどで構成が可能な累積相対度数測定回路28、累積相対度数測定回路29を用いることによって、簡易な回路構成で本発明を実現することが可能となる。
なお、実施形態5では、しきい値k3_1、k3_2として平均μ3より小さい値を設定しておき、累積相対度数測定回路28、累積相対度数測定回路29において差分値をそれぞれしきい値k3_1、k3_2と比較して各しきい値以下となる度数を測定する構成であったが、差分値の度数分布が平均μ3について左右対称であることを利用して、しきい値k3_1、k3_2として平均μ3より大きい値を設定しておき、累積相対度数測定回路28、累積相対度数測定回路29において差分値をそれぞれしきい値k3_1、k3_2と比較して各しきい値以上となる度数を測定する構成に置き換えても良い。
なお、実施形態3〜5で説明したホログラムメモリ再生信号評価システムでは、差分符号方式として1:2差分符号を例に用いて説明したが、2:4符号などその他の差分符号方式においても適用が可能なことはもちろんである。
(他の構成)
なお、本発明を、以下のように表現することも可能である。
(第1の構成)
2次元の再生信号を再生する再生手段と、前記再生信号を暗ピクセル値と明ピクセル値とに区分するデータ区分手段と、前記暗ピクセル値の度数分布の統計値を求める第1統計値演算手段と、前記明ピクセル値の度数分布の統計値を求める第2統計値演算手段と、前記第1統計値演算手段の出力および前記第2統計値演算手段の出力に基づいて前記再生信号の信号品質を評価する信号品質評価手段とを備えることを特徴とする信号評価装置。
(第2の構成)
所定のしきい値Thを生成するしきい値生成手段をさらに備え、前記第1統計値演算手段は前記暗ピクセル値の平均μ0と標準偏差σ0を、前記第2統計値演算手段は前記明ピクセル値の平均μ1と標準偏差σ1をそれぞれ求め、前記信号品質評価手段は、(μ0−Th)/σ0から前記暗ピクセル値のエラーレートを、(Th−μ1)/σ1から前記明ピクセル値のエラーレートを、それぞれ統計演算を用いて算出し、それらを合算することによって総エラーレートを求めることを特徴とする第1の構成に記載の信号評価装置。
(第3の構成)
前記第1統計値演算手段は前記暗ピクセル値が異なる2つの所定値以下となる2つの累積相対度数に基づいて前記暗ピクセル値の平均μ0と標準偏差σ0を求め、前記第2統計値演算手段は前記明ピクセル値が異なる2つの所定値以下または以上となる2つの累積相対度数に基づいて前記明ピクセル値の平均μ1と標準偏差σ1を求めることを特徴とする第2の構成に記載の信号評価装置。
(第4の構成)
所定のテストビットが記憶されたメモリ手段をさらに備え、前記再生手段は前記テストビットに対応する再生信号を出力し、前記データ区分手段は、前記メモリ手段に記憶された前記テストビットに基づいて、前記再生信号を区分することを特徴とする第1の構成から第3の構成に記載の信号評価装置。
(第5の構成)
前記データ区分手段は、前記しきい値Thよりも小さい前記再生信号を前前記暗ピクセル値、前記しきい値Thよりも大きい前記再生信号を前記明ピクセル値に、それぞれ区分することを特徴とする第2の構成から第3の構成に記載の信号評価装置。
(第6の構成)
2次元の再生信号を再生するステップと、前記再生信号を暗ピクセル値と明ピクセル値とに区分するステップと、前記暗ピクセル値の度数分布の統計値を求めるステップと、前記明ピクセル値の度数分布の統計値を求めるステップと、前記暗ピクセル値の度数分布の統計値および前記明ピクセル値の度数分布の統計値に基づいて前記再生信号の信号品質を評価するステップとを備えることを特徴とする信号評価方法。
(第7の構成)
差分符号で符号化された2次元の再生信号を再生する再生手段と、差分符号ブロックの前記再生信号の差分値を求める差分値演算手段と、前記差分値の絶対値の度数分布の統計値を求める差分値統計値演算手段と、前記差分値統計値演算手段の出力に基づいて前記再生信号の信号品質を評価する信号品質評価手段とを備えることを特徴とする信号評価装置。
(第8の構成)
前記差分値統計値演算手段は前記差分値の平均μと標準偏差σを求め、前記信号品質評価手段は、σ/μを差分検出における信号品質評価値として出力することを特徴とする第7の構成に記載の信号評価装置。
(第9の構成)
前記差分値統計値演算手段は前記差分値の平均μと標準偏差σを求め、前記信号品質評価手段は、σとμから統計演算を用いて差分検出における前記再生信号のエラーレートを求めることを特徴とする第7の構成に記載の信号評価装置。
(第10の構成)
前記差分値統計値演算手段は前記差分値が異なる2つの所定値以下または以上となる2つの累積相対度数に基づいて前記差分値の平均μと標準偏差σを求めることを特徴とする第8の構成または第9の構成に記載の信号評価装置。
(第11の構成)
差分符号で符号化された2次元の再生信号を再生するステップと、差分符号ブロックの前記再生信号の差分値を求めるステップと、前記差分値の絶対値の度数分布の統計値を求めるステップと、前記差分値の絶対値の度数分布の統計値に基づいて前記再生信号の信号品質を評価するステップとを備えることを特徴とする信号評価方法。
また、実施形態1〜5で説明した信号評価装置の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにコンピュータを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
すなわち、信号評価装置100a、信号評価装置100b、信号評価装置100c、および信号評価装置100dは、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである信号評価装置100a、信号評価装置100b、信号評価装置100c、および信号評価装置100dの制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記信号評価装置100a、信号評価装置100b、信号評価装置100c、および信号評価装置100dに供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
また、信号評価装置100a、信号評価装置100b、信号評価装置100c、および信号評価装置100dを通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
このように本明細書において、手段とは必ずしも物理的手段を意味するものではなく、各手段の機能がソフトウェアによって実現される場合も含む。さらに、一つの手段の機能が二つ以上の物理的手段により実現されても、もしくは二つ以上の手段の機能が一つの物理的手段により実現されてもよい。
また、上記いずれの実施形態においても、再生システムの例としてホログラムメモリシステムについて説明したが、これに限らず、2次元信号の再生を行うシステムにおいて等しくその効果を発揮することができる。すなわち、他の再生システムとしてQRコードに代表される2次元バーコード再生システムなどにも本発明を適用することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれることはもちろんである。