JP2008094007A - 予備吐出方法及びインクジェット方式画像形成装置 - Google Patents

予備吐出方法及びインクジェット方式画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】外部環境や印刷速度によらず、予め決められた数のインク滴だけで確実な予備吐出を実行できる予備吐出方法を提供する。
【解決手段】プリンタで使用されるインクの種類、プリンタの外部環境及び印刷速度のうちの少なくともいずれか一つに基づいて、休止拡散時間(T2)を変えることにより、予備吐出の際にノズルから吐出されるインク滴の運動エネルギの大きさを変えることができるので、紙面予備吐出の回数を増やさなくても印字ヘッドを回復させられる。このため、紙面予備吐出によって増粘インクを排出して印字ヘッドを回復できると共に画像品位の向上を図れる。
【選択図】図11

Description

本発明は、印字ヘッドのノズルから吐出されるインク滴の吐出不良を防止するためにこのノズルからインク滴を予備吐出する予備吐出方法、及びこの予備吐出方法が実行されるインクジェット方式画像形成装置に関する。
印字ヘッド(記録ヘッド)に形成されたノズル内のインクに熱エネルギを供給して膜沸騰による気泡を形成し、この気泡の形成によってインクをノズルから記録媒体に吐出して画像を記録する(画像形成する)インクジェット方式画像形成装置が広く知られている。このタイプのインクジェット方式画像形成装置に用いられる記録ヘッドとしては、いわゆるラインヘッドが用いられることがある。ラインヘッドとしては、記録速度(画像形成速度)を向上する等のために、インク吐出口が形成されたノズルを複数集積したマルチノズルヘッドが使用されることが多い。ラインヘッドを用いたインクジェット方式画像形成装置では、通紙方向(記録媒体の搬送方向)に直交する直交方向に延びる複数のラインヘッドを通紙方向に並べて固定しておき、これら複数のラインヘッドの下に記録媒体を移動させながらこの記録媒体にインクを吐出して画像を形成する。
一般にプリンタには高速記録、高解像度、高画像品位などが要求されており、これらの要求を上記のインクジェット方式画像形成装置は満たしている。また、インクジェット方式画像形成装置では印字ヘッドが記録媒体に非接触であるので、非常に安定な記録が可能である。しかし、インクジェット方式画像形成装置では流体であるインクを扱うので、流体力学的な種々の不都合が印字ヘッドやその近傍で発生する。また、インクは液体であるので、その粘度などの性質は環境温度や放置時間によって随時変わっていく。このようなインクの性質の変化は印字(画像形成)に大きく影響を与えており、様々な問題(画質低下などのトラブル)が発生している。
上記のようなインクの性質の変化に起因する問題を防止して高画像品位などの要求を満たすために、インクジェット方式画像形成装置では予備吐出という動作が行われている。予備吐出とは、ノズルからのインク吐出の不良を防止するための動作であり、具体的には、画像形成のためのインク吐出とは別に、全ノズル又は不使用ノズル(画像形成に使用されずにインク吐出の無いノズル)から所定のタイミングでインクを吐出して、ノズル内の気泡や塵埃、溶媒の蒸発で増粘して記録に適さなくなったインク等の吐出不良要因を除去し、常に新鮮なインクを各ノズルに供給することによりノズル内のインクを常に印字可能な状態に保っておく動作(処理)である。予備吐出の方法としては、インク吸収体などで構成される所定のインク受けにインクを吐出する方法が知られている。この他の予備吐出方法として、ラインヘッドでロール紙等の連続紙を連続印刷する場合、印刷動作を一旦中止することによる印刷速度の低下を防ぐために、記録媒体に目立たないように直接にインク(滴)を予備吐出させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このようにインクを予備吐出させることにより、画像形成(記録)の安定性の向上を図っている。
上記のようにインクはその種類や外気温度・湿度のような外部環境などによって乾燥の度合い(増粘の度合い)等が変化する。また、印刷速度が速いときはノズルから頻繁にインクが吐出されるので予備吐出の頻度を下げてもよいが、この逆に、印刷速度が遅いときは予備吐出の頻度を上げる必要がある。このようにインクが乾燥し易い外部環境になった場合や印刷速度が遅くなった場合などは、ノズルから乾燥インク等を確実に除去するために、予備吐出の間隔を短くする(予備吐出の頻度を上げる)等で対応している。
特開昭55−139269号公報
ところが、記録媒体に直接にインク滴を予備吐出(紙面予備吐出)させる方法では、予備吐出の間隔を短くした場合、画像データを記録するインク滴以外のインク滴(予備吐出のためのインク滴)が記録媒体に多量に吐出されることとなる。このため、画像品位が低下するおそれがある。一方、予備吐出のインク滴を少なくした場合、外部環境等によっては、ノズルから乾燥インク等を吐出できない(除去できない)おそれがある。
本発明は、上記事情に鑑み、外部環境や印刷速度によらず、予め決められた数のインク滴だけで確実な予備吐出を実行できる予備吐出方法、及びこの予備吐出方法を実行するインクジェット方式画像形成装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明の予備吐出は、ノズル中のインクに気泡を形成することにより該ノズルから記録媒体にインク滴を吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置における、該ノズルからのインク吐出の不良を防止するために該ノズルからインク滴を予備吐出する予備吐出方法において、
(1)前記予備吐出の際に前記ノズルから吐出されるインク滴の運動エネルギの大きさを変えることを特徴とするものである。
ここで、
(2)前記運動エネルギの大きさを変えるに当たっては、インクの種類、外部環境、及び印刷速度のうちの少なくともいずれか一つに基づいて前記運動エネルギの大きさを変えてもよい。
また、
(3)画像形成中の記録媒体に前記予備吐出のインク滴を吐出してもよい。
さらに、
(4)前記印刷速度が遅くなるに伴って前記運動エネルギを大きくする一方、前記印刷速度が速くなるに伴って前記運動エネルギを小さくしてもよい。
さらにまた、
(5)インク中の水分が蒸発し易い前記外部環境になるに伴って前記運動エネルギを大きくする一方、インク中の水分が蒸発しにくい前記外部環境になるに伴って前記運動エネルギを小さくしてもよい。
さらにまた、
(6)前記ノズル中のインク滴に運動エネルギを付与する際に、ノズル内のインクの粘性を低下させてインク吐出効率を高めるために予備的にインクを温める予備加熱時間T1、この予備加熱時間T1による熱をノズル内のインクに拡散させる休止拡散時間T2、及び膜沸騰を生じさせてインク滴を吐出させるためにインクを加熱する、休止拡散時間T2に続く発泡加熱時間T3の3段階に別けてもよい。
さらにまた、
(7)前記運動エネルギの大きさを変える際に、前記予備加熱時間T1、前記休止拡散時間T2、前記発泡加熱時間T3のうちのいずれかの時間を変更してもよい。
さらにまた、
(8)前記予備加熱時間T1、前記休止拡散時間T2、前記発泡加熱時間T3のうちのいずれかの時間を変更する際に、前記ノズルから予備吐出されるインク滴の主滴及び副滴双方の着弾位置の差を所定範囲内にするようにしてもよい。
さらにまた、
(9)前記休止拡散時間T2は、該休止拡散時間T2が長くなると共に、前記ノズルから予備吐出されるインク滴の吐出速度が速くなる範囲内の時間であってもよい。
ここでいう外部環境とは、インクジェット方式画像形成装置の周辺の温度や湿度をいう。
本発明の予備吐出方法では、例えば印刷速度が遅くなったときや外部の湿度が低いときは不使用ノズル(画像形成に使用されずにインク吐出の無いノズル)内のインク(インク吐出口の近傍のインク)から水分が蒸発し易くてこのインクの粘性が高くなり易く、このような粘性の高いインクは予備吐出の際に吐出されにくいことがあるが、このような場合であっても、予備吐出の際にノズルからインクを吐出する運動エネルギを増大させるので、粘性の高いインクをノズルから確実に吐出できる。従来では上記のように印刷速度が遅くなったときや外部の湿度が低いときには予備吐出の回数を増やしていたが、本発明では予備吐出の回数を増やさずに上記の運動エネルギを増大する。従って、予備吐出のインク滴を記録媒体に吐出する紙面予備吐出として本発明の予備吐出方法を採用すれば記録媒体には、予め決められた数のインク滴しか吐出されないので、予備吐出に起因する画質の低下が防止される。一方、従来の予備吐出方法によれば、記録媒体に非常に多数のインク滴が吐出されて画質が低下することがある。また、本発明の予備吐出方法では、外部環境や印刷速度によらず、予め決められた数のインク滴だけで確実に予備吐出を実行でき、印字ヘッドを回復できる。従って、予備吐出の際に、むやみに多くのインク滴を吐出しなくても予備吐出の目的を達成できるので、高画像品位を図ることができる。
本発明は、印字ヘッドに形成された複数のノズルから記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式のプリンタに実現された。
図1を参照して、本発明の予備吐出方法が実行されるプリンタの一例を説明する。
図1は、本発明の予備吐出方法が実行されるプリンタの一例を模式的に示す正面図である。
プリンタ10は、このプリンタ10に画像情報を送るホストPC(パソコン)12に接続されている。プリンタ10には、4つ(4本)の印字ヘッド22K、22C、22M、22Yが記録媒体(ここではロ−ル紙)Pの搬送方向(矢印A方向)に並んで配置されている。4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yからはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの各色のインクが吐出される。これら4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yは、所謂ラインヘッドであり、図1の紙面に直交する方向(矢印A方向に直交する方向)に延びている。これら4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yの長さは、プリンタ10で印字できる記録媒体のうち最大の幅(図1の紙面に直交する方向の長さ)よりもやや長い。また、これら4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yは、画像形成中は固定されて動かない(不動状態である)。
4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yから安定してインクを吐出できるように、プリンタ10には回復ユニット40が組み込まれている。この回復ユニット40によって、印字ヘッド22K、22C、22M、22Yからのインク吐出状態は初期のインク吐出状態に回復する。回復ユニット40には、回復動作のときに4つの印字ヘッド22K、22C、22M、22Yのインク吐出口形成面22Ks、22Cs、22Ms、22Ysからインクを除去するキャッピング機構50が備えられている。キャッピング機構50は各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yに独立して設けられており、図1の例では6色分(即ち、6つのキャッピング機構50)が示されているが、このうち2色分は印字ヘッド追加時の予備的な機構である。キャッピング機構50は、周知のブレード、インク除去部材、ブレード保持部材、キャップ等から構成されている。
ロ−ル紙Pはロール紙供給ユニット24から供給され、プリンタ10に組み込まれた搬送機構26によって矢印A方向に搬送される。搬送機構26は、ロ−ル紙Pを載置して搬送する搬送ベルト26a、この搬送ベルト26aを回転させる搬送モータ26b、搬送ベルト26aに張力を与えるローラ26cなどから構成されている。
ロ−ル紙Pに画像を形成する際には、搬送中のロ−ル紙Pの記録開始位置がブラックの印字ヘッド22Kの下に到達した後に、記録データ(画像情報)に基づいて印字ヘッド22Kからブラックインクを選択的に吐出する。同様に印字ヘッド22C、印字ヘッド22M、印字ヘッド22Yの順に、各色のインクを吐出してカラー画像をロ−ル紙Pに形成する。プリンタ10には、上記の部品・部材の他、各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yに供給されるインクを貯めておくメインタンク28K、28C、28M、28Yや、印字ヘッド22K、22C、22M、22Yにインクを供給したり回復動作をしたりするための各種ポンプ(図示せず)などが備えられている。
プリンタ10では、画像形成中のロール紙Pに、画像形成に寄与するインク滴以外のインク滴を吐出する予備吐出が所定のタイミングで実行される。この予備吐出については後述する。
図2を参照して、プリンタ10の電気的な系統を説明する。
図2は、図1のプリンタの電気的な系統を示すブロック図である。
ホストPC12から送信された記録データやコマンドはインターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。CPU100は、プリンタ10の記録データの受信、記録動作、ロ−ル紙Pのハンドリング等全般の制御を掌る演算処理装置である。CPU100では、受信したコマンドを解析した後に、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開して描画する。記録前の動作処理としては、出力ポート114、モータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yをキャッピング機構50から離して記録位置(画像形成位置)に移動させる。
続いて、出力ポート114、モータ駆動部116を介してロ−ル紙Pを繰り出すロールモータ(図示せず)、及び低速度でロ−ル紙Pを搬送する搬送モータ120等を駆動してロ−ル紙Pを記録位置に搬送する。一定速度で搬送されるロ−ル紙Pにインクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するための先端検知センサ(図示せず)でロ−ル紙Pの先端位置を検出する。その後、ロ−ル紙Pの搬送に同期して、CPU100はイメージメモリ106から対応する色の記録データを順次に読み出し、この読み出したデータを各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yに印字ヘッド制御回路112を経由して(介して)転送する。
CPU100の動作はプログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラム、後述する予備吐出方法を実行するためのプログラム、及びテーブルなどが記憶されている。また、作業用のメモリとしてワークRAM108を使用する。各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yのクリーニングや回復動作時に、CPU100は、出力ポート114、モータ駆動部116を介してポンプモータ124を駆動し、インクの加圧、吸引等の制御を行う。また、予備吐出のために、画像形成中のロール紙Pに各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yからインク滴を吐出する際は、プログラムROM104に記憶された予備吐出プログラムに基づいて印字ヘッド制御回路112が各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yを制御して予備吐出を実行する。
図3を参照して印字ヘッド22Kのノズル22Knの構造を説明する。他の印字ヘッド22Y,22M,22Cのノズルも同一の構造である。図3は、ノズルとその周辺部を示す断面図である。図3には、1つのノズル22Knしか示していないが、印字ヘッド22Kには多数のノズルが並んで形成されている。
印字ヘッド22Kには、インクを吐出する多数のノズル22Knが、図3の紙面の垂直方向に並んで形成されている。多数のノズル22Knは、インクが貯められた共通液室150につながっている(連通している)。この共通液室150はサブタンク(図示せず)につながっており、サブタンクから共通液室150にインクが供給される。
ノズル22Knには、このノズル22Kn内のインク中で発泡させる(気泡を形成させる)ための発熱体152が配置されている。発熱体152に通電して発熱させることによりノズル22Kn内のインク中で泡(気泡)が発生し、ノズル22Knの出口(インク吐出口154)からインク滴が押し出されて吐出される。このインク滴の吐出については、図4を参照して後述する。
発熱体152は、シリコン素子基板156上に周知の技術で形成されている。このシリコン素子基板156には、後述するメニスカスMの近傍においてインクの濡れ性を均一化させるためにシリコン天板158とノズルI160が形成されており、これらシリコン天板158とノズルI160はノズル22Knの内壁に面している。シリコン天板158とノズルI160は樹脂で被覆されている。ノズルI160はノズル22Knのインク吐出口154の近傍の内壁に形成されて、インク吐出口154を狭めている。
上記した共通液室150もシリコン素子基板156に形成されている。また、発熱体152による発泡時にエネルギーを効率良くインク吐出方向(矢印D方向)に向かわせる弁162や、シリコン天板158からノズル22Kn内部に向かって垂直方向に延びる流路壁164もシリコン素子基板156に形成されている。ノズルI160は、多数のノズル22Kn等を作製する場合においてシリコン天板158を切断するときに欠け(チッピング)を生じさせないためのものである。シリコン素子基板156のうち共通液室150に面する部分にはサブヒータ166が形成されており、このサブヒータ166は、印字ヘッド22K内のインクの温度を一定に保って粘性を安定させることによりインクの安定吐出範囲内で印字させることを目的としている。
発熱体152は電気抵抗層及び配線をパタ−ンニングして形成されたものである。この配線を経由して電気抵抗層に電圧を印加して電流を流すことにより発熱体152が発熱する。この発熱によって発熱体152の表面部分のインクを発泡させ、インク吐出口154からインクを押し出して吐出させている。また、シリコン素子基板156と発熱体152に蓄積された熱の温度(蓄熱温度)を検知するためのDiセンサ(図示せず)がシリコン素子基板156に配置されており、このDiセンサが検知した検知温度に応じて印字ヘッド22Kの駆動条件が決定される。
ノズル22Kn中での発泡からインクの着弾までについて、図4を参照して説明する。
図4(a)は、発熱体を発熱させる前の待機状態を示す模式図であり、(b)は、発熱体が発熱してインク中に泡が発生すると同時にインク吐出口からインクが押し出された状態を示す模式図であり、(c)は、消泡すると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離した状態を示す模式図であり、(d)は、主滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図であり、(e)は、主滴に遅れて副滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図である。図4では、図3に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
発熱体を発熱させる前の待機状態では、ノズル22Kn内のインクには水頭差に相当する負圧が作用しており、このため、(a)に示すように、インク吐出口154にはメニスカスMが形成されている。この待機状態のときに、ホストPC12(図1参照)から印刷データ(画像情報)がプリンタ10へ送られ、この印刷データが印字ヘッド22Kにヒート信号として送られる。これにより発熱体152が発熱して、(b)に示すように、発熱体152の界面からインク中に泡Bが生じる(発泡する)と同時にインク吐出口154の近傍のインクがインク吐出口154から押し出される。
続いて、発熱体152の発熱が終了すると共に、生じた泡Bは消滅し(消泡し)、同時に、(c)に示すように、メニスカスMはノズル22Knの奥の位置まで後退する。一方、吐出されたインク滴Idは、主滴mと副滴(サテライト)sに分離する。サテライトsは、(c)に示すようなメニスカスMの後退の影響を受けて、インク吐出方向(矢印D方向)とは反対方向のベクトルの力を受けるので、主滴mよりも吐出速度が遅くなる。インク吐出口154からインク滴Idが吐出した後、後退したメニスカスMの位置は、ノズルKnの毛細管力(リフィル)によって、(d)に示すように待機状態まで復帰する。一方、吐出したインク滴Idの主滴mは、搬送中の記録媒体P上に着弾する。主滴mが記録媒体Pに着弾した後、サテライトsがこの記録媒体Pに着弾するまでの間、記録媒体Pは矢印A方向(搬送方向)に搬送される(移動する)ので、(e)に示すように、記録媒体Pの主滴m(記録媒体Pに吸収されている)が着弾した位置よりも矢印A方向上流側に副滴sが着弾する。この結果、主滴mと副滴sでは、着弾位置にずれLが発生する。このずれLの距離(間隔)は、記録媒体Pの搬送速度が速くなるほど長くなる(大きくなる)。このように一つのインク滴Idの主滴mと副滴sが記録媒体P上の相違する位置に着弾したときは画質が低下する。
予備吐出の際も上記と同じ手順でインク滴を吐出する。予備吐出の場合、各印字ヘッド22K、22C、22M、22Yに形成された全ノズルのうち不使用ノズルだけからインク滴を吐出してもよいし、全ノズルからインク滴を吐出してもよい。
図5を参照して、発熱体152(図3参照)を発熱させるタイミングについて説明する。
図5は、発熱体を発熱させるタイミングを示す説明図である。
図4を参照して説明したように発熱体152を発熱させてインク吐出口154(図4参照)からインク滴を吐出させるためには、予備加熱時間T1(図5のプレヒート信号PHがONで、メインヒート信号MHがOFFの時間)、休止拡散時間T2(プレヒート信号PH及びメインヒート信号MHともにOFFの時間)、発泡加熱時間T3(図5のメインヒート信号MHがONで、プレヒート信号PHがOFFの時間)からなる3つの段階を経る。図5のPHの右側に示す折れ線のうち高い部分(OFFで示す直線)は、発熱体152に通電されていないことを表し、折れ線のうち低い部分(ONで示す直線)は、予備加熱のために発熱体152に通電されていることを表している。また、図5のMHの右側に示す折れ線のうち高い部分(OFFで示す直線)は、発熱体152に通電されていないことを表し、折れ線のうち低い部分(ONで示す直線)は、発泡加熱のために発熱体152に通電されていることを表している。
インク吐出口154(図4等参照)からインクを吐出するに際しては、プレヒート信号PHがONである時間(T1)内にノズル22Kn内のインクを温めることによりこのインクの粘度を低めてインク吐出効率を上げる。予備加熱時間T1が経過した後、休止拡散時間T2だけ発熱体152をOFFにする(発熱体152に通電しない)。休止拡散時間T2が経過した後、発泡加熱時間T3だけ発熱体152をONにする(発熱体152に通電する)。メインヒート信号MHがONである時間(T3)内に発熱体152(図3等参照)の表面で膜沸騰を起こさせてインクを吐出させる(図4の説明を参照)。
プレヒート信号PHがONの時間帯とメインヒート信号MHがONの時間帯の間に時間差(休止拡散時間T2)が存在する理由は、プレヒート信号PHがONのときの加熱による熱をノズル内のインクに拡散させることにより、インク吐出の効率を高めているからである。本発明では、休止拡散時間T2の長短によって、インク吐出口154(図4等参照)から吐出されるインク滴の運動エネルギの大きさが変化することに着目して、この運動エネルギを制御している。但し、休止拡散時間T2を極端に長くしてしまうと、外気温度の影響を受けてノズル内のインクの温度が低下してしまう。このため、本実施例では、休止拡散時間T2の時間の増加と共に上記の運動エネルギが増加する範囲内で休止拡散時間T2を制御している。また、この運動エネルギの大きさは、プリンタ10(図1等参照)で使用するインクの種類、プリンタ10の外部環境(温度や湿度)、及び印刷速度(記録媒体の搬送速度)のうちの少なくともいずれか一つに基づいて変える。
この運動エネルギが大きいほどインク滴はインク吐出口154から勢い良く吐出されるので、インク吐出口154に増粘インクが存在していても、後述するようにこの増粘インクもインク吐出口154から吐出される。また、この運動エネルギの詳細については後述する。
ここで、増粘インクの生成について、図6を参照して説明する。
図6は、インク吐出口のインクが大気中に暴露されたときの経時変化を模式的に示す断面図であり、(a)は、増粘インクが無い状態を示す断面図であり、(b)は、粘性の低い(粘度の低い)増粘インクが生成された状態を示す断面図であり、(c)は、粘性の高い(粘度の高い)増粘インクが生成された状態を示す断面図である。図6では、図3と図4に示す構成要素と同じ構成要素には同じ符号が付されている。
インク吐出口154のインクIは空気中に暴露されることにより、空気に触れているインクIの界面から徐々に水分が蒸発してインクIの粘度が増し増粘してくる。インクIが空気中に暴露される時間が短い場合は、(a)に示すように増粘インクは生成されない。しかし、インクIの種類によって異なるが、インクIが空気中に暴露される時間がある程度経ったときはインク吐出口154に、(b)に示すように、比較的粘度の低い増粘インクがIZ1が生成される。インクIが空気中に暴露される時間が長時間になったときはインク吐出口154に、(c)に示すように、水分が完全に蒸発して溶剤だけとなった粘度の高い増粘インクIZ2が生成される。(c)に示すように粘度の高い増粘インクIZ2が生成された場合、インク吐出口154が増粘インクIZ2で塞がれたような状態になるので、従来の予備吐出ではインク吐出口154から(ノズル22Knから)インク滴が吐出されにくい。このような場合は、ノズル22Kn内のインクに直接に圧力をかけてノズル22Knからインクを押し出す。しかし、この方法ではインクが多量に排出されるだけでなく時間も要する。このため、長期間にわたって印字ヘッドを放置した場合((c)に示す増粘インクIZ2が生成された可能性が大きい場合)にこの方法は実行されるが、それ以外の場合では、(b)に示す状態になったときに予備吐出を実行する。即ち、従来は、外部環境や印刷速度によっては(b)に示す状態になり易いときは、予備吐出の頻度を高く(単位時間当たりの予備吐出回数を多く)していた。従って、紙面予備吐出をする場合、紙面予備吐出による多数のインク滴が記録媒体に着弾して画像品位を低下させていた。そこで、本発明では、(c)に示す状態になっても、少ない回数の予備吐出(頻度の低い予備吐出)でインク滴を確実に吐出できるようにした。
図6(b)に示す状態になったときに予備吐出を実行して回復させるまでのインクの挙動について図7を参照して説明する。
図7は、比較的粘度の低い増粘インクのときに予備吐出を実行した場合のインクの挙動を模式的に示す、(a)は、比較的粘度の低い増粘インクが生成された状態を模式的に示す断面図であり、(b)は、予備吐出のために気泡を発生させた状態を模式的に示す断面図であり、(c)は、比較的粘度の低い増粘インクを含んだインクを予備吐出させた状態を模式的に示す断面図である。この図では、図6に示す構成要素と同じ構成要素には同じ符号が付されている。
暴露によって増粘したインクIZ1は、発熱体152に通電して(b)に示すように気泡Bを発生させることによる運動エネルギによって、(c)に示すようにインクIと共に吐出される。これによりノズル22Kn内のインクをフレッシュな状態に回復できる。図7では、粘度の低い増粘インクIZ1を予備吐出によって除去する例を説明した。しかし、粘度の高い増粘インクIZ2(図6参照)は、従来の予備吐出では除去できない。このような粘度の高い増粘インクIZ2(図6参照)を除去できる本発明の予備吐出方法については後述する。
記録媒体(紙)Pに直接にインク滴を吐出して印字ヘッドのインク吐出状態を初期の状態に回復させる紙面予備吐出について、図8と図9を参照して説明する。
図8は、128個のノズルが形成された印字ヘッドについて1ライン(紙の搬送方向(矢印A方向)に直交する幅方向(矢印W方向)の一ライン)に一つのインク滴を紙面予備吐出した状態を示す平面図である。図9は、図8と同じく128個のノズルが形成された印字ヘッドについて10ラインに一つのインク滴を紙面予備吐出した状態を示す平面図である。
紙面予備吐出を画像形成(印刷)中に行う場合、印刷を中断させることなく連続印刷が可能となる。印字ヘッド22K(他の印字ヘッドも同様)のインク吐出口154のインクは印刷中には大気中に暴露し続けるので、本実施例では、一定期間内に必ず全てのノズルからインク滴を吐出させる紙面予備吐出が実行されるものとする。ただし、紙面予備吐出の際に全てのノズルから一度にインクを吐出した場合、この紙面予備吐出によるインク滴が記録紙P上に直線的な画像を形成するので、一定期間内に各ノズルからランダム的にインク滴を吐出させる。128個のノズルが形成された印字ヘッド22Kから記録媒体P上の1ラインに1つのインク滴(インク滴は黒丸で表し、インク滴の無い部分は白丸で表す。)を紙面予備吐出した場合、図8に示すように、紙面上には予備吐出による比較的多量のインク滴が着弾する。一方、128個のノズルが形成された印字ヘッドについて10ラインに一つのインク滴を紙面予備吐出した場合、図9に示すように、紙面上には予備吐出によるインク滴は少なくて目立たない。
従って、印刷を中断させることなく連続印刷をするためには紙面予備吐出を実行すればよいが、紙面予備吐出の際に吐出するインク滴は少ないほど高品位の画像が得られる。本発明の予備吐出方法を用いた場合、インク吐出口のインクが乾燥し易い条件であっても、後述するように、紙面予備吐出の際に吐出するインク滴の数を従来の予備吐出よりも少なくできる。
ノズル内のインクが増粘する速度は、印字ヘッドの近傍の湿度が低くなるほど早くなる。このため、印字ヘッドの近傍の湿度が低くなるほど、図6(c)に示すように粘度の高い増粘インクIZ2が生成され易くなる。従って、高画像品位を保つためには紙面予備吐出を実行する頻度を上げる必要があるが、この頻度を上げた場合は図8に示すように、紙面予備吐出のインク滴が目立って画像品位が低下する。しかし、本発明の予備吐出方法によれば、図6(c)に示すように粘度の高い増粘インクIZ2が生成されても、後述するように、ノズルからインクを吐出する際の運動エネルギを大きくするので、紙面予備吐出の頻度を上げずに(回数を増やさずに)印字ヘッドを回復できると共に高画像品位を保つことができる。
図10を参照して、印刷速度とノズル不使用時間について説明する。
図10は、一つの画像と次の画像の間に紙面予備吐出する一例を模式的に示す平面図である。
記録媒体Pが矢印A方向(記録媒体搬送方向)に搬送速度(印刷速度)Bで搬送される場合、印刷データD1(A、B、C、黒四角)から次の印刷データD2(A、B、黒四角)までの間隔(距離)Lに相当する搬送時間は、搬送速度Bが遅くなるほど長くなる。この間隔Lに相当する搬送時間はノズル内のインクが暴露される時間に相当するので、従来の紙面予備吐出では暴露時間が長くなるほど、紙面に吐出されるインク滴が多くなる。この一例を表1に示す。

Figure 2008094007
表1では、印刷速度が遅いほど上記の間隔Lに相当する搬送時間は長くなり、この搬送時間は非記録時間(ノズル不使用時間)となることを表しており、この逆に、印刷速度が速いほど上記の間隔Lに相当する搬送時間は短くなり、この搬送時間は非記録時間(ノズル不使用時間)が短くなることを表している。
紙面予備吐出を実行する場合において、印刷速度が遅いとき(例えば表1の1m/minのとき)は、ノズル内のインクが、図6(c)の増粘インクIZ2にならないように、紙面予備吐出の頻度を上げる。このため、上述したように、従来の紙面予備吐出では、多数のインク滴が記録媒体Pに着弾して画像品位が低下するおそれがある。
しかし、本発明の予備吐出方法によれば、図6(c)に示すように粘度の高い増粘インクIZ2が生成されても、後述するように、ノズルからインクを吐出する際の運動エネルギを大きくするので、紙面予備吐出の頻度を上げずに印字ヘッドを回復できると共に高画像品位を保つことができる。
図11と図12を参照して、図5の休止拡散時間T2に対する主滴及び副滴(サテライト)の吐出速度の関係を説明する。この関係は、本発明者らが発見したものである。
図11(a)は、主滴と副滴を模式的に示す断面図であり、(b)は、休止拡散時間T2に対する主滴及び副滴の吐出速度を表すグラフである。図12は、休止拡散時間T2に対するインク滴の吐出量を表すグラフである。図11では、図3に示す構成要素と同じ構成要素には同じ符号が付されている。
ノズル22Knからインク滴が吐出する際のインク滴の主滴mの速度をVmとし、副滴sの速度をVsとし、インク吐出口154から記録媒体Pまでの距離をhとし、記録媒体Pの搬送方向をAとする。ノズル22Knへのインクの供給が充分な場合、PH(T1)(図5参照)での加熱による熱がノズル22Kn内のインクに拡散する休止拡散時間T2が増加するに伴ってインクの温度が上昇する。この結果、ノズル22Kn内のインクの粘度が低下すると共に、発泡加熱時間T3における発泡効率が向上して、図11(b)に示すように、主滴の吐出速度がVm1からVm2に向けて上昇し、副滴の吐出速度もVs1からVs2に向けて上昇する。また、インク滴の吐出量(一つのインク滴の量)についても同様に、図12に示すように、PH(T1)(図5参照)での加熱による熱がノズル22Kn内のインクに拡散する休止拡散時間T2が増加するに伴ってインク滴の吐出量は、Vd1からVd2に向けて増加する。
このように、休止拡散時間T2を変えることにより、インク滴の主滴m及び副滴sの吐出速度Vm、Vsと吐出量が変わる。休止拡散時間T2を一定条件で長くすることにより、インク滴の主滴m及び副滴sの吐出速度Vm、Vsは上昇すると共にインク吐出量Vdも増加する。この逆に、休止拡散時間T2を一定条件で短くすることにより、インク滴の主滴m及び副滴sの吐出速度Vm、Vsは下降すると共にインク吐出量Vdも減少する。このような知見に基づいて本発明の予備吐出方法は見出された。
インク滴の主滴m及び副滴sの吐出速度Vm、Vsと運動エネルギの関係を説明する。
ノズル22Knから吐出される際のインク滴の運動エネルギEは、数1に示すように、吐出量Mと吐出速度Vの二乗の積で表される。

Figure 2008094007
図11と図12で説明したように休止拡散時間(T2)を増加させることにより、主滴m及び副滴sの吐出速度Vm、Vsは上昇すると共にインク吐出量Vdも増加する。従って、休止拡散時間(T2)を増加させた場合、ノズル22Knから吐出されるインク滴の運動エネルギが増加する。ただし、上述したように、休止拡散時間T2を極端に長くした場合、外気温度の影響を受けてノズル内のインクの温度が低下してしまうので、本実施例では、休止拡散時間T2の時間の増加と共に上記の運動エネルギが増加する範囲内で休止拡散時間T2を制御している。
休止拡散時間(T2)を変えて限界暴露時間の変化を測定した実験例を表2に示す。ここでいう限界暴露時間とは、ノズル(インク吐出口)を大気に暴露していても、予備吐出によって正常なインク吐出を行える限界の時間をいう。この限界暴露時間以内のときはインク吐出口に増粘インクが生成されても、この増粘インクを予備吐出によって吐出できるが、限界暴露時間を超えたときは予備吐出によっては増粘インク(又はその一部)を吐出できない。


Figure 2008094007
表2に示すように、休止拡散時間(T2)を変えて予備吐出した場合、休止拡散時間(T2)が長くなるほど(ただし、表1では3μsecまでであり、上限の時間がある)限界暴露時間が延びている。例えば、休止拡散時間(T2)が1μsecのときは限界暴露時間は34secであるが、休止拡散時間(T2)を3μsecにしたときは限界暴露時間は50secになる。休止拡散時間(T2)を長くすることにより、数1に表すようにノズルから吐出されるインク滴の運動エネルギが増大するので、図6(c)に示すように粘度の高い増粘インクIZ2が生成されても、この増粘インクIZ2も吐出されることとなる。従って、プリンタ10(図1参照)で使用するインクの種類、プリンタ10の外部環境及び印刷速度のうちの少なくともいずれか一つに基づいて、休止拡散時間(T2)を変えることにより、予備吐出の際にノズルから吐出されるインク滴の運動エネルギの大きさを変えることができるので、紙面予備吐出の回数を増やさなくても印字ヘッドを回復させられる。このため、紙面予備吐出によって増粘インクを排出して印字ヘッドを回復できると共に画像品位の向上を図れる。
なお、上記の例では、休止拡散時間(T2)を変えてインク滴の運動エネルギを変えたが、予備加熱時間T1や発泡加熱時間T3を変えてインク滴の運動エネルギを変えるようにしてもよい。
ところで、図11を参照して説明したように、休止拡散時間(T2)の増加に伴い、主滴の吐出速度(Vm)と副滴の吐出速度(Vs)が増加する。このため、図4を参照して説明したように主滴の着弾位置から副滴の着弾位置までの距離(主滴―副滴距離)が長くなってしまう。この距離は、数2の式で表される。この式中の記号は、図11の記号が表す意味と同じである。

Figure 2008094007
この式によれば、主滴―副滴距離は、インク吐出口154(図11等参照)から記録媒体Pまでの距離hが一定の場合、記録媒体Pの搬送速度Bに比例するが、インク滴の吐出速度(主滴Vm,副滴Vs)に反比例する。従って、予備吐出のためにインク滴の運動エネルギを高める場合、インク滴の吐出速度(Vm,Vs)が速くなる結果、図11(b)に示すように、主滴Vmの吐出速度と副滴Vsの吐出速度の差がおおきくなって主滴―副滴距離が長くなる。この主滴―副滴距離が長くなることは画質が低下することを意味する。このため、各印刷速度における休止拡散時間(T2)は、各々のプリンタ(記録装置)の主滴―副滴距離の規格内で最大の休止拡散時間(T2)を選択する必要がある。
表3に休止拡散時間(T2)と各印刷速度における主滴−副滴距離のテーブルの一例を示す。但し、各印刷速度における休止拡散時間(T2)は、各々のプリンタ(記録装置)の主滴―副滴距離の規格内で最大の休止拡散時間(T2)を選択する際において、印刷速度が上昇するとともに、同一ノズルにおける吐出タイミングが短くなり、休止拡散時間(T2)を伸ばしすぎた場合は、ラインプリンターのノズル列方向において全ノズルの吐出が間に合わなくなるので、上記の休止時間は、印刷速度中で許容される範囲内で選択する必要がある。

Figure 2008094007
表3に示すように、例えば主滴−副滴距離が規格(30μm)内(表3の斜線部分)の場合、印刷速度が30m/minのときは、休止拡散時間(T2)は1μsec以下になる。
図13を参照して、本発明の予備吐出方法の一例の手順を説明する。
図13は、本発明の予備吐出方法を実行するプリンタ10における手順の一例を示すフロー図である。
このフローは、プリンタ10(図1等参照)の主電源が投入されたときに起動する。先ず、プリンタ10に印刷データが有るか否かを判定し(S1301)、印刷データのある場合は、印刷データ内の印刷速度データ(V1)を検出して(S1302)プリンタ10のワークRAM108(図2参照)に格納しておく。印刷速度データ(V1)とプリンタ10内のプログラム上にあるヘッド駆動データ(休止拡散時間T2等に関するデータ)と印字ヘッドの主滴−副滴距離のプロファイルに基づいて、最適なヘッド駆動(発熱体152(図4等参照)に通電する際の制御)を確認する(S1303)。紙面予備吐出を実行させる指令を発して(S1304)印刷を開始する(S1305)。
印刷中に、ユーザー等による割り込みによって印刷速度が変更されることもあるので、一定時間間隔内又は搬送に同期したエンコーダー等によって印刷速度(V2)を確認し(S1306)、ワークRAM108に格納しておいた印刷速度(V1)と印刷速度(V2)とを比較する(S1307)。2つの印刷速度(V1)と印刷速度(V2)が一致しなかったときは(印刷速度に変更があったときは)、再び印刷速度(V1)とプリンタ内のプログラム上にあるヘッド駆動(休止拡散時間T2)とヘッドの主滴−副滴距離のプロファイルに基づいて、最適なヘッド駆動を確認して駆動条件(発熱体152(図4等参照)を発熱させる図5に示すT1、T2、T3等の条件)を決める(S1308)。上記の制御を印刷終了まで行い(S1309)、印刷が終了したと判定されたときは印刷待機モードに進み(S1310)、このフローを終了する。
上述したように本発明の予備吐出方法では、予備吐出の際にノズルから吐出されるインク滴の運動エネルギを増大させることにより、粘性の高いインクをノズルから確実に吐出できる。また、本発明の予備吐出方法では、外部環境や印刷速度によらず、予め決められた数のインク滴だけで確実な予備吐出を実行できるので、印字ヘッドを初期のインク吐出状態に回復できる。従って、予備吐出の際に、むやみに多くのインク滴を吐出しなくても予備吐出の目的を達成できるので、高画像品位を図ることができる。
上記した予備吐出方法は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インタフェイス機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置など)に適用してもよい。また、上記の予備吐出方法は、上記実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても達成されることは言うまでもない。この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が上記実施例の機能を実現することとなる。このプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えばフロッピ(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、上記実施例の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づきコンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上記実施例の機能が実現される場合も含まれる。さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上記実施例の機能が実現される場合も含まれる。
本発明の実施例2として、外部環境に応じてT2を変更した例を挙げる。
図14と図15を参照して、本発明の予備吐出方法が実行されるプリンタの実施例2を説明する。
図14は、外気温度が一定のときにおける記録ヘッド近傍の湿度と休止拡散時間T2との関係を示すグラフである。図15は、実施例2の予備吐出方法を実行するプリンタ10における手順の一例を示すフロー図である。
図14に示すように、ヘッド近傍の湿度が上昇する(例えば10%から30%)に伴って、ノズル内のインクの水分が蒸発しにくくなるので、予備吐出による限界暴露時間が増加する。また、図14には示していないが、同一の湿度では外気温度の上昇と共に、ノズル内のインクが蒸発しやすくなるので、予備吐出による限界暴露時間が減少する。表4には、湿度10%、20%、30%のときの限界暴露時間と、休止拡散時間T2との具体例を示す。表4に示すように、休止拡散時間(T2)を変えて予備吐出した場合、休止拡散時間(T2)が長く、且つ、ヘッド周辺の湿度が高くなるほど(ただし、表4ではT2は3μsecまで、湿度は30%までであり、上限の時間と湿度がある)限界暴露時間が延びている。例えば、休止拡散時間(T2)が1μsecで湿度が20%のときは限界暴露時間は29secであるが、休止拡散時間(T2)を3μsecで湿度が30%のときは限界暴露時間は50secになる。

Figure 2008094007
図15に示すフローは、プリンタ10(図1等参照)の主電源が投入されたときに起動する。先ず、プリンタ10に印刷データが有るか否かを判定し(S1501)、印刷データのある場合は、印刷データ内の印刷速度データ(V1)を検出して(S1502)プリンタ10のワークRAM108(図2参照)に格納しておく。続いて、印字ヘッドの近傍の湿度を検出して(S1503)ワークRAM108(図2参照)に格納しておく。ヘッド近傍の湿度を検知する理由は、ヘッド駆動プロファイルにフィードバックさせるためである。印刷速度データ(V1)とプリンタ10内のプログラム上にあるヘッド駆動データ(休止拡散時間T2等に関するデータ)と印字ヘッドの主滴−副滴距離のプロファイルに基づいて、最適なヘッド駆動(発熱体152(図4等参照)に通電する際の制御)を確認する(S1504)。紙面予備吐出を実行させる指令を発して(S1505)印刷を開始する(S1506)。
印刷中に、ユーザー等による割り込みによって印刷速度が変更されることもあるので、一定時間間隔内又は搬送に同期したエンコーダー等によって印刷速度(V2)を確認し(S1507)、ワークRAM108に格納しておいた印刷速度(V1)と印刷速度(V2)とを比較する(S1508)。2つの印刷速度(V1)と印刷速度(V2)が一致しなかったときは(印刷速度に変更があったときは)、再び印刷速度(V1)とプリンタ内のプログラム上にあるヘッド駆動(休止拡散時間T2)とヘッドの主滴−副滴距離のプロファイルに基づいて、最適なヘッド駆動を確認して駆動条件(発熱体152(図4等参照)を発熱させる図5に示すT1、T2、T3等の条件)を決める(S1509)。上記の制御を印刷終了まで行い(S1510)、印刷が終了したと判定されたときは印刷待機モードに進み(S1511)、このフローを終了する。
上記のように印字ヘッド周辺の湿度を加味することにより、予備吐出の際に、むやみに多くのインク滴を吐出しなくても予備吐出の目的を達成できるので、高画像品位を図ることができる。
本発明の予備吐出方法が実行されるプリンタの一例を模式的に示す正面図である。 図1のプリンタの電気的な系統を示すブロック図である。 ノズルとその周辺部を示す断面図である。 (a)は、発熱体を発熱させる前の待機状態を示す模式図であり、(b)は、発熱体が発熱してインク中に泡が発生すると同時にインク吐出口からインクが押し出された状態を示す模式図であり、(c)は、消泡すると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離した状態を示す模式図であり、(d)は、主滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図であり、(e)は、主滴に遅れて副滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図である。 発熱体を発熱させるタイミングを示す説明図である。 インク吐出口のインクが大気中に暴露されたときの経時変化を模式的に示す断面図であり、(a)は、増粘インクが無い状態を示す断面図であり、(b)は、粘性の低い(粘度の低い)増粘インクが生成された状態を示す断面図であり、(c)は、粘性の高い(粘度の高い)増粘インクが生成された状態を示す断面図である。 比較的粘度の低い増粘インクのときに予備吐出を実行した場合のインクの挙動を模式的に示す、(a)は、比較的粘度の低い増粘インクが生成された状態を模式的に示す断面図であり、(b)は、予備吐出のために気泡を発生させた状態を模式的に示す断面図であり、(c)は、比較的粘度の低い増粘インクを含んだインクを予備吐出させた状態を模式的に示す断面図である。 128個のノズルが形成された印字ヘッドについて1ライン(紙の搬送方向(矢印A方向)に直交する幅方向(矢印W方向)の一ライン)に一つのインク滴を紙面予備吐出した状態を示す平面図である。 図8と同じく128個のノズルが形成された印字ヘッドについて10ラインに一つのインク滴を紙面予備吐出した状態を示す平面図である。 一つの画像と次の画像の間に紙面予備吐出する一例を模式的に示す平面図である。 (a)は、主滴と副滴を模式的に示す断面図であり、(b)は、休止拡散時間T2に対する主滴及び副滴の吐出速度を表すグラフである。 休止拡散時間T2に対するインク滴の吐出量を表すグラフである。 本発明の予備吐出方法を実行するプリンタ10における手順の一例を示すフロー図である。 外気温度が一定のときにおける記録ヘッド近傍の湿度と休止拡散時間T2との関係を示すグラフである。 実施例2の予備吐出方法を実行するプリンタにおける手順の一例を示すフロー図である。
符号の説明
10 プリンタ
22K、22C、22M、22Y 印字ヘッド
22Kn ノズル
T1 予備加熱時間
T2 休止拡散時間
T3 発泡加熱時間
Id インク滴
m インク滴の主滴
s インク滴の副滴

Claims (10)

  1. ノズル中のインクに気泡を形成することにより該ノズルから記録媒体にインク滴を吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置における、該ノズルからのインク吐出の不良を防止するために該ノズルからインク滴を予備吐出する予備吐出方法において、
    前記予備吐出の際に前記ノズルから吐出されるインク滴の運動エネルギの大きさを変えることを特徴とする予備吐出方法。
  2. 前記運動エネルギの大きさを変えるに当たっては、インクの種類、外部環境、及び印刷速度のうちの少なくともいずれか一つに基づいて前記運動エネルギの大きさを変えることを特徴とする請求項1に記載の予備吐出方法。
  3. 画像形成中の記録媒体に前記予備吐出のインク滴を吐出することを特徴とする請求項1又は2に記載の予備吐出方法。
  4. 前記印刷速度が遅くなるに伴って前記運動エネルギを大きくする一方、前記印刷速度が速くなるに伴って前記運動エネルギを小さくすることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の予備吐出方法。
  5. インク中の水分が蒸発し易い前記外部環境になるに伴って前記運動エネルギを大きくする一方、インク中の水分が蒸発しにくい前記外部環境になるに伴って前記運動エネルギを小さくすることを特徴とする請求項1から4までのうちのいずれか一項に記載の予備吐出方法。
  6. 前記ノズル中のインク滴に運動エネルギを付与する際に、ノズル内のインクの粘性を低下させてインク吐出効率を高めるために予備的にインクを温める予備加熱時間T1、この予備加熱時間T1による熱をノズル内のインクに拡散させる休止拡散時間T2、及び膜沸騰を生じさせてインク滴を吐出させるためにインクを加熱する、休止拡散時間T2に続く発泡加熱時間T3の3段階に別けることを特徴とする請求項1から5までのうちのいずれか一項に記載の予備吐出方法。
  7. 前記運動エネルギの大きさを変える際に、前記予備加熱時間T1、前記休止拡散時間T2、前記発泡加熱時間T3のうちのいずれかの時間を変更することを特徴とする請求項6に記載の予備吐出方法。
  8. 前記予備加熱時間T1、前記休止拡散時間T2、前記発泡加熱時間T3のうちのいずれかの時間を変更する際に、前記ノズルから予備吐出されるインク滴の主滴及び副滴双方の着弾位置の差を所定範囲内にすることを特徴とする請求項7に記載の予備吐出方法。
  9. 前記休止拡散時間T2は、
    該休止拡散時間T2が長くなると共に、前記ノズルから予備吐出されるインク滴の吐出速度が速くなる範囲内の時間であることを特徴とする請求項6、7、又は8に記載の予備吐出方法。
  10. 請求項1から9までのうちのいずれか一項に記載の予備吐出方法が実行されることを特徴とするインクジェット方式画像形成装置。
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