以下、添付した図面を参照して、本発明に係る液体吐出装置及びこれを備えた画像形成装置について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の一実施形態の概略を示す全体構成図である。
図1に示したように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の印字ヘッド(インクジェット記録ヘッド)12K、12C、12M、12Yを有する印字部と、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26とを備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(図示省略)が形成されている。図1に示したとおり、ローラー31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー34が設けられており、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yは、図2に示すように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、ここで主走査方向及び副走査方向とは、次に言うような意味で用いている。すなわち、記録紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時、(1)全ノズルを同時に駆動するか、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動するか、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動するか、等のいずれかのノズルの駆動が行われ、用紙の幅方向(記録紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字をするようなノズルの駆動を主走査と定義する。そして、この主走査によって記録される1ライン(帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向という。
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、副走査を行う方向を副走査方向という。結局、記録紙の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
また本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段(不吐出検出手段)として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(図示省略)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
次に、印字ヘッド(液滴吐出ヘッド)について説明する。インク色毎に設けられている各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを表すものとし、図3に印字ヘッド50の平面透視図を示す。
図3に示すように、本実施形態の印字ヘッド50は、インクを液滴として吐出するノズル51、インクを吐出する際インクに圧力を付与する圧力室52、図示しない共通流路から圧力室52にインクを供給するインク供給口53を含んで構成される圧力室ユニット54が千鳥状の2次元マトリクス状に配列され、ノズル51の高密度化が図られている。
図3に示すように、各圧力室52は、上方から見ると略正方形状をしており、その対角線の一方の端にノズル51が形成され、他方の端にインク供給口53が設けられている。
また、図3中の4−4線に沿った断面図を図4に示す。
図4に示すように、圧力室ユニット54は、インクを吐出するノズル51と連通する圧力室52によって形成され、圧力室52には、供給口53を介してインクを供給する共通流路55が連通するとともに、圧力室52の一面(図では天面)は振動板56で構成され、その上部には、振動板56に圧力を付与して振動板56を変形させる圧電素子58が接合され、圧電素子58の上面には個別電極57が形成されている。また、振動板56は共通電極を兼ねている。
圧電素子58は、共通電極(振動板56)と個別電極57によって挟まれており、これら2つの電極56、57に駆動電圧を印加することによって変形する。圧電素子58の変形によって振動板56が押され、圧力室52の容積が縮小されてノズル51からインクが吐出されるようになっている。2つの電極56、57間への電圧印加が解除されると圧電素子58がもとに戻り、圧力室52の容積が元の大きさに回復し、共通流路55から供給口53を通って新しいインクが圧力室52に供給されるようになっている。
また、図5は他の印字ヘッドの構造例を示す平面透視図である。図5に示すように、複数の短尺ヘッド50’を2次元の千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、これらの複数の短尺ヘッド50’全体で印字媒体の全幅に対応する長さとなるようにして1つの長尺のフルラインヘッドを構成するようにしてもよい。
図6は、インクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク60は印字ヘッド50にインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を代える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じて吐出制御を行うことが好ましい。なお、図6のインクタンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図6に示したように、インクタンク60と印字ヘッド50を繋ぐ管路の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは印字ヘッド50のノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図6には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズルの乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aのインクが増粘したノズルを選択的に加湿してノズルを回復する加湿機構65が設けられている。また、詳しくは後述するが、加湿機構65は、ノズル面50Aの清掃手段としてのクリーニングブレードを有している。
これらキャップ64及び加湿機構65を含むメンテナンスユニットは、図示を省略したそれぞれの移動機構によって印字ヘッド50に対してそれぞれ相対移動可能とされ、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示を省略した昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aのノズル領域をキャップ64で覆うようになっている。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ノズル近傍のインク粘度が上昇した場合には、その劣化インクをキャップ64に向かって強制的に排出する予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入したりしてインクが吐出できなくなったような場合には、印字ヘッド50にキャップ64を当てて、吸引ポンプ67で圧力室52内の気泡が混入したインクを吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する吸引動作が行われる。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時(ファーストローディング時)等において行われる。また、長時間の停止後の使用開始時等において、インク粘度が上昇して固化したような場合にも、劣化インクの吸い出しが行われる。
このように、印字ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータ58が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなるため、この様な状態になる手前で(アクチュエータ58の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かってアクチュエータ58を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。
ノズル51や圧力室52に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えて、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなったような場合には、印字ヘッド50のノズル面50Aに、キャップ64を当てて圧力室52内の気泡が混入したインク又は増粘インクをポンプ67で吸引する動作が行われる。
なお、図6で説明したキャップ64は、吸引手段として機能するとともに、予備吐出のインク受けとしても機能し得る。また、好ましくは、キャップ64の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とする。
ただし、上記の吸引動作は、圧力室52内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合はなるべく吸引動作ではなく、予備吐出によってノズルの回復を行うことができることが好ましい。
図7は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(図示省略)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなどの磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒーター89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従ってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒーター89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図7において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド50のアクチュエータ58を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサー(図示省略)を含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行う。また、プリント制御部80は、印字データに基づいて、一定時間吐出が行われないノズル51、あるいは他のノズルに比較して使用頻度の低いノズル51を選択し、あるいは印字検出部24によって不吐出が検出されたノズル51を選択して、この選択されたノズル51に対して蒸気を当てて加湿を行うように加湿機構65を制御する。すなわち、プリント制御部80は、蒸気を当てるべきノズル51を選択するノズル選択手段としても機能する。
図8は、本実施形態に係る加湿機構65を示す一部断面図を含む概略構成図である。
図8に示すように、本実施形態の加湿機構65は、蒸気用液供給部90、蒸気発生部92、ノズル面清掃部94から成り、これらがシャフト96上を移動する支持台98上に一体に形成されている。
蒸気用液供給部90は、図示を省略した蒸発用液供給ユニットから蒸気発生部92まで蒸気用液100を供給する蒸気用液供給管102によって構成される。蒸気用液供給ユニットは、蒸気用液100を貯えたタンク等であり、蒸気用液100としてはインクジェット記録装置10で用いられるインクが水系のインクの場合には蒸留水を用いることが好ましい。あるいは沸点の低い液体と組み合わせることで、蒸気発生までの時間を短縮するようにしてもよい。また、油性インクの場合には、そのインクを溶かす溶媒等で、蒸気とした場合に害のないものを用いることが好ましい。
また、蒸気用液のタンク等の蒸気用液供給ユニットは、支持台98の外に固定して設置し、蒸気用液供給管102の一部を変形可能なチューブ等で形成して蒸気用液100を蒸気発生部92に導くようにしてもよいし、蒸気用液供給ユニット自体も支持台98上に設置するようにしてもよい。
蒸気発生部92は、供給された蒸気用液100を加熱して蒸気を発生させるヒータ104と、発生した蒸気106をノズル51内のメニスカス面51aまで導く蒸気誘導管108によって構成される。蒸気誘導管108は、ノズル面50Aのノズル51の直下からノズル51内部に向かって蒸気をあてるように構成される。
また、蒸気誘導管108のノズル面50Aに面した開口部(蒸気吐出口)108aには、スライド式のシャッタ110が設置され、蒸気吐出口108aはシャッタ110によって開閉可能となっている。そして、シャッタ110が蒸気吐出口108aを覆っている場合には、蒸気106はノズル51のメニスカス面51aにはあたらず、シャッタ110が開いて蒸気吐出口108aが開放されている場合にのみ蒸気106がノズル51のメニスカス面51aにあたるようになっている。シャッタ以外でも蒸発誘導管路を封止する様な構成でもよく、例えば、ピンチローラで蒸気誘導管路を封止しても良い。
ノズル面清掃部94は、ノズル面50Aに付着したインクや(蒸気106によって生じた)水滴等の汚れを掻き落すブレード(クリーニングブレード)66と、ブレード66を支持台98に固定する固定部材112とから構成される。固定部材112の中にはブレード66によって掻き落されたインクや水滴等を吸収する吸収部材がブレード66に接するように配置されている。これらの材質は特に限定はされないが、例えば、ブレード66はノズル面50Aを摺接する際隙間ができないようにノズル面50Aに密着するとともに、ノズル面50Aを傷付けないことが必要とされ、ゴムなどの弾性部材で構成されることが好ましく、また吸収部材は水分をよく吸収するようにスポンジ等で構成されていることが好ましい。
これらの蒸気用液供給部90、蒸気発生部92及びノズル面清掃部94が設置された支持台98は、シャフト96上を図示を省略した駆動機構により、図8中に矢印Fで示したように印字ヘッド50の長手方向に沿って移動可能にシャフト96に設置されている。
すなわち、支持台98をシャフト96上を矢印Fのように移動させながら、加湿が必要なノズル51の位置に蒸気吐出口108aが来たときにシャッタ110をずらして蒸気吐出口108aを開放して蒸気106がノズル51のメニスカス面51aにあてられる。そして、蒸気106によって、増粘したインクの粘度を下げ、固くなったインクを柔らかくした後、引き続きブレード66でノズル面50Aに付着した蒸気を拭き取るようになっている。
図9は、加湿機構65を図8の下方から見た場合の、蒸気吐出口とシャッタ及びブレードの位置を簡略化して示す底面図である。
図9に示すように、加湿機構65の支持台98は、印字ヘッド50の幅(短手)方向を覆い、一方の端をシャフト96に支持され印字ヘッド50の長手方向に(図9の右から左方向に)移動可能となっている。
また、支持台98上に配置されたブレード66は、支持台98の移動に伴い、印字ヘッド50のノズル面50A全体をワイピング可能なように、ノズル面50Aの幅方向を端から端までカバーしている。
蒸気吐出口108aは、支持台98上に複数箇所(図9では2箇所)設けられており、それぞれがノズル面50A上に2次元マトリクス状に配列されたノズル51の一部を含み、全体として印字ヘッド50の幅(短手)方向をカバーし、支持台98の移動に伴って、全ノズル51をカバーし得るように配置されている。
図9に示す例では、印字ヘッド50の幅(短手)方向に並ぶノズル列の一部、例えばノズル51−1を含む位置と、ノズル51−2を含む位置とにそれぞれ蒸気吐出口108aが位置するような位置関係で支持台98上に蒸気吐出口108aが配置されている。
なお、ノズル51−1を含む位置の蒸気吐出口108aのシャッタ110は、図9に矢印で示すように横にスライドして蒸気吐出口108aを開放し、蒸気をノズル51−1に当てるようになっている。また、ノズル51−2を含む位置の蒸気吐出口108aのシャッタ110は閉じた状態となっており、ノズル51−2には蒸気が当たらないようになっている。
このように、蒸気吐出口108aに設けられたシャッタ110を開閉することによって、ノズル面50A上に2次元的に配列されたノズル51のうち、長時間の不吐出等なんらかの原因によって粘度が上昇していると思われるノズル51等、加湿が必要なノズル51に対して選択的に蒸気を当てるようにする。
なお、蒸気吐出口108aの個数や配置は、ここに示す例には限定されず、支持台98の移動に伴ってノズル面50Aに形成されたすべてのノズル51に対して加湿が可能であればよい。また、印字ヘッド50幅方向の1列のノズル51全体をカバーする1つの蒸気吐出口108aに複数のシャッタ110を設置して、部分的に蒸気を吐出できるようにしてもよい。
加湿が必要なノズル51の選択は、前述したようにプリント制御部80によって、印字検出部24による各ノズル51の吐出状況から判断し、吐出不良のノズル51を選択する他、印字データに基づいて各ノズル51の稼動状況を判断し、各ノズル51からの吐出インターバルを積算し、長時間吐出が行われないノズル51を選択するようになっている。
以下、本実施形態の作用を説明する。
加湿機構65を動作させるにあたり、まず蒸気をあてて加湿すべきノズル51を選択する。加湿すべきノズル51の選択は、プリント制御部80において、印字検出部24による不吐出検出、または印字データに基づいた一定時間吐出が行われない稼動率の低いノズル51を検出することによって行われる。
すなわち、プリント制御部80において、印字検出部24の検出結果から不吐出のノズル51が検出され、あるいは印字データに基づいて一定時間吐出が行われない稼働率の低いノズル51が検出された場合に、加湿機構65でこの選択されたノズル51内のインクを加湿してインクの粘度を下げて柔らかくし、予備吐出を行うことによってノズルを回復する。
なお、ここで稼働率の低いノズル51を選択するに当たって、各ノズル51毎の稼働率を比較して他よりも稼働率の低いノズル51を選択するようにしてもよいし、予め一定の閾値を設定しておき、吐出しない時間がこの閾値を超えた場合にそのノズル51を選択するようにしてもよい。
そこで、印字検出部24により不吐出ノズルを検出した場合、あるいはプリント制御部80により一定時間不吐出のノズル51を検出した場合に、まず加湿機構65の蒸気発生部92のヒータ104の電源をオンにする。蒸気用液供給部90の蒸気用液供給管102により常に蒸気用液(例えば、インクが水系インクであれば蒸留水)が蒸気発生部92に供給されており、ヒータ104が加熱されると直ちに蒸気が発生するようになっている。
次に印字ヘッド50を所定の退避位置まで退避する。例えば、印字ヘッド50をそのままの位置で真上に上昇させて退避位置(ブレード66が接触しない位置)で待機する。そして、印字ヘッド50が上昇してできた空間に加湿機構65を移動させる。このとき、シャフト96は印字ヘッド50の長手方向に沿って略平行に配置されており、加湿機構65がシャフト96に沿って移動することにより、印字ヘッド50の下側に加湿機構65が入り込み、印字ヘッド50の長手方向に沿って移動するようになっている。
加湿機構65をシャフト96に沿って(印字ヘッド50の長手方向に略平行に)移動させ、加湿機構65の蒸気吐出口108aが、上で選択された加湿すべきノズル51の直下の位置に来たらそこで加湿機構65を一度停止し、その蒸気吐出口108aを閉じていたシャッタ110をスライドさせて蒸気吐出口108aを開いて蒸気106をノズル51の直下から内部に向かって当てるようにする。この蒸気106を当てる時間は、予めタイマによって所定時間を設定しておくようにしてもよい。
この所定時間が経過したら蒸気106を発生させるヒータ104の電源をオフにして、シャッタ110を閉じる。印字ヘッド50をワイプ位置まで下げブレード66を接触させる。その後、加湿機構65をシャフト96に沿って(例えば図8に、矢印Fで示す方向に)移動させ、蒸気106を当てた後のノズル面50Aをブレード66でワイピングするようにする。
ブレード66でワイピングすることにより、ノズル面50Aに付いた水滴等が回収され、ブレード66の下方に設置された吸収部材によって吸収される。ワイプ終了後ヘッド退避位置まで印字ヘッド50を上げる。加湿機構65は、次の加湿が必要なノズル51へ移動する。加湿機構65は印字ヘッド50長手方向に沿って移動する。
加湿機構65は、このようにして印字ヘッド50のノズル面50A全面をカバーした後、退避位置まで移動する。
その後、加湿機構65に代えて今度はキャップ64を印字ヘッド50の下に移動させ、ノズル面50Aをキャップ64で覆い、キャップ64に向けて予備吐出を行う。このとき、加湿機構65により蒸気106を当ててインクの粘度を下げてあるため、通常では吐出できないようなインクも予備吐出によって吐出することが可能である。これによって、不吐出等のノズル51が回復される。
予備吐出の後、印字ヘッド50を元の位置に戻して印字を再開する。このとき、最初に不吐出が検出されている場合には、通常の印字を行う前に、不吐出検出用のパターン等を印字して、これを印字検出部24で検出して、再度吐出チェックを行い、完全にノズル51が回復していることを確認してから通常の印字を再開することが好ましい。
ここで、もしまた不吐出が検出された場合には、再度加湿機構65によって、その不吐出のノズル51に対して蒸気106を当てた後に再度予備吐出を行うようにする。あるいは、直ちに印字ヘッド50にキャップ64をあてて吸引動作を行うようにしてもよい。
しかし、本実施形態の場合、加湿機構65によって蒸気106を当ててから予備吐出を行うようにしているため、もともと不吐出の場合であっても、吸引することなく、ほとんど予備吐出でノズル51の回復が可能であり、大量にインクを消費する吸引の回数を削減することができる。
このように、本実施形態においては、印字ヘッドのノズル面に蒸気を当てる手段(加湿機構)を持ち、その際選択的にノズルに蒸気を当てることができるようにしたため、例えば一定時間吐出が行われない、稼働率の低いノズルに蒸気を当てることで、不吐出や不適切吐出を防止することができる。
また、不吐出検出によって検知されたノズルに蒸気を当てて、予備吐出することで、不吐出ノズルを回復することができ、吸引の回数を減らすことができ、吸引による無駄インク量を削減することができる。
さらに、加湿が必要なノズルにのみ選択的に蒸気を当てることができるため、正常なノズルには蒸気を当てずに済むため、例えば、濃度や粘度等のインクの特性の変化を抑えることができる。
また、加湿機構を印字ヘッドの長手方向(主走査方向)に移動させる移動手段を持ち、複数のノズルに対してまとめてブロック単位で蒸気を当てるようにし、蒸気を当てた後、ノズル面に付いた余分な蒸気(水滴)を拭き取るように、加湿機構にブレードを一体化して取り付けることで、トータルの加湿時間を短縮するとともに、余分の水分がノズル面に残らないようにすることができる。
また、蒸気吐出口近傍にシャッタ機構を設け、シャッタを開閉することで蒸気が吐出する場所を変えるようにすることで、蒸気を当てる印字ヘッドの幅方向(副走査方向)のノズルを選択することができる。
また、上述したように、加湿機構を印字ヘッド長手方向(主走査方向)に移動させながら(スキャンさせながら)、ノズル面全体に蒸気を吹き掛けることで、インク吐出方向に影響を与える静電気の帯電を防止することができるとともに、ノズル面の汚れを蒸気で浮かせることで、ノズル面の清掃を容易とすることも可能となる。
なお、ノズル面に蒸気を吹き掛ける手段である加湿機構は、一つの印字ヘッドに一つずつ設置する必要はなく、複数の印字ヘッドに対して一つの加湿機構を用意して、複数の印字ヘッドで一つの加湿機構を共有するようにしてもよい。
以上、本発明の液体吐出装置及びこれを備えた画像形成装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
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