JP2008092690A - モータ制御システム、欠相検知装置及び欠相検知方法 - Google Patents

モータ制御システム、欠相検知装置及び欠相検知方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡素な構成で確実に欠相を検知できるモータ制御システムを提供する。
【解決手段】搬送台車1は、三相交流モータ5Fと、モータ5Fに三相の交流電力を供給する電力供給部25と、電力供給部25からモータ5Fに供給される各相の電流を検出する電流検出部27u、27v、27wと、モータ5Fの回転を検出するエンコーダ13と、検出された各相の電流Iu、Iv、Iwを、エンコーダ13の検出した位相に基づいてdq変換し、d軸電流Id及びq軸電流Iqを算出するdq変換部29と、dq変換部29の算出したd軸電流Idの絶対値が所定の閾値Thを超え、且つ、d軸電流Idの絶対値とq軸電流Iqの絶対値との比率が所定の範囲内にあるときに欠相検知信号Sfを出力する欠相検知部9を備える。
【選択図】図3

Description

本発明は、三相交流モータ等の多相交流モータのモータ制御システム、欠相検知装置及び欠相検知方法に関する。
多相の交流モータの欠相を検知する技術が種々提案されている。特許文献1では、三相交流モータに供給される各相の電流を検出し、その検出値からd軸電流の変化率を算出し、変化率が閾値を超えたときに欠相検知信号を出力する技術が開示されている。
特開2003−348898号公報
引用文献1の技術では、微分回路等の変化率を求めるための回路が必要であり、構成が複雑化する。また、一般に微分回路は安定した動作が望めず、外乱を増幅しやすいことから、外乱により誤って欠相を検知するおそれがある。
本発明の目的は、簡素な構成で確実に欠相を検知できるモータ制御システム、欠相検知装置及び欠相検知方法を提供することにある。
本発明のモータ制御システムは、多相交流モータと、前記モータに多相の交流電力を供給する電力供給部と、前記電力供給部から前記モータに供給される各相の電流を検出する電流検出部と、前記モータの回転位相を検出する位相検出部と、前記電流検出部の検出した各相の電流を、前記位相検出部の検出した位相に基づいてdq変換し、d軸電流及びq軸電流を算出するdq変換部と、前記dq変換部の算出したd軸電流の絶対値が所定のd軸閾値を超え、且つ、前記dq変換部の算出したd軸電流の絶対値と前記dq変換部の算出したq軸電流の絶対値との比率が所定の範囲内にあることを条件として含む所定の判定条件が満たされたときに欠相検知信号を出力する欠相検知部と、を有する。
好適には、前記比率は、前記dq変換部の算出した前記d軸電流の絶対値を前記dq変換部の算出した前記q軸電流の絶対値で割った値であり、前記判定条件には、前記dq変換部の算出したq軸電流の絶対値が所定のq軸閾値を超えたことが更に含まれる。
好適には、d軸電流及びq軸電流の目標値と、前記dq変換部の算出したd軸電流及びq軸電流との偏差をそれぞれ算出する偏差算出部と、前記偏差算出部の算出した偏差に基づいてd軸電圧及びq軸電圧の目標値を算出する目標電圧算出部と、前記目標電圧算出部の算出したd軸電圧及びq軸電圧の目標値を、前記位相検出部の検出した位相に基づいてdq逆変換し、各相の電圧の目標値を算出する逆変換部と、を更に有し、前記電力供給部は、前記逆変換部の算出した各相の電圧の目標値の電圧を前記モータに印加する。
本発明の欠相検知装置は、多相交流モータに供給される各相の電流を検出する電流検出部と、前記モータの回転位相を検出する位相検出部と、前記電流検出部の検出した各相の電流を、前記位相検出部の検出した位相に基づいてdq変換し、d軸電流及びq軸電流を算出するdq変換部と、前記dq変換部の算出したd軸電流の絶対値が所定のd軸閾値を超え、且つ、前記dq変換部の算出したd軸電流の絶対値と前記dq変換部の算出したq軸電流の絶対値との比率が所定の範囲内にあることを条件として含む所定の判定条件が満たされたときに欠相検知信号を出力する欠相検知部と、を有する。
本発明の欠相検知方法は、多相交流モータに供給される各相の電流の検出値をdq変換して算出されたd軸電流の絶対値とq軸電流の絶対値との比率が所定の範囲内にあることを条件として含む所定の判定条件が満たされたときに欠相を検知する。
本発明によれば、簡素な構成で確実に欠相を検知できる。
図1は、本発明の実施形態に係るモータ制御システムを適用した搬送台車1を示すブロック図である。搬送台車1は、例えば、工場内において金型やワークなどの被搬送物を搬送するためのものである。
搬送台車1は、基体2と、基体2を軸支する複数の駆動輪3F、3R(以下、単に「駆動輪3」といい、両者を区別しないことがある。)と、駆動輪3F、3Rをそれぞれ駆動するモータ5F、5R(以下、単に「モータ5」といい、両者を区別しないことがある。)と、モータ5に電力を供給する駆動部7と、モータ5の欠相を検知する欠相検知部9と、駆動部7の動作を制御する制御部11とを備えている。
基体2及び駆動輪3は、搬送台車1の使用目的に応じて適宜に設計されている。例えば、基体2は、金属、樹脂、木材等の適宜な材料により、シャーシ状、箱状等の適宜な形状に構成されている。駆動輪3は、金属、樹脂、ゴム等の適宜な材料により形成されている。駆動輪3は、軌道上を転がるものであってもよいし、任意の場所を転がるものであってもよい。駆動輪3の数や種類も、搬送台車1の使用目的に応じて適宜に設定されている。図1は、前輪として一対の駆動輪3F(紙面奥手の駆動輪3Fは不図示)が、後輪として一対の駆動輪3R(紙面奥手の駆動輪3Rは不図示)が設けられ、合計4個の駆動輪3が設けられている場合を例示している。また、駆動輪3F及び駆動輪3Rが互いに同一径である場合を例示している。
モータ5Fは一対の駆動輪3Fを駆動し、モータ5Rは一対の駆動輪3Rを駆動する。なお、各駆動輪3に対応して一のモータが(合計4個のモータが)設けられていてもよい。モータ5と駆動輪3との間には、搬送台車1の使用目的に応じて、増速用ギア、減速用ギア、ディッファレンシャルギア等の適宜なギア列が設けられるが説明は省略する。モータ5Fと、モータ5Rとは、例えば、同一種類のモータにより構成されている。
モータ5は、三相の交流電力により駆動される三相交流モータである。モータ5は、誘導電動機であってもよいし、同期電動機であってもよい。モータ5は、特に図示しないが、ステータと、ステータに対して回転可能なロータとを備えており、ステータ及びロータの一方が界磁であり、他方が電機子である。なお、モータ5は、三相以外の多相交流モータであってもよい。
モータ5は、サーボモータとして構成されており、モータ5Fには、モータ5Fの回転を検出し、検出結果に応じた回転検出信号Spを出力するエンコーダ13が設けられている。エンコーダ13は、磁気式エンコーダや光学式エンコーダ等の公知の適宜なエンコーダにより構成されてよい。なお、上述のように、駆動輪3F及び3Rは、互いに同一径に構成されており、基本的には同一の回転速度で回転するから、エンコーダ13は、複数のモータの回転の代表値を検出することになる。
エンコーダ13は、回転検出信号Spとして、モータ5Fのロータが所定角度回転する毎にパルス信号を出力する。すなわち、回転検出信号Spは、モータ5Fの回転数に応じた数のパルス列により構成されている。従って、単位時間当たりのパルス数の計数によりモータ5の回転速度が特定される。換言すれば、エンコーダ13は、モータ5Fの回転速度を検出する速度検出部として機能している。
エンコーダ13は、モータ5Fの回転位相θ(回転位置)が特定可能な回転検出信号Spを出力する。例えば、モータ5Fが一回転する間に出力されるパルス列には、他のパルス列とは長さの異なる一のパルス信号が含まれており、当該長さの異なるパルス信号の検出により、モータ5Fの回転位相θの原点が特定される。そして、原点が検出されてからのパルス数により、モータ5Fの原点からの回転位相θが特定される。従って、エンコーダ13は、モータ5Fの回転位相θを検出する位相検出部として機能している。
駆動部7は、入力されたトルク指令信号Stに応じた大きさの電力をモータ5に供給する。駆動部7の供給する電力は三相の交流電力である。その電力の各相の電流Iu、Iv、Iwは、例えば、振幅をIとして、
Iu=Isinθ
Iv=Isin(θ+2/3π) (1)
Iw=Isin(θ−2/3π)
で表される。駆動部7は、モータ5F及びモータ5Rに対して同等の電力を供給する。駆動部7は、エンコーダ13からの回転検出信号Spに基づいてモータ5のフィードバック制御を行う。駆動部7は、各相の電流Iu、Iv、Iwを検出し、その検出値に基づいて電流検出信号Siを欠相検知部9に出力する。
欠相検知部9は、駆動部7から出力された電流検出信号Siに基づいて、欠相の発生の有無を判定し、欠相が発生したと判定した場合は、欠相検知信号Sfを制御部11に出力する。
制御部11は、例えば、CPU、RAM、ROM、外部記憶装置等を含むコンピュータにより構成されている。制御部11は、複数のモータ5に対して同一のトルク指令信号Stを生成するとともに駆動部7に出力し、複数のモータ5の並列運転を行う。換言すれば、制御部11は、複数のモータ5を独立に制御しない。
具体的には、制御部11は、エンコーダ13からの回転検出信号Spに基づいて、モータ5の速度フィードバック制御を行う。すなわち、単位時間毎に回転検出信号Spに含まれるパルスを計数してモータ5の速度を特定し、モータ5の速度が所定の目標速度になるようにトルク指令信号Stを生成して駆動部7に出力する。モータ5の目標速度は、例えば、不図示の操作部に対して所定の操作がなされることにより、あるいは、搬送台車1の位置に応じて予め不図示の記録装置に記憶された目標速度が適宜に読み出されることにより、設定される。
また、制御部11は、欠相検知部9から欠相検知信号Sfが入力されたときには、所定の異常時処理を実行する。異常時処理は、例えば、搬送台車1の動作を停止する処理である。具体的には、例えば、制御部11は、欠相検知信号Sfが入力されたときは、目標速度の大きさに関らず、モータ5のトルクを0とするトルク指令信号Stを生成、出力する。また、異常時処理は、例えば、異常を作業者に報知する処理である。具体的には、例えば、制御部11は、欠相検知信号Sfが入力されたときは、不図示のスピーカから所定の報知音を出力したり、不図示の発光素子を点灯、点滅又は消灯したり、不図示の表示装置に所定の画像やメッセージを表示する。
図2は、駆動部7の詳細を説明するブロック図である。
駆動部7は、例えば、ICやインバータ等を含む電気回路により構成されている。制御部11から駆動部7に入力されたトルク指令信号Stは、目標電圧算出部21、逆変換部23及び電力供給部25を経て各相の電流Iu、Iv、Iwに変換されてモータ5に出力される。また、各相の電流Iu、Iv、Iwは、電流検出部27u、27v、27w(以下、単に「電流検出部27」といい、これらを区別しないことがある。)により検出され、その検出値は、dq変換部29、減算器31d、31q(以下、単に「減算器31」といい、これらを区別しないことがある。)を経て、目標電圧算出部21に入力され、フィードバック制御に供される。具体的には以下のとおりである。
目標電圧算出部21には、トルク指令信号Stが入力される。トルク指令信号Stは、例えば、d軸電流の目標値である目標d軸電流Id_T、q軸電流の目標値である目標q軸電流Id_Tの情報を含む。d軸は、モータ5において、界磁の作る磁束の方向に伸びる軸であり、q軸は、d軸に直交する方向に伸びる軸である。d軸電流は無効電流であり、q軸電流はモータ5のトルクに比例する。従って、目標d軸電流Id_Tは、通常は0に設定され、目標q軸電流Iq_Tは、一のモータ5の目標トルクに比例するように設定されている。
目標電圧算出部21は、目標d軸電流Id_T及び目標q軸電流Iq_Tに基づいて、目標d軸電流Id_T及び目標q軸電流Iq_Tが各モータ5に供給されるのに必要な電圧、すなわち、d軸電圧の目標値である目標d軸電圧Vd_T、q軸電圧の目標値である目標q軸電圧Vq_Tを算出し、その算出値に応じた信号を逆変換部23に出力する。算出は、後述するようにフィードバックゲインを用いて行われる。
なお、一般には、目標d軸電流Id_T及び目標q軸電流Id_Tと、目標d軸電圧Vd_T及び目標q軸電圧Vd_Tとの間には、下記の(2)式が成立する。
Figure 2008092690
ここで、Rは電機子の抵抗、Lは電機子のインダクタンス、ωはロータの角速度(電気角速度)、Pは微分演算子(d/dt)、Eqは速度起電力である。
逆変換部23は、目標電圧算出部21により算出された目標d軸電圧Vd_T及び目標q軸電圧Vq_Tを、モータ5の回転位相θに基づいてdq逆変換し、各位相の目標電圧Vu_T、Vv_T、Vv_Tを算出し、その算出値に応じた信号を電力供給部25に出力する。dq逆変換は、下記の(3)式により表される。
Figure 2008092690
なお、回転位相θは、上述のように、エンコーダ13からの回転検出信号Spに基づいて算出される。当該算出は、逆変換部23により、又は、エンコーダ13と逆変換部23との間に設けられた不図示の回転位相算出部により行われる。
電力供給部25は、例えばインバータにより構成されており、不図示の電力源からの直流電力を交流電力に変換し、逆変換部23の算出した各位相の目標電圧Vu_T、Vv_T、Vv_Tをモータ5に印加する。電力供給部25とモータ5とは例えばケーブルにより接続されている。モータ5F及びモータ5Rは、電力供給部25に対して並列に接続されており、モータ5F及びモータ5Rには、互いに同一の電圧が印加される。
電流検出部27u、27v、27wは、それぞれ各相の電流Iu、Iv、Iwを検出し、その検出値に応じた信号をdq変換部29に出力する。電流検出部27は、例えば、モータ5Fに供給される各相の電流Iu、Iv、Iwを検出可能に、電力供給部25からモータ5Fまでの間のうち、モータ5Fとモータ5Rとの接続点よりもモータ5F側に設けられている。なお、モータ5F及びモータ5Rは同一種類のモータにより構成されるとともに並列接続されているから、モータ5Rに供給される電流と、モータ5Fに供給される電流とは等しい。従って、電流検出部27は、複数のモータ5に供給される電流の代表値を検出することになる。
dq変換部29は、電流検出部27u、27v、27wの検出した各相の電流Iu、Iv、Iwを回転位相θに基づいてdq変換し、d軸電流Iq及びq軸電流Iqを算出する。dq変換は、下記の(4)式により表される。
Figure 2008092690
なお、回転位相θは、上述のように、エンコーダ13からの回転検出信号Spに基づいて算出される。当該算出は、dq変換部29により、又は、エンコーダ13とdq変換部29との間に設けられた不図示の回転位相算出部により行われる。
そして、dq変換部29は、算出したd軸電流Iq及びq軸電流Iqの情報を含む信号を出力する。当該信号は、減算器31に入力されるとともに、図1を参照して説明した電流検出信号Siとして欠相検知部9に入力される。
減算器31dは、目標d軸電流Id_Tからdq変換部29の算出したd軸電流Idを減算して目標電圧算出部21に出力する。また、減算器31qは、目標q軸電流Iq_Tからdq変換部29の算出したq軸電流Iqを減算して目標電圧算出部21に出力する。
目標電圧算出部21は、減算器31d、31qの算出した偏差に基づいて目標d軸電圧Vd_T及び目標q軸電圧Vq_Tを算出する。例えば、目標電圧算出部21は、PI制御が行われるように、下記の(5)式により目標d軸電圧Vd_T及び目標q軸電圧Vq_Tを算出する。
Figure 2008092690
Kpは比例ゲインであり、Kは積分ゲインである。比例ゲインKpや積分ゲインKは、上述の(2)式、モータ5の数、実験等に基づいて適宜に設定される。
図3は、欠相検知部9の構成を示すブロック図である。
上述のように、欠相検知部9は、駆動部7からの電流検出信号Siが入力され、欠相を検知したときに欠相検知信号Sfを出力する回路として構成されている。具体的には以下のとおりである。なお、以下の説明においては、論理回路等から出力される1ビット(bit)の情報を含む信号を、0(偽)又は1(真)の値を有する信号として説明することがある。
絶対値回路41dは、電流検出信号Siのうちd軸電流Idの情報を含む信号が入力され、d軸電流Idの絶対値を算出し、その算出値に応じた信号を出力する。同様に、絶対値回路41qは、電流検出信号Siのうちq軸電流Iqの情報を含む信号が入力され、q軸電流Iqの絶対値を算出し、その算出値に応じた信号を出力する。
比較器43dは、絶対値回路41dからの信号が入力されるとともに、所定の閾値Thの情報を含む信号が入力される。閾値Thは、例えば制御部11から比較器43dに入力される。比較器43dは、d軸電流Idの絶対値と閾値Thとを比較し、d軸電流Idの絶対値が閾値Thよりも大きいときは値が1の信号を出力し、それ以外のときは値が0の信号を出力する。
同様に、比較器43qは、絶対値回路41qからの信号が入力されるとともに、所定の閾値Thの情報を含む信号が入力される。閾値Thは、例えば制御部11から比較器43qに入力される。比較器43qは、q軸電流Iqの絶対値と閾値Thとを比較し、q軸電流Iqの絶対値が閾値Thよりも大きいときは値が1の信号を出力し、それ以外のときは値が0の信号を出力する。
AND回路45は、比較器43dからの信号及び比較器43qからの信号が入力され、両信号の論理積を表す信号を出力する。すなわち、比較器43d及び比較器43qの双方から値が1の信号が入力されたとき、換言すれば、d軸電流Id及びq軸電流Iqの双方が閾値Thを超えたとき、値が1の信号を出力し、それ以外のときは値が0の信号を出力する。
比率演算器47は、比較器43dからの信号及び比較器43qからの信号が入力され、d軸電流Idの絶対値と、q軸電流Iqの絶対値との比率を算出し、その算出値に応じた信号を出力する。例えば、比率演算器47は、比率として、d軸電流Idの絶対値をq軸電流Iqの絶対値で割った値|Id|/|Iq|を算出する。
比較器49Uは、比率演算器47からの信号が入力されるとともに、所定の上限値Li_Uの情報を含む信号が入力される。上限値Li_Uは、例えば制御部11から比較器49Uに入力される。比較器49Uは、比率|Id|/|Iq|と上限値Li_Uとを比較し、比率|Id|/|Iq|が上限値Li_Uよりも大きいときは値が1の信号を出力し、それ以外のときは値が0の信号を出力する。
同様に、比較器49Dは、比率演算器47からの信号が入力されるとともに、所定の下限値Li_Dの情報を含む信号が入力される。下限値Li_Dは、例えば制御部11から比較器49Dに入力される。比較器49Dは、比率|Id|/|Iq|と下限値Li_Dとを比較し、比率|Id|/|Iq|が下限値Li_Dよりも大きいときは値が1の信号を出力し、それ以外のときは値が0の信号を出力する。
AND回路51は、一の入力が反転される2入力AND回路である。AND回路51は、比較器49Uからの信号が反転されて入力されるとともに、比較器49Dからの信号が入力され、両信号の論理積を表す信号を出力する。すなわち、AND回路51は、比較器49Uから値を0とする信号が入力されるとともに比較器49Dから値を1とする信号が入力されたとき、換言すれば、比率|Id|/|Iq|が下限値Li_Dから上限値Li_Uまでの範囲にあるとき、値が1の信号を出力し、それ以外のときは値が0の信号を出力する。
AND回路53は、AND回路45からの信号及びAND回路51からの信号が入力され、両信号の論理積を表す信号を出力する。すなわち、AND回路45及びAND回路51の双方から値が1の信号が入力されたときに値が1の信号を出力し、それ以外のときは値が0の信号を出力する。
値が1の信号は、欠相が検知されたときに出力される欠相検知信号Sfとして出力される。すなわち、制御部11等では、AND回路53から値が1の信号が入力されたときに所定の異常時処理を実行する。
以上のとおり、欠相検知部9では、d軸電流Idの絶対値及びq軸電流Iqの絶対値の双方が閾値Thを超え、且つ、d軸電流Idの絶対値及びq軸電流Iqの絶対値の比率|Id|/|Iq|が下限値Li_Dから上限値Li_Uまでの範囲にあるときに、欠相検知信号Sfが出力される。
なお、欠相検知処理は適宜な周期で行ってよい。すなわち、欠相検知部9への電流検出信号Siの入力及び/又は欠相検知部9の駆動は適宜な周期で行ってよい。例えば所定のクロック信号に同期して行ってもよいし、クロック信号の周期よりも長い周期で行ってもよい。
図4は、搬送台車1の動作及び効果を説明する図であり、図4(a)は、欠相が生じた場合のd軸電流Id及びq軸電流Iqの経時変化を、図4(b)は、欠相が生じた場合のd軸電流の絶対値|Id|、q軸電流の絶対値|Iq|、これらの比率|Id|/|Iq|及び欠相検知信号Sfの経時変化を示している。
搬送台車1において、欠相が生じていない状態では、フィードバック制御により、d軸電流Idは0に保たれ、q軸電流Iqは目標トルクに比例した値に保たれる。目標トルクが一定の場合には、q軸電流Iqも目標トルクに比例した値で一定に保たれる。そして、欠相が生じると、図4(a)に示すように、d軸電流Id及びq軸電流Iqは波形状に変動する。
当該変動は、上述の式からも理解される。すなわち、欠相が生じると、電力供給部25からモータ5に供給される電力は単相交流となり、各相の電流は、
Iu=Isinθ
Iv=−Iu (6)
で表される。(6)式を(4)式に代入すると、dq変換部29の算出するd軸電流Id及びq軸電流Iqは、回転位相θを変数とする周期関数によって表される。具体的には、d軸電流Idの算出ではcos関数が乗じられ、q軸電流Iqの算出ではsin関数が乗じられることから、d軸電流Idとq軸電流Iqとは、位相が概ね1/4周期ずれた周期関数となる。
ただし、実際にdq変換部29により算出されるd軸電流Id及びq軸電流Iqの波形は、比例ゲインKpや積分ゲインK等の設定によって異なる。例えば、図4(a)に示すように、d軸電流Idは、平均値が概ね0となる歪んだ波形となり、d軸電流Idは、平均値が概ね目標q軸電流Iqで、0〜目標q軸電流Iqの2倍程度の間で変動する歪んだ波形となる。
d軸電流Idは、本来0となるはずであるから、比較器43dによりd軸電流の絶対値|Id|が閾値Thを超えたことを検出することにより、欠相が検知可能となる。閾値Thは、欠相が生じていない場合にフィードバック制御によるd軸電流Idの微小変動や外乱による微小変動によって欠相が誤検出されることを防止するように適宜な大きさに設定される。
d軸電流Idの絶対値とq軸電流Iqの絶対値との比率|Id|/|Iq|は、d軸電流Idと同様に、本来0となるはずであるから、比較器49Dが比率|Id|/|Iq|が下限値Li_Dを超えたことを検出することにより、欠相が検知可能となる。下限値Li_Dは、欠相が生じていない場合にフィードバック制御によるd軸電流Id等の微小変動や外乱による微小変動によって欠相が誤検出されることを防止するように適宜な大きさに設定される。図4(b)では、下限値Li_D=閾値Thの場合を例示している。
上述のように、欠相が生じたときのd軸電流Idの波形とq軸電流Iqの波形とは位相がずれている。当該位相のずれに起因して、d軸電流Idの変動と、比率|Id|/|Iq|の変動とは位相がずれている。従って、d軸電流が閾値Thを超え、且つ、比率|Id|/|Iq|が下限値Li_Dを超えたときに欠相を検知することは、いずれか一方の条件のみが満たされたときに欠相を検知する場合に比較して欠相を検知する条件が厳しくなる。
例えば、欠相が生じていない場合に、各相の電流Iu、Iv、Iwのいずれか一に瞬間的に外乱が混入され場合、(4)式から理解されるように、外乱は、d軸電流にsin関数が乗じられた形で影響を及ぼし、q軸電流にcos関数が乗じられた形で影響を及ぼす。従って、外乱が混入されたとしても、上記の2つの条件の双方が満たされるとは限らない。
その一方で、欠相は継続的なものであるから、欠相が生じた場合には、モータが回転する間において、必ずd軸電流Id及び比率|Id|/|Iq|の双方がある程度の大きさになる位相が存在する。従って、上記の2つの条件の双方が満たされることを条件とすることにより、外乱による欠相検知の誤動作が防止される。
比率|Id|/|Iq|は、q軸電流の絶対値|Iq|を分母としていることから、q軸電流の絶対値|Iq|が小さくなるときには、図4(b)に示されるように、比率|Id|/|Iq|は大きな値となるとともにばらつき、また、誤差の影響も大きくなる。そこで、比率|Id|/|Iq|が上限値Li_Uを超えていないことを条件として更に付加することにより、比率|Id|/|Iq|に基づく欠相検知が確実に行われる。
同様に、絶対値|Iq|が閾値Thを超えたことを条件として更に付加することにより、比率|Id|/|Iq|に基づく欠相検知が確実に行われる。
図4(b)では、上記のような動作及び効果が示されている。すなわち、d軸電流Idの絶対値及びq軸電流Iqの絶対値の双方が閾値Thを超え、且つ、d軸電流Idの絶対値及びq軸電流Iqの絶対値の比率|Id|/|Iq|が下限値Li_Dから上限値Li_Uまでの範囲にあるという条件は、モータ5の回転中に間欠的に満たされ(欠相検知信号Sfは間欠的に出力され)、モータ5の欠相検知が確実に行われている。
以上のとおり、以上の実施形態によれば、微分回路等を設けることなく比較的簡素な構成で欠相を検知することができ、しかも、外乱による誤動作が防止される。
しかも、d軸電流及びq軸電流を制御変数とするフィードバック制御が行われるモータ5の欠相を、d軸電流及びq軸電流に基づいて検知することから、d軸電流及びq軸電流を算出するための回路を新たに設ける必要もなく、構成が簡素である。
なお、以上の実施形態において、駆動部7及び欠相検知部9の組合せは本発明のモータ制御システムの一例であり、モータ5は本発明の多相交流モータの一例であり、エンコーダ13は本発明の位相検出部の一例であり、閾値Thは本発明のd軸閾値及びq軸閾値の一例であり、減算器31d及び減算器31qは本発明の偏差算出部の一例であり、電流検出部27、エンコーダ13、dq変換部29及び欠相検知部9の組合せは本発明の欠相検知装置の一例である。
本発明は以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施してよい。
本発明が適用される対象は搬送台車に限定されない。本発明は、モータの欠相を検知する必要のある、あらゆる装置に適用されてよい。また、本発明が適用されるモータ制御システムは、d軸電流及びq軸電流を用いたフィードバック制御を行うものに限定されない。例えば、ステップモータを制御するモータ制御システムに適用されてもよい。
モータは、単数設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。モータが複数設けられ、制御部(11)によって並列運転される場合、制御部の指令に従ってモータを駆動する駆動部(7)及び/又は欠相検知部(9)は、複数のモータに対応して複数設けられてもよいし、実施形態のように複数のモータに対応して一つ設けられてもよい。さらに、駆動部及び欠相検知部のうち一部については複数のモータに対応して複数設けられ、他の部分については複数のモータに対応して一つ設けられてもよい。
例えば、実施形態では、駆動部7が複数のモータに対して一つ設けられる場合を例示したが、2つのモータ5F、5Rに対応して駆動部7を2つ設け、一の制御部11から2つの駆動部7へ同一のトルク指令信号Stを出力し、2つの駆動部7がそれぞれモータ5F、5Rを駆動するようにしてもよい。なお、この場合、各駆動部7の電流検出部27は、モータ5F、5Rの電流をそれぞれ検出することにより、各駆動部7は、互いに同一のトルク指令信号Stに基づきつつも、それぞれ独立にモータ5F、5Rのフィードバック制御を行う。
例えば、実施形態では、一の駆動部7において電力供給部25が複数のモータに対して一つ設けられる場合を例示したが、一の駆動部7において電力供給部25をモータ5F、5Rに対応して2つ設け、一の逆変換部23から2つの電力供給部25に各相の目標電圧Vu_T、Vv_T、Vw_Tを出力し、2つの電力供給部25が同一の目標電圧Vu_T、Vv_T、Vw_Tに基づいてモータ5F、5Rにそれぞれ電圧を印加するようにしてもよい。
例えば、実施形態では、エンコーダ13(位相検出部)及び電流検出部27u、27v、27wが複数のモータに対してそれぞれ一つ設けられる場合を例示したが、エンコーダ13(位相検出部)及び電流検出部27u、27v、27wが複数のモータに対して複数設けられ、複数のエンコーダ13の検出値の最大値、最小値又は平均を一のdq変換部、一の逆変換部、一の制御部に入力したり、複数の電流検出部27u、27v、27wの検出値の最大値、最小値又は平均を一のdq変換部に入力し、フィードバック制御や欠相検知に資するようにしてもよい。
例えば、実施形態では、一のモータのd軸電流やq軸電流(トルク)に基づいてフィードバック制御や欠相検知を行う場合を例示したが、複数のモータのd軸電流やq軸電流(トルク)の合計に基づいてフィードバック制御や欠相検知を行うようにしてもよい。
d軸電流の絶対値とq軸電流の絶対値との比率は、q軸電流を分母とするものに限定されない。例えば、q軸電流の絶対値をd軸電流の絶対値で割って算出した比率が所定の閾値よりも小さくなった場合に欠相を検知することもできる。ただし、d軸電流を分子としたほうが閾値の設定等が容易である。
本発明において、q軸電流の絶対値が所定のq軸閾値を超えたことは必須の要件ではない。例えば、図3において、絶対値回路41q、比較器43q及びAND回路45は省略されてもよい。
欠相検知部は、欠相の発生の有無を判定するための判定条件、例えば、d軸電流の絶対値が所定のd軸閾値を超え、且つ、d軸電流の絶対値とq軸電流の絶対値との比率が所定の範囲内にあるという条件が満たされたか否か判定できれば、適宜な構成としてよい。
実施形態では、d軸電流の閾値と、q軸電流の閾値とが同一である場合を例示したが、これらは別個に設定されてよい。また、d軸電流の閾値、q軸電流の閾値、比率と比較される上限値(Li_U)及び下限値(Li_D)は、定数であってもよいし、トルク指令などに応じて変化する値であってもよい。
本発明の実施形態に係る搬送台車の構成を示すブロック図。 図1の搬送台車の駆動部を説明するブロック図。 図1の搬送台車の欠相検知部を説明するブロック図。 図1の搬送台車の動作及び効果を説明する図。
符号の説明
1…搬送台車(モータ制御システムを適用した装置)、5F、5R…モータ(多相交流モータ)、7…駆動部、13…エンコーダ(位相検出部)、9…欠相検知部、25…電力供給部、27u、27v、27w…電流検出部、29…dq変換部。

Claims (5)

  1. 多相交流モータと、
    前記モータに多相の交流電力を供給する電力供給部と、
    前記電力供給部から前記モータに供給される各相の電流を検出する電流検出部と、
    前記モータの回転位相を検出する位相検出部と、
    前記電流検出部の検出した各相の電流を、前記位相検出部の検出した位相に基づいてdq変換し、d軸電流及びq軸電流を算出するdq変換部と、
    前記dq変換部の算出したd軸電流の絶対値が所定のd軸閾値を超え、且つ、前記dq変換部の算出したd軸電流の絶対値と前記dq変換部の算出したq軸電流の絶対値との比率が所定の範囲内にあることを条件として含む所定の判定条件が満たされたときに欠相検知信号を出力する欠相検知部と、
    を有するモータ制御システム。
  2. 前記比率は、前記dq変換部の算出した前記d軸電流の絶対値を前記dq変換部の算出した前記q軸電流の絶対値で割った値であり、
    前記判定条件には、前記dq変換部の算出したq軸電流の絶対値が所定のq軸閾値を超えたことが更に含まれる
    請求項1に記載のモータ制御システム。
  3. d軸電流及びq軸電流の目標値と、前記dq変換部の算出したd軸電流及びq軸電流との偏差をそれぞれ算出する偏差算出部と、
    前記偏差算出部の算出した偏差に基づいてd軸電圧及びq軸電圧の目標値を算出する目標電圧算出部と、
    前記目標電圧算出部の算出したd軸電圧及びq軸電圧の目標値を、前記位相検出部の検出した位相に基づいてdq逆変換し、各相の電圧の目標値を算出する逆変換部と、
    を更に有し、
    前記電力供給部は、前記逆変換部の算出した各相の電圧の目標値の電圧を前記モータに印加する
    請求項1又は2に記載のモータ制御システム。
  4. 多相交流モータに供給される各相の電流を検出する電流検出部と、
    前記モータの回転位相を検出する位相検出部と、
    前記電流検出部の検出した各相の電流を、前記位相検出部の検出した位相に基づいてdq変換し、d軸電流及びq軸電流を算出するdq変換部と、
    前記dq変換部の算出したd軸電流の絶対値が所定のd軸閾値を超え、且つ、前記dq変換部の算出したd軸電流の絶対値と前記dq変換部の算出したq軸電流の絶対値との比率が所定の範囲内にあることを条件として含む所定の判定条件が満たされたときに欠相検知信号を出力する欠相検知部と、
    を有する欠相検知装置。
  5. 多相交流モータに供給される各相の電流の検出値をdq変換して算出されたd軸電流の絶対値とq軸電流の絶対値との比率が所定の範囲内にあることを条件として含む所定の判定条件が満たされたときに欠相を検知する欠相検知方法。
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