以下に説明する好ましい実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
図1は、本発明に従う電動パワーステアリング装置の概略構成例を示す。図1の例において、電動パワーステアリング装置10は、車両の操舵系20(ステアリング系とも言う。)の操舵トルクTを検出するトルク検出部41と、操舵系20にアシストトルク(補助トルクとも言う。)を付与する電動モータ43と、操舵トルクTを参照して、電動モータ43のモータ電流を制御するモータ制御部42と、を備えている。モータ制御部42は、操舵トルクTを参照するとともに、車速検出部107で検出される車速を参照することができるが、モータ制御部42は、車速検出部107からの車速を参照しなくてもよい。なお、電動パワーステアリング装置10は、車速検出部107を備える代わりに車速検出部107からの車速を利用しているが、電動パワーステアリング装置10は、車速検出部107を備えてもよい。
図1の例において、モータ制御部42は、電動モータ43のモータ電流を制御するだけでなく、電動モータ43の回転量をウェイクアップ状態等の第1のモードで検出する回転量検出部130を備えている。モータ制御部42は、電動モータ43の逆起電圧を検出する逆起電圧検出部131を更に備えることが好ましい。また、図2で示されるように、モータ制御部42は、電動モータ43の回転量を抑制可能な回転抑制素子132を備えている。
電動パワーステアリング装置10の主電源がオフされている間、電動パワーステアリング装置10又はモータ制御部42は、電動モータ43の駆動を停止させることができるとともに、回転抑制素子132は、電動モータ43に接続される(図2参照)。この状態で、ステアリングハンドル(例えばステアリングホイール)21が運転者によって操作される場合、電動モータの回転量は、回転抑制素子132によって抑制される。言い換えれば、運転者は、ステアリングハンドル21を操作し難くなり、ステアリングハンドル21を急いで操作したとしても、電動モータ43の回転にブレーキがかかる。このように、ステアリングハンドル21の操作速度が遅くなるので、消費電力が低減されるウェイクアップ状態等の第2のモードで回転量検出部130が電動モータ43の回転量を検出する時の検出精度の低下を抑制することができる。
加えて、ステアリングハンドル21が運転者によって操作される時に電動モータ43の逆起電圧が発生する一方、ステアリングハンドル21が運転者によって操作されない場合、電動モータ43の回転量を検出する必要がない。従って、電動パワーステアリング装置10の主電源がオフされる状態で、逆起電圧検出部131によって検出された電動モータの逆起電圧に基づき所定の条件が満たされた時だけ、回転量検出部130は、例えばスリープ状態(第2のモード)から例えばウェイクアップ状態(第1のモード)に遷移して電動モータ43の回転量を検出することができる。言い換えれば、電動モータ43の逆起電圧に基づき所定の条件が満たされない限り、回転量検出部130は、例えばスリープ状態(第2のモード)であり続けるので、電動モータ43の回転量を検出する時の消費電力が低減される。
図1の例において、回転量検出部130によって検出される電動モータ43の回転量は、例えば、電動モータ43の回転数を含む回転角θ(絶対電気角)であるが、例えば特許文献3のバックアップ回路200で検出されるような、電動モータ43の回転数だけでもよい。言い換えれば、回転量検出部130によって検出される電動モータ43の回転量は、例えば横滑り防止装置等の外部機器207の用途、或いは、モータ制御部42によるモータ電流の制御方法等によって決定される。従って、外部機器207がステアリングハンドル21の回転数を含む回転角Θ(絶対操舵角)を必要とする場合、回転量検出部130は、電動モータ43の回転数を含む回転角θ(絶対電気角)を検出するだけでなく、絶対電気角θと減速機構44(例えばウォームギヤ機構)の減速比とを用いて、絶対操舵角Θを算出し、絶対操舵角Θを外部機器207に出力又は送信することができる。
図1の例において、電動パワーステアリング装置10の主電源がオフされた場合、回転量検出部130は、スリープ状態になり、逆起電圧検出部131によって検出された電動モータ43の逆起電圧に基づき所定の条件が満たされた時に、回転量検出部130は、スリープ状態からウェイクアップ状態に遷移する。このような回転量検出部130及び逆起電圧検出部131の動作の詳細については、図2〜図5を用いながら後述する。以下に、電動パワーステアリング装置10の動作の概要について、図1を用いながら説明する。
図1の例において、電動パワーステアリング装置10は、車両のステアリングハンドル21から車両の転舵車輪(例えば前輪)29,29に至るステアリング系20にアシストトルクを与えるアシストトルク機構40(補助トルク機構とも言う。)を備えている。また、電動パワーステアリング装置10は、転舵機構として例えばラックアンドピニオン機構25を備えている。
図1の例において、操舵系20は、ステアリングハンドル21にステアリングシャフト22(ステアリングコラムとも言う。)及び自在軸継手23,23を介して回転軸24(ピニオン軸とも言う。)を連結し、回転軸24にラックアンドピニオン機構25を介してラック軸26を連結し、回転軸26(ラック軸とも言う。)の両端に左右のタイロッド27,27及びナックル28,28を介して左右の転舵車輪29,29を連結したものである。ラックアンドピニオン機構25は、ピニオン軸24に有したピニオン31と、ラック軸26に有したラック32とを備える。
ステアリング系20によれば、運転者がステアリングハンドル21を操舵することで、その操舵トルクによりラックアンドピニオン機構25を介して、転舵車輪29,29を転舵することができる。
図1の例において、補助トルク機構40は、ステアリングハンドル21を操舵することによってステアリング系20に発生する操舵トルクTを操舵トルクセンサ等のトルク検出部41で検出し、この検出信号(トルク信号とも言う。)に基づきモータ制御部42で制御信号を発生し、この制御信号に基づき操舵トルクTに応じたアシストトルクを電動モータ43で発生し、減速機構44を介してアシストトルクを回転軸24に伝達し、さらに、アシストトルクを回転軸24からステアリング系20のラックアンドピニオン機構25に伝達するようにした機構である。
好ましくは、補助トルク機構40は、車速センサ等の車速検出部107において検出され、車両が前進することによって車両に発生する車速Vを利用し、この車速信号とトルク信号との双方に基づきモータ制御部42で制御信号を発生することができる。これにより、アシストトルクは、操舵トルクT及び車速Vに応じた値を示すことになる。また、後述するように、さらに好ましくは、アシストトルクは、操舵トルクT及び車速Vとともに、例えば電動モータ43のロータの回転数を含まない回転角θ(回転信号、相対電気角)等によって決定又は補正されている。
なお、アシストトルクがステアリング系20に与えられる箇所によって、電動パワーステアリング装置10は、ピニオンアシスト型、ラックアシスト型、コラムアシスト型等に分類することができる。図1の電動パワーステアリング装置10は、ピニオンアシスト型を示しているが、電動パワーステアリング装置10は、ラックアシスト型、コラムアシスト型等に適用してもよい。
電動パワーステアリング装置10によれば、ステアリング系20の操舵トルクに電動モータ43のアシストトルクを加えた複合トルクにより、ラック軸26で転舵車輪29,29を転舵することができる。
電動モータ43は、例えばブラシレスモータであり、ブラシレスモータは、レゾルバ等の回転センサを内蔵することができる。この回転センサは、ブラシレスモータにおけるロータの回転数を含まない回転角θに起因するモータ回転信号(レゾルバ信号も言う。)を検出するものである。なお、モータ制御部42内の回転量検出部130は、回転センサ(レゾルバ)からのモータ回転信号(レゾルバ信号)に基づき電動モータ43のロータの回転数を含まない回転角θ(回転信号、相対電気角)を検出するだけでなく、電動モータ43のロータの回転数をカウントして電動モータ43のロータの回転数を含む回転角θ(絶対電気角)を算出することができ、また、絶対電気角θと減速機構44の減速比とを用いてステアリングハンドル21の回転数を含む回転角Θ(絶対操舵角)を算出することができる。
図2は、図1で示されるモータ制御部42の具体的構成例を示す。図2の例において、モータ制御部42は、例えば電子制御ユニット(ECU)で構成され、図1の回転量検出部130及び逆起電圧検出部131だけでなく、常時電源生成部を有する電源回路133を有している。また、モータ制御部42は、電動モータ43の回転量を抑制可能な回転抑制素子132を有するとともに、電動モータ43のモータ電流を制御するために、例えば特開2010−47238号公報で開示されるような微分処理部102、位相補正部103、イナーシャ補正部104、ダンパー補正部105、目標電流設定部108、加算演算部109、減算演算部110、偏差演算部111、PI設定部112、非干渉化制御部113、演算部114、dq−3相変換部115、モータ駆動部116、モータ電流検出部118,119、及び3相−dq変換部120をさらに有している。なお、車速検出部107は、例えば電子制御ユニット(ECU)で構成され、車速検出部107は、例えばCAN等の車載ネットワーク202を介してモータ制御部42に接続されている。モータ制御部42は、車速検出部107からの車速Vを有線及び無線を含む任意の方式で受け取ることができる。例えば横滑り防止装置等の外部機器207は、例えば電子制御ユニット(ECU)で構成され、外部機器207は、モータ制御部42又は回転量検出部130からの例えば絶対操舵角Θを任意の方式で受け取ることができる。
図2の例において、回転抑制素子132は、例えば3相ブラシレスモータである電動モータ43の例えばV相とW相との間に配置されている。ここで、電動モータ43は、例えば2相ブラシレスモータでもあってもよく、例えば4相ブラシレスモータであってもよく、複数相のブラシレスモータであればよい。また、回転抑制素子132は、例えば3相ブラシレスモータである電動モータ43の例えばV相とW相との間に配置されているが、回転抑制素子132は、電動モータ43の例えばV相とU相との間に配置されてもよく、又は、電動モータ43の例えばU相とW相との間に配置されてもよい。加えて、図2の例において、回転抑制素子132は1つであるが、2つ又は3つでもよく、具体的には、V相とU相との間及び/又はU相とW相との間に、追加的な回転抑制素子(図示せず)が配置されてもよい。
回転抑制素子132が複数相のブラシレスモータの少なくとも2つの相間に配置されて少なくとも2つの相間の電位差を減少させるので、電動パワーステアリング装置10の主電源がオフされている時にステアリングハンドル21が操作されても、電動モータ43にいわゆる電磁ブレーキ効果を発生させることができる。
回転抑制素子123は、例えば抵抗素子で構成されることが好ましいが、回転抑制素子123は、例えばコンデンサ素子で構成されてもよい。或いは、回転抑制素子123は、抵抗素子だけでなく、コンデンサ素子を含んでもよい。加えて、回転抑制素子123は、例えばコイル素子で構成されてもよく、或いは、回転抑制素子123は、抵抗素子及び/又はコンデンサ素子だけでなく、コイル素子を含んでもよい。即ち、回転抑制素子123は、抵抗素子、コンデンサ素子、及びコイル素子の少なくとも1つで構成することができる。電動パワーステアリング装置10の主電源がオフされている時に抵抗素子が例えばブラシレスモータの少なくとも2つの相間に接続されるので、ステアリングハンドル21が操作されても、抵抗素子が2つの相間の電位差を減少させて、電磁ブレーキ効果が発生するので、抵抗素子は、ステアリングハンドル21の操作速度を低減可能になる。一方、電動パワーステアリング装置10の主電源がオフされている時にコンデンサ素子が例えばブラシレスモータの少なくとも2つの相間に接続されるので、ステアリングハンドル21が緩やかに操作される時にコンデンサ素子が2つの相間の電位差を減少させ難い一方、ステアリングハンドル21が急に操作される時にコンデンサ素子が2つの相間の電位差を減少させ易くなる。即ち、ステアリングハンドル21が急に操作される時に電磁ブレーキ効果が発生し易いので、コンデンサ素子は、ステアリングハンドル21の操作速度を高速領域で低減可能になる。また、電動パワーステアリング装置10の主電源がオフされている時にコイル素子が例えばブラシレスモータの少なくとも2つの相間に接続されるので、ステアリングハンドル21が緩やかに操作される時にコイル素子が2つの相間の電位差を減少させ易い一方、ステアリングハンドル21が急に操作される時にコイル素子が2つの相間の電位差を減少させ難くなる。即ち、ステアリングハンドル21が緩やかに操作される時に電磁ブレーキ効果が発生し易いので、コイル素子は、ステアリングハンドル21の操作速度を低速領域で低減可能になる。なお、抵抗素子とコンデンサ素子及び/又はコイル素子とを組み合わせることで、ステアリングハンドルの操作速度に応じて、電磁ブレーキ効果を調整することができる。
図2の例において、電動パワーステアリング装置10の主電源がオフされた場合、回転抑制素子132は、例えば3相ブラシレスモータである電動モータ43の例えばV相とW相との間に配置されるように、電動モータ43に接続される。一方、電動パワーステアリング装置10の主電源がオンされた場合、回転抑制素子132は、電動モータ43に切断される。具体的には、回転抑制素子132が例えばV相とW相との間に配置される場合、回転抑制素子132の一端とV相との間及び回転抑制素子132の他端とW相との間に、例えば常閉スイッチ(図示せず)が設けられ、電動パワーステアリング装置10の主電源がオンされる間、モータ制御部42又は回転量検出部130は、常閉スイッチが開くように、常閉スイッチを制御することができる。
図2の例において、電源回路133は、主電源生成部と常時電源生成部とを有し、例えば常時電源ライン+B及び接地ラインGNDが電源回路133に入力されている。ここで、常時電源ライン+Bは、車両に搭載されるバッテリ(図示せず)の+端子(正極)に接続され、接地ラインGNDは、そのバッテリの−端子(負極)又は車両の車体に接続されている。また、電源回路133は、イグニッションスイッチIGNのオン状態/オフ状態を参照し、イグニッションスイッチIGNのオン状態でパワーステアリング装置10の主電源がオンされる一方、イグニッションスイッチIGNのオフ状態でパワーステアリング装置10の主電源がオフされる。
パワーステアリング装置10の主電源がオンされる時、電源回路133内の主電源生成部は、常時電源ライン+Bの電位と接地ラインGNDの電位とに基づきモータ制御部42内の回転量検出部130及び逆起電圧検出部131以外の他のすべての回路(例えば目標電流設定部108、モータ駆動部116等)の電源を生成する。モータ制御部42は、電源回路133内の主電源生成部で生成される電源の電力で、電動モータ43を駆動することができる。一方、パワーステアリング装置10の主電源がオフされる時、電源回路133内の主電源生成部で電源が生成されず、電動モータ43の駆動は、停止する。
このように、イグニッションスイッチIGNのオン状態で回転量検出部130及び逆起電圧検出部131を除くパワーステアリング装置10又はモータ制御部42が作動する一方、イグニッションスイッチのオフ状態で回転量検出部130及び逆起電圧検出部131を除くパワーステアリング装置10又はモータ制御部42が停止する。
電源回路133内の常時電源生成部は、常に、常時電源ライン+Bの電位と接地ラインGNDとに基づきモータ制御部42内の回転量検出部130及び逆起電圧検出部131の電源を生成する。但し、パワーステアリング装置10の主電源がオフされる時のステアリングハンドル21の操作と無関係に、回転量検出部130が常に電動モータ31の回転量を検出する場合、回転量検出部130の消費電力は多くなってしまう(比較例1)。仮に、パワーステアリング装置10の主電源がオフされる時のステアリングハンドル21の操作と無関係に、回転量検出部130が間欠的に電動モータ31の回転量を検出しても、電動モータ31の回転量を検出する毎にバッテリの残量が低下してしまう(比較例2)。
従って、図2で示されるモータ制御部42内の回転量検出部130及び逆起電圧検出部131は、電源回路133内の常時電源生成部で生成される電源の電力で、パワーステアリング装置10の主電源がオフされる時のステアリングハンドル21の操作を監視し、ステアリングハンドル21が運転者によって操作された時だけ電動モータ31の回転量を検出することが好ましい。図2の例において、具体的には、イグニッションスイッチIGNがオフである間、回転量検出部130は、原則として、スリープ状態である一方、イグニッションスイッチIGNがオフであってもステアリングハンドル21が運転者によって操作された時だけ、回転量検出部130は、スリープ状態からウェイクアップ状態に遷移して電動モータ31の回転量を検出する。ステアリングハンドル21が運転者によって操作された時だけ、回転量検出部130が起動するので、パワーステアリング装置10の主電源がオフされる時の回転量検出部130の消費電力が低減される。また、ステアリングハンドル21が運転者によって操作されない限り、電動モータ31の回転量が検出されないので、パワーステアリング装置10の主電源がオフされる時のバッテリの残量の低下を抑制することができる。なお、逆起電圧検出部131は、少なくともパワーステアリング装置10の主電源がオフされる時のステアリングハンドル21の操作に起因する電動モータ43の逆起電圧を検出し、電動モータ43の逆起電圧に基づき所定の条件が満たされた時にウェイクアップ信号を回転量検出部130に送信する。
図2の例において、電動パワーステアリング装置10の主電源がオフされた場合、回転量検出部130は、スリープ状態になり、電動モータ43のレゾルバを励磁しない。具体的には、スリープ状態である回転量検出部130内の励磁電圧生成部は、レゾルバへの励磁電圧Vrを生成せず、従って、回転量検出部130内の角度変換部は、レゾルバからの励起電圧V1,V2(検出電圧)から電動モータ43の回転角θ(相対電気角)を検出しない。一方、励磁電圧生成部は、スリープ状態からウェイクアップ状態に遷移することで、励磁電圧Vrを生成する。同様に、回転量検出部130内の角度変換部は、スリープ状態からウェイクアップ状態に遷移することで、レゾルバからの励起電圧V1,V2(検出電圧)から電動モータ43の回転角θ(相対電気角)を検出するだけでなく、電動モータ43の電動モータ43の回転数をカウントして電動モータ43の回転数を含む回転角θ(絶対電気角)を算出することができる。この時、即ち、電動パワーステアリング装置10の主電源がオフされている間にスリープ状態からウェイクアップ状態に遷移する時、回転量検出部130内の角度変換部は、絶対電気角θと減速機構44の減速比とを用いてステアリングハンドル21の回転数を含む回転角Θ(絶対操舵角)を算出してもよい。
図2の例において、電動パワーステアリング装置10の主電源がオンである間、即ちイグニッションスイッチIGNがオンである間、回転量検出部130は、ウェイクアップ状態であり、電動モータ43のレゾルバを励磁して、電動モータ43の回転角θ(相対電気角)を検出し、電動モータ43の回転数を含む回転角θ(絶対電気角)及び/又はステアリングハンドル21の回転数を含む回転角Θ(絶対操舵角)を算出することができる。ここで、電動モータ43の回転数を含む回転角θ(絶対電気角)及び/又はステアリングハンドル21の回転数を含む回転角Θ(絶対操舵角)は、例えば横滑り防止装置等の外部機器207で用いられる。一方、電動モータ43の回転角θ(相対電気角)は、例えば電動モータ43のモータ電流の制御に用いられ、具体的には、回転量検出部130又は角度変換部は、電動モータ43の回転角θ(相対電気角)に対応する信号をdq−3相変換部115と3相−dq変換部120に出力する。さらに、回転量検出部130又は角度変換部は、電動モータ43の回転角θ(相対電気角)から電動モータ43の回転角速度ωを算出し、この回転角速度ωに対応する信号を、微分処理部102とダンパー補正部105と非干渉化制御部113に出力する。
図2の例において、回転量検出部130は、電動モータ43のレゾルバを励磁して電動モータ43の回転角θ(相対電気角)を検出しているが、電動モータ43のレゾルバが故障した時、又は電動モータ43がレゾルバを有しない時等、回転量検出部130は、電動モータ43の回転角θ(相対電気角)の推定を実行して電動モータ43の回転角θ(絶対電気角)及び/又はステアリングハンドル21の回転角Θ(絶対操舵角)を算出してもよい。具体的には、回転量検出部130は、例えば特開2009−248962号公報(段落[0026]〜[0029]、[0033])で開示されるような3つの相電圧Vu,Vv,Vw及び3つの検出駆動電流Iu,Iv,Iw並びに逆起電圧定数[V/rpm]に基づく電動モータ43の回転角速度ωから電動モータ43の回転角θ(相対電気角)の推定を実行してもよい。なお、図2のモータ制御部42によるモータ電流の制御方法の詳細(電動モータ43の回転角θ(相対電気角)を利用するdq−3相変換部115及び3相−dq変換部120の動作、並びに、電動モータ43の回転角速度ωを利用する微分処理部102、ダンパー補正部105、非干渉化制御部113の動作等)については、後述する。
図3(A)は、図1で示される電動モータ43内のレゾルバの概略構成例を示し、図3(B)は、図3(A)で示されるロータに固定されるレゾルバ巻線を正弦波状の電圧で励磁する状態で電動モータ43が回転する時に、ステータに固定される1組のレゾルバ巻線で検出される励起電圧V1,V2の変化例を示し、図3(C)は、電動モータ43の回転角θと1組のレゾルバ巻線で検出される励起電圧V1,V2との関係例を示す。図1又は図2の回転量検出部130は、電動モータ43の回転量をウェイクアップ状態で検出し、具体的には、回転量検出部130は、電動モータ43のレゾルバ等の回転センサを励磁又は起動する必要がある。
図3(A)の例において、レゾルバは、電動モータ43のロータに固定されるレゾルバ巻線と電動モータ43のステータに固定される1組のレゾルバ巻線とで構成され、回転量検出部130は、電動モータ43のロータに固定されるレゾルバ巻線を例えば正弦波状の電圧(Vr=Vs・sin(2πf・t))で励磁することができる。ここで、Vsは、基準電圧であり、fは、励磁周波数である。図2の回転量検出部130内の励磁電圧生成部は、このような励磁電圧Vrをロータに固定されるレゾルバ巻線の両端間に印加する。この時、ステータに固定される1組のレゾルバ巻線で検出される励起電圧(V1=Vs'・sin(2πf・t)・sinθ,V2=Vs'・sin(2πf・t)・cosθ)は、ステータに対するロータの角度(即ち電動モータの回転角θ)と励磁周波数f(励磁電圧Vr)とによって変化する(図3(B)参照)。また、電動モータ43の回転角θと、例えば励磁周波数fと同一のサンプリング周波数で検出される励起電圧V1,V2との関係は、例えば図3(C)の例で表される。
従って、回転量検出部130内の角度変換部は、例えば図3(C)で示されるような関係式を用いて、検出又はサンプリングされる励起電圧V1,V2を電動モータ43の回転角θ(相対電気角)に変換することができる。また、角度変換部は、電動モータ43の回転角θ(相対電気角)が例えば360又は0[deg]を通過する毎に電動モータ43の回転数をカウントアップ又はカウントダウンして、電動モータ43の回転数を含む回転角θ(絶対電気角)を算出することができる。
図4は、電動パワーステアリング装置10の主電源がオフされる状態でステアリングハンドル21が運転者によって操作される時に発生する電動モータ43の逆起電圧(U相電圧Vu、V相電圧Vv、W相電圧Vw)の変化例を示す。図4の例において、ステアリングハンドル21の操作に応じて電動モータ43が一定の角速度で例えば正方向に2回転すると、電動モータ43の逆起電圧、即ち3つの相電圧Vu,Vv,Vwの各々は、電動モータ43の回転角θ(相対電気角)に応じて、例えば正弦波を示すように変動する。ここで、電動モータ43の3つの相電圧Vu,Vv,Vwのうちの1つの相電圧(例えばVv)の位相は、残りの2つの相電圧(例えばVu,Vw)の位相に対して±120[deg]だけ進行するので、電動モータ43の少なくとも1つの相の電圧だけを検出することで、電動モータ43の逆起電圧を監視することができる。言い換えれば、図2のモータ制御部42内の逆起電圧検出部131は、例えば電動モータ43の1つのW相電圧Vwだけを検出又は監視しているが、逆起電圧検出部131は、例えば他の1つのU相電圧Vuだけを監視してもよく、或いは、例えば2つのU相電圧Vu及びW相電圧Vwだけを監視してもよく、或いは、電動モータ43のすべてのU相電圧Vu、V相電圧Vv及びW相電圧Vwを監視してもよい。
図4の例において、3つの相電圧Vu,Vv,Vwの各々の振幅は、電動モータ43の角速度に依存し、例えばステアリングハンドル21が操作されないで電動モータ43の角速度がゼロである時、3つの相電圧Vu,Vv,Vwの各々は、ゼロを示すことになる。また、ステアリングハンドル21が緩やかに操作されて電動モータ43の角速度が小さい時に3つの相電圧Vu,Vv,Vwの各々の振幅は小さい一方、ステアリングハンドル21が急いで操作されて電動モータ43の角速度が大きい時に3つの相電圧Vu,Vv,Vwの各々の振幅は大きくなる。従って、逆起電圧検出部131が例えばW相電圧Vwだけを検出する場合、検出されるW相電圧Vwが所定値(第1の所定値)を超えた時に、ステアリングハンドル21が運転者によって操作されたことを推定することができる。ここで、所定値(第1の所定値)は、ステアリングハンドル21が緩やかに操作される時のW相電圧Vwの振幅よりも小さく設定することが好ましい。このように、例えばW相電圧Vwが所定値(第1の所定値)を超えた時に、即ち所定の条件が満たされた時に、逆起電圧検出部131は、ウェイクアップ信号を生成し、このウェイクアップ信号に応じて、回転量検出部130は、スリープ状態からウェイクアップ状態に遷移する。
なお、ウェイクアップ状態で電動モータ43の回転数を含む回転角θ(絶対電気角)を算出又は監視する時に、回転量検出部130は、回転角θ(絶対電気角)の変化がなくなったか否かを判定することが好ましい。電動モータ43の回転角θ(絶対電気角)の変化がなくなった場合、回転角θ(絶対電気角)の変化がなくなった後に、回転量検出部130は、ウェイクアップ状態からスリープ状態に遷移することができる。これにより、回転量検出部130の消費電力が低減される。
加えて、回転量検出部130は、車両の室内に乗員又は運転者が存在するか否かを判定又は推定することが好ましい。具体的には、回転量検出部130は、例えば車載ネットワーク202を介してキーレスエントリシステムのドアロックスイッチ(図示せず)のオン状態/オフ状態を参照することが好ましく、例えばイグニッションスイッチIGNがオフされた場合であっても、例えばドアロックスイッチがオフである時には、車両の室内に乗員が存在することが推定される。この場合、ステアリングハンドル21が運転者によって操作される可能性があるので、回転量検出部130は、ウェイクアップ状態を維持することができる。また、イグニッションスイッチIGNがオフされ、且つ例えばドアロックスイッチがオンされた時に、回転量検出部130は、ウェイクアップ状態からスリープ状態に遷移することができる。ここで、回転量検出部130は、ドアロックスイッチの代わりに、例えば車両のシートに設けられる重量センサ(図示せず)からの信号を参照してもよく、イグニッションスイッチIGNがオフされ、且つ重量センサが乗員又は運転者の体重を検知しなくなった時に、回転量検出部130は、ウェイクアップ状態からスリープ状態に遷移してもよい。
また、回転量検出部130がスリープ状態である場合、例えばドアロックスイッチがオフされた時に、ドアロックスイッチからの信号をウェイクアップ信号とみなしてもよい。具体的には、逆起電圧検出部131がウェイクアップ信号を送信しない場合であっても、例えばドアロックスイッチがオフされた時に、回転量検出部130は、スリープ状態からウェイクアップ状態に遷移することができる。車両の室内に乗員又は運転者が存在する場合、ステアリングハンドル21が運転者によって操作される可能性があるので、回転量検出部130は、スリープ状態からウェイクアップ状態に遷移することができる。
ところで、図4の例において、電動モータ43の逆起電圧、即ち3つの相電圧Vu,Vv,Vwの各々は、電動モータ43の回転角θ(相対電気角)に応じて、例えば正弦波を示すように変動する。従って、例えば3相間の電圧、即ち、例えば3つの線間電圧(第1の線間電圧(=Vu−Vw)、第2の線間電圧(=Vv−Vw)及び第3の線間電圧(=Vw−Vu))の各々も、例えば正弦波を示すように変動する。言い換えれば、逆起電圧検出部131は、例えばW相電圧Vwが所定値(第1の所定値)を超えたか否かを判定する代わりに、例えば第3の線間電圧(=Vw−Vu)が所定値(第2の所定値)を超えたか否かを判定することができる。逆起電圧検出部131が少なくとも1つの相電圧を検出又は監視する場合、例えば接地ラインGNDを介したノイズが例えばW相電圧Vwに反映され易い一方、逆起電圧検出部131が少なくとも1つの線間電圧を検出又は監視する場合、例えば接地ラインGNDを介したノイズが例えば第3の線間電圧(=Vw−Vu)に反映され難い。このように、電動モータ43の逆起電圧が例えばW相電圧Vwの代わりに例えば第3の線間電圧(=Vw−Vu)で構成される場合、ノイズに対する耐性が高くなる。
また、逆起電圧検出部131は、電動モータ43の逆起電圧(例えばW相電圧Vw、例えば第3の線間電圧(=Vw−Vu))が所定値(第1の所定値、第2の所定値)を超えたか否かを判定する代わりに、電動モータ43の逆起電圧(例えばW相電圧Vw、例えば第3の線間電圧(=Vw−Vu))が反転したか否かを判定することができる。図4の例によれば、電動モータ43の逆起電圧、即ち3つの相電圧Vu,Vv,Vwの各々は、電動モータ43の回転角θ(相対電気角)に応じて反転するので、少なくとも1つの相電圧又は少なくとも1つの線間電圧を検出又は監視することで、ステアリングハンドル21の操作を検出又は監視することができる。逆起電圧検出部131が電動モータ43の逆起電圧が所定値(第1の所定値、第2の所定値)を超えたか否かを判定する場合、所定値の設定が難しい一方、逆起電圧検出部131が電動モータ43の逆起電圧が反転したか否かを判定する場合、反転の基準であるゼロの設定が容易である。このように、所定の条件が電動モータ43の逆起電圧が所定値(第1の所定値、第2の所定値)を超えたことの代わりに、電動モータ43の逆起電圧が反転したことであることで構成される場合、逆起電圧検出部131を構築し易い、又は逆起電圧検出部131の検出精度が高くなる。
さらに、所定の条件は、電動モータ43の逆起電圧(例えばW相電圧Vw、例えば第3の線間電圧(=Vw−Vu))の積算値が所定値(第3の所定値、第4の所定値)を超えたことであってもよい。ここで、所定値(第3の所定値)は、例えばステアリングハンドル21が緩やかに操作される場合にW相電圧Vwが反転した時からW相電圧Vwの振幅が所定値(第1の所定値)に達した時までの逆起電圧の積算値に設定することができる。また、所定値(第4の所定値)は、例えばステアリングハンドル21が緩やかに操作される場合に第3の線間電圧(=Vw−Vu)が反転した時から第3の線間電圧(=Vw−Vu)の振幅が所定値(第2の所定値)に達した時までの逆起電圧の積算値に設定することができる。このように、所定の条件が電動モータ43の逆起電圧が所定値(第1の所定値、第2の所定値)を超えたことの代わりに、電動モータ43の逆起電圧の積算値が所定値(第3の所定値、第4の所定値)を超えたことであることで構成される場合、例えば接地ラインGNDを介したノイズに対する耐性が高くなる。
図5は、図1で示される回転量検出部130及び逆起電圧検出部131の配置例を示す。図5の例において、モータ制御部42は、例えばMAINマイコン、超小型マイコン等の2つのマイコンを有する電子制御ユニット(ECU)で構成され、2つのマイコンの各々に対応するように、2つの回転量検出部130をモータ制御部42に配置してもよい。ここで、2つのマイコンの一方(MAINマイコン)は、電動パワーステアリング装置10の主電源がオンされる時のモータ制御部42によるモータ電流の制御方法を実現し、2つのマイコンの他方(超小型マイコン)は、電動パワーステアリング装置10の主電源がオフされる時のモータ制御部42によるステアリングハンドル21の監視方法を実現する。
電動パワーステアリング装置10の主電源がオンされる場合、例えばMAINマイコンに対応する回転量検出部130(第1の回転量検出部)は、ウェイクアップ状態で検出であり、電動モータ43のレゾルバを励磁して電動モータ43の回転数を含む回転角θ(絶対電気角)を算出する一方、例えば超小型マイコンに対応する回転量検出部130(第2の回転量検出部)は、スリープ状態である。電動パワーステアリング装置10の主電源がオンからオフに変化する時、回転量検出部130(第1の回転量検出部)は、モータ制御部42内の例えばEEPROM等の不揮発性記憶部に電動モータ43の回転角θ(絶対電気角)を書き込んだ後にウェイクアップ状態からスリープ状態に遷移する。
電動パワーステアリング装置10の主電源がオンからオフに変化する時、回転量検出部130(第2の回転量検出部)は、原則として、スリープ状態を継続する。また、電動パワーステアリング装置10の主電源がオフである間、或いは、回転量検出部130(第1の回転量検出部)及び回転量検出部130(第2の回転量検出部)の何れも電動モータ43の回転角θ(絶対電気角)を算出しない間、逆起電圧検出部131は、電動モータ43の逆起電圧を検出し、逆起電圧に基づき所定の条件が満たされた時に、ウェイクアップ信号を生成する。
電動パワーステアリング装置10の主電源がオフされる場合、回転量検出部130(第2の回転量検出部)は、原則として、逆起電圧検出部131からのウェイクアップ信号に応じて、スリープ状態からウェイクアップに遷移する。この時、回転量検出部130(第2の回転量検出部)は、例えばEEPROMの電動モータ43の回転角θ(絶対電気角)を参照し、EEPROMに記憶される回転角θ(絶対電気角)からの変化量δθ(絶対電気角)を算出する。ここで、回転量検出部130(第2の回転量検出部)は、変化量δθ(絶対電気角)の変化がなくなった後に、ウェイクアップ状態からスリープ状態に遷移してもよい。回転量検出部130(第2の回転量検出部)がウェイクアップ状態からスリープ状態に遷移する時に回転量検出部130(第1の回転量検出部)がスリープ状態である場合、回転量検出部130(第2の回転量検出部)は、EEPROMの回転角θ(絶対電気角)を変化量δθ(絶対電気角)で更新し、更新した回転角θ(絶対電気角)をEEPROMに書き込む。
また、電動パワーステアリング装置10の主電源がオフからオンに変化する時に回転量検出部130(第2の回転量検出部)がスリープ状態である場合、回転量検出部130(第2の回転量検出部)は、スリープ状態を継続する一方、電動パワーステアリング装置10の主電源がオフからオンに変化する時に回転量検出部130(第2の回転量検出部)がウェイクアップ状態である場合、回転量検出部130(第2の回転量検出部)は、ウェイクアップ状態からスリープ状態に遷移する。回転量検出部130(第2の回転量検出部)がウェイクアップ状態からスリープ状態に遷移する時に回転量検出部130(第1の回転量検出部)がウェイクアップ状態である場合、回転量検出部130(第2の回転量検出部)は、変化量δθ(絶対電気角)を回転量検出部130(第1の回転量検出部)に送信してもよい。この時、回転量検出部130(第1の回転量検出部)は、EEPROMの回転角θ(絶対電気角)を変化量δθ(絶対電気角)で更新することができる。
ところで、車両に搭載されるバッテリ(第1のバッテリ)が例えば車両のメンテナンス等で車両から外される場合もある。この場合、回転量検出部130(第1の回転量検出部、第2の回転量検出部)は、もはやウェイクアップ状態を維持することができない。また、逆起電圧検出部131も、ウェイクアップ信号を生成することもできない。従って、第1のバッテリが車両から外れた場合であっても電動モータ43の回転角θ(絶対電気角)の算出を継続するために、車両は、第2のバッテリ(図示せず)を追加で備えてもよい。即ち、電動パワーステアリング装置10は、第1のバッテリ又は第2のバッテリの何れか一方からの電力で、電動モータ43の回転角θ(絶対電気角)の算出を継続することができる。
代替的に、車両が第2のバッテリを備えない場合、電動パワーステアリング装置10は、例えばRAM等の揮発性記憶部(図示せず)に予め設定された値が維持されているか否かを判定することができる。例えば電動パワーステアリング装置10のECU又はマイコン内のRAMがバッテリ(第1のバッテリ)の外れによって初期化されている場合、電動パワーステアリング装置10は、例えば車載ネットワーク202を介して例えばメータECU(図示せず)に警告信号を送信し、メータECUは、例えばメータ内の警告灯(図示せず)等の警告部を点灯させることができる。警告部の点灯により、運転者は、例えば横滑り防止装置等の外部機器207で用いられる電動モータ43の回転角θ(絶対電気角)が正確でない可能性を認識することができる。同時に、例えば横滑り防止装置等の外部機器207の作動も停止することが好ましい。
但し、電動モータ43の回転角θ(絶対電気角)が正確でない場合であっても、車両が直進する時に、具体的には、例えば操舵トルクTがゼロで車速Vが所定値以上である時に、電動パワーステアリング装置10は、電動モータ43の回転角θ(絶対電気角)の中点又はステアリングハンドル21の回転角Θ(絶対操舵角)の中点を学習又は利用して、これらの回転角Θ,θ(絶対電気角)を校正又は書き直すことができる。その後、電動パワーステアリング装置10は、警告信号の生成又は送信を停止することで、警告部が消灯するとともに、例えば横滑り防止装置等の外部機器207の作動も再開することができる。
以下に、図2のモータ制御部42によるモータ電流の制御方法について、説明する。図2の例において、位相補正部103は、操舵トルク検出部41から入力した操舵トルク信号Tを、車速検出部107から入力した車速信号Vに基づいて位相補正をして、その補正操舵トルク信号T'を目標電流設定部108に出力する。イナーシャ補正部104は、操舵トルク検出部41から入力した操舵トルク信号Tと、車速検出部107から入力した車速信号Vと、回転角速度ωに対応する信号を微分処理部102(微分演算部102)で微分することにより得られた角加速度(つまり、回転角速度ωの時間微分値)に対応する信号とから、慣性モーメントに係るイナーシャ補正をするためのイナーシャ補正信号diを生成し、このイナーシャ補正信号diを加算演算部109に出力する。ダンパー補正部105は、操舵トルク検出部41から入力した操舵トルク信号Tと、車速検出部107から入力した車速信号Vと、回転角速度ωに対応する信号とから、ダンピング係数に係るダンパー補正をするためのダンパー補正信号ddを生成し、このダンパー補正信号ddを減算演算部110に出力する。
図2の例において、目標電流設定部108は、補正操舵トルク信号T'と車速信号Vとに基づき、2相目標電流Id1,Iq1を算出して出力する。目標電流Id1,Iq1は、ブラシレスモータ(電動モータ43)のインナロータ上の永久磁石が作り出す回転磁束と同期した回転座標系において、永久磁石と同一方向のd軸及びこれに直交したq軸にそれぞれ対応するものである。これらの目標電流Id1,Iq1を、それぞれ「d軸目標電流Id1」及び「q軸目標電流Iq1」ということにする。
加算演算部109は、目標電流Id1,Iq1にイナーシャ補正信号di(イナーシャ補正電流di)を加算し、その加算値、つまりイナーシャ補正後目標電流Id2,Iq2を出力する。減算演算部110は、イナーシャ補正後目標電流Id2,Iq2からダンパー補正信号dd(ダンパー補正電流dd)を減算し、その減算値、つまりダンパー補正後目標電流Id3,Iq3を出力する。このダンパー補正後目標電流Id3,Iq3、をそれぞれ「d軸最終目標電流Id*」,「q軸最終目標電流Iq*」と言うことにする。偏差演算部111は、d軸及びq軸最終目標電流Id*,Iq*から、3相−dq変換部120から入力したd軸及びq軸の検出電流Id,Iqをそれぞれ減算し、その減算値、つまり偏差DId,DIqをPI設定部112に出力する。
図2の例において、PI設定部112は、偏差DId,DIqを用いた演算の実行により、d軸及びq軸の検出電流Id,Iqがd軸及びq軸最終目標電流に追従するように、d軸及びq軸の目標電圧Vd,Vqをそれぞれ算出する。非干渉化制御部113及び演算部114は、d軸及びq軸の目標電圧Vd,Vqを、d軸及びq軸の補正目標電圧Vd',Vq'に補正して、dq−3相変換部115に出力する。詳しく述べると、非干渉化制御部113は、3相−dq変換部120から入力したd軸及びq軸の検出電流Id,Iq、及びモータ回転角検出部130から入力したインナロータの回転角速度ωに基づいて、d軸及びq軸の目標電圧Vd,Vqのための非干渉化制御補正値を算出する。演算部114は、d軸及びq軸の目標電圧Vd,Vqから、非干渉化制御補正値をそれぞれ減算することにより、d軸及びq軸の補正目標電圧Vd',Vq'を算出して、dq−3相変換部115に出力する。
図2の例において、dq−3相変換部115は、d軸及びq軸の補正目標電圧Vd',Vq'を、3相目標電圧Vu*,Vv*,Vw*に変換して、モータ駆動部116に出力する。モータ駆動部116は、図示せぬPWM電圧発生部及びインバータ回路を含む。PWM電圧発生部は、3相目標電圧Vu*,Vv*,Vw*に対応した、PWM制御電圧信号UU,VU,WUを生成し、インバータ回路に出力する。インバータ回路は、PWM制御電圧信号UU,VU,WUに対応した、3相の交流駆動電流Iu,Iv,Iwを発生し、これらを3相の駆動電流路117を介してブラシレスモータ(電動モータ43)にそれぞれ供給する。3相の交流駆動電流Iu,Iv,Iwは、それぞれブラシレスモータ(電動モータ43)をPWM駆動するための正弦波電流である。
図2の例において、3相の駆動電流路117のうちの2つには、モータ電流検出部118,119が設けられている。各モータ電流検出部118,119は、ブラシレスモータ(電動モータ43)に供給される3相の駆動電流Iu,Iv,Iwのうちの、2つの駆動電流Iu,Iwを検出して、3相−dq変換部120に出力する。3相−dq変換部120は、検出駆動電流Iu,Iwに基づいて、残りの駆動電流Ivを算出する。さらに、3相−dq変換部120は、これらの3相検出駆動電流Iu,Iv,Iwを、2相のd軸及びq軸の検出電流Id,Iqに変換する。
なお、図2には、説明の便宜上、それぞれ1組の加算演算部109と減算演算部110と偏差演算部111とPI設定部112と演算部114が示されている。実際には、これらの回路要素の組は、2つの目標電流Id1,Id2のそれぞれについても、個別に設けられる。
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。