JP2008083711A - トナー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のトナーは、樹脂成分が主としてポリエステル系樹脂で構成されるものである。ポリエステル系樹脂は、主としてブロック共重合体で構成されたブロックポリエステルと、ブロックポリエステルより結晶性の低い非晶性ポリエステルとを含む。ブロックポリエステルは、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮合してなる結晶性ブロックと、該結晶性ブロックより結晶性の低い非晶性ブロックとを有するものである。ブロックポリエステルの重量平均分子量をMw(B)、非晶性ポリエステルの重量平均分子量をMw(A)としたとき、0.5≦Mw(B)/Mw(A)<4の関係を満足し、1×104≦Mw(B)<4×104である。
【選択図】なし
Description
トナーを構成する樹脂としては、ポリエステル樹脂が広く用いられている。ポリエステル樹脂は、最終的に得られるトナーの弾性率、帯電性等の特性を制御し易いという特徴を有している。
しかしながら、このようなアルコール成分で構成されたポリエステルは、摩擦係数が比較的大きく、また、機械的ストレスに弱いため、現像機内等において粒子破壊を起こし易く、帯電不良、機内汚染、定着性低下等の問題を発生する場合があった。
本発明のトナーは、樹脂成分がポリエステル系樹脂を主とする材料で構成されたトナーであって、
前記ポリエステル系樹脂は、主としてブロック共重合体で構成されたブロックポリエステルと、前記ブロックポリエステルより結晶性の低い非晶性ポリエステルとを含み、
前記ブロックポリエステルは、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮合してなる結晶性ブロックと、前記結晶性ブロックより結晶性の低い非晶性ブロックとを有するものであり、
前記ブロックポリエステルの重量平均分子量をMw(B)、前記非晶性ポリエステルの重傷平均分子量をMw(A)としたとき、0.5≦Mw(B)/Mw(A)<4の関係を満足し、1×104≦Mw(B)<4×104であることを特徴とする。
これにより、本発明のトナーは、機械的ストレスに強く(十分な物理的安定性を有し)、かつ、幅広い温度領域で十分な定着性(定着強度)を有するものとなる。
これにより、トナーの形状の安定性が向上し、機械的ストレスに対し、特に優れた安定性を示すものとなる。
本発明のトナーでは、前記非晶性ポリエステルを構成するモノマー成分は、その50mol%以上が、前記ブロックポリエステルの非晶性ブロックを構成するモノマー成分と同一であることが好ましい。
これにより、非晶性ポリエステルとブロックポリエステルとの相溶性が、特に優れたものとなる。
これにより、トナーは、特に低温領域で十分な定着性(定着強度)を有するものとなる。
本発明のトナーでは、前記ブロックポリエステル中における前記結晶性ブロックの含有率は20〜65mol%であることが好ましい。
これにより、トナーは、機械的ストレスに強く、耐久性、保存性に優れたものとなる。
これにより、ブロックポリエステル(結晶性ブロック)の結晶性を特に高いものとすることができる。
本発明では、前記ブロックポリエステルの前記結晶性ブロックは、炭素数が3〜7の直鎖状の分子構造を有し、かつ、その両端に水酸基を有するものを、アルコール成分として含むものであることが好ましい。
これにより、ブロックポリエステル(結晶性ブロック)の結晶性が向上し、摩擦係数が低下するため、機械的ストレスに強く、耐久性や保存性に特に優れたものとなる。
これにより、トナーは、トナーとして求められる各種特性のバランスが特に優れたものとなる。
これにより、より靱性に優れた(耐折り曲げ性に優れた)定着画像が得られるという効果が得られる。
本発明のトナーでは、前記ブロックポリエステルの前記非晶性ブロックを構成するアルコール成分は、少なくともその一部が分岐鎖を有するものであることが好ましい。
これにより、規則配列を抑制し、結晶性を低下させ、透明性も向上するという効果が得られる。
これにより、トナーの耐オフセット性がより向上する。
本発明のトナーでは、前記ブロックポリエステルは、示差走査熱量分析による融点の吸熱ピークの測定を行ったときに求められる融解熱が3mJ/mg以上であることが好ましい。
これにより、トナーは、機械的ストレスに強く、耐久性、保存性に優れたものとなる。
これにより、特に優れた離型性が得られ、トナーの転写効率がさらに向上する。
本発明のトナーでは、前記非晶性ポリエステルを構成するカルボン酸成分は、その80mol%以上がテレフタル酸骨格を有するものであることが好ましい。
これにより、トナーは、トナーとして求められる各種特性のバランスが特に優れたものとなる。
これにより、トナーは、特に低温領域で十分な定着性(定着強度)を有するものとなる。
本発明のトナーでは、前記非晶性ポリエステルは、リニア型ポリマーであることが好ましい。
これにより、特に優れた離型性が得られ、トナーの転写効率がさらに向上する。
これにより、トナー粒子中の各構成成分の分散不良や相分離の発生を効果的に防止することができる。
本発明のトナーでは、トナー中における前記ポリエステル系樹脂の含有量が、50〜98wt%であることが好ましい。
これにより、トナーは、特に低温領域で十分な定着性(定着強度)を有するものとなる。
これにより、トナーは、機械的ストレスに強く、耐久性、保存性に優れたものとなる。
本発明のトナーでは、前記結晶の平均長さが10〜1000nmであることが好ましい。
これにより、トナーの形状の安定性が特に優れたものとなり、機械的ストレスに対し、特に優れた安定性を示すものとなる。
これにより、トナーは、トナーとして求められる各種特性のバランスが特に優れたものとなる。
本発明のトナーでは、前記外添剤のトナー粒子への被覆率は、100〜300%であることが好ましい。
これにより、トナーは、トナーとして求められる各種特性のバランスが特に優れたものとなる。
本発明のトナーでは、トナーの平均粒径が3〜12μmであることが好ましい。
これにより、トナー粒子間での融着を防止し、印刷物の解像度を効果的に向上させることができる。
前記定着ローラに圧接される加圧ローラと、
前記定着ローラと前記加圧ローラとの接触部で形成される定着ニップ部を通過した記録媒体を前記定着ローラから剥離するための剥離部材とを有する定着装置で用いられることが好ましい。
これにより、記録媒体に確実に定着され、また、画像にすじや乱れが発生するのを防止することができる。
これにより、画像にすじや乱れが発生するのをより確実に防止することができる。
本発明のトナーでは、前記剥離部材が前記定着ローラおよび/または前記加圧ローラの軸方向に所定の長さを有する板状の部材であることが好ましい。
これにより、定着ローラおよび加圧ローラから、記録媒体を効率よく剥離させることができる。
これにより、定着ローラおよび加圧ローラから、記録媒体を効率よく剥離させることができる。
本発明のトナーでは、前記剥離部材が前記定着ローラおよび/または前記加圧ローラに近接して配設されていることが好ましい。
これにより、定着ローラおよび加圧ローラから、記録媒体を効率よく剥離させることができる。
これにより、画像にすじや乱れが発生するのを防止し、記録媒体の剥離性も向上する。
本発明のトナーでは、前記定着装置は、その運転時において、前記定着ローラと前記剥離部材とのギャップがほぼ一定になるように前記剥離部材が配設されたものであることが好ましい。
これにより、記録媒体の剥離性の低下を防止することができる。
これにより、定着ローラおよび加圧ローラから、記録媒体を効率よく剥離させることができる。
これにより、画像にすじや乱れが発生するのを防止し、記録媒体の剥離性も向上する。
本発明のトナーでは、前記定着装置は、前記定着ローラおよび前記加圧ローラの軸方向に延在し、前記定着ニップ部の記録媒体搬送方向下流側に、前記定着ローラおよび前記加圧ローラに近接して配設される前記剥離部材を備え、前記定着ローラ側の前記剥離部材の位置決めを前記定着ローラ表面で行い、前記加圧ローラ側の前記剥離部材の位置決めを前記加圧ローラの軸受表面で行うものであることが好ましい。
これにより、定着ローラおよび加圧ローラからの記録媒体の剥離性を向上させることができる。
これにより、定着ローラおよび加圧ローラからの記録媒体の剥離性を向上させることができる。
これにより、記録媒体の剥離性を維持しつつ、ギャップ管理を簡便に行うことができる。
図1は、本発明のトナーの製造に用いる混練機、冷却機の構成の一例を模式的に示す縦断面図、図2は、ブロックポリエステルについて示差走査熱量分析を行ったときに得られる、ブロックポリエステルの融点付近での示差走査熱量分析曲線のモデル図、図3は、軟化点解析用グラフ、図4は、トナー中に含まれるトナー粒子から遊離したルチルアナターゼ型の酸化チタンの量を測定する方法を説明するための図である。以下、図1中、左側を「基端」、右側を「先端」として説明する。
本発明のトナーは、少なくとも、主成分としての樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう)を含むものである。
[構成材料]
本発明のトナーは、少なくとも、主成分としての樹脂を含む原料5を用いて製造することができる。
以下、本発明のトナーの製造に用いられる原料5の各成分について説明する。
1.樹脂(バインダー樹脂)
本発明においては、樹脂(バインダー樹脂)は、主として、ポリエステル系樹脂で構成されたものである。樹脂中におけるポリエステル系樹脂の含有量は、50wt%以上であるのが好ましく、80wt%以上であるのがより好ましい。
ポリエステル系樹脂は、少なくとも、以下で説明するようなブロックポリエステルと、非晶性ポリエステルとを含むものである。このように、本発明は、ブロックポリエステルと、非晶性ポリエステルとを併用する点に特徴を有する。
ブロックポリエステルは、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮合してなる結晶性ブロックと、前記結晶性ブロックより結晶性の低い非晶性ブロックとを有するブロック共重合体で構成されたものである。
[1]結晶性ブロック
結晶性ブロックは、非晶性ブロックや非晶性ポリエステルに比べて、高い結晶性を有している。すなわち、分子配列構造が、非晶性ブロックや非晶性ポリエステルに比べて強固で安定したものである。このため、結晶性ブロックは、トナー全体としての強度を向上させるのに寄与する。その結果、最終的に得られるトナーは、機械的ストレスに強く、耐久性、保存性に優れたものとなる。
一方、結晶性ブロックは、上述したように、結晶性の高いものである。したがって、結晶性ブロックは、ブロックポリエステルにシャープメルト性を付与する機能を有する。このため、本発明のトナーは、後述する非晶性ポリエステルが十分に軟化するような、比較的高い温度(ブロックポリエステルの融点付近の温度)においても、優れた形状の安定性を保持することができる。したがって、本発明のトナーは、幅広い温度領域で十分な定着性(定着強度)を発揮することができる。
また、このような結晶性ブロックを、ブロックポリエステルが有しているため、本発明においては、後述するような熱球形化処理を施す場合、効率良く(短時間で)行うことが可能となり、最終的に得られるトナー粒子の円形度を特に優れたものにすることができる。
結晶性ブロックを構成するアルコール成分としては、2個以上の水酸基を有するものを用いることができ、中でも水酸基を2個有するアルコール成分であるのが好ましい。このような水酸基を2個有するアルコール成分としては、例えば、芳香環構造を有する芳香族ジオールや、芳香環構造を有さない脂肪族ジオール等が挙げられる。芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等)等が挙げられ、また、脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状ジオール類、または2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の環状ジオール類等が挙げられる。
結晶性ブロックを構成するカルボン酸成分としては、2価以上のカルボン酸またはその誘導体(例えば、酸無水物、低級アルキルエステル等)等を用いることができるが、2価のカルボン酸またはその誘導体等を用いるのが好ましい。このような2価のカルボン酸成分としては、例えば、o−フタル酸(フタル酸)、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等が挙げられる。
なお、3価以上のカルボン酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等が挙げられる。
なお、結晶性ブロックは、上記のようなアルコール成分、カルボン酸成分以外の成分を含むものであってもよい。
非晶性ブロックは、前述した結晶性ブロックに比べて結晶性が低い。また、後述する非晶性ポリエステルも、結晶性ブロックに比べて結晶性が低い。すなわち、非晶性ブロックは、後述する非晶性ポリエステルと同様に、結晶性ブロックに比べて結晶性が低い。
ところで、ブレンド樹脂においては、一般に、結晶性が大きく異なる樹脂同士は相溶し難く、結晶性の差が小さい樹脂同士は相溶し易い。したがって、ブロックポリエステルが非晶性ブロックを有することにより、ブロックポリエステルと、後述する非晶性ポリエステルとの相溶性(分散性)が高まる。その結果、最終的に得られるトナーにおいて、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとが、相分離(特に、マクロ相分離)するのを効果的に防止することができ、ブロックポリエステルの利点と非晶性ポリエステルの利点とを十分かつ安定的に発揮させることができる。
非晶性ブロックを構成するアルコール成分としては、2個以上の水酸基を有するものを用いることができ、中でも水酸基を2個有するアルコール成分であるのが好ましい。このような水酸基を2個有するアルコール成分としては、例えば、芳香環構造を有する芳香族ジオールや、芳香環構造を有さない脂肪族ジオール等が挙げられる。芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等)等が挙げられ、また、脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状ジオール類、または2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の環状ジオール類等が挙げられる。
また、非晶性ブロックを構成するアルコール成分は、少なくともその一部が分岐鎖(側鎖)を有するものであるのが好ましく、その30mol%以上が分岐鎖を有するものであるのがより好ましい。これにより、規則配列を抑制し、結晶性を低下させ、透明性も向上するという効果が得られる。
なお、3価以上のカルボン酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等が挙げられる。
なお、非晶性ブロックは、上記のようなアルコール成分、カルボン酸成分以外の成分を含むものであってもよい。
ブロックポリエステルのガラス転移点Tgは、特に限定されないが、50〜80℃であるのが好ましく、55〜75℃であるのがより好ましい。ガラス転移点が前記下限値未満であると、トナーの保存性(耐熱性)が低下し、使用環境等によっては、トナー粒子間での融着が発生する場合がある。一方、ガラス転移点が前記上限値を超えると、低温定着性や透明性が低下する。また、ガラス転移点が高すぎると、後述するような熱球形化処理を施す場合、その効果が十分に発揮されない可能性がある。なお、ガラス転移点は、JIS K 7121に準拠して測定することができる。
結晶性を表す指標としては、例えば、示差走査熱量分析(DSC)による融点の吸熱ピークの測定を行ったときのピークの中心値をTmp[℃]、ショルダーピーク値をTms[℃]としたときに、ΔT=Tmp−Tmsで表されるΔT値等が挙げられる(図2参照)。このΔT値が小さいほど結晶性が高い。
また、ブロックポリエステルは、例えば、ブロックポリエステルを構成するモノマー成分(アルコール成分やカルボン酸成分等)の種類や配合比等の異なる2種以上の樹脂(ブロックポリエステル)を組み合わせて用いてもよい。この場合のブロックポリエステルとしての平均分子量Mw(B)とは、それぞれの樹脂(ブロックポリエステル)の平均分子量と配合比とによって求められる平均値のことをいう。
なお、ブロックポリエステルは、前述した結晶性ブロック、非晶性ブロック以外のブロックを有するものであってもよい。
非晶性ポリエステルは、前述したブロックポリエステルより低い結晶性を有するものである。
非晶性ポリエステルは、主として、トナーを構成する各成分(例えば、後述するような着色剤、ワックス、帯電防止剤等)の分散性や、トナー製造時における混練物の粉砕性、トナーの定着性(特に、低温定着性)、透明性、機械的特性(例えば、弾性、機械的強度等)、帯電性、耐湿性等の機能を向上させるのに寄与する成分である。言い換えると、以下で詳述するような非晶性ポリエステルがトナー中に含まれないと、前記のようなトナーとして求められる特性を十分に発揮するのが困難となる。
非晶性ポリエステルを構成するアルコール成分としては、2個以上の水酸基を有するものを用いることができ、中でも水酸基を2個有するアルコール成分であるのが好ましい。このような水酸基を2個有するアルコール成分としては、例えば、芳香環構造を有する芳香族ジオールや、芳香環構造を有さない脂肪族ジオール等が挙げられる。芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等)等が挙げられ、また、脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状ジオール類、または2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の環状ジオール類等が挙げられる。
なお、3価以上のカルボン酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等が挙げられる。
なお、非晶性ポリエステルは、上記のようなアルコール成分、カルボン酸成分以外の成分を含むものであってもよい。
このように本発明は、Mw(B)/Mw(A)が前述の関係を満足するものであるが、1≦Mw(B)/Mw(A)≦3.2の関係を満足するのが好ましく、1≦Mw(B)/Mw(A)≦2.4の関係を満足するのがより好ましい。
また、非晶性ポリエステルは、リニア型ポリマー(架橋構造を有さないポリマー)であるのが好ましい。リニア型ポリマーは、架橋型のものに比べて、摩擦係数が小さい。これにより、特に優れた離型性が得られ、トナーの転写効率がさらに向上する。
なお、非晶性ポリエステルとして2種以上のものを用いる場合、例えば、少なくとも一つが、比較的高酸価のものであってもよい。このような高酸価のものが比較的少量含まれていると、環境特性を十分保持しつつ、定着性や帯電特性を向上させることができる。
すなわち、ブロックポリエステルのみを用いた場合(トナー中に非晶性ポリエステルを含まない場合)には、トナーの定着性(特に、低温領域での定着性)が低下する。また、ブロックポリエステルのみを用いた場合(トナー中に非晶性ポリエステルを含まない場合)には、トナーの透明性等の機能も低下し、さらに、トナーを構成する各成分(例えば、後述するような着色剤、ワックス、帯電防止剤等)の分散性や、トナー製造時における混練物の粉砕性も低下する。
ブロックポリエステルおよび非晶性ポリエステル以外の樹脂成分(第3の樹脂成分)としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル樹脂(ブロックポリエステルの結晶性より高い結晶性を有する前述した結晶性ポリエステル等)、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、トナーの製造に用いる原料5中には、必要に応じてワックスが含まれていてもよい。
ワックスが含まれることにより、例えば、トナー粒子の離型性を向上させることができる。
エステル系ワックスは、前述したポリエステル系樹脂と同様に、分子内にエステル構造を有しており、ポリエステル系樹脂との相溶性に優れる。また、前述したように、ポリエステル系樹脂は、主成分としての樹脂との相溶性にも優れている。このため、最終的に得られるトナー粒子中における遊離ワックスの発生、粗大化を防止することができる(トナー中でのワックスの微分散やミクロ相分離を容易に達成できる)。その結果、最終的に得られるトナーは、定着ローラとの離型性が特に優れたものとなる。
また、原料5中には、前記樹脂、着色剤、ワックス以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、帯電制御剤、分散剤、磁性粉末等が挙げられる。
前記帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
前記金属石鹸としては、トリステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩等)、ジステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等)、ステアリン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、オクタン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、コバルト塩等)、オレイン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩等)、パルミチン酸金属塩(例えば、亜鉛塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、レジン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等)等が挙げられる。
また、添加剤としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム等を用いてもよい。
上記のような原料5は、図1に示すような混練機1を用いて混練される。
混練に供される原料5は、前述した各成分が予め混合されたものであるのが好ましい。
本実施形態では、混練機として、2軸混練押出機を用いる構成について説明する。
混練機1は、原料5を搬送しつつ混練するプロセス部2と、混練された原料(混練物7)を所定の断面形状に形成して押し出すヘッド部3と、プロセス部2内に原料5を供給するフィーダー4とを有している。
プロセス部2では、スクリュー22、スクリュー23が、回転することにより、フィーダー4から供給された原料5に剪断力が加えられ、均一な混練物7、特に、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとが十分に相溶化した混練物7が得られる。
第1の領域25の内部温度は、第2の領域26より高く設定されている。すなわち、言い換えると、プロセス部2の内部を搬送される原料5は、第1の領域25を通過するときの温度のほうが、第2の領域26を通過するときの温度よりも高くなっている。
第1の領域25内での原料温度(第1の領域25の内部温度)T1[℃]は、ブロックポリエステルの融点をTm(B)[℃]としたとき、Tm(B)≦T1での関係を満足するのが好ましく、(Tm(B)+10℃)≦T1≦(Tm(B)+60℃)の関係を満足するのがより好ましい。原料温度T1が、Tm(B)[℃]未満であると、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとを十分に相溶化させることが困難となる場合がある。
また、第1の領域25内で、原料温度T1は、均一であっても、部位により異なるものであってもよい。後者の場合、第1の領域25における原料5の最高温度が、前記下限値よりも高いことが好ましく、さらに、第1の領域25における原料5の最低温度と最高温度とが、上記範囲内にあることがより好ましい。
第2の領域26内での原料温度(第2の領域26の内部温度)T2[℃]は、非晶性ポリエステルの軟化点をT1/2(A)[℃]としたとき、(T1/2(A)−20)≦T2≦(T1/2(A)+20)の関係を満足するのが好ましく、(T1/2(A)−10)≦T2≦(T1/2(A)+10)の関係を満足するのがより好ましい。原料温度T2が、前記下限値未満であると、混練物7中における相分離等が発生し易くなるとともに、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルの流動性が低下し、トナーの生産性が低下する場合がある。一方、原料温度T2が、前記上限値を超えると、第2の領域26を設けることによる前述の効果が十分に得られない場合がある。
また、第2の領域26内で、原料温度T2は、均一であっても、部位により異なるものであってもよい。後者の場合、第1の領域25における原料5の最低温度が、上記範囲内にあることが好ましい。
また、原料5の第2の領域26での滞留時間は、0.5〜12分であるのが好ましく、1〜7分であるのがより好ましい。第2の領域26での滞留時間が、前記下限値未満であると、第2の領域26を設けることによる前述の効果が十分に得られない場合がある。一方、第2の領域26での滞留時間が、前記上限値を超えると、生産効率が低下し、また、プロセス部2内の温度、スクリュー22、スクリュー23の回転数等によっては、熱による原料5の変性が起こり易くなり、最終的に得られるトナーの物性を十分に制御するのが困難になる可能性がある。
スクリュー22、スクリュー23の回転数は、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとの配合比や、これらの組成、分子量等により異なるが、50〜600rpmであるのが好ましい。スクリュー22、スクリュー23の回転数が、前記下限値未満であると、例えば、第1の領域25で、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとを十分に相溶化させることが困難となる場合があり、また、第2の領域26では、相分離を十分に防止することが困難となる場合がある。一方、スクリュー22、スクリュー23の回転数が、前記上限値を超えると、剪断により、ポリエステルの分子が切断され、樹脂の特性が劣化する場合がある。
第3の領域27内での原料温度T3[℃]は、第2の領域26内での原料温度T2との間で、(T2−40)≦T3≦(T2+40)の関係を満足するのが好ましく、(T2−20)≦T3≦(T2+20)の関係を満足するのがより好ましい。原料温度T3が、前記下限値未満であると樹脂が溶融され難く、混練トルクが高くなりすぎる場合がある。一方、原料温度T3が、前記上限値を超えると、原料投入口の温度が高くなりフィーダーも加熱され、樹脂がフィーダーに溶融固着してしまう場合がある。
また、図示の構成では、第1の領域25と、第2の領域26と、第3の領域27とが設けられている構成について説明したが、これ以外の領域が設けられている構成であってもよい。例えば、このような領域は、第1の領域25と第2の領域26との間にあってもよいし、第2の領域26よりもヘッド部3側にあってもよい。
プロセス部2で混練された混練物7は、スクリュー22とスクリュー23との回転により、ヘッド部3を介して、混練機1の外部に押し出される。
ヘッド部3は、プロセス部2から混練物7が送り込まれる内部空間31と、混練物7が押し出される押出口32とを有している。
内部空間31内での混練物7の温度(少なくとも押出口32付近での温度)T4[℃]は、T2より10℃程度、高い温度であるのが好ましい。混練物7の温度T4が、このような温度であると、混練物7が内部空間31で固化せず、押出口32から押し出しやすくなる。
このような横断面積漸減部33を有することにより、押出口32から押し出される混練物7の押出量が安定し、また、後述する冷却工程における混練物7の冷却速度が安定する。その結果、これを用いて製造されるトナーは、各トナー粒子間での特性のバラツキが小さいものとなり、全体としての特性に優れたものになる。
ヘッド部3の押出口32から押し出された軟化した状態の混練物7は、冷却機6により冷却され、固化する。
冷却機6は、ロール61、62、63、64と、ベルト65、66とを有している。
ベルト65は、ロール61とロール62とに巻掛けられている。同様に、ベルト66は、ロール63とロール64とに巻掛けられている。
また、図示の構成では、スクリューを2本有する構成の混練機について説明したが、スクリューは1本であってもよいし、3本以上であってもよい。
また、前述した実施形態では、冷却機として、ベルト式のものを用いた構成について説明したが、例えば、ロール式(冷却ロール式)の冷却機を用いてもよい。また、混練機の押出口32から押し出された混練物の冷却は、前記のような冷却機を用いたものに限定されず、例えば、空冷等により行うものであってもよい。
上述したような冷却工程を経た混練物7を造粒することにより、トナー製造用粉末を得る。
本実施形態においては、造粒工程は、以下に説明するような粉砕工程を有し、必要に応じて、熱球形化処理を施す。
なお、熱球形化工程は、必ずしも行わなくてよい。
まず、上述したような冷却工程を経た混練物7を粉砕する。
本発明では、前述したような条件を満足するブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとを用いているので、良好な粉砕性で混練物7を粉砕することができる。
粉砕の方法は、特に限定されず、例えばボールミル、振動ミル、ジェットミル、ピンミル等の各種粉砕装置、破砕装置を用いて行うことができる。
また、このような粉砕工程の後、必要に応じて、分級処理等の処理を行ってもよい。
分級処理には、例えば、ふるい、気流式分級機等を用いることができる。
また、後述するような熱球形化処理を施す場合、得られたトナー製造用粉末に対しては、熱球形化工程の前処理として、外添剤を付与する外添処理を施してもよい。このような前処理としての外添処理を行うことにより、トナー粒子の流動性と分散性が向上し、熱によるトナー同士の融着を十分に防止・抑制することができる。なお、このような前処理としての外添処理は、後述するような、熱球形化処理の後工程としての外添工程と同様にして行うことができ、また、後に詳述する外添剤を用いることができる。
次に、必要に応じて上記粉砕工程で得られた粉末(トナー製造用粉末)を加熱して球形化する熱球形化処理を施してもよい。
このような熱球形化処理を施すことにより、トナー製造用粉末の表面上の比較的大きな凹凸が除去され、円形度が比較的高いものとなる。これにより、最終的に得られるトナーは、個々のトナー粉末間での帯電特性の差が小さいものとなり、感光体上への現像性が向上するとともに、感光体上へのトナーの付着(フィルミング)がより効果的に防止され、トナーの転写効率がさらに向上する。
また、このような熱球形化工程の後、必要に応じて、分級処理等の処理を行ってもよい。
分級処理には、例えば、ふるい、気流式分級機等を用いることができる。
また、このような熱球形化処理は、特に必要がなければ行わなくてもよく、行わない場合には、前述した粉砕工程の後、得られたトナー製造用粉末に、後述するような外添処理を行ってもよい。
次に、得られたトナー製造用粉末に外添剤を付与する。
外添剤としては、例えば、酸化チタン、シリカ(正帯電性シリカ、負帯電性シリカ等)、酸化アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化亜鉛、アルミナ、マグネタイト等の金属酸化物、窒化珪素等の窒化物、炭化珪素等の炭化物、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、脂肪族金属塩等の金属塩等の無機材料で構成された微粒子、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、脂肪族金属塩(例えば、ステアリン酸マグネシウム)等の有機材料で構成された等が挙げられる。
ルチルアナターゼ型の酸化チタンは、結晶構造がルチル型の酸化チタン(二酸化チタン)と、結晶構造がアナターゼ型の酸化チタン(二酸化チタン)とを同一粒子内に有するものである。すなわち、ルチルアナターゼ型の酸化チタンは、ルチル型の結晶とアナターゼ型の結晶との混晶型の酸化チタン(二酸化チタン)を有するものである。
そして、ルチルアナターゼ型の酸化チタンは、ルチル型の結晶とアナターゼ型の結晶との混晶型の酸化チタンを有するものであるため、ルチル型の酸化チタンの利点と、アナターゼ型の酸化チタンの利点とを併有している。すなわち、ルチルアナターゼ型の酸化チタンでは、ルチル型結晶の間(ルチル型結晶の内部)に、微小なアナターゼ型結晶が混在し、全体としては、略紡錘形状を有するものとなることにより、トナーの母粒子中に埋没し難くなり、また、ルチルアナターゼ型の酸化チタン全体としての、シランカップリング剤等との親和性が優れたものとなるため、ルチルアナターゼ型の酸化チタン粉末の表面に均一で安定した疎水性被膜(シランカップリング被膜)が形成され易くなる。したがって、ルチルアナターゼ型の酸化チタンを含むことにより、得られるトナーは、帯電分布が均一(トナー粒子の帯電分布がシャープ)で、安定した帯電特性を有し、環境特性(特に耐湿性)、流動性、耐ケーキング性等に優れたものとなる。
すなわち、前述したように、本発明では、ポリエステル系樹脂は、結晶性の高い結晶性ブロックを有するブロックポリエステルを含むものであるため、トナー粒子中において、主として結晶性ブロックにより形成された所定の大きさの結晶を有するものとすることができる。このような結晶を有することにより、ルチルアナターゼ型の酸化チタンは、トナーの母粒子中に埋没しにくいものとなる。すなわち、前記結晶のような硬い成分を含むことにより、ルチルアナターゼ型の酸化チタンは、トナーの母粒子の表面付近に確実に担持(付着)されたものとなる。これにより、ルチルアナターゼ型の酸化チタンの機能(特に、優れた流動性、帯電性の付与等の効果)を十分に発揮させることができる。このように、前述したポリエステル系樹脂と併用することにより、ルチルアナターゼ型の酸化チタンの機能を十分に発揮させることができるため、用いる外添剤の量を抑制することができる。その結果、外添剤を多量に添加することによる不都合(例えば、紙等の転写材(記録媒体)への定着性の低下等)の発生を効果的に防止することができる。
本発明で用いられるルチルアナターゼ型の酸化チタンの形状は、特に限定されないが、通常、略紡錘形状である。
外添剤として負帯電性シリカを用いた場合、トナー粒子の帯電量(絶対値)を大きくすることができる。その結果、安定した負帯電性トナーが得られ、画像形成装置のトナー制御が容易になるという効果が得られる。
正帯電性シリカを含む場合、その平均粒径は、30〜100nmであるのが好ましく、40〜50nmであるのがより好ましい。正帯電性シリカの平均粒径がこのような範囲の値であると、前述した効果はより顕著なものとなる。
このような外添剤は、例えば、ヘンシェルミキサー等を用いて、トナー製造用粉末と混合すること等により添加することができる。
このように、トナー中に、母粒子から遊離した外添剤(以下、「遊離外添剤」とも言う)が含まれると、このような遊離外添剤を、例えば、トナー粒子とは反対の極性に帯電するマイクロキャリアとして機能させることができる。このようなマイクロキャリアとして機能する遊離外添剤がトナー中に含まれると、現像時等に逆帯電性のトナー粒子(トナー粒子が帯電時に本来示すべき極性とは反対の極性に帯電するトナー粒子)が発生するのを効果的に防止、抑制することができる。その結果、トナーは、いわゆるカブリ等の不都合を生じ難いものとなる。
まず、トナー製造用粉末(母粉末)に外添剤(TiO2)が付着したトナー粒子がプラズマに導入すると、母粒子(C)および外添剤(TiO2)がともに発光する。このとき、母粒子(C)と外添剤(TiO2)とが同時にプラズマに導入されることから、母粒子(C)と外添剤(TiO2)とは同時に発光するようになる。このように、母粒子(C)と外添剤(TiO2)とが同時に発光する状態の場合は、母粒子(C)と外添剤(TiO2)とが同期しているという。換言すれば、母粒子(C)と外添剤(TiO2)とが同期した状態は、外添剤(TiO2)が母粒子(C)に付着している状態を表すことになる。
更に、上記のようにして得られる発光スペクトルにおいて発光信号の高さは、その発光の強さを表しているが、この発光の強さは粒子の大きさや形ではなく、粒子内に含まれているその元素(C、TiO2)の原子数に比例している。そこで、元素の発光強度を粒子の大きさとして表すために、母粒子(C)および外添剤(TiO2)の発光が得られたとき、これらの母粒子(C)および外添剤(TiO2)だけでできた真球の粒子を仮定し、このときの真球の粒子を等価粒子と呼び、これらの粒径を等価粒径と呼ぶ。そして、外添剤は非常に小さいことから、これらの粒子を1個ずつ検出することができないので、検出された外添剤の発光信号を足し合わせて1つの等価粒子に換算して分析する。
図4において、横軸は母粒子(C)の等価粒径を表し、縦軸は外添剤(TiO2)の等価粒径を表している。そして、横軸上の等価粒子は、外添剤(TiO2)が付着されていない非同期の母粒子(C)を表しているとともに、縦軸上の等価粒子は、母粒子(C)から遊離した非同期の外添剤(TiO2)を表している。また、横軸および縦軸上にない等価粒子は、母粒子(C)に外添剤(TiO2)が付着されている同期のトナーを表している。このようにして、トナーの母粒子(C)に対する外添剤(TiO2)の付着状態が分析される。
R=L0/L1・・・(I)
(ただし、式中、L1[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L0[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円(完全な幾何学的円)の周囲長を表す。)
また、トナー中のポリエステル系樹脂の含有量は、50〜98wt%であるのが好ましく、85〜97wt%であるのがより好ましい。ポリエステル系樹脂の含有量が前記下限値未満であると、本発明の効果が十分に得られない可能性がある。一方、ポリエステル系樹脂の含有量が前記上限値を超えると、着色剤等の成分含有量が相対的に低下し、発色性等の特性発揮が困難となる場合がある。
また、本発明のトナーは、後述するようなニップ部を有する定着装置で用いられる場合、トナー粒子の前記ニップ部の通過時間Δt[秒]における、緩和弾性率G(t)の変化量が、500[Pa]以下であるのが好ましく、100[Pa]以下であるのが好ましい。このような条件を満足することにより、オフセット等を不都合をより生じ難いものとなる。
このような結晶は、その平均長さ(長手方向の平均長さ)が10〜1000nmであるのが好ましく、50〜700nmであるのが好ましい。結晶の長さがこのような範囲の値であると、トナーの形状の安定性が特に優れたものとなり、機械的ストレスに対し、特に優れた安定性を示すものとなる。特に、トナー粒子の表面付近に、外添剤がより確実に保持されることとなり(外添剤が母粒子中に埋没するのを効果的に防止することができ)、トナー粒子は、現像装置等における安定性に特に優れたものとなり、また、フィルミング等の発生を生じ難いものとなる。なお、前記結晶の大きさは、例えば、原料成分として用いるブロックポリエステルの製造条件等を制御することによりブロックポリエステルの分子量やランダム性を変更したり、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとの配合比を変更したり、前述した混練工程、冷却工程の条件を変更すること等により、適宜調整することができる。
また、本発明のトナーは、ブロックポリエステルと、非晶性ポリエステルとができるだけ相溶しているものであるのが好ましい。これにより、各トナー粒子間での特性のばらつきが小さく、トナー全体としての特性がより安定したものとなり、本発明の効果がより顕著のものとなる。
図5は、本発明のトナーが用いられる画像形成装置の好適な実施形態を示す全体構成図、図6は、図5の画像形成装置が有する現像装置の断面図、図7は、図5の画像形成装置に用いられる定着装置の詳細構造を示し、一部破断面を示す斜視図、図8は、図7の定着装置の要部断面図、図9は、図7の定着装置を構成する剥離部材の斜視図、図10は、図7の定着装置を構成する剥離部材の取付状態を示す側面図、図11は、図7の定着装置を上面から見た正面図、図12は、ニップ部の出口における接線に対する、剥離部材の配置角度を説明するための模式図、図13は、定着ローラ、加圧ローラの形状と、ニップ部の形状を模式的に示す図、図14は、図13(a)のX−X線における断面図、図15は、定着ローラ、加圧ローラの形状と、ニップ部の形状を模式的に示す図、図16は、図15(a)のY−Y線における断面図、図17は、定着ローラと、剥離部材とのギャップを説明するための断面図である。
現像装置60Y、60C、60M、60Kは、いずれも同一の構造を有している。したがって、ここでは現像装置60Yの構造について説明するが、現像装置60C、60M、60Kについても、構造、機能は同様である。
上記構成からなる画像形成装置の作用について説明する。図示しないコンピュータからの画像形成信号が入力されると、像担持体30、現像装置60Yの現像ローラ604および中間転写ベルト110が回転駆動し、先ず、像担持体30の外周面が帯電装置40によって一様に帯電され、一様に帯電された像担持体30の外周面に、露光装置50によって第1色目(例えばイエロー)の画像情報に応じた選択的な露光がなされ、イエローの静電潜像が形成される。
図5において、本発明に係わる定着装置190は、熱源を有する定着ローラ210とこれに圧接される加圧ローラ220とから構成され、定着ローラ210と加圧ローラ220の軸を結び線は水平線からθの角度を有するように配置されている。なお、0°≦θ≦30°である。
図7および図11において、ハウジング240内には定着ローラ210が回動自在に装着され、定着ローラ210の一端には駆動ギヤ280が連結されている。そして、定着ローラ210に対向して加圧ローラ220が回動自在に装着されている。加圧ローラ220の軸方向長さは定着ローラ210のそれよりも短く、その空いたスペースに軸受250が設けられて、加圧ローラ220の両端は軸受250により支持されている。軸受250には加圧レバー260が回動可能に設けられ、加圧レバー260の一端とハウジング240間には加圧スプリング270が配設され、これにより加圧ローラ220と定着ローラ210が加圧されるように構成されている。
加圧ローラ220側の剥離部材320は、定着ローラ210側の剥離部材と同様の形状であり、図7および図8に示すように、剥離部320aの先端は剥離部310aの先端よりも記録媒体搬送方向下流側に配置され、また、ガイド部320eの先端は加圧ローラ220の軸受250の表面にP点で当接されており、これにより剥離部320aの先端と加圧ローラ220表面との間のギャップが常時一定になるように位置決めを行っている。そのために、図11に示すように、加圧ローラ220の軸方向長さは定着ローラ210のそれよりも短く、その空いたスペースに軸受250が設けられ、加圧ローラ220の両端は軸受250により支持されている。
例えば、定着ローラ210、加圧ローラ220が図13に示すように、逆クラウン形状を有するものである場合、剥離部材310の断面形状は、図14に示すようなものであるのが好ましい。また、定着ローラ210、加圧ローラ220が図15に示すように、クラウン形状を有するものである場合、剥離部材310の断面形状は、図16に示すようなものであるのが好ましい。
また、運転時における、定着設定温度(定着ローラ210表面の設定温度)は、110〜220℃であるのが好ましく、130〜200℃であるのがより好ましい。定着ローラ210の設定温度がこのような範囲の値であると、トナーの定着強度確保と昇温時間(ウォームアップタイム)の短縮が両立できる。
例えば、本発明のトナーは、前述したような方法で製造されたものに限定されない。例えば、前述した実施形態では、造粒工程を経て得られたトナー製造用粉末に外添処理を施すことにより得られるものとして説明したが、外添処理を施さずに、造粒工程により得られた粉末(トナー製造用粉末)をそのままトナーとして用いてもよい。
また、前述した実施形態では、結晶性を示す指標として示差走査熱量分析(DSC)による融点の吸熱ピークの測定で得られるΔTについて説明したが、結晶性を示す指標は、これに限定されない。例えば、結晶性を表す指標としては、密度法、X線法、赤外線法、核磁気共鳴吸収法等により測定される結晶化度等を用いてもよい。
また、前述した実施形態では、熱球形化処理を乾式の条件で行う構成について説明したが、熱球形化処理は、例えば、溶液中等の湿式の条件で行ってもよい。
また、図示の構成では、スクリューを2本有する構成の混練機について説明したが、スクリューは1本であってもよいし、3本以上であってもよい。
また、本発明のトナーが適用される定着装置、画像形成装置は、前述した実施形態のようなものに限定されず、定着装置、画像形成装置を構成する各部は、同様の機能を発揮しうる任意の構成のものと置換することができる。
例えば、前述した実施形態では、接触型の定着装置について説明したが、本発明では、このような接触型の定着装置に限定されず、非接触型の定着装置に適用されるものであってもよい。
トナーの製造に先立ち、以下に示す3種のポリエステルA、B、C、Dを製造した。
[1.1]ポリエステルA(非晶性ポリエステル)の製造
まず、ネオペンチルグリコール:36モル部、エチレングリコール:36モル部、1,4−シクロヘキサンジオール:48モル部、テレフタル酸ジメチル:90モル部、無水フタル酸:10モル部の混合物を用意した。
得られたポリエステルAについて、示差走査熱量分析装置による融点の吸熱ピークの測定を試みた。その結果、融点の吸収ピークであると判断できるようなシャープなピークは、確認することができなかった。また、ポリエステルAの軟化点T1/2は、111℃、ガラス転移点Tgは、60℃、重量平均分子量Mwは、1.3×104であった。
2リットル4つ口フラスコに、還流冷却器、蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計、攪拌装置を常法に従い設置し、上記[1.1]で得られたポリエステルA:60モル部とアルコール成分としての1,4−ブタンジオール:20モル部とカルボン酸成分としてのテレフタル酸ジメチル:20モル部との混合物:1000gと、エステル化縮合触媒(チタンテトラブトキシド(PPB)):1gとを、前記2リットル4つ口フラスコ内に入れた。その後、材料温度:200℃で、生成する水、メタノールを蒸留塔より流出させながら、エステル化反応を進行させた。蒸留塔から水、メタノールが流出しなくなった時点で、2リットル4つ口フラスコから蒸留塔を取り外すとともに、真空ポンプに接続した。系内の圧力を5mmHg以下に減圧した状態で、温度を220℃とし、攪拌回転数:150rpm攪拌することにより、縮合反応で発生した遊離ジオールを系外に排出し、その結果得られた反応物をポリエステルB(PES−B)とした。
2リットル4つ口フラスコに、還流冷却器、蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計、攪拌装置を常法に従い設置し、上記[1.1]で得られたポリエステルA:90モル部とアルコール成分としての1,4−ブタンジオール:5モル部とカルボン酸成分としてのテレフタル酸ジメチル:5モル部との混合物:1000gと、エステル化縮合触媒(チタンテトラブトキシド(PPB)):1gとを、前記2リットル4つ口フラスコ内に入れた。その後、材料温度:200℃で、生成する水、メタノールを蒸留塔より流出させながら、エステル化反応を進行させた。蒸留塔から水、メタノールが流出しなくなった時点で、2リットル4つ口フラスコから蒸留塔を取り外すとともに、真空ポンプに接続した。系内の圧力を5mmHg以下に減圧した状態で、温度を220℃とし、攪拌回転数:150rpm攪拌することにより、縮合反応で発生した遊離ジオールを系外に排出し、その結果得られた反応物をポリエステルC(PES−C)とした。
2リットル4つ口フラスコに、還流冷却器、蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計、攪拌装置を常法に従い設置し、アルコール成分としての1,4−ブタンジオール:50モル部とカルボン酸成分としてのテレフタル酸ジメチル:60モル部との混合物:1000gと、エステル化縮合触媒(チタンテトラブトキシド(PPB)):1gとを、前記2リットル4つ口フラスコ内に入れた。その後、材料温度:260℃で、生成する水、メタノールを蒸留塔より流出させながら、エステル化反応を進行させた。蒸留塔から水、メタノールが流出しなくなった時点で、2リットル4つ口フラスコから蒸留塔を取り外すとともに、真空ポンプに接続した。系内の圧力を5mmHg以下に減圧した状態で、温度を280℃とし、攪拌回転数:150rpm攪拌することにより、縮合反応で発生した遊離ジオールを系外に排出し、その結果得られた反応物をポリエステルD(PES−D)とした。
融点Tmの測定は示差走査熱量計DSC(セイコー電子工業社製、DSC220型)を用いて、次のようにして行った。まず、樹脂サンプルを、昇温速度:10℃/分で200℃まで昇温した後、降温速度:10℃/分で0℃まで降温した。その後、昇温速度:10℃/分で昇温し、その際の結晶融解による吸熱の最大ピーク温度(2ndラン時)を、融点Tmとして求めた。
まず、樹脂サンプル1gをTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させ、1mlのTHF溶液(不溶分を含む)を得た。このTHF溶液を遠心分離専用のサンプル瓶に注入し、遠心分離機で、2000rpm、5分間の条件で遠心分離を行い、その上澄み液サンプレップLCR13−LH(孔径:0.5μm)でろ過し、ろ液を得た。
このようにして得られたろ液を、カラム:TSKgel SuperHZ4000+SuperHZ4000(東ソー社製)、流速:0.5mL/分、温度:25℃、溶媒:THFという条件で、ゲル浸透クロマトグラフィーGPC(東ソー社製、HLC−8220型)を用いて分離し、その結果として得られたチャートに基づき、樹脂サンプルの重量平均分子量Mwを求めた。なお、標準試料としては、単分散ポリスチレンを用いた。
以下のようにして、トナーを製造した。
(実施例1)
まず、非晶性ポリエステルとしてポリエステルA:60重量部、ブロックポリエステルとしてポリエステルB:40重量部、着色剤としてキナクリドン(P.R.122):6重量部、帯電制御剤としてサリチル酸クロム錯体(ボントロンE−81):1重量部、ワックスとしてカルナウバワックス:2重量部を用意した。
次に、この原料(混合物)を、図1に示すような2軸混練押出機(東芝機械社製、TEM−41型)を用いて、混練した。
2軸混練押出機のプロセス部の全長は160cm、第1の領域の長さは32cm、第2の領域の長さは80cm、第3の領域の長さは16cmとした。
また、スクリューの回転速度は120rpmとし、原料の投入速度は20kg/時間とした。
このような条件から求められる、原料が第1の領域を通過するのに要する時間は約1.5分間、第2の領域を通過するのに要する時間は約3分間、である。
このようにして2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を、図1中に示すような冷却機を用いて、冷却した。冷却工程直後の混練物の温度は、約46℃であった。
混練物の冷却速度は、−7℃/秒であった。また、混練工程の終了時から冷却工程が終了するのに要した時間は、10秒であった。
このようにして得られた粉砕物を気流分流機(ホソカワミクロン社製、100ATP)で分級した。
最終的に得られたトナーの平均粒径は、7.5μmであった。また、得られたトナーの平均円形度Rは、0.92であった。また、トナーの酸価は、0.8mgKOH/gであった。また、トナー中における結晶の平均長さは、500nmであった。また、得られたトナーにおける外添剤の被覆率は、160%であった。また、トナー中に含まれるルチルアナターゼ型の酸化チタンの内、遊離外添剤として存在しているものの割合(遊離率)は、1.5wt%であった。
R=L0/L1・・・(I)
(ただし、式中、L1[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L0[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
また、トナー中における結晶の平均長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)による測定の結果から求めた。
ブロックポリエステルとしてポリエステルCを用いた以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
(実施例3〜5)
混合工程に供する原料中の、ポリエステルA、ポリエステルBの添加量を表1のようにした以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
ポリエステルA:60重量部、ポリエステルB:40重量部の代わりに、ポリエステルA:100重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
(比較例2)
ポリエステルA:60重量部、ポリエステルB:40重量部の代わりに、ポリエステルC:100重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
ポリエステルBの代わりに、ポリエステルDを用いた以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
前記実施例1〜4のトナーの製造においては、混練物の粉砕(微粉砕)する工程で、優れた粉砕性(単位時間当たりの粉砕量:約4〜6[kg/時間])を示した。
まず、トナー約1gをパラレルプレートにはさみ、過熱溶融させ、高さ1.0〜2.0mmに調製した。このようにして得られたサンプルを、ARES粘弾性測定装置(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)を用いて、応力緩和測定モードにより、下記測定条件で粘弾性測定を行った。
・歪印加量:線径領域における最大歪み
・ジオメトリー:パラレルプレート(25mm径)
上記のような測定により、初期緩和弾性率(0.01秒での緩和弾性率):G(0.01)[Pa]、Δt=0.05秒での緩和弾性率:G(Δt)[Pa]を求めた。これらの結果から得られるG(0.01)/G(Δt)の値を表2にあわせて示す。
以上のようにして得られた各トナーについて、定着良好域、現像耐久性の評価を行った。
[3.1]定着良好域
まず、前述した図7〜図14、図17に示すような定着装置を作製した。この定着装置では、トナーがニップ部を通過するのに要する時間Δtを0.05秒に設定した。この定着装置を用いて図5、図6に示すような画像形成装置(カラープリンタ)を作製した。この画像形成装置を用いて、未定着の画像サンプルを採取し、当該画像形成装置の定着装置で、以下のような試験を実施した。なお、採取するサンプルのベタは付着量を0.40〜0.50mg/cm2に調整した。
画像形成装置を構成する定着装置の定着ローラの表面温度を所定温度に設定した状態で、未定着のトナー像が転写された用紙(セイコーエプソン社製、上質普通紙)を、定着装置の内部に導入することにより、トナー像を用紙に定着させ、定着後におけるオフセットの発生の有無を目視で確認した。
◎:「定着良好域」の幅が60℃以上である。
○:「定着良好域」の幅が35℃以上60℃未満である。
×:「定着良好域」の幅が35℃未満である。
前記[3.1]で用いた画像形成装置の現像装置にトナーを30gセットした後、無補給でエージングを行い、現像ローラへのフィルミングが発生するまでの時間を測定し、以下の3段階の基準に従い評価した。
◎:エージング開始後、120分以上経過しても、フィルミング発生は認められなかった。
○:エージング開始後、60〜120分でフィルミングが発生。
×:エージング開始後、60分未満でフィルミングが発生。
これらの結果を表3にまとめて示した。
これに対して、比較例のトナーでは、十分な特性が得られなかった。
特に、ブロックポリエステルを含まない比較例1のトナーは、機械的ストレスに弱く、現像耐久性が劣っていた。また、高温でのオフセットが発生しやすく、定着性も劣っていた。
また、ブロックポリエステルを用いず、非晶性ポリエステルと、結晶性の高いポリエステルDとを併用した比較例3のトナーは、樹脂同士の相溶性に劣り、定着性と耐久性が劣っていた。
Claims (35)
- 樹脂成分がポリエステル系樹脂を主とする材料で構成されたトナーであって、
前記ポリエステル系樹脂は、主としてブロック共重合体で構成されたブロックポリエステルと、前記ブロックポリエステルより結晶性の低い非晶性ポリエステルとを含み、
前記ブロックポリエステルは、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮合してなる結晶性ブロックと、前記結晶性ブロックより結晶性の低い非晶性ブロックとを有するものであり、
前記ブロックポリエステルの重量平均分子量をMw(B)、前記非晶性ポリエステルの重量平均分子量をMw(A)としたとき、0.5≦Mw(B)/Mw(A)<4の関係を満足し、1×104≦Mw(B)<4×104であることを特徴とするトナー。 - 前記ブロックポリエステルの融点は、前記非晶性ポリエステルの軟化点より高い請求項1に記載のトナー。
- 前記非晶性ポリエステルを構成するモノマー成分は、その50mol%以上が、前記ブロックポリエステルの非晶性ブロックを構成するモノマー成分と同一である請求項1または2に記載のトナー。
- 前記ブロックポリエステルと、前記非晶性ポリエステルとの配合比は、重量比で10:90〜70:30である請求項1ないし3のいずれかに記載のトナー。
- 前記ブロックポリエステル中における前記結晶性ブロックの含有率は20〜65mol%である請求項1ないし4のいずれかに記載のトナー。
- 前記ブロックポリエステルの前記結晶性ブロックを構成するアルコール成分は、その80mol%以上が脂肪族ジオールである請求項1ないし5のいずれかに記載のトナー。
- 前記ブロックポリエステルの前記結晶性ブロックは、炭素数が3〜7の直鎖状の分子構造を有し、かつ、その両端に水酸基を有するものを、アルコール成分として含むものである請求項1ないし6のいずれかに記載のトナー。
- 前記ブロックポリエステルの前記結晶性ブロックを構成するカルボン酸成分は、その50mol%以上がテレフタル酸骨格を有するものである請求項1ないし7のいずれかに記載のトナー。
- 前記ブロックポリエステルの前記非晶性ブロックを構成するアルコール成分は、少なくともその一部が脂肪族ジオールである請求項1ないし8のいずれかに記載のトナー。
- 前記ブロックポリエステルの前記非晶性ブロックを構成するアルコール成分は、少なくともその一部が分岐鎖を有するものである請求項1ないし9のいずれかに記載のトナー。
- 前記ブロックポリエステルの融点は、190℃以上である請求項1ないし10のいずれかに記載のトナー。
- 前記ブロックポリエステルは、示差走査熱量分析による融点の吸熱ピークの測定を行ったときに求められる融解熱が3mJ/mg以上である請求項1ないし11のいずれかに記載のトナー。
- 前記ブロックポリエステルは、リニア型ポリマーである請求項1ないし12のいずれかに記載のトナー。
- 前記非晶性ポリエステルを構成するカルボン酸成分は、その80mol%以上がテレフタル酸骨格を有するものである請求項1ないし13のいずれかに記載のトナー。
- 前記非晶性ポリエステルの重量平均分子量Mw(A)は、5×103〜4×104である請求項1ないし14のいずれかに記載のトナー。
- 前記非晶性ポリエステルは、リニア型ポリマーである請求項1ないし15のいずれかに記載のトナー。
- 前記ブロックポリエステルと前記非晶性ポリエステルとが相溶している請求項1ないし16のいずれかに記載のトナー。
- トナー中における前記ポリエステル系樹脂の含有量が、50〜98wt%である請求項1ないし17のいずれかに記載のトナー。
- トナー中に、主として前記結晶性ブロックにより形成された結晶を有するものである請求項1ないし18のいずれかに記載のトナー。
- 前記結晶の平均長さが10〜1000nmである請求項19に記載のトナー。
- 外添剤が添加されている請求項1ないし20のいずれかに記載のトナー。
- 前記外添剤のトナー粒子への被覆率は、100〜300%である請求項21に記載のトナー。
- トナーの平均粒径が3〜12μmである請求項1ないし22のいずれかに記載のトナー。
- 定着ローラと、
前記定着ローラに圧接される加圧ローラと、
前記定着ローラと前記加圧ローラとの接触部で形成される定着ニップ部を通過した記録媒体を前記定着ローラから剥離するための剥離部材とを有する定着装置で用いられる請求項1ないし23のいずれかに記載のトナー。 - 前記定着装置は、前記記録媒体の送り速度が0.05〜1.0m/秒のものである請求項24に記載のトナー。
- 前記剥離部材が前記定着ローラおよび/または前記加圧ローラの軸方向に所定の長さを有する板状の部材である請求項24または25に記載のトナー。
- 前記定着装置は、前記剥離部材が前記定着ニップ部の記録媒体搬送方向下流側に配設されたものである請求項24ないし26のいずれかに記載のトナー。
- 前記剥離部材が前記定着ローラおよび/または前記加圧ローラに近接して配設されている請求項24ないし27のいずれかに記載のトナー。
- 前記定着装置は、前記定着ローラと前記加圧ローラとが略水平状態に配設されたものである請求項24ないし28のいずれかに記載のトナー。
- 前記定着装置は、その運転時において、前記定着ローラと前記剥離部材とのギャップがほぼ一定になるように前記剥離部材が配設されたものである請求項24ないし29のいずれかに記載のトナー。
- 前記剥離部材は、前記定着ローラの軸方向に沿って配設されたものであり、かつ、前記定着ニップ部の出口の形状に沿う形状を有するものである請求項24ないし30のいずれかに記載のトナー。
- 前記定着ニップ部の出口の接線に対する、前記剥離部材の配置角度θAは、前記定着ローラ側を+の角度、前記加圧ローラ側を−の角度としたとき、−5〜+20°である請求項24ないし31のいずれかに記載のトナー。
- 前記定着装置は、前記定着ローラおよび前記加圧ローラの軸方向に延在し、前記定着ニップ部の記録媒体搬送方向下流側に、前記定着ローラおよび前記加圧ローラに近接して配設される前記剥離部材を備え、前記定着ローラ側の前記剥離部材の位置決めを前記定着ローラ表面で行い、前記加圧ローラ側の前記剥離部材の位置決めを前記加圧ローラの軸受表面で行うものである請求項24ないし32のいずれかに記載のトナー。
- 前記定着装置は、前記加圧ローラの軸方向長さが前記定着ローラのそれよりも短く、その空いたスペースに前記軸受が設けられたものである請求項33に記載のトナー。
- 前記定着装置は、前記定着ローラの軸方向の端部付近における、前記定着ローラと前記剥離部材とのギャップG2[μm]が、前記定着ローラの軸方向の中央部付近における、前記定着ローラと前記剥離部材とのギャップG1[μm]より大きいものである請求項24ないし34のいずれかに記載のトナー。
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