JP2004240072A - トナーの製造方法およびトナー - Google Patents

トナーの製造方法およびトナー Download PDF

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Toshiaki Yamagami
利昭 山上
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Abstract

【課題】各トナー粒子間での特性のバラツキが小さく、安定した特性を有するトナーを提供すること、このようなトナーを製造することができる製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のトナーの製造方法は、少なくとも、結着樹脂と、着色剤とを含む原料を、混合機を用いて混合して混合物を得る混合工程と、混合物を、混練機を用いて混練して混練物を得る混練工程とを有するトナーの製造方法であって、混合工程において、混合機が原料1kgあたりに与える混合エネルギーをA[kWh/kg]とし、混練工程において、混練機が混合物1kgあたりに与える混練エネルギーをB[kWh/kg]としたとき、AとBの比が、B/A≧5の関係を満足することを特徴とする。混合工程は、原料を冷却しつつ混合するものである。混合工程における原料の温度上昇が、混合工程に供される原料の温度を基準としたとき、2℃以下である。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トナーの製造方法およびトナーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法としては、多数の方法が知られているが、一般には、光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成する工程(露光工程)と、該潜像をトナーを用いて現像する現像工程と、紙等の転写材(記録媒体)にトナー画像を転写する転写工程と、定着ローラを用いた加熱等により、前記トナー画像を定着する定着工程とを有している。
上記のような電子写真法に用いられるトナーは、通常、主成分である結着樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう。)と、着色剤とを含む材料で構成されている。
【0003】
一般に、トナーの多くは、混練法により製造される。しかし、従来の混練法では、着色剤等の添加剤が十分均一に分散されたトナーを得るのが困難であった。
このような問題を解決するため、混練の前の予備混合に工夫を持たせたトナーの製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、2段階で上記のような材料を予備混合し、着色剤等の添加剤の分散性を向上させるものである。しかしながら、このような方法を用いても、材料中の樹脂の凝集や溶融固着といった問題を十分に解決することができなかった。このため、最終的に得られるトナーにおいて、各トナー粒子間での特性のバラツキが生じ、安定した特性のトナーを得るのが困難であった。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−36215号公報(特許請求の範囲)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、各トナー粒子間での特性のバラツキが小さく、安定した特性を有するトナーを提供すること、このようなトナーを製造することができる製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のトナーの製造方法は、少なくとも、結着樹脂と、着色剤とを含む原料を、混合機を用いて混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合物を、混練機を用いて混練して混練物を得る混練工程とを有するトナーの製造方法であって、
前記混合工程において、前記混合機が前記原料1kgあたりに与える混合エネルギーをA[kWh/kg]とし、
前記混練工程において、前記混練機が前記混合物1kgあたりに与える混練エネルギーをB[kWh/kg]としたとき、
AとBの比が、B/A≧5の関係を満足することを特徴とする。
これにより、最終的に得られるトナーは、各トナー粒子間での特性のバラツキが小さく、安定した特性を有するものとなる。
【0007】
本発明のトナーの製造方法では、前記混合工程における前記原料の温度上昇が、混合工程に供される前記原料の温度を基準としたとき、2℃以下であることが好ましい。
これにより、混合工程における原料の凝集や、混合機への原料の溶融固着をより効果的に防止することができる。
【0008】
本発明のトナーの製造方法では、前記混合機は、1枚または2枚以上の撹拌羽を有するものであり、前記撹拌羽の先端の周速は1.0〜10.0m/sであることが好ましい。
これにより、原料の凝集等を防止しつつ、より均一な混合物を得ることができる。
【0009】
本発明のトナーの製造方法では、前記混合工程における混合時間は、1〜15分であることが好ましい。
これにより、原料の凝集等を防止しつつ、より均一な混合物を得ることができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記混合工程において、前記混合機が前記原料1kgあたりに与えるエネルギーが0.0008〜0.05kWh/kgであることが好ましい。
これにより、混合工程における原料の凝集や、混合機への原料の溶融固着をより効果的に防止することができる。
【0010】
本発明のトナーの製造方法では、前記混練工程おいて、前記混練機が前記混合物1kgあたりに与えるエネルギーが0.1〜5.0kWh/kgであることが好ましい。
これにより、原料中の各構成成分が十分に分散され、より均一な混練物を得ることができる。
【0011】
本発明のトナーの製造方法では、前記結着樹脂が、少なくとも2種以上の樹脂を含むものであることが好ましい。
これにより、得られるトナーの特性を高めることができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記結着樹脂が、主としてブロック共重合体で構成されたブロックポリエステルと、前記ブロックポリエステルより結晶性の低い非晶性ポリエステルとを含むものであることが好ましい。
これにより、最終的に得られるトナーは、機械的ストレスに強く(十分な物理的安定性を有し)、かつ、幅広い温度領域で十分な定着性(定着強度)を発揮することが可能なものとなる。
【0012】
本発明のトナーの製造方法では、前記結着樹脂が、主として架橋型ポリエステルと、非架橋型ポリエステルとを含むものであることが好ましい。
これにより、最終的に得られるトナーは、機械的ストレスに強く(十分な物理的安定性を有し)、かつ、幅広い温度領域で十分な定着性(定着強度)を発揮することが可能なものとなる。
本発明のトナーの製造方法では、前記混練機は、1本または2本以上の軸を有するものであり、前記軸の回転数が、50〜300rpmであることが好ましい。
これにより、原料中の各構成成分が十分に分散され、より均一な混練物を得ることができる。
【0013】
本発明のトナーの製造方法では、前記混練機は、前記原料を搬送しつつ混練するプロセス部と、前記プロセス部で混練された混練物が押し出される押出口とを有し、
前記プロセス部は、長手方向に所定の長さを有する第1の領域と、該第1の領域より押出口側に設けられた第2の領域と、該第2の領域より押出口側に設けられた第3の領域とを有するものであって、
前記結着樹脂を構成する樹脂のうち、ガラス転移点の最も低い樹脂のガラス転移点をT(A)[℃]、軟化点の最も高い樹脂の軟化点をT1/2(B)[℃]、相溶化した前記結着樹脂のガラス転移点をT(C)[℃]としたとき、
前記第1の領域における前記混練機の設定温度T[℃]は、(T(A)−40)<T<T(A)の関係を満足し、
前記第2の領域における前記混練機の設定温度T[℃]は、T1/2(B)≦T≦(T1/2(B)+150)の関係を満足し、
前記第3の領域における前記混練機の設定温度T[℃]は、(T(C)−30)≦T≦T(C)の関係を満足することが好ましい。
これにより、結着樹脂が複数の樹脂で構成される場合、樹脂同士を十分に相溶化させ、また、混練物の各構成成分の分散不良や相分離の発生を効果的に防止することができる。
【0014】
本発明のトナーの製造方法では、前記プロセス部は、前記原料の搬送を主機能とする搬送セグメントと、前記原料の混練を主機能とする混練セグメントとを有しているものであることが好ましい。
これにより、より均一な混練物を得ることができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記混練セグメントは、前記プロセス部に少なくとも2ヶ所以上設けられているものであることが好ましい。
これにより、より均一な混練物を得ることができる。
【0015】
本発明のトナーの製造方法では、前記プロセス部に設けられた複数の前記混練セグメントのうち、少なくとも1つが前記第2の領域に設けられ、少なくとも1つが第3の領域に設けられているものであることが好ましい。
これにより、結着樹脂が複数の樹脂で構成される場合、樹脂同士を十分に相溶化させ、また、混練物の各構成成分の分散不良や相分離の発生をより効果的に防止することができる。
【0016】
本発明のトナーの製造方法では、前記第1の領域での前記混練機の設定温度Tは、30〜60℃であることが好ましい。
これにより、原料投入口への原料の固着を十分に防止しつつ、原料を搬送することができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記原料の前記第1の領域での平均滞留時間は、0.5〜60分であることが好ましい。
これにより、安定した原料の搬送ができ、混練が安定することができる。
【0017】
本発明のトナーの製造方法では、前記第2の領域での前記混練機の設定温度Tは、100〜260℃であることが好ましい。
これにより、結着樹脂を構成する樹脂同士をさらに相溶化させることができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記原料の前記第2の領域での平均滞留時間は、0.5〜20分であることが好ましい。
これにより、結着樹脂を構成する樹脂同士をさらに相溶化させることができる。
【0018】
本発明のトナーの製造方法では、前記第3の領域での前記混練機の設定温度Tは、40〜80℃であることが好ましい。
これにより、混練物の各構成成分の分散不良を効果的に防止することができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記原料の前記第3の領域での平均滞留時間は、0.5〜20分であることが好ましい。
これにより、混練物の各構成成分の分散不良を効果的に防止することができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記第2の領域での前記混練機の設定温度T[℃]と、前記第3の領域での前記混練機の設定温度T[℃]との差T−Tは、20℃以上であることが好ましい。
これにより、冷却工程において、混練物が相分離するのを効果的に防止することができる。
【0019】
本発明のトナーの製造方法では、前記プロセス部の全長をL[m]、前記プロセス部の軸方向に垂直な断面における前記混練セグメントの最大外径をD[m]としたとき、LとDとは、20≦L/D<60の関係を満足することが好ましい。
これにより、混練物の各構成成分の分散不良を効果的に防止することができる。
【0020】
本発明のトナーの製造方法では、前記原料は平均粒径が2mm以下であり、ワックスを含むものであることが好ましい。
これにより、最終的に得られるトナーの離型性を向上させることができる。
本発明のトナーの製造方法では、相溶化した前記結着樹脂のガラス転移点をT(C)[℃]としたとき、前記ワックスの融点Tm1[℃]は、T(C)≦Tm1の関係を満足するものであることが好ましい。
これにより、ワックスを容易に微分散することができる。
【0021】
本発明のトナーの製造方法では、前記原料中に、融点が50〜100℃であるポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
これにより、最終的に得られるトナーの耐久性を阻害せず、離型性を付与することができる。また、特に、低温定着性を向上させることができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、1×10〜2×10℃であることが好ましい。
これにより、最終的に得られるトナーの耐久性を阻害せず、離型性をさらに向上することができる。
【0022】
本発明のトナーの製造方法では、相溶化した前記結着樹脂のガラス転移点をT(C)[℃]としたとき、前記ポリエステル樹脂の融点Tm2[℃]は、T(C)≦Tm2の関係を満足するものであることが好ましい。
これにより、このような融点のポリエステル樹脂を容易に分散または相溶化させることができる。
【0023】
本発明のトナーの製造方法では、前記混練機は、2軸混練押出機であることが好ましい。
これにより、混練物の各構成成分の分散不良をより効果的に防止することができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記混練工程の後に、前記混練物を冷却する冷却工程を有することが好ましい。
これにより、混練物が相分離するのをより効果的に防止することができる。
【0024】
本発明のトナーの製造方法では、前記冷却工程における前記混練物の冷却速度は、−1℃/秒より速いものであることが好ましい。
これにより、混練物が相分離するのをより効果的に防止することができる。
本発明のトナーの製造方法では、前記混練工程の終了時から前記冷却工程が完了するまでに要する時間は、60秒以下であることが好ましい。
これにより、混練物が相分離するのをより効果的に防止することができる。
【0025】
本発明のトナーの製造方法では、前記冷却工程の後に、前記混練物を粉砕する粉砕工程を有し、その後、熱球形化工程を有するものであることが好ましい。
これにより、トナー製造用粉末の表面上の比較的大きな凹凸が除去され、円形度が比較的高いものとなる。
本発明のトナーの製造方法では、前記熱球形化工程時における雰囲気の温度が、200〜400℃であることが好ましい。
これにより、材料の熱分解、酸化劣化等の発生や、凝集、相分離等の発生を十分に防止しつつ、得られるトナー粒子の円形度を比較的高いものにすることができる。
【0026】
本発明のトナーの製造方法では、前記熱球形化工程により、下記式(I)で表される、前記トナーの平均円形度Rを0.94〜0.98にすることが好ましい。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
これにより、最終的に得られるトナーは、個々のトナー粉末間での帯電特性の差が小さいものとなり、感光体上への現像性が向上するとともに、感光体上へのトナーの付着(フィルミング)がより効果的に防止され、トナーの転写効率がさらに向上する。
【0027】
本発明のトナーは、本発明の方法により製造されたことを特徴とする。
これにより、機械的ストレスに強く(十分な物理的安定性を有し)、かつ、幅広い温度領域で十分な定着性(定着強度)を確保することが可能なトナーを提供することができる。
本発明のトナーでは、前記トナーの平均粒径が3〜12μmであることが好ましい。
これにより、トナー粒子間での融着等を防止し、印刷物の解像度を向上させることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のトナーの製造方法およびトナーの好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、本発明のトナーについて説明する。
図1は、本発明のトナーの製造に用いる混練機、冷却機の構成の一例を模式的に示す縦断面図、図2は、ブロックポリエステルについて示差走査熱量分析を行ったときに得られる、ブロックポリエステルの融点付近での示差走査熱量分析曲線のモデル図、図3は、軟化点解析用フローチャート、図4は、トナー中に含まれるトナー粒子から遊離した外添剤中の酸化チタンの量を測定する方法を説明するための図、図5は、図1の混練機の要部断面図、図6は、混練セグメントの斜視図、図7は、図5のX−X線における断面図、図8は、本発明のトナーの製造に用いる混合機の構成の一例を模式的に示す縦断面図である。以下、図1中、左側を「基端」、右側を「先端」として説明する。
本発明のトナーは、少なくとも、主成分としての樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう)と着色剤とを含むものである。
【0029】
以下、本発明のトナーの構成材料、製造方法の一例について説明する。
[構成材料]
本発明のトナーは、少なくとも、主成分としての樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう)と着色剤とを含む原料5を用いて製造することができる。
以下、本発明のトナーの製造に用いられる原料5の各成分について説明する。
【0030】
1.結着樹脂(バインダー樹脂)
樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
結着樹脂は、上記樹脂の中でもポリエステル系樹脂を含むものが特に好ましい。これにより、最終的に得られるトナーの弾性率、帯電性等の特性を、比較的容易に制御することができる。
一般に、ポリエステル系樹脂は、アルコール成分(2個以上の水酸基を有するものを含む)とカルボン酸成分(2価以上のカルボン酸またはその誘導体等を含む)で構成されるものである。
【0032】
アルコール成分としては、2個以上の水酸基を有するものを用いることができ、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状ジオール類、またはポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の環状ジオール類、またはソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の水酸基を3個以上有する多価アルコール類等が挙げられる。
【0033】
カルボン酸成分としては、例えば、2価以上のカルボン酸またはその誘導体(例えば、酸無水物、低級アルキルエステル等)等を用いることができ、例えば、o−フタル酸(フタル酸)、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等が挙げられる。
なお、ポリエステル系樹脂は、上記のようなアルコール成分、カルボン酸成分以外の成分を含むものであってもよい。
【0034】
ところで、ポリエステル系樹脂は、非架橋型ポリエステルと、架橋型ポリエステルとに大別できる。
非架橋型ポリエステルとは、前述したモノマー成分の中でも、アルコール成分として水酸基を2個有するジオール成分と、カルボン酸成分として2価のジカルボン酸成分とを用いることにより得ることができる。
【0035】
一方、架橋型ポリエステルは、例えば、水酸基を3個以上有するアルコール成分および/または3価以上のカルボン酸成分を用いることにより得ることができる。また、架橋型ポリエステルは、例えば、水酸基以外の官能基(架橋構造を形成し得る官能基)を有するジオール成分および/またはカルボキシル基以外の官能基(架橋構造を形成し得る官能基)を有するジカルボン酸を用いても、得ることができる。
【0036】
樹脂は、特に限定されないが、2種以上の樹脂を組み合わせて用いるのが好ましい。これにより、最終的に得られるトナーの特性を高めることができ、本発明の効果が顕著に現れる。特に、以下に説明する、「1−1.架橋型ポリエステルと非架橋型ポリエステル」、「1−2.ブロックポリエステルと非晶性ポリエステル」のように、少なくとも2種のポリエステル系樹脂を組み合わせて用いるのがより好ましい。これにより、前述の効果がより顕著なものとなる。以下、これらの組合せについて、それぞれ詳細に説明する。
【0037】
1−1.架橋型ポリエステルと非架橋型ポリエステル
1−1−1.架橋型ポリエステル
前述したように、架橋型ポリエステルは、例えば、水酸基を3個以上有するアルコール成分および/または3価以上のカルボン酸成分を用いることにより得ることができる。また、架橋型ポリエステルは、例えば、水酸基以外の官能基(架橋構造を形成し得る官能基)を有するジオール成分および/またはカルボキシル基以外の官能基(架橋構造を形成し得る官能基)を有するジカルボン酸を用いても、得ることができる。
【0038】
以下、架橋型ポリエステルを構成する成分について説明する。
架橋型ポリエステルを構成するアルコール成分としては、2個以上の水酸基を有するものを用いることができ、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状ジオール類、またはポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の環状ジオール類、またはソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の水酸基を3個以上有する多価アルコール類等が挙げられる。
【0039】
また、架橋型ポリエステルを構成するカルボン酸成分としては、例えば、2価以上のカルボン酸またはその誘導体(例えば、酸無水物、低級アルキルエステル等)等を用いることができ、例えば、o−フタル酸(フタル酸)、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等の2価のジカルボン酸類、またはトリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等の3価以上の多価カルボン酸類等が挙げられる。
なお、架橋型ポリエステルは、上記のようなアルコール成分、カルボン酸成分以外の成分を含むものであってもよい。
【0040】
架橋型ポリエステルの平均分子量(重量平均分子量)Mwは、特に限定されないが、1×10〜3×10であるのが好ましく、1.2×10〜1.5×10であるのがより好ましい。平均分子量Mwが前記下限値未満であると、最終的に得られるトナーの機械的強度が低下し、十分な耐久性(保存性)が得られない可能性がある。また、平均分子量Mwが小さすぎると、トナーの定着時に凝集破壊を起こし易くなり、耐オフセット性が低下する傾向を示す。一方、平均分子量Mwが前記上限値を超えると、トナーの定着時に粒界破壊を起こし易くなり、紙等の転写材(記録媒体)への濡れ性も低下し、定着に要する熱量も大きくなる。
【0041】
架橋型ポリエステルのガラス転移点Tは、特に限定されないが、40〜80℃であるのが好ましく、50〜70℃であるのがより好ましい。ガラス転移点が前記下限値未満であると、トナーの保存性(耐熱性)が低下し、使用環境等によっては、トナー粒子間での融着が発生する場合がある。一方、ガラス転移点が前記上限値を超えると、低温定着性や透明性が低下する。また、ガラス転移点が高すぎると、後述するような熱球形化処理の効果が十分に発揮されない可能性がある。なお、ガラス転移点は、JIS K 7121に準拠して測定することができる。
【0042】
架橋型ポリエステルの軟化点T1/2は、特に限定されないが、80〜160℃であるのが好ましく、100〜150℃であるのがより好ましい。軟化点が前記下限値未満であると、トナーとしての保存性が低下し、十分な耐久性が得られない可能性がある。また、軟化点が低すぎると、トナーの定着時に凝集破壊を起こし易くなり、耐オフセット性が低下する傾向を示す。一方、軟化点が前記上限値を超えると、トナーの定着時に粒界破壊を起こし易くなり、紙等の転写材(記録媒体)への濡れ性も低下し、定着に要する熱量も大きくなる。なお、軟化点T1/2は、例えば、フローテスタを用い、サンプル量:1g、ダイ孔径:1mm、ダイ長さ:1mm、荷重:20kgf、予熱時間:300秒、測定開始温度:50℃、昇温速度:5℃/分という条件で測定したときに得られる、図3に示すような解析用フローチャートのh/2に相当するフロー曲線上の点の温度として求めることができる。
【0043】
1−1−2.非架橋型ポリエステル
前述したように、非架橋型ポリエステルは、前述したモノマー成分の中でも、アルコール成分として水酸基を2個有するジオール成分を用い、カルボン酸成分として2価のジカルボン酸成分を用いることにより、好適に得ることができる。
以下、非架橋型ポリエステルを構成する成分について説明する。
【0044】
非架橋型ポリエステルを構成する2個の水酸基を有するジオール成分としては、例えば、芳香環構造を有する芳香族ジオールや、芳香環構造を有さない脂肪族ジオール等が挙げられる。芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等)等が挙げられ、また、脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状ジオール類、または2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の環状ジオール類等が挙げられる。
【0045】
また、非架橋型ポリエステルを構成する2価のジカルボン酸成分としては、例えば、o−フタル酸(フタル酸)、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等が挙げられる。
なお、非架橋型ポリエステルは、上記のようなアルコール成分、カルボン酸成分以外の成分を含むものであってもよい。
【0046】
非架橋型ポリエステルの平均分子量(重量平均分子量)Mwは、特に限定されないが、5×10〜4×10であるのが好ましく、8×10〜2.5×10であるのがより好ましい。平均分子量Mwが前記下限値未満であると、最終的に得られるトナーの機械的強度が低下し、十分な耐久性(保存性)が得られない可能性がある。また、平均分子量Mwが小さすぎると、トナーの定着時に凝集破壊を起こし易くなり、耐オフセット性が低下する傾向を示す。一方、平均分子量Mwが前記上限値を超えると、トナーの定着時に粒界破壊を起こし易くなり、紙等の転写材(記録媒体)への濡れ性も低下し、定着に要する熱量も大きくなる。
【0047】
非架橋型ポリエステルのガラス転移点Tは、特に限定されないが、50〜75℃であるのが好ましく、55〜70℃であるのがより好ましい。ガラス転移点が前記下限値未満であると、トナーの保存性(耐熱性)が低下し、使用環境等によっては、トナー粒子間での融着が発生する場合がある。一方、ガラス転移点が前記上限値を超えると、低温定着性や透明性が低下する。また、ガラス転移点が高すぎると、後述するような熱球形化処理の効果が十分に発揮されない可能性がある。なお、ガラス転移点は、JIS K 7121に準拠して測定することができる。
【0048】
非架橋型ポリエステルの軟化点T1/2は、特に限定されないが、90〜160℃であるのが好ましく、100〜150℃であるのがより好ましく、100〜130℃であるのがさらに好ましい。軟化点が前記下限値未満であると、トナーとしての保存性が低下し、十分な耐久性が得られない可能性がある。また、軟化点が低すぎると、トナーの定着時に凝集破壊を起こし易くなり、耐オフセット性が低下する傾向を示す。一方、軟化点が前記上限値を超えると、トナーの定着時に粒界破壊を起こし易くなり、紙等の転写材(記録媒体)への濡れ性も低下し、定着に要する熱量も大きくなる。
【0049】
また、非架橋型ポリエステルの軟化点をT1/2(A)[℃]、前述した架橋型ポリエステルの軟化点をT1/2(B)[℃]としたとき、T1/2(B)>(T1/2(A)+20)の関係を満足するのが好ましく、(T1/2(A)+30)<T1/2(B)<(T1/2(A)+60)の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、例えば、比較的高い温度において、架橋型ポリエステルがトナー粒子の形状の安定性をある程度確保しつつ、非架橋型ポリエステルが十分に軟化することができる。これにより、トナーの定着温度付近での、トナー粒子の粘度を比較的低いものとし、かつ、トナーの応力緩和時間を長くすることができる。その結果、本発明のトナーを定着ローラを有する定着装置で用いた場合における定着性を、特に優れたものにすることができる。また、上記のような関係を満足することにより、例えば、後述する熱球形化処理をより効率良く行うことができ、得られるトナー(粒子)の円形度をさらに向上させることができる。また、上記のような関係を満足することにより、トナーはより幅広い温度領域において、優れた定着性を発揮することができる。なお、軟化点T1/2は、前述した方法で求めることができる。
非架橋型ポリエステルは、架橋型のものに比べて、さらに静止摩擦係数を小さい。これにより、特に優れた離型性が得られ、トナーの転写効率がさらに向上する。
【0050】
以上説明したように、架橋型ポリエステルと、非架橋型ポリエステルとを併用した場合、前述したような、架橋型ポリエステルが有する特長と、非架橋型ポリエステルが有する特長とを両立することができる。これにより、最終的に得られるトナーは、機械的ストレスに強く(十分な物理的安定性を有し)、かつ、幅広い温度領域で十分な定着性(定着強度)を発揮することが可能なものとなる。
【0051】
架橋型ポリエステルと、非架橋型ポリエステルとの配合比は、重量比で20:80〜80:20であるのが好ましく、30:70〜70:30であるのがより好ましい。架橋型ポリエステルの配合比が低くなりすぎると、前述したような相乗効果が十分に発揮されず、トナーの耐オフセット性を十分に向上させるのが困難になる可能性がある。一方、非架橋型ポリエステルの配合比が低くなりすぎると、前述したような相乗効果が十分に発揮されず、十分な低温定着性や透明性が得られない可能性がある。また、非架橋型ポリエステルの配合比が低くなりすぎると、例えば、後述するようなトナーの製造方法の粉砕工程において、混練物7を効率良く、均一な大きさに粉砕するのが困難となる場合がある。
【0052】
また、結着樹脂は、前述した架橋型ポリエステルおよび非架橋型ポリエステル以外の成分を含むものであってもよい。
架橋型ポリエステルおよび非架橋型ポリエステル以外の樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル樹脂(前述した架橋型ポリエステル、非架橋型ポリエステルとは異なるもの)、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
1−2.ブロックポリエステルと非晶性ポリエステル
1−2−1.ブロックポリエステル
ブロックポリエステルは、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮合してなる結晶性ブロックと、前記結晶性ブロックより結晶性の低い非晶性ブロックとを有するブロック共重合体で構成されたものである。
【0054】
▲1▼結晶性ブロック
結晶性ブロックは、非晶性ブロックや非晶性ポリエステルに比べて、高い結晶性を有している。すなわち、分子配列構造が、非晶性ブロックや非晶性ポリエステルに比べて強固で安定したものである。このため、結晶性ブロックは、トナー全体としての強度を向上させるのに寄与する。その結果、最終的に得られるトナーは、機械的ストレスに強く、耐久性、保存性に優れたものとなる。
【0055】
ところで、結晶性の高い樹脂は、一般に、結晶性の低い樹脂に比べて、いわゆるシャープメルト性を有している。すなわち、結晶性の高い樹脂は、示差走査熱量分析(DSC)による融点の吸熱ピークの測定を行ったとき、結晶性の低い樹脂に比べて、吸熱ピークがシャープな形状として現れる性質を有している。
一方、結晶性ブロックは、上述したように、結晶性の高いものである。したがって、結晶性ブロックは、ブロックポリエステルにシャープメルト性を付与する機能を有する。このため、最終的に得られるトナーは、後述する非晶性ポリエステルが十分に軟化するような、比較的高い温度(ブロックポリエステルの融点付近の温度)においても、優れた形状の安定性を保持することができる。したがって、このようなブロックポリエステルを用いた場合には、幅広い温度領域で十分な定着性(定着強度)を発揮することができる。
また、このような結晶性ブロックを有することにより、トナー中に、高硬度で適度な大きさの結晶を析出させることができる。このような結晶が存在すると、トナーの形状の安定性が特に優れたものとなり、機械的ストレスに対し、特に優れた安定性を示すものとなる。また、このような結晶がトナー中に存在すると、後述するような外添剤が、トナー粒子(母粒子)の表面付近に、より確実に保持されることとなり(外添剤が母粒子中に埋没するのを効果的に防止することができ)、外添剤が有する機能(例えば、優れた流動性、帯電性の付与等の効果)を十分に発揮させることができる。
また、このような結晶性ブロックを、ブロックポリエステルが有しているため、このようなブロックポリエステルを用いた場合には、後述する熱球形化処理を効率良く(短時間で)行うことが可能となり、最終的に得られるトナー粒子の円形度を特に優れたものにすることができる。
【0056】
以下、結晶性ブロックを構成する成分について説明する。
結晶性ブロックを構成するアルコール成分としては、2個以上の水酸基を有するものを用いることができ、中でも水酸基を2個有するジオール成分であるのが好ましい。このような水酸基を2個有するジオール成分としては、例えば、芳香環構造を有する芳香族ジオールや、芳香環構造を有さない脂肪族ジオール等が挙げられ、芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールAや、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等)等が挙げられ、また、脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状ジオール類、または2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の環状ジオール類等が挙げられる。
【0057】
このように、結晶性ブロックを構成するジオール成分は、特に限定されないが、少なくともその一部が脂肪族ジオールであるのが好ましく、その80mol%以上が脂肪族ジオールであるのがより好ましく、その90mol%以上が脂肪族ジオールであるのがさらに好ましい。これにより、ブロックポリエステル(結晶性ブロック)の結晶性を特に高いものとすることができ、上述した効果がさらに顕著なものとなる。
【0058】
また、結晶性ブロックを構成するジオール成分は、炭素数が3〜7の直鎖状の分子構造を有し、その両端に水酸基を有するもの(一般式:HO−(CH−OHで表されるジオール(ただし、n=3〜7))を含むのが好ましい。このようなジオール成分が含まれることにより、結晶性が向上し、摩擦係数が低下するため、機械的ストレスに強く、耐久性や保存性に特に優れたものとなる。このようなジオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられるが、この中でも1,4−ブタンジオールが好ましい。1,4−ブタンジオールを含むことにより、前述した効果は特に顕著なものとなる。
【0059】
結晶性ブロックを構成するジオール成分として1,4−ブタンジオールを含む場合、結晶性ブロックを構成するジオールの50mol%以上が1,4−ブタンジオールであるのがより好ましく、その80mol%以上が1,4−ブタンジオールであるのがさらに好ましい。これにより、前述した効果はさらに顕著なものとなる。
【0060】
結晶性ブロックを構成するカルボン酸成分としては、2価以上のカルボン酸またはその誘導体(例えば、酸無水物、低級アルキルエステル等)等を用いることができるが、2価のジカルボン酸またはその誘導体等を用いるのが好ましい。このような2価のジカルボン酸成分としては、例えば、o−フタル酸(フタル酸)、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等が挙げられる。
【0061】
このように、結晶性ブロックを構成するジカルボン酸成分は、特に限定されないが、少なくともその一部がテレフタル酸骨格を有するものであるのが好ましく、その50mol%以上がテレフタル酸骨格を有するものであるのがより好ましく、その80mol%以上がテレフタル酸骨格を有するものであるのがさらに好ましい。これにより、最終的に得られるトナーは、トナーとして求められる各種特性のバランスが特に優れたものとなる。
【0062】
ブロックポリエステル中における結晶性ブロックの含有率は、特に限定されないが、5〜60mol%であるのが好ましく、10〜40mol%であるのがより好ましい。結晶性ブロックの含有率が前記下限値未満であると、ブロックポリエステルの含有量等によっては、上述したような結晶性ブロックを有することによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、結晶性ブロックの含有率が前記上限値を超えると、相対的に非晶性ブロックの含有率が低下するため、ブロックポリエステルと、後述する非晶性ポリエステルとの相溶性が低下する可能性がある。
なお、結晶ブロックは、上記のようなアルコール成分、カルボン酸成分以外の成分を含むものであってもよい。
【0063】
▲2▼非晶性ブロック
非晶性ブロックは、前述した結晶性ブロックに比べて結晶性が低い。また、後述する非晶性ポリエステルも、結晶性ブロックに比べて結晶性が低い。すなわち、非晶性ブロックは、後述する非晶性ポリエステルと同様に、結晶性ブロックに比べて結晶性が低い。
ところで、ブレンド樹脂においては、一般に、結晶性が大きく異なる樹脂同士は相溶し難く、結晶性の差が小さい樹脂同士は相溶し易い。したがって、ブロックポリエステルが非晶性ブロックを有することにより、ブロックポリエステルと、後述する非晶性ポリエステルとの相溶性(分散性)が高まる。その結果、最終的に得られるトナーにおいて、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとが、相分離(特に、マクロ相分離)するのを効果的に防止することができ、ブロックポリエステルの利点と非晶性ポリエステルの利点とを十分かつ安定的に発揮させることができる。
【0064】
以下、非晶性ブロックを構成する成分について説明する。
非晶性ブロックを構成するアルコール成分としては、2個以上の水酸基を有するものを用いることができ、中でも水酸基を2個有するジオールであるのが好ましい。このような水酸基を2個有するジオール成分としては、例えば、芳香環構造を有する芳香族ジオールや、芳香環構造を有さない脂肪族ジオール等が挙げられ、芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等)等が挙げられ、また、脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状ジオール類、または2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の環状ジオール類等が挙げられる。
【0065】
このように、非晶性ブロックを構成するアルコール成分は、特に限定されないが、少なくともその一部が脂肪族ジオールであるのが好ましく、その50mol%以上が脂肪族ジオールであるのがより好ましい。これにより、より靱性に優れた(耐折り曲げ性に優れた)定着画像が得られるという効果が得られる。
また、非晶性ブロックを構成するジオール成分は、少なくともその一部が分岐鎖(側鎖)を有するものであるのが好ましく、その30mol%以上が分岐鎖を有するものであるのがよりに好ましい。これにより、規則配列を抑制し、結晶性を低下させ、透明性も向上するという効果が得られる。
【0066】
非晶性ブロックを構成するカルボン酸成分としては、2価以上のカルボン酸またはその誘導体(例えば、酸無水物、低級アルキルエステル等)等を用いることができるが、2価のジカルボン酸またはその誘導体等を用いるのが好ましい。このような2価のジカルボン酸成分としては、例えば、o−フタル酸(フタル酸)、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等が挙げられる。
【0067】
このように、非晶性ブロックを構成するジカルボン酸成分は、特に限定されないが、少なくともその一部がテレフタル酸骨格を有するものであるのが好ましく、その80mol%以上がテレフタル酸骨格を有するものであるのがより好ましい。これにより、最終的に得られるトナーは、トナーとして求められる各種特性のバランスが特に優れたものとなる。
なお、非晶性ブロックは、上記のようなアルコール成分、カルボン酸成分以外の成分を含むものであってもよい。
【0068】
上記のような結晶性ブロック、非晶性ブロックを有するブロックポリエステルの平均分子量(重量平均分子量)Mwは、特に限定されないが、1×10〜3×10であるのが好ましく、1.2×10〜1.5×10であるのがより好ましい。平均分子量Mwが前記下限値未満であると、最終的に得られるトナーの機械的強度が低下し、十分な耐久性(保存性)が得られない可能性がある。また、平均分子量Mwが小さすぎると、トナーの定着時に凝集破壊を起こし易くなり、耐オフセット性が低下する傾向を示す。一方、平均分子量Mwが前記上限値を超えると、トナーの定着時に粒界破壊を起こし易くなり、紙等の転写材(記録媒体)への濡れ性も低下し、定着に要する熱量も大きくなる。
【0069】
ブロックポリエステルのガラス転移点Tは、特に限定されないが、50〜75℃であるのが好ましく、55〜70℃であるのがより好ましい。ガラス転移点が前記下限値未満であると、トナーの保存性(耐熱性)が低下し、使用環境等によっては、トナー粒子間での融着が発生する場合がある。一方、ガラス転移点が前記上限値を超えると、低温定着性や透明性が低下する。また、ガラス転移点が高すぎると、後述するような熱球形化処理の効果が十分に発揮されない可能性がある。なお、ガラス転移点は、JIS K 7121に準拠して測定することができる。
【0070】
ブロックポリエステルの軟化点T1/2は、特に限定されないが、90〜160℃であるのが好ましく、100〜150℃であるのがより好ましい。軟化点が前記下限値未満であると、トナーとしての保存性が低下し、十分な耐久性が得られない可能性がある。また、軟化点が低すぎると、トナーの定着時に凝集破壊を起こし易くなり、耐オフセット性が低下する傾向を示す。一方、軟化点が前記上限値を超えると、トナーの定着時に粒界破壊を起こし易くなり、紙等の転写材(記録媒体)への濡れ性も低下し、定着に要する熱量も大きくなる。なお、軟化点T1/2は、前述した方法で求めることができる。
【0071】
ブロックポリエステルの融点T(後述する示差走査熱量分析による融点の吸熱ピークの測定を行ったときのピークの中心値Tmp)は、特に限定されないが、190℃以上であるのが好ましく、190〜230℃であるのがより好ましい。融点が190℃未満であると、耐オフセット性の向上等の効果が十分に得られない可能性がある。また、融点が高すぎると、後述する混練工程等において、材料温度を比較的高い温度にしなければならなくなる。その結果、樹脂材料のエステル交換反応が進行しやすくなり、樹脂設計を最終的に得られるトナーに十分に反映させることが困難になる場合がある。なお、融点は、例えば、示差走査熱量分析(DSC)による吸熱ピークの測定により求めることができる。
【0072】
また、最終的に得られるトナーが、後述するような定着ローラを有する定着装置で用いられるものである場合、ブロックポリエステルの融点(後述する示差走査式熱量分析による融点の吸熱ピークの測定を行ったときのピークの中心値Tmp)をT(B)[℃]、定着ローラの表面の標準設定温度をTfix[℃]としたとき、Tfix≦T(B)≦(Tfix+100)の関係を満足するのが好ましく、(Tfix+10)≦T(B)≦(Tfix+70)の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、定着装置の定着ローラへのトナーの付着を効果的に防止することができる。また、ブロックポリエステルは、前述したように適度な大きさの結晶を作りやすい性質を有しているため、記録媒体へのトナーの定着後にも、安定性、耐久性を維持することができる。特に、ブロックポリエステルを後述する非晶性ポリエステルと組み合わせて用いる場合、定着時に、後述する非晶性ポリエステルが十分に軟化することができる。このため、記録媒体へのトナーの定着性(定着強度)を十分に高めることができ、さらに、トナーの低温定着性も優れたものとなる。また、ブロックポリエステルは、高硬度な結晶を作りやすいものであるため、トナーは、定着後の安定性にも優れたものとなる。
【0073】
また、ブロックポリエステルの融点は、後述する非晶性ポリエステルの軟化点より高いのが好ましい。これにより、最終的に得られるトナーの形状の安定性が向上し、機械的ストレスに対し、特に優れた安定性を示すものとなる。また、ブロックポリエステルの融点が後述する非晶性ポリエステルの軟化点より高いと、例えば、後述する熱球形化処理において、ブロックポリエステルにより、トナー製造用粉末の形状の安定性をある程度確保しつつ、非晶性ポリエステルを十分に軟化させることができる。その結果、熱球形化処理を効率良く行うことができ、比較的容易に、最終的に得られるトナー(トナー粒子)の円形度を比較的高いものとすることができる。
【0074】
ところで、前述したように、ブロックポリエステルは、結晶性の高い結晶性ブロックを有しているため、比較的結晶性の低い樹脂材料(例えば、後述する非晶性ポリエステル等)に比べて、いわゆるシャープメルト性を有している。
結晶性を表す指標としては、例えば、示差走査熱量分析(DSC)による融点の吸熱ピークの測定を行ったときのピークの中心値をTmp[℃]、ショルダーピーク値をTms[℃]としたときに、ΔT=Tmp−Tmsで表されるΔT値等が挙げられる(図2参照)。このΔT値が小さいほど結晶性が高い。
ブロックポリエステルのΔT値は、50℃以下であるのが好ましく、20℃以下であるのがより好ましい。Tmp[℃]、Tms[℃]の測定条件は特に限定されないが、例えば、試料となるブロックポリエステルを、昇温速度:10℃/分で200℃まで昇温し、さらに、降温速度:10℃/分で降温した後、昇温速度:10℃/分で昇温して測定することができる。
また、ブロックポリエステルは、後述する非晶性ポリエステルより結晶性が高い。したがって、非晶性ポリエステルのΔT値をΔT[℃]、ブロックポリエステルのΔT値をΔT[℃]としたとき、ΔT>ΔTの関係を満足する。特に、本発明では、ΔT−ΔT>10の関係を満足するのが好ましく、ΔT−ΔT>30の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、上述した効果はより顕著なものとなる。ただし、非晶性ポリエステルの結晶性が特に低い場合、TmpまたはTmsの少なくとも一方が測定困難(判別困難)であることがある。このような場合、ΔTは∞[℃]とする。
【0075】
ブロックポリエステルは示差走査熱量分析による融点の吸熱ピークの測定を行ったときに求められる融解熱Eが5mJ/mg以上であるのが好ましく、15mJ/mg以上であるのがより好ましい。融解熱Eが5mJ/mg未満であると、結晶性ブロックを有することによる前述したような効果が十分に発揮されない可能性がある。ただし、融解熱としては、ガラス転移点の吸熱ピークの熱量は含まないものとする(図2参照)。融点の吸熱ピークの測定条件は特に限定されないが、例えば、試料となるブロックポリエステルを、昇温速度:10℃/分で200℃まで昇温し、さらに、降温速度:10℃/分で降温した後、昇温速度:10℃/分で昇温したときに測定される値を融解熱として求めることことができる。
【0076】
また、ブロックポリエステルは、非架橋型ポリマー(架橋構造を有さないポリマー)であるのが好ましい。非架橋型ポリマーは、架橋型のものに比べて、摩擦係数が小さい。これにより、特に優れた離型性が得られ、トナーの転写効率がさらに向上する。
なお、ブロックポリエステルは、前述した結晶性ブロック、非晶性ブロック以外のブロックを有するものであってもよい。
【0077】
1−2−2.非晶性ポリエステル
非晶性ポリエステルは、前述したブロックポリエステルより低い結晶性を有するものである。
非晶性ポリエステルは、主として、トナーを構成する各成分(例えば、後述するような着色剤、ワックス、帯電防止剤等)の分散性や、トナー製造時における混練物の粉砕性、トナーの定着性(特に、低温定着性)、透明性、機械的特性(例えば、弾性、機械的強度等)、帯電性、耐湿性等の機能を向上させるのに寄与する成分である。言い換えると、以下で詳述するような非晶性ポリエステルがトナー中に含まれないと、前記のようなトナーとして求められる特性を十分に発揮するのが困難となる場合がある。
【0078】
以下、非晶性ポリエステルを構成する成分について説明する。
非晶性ポリエステルを構成するアルコール成分としては、2個以上の水酸基を有するものを用いることができ、中でも水酸基を2個有するジオールであるのが好ましい。このような水酸基を2個有するジオール成分としては、例えば、芳香環構造を有する芳香族ジオールや、芳香環構造を有さない脂肪族ジオール等が挙げられる。芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等)等が挙げられ、また、脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の鎖状ジオール類、または2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の環状ジオール類等が挙げられる。
【0079】
非晶性ポリエステルを構成するカルボン酸成分としては、2価以上のカルボン酸またはその誘導体(例えば、酸無水物、低級アルキルエステル等)等を用いることができるが、2価のジカルボン酸またはその誘導体等を用いるのが好ましい。このような2価のジカルボン酸成分としては、例えば、o−フタル酸(フタル酸)、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸およびこれらの誘導体(例えば、無水物、低級アルキルエステル等)等が挙げられる。
【0080】
このように、非晶性ポリエステルを構成するジカルボン酸成分は、特に限定されないが、少なくともその一部がテレフタル酸骨格を有するものであるのが好ましく、その80mol%以上がテレフタル酸骨格を有するものであるのがより好ましく、その90mol%以上がテレフタル酸骨格を有するものであるのがさらに好ましい。これにより、最終的に得られるトナーは、トナーとして求められる各種特性のバランスが特に優れたものとなる。
【0081】
また、非晶性ポリエステルを構成するモノマー成分は、その50mol%以上(より好ましくは、80mol%以上)が、前述した非晶性ブロックを構成するモノマー成分と同一であるのが好ましい。すなわち、非晶性ポリエステルは、非晶性ブロックと同様のモノマー成分で構成されたものであるのが好ましい。これにより、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとの相溶性が、特に優れたものとなる。ただし、ここでの「モノマー成分」は、ブロックポリエステル、非晶性ポリエステルの製造に用いるモノマーを指すものではなく、ブロックポリエステル、非晶性ポリエステル中に含まれるモノマー成分のことを指す。
なお、非晶性ポリエステルは、上記のようなジオール成分、ジカルボン酸成分以外の成分を含むものであってもよい。
【0082】
非晶性ポリエステルの平均分子量(重量平均分子量)Mwは、特に限定されないが、5×10〜4×10であるのが好ましく、8×10〜2.5×10であるのがより好ましい。平均分子量Mwが前記下限値未満であると、最終的に得られるトナーの機械的強度が低下し、十分な耐久性(保存性)が得られない可能性がある。また、平均分子量Mwが小さすぎると、トナーの定着時に凝集破壊を起こし易くなり、耐オフセット性が低下する傾向を示す。一方、平均分子量Mwが前記上限値を超えると、トナーの定着時に粒界破壊を起こし易くなり、紙等の転写材(記録媒体)への濡れ性も低下し、定着に要する熱量も大きくなる。
【0083】
非晶性ポリエステルのガラス転移点Tは、特に限定されないが、50〜75℃であるのが好ましく、55〜70℃であるのがより好ましい。ガラス転移点が前記下限値未満であると、トナーの保存性(耐熱性)が低下し、使用環境等によっては、トナー粒子間での融着が発生する場合がある。一方、ガラス転移点が前記上限値を超えると、低温定着性や透明性が低下する。また、ガラス転移点が高すぎると、後述するような熱球形化処理の効果が十分に発揮されない可能性がある。なお、ガラス転移点は、JIS K 7121に準拠して測定することができる。
【0084】
非晶性ポリエステルの軟化点T1/2は、特に限定されないが、90〜160℃であるのが好ましく、100〜150℃であるのがより好ましく、100〜130℃であるのがさらに好ましい。軟化点が前記下限値未満であると、トナーとしての保存性が低下し、十分な耐久性が得られない可能性がある。また、軟化点が低すぎると、トナーの定着時に凝集破壊を起こし易くなり、耐オフセット性が低下する傾向を示す。一方、軟化点が前記上限値を超えると、トナーの定着時に粒界破壊を起こし易くなり、紙等の転写材(記録媒体)への濡れ性も低下し、定着に要する熱量も大きくなる。
【0085】
また、非晶性ポリエステルの軟化点をT1/2(A)[℃]、前述したブロックポリエステルの融点をT(B)としたとき、T(B)>(T1/2(A)+60)の関係を満足するのが好ましく、(T1/2(A)+60)<T(B)<(T1/2(A)+150)の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、例えば、比較的高い温度において、ブロックポリエステルがトナー粒子の形状の安定性をある程度確保しつつ、非晶性ポリエステルが十分に軟化することができる。これにより、トナーの定着温度付近での、トナー粒子の粘度を比較的低いものとし、かつ、トナーの応力緩和時間を長くすることができる。その結果、本発明のトナーを後述するような定着装置で用いた場合における定着性を、特に優れたものにすることができる。また、上記のような関係を満足することにより、例えば、後述する熱球形化処理をより効率良く行うことができ、得られるトナー(粒子)の円形度をさらに向上させることができる。また、上記のような関係を満足することにより、トナーはより幅広い温度領域において、優れた定着性を発揮することができる。なお、軟化点T1/2は、前述した方法で求めることができる。
また、非晶性ポリエステルは、非架橋型ポリマー(架橋構造を有さないポリマー)であるのが好ましい。非架橋型ポリマーは、架橋型のものに比べて、摩擦係数が小さい。これにより、特に優れた離型性が得られ、トナーの転写効率がさらに向上する。
【0086】
以上説明したように、ブロックポリエステルと、非晶性ポリエステルとを併用した場合、前述したような、ブロックポリエステルが有する特長と、非晶性ポリエステルが有する特長とを両立することができる。これにより、最終的に得られるトナーは、機械的ストレスに強く(十分な物理的安定性を有し)、かつ、幅広い温度領域で十分な定着性(定着強度)を発揮することが可能なものとなる。
【0087】
ブロックポリエステルと、非晶性ポリエステルとの配合比は、重量比で5:95〜45:55であるのが好ましく、10:90〜30:70であるのがより好ましい。ブロックポリエステルの配合比が低くなりすぎると、前述したような相乗効果が十分に発揮されず、トナーの耐オフセット性を十分に向上させるのが困難になる可能性がある。一方、非晶性ポリエステルの配合比が低くなりすぎると、前述したような相乗効果が十分に発揮されず、十分な低温定着性や透明性が得られない可能性がある。また、非晶性ポリエステルの配合比が低くなりすぎると、例えば、後述するようなトナーの製造方法の粉砕工程において、混練物7を効率良く、均一な大きさに粉砕するのが困難となる場合がある。
【0088】
また、樹脂(バインダー樹脂)は、前述したブロックポリエステルおよび非晶性ポリエステル以外の成分(第3の樹脂)を含むものであってもよい。
ブロックポリエステルおよび非晶性ポリエステル以外の樹脂(第3の樹脂)としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル樹脂(前述したブロックポリエステル、非晶性ポリエステルとは異なるもの)、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0089】
原料5中における結着樹脂の含有量は、特に限定されないが、50〜95wt%であるのが好ましく、80〜92wt%であるのがより好ましい。結着樹脂の含有量が前記下限値未満であると、最終的に得られるトナーにおいて、結着樹脂が有する機能(例えば、幅広い温度領域での良好な定着性等)が十分に発揮されない可能性がある。一方、結着樹脂の含有量が前記上限値を超えると、着色剤等の樹脂以外の成分の含有量が相対的に低下し、発色等のトナーの特性を十分に発揮するのが困難となる。
【0090】
2.着色剤
着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0091】
原料5中における着色剤の含有量は、特に限定されないが、1〜10wt%であるのが好ましく、3〜8wt%であるのがより好ましい。着色剤の含有量が前記下限値未満であると、着色剤の種類によっては、十分な濃度の可視像を形成するのが困難になる可能性がある。一方、着色剤の含有量が前記上限値を超えると、相対的に樹脂の含有量が低下し、必要な色濃度での、紙等の転写材(記録媒体)への定着性が低下する。
【0092】
3.ワックス
また、トナーの製造に用いる原料5中には、必要に応じてワックスが含まれていてもよい。
原料5中におけるワックスの含有量は、例えば、10wt%以下であるのが好ましく、5wt%以下であるのがより好ましく、1〜3wt%であるのがさらに好ましい。ワックスの含有量が多すぎると、最終的に得られるトナー中において、ワックスが遊離、粗大化し、トナー表面へのワックスのしみ出し等が顕著に起こり、トナーの転写効率を十分に高めるのが困難になる可能性がある。
【0093】
ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セルシン、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャー・トロプシュワックス等の炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、キャンデリラワックス、綿ロウ、木ロウ、ミツロウ、ラノリン、モンタンワックス、脂肪酸エステル等のエステル系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等のアミド系ワックス、ラウロン、ステアロン等のケトン系ワックス、エーテル系ワックス等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このようなワックスが含まれることにより、例えば、トナー粒子の離型性を向上させることができる。
【0094】
ところで、従来のトナーおいては、原料中にワックスが含まれると、トナー粒子表面へのワックスのしみ出しが起こり易かった。このようなしみ出しが起こると、トナー粒子の定着性や耐久性の低下、現像ローラへのフィルミング発生等の不都合が生じ易くなる。これに対し、本発明では、後に詳述するような混練を行うことにより、ワックスを微分散させ、ワックスのしみ出しを防止することができる。したがって、本発明のトナーでは、上記のような不都合を生じ難い。
【0095】
また、結着樹脂として前述したようなポリエステル系樹脂(架橋型ポリエステル、非架橋型ポリエステル、ブロックポリエステル、非晶性ポリエステル等)を含むものを用いる場合には、前記材料の中でも、特にエステル系ワックス(例えばカルナウバワックスやライスワックス等)を用いるのが好ましい。これにより、下記のような効果が得られる。
【0096】
エステル系ワックスは、前述したポリエステル系樹脂と同様に、分子内にエステル構造を有しており、ポリエステル系樹脂との相溶性に優れる。このため、最終的に得られるトナー粒子中における遊離ワックスの発生、粗大化を防止することができる(トナー中でのワックスの微分散やミクロ相分離を容易に達成できる)。その結果、最終的に得られるトナーは、定着ローラとの離型性が特に優れたものとなる。
【0097】
相溶化した結着樹脂のガラス転移点をT(C)[℃]としたとき、ワックスの融点T[℃]は、特に限定されないが、T(C)≦Tの関係を満足するのが好ましく、(T(C)+10)≦Tの関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、後述する混練工程において、ワックスを容易に微分散することができ、ワックスの遊離、粗大化等を効果的に防止することができる。これに対し、融点Tが前記下限値未満であると、ワックスが早く溶け出し、最終的に得られるトナーの耐久性が低下する場合がある。
【0098】
ワックスの融点Tの具体的な値は、60〜140℃であるのが好ましく、65〜100℃であるのがより好ましい。なお、融点Tは、例えば、示差走査熱量分析(DSC)により、昇温速度:10℃/分で200℃まで昇温し、さらに降温速度:10℃/分で降温した後、昇温速度:10℃/分で昇温したときに測定される値を融解熱として求めることができる。
【0099】
また、例えば、前述したワックス以外にも、ワックス効果を付与できる成分として比較的融点の低いポリエステル(以下、「低融点ポリエステル」とも言う)を用いることができる。低融点ポリエステルの融点Tは、例えば、70〜90℃程度であるのが好ましい。また、低融点ポリエステルの重量平均分子量Mwは、3500〜6500程度であるのが好ましい。また、低融点ポリエステルは、脂肪族モノマーの重合体であるのが好ましい。低融点ポリエステルが、このような条件(少なくとも1つ、好ましくは2つ以上)を満足するものであると、前述した結着樹脂(例えば、架橋型ポリエステルと非架橋型ポリエステルとを含むもの、または、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとを含むもの)との相溶性が特に優れたものになるとともに、トナーの耐久性を阻害せずにトナーの離型性を向上させることができる。また、融点が比較的低いことにより、低温定着性を向上させることができる。
原料5中における低融点ポリエステルの含有量は、例えば、10wt%以下であるのが好ましく、5wt%以下であるのがより好ましく、1〜3wt%であるのがさらに好ましい。低融点ポリエステルの含有量が多すぎると、最終的に得られるトナーの耐久性が低下する場合がある。
【0100】
また、相溶化した結着樹脂のガラス転移点をT(C)[℃]としたとき、低融点ポリエステルの融点T[℃]は、特に限定されないが、T(C)≦Tの関係を満足するのが好ましく、(T(C)+10)≦Tの関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、後述する混練工程において、低融点ポリエステルを容易に分散または相溶させることができる。これに対し、融点Tが前記下限値未満であると、最終的に得られるトナーの耐久性が低下する場合がある。
【0101】
4.その他の成分
また、原料5中には、前記樹脂、着色剤、ワックス以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、帯電制御剤、分散剤、磁性粉末等が挙げられる。
前記帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
【0102】
前記分散剤としては、例えば、金属石鹸、無機金属塩、有機金属塩、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
前記金属石鹸としては、トリステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩等)、ジステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等)、ステアリン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、オクタン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、コバルト塩等)、オレイン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩等)、パルミチン酸金属塩(例えば、亜鉛塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、レジン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等)等が挙げられる。
【0103】
前記無機金属塩、前記有機金属塩としては、例えば、カチオン性成分として、周期律表の第IA族、第IIA族、および第IIIA族の金属からなる群より選ばれる元素のカチオンを含み、アニオン性成分として、ハロゲン、カーボネート、アセテート、サルフェート、ボレート、ニトレート、およびホォスフェートからなる群より選ばれるアニオンを含む塩等が挙げられる。
【0104】
前記磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
また、添加剤としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム等を用いてもよい。
【0105】
[混合工程]
上記のような原料5は、図8に示すような混合機8を用いて混合される。
本実施形態では、混合機として、撹拌羽を2枚有する混合機を用いる構成について説明するが、撹拌羽の枚数はこれに限定されず、1枚または3枚以上の撹拌羽を有する混合機を用いる構成であってもよい。
【0106】
混合機8は、原料5を混合する混合槽81と、蓋82と、混合物取り出し口83とを有している。
混合槽81は、混合槽81内に挿入された撹拌軸84と、撹拌軸84を中心に回転する撹拌羽85aと85bと、混合槽81内での原料5の流れを調整する撹拌調整板86とを有している。
【0107】
混合機8が、原料5の1kgあたりに与える混合エネルギーA[kWh/kg]は、下記式(I)により求められる。
A=(原料混合時の混合機の消費電力[kW]−空運転時の消費電力[kW])×混合時間[h]/原料5の投入量[kg] …… (I)
上記式(I)により求められるエネルギーAは、特に限定されないが、0.0008〜0.05kWh/kgであるのが好ましく、0.003〜0.01kWh/kgであるのがより好ましい。Aが前記下限値未満であると、原料5の各構成成分が十分に混合されず、十分に均一な混合物9を得ることが困難となる場合がある。一方、Aが前記上限値を超えると、原料5の組成や投入量によっては、原料5の温度が上昇し、原料5の再凝集、偏折、過粉砕や混合機8への融着等を生じる場合がある。また、流動性が低下し、次の混練工程での供給が不安定になる可能性がある。
また、混合機8は、原料5を冷却しつつ混合するものであるのが好ましい。これにより、原料5の凝集や、混合機8への原料5の溶融固着をより効果的に防止することができる。
【0108】
原料5の混合時間は、特に限定されないが、1〜15分であるのが好ましく、2〜10分であるのがより好ましい。混合時間が前記下限値未満であると、撹拌軸84の回転数や原料5の投入量等によっては、原料5の各構成成分が十分に分散されず、十分に均一な混合物9を得ることが困難となる場合がある。一方、混合時間が前記上限値を超えると、原料5の組成や投入量によっては、原料5の温度が上昇し、原料5の凝集や混合機8への融着等を生じる場合がある。また、混合時間が長すぎると、得られる混合物9が微細な粉末となるため、流動性が低下し、結果として、後述する混練工程で、混練機1に混合物9を供給する際、不都合が生じる可能性がある。
【0109】
また、混合工程中の原料5の温度上昇は、特に限定されないが、混合工程に供される原料5の温度と比較して、2℃以下であるのが好ましく、1.5℃以下であるのがより好ましい。これにより、混合工程における原料5の凝集や、混合機8への原料の溶融固着をより効果的に防止することができる。原料5の温度上昇が前記上限値を超えると、原料5の温度によっては、前述の効果が十分に得られない場合がある。
また、混合工程における原料5の温度は、環境や原料5の組成等によって異なるが、15〜40℃であるのが好ましく、20〜30℃であるのがより好ましい。これにより、原料5の凝集や、混合機8への原料5の溶融固着をより効果的に防止することができ、十分均一な混合物9を得ることができる。
【0110】
撹拌羽85aおよび撹拌羽85bの径は、混合層81の内径の半分以上であるのが好ましい。
撹拌羽85aおよび撹拌羽85bの先端のうち、少なくとも一方の先端の周速は、撹拌羽の径や原料5の投入量等によって異なるが、1.0〜10.0m/sであるのが好ましく、2.0〜7.5m/sであるのがより好ましい。撹拌羽85aおよび撹拌羽85bの周速が前記下限値未満であると、原料5が十分に分散されず、十分に均一な混合物9を得ることが困難となる場合がある。一方、撹拌羽85aおよび撹拌羽85bの周速が前記上限値を超えると、撹拌羽の枚数や原料5の投入量等によっては、原料5の温度が上昇し、原料5の再凝集、偏折、過粉砕や混合機8への融着等を生じる場合がある。また、周速が高すぎると、原料5の飛散や跳ね上げ等が生じるため、原料5の蓋82への付着等が顕著となり、所望の組成のトナーを得られない場合がある。
【0111】
[混練工程]
上記のような混合物9は、図1に示すような混練機1を用いて混練される。
図1は、長手方向に圧縮して、わかりやすく示したものである。
本実施形態では、混練機として、2軸混練押出機を用いる構成について説明する。また、以下の説明では、一例として、混合物9中の結着樹脂が2種以上の樹脂を含むものについて説明する。
混練機1は、混合物9を搬送しつつ混練するプロセス部2と、混練された混合物(混練物7)を所定の断面形状に形成して押し出すヘッド部3と、プロセス部2内に混合物9を供給するフィーダー4とを有している。
【0112】
プロセス部2は、バレル21と、バレル21内に挿入された軸22、軸23と、バレル21の先端にヘッド部3を固定するための固定部材24とを有している。さらに、図1および図5に示すように、軸22には、原料の搬送を主機能とする搬送セグメント221と、原料の混練を主機能とする混練セグメント222とが取り付けられており、軸23は、原料の搬送を主機能とする搬送セグメント231と、原料の混練を主機能とする混練セグメント232とが取り付けられている。なお、図5に示すように、搬送セグメント221と搬送セグメント231とは、互いに咬み合うように設置されている。同様に、混練セグメント222と混練セグメント232とも、互いに咬み合うように設置されている。
【0113】
プロセス部2では、軸22、軸23の回転に伴って、各搬送セグメントと各混練セグメントが回転し、フィーダー4から供給された混合物9を混練しつつ搬送する。このとき、混合物9は、主として各混練セグメントによって堰き止められ、滞留し、強い剪断力が加えられる。各搬送セグメントは、主として混合物9の搬送を目的とするものであるが、各搬送セグメントによっても、混合物9に剪断力が加えられるのはいうまでもない。
【0114】
図5に示した構成では、軸22と軸23とは、ともに左回りに回転するものであるが、これに限定されるものではなく、右回りに回転するものであってもよく、また、互いに異なる方向に回転するものであってもよい。
軸22、軸23の回転数は、結着樹脂の各樹脂の配合比や、これらの組成、分子量等により異なるが、50〜300rpmであるのが好ましい。軸22、軸23の回転数が、前記下限値未満であると、プロセス部2の長さによっては、例えば、後述する第2の領域26で、結着樹脂の各樹脂を十分に相溶化させることが困難となる場合があり、また、第3の領域27では、相分離を十分に防止することが困難となる場合がある。一方、軸22、軸23の回転数が、前記上限値を超えると、剪断により、結着樹脂の各樹脂の分子が切断され、樹脂の特性が劣化する場合がある。
【0115】
図示の構成では、混練セグメント222と混練セグメント232とが、両方とも同じ構成なので、以下では、混練セグメント222について代表して説明する。
図6に示すように、混練セグメント222は、複数枚のニーディングディスク(以下、単にディスクともいう)で構成されている。各ディスクは、原料投入口側のディスクを基準に、ヘッド部3に向かって、軸22を中心に右回りまたは左回りに所定の角度ずつずれながら配置されている。混練セグメント222は搬送セグメント221に比べ原料5を送る作用が小さく、原料5は混練セグメントのところで滞留・充満し、ニーディングディスクにより大きな剪断力を加えられ混練される。これにより、より大きな混練エネルギーが原料5に与えられ、より均一な混練物7を得ることができる。また、図6の構成では、軸22を中心に隣り合うディスクが右回りに45°ずつずれながら配置された構成のものであるが、これに限定されるものではなく、0〜180°のいかなる角度のものであってもよい。なお、前述の滞留させる作用は、搬送セグメントが右回りの場合、ディスクの右回りのずれ角が大きいほど大きくなる。
【0116】
図7は、図5のX−Xにおける混練セグメント(ディスク)の断面図である。
プロセス部2の全長L[m]は、図7に示した混練セグメントの最大外径をD[m]としたとき、20≦L/D≦60の関係を満足するのが好ましく、30≦L/D≦55の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、混練物7の各構成成分の分散不良を効果的に防止することができる。これに対して、L/Dが前記下限値未満であると、十分に混練することができない場合がある。また、L/Dが前記上限値を超えると、つまりが生じやすくなるため、混練トルクがかかりすぎて、混練そのものができなくなる場合や、軸強度が足りなくなる場合がある。また、プロセス部2内の温度、軸22、軸23の回転数等によっては、熱による原料5の変性が起こり易くなり、最終的に得られるトナーの物性を十分に制御するのが困難になる可能性がある。
【0117】
また、このような混練セグメントは、プロセス部2に少なくとも2ヶ所以上設けられていることが好ましい。これにより、より均一な混練物7を得ることができる。
また、プロセス部2に設けられた複数の混練セグメントの長さ(プロセス部2の軸方向の長さ)の合計をL[m]、プロセス部2の軸方向に垂直な断面における混練セグメントの最大外径をD[m]としたとき、10≦L/D≦20の関係を満足するのが好ましく、12≦L/D≦20の関係を満足するのがより好ましい。これにより、結着樹脂の各樹脂同士を十分に相溶化させ、また、混練物の各構成成分の分散不良や相分離の発生をより効果的に防止することができる。L/Dが前記下限値未満であると、混練が不十分となる可能性がある。一方、L/Dが前記上限値を超えると、つまりや樹脂分子の切断が生じる可能性がある。
【0118】
プロセス部2は、図示の構成のように、長手方向に所定の長さを有する第1の領域25と、第1の領域25よりヘッド部3側に設けられた第2の領域26と、第2の領域26よりヘッド部3側に設けられた第3の領域27とを有するのが好ましい。すなわち、本混合物9は、第1の領域25を通過した後に、第2の領域26に送り込まれ、第2の領域26を通過した後に、第3の領域27に送り込まれる。
【0119】
本発明では、結着樹脂を構成する樹脂のうち、ガラス転移点の最も低い樹脂のガラス転移点をT(A)[℃]、軟化点の最も高い樹脂の軟化点をT1/2(B)[℃]、相溶化した前記結着樹脂のガラス転移点をT(C)[℃]としたとき、第1の領域25では、混練機1の設定温度T[℃]が(T(A)−40)<T<T(A)の関係を満足し、第2の領域26では、混練機1の設定温度T[℃]がT1/2(B)≦T≦(T1/2(B)+150)の関係を満足し、前記第3の領域27では、混練機1の設定温度T[℃]が(T(C)−20)≦T≦T(C)の関係を満足するのが好ましい。このような関係を満足することにより、結着樹脂の各樹脂の相分離等を十分防止しつつ、より均一な混練物7を得ることができる。以下、各領域での混練条件等について詳細に説明する。
【0120】
<第1の領域>
第1の領域25では、主として、混合物9を適度に均一な状態にすることを目的としている。
本発明では、結着樹脂の各樹脂のうち、ガラス転移点の最も低い樹脂のガラス転移点をT(A)[℃]としたとき、第1の領域25における混練機1の設定温度T[℃]は、(T(A)−40)<T<T(A)の関係を満足するのが好ましい。このような関係を満足することにより、混合物9を適度に均一な状態にすることができる。これに対して、このような関係を満足しない場合、後述する第2の領域26と第3の領域27とにおいて、後に詳述するような関係を満足するように混練されたとしても、軸22、軸23の回転数やプロセス部2の長さ等によっては、本発明の効果が十分に得られない場合がある。
【0121】
より詳しく説明すると、設定温度Tが、前記下限値未満であると、軸22、軸23の回転数等によっては、混合物9中の各構成成分が混ざり難くなる場合がある。また、設定温度Tが低すぎると、混合物9中に結露が発生する可能性があり、特にポリエステルの場合、吸水性があるので、樹脂の変性を起こす場合があり、トナー特性を劣化させる可能性がある。後に説明する第2の領域26で混合物9を十分に混練したとしても、最終的に得られるトナーの特性にバラツキが生じ、安定した特性のトナーが得られない場合がある。
【0122】
また、設定温度Tが、前記上限値を超えると、原料投入口の温度が高くなり、フィーダも加熱され、混合物9中の樹脂の種類によっては、樹脂が溶融固着してしまう場合がある。
このように、本発明では、第1の領域25の設定温度Tが上記のような関係を満足するのが好ましいが、30<T<(T(A)−10)の関係を満足するのがより好ましい。
また、第1の領域25内における混練機1の設定温度Tの具体的な値は、樹脂の組成等により異なるが、30〜60℃であるのが好ましい。
なお、第1の領域25は、安定して次の第2の領域に混合物9を搬送できればよいので、強い混練は必要なく、混練セグメントはなくてもよい。
【0123】
<第2の領域>
第2の領域26では、主として、結着樹脂の各樹脂を十分相溶化させることを目的としている。
本発明では、結着樹脂が2種以上の樹脂を含む場合、結着樹脂の各樹脂のうち、軟化点の最も高い樹脂の軟化点をT1/2(B)[℃]としたとき、第2の領域26における混練機1の設定温度T[℃]は、T1/2(B)≦T≦(T1/2(B)+150)の関係を満足するのが好ましい。このような関係を満足することにより、結着樹脂の各樹脂を十分に相溶化させることができる。これにより、最終的に得られるトナーは、各トナー粒子間での特性のばらつきが小さく、トナー全体としての特性がより安定したものとなる。これに対して、設定温度Tが前記下限値未満であると、結着樹脂の各樹脂が十分に相溶化されないため、たとえ、後に説明する第3の領域27で十分に混練されたとしても、最終的に得られるトナーの特性にバラツキが生じ、安定した特性のトナーが得られない場合がある。また、設定温度Tが前記上限値を超えると、第2の領域26の長さや第2の領域26における混合物9の滞留時間等によっては、熱による混合物9の変性が起こり易くなり、最終的に得られるトナーの物性を十分に制御するのが困難になる場合がある。このように、本発明では、第2の領域26の設定温度Tが上記のような関係を満足するのが好ましいが、T1/2(B)≦T≦(T1/2(B)+510)の関係を満足するのがより好ましい。
【0124】
第2の領域26内における混練機1の設定温度Tの具体的な値は、樹脂の組成等により異なるが、100〜260℃であるのが好ましく、120〜240℃であるのがより好ましい。
また、第2の領域26には、前述の混練セグメントが少なくとも1つ設けられているのが好ましい。これにより、混合物9を滞留させ、プロセス部2内に充満させることができ、加熱エネルギーを効率よく使うことができ、さらに、ニーディングディスクによる分散により一層相溶化させ、より均一な混練物7を得ることができる。使用するディスクは滞留作用のあるディスクを選択することが望ましい。なお、図示の構成では、混練セグメントが各軸の対応する部位に一対設けられている。
【0125】
また、混合物9の第2の領域26での平均滞留時間(通過に要する時間)は、0.5〜20分であるのが好ましく、0.5〜10分であるのがより好ましい。第2の領域26での平均滞留時間が、前記下限値未満であると、第2の領域26の長さや軸22、軸23の回転数等によっては、結着樹脂の各樹脂を十分に相溶化させることが困難となる場合がある。一方、第2の領域26での平均滞留時間が、前記上限値を超えると、プロセス部2内の温度、軸22、軸23の回転数等によっては、熱による混合物9の変性が起こり易くなり、最終的に得られるトナーの物性を十分に制御するのが困難になる可能性がある。
【0126】
また、第2の領域26の長さL(26)[m]は、樹脂が十分相溶化できる長さであればよいが、プロセス部2の軸方向に垂直な断面における混練セグメントの最大外径をD[m]としたとき、10≦L(26)/D≦20の関係を満足するのが好ましい。また、第2の領域にある混練セグメントの長さLk2[m]は、6≦Lk2/D≦10の関係を満足するのが好ましい。L(26)/DやLk2/Dが前記下限値未満であると、混合物9の第2の領域26での滞留時間や軸22、軸23の回転数等によっては、結着樹脂の各樹脂を十分に相溶化させることが困難となる場合がある。一方、第2の領域26の長さが、前記上限値を超えると、生産効率が低下し、また、プロセス部2内の温度、軸22、軸23の回転数等によっては、熱による混合物9の変性が起こり易くなり、最終的に得られるトナーの物性を十分に制御するのが困難になる可能性がある。
【0127】
<第3の領域>
ところで、第2の領域26では、結着樹脂の各樹脂を十分に相溶化させるが、結着樹脂以外の着色剤等の成分は、互いに、分子構造が異なるため、相溶化せず、高温域では、結着樹脂の粘度が低いので分散も進みづらい。
そこで、図示の構成のように、第3の領域27を設けるのが好ましい。これにより、前述のような相分離等を防止することができる。
【0128】
第3の領域27では、主として、冷却しながら混合物9が実質的に流動する設定温度で混練することを目的とする。このように、冷却しつつ混練することで、樹脂の発熱による温度上昇を抑制し、高粘度状態で各成分を分散させることが可能となり、混練物7の各構成成分の分散不良や相分離の発生を効果的に防止することができる。また、結着樹脂の各樹脂の分子運動を、ある程度抑制しつつ混練するため、第2の領域26で分散されたものが再凝集するのを防止でき、後の冷却工程においても相分離を防止することができる。さらに、結着樹脂として、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとを含むものを用いた場合、冷却しつつ混練することで、ブロックポリエステルを適度な大きさに結晶化させることができる。その結果、最終的に得られるトナーは、機械的ストレスに強く、耐久性や保存性に特に優れたものとなる。
【0129】
本発明では、相溶化した前記結着樹脂のガラス転移点をT(C)[℃]としたとき、第3の領域27における混練機1の設定温度T[℃]は、(Tg(C)−30)≦T≦T(C)の関係を満足する。すなわち、このような関係を満足するように、第3の領域27を設けた。設定温度Tが、前記下限値未満であると、結着樹脂の流動性が低下し、つまりが発生し、トナーの生産性が低下する場合がある。また、設定温度Tが、前記上限値を超えると、発熱による温度上昇により急激に粘度が低下し、後述する冷却工程等において相分離などが起こりやすくなり、第3の領域27を設けることによる本発明の効果が十分に得られない。このように、本発明では、第3の領域27の設定温度Tは前述の関係を満足するのが好ましく、(T(C)−20)≦T≦T(C)の関係を満足するのがより好ましい。
【0130】
このように、プロセス部2は、第1の領域25、第2の領域26および第3の領域27の3つの領域を有するのが好ましく、さらに、これら3つの領域が、前述した関係を同時に満足するのが好ましい。これにより、最終的に得られるトナーは、各トナー粒子間での特性のバラツキが小さく、安定した特性を有するものとなる。
第3の領域27における混練機1の設定温度Tの具体的な値は、樹脂の組成により異なるが、40〜80℃であるのが好ましく、45〜70℃であるのがより好ましい。
【0131】
また、上述のような温度範囲で混合物9を混練することにより、混合物9中にワックス(特に樹脂との相溶性が低いワックス)が含まれる場合には、混練物7中におけるワックスの粗大化等を防止することができ、ワックスを適切な粒径に微分散させることができる。その結果、得られる混練物7においては、粉砕性の低下を効果的に抑制することができ、また、最終的に得られるトナーにおいては、透明性、耐久性の低下やオフセットの発生等を抑制することができる。また、そのトナーについては、混練物7中の各構成成分が均一に分散しているので、トナーの各粒子間での特性のバラツキが小さく、全体としての特性に優れたものとすることができる。従って、各構成成分の効果を十分に発揮させることができる。
【0132】
また、第3の領域27には、前述の混練セグメントが少なくとも1つ設けられているのが好ましい。これにより、より均一な混練物7を得ることができる。なお、図示の構成では、混練セグメントが各軸の対応する部位に一対設けられている。
また、混合物9の第3の領域27での平均滞留時間は、0.5〜20分であるのが好ましく、0.5〜10分であるのがより好ましい。第3の領域27での平均滞留時間が、前記下限値未満であると、第3の領域27の長さや軸22、軸23の回転数等によっては、第3の領域27を設けることによる前述の効果が十分に得られない場合がある。一方、第3の領域27での平均滞留時間が、前記上限値を超えると、生産効率が低下し、また、プロセス部2内の温度、軸22、軸23の回転数等によっては、熱による混合物9の変性が起こり易くなり、最終的に得られるトナーの物性を十分に制御するのが困難になる可能性がある。
【0133】
また、第3の領域27の長さL(27)[m]は、プロセス部2の軸方向に垂直な断面における混練セグメントの最大外径をD[m]としたとき、20≦L(27)/D≦40の関係を満足するのが好ましい。L(27)/Dが前記下限値未満であると、混合物9の第3の領域27での平均滞留時間や軸22、軸23の回転数等によっては、第3の領域27を設けることによる前述の効果が十分に得られない場合がある。一方、L(27)/Dが、前記上限値を超えると、生産効率が低下し、また、プロセス部2内の温度、軸22、軸23の回転数等によっては、熱による混合物9の変性が起こり易くなり、最終的に得られるトナーの物性を十分に制御するのが困難になる可能性がある。また、第3の領域にある混練セグメント長さLk3[m]は、プロセス部2の軸方向に垂直な断面における混練セグメントの最大外径をD[m]としたとき、2≦Lk3/D≦6であるものが複数あることがのぞましい。Lk3/Dが前記下限値未満であると、混練セグメントでの滞留の効果が小さく、混練が十分できない場合がある。また、Lk3/Dが前記上限値を超えると、樹脂発熱が過大となり、冷却の効果が得られず、混練不足となる場合がある。そのため、比較的短い混練セグメントを複数設置することで、必要な強度の混練を行うことができる。
【0134】
また、第2の領域26での混練機1の設定温度Tと第3の領域27での混練機1の設定温度Tとは、(T−T)≧20の関係を満足するのが好ましく、20≦(T−T)≦200の関係を満足するのがより好ましい。(T−T)が前記下限値未満であると、後述する冷却工程において、相分離を十分に防止するのが困難な場合がある。
【0135】
混練機1が、プロセス部2全体において、混合物9の1kgあたりに与える混練エネルギーB[kWh/kg]は、下記式(II)により求められる。
B=(混合物混練時の混練機の消費電力[kW]−空運転時の混練機の消費電力[kW])/混練機中を流れる混合物の速度[kg/h]…… (II)
上記式(II)により求められる混練エネルギーBは、特に限定されないが、0.1〜5.0kWh/kgであるのが好ましく、0.2〜2.0kWh/kgであるのがより好ましい。Bが前記下限値未満であると、混練機1内の温度、軸22、軸23の回転数等によっては、十分に均一な混練物7を得ることが困難となる場合がある。一方、Bが前記上限値を超えると、混練機1内の温度、混合物9中の結着樹脂の種類等によっては、混合物9が熱等により変性し、また、結着樹脂の分子断裂等により、特性が劣化する場合がある。
【0136】
本発明は、前述した混合工程における混合エネルギーAと混練工程における混練エネルギーBとの比B/Aが、B/A≧5の関係を満足することに特徴を有する。すなわち、本発明は、混合工程において、比較的小さいエネルギーで原料5の凝集や溶融を防止しつつ混合し、かつ、混練工程において前述のように十分な混練エネルギーを与えて混練することにより、より均一な混練物7を得ることができるものである。これにより、各成分をより微分散させることができ、最終的に得られるトナーは、各トナー粒子間での組成特性のバラツキが小さく、安定した特性を有するものとなる。混合工程では、比較的粗大な樹脂粒子と微細な構成成分粉を混合するが、混合度合は、この樹脂粒子サイズオーダーで均一であればよく、トナーサイズの均一な微分数は次工程の混練工程で行えばよい。特に限定はされないが、樹脂粉末のサイズは2mm以下がよく1mm以下がより好ましい。
【0137】
これに対し、B/Aが前記下限値未満であると、上記のような効果が得られない。すなわち、混練エネルギーBに対する混合エネルギーAの割合が比較的大きな場合、前述の混合工程において、原料5の温度が上昇し、原料5の再凝集や過粉砕、混合機8への融着等を生じ、組成の変動や流動性の低下を招き、前述の効果が得られない。また、混練エネルギーBが相対的に小さな場合、前述の混練工程において、混合物9に対し十分な混練エネルギーを与えることができない。このため、混練物7の各構成成分の分散不良や相分離の発生等を十分に防止することができず、本発明の効果が十分に得られない。
【0138】
このように、本発明は、B/Aが前述の関係を満足するものであるが、B/AはB/A≧10の関係を満足するのが好ましく、B/Aは100≦B/A≦1000の関係を満足するのがより好ましい。
これにより、混合工程において、原料の凝集や、混合機への原料の溶融固着を防止し、さらに、混合工程および混練工程を通して得られる混練物を十分均一なものとすることができる。
【0139】
図示の構成では、プロセス部2に第1の領域25と、第2の領域26と、第3の領域27とが設けられている構成について説明したが、これ以外の領域が設けられている構成であってもよい。例えば、このような領域は、第1の領域25よりもフィーダー4側にあってもよいし、第1の領域25と第2の領域26との間にあってもよいし、第2の領域26と第3の領域27との間にあってもよいし、第3の領域27よりもヘッド部3側にあってもよい。
【0140】
また、各領域における設定温度は、各領域全長にわたって均一であっても、各領域内の部位により異なるものであってもよい。後者の場合、各領域における混練機1の設定温度の最低温度と最高温度とが、各領域における上記範囲内にあることが好ましい。
なお、前述のT〜Tは、混練機1の各領域における設定温度であって、混練機1の内部を通過する混合物9の実際の温度は、各領域の境界を通過後、各領域の設定温度付近まで、徐々に移行するものである。
【0141】
本実施形態では、前述したように、プロセス部2において、プロセス部2を通過する混合物9を、所定のパターンで温度変化するように混練することにより、結着樹脂の各樹脂が十分に相溶化した状態にあり、また、原料を構成する各成分が十分に微分散された混練物7を得ることができる。その結果、最終的に得られるトナーは、各トナー粒子間での特性のバラツキが小さく、安定した特性を有するものとなる。また、特に、結着樹脂がブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとを含むものである場合、非晶性ポリエステルが十分に軟化するような、比較的高い温度(ブロックポリエステルの融点付近の温度)においても、優れた形状の安定性を保持することができ、最終的に得られるトナーは、幅広い温度領域で十分な定着性(定着強度)を発揮することができる。
【0142】
ところで、従来、特に、結着樹脂として、各樹脂の特性の発生を期待して、2種以上の樹脂を含むものを用いた場合には、分散不良や相分離等の問題がより顕著なものとなっていた。これに対し、本発明では、結着樹脂として2種以上の樹脂を含むものを用いた場合でも、各樹脂が十分に相溶化し、十分に均一な混練物が得られるので、各樹脂の有する特性を十分に引き出すことができる。
【0143】
[押出工程]
プロセス部2で混練された混練物7は、軸22と軸23との回転により、ヘッド部3を介して、混練機1の外部に押し出される。
ヘッド部3は、プロセス部2から混練物7が送り込まれる内部空間31と、混練物7が押し出される押出口32とを有している。
【0144】
ヘッド部3における混練機1の設定温度T[℃]は、Tより50℃程度、高い温度であるのが好ましい。設定温度Tが、このような温度であると、混練物7が内部空間31で固化せず、押出口32から押し出しやすくなる。
なお、Tは、混練機1のヘッド部3における設定温度であって、ヘッド部3の内部を通過する混練物7の実際の温度は、第3の領域27とヘッド部3との境界を通過後、ヘッド部3の設定温度付近まで、徐々に移行するものである。
【0145】
図示の構成では、内部空間31は、押出口32の方向に向って、その横断面積が漸減する横断面積漸減部33を有している。
このような横断面積漸減部33を有することにより、押出口32から押し出される混練物7の押出量が安定し、また、後述する冷却工程における混練物7の冷却速度が安定する。その結果、これを用いて製造されるトナーは、各トナー粒子間での特性のバラツキが小さいものとなり、全体としての特性に優れたものになる。
【0146】
[冷却工程]
ヘッド部3の押出口32から押し出された軟化した状態の混練物7は、冷却機6により冷却され、固化する。
冷却機6は、ロール61、62、63、64と、ベルト65、66とを有している。
【0147】
ベルト65は、ロール61とロール62とに巻掛けられている。同様に、ベルト66は、ロール63とロール64とに巻掛けられている。
ロール61、62、63、64は、それぞれ、回転軸611、621、631、641を中心として、図中e、f、g、hで示す方向に回転する。これにより、混練機1の押出口32から押し出された混練物7は、ベルト65−ベルト66間に導入される。ベルト65−ベルト66間に導入された混練物7は、ほぼ均一な厚さの板状となるように成形されつつ、冷却される。冷却された混練物7は、排出部67から排出される。ベルト65、66は、例えば、水冷、空冷等の方法により、冷却されている。冷却機として、このようなベルト式のものを用いると、混練機から押し出された混練物7と、冷却体(ベルト)との接触時間を長くすることができ、混練物の冷却の効率を特に優れたものとすることができる。
【0148】
ところで、混練工程では、第3の領域27において、混合物9の流動性を抑えつつ混練することで十分に相分離が抑えられた状態なので、剪断力がなくなった場合でも、相分離が起こりにくい状態となっている。従って、混練工程を完了してから冷却工程が完了するまでに、比較的長い時間を要する場合であっても、最終的に得られるトナー中での相分離を十分に防止することができる。しかし、より好ましくは、混練物7の冷却速度(例えば、混練物7が60℃程度まで冷却される際の冷却速度)は、−1℃/秒より速いのが好ましく、−3〜−100℃/秒であるのがより好ましい。また、混練工程の終了時(剪断力が加わらなくなった時点)から冷却工程が完了するまでに要する時間(例えば、混練物7の温度を60℃以下に冷却するのに要する時間)は、60秒以下であるのが好ましく、3〜20秒であるのがより好ましい。冷却速度の計測は、例えば、混練直後にできるだけ細い熱電対を混練物7に横から差込み、温度を計測しつつ、冷却ベルト間を通過させ、求めることができる。
【0149】
前述した実施形態では、混合機として、図9に示すような混合機を用いる構成について説明したが、原料の混合に用いる混合機はこれに限定されない。原料の混合には、例えば、スーパーミキサー、リボンブレンダー、V型ミキサー、Q型ミキサー、反転ミキサー等の混合機を用いることができる。
また、図示の構成では、撹拌羽を2枚有する構成の混合機について説明したが、撹拌羽は、1枚であってもよいし、3枚以上であってもよい。
【0150】
また、前述した実施形態では、混練機として、連続式の2軸混練押出機を用いる構成について説明したが、原料の混練に用いる混練機はこれに限定されない。原料の混練には、例えば、一軸押出機、テーパー押出機、連続2軸ロール、ホイールミキサー、ブレード型ミキサー等の各種混練機を用いることができる。
また、図示の構成では、軸を2本有する構成の混練機について説明したが、軸は1本であってもよいし、3本以上であってもよい。
【0151】
また、図示の構成では、第2の領域26と第3の領域27とにおいて、混練セグメントが1つずつ設けられた構成について説明したが、これに限定されず、例えば、第1の領域25にも混練セグメントが設けられた構成であってもよいし、第2の領域26および/または第3の領域27に複数の混練セグメントが設けられた構成であってもよいし、片方の軸だけに混練セグメントが設けられた構成であってもよいし、各軸の対応する部位に混練セグメントが設けられているのを、各軸でずれて混練セグメントが設けられた構成であってもよい。
【0152】
また、本実施形態では、1つの混練機を用いる構成について説明したが、2つの混練機を用いて混練してもよい。この場合、例えば、一方の混練機のプロセス部2を第1の領域25と第2の領域26、他方の混練機のプロセス部2を第3の領域27として用いてもよい。
また、前述した実施形態では、冷却機として、ベルト式のものを用いた構成について説明したが、例えば、ロール式(冷却ロール式)の冷却機を用いてもよい。また、混練機の押出口32から押し出された混練物7の冷却は、前記のような冷却機を用いたものに限定されず、例えば、空冷等により行うものであってもよい。
【0153】
[造粒工程]
上述したような冷却工程を経た混練物7を造粒することにより、トナー製造用粉末を得る。
本実施形態においては、造粒工程は、以下に説明するような粉砕工程と、熱球形化工程とを有する。
なお、熱球形化工程は必ずしも行わなくてもよい。
【0154】
<粉砕工程>
まず、上述したような冷却工程を経た混練物7を粉砕する。
粉砕の方法は、特に限定されず、例えばボールミル、振動ミル、ジェットミル、ピンミル等の各種粉砕装置、破砕装置を用いて行うことができる。
粉砕の工程は、複数回(例えば、粗粉砕工程と微粉砕工程との2段階)に分けて行ってもよい。
【0155】
また、このような粉砕工程の後、必要に応じて、分級処理等の処理を行ってもよい。
分級処理には、例えば、ふるい、気流式分級機等を用いることができる。
また、得られたトナー製造用粉末に対しては、後述する熱球形化工程の前処理として、外添剤を付与する外添処理を施してもよい。このような前処理としての外添処理を行うことにより、トナー粒子の流動性と分散性が向上し、熱によるトナー同士の融着を十分に防止・抑制することができる。なお、このような前処理としての外添処理は、後述するような、熱球形化処理の後工程としての外添工程と同様にして行うことができ、また、後に詳述する外添剤を用いることができる。
【0156】
<熱球形化工程(熱球形化処理)>
次に、上記粉砕工程で得られた粉末(トナー製造用粉末)を加熱して球形化する熱球形化処理を施す。
このような熱球形化処理を施すことにより、トナー製造用粉末の表面上の比較的大きな凹凸が除去され、円形度が比較的高いものとなる。これにより、最終的に得られるトナーは、個々のトナー粉末間での帯電特性の差が小さいものとなり、感光体上への現像性が向上するとともに、感光体上へのトナーの付着(フィルミング)がより効果的に防止され、トナーの転写効率がさらに向上する。
【0157】
特に、本発明では、前述したように、トナー粒子が、前述の混合工程と混練工程とで十分に均一とした混練物7より得られるものであるため、このような熱球形化処理を行う場合であっても、その条件を緩和することができる。
特に、結着樹脂がブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとを含む場合、熱球形化処理時において、ブロックポリエステルが形状の安定性を維持しつつ、非晶性ポリエステルを十分に軟化させることができる。したがって、最終的に得られるトナー(トナー粒子)の円形度を比較的高いものとすることができる。また、その結果、上述した熱球形化処理による効果をより効果的に発揮させることができる。
【0158】
熱球形化処理は、前記粉砕工程で得られたトナー製造用粉末を、例えば、圧縮空気等を用いて、加熱雰囲気下に噴射することにより行うことができる。このときの雰囲気温度は、200〜400℃であるのが好ましく、230〜350℃であるのがより好ましい。雰囲気温度が前記下限値未満であると、円形度を十分に高めるのが困難になる場合がある。一方、雰囲気温度が前記上限値を超えると、材料の熱分解、酸化劣化等の発生や、凝集、相分離等が発生し易くなり、最終的に得られるトナーの機能が低下する場合がある。
【0159】
また、結着樹脂として、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとを含むものを用いた場合、ブロックポリエステルの融点をT(B)[℃]、非晶性ポリエステルの軟化点をT1/2(A)[℃]としたとき、熱球形化工程時における雰囲気温度T[℃]は、(T1/2(A)+120)≦T≦(T(B)+90)の関係を満足するのが好ましく、(T1/2(A)+140)≦T≦(T(B)+70)の関係を満足するのがより好ましい。このような雰囲気温度Tで熱球形化処理を行うことにより、材料の熱分解、酸化劣化等の発生や、凝集、相分離等の発生を十分に防止しつつ、得られるトナー粒子の円形度を比較的高いものにすることができる。
また、このような熱球形化処理は液体中で行ってもよい。
また、このような熱球形化工程の後、必要に応じて、分級処理等の処理を行ってもよい。
分級処理には、例えば、ふるい、気流式分級機等を用いることができる。
【0160】
[外添工程(外添処理)]
次に、粉砕もしくは熱球形化されたトナー製造用粉末に外添剤を付与する。
ところで、前述の混練工程における混練物7が樹脂の相溶が不十分だったり、構成成分が均一に分散されていないと、得られるトナー母粒子は、外添剤との親和性が部位によって異なるものとなる場合がある。この場合、外添剤がトナー母粒子に均一に付着しないで、トナー母粒子に外添剤が偏在してしまう可能性がある。
【0161】
これに対し、本発明では、トナー母粒子が前述したように樹脂が相溶化され、構成成分が微分散された十分均一な状態になっているので、外添剤も均一に付着しやすく、トナー粒子間での外添剤の付着率のバラツキも小さくすることができる。
さらに、結着樹脂としてブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとを含むものを用いた場合、トナーの母粒子には、通常、後述するような適度な大きさを持つ結晶が含まれるため、後述するような外添剤を添加する場合においても、外添剤が、トナーの母粒子に埋没することなく、表面付近に安定して存在することができる。その結果、外添剤の効果も、十分発揮することができる。
【0162】
外添剤としては、例えば、酸化チタン、シリカ(正帯電性シリカ、負帯電性シリカ等)、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化亜鉛、マグネタイト等の金属酸化物、窒化珪素等の窒化物、炭化珪素等の炭化物、硫酸カルシウム等の硫酸塩、炭酸カルシウム等の炭酸塩、チタン酸ストロンチウム等のチタン酸塩等の金属塩等の無機材料で構成された微粒子、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、脂肪族金属塩(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム)等の有機材料で構成された材料またはこれらの複合材料が挙げられる。また、外添剤としては、上記のような材料で構成された微粒子の表面に、HMDS、シラン系カップリング剤(例えば、アミノ基等の官能基を有するものでもよい)、チタネート系カップリング剤、フッ素含有シラン系カップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施したものを用いてもよい。
【0163】
上記外添剤の中でも、外添剤として用いることができる酸化チタンとしては、例えば、ルチル型の酸化チタン、アナターゼ型の酸化チタン、ルチルアナターゼ型の酸化チタン等が挙げられる。
ルチルアナターゼ型の酸化チタンは、結晶構造がルチル型の酸化チタン(二酸化チタン)と、結晶構造がアナターゼ型の酸化チタン(二酸化チタン)とを同一粒子内に有するものである。すなわち、ルチルアナターゼ型の酸化チタンは、ルチル型の結晶とアナターゼ型の結晶との混晶型の酸化チタン(二酸化チタン)を有するものである。
ルチル型の酸化チタンは、通常、紡錘形状の結晶になり易い性質を有している。また、アナターゼ型の酸化チタンは、微小な結晶を析出し易く、疎水化処理等に用いられるシランカップリング剤等との親和性に優れるという性質を有している。
【0164】
そして、ルチルアナターゼ型の酸化チタンは、ルチル型の結晶とアナターゼ型の結晶との混晶型の酸化チタンを有するものであるため、ルチル型の酸化チタンの利点と、アナターゼ型の酸化チタンの利点とを併有している。すなわち、ルチルアナターゼ型の酸化チタンでは、ルチル型結晶の間(ルチル型結晶の内部)に、微小なアナターゼ型結晶が混在し、全体としては、略紡錘形状を有するものとなることにより、トナーの母粒子中に埋没し難くなり、また、ルチルアナターゼ型の酸化チタン全体としての、シランカップリング剤等との親和性が優れたものとなるため、ルチルアナターゼ型の酸化チタン粉末の表面に均一で安定した疎水性被膜(シランカップリング被膜)が形成され易くなる。したがって、ルチルアナターゼ型の酸化チタンを含むことにより、得られるトナーは、帯電分布が均一(トナー粒子の帯電分布がシャープ)で、安定した帯電特性を有し、環境特性(特に耐湿性)、流動性、耐ケーキング性等に優れたものとなる。
【0165】
特に、ルチルアナターゼ型の酸化チタンは、前述したようなブロックポリエステル系樹脂と併用することにより、以下のような相乗効果を発揮する。
すなわち、前述のように、結着樹脂として、結晶性の高い結晶性ブロックを有するブロックポリエステルを含むものを用いた場合、トナー粒子中において、主として結晶性ブロックにより形成された所定の大きさの結晶を有するものとすることができる。このような結晶を有することにより、ルチルアナターゼ型の酸化チタンは、トナーの母粒子中に埋没しにくいものとなる。すなわち、前記結晶のような硬い成分を含むことにより、ルチルアナターゼ型の酸化チタンは、トナーの母粒子の表面付近に確実に担持(付着)されたものとなる。これにより、ルチルアナターゼ型の酸化チタンの機能(特に、優れた流動性、帯電性の付与等の効果)を十分に発揮させることができる。このように、前述したポリエステル系樹脂と併用した場合、ルチルアナターゼ型の酸化チタンの機能を十分に発揮させることができるため、用いる外添剤の量を抑制することができる。その結果、外添剤を多量に添加することによる不都合(例えば、紙等の転写材(記録媒体)への定着性の低下等)の発生を効果的に防止することができる。
【0166】
ルチルアナターゼ型の酸化チタン中におけるルチル型の酸化チタンとアナターゼ型の酸化チタンとの存在比率は、特に限定されないが、重量比で、5:95〜95:5であるのが好ましく、50:50〜90:10であるのがより好ましい。このようなルチルアナターゼ型の酸化チタンを用いることにより、前述したルチルアナターゼ型の酸化チタンを用いることによる効果は、さらに顕著なものとなる。
また、ルチルアナターゼ型の酸化チタンは、300〜350nmの波長領域の光を吸収するものであるのが好ましい。これにより、トナーは、特に耐光性(特に、記録媒体への定着後における耐光性)に優れたものとなる。
【0167】
本発明で用いられるルチルアナターゼ型の酸化チタンの形状は、特に限定されないが、通常、略紡錘形状である。
ルチルアナターゼ型の酸化チタンが略紡錘形状を有するものである場合、その平均長軸径は、10〜100nmであるのが好ましく、20〜50nmであるのがより好ましい。平均長軸径がこのような範囲の値であると、ルチルアナターゼ型の酸化チタンは、上述したような機能を十分に発揮することができ、また、トナーの母粒子中に埋没し難く、かつ遊離し難いものとなる。その結果、トナーの機械的ストレスに対する安定性は、さらに優れたものとなる。
【0168】
トナー中におけるルチルアナターゼ型の酸化チタンの含有量は、特に限定されないが、0.1〜2wt%であるのが好ましく、0.5〜1wt%であるのがより好ましい。ルチルアナターゼ型の酸化チタンの含有量が前記下限値未満であると、前述したような、ルチルアナターゼ型の酸化チタンを用いることによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、ルチルアナターゼ型の酸化チタンの含有量が前記上限値を超えると、トナーの定着性が低下する傾向を示す。
【0169】
このようなルチルアナターゼ型の酸化チタンは、いかなる方法で調製されたものであってもよいが、例えば、アナターゼ型の酸化チタンを焼成することにより得ることができる。このような方法を用いることにより、ルチルアナターゼ型の酸化チタン中におけるルチル型の酸化チタンとアナターゼ型の酸化チタンとの存在比率を、比較的容易かつ確実に制御することができる。このような方法でルチルアナターゼ型の酸化チタンを得る場合、焼成温度は、700〜1000℃程度であるのが好ましい。焼成温度をこのような範囲の値にすることにより、ルチルアナターゼ型の酸化チタン中におけるルチル型の酸化チタンとアナターゼ型の酸化チタンとの存在比率を、さらに容易かつ確実に制御することが可能になる。
【0170】
また、ルチルアナターゼ型の酸化チタンは、疎水化処理が施されたものであるのが好ましい。疎水化処理を施すことにより、帯電が湿度によって大きく左右されなくなるという効果が得られる。疎水化処理としては、例えば、HMDS、シラン系カップリング剤(例えば、アミノ基等の官能基を有するものでもよい)、チタネート系カップリング剤、フッ素含有シラン系カップリング剤、シリコーンオイル等を用いた、ルチルアナターゼ型の酸化チタンの粉末(粒子)への表面処理等が挙げられる。
【0171】
また、前述した外添剤の中でも、外添剤として用いることができるシリカとしては、例えば、正帯電性シリカ、負帯電性シリカ等が挙げられる。正帯電性シリカは、例えば、負帯電性シリカに、アミノ基等の官能基を有するシラン系カップリング剤で、表面処理を施すことにより得ることができる。
外添剤として負帯電性シリカを用いた場合、トナー粒子の帯電量(絶対値)を大きくすることができる。その結果、安定した負帯電性トナーが得られ、画像形成装置のトナー制御が容易になるという効果が得られる。
【0172】
また、負帯電性シリカを前述したルチルアナターゼ型の酸化チタンと併用した場合、特に優れた効果が得られる。すなわち、負帯電性シリカとルチルアナターゼ型の酸化チタンとを併用することにより、トナーの流動性、環境特性(特に耐湿性)をさらに高めたり、より安定した摩擦帯電性を発揮することができるとともに、いわゆるカブリの発生をより効果的に防止することができる。また、負帯電性シリカとルチルアナターゼ型の酸化チタンとを併用することにより、得られるトナーを、帯電量(絶対値)が大きく、かつ帯電分布がよりシャープなものとすることができる。
略紡錘形状のルチルアナターゼ型の酸化チタンの平均長軸径をD[μm]、負帯電性シリカの平均粒径をD[μm]としたとき、0.2≦D/D≦15の関係を満足するのが好ましく、0.4≦D/D≦5の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、負帯電性シリカとルチルアナターゼ型の酸化チタンとを併用することによる効果はさらに顕著なものとなる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
【0173】
また、外添剤として、正帯電性シリカを用いた場合、例えば、正帯電性シリカをマイクロキャリアとして機能させることができ、トナー粒子自体の帯電性をさらに向上させることができる。特に、正帯電性シリカと、前述したルチルアナターゼ型の酸化チタンとを併用することにより、得られるトナーを、帯電量(絶対値)が大きく、かつ帯電分布がよりシャープなものとすることができる。
正帯電性シリカを含む場合、その平均粒径は、30〜100μmであるのが好ましく、40〜50μmであるのがより好ましい。正帯電性シリカの平均粒径がこのような範囲の値であると、前述した効果はより顕著なものとなる。
このような外添剤は、例えば、ヘンシェルミキサー等の高速攪拌混合機を用いて、トナー製造用粉末と混合すること等により添加することができる。混合条件としては、高速攪拌混合機の羽根の周速を10m/s〜100m/sとするのが好ましい。
【0174】
また、このようにして得られるトナー粉末は、外添剤の被覆率(トナー粒子の表面積のうち外添剤が被覆する面積割合であり、外添剤の平均粒径相当の球がトナー平均粒径相当の球を六方細密充填で被覆するとしたときの計算上の被覆率)が100〜300%であるのが好ましく、120〜220%であるのがより好ましい。外添剤の被覆率が前記下限値未満であると、前述したような外添剤の効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、外添剤の被覆率が前記上限値を超えると、トナーの定着性が低下する傾向を示す。
また、外添剤は、トナー中において、実質的に、その全てがトナー粒子(母粒子)に付着した状態になっていてもよいし、その一部がトナー粒子の表面から遊離していてもよい。すなわち、トナー中には、トナー粒子から遊離した外添剤が含まれていてもよい。
【0175】
このように、トナー中に、母粒子から遊離した外添剤(以下、「遊離外添剤」とも言う)が含まれると、このような遊離外添剤を、例えば、トナー粒子とは反対の極性に帯電するマイクロキャリアとして機能させることができる。このようなマイクロキャリアとして機能する遊離外添剤がトナー中に含まれると、現像時等に逆帯電性のトナー粒子(トナー粒子が帯電時に本来示すべき極性とは反対の極性に帯電するトナー粒子)が発生するのを効果的に防止、抑制することができる。その結果、トナーは、いわゆるカブリ等の不都合を生じ難いものとなる。
【0176】
トナー粒子から遊離した外添剤の量は、例えば、電子写真学会年次大会(通算95回)” Japan Hardcopy’97 ”論文集、「新しい外添評価方法−パーティクルアナライザによるトナー分析−」(鈴木俊之、高原寿雄、電子写真学会主催、1997年7月9〜11日)に開示されている方法を適用して、測定することができる。以下、外添剤として酸化チタンを用いた場合のパーティクルアナライザ(PT1000)による遊離外添剤量の測定方法の一例について説明する。
【0177】
この測定方法は、樹脂(C)からなる母粒子の表面に酸化チタン(TiO)からなる外添剤を付着させて形成されたトナーTの粒子をプラズマ中に導入することにより、トナー粒子中の原子を励起させ、この励起に伴う発光スペクトルを得、トナー粒子中の元素分析を行うことにより測定する方法である。
まず、トナー製造用粉末(母粉末)に外添剤(TiO)が付着したトナー粒子がプラズマに導入すると、母粒子中のCおよび外添剤(TiO)中のTiがともに発光する。このとき、母粒子(C)と外添剤(TiO)とが同時にプラズマに導入されることから、母粒子中のCと外添剤(TiO)中のTiとは同時に発光するようになる。このように、母粒子中のCと外添剤(TiO)中のTiとが同時に発光する状態の場合は、母粒子中のCと外添剤(TiO)中のTiとが同期しているという。換言すれば、母粒子中のCと外添剤(TiO)中のTiとが同期した状態は、外添剤(TiO)が母粒子(C)に付着している状態を表すことになる。
【0178】
また、外添剤(TiO)が付着していない母粒子(C)や母粒子(C)から遊離した外添剤(TiO)がプラズマに導入される場合は、前述と同様に母粒子中のCおよび外添剤(TiO)中のTiはいずれも発光するが、このとき、母粒子中のCと外添剤(TiO)中のTiとが異なる時間にプラズマに導入されることから、母粒子中のCと外添剤(TiO)中のTiとは異なる時間に発光するようになる(例えば、母粒子が外添剤より先にプラズマに導入されると、先に母粒子中のCが発光し、その後遅れて外添剤(TiO)中のTiが発光する)。
【0179】
このように、母粒子中のCと外添剤(TiO)中のTiとが互いに異なる時間に発光する状態の場合は、母粒子中のCと外添剤(TiO)中のTiとが同期していない(つまり、非同期である)という。換言すれば、母粒子中のCと外添剤(TiO)中のTiとが非同期である状態は、外添剤(TiO)が母粒子(C)に付着していない状態を表すことになる。
【0180】
更に、上記のようにして得られる発光スペクトルにおいて発光信号の高さは、その発光の強さを表しているが、この発光の強さは粒子の大きさや形ではなく、粒子内に含まれているその元素(C、Ti)の原子数に比例している。そこで、発光強度を粒子の大きさとして表すために、母粒子中のCおよび外添剤(TiO)中のTiの発光が得られたとき、これらの母粒子(C)および外添剤(TiO)だけでできた真球の粒子を仮定し、このときの真球の粒子を等価粒子と呼び、これらの粒径を等価粒径と呼ぶ。そして、外添剤は非常に小さいことから、これらの粒子を1個ずつ検出することができないので、検出された外添剤の発光信号を足し合わせて1つの等価粒子に換算して分析する。
このように母粒子および外添剤の各発光スペクトルによって得られた等価粒子の等価粒径を、トナーの各粒子毎にプロットすると、図4に示すようなトナー粒子の等価粒径分布図が得られる。
【0181】
図4において、横軸は母粒子(C)の等価粒径を表し、縦軸は外添剤(TiO)の等価粒径を表している。そして、横軸上の等価粒子は、外添剤(TiO)が付着されていない非同期の母粒子(C)を表しているとともに、縦軸上の等価粒子は、母粒子(C)から遊離した非同期の外添剤(TiO)を表している。また、横軸および縦軸上にない等価粒子は、母粒子(C)に外添剤(TiO)が付着されている同期のトナーを表している。このようにして、トナーの母粒子(C)に対する外添剤(TiO)の付着状態が分析される。また、他の外添剤(酸化チタン以外の外添剤)についても、上記と同様の方法で遊離した外添剤の割合を測定できる。
【0182】
このようにして測定することができる、トナー粒子から遊離したルチルアナターゼ型の酸化チタンの量(トナー中に含まれるルチルアナターゼ型の酸化チタンのうち、遊離外添剤となっているものの割合)は、0.1〜5.0%であるのが好ましく、0.5〜3.0%であるのがより好ましい。遊離外添剤の割合が少な過ぎると前述したマイクロキャリアとしての機能が十分に発揮されない場合がある。一方、遊離外添剤の割合が前記上限値を超えると、遊離外添剤がトナー接触部材に付着して、フィルミングが発生し易くなる。
【0183】
以上のようにして得られるトナー(トナー粉末)は、下記式(I)で表される平均円形度Rが0.86〜0.98であるのが好ましく、0.90〜0.98であるのがより好ましい。平均円形度Rが0.86未満であると、個々のトナー粉末間での帯電特性の差を十分に小さくするのが困難となり、感光体上への現像性が低下する傾向を示す。また、平均円形度Rが小さすぎると、感光体上へのトナーの付着(フィルミング)が発生しやすくなり、トナーの転写効率が低下する場合がある。一方、平均円形度Rが0.98を超えると、転写効率や機械的強度が増す反面、造粒(粒子同士の接合)が促進されることで平均粒子径が大きくなる等の問題がある。また、平均円形度Rが0.98を超えると、例えば、感光体等に付着したトナーをクリーニングにより除去するのが困難となる。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円(完全な幾何学的円)の周囲長を表す。)
また、トナーの平均粒径は、3〜12μmであるのが好ましく、5〜10μmであるのがより好ましい。トナーの平均粒径が前記下限値未満であると、トナー粒子間での融着等が起こり易くなる。一方、トナーの平均粒径が前記上限値を超えると、印刷物の解像度が低下する傾向を示す。
【0184】
また、トナー中の結着樹脂の含有量は、50〜95wt%であるのが好ましく、80〜90wt%であるのがより好ましい。結着樹脂の含有量が前記下限値未満であると、本発明の効果が十分に得られない可能性がある。一方、結着樹脂の含有量が前記上限値を超えると、着色剤等の成分の含有量が相対的に低下し、発色性等の特性の発揮が困難となる場合がある。
【0185】
また、トナー中に含まれる結着樹脂の樹脂組成(構成モノマー、構成樹脂の存在比等)、平均重量分子量Mw、ガラス転移点、軟化点、融点等、平均重量分子量Mw、ガラス転移点、軟化点等は、原料5の構成材料の項目で説明したのと同様であるのが好ましいが、製造工程中に変化したものであってもよい。
また、トナー中にワックスが含まれる場合、その含有量は、特に限定されないが、10wt%以下であるのが好ましく、7wt%以下であるのがより好ましく、1〜5wt%であるのがさらに好ましい。ワックスの含有量が多すぎると、ワックスが遊離、粗大化し、トナー表面へのワックスのしみ出し等が顕著に起こり、トナーの転写効率を十分に高めるのが困難になったり、耐久性を低下させる可能性がある。
【0186】
トナーの物性としての酸価は、トナーの環境特性(特に、耐湿性)を左右する要因の一つである。トナーの酸価は、30KOHmg/g以下であるのが好ましく、8KOHmg/g以下であるのがより好ましい。トナーの酸価が8KOHmg/g以下であると、トナーの環境特性(特に耐湿性)は特に優れたものとなる。
【0187】
また、本発明のトナーは、後述するような定着ニップ部を有する定着装置で用いた場合において、トナー粒子が定着ニップ部を通過するのに要する時間をΔt[秒]、トナーの0.01秒での緩和弾性率を初期緩和弾性率G(0.01)とし、さらに、トナーのΔt秒での緩和弾性率をG(Δt)としたとき、G(0.01)/G(Δt)≦10の関係を満足するのが好ましく、1≦G(0.01)/G(Δt)≦8の関係を満足するのがより好ましく、1≦G(0.01)/G(Δt)≦6の関係を満足するのがさらに好ましい。このような関係を満足することにより、トナー粒子の弾性率低下によるトナーの泣き別れ、オフセットが特に発生し難くなる。これに対し、G(0.01)/G(Δt)が10を超えると、トナーの泣き別れ、オフセットが発生し易くなる。トナーの緩和弾性率は、例えば、トナーの構成材料の組成(例えば、結着樹脂の各樹脂の分子量、モノマー成分、ランダム性や、ワックス、外添剤の組成、各構成成分の含有量等)や、トナーの製造条件(例えば、混練工程における原料温度、混練時間や、冷却工程における混練物の冷却速度、熱球形化工程における処理温度等)により、調節することができる。
また、結着樹脂として、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとを含むものを用いる場合、通常、主としてブロックポリエステルの結晶性ブロックにより構成された結晶が存在する。
【0188】
このような結晶は、その平均長さ(長手方向の平均長さ)が10〜1000nmであるのが好ましく、50〜700nmであるのが好ましい。結晶の長さがこのような範囲の値であると、トナーの形状の安定性が特に優れたものとなり、機械的ストレスに対し、特に優れた安定性を示すものとなる。特に、トナー粒子の表面付近に、外添剤がより確実に保持されることとなり(外添剤が母粒子中に埋没するのを効果的に防止することができ)、トナー粒子は、現像装置等における安定性に特に優れたものとなり、また、フィルミング等の発生を生じ難いものとなる。なお、前記結晶の大きさは、例えば、原料成分として用いるブロックポリエステルの製造条件等を制御することによりブロックポリエステルの分子量やランダム性を変更したり、結着樹脂の各樹脂の配合比を変更したり、前述した混練工程、冷却工程の条件を変更すること等により、適宜調整することができる。
【0189】
特に、トナーがルチルアナターゼ型の酸化チタンを含むものである場合、次の関係を満足するのが好ましい。すなわち、略紡錘形状のルチルアナターゼ型の酸化チタンの平均長軸径をD[nm]、結晶の平均長さをL[nm]としたとき、0.01≦D/L≦2の関係を満足するのが好ましく、0.02≦D/L≦1の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、ルチルアナターゼ型の酸化チタンは、前述したような効果を十分に発揮しつつ、母粒子中に埋没し難いものとなる。その結果、トナーは、前述した機能を十分に保持し、かつ、機械的ストレスに対する安定性が特に優れたものになる。
【0190】
なお、結晶の平均長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)、小角X線散乱測定等により測定することができる。
また、本発明のトナーは、結着樹脂の各樹脂ができるだけ相溶しているものであるのが好ましい。これにより、各トナー粒子間での特性のばらつきが小さく、トナー全体としての特性がより安定したものとなり、本発明の効果がより顕著のものとなる。
【0191】
また、本発明のトナーは、非磁性一成分系のトナーに適用されるものであるのが好ましい。非磁性一成分系のトナーは、一般に、後述するような規制ブレードを有する画像形成装置に適用される。したがって、機械的ストレスに強い本発明のトナーは、非磁性一成分系のトナーとして用いたときに、前述したような効果をより顕著に発揮することができる。
【0192】
また、結着樹脂がブロックポリエステルおよび非晶性ポリエステルを含むもの、あるいは、架橋型ポリエステルおよび非架橋型ポリエステルを含むものである場合、以下で説明するような定着装置、画像形成装置に用いられるものであるのが好ましい。以下、バインダー樹脂がブロックポリエステルおよび非晶性ポリエステルを含むものとして、定着装置、画像形成装置について説明する。
【0193】
次に、本発明のトナーが適用される定着装置、画像形成装置の好適な実施形態について説明する。
図9は、本発明のトナーが適用される画像形成装置の好適な実施形態を示す全体構成図、図10は、図9の画像形成装置が有する現像装置の断面図、図11は、図9の画像形成装置に用いられる定着装置の詳細構造を示し、一部破断面を示す斜視図、図12は、図11の定着装置の要部断面図、図13は、図11の定着装置を構成する剥離部材の斜視図、図14は、図11の定着装置を構成する剥離部材の取付状態を示す側面図、図15は、図11の定着装置を上面から見た正面図、図16は、定着ニップ部の出口における接線に対する、剥離部材の配置角度を説明するための模式図、図17は、定着ローラ、加圧ローラの形状と、定着ニップ部の形状を模式的に示す図、図18は、図17(a)のX−X線における断面図、図19は、定着ローラ、加圧ローラの形状と、定着ニップ部の形状を模式的に示す図、図20は、図19(a)のY−Y線における断面図、図21は、定着ローラと、剥離部材とのギャップを説明するための断面図である。
【0194】
画像形成装置10の装置本体20内には、感光体ドラムからなる像担持体30が配設され、図示しない駆動手段によって図示矢印方向に回転駆動される。この像担持体30の周囲には、その回転方向に沿って、像担持体(感光体)30を一様に帯電するための帯電装置40、像担持体30上に静電潜像を形成するための露光装置50、静電潜像を現像するためのロータリー現像装置60、像担持体30上に形成された単色のトナー像を一次転写するための中間転写装置70が配設されている。
【0195】
ロータリー現像装置60は、イエロー用現像装置60Y、マゼンタ用現像装置60M、シアン用現像装置60Cおよびブラック用現像装置60Kが支持フレーム600に装着され、支持フレーム600は図示しない駆動モータにより回転駆動される構成になっている。これらの複数の現像装置60Y、60C、60M、60Kは、像担持体30の1回転毎に選択的に一つの現像装置の現像ローラ604が像担持体30に対向するように回転移動するようにされている。なお、各現像装置60Y、60C、60M、60Kには、各色のトナーが収納されたトナー収納部が形成されている。
現像装置60Y、60C、60M、60Kは、いずれも同一の構造を有している。したがって、ここでは現像装置60Yの構造について説明するが、現像装置60C、60M、60Kについても、構造、機能は同様である。
【0196】
図10に示すように現像装置60Yでは、その内部にトナーTを収容するハウジング601に供給ローラ603および現像ローラ604が軸着されており、当該現像装置60Yが上記した現像位置に位置決めされると、「トナー担持体」として機能する現像ローラ604が像担持体(感光体)30と当接してまたは所定のギャップを隔てて対向位置決めされるとともに、これらのローラ603、604が本体側に設けられた回転駆動部(図示省略)と係合されて所定の方向に回転するように構成されている。この現像ローラ604は、現像バイアスを印加されるべく銅、ステンレス、アルミニウム等の金属または合金により円筒状に形成されている。
【0197】
また、現像装置60Yでは現像ローラ604の表面に形成されるトナー層の厚みを所定厚みに規制するための規制ブレード605が配置されている。この規制ブレード605は、ステンレスやリン青銅などの板状部材605aと、板状部材605aの先端部に取り付けられたゴムや樹脂部材などの弾性部材605bとで構成されている。この板状部材605aの後端部はハウジング601に固着されており、現像ローラ604の回転方向D3において、板状部材605aの先端部に取り付けられた弾性部材605bが板状部材605aの後端部よりも上流側に位置するように配設されている。
【0198】
中間転写装置70は、駆動ローラ90および従動ローラ100と、両ローラにより図示矢印方向に駆動される中間転写ベルト110と、中間転写ベルト110の裏面で像担持体30に対向して配設された一次転写ローラ120と、中間転写ベルト110上の残留トナーを除去する転写ベルトクリーナ130と、駆動ローラ90に対向して配設され、中間転写ベルト110に形成された4色フルカラー像を記録媒体(紙等)上に転写するための二次転写ローラ140とからなっている。
【0199】
装置本体20の底部には給紙カセット150が配設され、給紙カセット150内の記録媒体は、ピックアップローラ160、記録媒体搬送路170、二次転写ローラ140、定着装置190を経て排紙トレイ200に搬送されるように構成されている。なお、230は両面印刷用搬送路である。
上記構成からなる画像形成装置10の作用について説明する。図示しないコンピュータからの画像形成信号が入力されると、像担持体30、現像装置60の現像ローラ604および中間転写ベルト110が回転駆動し、先ず、像担持体30の外周面が帯電装置40によって一様に帯電され、一様に帯電された像担持体30の外周面に、露光装置50によって第1色目(例えばイエロー)の画像情報に応じた選択的な露光がなされ、イエローの静電潜像が形成される。
【0200】
一方、現像装置60Yでは、2つのローラ603、604が接触しながら回転することで、イエロートナーが現像ローラ604の表面に擦り付けられて所定の厚みのトナー層が現像ローラ604の表面に形成される。そして、規制ブレード605の弾性部材605bが現像ローラ604の表面に弾性的に当接して、現像ローラ604の表面上のトナー層を、所定の厚みに規制する。
【0201】
像担持体30上に形成された潜像位置には、イエロー用現像装置60Yが回動してその現像ローラ604が当接し、これによってイエローの静電潜像のトナー像が像担持体30上に形成され、次に、像担持体30上に形成されたトナー像は一次転写ローラ120により中間転写ベルト110上に転写される。このとき、二次転写ローラ140は中間転写ベルト110から離間されている。
【0202】
上記の処理が画像形成信号の第2色目、第3色目、第4色目に対して、像担持体30と中間転写ベルト110の1回転による潜像形成、現像、転写が繰り返され、画像形成信号の内容に応じた4色のトナー像が中間転写ベルト110上において重ねられて転写される。そして、このフルカラー画像が二次転写ローラ140に達するタイミングで、記録媒体が搬送路170から二次転写ローラ140に供給され、このとき、二次転写ローラ140が中間転写ベルト110に押圧されるとともに二次転写電圧が印加され、中間転写ベルト110上のフルカラートナー像が記録媒体上に転写される。そして、この記録媒体上に転写されたトナー像は定着装置190により加熱加圧され定着される。中間転写ベルト110上に残留しているトナーは転写ベルトクリーナ130によって除去される。
【0203】
なお、両面印刷の場合には、定着装置190を出た記録媒体は、その後端が先端となるようにスイッチバックされ、両面印刷用搬送路230を経て、二次転写ローラ140に供給され、中間転写ベルト110上のフルカラートナー像が記録媒体上に転写され、再び定着装置190により加熱加圧され定着される。
図9において、本発明に係わる定着装置190は、熱源を有する定着ローラ210とこれに圧接される加圧ローラ220とから構成され、定着ローラ210と加圧ローラ220の軸を結ぶ線は水平線からθの角度を有するように配置されている。なお、0°≦θ≦30°である。
【0204】
次に定着装置190について、詳細に説明する。
図11および図15において、ハウジング240内には定着ローラ210が回動自在に装着され、定着ローラ210の一端には駆動ギヤ28が連結されている。そして、定着ローラ210に対向して加圧ローラ220が回動自在に装着されている。加圧ローラ220の軸方向長さは定着ローラ210のそれよりも短く、その空いたスペースに軸受250が設けられて、加圧ローラ220の両端は軸受250により支持されている。軸受250には加圧レバー260が回動可能に設けられ、加圧レバー260の一端とハウジング240間には加圧スプリング270が配設され、これにより加圧ローラ220と定着ローラ210が加圧されるように構成されている。
【0205】
図12において、定着ローラ210は、内部にハロゲンランプ等の熱源210aを有する金属製の筒体210b、筒体210bの外周に設けられたシリコンゴム等からなる弾性層210cと、弾性層210cの表面に被覆されたフッ素ゴム、フッ素樹脂(例えばパーテトラフロロエチレン(PTFE))よりなる表層(図示せず)と、筒体210bに固定された回転軸210dとから構成されている。
【0206】
加圧ローラ220は、金属製の筒体220bと、筒体220bに固定された回転軸220dと、回転軸220dを軸支持する軸受250と、定着ローラ210と同様に、筒体220bの外周に設けられた弾性層220cと、弾性層220cの表面に被覆されたフッ素ゴム、フッ素樹脂よりなる表層(図示せず)とから構成されている。定着ローラ210の弾性層210cの厚みは、加圧ローラ220の弾性層220cの厚みより極端に小さくし、これにより加圧ローラ220側が凹状にへこむような定着ニップ部340が形成されている。
【0207】
図11および図12に示すように、ハウジング240の両側面には、支持軸290、300が設けられており、この支持軸290、300にそれぞれ定着ローラ210側の剥離部材310と加圧ローラ220側の剥離部材320が回動自在に装着されている。これにより、定着ローラ210と加圧ローラ220の軸方向で定着ニップ部340の記録媒体搬送方向下流側に剥離部材310、320が配設されることになる。
【0208】
定着ローラ210側の剥離部材310は、図13および図14に示すように、樹脂シートまたは金属シートを基材とし、該基材表面にフッ素系樹脂層を形成している。剥離部材310は、プレート状の剥離部(基材)310aと、剥離部310aの後方で定着ローラ210側にL字状に折曲された折曲部310bと、剥離部310aの両側端で下方向に折曲された支持片310cと、支持片310cに形成された嵌合穴310dと、剥離部310aの両側端前方に延設されたガイド部310eとから構成されている。
【0209】
剥離部310aは、定着ニップ部340の出口(ニップ出口341)に向けて傾斜するように配置され、剥離部310aの先端は定着ローラ210に非接触でかつ近接されている。支持片310cの嵌合穴310dには、図12で説明した支持軸290が嵌合されている。ガイド部310eは、スプリング33によりハウジング240に付勢され、これによりガイド部310eの先端は定着ローラ210に当接されており、その結果、剥離部310aの先端と定着ローラ210表面との間のギャップが常時一定になるようにされている。
【0210】
加圧ローラ220側の剥離部材320は、定着ローラ210側の剥離部材と同様の形状であるが、図11および図12に示すように、剥離部320aの先端は剥離部310aの先端よりも記録媒体搬送方向下流側に配置されている。また、ガイド部320eの先端は加圧ローラ220の軸受250の周面にP点で当接されており、これにより、剥離部320aの先端と加圧ローラ220表面との間のギャップが常時一定になるようにされている。
【0211】
本実施形態では、図11および図12に示すように、定着ローラ210と加圧ローラ220の軸方向で定着ニップ部340の記録媒体搬送方向下流側に剥離部材310、320を配設している。定着ローラ210側の剥離部材310の先端は、定着ニップ部340の出口に向けて傾斜するように配置され、定着ローラ210に非接触でかつ近接されている。加圧ローラ220側の剥離部材320の先端は、定着ローラ210側の剥離部材310の先端よりも記録媒体搬送方向下流側に配置されている。
【0212】
図14に示すように、定着ローラ210側の剥離部材310は、そのガイド部310eが、スプリング33によりハウジング240に付勢され、これによりガイド部310eの先端は定着ローラ210に当接されており、その結果、剥離部310aの先端と定着ローラ210表面との間のギャップが常時一定になるように位置決めを行っている。
【0213】
加圧ローラ220側の剥離部材320は、定着ローラ210側の剥離部材と同様の形状であり、図11および図12に示すように、剥離部320aの先端は剥離部310aの先端よりも記録媒体搬送方向下流側に配置され、また、ガイド部320eの先端は加圧ローラ220の軸受250の表面にP点で当接されており、これにより剥離部320aの先端と加圧ローラ220表面との間のギャップが常時一定になるように位置決めを行っている。そのために、図15に示すように、加圧ローラ220の軸方向長さは定着ローラ210のそれよりも短く、その空いたスペースに軸受250が設けられ、加圧ローラ220の両端は軸受250により支持されている。
【0214】
両面印刷の場合、片面に印刷された記録媒体は定着ローラ210側の剥離部材310により剥離された後、記録媒体の後端が先端となるようにスイッチバックされ、両面印刷用搬送路230を経て二次転写ローラ140に供給され、中間転写ベルト110上のフルカラートナー像が記録媒体上に転写され、再び定着ローラ210により加熱加圧され定着され、このとき、加圧ローラ220に付着し巻き付いてしまう記録媒体は、加圧ローラ220側の剥離部材320により剥離されることになる。
【0215】
上記のように、本実施形態の定着装置では、定着ローラおよび加圧ローラの軸方向かつ定着ニップ部の記録媒体搬送方向下流側に、定着ローラおよび加圧ローラに近接して配設される剥離部材を備え、前記定着ローラ側の剥離部材の位置決めは定着ローラ表面で行ない、前記加圧ローラ側の剥離部材の位置決めは加圧ローラの軸受表面で行うので、定着ローラおよび加圧ローラからの記録媒体の剥離性を向上させることができる。
【0216】
また、本実施形態では、図16に示すように、定着ローラ210と加圧ローラ220とを略水平状態に配置し、記録媒体500を定着ニップ部340から上方に排出する方式を採用しているが、定着ニップ部340のニップ出口341の接線Sに対する、剥離部材310の配置角度θを、−5〜25°の範囲に設定するのが好ましい。定着ニップ部340のニップ出口341の接線Sに対する、剥離部材310の配置角度θをこのような範囲の値に設定することにより、画像にすじが発生し難くなり、また、剥離性が良好になる。なお、配置角度θは、定着ローラ210側を「+」、加圧ローラ側を「−」とする。
【0217】
また、定着ローラ210、加圧ローラ220は、例えば、それぞれの軸方向において外径寸法がほぼ一定のもの(略円筒形状を有するものであってもよいが、外径寸法が両端部付近で小さく中央部付近で大きい、いわゆるクラウン形状や、外径寸法が両端部付近で大きく中央部付近で小さい、いわゆる逆クラウン形状等を有するものであってもよい。
【0218】
例えば、定着ローラ210、加圧ローラ220が図17に示すように、逆クラウン形状を有するものである場合、剥離部材310の断面形状は、図18に示すようなものであるのが好ましい。また、定着ローラ210、加圧ローラ220が図19に示すように、クラウン形状を有するものである場合、剥離部材310の断面形状は、図20に示すようなものであるのが好ましい。
【0219】
このように、定着ローラ210に沿って配設された剥離部材310が定着ニップ部340のニップ出口341の形状に沿う形状を有するものであると、剥離の際に、剥離部材310の定着ローラ210側の側縁と、記録媒体との接点が増え、両者の接触圧力が一部に集中することに起因する弊害、例えば、記録媒体の巻きこみや形成された画像における乱れ、すじの発生等を効果的に防止、抑制することができる。
【0220】
また、図21に示すように、定着装置190では、定着ローラ210の軸方向の端部付近における、定着ローラ210と剥離部材310とのギャップG2[μm]が、定着ローラ210の軸方向の中央部付近における、定着ローラ210と剥離部材310とのギャップG1[μm]より大きくなっているのが好ましい。このような関係を満足することにより、以下のような効果が得られる。
【0221】
すなわち、剥離部材310は、その長さ方向の中央部付近で、定着ローラ210とのギャップが小さいため、剥離性を大きく損なうことなく、ギャップ管理を簡便にでき、また、定着装置190の製造も容易になる。また、異物の侵入や紙詰まりが発生した場合であっても、これらによる剥離部材310や定着ローラ210へのダメージを生じ難く、剥離部材310、定着ローラの耐久性、信頼性が向上し、定着装置190、画像形成装置10としての耐久性、信頼性も向上する。なお、上記のようなG1とG2との関係は、例えば、剥離部材310を弓型形状にしたり、剥離部材310の先端部310fを弓型形状にしたり、定着ローラ210をクラウン形状にすることにより満足させることができる。
【0222】
上記のような定着装置においては、定着ニップ部340の長さは、トナー粒子が前記定着ニップ部340を通過するのに要する時間が0.02〜0.2秒となるようなものであるのが好ましく、0.03〜0.1秒であるのがより好ましい。トナー粒子が前記定着ニップ部340を通過するのに要する時間がこのような範囲の値であると、トナーが溶融温度まで昇温され、かつ溶融しすぎず定着ローラへの離型性が十分に確保される。
【0223】
また、定着装置190は、高速印刷(高速定着、高速画像形成)に適したものであり、具体的には、記録媒体500の送り速度(繰り出し速度)が0.05〜1.0m/秒であるのが好ましく、0.2〜0.5m/秒であるのがより好ましい。このように、本発明のトナーを好適に用いた場合、比較的高速で記録媒体500にトナーを定着した場合であっても、画像にすじや乱れが発生するのを防止することができ、また、記録媒体500の巻きこみ等の剥離不良を発生し難い。
【0224】
また、運転時における、定着ニップ部340の温度は、100〜220℃であるのが好ましく、120〜200℃であるのがより好ましい。定着ニップ部340の温度がこのような範囲の値であると、紙通過時の温度低下(温度ドロップ)によるトナーの定着強度の低下を十分に防止することができる。
また、運転時における、定着設定温度(定着ローラ210表面の設定温度)は、110〜220℃であるのが好ましく、130〜200℃であるのがより好ましい。定着ローラ210の設定温度がこのような範囲の値であると、トナーの定着強度確保と昇温時間(ウォームアップタイム)の短縮が両立できる。
【0225】
以上説明したような定着装置190は、上述したように、高速印刷(高速定着、高速画像形成)に適している。しかしながら、このような定着装置では、トナーの定着した記録媒体が剥離部材に接触する際にもトナーが高温状態になっているため、従来のトナーを用いた場合には、剥離部材との接触により、定着画像に乱れやすじを生じる可能性がある。また、定着したトナーが溶融した状態(低粘度の状態)で剥離部材と接触すると、記録媒体を確実に剥離するのが困難になる可能性もある。
【0226】
これに対して、本発明のトナーでは、前述の問題を解決することができる。特に、結着樹脂として、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとを含むものを用いた場合、前述の効果が顕著なものとなる。すなわち、トナー中に、軟化点の比較的低い非晶性ポリエステルが含まれるため、定着ニップ部340を通過する際に記録媒体に確実に定着されるものであるとともに、結晶性ブロックを有するブロックポリエステルも含まれるため、その内部に、高硬度で適度な大きさを有する結晶が析出したものになり易い。このような結晶が存在することにより、定着時のように比較的高い温度となる場合においても、トナーの溶融粘度を所定値より低くさせないようにすることができ、定着時等においても部分的に硬いサイトが存在することになる。その結果、トナーの定着画像が、剥離部材と接触した場合においても、形成された画像に乱れやすじを生じ難い。また、本発明のトナーが定着された記録媒体では、剥離不良が特に起こり難く、剥離部材により定着ローラから確実に剥離される。
【0227】
以上、本発明のトナーの製造方法およびトナーについて、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明のトナーは、前述したような方法で製造されたものに限定されない。例えば、前述した実施形態では、造粒工程を経て得られたトナー製造用粉末に外添処理を施すことにより得られるものとして説明したが、外添処理を施さずに、造粒工程により得られた粉末(トナー製造用粉末)をそのままトナーとして用いてもよい。また、前述した実施形態では、粉砕工程後に、熱球形化処理を施すものとして説明したが、このような熱球形化処理は省略してもよい。また、前述した実施形態では、トナーの製造方法として、粉砕法を用いた構成について説明したが、本発明のトナーは、スプレードライ法、重合法等により得られるものであってもよい。
【0228】
また、前述した実施形態では、結着樹脂として2種の樹脂を含むものを用いた構成について説明したが、結着樹脂は1種または3種以上の樹脂を含むものであってもよい。
また、前述した実施形態では、結着樹脂として、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとを含むものを用いた構成について説明したが、それ以外のものでもよい。
【0229】
また、前述した実施形態では、ルチルアナターゼ型酸化チタンは、外添剤として添加されるものとして説明したが、例えば、ルチルアナターゼ型酸化チタンを混練工程に供される原料の一成分として用いることにより、トナーの内部に含まれるものとしてもよい。
また、前述した実施形態では、結晶性を示す指標として示差走査熱量分析(DSC)による融点の吸熱ピークの測定で得られるΔTについて説明したが、結晶性を示す指標は、これに限定されない。例えば、結晶性を表す指標としては、密度法、X線法、赤外線法、核磁気共鳴吸収法等により測定される結晶化度等を用いてもよい。
【0230】
また、前述した実施形態では、トナー製造用粉末は、粉砕法により得られたものを用いたものとして説明したが、重合法、スプレードライ法等、その他の方法により製造されたものであってもよい。
また、本発明のトナーは、前述した定着装置、画像形成装置に用いられるものに限定されず、前述とは異なる構成の定着装置、画像形成装置に用いられるものであってもよい。
【0231】
【実施例】
[1]ポリエステルの製造
トナーの製造に先立ち、以下に示す4種のポリエステルA、B、C、Dを製造した。
[1.1]ポリエステルA(非晶性ポリエステル)の製造
まず、ネオペンチルグリコール:36モル部、エチレングリコール:36モル部、1,4−シクロヘキサンジオール:48モル部、テレフタル酸ジメチル:90モル部、無水フタル酸:10モル部の混合物を用意した。
【0232】
2リットル4つ口フラスコに、還流冷却器、蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計、攪拌装置を常法に従い設置し、前記のジオール成分とジカルボン酸成分との混合物:1000gと、エステル化縮合触媒(チタンテトラブトキシド(PPB)):1gとを、前記2リットル4つ口フラスコ内に入れた。その後、材料温度:180℃で、生成する水、メタノールを蒸留塔より流出させながら、エステル化反応を進行させた。蒸留塔から水、メタノールが流出しなくなった時点で、2リットル4つ口フラスコから蒸留塔を取り外すとともに、真空ポンプに接続した。系内の圧力を5mmHg以下に減圧した状態で、温度を200℃とし、攪拌回転数:150rpm攪拌することにより、縮合反応で発生した遊離ジオールを系外に排出し、その結果得られた反応物をポリエステルA(PES−A)とした。
【0233】
得られたポリエステルAについて、示差走査熱量分析装置による融点の吸熱ピークの測定を試みた。その結果、融点の吸収ピークであると判断できるようなシャープなピークは、確認することができなかった。また、ポリエステルAの軟化点T1/2は、111℃、ガラス転移点Tは、60℃、重量平均分子量Mwは、1.3×10であった。
【0234】
[1.2]ポリエステルB(ブロックポリエステル)の製造
2リットル4つ口フラスコに、還流冷却器、蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計、攪拌装置を常法に従い設置し、上記[1.1]で得られたポリエステルA:70モル部とジオール成分としての1,4−ブタンジオール:15モル部とジカルボン酸成分としてのテレフタル酸ジメチル:15モル部との混合物1000gと、エステル化縮合触媒(チタンテトラブトキシド(PPB)):1gとを、前記2リットル4つ口フラスコ内に入れた。その後、材料温度:200℃で、生成する水、メタノールを蒸留塔より流出させながら、エステル化反応を進行させた。蒸留塔から水、メタノールが流出しなくなった時点で、2リットル4つ口フラスコから蒸留塔を取り外すとともに、真空ポンプに接続した。系内の圧力を5mmHg以下に減圧した状態で、温度を220℃とし、攪拌回転数:150rpm攪拌することにより、縮合反応で発生した遊離ジオールを系外に排出し、その結果得られた反応物をポリエステルB(PES−B)とした。
【0235】
示差走査熱量分析装置を用いた測定での、ポリエステルBの融点の吸熱ピークの中心値Tmpは、218℃、ショルダーピーク値Tmsは、205℃であった。また、測定で得られた示差走査熱量分析曲線から、求められたポリエステルBの融解熱Eは、18mJ/mgであった。また、ポリエステルBの軟化点T1/2は、149℃、ガラス転移点Tは、64℃、重量平均分子量Mwは、2.8×10であった。
【0236】
[1.3]ポリエステルC(架橋型ポリエステル)の製造
まず、トリメチロールプロパン:3モル部、フマール酸:3モル部、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニルプロパン):3モル部、無水1,2,4,−ベンゼントリカルボン酸:3モル部の混合物を用意した。
【0237】
2リットル4つ口フラスコに、還流冷却器、蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計、攪拌装置を常法に従い設置し、前記のアルコール成分とカルボン酸成分との混合物:1200gと、エステル化縮合触媒(ハイドロキノン):1.5gとを、前記2リットル4つ口フラスコ内に入れた。その後、材料温度:200℃で、生成する水、メタノールを蒸留塔より流出させながら、エステル化反応を進行させた。蒸留塔から水、メタノールが流出しなくなった時点で、2リットル4つ口フラスコから蒸留塔を取り外すとともに、真空ポンプに接続した。系内の圧力を5mmHg以下に減圧した状態で、温度を220℃とし、攪拌回転数:150rpm攪拌することにより、縮合反応で発生した遊離ジオールを系外に排出し、その結果得られた反応物をポリエステルC(PES−C)とした。
【0238】
得られたポリエステルCについて、示差走査熱量分析装置による融点の吸熱ピークの測定を試みた。その結果、融点の吸収ピークであると判断できるようなシャープなピークは、確認することができなかった。また、ポリエステルCの軟化点T1/2は、146℃、ガラス転移点Tは、60℃、重量平均分子量Mwは、3×10であった。
【0239】
[1.4]ポリエステルD(非架橋型ポリエステル)の製造
まず、ネオペンチルグリコール:3モル部、エチレングリコール:3モル部、1,4−シクロヘキサンジオール:4モル部、テレフタル酸ジメチル:5モル部、フマール酸:5モル部の混合物を用意した。
2リットル4つ口フラスコに、還流冷却器、蒸留塔、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計、攪拌装置を常法に従い設置し、前記のジオール成分とジカルボン酸成分との混合物:1500gと、エステル化縮合触媒(ハイドロキノン):1.5gとを、前記2リットル4つ口フラスコ内に入れた。その後、材料温度:200℃で、生成する水、メタノールを蒸留塔より流出させながら、エステル化反応を進行させた。蒸留塔から水、メタノールが流出しなくなった時点で、2リットル4つ口フラスコから蒸留塔を取り外すとともに、真空ポンプに接続した。系内の圧力を5mmHg以下に減圧した状態で、温度を220℃とし、攪拌回転数:150rpm攪拌することにより、縮合反応で発生した遊離ジオールを系外に排出し、その結果得られた反応物をポリエステルD(PES−D)とした。
【0240】
得られたポリエステルDについて、示差走査熱量分析装置による融点の吸熱ピークの測定を試みた。その結果、融点の吸収ピークであると判断できるようなシャープなピークは、確認することができなかった。また、ポリエステルDの軟化点T1/2は、108℃、ガラス転移点Tは、68℃、重量平均分子量Mwは、1×10であった。
【0241】
なお、上記の各樹脂材料についての融点、軟化点、ガラス転移点、重量平均分子量の測定は、以下のようにして行った。
融点Tの測定は示差走査熱量計DSC(セイコー電子工業社製、DSC220型)を用いて、次のようにして行った。まず、樹脂サンプルを、昇温速度:10℃/分で200℃まで昇温した後、降温速度:10℃/分で0℃まで降温した。その後、昇温速度:10℃/分で昇温し、その際の結晶融解による吸熱の最大ピーク温度(2ndラン時)を、融点Tとして求めた。
【0242】
軟化点T1/2の測定は、細管式レオメータ(島津製作所社製、フローテスタCFT−500型)を用いて行った。サンプル量:1g、ダイ孔径:1mm、ダイ長さ:1mm、荷重:20kgf、予熱時間:300秒、測定開始温度:50℃、昇温速度:5℃/分という条件で、サンプルを押出し、流出開始時点と、流出終了時点との間のピストンストロークの変動幅が1/2の時点での温度(1/2法温度)を軟化点T1/2として求めた(図3参照)。
【0243】
ガラス転移点Tの測定は、示差走査熱量計DSC(セイコー電子工業社製、DSC220型)を用いて、上記の融点の測定と同時に行った。上記融点の測定方法で説明した2ndラン時の、ガラス転移前後のベースライン指定点の2点間の微分値最大値(DSCデータの最大傾斜点)の接線と、ガラス転移前のベースラインの延長線との交点を、ガラス転移点Tとして求めた。
【0244】
重量平均分子量Mwの測定は、ゲル浸透クロマトグラフィーGPC(東ソー社製、HLC−8220型)を用いて以下のようにして行った。
まず、樹脂サンプル1gをTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させ、1mlのTHF溶液(不溶分を含む)を得た。このTHF溶液を遠心分離専用のサンプル瓶に注入し、遠心分離器で、2000rpm、5分間の条件で遠心分離を行い、その上澄み液サンプレップLCR13−LH(孔径:0.5μm)でろ過し、ろ液を得た。
このようにして得られたろ液を、カラム:TSKgel SuperHZ4000+SuperHZ4000(東ソー社製)、流速:0.5mL/分、温度:25℃、溶媒:THFという条件で、ゲル浸透クロマトグラフィーGPC(東ソー社製、HLC−8220型)を用いて分離し、その結果として得られたチャートに基づき、樹脂サンプルの重量平均分子量Mwを求めた。なお、標準試料としては、単分散ポリスチレンを用いた。
【0245】
[2]トナーの製造
以下のようにして、トナーを製造した。
(実施例1)
まず、非晶性ポリエステルとしてポリエステルA:80重量部、ブロックポリエステルとしてポリエステルB:20重量部、着色剤としてキナクリドン(P.R.122):6重量部、帯電制御剤としてサリチル酸クロム錯体(ボントロンE−81):1重量部、ワックスとしてカルナウバワックス:2重量部を用意した。各成分は、目開き3mmのふるいでふるった。
【0246】
これらの各成分を図9に示すような混合機を用いて混合し、トナー製造用の原料(混合物)を得た。
混合機の撹拌羽の周速は、6.5m/sとし、原料の投入量は、20kgとした。原料混合時の混合機の消費電力は、0.98kWで、運転時間は、5分であった。なお、混合機の空運転時における消費電力は、0.70kWである。
【0247】
このような条件から求められる原料1kgあたりの混合エネルギーは、1.2×10−3kWh/kgである。
また、混合工程における原料の温度は、26.2℃であった。なお、混合工程における原料の温度変化は1℃未満であった。
次に、この混合物を、図1に示すような2軸混練押出機を用いて、混練した。
2軸混練押出機のプロセス部の全長L[m]と混練セグメントの最大外径をD[m]との比L/Dは42、第1の領域の長さL(25)とDとの比L(25)/Dは4、第2の領域の長さL(26)とDとの比L(26)/Dは12、第3の領域の長さL(27)とDとの比L(27)/Dは26とした。
【0248】
また、混練機の設定温度が、第1の領域において50℃、第2の領域において230℃、第3の領域において70℃に設定した。
また、軸の回転速度は115rpmとし、混合物の混練速度は20kg/hとした。
このような条件から求められる、混合物が第1の領域を通過するのに要する時間は約0.5分間、第2の領域を通過するのに要する時間は約2.0分間、第3の領域を通過するのに要する時間は約3.0分間である。
【0249】
プロセス部で混練された原料(混練物)は、ヘッド部を介して2軸混練押出機の外部に押し出した。ヘッド部内における混練物の温度は、110℃となるように調節した。
また、混合物の混練時における混練機の消費電力は、8.6kWで、空運転時における混練機の消費電力は、0.8kWであった。
【0250】
このような条件から求められる混合物1kgあたりの混練エネルギーは、0.39kWh/kgである。
このようにして2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を、図1中に示すような冷却機を用いて、冷却した。冷却工程直後の混練物の温度は、約35℃であった。
混練物の冷却速度は、−3.1℃/秒であった。また、混練工程の終了時から冷却し60℃になるまでに要した時間は、16秒であった。
【0251】
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕(平均粒径:1〜2mm)し、引き続き微粉砕した。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用い、微粉砕にはジェットミル(ホソカワミクロン社製、200AFG)を用いた。なお、微粉砕は、粉砕エア圧:550[kPa]、ロータ回転数:7300[rpm]で行った。
このようにして得られた粉砕物を気流分流機(ホソカワミクロン社製、100ATP)で分級した。
【0252】
その後、分級した粉砕物(トナー製造用粉末)に、熱球形化処理の前処理としての外添処理を施した。この外添処理は、20リットル型のヘンシェルミキサーを用いて、トナー製造用粉末:100重量部と、外添剤としての負帯電性小粒径シリカ(平均粒径:12nm):0.2重量部とを、周速35m/sで1分間混合することにより行った。なお、負帯電性小粒径シリカとしては、ヘキサメチルジシラザンで表面処理(疎水化処理)を施したものを用いた。
【0253】
次に、上記のような前処理としての外添処理を施したトナー製造用粉末に、熱球形化処理を施した。熱球形化処理は、熱球形化装置(日本ニューマチック社製、SFS3型)を用いて行った。熱球形化処理時における雰囲気の温度は、270℃とした。
その後、熱球形化処理を施した粉末に対し、外添剤を付与してトナーを得た。外添剤の付与は、20L型のヘンシェルミキサーを用いて、熱球形化処理を施した粉末:100重量部と、外添剤:2.5重量部とを混合することにより行った。外添剤としては、負帯電性小粒径シリカ(平均粒径:12nm):1重量部と、負帯電性大粒径シリカ(平均粒径:40nm):0.5重量部と、ルチルアナターゼ型の酸化チタン(略紡錘形状、平均長軸径:30nm):1重量部とを用いた。負帯電性シリカ(負帯電性小粒径シリカ、負帯電性大粒径シリカ)としては、ヘキサメチルジシラザンで表面処理(疎水化処理)を施したものを用いた。また、ルチルアナターゼ型の酸化チタンとしては、結晶構造がルチル型の酸化チタンと、結晶構造がアナターゼ型の酸化チタンとの比率が、90:10で、300〜350nmの波長領域の光を吸収するものを用いた。
ただし、上記のようなトナーの製造は、製造前後での、各樹脂材料の重量平均分子量の変化率が±10%以内、融点、軟化点、ガラス転移点の変化量が±10℃以内となるような条件で行った。
【0254】
最終的に得られたトナーの平均粒径は、7.8μmであった。また、得られたトナーの平均円形度Rは、0.96であった。また、トナーの酸価は、0.8mgKOH/gであった。また、トナー中における結晶の平均長さは、500nmであった。また、得られたトナーにおける外添剤の被覆率は、160%であった。また、トナー中に含まれるルチルアナターゼ型の酸化チタンの内、遊離外添剤として存在しているものの割合(遊離率)は、1.8%であった。
【0255】
なお、円形度の測定は、フロー式粒子像解析装置(シスメックス(株)社製、FPIA−2000)を用いて、水分散系で行った。ただし、円形度Rは、下記式(I)で表されるものとする。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
また、トナー中における結晶の平均長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)による測定の結果から求めた。
【0256】
(実施例2、3)
混合工程における混合時間、原料投入量および混練工程における各領域の設定温度を、表2に示したようにした以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
(実施例4〜6)
ポリエステルA:80重量部、ポリエステルB:20重量部の代わりに、ポリエステルC:40重量部、ポリエステルD:60重量部を用い、混合工程における混合時間、原料投入量および混練工程における各領域の設定温度を、表2に示したようにした以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
【0257】
(実施例7)
ポリエステルA:80重量部、ポリエステルB:20重量部の代わりに、ポリエステルA:90重量部、ポリエステルB:10重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
(実施例8)
ポリエステルC:40重量部、ポリエステルD:60重量部の代わりに、ポリエステルC:55重量部、ポリエステルD:45重量部を用いた以外は、前記実施例6と同様にしてトナーを製造した。
【0258】
(実施例9)
外添剤としての負帯電性大粒径シリカ(平均粒径:40nm)を用いなかった以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
(実施例10)
外添剤として、さらに正帯電性シリカ(平均粒径:40nm):1重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。なお、正帯電性シリカとしては、アミノ基を有するシランカップリング剤(アミノシラン)を用いて負帯電性シリカに表面処理(疎水化処理)を施すことにより得られたものを用いた。
【0259】
(実施例11)
混練工程に供する原料中に、ワックスの代わりに、低融点ポリエステル:2重量部を添加した以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。なお、用いた低融点ポリエステルは、1,6−ヘキサンジオールとヘキサンジカルボン酸との重合体で、その重量平均分子量Mwは4.8×10、融点Tは79℃、軟化点T1/2は82℃、ガラス転移点Tは57℃であった。
【0260】
(実施例12)
冷却工程における冷却速度を5℃/秒とした以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
(実施例13)
熱球形化工程を行わなかった以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
(実施例14)
ポリエステルA:80重量部、ポリエステルB:20重量部の代わりに、ポリエステルA:80重量部、ポリエステルB:10重量部およびポリエステルD:10重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
【0261】
(比較例1、2)
混合工程における混合機の運転時間、原料投入量および混練工程における各領域の設定温度を、表2に示したようにした以外は、前記実施例1と同様にしてトナーを製造した。
前記各実施例および各比較例のトナーについて、構成成分を表1に示し、混合工程、混練工程における各条件を表2にまとめて示し、トナーの平均粒径、平均円形度R、トナー中における結晶の平均長さ、外添剤の被覆率、およびルチルアナターゼ型の酸化チタンの遊離率を表3にまとめて示した。また、表3には、混練物の粉砕性として、各トナーの製造時における粉砕工程での微粉砕した際の時間あたりの処理量をあわせて示した。なお、表中、ポリエステルA、ポリエステルB、ポリエステルC、ポリエステルDは、それぞれ、PES−A、PES−B、PES−C、PES−Dで示し、帯電制御剤は、CCAで示した。
【0262】
また、各実施例および各比較例のトナーについて、Δt=0.05[秒]、トナーの0.01秒での緩和弾性率Gを初期緩和弾性率G(0.01)[Pa]とし、さらに、トナーのΔt秒での緩和弾性率G(Δt)[Pa]としたときの、G(0.01)[Pa]とG(Δt)[Pa]との比、G(0.01)/G(Δt)を以下のようにして求めた。
まず、トナー約1gをパラレルプレートにはさみ、過熱溶融させ、高さ1.0〜2.0mmに調製した。このようにして得られたサンプルを、ARES粘弾性測定装置(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)を用いて、応力緩和測定モードにより、下記測定条件で粘弾性測定を行った。
・測定温度:150℃、
・歪印加量:線径領域における最大歪み
・ジオメトリー:パラレルプレート(25mm径)
上記のような測定により、初期緩和弾性率(0.01秒での緩和弾性率):G(0.01)[Pa]、Δt=0.05秒での緩和弾性率:G(Δt)[Pa]を求めた。これらの結果から得られるG(0.01)/G(Δt)の値を表3にあわせて示す。
【0263】
【表1】
Figure 2004240072
【0264】
【表2】
Figure 2004240072
【0265】
【表3】
Figure 2004240072
【0266】
[3]評価
以上のようにして得られた各トナーについて、定着良好域、現像耐久性、保存性、透明性、転写効率、帯電特性の評価を行った。
[3.1]定着良好域
まず、前述した図11〜図18、図21に示すような定着装置を作製した。この定着装置では、トナーが定着ニップ部を通過するのに要する時間Δtを0.05秒に設定した。この定着装置を用いて図9、図10に示すような画像形成装置(カラープリンタ)を作製した。この画像形成装置を用いて、未定着の画像サンプルを採取し、当該画像形成装置の定着装置で、以下のような試験を実施した。なお、採取するサンプルのベタは付着量を0.40〜0.50mg/cmに調整した。
画像形成装置を構成する定着装置の定着ローラの表面温度を所定温度に設定した状態で、未定着のトナー像が転写された用紙(セイコーエプソン社製、上質普通紙)を、定着装置の内部に導入することにより、トナー像を用紙に定着させ、定着後におけるオフセットの発生の有無を目視で確認した。
【0267】
同様に、定着ローラの表面の設定温度を100〜220℃の範囲で順次変更していき、各温度でのオフセットの発生の有無を確認し、オフセットが発生しなかった温度範囲を、「定着良好域」として求め、以下の3段階の基準に従い評価した。
◎:「定着良好域」の幅が60℃以上である。
○:「定着良好域」の幅が35℃以上60℃未満である。
×:「定着良好域」の幅が35℃未満である。
【0268】
[3.2]現像耐久性
前記[3.1]で用いた画像形成装置の現像装置にトナーを30gセットした後、無補給でエージングを行い、現像ローラへのフィルミングが発生するまでの時間を測定し、以下の3段階の基準に従い評価した。
◎:エージング開始後、120分以上経過しても、フィルミング発生は認められなかった。
○:エージング開始後、60〜120分でフィルミングが発生。
×:エージング開始後、60分未満でフィルミングが発生。
【0269】
[3.3]保存性
各実施例および各比較例のトナーを、それぞれ10gずつサンプル瓶に入れ、50℃の恒温槽内に48時間放置した後、固まり(凝集)の有無を目視で確認し、以下の3段階の基準に従い評価した。
◎:固まり(凝集)の存在が全く認められなかった。
○:小さい固まり(凝集)がわずかに認められた。
×:固まり(凝集)がはっきりと認められた。
これらの結果を表4にまとめて示した。
【0270】
[3.4]透明性
まず、微量のトナーを2枚のスライドガラス間に挿し込み、ホットプレート上で溶融させ、その後、徐冷した。トナーを構成する樹脂が完全に固化するまで放置し、その後、HAZEメーター(日本電色工業社製、MODEL1001DP)でHAZE値を測定し、以下の4段階の基準に従い評価した。なお、HAZE値は、拡散透過率を全透過率で除した値であり、トナー中の各成分の分散性が良い程、この値は小さくなる。
◎:HAZE値が47未満。
○:HAZE値が47以上50未満。
△:HAZE値が50以上53未満。
×:HAZE値が53以上。
【0271】
[3.5]転写効率
前記[3.1]で用いた画像形成装置を用いて、以下のように評価した。
感光体(像担持体)への現像工程直後(転写前)の感光体上のトナーと、転写後(印刷後)の感光体上のトナーとを、別々のテープを用いて採取し、それぞれの重量を測定した。転写前の感光体上のトナー重量をW[g]、転写後の感光体上のトナー重量をW[g]としたとき、(W−W)×100/Wとして求められる値を、転写効率とした。
【0272】
[3.6]帯電特性
前記[3.1]で用いた画像形成装置において、印字途中で画像形成装置を停止させ、カートリッジを取り外し、粉黛帯電量分布測定装置(ホソカワミクロン社製、E−spart analyzer)を用いて、帯電量分布を測定し、その結果から、帯電量および逆帯電量としてプラス帯電量を求めた。
【0273】
帯電量については、初期帯電量と、1K後(1000枚印字後)の帯電量について求めた。
1K後の帯電量については、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:初期帯電量からの変化量(絶対値)が0.5μC/g未満。
○:初期帯電量からの変化量(絶対値)が0.5μC/g以上1μC/g未満。
△:初期帯電量からの変化量(絶対値)が1μC/g以上3μC/g未満。
×:初期帯電量からの変化量(絶対値)が3μC/g以上。
また、逆帯電性のトナーについては、全トナー量に対する存在比率を求め、逆帯電性のトナーの存在比率が3wt%未満の場合は○、逆帯電性のトナーの存在比率が3wt%以上の場合は×とした。
これらの結果を表4にまとめて示した。
【0274】
【表4】
Figure 2004240072
【0275】
表4から明らかなように、本発明のトナーは、各トナー粒子間での帯電特性(逆帯電性トナーの存在比)のバラツキが少なかった。また、現像耐久性にも優れており、幅広い温度領域で、優れた定着性を発揮するものであった。また、本発明のトナーは、保存性、透明性にも優れていた。特に本発明のトナーでは、転写効率を保持しつつ、優れた現像耐久性、定着性、保存性、透明性を発揮するものであった。また、結着樹脂組成(配合比、種類、含有量等)や、混練工程における各領域での原料温度、冷却工程での混練物の冷却速度等が好ましい範囲のトナーでは、極めて良好な結果が得られた。
特に、結着樹脂として、ブロックポリエステルと非晶性ポリエステルとを含むものを用いた場合のトナーは、特に優れた現像耐久性、定着性を発揮するものであった。
【0276】
これに対し、混合エネルギーと混練エネルギーとの比が、好ましい関係を満足していない比較例では、各トナー粒子間での特性のバラツキが大きく、また、トナー全体として十分な特性が得られなかった。
特に、混合エネルギーと混練エネルギーとの比が特に小さい比較例2のトナーでは、比較例の中でも、特に、トナー粒子間での特性のバラツキが大きく、帯電特性が劣っていた。また、混合時において、原料の凝集および溶融が他の比較例と比較しても顕著となり、トナーの生産性が低下した。
【0277】
また、特に、結着樹脂として2種の樹脂を含むものを用いた比較例1および2のトナーでは、相分離が起こりやすく、現像耐久性、保存性に劣っていた。これは、それぞれの樹脂が十分に相溶化していないためと考えられる。
また、着色剤として、キナクリドン(P.R.122)に代わり、銅フタロシアニン顔料、ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントイエロー93、カーボンブラックを用いた以外は、前記各実施例および前記各比較例と同様にして、トナーを作製し、これらの各トナーについても前記と同様の評価を行った。その結果、前記各実施例および前記各比較例と同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトナーの製造方法に用いる混練機、冷却機の構成の一例を模式的に示す縦断面図である。
【図2】ブロックポリエステルについて示差走査熱量分析を行ったときに得られる、ブロックポリエステルの融点付近での示差走査熱量分析曲線のモデル図である。
【図3】軟化点解析用フローチャートである。
【図4】トナー中に含まれるトナー粒子から遊離したルチルアナターゼ型の酸化チタンの量を測定する方法を説明するための図である。
【図5】図1の混練機の要部断面図である。
【図6】混練セグメントの斜視図である。
【図7】図5のX−X線における断面図である。
【図8】本発明のトナーの製造方法に用いる混合機の構成の一例を模式的に示す縦断面図である。
【図9】本発明の画像形成装置の好適な実施形態を示す全体構成図である。
【図10】図9の画像形成装置が有する現像装置の断面図である。
【図11】図9の画像形成装置に用いられる本発明の定着装置の詳細構造を示し、一部破断面を示す斜視図である。
【図12】図11の定着装置の要部断面図である。
【図13】図11の定着装置を構成する剥離部材の斜視図である。
【図14】図11の定着装置を構成する剥離部材の取付状態を示す側面図である。
【図15】図11の定着装置を上面から見た正面図である。
【図16】定着ニップ部の出口における接線に対する、剥離部材の配置角度を説明するための模式図である。
【図17】定着ローラ、加圧ローラの形状と、定着ニップ部の形状を模式的に示す図である。
【図18】図17(a)のX−X線における断面図である。
【図19】定着ローラ、加圧ローラの形状と、定着ニップ部の形状を模式的に示す図である。
【図20】図19(a)のY−Y線における断面図である。
【図21】定着ローラと、剥離部剤とのギャップを説明するための断面図である。
【符号の説明】
1……混練機 2……プロセス部 21……バレル 211……ベント口 22、23……軸 24……固定部材 25、26、27……領域 221、231……搬送セグメント 222、232……混練セグメント 3……ヘッド部 31……内部空間 32……押出口 33……横断面積漸減部 4……フィーダー 5……原料 6……冷却機 61、62、63、64……ロール 611、621、631、641……回転軸 65、66……ベルト 67……排出部 7……混練物 8……混合機 81……混合槽 82……蓋 83……原料取り出し口 84……撹拌軸 85a、85b……撹拌羽 86……撹拌調整板 9……混合物 10……画像形成装置 20……装置本体 30……像担持体 40……帯電装置 50……露光装置 60……ロータリー現像装置 600……支持フレーム 601……ハウジング 603……供給ローラ 604……現像ローラ 605……規制ブレード 605a……板状部材 605b……弾性部材 60Y……イエロー用現像装置 60M……マゼンタ用現像装置 60C……シアン用現像装置 60K……ブラック用現像装置 70……中間転写装置 90……駆動ローラ 100……従動ローラ 110……中間転写ベルト 120……一次転写ローラ 130……転写ベルトクリーナ 140……二次転写ローラ 150……給紙カセット 160……ピックアップローラ 170……記録媒体搬送経路 190……定着装置 200……排紙トレイ 210……定着ローラ(加熱定着部材) 210a……熱源 210b……筒体 210c……弾性層 210d……回転軸 220……加圧ローラ(加圧部材) 220b……筒体 220c……弾性層 220d……回転軸 230……両面印刷用搬送路 240……ハウジング 250……軸受 260……加圧レバー 270……加圧スプリング 280……駆動ギヤ 290……支持軸 300……支持軸310……剥離部材 310a……剥離部 310b……折曲部 310c……支持片 310d……嵌合穴 310e……ガイド部 310f……先端部 320……剥離部材 320a……剥離部 320e……ガイド部 330……スプリング 340……定着ニップ部 341……ニップ出口 500……記録媒体 T……トナー S……接線 G1……ギャップ G2……ギャップ

Claims (36)

  1. 少なくとも、結着樹脂と、着色剤とを含む原料を、混合機を用いて混合して混合物を得る混合工程と、
    前記混合物を、混練機を用いて混練して混練物を得る混練工程とを有するトナーの製造方法であって、
    前記混合工程において、前記混合機が前記原料1kgあたりに与える混合エネルギーをA[kWh/kg]とし、
    前記混練工程において、前記混練機が前記混合物1kgあたりに与える混練エネルギーをB[kWh/kg]としたとき、
    AとBの比が、B/A≧5の関係を満足することを特徴とするトナーの製造方法。
  2. 前記混合工程における前記原料の温度上昇が、混合工程に供される前記原料の温度を基準としたとき、2℃以下である請求項1に記載のトナーの製造方法。
  3. 前記混合機は、1枚または2枚以上の撹拌羽を有するものであり、前記撹拌羽の先端の周速は1.0〜10.0m/sである請求項1または2に記載のトナーの製造方法。
  4. 前記混合工程における混合時間は、1〜15分である請求項1ないし3のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  5. 前記混合工程において、前記混合機が前記原料1kgあたりに与えるエネルギーが0.0008〜0.05kWh/kgである請求項1ないし4のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  6. 前記混練工程おいて、前記混練機が前記混合物1kgあたりに与えるエネルギーが0.1〜5.0kWh/kgである請求項1ないし5のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  7. 前記結着樹脂が、少なくとも2種以上の樹脂を含むものである請求項1ないし6のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  8. 前記結着樹脂が、主としてブロック共重合体で構成されたブロックポリエステルと、前記ブロックポリエステルより結晶性の低い非晶性ポリエステルとを含むものである請求項1ないし7のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  9. 前記結着樹脂が、主として架橋型ポリエステルと、非架橋型ポリエステルとを含むものである請求項1ないし8のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  10. 前記混練機は、1本または2本以上の軸を有するものであり、前記軸の回転数が、50〜300rpmである請求項1ないし9のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  11. 前記混練機は、前記原料を搬送しつつ混練するプロセス部と、前記プロセス部で混練された混練物が押し出される押出口とを有し、
    前記プロセス部は、長手方向に所定の長さを有する第1の領域と、該第1の領域より押出口側に設けられた第2の領域と、該第2の領域より押出口側に設けられた第3の領域とを有するものであって、
    前記結着樹脂を構成する樹脂のうち、ガラス転移点の最も低い樹脂のガラス転移点をT(A)[℃]、軟化点の最も高い樹脂の軟化点をT1/2(B)[℃]、相溶化した前記結着樹脂のガラス転移点をT(C)[℃]としたとき、
    前記第1の領域における前記混練機の設定温度T[℃]は、(T(A)−40)<T<T(A)の関係を満足し、
    前記第2の領域における前記混練機の設定温度T[℃]は、T1/2(B)≦T≦(T1/2(B)+150)の関係を満足し、
    前記第3の領域における前記混練機の設定温度T[℃]は、(T(C)−30)≦T≦T(C)の関係を満足する請求項7ないし10のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  12. 前記プロセス部は、前記原料の搬送を主機能とする搬送セグメントと、前記原料の混練を主機能とする混練セグメントとを有しているものである請求項11に記載のトナーの製造方法。
  13. 前記混練セグメントは、前記プロセス部に少なくとも2ヶ所以上設けられているものである請求項12に記載のトナーの製造方法。
  14. 前記プロセス部に設けられた複数の前記混練セグメントのうち、少なくとも1つが前記第2の領域に設けられ、少なくとも1つが第3の領域に設けられているものである請求項12または13に記載のトナーの製造方法。
  15. 前記第1の領域での前記混練機の設定温度Tは、30〜60℃である請求項11ないし14のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  16. 前記原料の前記第1の領域での平均滞留時間は、0.5〜60分である請求項11ないし15のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  17. 前記第2の領域での前記混練機の設定温度Tは、100〜260℃である請求項11ないし16のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  18. 前記原料の前記第2の領域での平均滞留時間は、0.5〜20分である請求項11ないし17のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  19. 前記第3の領域での前記混練機の設定温度Tは、40〜80℃である請求項11ないし18のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  20. 前記原料の前記第3の領域での平均滞留時間は、0.5〜20分である請求項11ないし19のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  21. 前記第2の領域での前記混練機の設定温度T[℃]と、前記第3の領域での前記混練機の設定温度T[℃]との差T−Tは、20℃以上である請求項11ないし20のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  22. 前記プロセス部の全長をL[m]、前記プロセス部の軸方向に垂直な断面における前記混練セグメントの最大外径をD[m]としたとき、LとDとは、20≦L/D<60の関係を満足する請求項12ないし21のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  23. 前記原料は平均粒径が2mm以下であり、ワックスを含むものである請求項1ないし22のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  24. 相溶化した前記結着樹脂のガラス転移点をT(C)[℃]としたとき、前記ワックスの融点Tm1[℃]は、T(C)≦Tm1の関係を満足するものである請求項23に記載のトナーの製造方法。
  25. 前記原料中に、融点が50〜100℃であるポリエステル樹脂を含む請求項1ないし24のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  26. 前記ポリエステル樹脂の重量平均分子量が、1×10〜2×10℃である請求項25に記載のトナーの製造方法。
  27. 相溶化した前記結着樹脂のガラス転移点をT(C)[℃]としたとき、前記ポリエステル樹脂の融点Tm2[℃]は、T(C)≦Tm2の関係を満足するものである請求項25または26に記載のトナーの製造方法。
  28. 前記混練機は、2軸混練押出機である請求項1ないし27のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  29. 前記混練工程の後に、前記混練物を冷却する冷却工程を有する請求項1ないし28のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  30. 前記冷却工程における前記混練物の冷却速度は、−1℃/秒より速いものである請求項29に記載のトナーの製造方法。
  31. 前記混練工程の終了時から前記冷却工程が完了するまでに要する時間は、60秒以下である請求項29または30に記載のトナーの製造方法。
  32. 前記冷却工程の後に、前記混練物を粉砕する粉砕工程を有し、その後、熱球形化工程を有するものである請求項29ないし31のいずれかに記載のトナーの製造方法。
  33. 前記熱球形化工程時における雰囲気の温度が、200〜400℃である請求項32に記載のトナーの製造方法。
  34. 前記熱球形化工程により、下記式(I)で表される、前記トナーの平均円形度Rを0.94〜0.98にする請求項32または33に記載のトナーの製造方法。
    R=L/L・・・(I)
    (ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
  35. 請求項1ないし34のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とするトナー。
  36. 前記トナーの平均粒径が3〜12μmである請求項35に記載のトナー。
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JP2009063992A (ja) * 2007-04-26 2009-03-26 Kao Corp 電子写真用トナーの製造方法
JP2010055019A (ja) * 2008-08-29 2010-03-11 Sanyo Chem Ind Ltd トナー組成物

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