JP2008081685A - 一液型エポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 貯蔵安定性・硬化性・生産性・作業性等の取扱い性に優れ、且つ二液型エポキシ樹脂組成物と同様に均質で良好な硬化物特性を与える一液型エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 1分子内にエポキシ基を2個以上有する液状エポキシ樹脂(A)、オニウム塩分子化合物をトリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物で反応させて得られる潜在性硬化剤(B)を必須成分とし、(A)100重量部に対して(B)の配合量が5〜50重量部、であることを特徴とする一液エポキシ樹脂組成物。
【選択図】 図1
【解決手段】 1分子内にエポキシ基を2個以上有する液状エポキシ樹脂(A)、オニウム塩分子化合物をトリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物で反応させて得られる潜在性硬化剤(B)を必須成分とし、(A)100重量部に対して(B)の配合量が5〜50重量部、であることを特徴とする一液エポキシ樹脂組成物。
【選択図】 図1
Description
本発明は、本発明は、一液型エポキシ樹脂組成物に関するものである。
エポキシ樹脂は、その硬化物が、電気的特性、機械的特性、耐熱性、耐薬品性及び接着性等に優れた性能を有することから、電子・電気部品用絶縁材料、接着剤及び塗料等の幅広い用途に利用されている。現在、一般的に使用されている液状エポキシ樹脂組成物においては、使用直前に、エポキシ樹脂成分と硬化剤成分とを均一混合する、いわゆる二液型エポキシ樹脂組成物と呼ばれるタイプが多い。二液型エポキシ樹脂組成物は、室温或いはそれよりも低い温度条件下でも硬化可能であり、多種多様な特性を発現させ易く、ミクロな部分まで均質な硬化物を得ることが容易である。その反面、エポキシ樹脂成分と硬化剤成分とを、別個に保管し、使用直前に、これら二つの成分を正確に計量し、十分に均一混合する必要がある為に、保管やその取扱いが煩雑である難点がある。
また、二液型液状エポキシ樹脂組成物においては、エポキシ樹脂成分と硬化剤成分との配合物は可使時間が限られており、予め大量に混合しておくことはできないため、使用の都度の配合頻度が多くなり、作業効率低下は避けられない。その上、この配合物は、ポットライフが短く、長時間の保管ができないため、使用残りの配合された樹脂組成物は廃棄せねばならず、無用のコスト・廃棄物発生の観点からも問題がある。
この様な二液型エポキシ樹脂組成物の問題点を解決する為、これまでに、幾つかの一液型エポキシ樹脂組成物用の潜在性硬化剤が提案されてきた。例えば、ジシアンジアミド、BF3アミン錯体及びイミダゾール化合物誘導体等の潜在性硬化剤を、エポキシ樹脂に配合したものが実用化されている。
しかし、これら潜在性硬化剤は、一般的に150℃以上の高い硬化温度を必要とし、硬化に高温又は長時間必要であり、硬化促進剤の併用などにより、硬化温度を低下させようとすると貯蔵安定性が損なわれ、室温での貯蔵安定性が不十分となるため、0℃以下の冷凍保管や通常の冷蔵庫(約0〜15℃)保管など低温での貯蔵を余儀なくされ、室温のポットライフを保持しながら、高い硬化性と優れた貯蔵安定性を両立し得る組成物が強く求められていた。
この様な二液型エポキシ樹脂組成物の問題点を解決する為、これまでに、幾つかの一液型エポキシ樹脂組成物用の潜在性硬化剤が提案されてきた。例えば、ジシアンジアミド、BF3アミン錯体及びイミダゾール化合物誘導体等の潜在性硬化剤を、エポキシ樹脂に配合したものが実用化されている。
しかし、これら潜在性硬化剤は、一般的に150℃以上の高い硬化温度を必要とし、硬化に高温又は長時間必要であり、硬化促進剤の併用などにより、硬化温度を低下させようとすると貯蔵安定性が損なわれ、室温での貯蔵安定性が不十分となるため、0℃以下の冷凍保管や通常の冷蔵庫(約0〜15℃)保管など低温での貯蔵を余儀なくされ、室温のポットライフを保持しながら、高い硬化性と優れた貯蔵安定性を両立し得る組成物が強く求められていた。
また、フィルム状成形品や、樹脂を基材に含浸した形態の製品を得る場合、有機溶剤や反応性希釈剤等を含有した配合物として取り扱う場合が多く、従来型の潜在性硬化剤をかかる配合品の硬化剤として用いた場合、十分な貯蔵安定性が得られず、貯蔵安定性の面から改善が求められていた。
これらの潜在性硬化剤の問題を解決する目的で、エポキシ樹脂と硬化剤とを完全に遮蔽する為に、硬化剤のマイクロカプセル化が提案されており、マイクロカプセル化の手法としては、微粉末硬化剤粒子の面層の官能基を他の反応性物質によりブロックする方法(例えば、特許文献1〜2参照。)、或いは、微粉末硬化剤粒子表面を熱可塑性樹脂等で被覆する方法(例えば、特許文献3参照。)等がある。
しかしながら、マイクロカプセル化された潜在性硬化剤を用いる場合、貯蔵安定性と十分な低温硬化性を両立するためには、精密な膜厚の制御が必要であり、また、撹拌混合装置を用いて、エポキシ樹脂の中に、このマイクロカプセル化硬化剤を十分に均一分散混合する場合や、マイクロカプセル化硬化剤と無機充填材とを共存させ、これを混合する際にには、機械的剪断力や機械的摺動により、マイクロカプセル被膜の剥離・破壊を促進し、一液型エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を損なうばかりか、注型時の粘度の上昇・ゲル化等のトラブルの原因となる。
上記問題を改善する目的で、硬化抑制剤として、ホウ酸エステル化合物を樹脂組成物に直接配合し、潜在性硬化剤と併用する手法も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。これにより、組成物の保存安定性、特に高温時における保存安定性を改善することができるが、例えば、安価なホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル及びホウ酸トリブチルなどの低級ホウ酸エステル化合物は、揮発性が高いため、特に中高温時における組成物の保存安定性に対しては、その効果が充分ではなく、充分な効果を得るために添加量を高めると、硬化性の低下や、成形品のボイド・ひけが発生するなどの問題もある。また、環状ホウ酸エステル化合物などのより揮発性の低いホウ酸エステル化合物を併用すると、より少添加量で保存安定性の改善に効果が得られるが、コストが高い問題もある。
このように、一液型エポキシ樹脂組成物用潜在性硬化剤の実用化に当たっては、硬化性やポットライフ以外にも、生産性、作業性及び取扱い性などの面で、未だ数々の課題を有している。
特開昭58−83023号公報
特開昭64−70523号公報
特開平06−73163号公報
特開2001−316451号公報
本発明は、前述したような従来の技術に基づく一液型エポキシ樹脂組成物に於ける諸々の課題を解決する為に、種々検討を重ねた結果なされたものであり、貯蔵安定性・硬化性・生産性・作業性等の取扱い性に優れ、且つ二液型エポキシ樹脂組成物と同様に均質で良好な硬化物特性を与える一液型エポキシ樹脂組成物を提供するものである。
本発明者等は従来の技術に於ける一液型エポキシ樹脂組成物の有する課題を克服し、しかも一液型エポキシ樹脂組成物としての利点を十分に発揮することができる一液型エポキシ樹脂組成物を開発する為、鋭意研究を重ね、本発明を完成するに至ったものである。
このような目的は、下記の本発明(1)〜(5)により達成される。
(1)1分子内にエポキシ基を2個以上有する液状エポキシ樹脂(A)、一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物とトリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物とで反応させて得られる潜在性硬化剤(B)を必須成分とし、前記1分子内にエポキシ基を2個以上有する液状エポキシ樹脂(A)100重量部に対して前記潜在性硬化剤(B)の配合量が5〜50重量部、であることを特徴とする一液型エポキシ樹脂組成物。
(1)1分子内にエポキシ基を2個以上有する液状エポキシ樹脂(A)、一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物とトリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物とで反応させて得られる潜在性硬化剤(B)を必須成分とし、前記1分子内にエポキシ基を2個以上有する液状エポキシ樹脂(A)100重量部に対して前記潜在性硬化剤(B)の配合量が5〜50重量部、であることを特徴とする一液型エポキシ樹脂組成物。
(2)前記潜在性硬化剤(B)が、前記一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物が固相の状態で、前記トリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物と反応させて得られるものである請求項1に記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
(3)前記一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物が、一般式(2)又は(3)で表されるホスホニウム塩分子化合物である請求項1又は2に記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
(3)前記一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物が、一般式(2)又は(3)で表されるホスホニウム塩分子化合物である請求項1又は2に記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
(4) 一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物が、一般式(4)又は(5)で表されるジアザビシクロアルケニウム塩分子化合物である請求項1又は2に記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
(5)前記一液型エポキシ樹脂組成物は、DSC測定による硬化発熱ピーク温度が、100℃〜150℃の範囲であって、且つ、硬化発熱開始温度と硬化発熱終了温度の差が、20℃以内である請求項1〜4のいずれか1項に記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
本発明によれば、貯蔵安定性・硬化性・生産性・作業性等の取扱い性に優れ、且つ二液型エポキシ樹脂組成物と同様に均質で良好な硬化物特性を与える一液型エポキシ樹脂組成物を提供することができる。
本発明は、1分子内にエポキシ基を2個以上有する液状エポキシ樹脂(A)、一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物とトリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物とで反応させて得られる潜在性硬化剤(B)を必須成分とし、前記1分子内にエポキシ基を2個以上有する液状エポキシ樹脂(A)100重量部に対して前記潜在性硬化剤(B)の配合量が5〜50重量部、であることを特徴とする一液型エポキシ樹脂組成物である。これにより、貯蔵安定性・硬化性・生産性・作業性等の取扱い性に優れる一液型エポキシ樹脂組成物を得ることができ、前記一液型エポキシ樹脂組成物により得られる硬化物は、二液型エポキシ樹脂組成物と同様に均質で良好な硬化物特性を有するものとなる。
以下、本発明の1分子内にエポキシ基を2個以上有する液状エポキシ樹脂(A)、一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物とトリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物とで反応させて得られる潜在性硬化剤(B)を必須成分とする一液型エポキシ樹脂組成物の好適実施形態について説明する。
本発明に用いる、1分子内にエポキシ基を2個以上有する液状エポキシ樹脂(A)としては、一分子中に平均二個以上のエポキシ基を有し、室温で液状のエポキシ樹脂であり、例えば、ビスフェノールA及びビスフェノールF等のビスフェノール化合物、レゾルシン及びハイドロキノン等の多価フェノール、フェノールノボラック並びにクレゾールノボラック等のポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとから誘導されるもの;ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びポリプロピレングリコール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンとから誘導されるもの;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート及び3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサン)カルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物;フタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びトリメリット酸等の多価カルボン酸、並びにオキシ安息香酸及びオキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとから誘導されるもの;アニリン、フェニレンジアミン及びジアミノジフェニルメタン等の多価アミノ化合物、並びに、アミノフェノール及びアミノクレゾール等のヒドロキシアミノ化合物とエピクロルヒドリンとから誘導されるものなどが挙げられる。更に、ポリウレタン骨格、ポリブタジエン骨格を有し、分子の一部に複数のエポキシ基を結合させた化合物、或いは、ヒダントイン環を有するエポキシ化合物を用いることもできる。これらのエポキシ樹脂は、1種類のみを用いても2種類以上のものを組合せて用いてもよい。
本発明において、潜在性硬化剤(B)に用いる、一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物は、アンモニウムカチオン又はホスホニウムカチオンと、芳香族ポリヒドロキシ化合物と、前記ポリヒドロキシ化合物がプロトンを放出してなるアニオンと、から構成される錯塩であり、同一分子内の芳香族基に結合している酸素原子のうち、少なくとも2つの酸素原子は互いに芳香族基炭素環上の隣接位に位置するものである。
ここで、前記一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物を構成するカチオン部において、Q+は燐原子又は窒素原子を中心元素とするカチオンである。
これらのカチオン構造としては、例えば、テトラ−n−ブチルアンモニウムカチオン、テトラ−n−オクチルアンモニウムカチオン及びベンジルトリ−n−ブチルアンモニウムカチオンなどのテトラ置換アンモニウムカチオン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセニウムカチオン及び1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネニウムカチオンなどの2環式ジアザビシクロアルケニウムカチオン、2−メチルイミダゾリウムカチオン、2−フェニルイミダゾリウムカチオン及び2−エチル−4−メチルイミダゾリウムカチオン等のイミダゾリウムカチオン、n−オクチルピリジニウムカチオン、ドデシルピリジニウムカチオン及び2,6−ジメチルピリジニウムカチオンなどのピリジニウムカチオン、2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムカチオン及びビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムカチオンなどの窒素系カチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン及びテトラ−n−オクチルホスホニウムカチオンなどのテトラアルキルホスホニウムカチオン、エチルトリフェニルホスホニウムカチオン、n−ヘキシルトリフェニルホスホニウムカチオン及びn−オクチルトリフェニルホスホニウムカチオンなどのモノアルキルトリアリールホスホニウムカチオン、テトラフェニルホスホニウムカチオン、ベンジルトリフェニルホスホニウムカチオン、3−ヒドロキシフェニルトリフェニルホスホニウムカチオン、2,5−ジヒドロキシフェニルトリフェニルホスホニウムカチオン及びテトラキス(4−メチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのテトラアリールホスホニウムカチオンなどのリン系カチオンが挙げられるが、これらカチオン構造の中でも、テトラフェニルホスホニウムカチオン、n−へキシルトリフェニルホスホニウムカチオン、3−ヒドロキシフェニルトリフェニルホスホニウムカチオン、2,5−ジヒドロキシフェニルトリフェニルホスホニウムカチオン、テトラキス(4−メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、テトラ−n−オクチルホスホニウムカチオン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネニウムカチオン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムカチオン、及びビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムカチオンが、反応活性、保存安定性の観点からより好ましい。
また、前記一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物を構成する芳香族ポリヒドロキシ化合物と、前記芳香族ポリヒドロキシ化合物がプロトンを放出してなるアニオンにおいて、基Arは置換若しくは無置換の芳香族基を示し、同一分子内の少なくとも2つの酸素原子は互いに芳香族基炭素環上の隣接位に位置する。
このような一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物を構成する、芳香族ポリヒドロキシ化合物の置換基Arの例としては、フェニレン基、ナフチレン基及びビフェニレン基などの芳香族基や、キノキサリニル基などの複素環式芳香族基が挙げられる。これらの基においては、同一分子内の少なくとも2つの酸素原子が互いに前記芳香族基炭素環上の隣接位に位置するものであり、置換基Arにおける置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の脂肪族アルキル基、フェニル基等の芳香族基、メトキシ基及びエトキシ基等のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、ハロゲン基、カルボキシル基や、カルボキシルメチル基、カルボキシルプロピル基及びカルボキシルオクチル基などのカルボン酸の脂肪族エステル基などが挙げられる。
このような一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物を構成する、芳香族ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、カテコール、4−ニトロカテコール、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,2−ジヒドロキシアントラキノン及び2,3−ジヒドロキシキノキサリンなどの2官能の芳香族ポリヒドロキシ化合物、ピロガロール、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド、3,4,5−トリヒドロキシトルエン、1,2,4−トリヒドロキシアントラキノン、没食子酸、並びに没食子酸メチル、没食子酸プロピル及び没食子酸オクチルなどの没食子酸エステル化合物などの3官能の芳香族ポリヒドロキシ化合物、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、エラグ酸、ヘキサヒドロキシベンゼン、タンニン酸及びカテコールもしくはピロガロールのカリックスアレーン化合物などの4官能以上の芳香族ポリヒドロキシ化合物が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、没食子酸メチル、没食子酸プロピル及び没食子酸オクチルなどの没食子酸エステル化合物が、反応活性、保存安定性の観点からより好ましい。
また、前記一般式(1)で表されるオニウム塩化合物を構成する芳香族ポリヒドロキシ化合物のアニオンは、上記ポリヒドロキシ化合物がプロトンを放出してなるものである。
また、前記一般式(1)で表されるオニウム塩化合物を構成する芳香族ポリヒドロキシ化合物のアニオンは、上記ポリヒドロキシ化合物がプロトンを放出してなるものである。
前記一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物において、nは2〜12の整数、aは0.5〜1.5の値を示す。nが2未満であると、前記アニオン中の水酸基同士の水素結合力により分子化合物を形成することが困難となり、低温度領域で、塩の解離活性化が起こりやすくなるため潜伏性が低下し好ましくない。また、nが8を超えると、水素結合が強くなりすぎて、硬化温度で、塩の解離活性化が起こりにくくなるため、活性が低下してしまい好ましくない。潜伏性と活性の両立の観点から、nが2〜4が好ましい。
aが0.5未満の場合、前記アニオン中の水酸基同士の水素結合力により分子化合物を形成することが困難となり、低温度領域で塩の解離活性化が起こりやすくなるため、潜伏性が低下し好ましくない。また、aが1.5を超えると、分子化合物が不安定化して、塩の解離活性化が起こりやすくなり、潜伏性が低下し好ましくない。
aが0.5未満の場合、前記アニオン中の水酸基同士の水素結合力により分子化合物を形成することが困難となり、低温度領域で塩の解離活性化が起こりやすくなるため、潜伏性が低下し好ましくない。また、aが1.5を超えると、分子化合物が不安定化して、塩の解離活性化が起こりやすくなり、潜伏性が低下し好ましくない。
また、これらのオニウム塩分子化合物のうち、より好ましい分子化合物としては、前記一般式(2)又は(3)で表される、第4級ホスホニウム塩分子化合物、および、一般式式(4)又は(5)で表される、ジアザビシクロアルケニウム塩分子化合物を挙げることができ、該分子化合物は、ホスホニウムカチオン、又はジアザビシクロアルケニウムカチオンと、2官能又は3官能の芳香族ポリヒドロキシ化合物と、前記2官能又は3官能の芳香族ポリヒドロキシ化合物がプロトンを放出してなるアニオンと、から構成されるものである。
ここで、前記一般式(2)又は(3)で表される第4級ホスホニウム塩分子化合物を構成するカチオン部において、燐原子に結合する置換基、R1、R2、R3及びR4あるいはR5、R6、R7及びR8は、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環又は複素環を有する有機基あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を示し、これらは、互いに同一でも異なっていてもよい。
これらの置換基R1〜R4又はR5〜R8としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基及びベンジル基などの置換もしくは無置換の芳香環を有する有機基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピペリジル基、インドリル基、モルフォリニル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾリル基及びオキサゾリル基などの置換もしくは無置換の複素環を有する有機基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基及びシクロヘキシル基などの置換もしくは無置換の脂肪族基が挙げられ、反応活性や安定性の点から、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基及びヒドロキシナフチル基などの置換もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。なお、前記芳香環を有する有機基、複素環を有する有機基及び脂肪族基における置換基としては、メチル基、エチル基、メトキシ基及び水酸基などが挙げられる。
前記一般式(2)又は(3)で表される、第4級ホスホニウム塩分子化合物を構成するカチオン部において、カチオン構造としては、例えば、テトラブチルホスホニウムカチオン及びテトラ−n−オクチルホスホニウムカチオンなどのテトラアルキルホスホニウムカチオン、エチルトリフェニルホスホニウムカチオン、n−ヘキシルトリフェニルホスホニウムカチオン及びn−オクチルトリフェニルホスホニウムカチオンなどのモノアルキルトリアリールホスホニウムカチオン、テトラフェニルホスホニウムカチオン、ベンジルトリフェニルホスホニウムカチオン、3−ヒドロキシフェニルトリフェニルホスホニウムカチオン、2,5−ジヒドロキシフェニルトリフェニルホスホニウムカチオン及びテトラキス(4−メチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのテトラアリールホスホニウムカチオンなどのリン系カチオンが挙げられるが、これらカチオン構造の中でも、テトラフェニルホスホニウムカチオン、3−ヒドロキシフェニルトリフェニルホスホニウムカチオン、2,5−ジヒドロキシフェニルトリフェニルホスホニウムカチオン、テトラキス(4−メチルフェニル)ホスホニウムカチオン及びn−オクチルトリフェニルホスホニウムカチオンが、反応活性、熱安定性の観点からより好ましい。
また、前記一般式(4)又は(5)で表されるジアザビシクロアルケニウム塩分子化合物を構成するカチオン部において、式中、nおよびmは、3〜7の整数を表す。R9およびR10は、水素原子、又は置換もしくは無置換の芳香環を有する有機基、あるいは脂肪族基を示す。
これらの置換基R9及びR10としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、及びプロピル基などの脂肪族基、ベンジル基、フェニル基メトキシフェニル基、メチルフェニル基、シアノフェニル基、及びニトロフェニル基などの置換もしくは無置換の芳香環を有する有機基が挙げられ、反応活性や安定性の点から、水素原子、メチル基がより好ましい。nおよびmは、コストおよび反応活性の点から、3〜5の整数がより好ましい。
前記一般式(4)又は(5)で表される、ジアザビシクロアルケニウム塩分子化合物を構成するカチオン部において、カチオン構造としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムカチオン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネニウムカチオン、6−ジメチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムカチオン、N−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムカチオン、及びN−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムカチオンなどが挙げられるが、これらカチオン構造の中でも、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムカチオン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネニウムカチオンが、反応活性、コストの観点からより好ましい。
また、前記一般式(2)又は(3)で表される、第4級ホスホニウム塩分子化合物、及び前記一般式(4)又は(5)で表される、ジアザビシクロアルケニウム塩分子化合物を構成する、2官能又は3官能のポリヒドロキシ化合物において、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は芳香族基を示し、同一分子内の少なくとも2つの酸素原子は互いに芳香族基炭素環上の隣接位に位置する。
このようなAr1、Ar2、Ar3及びAr4の例としては、前記一般式(1)においてArとしての芳香族基で挙げられたものと同様に、フェニレン基、ナフチレン基及びビフェニレン基などの芳香族基や、キノキサリニル基などの複素環式芳香族基が挙げられる。これらの基においては、同一分子内の少なくとも2つの酸素原子が互いに芳香族基炭素環上の隣接位に位置するものである。
前記一般式(2)又は(3)で表される、第4級ホスホニウム塩分子化合物を構成する、2官能又は3官能のポリヒドロキシ化合物において、式中X1又はX2は、芳香族基Ar1又はAr2と結合する基である。また、前記一般式(4)又は(5)で表される、ジアザビシクロアルケニウム塩分子化合物を構成する、2官能又は3官能のポリヒドロキシ化合物において、式中X3又はX4は、芳香族基Ar3又はAr4と結合する基である。このようなX1、X2、X3及びX4としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の脂肪族アルキル基;、フェニル基等の芳香族基、メトキシ基及びエトキシ基等のアルコキシ基;、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン基、水酸基、カルボキシル基;や、メチルエステル化カルボキシル基、プロピルエステル化カルボキシル基及びオクチルエステル化カルボキシル基などの脂肪族エステル化されたカルボキシル基などが挙げられる。
このような一般式(2)又は(3)で表される、第4級ホスホニウム塩分子化合物、及び前記一般式(4)又は(5)で表される、ジアザビシクロアルケニウム塩分子化合物における、2官能又は3官能の芳香族ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、カテコール、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,2−ジヒドロキシアントラキノン及び2,3−ジヒドロキシキノキサリンなどの2官能の芳香族ポリヒドロキシ化合物、ピロガロール、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド、3,4,5−トリヒドロキシトルエン、1,2,4−トリヒドロキシアントラキノン、没食子酸、没食子酸メチル、没食子酸プロピル及び没食子酸オクチルなどの3官能の芳香族ポリヒドロキシ化合物が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン及び2,3−ジヒドロキシナフタレンが、反応活性、保存安定性、硬化物物性の観点からより好ましい。
また、一般式(2)又は(3)で表される第4級ホスホニウム塩分子化合物、及び前記一般式(4)又は(5)で表される、ジアザビシクロアルケニウム塩分子化合物を構成する、2官能又は3官能の芳香族ポリヒドロキシ化合物がプロトンを放出してなるアニオンは、上記2官能又は3官能の芳香族ポリヒドロキシ化合物がプロトンを放出してなるものである。
前記一般式(2)又は(3)で表される、第4級ホスホニウム塩分子化合物において、b又はcは0.5〜1.5の値を示す。また、前記一般式(4)又は(5)で表される、ジアザビシクロアルケニウム塩分子化合物において、d又はeは0.5〜1.5の値を示す。これら、b、c、d及びeが0.5未満の場合、前記アニオン中の水酸基同士の水素結合力により分子化合物を形成することが困難となり、低温域で塩の解離活性化が起こりやすくなるため、潜伏性が低下し好ましくない。また、b、c、d及びeが1.5を超えると、分子化合物が不安定化して、塩の解離活性化が起こりやすくなり、潜伏性が低下し好ましくない。
本発明に用いる潜在性化合物(B)において、トリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物との反応に用いるオニウム塩分子化合物は、オニウムハライド化合物と、オニウムハライド化合物より過剰モル量で仕込んだ芳香族ポリヒドロキシ化合物の溶液中に、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物などの最終的に脱ハロゲン化水素を助ける塩基を添加し、反応させて、最終的には、再結晶や再沈などの操作により固形分として取り出す方法や、過剰モル量で仕込んだ芳香族ポリヒドロキシ化合物の溶液中に、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンや、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネンなどの有機強塩基をアルコールなどの溶媒に溶解した溶液を添加し、反応させて、最終的には、再結晶や再沈などの操作により固形分として取り出す方法、テトラ置換ホスホニウムテトラ置換ボレートと過剰モル量で仕込んだ芳香族ポリヒドロキシ化合物を熱反応後、アルコールなどの溶媒中で加熱反応させる方法で合成可能である。
また、オニウム塩分子化合物との反応に用いるトリアルコキシシラン化合物としては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランおよび(N−フェニルアミノプロピル)トリメトキシシラン等の、置換もしくは無置換の芳香環を有するトリアルコキシシラン化合物、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランおよび3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の、置換もしくは無置換の脂肪族基を有するトリアルコキシシラン化合物、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール等の、置換若しくは無置換の複素環を有するトリアルコキシシラン化合物が挙げられる。なお、前記脂肪族基における置換基としては、グリシジル基、メルカプト基およびアミノ基などが挙げられ、前記芳香環、複素環における置換基としては、メチル基、エチル基、水酸基およびアミノ基などが挙げられる。また、オニウム塩分子化合物との反応に用いるテトラアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラキス(2−メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(2−エトキシエトキシ)シラン、テトラキス(1−メトキシ−2−プロポキシ)シラン、テトラキス(2−エチルブトキシ)シラン、テトラキス(2−n−ブトキシエトキシ)シラン、テトラキス(2−エチルヘキシロキシ)シラン、テトラキス(メトキシエトキシエトキシ)シラン等のテトラアルコキシシラン化合物が挙げられる。
ここで、本発明の一液型エポキシ樹脂組成物に用いる潜伏性硬化剤(B)において、オニウム塩分子化合物とトリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物との反応方法について説明する。
オニウム塩分子化合物とトリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物との反応方法としては、例えば、前記オニウム塩分子化合物と、トリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物とを混合し、前記オニウム塩分子化合物が固相で分散した状態で、攪拌しながら加熱反応する方法を挙げることができ、かかる製造方法により、容易かつ高収率で、オニウム塩分子化合物粒子の表面部分がケイ素変性された目的の潜在性硬化剤(B)を得ることが可能である。
上記の反応は、無溶媒下でも進行するが、有機溶媒中で反応することが好ましく、メタノール、エタノール及びプロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトン及びメチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン及びメシチレンなどの炭化水素系溶媒、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスフホキシド及びN−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられるが、反応物の収率や精製の作業性の観点から、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン及びメシチレンなどの炭化水素系溶媒を用いることがより好ましい。
上記の反応は、オニウム塩分子化合物と、トリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物とを、モル比で1:0.1〜1:5モル程度仕込み、反応させることが、反応性、コスト、の観点から好ましく、さらに好ましくは、モル比が1:0.5〜1:2の範囲である。モル比1:5を超える範囲であっても、反応は進行し、潜伏性触媒として使用可能である。
上記の反応における反応温度は、室温下においても緩やかに進行するが、短時間で効率よく所望の潜伏性触媒を得るために、溶媒やトリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物の沸点を超えない範囲で、例えば、50℃〜150℃で加熱反応を行うことが好ましい。
また、上記の反応において、オニウム塩分子化合物が反応溶媒に溶解しない不均一状態において、トリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物と反応することも可能であり、反応物回収の作業性や収率の面から好ましく用いることができる。
上記の反応により得られる反応物は、冷却や貧溶媒への再沈殿により析出した沈殿物を濾過し、前記アルコール系溶媒、エーテル系溶媒及び炭化水素系溶媒など、トリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物を溶解する溶媒で、適宜洗浄することにより、精製して純度を上げることも可能である。
なお、上述の潜在性硬化剤の反応方法については、上記反応方法が一般的であるが、これらに何ら限定されるものではない。
上記で得られた潜在性硬化剤(B)は、高温においては樹脂成分と反応しながら相溶して活性を示し、反応性に優れたエポキシ樹脂硬化剤として機能するが、低温領域においては樹脂に相溶せず、また硬化剤表面のトリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物によるケイ素変性により低温活性を抑制するため活性を示さず、エポキシ樹脂組成物の保存安定性に優れる。また、従来の、ホウ酸エステル添加型の組成物においては、ホウ酸エステル化合物の揮発性が高いため、特に中高温領域における組成物の保存安定性に対しては、充分な効果が得られないが、本発明のトリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物によるケイ素変性オニウム塩分子化合物からなる潜在性硬化剤(B)を用いた一液型エポキシ樹脂組成物においては、中高温域において、より良好な保存安定性を得ることができる。
上記オニウム塩分子化合物と、トリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物との反応により得られた潜在性硬化剤(B)の配合量としては、液状エポキシ樹脂(A)100重量部に対して5〜50重量部であることが好ましく、さらに好ましくは10〜30重量部である。これにより、組成物の硬化性に影響を与えることなく、組成物の保存安定性を向上させることができ、さらに良好な硬化物物性を発現することができる。配合量は、前記範囲外でも使用できるが、前記下限値未満では、十分な硬化性や硬化物物性が得られないことがあり、一方、配合量が前記上限値を超えると、保存安定性や硬化物物性が低下することがある。
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物は、DSCにより測定される硬化発熱のピーク温度が、100℃〜150℃の範囲であって、且つ、硬化発熱開始温度と硬化発熱終了温度の差が、20℃以内であることが好ましい。前記範囲外でも使用できるが、硬化発熱のピークが100℃未満であると、注型時や充填時に硬化反応が進行することにより作業性が低下することがあり、また、低温領域で硬化反応が徐々に進行することにより、流動性や保存性の低下がおこることがある。硬化発熱のピークが150℃を越えると、低温短時間硬化することができず、硬化物物性や信頼性が低下することがある。更に硬化発熱開始温度と硬化発熱終了温度の差は、20℃以内であることが好ましく、差が20℃を超えると、速硬化性と流動性、保存性が両立した一液エポキシ樹脂組成物が得られないことがある。より好ましいDSC硬化発熱のピーク温度の差としては、10〜20℃である。本発明の組成物のDSC硬化発熱開始温度、DSC硬化発熱ピーク温度、DSC硬化発熱終了温度の値は、窒素気流下、昇温温度10℃/分で行った際のDSC測定データから、JIS K7121の方法により算出した値である。
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物には、前記液状エポキシ樹脂(A)、前記潜在性硬化剤(B)のほか、必要に応じて、無機充填材(C)を配合することができる。これにより、組成物に耐熱性等を付与することができる。
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物に、任意に用いられる無機充填材としては、通常のエポキシ樹脂組成物に使用される公知の無機充填材が使用でき、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、結晶シリカ、熔融シリカ、無定形シリカ、アルミナ、水和アルミナ、マグネシア、タルク、クレー、セラミック粉末、ガラス繊維粉末等が挙げられる。これらの無機充填材より、1種類のもののみを用いても、2種類以上のものを組合せ用いてもよい。
上記無機充填材(C)の含有量(配合量)としては、使用する無機充填材の種類、あるいは組成物に付与する特性などにより異なり、特に限定されないが、前記液状エポキシ樹脂(A)に対して、10〜300重量%とすることが好ましい。前記含有量(配合量)の範囲外でも使用できるが、前記下限値未満では配合の効果が充分でないことがあり、一方、配合量が前記上限値を超えると、粘度が上昇し、作業性が低下することがある。
更に、充填材として、前記無機充填材(C)の他に、必要により、硬化した熱硬化性樹脂粉末、熱可塑性樹脂粉末等の有機充填材、天然及び/又は合成繊維粉末等の補強材を加えても良い。
更に、充填材として、前記無機充填材(C)の他に、必要により、硬化した熱硬化性樹脂粉末、熱可塑性樹脂粉末等の有機充填材、天然及び/又は合成繊維粉末等の補強材を加えても良い。
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物には、以上に説明した成分の他に、必要により、通常のエポキシ樹脂組成物に添加剤を加えてもよい。即ち、反応性稀釈剤、非反応性稀釈剤、可塑剤、溶剤、マイクロカプセル化されていないエポキシ樹脂硬化剤、硬化触媒、染料、顔料、シラン等の表面処理剤、湿潤剤、レベリング剤、チキソトロピック性付与剤、消泡剤等である。
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物の製造方法としては、通常のエポキシ樹脂組成物の製造方法と同様な一般的な撹拌混合設備と製造条件が適用できる。使用される設備としては、ミキシングロール、ディゾルバ、プラネタリミキサ、ニーダ及び押出し機等が挙げられる。製造条件としては、液状エポキシ樹脂等を溶解及び/又は低粘度化し撹拌混合効率を向上させる為に加熱してもよい。又、摩擦発熱、反応発熱等を除去する為に冷却してもよい。撹拌混合の時間は必要により定めればよく、特に制約されることはない。
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物は、特に100℃以上の硬化温度において優れた速硬化性および良好な硬化物物性を与えるとともに、常温における保存安定性に優れ、また、100℃以下における熱安定性が良好であり、従来材料と比較してより高温でポッティングや含浸ができるなど作業性に優れ、特に半導体封止用および半導体パッケージ実装用のアンダーフィル材として好適に用いることができるが、これら用途に限定されるものではない。
上記アンダーフィル材としては、ICチップなどの電子部品と電子部品搭載用基板とを含んで構成される半導体装置において、前記電子部品と前記電子部品搭載用基板の間に間隙を有し、前記隙間が、上記アンダーフィル材の硬化物によって、充填接着して使用される。上記アンダーフィル材を、前記電子部品と前記電子部品搭載用基板の間にできた間隙に、充填する際は、電子部品又は電子部品搭載用基板の外周に沿って塗布し、毛細管現象を利用して充填するキャピラリーフロー方式が主流であり、よりアンダーフィル材の充填性を向上させるために、充填時に硬化反応が進行しない程度に加熱・低粘度化して浸透させる要求が高まっており、本発明の一液型エポキシ樹脂組成物は潜在性に優れる点において特に好適に用いることができる。
以下、本発明の実施例にて更に詳しく説明する。
[潜在性硬化剤の合成]
(合成例1)
冷却管および撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:200mL)に、カテコール8.81g(0.080mol)、テトラフェニルホスホニウムブロミド16.77g(0.040mol)およびメタノール100mLを仕込み攪拌し均一に溶解させた。予め水酸化ナトリウム1.60g(0.04mol)を10mLのメタノールに溶解した水酸化ナトリウム溶液を、フラスコ内に徐々に滴下すると結晶が析出した。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥し、この化合物をX1とした。化合物X1を、1H−NMR分析及び元素分析で分析した結果、下記式(6)で表されるホスホニウム塩分子化合物であることを確認した。
(合成例1)
冷却管および撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:200mL)に、カテコール8.81g(0.080mol)、テトラフェニルホスホニウムブロミド16.77g(0.040mol)およびメタノール100mLを仕込み攪拌し均一に溶解させた。予め水酸化ナトリウム1.60g(0.04mol)を10mLのメタノールに溶解した水酸化ナトリウム溶液を、フラスコ内に徐々に滴下すると結晶が析出した。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥し、この化合物をX1とした。化合物X1を、1H−NMR分析及び元素分析で分析した結果、下記式(6)で表されるホスホニウム塩分子化合物であることを確認した。
次に、冷却管および撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:200mL)に、上記で得た化合物X1を11.16g(0.020mol)、フェニルトリメトキシシラン1.98g(0.010mol)、n−ヘキサン50mLを仕込み、攪拌して、化合物X1の結晶粒子が不均一分散した状態で、還流温度において1時間加熱反応した。生成物を濾過し、50mLのn−ヘキサンで2回洗浄した。その後、濾過、真空乾燥し、白色粉末11.83gを得た。この生成物をB1とした。
生成物B1を、FT−IR分析(ATR法(全反射測定法))、元素分析及びマススペクトル分析で分析した分析結果より、得られた生成物B1は、化合物X1粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ホスホニウム分子化合物であることが確認された。反応物X1のFT−IR(ATR法)スペクトルを図1に、生成物B1のFT−IR(ATR法)スペクトルを図2に示す。元素分析から算出されたケイ素含有率は、1.45%であった。
生成物B1を、FT−IR分析(ATR法(全反射測定法))、元素分析及びマススペクトル分析で分析した分析結果より、得られた生成物B1は、化合物X1粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ホスホニウム分子化合物であることが確認された。反応物X1のFT−IR(ATR法)スペクトルを図1に、生成物B1のFT−IR(ATR法)スペクトルを図2に示す。元素分析から算出されたケイ素含有率は、1.45%であった。
(合成例2)
カテコールに代わり、2,3−ジヒドロキシナフタレン12.81g(0.080mol)を用いた以外は、合成例1と同様にして、ホスホニウム塩分子化合物を得た。この化合物をX2とした。化合物X2は下記式(7)で表されるホスホニウム塩分子化合物であることを確認した。
カテコールに代わり、2,3−ジヒドロキシナフタレン12.81g(0.080mol)を用いた以外は、合成例1と同様にして、ホスホニウム塩分子化合物を得た。この化合物をX2とした。化合物X2は下記式(7)で表されるホスホニウム塩分子化合物であることを確認した。
化合物X1に代わり、化合物X2:13.16g(0.020mol)、フェニルトリメトキシシランに代わり、フェニルトリエトキシシラン2.40g(0.010mol)、を用いた以外は、合成例1と同様にして、白色粉末13.82gを得た。この生成物をB2とした。
合成例1と同様に分析を行った結果、得られた生成物B2は、化合物X2粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ホスホニウム分子化合物であることが確認された。元素分析から算出されたケイ素含有率は、1.18%であった。
合成例1と同様に分析を行った結果、得られた生成物B2は、化合物X2粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ホスホニウム分子化合物であることが確認された。元素分析から算出されたケイ素含有率は、1.18%であった。
(合成例3)
カテコールに代わり、ピロガロール10.09g(0.080mol)、テトラフェニルホスホニウムブロミドに代わり、n−へキシルトリフェニルホスホニウムブロミド17.17g(0.040mol)を用いた以外は、合成例1と同様にして、ホスホニウム塩分子化合物を得た。この化合物をX3とした。化合物X3は下記式(8)で表されるホスホニウム塩分子化合物であることを確認した。
カテコールに代わり、ピロガロール10.09g(0.080mol)、テトラフェニルホスホニウムブロミドに代わり、n−へキシルトリフェニルホスホニウムブロミド17.17g(0.040mol)を用いた以外は、合成例1と同様にして、ホスホニウム塩分子化合物を得た。この化合物をX3とした。化合物X3は下記式(8)で表されるホスホニウム塩分子化合物であることを確認した。
化合物X1に代わり、化合物X3:12.00g(0.020mol)、フェニルトリメトキシシランに代わり、メチルトリエトキシシラン1.78g(0.010mol)、を用いた以外は、合成例1と同様にして、白色粉末12.24gを得た。この生成物をB3とした。
合成例1と同様に分析を行った結果、得られた生成物B3は、化合物X3粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ホスホニウム分子化合物であることが確認された。元素分析から算出されたケイ素含有率は、1.27%であった。
合成例1と同様に分析を行った結果、得られた生成物B3は、化合物X3粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ホスホニウム分子化合物であることが確認された。元素分析から算出されたケイ素含有率は、1.27%であった。
(合成例4)
カテコールに代わり、没食子酸メチル14.73g(0.080mol)、テトラフェニルフェニルホスホニウムブロミドに代わり、(3−ヒドロキシフェニル)トリフェニルホスホニウムブロミド17.41g(0.040mol)を用いた以外は、合成例1と同様にして、ホスホニウム塩分子化合物を得た。この化合物をX4とした。化合物X4は下記式(9)で表されるホスホニウム塩分子化合物であることを確認した。
カテコールに代わり、没食子酸メチル14.73g(0.080mol)、テトラフェニルフェニルホスホニウムブロミドに代わり、(3−ヒドロキシフェニル)トリフェニルホスホニウムブロミド17.41g(0.040mol)を用いた以外は、合成例1と同様にして、ホスホニウム塩分子化合物を得た。この化合物をX4とした。化合物X4は下記式(9)で表されるホスホニウム塩分子化合物であることを確認した。
化合物X1に代わり、化合物X4:15.92g(0.020mol)、フェニルトリメトキシシランに代わり、ビニルトリメトキシシラン1.90g(0.010mol)、n−ヘキサンに代わり、n−ヘプタン50mLを用いた以外は、合成例1と同様にして、白色粉末16.24gを得た。この生成物をB4とした。
合成例1と同様に分析を行った結果、得られた生成物B4は、化合物X4粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ホスホニウム分子化合物であることが確認された。元素分析から算出されたケイ素含有率は、1.23%であった。
合成例1と同様に分析を行った結果、得られた生成物B4は、化合物X4粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ホスホニウム分子化合物であることが確認された。元素分析から算出されたケイ素含有率は、1.23%であった。
(合成例5)
冷却管および撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:200mL)に、2,3−ジヒドロキシナフタレン12.81g(0.080mol)およびメタノール100mLを仕込み攪拌し均一に溶解させた。予め1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン4.97g(0.04mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下、フラスコ内に徐々に滴下すると結晶が析出した。析出した結晶を濾過、アセトン洗浄、真空乾燥し、この化合物をX5とした。化合物X5を、1H−NMR分析及び元素分析で分析した結果、下記式(10)で表されるジアザビシクロアルケニウム塩分子化合物であることを確認した。
冷却管および撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:200mL)に、2,3−ジヒドロキシナフタレン12.81g(0.080mol)およびメタノール100mLを仕込み攪拌し均一に溶解させた。予め1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン4.97g(0.04mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下、フラスコ内に徐々に滴下すると結晶が析出した。析出した結晶を濾過、アセトン洗浄、真空乾燥し、この化合物をX5とした。化合物X5を、1H−NMR分析及び元素分析で分析した結果、下記式(10)で表されるジアザビシクロアルケニウム塩分子化合物であることを確認した。
化合物X1に代わり、化合物X5:8.88g(0.020mol)、フェニルトリメトキシシランに代わり、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン2.36g(0.010mol)、n−ヘキサンに代わりn−ヘプタン50mL、を用いた以外は、合成例1と同様にして、白色粉末9.68gを得た。この生成物をB5とした。
合成例1と同様に分析を行った結果、得られた生成物B5は、化合物X5粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ジアザビシクロアルケニウム分子化合物であることが確認された。元素分析から算出されたケイ素含有率は、1.49%であった。
合成例1と同様に分析を行った結果、得られた生成物B5は、化合物X5粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ジアザビシクロアルケニウム分子化合物であることが確認された。元素分析から算出されたケイ素含有率は、1.49%であった。
(合成例6)
合成例1で得られた化合物X1:11.16g(0.020mol)を用い、フェニルトリメトキシシランに代わり、テトラメトキシシラン1.52g(0.010mol)を用いた以外は、合成例1と同様にして、白色粉末11.27gを得た。この生成物をB6とした。
合成例1と同様に分析を行った結果、得られた生成物B6は、化合物X1粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ホスホニウム分子化合物であることが確認された。生成物B6のFT−IR(ATR法)スペクトルを図3に示す。元素分析から算出されたケイ素含有率は、0.81%であった。
合成例1で得られた化合物X1:11.16g(0.020mol)を用い、フェニルトリメトキシシランに代わり、テトラメトキシシラン1.52g(0.010mol)を用いた以外は、合成例1と同様にして、白色粉末11.27gを得た。この生成物をB6とした。
合成例1と同様に分析を行った結果、得られた生成物B6は、化合物X1粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ホスホニウム分子化合物であることが確認された。生成物B6のFT−IR(ATR法)スペクトルを図3に示す。元素分析から算出されたケイ素含有率は、0.81%であった。
(合成例7)
カテコールに代わり、1,2−ジヒドロキシナフタレン12.81g(0.080mol)、テトラフェニルホスホニウムブロミドに代わり、テトラ−n−オクチルホスホニウムブロミド22.55g(0.040mol)を用いた以外は、合成例1と同様にして、ホスホニウム塩分子化合物を得た。この化合物をX6とした。化合物X6は下記式(11)で表されるホスホニウム塩分子化合物であることを確認した。
カテコールに代わり、1,2−ジヒドロキシナフタレン12.81g(0.080mol)、テトラフェニルホスホニウムブロミドに代わり、テトラ−n−オクチルホスホニウムブロミド22.55g(0.040mol)を用いた以外は、合成例1と同様にして、ホスホニウム塩分子化合物を得た。この化合物をX6とした。化合物X6は下記式(11)で表されるホスホニウム塩分子化合物であることを確認した。
化合物X1に代わり、化合物X6:15.42g(0.020mol)を用い、フェニルトリメトキシシランに代わり、テトラメトキシシラン1.52g(0.010mol)を用いた以外は、合成例1と同様にして、白色粉末15.57gを得た。この生成物をB7とした。
合成例1と同様に分析を行った結果、得られた生成物B7は、化合物X6粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ホスホニウム分子化合物であることが確認された。元素分析から算出されたケイ素含有率は、0.71%であった。
合成例1と同様に分析を行った結果、得られた生成物B7は、化合物X6粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ホスホニウム分子化合物であることが確認された。元素分析から算出されたケイ素含有率は、0.71%であった。
(合成例8)
カテコールに代わり、1,2−ジヒドロキシナフタレン12.81g(0.080mol)、テトラフェニルホスホニウムブロミドに代わり、テトラブチルアンモニウムブロミド12.89g(0.040mol)を用いた以外は、合成例1と同様にして、アンモニウム塩分子化合物を得た。この化合物をX7とした。化合物X7は下記式(12)で表されるアンモニウム塩分子化合物であることを確認した。
カテコールに代わり、1,2−ジヒドロキシナフタレン12.81g(0.080mol)、テトラフェニルホスホニウムブロミドに代わり、テトラブチルアンモニウムブロミド12.89g(0.040mol)を用いた以外は、合成例1と同様にして、アンモニウム塩分子化合物を得た。この化合物をX7とした。化合物X7は下記式(12)で表されるアンモニウム塩分子化合物であることを確認した。
化合物X1に代わり、化合物X7:11.24g(0.020mol)を用い、フェニルトリメトキシシランに代わり、テトラメトキシシラン1.52g(0.010mol)を用いた以外は、合成例1と同様にして、白色粉末11.35gを得た。この生成物をB8とした。
合成例1と同様に分析を行った結果、得られた生成物B8は、化合物X7粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性アンモニウム分子化合物であることが確認された。元素分析から算出されたケイ素含有率は、0.76%であった。
合成例1と同様に分析を行った結果、得られた生成物B8は、化合物X7粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性アンモニウム分子化合物であることが確認された。元素分析から算出されたケイ素含有率は、0.76%であった。
(合成例9)
2,3−ジヒドロキシナフタレンに代わり、1,2−ジヒドロキシナフタレン12.81g(0.080mol)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンに代わり、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン6.09g(0.04mol)を用いた以外は、合成例5と同様にして、ジアザビシクロアルケニウム塩分子化合物を得た。この化合物をX8とした。化合物X8は下記式(13)で表されるジアザビシクロアルケニウム塩分子化合物であることを確認した。
2,3−ジヒドロキシナフタレンに代わり、1,2−ジヒドロキシナフタレン12.81g(0.080mol)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンに代わり、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン6.09g(0.04mol)を用いた以外は、合成例5と同様にして、ジアザビシクロアルケニウム塩分子化合物を得た。この化合物をX8とした。化合物X8は下記式(13)で表されるジアザビシクロアルケニウム塩分子化合物であることを確認した。
化合物X1に代わり、X8:9.44g(0.020mol)、フェニルトリメトキシシランに代わり、テトラエトキシシラン2.08g(0.010mol)、n−ヘキサンに代わり、n−ヘプタン50mLを用いた以外は、合成例1と同様にして、白色粉末9.53gを得た。この生成物をB9とした。
合成例1と同様に分析を行った結果、B9は、化合物X8粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ジアザビシクロアルケニウム分子化合物であることが確認された。元素分析から算出されたケイ素含有率は、1.08%であった。
合成例1と同様に分析を行った結果、B9は、化合物X8粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ジアザビシクロアルケニウム分子化合物であることが確認された。元素分析から算出されたケイ素含有率は、1.08%であった。
(合成例10)
化合物X1に代わり、合成例5で得られたX5:8.88g(0.020mol)を用い、フェニルトリメトキシシランに代わり、テトラエトキシシラン2.08g(0.010mol)、n−ヘキサンに代わり、n−ヘプタン50mLを用いた以外は、合成例1と同様にして、白色粉末8.97gを得た。この生成物をB10とした。
合成例1と同様に分析を行った結果、得られた生成物B10は、化合物X5粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ジアザビシクロアルケニウム分子化合物であることが確認された。元素分析から算出されたケイ素含有率は、1.19%であった。
化合物X1に代わり、合成例5で得られたX5:8.88g(0.020mol)を用い、フェニルトリメトキシシランに代わり、テトラエトキシシラン2.08g(0.010mol)、n−ヘキサンに代わり、n−ヘプタン50mLを用いた以外は、合成例1と同様にして、白色粉末8.97gを得た。この生成物をB10とした。
合成例1と同様に分析を行った結果、得られた生成物B10は、化合物X5粒子の表面部分において、キレート型Si−O結合が導入された、ケイ素変性ジアザビシクロアルケニウム分子化合物であることが確認された。元素分析から算出されたケイ素含有率は、1.19%であった。
合成例1〜10の合成結果および分析結果を表1にまとめた。
(実施例1〜10)
表2に示した配合処方に従い、液状エポキシ樹脂と潜在性硬化剤B1〜B10を配合し、十分均一分散されるまで3本ロールにかけ、一液エポキシ樹脂組成物を得た。
表2に示した配合処方に従い、液状エポキシ樹脂と潜在性硬化剤B1〜B10を配合し、十分均一分散されるまで3本ロールにかけ、一液エポキシ樹脂組成物を得た。
得られた一液樹脂組成物を下記項目について評価を行った。
(1)DSC:一液エポキシ樹脂組成物を、示差走査熱量計DSC−220U(セイコーインスツルメンツ(株)製)を用い、窒素気流下で昇温速度10℃/minで測定を行った。DSC測定データから、JIS K7121の方法に準じて、硬化発熱開始温度、硬化発熱ピーク温度、硬化発熱終了温度、硬化発熱量を算出した。また、前述の硬化発熱終了温度と硬化発熱開始温度の差を算出して併記した。硬化発熱終了温度と硬化発熱開始温度の差が小さいほど、潜伏性に優れることを示す。
(2)ゲル化時間(120℃,150℃):一液エポキシ樹脂組成物のJIS C2105に準じて、120℃および150℃のゲル化時間を測定した。ゲル化時間の値が小さいほど、速硬化性に優れ好ましい挙動であることを示す。
(3)粘度(25℃)および粘度変化率(25℃/168h):一液エポキシ樹脂組成物を、EH型粘度計(東機産業(株)製)により、ロータの型式は3度コーンを用い、温度は25℃で測定した。組成物を25℃で保存し、配合直後の粘度に対する、25℃/168時間保管後の粘度の比を測定・算出した。粘度変化率の値が小さいほど保存安定性が良好であることを示す。
(4)粘度保持時間(80℃):一液エポキシ樹脂組成物の粘度経時変化を、ポリマーレオメータ(REOLOGICA社製)により、ロータの型式は4度コーンを用い、温度は80℃で測定した。粘度が<50Pa・sを保持する時間を80℃粘度保持時間とした。保持時間が長いほど、加熱注型時の熱安定性が良好であることを示す。
(5)硬化物ガラス転移温度:一液エポキシ樹脂組成物を注型し、100℃/30min+120℃/30minの硬化条件で硬化し、樹脂板を作製した。樹脂板より試験片を作製し、ポリマーレオメータ(REOLOGICA社製)にて、昇温速度5℃/minで測定を行い、tanδピーク温度をガラス転移温度とした。ガラス転移温度が高いほど、硬化物の耐熱性が優れていることを示す。
(1)DSC:一液エポキシ樹脂組成物を、示差走査熱量計DSC−220U(セイコーインスツルメンツ(株)製)を用い、窒素気流下で昇温速度10℃/minで測定を行った。DSC測定データから、JIS K7121の方法に準じて、硬化発熱開始温度、硬化発熱ピーク温度、硬化発熱終了温度、硬化発熱量を算出した。また、前述の硬化発熱終了温度と硬化発熱開始温度の差を算出して併記した。硬化発熱終了温度と硬化発熱開始温度の差が小さいほど、潜伏性に優れることを示す。
(2)ゲル化時間(120℃,150℃):一液エポキシ樹脂組成物のJIS C2105に準じて、120℃および150℃のゲル化時間を測定した。ゲル化時間の値が小さいほど、速硬化性に優れ好ましい挙動であることを示す。
(3)粘度(25℃)および粘度変化率(25℃/168h):一液エポキシ樹脂組成物を、EH型粘度計(東機産業(株)製)により、ロータの型式は3度コーンを用い、温度は25℃で測定した。組成物を25℃で保存し、配合直後の粘度に対する、25℃/168時間保管後の粘度の比を測定・算出した。粘度変化率の値が小さいほど保存安定性が良好であることを示す。
(4)粘度保持時間(80℃):一液エポキシ樹脂組成物の粘度経時変化を、ポリマーレオメータ(REOLOGICA社製)により、ロータの型式は4度コーンを用い、温度は80℃で測定した。粘度が<50Pa・sを保持する時間を80℃粘度保持時間とした。保持時間が長いほど、加熱注型時の熱安定性が良好であることを示す。
(5)硬化物ガラス転移温度:一液エポキシ樹脂組成物を注型し、100℃/30min+120℃/30minの硬化条件で硬化し、樹脂板を作製した。樹脂板より試験片を作製し、ポリマーレオメータ(REOLOGICA社製)にて、昇温速度5℃/minで測定を行い、tanδピーク温度をガラス転移温度とした。ガラス転移温度が高いほど、硬化物の耐熱性が優れていることを示す。
(比較例1〜4)
表2に示した配合処方に従い、実施例1〜10と同様に一液エポキシ樹脂組成物を得た。得られた一液樹脂組成物について実施例同様に評価を行った。
表2に示した配合処方に従い、実施例1〜10と同様に一液エポキシ樹脂組成物を得た。得られた一液樹脂組成物について実施例同様に評価を行った。
実施例及び比較例にて製造した組成物の特性評価結果を表2に示す。
実施例1で得られた一液樹脂組成物のDSC曲線を図4に示す。
実施例6で得られた一液樹脂組成物のDSC曲線を図5に示す。
実施例6で得られた一液樹脂組成物のDSC曲線を図5に示す。
本発明の潜在性硬化剤を用いた実施例1〜10は、従来の硬化剤を用いた比較例1〜4と比較して、DSC硬化発熱ピーク温度の範囲が120℃〜150℃の範囲であり、DSC硬化発熱開始温度と発熱終了温度の差が20℃以内のシャープな硬化発熱挙動を示した。ゲル化時間(硬化性)、粘度変化率(保存安定性)、硬化物のガラス転移温度(耐熱性)を良好なレベルに保ちながら、80℃粘度保持時間が長く、熱安定性が向上することを示す。
Claims (5)
- 1分子内にエポキシ基を2個以上有する液状エポキシ樹脂(A)、一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物とトリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物とで反応させて得られる潜在性硬化剤(B)を必須成分とし、前記1分子内にエポキシ基を2個以上有する液状エポキシ樹脂(A)100重量部に対して前記潜在性硬化剤(B)の配合量が5〜50重量部、であることを特徴とする一液型エポキシ樹脂組成物。
- 前記潜在性硬化剤(B)が、前記一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物が固相の状態で、前記トリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物と反応させて得られるものである請求項1に記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
- 前記一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物が、一般式(2)又は(3)で表されるホスホニウム塩分子化合物である請求項1又は2に記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
- 前記一般式(1)で表されるオニウム塩分子化合物が、一般式(4)又は(5)で表されるジアザビシクロアルケニウム塩分子化合物である請求項1又は2に記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
- 前記一液型エポキシ樹脂組成物は、DSC測定による硬化発熱ピーク温度が、100℃〜150℃の範囲であって、且つ、硬化発熱開始温度と硬化発熱終了温度の差が、20℃以内である請求項1〜4のいずれか1項に記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
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2006
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