JP2008080385A - 鋳包み用鋳鉄部材並びにその鋳包み用鋳鉄部材の製造方法及びその鋳包み用鋳鉄部材製品 - Google Patents

鋳包み用鋳鉄部材並びにその鋳包み用鋳鉄部材の製造方法及びその鋳包み用鋳鉄部材製品 Download PDF

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Abstract

【課題】従来のシリンダライナ等の鋳包み用鋳鉄部材に比べ、アルミニウム材マトリクスとの密着性を向上させうる鋳包み用鋳鉄部材の提供を目的とする。
【解決手段】上記課題を達成するため、高圧アルミニウムダイキャスト法を用いて鋳包み加工に供される鋳鉄部材であって、当該鋳鉄部材は、その表面にアルミニウム材との密着性を向上させるための改質被覆層を備え、且つ、その表面粗さ(Ra)が5μm〜150μmであることを特徴とした鋳包み用鋳鉄部材を採用する。そして、前記改質被覆層は、アルミニウム系被覆層、マグネシウム系被覆層、スズ系被覆層、亜鉛系被覆層、銅系被覆層のいずれかを用いる。また、この改質被覆層の形成には、金属箔を用いる製造方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本件発明は、鋳包み用鋳鉄部材、その鋳包み用鋳鉄部材の製造方法及びその鋳包み用鋳鉄部材製品に関する。特に、内燃機関のシリンダライナをアルミニウムダイキャスト法で鋳ぐるんでシリンダブロックとする場合に好適な技術に関する。
従来から、自動車等の内燃機関のシリンダブロックには、軽量で熱伝達性に優れるアルミニウム合金を用いることが広く行われてきた。そして、そのシリンダブロックの内部にはピストンの収容を行うシリンダライナが内包されている。このシリンダブロック内へのシリンダライナの内包は、筒状体のシリンダをアルミニウム合金の溶湯を用いて、高圧ダイキャスト法で鋳ぐるむ(鋳包む)ことが行われてきた。即ち、一般的にシリンダライナ材質は鋳鉄が用いられ、その周囲にアルミニウム合金溶湯を注ぎ込まれる。ところが、鋳鉄製品の融点(約1200℃)とアルミニウム合金溶湯の融点(約700℃)との差が大きいため、鋳包み時に両者の間での相互拡散が起こりにくく拡散接合という観点から密着性を向上させる事は困難であった。
仮に、アルミニウム合金製シリンダブロックと鋳鉄製シリンダライナとの界面での密着性が良好に保たれていない場合には、双方の材質の熱膨張係数が大きく異なるため、エンジンを駆動させている間の熱による膨張、振動、衝撃等を受けることで、前記界面での剥離が生じやすくなり、エンジンとしての耐久性が著しく劣ることになる。
このような問題を解決しようと、特許文献1(特開平8−174188号公報)等に開示されているように、シリンダライナ(鋳鉄)の外表面に溶着性を備える金属材(Al合金系ろう材)の層を、予め溶射形成して、鋳込みに用いるアルミニウム合金との間の密着性を高める方法が開示されている。
そして、特許文献2(特開2001−55956号公報)には、シリンダライナの外周面に溝形成を行う方法として、軽合金製のシリンダブロック本体と、この本体の内面にライナーとして鋳ぐるみにより設けられた鋳鉄製の中空円筒体からなるシリンダスリーブとを有し、前記スリーブの外周面には相互に平行に延びるように溝が形成されており、前記溝の側面は相互に平行であることを特徴とするライナー付きシリンダブロックが開示されている。
また、特許文献3(特開2001−170755号公報)には、加熱された鋳型内面に塗型材を塗布し、乾燥させた後、この鋳型内に鋳鉄溶湯を鋳込んで成形する鋳ぐるみ用鋳鉄部材の製造方法において、前記塗型材として、平均粒径0.05〜0.5mmの珪砂を20〜45質量%、平均粒径0.1mm以下のシリカフラワを10〜30質量%、粘結剤を2〜10質量%、及び水を30〜60質量%混合した懸濁液を用いることを特徴とする鋳ぐるみ用鋳鉄部材の製造方法を採用することが開示されている。そして、この製造方法を採用すれば、表面粗さの最大高さRyが65〜260μm、凹凸の平均間隔Smが0.6〜1.5mmである鋳ぐるみ面を有するシリンダライナの提供が可能なことが示唆されている。
更に、特許文献4(特開2001−234806号公報)には、シリンダライナの鋳ぐるみに適用可能な方法として、鋳ぐるみ対象部品を溶融金属にて鋳ぐるむことにより鋳ぐるみ製品を製造する鋳ぐるみ方法であって、前記鋳ぐるみ対象部品を構成する金属材料とは異なる金属材料でかつ前記溶融金属の融点以下の融点を有する金属材料からなる皮膜が表面に形成された前記鋳ぐるみ対象部品に対して、該皮膜部分を前記溶融金属にて鋳ぐるむことを特徴とする鋳ぐるみ方法が開示されている。
特開平8−174188号公報 特開2001−55956号公報 特開2001−170755号公報 特開2001−234806号公報
しかしながら、特許文献1に開示の発明のように溶射法を用いることは、シリンダライナのような湾曲面を備える場合には、そのシリンダライナの外周面に均一な厚さの溶射層を設けるのが困難であり、製品としての品質バラツキが大きかった。
そして、特許文献2に開示の発明の場合、シリンダライナの外周壁に設ける凹凸として、台形溝、片側楔、両側楔、平行溝、斜め溝、螺旋加工を行う場合には、物理的な切削加工等が一般的である。ところが、これら形状の機械的加工を、シリンダライナの外周面に施そうとすると、旋盤加工を用いるのが一般的であるが加工精度を維持することが困難で、製品歩留まり及び加工コストが高いという問題があった。
また、特許文献3に開示の発明の場合、シリンダライナを製造する場合の金型内面に所定の塗型材を塗布して、所定の表面粗さをシリンダライナの外周面に形成するとしているが、塗型材の組成変動によるシリンダライナの外周面に意図的に形成した凹凸形状の変動が大きく、一定した品質の製品の供給が困難であった。また、ここでの凹凸形状では、物理的アンカー効果での密着性の向上は望めても、熱伝導性が不十分で放熱効果が得られにくいという問題があった。
更に、特許文献4に開示の発明の場合、鋳ぐるみに用いる溶融金属の融点以下の融点を有する金属材料からなる皮膜をシリンダライナの外周面に形成することになるが、その形成方法は微細金属粒子を用いた溶射又は吹きつけにて行っている。係る場合、上述の溶射と同様の問題があり、吹きつけの場合にはシリンダライナ外周面への微細金属粒子の定着率が悪く、得られる皮膜も薄くなり、生産効率の観点からの問題があった。
以上のことから分かるように、シリンダライナ等の鋳鉄部材に対し、鋳ぐるみに用いるアルミニウム合金との密着性を向上させるため、より安価で安定した生産性を得ることの出来る方法が求められてきた。
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、以下に示す鋳包み用鋳鉄部材、鋳包み用鋳鉄部材の製造方法等を採用することで、上記課題を解決できることに想到したのである。本件発明に関して述べる。
本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材: 本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材は、高圧アルミニウムダイキャスト法を用いて鋳包み加工に供される鋳鉄部材であって、当該鋳鉄部材は、その表面にアルミニウム材あるいはアルミニウム合金材との密着性を向上させるための6μm〜150μm厚さの改質被覆層を備え、且つ、その表面粗さ(Ra)が5μm〜150μmであることを特徴としたものである。
そして、本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の前記改質被覆層は、アルミニウム系被覆層、マグネシウム系被覆層、スズ系被覆層、亜鉛系被覆層、銅系被覆層のいずれかであることが好ましい。
また、本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の前記改質被覆層は、アルミニウム系被覆層、マグネシウム系被覆層、スズ系被覆層、亜鉛系被覆層、銅系被覆層を2種以上選択し、これを積層した複合層とすることも好ましい。
本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の製造方法: 本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の製造方法は、以下の工程1〜工程4を備えることを特徴とするものである。
工程1: 平均粗さ(Ra)12μm〜155μmの外表面を備える粗化処理鋳鉄部材を準備する工程。
工程2: 前記粗化処理鋳鉄部材の表面に改質被覆層を形成するための所望の金属箔を配置する工程。
工程3: 前記金属箔を接触配置した粗化処理鋳鉄部材を、改質被覆層構成材料の軟化点以上で融点以下の温度で加熱して粗化処理鋳鉄部材と改質被覆層との密着状態を得ると同時に改質被覆層の密度上昇を行って改質被覆層付鋳鉄部材とする工程。
工程4:前記改質被覆層付鋳鉄部材の表面にブラスト処理を行い、当該表面に圧縮応力を付与して、改質被覆層と粗化処理鋳鉄部材との密着性を、より強固にする密着性強化処理を行い鋳包み用鋳鉄部材とする工程。
そして、本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の製造方法の前記工程1の粗化処理鋳鉄部材は、鋳鉄部材の表面にブラスト処理を用いて粗化処理したものを準備する事が好ましい。
本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の製造方法において、前記工程2の粗化処理鋳鉄部材の表面への金属箔の配置は、アルミニウム系金属箔、マグネシウム系金属箔、スズ系金属箔、亜鉛系金属箔、銅系金属箔のいずれかを配置することが好ましい。
また、前記工程2の粗化処理鋳鉄部材表面への金属箔の配置は、アルミニウム系金属箔、マグネシウム系金属箔、スズ系金属箔、亜鉛系金属箔、銅系金属箔から選ばれる2種以上の箔を積層して配置することも好ましい。
そして、本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の製造方法において、前記工程3での加熱は、オーブン加熱、高周波誘導加熱、電気抵抗加熱のいずれかの方法を用いる事が好ましい。
本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材製品: 上述した本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材は、種々の製品に応用することが出来る。中でも、内燃機関用のシリンダライナ、ピストントレーガ、ブレーキドラムのインサートに好適である。そして、このシリンダライナを用い、これを高圧アルミニウムダイキャスト法で鋳ぐるむことで、高品質のシリンダブロックの提供が可能となる。
本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材は、その表面に一定レベルの凹凸と改質被覆層とが存在することで、物理的アンカー効果と鋳包みのアルミニウム材マトリクスとの相互拡散に形成される金属結合状態を同時に得ることによって、相互の密着性を飛躍的に向上させる。そして、本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の製造方法は、金属箔を有用に活用することで、効率よく鋳鉄部材の表面に改質被覆層を形成することが出来る。また、本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材は、鋳包み加工が多用される内燃機関用のシリンダライナ、ピストントレーガ、ブレーキドラムのインサートの製造に好適である。更に、このシリンダライナを用いると、高圧アルミニウムダイキャスト法での高品質のシリンダブロック製造が可能となる。
以下、本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材、当該鋳包み用鋳鉄部材の製造方法、本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材製品の各々の形態に関して分別して詳細に説明し、その後、本件発明に関する実施例を述べる。
本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の形態: 本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材は、高圧アルミニウムダイキャスト法を用いて鋳包み加工に供される鋳鉄部材である。ここで言うアルミニウムダイキャスト法とは、鋳包み用鋳鉄部材をダイカスト金型内に配置し、ダイカスト金型と鋳包み用鋳鉄部材との間に形成されたキャビティにアルミニウム材の溶湯を5000〜10000kgf/cmの高圧で注入して冷却凝固させ、アルミニウム材マトリクス内に鋳包み用鋳鉄部材が鋳ぐるまれ一体化した鋳包み製品とするものである。そして、このときのアルミニウム材に関しては、アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられ、より具体的にはADC10(類似合金AA B380.0)、ADC12(類似合金AA 383.0)等を用いることができるが、特段の限定はない。
そして、本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材は、その表面にアルミニウム材との密着性を向上させるための改質被覆層を備え、且つ、その表面粗さ(Ra)が5μm〜150μmである点に特徴がある。改質被覆層は、鋳包み用鋳鉄部材の表面に密着して存在するものである。
そして、この改質被覆層は、鋳込みが行われるときのアルミニウム材溶湯が凝固する過程において形成されるアルミニウム材マトリクスとの界面において相互拡散を起こす。その結果、鋳包み用鋳鉄部材の改質処理層とアルミニウム材マトリクスとの間で金属結合状態を形成し、結果として鋳包み用鋳鉄部材とアルミニウム材マトリクスとの密着性を向上させることになる。この改質被覆層には、アルミニウム系被覆層、マグネシウム系被覆層、スズ系被覆層、亜鉛系被覆層、銅系被覆層のいずれかを用いることが好ましい。いずれもアルミニウム材との相互拡散性に優れ、密着性の向上効果を顕著に発揮するからである。また、本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材は、その表面に一定の凹凸を備えており、ダイカストのときには当該凹凸部へのアルミニウム材溶湯の充填性を考慮する必要がある。従って、アルミニウム溶湯との濡れ性を考慮すべきであるが、ここで言う被覆層を構成する上記金属成分は、いずれも良好な濡れ性を示す。
また、本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の前記改質被覆層は、アルミニウム系被覆層、マグネシウム系被覆層、スズ系被覆層、亜鉛系被覆層、銅系被覆層を積層した複合層の状態に形成しても構わない。例えば、鋳鉄部材の外表面上にスズ系被覆層又は亜鉛系被覆層を1層形成し、その上にアルミニウム系被覆層を形成する等である。このような層構成を採用することで、改質被覆層と鋳鉄部材との密着性を向上させ、結果として、鋳包み用鋳鉄部材とアルミニウム材マトリクスとの密着性を向上させ得るのである。このときの積層状態は、上述した2層を初め、更に3層以上の複合層としても構わない。鋳包みに用いるアルミニウム材マトリクスの材質、工程等を考慮して任意に選択すれば良い。
そして、本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の前記改質被覆層は、6μm〜150μmの厚さを備えることが好ましい。前記改質被覆層の厚さが6μm未満の場合には、薄くなりすぎて、鋳包み用鋳鉄部材とアルミニウム材マトリクスとの密着性を向上させることが出来なくなる。また、後述する製造方法の中で述べるように、金属箔を当該改質被覆層の形成に用いる場合、6μm以下の厚さの金属箔は、ハンドリング性に欠け、容易に破れ等の発生が顕著になり、良好な改質被覆層の形成が困難となる。これに対して、前記改質被覆層の厚さが150μmを超えるものとすることは、製造的視点から見ても困難が伴うものである。また、この改質被覆層が上限厚さを超えても、鋳包み用鋳鉄部材とアルミニウム材マトリクスとの密着性の向上効果が、それ以上に上昇しない傾向が強くなる。
次に、本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の表面粗さ(Ra)に関して述べる。鋳包み用鋳鉄部材には、アルミニウム材マトリクスとの密着性の向上を目的として、物理的なアンカー効果を発揮する一定レベルの表面粗さを外表面に備えることが要求される。本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の場合、その表面粗さ(Ra)は、5μm〜150μmの範囲にあることが好ましい。当該表面粗さ(Ra)が5μm未満の場合には、アンカー効果を発揮し得ず、鋳包み用鋳鉄部材とアルミニウム材マトリクスとの密着性の向上に寄与し得ない。これに対し、当該表面粗さ(Ra)が150μmを超える粗さとしても、凹凸形状へのダイキャストした際のアルミニウム材の侵入が不十分となり、アンカー効果による鋳包み用鋳鉄部材とアルミニウム材マトリクスとの密着性の向上効果が飽和してしまう。なお、ここで言う表面粗さとは、JIS B0601:2001に準拠して測定したRaの値のことである。
本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の製造形態: 本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の製造方法は、後述する工程1〜工程4を備えることが特徴である。以下、工程毎に、説明する。
工程1: この工程では、平均粗さ(Ra)12μm〜155μmの外表面を備える粗化処理鋳鉄部材を準備する。即ち、ここで言う粗化処理鋳鉄部材は、鋳鉄部材を製造して事後的に表面粗化を施した製品、又は、鋳造過程において鋳鉄部材の表面が粗化された形態を直接的に製造した製品のいずれを用いても構わない趣旨として記載している。しかし、あらゆる形状の粗化処理鋳鉄部材を得ようとしたときの生産効率を考えると、鋳鉄部材の表面をブラスト処理で粗化処理したものを準備する事が好ましい。このときのブラスト処理の条件に関しては、以下に述べる表面粗さの形成が出来る限り、特段の限定は無い。
そして、この粗化処理鋳鉄部材の外表面の表面粗さ(Ra)は、12μm〜155μmの範囲とすることが好ましい。この粗化処理鋳鉄部材の表面粗さは、最終製品である鋳包み用鋳鉄部材の表面よりも粗く設定している。後述するように、粗化処理鋳鉄部材の表面に改質被覆層を形成し、更にブラスト処理を施すため、初期の表面粗さの維持が困難となるからである。従って、粗化処理鋳鉄部材の外表面の表面粗さ(Ra)が12μm未満の場合には、鋳包み用鋳鉄部材としての表面粗さ(Ra)を5μm以上とすることが出来なくなる。一方、粗化処理鋳鉄部材の外表面の表面粗さ(Ra)が155μmを超える場合には、上述したように改質被覆層の厚さを最大の150μmとし、ブラスト処理を行った場合に、鋳包み用鋳鉄部材としての表面粗さ(Ra)を150μm以下の範囲に出来なくなる。
工程2: この工程では、前記粗化処理鋳鉄部材の表面に改質被覆層を形成するための所望の金属箔を配置する。このときの配置の方法に関しては、粗化処理鋳鉄部材の表面に所望の金属箔を単純に巻き付けても、巻き付けた後にスポット溶接で固定する方法、その他、接着剤等を用いて仮張り合わせしても構わない。結果として、見かけ上、粗化処理鋳鉄部材の表面に、可能な限り隙間のない状態で、金属箔が位置する状態を形成できれば良い。図1には、管状の粗化処理鋳鉄部材1の表面へ、1枚の金属箔2を、図の矢印方向に巻き込んでいく場合のイメージを示している。
そして、ここで言う金属箔とは、一般的に圧延法、電解法で製造したものであるが、その製造方法には限定されず、あらゆる方法で製造したものを対象としている。従って、鋳包み用鋳鉄部材の用途に応じて、極めて広い種類の金属箔を、選択することが可能である。
しかし、アルミニウム材マトリクスで鋳ぐるむ場合の金属箔には、アルミニウム系金属箔、マグネシウム系金属箔、スズ系金属箔、亜鉛系金属箔、銅系金属箔のいずれかを配置することが好ましい。これらの中の一種類を選択的に用いることで、単層の改質被覆層を、粗化処理鋳鉄部材の表面に形成できる。ここで言う、アルミニウム系金属箔とは、純アルミニウム(純度99.00質量%以上)、アルミニウム−マンガン合金、アルミニウム−マグネシウム合金、アルミニウム−マグネシウム−ケイ素合金、アルミニウム−銅−マグネシウム合金、アルミニウム−亜鉛−マグネシウム合金、アルミニウム−銅合金、アルミニウム−銅−ニッケル合金、アルミニウム−ケイ素合金等からなるものである。
マグネシウム系金属箔とは、純マグネシウム(純度99.00質量%以上)、マグネシウム−カルシウム合金、マグネシウム−セシウム合金、マグネシウム−ジルコニウム合金、マグネシウム−アルミニウム−亜鉛合金、マグネシウム−アルミニウム合金、マグネシウム−亜鉛−ジルコニウム合金等からなるものである。
スズ系金属箔とは、純スズ(純度99.00質量%以上)、スズ−ビスマス合金、スズ−鉛合金、スズ−ビスマス−鉛−アンチモン合金等からなるものである。
亜鉛系金属箔とは、純亜鉛(純度99.00質量%以上)、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金、亜鉛−アルミニウム−銅−マグネシウム合金、亜鉛−アルミニウム−銅合金、亜鉛−アルミニウム−銅−チタン−クロム合金、亜鉛−アルミニウム−銅−マグネシウム−チタン−ベリリウム合金、亜鉛−マンガン合金等からなるものである。
銅系金属箔とは、純銅(純度99.5質量%以上)、銅−亜鉛合金、銅−亜鉛−スズ合金、銅−亜鉛−アルミニウム合金、銅−亜鉛−鉄合金、銅−亜鉛−マンガン合金、銅−亜鉛−ニッケル合金、銅−亜鉛−鉄−マンガン−アルミニウム合金、亜鉛−ケイ素合金、亜鉛−ニッケル合金、銅−スズ合金、銅−スズ−亜鉛合金、銅−スズ−リン合金、銅−クロム合金等からなるものである。
そして、前記工程2の粗化処理鋳鉄部材表面への金属箔の配置にあたって、上述のアルミニウム系金属箔、マグネシウム系金属箔、スズ系金属箔、亜鉛系金属箔、銅系金属箔から選ばれる2種以上の箔を積層して配置することも好ましい。製品毎の要求品質に応じた改質被覆層の設計が可能となるからである。図2には、管状の粗化処理鋳鉄部材1の表面へ、2種類の金属箔2,3を、図の矢印方向に同時に巻き込んで行く場合のイメージを示している。
そして、当該金属箔の厚さは、前記改質被覆層の厚さを考慮して定める。改質被覆層の厚さは、上述のように6μm〜150μmの範囲であり、この厚さの改質被覆層を1枚の金属箔で構成しようとすると、この厚さに対応した金属箔が必要となる。従って、金属箔の厚さも、6μm〜150μmの範囲が必要となる。金属箔としての性質から考えても、6μm以下の厚さの金属箔を改質被覆層の形成に用いようとしても、ハンドリング性に欠け、容易に破れ等の発生が顕著になり、良好な改質被覆層の形成が困難となる。これに対して、150μmを超える厚さの金属箔を用いようとしても、厚いが為に硬い金属箔であり、しなやかさに欠けるため、粗化処理鋳鉄部材に巻き付ける際に隙間を生じやすくなる。
工程3: 以上のようにして粗化処理鋳鉄部材表面への前記金属箔の接触配置が完了すると、その状態を維持したまま、改質被覆層構成材料の軟化点以上で融点以下の温度で加熱する。ここで、改質被覆層構成材料の軟化点以上で融点以下の温度で加熱するのは、改質被覆層を溶融させることなく軟化させ、粗化処理鋳鉄部材の形状に沿って改質被覆層を仮密着させるためである。このとき改質被覆層が溶融した状態になると、改質被覆層の厚さが不均一となり、好ましくない。
従って、改質被覆層を2種類以上の金属箔を積層して形成する場合には、最も融点の低い金属箔を基準として、軟化点以上で融点以下の温度を定めることになる。例えば、亜鉛箔(融点420℃前後)とアルミニウム箔(融点約653℃〜約660℃)とを組み合わせて用いる場合には、融点の低い亜鉛箔を基準として、亜鉛の軟化可能な200℃付近〜400℃付近での加熱を行う。そして、このときの加熱時間は、特に限定はない。改質被覆層の形成に用いた金属箔の構成成分、加熱方法等の諸条件を考慮し、改質被覆層を粗化処理鋳鉄部材の形状に沿って仮密着させることが出来れば足りる。
そして、ここで採用しうる加熱方法は、オーブン加熱、高周波誘導加熱、電気抵抗加熱のいずれかの方法を用いる事が好ましい。オーブン加熱及び高周波誘導加熱は、粗化処理鋳鉄部材と改質被覆層を構成する金属箔とを同時に加熱することになる。これに対し、電気抵抗加熱の場合には、改質被覆層を構成する金属箔のみを発熱加熱することも、粗化処理鋳鉄部材と改質被覆層を構成する金属箔とを区分して加熱制御する事も可能となる。また、加熱に用いる雰囲気は、大気雰囲気、不活性ガス置換雰囲気等の採用が任意に可能である。例えば、スケールの発生を嫌う場合には、大気雰囲気を採用することなく、不活性ガス置換雰囲気、水素還元雰囲気を用いる等である。
以上のような熱処理を行うことによって、粗化処理鋳鉄部材と改質被覆層との密着状態を得ると同時に改質被覆層の密度上昇が行え、改質被覆層付鋳鉄部材の状態となる。
工程4: 以上の工程3で、粗化処理鋳鉄部材の凹凸表面に、改質被覆層を仮密着させただけでは、粗化処理鋳鉄部材と改質被覆層との間にエアを噛み込んだ状態が生じやすくなる。そこで、この工程では、前記改質被覆層付鋳鉄部材の表面にブラスト処理を行い、当該表面に圧縮応力を付与して、改質被覆層と粗化処理鋳鉄部材との密着性を、より強固にする密着性強化処理を行う。
ブラスト処理とは、硬い粒子を被加工表面に高速で衝突させ、表面改質処理を行うものである。このブラスト処理を行う際に留意すべき事は、ブラスト処理により、粗化処理鋳鉄部材の表面にある凹凸形状を出来る限り消失させないことである。そこで、ブラスト材(ブラスト粒子)に関しては、ステンレスワイヤカット等の材質で、粒径が0.2mm〜0.6mmのものを用いることが好ましい。粒径が0.2mm未満の場合には、加工速度が遅く、工業的生産性を満足し得ない。一方、粒径が0.6mmを超えると、改質被覆層付鋳鉄部材の表面に対する衝突エネルギーが過大になり、粗化処理鋳鉄部材の備えていた凹凸の形状変化が顕著になるため好ましくない。また、粒子衝突速度40m/s〜100m/sの条件で行うことが好ましい。この粒子衝突速度に関しては任意に調整可能な要因である。このブラスト処理が終了すると、改質処理層には圧縮応力が付与され、改質被覆層と粗化処理鋳鉄部材との間の隙間が無くなり密着性が向上した状態となる。これが、鋳包み用鋳鉄部材として用いる製品となる。
本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材製品: 以上に述べた本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の製造方法を用いることで、改質被覆層を備えた種々の鋳包み用鋳鉄部材製品が得られる。特に、内燃機関用のシリンダライナ、ピストントレーガ、ブレーキドラムのインサート等種々の製品への応用が好適である。
そして、本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の内、シリンダライナを用いて、これを高圧アルミニウムダイキャスト法で鋳ぐるむことで、高品質のシリンダブロックの提供が可能となる。シリンダライナをアルミニウム材マトリクスで鋳ぐるむ場合の凝固過程を考えると、シリンダブロック内に配置したシリンダライナで構成されるボア間が最も薄く、その部位のアルミニウム材溶湯が最初に凝固し、その後ボアの周辺部の凝固が進行すると考えられる。従って、凝固が速く始まるため、シリンダライナ凹凸部へのアルミニウム溶湯の侵入が困難となる。また、金属の溶湯の凝固過程は、収縮挙動を行う。従って、高圧ダイキャストされたアルミニウム材溶湯の凝固が進行するに従い、既に凝固したボア間の薄いアルミニウム材に引張り応力が加わり、シリンダライナとアルミニウム材マトリクスとの密着性が弱い場合には、そこに割れが生じる場合がある。しかし、本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材製品であるシリンダライナの場合には、その表面の改質処理層がアルミニウム溶湯との濡れ性を改善し、シリンダライナ凹凸部へのアルミニウム溶湯の侵入を容易にし、凹凸形状のアンカー効果を十分に発揮させる。この結果、シリンダライナとアルミニウム材マトリクスとの密着性が向上するため、上述の割れが生じる事もなくなり、高品質のシリンダブロックの提供が可能となる。
この実施例では、シリンダライナに相当する鋳鉄部材を製造し、その鋳鉄部材を鋳包み処理するまでを実施した。以下、工程の順に説明する。
工程1: 炭素が3.3質量%、ケイ素が1.95質量%、マンガンが0.75質量%、リンが0.2質量%、硫黄が0.06質量%、銅が0.15質量%、クロムが0.16質量%、残部が鉄及び不可避的不純物からなる溶湯を調製した。この組成の溶湯を砂型鋳造法で、シリンダライナの一部分に相当するA型黒鉛鋳鉄である鋳造部材を製造した。このときの鋳造部材は、内径89.4mm、外径97.7mm、長さ15mmである。
工程2: そして、前記鋳造部材の表面に凹凸表面を形成するために、切削加工により外周面に螺旋溝を形成した。このときの切削に用いたバイトの先端Rは、0.4mm、0.8mm、1.2mmの3種類を用いて、溝深さを0.02mm(Aタイプ)、0.1mm(Bタイプ)、0.3mm(Cタイプ)、0.5mm(Dタイプ)のいずれかのタイプとして製造した。その後、更に、ブラスト材にモランダムF36を用いて、噴射圧力 0.5MPa、ワークディスタンス 120mm、噴射時間 35秒の条件でブラスト処理して、表面粗さの調整をおこない粗化処理鋳鉄部材とした。
工程3: 6μm厚さのアルミニウム箔:純度99質量%以上を用いて、このアルミニウム箔を粗化処理鋳鉄部材の表面に巻き付けた。このとき、アルミニウム箔の巻き付け回数を、1巻〜25巻の間で変化させ、上記粗化処理鋳鉄部材の表面へ金属箔を配置した15種類の試料を用意した。そして、この15種類の試料を、アルミニウム箔材料の軟化点以上で融点以下の250℃で加熱して、溶融させることなく軟化させ、粗化処理鋳鉄部材の形状に沿って改質被覆層を仮密着させた。なお、15種類の試料の螺旋溝深さ、巻き付け回数に関しては、試料毎に表1に掲載した。
工程4: 工程3で、改質被覆層を仮密着させた粗化処理鋳鉄部材に対し、ブラスト材にステンレスワイヤカットを用いて、投射速度 60m/s、投射時間 10〜20秒の条件でブラスト処理して、粗化処理鋳鉄部材と改質被覆層との間にエアを噛み込んだ状態を解消し、より強固に密着させ、改質被覆層に圧縮応力を付与して表面改質を行って15種類の鋳包み用鋳鉄部材とした。
鋳包み試験: 以上のようにして得られた15種類の鋳包み用鋳鉄部材を、アルミニウム合金(ADC12)で鋳ぐるむことにより、鋳包み後で内径89.4mm、外径106mm、長さ15mmとなるように、外周面のみを鋳ぐるんだ。鋳包みの条件は、330tダイキャストマシンを用いて鋳造圧力62.8MPa、溶湯温度710℃〜740℃、金型温度220℃〜230℃とした。なお、15種類の試料は、試料1〜試料15として、表1に鋳包み試験の結果を示した。
比較例
[比較例1]
この比較例では、上記実施例の工程2で鋳造部材の表面に溝深さ0.02mm(Aタイプ)の螺旋溝を形成した点、工程3で3μm厚さのアルミニウム箔:純度99質量%以上を用いて、このアルミニウム箔を粗化処理鋳鉄部材の表面に1回巻き付けた点のみが実施例と異なり、その他実施例と同様にして鋳包み用鋳鉄部材を得て、同様の鋳包み試験を行った。従って、改質被覆層の厚さが適正な厚さ(6μm〜150μm)未満の製品である。これらの結果等に関しては、実施例と対比可能なように表1に比較試料Aとして掲載した。
[比較例2]
この比較例では、上記実施例の工程2で鋳造部材の表面に溝深さ0.02mm(Aタイプ)の螺旋溝を形成した点、工程3で4μm厚さのアルミニウム箔:純度99質量%以上を用いて、このアルミニウム箔を粗化処理鋳鉄部材の表面に1回巻き付けた点のみが実施例と異なり、その他実施例と同様にして鋳包み用鋳鉄部材を得て、同様の鋳包み試験を行った。従って、改質被覆層の厚さが適正な厚さ(6μm〜150μm)未満の製品である。これらの結果等に関しては、実施例と対比可能なように表1に比較試料Bとして掲載した。
[比較例3]
この比較例では、上記実施例の工程2で鋳造部材の表面に溝深さ0.5mm(Dタイプ)の螺旋溝を形成した点、工程3で6μm厚さのアルミニウム箔:純度99質量%以上を用いて、このアルミニウム箔を粗化処理鋳鉄部材の表面に26回巻き付けた点のみが実施例と異なり、その他実施例と同様にして鋳包み用鋳鉄部材を得て、同様の鋳包み試験を行った。従って、改質被覆層の厚さが適正な厚さ(6μm〜150μm)を超える製品である。これらの結果等に関しては、実施例と対比可能なように表1に比較試料Cとして掲載した。
[比較例4]
この比較例では、上記実施例の工程2で鋳造部材の表面に溝深さ0.5mm(Dタイプ)の螺旋溝を形成した点、工程3で6μm厚さのアルミニウム箔:純度99質量%以上を用いて、このアルミニウム箔を粗化処理鋳鉄部材の表面に26回巻き付けた点のみが実施例と異なり、その他実施例と同様にして鋳包み用鋳鉄部材を得て、同様の鋳包み試験を行った。従って、改質被覆層の厚さが適正な厚さ(6μm〜150μm)を超え、且つ、鋳包み鋳鉄部材としての適正な粗さ(Ra=5μm〜150μm)を超える製品である。これらの結果等に関しては、実施例と対比可能なように表1に比較試料Dとして掲載した。
[比較例5]
この比較例では、上記実施例の工程2で鋳造部材の表面に溝深さ0.1mm(Bタイプ)で、ピッチ0.8mmの螺旋溝を形成し、改質被覆層の形成を行うことなく、この状態のものを鋳包み用鋳鉄部材として用いて、同様の鋳包み試験を行った。従って、改質被覆層の存在しない製品である。これらの結果等に関しては、実施例と対比可能なように表1に比較試料Eとして掲載した。
Figure 2008080385
ここで、表1の密着性評価試験の評価基準に関して述べておく。試験的に製造した鋳包み用鋳造部材に対し、50mm×50mm(表1では、50mm□と表示)〜10mm×10mm(表1では、10mm□と表示)の各サイズでの切断加工を施し、その加工後の鋳包み用鋳造部材とマトリクス材との界面での剥離の有無を確認した。なお、切断位置は、湯口から可能な限り遠い位置とした。
<実施例と比較例との対比>
試料1〜試料15を見ると、鋳包み用鋳鉄部材の表面粗さ及び改質被覆層の厚さ共に、上記適正な範囲に入っている。そして、これら試料の、鋳包み用鋳鉄部材とアルミニウム材マトリクスとの界面剥離評価を見るに、全て○〜◎の評価が得られて、鋳包み用鋳鉄部材とアルミニウム材マトリクスとの間で、良好な密着性が得られていることが分かる。
これに対して、比較試料A〜比較試料Dは、鋳包み用鋳鉄部材の表面粗さ、改質被覆層の厚さのいずれか一方又は双方が、本件発明に言う適正な範囲から外れている。その結果、前記界面剥離評価の結果は、×〜△の範囲となり、本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材を用いた場合より密着性が劣ることが分かる。更に、改質被覆層を備えていない比較試料E(従来材に相当)の場合には、実施例である試料3〜試料8に相当する螺旋溝形状を備えるが、実施例のように鋳包み用鋳鉄部材とアルミニウム材マトリクスとの間で、良好な密着性を得ることが出来ていないことが分かる。
本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材は、物理的アンカー効果と鋳包みのアルミニウム材マトリクスとの相互拡散に形成される金属結合状態を同時に得ることによって、相互の密着性を飛躍的に向上させる。従って、内燃機関用のシリンダライナ、ピストントレーガ、バルブガイド、ブレーキドラムのインサート、シリンダブロックの品質を飛躍的に向上させることができる。しかも、本件発明に係る鋳包み用鋳鉄部材の製造方法は、金属箔を有用に活用することで、新たな設備投資を要するものでもなく、既存の設備の有効活用を行いながら、効率よく鋳鉄部材の表面に改質被覆層を形成することが出来るため経済性に優れる。
管状の粗化処理鋳鉄部材の表面へ、1枚の金属箔を巻き込んでいくイメージ図である。 管状の粗化処理鋳鉄部材の表面へ、2種類の金属箔を巻き込んでいくイメージ図である。
符号の説明
1 粗化処理鋳鉄部材
2,3 金属箔

Claims (11)

  1. 高圧アルミニウムダイキャスト法を用いて鋳包み加工に供される鋳鉄部材であって、
    当該鋳鉄部材は、その表面にアルミニウム材あるいはアルミニウム合金材との密着性を向上させるための6μm〜150μm厚さの改質被覆層を備え、且つ、その表面粗さ(Ra)が5μm〜150μmであることを特徴とした鋳包み用鋳鉄部材。
  2. 前記改質被覆層は、アルミニウム系被覆層、マグネシウム系被覆層、スズ系被覆層、亜鉛系被覆層、銅系被覆層のいずれかである請求項1に記載の鋳包み用鋳鉄部材。
  3. 前記改質被覆層は、アルミニウム系被覆層、マグネシウム系被覆層、スズ系被覆層、亜鉛系被覆層、銅系被覆層を2種以上選択し、これを積層した複合層とした請求項1に記載の鋳包み用鋳鉄部材。
  4. 請求項1に記載の鋳包み用鋳鉄部材の製造方法であって、以下の工程1〜工程4を備えることを特徴とする鋳包み用鋳鉄部材の製造方法。
    工程1: 平均粗さ(Ra)12μm〜155μmの外表面を備える粗化処理鋳鉄部材を準備する工程。
    工程2: 前記粗化処理鋳鉄部材の表面に改質被覆層を形成するための所望の金属箔を配置する工程。
    工程3: 前記金属箔を接触配置した粗化処理鋳鉄部材を、改質被覆層構成材料の軟化点以上で融点以下の温度で加熱して粗化処理鋳鉄部材と改質被覆層との密着状態を得ると同時に改質被覆層の密度上昇を行って改質被覆層付鋳鉄部材とする工程。
    工程4:前記改質被覆層付鋳鉄部材の表面にブラスト処理を行い、当該表面に圧縮応力を付与して、改質被覆層と粗化処理鋳鉄部材との密着性を、より強固にする密着性強化処理を行い鋳包み用鋳鉄部材とする工程。
  5. 前記工程1の粗化処理鋳鉄部材は、鋳鉄部材の表面にブラスト処理を用いて粗化処理したものを準備する請求項4に記載の鋳包み用鋳鉄部材の製造方法。
  6. 前記工程2の粗化処理鋳鉄部材表面への金属箔の配置は、アルミニウム系金属箔、マグネシウム系金属箔、スズ系金属箔、亜鉛系金属箔、銅系金属箔のいずれかを配置するものである請求項4又は請求項5に記載の鋳包み用鋳鉄部材の製造方法。
  7. 前記工程2の粗化処理鋳鉄部材表面への金属箔の配置は、アルミニウム系金属箔、マグネシウム系金属箔、スズ系金属箔、亜鉛系金属箔、銅系金属箔から選ばれる2種以上の箔を積層して配置するものである請求項4又は請求項5に記載の鋳包み用鋳鉄部材の製造方法。
  8. 前記工程3での加熱は、オーブン加熱、高周波誘導加熱、電気抵抗加熱のいずれかの方法を用いるものである請求項4〜請求項7のいずれかに記載の鋳包み用鋳鉄部材の製造方法。
  9. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鋳包み用鋳鉄部材として製造したことを特徴としたシリンダライナ。
  10. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鋳包み用鋳鉄部材として製造したことを特徴としたピストントレーガ又はブレーキドラムのインサート。
  11. 請求項9に記載のシリンダライナを高圧アルミニウムダイキャスト法で鋳ぐるんで得られることを特徴としたシリンダブロック。
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