JP2008078373A - 有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であって、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層材料を前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有し、且つ、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層材料以外の材料が前記発光層中に実質的に含まれないことを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【選択図】図1
Description
また、特許文献2では、前記混合膜が膜厚方向に材料組成に濃度傾斜をつけた素子が報告されているが、作製方法が困難であった。
また、濃度傾斜のある層の作製方法に関しては、特許文献3に開示されている。
これらの共蒸着膜は、発光性ドーパントのように発光に寄与することを目的とせず、あるいはCT錯体を形成することにより導電性を顕著に高くすることを目的とせず、隣接する各々の層に含まれる材料を混合させた層を間に挿入することにより、素子の高性能化を実証したものであるが、メカニズムについては記載されていない。
これらの多層構造は、真空蒸着法により異なる材料を順次蒸着して形成できることができる。しかしながら、蒸着法の場合、大面積パネルでの膜厚や共蒸着材料同士の濃度の面内分布の均一制御、高精細なマスク蒸着による塗り分けが困難だといわれている。また、高精細なマスクや、大掛かりな真空装置など高価な設備を必要とし、さらに多層化による工程数の増加は歩留まり低下の要因となるため、製造コストが高くなるという問題がある。
耐久性に優れたホール輸送性を作製する試みが報告されている。特許文献11には正孔輸送層が、架橋構造をもつ有機バインダー中にガラス転移温度の低いTPDを分散することにより、駆動によるジュール熱を原因とする結晶化による輝度劣化を改善するとの報告がある。文献中には硬化による寿命特性の向上について述べられているが、製造方法に関する効果は述べられていない。
また、本発明は、第二の態様として、少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記発光層が単一の発光材料からなる層であり、且つ、前記正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であって、前記発光層を形成している発光材料を前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
|SA−SB|≦2 式(I)
また、本発明は、第二の態様として、少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接し、単一の発光材料からなる発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記陽極電極上のいずれかの層上に、前記発光層を形成する発光材料を全固形分中に5〜50重量%含有する正孔輸送層形成用塗布液を塗布する正孔輸送層形成工程を有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供する。
|SA−SB|≦2 式(I)
本発明の有機EL素子の製造方法は、低コストで容易な製造プロセスで、長時間安定に駆動できる有機EL素子を提供できるという効果を奏する。
すなわち、本発明により、蒸着法で作製される多層化された有機EL素子における作製方法の複雑化や製造コストが高くなるという課題を解決し、且つ、溶液塗布法で作製される有機EL素子の課題であった寿命性能を著しく向上することが可能となる。
まず、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子という場合がある。)について説明する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、第一の態様として、少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であって、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料を前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有し、且つ、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料以外の材料が前記発光層中に実質的に含まれないことを特徴とするものである。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、第二の態様として、少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記発光層が単一の発光材料からなる層であり、且つ、前記正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であって、前記発光層を形成している発光材料を前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有することを特徴とするものである。
この点、本発明によれば、正孔輸送層が前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料を、前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有し、且つ、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料又は発光材料以外の材料が前記発光層中に実質的に含まれないことにより、正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であっても、長時間安定に駆動できるという効果を得ることができる。
異なる有機材料同士を積層する際には、層間の密着安定性まで考慮した設計が重要であり、これは材料同士の分子内化学構造や極性の違いに起因する。有機EL素子の正孔輸送性材料には、多くの場合、NPDやTFBなどのアミン系の基を含む分子内に極性を持つ有機材料が用いられるが、一方で発光層にはC−CあるいはC−H結合を中心とした多芳香環基の有機材料が用いられ、これらは基本骨格の分子構造も局所的な(数nmの長さオーダー)極性も異なる。分子構造や極性の違いは、有機物材料同士の凝集力に差を生じさせるため、有機分子同士の相溶性(濡れ性)に影響する。この有機分子同士の濡れ性を表す一つの指標としては、極性や基本骨格を反映した分子全体の平均値となってしまうが、溶解度パラメーター(SP値)を利用することも可能である(非特許文献1)。
このような正孔輸送層上に、分子構造や極性やSP値が大きく異なる発光層を積層した場合、有機膜/有機膜界面の膜同士の濡れ性は低く不安定な準安定状態となる。
図3に、正孔輸送層11上に発光層12を積層させた、界面を形成する両材料のSP値に極端に差がある積層体の断面概念図を示す。積層当初は図3(a)のように空隙のない積層体であっても、有機分子が動きうる場合、例えば有機分子のガラス転移温度(Tg)以上の温度にある場合や、Tg以下の温度でも素子が駆動されている場合には、図3(b)のように界面近傍の有機分子はエネルギー的に安定な状態へと、つまり発光層12/正孔輸送層11界面の互いの材料同士の接触面積ができるだけ小さくなるように分子は移動する。
一方、有機分子が移動可能な場合であっても、界面を形成する両材料の分子構造や極性やSP値が比較的類似している場合は、材料同士が混合し、濡れ広がっている状態がエネルギー的に安定な状態であるので、駆動によって有機膜/有機膜界面の接触面積は変化しにくく安定である。
連続駆動により接触面積が小さくなった有機膜/有機膜界面には異種材料間でそれぞれ凝集核が発生し、成長してグレインを形成する。分子構造や極性やSP値が大きく異なる異種材料のグレイン同士は、接触面積が小さいほどエネルギー的に安定であるので、グレイン間には1〜2nm程度の間隙が発生する場合がある。分子間の電荷移動は、分子間距離が1〜2nm程度以下で可能な現象であるので、間隙が発生した有機膜/有機膜界面では、初期状態から比較して正孔の注入が減少する方向に変化(劣化)する。このように正孔注入特性が劣化する場合であっても、その界面が全正孔電流の律速箇所つまり最も電界が集中する箇所でなければ寿命特性には直接影響しないが、律速箇所である場合にはキャリアバランスを初期状態から変化させる主因になる。通常、有機EL素子では発光層、特に発光層中でも発光層/正孔輸送層界面近傍に電界がかかるようにして正負キャリアを溜め込み、そこでキャリアが再結合して発光するように素子設計される場合が多い。従って、発光層あるいは発光層/正孔輸送層界面の密着安定性が低ければ、駆動電圧が高電圧化しキャリアバランスが初期状態から変化して輝度劣化すると考えられる。
以上に述べたようなキャリアを律速する箇所の界面密着安定性の効果と、駆動中のキャリアバランスが保持される効果によって、本発明においては正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であっても、長時間安定に駆動できるという効果を得ることができると考えられる。
ここで、SP値の近い材料同士は混合しやすく、かえって界面の組成比を変化させやすくする可能性があることが懸念されるが、寿命特性を支配する主因ではないと推測される。その理由は、発光層への高移動度な正孔輸送性材料の拡散の影響は低電圧化であるのに対し、駆動による輝度劣化の場合は通常駆動電圧上昇を伴うこと、さらに、輸送層側に発光層の主成分材料がすでに混合されているため分子移動が多少あったとしても組成比の変化は小さいと考えられることが挙げられる。
図1は、本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明の有機EL素子は、陽極電極2が形成された基板1上に、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、及び陰極電極6をこの順に有して形成されており、正孔輸送層4と発光層5とが直接接している。
図1の例においては、正孔注入層3及び正孔輸送層4の2層を有する構成であるが、正孔輸送層は、更に正孔注入機能を付与することにより、正孔注入機能を有する正孔輸送層として、直接陽極上に形成することも可能である。基板1は、有機デバイスを構成する各層を形成するための支持体であり、必ずしも陽極電極2の表面に設けられる必要はなく、有機EL素子の最も外側の面に設けられていればよい。陰極電極6は、対向する陽極電極2との間に正孔注入層3、正孔輸送層4、当該正孔輸送層4に隣接した発光層5が存在する場所に設けられる。
各層に用いられる材料を選択する際には、発光層への電荷の注入および輸送特性を円滑にするために、各材料のHOMOエネルギーとLUMOエネルギーを考慮して、素子構造が設計される場合が多い。これにより、キャリアのバランスが最適化されて発光効率を向上させることが可能となるからである。具体的には、正孔の移動を円滑にするためには、各層に含有される材料のHOMOレベルまたは仕事関数が陽極<正孔注入層<正孔輸送層<発光層の順に大きくなることが好ましく、これにより、各界面でのキャリアの注入障壁を小さくすることができる。一方、LUMOレベルは陰極<電子注入層<電子輸送層<発光層の順に大きくなることが好ましい。ただし、HOMOとLUMOのエネルギー値を必ずしもこのように配置しなくても、電荷の移動度が最適化されることにより効率が高いあるいは長寿命など良好な素子性能が得られる場合がある。特に寿命特性においては、上述のように、各層に用いられる材料の構造類似性、極性の類似性、SP値の類似性なども重要な因子であると考えられ、密着安定性を向上させる効果により長寿命が期待される。
1.発光層
本発明に用いられる発光層5は、後述する正孔輸送層4に隣接して形成されるものである。
本発明の発光層に用いられる材料としては、通常、発光材料として用いられている材料であれば特に限定されず、蛍光材料およびりん光材料のいずれも用いることができる。具体的には、色素系発光材料、金属錯体系発光材料等の材料を挙げることができ、低分子化合物または高分子化合物のいずれも用いることができる。
このように本発明においては、発光層に、正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち発光層ホスト材料以外の材料が実質的に含まれないことにより、発光層の上に存在する層が発光することを防止でき、発光効率や素子寿命を混入による劣化を抑制することができる。
色素系発光材料としては、例えば、アリールアミン誘導体、アントラセン誘導体、(フェニルアントラセン誘導体)、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、シロール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、スチルベン誘導体、スピロ化合物、チオフェン環化合物、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリアゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、ピラゾリンダイマー、ピリジン環化合物、フルオレン誘導体、フェナントロリン類、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体等を挙げることができる。またこれらの2量体や3量体やオリゴマー、2種類以上の誘導体の化合物も用いることができる。
金属錯体系発光材料としては、例えばアルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、あるいは中心金属にAl、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダール、キノリン構造等を有する金属錯体を挙げることができる。
具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)、ビス(2−メチル−8−キノリラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム錯体(BAlq)、トリ(ジベンゾイルメチル)フェナントロリンユーロピウム錯体、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体(BeBq)を挙げることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
高分子系発光材料としては、分子内に上記低分子系材料を分子内に直鎖あるいは側鎖あるいは官能基として導入されたもの、重合体およびデンドリマー等を使用することができる。
例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、及びそれらの共重合体等を挙げることができる。
上記発光層中には、発光効率の向上や発光波長を変化させる等の目的でドーピング材料を添加してもよい。高分子系材料の場合は、これらを分子構造の中に発光基として含んでいても良い。このようなドーピング材料としては、例えばペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクドリン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体を挙げることができる。またこれらにスピロ基を導入した化合物も用いることができる。
具体的には、1−tert−ブチル―ペリレン(TBP)、クマリン6、ナイルレッド、1,4−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ベンゼン(DPVBi)、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン(TPB)等を挙げることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、りん光系のドーパントとして、白金やイリジウムなどの重金属イオンを中心に有し、燐光を示す有機金属錯体が使用可能である。具体的には、Ir(ppy)3、(ppy)2Ir(acac)、Ir(BQ)3、(BQ)2Ir(acac)、Ir(THP)3、(THP)2Ir(acac)、Ir(BO)3、(BO)2(acac)、Ir(BT)3、(BT)2Ir(acac)、Ir(BTP)3、(BTP)2Ir(acac)、FIr6、PtOEP等を用いることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
本発明に用いられる低分子系発光材料の分子量としては、70〜2500程度であり、好ましくは100〜2000の範囲内である。分子量が上記範囲未満である低分子系発光材料では、一般的にガラス転移温度が低い場合が多く、加熱により溶剤を十分に乾燥させることが困難となる場合があるからである。逆に、分子量が上記範囲より大きいと、低分子系発光材料を蒸発または昇華させることが困難となり、精製するなど高純度化させることが困難となる場合があるからである。
低分子系発光材料の分子量は、分子構造から決定される。低分子系発光材料の構造は、一般的に、NMR法、IR法、質量分析法などにより決定される。
本発明に用いられる正孔輸送層4は、上記発光層5に隣接して形成されている層である。 正孔輸送層4は、通常は後述する正孔注入層3の上に形成される場合が多いが、正孔輸送層に正孔注入機能を付与することにより、正孔注入層と一体化して単層として直接陽極電極2の上に直接形成することもできる。また、本発明に用いられる正孔輸送層4は、2層以上に多層化することも可能であるが、プロセス簡易性を考慮すると好ましくない。
また、正孔輸送層において、発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料は、正孔輸送層のみに含まれる正孔輸送層用材料100重量部に対して、10〜80重量部の範囲で含有されることが好ましく、更に15〜70重量部、より更に20〜60重量部の範囲で含有されることが好ましい。
nの平均は、0〜5000であることが好ましく、更に1〜3000であることが好ましい。また、mの平均は、0〜5000であることが好ましく、更に1〜3000であることが好ましい。また、n+mの平均は、1〜10000であることが好ましく、更に1〜6000であることが好ましい。
熱及び/又は光硬化性を有することにより、正孔輸送層を硬化させることが可能になるため、隣接する発光層を塗布により形成した場合であっても、発光層形成用塗布液を塗布する際に正孔輸送層の構成成分の溶出を低減することができる。もし正孔輸送層の高正孔移動度な正孔輸送性材料が発光層に混入した場合、電界が集中するべき発光層の正孔移動度が高くなり、キャリアバランスが崩れ、正孔が電子輸送層にまで到達して電子輸送層での再結合も発生する。電子輸送層での再結合は、発光色への電子輸送層材料の発光色の混色や効率低下の原因となる。さらに、発光層への正孔輸送層材料の混入は、再結合エネルギーのドーパントへの移動を確率的に阻害し、量子収率を低下させるため、やはり効率低下の原因となり、結果として寿命は短くなる。従って、熱及び/又は光硬化性を含有させて正孔輸送層を硬化させることにより、発光層塗工時の正孔輸送層材料の発光層への溶出による素子特性の劣化を防止することが可能になり、発光効率を向上させ、また著しく素子寿命を向上させることが可能になる。
また、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料が、熱及び/又は光硬化性官能基を有する場合の上記硬化剤や光反応開始剤等の添加剤の量は層の硬化性と発光特性との兼ね合いから適宜選択される。
|SA−SB|≦2 式(I)
この文献から求められない場合は、他の公知の文献、例えば、Fedorsの方法[Fedors, R. F., Polymer Eng. Sci., 14, 147 (1974)]あるいはAskadskiiの方法[A. A. Askadaskii et al., Vysokomol. Soyed., A19, 1004 (1977).]に示された方法を用いることができる。Fedorsの方法では高分子の溶解度パラメータを、原子団寄与法により求めているが、原子団寄与法とは分子をいくつかの原子団に分割し、各原子団に経験パラメータを割り振って分子全体の物性を決定する手法である。
δ≡(δd2+δp2+δh2)1/2
ここに、δdはLondon分散力項、δpは分子分極項、δhは水素結合項である。
各項は、当該分子の構成原子団iの各項のモル引力乗数(Fdi,Fpi,Ehi)及びモル体積Viを用いて以下の式で計算される。
δp2=(ΣFpi2)1/2/ΣVi
δh2=(ΣEhi/ΣVi)1/2
文献B:A.F.M.Barton : "Handbook of Solubility Parameters and Other Cohesion Parameters" (CRC Press Inc., Boca Raton,FL) (1983)
文献C:R.F.Fedors : Polymer Eng. Sci., 14,(2), 147-154 (1974)
以上の点から、本発明においては、前記正孔輸送層中に重量平均分子量2万以上の高分子化合物が30重量%以上含有されていることが好ましい。中でも、重量平均分子量2万以上の高分子化合物が50重量%以上含有されていることが好ましく、更に重量平均分子量5万以上の高分子化合物が50重量%以上含有されていることが好ましい。
また、本発明に係る正孔輸送層は、後述する正孔注入層に用いられるような材料を更に添加したり、陽極のHOMOエネルギーに近いHOMOエネルギーを持つ材料を用いたりして、正孔注入機能をも有する正孔注入輸送層として形成されても良い。
本発明においては、陽極電極および陰極電極のうち、少なくとも片側の光の取出し面となる電極層は透明である必要がある。一方、光の取出し面と反対側の電極層は、透明であってもなくてもよい。
さらに、陽極電極および陰極電極は、基板上に全面に形成されたものであってもよく、パターン状に形成されたものであってもよい。
また、陽極電極および陰極電極は抵抗が小さいことが好ましく、一般には導電性材料である金属材料が用いられるが、有機化合物または無機化合物を用いてもよい。
基板1側から光を取り出す場合には陽極電極2を透明な材料で形成する必要がある。基板1の発光層側に設けられている陽極電極2は、発光層5に正孔を注入するよう作用する。
本発明の有機EL素子を構成する陽極電極2は、導電性材料からなるものであれば特に限定されず、例えば、Au、Ta、W、Pt、Ni、Pd、Cr、Cu、Mo等の金属、またはこれらの酸化物や合金等、或いは、これら金属材料の積層構造を挙げることができる。さらに、In−Sn−O、In−Zn−O、Zn−O、Zn−O−Al、Zn−Sn−O等の導電性無機酸化物、α−Si、α−SiC等を用いることができる。更に、湿式成膜法を用いて形成可能な溶融金属や金属微粒子、導電性高分子を用いることもできる。
陽極電極2は、有機層に正孔を供給する役割を有するので、仕事関数の大きい導電性材料を用いるのが好ましい。特に、仕事関数が4.2eV以上の金属の少なくとも1種、またはこれらの金属の合金、または導電性無機酸化物からなる群に含まれる物質の少なくとも1種により陽極電極2が形成されることが好ましい。更に、陽極電極に用いられる金属は、仕事関数が4.5eV未満であると酸化し易くなるので、仕事関数は4.5eV以上が好ましい。
陰極電極6は、通常の有機EL素子に用いられるものであれば特に限定されず、上述した電極(陽極)と同様の酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)または金等の薄膜電極材料の他、マグネシウム合金(MgAg等)、アルミニウムまたはその合金(AlLi、AlCa、AlMg等)、銀等を挙げることができる。中でも、電子を注入しやすいように4eVより小さい仕事関数を持つものが好ましく、例えば、アルカリ金属(たとえばリチウム、ナトリウム、セシウムなど)およびそのハロゲン化物(たとえばフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化セシウムなど)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウムなど)およびそのハロゲン化物(フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなど)、アルミニウム、銀などの金属、導電性金属酸化物およびこれらの合金または混合物などが挙げられる。陰極の厚さは、何れも0.005〜0.5μmであることが好ましい。
基板1は、観察者側の表面に通常設けられる。そのため、この基板は、発光層からの光を観察者が容易に視認することができる程度の透明性を有していることが好ましい。なお、この基板の反対が観察者側である場合には、この基板は不透明であってもよい。
このような基板としては、例えばソーダ石灰ガラス、アルカリガラス、鉛アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、シリカガラス等のガラス基板;フィルム状に成形が可能な樹脂基板;ガラス板に保護プラスチックフィルム若しくは保護プラスチック層を設けたものなどを用いることができる。
正孔注入層3は、陽極電極2と正孔輸送層4との間に設けることができる。
本発明に用いられる正孔注入層は、正孔を陽極から正孔輸送層へ円滑に注入することができる材料を含有するものであれば特に限定されるものではない。正孔注入層に用いられる材料としては、上述した正孔輸送層に用いられる材料を適宜選択して使用することができる。さらに、前述の層構成のように、上記正孔輸送層に正孔注入機能を付与することにより、正孔輸送層と一体化することもできる。
また金属酸化物などの無機材料を正孔注入層に用いることもできる。例えば、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウムおよび酸化チタン等の酸化物などの金属酸化物、さらにアモルファスカーボン、C60、カーボンナノチューブなどの炭化物を用いることができる。
また、上記正孔注入層の仕事関数は5.0〜6.0eV、更に5.0〜5.8eVであることが、正孔注入効率の点から好ましい。
本発明に用いられる電子注入層は、陰極から電子輸送層へ電子を安定に注入することができる材料を含有するものであれば特に限定されるものではない。電子注入層に用いられる材料としては、例えばアルミリチウム合金、リチウム、セシウム等のアルカリ金属やその合金;フッ化リチウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属のハロゲン化物;ストロンチウム、カルシウム等のアルカリ土類金属;フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等のアルカリ土類金属のハロゲン化物;酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム等の酸化物;フラーレン、カーボンナノチューブ等の炭素系材料;などを用いることができる。
上記電子注入層の厚みとしては、電子注入機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されるものではない。
なお、電子注入層の形成方法については、上記発光層の形成方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
本発明に用いられる電子輸送層は、電子を電子注入層から発光層へ円滑に輸送することができる材料を含有するものであれば特に限定されるものではない。このような電子輸送性を有する材料としては、例えば金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体等が挙げられる。例えば、フェナントロリン類の具体例としては、バソキュプロイン、バソフェナントロリン等が挙げられ、金属錯体の具体例としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)、ビス(2−メチル−8−キノリラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム錯体(BAlq)等が挙げられる。オキサジアゾール誘導体としては、(2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)等が挙げられる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記電子輸送層の厚みとしては、電子輸送機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されるものではない。
なお、電子輸送層の形成方法については、上記発光層の形成方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
次に、本発明に係る有機EL素子の製造方法を説明する。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、第一の態様として、少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記陽極電極上のいずれかの層上に、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料を全固形分中に5〜50重量%含有する正孔輸送層形成用塗布液を塗布する塗布工程を有することを特徴とするものである。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、第二の態様として、少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接し、単一の発光材料からなる発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記陽極電極上のいずれかの層上に、前記発光層を形成する発光材料を全固形分中に5〜50重量%含有する正孔輸送層形成用塗布液を塗布する正孔輸送層形成工程を有することを特徴とするものである。
本発明の正孔輸送層のような材料が2種以上混合された層を作製する場合に溶液塗布法を用いると、溶剤に複数材料を溶解させて製膜するだけで、混合比率の再現性や面内分布の均一制御が容易で歩留まりが向上し、さらに材料の利用効率が高く、製造コストを抑えることができるという利点がある。また、正孔輸送層形成用塗布液に前記発光層を形成する発光材料を全固形分中に5〜50重量%含有するため、上記I.有機EL素子の項目において述べたように、正孔輸送層と隣接して形成される発光層の間の界面密着性の効果とキャリアバランスの相乗効果により、本発明においては正孔輸送層が溶液塗布法により形成されても、長時間安定に駆動できる。
ここで溶液塗布法とは、層を形成するための材料を、溶剤に溶解乃至分散して塗布液を調製し、各種塗布法を用いて基体上に塗布し、乾燥して層(塗膜)を形成する方法である。
本発明に係る製造方法において上述の第一の態様と第二の態様は、上記I.有機EL素子の項目において述べたのと同様に、第一の態様は、発光層が2種以上の材料が混合されてなる場合の製造方法であり、第二の態様は、発光層が実質的に単一の発光材料からなる場合の製造方法である。
光硬化工程としては、通常は露光工程が行われる。露光する手段としては、上記デンドリマーが有する光反応性官能基に合わせて適宜選択すれば、特に限定されない。露光には、例えば、水銀ランプやハロゲンランプ等のUVランプによる露光方法や、電子線照射装置による露光方法等を用いることができる。
一方、熱硬化工程としては、用いられた熱硬化性の材料に合わせて適宜加熱される。例えば、熱硬化性官能基としてエポキシ基を有する材料が含まれる場合には、150〜200℃で加熱することが好ましい。
(1)膜厚の測定
本発明で記述される各層の厚みは、特に記載がない限り、洗浄済みのITO付きガラス基板(三容真空社製)上へ各層を単膜で形成し、作製した段差を測定することによって決定した。膜厚測定には、プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、Nanopics1000)を用いた。
(2)有機EL素子の電流効率と寿命特性
実施例において作製された有機EL素子の電流効率と寿命特性を評価した。
電流効率は、電流−電圧−輝度(I−V−L)測定して算出した。I−V−L測定方法は、陰極を接地して陽極に正の直流電圧を200mV刻みで走査(1sec./div.)して印加し、各電圧における電流と輝度を記録した。
寿命特性は、定電流駆動で輝度が経時的に徐々に低下する様子を観察して評価した。初期輝度に対して50%の輝度に劣化するまでの時間を寿命とした。
[実施例1]
ガラス基板の上に透明陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、電子輸送層、陰極の順番に製膜して積層し、最後に封止して有機EL素子を作製した。透明陽極と正孔注入層以外は、水分濃度0.1ppm以下、酸素濃度0.1ppm以下の窒素置換グローブボックス内で作業を行った。
まず、透明陽極として酸化インジウム錫(ITO)の薄膜(厚み:150nm)を用いた。ITO付ガラス基板(三容真空社製)をストリップ状にパターン形成した。パターン形成されたITO基板を、中性洗剤、超純水の順番に超音波洗浄し、UVオゾン処理を施した。
次に、洗浄された陽極の上に、正孔注入層としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSS)薄膜(厚み:20nm)を形成した。PEDOT−PSS薄膜は、PEDOT−PSS水溶液を大気中でスピンコート法により塗布して作製した。PEDOT−PSS製膜後、水分を蒸発させるために大気中でホットプレートを用いて乾燥させた。
次に、作製した電子輸送層の上に、電子注入層としてLiF(厚み:0.5nm)、陰極としてAl(厚み:150nm)を順次製膜した。真空中(圧力:1×10−4Pa)で、抵抗加熱蒸着法により製膜した。
最後に陰極形成後、グローブボックス内にて無アルカリガラスとUV硬化型エポキシ接着剤を用いて封止し、実施例1の有機EL素子を作製した。
また、得られた実施例1の有機EL素子は、輝度が500cd/m2で、電流効率が0.48cd/Aであった。また、実施例1の有機EL素子の上記寿命時間は0.43時間であった。
正孔輸送層として、実施例1におけるα−NPDとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の代わりに、α−NPDと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜(重量比α−NPD:熱硬化性エポキシ樹脂組成物=1:1)の混合薄膜とした以外は、実施例1と同様にして比較例1の有機EL素子を作製した。エポキシ樹脂組成物としては、実施例1と同じものを用いた。
得られた比較例1の有機EL素子は、輝度が500cd/m2で、電流効率が0.47cd/Aであった。また、実施例1の有機EL素子の上記寿命時間は0.25時間であった。
正孔輸送層として、実施例1におけるα−NPDとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の代わりに、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4’−(N−(4−sec−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)とDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合物を用いて作製した薄膜(厚み:20nm)を形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。TFBは、アメリカン・ダイ・ソース社製、品番:ADS259BE(重量平均分子量:7.1×104)を材料として用いた。エポキシ樹脂組成物としては、実施例1と同じものを用いた。正孔輸送層塗布液はクロロベンゼンに上記TFBとDPVBiとエポキシ樹脂組成物の重量比が7:3:7になるように溶解させた溶液を用い、グローブボックス内でスピンコート法により塗布して製膜した。薄膜を硬化させるためにグローブボックス内でホットプレートを用いて加熱した。
また、得られた実施例2の有機EL素子は、輝度が500cd/m2で、電流効率が0.49cd/Aであった。また、実施例1の有機EL素子の上記寿命時間は28時間であった。
正孔輸送層として、実施例2におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の代わりに、TFBと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜(重量比TFB:熱硬化性エポキシ樹脂組成物=1:1)の混合薄膜とした以外は、実施例2と同様にして比較例2の有機EL素子を作製した。エポキシ樹脂組成物としては、実施例1と同じものを用いた。
得られた比較例2の有機EL素子は、輝度が500cd/m2で、電流効率が0.52cd/Aであった。また、比較例2の有機EL素子の上記寿命時間は19時間であった。
正孔輸送層として、実施例2におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の比を9:1:7とし、更に実施例2において発光層の形成方法として、湿式塗布法の代わりにTBPをドーパントとして含有したDPVBi薄膜を真空蒸着形成した以外は実施例2と同様にして有機EL素子を作製した。真空中(圧力:1×10−4Pa)で、抵抗加熱蒸着法により、DPVBiとTBPの体積比が10:1になるように共蒸着法で製膜した。
得られた実施例3−1の有機EL素子は、輝度が500cd/m2で、電流効率が1.3cd/Aであった。また、実施例3−1の有機EL素子の上記寿命時間は26時間であった。
正孔輸送層として、実施例3−1におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の比を8:2:7とした以外は、実施例3−1と同様にして有機EL素子を作製した。
得られた実施例3−2の有機EL素子は、輝度が500cd/m2で、電流効率が1.3cd/Aであった。また、実施例3−2の有機EL素子の上記寿命時間は31時間であった。
正孔輸送層として、実施例3−1におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の比を7:3:7とした以外は、実施例3−1と同様にして有機EL素子を作製した。
得られた実施例3−3の有機EL素子は、輝度が500cd/m2で、電流効率が1.2cd/Aであった。また、実施例3−2の有機EL素子の上記寿命時間は24時間であった。
正孔輸送層として、実施例3−1におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の比を6:4:7とした以外は、実施例3−1と同様にして有機EL素子を作製した。
得られた実施例3−4の有機EL素子は、輝度が500cd/m2で、電流効率が1.2cd/Aであった。また、実施例3−2の有機EL素子の上記寿命時間は24時間であった。
正孔輸送層として、実施例3−1におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の比を5:5:7とした以外は、実施例3−1と同様にして有機EL素子を作製した。
得られた実施例3−4の有機EL素子は、輝度が500cd/m2で、電流効率が1.2cd/Aであった。また、実施例3−2の有機EL素子の上記寿命時間は24時間であった。
正孔輸送層として、実施例3−1におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の比を10:0:7とした以外は、実施例3−1と同様にして有機EL素子を作製した。
得られた比較例3−1の有機EL素子は、輝度が500cd/m2で、電流効率が1.3cd/Aであった。また、比較例3−1の有機EL素子の上記寿命時間は18時間であった。
正孔輸送層として、実施例3−1におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の比を2:8:7とした以外は、実施例3−1と同様にして有機EL素子を作製した。
得られた比較例3−2の有機EL素子は、輝度が500cd/m2で、電流効率が1.2cd/Aであった。また、比較例3−2の有機EL素子の上記寿命時間は5時間であった。
正孔輸送層として、実施例3−1におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の比を0:10:7とした以外は、実施例3−1と同様にして有機EL素子を作製した。
得られた比較例3−3の有機EL素子は、輝度が500cd/m2で、電流効率が1.2cd/Aであった。また、比較例3−3の有機EL素子の上記寿命時間は8時間であった。
正孔輸送層として、実施例3−3におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の単層の混合薄膜(重量比TFB:DPVBi:熱硬化性エポキシ樹脂組成物=7:3:7)の代わりに、TFBと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜(重量比TFB:熱硬化性エポキシ樹脂組成物=1:1)とTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂の混合薄膜(重量比TFB:DPVBi:熱硬化性エポキシ樹脂=7:3:7)の2層を順次積層して形成した以外は、実施例3−3と同様にして有機EL素子を作製した。
得られた実施例4の有機EL素子は、輝度が500cd/m2で、電流効率が1.4cd/Aであった。また、実施例4の有機EL素子の上記寿命時間は20時間であった。
正孔輸送層と発光層を以下のように形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
正孔輸送層は、TFBとポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(1,4−ビニレンフェニレン)](PFOポリマー)との重量比が7:3になるようにキシレンに溶解させた正孔輸送層形成用塗布液を用い、グローブボックス内でスピンコート法により塗布して混合薄膜(厚み:10nm)を形成した。PFOポリマーはアメリカン・ダイ・ソース社製、品番:ADS228GE(重量平均分子量:6×104)を材料として用いた。
発光層は、PFOポリマーをキシレンに溶解させた塗布液を用い、グローブボックス内でスピンコート法により塗布して薄膜(厚み:40nm)を形成した。
得られた実施例5の有機EL素子は、輝度が2000cd/m2で、電流効率が8.5cd/Aであった。また、実施例5の有機EL素子の上記寿命時間は2.0時間であった。
正孔輸送層として、実施例5におけるTFBとPFOポリマーの混合薄膜の代わりに、TFBとPFOポリマーと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜(厚み:10nm)とした以外は、実施例5と同様にして実施例6の有機EL素子を作製した。エポキシ樹脂組成物としては、実施例1と同じものを用いた。
正孔輸送層塗布液はキシレンに上記TFBとPFOとエポキシ樹脂の重量比が7:3:7になるように溶解させた溶液を用い、グローブボックス内でスピンコート法により塗布して製膜した。薄膜を硬化させるためにグローブボックス内でホットプレートを用いて加熱した。
得られた実施例6の有機EL素子は、輝度が2000cd/m2で、電流効率が14cd/Aであった。また、実施例6の有機EL素子の上記寿命時間は54時間であった。また、実施例6の有機EL素子の5V駆動時における電流密度は3.2mA/cm2であった。
正孔輸送層として、実施例5におけるTFBとPFOポリマーの混合薄膜の代わりに、TFBのみからなる薄膜(厚み:10nm)とした以外は、実施例5と同様にして比較例4の有機EL素子を作製した。
得られた比較例4の有機EL素子は、輝度が2000cd/m2で、電流効率が8.4cd/Aであった。また、比較例4の有機EL素子の上記寿命時間は1.1時間であった。
正孔輸送層として、実施例6におけるTFBとPFOポリマーと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の代わりに、TFBと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜(重量比TFB:熱硬化性エポキシ樹脂組成物=1:1)(厚み:10nm)とした以外は、実施例6と同様にして比較例5の有機EL素子を作製した。エポキシ樹脂組成物としては、実施例6と同じものを用いた。
得られた比較例5の有機EL素子は、輝度が2000cd/m2で、電流効率が5.0cd/Aであった。また、比較例5の有機EL素子の上記寿命時間は0.64時間であった。
正孔輸送層としてTFBのみからなる薄膜の厚みを20nmとし、発光層として、比較例4におけるPFOポリマーのみからなる薄膜の代わりに、PFOポリマーとTFBの混合薄膜(重量比PFO:TFB=7:3)(厚み:40nm)とした以外は、比較例4と同様にして比較例6の有機EL素子を作製した。
得られた比較例6の有機EL素子は、輝度が2000cd/m2で、電流効率が2.9cd/Aであった。また、比較例6の有機EL素子の上記寿命時間は0.30時間であった。また、比較例6の有機EL素子の5V駆動時における電流密度は4.1mA/cm2であった。
正孔輸送層として、比較例6におけるTFBのみからなる薄膜の代わりに、TFBとPFOポリマーの混合薄膜(重量比TFB:PFO=7:3)(厚み:20nm)とした以外は、比較例6と同様にして比較例7の有機EL素子を作製した。
得られた比較例7の有機EL素子は、輝度が2000cd/m2で、電流効率が3.0cd/Aであった。また、比較例7の有機EL素子の上記寿命時間は0.39時間であった。また、比較例7の有機EL素子の5V駆動時における電流密度は4.0mA/cm2であった。
実施例1と比較例1の素子を比較すると、発光層ホスト材料を正孔輸送層に混合させた実施例1の方が、発光層ホスト材料を混合させなかった比較例1より寿命が1.7倍長かった。効率が両者ともに約0.5cd/Aであり、初期特性におけるキャリアバランスは同様だと分かる。ホスト混合による長寿命化は、ホスト材料を混合したことによる層中に含まれる化学構造の類似性が向上し、正孔輸送層と発光層の密着安定性が向上した効果だと考えられる。実施例1と比較例1ともに|SA−SB|≦2を満たしており問題はない。
実施例6と比較例5の素子を比較すると、正孔輸送層に発光材料をまぜて硬化させた実施例6の方が、正孔輸送層に発光材料を混ぜずに硬化させた比較例5より、効率が2.8倍、寿命が84倍長かった。発光材料混合による長寿命化は、発光材料を混合したことによる層中に含まれる化学構造の類似性が向上し、正孔輸送層と発光層の密着安定性が向上した効果だと考えられる。比較例5が比較例4よりも、効率、寿命共に劣化している理由は、正孔輸送層を硬化させて電子輸送層への正孔電流の突き抜けが抑制される効果よりも、硬化バインダーの混合により正孔輸送劣化や発光層/正孔輸送層界面の密着性の劣化による悪影響が上回ったものと推測される。
実施例6と実施例5の素子を比較すると、正孔輸送層を硬化させた実施例6の方が、正孔輸送層を硬化させなかった実施例5より、効率が1.6倍、寿命が27倍長かった。正孔輸送層に発光材料を混ぜて硬化させることにより、正孔輸送層と発光層の密着安定性が向上し、さらに高移動度なTFBが発光層へ混入を抑制して電子輸送層への正孔電流の突き抜けが抑制されることにより、効率が向上したと考えられる。効率の向上により寿命特性も大幅に向上したと考えられる。
実施例6と比較例6および比較例7の素子を比較すると、発光層にできるだけ正孔輸送性材料TFBが混入しないように作製した実施例6と比較して、発光層に意図的に正孔輸送性材料TFBを混入させた比較例6および比較例7の方が、効率が0.2倍に、寿命が0.007倍に劣化している。比較例6および比較例7の効率が低下しているにもかかわらず、実施例6と5V駆動時における電流密度を比較すると約1.3倍に増加していることから、高移動度なTFBが発光層へ混入することにより電子輸送層への正孔電流の突き抜けが起こり、効率が低下し寿命も著しく短くなったと考えられる。
2 陽極電極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 陰極電極
7 電子輸送層
8 電子注入層
10 有機EL素子
11 正孔輸送層
12 発光層
Claims (17)
- 少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であって、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料を前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有し、且つ、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料以外の材料が前記発光層中に実質的に含まれないことを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記発光層が単一の発光材料からなる層であり、且つ、前記正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であって、前記発光層を形成している発光材料を前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。 - 前記正孔輸送層中に重量平均分子量2万以上の高分子化合物が30重量%以上含有されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記正孔輸送層中に、更に、熱及び/又は光硬化性材料を含有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料が、熱及び/又は光硬化性官能基を有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記発光層が溶液塗布法により形成されてなる層であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料の溶解度パラメータをSA、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料又は発光材料以外の材料の溶解度パラメータをSBとしたときに、溶解度パラメータSAと、溶解度パラメータSBとが下記式(I)の関係を満たすことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
|SA−SB|≦2 式(I) - 前記陽極電極と正孔輸送層の間に正孔注入層を有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記陽極電極上のいずれかの層上に、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料を全固形分中に5〜50重量%含有する正孔輸送層形成用塗布液を塗布する塗布工程を有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。 - 少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接し、単一の発光材料からなる発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記陽極電極上のいずれかの層上に、前記発光層を形成する発光材料を全固形分中に5〜50重量%含有する正孔輸送層形成用塗布液を塗布する正孔輸送層形成工程を有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。 - 前記塗布工程の後に、光及び/又は熱硬化工程を有することを特徴とする、請求項10又は11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
- 前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料以外の材料が前記発光層中に実質的に含まれないことを特徴とする、請求項10又は12のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
- 前記正孔輸送層上に、発光層形成用塗布液を塗布する塗布工程を有することを特徴とする、請求項10乃至13のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
- 前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料の溶解度パラメータをSA、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料又は発光材料以外の材料の溶解度パラメータをSBとしたときに、溶解度パラメータSAと、溶解度パラメータSBとが下記式(I)の関係を満たすことを特徴とする、請求項10乃至115のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
|SA−SB|≦2 式(I) - 前記陽極電極と正孔輸送層の間に正孔注入層を有することを特徴とする、請求項10乃至16のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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