JP2008078373A - 有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低コストで容易な製造プロセスで長時間安定に駆動できる有機EL素子を提供する。
【解決手段】少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であって、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層材料を前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有し、且つ、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層材料以外の材料が前記発光層中に実質的に含まれないことを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法に関するものである。
有機EL素子は、発光層に到達した電子と正孔とが再結合する際に生じる発光を利用した電荷注入型の自発光デバイスである。この有機EL素子は、1987年にT.W.Tangらにより蛍光性金属キレート錯体とジアミン系分子とからなる薄膜を積層した素子が低い駆動電圧で高輝度な発光を示すことが実証されて以来、活発に開発されてきた。特に面発光素子である特徴からディスプレイ用途への応用が期待され、発光効率や寿命など、高性能化のための様々な開発が促進されてきた。
この高性能化の目的のために、有機EL素子の素子構造は初期の構造と比較して、近年非常に複雑化してきている。T.W.Tangらにより開発された素子の構造は、陽極/正孔注入層/発光層/陰極からなる単純な積層構造であったが、現在では、電子注入層/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/正孔注入層とからなる5層構造など、多層化した様々な構造が提案されている。この素子構造の複雑化により製造プロセスも複雑化の一途をたどり、LCDやPDPとのコスト競争において大きな課題となり、高性能化を維持しつつも、より安価なプロセスで単純な構造の素子開発が求められている。
この有機EL素子の多層の素子構成のうち、各有機層の層間に混合層を設けることにより組成的界面をなくした、高効率で長寿命な素子が報告されている。例えば、特許文献1には、発光層と電荷輸送層の間に、発光層に含まれる材料と電荷輸送層に含まれる材料との共蒸着層を設ける素子が報告されている。
また、特許文献2では、前記混合膜が膜厚方向に材料組成に濃度傾斜をつけた素子が報告されているが、作製方法が困難であった。
また、濃度傾斜のある層の作製方法に関しては、特許文献3に開示されている。
これらの共蒸着膜は、発光性ドーパントのように発光に寄与することを目的とせず、あるいはCT錯体を形成することにより導電性を顕著に高くすることを目的とせず、隣接する各々の層に含まれる材料を混合させた層を間に挿入することにより、素子の高性能化を実証したものであるが、メカニズムについては記載されていない。
これらの多層構造は、真空蒸着法により異なる材料を順次蒸着して形成できることができる。しかしながら、蒸着法の場合、大面積パネルでの膜厚や共蒸着材料同士の濃度の面内分布の均一制御、高精細なマスク蒸着による塗り分けが困難だといわれている。また、高精細なマスクや、大掛かりな真空装置など高価な設備を必要とし、さらに多層化による工程数の増加は歩留まり低下の要因となるため、製造コストが高くなるという問題がある。
単純な層構造としては、例えば溶液塗布法による高分子系発光材料を用いた素子が報告されている。例えば、特許文献4には、ポリフェニレンビニレン(PPV)を用いた素子が提案されている。塗布法では、蒸着法と比較して膜厚や共蒸着ドーパント濃度の面内分布の均一制御が容易であり、さらに材料の利用効率が高く、製造コストを抑えることができるという利点がある。しかしながら、溶液塗布法による高分子系発光材料を用いた素子は、真空蒸着法による低分子系発光材料を用いた素子と比較して効率や寿命などの性能に劣るため、真空蒸着法と同様に性能向上のために多層化などの試みもなされている。しかしながら、塗布法の場合、何層も積層すると、上の層を塗布する際に、下層が溶解してしまい、上層と下層が混ざり合ってしまうため(相溶)、積層が困難という問題がある。
そのため、下層を侵すことを前提に塗布による有機膜/有機膜積層界面に混合層を形成したり、材料が相溶して混ざり合っても特性が落ちないような材料を選択する試みが報告されている。例えば、特許文献5及び特許文献6には、有機発光層に正孔注入性材料が相溶して含有されている素子が報告されている。この文献にはTFB中間層を設けた後、その上に塗工製膜する発光層に溶解してTFBが混合され、濃度勾配を形成することにより、発光効率が高くなるという効果が報告されている。しかしながら、下層の溶解を前提とするプロセスは積層構造が不利な塗布法の都合によるものであり、素子特性の再現性に課題がある。さらに、上記のような塗布法の都合あるいは意図的に発光層に高正孔移動度な正孔輸送性材料が混合されると、多くの場合、正孔が過剰に発光層を突き抜けて電子注入層に到達するため、その結果発光効率の低下を引き起こし、短寿命の素子となりやすい。また特許文献7〜9には、発光材料と正孔輸送性材料を完全に混合させた発光層を形成した素子が報告されている。その他、溶解性差を利用して塗布による積層を試みた特許文献10も報告されている。
耐久性に優れたホール輸送性を作製する試みが報告されている。特許文献11には正孔輸送層が、架橋構造をもつ有機バインダー中にガラス転移温度の低いTPDを分散することにより、駆動によるジュール熱を原因とする結晶化による輝度劣化を改善するとの報告がある。文献中には硬化による寿命特性の向上について述べられているが、製造方法に関する効果は述べられていない。
特開2004−111080号公報 特開2003−257664号公報 特開2003−77662号公報 国際公開第90/13148号パンフレット 特表2002−507825号公報 特開2004−247313号公報 特表2004−515895号公報 特開2004−296185号公報 特開2005−63892号公報 特開2002−319488号公報 特開平7−235379号公報 E.W.Forsythe,M.A.Abkowitz,Y.Gao,and C.W.Tang,"Influence of copper phthalocynanine on the charge injection and growth modes for organic light emitting diodes,"J.Vac.Sci.Technol.A,vol.18,no.4,pp.1869−1874,2001.
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、低コストで容易な製造プロセスで長時間安定に駆動できる有機EL素子、及び有機EL素子の製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は、第一の態様として、少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であって、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料を前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有し、且つ、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料以外の材料が前記発光層中に実質的に含まれないことを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
また、本発明は、第二の態様として、少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記発光層が単一の発光材料からなる層であり、且つ、前記正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であって、前記発光層を形成している発光材料を前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
本発明によれば、前記正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であって、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料を、前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有し、且つ、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料又は発光材料以外の材料が前記発光層中に実質的に含まれないことにより、低コストで容易な製造プロセスで長時間安定に駆動できるという効果を得ることができる。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、前記正孔輸送層中に重量平均分子量2万以上の高分子化合物が30重量%以上含有されていることが、溶液塗布法により、正孔輸送層薄膜の溶剤乾燥や熱硬化などの熱プロセスに対して耐性があり、均一で凝集し難い安定性の高い薄膜を形成しやすい点から好ましい。特に発光層を塗布法により作製する場合には、正孔輸送層が低分子量成分の材料だけで構成されている場合に、発光層塗工液に溶解しない材料であっても、分子同士の結合が弱く流れてしまうという問題を、分子同士が絡まりあった高分子化合物が含まれることにより抑制することができる。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、前記正孔輸送層中に、更に、熱及び/又は光硬化性材料を含有することが、正孔輸送層を硬化させることが可能となり、上層に設ける発光層を溶液塗布法により形成することが容易になる点から好ましい。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料が、熱及び/又は光硬化性官能基を有することが、正孔輸送層を硬化させることが可能となり、上層に設ける発光層を溶液塗布法により形成することが容易になる点から好ましい。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、前記発光層が塗布法により形成されてなる層であることが、製造プロセスの簡易化、パネルの大面積化、材料の利用効率、歩留まりの向上、低コストを実現できる点から好ましい。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料が下記一般式(1)で示される化合物あることが、正孔輸送層/発光層の密着安定性が高く、さらに正孔注入層/正孔輸送層の密着安定性にも好ましく、HOMOエネルギー値の点からも好ましい。
Figure 2008078373
(式(1)において、Ar〜Arは、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。nは0〜10000、mは0〜10000であり、n+m=1〜20000である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。)
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料の溶解度パラメータをSA、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料又は発光材料以外の材料の溶解度パラメータをSBとしたときに、溶解度パラメータSAと、溶解度パラメータSBとが下記式(I)の関係を満たすことが、発光層と正孔輸送層との密着性を向上させ、寿命性能を向上させる点から好ましい。
|SA−SB|≦2 式(I)
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、前記陽極電極と正孔輸送層の間に正孔注入層を有することが、陽極からの正孔注入を円滑にしてキャリアバランスを最適化しやすい点から好ましく、さらに陽極/正孔注入層/正孔輸送層の各界面における密着安定性向上による長寿命化の点から好ましい。
更に、上記課題を解決するために、本発明は、第一の態様として、少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記陽極電極上のいずれかの層上に、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料を全固形分中に5〜50重量%含有する正孔輸送層形成用塗布液を塗布する塗布工程を有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供する。
また、本発明は、第二の態様として、少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接し、単一の発光材料からなる発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記陽極電極上のいずれかの層上に、前記発光層を形成する発光材料を全固形分中に5〜50重量%含有する正孔輸送層形成用塗布液を塗布する正孔輸送層形成工程を有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供する。
本発明の製造方法によれば、前記正孔輸送層が正孔輸送層形成用塗布液を塗布する溶液塗布法により形成され、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料を、前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有することにより、低コストで容易な製造プロセスで、長時間安定に駆動できる有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができる。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法においては、前記塗布工程の後に、光及び/又は熱硬化工程を有することが好ましい。前記正孔輸送層形成用塗布液中に、熱及び/又は光硬化性官能基を有する場合には、更に光及び/又は熱硬化工程を有することにより、正孔輸送層を硬化させることが可能になり、上層に設ける発光層を更に溶液塗布法により形成する際に、正孔輸送層と発光層の相溶を抑制することができる。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法においては、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料以外の材料が前記発光層中に実質的に含まれないことが、キャリアバランスを崩さず、さらに再結合エネルギーがドーパントもしくは発光基へ移動する確率を低下させずに高電流効率を維持すると共に駆動寿命が向上する点から好ましい。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法においては、前記正孔輸送層上に、発光層形成用塗布液を塗布する塗布工程を有することが、製造プロセスの簡易化、パネルの大面積化、材料の利用効率、歩留まりの向上、低コストを実現できる点から好ましい。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法においては、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料が下記一般式(1)で示される化合物あることが好ましい。
Figure 2008078373
(式(1)において、Ar〜Arは、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。nは0〜10000、mは0〜10000であり、n+m=1〜20000である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。)
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法においては、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料の溶解度パラメータをSA、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料又は発光材料以外の材料の溶解度パラメータをSBとしたときに、溶解度パラメータSAと、溶解度パラメータSBとが下記式(I)の関係を満たすことが好ましい。
|SA−SB|≦2 式(I)
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法においては、前記陽極電極と正孔輸送層の間に正孔注入層を有することが好ましい。
本発明の有機EL素子は、低コストで容易な製造プロセスで製造可能で、長時間安定に駆動できるという効果を奏する。
本発明の有機EL素子の製造方法は、低コストで容易な製造プロセスで、長時間安定に駆動できる有機EL素子を提供できるという効果を奏する。
すなわち、本発明により、蒸着法で作製される多層化された有機EL素子における作製方法の複雑化や製造コストが高くなるという課題を解決し、且つ、溶液塗布法で作製される有機EL素子の課題であった寿命性能を著しく向上することが可能となる。
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関するものである。以下、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法について順に説明する。
I.有機エレクトロルミネッセンス素子
まず、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子という場合がある。)について説明する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、第一の態様として、少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であって、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料を前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有し、且つ、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料以外の材料が前記発光層中に実質的に含まれないことを特徴とするものである。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、第二の態様として、少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記発光層が単一の発光材料からなる層であり、且つ、前記正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であって、前記発光層を形成している発光材料を前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有することを特徴とするものである。
本発明によれば、前記正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であって、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料を、前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有し、且つ、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料又は発光材料以外の材料が前記発光層中に実質的に含まれないことにより、低コストで容易な製造プロセスで長時間安定に駆動できるという効果を得ることができる。
溶液塗布法により作製される有機EL素子は、真空蒸着法により作製される場合に比べて大掛かりな蒸着装置が不要で、作製プロセス工程の簡便化が期待でき、材料の利用効率も高く、コストが安価で、基材の大面積化が可能というメリットがあるが、従来、材料自体が安定な塗膜を形成し難い場合があったり、多数積層しようとすると塗膜作製に使用した溶液が下層の有機膜を侵してしまい、全層を真空蒸着法により作成された素子と同等の所望の性能や効果を得ることは困難であるという問題があった。
この点、本発明によれば、正孔輸送層が前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料を、前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有し、且つ、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料又は発光材料以外の材料が前記発光層中に実質的に含まれないことにより、正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であっても、長時間安定に駆動できるという効果を得ることができる。
本発明に用いられる正孔輸送層が、正孔輸送層が前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料を、前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有し、且つ、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料又は発光材料以外の材料が前記発光層中に実質的に含まれないことにより、正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であっても、長時間安定に駆動できるのは次のような理由によるものと考えられる。
すなわち、本発明者らは、有機EL素子の輝度劣化を抑制するための一つの対策として、特に一番電荷が溜まり電界が集中する発光層と、発光層に隣接する正孔輸送層との界面(発光層/正孔輸送層界面)の密着安定性に着眼した。
異なる有機材料同士を積層する際には、層間の密着安定性まで考慮した設計が重要であり、これは材料同士の分子内化学構造や極性の違いに起因する。有機EL素子の正孔輸送性材料には、多くの場合、NPDやTFBなどのアミン系の基を含む分子内に極性を持つ有機材料が用いられるが、一方で発光層にはC−CあるいはC−H結合を中心とした多芳香環基の有機材料が用いられ、これらは基本骨格の分子構造も局所的な(数nmの長さオーダー)極性も異なる。分子構造や極性の違いは、有機物材料同士の凝集力に差を生じさせるため、有機分子同士の相溶性(濡れ性)に影響する。この有機分子同士の濡れ性を表す一つの指標としては、極性や基本骨格を反映した分子全体の平均値となってしまうが、溶解度パラメーター(SP値)を利用することも可能である(非特許文献1)。
このような正孔輸送層上に、分子構造や極性やSP値が大きく異なる発光層を積層した場合、有機膜/有機膜界面の膜同士の濡れ性は低く不安定な準安定状態となる。
図3に、正孔輸送層11上に発光層12を積層させた、界面を形成する両材料のSP値に極端に差がある積層体の断面概念図を示す。積層当初は図3(a)のように空隙のない積層体であっても、有機分子が動きうる場合、例えば有機分子のガラス転移温度(Tg)以上の温度にある場合や、Tg以下の温度でも素子が駆動されている場合には、図3(b)のように界面近傍の有機分子はエネルギー的に安定な状態へと、つまり発光層12/正孔輸送層11界面の互いの材料同士の接触面積ができるだけ小さくなるように分子は移動する。
一方、有機分子が移動可能な場合であっても、界面を形成する両材料の分子構造や極性やSP値が比較的類似している場合は、材料同士が混合し、濡れ広がっている状態がエネルギー的に安定な状態であるので、駆動によって有機膜/有機膜界面の接触面積は変化しにくく安定である。
ここで駆動中の分子がTg以下の温度でも動きうることに注意する必要がある。正孔注入・輸送材料の分子の電子構造は、正孔を隣の分子へ輸送するたびに基底状態とカチオン状態を繰り返す。基底状態とカチオン状態では一般に分子の形が異なるため、正孔を輸送しながら分子は激しく分子内運動をする。分子同士が近接している薄膜中では、分子内運動は分子同士の相対運動に変換される、つまりTg以下でも分子は駆動により移動できる。
連続駆動により接触面積が小さくなった有機膜/有機膜界面には異種材料間でそれぞれ凝集核が発生し、成長してグレインを形成する。分子構造や極性やSP値が大きく異なる異種材料のグレイン同士は、接触面積が小さいほどエネルギー的に安定であるので、グレイン間には1〜2nm程度の間隙が発生する場合がある。分子間の電荷移動は、分子間距離が1〜2nm程度以下で可能な現象であるので、間隙が発生した有機膜/有機膜界面では、初期状態から比較して正孔の注入が減少する方向に変化(劣化)する。このように正孔注入特性が劣化する場合であっても、その界面が全正孔電流の律速箇所つまり最も電界が集中する箇所でなければ寿命特性には直接影響しないが、律速箇所である場合にはキャリアバランスを初期状態から変化させる主因になる。通常、有機EL素子では発光層、特に発光層中でも発光層/正孔輸送層界面近傍に電界がかかるようにして正負キャリアを溜め込み、そこでキャリアが再結合して発光するように素子設計される場合が多い。従って、発光層あるいは発光層/正孔輸送層界面の密着安定性が低ければ、駆動電圧が高電圧化しキャリアバランスが初期状態から変化して輝度劣化すると考えられる。
以上より、発光層に用いられる材料を正孔輸送層にあらかじめ混合させておけば、接触する発光層と正孔輸送層の層中全体の平均の化学構造や極性やSP値を類似させることができ、有機EL素子を駆動させたときに、界面近傍の分子の移動による初期状態からの変化の影響は小さく、駆動中も駆動前の初期状態の接触面積を維持できると予測される。
更に、本発明においては、発光層に、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料又は発光材料以外の材料が実質的に含まれないことを特徴とする。すなわち、本発明における発光層には、正孔輸送層を構成するための正孔輸送層のみに含まれる正孔輸送性の材料が実質的に含まれない。(以下、正孔輸送層のみに含まれる正孔輸送性の材料を「正孔輸送層用材料」という場合がある。)前述のように、素子に電圧を印加した時に、発光層に電界が集中する必要がある。正孔輸送層に用いられる高移動度な正孔輸送性材料が発光層に混合された場合には、素子の駆動電圧は低下するが、発光層の正孔移動度が高くなる。その結果、正孔が電子輸送層側にまで到達するようにキャリアバランスが崩れ、電子輸送層での再結合も発生する。電子輸送層での再結合は、発光色への電子輸送層材料の発光色の混色や効率低下の原因となる。さらに、発光層への正孔輸送層用材料の混入は、再結合エネルギーのドーパントへの移動を確率的に阻害することになり、量子収率を低下させるため、やはり効率低下の原因となり、結果として寿命は短くなる。従って、意図的に発光層へ正孔輸送層用材料を混ぜるのではなく、実質的に含まれないようにして、短寿命の素子となりやすいことを防止することを特徴とする。
以上に述べたようなキャリアを律速する箇所の界面密着安定性の効果と、駆動中のキャリアバランスが保持される効果によって、本発明においては正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であっても、長時間安定に駆動できるという効果を得ることができると考えられる。
ここで、SP値の近い材料同士は混合しやすく、かえって界面の組成比を変化させやすくする可能性があることが懸念されるが、寿命特性を支配する主因ではないと推測される。その理由は、発光層への高移動度な正孔輸送性材料の拡散の影響は低電圧化であるのに対し、駆動による輝度劣化の場合は通常駆動電圧上昇を伴うこと、さらに、輸送層側に発光層の主成分材料がすでに混合されているため分子移動が多少あったとしても組成比の変化は小さいと考えられることが挙げられる。
本発明においては、以上のようにキャリアを律速する箇所(発光層/正孔輸送層)の界面の密着安定性とキャリアバランスを考慮した結果、複数の材料の混合膜である正孔輸送層を塗布法で形成することが可能となる。本発明における正孔輸送層は、複数の材料を塗工液中に溶解させて塗布するだけで容易に安価に大面積に形成することができ、共蒸着と比較して製造コストを大幅に抑えることができるという効果が得られる。さらに、本発明では発光層/正孔輸送層界面の密着安定性による長寿命化に着目したものであるため、正孔輸送層として、複数の材料混合層とそれとは別の正孔輸送層が必須など、より複雑な多層構造を必要としない。
本発明の有機EL素子について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明の有機EL素子は、陽極電極2が形成された基板1上に、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、及び陰極電極6をこの順に有して形成されており、正孔輸送層4と発光層5とが直接接している。
図1の例においては、正孔注入層3及び正孔輸送層4の2層を有する構成であるが、正孔輸送層は、更に正孔注入機能を付与することにより、正孔注入機能を有する正孔輸送層として、直接陽極上に形成することも可能である。基板1は、有機デバイスを構成する各層を形成するための支持体であり、必ずしも陽極電極2の表面に設けられる必要はなく、有機EL素子の最も外側の面に設けられていればよい。陰極電極6は、対向する陽極電極2との間に正孔注入層3、正孔輸送層4、当該正孔輸送層4に隣接した発光層5が存在する場所に設けられる。
また、発光層5と陰極電極6の間には、必要に応じて更に、電子注入層、及び/又は、電子輸送層が設けられていても良い。発光層5と陰極電極6の間には、図2に示すように電子輸送層7及び電子注入層8が設けられていてもよいし、電子注入層8のみが設けられていても良い。また、発光層5と陰極電極6の間には、単層で電子注入機能と電子輸送機能を有するような電子注入輸送層が設けられていてもよい。
上記有機EL素子は、陽極と陰極の間に電場を印加されると、正孔が陽極電極2から正孔注入層3及び正孔輸送層4を経て発光層5に注入され、且つ電子が陰極電極6から発光層5に注入されることにより、発光層5の内部で注入された正孔と電子が再結合し、素子の外部に発光する機能を有する。素子の外部に光を放射するため、発光層の少なくとも一方の面に存在する全ての層は、可視波長域のうち少なくとも一部の波長の光に対する透過性を有することを必要とする。
発光層以外の、電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層には、電荷を注入しやすくする、あるいはブロックすることにより電子電流と正孔電流のバランスを保持する効果や、光エネルギー励起子の拡散を抑制するなどの効果があるといわれている。どの層構造が最適であるかは発光層に用いられる材料の物性により異なるため、高性能を発揮できるように適宜選択される。
各層に用いられる材料を選択する際には、発光層への電荷の注入および輸送特性を円滑にするために、各材料のHOMOエネルギーとLUMOエネルギーを考慮して、素子構造が設計される場合が多い。これにより、キャリアのバランスが最適化されて発光効率を向上させることが可能となるからである。具体的には、正孔の移動を円滑にするためには、各層に含有される材料のHOMOレベルまたは仕事関数が陽極<正孔注入層<正孔輸送層<発光層の順に大きくなることが好ましく、これにより、各界面でのキャリアの注入障壁を小さくすることができる。一方、LUMOレベルは陰極<電子注入層<電子輸送層<発光層の順に大きくなることが好ましい。ただし、HOMOとLUMOのエネルギー値を必ずしもこのように配置しなくても、電荷の移動度が最適化されることにより効率が高いあるいは長寿命など良好な素子性能が得られる場合がある。特に寿命特性においては、上述のように、各層に用いられる材料の構造類似性、極性の類似性、SP値の類似性なども重要な因子であると考えられ、密着安定性を向上させる効果により長寿命が期待される。
以下、本発明に係る有機EL素子の各構成について詳細に説明する。
1.発光層
本発明に用いられる発光層5は、後述する正孔輸送層4に隣接して形成されるものである。
本発明の発光層に用いられる材料としては、通常、発光材料として用いられている材料であれば特に限定されず、蛍光材料およびりん光材料のいずれも用いることができる。具体的には、色素系発光材料、金属錯体系発光材料等の材料を挙げることができ、低分子化合物または高分子化合物のいずれも用いることができる。
本発明に係る有機EL素子の第一の態様は、当該発光層が2種以上の発光材料が含まれてなるものであり、1種又は2種以上の化合物から構成される発光層ホスト材料にドーピング材料として蛍光材料又はりん光材料を分散させてなるものである。ここで、発光層ホスト材料とは、発光層において電荷を輸送したり、キャリアを再結合させてドーパントにエネルギーを移動させたり、ドーパントを分散させて濃度消光を防止する機能を担う材料であり、発光したとしても発光層における発光色の主要成分ではないものである。一方、ドーピング材料とは、量子収率が高く、励起−再結合サイクルにおける耐久性の高い材料であり、その分子を発光させる目的で添加される材料であり、その材料の発光色が有機EL素子の発光色の主要成分である。上記発光層ホスト材料としては、1種又は2種以上混合して用いることができる。また、上記ドーピング材料としても、1種又は2種以上混合して用いることができる。発光層ホスト材料として2種以上混合して用いる場合、本発明の発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料とは、2種以上の混合物の合計量が50重量%以上含まれる意である。具体的には例えば、発光層中に含まれる発光層ホスト材料が、発光層中に40重量%含まれる化合物Aと40重量%含まれる化合物Bと10重量%含まれる化合物Cの混合物からなる場合、混合物の発光層ホスト材料は合計で発光層中に90重量%含まれ、上記「発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料」に包含される。
更に、第一の態様の発光層においては、後述する正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、正孔輸送層に含まれている発光層ホスト材料以外の材料が実質的に含まれない。ここで、「実質的に含まれない」とは、発光層中に隣接した正孔輸送層中に含有されている正孔輸送材料を積極的に含有させたものではない意味であり、発光層を塗布形成した際に界面での相溶において若干量(層に対して10重量%未満程度)混入されている場合は包含される。相溶による混入は制御することが難しく、素子特性の再現性を低くするので、発光層を塗布して作製する場合には、正孔輸送層を硬化させることが好ましい。
また、本発明に係る有機EL素子の第二の態様は、当該発光層が、単一の発光材料からなる層である。第二の態様における発光層は、実質的に単一の発光材料のみからなるものであって、正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料は実質的に含まれない。第二の態様に用いられる発光材料は、前記ドーピング材料と共に用いられない、それ自身が発光する材料である。
このように本発明においては、発光層に、正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち発光層ホスト材料以外の材料が実質的に含まれないことにより、発光層の上に存在する層が発光することを防止でき、発光効率や素子寿命を混入による劣化を抑制することができる。
(色素系発光材料の具体例)
色素系発光材料としては、例えば、アリールアミン誘導体、アントラセン誘導体、(フェニルアントラセン誘導体)、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、シロール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、スチルベン誘導体、スピロ化合物、チオフェン環化合物、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリアゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、ピラゾリンダイマー、ピリジン環化合物、フルオレン誘導体、フェナントロリン類、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体等を挙げることができる。またこれらの2量体や3量体やオリゴマー、2種類以上の誘導体の化合物も用いることができる。
具体的には、トリフェニルアミン誘導体としてはN,N´−ビス−(3−メチルフェニル)−N,N´−ビス−(フェニル)−ベンジジン(TPD)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、アリールアミン類としてはビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン)(α−NPD)、オキサジアゾール誘導体としては(2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)、アントラセン誘導体としては9,10−ジ−2−ナフチルアントラセン(DNA)、カルバゾール誘導体としては4,4−N,N´−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)、1,4−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ベンゼン(DPVBi)フェナントロリン類の具体例としては、バソキュプロイン、バソフェナントロリン等が挙げられる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
(金属錯体系発光材料の具体例)
金属錯体系発光材料としては、例えばアルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、あるいは中心金属にAl、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダール、キノリン構造等を有する金属錯体を挙げることができる。
具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)、ビス(2−メチル−8−キノリラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム錯体(BAlq)、トリ(ジベンゾイルメチル)フェナントロリンユーロピウム錯体、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体(BeBq)を挙げることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
(高分子系発光材料)
高分子系発光材料としては、分子内に上記低分子系材料を分子内に直鎖あるいは側鎖あるいは官能基として導入されたもの、重合体およびデンドリマー等を使用することができる。
例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、及びそれらの共重合体等を挙げることができる。
(ドーピング材料の具体例)
上記発光層中には、発光効率の向上や発光波長を変化させる等の目的でドーピング材料を添加してもよい。高分子系材料の場合は、これらを分子構造の中に発光基として含んでいても良い。このようなドーピング材料としては、例えばペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクドリン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体を挙げることができる。またこれらにスピロ基を導入した化合物も用いることができる。
具体的には、1−tert−ブチル―ペリレン(TBP)、クマリン6、ナイルレッド、1,4−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ベンゼン(DPVBi)、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン(TPB)等を挙げることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、りん光系のドーパントとして、白金やイリジウムなどの重金属イオンを中心に有し、燐光を示す有機金属錯体が使用可能である。具体的には、Ir(ppy)、(ppy)Ir(acac)、Ir(BQ)、(BQ)Ir(acac)、Ir(THP)、(THP)Ir(acac)、Ir(BO)、(BO)(acac)、Ir(BT)、(BT)Ir(acac)、Ir(BTP)、(BTP)Ir(acac)、FIr6、PtOEP等を用いることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
本発明においては、発光層の材料としては蛍光発光する低分子化合物または高分子化合物や、燐光発光する低分子化合物または高分子化合物のいずれをも用いることができる。本発明に用いられる発光層は、低分子化合物と高分子化合物のいずれかのみを含有していてもよく、低分子化合物と高分子化合物とを混合して含有していてもよい。中でも、発光層が低分子系発光材料のみを含有するものであることは、発光特性の点から好ましい。低分子系発光材料は高分子系発光材料と比較して発光効率が高く長寿命であり、材料性能に優れているからである。また、低分子系発光材料にその他の材料を添加すると、発光特性が低下する場合があるからである。
本発明に用いられる低分子系発光材料の分子量としては、70〜2500程度であり、好ましくは100〜2000の範囲内である。分子量が上記範囲未満である低分子系発光材料では、一般的にガラス転移温度が低い場合が多く、加熱により溶剤を十分に乾燥させることが困難となる場合があるからである。逆に、分子量が上記範囲より大きいと、低分子系発光材料を蒸発または昇華させることが困難となり、精製するなど高純度化させることが困難となる場合があるからである。
低分子系発光材料の分子量は、分子構造から決定される。低分子系発光材料の構造は、一般的に、NMR法、IR法、質量分析法などにより決定される。
一方、発光層を溶液塗布法により形成しやすい点からは、高分子化合物を用いることが好ましい。この場合、蛍光発光する高分子系発光材料または蛍光発光する低分子系発光材料を含む高分子化合物や、燐光発光する高分子系発光材料または燐光発光する低分子系発光材料を含む高分子化合物を好適に用いることができる。本発明の発光層に用いられる高分子化合物の分子量としては、2万〜100万程度が好ましく、更に好ましくは5万〜50万の範囲内である。分子量が上記範囲未満であると、発光層薄膜の溶剤乾燥などの熱プロセスに対して耐性が低いため、均一で凝集し難い安定性の高い薄膜を得がたくなる場合があるからである。逆に、分子量が上記範囲より大きいと、溶剤への溶解性が低くなり、溶剤の選択が著しく狭まる場合があるからである。なお、高分子化合物の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー (GPC)測定を行いポリスチレン換算した重量平均分子量によって求めることができる。
発光層の厚みとしては、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を発現することができる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば1nm〜5μm程度とすることができ、好ましくは5nm〜500nm程度である。
発光層は、発光材料を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、EB蒸着法、イオンプレーティング法等の物理的蒸着(PVD)法、あるいは、化学的蒸着(CVD)法、溶液塗布法、転写法などの方法により形成することができる。中でも、発光層は溶液塗布法により形成されてなることが好ましい。その理由は、溶剤に複数の材料を溶解させた塗工液を塗布するだけで容易に再現よく混合薄膜を形成できるため、蒸着法と比較して膜厚や共蒸着ドーパント濃度の面内分布の均一制御が容易であり、さらに材料の利用効率が高く、製造コストを抑えることができるからである。溶液塗布法は、後述する有機EL素子の製造方法の項目において説明する。
蒸着法は、例えば真空蒸着法の場合には、発光層の材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10‐4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して、発光層の材料を蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた基板1、陽極電極2、正孔注入層3、及び正孔輸送層4の積層体の上に発光層5を形成させる。転写法は、例えば、予めフィルム上に溶液塗布法又は蒸着法で形成した発光層を、電極上に設けた正孔輸送層4に貼り合わせ、加熱により発光層を正孔輸送層に転写することにより形成される。また、剥離フィルム、発光層5、正孔輸送層4の順に積層された積層体の正孔輸送層側を、陽極電極2の上に転写してもよい。
2.正孔輸送層
本発明に用いられる正孔輸送層4は、上記発光層5に隣接して形成されている層である。 正孔輸送層4は、通常は後述する正孔注入層3の上に形成される場合が多いが、正孔輸送層に正孔注入機能を付与することにより、正孔注入層と一体化して単層として直接陽極電極2の上に直接形成することもできる。また、本発明に用いられる正孔輸送層4は、2層以上に多層化することも可能であるが、プロセス簡易性を考慮すると好ましくない。
本発明に用いられる正孔輸送層4は、溶液塗布法により形成されてなる層である。溶液塗布法は、後述する有機EL素子の製造方法の項目において説明する。溶液塗布法を用いると、本発明の正孔輸送層のような、材料が2種以上混合された混合膜を作製する場合には、溶剤に複数材料を溶解させて製膜するだけで、混合比率の再現性や面内分布の均一制御が容易で歩留まりが向上し、さらに材料の利用効率が高く、製造コストを抑えることができるという利点がある。一方、蒸着法の場合には、製造設備が大掛かりで高価であるだけでなく、多種材料を共蒸着するために、材料比率の再現性や濃度の面内分布の均一制御が困難であり、歩留まりなど課題が多かった。なお、正孔輸送層が塗布法により形成されてなる層であることは、パージ&トラップ−GC/MS法等を用いて溶剤を検知することにより確認することができる。さらに、正孔輸送層端部の形状を顕微鏡などで観察することにより、蒸着法により形成された層と区別することができる。
更に、本発明に用いられる正孔輸送層は、前記発光層が2種以上の材料を含有してなる第一の態様においては、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料を前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有することを特徴とする。ここで、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料が2種以上の混合物である場合、正孔輸送層中に含まれる発光層ホスト材料は、発光層に用いられている2種以上の化合物のうち、1種のみを用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。例えば、発光層中に含まれる発光層ホスト材料が発光層中に40重量%含まれる化合物Aと40重量%含まれる化合物Bと10重量%含まれる化合物Cの混合物からなり、合計で発光層中に50重量%以上含まれる場合、正孔輸送層中に含まれる発光層ホスト材料は、化合物A、化合物B、及び化合物Cよりなる群から選択される2種以上の混合物であっても良いし、化合物A、化合物B、又は化合物Cのいずれか1種のみでも良い。発光層と正孔輸送層との界面密着性を向上させる点からは、発光層ホスト材料が2種以上の混合物である場合、発光層ホスト材料のうちのより多く含有される成分を主体として含むことが好ましく、最も含有量が多い成分を1つ用いるか、より多く含まれる成分を2種以上混合して用いることが好ましい。正孔輸送層中に含まれる発光層ホスト材料を2種以上の混合物として用いる場合の混合比は界面密着性との観点から例えば発光層と同じ混合比にするなど適宜選択され、特に限定されるものではない。
また、本発明に用いられる正孔輸送層は、前記発光層が単一の発光材料からなる第二の態様においては、前記発光層を形成している発光材料を前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有することを特徴とする。
本発明においては、正孔輸送層に、発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料を前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有し、且つ、正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料又は発光材料以外の材料が前記発光層中に実質的に含まれないため、上述のように界面密着性とキャリアバランスの相乗効果により、長時間安定に駆動できる有機EL素子を実現することが可能になる。正孔輸送層中に、発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料は、5〜45重量%含有されることが更に好ましく、5〜35重量%含有されることが特に好ましい。
また、正孔輸送層において、発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料は、正孔輸送層のみに含まれる正孔輸送層用材料100重量部に対して、10〜80重量部の範囲で含有されることが好ましく、更に15〜70重量部、より更に20〜60重量部の範囲で含有されることが好ましい。
本発明の正孔輸送層に用いられる正孔輸送性の材料には、正孔を輸送することが可能な材料であれば特に限定されるものではなく、高分子系の材料および低分子系の材料のいずれも用いることができる。中でも、正孔移動度が高い材料であることが好ましい。さらに陰極から移動してきた電子の突き抜けを防止することが可能な材料であることが好ましい。これにより、発光層内での正孔および電子の再結合効率を高めることができるからである。
このような正孔輸送性を有する材料としては、例えばアリールアミン誘導体、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体、チオフェン誘導体、フルオレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スピロ化合物等を挙げることができる。アリールアミン誘導体の具体的としては、ビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)−ベンジジン(α−NPD)、N,N´−ビス−(3−メチルフェニル)−N,N´−ビス−(フェニル)−ベンジジン(TPD)、コポリ[3,3´−ヒドロキシ−テトラフェニルベンジジン/ジエチレングリコール]カーボネート(PC−TPD−DEG)等を挙げることができる。アントラセン誘導体類の具体例としては、9,10−ジ−2−ナフチルアントラセン(DNA)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(9,10−アントラセン)]等を挙げることができる。カルバゾール類の具体例としては、4,4−N,N´−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)等を挙げることができる。チオフェン誘導体類の具体例としては、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(ビチオフェン)]等を挙げることができる。フルオレン誘導体の具体例としては、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4´−(N−(4−sec−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)等を挙げることができる。ジスチリルベンゼン誘導体の具体例としては、1,4−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ベンゼン(DPVBi)を挙げることができる。スピロ化合物の具体例としては、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−co−(9,9´−スピロ−ビフルオレン−2,7−ジイル)]等を挙げることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
正孔輸送層を形成する正孔輸送性の材料としては、中でも、下記一般式(1)で示される化合物あることが、正孔輸送層/発光層の密着安定性が高く、さらに正孔注入層/正孔輸送層の密着安定性にも好ましく、HOMOエネルギー値の点からも好ましい。
Figure 2008078373
(式(1)において、Ar〜Arは、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。nは0〜10000、mは0〜10000であり、n+m=1〜20000である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。)
また、2つの繰り返し単位の配列は任意であり、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
nの平均は、0〜5000であることが好ましく、更に1〜3000であることが好ましい。また、mの平均は、0〜5000であることが好ましく、更に1〜3000であることが好ましい。また、n+mの平均は、1〜10000であることが好ましく、更に1〜6000であることが好ましい。
上記一般式(1)のAr〜Arにおいて、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換の芳香族炭化水素基、または原子数が4個以上60個以下からなる未置換の複素環基としては、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、チオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体、スピロ化合物、フェニレンビニレン誘導体、スチレン誘導体、スチリル誘導体などから選ばれる芳香環から水素原子を1又は2個除いた残基を挙げることができる。
上記一般式(1)のAr〜Arが置換基を有する場合、当該置換基は、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基であることが好ましい。
上記一般式(1)で示される化合物として、具体的には例えば、下記式(2)で示されるポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4’−(N−(4−sec−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)、下記式(3)で示されるポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−co−(N,N’−ビス{4−ブチルフェニル}−ベンジジンN,N’−{1,4−ジフェニレン})]、下記式(4)で示されるポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)]が好適な化合物として挙げられる。
Figure 2008078373
Figure 2008078373
Figure 2008078373
上記正孔輸送層は、必要に応じてバインダー樹脂や硬化性樹脂や塗布性改良剤などの添加剤を含んでいても良い。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。また、本発明に係る正孔輸送層中には、更に、熱及び/又は光硬化性材料を含有することが好ましい。或いは、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料が、熱及び/又は光硬化性官能基を有することが好ましい。ここで、上記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料とは、正孔輸送層に含まれる前記発光層ホスト材料又は発光材料、並びに、実質的に正孔輸送層のみに含まれている正孔輸送性材料が包含される。
熱及び/又は光硬化性を有することにより、正孔輸送層を硬化させることが可能になるため、隣接する発光層を塗布により形成した場合であっても、発光層形成用塗布液を塗布する際に正孔輸送層の構成成分の溶出を低減することができる。もし正孔輸送層の高正孔移動度な正孔輸送性材料が発光層に混入した場合、電界が集中するべき発光層の正孔移動度が高くなり、キャリアバランスが崩れ、正孔が電子輸送層にまで到達して電子輸送層での再結合も発生する。電子輸送層での再結合は、発光色への電子輸送層材料の発光色の混色や効率低下の原因となる。さらに、発光層への正孔輸送層材料の混入は、再結合エネルギーのドーパントへの移動を確率的に阻害し、量子収率を低下させるため、やはり効率低下の原因となり、結果として寿命は短くなる。従って、熱及び/又は光硬化性を含有させて正孔輸送層を硬化させることにより、発光層塗工時の正孔輸送層材料の発光層への溶出による素子特性の劣化を防止することが可能になり、発光効率を向上させ、また著しく素子寿命を向上させることが可能になる。
更に添加される熱及び/又は光硬化性材料としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、シランカップリング剤;ビニル基、ビニレン基、アクリロイル基、メタクリロイル基などのエチレン性二重結合を分子内に2つ以上有する化合物等を挙げることができる。中でも、正孔輸送層内の他の材料との分子極性やSP値の類似性の高い材料を選択して用いることが好ましい。その理由は、溶剤乾燥や熱硬化などの加熱プロセスの際に、正孔輸送性材料と分子極性やSP値が大きく異なる硬化性官能基の密度が高いと、前述の有機層/有機層界面の場合と同様に、素子駆動中に相分離による凝集が発生し、寿命特性に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、アクリロイル基などは極性の大きな酸素二重結合を分子内に持つためSP値は大きく、寿命特性を劣化させないためには硬化性官能基の密度を低くする必要があるが、硬化特性を低下させてしまうというトレードオフの関係にあり問題となる場合がある。一方、極性の大きな酸素二重結合を分子内に有しないビニル基やビニレン基の場合は、多くの正孔輸送性材料との分子極性やSP値が近くなり易く、硬化性官能基の密度を高くできるので、他の基を持つ材料よりも好ましい。
また、上記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料に導入されている熱及び/又は光硬化性官能基としては、アクリロイル基やメタクリロイル基などのアクリル系の官能基、またはビニル基、ビニレン基、エポキシ基、イソシアネート基、シンナメート基、シンナモイル基、クマリン基、カルバゾール基等を挙げることができる。分子内に上記硬化性の官能基が導入された正孔輸送性の材料としては、具体的には、フルオレン誘導体でビニル基を構造内に持つ、下記式(5)で示されるポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alto−co−(9,9−ジ−{5‐ペンテニル}−フルオレニル−2,7−ジイル)]や、下記式(6)で示されるポリ[(9,9−ジ−{5‐ペンテニル}−フルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4´−(N−(4−sec−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](熱硬化性TFB)を挙げることができる。
Figure 2008078373
Figure 2008078373
なお、熱及び/又は光硬化性官能基を有する場合には、例えば、硬化反応を促進させるような硬化剤や、光反応を開始するための添加剤が更に含まれていても良い。具体的には、エポキシ基を有する場合に酸などの硬化剤、エチレン性二重結合を有する場合に光重合開始剤を含有していても良い。
本発明に係る正孔輸送層中に、正孔輸送性の材料とは別に、更に熱及び/又は光硬化性材料を含有する場合、上記硬化剤や光反応開始剤等の添加剤を含めた熱及び/又は光硬化性組成物の含有量は、層の硬化性と発光特性との兼ね合いから適宜選択され特に限定されないが、通常、正孔輸送層中に10〜80重量%含有されることが好ましく、20〜70重量%含有されることがより好ましい。
また、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料が、熱及び/又は光硬化性官能基を有する場合の上記硬化剤や光反応開始剤等の添加剤の量は層の硬化性と発光特性との兼ね合いから適宜選択される。
また、本発明に用いられる正孔輸送層の材料を選択するに当たり、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料の溶解度パラメータをSA、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料又は発光材料以外の材料の溶解度パラメータをSBとしたときに、溶解度パラメータSAと、溶解度パラメータSBとが下記式(I)の関係を満たすことが発光層と正孔輸送層との密着性を向上させ、寿命性能を向上させる点から好ましい。
|SA−SB|≦2 式(I)
ここで、溶解度パラメータ(以下、SP値と称呼する場合がある。)とは、物質同士の相溶性、非相溶性を示す指標であり、分子中の基の極性と関係する指標である。接触する2つの物質間でSP値の差が小さければ、2つの分子同士の極性の差も小さくなる。この場合、2つの物質間での凝集力が近くなるため、相溶性、溶解性が大きく、易溶性となり、界面の密着安定性つまり接触面積は安定に保たれる。一方、SP値の差が大きければ、2つの物質間での凝集力の差も大きくなる。この場合、相溶性、溶解性が小さく、難溶性乃至不溶性となり、界面の密着は不安定であり、2つの物質間での接触面積を小さくするように界面が変化する。溶解度パラメータは、重合体であれば1繰り返し単位で算出し、非重合体であれば分子全体で算出する。また、発光層ホスト材料や正孔輸送性の材料が2種以上用いられる場合、上記溶解度パラメータは混合割合に応じた平均値で算出する。
SP値の測定方法や計算方法は幾つかあるが、本発明においては、Bicerranoの方法[Prediction of polymer properties, Marcel Dekker Inc., New York (1993)]により決定する。Bicerranoの方法では高分子の溶解度パラメータを、原子団寄与法により求めている。
この文献から求められない場合は、他の公知の文献、例えば、Fedorsの方法[Fedors, R. F., Polymer Eng. Sci., 14, 147 (1974)]あるいはAskadskiiの方法[A. A. Askadaskii et al., Vysokomol. Soyed., A19, 1004 (1977).]に示された方法を用いることができる。Fedorsの方法では高分子の溶解度パラメータを、原子団寄与法により求めているが、原子団寄与法とは分子をいくつかの原子団に分割し、各原子団に経験パラメータを割り振って分子全体の物性を決定する手法である。
分子の溶解性度パラメータδは以下の式で定義される。
δ≡(δd2+δp2+δh2)1/2
ここに、δdはLondon分散力項、δpは分子分極項、δhは水素結合項である。
各項は、当該分子の構成原子団iの各項のモル引力乗数(Fdi,Fpi,Ehi)及びモル体積Viを用いて以下の式で計算される。
δd2=ΣFdi/ΣVi
δp2=(ΣFpi2)1/2/ΣVi
δh2=(ΣEhi/ΣVi)1/2
構成原子団iの各項のモル引力乗数(Fdi,Fpi,Ehi)及び分子容Viは表1に示す3次元溶解度パラメータ計算表に掲載の数値を用いる。この表に掲載されていない原子団については、各項のモル引力乗数(Fdi,Fpi,Ehi)はvan Krevelenによる値(下記文献A及びB)を使用し、モル体積ViはFedorsによる値(文献C)を使用する。
Figure 2008078373
文献A:K.E.Meusburger : "Pesticide Formulations : Innovations and Developments" Chapter 14 (Am. Chem.Soc.), 151-162(1988)
文献B:A.F.M.Barton : "Handbook of Solubility Parameters and Other Cohesion Parameters" (CRC Press Inc., Boca Raton,FL) (1983)
文献C:R.F.Fedors : Polymer Eng. Sci., 14,(2), 147-154 (1974)
なお、有機表面の濡れ性やSP値を評価するための実験的な評価方法として溶剤を用いた接触角測定法などがあるが、このようなマクロな測定法では平均化された濡れ性を評価することになる。従って、nmスケールの長さオーダーでの濡れ性および密着安定性を評価する方法として上記計算による方法が望ましい。
本発明においては、正孔輸送層が、発光層に含まれる材料を含有するために、正孔輸送層と発光層の平均SP値の差が小さくなるが、特に、上記式(I)を満たす場合には、正孔輸送層と発光層の平均SP値の差がより小さくなることが可能になり、正孔輸送層と発光層との界面の密着安定性が向上する。また、上記式(I)で表されるSAとSBの差は、1以下であることが好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。
本発明に用いられる正孔輸送層は、上述のように、溶液塗布法により形成されてなる層である。従って、正孔輸送層形成用塗布液において正孔輸送層を形成する材料の溶解性や分散性が良好であることが、均一で安定な塗布液を得る点から好ましい。また、正孔輸送層の塗膜がより均一に形成されやすく、且つ膜作製時又は溶剤乾燥や熱硬化などの熱プロセスに対して耐性があり凝集し難い材料であることが好ましい。これらの点から、正孔輸送層を形成する材料としては高分子化合物が用いられることが好ましい。
以上の点から、本発明においては、前記正孔輸送層中に重量平均分子量2万以上の高分子化合物が30重量%以上含有されていることが好ましい。中でも、重量平均分子量2万以上の高分子化合物が50重量%以上含有されていることが好ましく、更に重量平均分子量5万以上の高分子化合物が50重量%以上含有されていることが好ましい。
なお、正孔輸送層の膜厚としては、特に限定されないが、1nm〜1μm程度が好ましい。
また、本発明に係る正孔輸送層は、後述する正孔注入層に用いられるような材料を更に添加したり、陽極のHOMOエネルギーに近いHOMOエネルギーを持つ材料を用いたりして、正孔注入機能をも有する正孔注入輸送層として形成されても良い。
4.電極層
本発明においては、陽極電極および陰極電極のうち、少なくとも片側の光の取出し面となる電極層は透明である必要がある。一方、光の取出し面と反対側の電極層は、透明であってもなくてもよい。
さらに、陽極電極および陰極電極は、基板上に全面に形成されたものであってもよく、パターン状に形成されたものであってもよい。
また、陽極電極および陰極電極は抵抗が小さいことが好ましく、一般には導電性材料である金属材料が用いられるが、有機化合物または無機化合物を用いてもよい。
(1)陽極電極
基板1側から光を取り出す場合には陽極電極2を透明な材料で形成する必要がある。基板1の発光層側に設けられている陽極電極2は、発光層5に正孔を注入するよう作用する。
本発明の有機EL素子を構成する陽極電極2は、導電性材料からなるものであれば特に限定されず、例えば、Au、Ta、W、Pt、Ni、Pd、Cr、Cu、Mo等の金属、またはこれらの酸化物や合金等、或いは、これら金属材料の積層構造を挙げることができる。さらに、In−Sn−O、In−Zn−O、Zn−O、Zn−O−Al、Zn−Sn−O等の導電性無機酸化物、α−Si、α−SiC等を用いることができる。更に、湿式成膜法を用いて形成可能な溶融金属や金属微粒子、導電性高分子を用いることもできる。
陽極電極2は、有機層に正孔を供給する役割を有するので、仕事関数の大きい導電性材料を用いるのが好ましい。特に、仕事関数が4.2eV以上の金属の少なくとも1種、またはこれらの金属の合金、または導電性無機酸化物からなる群に含まれる物質の少なくとも1種により陽極電極2が形成されることが好ましい。更に、陽極電極に用いられる金属は、仕事関数が4.5eV未満であると酸化し易くなるので、仕事関数は4.5eV以上が好ましい。
このような陽極電極2の膜厚は、材質にもよるが、40〜500nmの範囲内にあることが好ましい。陽極2の厚みが40nm未満であると、抵抗が高くなる場合があり、また、500nmを超えると、パターン形成された陽極2の端部に存在する段差により、上に積層された層(正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、陰極電極6)に切れや断線が発生したり、陽極電極2と陰極電極7との短絡が生じたりする可能性があるからである。
(2)陰極電極
陰極電極6は、通常の有機EL素子に用いられるものであれば特に限定されず、上述した電極(陽極)と同様の酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)または金等の薄膜電極材料の他、マグネシウム合金(MgAg等)、アルミニウムまたはその合金(AlLi、AlCa、AlMg等)、銀等を挙げることができる。中でも、電子を注入しやすいように4eVより小さい仕事関数を持つものが好ましく、例えば、アルカリ金属(たとえばリチウム、ナトリウム、セシウムなど)およびそのハロゲン化物(たとえばフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化セシウムなど)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウムなど)およびそのハロゲン化物(フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなど)、アルミニウム、銀などの金属、導電性金属酸化物およびこれらの合金または混合物などが挙げられる。陰極の厚さは、何れも0.005〜0.5μmであることが好ましい。
上記陽極電極2及び陰極電極6は、溶液塗布法を用いて形成可能な溶融金属や金属微粒子、導電性高分子を用いる場合には、溶液塗布法を用いて形成することができる。それ以外の金属等を用いる場合には、陽極電極2及び陰極電極6は、スパッタリング法、真空加熱蒸着法、EB蒸着法、イオンプレーティング法等のドライプロセスを用いて形成することができる。また、電極のパターニング方法としては、所望のパターンに精度よく形成することができる方法であれば特に限定されるものではないが、具体的にはフォトリソグラフィー法等を挙げることができる。
なお、陰極作製後においては、有機EL素子を保護する保護層を装着してもよい。この有機EL素子を長期間安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層または保護カバーを装着することが望ましい。保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物、珪素酸化物、珪素窒化物などを用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板などを用いることができ、このカバーを熱硬化樹脂や光硬化樹脂で素子基板と張り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。
5.基板
基板1は、観察者側の表面に通常設けられる。そのため、この基板は、発光層からの光を観察者が容易に視認することができる程度の透明性を有していることが好ましい。なお、この基板の反対が観察者側である場合には、この基板は不透明であってもよい。
このような基板としては、例えばソーダ石灰ガラス、アルカリガラス、鉛アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、シリカガラス等のガラス基板;フィルム状に成形が可能な樹脂基板;ガラス板に保護プラスチックフィルム若しくは保護プラスチック層を設けたものなどを用いることができる。
樹脂基板に用いられる樹脂としては、耐溶剤性および耐熱性の比較的高いものであることが好ましい。具体的には、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリミクロイキシレンジメチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル-スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等が挙げられる。また、これらの共重合体を用いることもできる。この他の樹脂材料であっても、有機EL素子用として使用できる条件を満たす高分子材料であれば使用可能である。基板の厚さは、通常50〜200μmである。
これらの基板においては、その用途にもよるが水蒸気や酸素等のガスバリアー性のよいものであればより好ましい。なお、基板上に、蒸気や酸素等のガスバリアー層を形成してもよい。バリアー層としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機酸化物をスパッタリング法や真空蒸着法等の物理蒸着法により形成したものを例示できる。
6.正孔注入層
正孔注入層3は、陽極電極2と正孔輸送層4との間に設けることができる。
本発明に用いられる正孔注入層は、正孔を陽極から正孔輸送層へ円滑に注入することができる材料を含有するものであれば特に限定されるものではない。正孔注入層に用いられる材料としては、上述した正孔輸送層に用いられる材料を適宜選択して使用することができる。さらに、前述の層構成のように、上記正孔輸送層に正孔注入機能を付与することにより、正孔輸送層と一体化することもできる。
本発明の正孔注入層に用いられる材料は、高分子系の正孔注入材料および低分子系の正孔注入材料のいずれも用いることができる。例えば、アリールアミン誘導体、ポルフィリン誘導体、カルバゾール誘導体を用いることができ、さらに、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体等の導電性高分子などを挙げることができる。
具体的には、アリールアミン類としては、ビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン(α−NPD)、N,N´−ビス−(3−メチルフェニル)−N,N´−ビス−(フェニル)−ベンジジン(TPD)、コポリ[3,3´−ヒドロキシ−テトラフェニルベンジジン/ジエチレングリコール]カーボネート(PC−TPD−DEG)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。ポルフィリン誘導体としては、例えばフタロシアニンや銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニンを挙げることができる。カルバゾール誘導体としては、ポリビニルカルバゾール(PVK)等が挙げられ、ポリチオフェン誘導体としてはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSS)等が挙げられる。
また、これらポルフィリン誘導体やトリフェニルアミン誘導体などにルイス酸や四フッ化テトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)、塩化鉄、バナジウムやモリブデンなど無機の酸化物などを混合し、導電性を高くした材料を用いることもできる。
また金属酸化物などの無機材料を正孔注入層に用いることもできる。例えば、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウムおよび酸化チタン等の酸化物などの金属酸化物、さらにアモルファスカーボン、C60、カーボンナノチューブなどの炭化物を用いることができる。
また、電極との結合基をもつ材料を正孔注入層に用いることもできる。電極との結合基として、例えば、りん酸化合物、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、シランカップリング剤等を挙げることができる。例えば、4−(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニルクロリド、4‐クロロフェニルホスホロジクロリダート、9−フルオレニルメチルクロロホーメート、ジフェニルアミノフェニルリン酸ジクロロホスホダート(TPA―O-P(O)Cl2)等を挙げることができる。これらの膜を形成したい場合には、スピンコート法、浸漬法、デイップコート法等の溶液塗布法が好適に用いられる。
本発明において独立に設けられる正孔注入層の膜厚は0.1〜100nm、特に0.1〜20nmであることが、正孔注入効率の点から好ましい。
また、上記正孔注入層の仕事関数は5.0〜6.0eV、更に5.0〜5.8eVであることが、正孔注入効率の点から好ましい。
7.電子注入層
本発明に用いられる電子注入層は、陰極から電子輸送層へ電子を安定に注入することができる材料を含有するものであれば特に限定されるものではない。電子注入層に用いられる材料としては、例えばアルミリチウム合金、リチウム、セシウム等のアルカリ金属やその合金;フッ化リチウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属のハロゲン化物;ストロンチウム、カルシウム等のアルカリ土類金属;フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等のアルカリ土類金属のハロゲン化物;酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム等の酸化物;フラーレン、カーボンナノチューブ等の炭素系材料;などを用いることができる。
上記電子注入層の厚みとしては、電子注入機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されるものではない。
なお、電子注入層の形成方法については、上記発光層の形成方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
8.電子輸送層
本発明に用いられる電子輸送層は、電子を電子注入層から発光層へ円滑に輸送することができる材料を含有するものであれば特に限定されるものではない。このような電子輸送性を有する材料としては、例えば金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体等が挙げられる。例えば、フェナントロリン類の具体例としては、バソキュプロイン、バソフェナントロリン等が挙げられ、金属錯体の具体例としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)、ビス(2−メチル−8−キノリラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム錯体(BAlq)等が挙げられる。オキサジアゾール誘導体としては、(2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)等が挙げられる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記電子輸送層の厚みとしては、電子輸送機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されるものではない。
なお、電子輸送層の形成方法については、上記発光層の形成方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
以上、本発明の有機EL素子の構成について説明したが、本発明の目的及び効果を損なわない範囲であれば、上述した層以外の機能層が設けられていても構わない。そうした機能層としては、通常の有機EL素子又は発光表示体に用いられている低屈折率層、反射層、光吸収層、封止剤等が挙げられる。
II.有機EL素子の製造方法
次に、本発明に係る有機EL素子の製造方法を説明する。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、第一の態様として、少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記陽極電極上のいずれかの層上に、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料を全固形分中に5〜50重量%含有する正孔輸送層形成用塗布液を塗布する塗布工程を有することを特徴とするものである。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、第二の態様として、少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接し、単一の発光材料からなる発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記陽極電極上のいずれかの層上に、前記発光層を形成する発光材料を全固形分中に5〜50重量%含有する正孔輸送層形成用塗布液を塗布する正孔輸送層形成工程を有することを特徴とするものである。
本発明の製造方法においては、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料を、前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有するような、材料を2種以上混合して含有する正孔輸送層を、正孔輸送層形成用塗布液を塗布することによる溶液塗布法を用いて形成することにより、低コストで容易な製造プロセスで長時間安定に駆動できる有機EL素子を得ることができる。
本発明の正孔輸送層のような材料が2種以上混合された層を作製する場合に溶液塗布法を用いると、溶剤に複数材料を溶解させて製膜するだけで、混合比率の再現性や面内分布の均一制御が容易で歩留まりが向上し、さらに材料の利用効率が高く、製造コストを抑えることができるという利点がある。また、正孔輸送層形成用塗布液に前記発光層を形成する発光材料を全固形分中に5〜50重量%含有するため、上記I.有機EL素子の項目において述べたように、正孔輸送層と隣接して形成される発光層の間の界面密着性の効果とキャリアバランスの相乗効果により、本発明においては正孔輸送層が溶液塗布法により形成されても、長時間安定に駆動できる。
本発明に係る有機EL素子の製造方法における有機EL素子の層構成や正孔輸送層以外の層の作製法については、上記I.有機EL素子の項目において記載したので、ここでの説明を省略する。
本発明に係る有機EL素子の製造方法において、例えば、図2に例示した層構成を有する有機EL素子の場合、積層構造の作製方法は、通常、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極の順に、順次製膜される。本発明においては、混合膜としての性能や作製方法の単純化や製造コストを考慮して、正孔輸送層を簡易なプロセスである溶液塗布法で作製することを特徴とするが、プロセス簡易性を考慮すると、さらに正孔注入層や発光層も溶液塗布法で形成されることが好ましい。ただし、正孔輸送層以外の、陽極、正孔注入層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極においては、必ずしも溶液塗布法に限るものではなく、スパッタリング法、真空蒸着法、転写法などの方法により形成することができる。
次に、本発明に特徴的な溶液塗布法を用いた正孔輸送層形成工程について説明する。
ここで溶液塗布法とは、層を形成するための材料を、溶剤に溶解乃至分散して塗布液を調製し、各種塗布法を用いて基体上に塗布し、乾燥して層(塗膜)を形成する方法である。
本発明に係る製造方法において上述の第一の態様と第二の態様は、上記I.有機EL素子の項目において述べたのと同様に、第一の態様は、発光層が2種以上の材料が混合されてなる場合の製造方法であり、第二の態様は、発光層が実質的に単一の発光材料からなる場合の製造方法である。
本発明に係る製造方法において、正孔輸送層は、陽極電極上のいずれかの層上に形成されるが、陽極電極上のいずれかの層上とは、陽極電極上に直接形成されても良いし、陽極電極上に更に形成されている正孔注入層のような機能層上に形成されても良い旨である。
本発明の正孔輸送層形成工程において用いられる正孔輸送層形成用塗布液は、正孔輸送層を形成するための材料を溶剤に溶解乃至分散して調製される。本発明に用いられる正孔輸送層形成用塗布液には、第一の態様においては前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料、又は第二の態様においては発光層を形成する発光材料を、全固形分中に5〜50重量%含有することが特徴的である。正孔輸送層を形成するために用いられる発光層材料、正孔輸送性の材料、その他の成分は、上記I.有機EL素子の項目において述べたので、ここでの説明を省略する。
正孔輸送層形成用塗布液に用いられる溶剤としては、上述した材料を溶解もしくは分散させることができるものであれば特に限定されるものではなく、これらの材料の種類に応じて適宜選択される。具体例としては、例えばトルエン、キシレン、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、テトラリン、メシチレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン、クロロホルム等を挙げることができる。クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。用いられる溶剤としては、2種以上の混合溶媒であっても良い。
塗布法としては、正孔輸送層を均一に形成することが可能な方法であることが好ましい。例えばディップコート法、浸漬法、ロールコート法、ブレードコート法、スピンコート法、スプレーコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。この際、例えば正孔輸送層形成用塗布液の塗布量を多くしたり、濃度を調整したりすることにより、所定の厚みとなるように正孔輸送層を形成することができる。
また、上記正孔輸送層形成用塗布液の塗布後は、通常、乾燥が行われる。乾燥方法としては、一般的な乾燥方法を用いることができる。
正孔輸送層形成用塗布液中に、光及び/又は熱硬化性官能基を有する光及び/又は熱硬化性の材料を含有する場合には、前記塗布工程の後であって、乾燥と同時に又は乾燥後、更に光及び/又は熱硬化工程を有していても良い。
光硬化工程としては、通常は露光工程が行われる。露光する手段としては、上記デンドリマーが有する光反応性官能基に合わせて適宜選択すれば、特に限定されない。露光には、例えば、水銀ランプやハロゲンランプ等のUVランプによる露光方法や、電子線照射装置による露光方法等を用いることができる。
一方、熱硬化工程としては、用いられた熱硬化性の材料に合わせて適宜加熱される。例えば、熱硬化性官能基としてエポキシ基を有する材料が含まれる場合には、150〜200℃で加熱することが好ましい。
本発明に係る有機EL素子の製造方法において、発光層は、上記I.有機EL素子の項目で述べたように、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光材料以外の材料が前記発光層中に実質的に含まれないことが好ましい。
また、製造プロセスの簡易性や低コストの点から、発光層も溶液塗布法により形成されることが好ましい。従って、本発明に係る有機EL素子の製造方法は、前記正孔輸送層上に、発光層形成用塗布液を塗布する塗布工程を更に有することが好ましい。発光層も溶液塗布法により形成される場合には、発光層形成用塗布液を正孔輸送層上に塗布する際に正孔輸送層の成分が溶出したり塗膜の表面が混合したりすることを防止する点から、正孔輸送層形成用塗布液中に、光及び/又は熱硬化性官能基を有する光及び/又は熱硬化性の材料を含有し、正孔輸送層が硬化されることが好ましい。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。 また、本発明について、有機EL素子及びその製造方法について説明したが、有機EL素子以外の有機発光素子であるライトエミッティングエレクトロケミカルセル(LECs)やエレクトロケミルミネッセンス(ECL)等や、有機トランジスタ、有機太陽電池等の有機電子デバイスにおいても同様に適用可能である。
実施例において行った評価方法は以下のとおりである。
(1)膜厚の測定
本発明で記述される各層の厚みは、特に記載がない限り、洗浄済みのITO付きガラス基板(三容真空社製)上へ各層を単膜で形成し、作製した段差を測定することによって決定した。膜厚測定には、プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、Nanopics1000)を用いた。
(2)有機EL素子の電流効率と寿命特性
実施例において作製された有機EL素子の電流効率と寿命特性を評価した。
電流効率は、電流−電圧−輝度(I−V−L)測定して算出した。I−V−L測定方法は、陰極を接地して陽極に正の直流電圧を200mV刻みで走査(1sec./div.)して印加し、各電圧における電流と輝度を記録した。
寿命特性は、定電流駆動で輝度が経時的に徐々に低下する様子を観察して評価した。初期輝度に対して50%の輝度に劣化するまでの時間を寿命とした。
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
[実施例1]
ガラス基板の上に透明陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、電子輸送層、陰極の順番に製膜して積層し、最後に封止して有機EL素子を作製した。透明陽極と正孔注入層以外は、水分濃度0.1ppm以下、酸素濃度0.1ppm以下の窒素置換グローブボックス内で作業を行った。
まず、透明陽極として酸化インジウム錫(ITO)の薄膜(厚み:150nm)を用いた。ITO付ガラス基板(三容真空社製)をストリップ状にパターン形成した。パターン形成されたITO基板を、中性洗剤、超純水の順番に超音波洗浄し、UVオゾン処理を施した。
次に、洗浄された陽極の上に、正孔注入層としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSS)薄膜(厚み:20nm)を形成した。PEDOT−PSS薄膜は、PEDOT−PSS水溶液を大気中でスピンコート法により塗布して作製した。PEDOT−PSS製膜後、水分を蒸発させるために大気中でホットプレートを用いて乾燥させた。
次に、作製した正孔注入層の上に、正孔輸送層としてビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン)(α−NPD)と4,4’−ビス(2、2−ジフェニル−エテン−1−イル)ジフェニル(DPVBi)を用いて作製した薄膜(厚み:20nm)を形成した。正孔輸送層塗布液はキシレンにα−NPDとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の重量比が7:3:7になるようにクロロベンゼンに溶解させた溶液を用い、グローブボックス内でスピンコート法により塗布して薄膜(厚み:20nm)を製膜した。上記熱硬化性エポキシ樹脂組成物としては、液状タイプの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭電化工業製、アデカレジンEP−4080S)に、硬化剤として無水フタル酸を添加(エポキシ樹脂:無水フタル酸=10:1(重量比))して使用した。薄膜を硬化させるためにグローブボックス内でホットプレートを用いて加熱した。
次に、作製した正孔輸送層の上に、発光層として1−tert−ブチル―ペリレン(TBP)をドーパントとして含有した4,4’−ビス(2、2−ジフェニル−エテン−1−yl)ジフェニル(DPVBi)薄膜(厚み:40nm)を形成した。発光層塗布液は、クロロベンゼンにDPVBiとTBPの重量比が10:1になるように溶解させて作製した。発光層は、この溶液をグローブボックス内でスピンコート法により塗布して製膜した。発光層製膜後、モノクロロベンゼンを蒸発させるためにグローブボックス内でホットプレートを用いて乾燥させた。
次に、作製した発光層の上に電子輸送層として、ビス(2−メチル−8−キノリラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム錯体(BAlq)(厚み:20nm)を形成した。真空中(圧力:1×10−4Pa)で、抵抗加熱蒸着法により製膜した。
次に、作製した電子輸送層の上に、電子注入層としてLiF(厚み:0.5nm)、陰極としてAl(厚み:150nm)を順次製膜した。真空中(圧力:1×10−4Pa)で、抵抗加熱蒸着法により製膜した。
最後に陰極形成後、グローブボックス内にて無アルカリガラスとUV硬化型エポキシ接着剤を用いて封止し、実施例1の有機EL素子を作製した。
上記実施例1の有機EL素子において、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料(DPVBi)の溶解度パラメータSAは20.3、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料DPVBi以外の材料(α−NPD)の溶解度パラメータSBは20.3である。
また、得られた実施例1の有機EL素子は、輝度が500cd/mで、電流効率が0.48cd/Aであった。また、実施例1の有機EL素子の上記寿命時間は0.43時間であった。
[比較例1]
正孔輸送層として、実施例1におけるα−NPDとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の代わりに、α−NPDと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜(重量比α−NPD:熱硬化性エポキシ樹脂組成物=1:1)の混合薄膜とした以外は、実施例1と同様にして比較例1の有機EL素子を作製した。エポキシ樹脂組成物としては、実施例1と同じものを用いた。
得られた比較例1の有機EL素子は、輝度が500cd/mで、電流効率が0.47cd/Aであった。また、実施例1の有機EL素子の上記寿命時間は0.25時間であった。
[実施例2]
正孔輸送層として、実施例1におけるα−NPDとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の代わりに、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4’−(N−(4−sec−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)とDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合物を用いて作製した薄膜(厚み:20nm)を形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。TFBは、アメリカン・ダイ・ソース社製、品番:ADS259BE(重量平均分子量:7.1×10)を材料として用いた。エポキシ樹脂組成物としては、実施例1と同じものを用いた。正孔輸送層塗布液はクロロベンゼンに上記TFBとDPVBiとエポキシ樹脂組成物の重量比が7:3:7になるように溶解させた溶液を用い、グローブボックス内でスピンコート法により塗布して製膜した。薄膜を硬化させるためにグローブボックス内でホットプレートを用いて加熱した。
上記実施例2の有機EL素子において、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料(DPVBi)の溶解度パラメータSAは20.3、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料DPVBi以外の材料(TFB)の溶解度パラメータSBは18.8である。
また、得られた実施例2の有機EL素子は、輝度が500cd/mで、電流効率が0.49cd/Aであった。また、実施例1の有機EL素子の上記寿命時間は28時間であった。
[比較例2]
正孔輸送層として、実施例2におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の代わりに、TFBと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜(重量比TFB:熱硬化性エポキシ樹脂組成物=1:1)の混合薄膜とした以外は、実施例2と同様にして比較例2の有機EL素子を作製した。エポキシ樹脂組成物としては、実施例1と同じものを用いた。
得られた比較例2の有機EL素子は、輝度が500cd/mで、電流効率が0.52cd/Aであった。また、比較例2の有機EL素子の上記寿命時間は19時間であった。
[実施例3−1]
正孔輸送層として、実施例2におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の比を9:1:7とし、更に実施例2において発光層の形成方法として、湿式塗布法の代わりにTBPをドーパントとして含有したDPVBi薄膜を真空蒸着形成した以外は実施例2と同様にして有機EL素子を作製した。真空中(圧力:1×10−4Pa)で、抵抗加熱蒸着法により、DPVBiとTBPの体積比が10:1になるように共蒸着法で製膜した。
得られた実施例3−1の有機EL素子は、輝度が500cd/mで、電流効率が1.3cd/Aであった。また、実施例3−1の有機EL素子の上記寿命時間は26時間であった。
[実施例3−2]
正孔輸送層として、実施例3−1におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の比を8:2:7とした以外は、実施例3−1と同様にして有機EL素子を作製した。
得られた実施例3−2の有機EL素子は、輝度が500cd/mで、電流効率が1.3cd/Aであった。また、実施例3−2の有機EL素子の上記寿命時間は31時間であった。
[実施例3−3]
正孔輸送層として、実施例3−1におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の比を7:3:7とした以外は、実施例3−1と同様にして有機EL素子を作製した。
得られた実施例3−3の有機EL素子は、輝度が500cd/mで、電流効率が1.2cd/Aであった。また、実施例3−2の有機EL素子の上記寿命時間は24時間であった。
[実施例3−4]
正孔輸送層として、実施例3−1におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の比を6:4:7とした以外は、実施例3−1と同様にして有機EL素子を作製した。
得られた実施例3−4の有機EL素子は、輝度が500cd/mで、電流効率が1.2cd/Aであった。また、実施例3−2の有機EL素子の上記寿命時間は24時間であった。
[実施例3−5]
正孔輸送層として、実施例3−1におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の比を5:5:7とした以外は、実施例3−1と同様にして有機EL素子を作製した。
得られた実施例3−4の有機EL素子は、輝度が500cd/mで、電流効率が1.2cd/Aであった。また、実施例3−2の有機EL素子の上記寿命時間は24時間であった。
[比較例3−1]
正孔輸送層として、実施例3−1におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の比を10:0:7とした以外は、実施例3−1と同様にして有機EL素子を作製した。
得られた比較例3−1の有機EL素子は、輝度が500cd/mで、電流効率が1.3cd/Aであった。また、比較例3−1の有機EL素子の上記寿命時間は18時間であった。
[比較例3−2]
正孔輸送層として、実施例3−1におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の比を2:8:7とした以外は、実施例3−1と同様にして有機EL素子を作製した。
得られた比較例3−2の有機EL素子は、輝度が500cd/mで、電流効率が1.2cd/Aであった。また、比較例3−2の有機EL素子の上記寿命時間は5時間であった。
[比較例3−3]
正孔輸送層として、実施例3−1におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の比を0:10:7とした以外は、実施例3−1と同様にして有機EL素子を作製した。
得られた比較例3−3の有機EL素子は、輝度が500cd/mで、電流効率が1.2cd/Aであった。また、比較例3−3の有機EL素子の上記寿命時間は8時間であった。
[実施例4]
正孔輸送層として、実施例3−3におけるTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の単層の混合薄膜(重量比TFB:DPVBi:熱硬化性エポキシ樹脂組成物=7:3:7)の代わりに、TFBと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜(重量比TFB:熱硬化性エポキシ樹脂組成物=1:1)とTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂の混合薄膜(重量比TFB:DPVBi:熱硬化性エポキシ樹脂=7:3:7)の2層を順次積層して形成した以外は、実施例3−3と同様にして有機EL素子を作製した。
まず、正孔注入層PEDOT−PSSの上に、TFBと熱硬化性エポキシ樹脂の混合薄膜(厚み:10nm)を形成した。正孔輸送層塗布液はTFBと熱硬化性エポキシ樹脂との重量比が1:1になるようにクロロベンゼンに溶解させた溶液を用い、グローブボックス内でスピンコート法により塗布し、薄膜を硬化させるためにグローブボックス内でホットプレートを用いて加熱した。
次に、上記TFBと熱硬化性エポキシ樹脂の混合薄膜の上に、TFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂の混合薄膜(厚み:10nm)を形成した。TFBと熱硬化性エポキシ樹脂の混合薄膜を形成した。正孔輸送層塗布液はTFBとDPVBiと熱硬化性エポキシ樹脂との重量比が7:3:7になるようにクロロベンゼンに溶解させた溶液を用い、グローブボックス内でスピンコート法により塗布し、薄膜を硬化させるためにグローブボックス内でホットプレートを用いて加熱した。
得られた実施例4の有機EL素子は、輝度が500cd/mで、電流効率が1.4cd/Aであった。また、実施例4の有機EL素子の上記寿命時間は20時間であった。
[実施例5]
正孔輸送層と発光層を以下のように形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
正孔輸送層は、TFBとポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(1,4−ビニレンフェニレン)](PFOポリマー)との重量比が7:3になるようにキシレンに溶解させた正孔輸送層形成用塗布液を用い、グローブボックス内でスピンコート法により塗布して混合薄膜(厚み:10nm)を形成した。PFOポリマーはアメリカン・ダイ・ソース社製、品番:ADS228GE(重量平均分子量:6×10)を材料として用いた。
発光層は、PFOポリマーをキシレンに溶解させた塗布液を用い、グローブボックス内でスピンコート法により塗布して薄膜(厚み:40nm)を形成した。
上記実施例5の有機EL素子において、前記発光層を形成する発光材料(PFO)の溶解度パラメータSAは18.6、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光材料PFO以外の材料(TFB)の溶解度パラメータSBは18.8である。
得られた実施例5の有機EL素子は、輝度が2000cd/mで、電流効率が8.5cd/Aであった。また、実施例5の有機EL素子の上記寿命時間は2.0時間であった。
[実施例6]
正孔輸送層として、実施例5におけるTFBとPFOポリマーの混合薄膜の代わりに、TFBとPFOポリマーと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜(厚み:10nm)とした以外は、実施例5と同様にして実施例6の有機EL素子を作製した。エポキシ樹脂組成物としては、実施例1と同じものを用いた。
正孔輸送層塗布液はキシレンに上記TFBとPFOとエポキシ樹脂の重量比が7:3:7になるように溶解させた溶液を用い、グローブボックス内でスピンコート法により塗布して製膜した。薄膜を硬化させるためにグローブボックス内でホットプレートを用いて加熱した。
得られた実施例6の有機EL素子は、輝度が2000cd/mで、電流効率が14cd/Aであった。また、実施例6の有機EL素子の上記寿命時間は54時間であった。また、実施例6の有機EL素子の5V駆動時における電流密度は3.2mA/cmであった。
[比較例4]
正孔輸送層として、実施例5におけるTFBとPFOポリマーの混合薄膜の代わりに、TFBのみからなる薄膜(厚み:10nm)とした以外は、実施例5と同様にして比較例4の有機EL素子を作製した。
得られた比較例4の有機EL素子は、輝度が2000cd/mで、電流効率が8.4cd/Aであった。また、比較例4の有機EL素子の上記寿命時間は1.1時間であった。
[比較例5]
正孔輸送層として、実施例6におけるTFBとPFOポリマーと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜の代わりに、TFBと熱硬化性エポキシ樹脂組成物の混合薄膜(重量比TFB:熱硬化性エポキシ樹脂組成物=1:1)(厚み:10nm)とした以外は、実施例6と同様にして比較例5の有機EL素子を作製した。エポキシ樹脂組成物としては、実施例6と同じものを用いた。
得られた比較例5の有機EL素子は、輝度が2000cd/mで、電流効率が5.0cd/Aであった。また、比較例5の有機EL素子の上記寿命時間は0.64時間であった。
[比較例6]
正孔輸送層としてTFBのみからなる薄膜の厚みを20nmとし、発光層として、比較例4におけるPFOポリマーのみからなる薄膜の代わりに、PFOポリマーとTFBの混合薄膜(重量比PFO:TFB=7:3)(厚み:40nm)とした以外は、比較例4と同様にして比較例6の有機EL素子を作製した。
得られた比較例6の有機EL素子は、輝度が2000cd/mで、電流効率が2.9cd/Aであった。また、比較例6の有機EL素子の上記寿命時間は0.30時間であった。また、比較例6の有機EL素子の5V駆動時における電流密度は4.1mA/cmであった。
[比較例7]
正孔輸送層として、比較例6におけるTFBのみからなる薄膜の代わりに、TFBとPFOポリマーの混合薄膜(重量比TFB:PFO=7:3)(厚み:20nm)とした以外は、比較例6と同様にして比較例7の有機EL素子を作製した。
得られた比較例7の有機EL素子は、輝度が2000cd/mで、電流効率が3.0cd/Aであった。また、比較例7の有機EL素子の上記寿命時間は0.39時間であった。また、比較例7の有機EL素子の5V駆動時における電流密度は4.0mA/cmであった。
<結果のまとめ>
実施例1と比較例1の素子を比較すると、発光層ホスト材料を正孔輸送層に混合させた実施例1の方が、発光層ホスト材料を混合させなかった比較例1より寿命が1.7倍長かった。効率が両者ともに約0.5cd/Aであり、初期特性におけるキャリアバランスは同様だと分かる。ホスト混合による長寿命化は、ホスト材料を混合したことによる層中に含まれる化学構造の類似性が向上し、正孔輸送層と発光層の密着安定性が向上した効果だと考えられる。実施例1と比較例1ともに|SA−SB|≦2を満たしており問題はない。
実施例2と比較例2の素子を比較すると、発光層ホスト材料を正孔輸送層に混合させた実施例2の方が、発光層ホスト材料を混合させなかった比較例2より寿命が1.5倍長かった。効率が両者ともに約0.5cd/Aであり、初期特性におけるキャリアバランスは同様だと分かる。ホスト混合による長寿命化は、ホスト材料を混合したことによる層中に含まれる化学構造の類似性が向上し、正孔輸送層と発光層の密着安定性が向上した効果だと考えられる。実施例1と比較例1ともに|SA−SB|≦2を満たしており問題はない。
実施例3−1から実施例3−5と比較例3−1から3−3を比較すると、正孔輸送層に発光層ホスト材料を混合させる割合の最適値が得られる。発光層材料を正孔輸送層中に5〜50重量%含有していれば、長寿命化の効果が期待できることが分かる。最も効果が高かったのは実施例3−2の場合で、比較例3−1よりも寿命が1.7倍長かった。ホスト材料の割合が5重量%以下であれば密着安定性の効果が低下し、50重量%であれば正孔注入・輸送特性が劣化するものと推測される。
実施例4と比較例3−1の素子を比較すると、正孔輸送層を2段に形成した実施例4の場合でも、ホスト材料を混合しなかった比較例3−1よりも寿命が1.1倍長いことが分かる。ただし、正孔輸送層を1段で形成した実施例3−3の場合には、比較例3−1よりも寿命が1.3倍長く、正孔輸送層を塗布形成する場合には、工程数が少なく、効果も大きな1段形成の方が好ましいことがわかる。
実施例5と比較例4の素子を比較すると、発光材料を正孔輸送層に混合させた実施例5の方が、発光材料を混合させなかった比較例4より寿命が1.8倍長かった。効率が両者ともに約8.5cd/Aであり、初期特性におけるキャリアバランスは同様だと分かる。発光材料混合による長寿命化は、発光材料を混合したことによる層中に含まれる化学構造の類似性が向上し、正孔輸送層と発光層の密着安定性が向上した効果だと考えられる。実施例5と比較例4ともに|SA−SB|≦2を満たしており問題はない。
実施例6と比較例5の素子を比較すると、正孔輸送層に発光材料をまぜて硬化させた実施例6の方が、正孔輸送層に発光材料を混ぜずに硬化させた比較例5より、効率が2.8倍、寿命が84倍長かった。発光材料混合による長寿命化は、発光材料を混合したことによる層中に含まれる化学構造の類似性が向上し、正孔輸送層と発光層の密着安定性が向上した効果だと考えられる。比較例5が比較例4よりも、効率、寿命共に劣化している理由は、正孔輸送層を硬化させて電子輸送層への正孔電流の突き抜けが抑制される効果よりも、硬化バインダーの混合により正孔輸送劣化や発光層/正孔輸送層界面の密着性の劣化による悪影響が上回ったものと推測される。
実施例6と実施例5の素子を比較すると、正孔輸送層を硬化させた実施例6の方が、正孔輸送層を硬化させなかった実施例5より、効率が1.6倍、寿命が27倍長かった。正孔輸送層に発光材料を混ぜて硬化させることにより、正孔輸送層と発光層の密着安定性が向上し、さらに高移動度なTFBが発光層へ混入を抑制して電子輸送層への正孔電流の突き抜けが抑制されることにより、効率が向上したと考えられる。効率の向上により寿命特性も大幅に向上したと考えられる。
実施例6と比較例6および比較例7の素子を比較すると、発光層にできるだけ正孔輸送性材料TFBが混入しないように作製した実施例6と比較して、発光層に意図的に正孔輸送性材料TFBを混入させた比較例6および比較例7の方が、効率が0.2倍に、寿命が0.007倍に劣化している。比較例6および比較例7の効率が低下しているにもかかわらず、実施例6と5V駆動時における電流密度を比較すると約1.3倍に増加していることから、高移動度なTFBが発光層へ混入することにより電子輸送層への正孔電流の突き抜けが起こり、効率が低下し寿命も著しく短くなったと考えられる。
本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子の他の例を示す概略断面図である。 界面を形成する両材料のSP値に差がある積層体の断面概念図である。
符号の説明
1 基板
2 陽極電極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 陰極電極
7 電子輸送層
8 電子注入層
10 有機EL素子
11 正孔輸送層
12 発光層

Claims (17)

  1. 少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であって、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料を前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有し、且つ、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料以外の材料が前記発光層中に実質的に含まれないことを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記発光層が単一の発光材料からなる層であり、且つ、前記正孔輸送層が溶液塗布法により形成されてなる層であって、前記発光層を形成している発光材料を前記正孔輸送層中に5〜50重量%含有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記正孔輸送層中に重量平均分子量2万以上の高分子化合物が30重量%以上含有されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記正孔輸送層中に、更に、熱及び/又は光硬化性材料を含有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料が、熱及び/又は光硬化性官能基を有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 前記発光層が溶液塗布法により形成されてなる層であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料が下記一般式(1)で示される化合物あることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2008078373
    (式(1)において、Ar〜Arは、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。nは0〜10000、mは0〜10000であり、n+m=1〜20000である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。)
  8. 前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料の溶解度パラメータをSA、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料又は発光材料以外の材料の溶解度パラメータをSBとしたときに、溶解度パラメータSAと、溶解度パラメータSBとが下記式(I)の関係を満たすことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    |SA−SB|≦2 式(I)
  9. 前記陽極電極と正孔輸送層の間に正孔注入層を有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  10. 少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接した発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
    前記陽極電極上のいずれかの層上に、前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料を全固形分中に5〜50重量%含有する正孔輸送層形成用塗布液を塗布する塗布工程を有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  11. 少なくとも陽極電極、正孔輸送層、当該正孔輸送層に隣接し、単一の発光材料からなる発光層、及び陰極電極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
    前記陽極電極上のいずれかの層上に、前記発光層を形成する発光材料を全固形分中に5〜50重量%含有する正孔輸送層形成用塗布液を塗布する正孔輸送層形成工程を有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  12. 前記塗布工程の後に、光及び/又は熱硬化工程を有することを特徴とする、請求項10又は11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  13. 前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料以外の材料が前記発光層中に実質的に含まれないことを特徴とする、請求項10又は12のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  14. 前記正孔輸送層上に、発光層形成用塗布液を塗布する塗布工程を有することを特徴とする、請求項10乃至13のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  15. 前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料が下記一般式(1)で示される化合物あることを特徴とする、請求項10乃至14のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
    Figure 2008078373
    (式(1)において、Ar〜Arは、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。nは0〜10000、mは0〜10000であり、n+m=1〜20000である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。)
  16. 前記発光層中に50重量%以上含まれる発光層ホスト材料又は発光材料の溶解度パラメータをSA、前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送性の材料のうち、前記発光層ホスト材料又は発光材料以外の材料の溶解度パラメータをSBとしたときに、溶解度パラメータSAと、溶解度パラメータSBとが下記式(I)の関係を満たすことを特徴とする、請求項10乃至115のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
    |SA−SB|≦2 式(I)
  17. 前記陽極電極と正孔輸送層の間に正孔注入層を有することを特徴とする、請求項10乃至16のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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