JP5733347B2 - 正孔注入輸送層用塗布溶液 - Google Patents
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Description
これら電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層などの発光層以外の層には、電荷を発光層へ注入・輸送しやすくする効果、あるいはブロックすることにより電子電流と正孔電流のバランスを保持する効果や、光エネルギー励起子の拡散を抑制するなどの効果があるといわれている。
特許文献1においては、酸化性化合物すなわち電子受容性化合物として、トリフェニルアミン誘導体と6フッ化アンチモン等の対アニオンを含む化合物や7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン等の炭素−炭素二重結合の炭素にシアノ基が結合した電子受容性が極めて高い化合物が用いられている。
特許文献2においては、酸化性ドーパントとして、一般的な酸化剤が挙げられ、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、及びアリールアミンとハロゲン化金属又はルイス酸との塩が挙げられている。
また、特許文献1乃至特許文献3で開示されていたような酸化性材料は、溶液塗布法により成膜する正孔輸送性高分子化合物と、同時に溶解するような溶剤溶解性が十分ではなく、酸化性材料のみで凝集しやすかったり、使用可能な溶剤種も限られるため汎用性に欠けるなどの問題があった。
成膜性や薄膜の安定性は素子の寿命特性と大きく関係する。ここでいう寿命とは、一定電流駆動などで有機EL素子を連続駆動させたときの輝度半減時間とし、輝度半減時間が長い素子ほど長駆動寿命であるという。
すなわち、本発明の正孔注入輸送層用塗布溶液は、少なくとも酸素原子とハロゲン原子を含む酸化性官能基を有し、且つ芳香環及び/又は複素環を有する、重量平均分子量が2000未満の低分子有機化合物と、重量平均分子量が2000以上の正孔輸送性高分子化合物と、溶媒とを含有し、前記酸化性官能基が以下の一般式(1c)で示される官能基より選択される1種以上であり、前記正孔輸送性高分子化合物100重量部に対して、前記酸化性官能基を有する低分子有機化合物が、10〜100重量部含まれる、正孔注入輸送層用塗布溶液であることを特徴とする。
本発明で用いられる前記一般式(1c)で示される酸化性官能基を有する低分子有機化合物は、酸化力が強く、分散し易いため、正孔輸送性高分子化合物を酸化してラジカルを発生しやすく、且つ正孔輸送性高分子化合物との混合膜の安定性が高い。そのため、本発明では長寿命を達成可能な有機デバイスを提供することができる。
本発明の有機デバイスは、基板上に対向する2つ以上の電極と、そのうちの2つの電極間に配置され少なくとも正孔注入輸送層を含む有機層を有する有機デバイスであって、
前記正孔注入輸送層が、少なくとも酸素原子とハロゲン原子を含む酸化性官能基を有し、且つ芳香環及び/又は複素環を有する低分子有機化合物と、正孔輸送性高分子化合物とを含有することを特徴とする。
本発明で用いる少なくとも酸素原子とハロゲン原子を含む酸化性官能基を有し、且つ芳香環及び/又は複素環を有する低分子有機化合物は、スルホン酸基などを有する有機酸や、カチオンとアニオンを含む塩などの酸化性材料と異なり、通常芳香族環を多く有する正孔輸送性化合物が溶解するような有機溶媒に溶解しやすい。そのため、本発明の有機デバイスの正孔注入輸送層は、容易に溶液塗布法を用いて形成することができ、製造プロセスが容易である。
その上、本発明で用いられる少なくとも酸素原子とハロゲン原子を含む酸化性官能基を有する低分子有機化合物は、酸化力が強く、膜中で分散しやすいものである。すなわち、本発明の有機デバイスの正孔注入輸送層においては、特定の酸化性官能基は、酸化力が高いため、正孔輸送性高分子化合物をカチオンラジカルとして、電荷移動錯体を形成し易い。その結果、正孔注入輸送層の電荷注入輸送能力を効率よく向上することが可能である。この電荷移動錯体を形成していることは、例えば、1H NMR測定により、上記酸素原子とハロゲン原子を含む酸化性官能基を有する低分子有機化合物と正孔輸送性高分子化合物とを溶液中で混合した際に、混合前に観測される芳香環由来のシグナルが10〜12ppm付近の低磁場にシフトする現象が観測されることによって示唆される。
更に、本発明で用いる少なくとも酸素原子とハロゲン原子を含む酸化性官能基を有する低分子有機化合物は、スルホン酸基などを有する有機酸や、カチオンとアニオンを含む塩などの酸化性材料と異なり、膜中での分散安定性が高く、正孔輸送性高分子化合物との混合膜の安定性が高くなる。
本発明で用いる少なくとも酸素原子とハロゲン原子を含む酸化性官能基を有する低分子有機化合物の酸化力の強さと、正孔輸送性高分子化合物との混合膜の安定性のため、本発明では長寿命を達成可能な有機デバイスを提供することができる。
図1は本発明に係る有機デバイスの基本的な層構成を示す断面概念図である。本発明の有機デバイスの基本的な層構成は、基板7上に対向する2つの電極(1及び6)と、その2つの電極(1及び6)間に配置され少なくとも正孔注入輸送層2を含む有機層3を有する。
基板7は、有機デバイスを構成する各層を形成するための支持体であり、必ずしも電極1の表面に設けられる必要はなく、有機デバイスの最も外側の面に設けられていればよい。
有機層3は、正孔注入輸送されることにより、デバイスの種類によって様々な機能を発揮する層であり、単層からなる場合と多層からなる場合がある。有機層が多層からなる場合は、有機層は、正孔注入輸送層の他に更に、有機デバイスの機能の中心となる層(以下、機能層と称呼する。)や、当該機能層の補助的な層(以下、補助層と称呼する。)を含んでいる。例えば、有機EL素子の場合、正孔注入輸送層の表面に更に積層される正孔輸送層が補助層に該当し、当該正孔輸送層の表面に積層される発光層が機能層に該当する。
電極6は、対向する電極1との間に正孔注入輸送層2を含む有機層3が存在する場所に設けられる。また、必要に応じて、図示しない第三の電極を有していてもよい。これらの電極間に電場を印加することにより、有機デバイスの機能を発現させることができる。
図3は、本発明に係る有機デバイスの一実施形態である有機EL素子の層構成の別の一例を示す断面模式図である。本発明の有機EL素子は、電極1の表面に補助層として正孔注入層4bが形成され、当該正孔注入層4bの表面に正孔注入輸送層2、機能層として発光層5が積層された形態を有する。このように、本発明に特徴的な正孔注入輸送層を正孔輸送層の位置で用いる場合には、導電率の向上に加え、当該正孔注入輸送層は電荷移動錯体を形成して溶液塗布法に用いた溶媒に不溶になるので、上層の発光層を積層する際にも溶液塗布法を適用することが可能である。
図4は、本発明に係る有機デバイスの一実施形態である有機EL素子の層構成の別の一例を示す断面模式図である。本発明の有機EL素子は、電極1の表面に正孔注入輸送層2、機能層として発光層5が順次積層された形態を有する。このように、本発明に特徴的な正孔注入輸送層を1層で用いる場合には、工程数が削減されるというプロセス上のメリットがある。
素子の外部に光を放射するため、発光層の少なくとも一方の面に存在する全ての層は、可視波長域のうち少なくとも一部の波長の光に対する透過性を有することを必要とする。また、発光層と電極6(陰極)の間には、必要に応じて電子輸送層及び/又は電子注入層が設けられていてもよい(図示せず)。
上記、有機トランジスタは、ゲート電極における電荷の蓄積を制御することにより、ソース電極−ドレイン電極間の電流を制御する機能を有する。
(1)正孔注入輸送層及び有機層
本発明で用いられる正孔輸送性高分子化合物は、正孔輸送性を有し、且つ、ゲル浸透クロマトグラフィーのポリスチレン換算値による重量平均分子量が2000以上の高分子化合物をいう。本発明の正孔注入輸送層は、溶液塗布法により安定な膜を形成することを目的として、正孔輸送性材料としては有機溶媒に溶解しやすく且つ化合物が凝集し難い安定な塗膜を形成可能な高分子化合物を用いる。なおここで、正孔輸送性とは、公知の光電流法により、正孔輸送による過電流が観測されることを意味する。
nの平均は、5〜5000であることが好ましく、更に10〜3000であることが好ましい。また、mの平均は、5〜5000であることが好ましく、更に10〜3000であることが好ましい。また、n+mの平均は、10〜10000であることが好ましく、更に20〜6000であることが好ましい。
少なくとも酸素原子とハロゲン原子を含む酸化性官能基としては、下記一般式(1a)〜(1d)で示される官能基より選択される1種以上であることが好ましい。
一方、当該特定の酸化性官能基の数は、当該低分子有機化合物の1分子内に1つ以上であればいくつであっても良い。
本発明の少なくとも酸素原子とハロゲン原子を含む酸化性官能基を有する低分子有機化合物は、本発明の効果を損なわない限り、芳香環及び/又は複素環を含む構造に置換基しても良い。置換基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。中でも、ハロゲン原子が好ましい。炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基の中では、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が好ましい。ハロゲン原子の中では、塩素原子、ヨウ素原子が好ましい。
正孔注入輸送層を構成する上記低分子有機化合物の含有量が多くなるほど、ITOから正孔注入層への注入効率や、正孔注入層の導電率が高くなり、駆動電圧が低下するが、上記低分子有機化合物の含有量が多すぎると、正孔注入層の膜強度が弱くなったり、ITO電極とTFBの密着性が悪くなるなどの悪影響がある場合があり、また上記低分子有機化合物の含有量が少なすぎると、ITO電極とTFBの密着性が悪くなったり、正孔注入層の導電性が低くなったり、不溶化せずに上層を塗布する際に正孔注入輸送層がダメージを受けるなどの悪影響がある場合がある。
また、上記正孔注入輸送層の仕事関数は5.0〜6.0eV、更に5.0〜5.8eVであることが、正孔注入効率の点から好ましい。
溶液塗布法として、例えば、浸漬法、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などが挙げられる。
基板は、本発明の有機デバイスの支持体になるものであり、例えばフレキシブルな材質であっても、硬質な材質であってもよい。具体的に用いることができる材料としては、例えば、ガラス、石英、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート等を挙げることができる。
これらのうち、合成樹脂製の基板を使用する場合には、ガスバリア性を有することが望ましい。基板の厚さは特に限定されないが、通常、0.5〜2.0mm程度である。
本発明の有機デバイスは、基板上に対向する2つ以上の電極を有する。
本発明の有機デバイスにおいて、電極は、金属又は金属酸化物で形成されることが好ましく、例えば、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられるが、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物などの金属酸化物により形成することができる。
本発明においては、電極上に、電荷注入材料との密着安定性を向上させるために、更に金属層を有していても良い。金属層は金属が含まれる層をいい、上述のような通常電極に用いられる金属や金属酸化物から形成される。
本発明の有機デバイスは、必要に応じて、電子注入電極と有機層の間に、従来公知の電子注入層及び/又は電子輸送層を有していてもよい。
以下、有機EL素子を構成する各層について、図2〜4を用いて順に説明する。
(基板)
基板7は、有機EL素子の支持体になるものであり、例えばフレキシブルな材質であっても、硬質な材質であってもよい。具体的には、例えば、上記有機デバイスの基板の説明において挙げたものを用いることができる。
発光層5で発光した光が基板7側を透過して取り出される場合においては、少なくともその基板7が透明な材質である必要がある。
電極1および電極6は、発光層5で発光した光の取り出し方向により、どちらの電極に透明性が要求されるか否かが異なり、基板7側から光を取り出す場合には電極1を透明な材料で形成する必要があり、また電極6側から光を取り出す場合には電極6を透明な材料で形成する必要がある。
基板7の発光層側に設けられている電極1は、発光層に正孔を注入する陽極として作用し、基板7の発光層側に設けられている電極6は、発光層5に電子を注入する陰極として作用する。
本発明において、陽極及び陰極は、上記有機デバイスの電極の説明において列挙した金属又は金属酸化物で形成されることが好ましい。
正孔注入輸送層2、正孔輸送層4a、及び正孔注入層4bは、図2〜4に示すように、発光層5と電極1(陽極)の間に適宜形成される。図2のように、本発明に係る正孔注入輸送層2の上に更に正孔輸送層4aを積層し、その上に発光層を積層してもよいし、図3のように、正孔注入層4bの上に更に本発明に係る正孔注入輸送層2を積層し、その上に発光層を積層してもよいし、図4のように、電極1の上に、本発明に係る正孔注入輸送層2を積層しその上に発光層を積層してもよい。
正孔輸送層4aは、正孔輸送材料を用いて、後述の発光層と同様方法で形成することができる。正孔輸送層4aの膜厚は、通常0.1〜1μm、好ましくは1〜500nmである。
その他に、正孔注入層4bの正孔注入材料としては、従来公知の化合物を用いることができ、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。
正孔注入層4bは、正孔注入材料を用いて、後述の発光層と同様方法で形成することができる。正孔輸送層4aの膜厚は、通常1nm〜1μm、好ましくは2nm〜500nm、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
このような層構成の場合、電極1(UVオゾン洗浄直後の仕事関数5.0eV)と発光層5(例えばHOMO5.7eV)の間の正孔注入の大きなエネルギー障壁を、HOMOの値が階段状になるように補完可能で、正孔注入効率に非常に優れた正孔注入輸送層が得られる。
発光層5は、図2〜4に示すように、電極1が形成された基板7と電極6との間に、発光材料により形成される。
本発明の発光層に用いられる材料としては、通常、発光材料として用いられている材料であれば特に限定されず、蛍光材料およびりん光材料のいずれも用いることができる。具体的には、色素系発光材料、金属錯体系発光材料等の材料を挙げることができ、低分子化合物または高分子化合物のいずれも用いることができる。
色素系発光材料としては、例えば、アリールアミン誘導体、アントラセン誘導体、(フェニルアントラセン誘導体、)、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、シロール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、スチルベン誘導体、スピロ化合物、チオフェン環化合物、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリアゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、ピラゾリンダイマー、ピリジン環化合物、フルオレン誘導体、フェナントロリン類、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体等を挙げることができる。またこれらの2量体や3量体やオリゴマー、2種類以上の誘導体の化合物も用いることができる。
金属錯体系発光材料としては、例えばアルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、あるいは中心金属にAl、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダール、キノリン構造等を有する金属錯体を挙げることができる。
具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)、ビス(2−メチル−8−キノリラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム錯体(BAlq)、トリ(ジベンゾイルメチル)フェナントロリンユーロピウム錯体、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体(BeBq)を挙げることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
高分子系発光材料としては、分子内に上記低分子系材料を分子内に直鎖あるいは側鎖あるいは官能基として導入されたもの、重合体およびデンドリマー等を使用することができる。
例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、及びそれらの共重合体等を挙げることができる。
上記発光層中には、発光効率の向上や発光波長を変化させる等の目的でドーピング材料を添加してもよい。高分子系材料の場合は、これらを分子構造の中に発光基として含んでいても良い。このようなドーピング材料としては、例えばペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクドリン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体を挙げることができる。またこれらにスピロ基を導入した化合物も用いることができる。
具体的には、1−tert−ブチル―ペリレン(TBP)、クマリン6、ナイルレッド、1,4−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ベンゼン(DPVBi)、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン(TPB)等を挙げることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、りん光系のドーパントとして、白金やイリジウムなどの重金属イオンを中心に有し、燐光を示す有機金属錯体が使用可能である。具体的には、Ir(ppy)3、(ppy)2Ir(acac)、Ir(BQ)3、(BQ)2Ir(acac)、Ir(THP)3、(THP)2Ir(acac)、Ir(BO)3、(BO)2(acac)、Ir(BT)3、(BT)2Ir(acac)、Ir(BTP)3、(BTP)2Ir(acac)、FIr6、PtOEP等を用いることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
発光層は、発光材料を用いて、溶液塗布法または蒸着法または転写法により形成することができる。溶液塗布法は、上記正孔注入輸送層の項目において説明したのと同様の方法を用いることができる。蒸着法は、例えば真空蒸着法の場合には、発光層の材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10‐4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して、発光層の材料を蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた基板7、電極1、正孔注入輸送層2、及び正孔輸送層4aの積層体の上に発光層5を形成させる。転写法は、例えば、予めフィルム上に溶液塗布法又は蒸着法で形成した発光層を、電極上に設けた正孔注入輸送層2に貼り合わせ、加熱により発光層5を正孔注入輸送層2上に転写することにより形成される。また、フィルム、発光層5、正孔注入輸送層2の順に積層された積層体の正孔注入輸送層側を、電極上に転写してもよい。
発光層の膜厚は、通常、1〜500nm、好ましくは20〜1000nm程度である。本発明は、正孔注入輸送層を溶液塗布法で形成することが好適であるため、発光層も溶液塗布法で形成する場合はプロセスコストを下げることができるという利点がある。
本発明に係る有機デバイスの別の実施形態として、有機トランジスタが挙げられる。以下、有機トランジスタを構成する各層について、図5及び図6を用いて説明する。
図5に示されるような本発明の有機トランジスタは、電極1(ソース電極)と電極6(ドレイン電極)の表面に正孔注入輸送層2が形成されているため、それぞれの電極と有機半導体層との間の正孔注入輸送能力が高くなり、且つ本発明の正孔注入輸送層の膜安定性が高いため、長駆動寿命化に寄与する。
本発明の有機トランジスタは、図6に示されるような、本発明の正孔注入輸送層2が有機半導体層8として機能するものであっても良い。
また、本発明の有機トランジスタは、図5に示されるように電極1(ソース電極)と電極6(ドレイン電極)の表面に正孔注入輸送層2を形成し、更に有機半導体層8として電極表面に形成した正孔注入輸送層とは材料が異なる本発明の正孔注入輸送層2を形成してもよい。
上記有機半導体材料としては、ポルフィリン誘導体、アリールアミン誘導体、ポリアセン誘導体、ペリレン誘導体、ルブレン誘導体、コロネン誘導体、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体、ペリレンテトラカルボン酸二無水化物誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリチオフェンビニレン誘導体、ポリチオフェン−複素環芳香族共重合体とその誘導体、α−6−チオフェン、α−4−チオフェン、ナフタレンのオリゴアセン誘導体、α−5−チオフェンのオリゴチオフェン誘導体、ピロメリト酸二無水物誘導体、ピロメリト酸ジイミド誘導体を用いることができる。具体的には、ポルフィリン誘導体としては例えばフタロシアニンや銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニンを挙げることができ、アリールアミン誘導体としては例えばm−TDATAを用いることができ、ポリアセン誘導体としては、例えばナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペンタセンを挙げることができる。
また、有機半導体層は、上記有機EL素子の発光層と同様に、溶液塗布法またはドライプロセスにより形成することが可能である。
基板7は、本発明の有機デバイスの支持体になるものであり、例えばフレキシブルな材質であっても、硬質な材質であってもよい。具体的には、上記有機EL素子の基板と同様のもの用いることができる。
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極としては、導電性材料であれば特に限定されないが、本発明に係る電荷輸送材料を用いて、金属イオンが配位している化合物が吸着してなる正孔注入輸送層2を形成する点からは、金属又は金属酸化物であることが好ましい。具体的には、上述の有機EL素子における電極と同様の金属又は金属酸化物を用いることができるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITOおよび炭素が好ましい。
実施例において有機EL素子の寿命特性は、定電流駆動で輝度が経時的に徐々に低下する様子を観察して評価した。初期輝度5000cd/m2に対して50%の輝度に劣化するまでの時間を寿命とした。
[合成例1]
下記のスキームに従って、化合物TPA−OP(O)Cl2を合成した。
還流管を付した300 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものに無水キシレン (110 mL)、トリスt−ブチルホスフィン (0.43 mL, 1.9 mmol)、酢酸パラジウム (0.1 g, 0.48 mmol)、ナトリウム t−ブトキシド (2.2 g, 22.8 mmol)をいれ、室温で10分間撹拌した。このものにブロモベンゼン (2.0 mL, 19 mmol)を加え、10分間撹拌した後、4-ヒドロキシジフェニルアミン (3.1 g, 17 mmol)を加え、6時間加熱還流した。室温に戻し、クロロホルム (100 mL)を加え、水 (200 mL×1)、飽和食塩水 (200 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、淡赤色固体の粗生成物 5.0 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 100 g:溶出溶媒 ヘキサン/酢酸エチル= 10/1)に供し、無色油状物のTPA−OH (1) (2.8 g, 9.9 mmol; 58% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.20 (t, J = 7.9 Hz, 4H), 7.02 (m, J = 7.6, 8.0 Hz, 6H), 6.93 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 6.77 (d, J = 8.0 Hz, 2H) 5.41 (brs, 1H) ppm.
50 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものにTPA−OH (1) (1.5 g, 5.7 mmol)、無水ベンゼン (16 mL)を入れ反応系内を氷浴にて冷却した。塩化ホスホリル (8.4 mL, 90 mmol)を滴下し、ついで無水ピリジンのベンゼン溶液 (1 M, 5.8 mL, 5.8 mmol)をゆっくりと滴下した。室温に戻し、2時間撹拌した後、無水ジエチルエーテル (30 mL)を加え、析出した無色固体をろ別した。ろ液を減圧下濃縮し、残渣に無水ジエチルエーテル (30 mL)を加えた。さらに析出した無色固体を除き、ろ液中のジエチルエーテルおよび残るベンゼン、塩化ホスホリルを減圧下留去し、非晶質固体のTPA−OP(O)Cl2 (2)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.27 (m, J = 8.4, 7.9, 7.2 Hz, 4H), 7.13 (dd, J = 9.2, 2.0 Hz, 2H), 7.08 (t, J = 7.2 Hz, 8H) ppm.
下記のスキームに従って、化合物TPA−TPA−OP(O)Cl2を合成した。
300 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものに無水ジクロロメタン (110 mL)、4−ヒドロキシジフェニルアミン (20 g, 108 mmol)、トリエチルアミン (30 mL, 216 mmol)を入れた。反応系内を0 ℃に冷却し、塩化t−ブチルジメチルシラン (18 g, 120 mmol)を30分かけて加えた。室温にゆっくり戻し、13時間撹拌した。得られた茶色懸濁の反応混合物にジクロロメタン (200 mL)を加え、水 (300 mL×1)、飽和食塩水 (300 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、淡赤色固体の粗生成物 35 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 500 g:溶出溶媒 ヘキサン/酢酸エチル= 9/1)に供し、無色固体のDPA−OTBDMS (3) (31 g, 104 mmol; 96% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.25 (dd, J = 7.2, 8.8 Hz, 2H), 7.00 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.91 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 6.83 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 6.78 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 5.48 (brs, 1H)
ディーンスタークおよび還流管を付した300 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものにDPA−OTBDMS (1) (20 g, 67 mmol)、4-ブロモ-ヨードベンゼン (19.8 g, 70 mmol)、ジイソプロピルベンゼン m−, p− 異性体混合物 (200 mL)、銅紛 (4.5 g, 72 mmol)、炭酸カリウム (20 g, 144 mmol)を入れた。反応系内を37時間加熱還流した。室温に戻し、反応混合物をろ過し、ジクロロメタン (100 mL)で洗浄した。合わせたろ液を水 (200 mL×1)、飽和食塩水 (200 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、淡赤色固体の粗生成物 25 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 700 g:溶出溶媒 ヘキサン/クロロホルム= 10/1)に供し、淡黄色油状物のTPA−Br−OTBDMS (4) (14.3 g, 22 mmol; 32% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.27 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.21 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 7.02 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 6.97 (m, J = 8.8 Hz, 3H), 6.88 (d, J = 8.8 Hz., 2H), 6.76 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 0.99 (s, 9H), 0.21 (s, 6H) ppm.
還流管を付した250 mLシュレンク型反応管に磁気撹拌子を入れ、減圧下加熱乾燥しアルゴンガス置換した。このものにTPA−B(OH)2 (1.3 g, 4.6 mmol)、TPA−Br−OTBDMS (4) (2.0 g, 4.4 mmol)、無水トルエン (18 mL)、蒸留水 (6 mL)、炭酸カリウム (3.2 g, 23 mmol)を入れ、減圧によるアルゴンガス置換を3回行い、脱気した。このものにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) (266 mg, 0.23 mmol)を入れ、50℃で19時間加熱還流した。室温に戻し、水 (50 mL)、ジクロロメタン (50 mL)を加えた。有機層を分取し、水層をジクロロメタン (50 mL×2)で抽出し、合わせた有機層を水 (100 mL×1)、飽和食塩水 (100 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、赤褐色固体の粗生成物 4.3 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 50 g:溶出溶媒 ヘキサン/クロロホルム= 20/1)に供し、無色固体のTPA-TPA-OTBDMS (5) (1.7 g, 2.7 mmol; 62% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.45 (t, J = 3.2 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 7.6 Hz, 3H), 7.25 (m, 4H), 7.15 (m, 20H), 6.77 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 0.99 (s, 9H), 0.21 (s, 6H), ppm.
50 mLナス型フラスコに磁気撹拌子を入れ、TPA−TPA−OTBDMS (5) (1.7 g, 2.7 mmol)、無水テトラヒドロフラン(THF) (10 mL)を加えた。このものにフッ化テトラブチルアンモニウム 1.0 M THF溶液 (3.0 mL, 3.0 mmol)を滴下し、室温で2時間撹拌した。酢酸エチル (30 mL)を加え、水 (30 mL × 3)、飽和食塩水 (100 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、茶白色固体の粗生成物 1.8 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 30 g:溶出溶媒 ヘキサン/クロロホルム= 10/1)に供し、無色固体のTPA−TPA−OH (6) (1.0 g, 2.0 mmol; 72% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.42 (brs 5H), 7.25 (m, 8H), 7.11 (m, 10H), 7.01 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 6.79 (m, 2H), 4.68 (brs, 1H), ppm.
50 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものにTPA−TPA−OH (6) (1.0 g, 2.0 mmol)、無水ベンゼン (5.6 mL)を入れ反応系内を氷浴にて冷却した。塩化ホスホリル (2.9 mL, 31 mmol)を滴下し、ついで無水ピリジン のベンゼン溶液 (1 M, 2.0 mL, 2.0 mmol)をゆっくりと滴下した。室温に戻し、2時間撹拌した後、無水ジエチルエーテル (20 mL)を加え、析出した無色固体をろ別した。ろ液を減圧下濃縮し、残渣に無水ジエチルエーテル (20 mL)を加えた。さらに析出した無色固体を除き、ろ液中のジエチルエーテル、ベンゼン、塩化ホスホリルを減圧下留去し、非晶質固体のTPA−TPA−OP(O)Cl2を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.43 (brs 5H), 7.25 (m, 8H), 7.11 (m, 14H), ppm.
下記のスキームに従って、化合物FO−TPA−O P(O)Cl2を合成した。
還流管を付した250 mLシュレンク型反応管に磁気撹拌子を入れ、減圧下加熱乾燥しアルゴンガス置換した。このものにFO−B(OH)2 (2.0 g, 8 mmol)、Br−TPA−OTBDMS (4) (2.0 g, 4.4 mmol)、無水トルエン (18 mL)、蒸留水 (6 mL)、炭酸カリウム (3.2 g, 23 mmol)を入れ、減圧によるアルゴンガス置換を3回行い、脱気した。このものにジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)ジクロロメタン錯体 (161 mg, 0.23 mmol)を入れ、50℃で19時間加熱撹拌した。室温に戻し、水 (50 mL)、ジクロロメタン (50 mL)を加えた。有機層を分取し、水層をジクロロメタン (50 mL×2)で抽出し、合わせた有機層を水 (100 mL×1)、飽和食塩水 (100 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、赤褐色固体の粗生成物 4.0 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 100 g:溶出溶媒 ヘキサン/クロロホルム= 20/1)に供し、無色油状物のFO−TPA−OTBDMS (8) (1.5 g, 1.8 mmol; 95% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.70 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.52 (d, J = 8.0 Hz, 4H), 7.25 (m, 4H), 7.06 (m, 8H), 6.78 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 1.97 (dd, J = 6.8, 9.6 Hz, 4H), 1.10 (m, 20H), 0.99 (s, 9H), 0.80 (t, 7.6 Hz, 6H), 0.65 (brs, 4H), 0.22 (s, 6H), ppm.
50 mLナス型フラスコに磁気撹拌子を入れ、FO−TPA−OTBDMS (8) (1.5 g, 2.0 mmol)、無水THF (9 mL)を加えた。このものにフッ化テトラブチルアンモニウム 1.0 M THF溶液 (2.0 mL, 2.0 mmol)を滴下し、室温で2時間撹拌した。酢酸エチル (30 mL)を加え、水 (30 mL × 3)、飽和食塩水 (100 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、茶白色固体の粗生成物 1.7 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 30 g:溶出溶媒 ヘキサン/クロロホルム= 10/1)に供し、無色固体のFO−TPA−OH (9) (1.2 g, 2.0 mmol; 72% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.70 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.52 (br, 4H), 7.33 (m, 4H), 7.06 (m, 8H), 6.78 (br, 2H), 1.97 (dd, J = 6.0, 9.6 Hz, 4H), 1.10 (m, 20H), 0.80 (t, 7.6 Hz, 6H), 0.65 (brs, 4H), ppm.
50 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものにFO−TPA−OH (9) (1.2 g, 2.0 mmol)、無水ベンゼン (5.1 mL)を入れ反応系内を氷浴にて冷却した。塩化ホスホリル (2.7 mL, 29 mmol)を滴下し、ついで無水ピリジン のベンゼン溶液 (1 M, 1.9 mL, 1.9 mmol)をゆっくりと滴下した。室温に戻し、2時間撹拌した後、無水ジエチルエーテル (20 mL)を加え、析出した無色固体をろ別した。ろ液を減圧下濃縮し、残渣に無水ジエチルエーテル (20 mL)を加えた。さらに析出した無色固体を除き、ろ液中のジエチルエーテル、ベンゼン、塩化ホスホリルを減圧下留去し、油状物のFO−TPA−OP(O)Cl2を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.73 (m, J = 7.6, 6.4 Hz, 2H), 7.56 (br, 4H), 7.33 (m, 4H), 7.13 (m, 10H), 1.97 (dd, J = 7.6, 8.8 Hz, 4H), 1.13 (m, 20H), 0.80 (t, 7.2 Hz, 6H), 0.65 (brs, 4H), ppm.
ガラス基板の上に透明陽極、正孔注入層として本発明に特徴的な正孔注入輸送層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、陰極の順番に成膜して積層し、最後に封止して有機EL素子を作製した。透明陽極と正孔注入輸送層以外は、水分濃度0.1ppm以下、酸素濃度0.1ppm以下の窒素置換グローブボックス内で作業を行った。
まず、透明陽極として酸化インジウム錫(ITO)の薄膜(厚み:150nm)を用いた。ITO付ガラス基板(三容真空社製)をストリップ状にパターン形成した。パターン形成されたITO基板を、中性洗剤、超純水の順番に超音波洗浄し、UVオゾン処理を施した。UVオゾン処理後のITOのHOMOは5.0eVであった。
次に、上記正孔注入層形成用塗布溶液を、洗浄された陽極の上にグローブボックス内でスピンコート法により塗布して、正孔注入層を乾燥後の厚みが20nmとなるように成膜した。正孔注入層の塗布後、溶剤を蒸発させるためにグローブボックス内でホットプレートを用いて120℃で1時間乾燥させた。
次に、作製した正孔輸送層の上に、発光層としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)薄膜(厚み:60nm)を形成した。真空中(圧力:1×10−4Pa)で、抵抗加熱蒸着法により製膜した。
最後に陰極形成後、グローブボックス内にて無アルカリガラスとUV硬化型エポキシ接着剤を用いて封止し、実施例1の有機EL素子を作製した。
実施例1における正孔注入層を形成する際に使用する材料としてTPA−O P(O)Cl2の代わりに、合成例2で得られたTPA−TPA−O P(O)Cl2を用いたこと以外は実施例1と同様に、実施例2の有機EL素子を作製した。
実施例1における正孔注入層を形成する際に使用する材料としてTPA―O-P(O)Cl2の代わりに、合成例3で得られたFO−TPA−O P(O)Cl2を用いたこと以外は実施例1と同様に実施例3の有機EL素子を作製した。
実施例1における正孔注入層を形成する際に使用する材料としてTPA―O-P(O)Cl2の代わりに、4-クロロフェニルホスホロジクロリダート(下記化合物)を用いたこと以外は実施例1と同様に実施例4の有機EL素子を作製した。
実施例1において、正孔注入層を形成する際に使用する材料としてTPA―O-P(O)Cl2の代わりに、フェニルホスホロジクロリダートを用いて作製した以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例1において、正孔注入層を形成する際に使用する材料としてTPA―O-P(O)Cl2の代わりに、4-クロロベンゼンスルホニルクロライドを用いて作製した以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例4において、正孔注入層を構成するTFBと4-クロロフェニルホスホロジクロリダート(CLBP)の重量比が10:3の代わりに、重量比が10:0.5になるように正孔注入輸送層を作製した以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例4において、正孔注入層を構成するTFBとCLBPの重量比が10:3の代わりに、重量比が10:1になるように正孔注入層を作製した以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例4において、正孔注入層を構成するTFBとCLBPの重量比が10:3の代わりに、重量比が10:2になるように正孔注入層を作製した以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例4において、正孔注入層を構成するTFBとCLBPの重量比が10:3の代わりに、重量比が10:4になるように正孔注入層を作製した以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例4において、正孔注入層を構成するTFBとCLBPの重量比が10:3の代わりに、重量比が10:5になるように正孔注入層を作製した以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例4において、正孔注入層を構成するTFBとCLBPの重量比が10:3の代わりに、重量比が10:10になるように正孔注入層を作製した以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例4において、正孔注入層を構成するTFBとCLBPの重量比が10:3の代わりに、重量比が10:12になるように正孔注入層を作製した以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例4において、正孔注入層を構成するTFBの代わりにPC−TPD−DEGを用い、PC−TPD−DEGと4-クロロフェニルホスホロジクロリダートの重量比が10:3になるように正孔注入層を作製した以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例4において、正孔注入層を構成する正孔注入層を構成するTFBの代わりにPFOを用い、PFOと4-クロロフェニルホスホロジクロリダートの重量比が10:3になるように正孔注入層を作製した以外は実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例4において、正孔注入層の乾燥温度が、CLBPの沸点(142℃)以上の180℃以上で乾燥させた以外は、実施例4と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例1において、正孔注入層をTPA―O-P(O)Cl2の代わりに下記化合物(TBAHA)を用いて作製した以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例1において、正孔注入層を、TPA―O-P(O)Cl2を用いずにTFBのみを用いて作製した以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例1において、正孔注入層をTPA―O-P(O)Cl2の代わりにフェニルホスホン酸を用いて作製した以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例1において、正孔注入層をTPA―O-P(O)Cl2の代わりに4-クロロベンゼンスルホン酸を用いて作製した以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例14において、正孔注入層を、4-クロロフェニルホスホロジクロリダートを用いずにPC−TPD−DEGのみを用いて作製した以外は実施例14と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例15において、正孔注入層を、4-クロロフェニルホスホロジクロリダートを用いずにPFOのみを用いて作製した以外は実施例15と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例1と比較例1を比較すること、従来技術の正孔注入層を構成する低分子材料(TBAHA)を用いる場合に比べて、本発明で特定したTPA−O P(O)Cl2を用いる方が、寿命が12倍長いことが分かる。この結果は、実施例1の正孔注入層の方が、高分子化合物と低分子有機化合物の相溶性が高く、発光駆動中でも低分子有機化合物が正孔注入層の中で安定して分散していることによる効果であると考えられる。
実施例15と比較例6を比較すると、正孔注入層を構成する高分子材料が非アミン系のポリマーであっても、寿命が30倍に向上しており、添加した特定の低分子有機化合物の効果があることが分かる。
2 正孔注入輸送層
3 有機層
4a 正孔輸送層
4b 正孔注入層
5 発光層
6 電極
7 基板
8 有機半導体層
9 電極
10 絶縁層
Claims (2)
- 前記正孔輸送性高分子化合物が下記一般式(2)で示される化合物であり、前記酸化性官能基を有する低分子有機化合物が下記一般式(3)で示される化合物である、請求項1に記載の正孔注入輸送層用塗布溶液。
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