JP5012277B2 - 有機デバイス及び有機デバイスの製造方法 - Google Patents
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Description
これら電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層などの発光層以外の層には、電荷を注入しやすくする、あるいはブロックすることにより電子電流と正孔電流のバランスを保持する効果や、光エネルギー励起子の拡散を抑制するなどの効果があるといわれている。
ここでいう寿命とは、一定電流駆動などで有機EL素子を連続駆動させたときの輝度半減時間とし、輝度半減時間が長い素子ほど長駆動寿命であるという。また、ここでいう駆動安定性とは、基板上の導電性突起物やごみにより形成されたピンホールなどを原因とする電極間短絡が無い状態とし、寿命特性とは区別する。
有機EL素子の陽極には、多くの場合金属や金属酸化物などの無機物材料が用いられているが、これらは有機物と比較して表面張力が非常に大きい。つまり凝集力が非常に大きく、溶解度パラメーター(SP値)も非常に大きい(非特許文献2、非特許文献3)。この高エネルギー表面の上に何らかの方法で有機層を形成しても、SP値に差がある無機/有機界面の濡れ性は低く不安定な準安定状態である。
一方、有機分子が移動可能な場合であっても、界面を形成する両材料のSP値に差がない場合は、濡れ広がっている状態がエネルギー的に安定な状態であるので、駆動によって無機/有機界面の接触面積は変化しにくく安定である。
連続駆動により接触面積が小さくなった無機/有機界面において、電極層と有機層の間に1nm以上の間隙が発生する場合、分子間の電荷移動は分子間距離が1〜2nm程度以下で可能な現象であるので、間隙が発生した陽極/有機層界面では正孔注入特性は劣化し、駆動電圧が高電圧化し、キャリアバランスが初期状態から変化して輝度劣化すると考えられる。
したがって、正孔注入層及び有機層それぞれに含まれる化合物の分子全体の平均のSP値(分子極性)を考慮した層構成の設計も必要であるが、陽極と正孔注入材料のnmスケールの分子内の局所的なSP値(分子極性)のマッチングや、正孔注入材料と有機層に含まれる材料のnmスケールの分子内の局所的なSP値(分子極性)のマッチングを考慮して各層の材料を選択する層構成の設計が重要であると考えられる。
また、このような層構成の設計は、有機EL素子に限らず、電極から有機層への正孔の注入を必要とする各種素子に対しても適用できると考えられる。
すなわち、本発明の有機デバイスは、基板上に対向する2つ以上の電極と、そのうちの2つの電極間に配置された有機層と少なくとも1つの電極の前記有機層側表面に隣接した正孔注入層とを有し、更に、当該電極上には金属層を有していてもよい有機デバイスであって、
有機層に含まれる化合物が、その化学構造の一部として、原子量の総和MAが100以上である部分Aを有し、
正孔注入層に含まれる正孔注入材料が、その化学構造の一部として、当該正孔注入材料が積層される電極と連結する作用を生ずる連結基、及び原子量の総和MBが100以上であり、当該原子量の総和MBと、上記有機層の部分Aに含まれる原子の原子量の総和MAとが下記式(I)の関係を満たし、当該原子量の総和MBが正孔注入材料の分子量の1/3より大きい部分Bを有し、
上記部分Aの溶解度パラメータSAと、上記部分Bの溶解度パラメータSBが、下記式(II)の関係を満たし、前記有機層に含まれる材料が下記一般式(2)で示される化合物であり、前記正孔注入材料が下記一般式(3’)で示される化合物であることを特徴とする。
|MA−MB|/MB≦2 式(I)
|SA−SB|≦2 式(II)
(但し、Ar 1 〜Ar 4 は、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。nは0〜10000、mは0〜10000であり、n+m=1〜20000である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。)
(但し、Ar 5 〜Ar 8 は、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。qは0〜10、rは1〜10であり、q+r=1〜20である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。)
有機層に含まれる化合物の部分Bと正孔注入材料の部分AのSP値の関係が上記関係式(I)を満たすとき、当該部分Aと当該部分Bとの分子極性のマッチングが良好であるため、正孔注入層と正孔輸送層との界面の密着を安定に保つことができ、有機デバイスの長駆動寿命化に寄与する。また、正孔注入材料が、当該正孔注入材料が積層される電極(以下、正孔注入電極と称呼する場合がある。)と連結する連結基を有することにより、正孔注入層と当該電極との界面の密着を安定に保つことができ、有機デバイスの長駆動寿命化に寄与する。
前記有機層に含まれる化合物が、化学構造の一部として、原子量の総和MAが100以上である部分Aを有し、前記正孔注入層に含まれる正孔注入材料が、電極と連結する作用を生ずる連結基、及び原子量の総和MBが100以上であり、当該原子量の総和MBと、有機層の部分Aに含まれる原子の原子量の総和MAとが下記式(I)の関係を満たし、当該原子量の総和MBが正孔注入材料の分子量の1/3より大きい部分Bを有する前記有機デバイスは、上記部分Aの溶解度パラメータSAと、上記部分Bの溶解度パラメータSBとが下記式(II)の関係を満たし、
|MA−MB|/MB≦2 式(I)
|SA−SB|≦2 式(II)
当該製造方法が、電極を備えた基板を用意する工程と、
前記部分Bを有する正孔注入材料を少なくとも含む溶液を塗布し、正孔注入層を形成する工程と、
前記部分Aを有する化合物を少なくとも含む溶液を、上記正孔注入層の上に塗布し、有機層を形成する工程有し、
前記部分Aを有する化合物が上記一般式(2)で示される化合物であり、前記部分Bを有する正孔注入材料が上記一般式(3’)で示される化合物であることを特徴とする。
上記材料を用いて溶液塗布法で形成することにより、蒸着装置が不要で、生産性が高く、電極と正孔注入層の界面、及び正孔注入層と有機層界面の密着安定性が高い有機デバイスを形成できる点から好ましい。
本発明の有機デバイスは、基板上に対向する2つ以上の電極と、そのうちの2つの電極間に配置された有機層と、少なくとも1つの電極の前記有機層側表面に隣接した正孔注入層とを有し、更に、当該電極上には金属層を有していてもよい有機デバイスであって、
有機層に含まれる化合物が、その化学構造の一部として、原子量の総和MAが100以上である部分Aを有し、
正孔注入層に含まれる正孔注入材料が、その化学構造の一部として、当該正孔注入材料が積層される電極と連結する作用を生ずる連結基、及び原子量の総和MBが100以上であり、当該原子量の総和MBと、上記有機層の部分Aに含まれる原子の原子量の総和MAとが下記式(I)の関係を満たし、当該原子量の総和MBが正孔注入材料の分子量の1/3より大きい部分Bを有し、
上記部分Aの溶解度パラメータSAと、上記部分Bの溶解度パラメータSBが、下記式(II)の関係を満たすことを特徴とする。
|MA−MB|/MB≦2 式(I)
|SA−SB|≦2 式(II)
図1は本発明に係る有機デバイスの基本的な層構成を示す断面概念図である。本発明の有機デバイスの基本的な層構成は、基板7上に設けられた電極1の表面に、正孔注入層2、有機層3、電極6が積層されたものである。
基板7は、有機デバイスを構成する各層を形成するための支持体であり、必ずしも電極1の表面に設けられる必要はなく、有機デバイスの最も外側の面に設けられていればよい。
有機層3は、正孔注入されることにより、デバイスの種類によって様々な機能を発揮する層であり、単層からなる場合と多層からなる場合がある。有機層が多層からなる場合は、有機層を有機デバイスの機能の中心となる層(以下、機能層と称呼する。)と、当該機能層の補助的な層(以下、補助層と称呼する。)を含んでいる。例えば、有機EL素子の場合、正孔注入層の表面に積層される正孔輸送層が補助層に該当し、当該正孔輸送層の表面に積層される発光層が機能層に該当する。
電極6は、対向する電極1との間に正孔注入層2及び有機層3が存在する場所に設けられる。また、必要に応じて、図示しない第三の電極を有していてもよい。これらの電極間に電場を印加することにより、有機デバイスの機能を発現させることができる。
上記有機EL素子は、陽極と陰極の間に電場を印加されると、正孔が陽極から正孔注入層2及び正孔輸送層4を経て発光層5に注入され、且つ電子が陰極から発光層に注入されることにより、発光層5の内部で注入された正孔と電子が再結合し、素子の外部に発光する機能を有する。
素子の外部に光を放射するため、発光層の少なくとも一方の面に存在する全ての層は、可視波長域のうち少なくとも一部の波長の光に対する透過性を有することを必要とする。また、発光層と電極6(陰極)の間には、必要に応じて電子輸送層及び/又は電子注入層が設けられていてもよい(図示せず)。
上記、有機トランジスタは、ゲート電極における電荷の蓄積を制御することにより、ソース電極−ドレイン電極間の電流を制御する機能を有する。
(1)正孔注入層及び有機層
部分Aは、有機層に含まれる化合物の分子中において、有機層−正孔注入層界面の物理的密着安定性に主要な影響を与える部分である。部分Aの原子量の総和MAが100以上であることは、正孔注入層と有機層の界面における物理的密着安定性に充分な影響を与えるために必要であると考えられる。MAは、150以上、特に200以上が好ましい。
このように正孔注入材料は上記電極との連結基を有し、正孔注入層中において連結基が正孔注入電極に連結可能な向きで正孔注入材料が配置されることにより、正孔注入電極−正孔注入層界面の密着安定性が向上する。
MBは、100以上、特に150以上が好ましく、また、正孔注入材料の分子量の2/5以上、特に3/5以上が好ましい。
また、正孔注入材料に含まれる部分Bの原子量の総和MBと、有機層に含まれる化合物に含まれる部分Aの原子量の総和MAとの関係が上記式(I)を満たす程度に、両部分の原子量の総和の差が同程度の材料を用いる。MAとMBの差は小さいほど好ましく、|MA−MB|/MBの値は、1以下であることが好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。
|SA−SB|≦2 式(II)
この文献から求められない場合は、他の公知の文献、例えば、Fedorsの方法[Fedors, R. F., Polymer Eng. Sci., 14, 147 (1974)]あるいはAskadskiiの方法[A. A. Askadaskii et al., Vysokomol. Soyed., A19, 1004 (1977).]に示された方法を用いることができる。Fedorsの方法では高分子の溶解度パラメータを、原子団寄与法により求めているが、原子団寄与法とは分子をいくつかの原子団に分割し、各原子団に経験パラメータを割り振って分子全体の物性を決定する手法である。
δ≡(δd 2+δp 2+δh 2)1/2
ここに、δdはLondon分散力項、δpは分子分極項、δhは水素結合項である。
各項は、当該分子の構成原子団iの各項のモル引力乗数(Fdi,Fpi,Ehi)及びモル体積Viを用いて以下の式で計算される。
δp 2=(ΣFpi2)1/2/ΣVi
δh 2=(ΣEhi/ΣVi)1/2
文献B:A.F.M.Barton : "Handbook of Solubility Parameters and Other Cohesion Parameters" (CRC Press Inc., Boca Raton,FL) (1983)
文献C:R.F.Fedors : Polymer Eng. Sci., 14,(2), 147-154 (1974)
部分Aに含まれる原子の原子量の総和MAが100未満、上記連結基を有さない正孔注入材料を用いる場合や、部分Bに含まれる原子の原子量の総和MBが100未満、MAとMBの関係式(I)の範囲外、部分Bに含まれる原子の原子量の総和MBが分子量の1/3以下、及び/又はSP値が上記式(II)の範囲外の場合、素子の寿命が短くなる場合が多い。長時間の有機デバイスの駆動により、正孔注入層と正孔輸送層の界面におけるナノオーダーレベルの剥離が生じ、有機デバイスの性能の低下を引き起こすと推測される。
X−Y (1)
但し、Xは前記部分Bを含み、有機層との密着安定性を確保する部分である。また、Yは電極に連結する連結基である。
一方、Yは電極に連結し得る連結基である。正孔注入材料の1分子に含まれる連結基の数は、1つ以上であればいくつであっても良い。しかし、当該連結基が1分子内に2つ以上存在する場合には、正孔注入材料同士が重合して有機層材料とは相溶性の悪い連結基部分が有機層側界面に露出して、正孔注入層と有機層の密着安定性を阻害する可能性がある。従って、当該連結基は、正孔注入材料の1分子内に1つであることが好ましい。連結基の数が1分子内に1つの場合は、当該正孔注入材料は基板と結合するか、2分子反応で二量体を形成して反応が停止する。当該二量体については、基板との密着性は弱いため、洗い流す工程を付与すると膜中から容易に取り除くことができる。
また、連結基Yは、少なくとも酸素原子とハロゲン原子を含有する基であるが、好ましくは、下記式(4)で示される以下の基から選ばれる。
部分Aと部分Bが共通に有する骨格としては、具体的には例えば、トリフェニルアミン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、ピレン骨格、アントラセン骨格、カルバゾール骨格、フェニルピリジン骨格、トリチオフェン骨格、フェニルオキサジアゾール骨格、フェニルトリアゾール骨格、ベンゾイミダゾール骨格、フェニルトリアジン骨格、ベンゾジアチアジン骨格、フェニルキノキサリン骨格、フェニレンビニレン骨格、フェニルシロール骨格、及びこれらの骨格が組み合わされてなる骨格等が挙げられる。
部分Aと部分Bは、骨格が同一又は類似していれば、骨格上の置換基の種類、数、位置が異なっていてもよい。骨格上に置換基を有する場合、その種類としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基が好ましく、更に炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が好ましい。
中でも、上記一般式(3)で示される化合物は、下記一般式(3’)で表される構造であることが、式(2)との構造の共通性による密着安定性向上の点から好ましい。
一般式(3’)におけるAr8も、具体的には、一般式(3)のAr5〜Ar7と同様のものが好適に用いられる。上記一般式(2)及び一般式(3’)において、Ar1、Ar2、及びAr3の組み合わせは、Ar5、Ar6、及びAr7の組み合わせと、また、Ar4は、Ar8と、少なくとも芳香族炭化水素基または複素環基の骨格が同一であることが好ましい。
また、上記正孔注入層の仕事関数は5.0〜6.0eV、更に5.0〜5.8eVであることが、正孔注入効率の点から好ましい。
溶液塗布法は、下記、有機デバイスの製造方法の項目において説明する。
基板は、本発明の有機デバイスの支持体になるものであり、例えばフレキシブルな材質であっても、硬質な材質であってもよい。具体的に用いることができる材料としては、例えば、ガラス、石英、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート等を挙げることができる。
これらのうち、合成樹脂製の基板を使用する場合には、ガスバリア性を有することが望ましい。基板の厚さは特に限定されないが、通常、0.5〜2.0mm程度である。
本発明の有機デバイスは、基板上に対向する2つ以上の電極を有する。
本発明の有機デバイスにおいて、電極は、金属又は金属酸化物で形成されることが好ましく、例えば、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられるが、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物などの金属酸化物により形成することができる。
本発明においては、電極上に、本発明に係る電荷注入材料との密着安定性を向上させるために、更に金属層を有していても良い。金属層は金属が含まれる層をいい、上述のような通常電極に用いられる金属や金属酸化物から形成される。
本発明の有機デバイスは、必要に応じて、電子注入電極と有機層の間に、従来公知の電子注入層及び/又は電子輸送層を有していてもよい。
以下、有機EL素子を構成する各層について、図2を用いて順に説明する。
(基板)
基板7は、有機EL素子の支持体になるものであり、例えばフレキシブルな材質であっても、硬質な材質であってもよい。具体的には、例えば、上記有機デバイスの基板の説明において挙げたものを用いることができる。
発光層5で発光した光が基板7側を透過して取り出される場合においては、少なくともその基板7が透明な材質である必要がある。
電極1および電極6は、発光層5で発光した光の取り出し方向により、どちらの電極に透明性が要求されるか否かが異なり、基板7側から光を取り出す場合には電極1を透明な材料で形成する必要があり、また電極6側から光を取り出す場合には電極6を透明な材料で形成する必要がある。
基板7の発光層側に設けられている電極1は、発光層に正孔を注入する陽極として作用し、基板7の発光層側に設けられている電極6は、発光層5に電子を注入する陰極として作用する。
本発明において、陽極及び陰極は、上記有機デバイスの電極の説明において列挙した金属又は金属酸化物で形成されることが好ましい。
正孔注入層2及び正孔輸送層4は、図2に示すように、発光層5と電極1(陽極)の間であって電極1の表面に形成される。本発明の有機EL素子において、正孔注入層に最も隣接している有機層は正孔輸送層であり、上記有機デバイスの説明において述べた正孔注入層と有機層の関係は、有機EL素子における正孔注入層2と正孔輸送層2の関係に適用することができる。
前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料が上記記一般式(2)で示される化合物であり、前記正孔注入材料が上記記一般式(3)で示される化合物であることが、正孔注入層と正孔輸送層の界面の密着安定性を向上させ、長駆動寿命化に寄与する点から好ましい。
このような層構成の場合、電極1(UVオゾン洗浄直後の仕事関数5.0eV)と発光層5(例えばHOMO5.7eV)の間の正孔注入の大きなエネルギー障壁を、HOMOの値が階段状になるように補完可能で、正孔注入効率に非常に優れた正孔注入層が得られる。
発光層5は、図2に示すように、電極1が形成された基板7と電極6との間に、発光材料により形成される。
色素系発光材料としては、例えば、アリールアミン誘導体、アントラセン誘導体、(フェニルアントラセン誘導体、)、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、シロール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、スチルベン誘導体、スピロ化合物、チオフェン環化合物、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリアゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、ピラゾリンダイマー、ピリジン環化合物、フルオレン誘導体、フェナントロリン類、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体等を挙げることができる。またこれらの2量体や3量体やオリゴマー、2種類以上の誘導体の化合物も用いることができる。
金属錯体系発光材料としては、例えばアルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、あるいは中心金属にAl、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダール、キノリン構造等を有する金属錯体を挙げることができる。
具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)、ビス(2−メチル−8−キノリラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム錯体(BAlq)、トリ(ジベンゾイルメチル)フェナントロリンユーロピウム錯体、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体(BeBq)を挙げることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
高分子系発光材料としては、分子内に上記低分子系材料を分子内に直鎖あるいは側鎖あるいは官能基として導入されたもの、重合体およびデンドリマー等を使用することができる。
例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、及びそれらの共重合体等を挙げることができる。
上記発光層中には、発光効率の向上や発光波長を変化させる等の目的でドーピング材料を添加してもよい。高分子系材料の場合は、これらを分子構造の中に発光基として含んでいても良い。このようなドーピング材料としては、例えばペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクドリン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体を挙げることができる。またこれらにスピロ基を導入した化合物も用いることができる。
具体的には、1−tert−ブチル―ペリレン(TBP)、クマリン6、ナイルレッド、1,4−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ベンゼン(DPVBi)、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン(TPB)等を挙げることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、りん光系のドーパントとして、白金やイリジウムなどの重金属イオンを中心に有し、燐光を示す有機金属錯体が使用可能である。具体的には、Ir(ppy)3、(ppy)2Ir(acac)、Ir(BQ)3、(BQ)2Ir(acac)、Ir(THP)3、(THP)2Ir(acac)、Ir(BO)3、(BO)2(acac)、Ir(BT)3、(BT)2Ir(acac)、Ir(BTP)3、(BTP)2Ir(acac)、FIr6、PtOEP等を用いることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
発光層は、発光材料を用いて、溶液塗布法または蒸着法または転写法により形成することができる。溶液塗布法は、下記、有機デバイスの製造方法の項目において説明する。蒸着法は、例えば真空蒸着法の場合には、発光層の材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して、発光層の材料を蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた基板7、電極1、正孔注入層2、及び正孔輸送層4の積層体の上に発光層5を形成させる。転写法は、例えば、予めフィルム上に溶液塗布法又は蒸着法で形成した発光層を、電極上に設けた正孔輸送層に貼り合わせ、加熱により発光層を正孔輸送層に転写することにより形成される。また、フィルム、発光層、正孔輸送層の順に積層された積層体の正孔輸送層側を、電極に転写してもよい。
発光層の膜厚は、通常、1〜500nm、好ましくは20〜1000nm程度である。本発明は、正孔注入材料を湿式塗布法で形成することを特徴とするため、発光層を塗布プロセスで形成する場合はプロセスコストを下げることができるという利点がある。さらに、発光層を塗布プロセスで形成すると溶剤を乾燥させるための加熱プロセスを必要とする場合があるが、正孔注入層と正孔輸送層とのSP値が近いため、加熱による分子移動により界面のnmオーダーの長さスケールの接触面積が減少して密着安定性が低下することはない。
本発明に係る有機デバイスの別の実施形態として、有機トランジスタが挙げられる。以下、有機トランジスタを構成する各層について、図3を用いて説明する。
本発明の一実施形態である有機トランジスタにおいて、正孔注入層に最も隣接している有機層は有機半導体層であり、上記有機EL素子の説明において述べた正孔注入層と正孔輸送層の関係は、有機トランジスタにおける正孔注入層2と有機半導体層8の関係に適用することができる。
正孔注入層は、上述の有機EL素子の正孔注入層と同様の手順で層を形成することが好ましい。
前記有機半導体層8を構成する化合物が上記一般式(2)で示される化合物であり、前記正孔注入材料が上記一般式(3)で示される化合物であることが、正孔注入層と有機半導体層の界面の密着安定性を向上させ、長駆動寿命化に寄与する点から好ましい。
上記有機半導体材料としては、TFB以外にも一般的に使用される材料を用いることができ、ポルフィリン誘導体、アリールアミン誘導体、ポリアセン誘導体、ペリレン誘導体、ルブレン誘導体、コロネン誘導体、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体、ペリレンテトラカルボン酸二無水化物誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリチオフェンビニレン誘導体、ポリチオフェン−複素環芳香族共重合体とその誘導体、α−6−チオフェン、α−4−チオフェン、ナフタレンのオリゴアセン誘導体、α−5−チオフェンのオリゴチオフェン誘導体、ピロメリト酸二無水物誘導体、ピロメリト酸ジイミド誘導体を用いることができる。具体的には、ポルフィリン誘導体としては例えばフタロシアニンや銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニンを挙げることができ、アリールアミン誘導体としては例えばm−TDATAを用いることができ、ポリアセン誘導体としては、例えばナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペンタセンを挙げることができる。また、これらポルフィリン誘導体やトリフェニルアミン誘導体などにルイス酸や四フッ化テトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)、バナジウムやモリブデンなど無機の酸化物などを混合し、導電性を高くした層を用いることもできる、この場合混合比率は重量比率で1〜95%の割合で混合されていることが好ましいが、SP値のマッチングを考慮すると、1〜49%の割合で混合されていることが好ましい。
これらの材料を有機半導体層に用いた場合、低分子化合物であるならばその有機半導体化合物そのものを、重合体及び高分子化合物であればその繰り返し単位をXとし、Yとしては上記式(4)から選ばれる連結基を有する正孔注入材料X-Yを好適に用いることができる。例えばポリチオフェン誘導体を有機半導体材料として用いた場合、X部にチオフェン誘導体、Yに−OP(O)Cl2、あるいは−OSI(OCH3)3を有する正孔注入材料X-Yを正孔注入層に用いるとSP値のマッチングの観点から好ましい。また、ポリフルオレン誘導体を有機半導体材料として用いた場合、例えば上記式(10)に示すようなX部にフルオレン誘導体を持ちYとしてYに−OP(O)Cl2、あるいは−OSI(OCH3)3を連結した材料X-Yを正孔注入層に用いるとSP値のマッチングの観点から好ましい。
また、有機半導体層は、上記有機EL素子の発光層と同様に、溶液塗布法またはドライプロセスにより形成することが可能である。
基板7は、本発明の有機デバイスの支持体になるものであり、例えばフレキシブルな材質であっても、硬質な材質であってもよい。具体的には、上記有機EL素子の基板と同様のもの用いることができる。
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極としては、導電性材料であれば特に限定されないが、本発明に係る電荷輸送材料を用いて、金属イオンが配位している化合物が吸着してなる正孔注入層2を形成する点からは、金属又は金属酸化物であることが好ましい。具体的には、上述の有機EL素子における電極と同様の金属又は金属酸化物を用いることができるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITOおよび炭素が好ましい。
本発明の有機デバイスの製造方法は、基板上に対向する2つ以上の電極と、そのうちの2つの電極間に配置された有機層と少なくとも1つの電極の前記有機層側表面に隣接した正孔注入層とを有し、更に、当該電極上には金属層を有していてもよい有機デバイスの製造方法であって、
前記有機層に含まれる化合物が、化学構造の一部として、原子量の総和MAが100以上である部分Aを有し、前記正孔注入層に含まれる正孔注入材料が、電極と連結する作用を生ずる連結基、及び原子量の総和MBが100以上であり、当該原子量の総和MBと、有機層の部分Aに含まれる原子の原子量の総和MAとが下記式(I)の関係を満たし、当該原子量の総和MBが正孔注入材料の分子量の1/3より大きい部分Bを有する前記有機デバイスは、上記部分Aの溶解度パラメータSAと、上記部分Bの溶解度パラメータSBとが下記式(II)の関係を満たし、
当該製造方法が、電極を備えた基板を用意する工程と、
前記部分Bを有する正孔注入材料を少なくとも含む溶液を塗布し、正孔注入層を形成する工程と、
|MA−MB|/MB≦2 式(I)
|SA−SB|≦2 式(II)
前記部分Aを有する化合物を少なくとも含む溶液を、上記正孔注入層の上に塗布し、有機層を形成する工程を有することを特徴とする。
溶液塗布法として、例えば、浸漬法、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などが挙げられる。単分子膜を形成したい場合には、浸漬法、デイップコート法が好適に用いられる。
本製造方法によれば、正孔注入材料を含む塗布溶液が基板上に塗布される際に、正孔注入材料の連結基が電極に対し選択的に連結する作用を生ずるため、塗布溶液に含まれる不純物含まず、電極と正孔注入層の界面の密着安定性、及び正孔注入効率に優れた正孔注入層を形成できる。
更に、正孔輸送層を形成するための塗布溶液が正孔注入層上に塗布される際に、正孔注入材料の部分Aと有機層の部分Bとが選択的に連結するため、塗布溶液に含まれる不純物を含みにくく、正孔注入層と正孔輸送層の界面の密着安定性、及び正孔輸送特性に優れた正孔輸送層を形成できる。
また、本製造方法によれば、正孔注入層及び正孔輸送層の形成の際に蒸着装置が不要であり、有機EL素子を生産性高く形成できる。
電極を備えた基板を用意する工程と、溶液塗布法またはドライプロセスにより発光層を形成する工程は、通常の有機EL素子の製造方法によることができる。
実施例において行った評価方法は以下のとおりである。
(1)仕事関数の測定
本発明で記述される仕事関数(HOMO)の値は、特に記載がない限り、光電子分光装置AC-1(理研計器製)を用いて測定した。洗浄済みの石英ガラス基板上へ各層を単膜で形成し、AC-1で光電子が放出されるエネルギー値で決定した。
本発明で記述される各層の厚みは、特に記載がない限り、洗浄済みの石英ガラス基板上へ各層を単膜で形成し、作製した段差を測定することによって決定した。膜厚測定には、プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、Nanopics1000)を用いた。
実施例において作製された有機EL素子の電流効率と寿命特性を評価した。
電流効率は、電流−電圧−輝度(I−V−L)測定して算出した。I−V−L測定方法は、陰極を接地して陽極に正の直流電圧を50mV刻みで走査(1sec./div.)して印加し、各電圧における電流と輝度を記録した。
寿命特性は、定電流駆動で輝度が経時的に徐々に低下する様子を観察して評価した。初期輝度に対して50%の輝度に劣化するまでの時間を寿命とした。
[合成例1]
下記のスキームに従って、化合物TPA−OP(O)Cl2を合成した。
還流管を付した300 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものに無水キシレン (110 mL)、トリスt−ブチルホスフィン (0.43 mL, 1.9 mmol)、酢酸パラジウム (0.1 g, 0.48 mmol)、ナトリウム t−ブトキシド (2.2 g, 22.8 mmol)をいれ、室温で10分間撹拌した。このものにブロモベンゼン (2.0 mL, 19 mmol)を加え、10分間撹拌した後、4-ヒドロキシジフェニルアミン (3.1 g, 17 mmol)を加え、6時間加熱還流した。室温に戻し、クロロホルム (100 mL)を加え、水 (200 mL×1)、飽和食塩水 (200 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、淡赤色固体の粗生成物 5.0 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 100 g:溶出溶媒 ヘキサン/酢酸エチル= 10/1)に供し、無色油状物のTPA−OH (1) (2.8 g, 9.9 mmol; 58% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.20 (t, J = 7.9 Hz, 4H), 7.02 (m, J = 7.6, 8.0 Hz, 6H), 6.93 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 6.77 (d, J = 8.0 Hz, 2H) 5.41 (brs, 1H) ppm.
50 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものにTPA−OH (1) (1.5 g, 5.7 mmol)、無水ベンゼン (16 mL)を入れ反応系内を氷浴にて冷却した。塩化ホスホリル (8.4 mL, 90 mmol)を滴下し、ついで無水ピリジンのベンゼン溶液 (1 M, 5.8 mL, 5.8 mmol)をゆっくりと滴下した。室温に戻し、2時間撹拌した後、無水ジエチルエーテル (30 mL)を加え、析出した無色固体をろ別した。ろ液を減圧下濃縮し、残渣に無水ジエチルエーテル (30 mL)を加えた。さらに析出した無色固体を除き、ろ液中のジエチルエーテルおよび残るベンゼン、塩化ホスホリルを減圧下留去し、非晶質固体のTPA−OP(O)Cl2 (2)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.27 (m, J = 8.4, 7.9, 7.2 Hz, 4H), 7.13 (dd, J = 9.2, 2.0 Hz, 2H), 7.08 (t, J = 7.2 Hz, 8H) ppm.
下記のスキームに従って、化合物TPA−TPA−OP(O)Cl2を合成した。
300 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものに無水ジクロロメタン (110 mL)、4−ヒドロキシジフェニルアミン (20 g, 108 mmol)、トリエチルアミン (30 mL, 216 mmol)を入れた。反応系内を0 ℃に冷却し、塩化t−ブチルジメチルシラン (18 g, 120 mmol)を30分かけて加えた。室温にゆっくり戻し、13時間撹拌した。得られた茶色懸濁の反応混合物にジクロロメタン (200 mL)を加え、水 (300 mL×1)、飽和食塩水 (300 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、淡赤色固体の粗生成物 35 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 500 g:溶出溶媒 ヘキサン/酢酸エチル= 9/1)に供し、無色固体のDPA−OTBDMS (3) (31 g, 104 mmol; 96% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.25 (dd, J = 7.2, 8.8 Hz, 2H), 7.00 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.91 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 6.83 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 6.78 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 5.48 (brs, 1H)
ディーンスタークおよび還流管を付した300 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものにDPA−OTBDMS (1) (20 g, 67 mmol)、4-ブロモ-ヨードベンゼン (19.8 g, 70 mmol)、ジイソプロピルベンゼン m−, p− 異性体混合物 (200 mL)、銅紛 (4.5 g, 72 mmol)、炭酸カリウム (20 g, 144 mmol)を入れた。反応系内を37時間加熱還流した。室温に戻し、反応混合物をろ過し、ジクロロメタン (100 mL)で洗浄した。合わせたろ液を水 (200 mL×1)、飽和食塩水 (200 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、淡赤色固体の粗生成物 25 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 700 g:溶出溶媒 ヘキサン/クロロホルム= 10/1)に供し、淡黄色油状物のTPA−Br−OTBDMS (4) (14.3 g, 22 mmol; 32% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.27 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.21 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 7.02 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 6.97 (m, J = 8.8 Hz, 3H), 6.88 (d, J = 8.8 Hz., 2H), 6.76 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 0.99 (s, 9H), 0.21 (s, 6H) ppm.
還流管を付した250 mLシュレンク型反応管に磁気撹拌子を入れ、減圧下加熱乾燥しアルゴンガス置換した。このものにTPA−B(OH)2 (1.3 g, 4.6 mmol)、TPA−Br−OTBDMS (4) (2.0 g, 4.4 mmol)、無水トルエン (18 mL)、蒸留水 (6 mL)、炭酸カリウム (3.2 g, 23 mmol)を入れ、減圧によるアルゴンガス置換を3回行い、脱気した。このものにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) (266 mg, 0.23 mmol)を入れ、50℃で19時間加熱還流した。室温に戻し、水 (50 mL)、ジクロロメタン (50 mL)を加えた。有機層を分取し、水層をジクロロメタン (50 mL×2)で抽出し、合わせた有機層を水 (100 mL×1)、飽和食塩水 (100 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、赤褐色固体の粗生成物 4.3 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 50 g:溶出溶媒 ヘキサン/クロロホルム= 20/1)に供し、無色固体のTPA-TPA-OTBDMS (5) (1.7 g, 2.7 mmol; 62% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.45 (t, J = 3.2 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 7.6 Hz, 3H), 7.25 (m, 4H), 7.15 (m, 20H), 6.77 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 0.99 (s, 9H), 0.21 (s, 6H), ppm.
50 mLナス型フラスコに磁気撹拌子を入れ、TPA−TPA−OTBDMS (5) (1.7 g, 2.7 mmol)、無水テトラヒドロフラン(THF) (10 mL)を加えた。このものにフッ化テトラブチルアンモニウム 1.0 M THF溶液 (3.0 mL, 3.0 mmol)を滴下し、室温で2時間撹拌した。酢酸エチル (30 mL)を加え、水 (30 mL × 3)、飽和食塩水 (100 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、茶白色固体の粗生成物 1.8 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 30 g:溶出溶媒 ヘキサン/クロロホルム= 10/1)に供し、無色固体のTPA−TPA−OH (6) (1.0 g, 2.0 mmol; 72% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.42 (brs 5H), 7.25 (m, 8H), 7.11 (m, 10H), 7.01 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 6.79 (m, 2H), 4.68 (brs, 1H), ppm.
50 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものにTPA−TPA−OH (6) (1.0 g, 2.0 mmol)、無水ベンゼン (5.6 mL)を入れ反応系内を氷浴にて冷却した。塩化ホスホリル (2.9 mL, 31 mmol)を滴下し、ついで無水ピリジン のベンゼン溶液 (1 M, 2.0 mL, 2.0 mmol)をゆっくりと滴下した。室温に戻し、2時間撹拌した後、無水ジエチルエーテル (20 mL)を加え、析出した無色固体をろ別した。ろ液を減圧下濃縮し、残渣に無水ジエチルエーテル (20 mL)を加えた。さらに析出した無色固体を除き、ろ液中のジエチルエーテル、ベンゼン、塩化ホスホリルを減圧下留去し、非晶質固体のTPA−TPA−OP(O)Cl2を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.43 (brs 5H), 7.25 (m, 8H), 7.11 (m, 14H), ppm.
[合成例3]
下記のスキームに従って、化合物FO−TPA−O P(O)Cl2を合成した。
還流管を付した250 mLシュレンク型反応管に磁気撹拌子を入れ、減圧下加熱乾燥しアルゴンガス置換した。このものにFO−B(OH)2 (2.0 g, 8 mmol)、Br−TPA−OTBDMS (4) (2.0 g, 4.4 mmol)、無水トルエン (18 mL)、蒸留水 (6 mL)、炭酸カリウム (3.2 g, 23 mmol)を入れ、減圧によるアルゴンガス置換を3回行い、脱気した。このものにジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)ジクロロメタン錯体 (161 mg, 0.23 mmol)を入れ、50℃で19時間加熱撹拌した。室温に戻し、水 (50 mL)、ジクロロメタン (50 mL)を加えた。有機層を分取し、水層をジクロロメタン (50 mL×2)で抽出し、合わせた有機層を水 (100 mL×1)、飽和食塩水 (100 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、赤褐色固体の粗生成物 4.0 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 100 g:溶出溶媒 ヘキサン/クロロホルム= 20/1)に供し、無色油状物のFO−TPA−OTBDMS (8) (1.5 g, 1.8 mmol; 95% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.70 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.52 (d, J = 8.0 Hz, 4H), 7.25 (m, 4H), 7.06 (m, 8H), 6.78 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 1.97 (dd, J = 6.8, 9.6 Hz, 4H), 1.10 (m, 20H), 0.99 (s, 9H), 0.80 (t, 7.6 Hz, 6H), 0.65 (brs, 4H), 0.22 (s, 6H), ppm.
50 mLナス型フラスコに磁気撹拌子を入れ、FO−TPA−OTBDMS (8) (1.5 g, 2.0 mmol)、無水THF (9 mL)を加えた。このものにフッ化テトラブチルアンモニウム 1.0 M THF溶液 (2.0 mL, 2.0 mmol)を滴下し、室温で2時間撹拌した。酢酸エチル (30 mL)を加え、水 (30 mL × 3)、飽和食塩水 (100 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、茶白色固体の粗生成物 1.7 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 30 g:溶出溶媒 ヘキサン/クロロホルム= 10/1)に供し、無色固体のFO−TPA−OH (9) (1.2 g, 2.0 mmol; 72% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.70 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.52 (br, 4H), 7.33 (m, 4H), 7.06 (m, 8H), 6.78 (br, 2H), 1.97 (dd, J = 6.0, 9.6 Hz, 4H), 1.10 (m, 20H), 0.80 (t, 7.6 Hz, 6H), 0.65 (brs, 4H), ppm.
50 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものにFO−TPA−OH (9) (1.2 g, 2.0 mmol)、無水ベンゼン (5.1 mL)を入れ反応系内を氷浴にて冷却した。塩化ホスホリル (2.7 mL, 29 mmol)を滴下し、ついで無水ピリジン のベンゼン溶液 (1 M, 1.9 mL, 1.9 mmol)をゆっくりと滴下した。室温に戻し、2時間撹拌した後、無水ジエチルエーテル (20 mL)を加え、析出した無色固体をろ別した。ろ液を減圧下濃縮し、残渣に無水ジエチルエーテル (20 mL)を加えた。さらに析出した無色固体を除き、ろ液中のジエチルエーテル、ベンゼン、塩化ホスホリルを減圧下留去し、油状物のFO−TPA−OP(O)Cl2を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.73 (m, J = 7.6, 6.4 Hz, 2H), 7.56 (br, 4H), 7.33 (m, 4H), 7.13 (m, 10H), 1.97 (dd, J = 7.6, 8.8 Hz, 4H), 1.13 (m, 20H), 0.80 (t, 7.2 Hz, 6H), 0.65 (brs, 4H), ppm.
ガラス基板の上に透明陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、陰極の順番に製膜して積層し、最後に封止して有機EL素子を作製した。透明陽極と正孔注入層以外は、水分濃度0.1ppm以下、酸素濃度0.1ppm以下の窒素置換グローブボックス内で作業を行った。
まず、透明陽極として酸化インジウム錫(ITO)の薄膜(厚み:150nm)を用いた。ITO付ガラス基板(三容真空社製)をストリップ状にパターン形成した。パターン形成されたITO基板を、中性洗剤、超純水の順番に超音波洗浄し、UVオゾン処理を施した。UVオゾン処理後のITOのHOMOは5.0eVであった。
次に、洗浄された陽極の上に、正孔注入層としてTPA−O P(O)Cl2膜を形成した。TPA−O P(O)Cl2膜は、合成例1で得られたTPA−O P(O)Cl2を1、2−ジクロロエタン溶剤中に1wt%溶解させた溶液中に上記陽極を10分間浸漬した後、アセトン溶液で洗浄し、乾燥窒素で乾燥させて作製した。作製した薄膜の膜厚は測定限界以下の5nm以下であり、仕事関数は5.3eVであった。
次に、作製した正孔輸送層の上に、発光層としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)薄膜(厚み:60nm)を形成した。真空中(圧力:1×10−4Pa)で、抵抗加熱蒸着法により製膜した。
最後に陰極形成後、グローブボックス内にて無アルカリガラスとUV硬化型エポキシ接着剤を用いて封止し、実施例1の有機EL素子を作製した。
正孔注入層を形成する際に使用する材料としてTPA−O P(O)Cl2の代わりに、合成例2で得られたTPA−TPA−O P(O)Cl2を用いたこと以外は実施例1と同様に、実施例2の有機EL素子を作製した。
正孔注入層を形成する際に使用する材料としてTPA―O-P(O)Cl2の代わりに、合成例3で得られたFO−TPA−O P(O)Cl2を用いたこと以外は実施例1と同様に実施例3の有機EL素子を作製した。
実施例1において、正孔注入層をTPA―O-P(O)Cl2の代わりにポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSS)薄膜(厚み:20nm、スタルク社製、品番:CH8000、PEDOT:PSS重量比が1:20、仕事関数:5.3eV)を用いて作製した以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。PEDOT−PSS薄膜は、PEDOT−PSS水溶液を大気中でスピンコート法により塗布して作製した。PEDOT−PSS製膜後、水分を蒸発させるために大気中でホットプレートを用いて乾燥させた。
実施例1において、正孔注入層をTPA―O-P(O)Cl2の代わりにPh―O-P(O)Cl2を用いて作製した以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。Ph―O-P(O)Cl2膜は、Ph―O-P(O)Cl2を1、2−ジクロロエタン溶剤中に1wt%溶解させた溶液中に10分間浸漬した後、アセトン溶液で洗浄し、乾燥窒素で乾燥させて作製した。作製した薄膜の膜厚は測定限界以下の5nm以下であり、仕事関数は5.3eVであった。
実施例1において、正孔注入層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
[比較例4]
実施例1において、正孔輸送層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
実施例1と比較例1の素子特性を比較すると、正孔輸送層と陽極の双方に密着効果のあるTPA―O-P(O)Cl2を正孔注入層に用いた素子は、一般的に用いられるPEDOTを正孔注入層に用いた素子よりも寿命が6倍以上長かった。
一方、正孔注入層にTPA―O-P(O)Cl2を用いた実施例1の素子は、本発明に係る有機EL素子の条件をすべて満たしているため、各層間の界面の密着安定性が向上し、駆動耐性が向上したと考えられる。
Ph―O-P(O)Cl2のうち、TFBとPh―O-P(O)Cl2との界面の密着安定性に影響を与えていると考えられる部分はフェニル基であり、当該部分に対応するTFBの分子内における部分はTFBの繰り返し単位である、(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4’−(N−(4−sec−ブチルフェニル)(TPA-FO)である。フェニル基は原子量の総和が100未満であるため、本発明に係る部分Bとして不適当であるが、Ph―O-P(O)Cl2のフェニル基を部分B、TPA-FOを部分Aとみなした場合、本発明に係る関係式(II)を満たしている。しかし、上記部分Aの原子量の総和MAが100未満であるため、TFBとPh―O-P(O)Cl2との界面の密着安定性が不十分であり、素子寿命が極端に短かったと考えられる。
以上の結果は、TPA―O-P(O)Cl2がホール注入の効果だけでなく、正孔輸送層と陽極の密着安定性を向上させ、寿命特性を向上させる効果があることを示している。
2 正孔注入層
3 有機層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電極
7 基板
8 有機半導体層
9 電極
10 絶縁層
Claims (12)
- 基板上に対向する2つ以上の電極と、そのうちの2つの電極間に配置された有機層と、少なくとも1つの電極の前記有機層側表面に隣接した正孔注入層とを有し、更に、当該電極上には金属層を有していてもよい有機デバイスであって、
有機層に含まれる化合物が、その化学構造の一部として、原子量の総和MAが100以上である部分Aを有し、
正孔注入層に含まれる正孔注入材料が、その化学構造の一部として、当該正孔注入材料が積層される電極と連結する作用を生ずる連結基、及び原子量の総和MBが100以上であり、当該原子量の総和MBと、上記有機層の部分Aに含まれる原子の原子量の総和MAとが下記式(I)の関係を満たし、当該原子量の総和MBが正孔注入材料の分子量の1/3より大きい部分Bを有し、
上記部分Aの溶解度パラメータSAと、上記部分Bの溶解度パラメータSBが、下記式(II)の関係を満たし、
前記有機層に含まれる化合物が下記一般式(2)で示される化合物であり、前記正孔注入材料が下記一般式(3’)で示される化合物であることを特徴とする有機デバイス。
|MA−MB|/MB≦2 式(I)
|SA−SB|≦2 式(II)
(但し、Ar 1 〜Ar 4 は、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。nは0〜10000、mは0〜10000であり、n+m=1〜20000である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。)
(但し、Ar 5 〜Ar 8 は、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。qは0〜10、rは1〜10であり、q+r=1〜20である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。) - 上記式(II)が、下記の関係を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の有機デバイス。
|SA−SB|≦1 式(II) - 前記部分Bは、前記部分Aと同一の骨格、又は同一の骨格内にスペーサー構造を含む類似骨格を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機デバイス。
- 前記正孔注入層の膜厚が0.1〜1000nmである、請求項1乃至3のいずれかに記載の有機デバイス。
- 前記正孔注入層の仕事関数が4.5〜6.0eVである、請求項1乃至4のいずれかに記載の有機デバイス。
- 前記正孔注入層が、溶液塗布法により形成されたことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の有機デバイス。
- 前記有機層が前記正孔注入層の上に溶液塗布法により形成されたことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の有機デバイス。
- 前記有機デバイスの有機層が、少なくとも正孔輸送層及び発光層を含む有機EL素子である、請求項1乃至7のいずれかに記載の有機デバイス。
- 基板上に対向する2つ以上の電極と、そのうちの2つの電極間に配置された有機層と少なくとも1つの電極の前記有機層側表面に隣接した正孔注入層とを有し、更に、当該電極上には金属層を有していてもよい有機デバイスの製造方法であって、
前記有機層に含まれる化合物が、化学構造の一部として、原子量の総和MAが100以上である部分Aを有し、前記正孔注入層に含まれる正孔注入材料が、電極と連結する作用を生ずる連結基、及び原子量の総和MBが100以上であり、当該原子量の総和MBと、有機層の部分Aに含まれる原子の原子量の総和MAとが下記式(I)の関係を満たし、当該原子量の総和MBが正孔注入材料の分子量の1/3より大きい部分Bを有する前記有機デバイスは、上記部分Aの溶解度パラメータSAと、上記部分Bの溶解度パラメータSBとが下記式(II)の関係を満たし、
|MA−MB|/MB≦2 式(I)
|SA−SB|≦2 式(II)
当該製造方法が、電極を備えた基板を用意する工程と、
前記部分Bを有する正孔注入材料を少なくとも含む溶液を塗布し、正孔注入層を形成する工程と、
前記部分Aを有する化合物を少なくとも含む溶液を、上記正孔注入層の上に塗布し、有機層を形成する工程を有し、
前記部分Aを有する化合物が下記一般式(2)で示される化合物であり、前記部分Bを有する正孔注入材料が下記一般式(3’)で示される化合物であることを特徴とする、有機デバイスの製造方法。
(但し、Ar 1 〜Ar 4 は、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。nは0〜10000、mは0〜10000であり、n+m=1〜20000である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。)
(但し、Ar 5 〜Ar 8 は、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。qは0〜10、rは1〜10であり、q+r=1〜20である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。) - 上記式(II)が、下記の関係を満たすことを特徴とする、請求項9に記載の有機デバイスの製造方法。
|SA−SB|≦1 式(II) - 前記部分Bが、前記部分Aと同一の骨格、又は同一の骨格内にスペーサー構造を含む類似骨格を有することを特徴とする、請求項9又は10に記載の有機デバイスの製造方法。
- 請求項9乃至11の有機デバイスの製造方法の有機層を形成する工程において、有機層が正孔輸送層及び発光層を含み、
上記正孔注入層の表面に、正孔輸送層、発光層の順に形成する工程を有する有機EL素子の製造方法である、請求項9乃至11のいずれかに記載の有機デバイスの製造方法。
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