JP5012277B2 - 有機デバイス及び有機デバイスの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、有機デバイス及び有機デバイスの製造方法に関するものである。
有機デバイスは、有機エレクトロルミネセンス素子(以下、有機EL素子という。)、有機トランジスタ、有機太陽電池等、広範な基本素子及び用途への展開が期待されている。
有機EL素子は、発光層に到達した電子と正孔とが再結合する際に生じる発光を利用した電荷注入型の自発光デバイスである。この有機EL素子は、1987年にT.W.Tangらにより蛍光性金属キレート錯体とジアミン系分子とからなる薄膜を積層した素子が低い駆動電圧で高輝度な発光を示すことが実証されて以来、活発に開発されている。
有機EL素子の素子構造は、陰極/有機層/陽極から構成される。この有機層は、初期の有機EL素子においては発光層/正孔注入層とからなる2層構造であったが、現在では、高い発光効率と長駆動寿命を得るために、電子注入層/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/正孔注入層とからなる5層構造など、様々な多層構造が提案されている。
これら電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層などの発光層以外の層には、電荷を注入しやすくする、あるいはブロックすることにより電子電流と正孔電流のバランスを保持する効果や、光エネルギー励起子の拡散を抑制するなどの効果があるといわれている。
これらの有機層の中で陽極と接する正孔注入層は、陽極から正孔輸送層または陽極から発光層への正孔を注入しやすくするという目的だけでなく、陽極表面の平滑化の目的にも使用される。従って、正孔注入層に用いられる材料には、陽極から正孔輸送層または陽極から発光層への正孔注入エネルギー障壁を小さくするようなHOMOエネルギーを持ち、製膜性、薄膜の安定性に優れた特性を持つことが望ましい。ここで、HOMOエネルギーや製膜性は素子の初期特性の高効率駆動と関係し、製膜性や薄膜の安定性は素子の寿命特性や駆動安定性と関係する。
ここでいう寿命とは、一定電流駆動などで有機EL素子を連続駆動させたときの輝度半減時間とし、輝度半減時間が長い素子ほど長駆動寿命であるという。また、ここでいう駆動安定性とは、基板上の導電性突起物やごみにより形成されたピンホールなどを原因とする電極間短絡が無い状態とし、寿命特性とは区別する。
陽極に接する正孔注入層を設ける検討としては、例えば、陽極としてITO(インジウムと錫の酸化物からなる透明電極)、陽極バッファー層としてCuPc(銅フタロシアニン)、正孔輸送層としてTPD(トリフェニルジアミン誘導体)、発光層を兼ねた電子輸送層としてAlq3(アルミニウム錯体)、陰極バッファー層としてLiF(フッ化リチウム)、陰極としてAl(アルミニウム)を使用し、この順序で構成した有機EL素子がある(例えば、非特許文献1参照)。しかし、陽極バッファー層に用いられるCuPcは真空蒸着法で成膜するため下地のITO基板の凹凸をそのまま反映した表面形状となり、さらに可視光域に吸収を持つことから厚膜化することができず、電極間短絡を原因とする駆動安定性に問題があった。
このような欠点を改善するため、塗布法で正孔注入層を設ける検討が試みられている。特許文献1には、陽極バッファー層としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSS)を採用した有機EL素子が提案されている。PEDOT−PSSの陽極バッファー層は、陽極の表面にスピンコート法を用いて形成することができる。このように塗布法で正孔注入層を形成するとITO等の基板に凹凸があっても、それら凹凸を埋めつつ表面の平坦な陽極バッファー層を形成でき、膜厚が薄い場合であっても電極間短絡の問題を軽減でき、駆動安定性に優れた素子を作製できる。しかし、長寿命化の観点から、正孔輸送層との密着安定性の更なる向上を要する。
また、特許文献2には、陽極の発光層側の表面に電気二重層の効果を持つ、双極子モーメントを有する有機薄膜を正孔注入層として形成した有機EL素子が報告されている。この報告には、その双極子モーメントを有する有機薄膜の作用により電極と有機層とのエネルギーギャップを小さくして陽極から発光層への正孔注入を容易にし、駆動電圧の低電圧化を達成できると記載されている。また、特許文献3には、第1電極が形成された基板と第2電極が形成された基板との間に、液晶性有機材料を含む発光層が設けられた有機EL素子であって、第1電極及び第2電極の一方又は両方と発光層との間には、双極子モーメントを有する有機薄膜が形成されている有機EL素子が報告されている。この報告には、その有機薄膜が電極と有機層とのエネルギーギャップを小さくする電気二重層として作用して、電極から発光層への電荷の注入を容易にすることが記載されている。しかし、これらの有機EL素子は初期特性における電荷注入向上を目的とした発明であり、長寿命化について十分な検討が行われていない。
一方、有機トランジスタは、π共役系の有機高分子や有機低分子からなる有機半導体材料をチャネル領域に使用した薄膜トランジスタである。一般的な有機トランジスタは、基板、ゲート電極、ゲート絶縁層、ソース・ドレイン電極、及び有機半導体層の構成からなる。有機トランジスタにおいては、ゲート電極に印加する電圧(ゲート電圧)を変化させることで、ゲート絶縁膜と有機半導体膜の界面の電荷量を制御し、ソース電極及びドレイン電極間の電流値を変化させてスイッチングを行なう。
有機半導体層とソース電極またはドレイン電極との電荷注入障壁を低減することにより、有機トランジスタのオン電流値を向上させ、かつ素子特性を安定化させる試みとして、有機半導体中に電荷移動錯体を導入することによって、電極近傍の有機半導体層中のキャリア密度を増加させることが知られている(例えば、特許文献4)。しかし、特許文献4のように半導体層中全体に電荷移動錯体を導入した素子構造では、オフ電流も増大してしまうため、電流オン・オフ比が悪くなってしまうという問題があり、長寿命化の観点から更なる向上が必要であった。特許文献5のように、トランジスタの高性能、高信頼性を目的として、ゲート絶縁膜上にシラン化合物による自己組織化膜を形成させる試みがあるが、ソースあるいはドレイン電極と有機半導体材料との密着安定性については考慮されていなかった。また、特許文献2のように、大きな双極子モーメントを有する有機薄膜を正孔注入層として電極上に形成する場合、駆動電圧のオン−オフ時の分子の反転により、電流−電圧特性にヒステリシスが生じる場合があり、有機トランジスタへの適用には課題があった。
特開2004−228002号公報 特開2002−270369号公報 特開2005−50553号公報 特開平5−55568号公報 特開2005−39222号公報 E.W.Forsythe,M.A.Abkowitz,Y.Gao,and C.W.Tang,"Influence of copper phthalocynanine on the charge injection and growth modes for organic light emitting diodes,"J.Vac.Sci.Technol.A,vol.18,no.4,pp.1869−1874,2001. 「接着の基礎理論」井本 稔 著、高分子刊行会、p71−134 「接着とはどういうことか」、井本 稔、黄 慶雲 著、岩波新書、p33−54
本発明者らは、有機EL素子の輝度劣化を抑制するための一つの対策として陽極/有機層(正孔輸送層又は発光層)の界面の密着安定性に着眼した。
有機EL素子の陽極には、多くの場合金属や金属酸化物などの無機物材料が用いられているが、これらは有機物と比較して表面張力が非常に大きい。つまり凝集力が非常に大きく、溶解度パラメーター(SP値)も非常に大きい(非特許文献2、非特許文献3)。この高エネルギー表面の上に何らかの方法で有機層を形成しても、SP値に差がある無機/有機界面の濡れ性は低く不安定な準安定状態である。
図4に、無機物材料からなる電極上に有機層を積層させた、界面を形成する両材料のSP値に差がある積層体の断面概念図を示す。積層当初は図4(a)のように空隙のない積層体であっても、有機分子が動きうる場合、例えば有機分子のガラス転移温度(Tg)以上の温度にある場合や、Tg以下の温度でも素子が駆動されている場合には、図4(b)のように界面近傍の有機分子はエネルギー的に安定な状態へと、つまり無機/有機界面の接触面積ができるだけ小さくなるように分子は移動する。
一方、有機分子が移動可能な場合であっても、界面を形成する両材料のSP値に差がない場合は、濡れ広がっている状態がエネルギー的に安定な状態であるので、駆動によって無機/有機界面の接触面積は変化しにくく安定である。
ここで駆動中の分子がTg以下の温度でも動きうることに注意する必要がある。正孔注入・輸送材料の分子の電子構造は、正孔を隣の分子へ輸送するたびに基底状態とカチオン状態を繰り返す。基底状態とカチオン状態では一般に分子の形が異なるため、正孔を輸送しながら分子は激しく分子内運動をする。分子同士が近接している薄膜中では、分子内運動は分子同士の相対運動に変換される、つまりTg以下でも分子は駆動により移動できる。
連続駆動により接触面積が小さくなった無機/有機界面において、電極層と有機層の間に1nm以上の間隙が発生する場合、分子間の電荷移動は分子間距離が1〜2nm程度以下で可能な現象であるので、間隙が発生した陽極/有機層界面では正孔注入特性は劣化し、駆動電圧が高電圧化し、キャリアバランスが初期状態から変化して輝度劣化すると考えられる。
以上より、SP値の大きな陽極と、SP値の小さな有機層との間のSP値を持つ化合物を正孔注入層に用いることにより、有機EL素子を駆動させたときに、nmオーダーの間隙が広がるような分子の移動は起こらず、駆動中も駆動前の初期状態の接触面積を維持できると予測される。
この観点から既存技術で正孔注入層に用いられている材料をみると、特許文献3で用いられている化合物は分子の一部分だけではなく、分子全体として双極子モーメントを有するため、分子全体として高い極性を有している場合が多く、有機層に極性の小さな材料が積層される場合、相溶性が低く、密着安定性が劣るおそれがある。
一方、非特許文献1で用いられているCuPcは金属含有有機化合物であり、中心金属のSP値が高いことから、また、特許文献1で用いられているPEDOT:PSSにはSP値が比較的大きなスルホン酸基が含まれていることから、分子全体のSP値が大きく(分子全体の極性が大きく)、これらはITOなどの無機物表面との密着安定性は比較的高いと考えられる。
しかし、nmオーダーの長さスケールでみると、例えば、PEDOT−PSSは極性の小さなPEDOT部位と極性の高いPSS部位の混合ポリマーであるので、有機層に極性の小さな材料が積層される場合、局所的にPSS部位で間隙が発生し、有機層との間の駆動中の密着安定性が懸念される。CuPcにおいても同様に有機層との間の密着安定性が懸念される。
したがって、正孔注入層及び有機層それぞれに含まれる化合物の分子全体の平均のSP値(分子極性)を考慮した層構成の設計も必要であるが、陽極と正孔注入材料のnmスケールの分子内の局所的なSP値(分子極性)のマッチングや、正孔注入材料と有機層に含まれる材料のnmスケールの分子内の局所的なSP値(分子極性)のマッチングを考慮して各層の材料を選択する層構成の設計が重要であると考えられる。
また、このような層構成の設計は、有機EL素子に限らず、電極から有機層への正孔の注入を必要とする各種素子に対しても適用できると考えられる。
上記考察に基づき、本発明は、有機層への正孔の注入が容易で、有機層との密着安定性を有する正孔注入材料を用いた、長駆動寿命で、且つ製造プロセスが容易な有機デバイス、及び当該有機デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、輝度劣化を抑制するための一つの対策として陽極/有機層の界面の密着安定性に着眼し、正孔輸送層材料と近い溶解度パラメーター(SP値)と陽極と近いSP値をもつ電極との連結基とを分子内に合わせ持つ材料を正孔注入層に用いることにより、上記課題を解決し得るという知見を得て、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の有機デバイスは、基板上に対向する2つ以上の電極と、そのうちの2つの電極間に配置された有機層と少なくとも1つの電極の前記有機層側表面に隣接した正孔注入層とを有し、更に、当該電極上には金属層を有していてもよい有機デバイスであって、
有機層に含まれる化合物が、その化学構造の一部として、原子量の総和MAが100以上である部分Aを有し、
正孔注入層に含まれる正孔注入材料が、その化学構造の一部として、当該正孔注入材料が積層される電極と連結する作用を生ずる連結基、及び原子量の総和MBが100以上であり、当該原子量の総和MBと、上記有機層の部分Aに含まれる原子の原子量の総和MAとが下記式(I)の関係を満たし、当該原子量の総和MBが正孔注入材料の分子量の1/3より大きい部分Bを有し、
上記部分Aの溶解度パラメータSAと、上記部分Bの溶解度パラメータSBが、下記式(II)の関係を満たし、前記有機層に含まれる材料が下記一般式(2)で示される化合物であり、前記正孔注入材料が下記一般式(3’)で示される化合物であることを特徴とする。
|MA−MB|/MB≦2 式(I)
|SA−SB|≦2 式(II)
Figure 0005012277

(但し、Ar 〜Ar は、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。nは0〜10000、mは0〜10000であり、n+m=1〜20000である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。)
Figure 0005012277

(但し、Ar 〜Ar は、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。qは0〜10、rは1〜10であり、q+r=1〜20である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。)
有機層に含まれる化合物の部分Bと正孔注入材料の部分AのSP値の関係が上記関係式(I)を満たすとき、当該部分Aと当該部分Bとの分子極性のマッチングが良好であるため、正孔注入層と正孔輸送層との界面の密着を安定に保つことができ、有機デバイスの長駆動寿命化に寄与する。また、正孔注入材料が、当該正孔注入材料が積層される電極(以下、正孔注入電極と称呼する場合がある。)と連結する連結基を有することにより、正孔注入層と当該電極との界面の密着を安定に保つことができ、有機デバイスの長駆動寿命化に寄与する。
前記部分Bは、前記部分Aと同一の骨格、又は同一の骨格内にスペーサー構造を含む類似骨格を有することが、正孔注入層と有機層の界面の密着安定性を向上させ、長駆動寿命化に寄与する点から好ましい。
前記正孔注入層の膜厚は0.1〜100nmであることが、正孔注入効率の点から好ましい。
前記正孔注入層の仕事関数は5〜6.0eVであることが、正孔注入効率の点から好ましい。
前記正孔注入層は、溶液塗布法により形成されたものであることが、蒸着装置が不要で、生産性が高く、界面の密着安定性が高い点から好ましい。前記正孔輸送層が、前記正孔注入層の上に溶液塗布法により形成されたものであることが、同様に好ましい。
本発明の有機デバイスの一実施形態である有機EL素子は、上記有機デバイスが、有機層として、少なくとも正孔輸送層及び発光層を有することを特徴とする
本発明の有機デバイスの製造方法は、基板上に対向する2つ以上の電極と、そのうちの2つの電極間に配置された有機層と少なくとも1つの電極の前記有機層側表面に隣接した正孔注入層とを有し、更に、当該電極上には金属層を有していてもよい有機デバイスの製造方法であって、
前記有機層に含まれる化合物が、化学構造の一部として、原子量の総和MAが100以上である部分Aを有し、前記正孔注入層に含まれる正孔注入材料が、電極と連結する作用を生ずる連結基、及び原子量の総和MBが100以上であり、当該原子量の総和MBと、有機層の部分Aに含まれる原子の原子量の総和MAとが下記式(I)の関係を満たし、当該原子量の総和MBが正孔注入材料の分子量の1/3より大きい部分Bを有する前記有機デバイスは、上記部分Aの溶解度パラメータSAと、上記部分Bの溶解度パラメータSBとが下記式(II)の関係を満たし、
|MA−MB|/MB≦2 式(I)
|SA−SB|≦2 式(II)
当該製造方法が、電極を備えた基板を用意する工程と、
前記部分Bを有する正孔注入材料を少なくとも含む溶液を塗布し、正孔注入層を形成する工程と、
前記部分Aを有する化合物を少なくとも含む溶液を、上記正孔注入層の上に塗布し、有機層を形成する工程有し、
前記部分Aを有する化合物が上記一般式(2)で示される化合物であり、前記部分Bを有する正孔注入材料が上記一般式(3’)で示される化合物であることを特徴とする。
上記材料を用いて溶液塗布法で形成することにより、蒸着装置が不要で、生産性が高く、電極と正孔注入層の界面、及び正孔注入層と有機層界面の密着安定性が高い有機デバイスを形成できる点から好ましい。
本発明の有機デバイスの製造方法は、前記部分Bが、前記部分Aと同一の骨格、又は同一の骨格内にスペーサー構造を含む類似骨格を有することが好ましい。
本発明に係る有機デバイスの製造方法の一実施形態である有機EL素子の製造方法は、上記有機層を形成する工程において、有機層が正孔輸送層及び発光層を含み、上記正孔注入層の表面に、正孔輸送層、発光層の順に形成する工程を有することを特徴とする。
本発明によれば、基板上に対向する2つ以上の電極と、そのうちの2つの電極間に配置された有機層と、少なくとも1つの電極の前記有機層側表面に隣接した正孔注入層とを有し、更に、当該電極上には金属層を有していてもよい有機デバイスであって、有機層への正孔の注入が容易で、有機層の密着安定性を有する正孔注入材料を用いたことにより、長駆動寿命で、且つ製造プロセスが容易な有機デバイス、及び当該有機デバイスの製造法を提供することができる。
1.有機デバイス
本発明の有機デバイスは、基板上に対向する2つ以上の電極と、そのうちの2つの電極間に配置された有機層と、少なくとも1つの電極の前記有機層側表面に隣接した正孔注入層とを有し、更に、当該電極上には金属層を有していてもよい有機デバイスであって、
有機層に含まれる化合物が、その化学構造の一部として、原子量の総和MAが100以上である部分Aを有し、
正孔注入層に含まれる正孔注入材料が、その化学構造の一部として、当該正孔注入材料が積層される電極と連結する作用を生ずる連結基、及び原子量の総和MBが100以上であり、当該原子量の総和MBと、上記有機層の部分Aに含まれる原子の原子量の総和MAとが下記式(I)の関係を満たし、当該原子量の総和MBが正孔注入材料の分子量の1/3より大きい部分Bを有し、
上記部分Aの溶解度パラメータSAと、上記部分Bの溶解度パラメータSBが、下記式(II)の関係を満たすことを特徴とする。
|MA−MB|/MB≦2 式(I)
|SA−SB|≦2 式(II)
有機層に含まれる化合物の部分Bと正孔注入材料の部分AのSP値の関係が上記関係式(I)を満たすとき、当該部分Aと当該部分Bとの分子極性のマッチングが良好であるため、両部分の物理的密着安定性が高く、正孔注入層と正孔輸送層との界面の密着を安定に保つことができ、有機デバイスの長駆動寿命化に寄与する。また、正孔注入材料が、当該正孔注入材料が積層される電極(正孔注入電極)と連結する連結基を有することにより、正孔注入層と当該電極とのとの界面の密着を安定に保つことができ、有機デバイスの長駆動寿命化に寄与する。
以下、本発明に係る有機デバイスの層構成について説明する。
図1は本発明に係る有機デバイスの基本的な層構成を示す断面概念図である。本発明の有機デバイスの基本的な層構成は、基板7上に設けられた電極1の表面に、正孔注入層2、有機層3、電極6が積層されたものである。
基板7は、有機デバイスを構成する各層を形成するための支持体であり、必ずしも電極1の表面に設けられる必要はなく、有機デバイスの最も外側の面に設けられていればよい。
正孔注入層2は正孔注入材料を含み、電極1から有機層3への正孔注入を補助する役割を有する。
有機層3は、正孔注入されることにより、デバイスの種類によって様々な機能を発揮する層であり、単層からなる場合と多層からなる場合がある。有機層が多層からなる場合は、有機層を有機デバイスの機能の中心となる層(以下、機能層と称呼する。)と、当該機能層の補助的な層(以下、補助層と称呼する。)を含んでいる。例えば、有機EL素子の場合、正孔注入層の表面に積層される正孔輸送層が補助層に該当し、当該正孔輸送層の表面に積層される発光層が機能層に該当する。
電極6は、対向する電極1との間に正孔注入層2及び有機層3が存在する場所に設けられる。また、必要に応じて、図示しない第三の電極を有していてもよい。これらの電極間に電場を印加することにより、有機デバイスの機能を発現させることができる。
図2は、本発明に係る有機デバイスの一実施形態である有機EL素子の層構成の一例を示す断面模式図である。本発明の有機EL素子は、正孔注入層2の表面に補助層として正孔輸送層4、機能層として発光層5が積層された形態を有する。電極1は陽極、電極6は陰極として機能する。
上記有機EL素子は、陽極と陰極の間に電場を印加されると、正孔が陽極から正孔注入層2及び正孔輸送層4を経て発光層5に注入され、且つ電子が陰極から発光層に注入されることにより、発光層5の内部で注入された正孔と電子が再結合し、素子の外部に発光する機能を有する。
素子の外部に光を放射するため、発光層の少なくとも一方の面に存在する全ての層は、可視波長域のうち少なくとも一部の波長の光に対する透過性を有することを必要とする。また、発光層と電極6(陰極)の間には、必要に応じて電子輸送層及び/又は電子注入層が設けられていてもよい(図示せず)。
図3は、本発明に係る有機デバイスの別の実施形態である有機トランジスタの層構成の一例を示す断面模式図である。この有機トランジスタは、基板7上に、電極9(ゲート電極)と、対向する電極1(ソース電極)及び電極6(ドレイン電極)と、電極9、電極1、及び電極6間に配置された前記有機層としての有機半導体層8と、電極9と電極1の間、及び電極9と電極6の間に介在する絶縁層10を有し、電極1と電極6の表面に、正孔注入層2が形成されている。
上記、有機トランジスタは、ゲート電極における電荷の蓄積を制御することにより、ソース電極−ドレイン電極間の電流を制御する機能を有する。
尚、本発明の有機デバイスの層構成は、上記例示に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、本発明に係る有機デバイスの各層について詳細に説明する。
(1)正孔注入層及び有機層
本発明の有機デバイスに含まれる有機層は、正孔注入層の表面に積層され、化学構造の一部として、原子量の総和MAが100以上である部分Aを含む化合物を構成成分として含む。本発明において、原子量の総和とは、分子の一部分に含まれる全ての原子の原子量の総和を意味する。
部分Aは、有機層に含まれる化合物の分子中において、有機層−正孔注入層界面の物理的密着安定性に主要な影響を与える部分である。部分Aの原子量の総和MAが100以上であることは、正孔注入層と有機層の界面における物理的密着安定性に充分な影響を与えるために必要であると考えられる。MAは、150以上、特に200以上が好ましい。
有機層が多層からなる場合、上記部分Bを含む化合物は、有機層に含まれる層の中で正孔注入層に最も隣接する層に含まれる。例えば、図2に示す有機EL素子の場合、上記部分Aを含む化合物は、正孔注入層2に最も隣接する層である正孔輸送層4に含まれる。また、図3に示す有機トランジスタの場合、正孔注入層2に一番隣接する層である有機半導体層8に含まれる。
上記部分Aが化合物の1分子内に2つ以上含まれる、例えば、有機層に含まれる化合物が繰り返し単位を有する高分子化合物である場合には、当該複数の部分Aに含まれる原子の原子量の総和は、部分Aを有する化合物の分子量の1/3より大きいことが、正孔注入層と有機層との界面の密着安定性をより向上させる点から好ましく、更に2/5以上、特に3/5以上が好ましい。
一方、本発明の有機デバイスに含まれる正孔注入層は、当該層に含まれる正孔注入材料が、その化学構造の一部として、当該正孔注入材料が積層される電極と連結する作用を生ずる連結基、及び原子量の総和MBが100以上であり、当該原子量の総和MBと、上記有機層の部分Aに含まれる原子の原子量の総和MAとが下記式(I)の関係を満たし、当該原子量の総和MBが正孔注入材料の分子量の1/3より大きい部分Bを有する。
正孔注入層において、正孔注入材料は連結基を主に正孔注入電極の方へ向けて分子が配列されると推測される。このように、電極上に正孔注入材料の分子が整然と配列されることにより、単分子膜又は数分子の厚みからなる薄膜が形成される。ここで連結基とは、正孔注入電極と連結する作用を生じさせる基のことであり、連結は物理吸着によるまたは化学結合が形成されていると推測される。正孔注入電極には通常ITOのような金属酸化物や金属などが用いられる。金属酸化物の場合、金属(Me)酸素(O)結合の部位では、電気陰性度の大きな酸素原子に電子が引き寄せられてMe−O結合の部分に局所的に極性が存在する。さらに酸素原子が水素(H)で終端されていてMe−O−Hの大きな極性が存在する場合もある。そして金属の場合であっても、10−8Pa以上の超高真空下で蒸着して保管された表面でない限り、例え真空中であっても最表面では金属が酸化あるいは水酸化されているといわれている。物理吸着の場合、この電極表面の極性基と、例えば上記一般式(3)で示される化合物のP−Cl結合あるいはP−O結合の極性部分がファンデルワールス力で引き合い、電極表面に分子が吸着しているものと推測される(非特許文献2)。化学的結合の場合、電極表面と上記一般式(3)で示される化合物が化学反応によりMe−O−P結合が形成されているものと推測される。
このように正孔注入材料は上記電極との連結基を有し、正孔注入層中において連結基が正孔注入電極に連結可能な向きで正孔注入材料が配置されることにより、正孔注入電極−正孔注入層界面の密着安定性が向上する。
これに対し、部分Bは、正孔注入材料の分子中において、正孔注入層−有機層界面の物理的密着安定性に主要な影響を与える部分である。正孔注入材料(1)において、X部分は主に正孔輸送材料の方へ向いており、正孔輸送材料と正孔注入材料の連結はファンデルワールス力などによる物理吸着であると考えられ、SP値が近いあるいは類似構造であるので正孔注入層と正孔輸送層との密着が安定に保たれる。従って、部分Bはあるまとまった大きさの骨格が必要であり、部分Bの原子量の総和MBが100以上であること、及び正孔注入材料の分子量の1/3より大きいことは、正孔注入材料の分子内において、正孔注入層と有機層の界面における物理的密着安定性に充分な影響を与えるために必要であると考えられる。
MBは、100以上、特に150以上が好ましく、また、正孔注入材料の分子量の2/5以上、特に3/5以上が好ましい。
また、正孔注入材料に含まれる部分Bの原子量の総和MBと、有機層に含まれる化合物に含まれる部分Aの原子量の総和MAとの関係が上記式(I)を満たす程度に、両部分の原子量の総和の差が同程度の材料を用いる。MAとMBの差は小さいほど好ましく、|MA−MB|/MBの値は、1以下であることが好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。
また、原子量の総和MA及びMBが上記条件を満たす部分A及び部分Bについて、上記部分Aの溶解度パラメータSAと、上記部分Bの溶解度パラメータSBとは、下記式(II)の関係を満たす。
|SA−SB|≦2 式(II)
溶解度パラメータ(以下、SP値と称呼する場合がある。)とは、物質同士の相溶性、非相溶性を示す指標であり、分子中の基の極性と関係する指標である。接触する2つの物質間でSP値の差が小さければ、2つの分子同士の極性の差も小さくなる。この場合、2つの物質間での凝集力が近くなるため、相溶性、溶解性が大きく、易溶性となり、界面の密着安定性つまり接触面積は安定に保たれる。一方、SP値の差が大きければ、2つの物質間での凝集力の差も大きくなる。この場合、相溶性、溶解性が小さく、難溶性乃至不溶性となり、界面の密着は不安定であり、2つの物質間での接触面積を小さくするように界面が変化する。
SP値の測定方法や計算方法は幾つかあるが、本発明においては、Bicerranoの方法[Prediction of polymer properties, Marcel Dekker Inc., New York (1993)]により決定する。Bicerranoの方法では高分子の溶解度パラメータを、原子団寄与法により求めている。
この文献から求められない場合は、他の公知の文献、例えば、Fedorsの方法[Fedors, R. F., Polymer Eng. Sci., 14, 147 (1974)]あるいはAskadskiiの方法[A. A. Askadaskii et al., Vysokomol. Soyed., A19, 1004 (1977).]に示された方法を用いることができる。Fedorsの方法では高分子の溶解度パラメータを、原子団寄与法により求めているが、原子団寄与法とは分子をいくつかの原子団に分割し、各原子団に経験パラメータを割り振って分子全体の物性を決定する手法である。
分子の溶解度パラメータδは以下の式で定義される。
δ≡(δd 2+δp 2+δh 21/2
ここに、δdはLondon分散力項、δpは分子分極項、δhは水素結合項である。
各項は、当該分子の構成原子団iの各項のモル引力乗数(Fdi,Fpi,Ehi)及びモル体積Viを用いて以下の式で計算される。
δd 2=ΣFdi/ΣVi
δp 2=(ΣFpi21/2/ΣVi
δh 2=(ΣEhi/ΣVi)1/2
構成原子団iの各項のモル引力乗数(Fdi,Fpi,Ehi)及び分子容Viは表1に示す3次元溶解度パラメータ計算表に掲載の数値を用いる。この表に掲載されていない原子団については、各項のモル引力乗数(Fdi,Fpi,Ehi)はvan Krevelenによる値(下記文献A及びB)を使用し、モル体積ViはFedorsによる値(文献C)を使用する。
Figure 0005012277
文献A:K.E.Meusburger : "Pesticide Formulations : Innovations and Developments" Chapter 14 (Am. Chem.Soc.), 151-162(1988)
文献B:A.F.M.Barton : "Handbook of Solubility Parameters and Other Cohesion Parameters" (CRC Press Inc., Boca Raton,FL) (1983)
文献C:R.F.Fedors : Polymer Eng. Sci., 14,(2), 147-154 (1974)
なお、有機表面の濡れ性やSP値を評価するための実験的な評価方法として溶剤を用いた接触角測定法などがあるが、このようなマクロな測定法では平均化された濡れ性を評価することになる。従って、nmスケールの長さオーダーでの濡れ性および密着安定性を評価する方法として上記計算による方法が望ましい。
有機層に含まれる化合物の部分Aと正孔注入材料の部分BとのSP値の差が小さいことから、有機層に含まれる化合物と正孔注入材料との相溶性が高くなり、正孔注入層と有機層との界面の密着安定性が向上する。上記式(II)で表されるSAとSBの差は、1以下であることが好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。
本発明の有機層に含まれる化合物及び正孔注入材料は、上記本発明の要件を満たすものであればどのような材料を用いてもよく、任意に特定することができる。
上記有機層は、上記部分Aを含む化合物の含有量が50重量%以上、更に70重量%以上、特に90重量%以上であることが、分子サイズ(nmオーダー)の長さスケールの密着安定性の点から好ましく、上記正孔注入層は、上記部分Bを含む正孔注入材料の含有量が50重量%以上、更に70重量%以上、特に90重量%以上であることが、分子サイズ(nmオーダー)の長さスケールの密着安定性の点から好ましい。
本発明に係る有機デバイスは正孔注入電極−正孔注入層界面、及び正孔注入層−有機層界面の密着安定性の向上により、長時間有機デバイスを使用しても密着安定性が保持され、安定した状態で駆動させることができる。
部分Aに含まれる原子の原子量の総和MAが100未満、上記連結基を有さない正孔注入材料を用いる場合や、部分Bに含まれる原子の原子量の総和MBが100未満、MAとMBの関係式(I)の範囲外、部分Bに含まれる原子の原子量の総和MBが分子量の1/3以下、及び/又はSP値が上記式(II)の範囲外の場合、素子の寿命が短くなる場合が多い。長時間の有機デバイスの駆動により、正孔注入層と正孔輸送層の界面におけるナノオーダーレベルの剥離が生じ、有機デバイスの性能の低下を引き起こすと推測される。
本発明の有機デバイスは、前記正孔注入層が、以下の一般式(1)で示される正孔注入材料を含むことが好ましい。
X−Y (1)
但し、Xは前記部分Bを含み、有機層との密着安定性を確保する部分である。また、Yは電極に連結する連結基である。
正孔注入電極上に一般式(1)で示される正孔注入材料を含む正孔注入層が設けられることにより、電極と有機半導体材料との密着が安定に保たれ、有機デバイスの長駆動寿命化に寄与する。
式(1)において、Xに含まれる部分Bが有機層との密着安定性を向上させる。
一方、Yは電極に連結し得る連結基である。正孔注入材料の1分子に含まれる連結基の数は、1つ以上であればいくつであっても良い。しかし、当該連結基が1分子内に2つ以上存在する場合には、正孔注入材料同士が重合して有機層材料とは相溶性の悪い連結基部分が有機層側界面に露出して、正孔注入層と有機層の密着安定性を阻害する可能性がある。従って、当該連結基は、正孔注入材料の1分子内に1つであることが好ましい。連結基の数が1分子内に1つの場合は、当該正孔注入材料は基板と結合するか、2分子反応で二量体を形成して反応が停止する。当該二量体については、基板との密着性は弱いため、洗い流す工程を付与すると膜中から容易に取り除くことができる。
また、連結基Yは、少なくとも酸素原子とハロゲン原子を含有する基であるが、好ましくは、下記式(4)で示される以下の基から選ばれる。
Figure 0005012277
式(4)中、Z1、Z2及びZ3は、各々独立にハロゲン原子あるいはアルコキシ基を表し、特に塩素原子、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。これらの連結基Yは、通常、正孔注入電極の表面に存在する反応性官能基(多くの場合は水酸基)と連結することで、正孔注入電極の表面と結合する。連結基Yとしては、中でもリン酸クロライド基(−OP(=O)Cl)であることが、密着安定性が向上して、寿命が向上する点から好ましい。
本発明の有機層に含まれる化合物の部分Aが、正孔注入材料の部分Bと同一の骨格、又は同一の骨格内にスペーサー構造を含む類似骨格を有することが、正孔注入層と有機層の界面の密着安定性を向上させ、長駆動寿命化に寄与する点から好ましい。なお、骨格とは部分A又は部分Bから置換基を除いた構造をいう。ここで、スペーサー構造を含むとは、骨格を伸長する原子が存在することを意味する。骨格を伸長する原子としては、炭素数1〜12の炭化水素構造が好ましいが、エーテル結合等、その他の原子が含まれていても良い。
部分Aと部分Bが共通に有する骨格としては、具体的には例えば、トリフェニルアミン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、ピレン骨格、アントラセン骨格、カルバゾール骨格、フェニルピリジン骨格、トリチオフェン骨格、フェニルオキサジアゾール骨格、フェニルトリアゾール骨格、ベンゾイミダゾール骨格、フェニルトリアジン骨格、ベンゾジアチアジン骨格、フェニルキノキサリン骨格、フェニレンビニレン骨格、フェニルシロール骨格、及びこれらの骨格が組み合わされてなる骨格等が挙げられる。
部分Aと部分Bは、骨格が同一又は類似していれば、骨格上の置換基の種類、数、位置が異なっていてもよい。骨格上に置換基を有する場合、その種類としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基が好ましく、更に炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が好ましい。
有機層に含まれる化合物の部分A、及び正孔注入層に含まれる正孔注入材料の部分Bは、それぞれ、1つの分子内に2種類以上存在してもよい。この場合、正孔注入層全体に占める共通部分の割合が大きくなり界面の密着安定性が向上する。
また、前記正孔注入材料は、一般式(1)で示される化合物である場合、前記部分Bに含まれる原子の原子量の総和MBがXに含まれる原子の原子量の総和の(1/3よりも大きな値)2/5、更に3/5よりも大きいことが、正孔注入層と有機層の界面の密着安定性を更に向上させ、長駆動寿命化に寄与する点から好ましい。
有機層に含まれる化合物として、1種類又は2種類以上の繰り返し単位を有する高分子化合物を用いる場合、通常、当該繰り返し単位の中から1種類又は2種類以上を選択して部分A(部分Aが2種類以上含まれる場合には、部分A、A’、A”など)とし、正孔注入層に含まれる正孔注入材料として、当該部分Aと同一の骨格、又は同一の骨格内にスペーサー構造を含む類似骨格を有する部分B(部分Bが2種類以上含まれる場合には、2種類以上の部分Aに対応して部分B、B’、B”など)を有する正孔注入材料を用いる。
例えば、前記有機層に含まれる材料が下記一般式(2)で示される化合物であるとき、前記正孔注入材料として下記一般式(3)で示される化合物を好適に用いることができる。
Figure 0005012277
(但し、Ar〜Arは、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。nは0〜10000、mは0〜10000であり、n+m=1〜20000である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。)
Figure 0005012277
(但し、Ar〜Arは、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。)
Ar〜Ar、及び、Ar〜Arにおいて、芳香族炭化水素基における芳香族炭化水素としては、具体的には例えば、ベンゼン、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、及びこれらの組み合わせ、並びにそれらの誘導体、更に、フェニレンビニレン誘導体、スチリル誘導体等が挙げられる。また、複素環基における複素環としては、具体的には例えば、チオフェン、ピリジン、ピロール、カルバゾール、及びこれらの組み合わせ、並びにそれらの誘導体等が挙げられる。
上記一般式(2)及び一般式(3)において、Ar、Ar、及びArの組み合わせは、Ar、Ar、及びArの組み合わせと、少なくとも芳香族炭化水素基または複素環基の骨格が同一であることが好ましい。上記一般式(2)のAr〜Arが置換基を有する場合、当該置換基は、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基やアルケニル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ビニル基、アリル基等であることが好ましい。一般式(3)のAr〜Arが置換基を有する場合、当該置換基は、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基の他、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、ピレン骨格、アントラセン骨格、カルバゾール骨格、フェニルピリジン骨格、トリチオフェン骨格、フェニルオキサジアゾール骨格、フェニルトリアゾール骨格、ベンゾイミダゾール骨格、フェニルトリアジン骨格、ベンゾジアチアジン骨格、フェニルキノキサリン骨格、フェニレンビニレン骨格、フェニルシロール骨格等の芳香族炭化水素環又は複素環の1個又は2個の炭素位から水素を除去することにより得られる1価又は2価の基が挙げられる。芳香族炭化水素環又は複素環の1個又は2個の炭素位から水素を除去することにより得られる1価又は2価の基は、更にアルキル基等の置換基を有していても良い。
中でも、上記一般式(3)で示される化合物は、下記一般式(3’)で表される構造であることが、式(2)との構造の共通性による密着安定性向上の点から好ましい。
Figure 0005012277
(但し、Ar〜Arは、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。qは0〜10、rは1〜10であり、q+r=1〜20である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。)
一般式(3’)におけるArも、具体的には、一般式(3)のAr〜Arと同様のものが好適に用いられる。上記一般式(2)及び一般式(3’)において、Ar、Ar、及びArの組み合わせは、Ar、Ar、及びArの組み合わせと、また、Arは、Arと、少なくとも芳香族炭化水素基または複素環基の骨格が同一であることが好ましい。
具体的には、上記一般式(2)で示される化合物が、下記式(5)で示されるポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4’−(N−(4−sec−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)であるとき、正孔注入材料は下記式(6)で示されるジフェニルアミノフェニルリン酸ジクロロホスホダート(TPA―O-P(O)Cl2)、あるいは下記式(7)〜(10)に示す化合物であることが、正孔注入層と正孔注入電極との界面、及び正孔注入層と正孔輸送層との界面を特に安定させ、密着安定性を保つことができ、有機デバイスの駆動安定性、及び長駆動寿命化に特に大きく寄与する。Rは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数6〜60のアリールオキシ基、炭素数7〜60のアリールアルキル、炭素数7〜60のアリールアルコキシ基、炭素数4〜60の複素環基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる基を示す。
Figure 0005012277
Figure 0005012277
Figure 0005012277
Figure 0005012277
Figure 0005012277
Figure 0005012277
また、例えば正孔輸送層にPVK(ポリビニルカルバゾール)を用いた場合には正孔注入材料として下記式(11)〜(13)に示す化合物を好適に用いることができる。ここでRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数6〜60のアリールオキシ基、炭素数7〜60のアリールアルキル、炭素数7〜60のアリールアルコキシ基、炭素数4〜60の複素環基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる基を示す。
Figure 0005012277
Figure 0005012277
Figure 0005012277
上記有機層は、必要に応じてバインダー樹脂や硬化性樹脂や塗布性改良剤などの添加剤を含んでいても良い。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。また、熱または光等により硬化するバインダー樹脂を含有していてもよい。これにより、有機層形成用塗工液を塗布する際に、当該塗工液を塗布する下地層に対する有機層の構成成分の溶出、例えば有機EL素子の場合は、正孔輸送層の構成成分の溶出を低減することができる。熱または光等により硬化する材料としては、上記発光層材料において分子内に硬化性の官能基が導入されたもの、あるいは、硬化性樹脂等を使用することができる。具体的に、硬化性の官能基としては、アクリロイル基やメタクリロイル基などのアクリル系の官能基、またはビニレン基、エポキシ基、イソシアネート基等を挙げることができる。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂であっても光硬化性樹脂であってもよく、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、シランカップリング剤等を挙げることができる。硬化性樹脂を用いる場合には、上述したように硬化性樹脂をバインダーとして、上記発光材料を硬化性樹脂中に分散させたものを発光層とすることができる。
上記正孔注入層の膜厚は0.1〜100nm、特に0.1〜20nmであることが、正孔注入効率の点から好ましい。当該膜厚が正孔注入材料の分子長であることがより好ましい。
また、上記正孔注入層の仕事関数は5.0〜6.0eV、更に5.0〜5.8eVであることが、正孔注入効率の点から好ましい。
上記正孔注入層は、溶液塗布法により形成されたものであることが、塗布溶液が基板上に塗布される際に、正孔注入材料の連結基が基板に対し選択的に連結するため、塗布溶液に含まれる不純物を含みにくく、界面の密着安定性、及び正孔注入効率に優れた正孔注入層を形成できる点から好ましい。
また、上記有機層は、前記正孔注入層の上に溶液塗布法により形成されたものであることが、塗布溶液が正孔注入層上に塗布される際に、正孔注入材料の部分Bと有機層の部分Aとが選択的に連結するため、塗布溶液に含まれる不純物を含みにくく、界面の密着安定性、及び電気特性に優れた有機層を形成できる点から好ましい。
溶液塗布法は、下記、有機デバイスの製造方法の項目において説明する。
(2)基板
基板は、本発明の有機デバイスの支持体になるものであり、例えばフレキシブルな材質であっても、硬質な材質であってもよい。具体的に用いることができる材料としては、例えば、ガラス、石英、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート等を挙げることができる。
これらのうち、合成樹脂製の基板を使用する場合には、ガスバリア性を有することが望ましい。基板の厚さは特に限定されないが、通常、0.5〜2.0mm程度である。
(3)電極
本発明の有機デバイスは、基板上に対向する2つ以上の電極を有する。
本発明の有機デバイスにおいて、電極は、金属又は金属酸化物で形成されることが好ましく、例えば、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられるが、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物などの金属酸化物により形成することができる。
電極は、通常、基板上にスパッタリング法、真空蒸着法などの方法により形成されることが多いが、塗布法やディップ法等の湿式法により形成することもできる。電極の厚さは、各々の電極に要求される透明性等により異なる。透明性が必要な場合には、電極の可視光波長領域の光透過率が、通常、60%以上、好ましくは80%以上となることが望ましく、この場合の厚さは、通常10〜1000nm、好ましくは20〜500nm程度である。
本発明においては、電極上に、本発明に係る電荷注入材料との密着安定性を向上させるために、更に金属層を有していても良い。金属層は金属が含まれる層をいい、上述のような通常電極に用いられる金属や金属酸化物から形成される。
(4)その他
本発明の有機デバイスは、必要に応じて、電子注入電極と有機層の間に、従来公知の電子注入層及び/又は電子輸送層を有していてもよい。
2.有機EL素子
本発明の有機デバイスの一実施形態として、有機層が少なくとも正孔輸送層及び発光層を含む、有機EL素子が挙げられる。
以下、有機EL素子を構成する各層について、図2を用いて順に説明する。
(基板)
基板7は、有機EL素子の支持体になるものであり、例えばフレキシブルな材質であっても、硬質な材質であってもよい。具体的には、例えば、上記有機デバイスの基板の説明において挙げたものを用いることができる。
発光層5で発光した光が基板7側を透過して取り出される場合においては、少なくともその基板7が透明な材質である必要がある。
(陽極、陰極)
電極1および電極6は、発光層5で発光した光の取り出し方向により、どちらの電極に透明性が要求されるか否かが異なり、基板7側から光を取り出す場合には電極1を透明な材料で形成する必要があり、また電極6側から光を取り出す場合には電極6を透明な材料で形成する必要がある。
基板7の発光層側に設けられている電極1は、発光層に正孔を注入する陽極として作用し、基板7の発光層側に設けられている電極6は、発光層5に電子を注入する陰極として作用する。
本発明において、陽極及び陰極は、上記有機デバイスの電極の説明において列挙した金属又は金属酸化物で形成されることが好ましい。
(正孔注入層及び正孔輸送層)
正孔注入層2及び正孔輸送層4は、図2に示すように、発光層5と電極1(陽極)の間であって電極1の表面に形成される。本発明の有機EL素子において、正孔注入層に最も隣接している有機層は正孔輸送層であり、上記有機デバイスの説明において述べた正孔注入層と有機層の関係は、有機EL素子における正孔注入層2と正孔輸送層2の関係に適用することができる。
前記正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料が上記記一般式(2)で示される化合物であり、前記正孔注入材料が上記記一般式(3)で示される化合物であることが、正孔注入層と正孔輸送層の界面の密着安定性を向上させ、長駆動寿命化に寄与する点から好ましい。
上記式(2)と式(3)で示される、正孔輸送材料と正孔注入材料の組み合わせの中でも、正孔輸送材料が、上記式(5)で示されるTFBであり、正孔注入材料が、上記式(6)で示されるTPA―O-P(O)Cl2であるとき、正孔注入層と正孔注入電極との界面、及び正孔注入層と正孔輸送層との界面を特に安定させ、密着安定性保つことができ、有機EL素子の駆動安定性、及び長駆動寿命化に大きく寄与する点から、特に好ましい。
さらに、正孔注入特性を考慮すると、電極1側から有機層である発光層5に向かって各層の仕事関数(HOMO)の値が階段状に大きくなるような正孔注入材料及び正孔輸送材料を選択して、各界面での正孔注入のエネルギー障壁をできるだけ小さくし、電極1と発光層5の間の大きな正孔注入のエネルギー障壁を補完することが好ましい。
具体的には例えば、電極1にITO(UVオゾン洗浄直後の仕事関数5.0eV)を用い、発光層5にAlq3(HOMO5.7eV)を用いた場合、正孔注入層を構成する材料としてTPA―O-P(O)Cl2(仕事関数5.3eV)、正孔輸送層を構成する材料としてTFB(仕事関数5.4eV)というように選択して、電極1側から発光層5に向かって各層の仕事関数の値が順に大きくなるような層構成をとるように配置することが好ましい。この際、第1層、第2層等は単分子膜であっても、分子が多層重なった膜であってもいずれでも良い。なお、上記仕事関数又はHOMOの値は、光電子分光装置AC−1(理研計器製)を使用した光電子分光法の測定値より引用した。
このような層構成の場合、電極1(UVオゾン洗浄直後の仕事関数5.0eV)と発光層5(例えばHOMO5.7eV)の間の正孔注入の大きなエネルギー障壁を、HOMOの値が階段状になるように補完可能で、正孔注入効率に非常に優れた正孔注入層が得られる。
ただし、必ずしも電極1側から有機層である発光層5に向かって該金属の仕事関数の値が大きくなるように配置しなくても、効率が高いあるいは長寿命など良好な素子性能が得られる場合がある。特に本発明において、正孔注入層が1―2nm程度の単分子もしくは数分子である場合には、たとえHOMOの値が上記の好ましい条件を満たしていなくても正孔はトンネル効果により注入が可能であり、さらに正孔注入層が電極と正孔輸送層との間の密着安定性を向上させる効果により長寿命特性が期待される。
正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を用いて、後述の発光層と同様方法で形成することができる。正孔輸送材料の膜厚は、通常0.1〜1000nm、好ましくは1〜500nmである。
(発光層)
発光層5は、図2に示すように、電極1が形成された基板7と電極6との間に、発光材料により形成される。
本発明の発光層に用いられる材料としては、通常、発光材料として用いられている材料であれば特に限定されず、蛍光材料およびりん光材料のいずれも用いることができる。具体的には、色素系発光材料、金属錯体系発光材料等の材料を挙げることができ、低分子化合物または高分子化合物のいずれも用いることができる。
(色素系発光材料の具体例)
色素系発光材料としては、例えば、アリールアミン誘導体、アントラセン誘導体、(フェニルアントラセン誘導体、)、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、シロール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、スチルベン誘導体、スピロ化合物、チオフェン環化合物、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリアゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、ピラゾリンダイマー、ピリジン環化合物、フルオレン誘導体、フェナントロリン類、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体等を挙げることができる。またこれらの2量体や3量体やオリゴマー、2種類以上の誘導体の化合物も用いることができる。
具体的には、トリフェニルアミン誘導体としてはN,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス−(フェニル)−ベンジジン(TPD)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、アリールアミン類としてはビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン)(α−NPD)、オキサジアゾール誘導体としては(2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)、アントラセン誘導体としては9,10−ジ−2−ナフチルアントラセン(DNA)、カルバゾール誘導体としては4,4−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)、1,4−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ベンゼン(DPVBi)フェナントロリン類の具体例としては、バソキュプロイン、バソフェナントロリン等が挙げられる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
(金属錯体系発光材料の具体例)
金属錯体系発光材料としては、例えばアルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、あるいは中心金属にAl、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダール、キノリン構造等を有する金属錯体を挙げることができる。
具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)、ビス(2−メチル−8−キノリラト)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム錯体(BAlq)、トリ(ジベンゾイルメチル)フェナントロリンユーロピウム錯体、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体(BeBq)を挙げることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
(高分子系発光材料)
高分子系発光材料としては、分子内に上記低分子系材料を分子内に直鎖あるいは側鎖あるいは官能基として導入されたもの、重合体およびデンドリマー等を使用することができる。
例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、及びそれらの共重合体等を挙げることができる。
(ドーパントの具体例)
上記発光層中には、発光効率の向上や発光波長を変化させる等の目的でドーピング材料を添加してもよい。高分子系材料の場合は、これらを分子構造の中に発光基として含んでいても良い。このようなドーピング材料としては、例えばペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクドリン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体を挙げることができる。またこれらにスピロ基を導入した化合物も用いることができる。
具体的には、1−tert−ブチル―ペリレン(TBP)、クマリン6、ナイルレッド、1,4−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ベンゼン(DPVBi)、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン(TPB)等を挙げることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、りん光系のドーパントとして、白金やイリジウムなどの重金属イオンを中心に有し、燐光を示す有機金属錯体が使用可能である。具体的には、Ir(ppy)、(ppy)Ir(acac)、Ir(BQ)、(BQ)Ir(acac)、Ir(THP)、(THP)Ir(acac)、Ir(BO)、(BO)(acac)、Ir(BT)、(BT)Ir(acac)、Ir(BTP)、(BTP)Ir(acac)、FIr6、PtOEP等を用いることができる。これらの材料は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
本発明においては、発光層の材料としては蛍光発光する低分子化合物または高分子化合物や、燐光発光する低分子化合物または高分子化合物のいずれをも用いることができる。本発明において、電荷注入層が上記本発明に係る電荷注入材料を用いて形成される場合、アルコール系の溶媒を用いて塗布して形成可能なものが多いため、発光層の材料としては、キシレン等の非水系溶媒に溶解しやすく溶液塗布法により層を形成する高分子型材料を用いることが可能である。この場合、蛍光発光する高分子化合物または蛍光発光する低分子化合物を含む高分子化合物や、燐光発光する高分子化合物または燐光発光する低分子化合物を含む高分子化合物を好適に用いることができる。
発光層は、発光材料を用いて、溶液塗布法または蒸着法または転写法により形成することができる。溶液塗布法は、下記、有機デバイスの製造方法の項目において説明する。蒸着法は、例えば真空蒸着法の場合には、発光層の材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して、発光層の材料を蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた基板7、電極1、正孔注入層2、及び正孔輸送層4の積層体の上に発光層5を形成させる。転写法は、例えば、予めフィルム上に溶液塗布法又は蒸着法で形成した発光層を、電極上に設けた正孔輸送層に貼り合わせ、加熱により発光層を正孔輸送層に転写することにより形成される。また、フィルム、発光層、正孔輸送層の順に積層された積層体の正孔輸送層側を、電極に転写してもよい。
発光層の膜厚は、通常、1〜500nm、好ましくは20〜1000nm程度である。本発明は、正孔注入材料を湿式塗布法で形成することを特徴とするため、発光層を塗布プロセスで形成する場合はプロセスコストを下げることができるという利点がある。さらに、発光層を塗布プロセスで形成すると溶剤を乾燥させるための加熱プロセスを必要とする場合があるが、正孔注入層と正孔輸送層とのSP値が近いため、加熱による分子移動により界面のnmオーダーの長さスケールの接触面積が減少して密着安定性が低下することはない。
3.有機トランジスタ
本発明に係る有機デバイスの別の実施形態として、有機トランジスタが挙げられる。以下、有機トランジスタを構成する各層について、図3を用いて説明する。
本発明の一実施形態である有機トランジスタにおいて、正孔注入層に最も隣接している有機層は有機半導体層であり、上記有機EL素子の説明において述べた正孔注入層と正孔輸送層の関係は、有機トランジスタにおける正孔注入層2と有機半導体層8の関係に適用することができる。
本発明の有機トランジスタは、電極1(ソース電極)と電極6(ドレイン電極)の表面に正孔注入層2が形成されているため、それぞれの電極と有機半導体層との界面の分子オーダーの長さスケール(数nm)の密着安定性が向上し、長駆動寿命化に寄与する点から好ましい。
正孔注入層は、上述の有機EL素子の正孔注入層と同様の手順で層を形成することが好ましい。
有機半導体層を形成する材料としては、ドナー性(p型)の、低分子あるいは高分子の有機半導体材料が使用できる。
前記有機半導体層8を構成する化合物が上記一般式(2)で示される化合物であり、前記正孔注入材料が上記一般式(3)で示される化合物であることが、正孔注入層と有機半導体層の界面の密着安定性を向上させ、長駆動寿命化に寄与する点から好ましい。
具体的には、上記有機半導体材料が、上記式(5)で示されるTFBであり、正孔注入材料は上記式(6)で示されるTPA―O-P(O)Cl2であることが、正孔注入層と正孔注入電極との界面、及び正孔注入層と有機半導体層との界面を特に安定させ、密着安定性保つことができ、有機トランジスタの駆動安定性、及び長駆動寿命化に特に大きく寄与する。
上記のほか、本発明の有機トランジスタに用いることができるドナー性(p型)有機半導体材料、及び正孔注入材料の組み合わせとしてはTPA―O-P(O)Cl2を正孔注入層に用いた場合はアリールアミン誘導体を挙げることができる。
上記有機半導体材料としては、TFB以外にも一般的に使用される材料を用いることができ、ポルフィリン誘導体、アリールアミン誘導体、ポリアセン誘導体、ペリレン誘導体、ルブレン誘導体、コロネン誘導体、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体、ペリレンテトラカルボン酸二無水化物誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリチオフェンビニレン誘導体、ポリチオフェン−複素環芳香族共重合体とその誘導体、α−6−チオフェン、α−4−チオフェン、ナフタレンのオリゴアセン誘導体、α−5−チオフェンのオリゴチオフェン誘導体、ピロメリト酸二無水物誘導体、ピロメリト酸ジイミド誘導体を用いることができる。具体的には、ポルフィリン誘導体としては例えばフタロシアニンや銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニンを挙げることができ、アリールアミン誘導体としては例えばm−TDATAを用いることができ、ポリアセン誘導体としては、例えばナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペンタセンを挙げることができる。また、これらポルフィリン誘導体やトリフェニルアミン誘導体などにルイス酸や四フッ化テトラシアノキノジメタン(F−TCNQ)、バナジウムやモリブデンなど無機の酸化物などを混合し、導電性を高くした層を用いることもできる、この場合混合比率は重量比率で1〜95%の割合で混合されていることが好ましいが、SP値のマッチングを考慮すると、1〜49%の割合で混合されていることが好ましい。
これらの材料を有機半導体層に用いた場合、低分子化合物であるならばその有機半導体化合物そのものを、重合体及び高分子化合物であればその繰り返し単位をXとし、Yとしては上記式(4)から選ばれる連結基を有する正孔注入材料X-Yを好適に用いることができる。例えばポリチオフェン誘導体を有機半導体材料として用いた場合、X部にチオフェン誘導体、Yに−OP(O)Cl2、あるいは−OSI(OCH3)3を有する正孔注入材料X-Yを正孔注入層に用いるとSP値のマッチングの観点から好ましい。また、ポリフルオレン誘導体を有機半導体材料として用いた場合、例えば上記式(10)に示すようなX部にフルオレン誘導体を持ちYとしてYに−OP(O)Cl2、あるいは−OSI(OCH3)3を連結した材料X-Yを正孔注入層に用いるとSP値のマッチングの観点から好ましい。
有機層である有機半導体層のキャリア移動度は10−6cm/Vs以上であることが、特に有機トランジスタに対しては10−3cm/Vs以上であることが、トランジスタ特性の点から好ましい。
また、有機半導体層は、上記有機EL素子の発光層と同様に、溶液塗布法またはドライプロセスにより形成することが可能である。
基板、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極と、絶縁層については、特に限定されず、例えば以下のような材料を用いて形成することができる。
基板7は、本発明の有機デバイスの支持体になるものであり、例えばフレキシブルな材質であっても、硬質な材質であってもよい。具体的には、上記有機EL素子の基板と同様のもの用いることができる。
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極としては、導電性材料であれば特に限定されないが、本発明に係る電荷輸送材料を用いて、金属イオンが配位している化合物が吸着してなる正孔注入層2を形成する点からは、金属又は金属酸化物であることが好ましい。具体的には、上述の有機EL素子における電極と同様の金属又は金属酸化物を用いることができるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITOおよび炭素が好ましい。
ゲート電極を絶縁する絶縁層には種々の絶縁材料を用いることができ、無機酸化物でも有機化合物でも用いることが出来るが、特に、比誘電率の高い無機酸化物が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの無機窒化物も好適に用いることができる。
有機化合物としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、およびシアノエチルプルラン、ポリマー体、エラストマー体を含むホスファゼン化合物、等を用いることができる。
4.有機デバイスの製造方法
本発明の有機デバイスの製造方法は、基板上に対向する2つ以上の電極と、そのうちの2つの電極間に配置された有機層と少なくとも1つの電極の前記有機層側表面に隣接した正孔注入層とを有し、更に、当該電極上には金属層を有していてもよい有機デバイスの製造方法であって、
前記有機層に含まれる化合物が、化学構造の一部として、原子量の総和MAが100以上である部分Aを有し、前記正孔注入層に含まれる正孔注入材料が、電極と連結する作用を生ずる連結基、及び原子量の総和MBが100以上であり、当該原子量の総和MBと、有機層の部分Aに含まれる原子の原子量の総和MAとが下記式(I)の関係を満たし、当該原子量の総和MBが正孔注入材料の分子量の1/3より大きい部分Bを有する前記有機デバイスは、上記部分Aの溶解度パラメータSAと、上記部分Bの溶解度パラメータSBとが下記式(II)の関係を満たし、
当該製造方法が、電極を備えた基板を用意する工程と、
前記部分Bを有する正孔注入材料を少なくとも含む溶液を塗布し、正孔注入層を形成する工程と、
|MA−MB|/MB≦2 式(I)
|SA−SB|≦2 式(II)
前記部分Aを有する化合物を少なくとも含む溶液を、上記正孔注入層の上に塗布し、有機層を形成する工程を有することを特徴とする。
本発明に係る有機デバイスの製造方法においては、溶液塗布法を用いることにより、正孔注入層及び有機層の形成の際に蒸着装置が不要で生産性が高く、また、電極と正孔注入層の界面、及び正孔注入層と有機層界面の密着安定性が高い有機デバイスを形成できる点から好ましい。
ここで溶液塗布法とは、正孔注入材料、又は有機層を形成するための主要材料(例えば、有機EL素子の場合は、正孔輸送材料又は発光材料であり、有機トランジスタの場合は、有機半導体材料である。)を1種または2種以上と、必要に応じて正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤とを添加し、溶解して塗布溶液を調製し、上記方法により正孔注入電極上に塗布し、乾燥して正孔注入層又は有機層を形成する方法である。
溶液塗布法として、例えば、浸漬法、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などが挙げられる。単分子膜を形成したい場合には、浸漬法、デイップコート法が好適に用いられる。
溶液塗布法により層を形成するための溶液は、上記本発明に用いる正孔注入材料と、その他の成分を溶剤に溶解又は分散して調製することができる。当該溶液を調製するのに用いられる溶剤としては、上記本発明に係る正孔注入材料を溶解するものを用いる。
本発明に係る有機デバイスの製造方法の一実施形態である有機EL素子の製造方法は、上記有機層を形成する工程において、有機層が正孔輸送層及び発光層を含み、上記正孔注入層の表面に、正孔輸送層、発光層の順に形成する工程を有することを特徴とする。
本製造方法によれば、正孔注入材料を含む塗布溶液が基板上に塗布される際に、正孔注入材料の連結基が電極に対し選択的に連結する作用を生ずるため、塗布溶液に含まれる不純物含まず、電極と正孔注入層の界面の密着安定性、及び正孔注入効率に優れた正孔注入層を形成できる。
更に、正孔輸送層を形成するための塗布溶液が正孔注入層上に塗布される際に、正孔注入材料の部分Aと有機層の部分Bとが選択的に連結するため、塗布溶液に含まれる不純物を含みにくく、正孔注入層と正孔輸送層の界面の密着安定性、及び正孔輸送特性に優れた正孔輸送層を形成できる。
また、本製造方法によれば、正孔注入層及び正孔輸送層の形成の際に蒸着装置が不要であり、有機EL素子を生産性高く形成できる。
上記有機EL素子の製造方法において、前記正孔輸送層を構成する正孔輸送材料は、上記一般式(2)で示される化合物あり、前記正孔注入材料が上記一般式(3)で示される化合物であることが、電極と正孔注入層の界面及び正孔注入層と正孔輸送層の界面の密着安定性を更に向上させ、有機EL素子の長駆動寿命化に寄与する点から好ましい。
電極を備えた基板を用意する工程と、溶液塗布法またはドライプロセスにより発光層を形成する工程は、通常の有機EL素子の製造方法によることができる。
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。尚、実施例中、部は特に特定しない限り重量部を表す。
実施例において行った評価方法は以下のとおりである。
(1)仕事関数の測定
本発明で記述される仕事関数(HOMO)の値は、特に記載がない限り、光電子分光装置AC-1(理研計器製)を用いて測定した。洗浄済みの石英ガラス基板上へ各層を単膜で形成し、AC-1で光電子が放出されるエネルギー値で決定した。
(2)膜厚の測定
本発明で記述される各層の厚みは、特に記載がない限り、洗浄済みの石英ガラス基板上へ各層を単膜で形成し、作製した段差を測定することによって決定した。膜厚測定には、プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、Nanopics1000)を用いた。
(3)有機EL素子の電流効率と寿命特性
実施例において作製された有機EL素子の電流効率と寿命特性を評価した。
電流効率は、電流−電圧−輝度(I−V−L)測定して算出した。I−V−L測定方法は、陰極を接地して陽極に正の直流電圧を50mV刻みで走査(1sec./div.)して印加し、各電圧における電流と輝度を記録した。
寿命特性は、定電流駆動で輝度が経時的に徐々に低下する様子を観察して評価した。初期輝度に対して50%の輝度に劣化するまでの時間を寿命とした。
下記で合成した全ての化合物は日本電子社製核磁気共鳴スペクトルJNM−LA400WBを用いて、1H NMRスペクトルを測定し構造の確認を行った。
[合成例1]
下記のスキームに従って、化合物TPA−OP(O)Cl2を合成した。
Figure 0005012277
(1)TPA−OH(1)の合成
還流管を付した300 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものに無水キシレン (110 mL)、トリスt−ブチルホスフィン (0.43 mL, 1.9 mmol)、酢酸パラジウム (0.1 g, 0.48 mmol)、ナトリウム t−ブトキシド (2.2 g, 22.8 mmol)をいれ、室温で10分間撹拌した。このものにブロモベンゼン (2.0 mL, 19 mmol)を加え、10分間撹拌した後、4-ヒドロキシジフェニルアミン (3.1 g, 17 mmol)を加え、6時間加熱還流した。室温に戻し、クロロホルム (100 mL)を加え、水 (200 mL×1)、飽和食塩水 (200 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、淡赤色固体の粗生成物 5.0 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 100 g:溶出溶媒 ヘキサン/酢酸エチル= 10/1)に供し、無色油状物のTPA−OH (1) (2.8 g, 9.9 mmol; 58% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.20 (t, J = 7.9 Hz, 4H), 7.02 (m, J = 7.6, 8.0 Hz, 6H), 6.93 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 6.77 (d, J = 8.0 Hz, 2H) 5.41 (brs, 1H) ppm.
(2)TPA−OP(O)Cl2 (2)の合成
50 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものにTPA−OH (1) (1.5 g, 5.7 mmol)、無水ベンゼン (16 mL)を入れ反応系内を氷浴にて冷却した。塩化ホスホリル (8.4 mL, 90 mmol)を滴下し、ついで無水ピリジンのベンゼン溶液 (1 M, 5.8 mL, 5.8 mmol)をゆっくりと滴下した。室温に戻し、2時間撹拌した後、無水ジエチルエーテル (30 mL)を加え、析出した無色固体をろ別した。ろ液を減圧下濃縮し、残渣に無水ジエチルエーテル (30 mL)を加えた。さらに析出した無色固体を除き、ろ液中のジエチルエーテルおよび残るベンゼン、塩化ホスホリルを減圧下留去し、非晶質固体のTPA−OP(O)Cl2 (2)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.27 (m, J = 8.4, 7.9, 7.2 Hz, 4H), 7.13 (dd, J = 9.2, 2.0 Hz, 2H), 7.08 (t, J = 7.2 Hz, 8H) ppm.
[合成例2]
下記のスキームに従って、化合物TPA−TPA−OP(O)Cl2を合成した。
Figure 0005012277
(1)DPA−OTBDMS(3)の合成
300 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものに無水ジクロロメタン (110 mL)、4−ヒドロキシジフェニルアミン (20 g, 108 mmol)、トリエチルアミン (30 mL, 216 mmol)を入れた。反応系内を0 ℃に冷却し、塩化t−ブチルジメチルシラン (18 g, 120 mmol)を30分かけて加えた。室温にゆっくり戻し、13時間撹拌した。得られた茶色懸濁の反応混合物にジクロロメタン (200 mL)を加え、水 (300 mL×1)、飽和食塩水 (300 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、淡赤色固体の粗生成物 35 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 500 g:溶出溶媒 ヘキサン/酢酸エチル= 9/1)に供し、無色固体のDPA−OTBDMS (3) (31 g, 104 mmol; 96% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.25 (dd, J = 7.2, 8.8 Hz, 2H), 7.00 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.91 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 6.83 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 6.78 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 5.48 (brs, 1H)
(2)TPA−Br−OTBDMS(4)の合成
ディーンスタークおよび還流管を付した300 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものにDPA−OTBDMS (1) (20 g, 67 mmol)、4-ブロモ-ヨードベンゼン (19.8 g, 70 mmol)、ジイソプロピルベンゼン m−, p− 異性体混合物 (200 mL)、銅紛 (4.5 g, 72 mmol)、炭酸カリウム (20 g, 144 mmol)を入れた。反応系内を37時間加熱還流した。室温に戻し、反応混合物をろ過し、ジクロロメタン (100 mL)で洗浄した。合わせたろ液を水 (200 mL×1)、飽和食塩水 (200 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、淡赤色固体の粗生成物 25 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 700 g:溶出溶媒 ヘキサン/クロロホルム= 10/1)に供し、淡黄色油状物のTPA−Br−OTBDMS (4) (14.3 g, 22 mmol; 32% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.27 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.21 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 7.02 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 6.97 (m, J = 8.8 Hz, 3H), 6.88 (d, J = 8.8 Hz., 2H), 6.76 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 0.99 (s, 9H), 0.21 (s, 6H) ppm.
(3)TPA−TPA−OTBDMS(5)の合成
還流管を付した250 mLシュレンク型反応管に磁気撹拌子を入れ、減圧下加熱乾燥しアルゴンガス置換した。このものにTPA−B(OH)2 (1.3 g, 4.6 mmol)、TPA−Br−OTBDMS (4) (2.0 g, 4.4 mmol)、無水トルエン (18 mL)、蒸留水 (6 mL)、炭酸カリウム (3.2 g, 23 mmol)を入れ、減圧によるアルゴンガス置換を3回行い、脱気した。このものにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) (266 mg, 0.23 mmol)を入れ、50℃で19時間加熱還流した。室温に戻し、水 (50 mL)、ジクロロメタン (50 mL)を加えた。有機層を分取し、水層をジクロロメタン (50 mL×2)で抽出し、合わせた有機層を水 (100 mL×1)、飽和食塩水 (100 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、赤褐色固体の粗生成物 4.3 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 50 g:溶出溶媒 ヘキサン/クロロホルム= 20/1)に供し、無色固体のTPA-TPA-OTBDMS (5) (1.7 g, 2.7 mmol; 62% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.45 (t, J = 3.2 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 7.6 Hz, 3H), 7.25 (m, 4H), 7.15 (m, 20H), 6.77 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 0.99 (s, 9H), 0.21 (s, 6H), ppm.
(4)TPA−TPA−OH (6)の合成
50 mLナス型フラスコに磁気撹拌子を入れ、TPA−TPA−OTBDMS (5) (1.7 g, 2.7 mmol)、無水テトラヒドロフラン(THF) (10 mL)を加えた。このものにフッ化テトラブチルアンモニウム 1.0 M THF溶液 (3.0 mL, 3.0 mmol)を滴下し、室温で2時間撹拌した。酢酸エチル (30 mL)を加え、水 (30 mL × 3)、飽和食塩水 (100 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、茶白色固体の粗生成物 1.8 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 30 g:溶出溶媒 ヘキサン/クロロホルム= 10/1)に供し、無色固体のTPA−TPA−OH (6) (1.0 g, 2.0 mmol; 72% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.42 (brs 5H), 7.25 (m, 8H), 7.11 (m, 10H), 7.01 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 6.79 (m, 2H), 4.68 (brs, 1H), ppm.
(5)TPA−TPA−OP(O)Cl2の合成
50 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものにTPA−TPA−OH (6) (1.0 g, 2.0 mmol)、無水ベンゼン (5.6 mL)を入れ反応系内を氷浴にて冷却した。塩化ホスホリル (2.9 mL, 31 mmol)を滴下し、ついで無水ピリジン のベンゼン溶液 (1 M, 2.0 mL, 2.0 mmol)をゆっくりと滴下した。室温に戻し、2時間撹拌した後、無水ジエチルエーテル (20 mL)を加え、析出した無色固体をろ別した。ろ液を減圧下濃縮し、残渣に無水ジエチルエーテル (20 mL)を加えた。さらに析出した無色固体を除き、ろ液中のジエチルエーテル、ベンゼン、塩化ホスホリルを減圧下留去し、非晶質固体のTPA−TPA−OP(O)Cl2を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.43 (brs 5H), 7.25 (m, 8H), 7.11 (m, 14H), ppm.
[合成例3]
下記のスキームに従って、化合物FO−TPA−O P(O)Cl2を合成した。
Figure 0005012277
(1)FO−TPA−OTBDMS (8)の合成
還流管を付した250 mLシュレンク型反応管に磁気撹拌子を入れ、減圧下加熱乾燥しアルゴンガス置換した。このものにFO−B(OH)2 (2.0 g, 8 mmol)、Br−TPA−OTBDMS (4) (2.0 g, 4.4 mmol)、無水トルエン (18 mL)、蒸留水 (6 mL)、炭酸カリウム (3.2 g, 23 mmol)を入れ、減圧によるアルゴンガス置換を3回行い、脱気した。このものにジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)ジクロロメタン錯体 (161 mg, 0.23 mmol)を入れ、50℃で19時間加熱撹拌した。室温に戻し、水 (50 mL)、ジクロロメタン (50 mL)を加えた。有機層を分取し、水層をジクロロメタン (50 mL×2)で抽出し、合わせた有機層を水 (100 mL×1)、飽和食塩水 (100 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、赤褐色固体の粗生成物 4.0 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 100 g:溶出溶媒 ヘキサン/クロロホルム= 20/1)に供し、無色油状物のFO−TPA−OTBDMS (8) (1.5 g, 1.8 mmol; 95% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.70 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.52 (d, J = 8.0 Hz, 4H), 7.25 (m, 4H), 7.06 (m, 8H), 6.78 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 1.97 (dd, J = 6.8, 9.6 Hz, 4H), 1.10 (m, 20H), 0.99 (s, 9H), 0.80 (t, 7.6 Hz, 6H), 0.65 (brs, 4H), 0.22 (s, 6H), ppm.
(2)FO−TPA−OH (9)の合成
50 mLナス型フラスコに磁気撹拌子を入れ、FO−TPA−OTBDMS (8) (1.5 g, 2.0 mmol)、無水THF (9 mL)を加えた。このものにフッ化テトラブチルアンモニウム 1.0 M THF溶液 (2.0 mL, 2.0 mmol)を滴下し、室温で2時間撹拌した。酢酸エチル (30 mL)を加え、水 (30 mL × 3)、飽和食塩水 (100 mL×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、茶白色固体の粗生成物 1.7 gを得た。このものをフラッシュカラムクロマトグラフィー(silica gel 30 g:溶出溶媒 ヘキサン/クロロホルム= 10/1)に供し、無色固体のFO−TPA−OH (9) (1.2 g, 2.0 mmol; 72% yield)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.70 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.52 (br, 4H), 7.33 (m, 4H), 7.06 (m, 8H), 6.78 (br, 2H), 1.97 (dd, J = 6.0, 9.6 Hz, 4H), 1.10 (m, 20H), 0.80 (t, 7.6 Hz, 6H), 0.65 (brs, 4H), ppm.
(3)FO−TPA−OP(O)Cl2の合成
50 mL三口フラスコに磁気撹拌子を入れ、アルゴンガスを30分流入させ反応系内を置換した。このものにFO−TPA−OH (9) (1.2 g, 2.0 mmol)、無水ベンゼン (5.1 mL)を入れ反応系内を氷浴にて冷却した。塩化ホスホリル (2.7 mL, 29 mmol)を滴下し、ついで無水ピリジン のベンゼン溶液 (1 M, 1.9 mL, 1.9 mmol)をゆっくりと滴下した。室温に戻し、2時間撹拌した後、無水ジエチルエーテル (20 mL)を加え、析出した無色固体をろ別した。ろ液を減圧下濃縮し、残渣に無水ジエチルエーテル (20 mL)を加えた。さらに析出した無色固体を除き、ろ液中のジエチルエーテル、ベンゼン、塩化ホスホリルを減圧下留去し、油状物のFO−TPA−OP(O)Cl2を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 7.73 (m, J = 7.6, 6.4 Hz, 2H), 7.56 (br, 4H), 7.33 (m, 4H), 7.13 (m, 10H), 1.97 (dd, J = 7.6, 8.8 Hz, 4H), 1.13 (m, 20H), 0.80 (t, 7.2 Hz, 6H), 0.65 (brs, 4H), ppm.
[実施例1]
ガラス基板の上に透明陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、陰極の順番に製膜して積層し、最後に封止して有機EL素子を作製した。透明陽極と正孔注入層以外は、水分濃度0.1ppm以下、酸素濃度0.1ppm以下の窒素置換グローブボックス内で作業を行った。
まず、透明陽極として酸化インジウム錫(ITO)の薄膜(厚み:150nm)を用いた。ITO付ガラス基板(三容真空社製)をストリップ状にパターン形成した。パターン形成されたITO基板を、中性洗剤、超純水の順番に超音波洗浄し、UVオゾン処理を施した。UVオゾン処理後のITOのHOMOは5.0eVであった。
次に、洗浄された陽極の上に、正孔注入層としてTPA−O P(O)Cl2膜を形成した。TPA−O P(O)Cl2膜は、合成例1で得られたTPA−O P(O)Cl2を1、2−ジクロロエタン溶剤中に1wt%溶解させた溶液中に上記陽極を10分間浸漬した後、アセトン溶液で洗浄し、乾燥窒素で乾燥させて作製した。作製した薄膜の膜厚は測定限界以下の5nm以下であり、仕事関数は5.3eVであった。
次に、作製した正孔注入層の上に、正孔輸送層としてポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4’−(N−(4−sec−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)薄膜(厚み:20nm、仕事関数:5.4eV)を形成した。このTFBは、アメリカン・ダイ・ソース社製、品番:ADS259BE(分子量分布:5万〜10万)を材料として用いた。キシレンにTFBを溶解させた溶液を、グローブボックス内でスピンコート法により塗布して製膜した。TFBの製膜後、キシレンを蒸発させるためにグローブボックス内でホットプレートを用いて乾燥させた。
次に、作製した正孔輸送層の上に、発光層としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)薄膜(厚み:60nm)を形成した。真空中(圧力:1×10−4Pa)で、抵抗加熱蒸着法により製膜した。
次に、作製した電子輸送層の上に、電子注入層としてLiF(厚み:0.5nm)、陰極としてAl(厚み:150nm)を順次製膜した。真空中(圧力:1×10−4Pa)で、抵抗加熱蒸着法により製膜した。
最後に陰極形成後、グローブボックス内にて無アルカリガラスとUV硬化型エポキシ接着剤を用いて封止し、実施例1の有機EL素子を作製した。
[実施例2]
正孔注入層を形成する際に使用する材料としてTPA−O P(O)Cl2の代わりに、合成例2で得られたTPA−TPA−O P(O)Cl2を用いたこと以外は実施例1と同様に、実施例2の有機EL素子を作製した。
[実施例3]
正孔注入層を形成する際に使用する材料としてTPA―O-P(O)Cl2の代わりに、合成例3で得られたFO−TPA−O P(O)Cl2を用いたこと以外は実施例1と同様に実施例3の有機EL素子を作製した。
[比較例1]
実施例1において、正孔注入層をTPA―O-P(O)Cl2の代わりにポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSS)薄膜(厚み:20nm、スタルク社製、品番:CH8000、PEDOT:PSS重量比が1:20、仕事関数:5.3eV)を用いて作製した以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。PEDOT−PSS薄膜は、PEDOT−PSS水溶液を大気中でスピンコート法により塗布して作製した。PEDOT−PSS製膜後、水分を蒸発させるために大気中でホットプレートを用いて乾燥させた。
[比較例2]
実施例1において、正孔注入層をTPA―O-P(O)Cl2の代わりにPh―O-P(O)Cl2を用いて作製した以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。Ph―O-P(O)Cl2膜は、Ph―O-P(O)Cl2を1、2−ジクロロエタン溶剤中に1wt%溶解させた溶液中に10分間浸漬した後、アセトン溶液で洗浄し、乾燥窒素で乾燥させて作製した。作製した薄膜の膜厚は測定限界以下の5nm以下であり、仕事関数は5.3eVであった。
[比較例3]
実施例1において、正孔注入層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
[比較例4]
実施例1において、正孔輸送層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
上記実施例及び比較例において作製した有機EL素子について、電流効率及び寿命特性を上記方法により行った。初期輝度1000(cd/m)における電流効率(cd/A)、及び初期輝度(1000cd/m)での輝度半減時間(hr.)を表2に示す。また、実施例及び比較例において使用した正孔輸送材料及び正孔注入材料に関する特性値について表3に示す。尚、比較例3及び比較例4については、本発明に係る部分A及び部分Bの特定ができないため表記していない。
Figure 0005012277
Figure 0005012277
<結果のまとめ>
実施例1と比較例1の素子特性を比較すると、正孔輸送層と陽極の双方に密着効果のあるTPA―O-P(O)Cl2を正孔注入層に用いた素子は、一般的に用いられるPEDOTを正孔注入層に用いた素子よりも寿命が6倍以上長かった。
比較例1の素子の正孔注入層に用いたPEDOT:PSS(1:20)は、TFBに比べてSP値が高い傾向にあり、例えば、PEDOT(繰り返し単位の原子量の総和:72)のSP値21.7とPSS(繰り返し単位の原子量の総和:104)のSP値24.4からなるPEDOT:PSS(1:20)のSP値(SB)は、その混合状態にもよるが、21.7〜24.4の範囲にあると考えられる。一方、TFBにおける対応する繰り返しの部分TPA-FO(トリフェニルアミン―フルオレン)(繰り返し単位の原子量の総和:634)のSP値(SA)は19.1であり、|SA−SB|は2.6〜5.3と、大きな値になる。このため、正孔輸送層−正孔輸送層界面における相溶性が乏しく、分子サイズでの密着安定性(nmオーダーの長さスケール密着安定性)が劣り、素子の寿命が短かったと考えられる。なお、PEDOT:PSS(1:20)は高分子であり、さらに膜厚が比較的厚く、正孔注入層形成後の空気界面にはPSSのスルホン酸基やPEDOT:PSSがランダムに露出していると考えられるため、比較すべき部分Bは表3に示すようになる。
一方、正孔注入層にTPA―O-P(O)Cl2を用いた実施例1の素子は、本発明に係る有機EL素子の条件をすべて満たしているため、各層間の界面の密着安定性が向上し、駆動耐性が向上したと考えられる。
実施例1と比較例2の素子特性を比較すると、正孔注入材料としてPh―O-P(O)Cl2を用いた素子は、TPA―O-P(O)Cl2を用いた素子よりも極端に寿命が短かった。
Ph―O-P(O)Cl2のうち、TFBとPh―O-P(O)Cl2との界面の密着安定性に影響を与えていると考えられる部分はフェニル基であり、当該部分に対応するTFBの分子内における部分はTFBの繰り返し単位である、(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4’−(N−(4−sec−ブチルフェニル)(TPA-FO)である。フェニル基は原子量の総和が100未満であるため、本発明に係る部分Bとして不適当であるが、Ph―O-P(O)Cl2のフェニル基を部分B、TPA-FOを部分Aとみなした場合、本発明に係る関係式(II)を満たしている。しかし、上記部分Aの原子量の総和MAが100未満であるため、TFBとPh―O-P(O)Cl2との界面の密着安定性が不十分であり、素子寿命が極端に短かったと考えられる。
実施例1と比較例3の素子特性を比較すると、TPA―O-P(O)Cl2の無い比較例3では、初期特性における効率は高いが、寿命は極端に短かった。TPA―O-P(O)Cl2が無くても、TFBだけでホールは十分に注入可能であるが、無機の陽極(ITO)とTFBの密着安定性が悪く、駆動耐性に関して著しく劣ると考えられる。以上の結果から、電荷の注入性と効率と寿命の間に相関はないことが分かり、特許文献2とは効果が異なることが分かる。
実施例1と比較例4の寿命特性を比較すると、TFBの無い比較例4では、初期特性で効率は著しく低かった。この結果は、TPA―O-P(O)Cl2のみではホールの注入が不十分であることを示しており、双極子モーメントの効果で注入効果が得られるとする従来技術(特開2005-50553号公報)では説明ができない。さらにTPA―O-P(O)Cl2は、化学構造から双極子モーメントは非常に小さいと考えられ、TPA―O-P(O)Cl2は正孔輸送層と陽極の密着安定性に寄与して寿命特性を向上させていると考えられる。
以上の結果は、TPA―O-P(O)Cl2がホール注入の効果だけでなく、正孔輸送層と陽極の密着安定性を向上させ、寿命特性を向上させる効果があることを示している。
実施例1と実施例2の素子特性を比較すると、実施例2の輝度半減時間が若干長い。この結果は、部分Bの分子量がより大きい実施例2の方が、正孔輸送層との密着性が高く、密着安定性の向上により寿命が向上したと考えられる。
実施例1と実施例3の素子特性を比較すると、実施例3の輝度半減時間が1.5倍長い。この結果は、正孔輸送層材料との相溶性がより高い部分Bを持つ実施例3の方が、正孔輸送層との密着性が高く、密着安定性の向上により寿命が向上したと考えられる。
本発明に係る有機デバイスの基本的な層構成を示す断面概念図である。 本発明に係る有機デバイスの一実施形態である有機EL素子の層構成の一例を示す断面模式図である。 本発明に係る有機デバイスの別の実施形態である有機トランジスタの層構成の一例を示す断面模式図である。 無機物材料からなる電極上に有機層を積層させた、界面を形成する両材料のSP値に差がある積層体の断面概念図である。
符号の説明
1 電極
2 正孔注入層
3 有機層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電極
7 基板
8 有機半導体層
9 電極
10 絶縁層

Claims (12)

  1. 基板上に対向する2つ以上の電極と、そのうちの2つの電極間に配置された有機層と、少なくとも1つの電極の前記有機層側表面に隣接した正孔注入層とを有し、更に、当該電極上には金属層を有していてもよい有機デバイスであって、
    有機層に含まれる化合物が、その化学構造の一部として、原子量の総和MAが100以上である部分Aを有し、
    正孔注入層に含まれる正孔注入材料が、その化学構造の一部として、当該正孔注入材料が積層される電極と連結する作用を生ずる連結基、及び原子量の総和MBが100以上であり、当該原子量の総和MBと、上記有機層の部分Aに含まれる原子の原子量の総和MAとが下記式(I)の関係を満たし、当該原子量の総和MBが正孔注入材料の分子量の1/3より大きい部分Bを有し、
    上記部分Aの溶解度パラメータSAと、上記部分Bの溶解度パラメータSBが、下記式(II)の関係を満たし、
    前記有機層に含まれる化合物が下記一般式(2)で示される化合物であり、前記正孔注入材料が下記一般式(3’)で示される化合物であることを特徴とする有機デバイス。
    |MA−MB|/MB≦2 式(I)
    |SA−SB|≦2 式(II)
    Figure 0005012277

    (但し、Ar 〜Ar は、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。nは0〜10000、mは0〜10000であり、n+m=1〜20000である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。)
    Figure 0005012277

    (但し、Ar 〜Ar は、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。qは0〜10、rは1〜10であり、q+r=1〜20である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。)
  2. 上記式(II)が、下記の関係を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の有機デバイス。
    |SA−SB|≦1 式(II)
  3. 前記部分Bは、前記部分Aと同一の骨格、又は同一の骨格内にスペーサー構造を含む類似骨格を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機デバイス。
  4. 前記正孔注入層の膜厚が0.1〜1000nmである、請求項1乃至3のいずれかに記載の有機デバイス。
  5. 前記正孔注入層の仕事関数が4.5〜6.0eVである、請求項1乃至のいずれかに記載の有機デバイス。
  6. 前記正孔注入層が、溶液塗布法により形成されたことを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の有機デバイス。
  7. 前記有機層が前記正孔注入層の上に溶液塗布法により形成されたことを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の有機デバイス。
  8. 前記有機デバイスの有機層が、少なくとも正孔輸送層及び発光層を含む有機EL素子である、請求項1乃至のいずれかに記載の有機デバイス。
  9. 基板上に対向する2つ以上の電極と、そのうちの2つの電極間に配置された有機層と少なくとも1つの電極の前記有機層側表面に隣接した正孔注入層とを有し、更に、当該電極上には金属層を有していてもよい有機デバイスの製造方法であって、
    前記有機層に含まれる化合物が、化学構造の一部として、原子量の総和MAが100以上である部分Aを有し、前記正孔注入層に含まれる正孔注入材料が、電極と連結する作用を生ずる連結基、及び原子量の総和MBが100以上であり、当該原子量の総和MBと、有機層の部分Aに含まれる原子の原子量の総和MAとが下記式(I)の関係を満たし、当該原子量の総和MBが正孔注入材料の分子量の1/3より大きい部分Bを有する前記有機デバイスは、上記部分Aの溶解度パラメータSAと、上記部分Bの溶解度パラメータSBとが下記式(II)の関係を満たし、
    |MA−MB|/MB≦2 式(I)
    |SA−SB|≦2 式(II)
    当該製造方法が、電極を備えた基板を用意する工程と、
    前記部分Bを有する正孔注入材料を少なくとも含む溶液を塗布し、正孔注入層を形成する工程と、
    前記部分Aを有する化合物を少なくとも含む溶液を、上記正孔注入層の上に塗布し、有機層を形成する工程を有し、
    前記部分Aを有する化合物が下記一般式(2)で示される化合物であり、前記部分Bを有する正孔注入材料が下記一般式(3’)で示される化合物であることを特徴とする、有機デバイスの製造方法。
    Figure 0005012277

    (但し、Ar 〜Ar は、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。nは0〜10000、mは0〜10000であり、n+m=1〜20000である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。)
    Figure 0005012277

    (但し、Ar 〜Ar は、相互に同一であっても異なっていてもよく、共役結合に関する炭素原子数が6個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の芳香族炭化水素基、または共役結合に関する炭素原子数が4個以上60個以下からなる未置換もしくは置換の複素環基を示す。qは0〜10、rは1〜10であり、q+r=1〜20である。また、2つの繰り返し単位の配列は任意である。)
  10. 上記式(II)が、下記の関係を満たすことを特徴とする、請求項9に記載の有機デバイスの製造方法。
    |SA−SB|≦1 式(II)
  11. 前記部分Bが、前記部分Aと同一の骨格、又は同一の骨格内にスペーサー構造を含む類似骨格を有することを特徴とする、請求項9又は10に記載の有機デバイスの製造方法。
  12. 請求項9乃至11の有機デバイスの製造方法の有機層を形成する工程において、有機層が正孔輸送層及び発光層を含み、
    上記正孔注入層の表面に、正孔輸送層、発光層の順に形成する工程を有する有機EL素子の製造方法である、請求項9乃至11のいずれかに記載の有機デバイスの製造方法。
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