JP2008071821A - コモンモードチョークコイル - Google Patents
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Abstract
【課題】 小型で、かつ高周波のノイズを除去可能なコモンモードチョークコイルを提供する。
【解決手段】 コモンモードチョークコイル1は、第1,第2の磁性体基板2,3の間に積層体4を設けて構成する。また、積層体4は、第1の絶縁層5、1次コイル10、コイル間絶縁層11、2次コイル16、第2の絶縁層17等を積み重ねることによって形成する。そして、絶縁層5,17の厚さ寸法T1,T2は、いずれも12.5μm以上の値に設定する。これにより、各コイル10,16の周囲に生じる電気力線が絶縁層5,17の内部を通過する割合が増加するから、各コイル10,16の浮遊容量を低下させることができる。
【選択図】 図3
【解決手段】 コモンモードチョークコイル1は、第1,第2の磁性体基板2,3の間に積層体4を設けて構成する。また、積層体4は、第1の絶縁層5、1次コイル10、コイル間絶縁層11、2次コイル16、第2の絶縁層17等を積み重ねることによって形成する。そして、絶縁層5,17の厚さ寸法T1,T2は、いずれも12.5μm以上の値に設定する。これにより、各コイル10,16の周囲に生じる電気力線が絶縁層5,17の内部を通過する割合が増加するから、各コイル10,16の浮遊容量を低下させることができる。
【選択図】 図3
Description
本発明は、2枚の磁性体基板の間に挟まれた状態で2つのコイルが厚さ方向に対向して配置されたコモンモードチョークコイルに関する。
一般に、コモンモードチョークコイルとして、第1の磁性体基板と、該第1の磁性体基板の表面に形成され、第1の絶縁層、1次コイル、コイル間絶縁層、2次コイルおよび第2の絶縁層を厚さ方向に積み重ねた積層体と、前記第1の磁性体基板との間に該積層体を挟む第2の磁性体基板とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような従来技術によるコモンモードチョークコイルでは、1次コイル、2次コイルに互いに同じ方向の信号が伝搬するコモンモードに対して、インピーダンス(コモンモードインピーダンス)が高くなる。これに対し、1次コイル、2次コイルに互いに逆方向の信号が伝搬するノーマルモードに対して、インピーダンス(ノーマルモードインピーダンス)が低くなる。これにより、コモンモードチョークコイルは、ノーマルモードの信号を通過させるのに対し、コモンモードのノイズを除去する構成となっている。
また、従来技術によるコモンモードチョークコイルでは、インダクタンスの取得効率を高くするために、第1の磁性体基板と1次コイルとの間に位置する第1の絶縁層や、第2の磁性体基板と2次コイルとの間に位置する第2の絶縁層は、加工上の問題や特性の精度の許す範囲で、極力薄くするほうが好ましい。このため、例えば特許文献1には、コモンモードチョークコイルの第1,第2の絶縁層の厚さ寸法は10μm以下が好ましい点が開示されている。
ところで、近年、小型液晶の高解像度化に伴って差動信号の高周波化が進んでいる。また、映像と音声を1本のケーブルで出力可能な超高速差動伝送方式HDMI(High Definition Multimedia Interface)のモバイル機器への搭載が進められている。このため、小型で高周波のノイズを除去可能なコモンモードチョークコイルが要求されている。
特に、CISPR(国際無線障害特別委員会)において、新たに1〜6GHzでの輻射ノイズに関する規格が制定されることに伴って、1〜6GHzの高周波帯域におけるノイズ除去効果の高いコモンモードチョークコイルが望まれている。
一方、小型で、かつ高周波のコモンモードノイズの除去効果が高いコモンモードチョークコイルを実現するためには、1次コイルと2次コイルのそれぞれについて浮遊容量を削減する必要がある。しかし、従来技術では、例えば1GHz以上の高周波帯域でのコイルの浮遊容量を削減する方法が提示されておらず、小型で高周波のノイズを除去可能なコモンモードチョークコイルは提供されていなかった。
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、小型で、かつ高周波のノイズを除去可能なコモンモードチョークコイルを提供することにある。
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、第1の磁性体基板と、該第1の磁性体基板の表面に形成され、第1の絶縁層、1次コイル、コイル間絶縁層、2次コイルおよび第2の絶縁層を厚さ方向に積み重ねた積層体と、前記第1の磁性体基板との間に該積層体を挟む第2の磁性体基板とを備えたコモンモードチョークコイルにおいて、前記第1,第2の絶縁層は、前記第1,第2の磁性体基板よりも誘電率が低い非磁性体の絶縁材料を用いて形成し、前記第1,第2の絶縁層の厚さ寸法は、いずれも12.5μm以上に設定したことを特徴としている。
請求項2の発明では、前記第1の絶縁層の厚さ寸法と第2の絶縁層の厚さ寸法は、同じ値に設定している。
請求項3の発明では、前記1次コイル、2次コイルは、渦巻状のコイルパターンを用いて形成している。
請求項4の発明では、前記第1,第2の絶縁層の厚さ寸法は、いずれも60μm以下に設定している。
請求項1の発明によれば、第1の絶縁層の厚さ寸法を12.5μm以上に設定したから、例えば従来技術のように第1の絶縁層の厚さ寸法を10μm以下に設定した場合に比べて、1次コイルの周囲に電気力線が形成されたときに、この電気力線のうち第1の絶縁層内に形成される割合を増加させることができる。このとき、第1の絶縁層は第1の磁性体基板よりも誘電率が低い絶縁材料を用いて形成したから、1次コイルの周囲に形成される浮遊容量を小さくすることができる。同様な理由により、2次コイルの周囲に形成される浮遊容量も小さくすることができる。この結果、1次コイル、2次コイルの自己共振周波数を高周波側に移動させることができるから、外形形状を小型に維持しつつ、例えば1GHz以上の高周波のコモンモードノイズに対する除去効果を高めることができる。
請求項2の発明によれば、第1の絶縁層の厚さ寸法と第2の絶縁層の厚さ寸法を同じ値に設定したから、1次コイルと2次コイルとの間の対称性を保つことができる。このため、1次コイルと2次コイルとの間でインダクタンス値の差を殆ど無くすことができるから、ノーマルモードインピーダンスを低くすることができる。
請求項3の発明によれば、1次コイル、2次コイルは、渦巻状のコイルパターンを用いて形成したから、コイルパターンの内周側と外周側との間には、大きな電位差が生じる。このため、コイルパターンの内周側と外周側との間には、他の部位に比べて、多数の電気力線が形成されるから、この電気力線によって大きな浮遊容量が生じ易い。
ここで、例えば1次コイルのコイルパターンは第1の絶縁層を挟んで第1の磁性体基板と対面するから、コイルパターンの内周側と外周側との間に生じる電気力線は、第1の絶縁層、第1の磁性体基板に沿って広がり、第1の絶縁層および第1の磁性体基板の内部を通過する。同様な理由により、2次コイルのコイルパターンの内周側と外周側との間に生じる電気力線は、第2の絶縁層および第2の磁性体基板の内部を通過する。
このとき、第1,第2の絶縁層の厚さ寸法を12.5μm以上に設定したから、コイルパターンの内周側と外周側との間に生じる電気力線は、第1,第2の絶縁層の内部を通過する割合が増加する。これにより、コイルパターンの周囲に形成される浮遊容量を小さくすることができるから、1次コイル、2次コイルの自己共振周波数を高周波側に移動させることができ、高周波のコモンモードノイズに対する減衰量を増加させることができる。
請求項4の発明によれば、第1,第2の絶縁層の厚さ寸法はいずれも60μm以下に設定したから、例えば第1,第2の絶縁層の厚さ寸法を10μm以下に設定した場合に比べて、インダクタンスの取得効率を近い値に保持することができる。これにより、各絶縁層の厚さ寸法が増大することに伴って1次コイル、2次コイルの巻数等が増加するのを抑制することができ、小型なコモンモードチョークコイルを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態によるコモンモードチョークコイルについて添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に示すように、コモンモードチョークコイル1は、第1,第2の磁性体基板2,3と該磁性体基板2,3の間に挟まれた積層体4とによって構成されている。ここで、磁性体基板2,3は、フェライト等の磁性体材料を用いて形成されている。特に、磁性体基板2,3にフェライトを使用した場合には、チョークコイル1は高インダクタンスで、高周波特性が優れたものになる。また、磁性体基板2,3は、例えば14程度の誘電率(比誘電率)を有している。
積層体4は、図2ないし図4に示すように、後述する絶縁層5,11,17、コイル10,16等を厚み方向に積み重ねることによって形成されている。
第1の絶縁層5は、磁性体基板2の表面に位置して、スピン塗布法、スクリーン印刷等の方法を用いて形成されている。絶縁層5は、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等の種々の樹脂材料、またはSiO2等のガラス、ガラスセラミックス、誘電体材料等の非磁性体の絶縁材料が用いられる。絶縁層5の材料は、その目的に応じて複数材料を組み合わせたものを使用してもよい。
そして、絶縁層5は、磁性体基板2の誘電率よりも低い値として例えば3.3程度の誘電率(比誘電率)を有している。また、絶縁層5の厚さ寸法T1は、12.5μm以上の値(例えば25μm)に設定されている。但し、後述する1次コイル10のインダクタンスの取得効率を考慮すると、絶縁層5の厚さ寸法T1は、例えば60μm以下に設定するのが好ましい。
なお、絶縁層5は、例えばスピン塗布法を用いる場合には、樹脂材料の塗布回数、塗布量、回転数等を適宜調整することによって、その厚さ寸法T1が所望の値に設定されるものである。
また、第1の絶縁層5の表面には、渦巻状のコイルパターン6が形成されている。コイルパターン6の材料には、導電性に優れた金属、例えばAg,Pd,Cu,Al等の金属、またはこれらの合金等が採用される。コイルパターン6等の電極材料と絶縁層5等の絶縁材料との組み合わせは、加工性・密着性等を考慮して選択するのが望ましい。
そして、コイルパターン6は、絶縁層5の表面に導電性材料膜を形成した後に、レジストの塗布、露光、現像、エッチング等の一連のフォトリソグラフィ技術を用いて渦巻形状に形成される。なお、導電性材料膜は、スパッタリング、真空蒸着等の薄膜形成法、またはスクリーン印刷等の厚膜形成法といった成膜技術を用いて形成される。また、コイルパターン6のうち外周側の端部は、絶縁層5の外縁側に位置して引出電極部6Aとなっている。一方、コイルパターン6のうち内周側の端部は、後述する引出パターン8に電気的に接続されている。
そして、コイルパターン6の表面には、例えば絶縁層5と同じ材料を用いて層間絶縁層7が形成される。層間絶縁層7には、例えばフォトリソグラフィ技術を用いて複数のビアホール7Aが形成されている。このとき、ビアホール7Aは、層間絶縁層7を貫通した状態で形成され、例えばコイルパターン6の内周側の端部や渦巻状に延びる途中部位と対応した位置に配置されている。
なお、フォトリソグラフィ技術を用いる場合には、層間絶縁層7の材料として感光性機能を付加した材料が用いられる。本実施の形態では、層間絶縁層7は、例えば感光性のポリイミド樹脂材料が用いられる。
また、層間絶縁層7の表面には、層間絶縁層7の内側から外縁側に向けて延びる引出パターン8が形成されている。このとき、引出パターン8の一端側は、ビアホール7Aを介してコイルパターン6の内周側の端部に電気的に接続されている。一方、引出パターン8の他端側は、層間絶縁層7の外縁側に位置して引出電極部8Aとなっている。また、引出電極部8Aは、例えばコイルパターン6を挟んで引出電極部6Aとは図2中の前,後方向の反対側に配置されている。
さらに、層間絶縁層7の表面には、C字状をなす複数のラダーコイルパターン9が形成されている。このとき、ラダーコイルパターン9は、コイルパターン6に沿って延びると共に、その両端側がビアホール7Aを介してコイルパターン6の途中位置に電気的に接続されている。これにより、ラダーコイルパターン9は、1次コイル10の直流抵抗Rdcを低下させている。また、引出パターン8およびラダーコイルパターン9は、例えばコイルパターン6と同じ材料を用いて形成されている。
そして、コイルパターン6、引出パターン8およびラダーコイルパターン9によって、1次コイル10が形成されている。
コイル間絶縁層11は、引出パターン8およびラダーコイルパターン9の表面に位置して、例えば絶縁層5,7と同じ材料を用いて成膜されている。そして、コイル間絶縁層11は、1次コイル10と2次コイル16との間を絶縁している。
コイル間絶縁層11の表面には、1次コイル10と同様な成膜工程等を繰返すことによって、コイルパターン6、層間絶縁層7、引出パターン8、ラダーコイルパターン9とほぼ同様な、コイルパターン12、層間絶縁層13、引出パターン14、ラダーコイルパターン15がそれぞれ形成されている。但し、コイルパターン12と引出パターン14の引出電極部12A,14Aは、コイルパターン6と引出パターン8の引出電極部6A,8Aと異なる位置として、例えば引出電極部6A,8Aから図2中の左,右方向に離間した位置に配置されている。
そして、コイルパターン12、引出パターン14およびラダーコイルパターン15によって、2次コイル16が形成されている。これにより、1次コイル10と2次コイル16とは、厚さ方向に積層された状態で磁気的に密接に結合するものである。
第2の絶縁層17は2次コイル16と第2の磁性体基板3との間に位置して、例えば第1の絶縁層5と同じ材料を用いて形成されている。このため、第2の絶縁層17も、第1の絶縁層5と同様に、磁性体基板3の誘電率よりも低い値として例えば3.3程度の誘電率を有している。また、絶縁層17の厚さ寸法T2は、12.5μm以上の値(例えば25μm)に設定されている。このとき、第2の絶縁層17の厚さ寸法T2は、第1の絶縁層5の厚さ寸法T1と同じ値(T2=T1)に設定するのが好ましい。また、2次コイル16のインダクタンスの取得効率を考慮すると、絶縁層17の厚さ寸法T2は、例えば60μm以下に設定するのが好ましい。
また、第2の絶縁層17は、例えば熱硬化性のポリイミド樹脂が用いられ、第2の磁性体基板3を2次コイル16の表面に接着するための接着剤を兼ねている。即ち、コモンモードチョークコイル1の製造時には、まず第1の磁性体基板2の表面に、第1の絶縁層5、1次コイル10、コイル間絶縁層11、2次コイル16を成膜工程等を繰返して積み重ねる。その後、第2の磁性体基板3の裏面側に接着剤としての第2の絶縁層17を塗布した後に、2次コイル16(引出パターン14およびラダーコイルパターン15)の表面に第2の磁性体基板3の裏面側を貼り合わせる。このとき、第2の磁性体基板3の接合は、真空中または不活性ガス中にて加熱、加圧した状態で行い、冷却後に圧力を解除するものである。
これにより、第2の絶縁層17は、2次コイル16と第2の磁性体基板3との間に配置される。この結果、第1,第2の磁性体基板2,3の間には、第1,第2の絶縁層5,17、1次コイル10、2次コイル16、コイル間絶縁層11からなる積層体4が形成される。
図1に示すように、コモンモードチョークコイル1の後側端面には外部電極18,19が設けられ、前側端面には外部電極20,21が設けられている。外部電極18,19,20,21はそれぞれ引出電極部6A,12A,8A,14Aに電気的に接続されている。外部電極18〜21は、例えばAg,Cu,NiCrまたはNiCu等の材料を含む導電性ペーストを塗布したり、これらの材料を蒸着、スパッタリング、無電解めっき等の手段にて形成され、コモンモードチョークコイル1の端面に堅固に密着している。さらに、必要であれば、例えば湿式電解めっきによりNi,Sn,Sn−Pb等の金属膜を形成し、外部電極18〜21の膜厚を厚くしてもよい。
本実施の形態によるコモンモードチョークコイル1は上述の如き構成を有するもので、次に第1,第2の絶縁層5,17の厚さ寸法T1,T2と浮遊容量との関係について、図4ないし図6を参照しつつ検討する。
まず、図5に示す比較例によるコモンモードチョークコイル31について検討する。比較例のコモンモードチョークコイル31では、第1,第2の絶縁層32,33の厚さ寸法T11,T12は、従来技術と同様に10μm以下の値として、いずれも7μm(T11=T12=7μm)に設定している。この比較例について、コモンモードノイズの減衰量Scc21の周波数特性を測定した。その結果を図6中に点線で示す。
図6の結果より、比較例のコモンモードチョークコイル31では、700MHz付近で減衰量が最大(24dB程度)となり、それよりも高周波側では減衰量が低下する。このため、例えば1GHz付近では減衰量が20dB程度になっている。この理由は、1次コイル10や2次コイル16に並列接続された状態で浮遊容量が生じるためと考えられる。即ち、信号の周波数が高くなるに従って、各コイル10,16のインダクタンスは増加する。一方、信号の周波数が高くなるに従って、浮遊容量によるインピーダンスは低下する。このため、高周波側ではコモンモードインピーダンスに対する浮遊容量の影響が大きくなり、コモンモードインピーダンスが減少し、コモンモードノイズの減衰量が低下するものと考えられる。
ここで、浮遊容量は、各コイル10,16の周囲、各コイル10,16と外部電極18〜21との間等のように種々の箇所に生じる。しかし、従来技術では、大きな浮遊容量が生じる箇所を十分に特定できていなかった。
本発明者達は鋭意検討の結果、各コイル10,16の内周側10A,16Aと外周側10B,16Bとの間に大きな浮遊容量が生じることが分かった。これは、例えば1次コイル10の内周側10Aと外周側10Bは、それぞれ1次コイル10の両端に近く、他の部位に比べて、1次コイル10の内周側10Aと外周側10Bとの間に大きな電位差が生じることが原因と考えられる。この原因は、2次コイル16についても同様である。
このとき、1次コイル10は略平面状に広がった渦巻形状をなしている。また、1次コイル10は第1の絶縁層5を挟んで第1の磁性体基板2と対面した状態で配置されている。このため、1次コイル10の内周側10Aと外周側10Bとの間に生じる電気力線Eは、第1の絶縁層5や第1の磁性体基板2に沿って平面状に広がり、第1の絶縁層5および第1の磁性体基板2の内部を通過する。同様な理由により、2次コイル16の内周側16Aと外周側16Bとの間に生じる電気力線Eは、第2の絶縁層17および第2の磁性体基板3の内部を通過する。
ここで、比較例(従来技術)では、第1,第2の絶縁層32,33の厚さ寸法T11,T12はいずれも7μm(10μm以下)に設定している。この理由は、各コイル10,16が磁性体基板2,3に近付くに従って、磁気抵抗が減少して、大きなインダクタンスが得られ易くなり、インダクタンスの取得効率を向上するからである。
一方、磁性体基板2,3は、フェライト等の磁性体材料を用いて形成されるから、例えば14程度の誘電率を有し、この誘電率は、絶縁層5,17等の誘電率よりも高い値となっている。このとき、磁性体基板2,3の誘電率は、磁性体基板2,3の材料によって決まり、例えば10以下に低下させることは困難である。
これにより、各コイル10,16の内周側10A,16Aと外周側10B,16Bとの間に生じる電気力線Eは、絶縁層5,17に比べて、誘電率の高い磁性体基板2,3の内部を通過する割合が高い。また、各コイル10,16と外部電極18〜21との間に生じる電気力線Eも、絶縁層5,17に比べて、磁性体基板2,3の内部を通過する傾向がある。
この結果、比較例では、誘電率の高い磁性体基板2,3の内部に電気力線Eが形成されることによって、各コイル10,16の内周側10A,16Aと外周側10B,16Bとの間の浮遊容量C11や各コイル10,16と外部電極18〜21との間の浮遊容量C12が増加し、1GHz以上の高周波信号に対するコモンモードノイズの減衰量が低下するという問題があった。
次に、本実施の形態によるコモンモードチョークコイル1について検討する。図4に示す本実施の形態によるコモンモードチョークコイル1では、第1,第2の絶縁層5,17の厚さ寸法T1,T2は、12.5μm以上の値(T1,T2≧12.5μm)に設定している。そこで、第1,第2の絶縁層5,17の厚さ寸法T1,T2を、いずれも25μm、50μm、100μmに設定した場合について、コモンモードノイズの減衰量Scc21の周波数特性をそれぞれ測定した。その結果を図6中に実線で示す。
図6の結果より、実施の形態のコモンモードチョークコイル1では、厚さ寸法T1,T2を25μmに設定したときには、900MHz付近で減衰量が最大(28dB程度)となると共に、1GHz以上の高周波側の減衰量は、比較例の場合よりも増加している。また、厚さ寸法T1,T2を50μmに設定したときには、1GHz付近で減衰量が最大(31dB程度)となり、厚さ寸法T1,T2を100μmに設定したときには、1.2GHz付近で減衰量が最大(33dB程度)となる。
このように、第1,第2の絶縁層5,17の厚さ寸法T1,T2を増加させるに従って、減衰量のピークが高周波側に移動すると共に、1GHz以上の高周波側の減衰量が増加することが分かる。
この理由は、絶縁層5,17の厚さ寸法T1,T2を増加させることによって、各コイル10,16の内周側10A,16Aと外周側10B,16Bとの間に生じる電気力線Eや各コイル10,16と外部電極18〜21との間に生じる電気力線Eは、比較例に比べて、誘電率の低い絶縁層5,17の内部を通過する割合が増加したためと考えられる。
この結果、本実施の形態では、誘電率の低い絶縁層5,17の内部に形成される電気力線Eの割合を増加させることによって、各コイル10,16の内周側10A,16Aと外周側10B,16Bとの間の浮遊容量C1や各コイル10,16と外部電極18〜21との間の浮遊容量C2を低下させることができ、1GHz以上の高周波信号に対するコモンモードノイズの減衰量を増加させることができる。
但し、絶縁層5,17の厚さ寸法T1,T2を増加させると、各コイル10,16と磁性体基板2,3との距離が離れるから、磁気抵抗が増加して、インダクタンスの取得効率が低下する。即ち、同じ値のインダクタンスを得るために、各コイル10,16の巻き数を増加させる必要があり、コモンモードチョークコイル1が大型化する傾向がある。このため、図3に示すように、磁性体基板2,3の間隔寸法T3は、例えば150μm以下(T3≦150μm)に設定するのが好ましく、絶縁層5,17の厚さ寸法T1,T2は、例えば60μm以下(T1,T2≦60μm)に設定するのが好ましい。
かくして、本実施の形態では、第1の絶縁層5の厚さ寸法T1を12.5μm以上に設定したから、例えば従来技術のように第1の絶縁層32の厚さ寸法を10μm以下に設定した場合に比べて、1次コイル10の周囲に電気力線Eが形成されたときに、この電気力線Eのうち第1の絶縁層5内に形成される割合を増加させることができる。このとき、第1の絶縁層5は第1の磁性体基板2の誘電率よりも低い絶縁材料を用いて形成したから、1次コイル10の周囲に形成される浮遊容量C1,C2を小さくすることができる。同様な理由により、2次コイル16の周囲に形成される浮遊容量C1,C2も小さくすることができる。この結果、1次コイル10、2次コイル16の自己共振周波数を高周波側に移動させることができるから、外形形状を小型に維持しつつ、例えば1GHz以上の高周波のコモンモードノイズに対する除去効果を高めることができる。
また、第1の絶縁層5の厚さ寸法T1と第2の絶縁層17の厚さ寸法T2を同じ値(T1=T2)に設定したときには、1次コイル10と2次コイル16との間の対称性を保つことができる。このため、1次コイル10と2次コイル16との間でインダクタンス値の差を殆ど無くすことができるから、ノーマルモードインピーダンスを低くすることができる。
特に、1次コイル10、2次コイル16は、渦巻状のコイルパターン6,12を用いて形成したから、コイルパターン6,12の内周側と外周側との間には、大きな電位差が生じる。このため、コイルパターン6,12の内周側と外周側との間には、他の部位に比べて、多数の電気力線Eが形成されると共に、この電気力線Eが誘電率の高い磁性体基板2,3の内部を通過して大きな浮遊容量が生じ易い。
この場合でも、本実施の形態では、第1,第2の絶縁層5,17の厚さ寸法T1,T2を12.5μm以上に設定したから、コイルパターン6,12の内周側と外周側との間に生じる電気力線Eは、第1,第2の絶縁層5,17の内部を通過する割合が増加する。これにより、コイルパターン6,12の周囲に形成される浮遊容量C1,C2を減少させることができ、高周波のコモンモードノイズに対する減衰量を増加させることができる。
さらに、第1,第2の絶縁層5,17の厚さ寸法T1,T2はいずれも60μm以下に設定したから、従来技術と同様に各絶縁層5,17の厚さ寸法T1,T2を10μm以下に設定した場合に比べて、インダクタンスの取得効率を近い値に保持することができる。これにより、各絶縁層5,17の厚さ寸法T1,T2が増大することに伴って1次コイル10、2次コイル16の巻数等が増加するのを抑制することができ、小型なコモンモードチョークコイル1を提供することができる。
なお、前記実施の形態では、1次コイル10、2次コイル16は、ラダーコイルパターン9,15を備える構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば1次コイル、2次コイルはラダーコイルパターンを省く構成としてもよい。
1 コモンモードチョークコイル
2 第1の磁性体基板
3 第2の磁性体基板
4 積層体
5 第1の絶縁層
6 コイルパターン
10 1次コイル
11 コイル間絶縁層
12 コイルパターン
16 2次コイル
17 第2の絶縁層
2 第1の磁性体基板
3 第2の磁性体基板
4 積層体
5 第1の絶縁層
6 コイルパターン
10 1次コイル
11 コイル間絶縁層
12 コイルパターン
16 2次コイル
17 第2の絶縁層
Claims (4)
- 第1の磁性体基板と、
該第1の磁性体基板の表面に形成され、第1の絶縁層、1次コイル、コイル間絶縁層、2次コイルおよび第2の絶縁層を厚さ方向に積み重ねた積層体と、
前記第1の磁性体基板との間に該積層体を挟む第2の磁性体基板とを備えたコモンモードチョークコイルにおいて、
前記第1,第2の絶縁層は、前記第1,第2の磁性体基板よりも誘電率が低い非磁性体の絶縁材料を用いて形成し、
前記第1,第2の絶縁層の厚さ寸法は、いずれも12.5μm以上に設定したことを特徴とするコモンモードチョークコイル。 - 前記第1の絶縁層の厚さ寸法と第2の絶縁層の厚さ寸法は、同じ値に設定してなる請求項1に記載のコモンモードチョークコイル。
- 前記1次コイル、2次コイルは、渦巻状のコイルパターンを用いて形成してなる請求項1または2に記載のコモンモードチョークコイル。
- 前記第1,第2の絶縁層の厚さ寸法は、いずれも60μm以下に設定してなる請求項1,2または3に記載のコモンモードチョークコイル。
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