FED(Field Emission Display)や蛍光表示管などの蛍光表示装置の電子放出源として、カーボンナノチューブを用いた電界放出型電子放出源が注目されている。カーボンナノチューブは、グラファイトの単層が円筒状に閉じ、また円筒の先端部に五員環が形成された構造をしており、代表的な直径は10〜50nmと微小のため、100V程度の電界を印加することにより、先端から電子を電界放出させることができる。なお、カーボンナノチューブには、前述した単層構造のものと、複数のグラファイトの層が入れ子構造的に積層し、各々のグラファイト層が円筒状に閉じた同軸多層構造となっているものとがあるが、どちらを用いても電子放出源とすることができる(特許文献1参照)。
従来の代表的なカーボンナノチューブを用いた電界放出型電子放出源は、多数のカーボンナノチューブが配置された平坦な基板電極で構成されており、この基板電極と対向して設けられた電子引き出し電極との間に高電圧を印加することにより、カーボンナノチューブの先端に電界を集中させて電子を放出させるものである。このような電子放出源の製造方法として、よく知られているように、鉄やニッケルなどを含む金属製の基板を用い、熱CVD(化学的気相成長)法により基板の表面及び貫通孔壁にカーボンナノチューブからなる被膜を形成する方法がある。この方法によりカーボンナノチューブを製造することにより、電子放出の均一性が向上し、かつ局所的な電界集中による破壊現象の連鎖が発生しにくい状態が得られるようになる。
このような電子放出源を用いた蛍光表示装置として、図4に示す三極管構造のFED(平面ディスプレイ)が提案されている(特許文献2参照)。この平面ディスプレイでは、ガラス基板401と、これに対向して配置された透光性を有するフロントガラス408とを備え、これらの周端部において、枠状のスペーサガラス(図示せず)が低融点のフリットガラスで接着され、ガラス基板401,フロントガラス408,及び図示しないスペーサガラスにより外囲器を構成し、この内部が、10-5Pa台の真空度に保持されている。
ガラス基板401の上には、先ず、互いに平行に垂設された複数の基板リブ402を備えている。また、基板リブ402で挟まれたガラス基板401の上に、複数の電子放出源403が配置されている。電子放出源403は、図4(b)の断面図に示すように、陰極となる電極部431とこの表面に設けられた電子放出層432とから構成されている。電子放出層432は、鉄やニッケルなどの合金からなる電極部431の表面に、メタンや一酸化炭素などの炭素源ガスを用いたCVD法により形成されたカーボンナノチューブから構成されている。電子放出層432は、繊維状の複数のカーボンナノチューブが絡み合って綿状に形成され、層厚5〜50μm程度に形成されている。
なお、電子放出源403(電極部431)は、基板リブ402と同じ方向に延在する短冊形状に形成され、また、所定の間隔で開口部を備えている。言い換えると、電子放出源403は、はしご状に形成されている。また、基板リブ402の上には、基板リブ402と直交する方向に延在して所定の間隔で配置された複数の電子引き出し電極404を備えている。電子引き出し電極404は、所定の間隔で電子通過孔404aを備え、はしご状に形成されている。
また、基板リブ402の上に、これらとは垂直な方向に延在して互いに平行に垂設された前面リブ405を備え、上記外囲器の内部においては、基板リブ402の上において、前面リブ405によりフロントガラス408が支持されている。また、前面リブ405は、電子引き出し電極404の間隙において、基板リブ402の上に配置されている。言い換えると、基板リブ402の上においては、隣り合う2つの前面リブ405の間に、電子引き出し電極404が配設されている。
フロントガラス408には、外囲器内部の面に蛍光体層407R,407G,407Bが形成され、また、これらを覆うように陽極となるメタルバック膜406が形成されている。フロントガラス408の外囲器内部の面上においては、各々の隣り合う2つの前面リブ405の間に、蛍光体層407R,蛍光体層407G,及び蛍光体層407Bがこの順に配列されている。なお、蛍光体層407Rは、赤色発光用の蛍光体から構成され、蛍光体層407Gは、緑色発光用の蛍光体から構成され、蛍光体層407Bは、青色発光用の蛍光体から構成されている。
この平面ディスプレイは、電子引き出し電極404と電子放出源403の間に、電子引き出し電極404側が正の電位となるように所定の電位差を設けることにより、電子引き出し電極404と電子放出源403が交差した領域の電子放出層432を構成するカーボンナノチューブの先端部から電子が引き出され、電子引き出し電極404の矩形状の電子通過孔404aから放出される。このとき、このため、メタルバック膜406に正電圧(加速電圧)が印加されていると、電子通過孔404aから放出された電子がメタルバック膜406に向かって加速され、さらにメタルバック膜406を透過して蛍光体層407R,407G,407Bに衝突して発光させる。
例えば、メタルバック膜406に正電圧を印加した状態で、所定の電子放出源403に所定の負電圧を印加した状態で、所定の電子引き出し電極404に正電圧を印加すれば、負電圧を印加した電子放出源403の行と、正電圧を印加した電子引き出し電極404の列とが交差した箇所に対応するいずれかの蛍光体層407R,407G,407Bを選択的に発光させることができる。上記交差した箇所が平面ディスプレイの1表示ドットに対応している。
特許第3595233号公報
特開2001−146050号公報
特開2006−190533号広報
特開2006−164825号公報
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る蛍光表示装置の一部構成を模式的に断面図である。図1では、蛍光表示装置として平面ディスプレイを例にしている。本実施の形態の蛍光表示装置は、ガラスなどの絶縁部材より構成された基板101と、この上に配置された複数の基板リブ102と、基板リブ102の間の基板101の上に配置された複数の電子放出源103と、基板リブ102の上に支持された複数の電子引き出し電極104と、電子引き出し電極104の間隙で基板リブ102の上に支持された複数の前面リブ105と、前面リブ105の上に支持された透光性を有するフロントガラス108と、フロントガラス108の基板101の側の表面に積層された蛍光体層107R,107G,107B及びメタルバック膜106とを備える。
基板101とフロントガラス108とは対向して配置され、これらの周端部において、枠状のスペーサガラス(図示せず)が低融点のフリットガラスで接着され、基板101,フロントガラス108,及び図示しないスペーサガラスにより外囲器が構成され、この内部が、10-5Pa台の真空度に保持されている。
基板101の上に配置された複数の基板リブ102は、図1の紙面の法線方向に延在して互いに平行に垂設されている。基板リブ102は、この表面における帯電を考慮し、導電性を有する材料から構成されている。これらの隣り合う基板リブ102に挟まれた領域の基板101の上に、電子放出源103が配置されている。言い換えると、複数の電子放出源103が、所定の間隔を開けて互いに平行に配列されている。電子放出源103は、陰極となる電極部131とこの表面に設けられた電子放出層132とから構成され、基板リブ102と同じ方向に延在して短冊状に形成されている。また、電子放出源103(電極部131)は、所定の間隔で開口部を備えてはしご状に形成されている。
電子放出層132は、鉄やニッケルなどの合金からなる電極部131の表面に、メタンや一酸化炭素などの炭素源ガスを用いたCVD法により形成されたカーボンナノチューブから構成されている。電子放出層132は、繊維状の複数のカーボンナノチューブが絡み合って綿状に形成され、層厚5〜50μm程度に形成されている。
また、基板リブ102の上に配置された複数の電子引き出し電極104は、基板リブ102と直交する方向に延在し、また、所定の間隔で電子通過孔104aを備え、はしご状に形成されている。また、複数の電子引き出し電極104は、基板リブ102の延在方向に所定の間隔で配列されている。
このように配列された複数の基板リブ102の間の基板リブ102の上に、これらとは垂直な方向に延在して前面リブ105が配置されている。言い換えると、各電子引き出し電極104は、前面リブ105により仕切られた領域に配置されている。また、フロントガラス108の外囲器内部側の面においては、前面リブ105により仕切られた領域に、蛍光体層107R,107G,107Bがこの順に形成され、また、これらを覆うように陽極となるメタルバック膜106が形成されている。なお、蛍光体層107Rは、赤色発光用の蛍光体から構成され、蛍光体層107Gは、緑色発光用の蛍光体から構成され、蛍光体層107Bは、青色発光用の蛍光体から構成されている。以上に示した構成は、図4に示した従来の平面ディスプレイと同様である。
本実施の形態の蛍光表示装置は、上述した構成に加え、電極部131と基板101との間に導電層109を設け、基板101と電極部131との間の帯電を抑制するようにしたものである。導電層109は、基板リブ102及び電子放出源103と同じ方向に延在して形成され、また、隣り合う基板リブ102の間に配置されている。また、各導電層109は、互いに絶縁分離されている。
導電層109は、例えば、アルミニウム,ITO(Indium-Tin-Oxide)などの導電材料から構成されていれば良い。層厚は、数μmから数十μmに形成されていればよい。例えば、スクリーン印刷法によりITO膜を形成することで、導電層109が形成可能である。また、スパッタ法や真空蒸着法などによりアルミニウムを堆積することで、導電層109が形成可能である。また、導電層109は、アルミニウムなどの金属から構成する場合、ピッチが数μmから数百μmの六角メッシュなどのメッシュ状に形成しても良い。導電層109は、形成領域の全域にわたって均一に形成されている必要はない。
以下、導電層109の効果について説明する。
この蛍光表示装置では、電子引き出し電極104と電子放出源103の間に、電子引き出し電極104側が正の電位となるように所定の電位差を設けることにより、電子引き出し電極104と電子放出源103が交差した領域の電子放出層132を構成するカーボンナノチューブの先端部から電子が引き出され、電子引き出し電極104の矩形状の電子通過孔104aから放出される。このように引き出された電子の一部は、基板101の側にも洩れていくことになる。この電子が、絶縁部材よりなる基板101の表面に蓄積されると、電極部131の領域の基板101の表面が負の電位に帯電することになる。
一方、前述したように、表示動作のために電子放出源103より電子を放出されるときには、電極部131に負の電位が印加されるため、電極部131が、負電位同士の反発力を受けることになり、電極部131が振動して異常音を発生することになる。また、この反発力は、電極部131だけではなく、電子放出層132にも影響するため、反発力を受けた電子放出層132の一部のカーボンナノチューブに、電子引き出し電極104の方向に突出した状態のものが発生し、異常発光の原因になるものと考えられる。これらの問題は、基板101の表面に対する電子の蓄積が原因と考えられ、基板101と電極部131との間に設けた導電層109により、基板101の表面に電子が蓄積されることが抑制されるようになり、上述した問題が解消できるようになる。
ところで、上述した実施の形態では、隣り合う基板リブ102の間に、これら各々と間隔を開けて導電層109を設けるようにしたが、これに限るものではない、例えば、図2の断面図に示すように、配列されている方向の一部の側部が基板リブ102の下部と基板101との間に配置された導電層209を設けるようにしても良い。導電層209は、隣り合う基板リブ102の間の基板101を覆うように形成されている。また、基板リブ102の導電層209と接触する下部は、絶縁部材202から構成する。このようにすることで、隣り合う導電層209の絶縁分離を行う。
なお、本発明は、上述した実施の形態の三極管構造の蛍光表示装置に限るものではなく、他の三極管構造の蛍光表示装置に適用可能であることはいうまでもない。例えば、特許文献3,4に示された平面ディスプレイにも適用可能である。
また、図3の斜視図に一部を示すような平面ディスプレイにも適用可能である。図3に構成を示す平面ディスプレイは、先ず、ガラスなどからなる基板311上に、複数のカソード電極313を有するカソード基板310を備える。また、少なくとも一部が透過性を有するフロントガラス321の上に、蛍光体膜323G,323B,323R及びアノード電極として作用するメタルバック膜324を有するアノード基板320を備える。また、基板311及びフロントガラス321の各々対して略平行に配設され、電界制御電極として作用する平面電極331及び帯(短冊)状の複数のゲート電極335を有するゲート基板330を備える。
また、基板311とフロントガラス321とは、これらの周端部に設けられた枠状のスペーサガラス(図示せず)を介して対向配置され、低融点のフリットガラスで各々スペーサガラスに接着されて外囲器を構成している。この外囲器の内部は、10-5Pa台の真空度に保持されている。なお、以下にする説明において、図3を正面視した際に、上下の方向を高さ方向、奥行きの方向を縦方向、左右の方向を横方向とする。また、上記高さ方向において、カソード基板310の側を下方とする。
カソード基板310においては、基板311の上に、ゲート基板330と対向する面上に、複数の基板リブ312が互いに平行に所定間隔で垂設され、ゲート基板330を支持している。また、カソード電極313が、基板311の上の基板リブ312に挟まれた領域に配置されている。また、カソード電極313は、金属部材の表面にカーボンナノチューブやカーボンナノファイバーなどのナノチューブ状繊維からなる電子放出源が固着されている。カソード電極313は、図1に示す電子放出源103に相当する。なお、カソード電極313の上面は、基板リブ312の上面よりも低く形成されている。
外囲器内部に配設されるゲート基板330は、先ず、カソード基板310の基板リブ312と直交する方向に延在し、基板リブ312によって支持された棒状のゲート電極間絶縁部材333aを備える。また、ゲート電極335が、ゲート電極間絶縁部材333aに挟まれた領域に配置され、かつ基板リブ312により支持されている。ゲート電極335は、図1に示す電子引き出し電極104に相当する。ゲート電極335は、ゲート電極間絶縁部材333aとともに、基板リブ312と直交する方向に延在している。また、ゲート電極間絶縁部材333a及びゲート電極335の上に、平面視略格子状の中間リブ333を備えている。格子状の中間リブ333の基板リブ312の延在方向に直交する部分は、ゲート電極間絶縁部材333aに一致している。
また、ゲート基板330は、中間リブ333に支持された導体よりなる板状の平面電極331を備え、この上に、平面視略格子状のアノード側リブ332を備えている。加えて、ゲート電極間絶縁部材333aのカソード基板310側には、ゲート電極間絶縁部材333aの長手方向に所定間隔離間して配置された複数のカソード側リブ334が形成されている。カソード側リブ334は、カソード電極313の上にゲート電極間絶縁部材333aを支持している。従って、ゲート電極間絶縁部材333aは、基板リブ312とカソード側リブ334とにより支持されている。
また、ゲート電極335は、延在する長手方向に所定間隔離間して複数の貫通孔335aを備えている。また、平面電極331は、この平面上の縦方向及び横方向に所定間隔離間して複数の貫通孔331aを備えている。加えて、貫通孔331aと貫通孔335aとは、平面視、重なるように配設される。また、中間リブ333とアノード側リブ332とは、平面視重なるように配置され、これらの格子の隙間(格子間)に、貫通孔331a及び貫通孔335aが配置される。これら各格子間に対応して配置された貫通孔の単位で、平面ディスプレイの画素が構成される。なお、隣り合う基板リブ312の間のカソード電極313の上においては、カソード側リブ334によって画素の分離が行われている。
この平面ディスプレイでは、ゲート基板330とカソード電極313との間にゲート基板330側が正の電位となるように所定の電位差を設けることにより、カソード電極313のゲート電極335と交差した領域から引き出された電子が、貫通孔335a及び貫通孔31aを通過してアノード基板320の側へ放出される。
具体的には、先ず、電界制御電極331にカソード電極313よりも正の電位となる電圧を印加して、電界制御電極331からカソード電極313の表面に向かう電界を予め発生させる。次に、ゲート電極335に電圧を印加し、ゲート電極335をカソード電極313に対してより大きな正の電位とする。これらのことにより、ゲート電極335及び貫通孔335aの表面(側面)とカソード電極313との間に強い電界が形成され、カソード電極313の表面に配設された電子放出源から電子が引き出される。
引き出された電子は、ゲート電極335に対して正の電位となるよう電圧が印加された電界制御電極331により加速され、貫通孔331aからフロントガラス321側に放出される。ここで、メタルバック膜324に電界制御電極331よりも正の電位(加速電圧)が印加されていると、貫通孔331aから放出された電子は、メタルバック膜324に向かって加速され、さらにメタルバック膜324を貫通して蛍光体膜323G,323B,323Rに衝突する。これにより、蛍光体膜が発光する。
これらのように構成された平面ディスプレイにおいても、基板311とカソード電極313との間に、導電層319を設けることで、前述した実施の形態と同様に、カソード電極313の振動が抑制できるようになる。また、選択されていないにもかかわらず常時発光する異常なドットの発生が抑制できるようになる。
101…基板、102…基板リブ、103…電子放出源、104…電子引き出し電極、104a…電子通過孔、105…前面リブ、106…メタルバック膜、107R、107G、107B…蛍光体層、108…フロントガラス321、109…導電層、131…電極部、132…電子放出層。