図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置における画像形成ステーションの配置を示す図である。さらに、図3は図1の画像形成装置の電気的構成を示す図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリなどを有するメインコントローラMCに与えられると、このメインコントローラMCがエンジンコントローラECに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラECがエンジン部EGおよびヘッドコントローラHCなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラMC、エンジンコントローラECおよびヘッドコントローラHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および給紙ユニット7もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、二次転写ユニット12、定着ユニット13およびシート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット7は、ハウジング本体3に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット7および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モータに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。また、感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作が実行される。カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時は、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラを備えている。この帯電ローラは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って従動回転する。また、この帯電ローラは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
ラインヘッド29は、感光体ドラム21の軸方向(図1の紙面に対して垂直な方向)に配列された複数の発光素子を備えており、感光体ドラム21に対向配置されている。そして、これらの発光素子から、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に向けて光を照射して該表面に静電潜像を形成する。
図4はラインヘッドの構造を示す図である。なお、以下の説明においては、図1の紙面奥から手前側に向かう方向をX方向とする。すなわち、X方向は、感光体ドラム21の回転軸に平行な方向であり、かつ感光体21ドラム表面の移動方向および転写ベルト81の移動方向D81に直交する方向である。ラインヘッド29では、露光光源となる複数のLED(発光ダイオード)素子がX方向に配列されてなるLEDアレイ293が、長尺のハウジング中に保持されている。ベース基板294上のLEDアレイ293は、同じベース基板294上に形成されたドライバIC295により駆動される。ヘッドコントローラHCからビデオ信号が与えられると、該ビデオ信号に基づきドライバIC295が作動してLEDアレイ293に設けられたLED素子が点灯する。屈折率分布型ロッドレンズアレイ296は結像光学系を構成し、LED素子の前面に配置される屈折率分布型ロッドレンズ297を俵積みしている。ハウジングは、ベース基板294の周囲を覆い、感光体ドラム21に面した側は開放する。このようにして、屈折率分布型ロッドレンズ297から感光体ドラム21に光線を射出する。これによって、ビデオ信号に対応して感光体ドラム21に静電潜像が形成される。
図1に戻って装置構成の説明を続ける。現像部25は、その表面にトナーが担持する現像ローラ251を有する。そして、現像ローラ251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラ251に印加される現像バイアスによって、現像ローラ251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラ251から感光体ドラム21に移動してその表面に形成された静電潜像が顕像化される。
現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、後に詳述する転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する一次転写位置TR1において転写ベルト81に一次転写される。
また、感光体ドラム21の回転方向D21の一次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラムの表面に当接することで一次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
転写ベルトユニット8は、駆動ローラ82と、図1において駆動ローラ82の左側に配設される従動ローラ83(ブレード対向ローラ)と、これらのローラに張架され駆動ローラ82の回転により図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、カートリッジ装着時において各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の一次転写ローラ85Y、85M、85Cおよび85Kを備えている。これらの一次転写ローラは、それぞれ一次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。
カラーモード実行時は、図1および図2に示すように全ての一次転写ローラ85Y、85M、85Cおよび85Kを画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に一次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラ85Y等に一次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する一次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写する。すなわち、カラーモードにおいては、各色の単色トナー像が転写ベルト81上において互いに重ね合わされてカラー画像が形成される。
いわゆるタンデム方式の画像形成装置では、感光体ドラム21から転写ベルト81にトナー像が一次転写される一次転写位置は、各画像形成ステーションごとに異なった位置となる。この実施形態においては、イエロー用画像形成ステーション2Y、マゼンタ用画像形成ステーション2M、シアン用画像形成ステーション2Cおよびブラック用画像形成ステーション2Kが転写ベルト81の移動方向に沿ってこの順番に配置されている。したがって、イエロー一次転写位置TR1yとマゼンタ一次転写位置TR1mとは距離Lym、マゼンタ一次転写位置TR1mとシアン一次転写位置TR1cとは距離Lmc、シアン一次転写位置TR1cとブラック一次転写位置TR1kとは距離Lckだけ離隔している。
一方、モノクロモード実行時は、4個の一次転写ローラのうち、一次転写ローラ85Y、85Mおよび85Cをそれぞれが対向する画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cから離間させるとともにブラック色に対応した一次転写ローラ85Kのみを画像形成ステーション2Kに当接させることで、モノクロ用の画像形成ステーション2Kのみを転写ベルト81に当接させる。その結果、一次転写ローラ85Kと画像形成ステーション2Kとの間にのみ一次転写位置TR1kが形成される。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラ85Kに一次転写バイアスを印加することで、画像形成ステーション2Kに設けられた感光体ドラム21の表面上に形成されたブラックトナー像を、一次転写位置TR1kにおいて転写ベルト81表面に転写してモノクロ画像を形成する。
さらに、転写ベルトユニット8は、ブラック用一次転写ローラ85Kの下流側で且つ駆動ローラ82の上流側に配設された下流ガイドローラ86を備える。この下流ガイドローラ86は、一次転写ローラ85Kが画像形成ステーション2Kの感光体ドラム21に当接して形成する一次転写位置TR1での一次転写ローラ85Kとブラック用感光体ドラム21(K)との共通接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
また、下流ガイドローラ86に巻き掛けられた転写ベルト81の表面に対向してパッチセンサ89が設けられている。パッチセンサ89は例えば反射型フォトセンサからなり、転写ベルト81表面の反射率の変化を光学的に検出することにより、必要に応じて転写ベルト81上に形成されるパッチ画像の位置やその濃度などを検出する。
給紙ユニット7は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラ79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラ79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラ対80によって給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って、駆動ローラ82と二次転写ローラ121とが当接する二次転写位置TR2に給紙される。
二次転写ローラ121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、二次転写ローラ駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラ131と、この加熱ローラ131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が二次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラ131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラ1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラ1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラ131の周面に押し付けることで、加熱ローラ131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
前記した駆動ローラ82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、二次転写ローラ121のバックアップローラとしての機能も兼ねている。駆動ローラ82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する二次転写バイアス発生部から二次転写ローラ121を介して供給される二次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラ82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、二次転写位置TR2へシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達されることに起因する画質の劣化を防止することができる。
また、この装置では、ブレード対向ローラ83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラ83に当接することで、二次転写後に転写ベルト81に残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラ83と一体的に構成されている。
なお、この実施形態においては、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kの感光体ドラム21、帯電部23、現像部25および感光体クリーナ27を一体的にカートリッジとしてユニット化している。そして、このカートリッジが装置本体に対し着脱可能に構成されている。また、各カートリッジには、該カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリがそれぞれ設けられている。そして、エンジンコントローラECと各カートリッジとの間で無線通信が行われる。こうすることで、各カートリッジに関する情報がエンジンコントローラECに伝達されるとともに、各メモリ内の情報が更新記憶される。これらの情報に基づき各カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
また、この実施形態では、メインコントローラMC、ヘッドコントローラHCおよび各ラインヘッド29がそれぞれ別ブロックとして構成され、以下に説明するように、それらが互いにシリアル通信線を介して接続されている。ヘッドコントローラHCをメインコントローラMCまたはラインヘッド29と一体に構成することも考えられるが、これらを別体に構成することで、次のような利点が生まれる。
まず、ラインヘッド29からヘッドコントローラHCの機能を独立させることにより、ラインヘッド29を大幅に小型化することが可能となり、エンジン部EGおよび装置全体の小型化を図ることができる。また、ラインヘッドの構造に依存する処理機能をメインコントローラMCから切り離し専用ブロック化することにより、メインコントローラMC側ではヘッドの構成を考慮することなく、より汎用性の高い信号処理のみを行うことができるようになる。また、メインコントローラMCとヘッドコントローラHCとの間の通信を規格化しておけば、異なる構成のヘッドを使用する場合にも、メインコントローラについては何ら変更することなく、使用するヘッドに対応するヘッドコントローラのみを用意すればよいこととなる。これにより、共通のメインコントローラMCを異なる構成のヘッドを有する装置に共通して使用することが可能となり、1つのコントローラを用いた多機種展開が容易になる。
上記のように構成された装置各部の連携動作について、再び図3を参照しながら説明する。外部装置からメインコントローラMCに画像形成指令が与えられると、メインコントローラMCは、UART(汎用非同期送受信)通信線を介してエンジンコントローラECにエンジン部EGを起動させるための制御信号を送信する。また、メインコントローラMCに設けられた画像処理部100が、画像形成指令に含まれる画像データに対して所定の信号処理を行い、各トナー色ごとのビデオデータを生成する。
一方、制御信号を受けたエンジンコントローラECは、エンジン部EG各部の初期化およびウォームアップを開始する。これらが完了して画像形成動作を実行可能な状態になると、エンジンコントローラECは、各ラインヘッド29を制御するヘッドコントローラHCに対し画像形成動作の開始のきっかけとなる同期信号VsyncをUART通信線を介して出力する。また、UART通信線を介したエンジンコントローラECとヘッドコントローラHCとの通信においては、この他にラインヘッド29を制御するための種々の制御パラメータのやり取りが行われるが、その詳細については後述する。
ヘッドコントローラHCには、各ラインヘッドを制御するヘッド制御モジュール400と、メインコントローラMCとのデータ通信を司るヘッド側通信モジュール300とが設けられている。一方、メインコントローラMCにもメイン側通信モジュール200が設けられている。ヘッド側通信モジュール300からメイン側通信モジュール200に向けては、1ページ分の画像の先頭を示す垂直リクエスト信号VREQと、該画像を構成するラインのうち1ライン分のビデオデータを要求する水平リクエスト信号HREQとが送信される。一方、メイン側通信モジュール200からヘッド側通信モジュール300に向けては、これらのリクエスト信号に応じてビデオデータVDが送信される。より詳しくは、画像の先頭を示す垂直リクエスト信号VREQを受信した後、水平リクエスト信号HREQを受信する度に、画像の先頭部分から1ライン分ずつビデオデータを順次出力する。
図5はメインコントローラとヘッドコントローラとの間の通信を示す図である。1ページの画像は、多数のドットをX方向(ラインヘッド29の発光素子の配列方向)に沿って一列に並べたラインをこれと直交する方向、すなわち転写ベルト81の移動方向D81に少しずつ位置を異ならせながら形成したものである。ヘッドコントローラHCから出力されるリクエスト信号VREQはページ先頭を示すものである。メインコントローラMCではリクエスト信号VREQの受信後に受信したリクエスト信号HREQが有効とされ、このリクエスト信号HREQを受信する度に1ライン分のビデオデータVDをヘッドコントローラHCに送信する。
この実施形態では、1ラインを構成するドット数は最大6828である。また、解像度は600dpi(dots per inch)であり、ドットピッチもこれに等しい。したがって、1ラインの最大長さはおよそ11.4インチ(289mm)である。この長さは、日本工業規格A3版用紙の短辺寸法に対応している。各ドットの画像データは8ビットで多階調表現されており、1ライン分のビデオデータVDは、予め定められた特定の値(ここでは55h)のヘッドデータと、それに続く8ビット×6828ドットの画像データ列とからなっている。ヘッドデータはデータ列の先頭を示すためのものであり、ビデオデータを受信するヘッドコントローラ側では、値00hが続いた後に受信されたヘッドデータによりデータの先頭であることを認識することができる。言い換えれば、垂直リクエスト信号VREQを受信してから最初に受信された00h以外の値がヘッドデータとして決められているものと異なっていた場合には、通信エラーであると判断することができる。
こうして1ライン分のビデオデータを出力した後、続いてリクエスト信号HREQが与えられると、メインコントローラMCは次の1ライン分のデータを出力する。これを繰り返すことにより、1ページ分の画像に対応するビデオデータVDがメインコントローラMCからヘッドコントローラHCに受け渡される。形成すべき次のページの画像がある場合には、先のページのデータ通信の終了後、ヘッドコントローラHCからメインコントローラMCに対し再び垂直リクエスト信号VREQが送信される。
この実施形態では、上記した各信号、すなわちヘッドコントローラHCからメインコントローラMCへ送られるリクエスト信号VREQ、HREQおよびメインコントローラMCからヘッドコントローラHCへ送られるビデオデータVDが、YMCK各色に対応して4組存在する。以下では、必要に応じて各信号にハイフンおよび色を表す符号を付すことで色の区別をする。例えば、イエロー用の垂直同期信号、水平同期信号およびビデオデータはそれぞれVREQ−Y、HREQ−YおよびVD−Yと表す。
図6は各色ごとの通信タイミングを示す図である。より具体的には、同図は2ページ分のカラー画像を連続して形成する場合におけるメインコントローラとヘッドコントローラとの間の信号のやり取りを示している。図2に示すように、各画像形成ステーション2Y、2M、2C、2Kが転写ベルト81上にトナー像を転写する一次転写位置TR1y、TR1m、TR1c、TR1kは互いに異なっている。したがって、各画像形成ステーションでそれぞれ形成されるトナー像を転写ベルト81上の同一位置で互いに重ね合わせるためには、一次転写位置の違いを吸収すべくビデオデータを一時的に保存するバッファメモリをヘッドコントローラHCに設けるか、または一次転写位置間の距離に応じてビデオデータの送信タイミングをトナー色ごとに異ならせる必要がある。前者の場合には各トナー色ごとに大容量のメモリが必要となり装置コストが大幅に上昇してしまう。
この実施形態では、大容量のバッファメモリを必要としない後者の方法を採っている。すなわち、画像形成ステーションの配置に応じてビデオデータの送信タイミングに時間差を設けることにより、転写ベルト81上におけるトナー像の形成位置が各トナー色間で一致するようにしている。より具体的には、ヘッドコントローラHCから出力するリクエスト信号VREQ、HREQを送信するタイミングを、トナー色ごとに異ならせている。例えば、イエロー用垂直リクエスト信号VREQ−Yとマゼンタ用垂直リクエスト信号VREQ−Mとの間の時間差Tymは、転写ベルト81の移動速度をVtbとしたとき、
Tym=Lym/Vtb
となるように、リクエスト信号の出力タイミングが調整される。これにより、イエロー用ビデオ信号VD−Yとマゼンタ用ビデオ信号VD−Mとの間にも同様の時間差が生まれ、結果的に両トナー色のトナー像の形成位置が転写ベルト81上において同じになる。同様に、マゼンタ用ビデオ信号VD−Mとシアン用ビデオ信号VD−Cとの間、シアン用ビデオ信号VD−Cとブラック用ビデオ信号VD−Kとの間にも、それぞれ一次転写位置間の距離に応じた時間差Tmc、Tckが設けられる。
このとき、一次転写位置間の距離に応じた時間差を設定しているのはヘッドコントローラHCから出力されるリクエスト信号であり、メインコントローラMCは単に与えられたリクエスト信号によって要求されたタイミングでビデオ信号を出力するのみである。こうすることで、メインコントローラMC側で一次転写位置間の距離を管理しておく必要がなくなり、メインコントローラMCはエンジン部EGの構成に依存しない処理のみを行うことができる。
ところで、このような通信方式では、リクエスト信号VREQ、HREQおよびビデオデータVDの少なくとも3本の信号線が1色ごとに必要である。そして、色数が多くなるとそれにつれて信号線の本数も多くなってしまう。また、図6から明らかなように、2色以上の信号が同時に送受信されるタイミングが存在するため、共通バスラインを介したバス通信方式を採用することも難しい。
そこで、この実施形態では、次に説明するように、リクエスト信号を符号化している。これによって、各トナー色の垂直および水平リクエスト信号VREQおよびHREQを時分割で多重化し、1組のシリアル信号線で4色分のリクエスト信号を送信できるようにしている。また、ビデオデータVDについても4色分を時分割で1つの信号に多重化することにより、1組のシリアル信号線で送信可能としている。したがって、この実施形態では、メインコントローラMCからヘッドコントローラHCに送信するための信号線と、ヘッドコントローラHCからメインコントローラMCに送信するための信号線とからなる1組の信号線によって、色数に関係なく必要なデータ通信を行うことが可能となっている。
このようにデータを多重化した場合、より高速でのデータ伝送が必要となる。この実施形態では、データ送信用のクロックを送信モジュール側で発生させるとともに、該クロック成分をデータに重畳して送信することによって、クロック送信線を省き信号線数をさらに削減しながら、より高速で安定したデータ通信を可能にしている。
以下、本実施形態におけるデータ通信方式について詳しく説明する。この実施形態では、ヘッドコントローラHCからメインコントローラMCへ送られる4色分のリクエスト信号、そしてメインコントローラMCからヘッドコントローラHCへ送られる4色分のビデオデータのいずれもが、32ビットのシリアル信号として送受信されている。
図7はヘッドコントローラから送信されるデータの内容を示す図である。ヘッドコントローラHCから送信される32ビットデータは、8ビットを単位とする4セクションのデータから成り、各セクションの各ビットには、それぞれY、M、C、K色の垂直リクエスト信号VREQ、水平リクエスト信号HREQのいずれかが割り当てられている。ヘッドコントローラHCからメインコントローラMCに送られるリクエスト信号は、1色につき垂直リクエスト信号VREQ、水平リクエスト信号HREQの2種類、4色分で計8種類である。これら8種類の信号を、1セクションを構成する8ビットのそれぞれに割り当てる。ここでは、上位ビットから順に、リクエスト信号VREQ−Y、HREQ−Y、VREQ−M、HREQ−M、VREQ−C、HREQ−C、VREQ−KおよびHREQ−Kを割り当てるものとする。これを受信したメインコントローラMCでは、各ビット情報を取り出して時系列に沿って再配列することによって、シリアル信号に多重化されていた各色ごとのリクエスト信号を復元することができる。
図8はリクエスト信号の例を示すタイミングチャートである。また、図9は図8のパターンを符号化した結果を示す図である。これらの図を参照しながら、8種類のリクエスト信号を1つのシリアル信号として伝送する方法について説明する。なお、図8および図9に示すパターンは説明の便宜のために作成した仮想的なものであって、装置の動作において現実に生じうるパターンとは必ずしも一致しない。また、リクエスト信号を符号化するに際しては、Hレベルを値0で、Lレベルを値1で表すものとする。
ヘッドコントローラHCでは、送信すべきリクエスト信号を、1ワード分の転送周期の1/4、すなわち1セクション当たりの転送周期に相当するサンプリング周期でサンプリングして符号化する。時刻t=0を始点としたとき、第1サンプリング周期においては8種類のリクエスト信号が全てHレベルであるため、この状態は「00000000d」すなわち「00h」で表すことができる。ここで、符号d、hはそれぞれ2進表記、16進表記であることを表す。この値が第1ワードの第1セクション(ビット31〜24)の値となる。第2サンプリング周期も同様に、「00h」と表すことができ、これが第2セクション(ビット23〜16)の値となる。
第3サンプリング周期ではイエロー色に対応する垂直リクエスト信号VREQ−YのみがLレベルとなっているので、この状態を「10000000d」すなわち「80h」で表すことができる。したがって、第3セクション(ビット15〜8)の値は「80h」となる。第4サンプリング周期では再び全ての信号がLレベルであるので、「00h」により表すことができる。以上より、第1ないし第4サンプリング周期のサンプリング結果を1ワード(32ビット長)で「00008000h」と表すことができる。このようにして、この期間の各リクエスト信号を多重化し符号化することができる。
こうして符号化されたリクエスト信号は1ワード単位のシリアル信号としてヘッドコントローラHCからメインコントローラMCへ送信される。この信号を受信したメインコントローラMCでは、上記した符号化のルールを逆向きに適用することによって、受信データ「00008000h」から、「イエロー用リクエスト信号VREQ−Yが第3サンプリング周期においてLレベル、他はHレベル」というサンプリング前の状態を復元することができる。以後の各サンプリング周期についても同様にすることができ、これにより、図8に示すリクエスト信号の変化パターンは、図9に示すデータ列として表されることになる。こうして、ヘッドコントローラHCは8種類のリクエスト信号を1つのシリアル信号に多重化して送信することができ、これを受信したメインコントローラMCでは元のリクエスト信号の変化を過不足なく復元することができる。
図10はメインコントローラから送信されるデータの内容を示す図である。メインコントローラMCからヘッドコントローラHCに対しては、各色8ビットで表されたビデオデータが32ビットのシリアル信号に時分割多重化されて送信されている。32ビットデータは8ビットを単位とする4つのセクションから成っており、1つのセクションに1つのトナー色が割り当てられている。各セクションは、形成すべきドットが上寄せか下寄せか等の位置を表す情報(2ビット)、適用されるスクリーンの種類を示す情報(1ビット)および形成すべきドットの階調値を表す情報(5ビット)から構成されている。
こうして、8ビット×4色のビデオデータは32ビットデータとしてヘッドコントローラHCにシリアル送信される。そして、これを受信したヘッドコントローラHCでは、受信データを1セクションごとに分割することにより、各色のビデオデータを復元することができる。なお、各セクションのうち、ヘッドコントローラHCからリクエスト信号が出力されていないトナー色に対応するセクションに対しては、ヌルデータまたは所定のダミーデータを挿入しておくものとする。つまり、この実施形態では、送信すべきビデオデータがない場合でも、予め定められた各トナー色へのセクションの割り当ては変化しない。すなわち、この実施形態では、ビデオデータを同期式時分割多重化する。
以上のように、この実施形態では、メインコントローラMCからヘッドコントローラHCへ送られる4色分のビデオデータ、およびヘッドコントローラHCからメインコントローラMCへ送られる4色分8種類のリクエスト信号を、いずれも1つのシリアル信号として送受信している。続いて、上記の通信方式を可能とするためのハードウェア構成について説明する。
図11はメインコントローラとヘッドコントローラとの接続を示す図である。メインコントローラMCには、メイン側通信モジュール200と電気的に接続された7ピンのプラグ201(以下「ホストプラグ」という)が設けられている。また、ヘッドコントローラHCにも、ヘッド側通信モジュール300と電気的に接続された7ピンのプラグ301(以下「デバイスプラグ」という)が設けられている。そして、両プラグ間は、両端にそれぞれホストプラグ201、デバイスプラグ301と嵌合する7ピンのコネクタ701a、701bを備えた通信ケーブル700によって接続されている。
信号伝送方式には高速伝送が可能なLVDS(Low Voltage Differential Signaling;低電圧差動伝送)インターフェースが採用されており、メインコントローラMCからヘッドコントローラHCへの送信およびその逆方向の送信にはそれぞれ2本を1組とする差動信号線が使用される。2対の信号線対のうち1対は、メイン側通信モジュール200に設けられた後述する送信用のTX+端子およびTX−端子とヘッド側通信モジュール300に設けられた受信用のRX+端子およびRX−端子とをコネクタを介してそれぞれ電気的に接続する。また、もう1対は、メイン側通信モジュール200に設けられた受信用のRX+端子およびRX−端子とヘッド側通信モジュール300に設けられた送信用のTX+端子およびTX−端子とをそれぞれ電気的に接続する。すなわち、メイン側通信モジュール200とヘッド側通信モジュール300とはポイント・ツー・ポイント接続されている。各信号線対はそれぞれシールドされており、シールド導体およびGND線も、信号線対を挟んでそれぞれコネクタ701a、701bに接続されている。これらのシールド導体およびGND線は両通信モジュール内で接地されている。このように、この実施形態では、メインコントローラMCからヘッドコントローラHCへのデータ送信およびヘッドコントローラHCからメインコントローラMCへのデータ送信が、1組の通信ケーブルによって双方向に行われる。また、TX+端子からRX+端子への配線と、TX−端子からRX−端子への配線とは、通信ケーブル700および基板上の配線パターンを含めて同じ長さとされており、高速でも安定した通信が行えるようになっている。
図12はメインコントローラの構成を示す図である。メインコントローラMCは、外部装置から与えられる画像形成指令に含まれる画像データに必要な信号処理を行う画像処理部100と、メイン側通信モジュール200とを備えている。画像処理部100には、RGB画像データを各トナー色に対応したCMYK画像データに展開する色変換処理ブロック101と、画像データを一時的に保存するための画像メモリ102とが設けられている。さらに、画像処理部100には、画像データに対しスクリーン処理、ガンマ補正などの処理を行ってビデオデータVDを生成する画像処理ブロック103Y、103M、103C、103Kがそれぞれのトナー色ごとに設けられている。各画像処理ブロック103Y等は、垂直リクエスト信号VREQ−Y等の入力をきっかけとして1ページ分の画像について信号処理を開始し、生成した1ラインごとのビデオデータを順次メイン側通信モジュール200に出力する。
次に、メイン側通信モジュール200の構成について説明する。メイン側通信モジュール200は、画像処理部100から出力される4色のビデオデータVD−Y、VD−M、VD−C、VD−Kを上記原理に基づき多重化しヘッドコントローラHCにシリアル送信する送信ブロック210と、上記原理に基づき多重化されてヘッドコントローラHCから送られてくる各色の垂直および水平リクエスト信号VREQ、HREQを受信しそれぞれ元の信号に復元して出力する受信ブロック220と、送受信のためのクロックを発生するクロック発生ブロック230とを備えている。
送信ブロック210には、各色のビデオデータVDを多重化するタイミングを揃えるたするためのFIFOバッファ211が設けられている。FIFOバッファ211は、復元された各色の垂直リクエスト信号VREQ−Y、VREQ−M、VREQ−C、VREQ−Kに応じて各色の画像処理ブロックから出力される各8ビットのビデオデータVD−Y、VD−M、VD−C、VD−Kをそれぞれ水平リクエスト信号HREQ−Y、HREQ−M、HREQ−C、HREQ−Kでラッチしながら32ビットパラレルデータとして出力する。FIFOバッファ211から出力された32ビットデータは、データ8ビットにつき2ビットの付加ビットを加えて10ビットデータとする8b/10bエンコーダ212に入力され、都合40ビットのデータに加工される。付加ビットデータとして例えばCRC(Cyclic Redundancy Check)符号のような誤り訂正用コードを用いると、送信データの信頼性をより高めることができる。
こうして40ビット化されたデータはFIFOバッファ213を経てシリアライザ214に入力され、シリアルデータとして送信バッファ215に送られる。送信バッファ215は、クロック発生ブロック230に設けられた基準クロック(REFCLK)231に基づき送信クロック発生部232で生成される送信クロックをデータに埋め込んで、つまり送信クロックを送信データによって変調して、該変調信号を差動シリアル信号としてTX+、TX−端子から出力する。このように、この実施形態では4色分のビデオデータは1つのシリアル信号に多重化されており、また該シリアル信号はクロック成分を埋め込んだ差動信号として出力される。すなわち、この実施形態では、4色分のビデオデータが1対の差動信号線によって送信される。
図13は信号線上のビデオデータを模式的に示す図である。この実施形態において、基準クロック(REFCLK)の周波数は75MHzであり、これを2分周したデータ送信クロック(ワードクロック)の周波数は37.5MHzである。したがって、1ワードデータの送信周期は、基準クロック周期Trefの2倍、約26.7nsecであり、この中に4色分のタイムスロットが設けられている。データ(フレーム)長は40ビットであるから、データ転送レートは1.5Gbps(bits per second)となっている。40ビットデータ(1フレーム)の内訳は、8ビットのビデオデータに2ビットの付加データを加えた1色(チャネル)当たり10ビット×4チャネルである。なお、クロック成分はデータに埋め込まれており、図示したクロック信号が別途伝送されているわけではない。
図12に戻って、受信ブロック220の構成および動作について説明する。前記したように、ヘッド側通信モジュール300から送られてくる信号も、クロック成分が埋め込まれた差動信号である。この差動信号はRX+端子、RX−端子間に入力され、受信された40ビットシリアルデータが受信バッファ221に入力される。なお、信号に埋め込まれたクロック成分は受信クロック復調部233によって復調され、復調されたクロックに基づきデータが受信される。
受信された40ビットシリアルデータはデシリアライザ222によりパラレル化される。そして、10b/8bデコーダ223により付加ビットデータが除かれて32ビットデータに直される。この際、必要に応じて誤り訂正が行われる。この32ビットデータはバッファ224に入力され、別途設けられた出力クロック234に同期してディストリビュータ225に与えられる。
ディストリビュータ225では、32ビットデータの各ビット情報を切り出し、時系列に沿って出力することによって、8種類のリクエスト信号を復元する。このうち、垂直リクエスト信号VREQ−Y、VREQ−M、VREQ−CおよびVREQ−Kは、画像処理の開始時期を知らせるべく画像処理ブロック103Y、103M、103Cおよび103Kにそれぞれ与えられる。また、水平リクエスト信号HREQ−Y、HREQ−M、HREQ−CおよびHREQ−Kは、各画像処理ブロックから出力されるビデオデータVDを所定のタイミングで多重化させるべく、データラッチのタイミング信号としてFIFOバッファ211に与えられている。
図14はヘッドコントローラの構成を示す図である。ヘッドコントローラHCは、ヘッド側通信モジュール300とヘッド制御モジュール400とを備えている。ヘッド側通信モジュール300の構成はメイン側通信モジュール200のそれと類似している。すなわち、ヘッド側通信モジュール300は、メインコントローラMCから多重化されて送信されてくるビデオデータを受信し各色ごとのビデオデータに復元する受信ブロック320と、リクエスト信号を多重化してメインコントローラMCに送信する送信ブロック310と、クロック発生ブロック330とを備えている。メイン側通信モジュール200から送信されてきたシリアル信号は、受信クロック復調部333で信号から復調されたクロックに基づいて受信され受信バッファ321に入力される。そして、デシリアライザ322により40ビットパラレルデータに変換され、さらに10b/8bデコーダ323により付加ビットが除去され32ビットパラレルデータに変換されてバッファ324に入力される。バッファ324に入力された32ビットデータは、出力クロック334に同期してディストリビュータ325に与えられる。ディストリビュータ325は、データを1セクションごとに分割することで各色8ビットずつのビデオデータを復元しヘッド制御モジュール400に出力する。すなわち、ヘッド側通信モジュール300では、多重化されてメインコントローラMCから送られてくる4色ビデオデータを逆多重化処理し、各色ごとのビデオデータに展開する。
ヘッド制御モジュール400は、画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kのそれぞれに設けられたラインヘッド29を個別に制御するYヘッド制御ブロック410Y、Mヘッド制御ブロック410M、Cヘッド制御ブロック410CおよびKヘッド制御ブロック410Kを備えている。色ごとに分割されたビデオデータは、それぞれ対応する色のヘッド制御ブロックに入力される。また、各ヘッド制御ブロックからは、それぞれ独立したタイミングで垂直リクエスト信号VREQおよび水平リクエスト信号HREQがヘッド側通信モジュール300に入力されている。
ヘッド側通信モジュール300の送信ブロック310では、各ヘッド制御ブロックから随時入力されるリクエスト信号を符号化し多重化してメイン側通信モジュール200に出力する。送信ブロック310に設けられたマルチプレクサ311は、各ヘッド制御ブロックからそれぞれ出力される計8種類のリクエスト信号VREQ、HREQを、8ビット×4セクションの32ビットデータとして出力する。この32ビットデータに対し、8b/10bエンコーダが8ビットにつき2ビットの付加データを加え40ビットデータに変換する。こうして得られた40ビットデータはFIFOバッファ313を経てシリアライザ314に送られ、シリアル変換されたデータが送信バッファ315に送られる。
送信バッファ315は、クロック発生ブロック330に設けられた基準クロック(REFCLK)331に同期して送信クロック発生部332で発生される送信クロックに基づき、クロック成分を埋め込んだ40ビットシリアルデータを差動通信線に出力する。このようにして、8種類のリクエスト信号は1つのシリアル信号に多重化されて、1対の差動通信線によって送信される。
このように、この実施形態におけるメインコントローラMCとヘッドコントローラHCとの間の通信は、LVDS方式による双方向シリアル通信である。そして、各色のデータを多重化して1つのデータとしているので、双方からの送信データをそれぞれ1対ずつの差動信号線対のみで送信することができる。そのため、両コントローラ間を結ぶ信号線は最少で4本を必要とするのみであり、信号線を大幅に削減することができる。この実施形態ではGND配線やシールド導体を含めた7線の信号ケーブルを用いているが、この種のケーブルは、コンピュータ周辺装置間の相互接続における標準規格の1つであるSATA(Serial Advanced Technology Attachment)規格でも採用されており、当該規格品として市場で安価に入手することができるものである。また、差動信号線を採用したことにより高速伝送が可能となっており、ノイズの影響も受けにくい。
また、メインコントローラMCから送信されるデータにはメインコントローラMCに設けた基準クロックに基づくクロック成分が埋め込まれている一方、ヘッドコントローラHCから送信されるデータにはヘッドコントローラHCに別途設けた基準クロックに基づくクロック成分が埋め込まれている。したがって、この通信においては常に送信側がマスタ、受信側がスレーブの関係となる。これにより次のような利点が得られる。
ラインヘッドを有する画像形成装置においては発光素子を高速で点灯制御するため、ドット形成位置を高精度に制御するためには点灯制御用のクロックはできるだけラインヘッドに近いところで発生させることが望ましい。そのため、この実施形態では、次に説明するように、各ヘッド制御ブロック内でこの点灯制御用クロックを発生させている。
また、メインコントローラMCから送信されるビデオデータについても、この点灯制御用クロックに同期して順次出力される必要がある。これを実現するために、ビデオデータ伝送用のクロックをヘッドコントローラHC側から供給しメインコントローラMCをスレーブ動作させることが考えられる。しかしながら、こうした場合、高速のクロックが長く引き回されることによって波形が鈍りクロックが正しく伝送されなかったり、装置内に高周波ノイズが発生して装置の動作を不安定にさせるなどの問題が生じる。
この実施形態では、ヘッドコントローラHCからメインコントローラMCに供給するのはページごとおよびラインごとのリクエスト信号のみに留める一方、メインコントローラMCはリクエスト信号に応じて、自らが有する基準クロックから生成したクロック成分を重畳したビデオデータを出力する。このため、クロックの鈍りによるデータの転送エラーを少なくすることができる。特に、データ伝送に差動信号線を用いているので、波形の鈍りの影響やノイズ放射も少なく、高速にデータ伝送を行うことができる。
また、リクエスト信号の送信にもこのような伝送方式を採用することができるのは、リクエスト信号を符号化したためである。従来の技術のように、専用の信号線の電圧レベル変化によってリクエスト信号を伝える方式でより高速化しようとすると、波形の鈍りや複数のクロック同士の干渉によるタイミングのずれや、非定常的なノイズ放射が多くなってしまう。また、信号線にノイズが重畳されることによる誤動作も生じる。これに対し、本実施形態ではクロック成分を埋め込んだ信号によって符号化したリクエスト信号を伝送しているので、このような問題の発生は極めて少なくなる。
図15はヘッド制御ブロックの構成を示す図である。ここではイエロー用のYヘッド制御ブロック410Yについて説明するが、他の各ブロック410M、410C、410Kもその構造は同じである。Yヘッド制御ブロック410Yの主な機能は、第1に、エンジンコントローラECから与えられる同期信号Vsyncに基づいて適切なタイミングでリクエスト信号VREQ−Y、HREQ−Yを発生させ、各部の動作タイミングを制御すること、第2に、ヘッド側通信モジュール300から与えられるYビデオデータVD−Yに対し、ラインヘッド29の構造に起因して必要となる信号処理を施してラインヘッド29に供給することである。
まず、第1の機能について説明する。Yヘッド制御ブロック410Yには、エンジンコントローラECから与えられる同期信号Vsyncに基づきリクエスト信号VREQ−Y、HREQ−Yを生成するリクエスト信号生成部416が設けられている。リクエスト信号生成部416は、同期信号Vsyncを受信すると内部タイマのカウントを開始し、所定の待機時間が経過するとページの先頭を示す垂直リクエスト信号VREQ−Yを出力する。なお、エンジンコントローラECからの同期信号Vsyncは、各色のヘッド制御ブロックに対し同時に与えられるが、上記待機時間はトナー色ごとに個別に設定されている。この待機時間を一次転写位置の違いに応じてそれぞれ設定することによって、図6に示した各色ごとのデータ転送タイミングの違いを創出することができる。
垂直リクエスト信号VREQ−Yの出力に続いて、リクエスト信号生成部416は、1ページの画像を構成するライン数に相当する数の水平リクエスト信号HREQ−Yを一定の周期で繰り返し出力する。これらのリクエスト信号VREQ−Y、HREQ−Yはヘッド側通信モジュール300に送られ、他の色のリクエスト信号とともに多重化されてメインコントローラMCに送信される。
水平リクエスト信号HREQ−Yはさらに分割HREQ信号生成部417にも入力されており、分割HREQ信号生成部417は、入力されたリクエスト信号HREQ−Yを例えば16倍に逓倍して分割HREQ信号を生成する。分割HREQ信号は、階調値制御部413、発光順序制御部414および制御信号生成部418に入力されており、光源となるLEDは、この分割HREQ信号に基づき発光順序や発光期間が細かく点灯制御される。これにより多階調ドットを高い位置精度で形成することができ、結果として高い画像品質を得ることが可能となる。
次に第2の機能について説明する。この実施形態では、ラインヘッド29の構造に依存する信号処理についてはメインコントローラMCでは行わず、ヘッド制御ブロック410Yで行うようにしている。こうすることで、例えば仕様の異なるラインヘッドを使用する場合でも、その仕様に合わせたヘッド制御ブロックのみを用意すればよく、メインコントローラでの処理内容には変更を加える必要がない。
ヘッド制御ブロック410Yで行うビデオデータに対する処理は、主にラインヘッドのアライメントや発光特性のばらつきに対する補正処理であり、レジスト補正、スキュー補正、光量補正および湾曲補正を含んでいる。
図16はラインヘッドのアライメントを示す図である。図16(a)に示すように、ラインヘッド29に設けられたLEDアレイ293は、1チップ当たり192個のLED素子がX方向に一列に並べられてなるLEDチップ2931が37個、X方向に並べられたものである。このようなLEDアレイ293、感光体ドラム21、転写ベルト81の間にX方向の相対的な位置ずれがあると、転写ベルト81上に形成されるイエロートナー像の位置がX方向にずれてしまう。これを補正するのがレジスト補正である。レジスト補正は次のようにして行う。
ラインヘッド29の発光素子は、図16(a)に示すように7104ドット分用意されている。一方、前述したように1ラインの最大長さは6828ドット分である。したがって、全ての発光素子を露光に寄与させる必要はない。そこで、予め用意された7104ドットのうち、端部(斜線を付した部分)に位置する発光素子を点灯させず中央部の連続する6828ドットのみを点灯させて露光に寄与させるとともに、その点灯範囲を必要に応じてX方向にシフトさせることによって、X方向の位置ずれを補正することができる。
位置ずれ量(レジスト量)は、例えば装置の電源投入直後などに必要に応じて行うレジスト制御処理により求めることができる。レジスト制御では、Y画像形成ステーション2Yを作動させて、予め定められた画像パターンを有するレジストマークを転写ベルト81上に形成する。そして、このレジストマークをパッチセンサ89によって読み取り、その位置を検出する。こうして検出された位置と、当該レジストマークの基準位置とのずれ量をレジスト量とする。このレジスト量はエンジンコントローラECによって管理されており、UART通信によってエンジンコントローラECから送られる制御パラメータの1つとしてヘッド制御ブロック410YのUART通信制御部419に送信される。こうしてエンジンコントローラECから与えられたレジスト量に応じて、レジスト補正部411が、LEDアレイ293の点灯範囲を決定する。
次にスキュー補正について説明する。図16(b)に示すように、ラインヘッド29の配列方向が本来の方向(X方向)に対し傾斜している場合がある。この傾斜の大きさがスキュー量であり、スキュー量の大きさもレジストマークの読み取り結果から求めることができる。これを補正するスキュー補正は、スキュー量に応じてLED素子の点灯タイミングをずらせることによって行う。この実施形態では、数ライン分のラインバッファを備えたスキュー補正部412が設けられており、制御パラメータの1つとしてエンジンコントローラECから与えられるスキュー量に応じてスキュー補正部412が各ドットの点灯タイミングを調整する。
次に光量補正について説明する。上記したように、ラインヘッド29は複数のチップを並べてなる。各チップ内ではLED素子の発光量はよく揃っているが、チップ間では発光量のばらつきを生じることが避けられない。これを補正して各チップ間で発光量を揃える処理が光量補正である。各チップごとの光量については、ラインヘッド29の製造段階で、ラインヘッド29に設けられたEEPROM298に光量情報として予め書き込まれている。ヘッド制御ブロック410Yに設けられたEEPROM通信制御部421は、このEEPROM298に記憶された光量情報を読み出して、光量補正値制御部415に送信する。これに基づき光量補正値制御部415は光量補正値を設定し、ラインヘッド29に設けられたドライバIC295に送信する。ドライバIC295では、光量補正値に基づき各チップの駆動電流量を調節することで、各チップ間の光量差を抑制する。
次に湾曲補正について説明する。図16(c)に示すように、ラインヘッド29では各チップ間で若干の取り付け位置のばらつきがある。基準中心線からの各チップのずれ量がここでいう湾曲量である。チップの配列はラインヘッド29の製造段階で固定されているので、予め測定された各チップの湾曲量は湾曲情報としてEEPROM298に書き込まれている。EEPROM298から読み出された湾曲情報に基づき、湾曲量制御部420は各チップの湾曲量を求める。湾曲量の補正は、スキュー補正と同様に各チップごとの点灯タイミングを変化させることによって行われるので、湾曲量制御部420で求められた湾曲量はスキュー補正部412に送られ、スキュー補正部412では与えられたスキュー量および湾曲量を合算して各チップごとの補正量を決定する。
こうして補正されたビデオデータは階調値制御部413に入力され、階調値制御部413は多階調データを点灯強度および点灯期間の長短に変換してラインヘッド29のドライバIC295に送信する。ドライバIC295には、光量補正値制御部415からの光量補正値および制御信号生成部418から与えられる点灯制御用のクロックに相当するヘッド制御信号も入力されており、これらの各信号に基づいてドライバIC295がLEDアレイ293を点灯駆動する。こうして、各画像形成ステーション2Y、2M、2C、2Kに設けられたラインヘッド29が画像形成指令に基づき適正に制御されて画像が形成される。
上記した本実施形態のラインヘッド29は、列状に配列されたLED素子を露光光源とするものである。しかしながら、以下に説明するように、同じメインコントローラMCおよびエンジンコントローラECを用いて、有機EL素子を露光光源とするラインヘッドを使用した画像形成装置を構成することも可能である。露光光源として有機EL素子を使用する場合、その発光原理および構造がLED素子とは異なることに起因して、ヘッドコントローラについては有機EL素子に適合したものを使用する必要がある。
図17は有機EL素子を使用したラインヘッドの構成を示す図である。このラインヘッド290では、LED素子に代えて有機EL(エレクトロルミネセンス)素子を発光光源として使用している。すなわち、基材2901上にガラス基板2903が取り付けられており、ガラス基板2903の下面(基材2901に接する面)には有機EL発光素子2905が、X方向に少しずつ位置を異ならせて3列の列状に配置されている。すなわち、発光素子2905はいわゆる千鳥配列となっている。各発光素子2905の発光光はガラス基板2903を透過してガラス基板2903の上方に向け射出される。
また、ガラス基板2903の上面には遮光部材2907が設けられている。遮光部材2907には、各発光素子2905に対して一対一で複数の導光孔2971が穿設されている。また、かかる導光孔2971は、ガラス基板2903の法線と平行な線を中心軸として遮光部材2907を貫通する略円柱状の孔として穿設されている。よって、1つの発光素子2905から出た光は導光孔2971を介してマイクロレンズアレイ2909へ向うとともに、異なる発光素子2905から出た光ビーム同士の干渉が遮光部材2907により防止される。そして、遮光部材2907に穿設された導光孔2971を通過した光ビームは、マイクロレンズアレイ2909により、感光体ドラム21の表面にスポットとして結像され、該光ビームにより感光体ドラム21上に静電潜像を形成することとなる。
図18は有機EL素子によるラインヘッドに適合したヘッド制御ブロックを示す図である。ここではイエロートナー色に対応したYヘッド制御ブロック510Yについて説明するが、他の色に対応するヘッド制御ブロックも同一の構造を有している。また、図15に示した、LED素子を使用したラインヘッドに適合したヘッド制御ブロックと同一の構成については同一符号を付して説明を省略する。
このラインヘッド290では、EL発光素子2905が千鳥配列されているので、これらにより形成されるドットを一列に整列させるための千鳥配列補正部513が設けられている。また、エンジンコントローラECから与えられたスキュー量に関する情報は、スキュー情報制御部515に入力されており、ここから出力されるスキュー情報は、EL素子を発光させるためのコマンドデータを生成するコマンドデータ生成部517に入力される。また、1つのガラス基板2903上の複数のEL発光素子は同一の製造プロセスで製造されるため、LED素子の場合のように湾曲することがなく、これを補正するための機能が省かれている。
また、EL素子によるラインヘッドでは、1つのヘッド内では発光量のばらつきは小さいが、個体間でのばらつきは比較的大きい。これを補正するための駆動電流値に関する電流情報がラインヘッド290に設けたEEPROM2908に記憶されている。さらに、電流値に関する情報はエンジンコントローラEC側にも保存されており、それぞれに保存された電流情報から、電流値制御部518が駆動電流値を決定し、コマンドデータ生成部517に送る。発光データ生成部514は、補正されたビデオデータ、光量補正値制御部516から出力された光量補正値およびコマンドデータ生成部517から出力されたコマンドデータに基づき、EL素子を発光させるための発光データを生成してラインヘッド290に設けられたドライバIC2906に送信する。ドライバIC2906は、該発光データおよび制御信号生成部418から与えられるヘッド制御信号に基づいて有機ELアレイを駆動する。
このように、この実施形態では、ラインヘッドの構成に適合したヘッドコントローラを使用することにより、メインコントローラMC側での信号処理の内容はヘッドの構成に依存しないものとすることができる。このことはすなわち、LED素子、有機EL素子のいずれを使用する場合であっても、それぞれに適合したヘッドコントローラを用意することで、メインコントローラMCについては同一のものを使用することができることを意味している。
以上のように、この実施形態では、ヘッドの構成に依存しない信号処理を行うメインコントローラMCと、ヘッドの構成に固有の信号処理を行うヘッドコントローラHCと、実際に露光光源となるLEDアレイ293を含むラインヘッド29とをそれぞれ別体として構成している。こうすることにより、ラインヘッド29を小型に構成することが可能となり、各画像形成ステーション2Y、2M、2C、2Kを小型化することによって装置全体の小型化を図ることができる。また、ヘッドの構成に依存する処理をメインコントローラMCから切り離すことにより、仕様の異なるラインヘッドを同一仕様のコントローラで制御することができ、製品の開発コストを抑えるとともに、多機種展開を容易にすることができる。例えば、上記したように、LED素子を光源とするラインヘッド、有機EL素子を光源とするラインヘッドを同一のメインコントローラにより制御することができる。また、ラインヘッドの仕様が変更されたときには、ヘッドコントローラのみをラインヘッドに合わせて取り替えればよい。
また、この実施形態では、ビデオデータを要求するためヘッドコントローラHCからメインコントローラMCに送信するリクエスト信号VREQ、HREQを符号化している。そのため、ノイズの影響を受けずに高速でリクエスト信号を送信することができる。また、符号化したことにより、複数のリクエスト信号を多重化して1つの信号にまとめることが可能となり、1組の信号線で全てのリクエスト信号を送信することができる。そのため、色数が多い場合でも、信号線の増加を抑制することができる。
また、ヘッドコントローラHCからのリクエスト信号に同期させてメインコントローラMCからビデオデータを送信させるのではなく、ヘッドコントローラHCは単にビデオデータ送信のきっかけとして自らのタイミングでリクエスト信号VREQ、HREQを出力する一方、これを受けたメインコントローラMCも自らのタイミングで、すなわちリクエスト信号とは非同期でビデオデータを出力するようにしている。そのため、一次転写位置の違いに応じて各画像形成ステーションから別々のタイミングで、しかも並列的にリクエスト信号が出力されるタンデム型の画像形成装置においても、データ多重化しつつ、それぞれの色のビデオデータを必要なタイミングで送信することができる。また、ヘッドコントローラHCでは必要なタイミングで画像を構成する1ラインごとにリクエスト信号を出力するので、ヘッドコントローラHC側ではデータを保存するための大容量のバッファやメモリを設ける必要がない。また、メインコントローラMC側では、単に要求があったときにデータを送信するように構成されていればよく、各画像形成ステーションの構成や一次転写位置の差に起因する送信タイミングの管理をする必要がない。
また、この実施形態では、メインコントローラMCからヘッドコントローラHCへビデオデータVDを送信するに際し、メインコントローラMC側に設けた基準クロックをビデオデータVDで変調して出力している。こうしてクロック成分を埋め込んだ信号としてビデオデータを送信することで、別途クロック信号を送信する必要がなくなり、信号線を削減することができるとともに、クロック波形の鈍りに起因する伝送エラーを抑制することができる。また、結果としてさらなる伝送速度の高速化を図ることができ、画像品質の高精細化、多色化の要求にも柔軟に対応することが可能となる。また、送信側のクロックを基準クロックとすることにより、高周波クロックを引き回すことに起因する問題の発生も抑制することができる。特に、差動伝送方式を採用したことにより、ノイズの影響を抑制しながら高速にデータを伝送することができる。
また、この実施形態では、ラインヘッドの構成、より具体的にはラインヘッドの製造ばらつきやその装置への組み付け時のばらつき等に起因して必要となる信号処理を、ヘッド制御ブロックに集約して実施するようにしている。そして、ラインヘッドの製造段階で決まっている発光光量のばらつきやチップの取り付け位置ずれ量についてはラインヘッドに設けたEEPROMに記憶させておく一方、装置への組み付け時に生じるレジスト量やスキュー量についてはパッチセンサを備えてこれらの量を検出可能なエンジンコントローラECで管理しておき、ヘッド制御ブロックがこれらの情報を読み出して必要な補正を行っている。これにより、ラインヘッドや装置の個体差はヘッド制御ブロックのみで吸収することができ、メインコントローラ側ではこれらの個体差を管理する必要がない。
以上説明したように、この実施形態においては、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kに設けられた感光体ドラム21、ラインヘッド29および現像部25が本発明の「感光体」、「露光手段」および「現像手段」としてそれぞれ機能している。また、転写ベルト81が本発明の「転写媒体」として機能している。
また、この実施形態では、ヘッドコントローラHCおよびメインコントローラMCが、それぞれ本発明の「点灯制御手段」および「信号処理手段」として機能している。また、この実施形態においては、メイン側通信モジュール200およびヘッド側通信モジュール300が、それぞれ本発明の「信号処理側通信部」および「点灯制御側通信部」に相当している。また、ラインバッファを備えるスキュー補正部412およびレジスト補正部411が一体として本発明の「バッファ部」および「補正処理部」として機能している。
また、この実施形態では、メイン側通信モジュール200に設けられた受信ブロック220およびヘッド側通信モジュール300に設けられた受信ブロック320がそれぞれ本発明の「信号処理側逆多重化処理部」および「点灯制御側逆多重化処理部」として機能している。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、メインコントローラMCとヘッドコントローラHCとの間でやり取りするデータのデータ長を32ビットとしているが、データ長はこれに限定されるものではなく任意である。
また、例えば、上記実施形態におけるメインコントローラMCとヘッドコントローラHCとの通信では、8ビットにつき2ビットの付加ビットを加えることで32ビットデータを40ビットデータに変換した上でデータ送信を行っている。しかしながら、このようなデータ変換を行うか否かは本発明においては任意であり、付加ビットを加えずにデータを送信するようにしてもよい。また、誤り訂正についても任意であり、誤り訂正を行わなかったり、他の誤り訂正方法を採用してもよい。
また、上記実施形態のメインコントローラMCに設けた画像処理部100では、画像処理前の画像データを画像メモリに保存しておき、ヘッドコントローラHCから要求があったときに、各画像処理ブロックがこれを読み出して必要な処理を加えた上でビデオデータとして出力する。しかしながら、これに限定されるものではなく、例えば、外部装置から画像データを受信したときに画像処理を行って該処理後の画像データを画像メモリに保存するようにしておき、ヘッドコントローラHCから要求があったときにこれを順次読み出して送出するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、ヘッドコントローラHCからメインコントローラMCに送信するデータとして、32ビットデータを8ビットずつ4セクションに分割し、各ビットに8種類のリクエスト信号をそれぞれ割り当てるようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、さらに他の信号をいずれかのビットに割り当てるようにしてもよい。また、上記実施形態では1つのセクションのあるビットで値1が立ったとき、当該ビットに対応するリクエスト信号が出力されたものとみなしているが、より信頼性を高めるために、例えば何セクションか連続して値1が立ったときに初めてリクエスト信号が出力されたと判断するようにしてもよい。
また、上記実施形態におけるメインコントローラMCからヘッドコントローラHCへのビデオデータの送信には、32ビットデータを8ビットごとに分割して各トナー色に割り当てるようにしているが、例えば、予め割り当てを決めておかず、ビデオデータにトナー色を示す符号を付加して送信することによって色を区別するようにしてもよい。
また、上記実施形態におけるメインコントローラMCとヘッドコントローラHCとの通信は、4色分のデータをそれぞれ任意のタイミングで送出することを最大の目的として構成されているため、モノクロモード実行時には他のトナー色のために割り当てられたデータ領域は全く使用されないこととなる。そこで、より効率的にデータ送信を行うために、モノクロモードに対しては上記したカラーモードのものとは別の通信プロトコルを適用するようにしてもよい。例えば、1データフレームを当該モノクロ色に割り当てるようにしてもよい。こうすれば、同じ通信時間でより大量のデータを送信することができ、通信時間を短縮したり、より高精細化されたビデオデータを送信することが可能となる。
さらに、上記実施形態では、YMCK4色のトナーを使用したカラー画像形成装置に本発明が適用されているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、色の種類や色数の異なる画像形成装置に対しても適用することができる。
2Y、2M、2C、2K…画像形成ステーション(画像形成ステーション)、 21…感光体ドラム(感光体)、 25…現像部(現像手段)、 29…ラインヘッド(露光手段)、 81…転写ベルト(転写媒体)、 200…メイン側通信モジュール(信号処理側通信部)、 220…(メイン側)受信ブロック(信号処理側逆多重化処理部)、 300…ヘッド側通信モジュール(点灯制御側通信部)、 320…(ヘッド側)受信ブロック(点灯制御側逆多重化処理部)、 411…レジスト補正部(補正処理部)、 412…スキュー補正部(バッファ部、補正処理部)、 HC…ヘッドコントローラ(点灯制御手段)、 MC…メインコントローラ(信号処理手段)