JP2008068166A - 焼結金属製フィルタの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】空孔率を高めた焼結金属製フィルタを大量かつ低コストに生産可能な焼結金属製フィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】原料粉末1に、原料粉末1より融点の低い低融点金属粉末2を加えた混合粉末3を圧縮成形する。圧縮成形により得られた圧粉成形体4を一旦低融点金属粉末2の融点まで加熱して低融点金属粉末2を液化除去する。その後、原料粉末1の焼結温度まで加熱して圧粉成形体4’を焼結することで、焼結金属製フィルタを得る。また、原料粉末1としてSUS粉末を、低融点金属粉末2としてZn粉末あるいはSn粉末を使用する。
【選択図】図1

Description

本発明は、焼結金属製フィルタの製造方法に関する。
従来、気体や液体中の不純物を除去する目的で、種々のフィルタが使用されている。最も一般的なものとして、金属繊維を網目状に配し、これを層状に重ねることで形成される金属製フィルタが知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、最近では、フィルタの製造コストを低減する目的で、フィルタを焼結金属で形成したものも提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
また、濾過対象となる流体の性質に合わせて、フィルタに特定の機能を付与したものが提案されている。例えば、フィルタに所要の耐腐食性や耐熱性などを付与する目的で、SUSやNi合金、Co合金、Cr合金等で形成したフィルタが提案されている。この場合、SUS粉末を焼結することで、あるいはSUS粉末を加圧成形することで得た粉末予備成形体を焼結することでフィルタを形成する方法が開示されている(例えば、特許文献3を参照)。
特開2002−204913号公報 特開平09−313836号公報 特開平08−309126号公報
ところで、この種のフィルタを低コスト化の目的で焼結形成する場合、当該フィルタのフィルタ機能は、一般に、内部空孔の割合(空孔率ともいう)や個々の孔の大きさに依存することが知られている。例えば実用的なフィルタ処理速度を達成するためには、フィルタ全体に対して内部空孔の占める割合を所要の値まで高める必要があるが、焼結金属製フィルタでそれを実行するのは容易ではない。
すなわち、なるべく内部空孔を多く残して焼結しようとする場合、例えば原料となる金属粉末を、完成品となるフィルタの形状に合わせた金型に充填し、これを加圧せずに焼結する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、充填粉末を金型ごと焼結炉に入れて焼結する必要があるため、一度の製造プロセスでは当該金型の数しか製造することができない。これでは、生産性が悪く大量生産には不向きである。
金型に充填した原料粉を一旦加圧成形した後、かかる圧粉成形体を金型から取り出して焼結するようにすれば、大量生産は可能である。しかしながら、この方法では、圧粉成形体の強度を確保するため(ハンドリング性を確保するため)に、ある程度高密度に加圧成形する必要が生じる。そのため、この方法では、フィルタとして必要となる大きさの空孔率を得ることが難しい。
ここで、特許文献2に開示の発明は、フィルタを構成する金属粒子の耐食性に着目してなされたものであり、生産性の向上、あるいは空孔率の改善といった上述の問題点に対して何ら解決のための手段を示唆していない。また、特許文献3に開示の発明は、金属粉末材料の焼結方法に着目してなされたものであるから、そもそも量産品としてのフィルタを対象としたものではない。また、同文献には、上述の金属粉末を加圧成形したものを熱間等方圧加圧焼結する旨が記載されているが、かかる方法では、上述の問題点(加圧成形により空孔率の上限が制限)を解決することにはならず、また解決のための手段について何ら示唆を与えるものでもない。
以上の事情に鑑み、本発明では、空孔率を高めた焼結金属製フィルタを大量かつ低コストに生産可能な焼結金属製フィルタの製造方法を提供することを技術的課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は、金属粉末からなる原料粉末を焼結して得られる焼結金属製フィルタの製造方法であって、原料粉末に、原料粉末の焼結温度より低温で溶融する低融点金属粉末を加えたものを圧縮成形し、圧粉成形体を低融点金属粉末の融点まで加熱して低融点金属粉末を除去し、その後に圧粉成形体を焼結することを特徴とする焼結金属製フィルタの製造方法を提供する。
このように、本発明に係る方法であれば、最終的な製品を構成する原料粉末(金属粉末)とは別の金属粉末を一時的に加えることで、圧粉成形を可能とし、また圧粉成形体の強度を確保することができる。かつ、原料粉末に加える金属粉末として、当該原料粉末の焼結温度より低温で溶融する低融点金属粉末を使用し、当該粉末を加えた原料粉末の圧粉成形体を低融点金属粉末の融点まで加熱することで低融点金属粉末が溶け出し、これを除去することができる。従って、低融点金属を除去した状態でさらに原料粉末の焼結温度まで加熱すれば、低融点金属粉末を空孔に置換した状態の焼結金属製フィルタを得ることができる。そのため、上述の方法であれば、1つの金型に対して多数の焼結金属製フィルタを低コストに製造することができ、かつ従来品に比べて多孔質性を高めた焼結金属製フィルタを得ることができる。
原料粉末に加える低融点金属粉末として、少なくとも低融点金属粉末の融点では原料粉末と合金化しないものを使用するのが好ましい。かかる低融点金属粉末であれば、溶融状態の低融点金属粉末が原料粉末と合金化することがないので、かかる低融点金属粉末を容易かつ確実に除去することができる。
例えば、原料粉末としてSUS粉末を使用する場合、上述の条件を満足する低融点金属粉末として、Zn粉末又はSn粉末を挙げることができる。この場合、Zn粉末やSn粉末は、何れもSUS粉末に比べて融点が低く、かつそれ自体が溶融する温度ではSUS粉末と合金化することもない。そのため、溶融液化したZnあるいはSnを容易に除去することができ、また、SUSとの合金化を回避することで、SUS自体のもつ高い防蝕性を十分に発揮し得るフィルタを得ることができる。
また、上記例示の金属(Zn又はSn)は、SUSに対して濡れにくい材料であり、そのため、溶融時には、圧粉成形体内部から外部に流出し易いといった利点も有する。さらに、Zn粉末やSn粉末は、SUS粉末に近い比重を示すことから、粉末混合時、あるいは成形金型への充填時、比重の違いにより偏析を生じる可能性も低い。そのため、空孔が均一的に分散し、かつ密度が均一な焼結金属製フィルタを得ることが可能となる。
以上より、本発明によれば、空孔率を高めた焼結金属製フィルタを大量かつ低コストに生産可能な焼結金属製フィルタの製造方法を提供することができる。また、原料粉末としてSUS粉末を、低融点金属粉末としてZn粉末又はSn粉末を使用することで、特に腐食性環境下において好適に使用可能な焼結金属製フィルタを製造することができる。
以下、本発明の一実施形態を図1に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る焼結金属製フィルタの製造方法の一例を概念的に示している。この製造方法は、原料粉末と低融点金属粉末とを混合する工程(a)、混合粉末を成形金型内に充填し、圧粉成形する工程(b)、圧粉成形体を炉内に供給配置し、低融点金属粉末の融点まで加熱することで低融点金属粉末を除去する工程(c)、そして、低融点金属粉末を除去した状態の圧粉成形体を焼結して原料粉末の焼結体を得る工程(d)とを含む。以下、各工程を時系列順に説明する。
(a)粉末混合工程
まず、図1(a)に示すように、最終的な製品(フィルタ)を構成し、金属粉末からなる原料粉末1と、原料粉末1の焼結温度より低温で溶融する低融点金属粉末2とを混合する。この際、使用する原料粉末1としては、低融点金属粉末2に比べて粒径の大きいものが好ましい。低融点金属粉末2を除去した状態で、原料粉末1同士の接触面積をなるべく確保するためである。
また、低融点金属粉末2として、原料粉末1と比重の近い材料を使用することで、混合後の粉末3中における偏析、特に後述する成形金型5、6への充填時における偏析を極力避けて、均等に混ざり合った混合粉末3を得ることができる。具体的には、上記関係を満たす金属の組み合わせとして、原料粉末1にSUS粉末を、低融点金属粉末2にZn粉末又はSn粉末を用いるのがよい。また、この種の混合においては、より均質な混合粉末3を得る目的で、混合作業を回転力(遠心力)の作用下で行う場合も考えられるが、この際、互いに比重が近くなるよう、原料粉末1および低融点金属粉末2を選択することで、比重の違いに起因する粉末間の遠心力の差を極力小さくして、偏りのない均質な混合粉末3を得ることができる。
(b)圧粉成形工程
次に、混合粉末3を、成形金型内部に充填し、これを圧縮成形することで圧粉成形体4を得る。成形金型は、この図示例では、図1(b)に示すように、混合粉末3の充填空間を形成するダイ5および下パンチ6と、ダイ5および下パンチ6に対して相対的に上下動が可能な上パンチ7とで構成される。この場合、ダイ5および下パンチ6とで区画形成される空間に充填された混合粉末3を上パンチ7により圧縮することで、成形金型(ここではダイ5および上下パンチ6、7)の区画空間に倣った形状の圧粉成形体4が得られる。この際、ダイ5に対する下パンチ6の相対位置を調整することで、混合粉末3の充填量が設定でき、また、下パンチ6に対する上パンチ7の近接量を調整することで、圧粉成形体4の圧縮比を適宜設定することが可能である。もちろん、圧粉成形体4の形状は、上記金型5〜7の形状、構成を変更することで適宜調整可能である。
(c)低融点金属の除去工程
上述の工程(a)および(b)で得られた圧粉成形体4を炉8内に供給配置し、圧粉成形体4を低融点金属粉末2の融点まで加熱する。これにより、圧粉成形体4内の低融点金属粉末2が溶融液化し、圧粉成形体4の外部へと流れ出す。そのため、圧粉成形体4の外部へと流出した低融点金属を取り除くことで、容易に、圧粉成形体4を低融点金属粉末2を空孔に置換した状態のもの(図1(d)に示す圧粉成形体4’)が得られる。この際、上述のように、低融点金属粉末2として、少なくとも低融点金属粉末2の融点では原料粉末1と合金化しないものを使用することで、溶融状態の低融点金属粉末2が原料粉末1と合金化することがないので、かかる低融点金属粉末2を容易かつ確実に除去することができる。
(d)焼結工程
最後に、上記工程(c)で低融点金属粉末2を除去した圧粉成形体4’を、先の工程(c)より高い温度、具体的には原料粉末1が焼結可能な温度まで加熱することで、圧粉成形体4’を焼結する。これにより、原料粉末1の焼結体、すなわち、最終的な製品としての焼結金属製フィルタが形成される。なお、焼結時に使用する雰囲気ガスとしては、窒素ガスの他、雰囲気の還元性を高める目的で水素ガスを使用することができる。
このように、原料粉末1に、原料粉末1の焼結温度より低温で溶融する低融点金属粉末2を加えたものを圧縮成形し、これを一旦低融点金属粉末2の融点まで加熱して低融点金属粉末2を液化除去することで、従来品に比べて高い空孔率を有する焼結金属製フィルタを得ることができる。同時に、上述の如く、一時的に原料粉末1とは別の金属粉末(低融点金属粉末2)を加えることで、適度な加圧成形が可能となり、焼結工程に到るまでのハンドリング性を確保することができる。そのため、高い空孔率を有する焼結金属製フィルタを大量かつ低コストに生産することが可能となる。
また、上述のように、原料粉末1としてSUS粉末を、低融点金属粉末2としてZn粉末あるいはSn粉末を使用すれば、ZnやSnはそれら自体が溶融する温度ではSUSと合金化しないため、溶融液化したZnあるいはSnを原料粉末1(圧粉成形体4)から容易に除去することができる。特に、ZnやSnは、SUSに対して濡れにくい材料であるため、溶融時には、圧粉成形体4の表面に現れ易い。また、これを一旦冷却することで、圧粉成形体4の表面に現れた低融点金属(ZnやSn)が、SUSとは濡れにくい(接触角が大きい)ことに起因して球状に固化する。そのため、低融点金属の除去をさらに容易かつ確実に行うことができる。
当該フィルタの空孔率は低融点金属粉末2の配合割合を変更することで、空孔の大きさは使用する原料粉末1や低融点金属粉末2の粒径を適宜選択することでそれぞれ任意に調整可能である。また、上述の方法で製造された焼結金属製フィルタであれば、非常に高い空孔率を有する(内部空孔を多く有する)ので、例えば、当該フィルタの他部品への組付け性、あるいはフィルタ性能のさらなる向上を狙って、若干の再成形(サイジングともいう)を施すことも可能である。
なお、上述の実施形態では、原料粉末1として金属粉末(SUS粉末など)からなるものを使用した場合を説明したが、これ以外の材料を金属粉末に加えたものを原料粉末1として使用することも可能である。例えば、圧粉成形体4の成形金型5、6からの取出しを破損なくスムーズに行うために、若干の潤滑剤を混入することもできる。また、その潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛または有機系ワックス等、原料粉末1を焼結する際に除去されるものが望ましい。
本発明の有効性を検証するため、以下の評価試験を行った。すなわち、従来の方法(原料粉末のみを圧縮成形したものを焼結する方法)で成形した焼結金属製フィルタ(以下、従来品)と、本発明に係る方法で成形した焼結金属製フィルタ(以下、実施品)についてそれぞれの密度を測定し、比較した。
ここで、上記の試験に使用される試験片(実施品、比較品)は、以下に示す材料および手順を経て作成した。
[材料]
原料粉末:SUS粉末(大同特殊鋼株式会社製 DAP410L 使用粒径:42メッシュアンダー60メッシュオーバー)
低融点金属粉末:Sn粉末(福田金属箔粉工業株式会社製 Sn−At−W350 使用粒径:350メッシュアンダー)
[手順 実施品]
(1)上記粉末を、原料粉末:低融点金属粉末=7:3の割合で混合する。
(2)手順(1)で得られた混合粉末を、成形後の密度が6.0g/cmとなるよう圧縮成形する。
(3)手順(2)で得られた圧粉成形体を炉内に投入し、250℃まで加熱する。これによりSn粉末が溶融液化すると共に、圧粉成形体の表面に流れ出る。
(4)手順(3)の状態から温度を下げて、成形体表面に露出したSnを固化させる。この際、SnはSUSとは合金化せず、かつ球状に固化することで、容易に除去可能である。
(5)Snを除去した後、AXガス雰囲気中で炉内を1200℃まで加熱することで、Sn除去後の圧粉成形体を焼結し、実施品を得る。
[手順 比較品]
(1)上記粉末のうち、原料粉末のみを、成形後の密度が6.0g/cmとなるよう圧縮成形する。
(2)手順(1)で得られた圧粉成形体をAXガス雰囲気中で炉内に投入し、1200℃まで加熱することで焼結体としての比較品を得る。
各試験片(実施品、比較品)の密度については、JIS Z 2501に従って測定した。
Figure 2008068166
上記の表に、密度測定の結果を示す。同表より、本発明に係る実施品の密度は、比較品の密度より小さい。また、原料粉末は共に同一であることを併せて考えると、実施品の空孔率が比較品の空孔率に比べて大きく、このことから、本発明に係る製造方法は、特に焼結金属製のフィルタに有効であるといえる。
本発明係る焼結金属製フィルタの製造方法の一例を概念的に示す図である。
符号の説明
1 原料粉末
2 低融点金属粉末
3 混合粉末
4 圧粉成形体
4’ 圧粉成形体(低融点金属除去後)
5 ダイ
6 下パンチ
7 上パンチ
8 炉

Claims (5)

  1. 金属粉末からなる原料粉末を焼結して得られる焼結金属製フィルタの製造方法であって、前記原料粉末に、前記原料粉末の焼結温度より低温で溶融する低融点金属粉末を加えたものを圧縮成形し、該圧粉成形体を前記低融点金属粉末の融点まで加熱して前記低融点金属粉末を除去し、その後に該圧粉成形体を焼結することを特徴とする焼結金属製フィルタの製造方法。
  2. 前記低融点金属粉末として、少なくとも前記低融点金属粉末の融点では前記原料粉末と合金化しないものを使用した請求項1記載の焼結金属製フィルタの製造方法。
  3. 前記原料粉末として、SUS粉末を使用した請求項1又は2に記載の焼結金属製フィルタの製造方法。
  4. 前記低融点金属粉末として、Zn粉末又はSn粉末を使用した請求項1〜3の何れかに記載の焼結金属製フィルタの製造方法。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載の焼結金属製フィルタの製造方法によって製造された焼結金属製フィルタ。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2017147736A1 (en) * 2016-02-29 2017-09-08 Honeywell International Inc. Air filtration media and method of processing the same
WO2023048082A1 (ja) * 2021-09-23 2023-03-30 Ntn株式会社 フィルタおよびフィルタ組立体

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