ところで、上述の従来技術では、駆動用電源と外部電装機器との間を開閉する手段として機械式リレーを採用しているが、機械式リレーは、接点やバネ等の機械的要素を含むため、その分、外形的に大きい。しかも、この機械的要素を駆動するべく、比較的に大きな電力が必要となる。従って、このような機械式リレーを採用する従来技術は、例えば低消費電力や小型化が要求される用途には、極めて不適当である。
併せて、従来技術では、外部電装機器に過電流が流れることによる当該外部電装機器の異常発熱を検出し、その検出結果に基づいてリレーを開閉することとしているが、外部電装機器に過電流が流れてから当該外部電装機器が異常発熱するまでには、つまり過電流が異常発熱に変換されるまでには、比較的に長い時間が掛かる。しかも、異常発熱を検出する手段として抵抗可変素子を採用しているが、この抵抗可変素子に当該異常発熱による熱が伝導するのにも、つまり異常発熱が抵抗値に変換されるのにも、時間が掛かる。このため、従来技術では、過電流が流れてから当該過電流を遮断するべく実際にリレーが開成されるまでの間に相当の時間が掛かる、つまり応答性が悪い、という問題がある。
そこで、この発明は、従来よりも応答性が良く、しかも低消費電力および小型化を実現することができる過電流保護回路を提供することを、目的とする。
上述の目的を達成するために、この発明の過電流保護回路は、電源回路と負荷回路とを結ぶ電源ライン中に設けられ当該電源ラインをオン/オフする半導体スイッチ手段と、同電源ライン中に設けられ電源回路から負荷回路に供給される電流を検出する電流検出手段と、この電流検出手段による電流検出値に基づいて半導体スイッチ手段を制御する制御手段と、を具備するものである。具体的には、制御手段は、電流検出手段による電流検出値が閾値以下になるごとに電源ラインをオンし、当該電流検出値が閾値を超えるごとに当該閾値を越えた時点から第1期間にわたって電源ラインをオフするように、半導体スイッチ手段を制御する、というものである。
なお、ここで言う閾値とは、電源回路から電源ラインを介して負荷回路に供給される電流が過大であるか否か、つまり負荷回路に過電流が流れているか否か、を電流検出手段による電流検出値に基づいて判定するための基準となる値を言う。
即ち、この発明においては、電源回路が起動されると、まず、電流検出手段が、当該電源回路から電源ラインを介して負荷回路に供給される電流を検出する。この電源回路の起動直後は、当該電流が次第に増大するいわゆる過渡状態にあるので、電流検出手段による電流検出値は閾値以下となる。従って、制御手段は、電源ラインをオンするように半導体スイッチ手段を制御する。ここで、例えば、負荷回路が正常である、とする。この場合、電源回路から負荷回路に対し定格の電流が供給され、つまり電流検出手段による電流検出値が閾値以下となる状態が維持される。従って、半導体スイッチ手段による電源ラインのオン状態もまた維持される。一方、負荷回路に短絡等の何らかの異常が生じると、電源回路から当該負荷回路に供給される電流が過大となり、つまり過電流が流れる。すると、電流検出手段による電流検出値が、閾値を超える。これに応答して、制御手段は、当該電流検出値が閾値を超えた時点から所定の第1期間にわたって電源ラインをオフするように、半導体スイッチ手段を制御する。これにより、当該第1期間にわたって、電源回路から負荷回路への電流の供給が停止され、過電流が遮断される。そして、第1期間が経過すると、電源ラインが再びオンされ、元の状態に復帰する。
なお、元の状態に復帰した時点で、例えば負荷回路の異常が解消されている場合は、半導体スイッチ手段による電源ラインのオン状態が維持される。一方、負荷回路の異常が未だ解消されていない場合には、再び過電流が流れるので、電源ラインもまた再び第1期間にわたってオフされる。そして、この電源ラインが再びオフされるという動作は、負荷回路の異常が解消されるまで、繰り返される。
さらに、電源回路が起動されたときに既に負荷回路に異常が生じている場合には、一旦、電源ラインがオンされた後、直ぐに第1期間にわたって当該電源ラインがオフされる。そして、この動作は、負荷回路の異常が解消されるまで、繰り返される。
なお、この発明において、制御手段は、電流検出手段による電流検出値が閾値を超え、かつ当該閾値を超えた時点から第2期間が経過したことを条件に、当該第2期間が経過した時点から上述の第1期間にわたって電源ラインをオフするように半導体スイッチ手段を制御するものとしてもよい。このようにすれば、例えば負荷回路に異常が生じていないにも拘らず何らかの理由により電流検出手段による電流検出値が瞬間的に(詳しくは第2期間よりも短い期間にわたって)閾値を超えたとしても、電源ラインはオフされず、いわゆる誤動作が防止される。
この場合、第2期間、つまり電流検出手段による電流検出値が閾値を越えてもなお電源ラインをオンし続ける期間は、第1期間、つまり当該電源ラインをオフし続ける期間、よりも短いのが、望ましい。具体的には、第2期間は、第1期間の数百分の1〜数十分の1とし、併せて数[ms]程度とするのが、望ましい。これは、第2期間中に半導体スイッチ手段に過電流が流れることによる当該半導体スイッチ手段への熱的ストレスを軽減するためである。
また、この第2期間中に電源回路から負荷回路に流れる電流を制限する制限手段を、さらに設けてもよい。このような制限手段を設けることによって、半導体スイッチ手段への熱的ストレスをさらに軽減することができる。
そしてさらに、半導体スイッチ手段が発熱するに連れて閾値を下げるように、当該閾値を変更する閾値変更手段を、設けてもよい。このようにすれば、半導体スイッチ手段が発熱するほど、電流検出手段による電流検出値が閾値を超え易くなり、つまり電源ラインがオフし易くなる。これによって、半導体スイッチ手段への熱的ストレスがより一層軽減される。
この発明における半導体スイッチ手段としては、例えば電界効果トランジスタ(以下、FET(Field
Effect Transistor)と言う。)が好適である。即ち、FETは、いわゆる高入力インピーダンス素子であるので、このようなFETを半導体スイッチ手段として採用することによって、当該半導体スイッチ手段を駆動するための電力を低減することができ、ひいては過電流保護回路全体のより一層の低消費電力化を図ることができる。
この発明によれば、電源回路と負荷回路とを結ぶ電源ラインをオン/オフするのに半導体スイッチ手段を採用しているので、機械式リレーを採用するという上述した従来技術に比べて、過電流保護回路全体の低消費電力化および小型化を実現することができる。また、従来技術では、過電流を異常発熱に変換し、さらにこの異常発熱を抵抗値に変換することによって、当該過電流を言わば間接的に検出し、この間接的な検出結果に基づいてリレーを開閉している。これに対して、この発明では、過電流を直接検出し、この直接的な検出結果に基づいて半導体スイッチ手段をオン/オフしている。従って、この発明によれば、過電流が流れてから実際に当該過電流が遮断されるまでの時間を、従来よりも遥かに短縮することができる。つまり、従来よりも応答性が良く、しかも低消費電力かつ小型の過電流保護回路を提供することができる。
この発明の一実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
図1に示すように、この実施形態に係る過電流保護回路10は、接地電位との間に主電源電圧Vccが印加される入力端子12と、同接地電位との間に負荷回路100が接続される出力端子14と、を備えている。そして、これら入力端子12と出力端子14とを結ぶ電源ライン16の途中に、当該電源ライン16をオン/オフする半導体スイッチ手段としての半導体スイッチ(SW)回路18が、設けられている。さらに、電源ライン16の途中、詳しくは半導体スイッチ回路18の入力側(図1において左側)には、当該電源ライン16を流れる電流、つまり負荷回路100を駆動するための駆動電流Ia、を検出するための電流検出手段としての電流検出回路20も、設けられている。そして、この電流検出回路20による電流検出値(以下、この電流検出値についてもIaという符号を用いて表す。)は、制御手段としての制御回路22に与えられ、制御回路22は、当該電流検出値Iaに基づいて半導体スイッチ回路18を制御する。
図2に、過電流保護回路10の詳細な回路図を示す。同図に示すように、この過電流保護回路10は、定電圧ダイオード(ツェナダイオード)30を有している。具体的には、この定電圧ダイオード30のカソード端子は、上述した入力端子12に接続されており、アノード端子は、手動スイッチ32および電流制御用の抵抗器34を介して接地電位に接続されている。なお、後述するように、この実施形態の過電流保護回路10は、当該定電圧ダイオード30の両端子間に発生するツェナ電圧Vzを電源電圧として駆動する。つまり、定電圧ダイオード30は、過電流保護回路10を駆動するための専用の電源手段として機能する。
そして、定電圧ダイオード30のカソード端子側に、後述する維持期間Taを設定するためのコンデンサ36の一方端子が接続されており、このコンデンサ36の他方端子は、抵抗器38を介して定電圧ダイオード30のアノード端子側に接続されている。さらに、定電圧ダイオード30のカソード端子側に、一般に知られているシステムリセット用IC(Integrated Circuit)40の電圧入力端子(VDD)40aが、接続されている。
ここで、システムリセット用IC40について、少し詳しく説明する。即ち、システムリセット用IC40は、一般に、CPU(Central Processing Unit)を備えた回路に適用されるものであり、具体的には、電源電圧を常に監視し、電源投入時や電源瞬断時に確実にCPUをリセットするためのものである。より具体的には、システムリセット用IC40は、上述の電圧入力端子40aの他に、接地端子(GND)40b,電圧検出出力端子(OUT)40cおよび遅延外付けコンデンサ接続端子(CD)40dを、有している。そして、電圧入力端子40aと接地端子40bとの間の電圧Vbを監視し、この電圧Vbが所定のリセット電圧Vr以下のときは、電圧検出出力端子40cと接地端子40bとを互いに接続し、つまり短絡する。一方、当該電圧Vbがリセット電圧Vr(厳密にはヒステリシス特性を有する)を超えているときは、電圧検出出力端子40cと接地端子40bとの間を非接続とし、言わば開放する。ただし、電圧Vbがリセット電圧Vrを超えている状態から当該リセット電圧Vr以下となる状態に遷移するときは、図3に示すように、電圧検出出力端子40cと接地端子40bとの間は即座に短絡されるが、これとは逆のとき、つまり電圧Vbがリセット電圧Vr以下の状態から当該リセット電圧Vrを越える状態に遷移するときは、当該電圧Vbがリセット電圧Vrを越えた時点から或る遅延期間Tbを経過して初めて、これら両端子40cおよび40b間が開放される。そして、遅延期間Tbは、遅延外付けコンデンサ接続端子40dと接地端子40bとの間に接続されるコンデンサ42の容量によって決まる、というものである。
なお、この実施形態においては、遅延期間Tbは、Tb=約100[ms]に設定されており、換言すればそのような遅延時間Tbとなるようにコンデンサ42の容量が選択されている。そして、システムリセット用IC40の接地端子40bは、上述したコンデンサ36と抵抗器38との相互接続点Pに接続されている。さらに、電圧検出出力端子40cは、抵抗器44を介して、PNP型トランジスタ46のベース端子に接続されている。以下、このPNP型トランジスタ46を、第1トランジスタと言う。
この第1トランジスタ46のエミッタ端子は、定電圧ダイオード30のカソード端子側に接続されている。そして、コレクタ端子は、2つの抵抗器48および50を介して、定電圧ダイオード30のアノード端子側に接続されている。さらに、当該2つの抵抗器48および50の相互接続点Qは、抵抗器52を介して、定電圧ダイオード30のカソード端子側に接続されている。
そして、定電圧ダイオード30のカソード端子側は、上述とは別のPNP型トランジスタ54のエミッタ端子にも接続されている。なお、これ以降、この別のPNP型トランジスタ54を、第2トランジスタと言う。この第2トランジスタ54のコレクタ端子は、抵抗器56を介して、接続点Qに接続されている。また、当該コレクタ端子は、別の抵抗器58を介して、接続点Pにも接続されている。さらに、第2トランジスタ54のベース端子は、ベース抵抗器60を介して、半導体スイッチ回路18を構成するPチャネルMOS(Metal-Oxide Semiconductor)型FET62のソース端子に接続されている。なお、第2トランジスタ54とFET62とは、図示しない熱伝導手段、例えば銅やアルミニウム等の金属、或いは熱伝導樹脂等、を介して互いに熱結合されている。
さらに、FET62のソース端子は、抵抗器64を介して、定電圧ダイオード30のカソード端子側にも接続されている。ここで、抵抗器64としては、比較的に抵抗値が小さく、かつ定格電力が大きいもの、詳しくは抵抗値が0.1[Ω]〜1[Ω]程度で、定格電力が0.5[W]〜2[W]程度のものが、採用される。そして、FET62のゲート端子は、接続点Qに接続されており、ドレイン端子は、出力端子14に接続されている。
なお、図2において、第2トランジスタ54,ベース抵抗器60および大電力抵抗器64で構成され部分が、図1における電流検出回路20に対応する。そして、図2において、これら第2トランジスタ54,ベース抵抗器60および大電力抵抗器64,ならびに入力端子12,出力端子14,半導体スイッチ回路18としてのFET62、を除く残りの部分が、図1における制御回路22に対応する。
このように構成された過電流保護回路10は、次のように動作する。
即ち、図2において、手動スイッチ32がオンされると、まず、システムリセット用IC40の電圧入力端子40aと接地端子40bとの間に電圧Vbが印加される。そして、この電圧Vbが上述したリセット電圧Vrを越えた時点から遅延期間Tbが経過すると、定電圧ダイオード30の両端にツェナ電圧Vzが発生する。このように、遅延期間Tbという言わばリセット期間が設けられることによって、手動スイッチ32がオンされる際のチャタリングが防止される。そして、ツェナ電圧Vzは、定電圧ダイオード30の両端間に直列に接続されている2つの抵抗器52および50によって分圧される。これにより、当該2つの抵抗器52および50の相互接続点Qに、これら2つの抵抗器52および50による分圧比率に応じた電圧Vqが、発生する。なお、抵抗器52の抵抗値は抵抗器50の抵抗値の数十倍、例えば約20倍、とされている。つまり、これら2つの抵抗器52および50による分圧比率(抵抗器52の抵抗値:抵抗器50の抵抗値)は、約20:1とされている。そして、このような分圧比率に応じた電圧Vqが発生することによって、FET62のゲート端子−ソース端子間に当該FET62をオンさせるのに十分な電圧Vgsが印加される。この結果、FET62がオンし、つまり当該FET62のソース端子−ドレイン端子間が導通状態となる。
ここで、例えば負荷回路100が正常である、とする。この場合、入力端子12→大電力抵抗器64→FET62のソース端子−ドレイン端子間→出力端子14→負荷回路100という経路で、当該負荷回路100に定格の駆動電流Iaが供給される。そして、この定格の駆動電流Iaが供給されることによって、負荷回路100が駆動する。
また、このとき、大電力抵抗器64に駆動電流Iaが流れることによって、この駆動電流Iaに応じた電圧Vaが、当該大電力抵抗器64の両端間に発生する。そして、この電圧(つまり電圧降下)Vaが発生することによって、第2トランジスタ54のベース端子−エミッタ端子間に、当該電圧Vaに応じた電圧、換言すれば駆動電流Iaに応じた電圧Vbe、が発生する。なお、定格の駆動電流Iaが流れているときには、この第2トランジスタ54のベース端子−エミッタ端子間電圧Vbeは、当該第2トランジスタ64をオンさせるのに必要な電圧閾値Vfよりも、十分に低い。言い換えれば、そのような関係が成立するように、定格の駆動電流Iaに対して大電力抵抗器64の抵抗値が選定されている。
併せて、定電圧ダイオード30の両端間には、抵抗器52,56,58および38が直列に接続された状態にある。従って、この直列回路の途中にある接続点Pに、抵抗器52,56および58の合計抵抗値と、抵抗器38の抵抗値と、の比率に応じた電圧Vpが、発生する。なお、抵抗器52,56および58の合計抵抗値は、抵抗器38の抵抗値の数十倍、例えば約80倍とされている。そして、この比率に応じた電圧Vpが発生しているときは、上述したシステムリセット用IC40の電圧入力端子40aと接地端子40bとの間の電圧Vdは、リセット電圧Vrよりも高くなる。よって、当該システムリセット用IC40の電圧検出出力端子40cと接地端子40bとの間は開放された状態にある。
次いで、負荷回路100に短絡等の何らかの異常が生じ、これによって、駆動電流Iaが過大となり、つまり過電流が流れる、とする。厳密に言うと、駆動電流Iaが所定の電流閾値Ibを越える、とする。すると、第2トランジスタ54のベース端子−エミッタ端子間電圧Vaが、上述した電圧閾値Vf以上となり、これによって当該第2トランジスタ54がオンし、つまりエミッタ端子−コレクタ端子間が導通する。この結果、定電圧ダイオード30の両端間に、第2トランジスタのエミッタ端子−コレクタ端子間を介して、抵抗器56および50が直列に接続されることになる。なお、抵抗器56の抵抗値は、抵抗器50の抵抗値よりも小さく、例えば当該抵抗器50の抵抗値の約半分である。言い換えれば、抵抗器56の抵抗値は、第2トランジスタ54がオンすることによってこれと並列に接続されることになった上述の抵抗器52の抵抗値に比べて遥かに小さく、例えば当該抵抗器52の抵抗値の約40分の1である。従って、これらの抵抗器56,50および52の相互接続点Qにおける電圧Vqは、第2トランジスタ54がオンする前(つまり負荷回路100が正常なとき)よりも高くなる。そして、このように接続点Qにおける電圧Vqが高くなることによって、FET62のゲート端子−ソース端子間電圧Vgsが低くなり、当該FET62のソース端子−ドレイン端子間を流れる駆動電流Iaが或る電流値、詳しくはFET62が破壊しない程度の電流値Ic、に制限される。言い換えれば、駆動電流Iaが当該電流値Icに制限されるように、抵抗器56の抵抗値が選定されている。
また、第2トランジスタ54がオンすることによって、定電圧ダイオード30の両端間に、当該第2トランジスタ54のエミッタ端子−コレクタ端子間を介して、抵抗器58および38が直列に接続される。なお、抵抗器58の抵抗値は、抵抗器38の抵抗値よりも小さく、例えば当該抵抗器38の抵抗値の数分の1である。言い換えれば、抵抗器58の抵抗値は、第2トランジスタ54がオンする前にこれと直列に接続されていた抵抗器52および56の合計抵抗値に比べて遥かに小さく、例えば当該合計抵抗値の約400分の1である。従って、第2トランジスタ54がオンすることによって、定電圧ダイオード30の両端間に直列に接続されている抵抗器52,56,58および38のうち抵抗器52および56が言わばバイパスされた形となり、この結果、抵抗器58および38間の接続点Pにおける電圧Vpが、当該第2トランジスタ54がオンする前よりも高くなる。そして、このように接続点Pにおける電圧Vpが高くなることによって、システムリセット用IC40の電圧入力端子40aと接地端子40bとの間の電圧Vdが低くなり、リセット電圧Vr以下となる。これにより、システムリセット用IC40の電圧検出出力端子40cと接地端子40bとが短絡される。
このようにシステムリセット用IC40の電圧検出出力端子40cと接地端子40bとが短絡されると、当該電圧検出出力端子40cに抵抗器44を介してベース端子が接続されている第1トランジスタ46がオンし、つまり当該第1トランジスタ46のエミッタ端子−コレクタ端子間が導通する。これにより、定電圧ダイオード30の両端間に、当該第1トランジスタ46のエミッタ端子−コレクタ端子間を介して、抵抗器48および50が直列に接続される。なお、抵抗器48の抵抗値は、抵抗器50の抵抗値よりも小さく、例えば当該抵抗器50の抵抗値の十分の1である。言い換えれば、抵抗器48の抵抗値は、第1トランジスタ46がオンする直前に抵抗器50と直列に接続されていた抵抗器56の抵抗値よりもさらに小さく、詳しくは当該抵抗器56の抵抗値の約5分の1である。従って、この抵抗器48および50の相互接続点Qにおける電圧Vqは、第1トランジスタ46がオンする直前よりもさらに高くなる。そして、このように接続点Qにおける電圧Vqがさらに高くなることによって、FET62のゲート端子−ソース端子間電圧Vgsがさらに低くなり、この結果、当該FET62が完全にオフされ、つまりソース端子−ドレイン端子間が非道通となる。これにより、負荷回路100への駆動電流Iaの供給が停止され、過電流が遮断される。
なお、上述したように、第2トランジスタ54がオンすることによって、接続点Pにおける電圧Vpが上昇するが、当該第2トランジスタ54がオンしてから接続点Pにおける電圧Vpが上昇するまでには、詳しくは第2トランジスタ54がオンしてからシステムリセット用IC40の電圧検出出力端子40cと接地端子40bとが短絡されるまでには、接続点Pに接続されているコンデンサ36の容量と抵抗器58の抵抗値とによる時定数に応じた時間Taが掛かる。つまり、駆動電流Iaが上述した電流閾値Ibを超えたとしても、なお時間Taにわたって、当該駆動電流(即ち過電流)Iaが負荷回路100に供給され続ける。そして、この時間Ta、言わば負荷回路100への駆動電流Iaの供給状態が維持される維持期間Ta、が経過して初めて、システムリセット用IC40の電圧検出出力端子40cと接地端子40bとが短絡され、ひいてはFET62がオフされる。
このようにFET62がオフされる状態は、上述した遅延期間Tbにわたって維持される。具体的には、FET62がオフされることによって、負荷回路100への駆動電流Iaの供給が停止されるので、大電力抵抗器64の両端間の電圧Vaは略ゼロとなる。そして、この電圧Vaが略ゼロになることに伴い、第2トランジスタ54のベース端子−エミッタ端子間電圧Vbeが電圧閾値Vfよりも低くなり、これによって当該第2トランジスタ54がオフされる。さらに、この第2トランジスタ54がオフされることによって、接続点Pにおける電圧Vpが下がる。そして、コンデンサ36の容量と抵抗器38の抵抗値とによる時定数に応じた一定時間の経過後、システムリセット用IC40の電圧入力端子40aと接地端子40bとの間の電圧Vbがリセット電圧Vrを超え、この電圧Vbがリセット電圧Vrを超えた時点から遅延期間Tbが経過すると、システムリセット用IC40の電圧検出出力端子40cと接地端子40bとが開放される。これにより、第1トランジスタ46がオフされ、接続点Qにおける電圧Vqが、抵抗器52および50による分圧比率に応じた値となる。この結果、FET62がオンし、元の状態に復帰する。
なお、元の状態に復帰した時点で、例えば負荷回路100の異常が解消されている場合には、FET62のオン状態が維持される。一方、負荷回路100の異常が未だ解消されていない場合には、再び過電流が流れるので、上述した要領でFET62が再びオフされる。そして、このFET62が再びオフされるという動作は、負荷回路100の異常が解消されるまで、繰り返される。つまり、図4に示すように、FET62がオン状態となる(厳密には駆動電流Iaが電流閾値Ibを超える)維持期間Taと、当該FET62がオフ状態となる遅延期間Tbとが、交互に繰り返される。
ただし、このように維持期間Taと遅延期間Tbが交互に繰り返されることによって、換言すれば維持期間TaというFET62に過電流が流れる期間が遅延期間Tbという周期で到来することによって、当該FET62は、徐々に発熱する。従って、この維持期間Ta中に過電流が流れることによるFET62への熱的ストレスを軽減するべく、当該維持期間Taは、遅延期間Tb(=100[ms])に比べて遥かに短く、例えばTa=1[ms]とされている。また、上述の如く、維持期間Taにおいては、駆動電流Iaが或る電流値Icに制限されるので、当該熱的ストレスがさらに軽減される。
さらに、上述したように、FET62と第2トランジスタ54とは、互いに熱結合されている。従って、FET62が発熱すると、これに伴い、第2トランジスタ54の温度も上昇する。ここで、第2トランジスタ54として、温度上昇するに従って上述した電圧閾値Vfが低下するような特性を持つものを採用する、とする。例えば、シリコン製のトランジスタの場合、電圧閾値VfはVf=約0.6[V]であるが、温度上昇するに従って当該電圧閾値Vfが徐々に低下するものを、当該第2トランジスタ54として採用する。このようにすれば、FET62が発熱するに連れて、第2トランジスタ54の電圧閾値Vfが下がり、当該第2トランジスタ54がオンし易くなる。そして、このように第2トランジスタ54がオンし易くなることで、FET62がオフし易くなり、当該FET62に掛かる熱的ストレスがより一層軽減される。
以上のように、この実施形態によれば、負荷回路100に過電流が流れたときにこれを遮断する手段としてFET62を採用しているので、機械式リレーを採用するという上述した従来技術に比べて、過電流保護回路10全体の小型化を実現することができる。しかも、FET62は、高入力インピーダンス素子であるので、当該FET62を駆動するための電力を含め、過電流保護回路10全体の低消費電力化を図ることもできる。さらに、この実施形態では、負荷回路100に流れる駆動電力Iaを検出し、この検出結果に基づいてFET62をオン/オフしているので、過電流→異常発熱→抵抗値という変換過程を経てリレーを開閉するという従来技術に比べて、過電流が流れてから当該過電流が遮断されるまでの時間が遥かに短く、つまり応答性が良い。即ち、この実施形態によれば、応答性が良く、しかも低消費電力および小型の過電流保護回路10を提供することができる。
なお、この実施形態においては、半導体スイッチ回路18として、PチャネルMOS型FET62を採用したが、これに限らない。即ち、NチャネルMOS型FETを採用してもよいし、ジャンクション型FETを採用してもよい。また、バイポーラトランジスタ等の他の半導体スイッチ素子を採用してもよい。
そして、半導体スイッチ回路18の入力側に電流検出回路20を設けたが、半導体スイッチ回路18の出力側に当該電流検出回路20を設けてもよい。
また、特に、図2に示した回路構成は、この発明を実現するための一例であり、この発明を限定するものではない。例えば、システムリセット用IC40に代えて、別の回路素子も用いてもよいし、第1トランジスタ46および第2トランジスタ54として、NPN型のものを用いてもよい。そして、手動スイッチ32に代えて、例えばフォトカプラ等のいわゆる光スイッチ手段を採用してもよい。さらに、定電圧ダイオード30に代えて、3端子レギュレータ等の他の定電圧素子を採用してもよいし、主電源電圧Vccをそのまま過電流保護回路10の電源電圧として用いてもよい。なお、図2においては、実際には、ノイズ対策用のバイパスコンデンサ等の構成要素も設けられるが、これら本願発明に直接関係しない構成要素については、それらの記載を省略している。
そしてさらに、この実施形態では、入力端子12と出力端子14とを結ぶ電源ライン16をオン/オフする、いわゆるハイ(High)側をオン/オフする場合について説明したが、これとは反対に、接地電位側をオン/オフする、つまりロー(Low)側をオン/オフするようにしてもよい。この場合、例えば図2の構成から、第1トランジスタ46と、これに接続されている2つの抵抗器44および48とを排除することができ、過電流保護回路10全体の構成がさらに簡素化される。
なお、実施形態で説明した過電流保護回路10は、例えば通信機器や計測機器等の各種電子機器に適用することができる。