JP2008064010A - 可変圧縮比内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】シリンダボアを形成する壁面が変形することを防止することが可能な可変圧縮比内燃機関を提供すること。
【解決手段】この内燃機関10はケース側軸受形成部51とブロック側軸受形成部52と軸状駆動部53とからなる可変圧縮比機構50を備える。ケース側軸受形成部はクランクケース30の上部に形成されている。ブロック側軸受形成部はシリンダブロック20の外壁面20cの下端部にて外方に延出している。ブロック側軸受形成部は軸状駆動部によりケース側軸受形成部と連結される。シリンダブロックの下面20bにはブロック側軸受形成部とシリンダボア21との間の領域にて開口するスリット状の応力低減用溝部24が形成されている。これによりブロック側軸受形成部が外壁面を押しても(力F3)応力低減用溝部により応力が低減されるので、シリンダボアを形成する壁面の変形を抑制できる。
【選択図】図7

Description

本発明は、ピストンの移動に伴って変化する燃焼室の容積の最小値に対する最大値の比である圧縮比を変更可能な可変圧縮比内燃機関に関する。
従来から、クランクケースに対してシリンダブロックをシリンダボアの軸線(中心軸)方向(以下、単に「上下方向」ともいう。)に移動させることにより、圧縮比を変更する可変圧縮比内燃機関が提案されている。例えば、そのような可変圧縮比内燃機関の一つは、図15及び図16に示したように、シリンダブロック910と、シリンダブロック910の下方にてシリンダブロック910に対して上下方向に相対移動可能に配置されたクランクケース920と、可変圧縮比機構930と、を備えている。
シリンダブロック910には、直線状に配置された4つのシリンダボア911が形成されている。各シリンダボア911には、図17の(A)及び(B)に示したように、ピストン912が収容されている。ピストン912は、図15に示したクランク軸921に連結されている。クランク軸921は、クランクケース920により回転可能に支持されている。更に、この可変圧縮比内燃機関は、図17に示したように、シリンダヘッド940を備えている。シリンダヘッド940は、シリンダブロック910の上に固定されている。
可変圧縮比機構930は、ブロック側軸受形成部931と、ケース側軸受形成部932(932a,932b)と、軸状駆動部933と、を含んでいる。ブロック側軸受形成部931は、ブロック側受力部とも称呼される。ケース側軸受形成部932は、ケース側受力部とも称呼される。
ブロック側軸受形成部931は、シリンダブロック910の外壁面(側壁面)913のクランクケース920側の端部(シリンダブロック910の下端部)を含む領域にて外壁面913から外方に延出するように、外壁面913に固定されるようになっている。
ケース側軸受形成部932aは、クランクケース920の上部に形成されている。ケース側軸受形成部932bは、ケース側軸受形成部932aに固定されるようになっている。ケース側軸受形成部932a及びケース側軸受形成部932bは、図17の(B)に示したように、ケース側軸受形成部932を構成するようになっている。
軸状駆動部933は、複数の偏心カム部を備えていて、ブロック側軸受形成部931に形成された円柱状の軸受孔と、ケース側軸受形成部932a及びケース側軸受形成部932bからなるケース側軸受形成部932に形成された円柱状の軸受孔と、を通るように配設されている。そして、軸状駆動部933は、図17の(A)及び(B)に示したように、図示しない駆動装置により所定の軸回りに回転させられる。このとき、軸状駆動部933は、ブロック側軸受形成部931及びケース側軸受形成部932に形成された円柱状の軸受孔を形成する面に当接(係合)しながら回転し、ブロック側軸受形成部931の位置とケース側軸受形成部932の位置と、の間のシリンダボア911の中心軸(軸線)方向(上下方向)BCにおける距離Dを変更するようになっている。この距離Dが長くなるほど、シリンダブロック910とクランクケース920との間の距離が長くなるので、ピストン912が上死点にあるときの燃焼室の容積(燃焼室の容積の最小値)が大きくなる。従って、圧縮比は低くなる。このように、上記内燃機関によれば、圧縮比を変更することができる(例えば、特許文献1を参照。)。
特開2003−206771号公報
ところで、図18に示したように、シリンダボア911を形成する壁面とシリンダヘッド940の下面941とピストン912の頂面とにより形成される燃焼室にて混合ガスが燃焼すると、燃焼室内のガスの圧力は極めて高くなる。この圧力により、シリンダヘッド940の下面941は力F0aにて上方向に押され、ピストンの頂面は力F0bにて下方向に押される。これにより、シリンダヘッド940が固定されたシリンダブロック910には上方向に向かう力F1aが加えられ、一方、ピストン912に連結されたクランク軸921を支持するクランクケース920には下方向に向かう力F1bが加えられる。その結果、ブロック側軸受形成部931の軸受孔を形成する面のうちのクランクケース920側の部分は、軸状駆動部933による力F2を受けて下方向に押される。
上述したように、シリンダブロック910のシリンダヘッド940側の端部は、シリンダヘッド940に固定されているので剛性が高くなっている。一方、シリンダブロック910のクランクケース920側の端部は、クランクケース920に固定されていないので剛性が相対的に低くなっている。更に、上記力F2は、ブロック側軸受形成部931が固定されている外壁面913から外方に離れた位置にて作用しているので、シリンダブロック910の下端部を内方に曲げようとする力(曲げモーメント)としてシリンダブロック910に作用する。
換言すると、シリンダブロック910の外壁面913のうちのブロック側軸受形成部931が固定されている領域のクランクケース920側の端(ブロック外壁面下端)には、シリンダブロック910の内方へ向かう向き(押圧方向)の押圧力F3が加えられる。この押圧力F3により、シリンダボア911を形成する壁面が点線DFに示したようにシリンダボア911の内方に変形する。その結果、シリンダボア911を形成する壁面とピストン912との間の摩擦力が増大して燃費が悪化し、或いは、燃焼室内に流入する潤滑油の量が増大して潤滑油が無駄に消費されてしまうという恐れがあった。
本発明は上述した課題に対処するためになされたものであって、その目的は、シリンダボアを形成する壁面が変形することを防止することが可能な可変圧縮比内燃機関を提供することにある。
かかる目的を達成するため本発明による可変圧縮比内燃機関は、
所定のボア中心軸方向に貫通する円柱状の穴であるシリンダボアが形成されるとともに同シリンダボア内にピストンを収容するシリンダブロックと、前記シリンダボアの開口部分の一方を覆うように同シリンダブロックに固定されたシリンダヘッドと、前記シリンダブロックに対して前記シリンダヘッドと反対側に配置され且つ同シリンダブロックに対して前記ボア中心軸方向に相対移動可能であるとともに前記ピストンに連結されたクランク軸を回転可能に支持するクランクケースと、を備えるとともに、前記シリンダボアを形成するボア壁面と前記シリンダヘッドの前記シリンダブロック側の面であるヘッド下面と前記ピストンの同ヘッド下面側の面であるピストン頂面とにより形成される燃焼室の容積を変更する可変圧縮比機構を備えた可変圧縮比内燃機関である。
前記可変圧縮比機構は、前記シリンダブロックの外壁面から外方に延出したブロック側受力部と、同ブロック側受力部及び前記クランクケースのそれぞれと当接しながら同ブロック側受力部と同クランクケースとの間の前記ボア中心軸方向における距離を変更する連結部と、を含む。
更に、本発明に係る可変圧縮比内燃機関は、
前記ブロック側受力部が前記連結部により前記シリンダブロックから前記クランクケースへ向かう方向の力を受けることによって同ブロック側受力部が所定の押圧位置にて所定の押圧方向に前記外壁面を押圧することにより、同押圧位置を通る直線であって同押圧方向に平行な直線である押圧直線が前記ボア壁面と交わる位置にて同ボア壁面に発生する応力であるボア壁面応力を、同押圧位置にて同外壁面に発生する応力である外壁面応力よりも小さくする応力低減手段を備える。
即ち、本内燃機関においては、燃焼室にて混合ガスが燃焼することによりシリンダヘッドに対してシリンダブロックからシリンダヘッドへ向かう方向(上方向)の力が加えられるとともにピストンに対してピストンからクランク軸へ向かう方向(下方向)の力が加えられ、その結果、ブロック側受力部はクランクケースにより連結部を介して下方向に引っ張られる。その結果、ブロック側受力部がシリンダブロックの外壁面内の所定の押圧位置にて所定の押圧方向に外壁面を押圧する(上述した力F3を参照。)。これにより、シリンダブロック内に応力が発生する。この応力のうちの押圧位置を通る直線であって押圧方向に平行な直線がボア壁面と交わる位置にてボア壁面に発生する応力(ボア壁面応力)は、応力低減手段によって、押圧位置にて外壁面に発生する応力(外壁面応力)よりも小さくされる。
従って、応力低減手段を備えない場合と比較して、上記応力によりボア壁面が変形する程度を小さくすることができる。この結果、ボア壁面とピストンとの間の摩擦力が過大にならないので燃費が悪化することを防止することができるとともに、燃焼室内に流入する潤滑油の量が過大とならないので潤滑油が無駄に消費されることを防止することができる。
この場合、前記応力低減手段は、前記シリンダブロックの前記クランクケース側の面内の位置であって同面を前記ボア中心軸方向から見た場合における前記ブロック側受力部と前記ボア壁面との間の位置に開口するように同シリンダブロックに形成されたスリット状の溝部からなることが好適である。
これによれば、上述したようにブロック側受力部がシリンダブロックの外壁面を押圧すると、シリンダブロックのうちの溝部よりも外壁面側の部分(外壁面側部分)にて外壁面応力と略同じ大きさの応力が発生し、この外壁面側部分が変形する。これにより、外壁面側部分は、ブロック側受力部が外壁面を押圧する力(押圧力)に抗する力を発生する。その結果、溝部よりもボア壁面側の部分(ボア壁面側部分)に伝わる応力は外壁面応力よりも小さくなる。これにより、上記ボア壁面応力は、上記溝部が形成されていない場合と比較して小さくなる。この結果、ボア壁面応力によりボア壁面が変形する程度を小さくすることができる。
一方、前記シリンダブロックが、前記ボア壁面を構成する内壁面を有する中空円筒状のシリンダライナを含む場合、
前記応力低減手段は、前記シリンダブロックのうちの前記シリンダライナを除く部分よりも高い剛性を有するとともに、前記押圧直線上の位置であって前記ブロック側受力部と前記シリンダライナとの間の位置を通るように且つ同シリンダライナの周囲を前記ボア中心軸回りに取り囲むように同シリンダブロックに配設された補強部材により構成されていてもよい。
これによれば、上述したようにブロック側受力部がシリンダブロックの外壁面を押圧すると、シリンダブロックのうちの補強部材よりも外壁面側の部分(外壁面側部分)にて外壁面応力と略同じ大きさの応力が発生する。このとき、補強部材の剛性がシリンダブロックの剛性よりも高いので、この補強部材の剛性により、補強部材よりもボア壁面側の部分(ボア壁面側部分)に伝わる応力は外壁面応力よりも小さくなる。これにより、上記ボア壁面応力は、上記補強部材が配設されていない場合と比較して小さくなる。この結果、ボア壁面応力によりボア壁面(シリンダライナ)が変形する程度を小さくすることができる。
また、本発明による他の可変圧縮比内燃機関は、上述した可変圧縮比機構を有する可変圧縮比内燃機関であって、
前記シリンダブロックは、前記ボア壁面の前記クランクケース側の端であるボア壁面下端の位置が、前記ブロック側受力部が延出する前記シリンダブロックの外壁面の同クランクケース側の端であるブロック外壁面下端の位置と同じ位置、又は、同ブロック外壁面下端の位置よりも前記シリンダヘッド側の位置、となるように構成される。
これによれば、ボア壁面のクランクケース側の端(ボア壁面下端)の位置は、ブロック側受力部が延出するシリンダブロックの外壁面のクランクケース側の端(ブロック外壁面下端)の位置と同じ位置、又は、ブロック外壁面下端の位置よりもシリンダヘッド側の位置、となる。従って、上記押圧力により、シリンダブロックのクランクケース側の端部(ブロック下端部)のうちのボア壁面を含む部分がシリンダブロックの内方に曲げられたとき、ボア壁面下端がシリンダボアの内方に移動させられる距離を、ボア壁面下端がブロック外壁面下端よりもクランクケース側に位置している場合よりも短くすることができる。この結果、上記押圧力によりボア壁面が変形する程度を小さくすることができる。
一方、本発明による他の可変圧縮比内燃機関は、
所定のボア中心軸方向に貫通する円柱状の穴であるシリンダボアが同ボア中心軸方向と直交するシリンダ配列方向にて直線状に配置されるように複数形成されるとともに同各シリンダボア内にピストンを収容するシリンダブロックと、前記シリンダボアの開口部分の一方を覆うように同シリンダブロックに固定されたシリンダヘッドと、前記シリンダブロックに対して前記シリンダヘッドと反対側に配置され且つ同シリンダブロックに対して前記ボア中心軸方向に相対移動可能であるとともに前記ピストンに連結されたクランク軸を回転可能に支持するクランクケースと、を備えるとともに、前記シリンダボアを形成するボア壁面と前記シリンダヘッドの前記シリンダブロック側の面であるヘッド下面と前記ピストンの同ヘッド下面側の面であるピストン頂面とにより形成される燃焼室の容積を変更する可変圧縮比機構を備えた可変圧縮比内燃機関である。
前記可変圧縮比機構は、前記シリンダ配列方向と直交する平面であって前記シリンダボアの中心軸を通る平面と前記シリンダブロックの外壁面との交線の一部を含む領域にて同外壁面から外方に延出したブロック側受力部と、同ブロック側受力部及び前記クランクケースのそれぞれと当接するとともに同ブロック側受力部と同クランクケースとの間の前記ボア中心軸方向における距離を変更する連結部と、を含む。
前記シリンダブロックは、前記シリンダ配列方向と直交する平面にて前記シリンダブロックを切断した断面における同シリンダ配列方向及び前記ボア中心軸方向を含むボア中心軸配列平面と前記シリンダブロックの外壁面との間の距離が、同シリンダ配列方向と直交する平面であって前記ブロック側受力部を通る平面にて同シリンダブロックを切断した断面における同ボア中心軸配列平面と同ブロック側受力部が延出している位置における同外壁面との間の距離よりも短くなっている部分を含むように構成される。
即ち、このシリンダブロックは、ブロック側受力部が延出している部分を含む肉厚部とその他の部分からなる肉薄部とを有している。その結果、ブロック側受力部が延出している位置の剛性が他の位置の剛性よりも高くなっている。従って、上記押圧力が加えられても、シリンダブロックは変形しにくい。即ち、シリンダブロックの重量が増加することを抑制しつつ上記押圧力によりボア壁面が変形する程度を小さくすることができる。
<第1実施形態>
以下、本発明による可変圧縮比内燃機関の各実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示したように、この可変圧縮比内燃機関10は、シリンダブロック20と、クランクケース30と、を備えている。
<<シリンダブロック>>
シリンダブロック20は、アルミニウムからなる。シリンダブロック20は、図1乃至図3に示したように、短辺及び長辺を有する略長方形状の上面20a及び下面20bと長辺方向に平行な側面(本明細書においては、「外壁面」とも称呼される。)20cとを有する略直方体状である。以下、本明細書においては、シリンダブロック20の上面20aから下面20bへ向かう方向を下方向と称呼し、シリンダブロック20の下面20bから上面20aへ向かう方向を上方向と称呼する。
シリンダブロック20には、上面20a及び下面20bと直交する方向(即ち、上下方向、なお、ボア中心軸方向とも呼ぶ。)に貫通した円柱状の貫通穴が4つ形成されている。これらの貫通穴は、シリンダブロック20の長辺方向(シリンダ配列方向)にて直線状に配置されている。各貫通穴には、貫通穴と同径の外径を有する中空円筒状のシリンダライナ20dが同軸に配設されている(圧入されている又は鋳込まれている)。
シリンダライナ20dは、鋳鉄からなる。シリンダライナ20dの内壁面が形成する円柱状の空間は、シリンダボア21と称呼される。シリンダライナ20dの下端(クランクケース30側の端)は、シリンダブロック20の下面20bを含む平面に含まれている。即ち、シリンダライナ20dの内壁面(シリンダボア21を形成する壁面、即ち、ボア壁面)の下端(ボア壁面下端)の上下方向における位置は、シリンダブロック20の外壁面20cの下端(ブロック外壁面下端)の上下方向における位置と同じ位置となっている。
ボア壁面には、クランクケース30の下部に取り付けられた図示しないオイルパン内の潤滑油が供給されるようになっている。
図1に示したシリンダボア21の中心軸(ボア中心軸)BCを通る4−4線を含むとともにシリンダ配列方向に直交する平面にて可変圧縮比内燃機関10を切断した断面図である図4に示したように、各シリンダボア21内には、円柱状のピストン22が1つずつ収容されている。各ピストン22の側面には、ボア壁面の余分な潤滑油を掻き落とすためのピストンリングが配設されている。
シリンダブロック20には、冷却水を流すための冷却水用通路23が形成されている。冷却水用通路23は、シリンダライナ20dの周囲に配置された溝であって、シリンダブロック20の上面20aに開口している。
<<クランクケース>>
図1に示したように、クランクケース30は、クランク軸31を回転可能に支持するとともにクランク軸31を収容している。クランクケース30は、クランク軸31の軸線方向がシリンダ配列方向と一致するようにシリンダブロック20の下方に配置されている。クランク軸31には、図4に示したコンロッド32を介して各ピストン22が連結されている。このような構成により、各ピストン22の往復動がクランク軸31の回転運動に変換される。
<<シリンダヘッド>>
更に、可変圧縮比内燃機関10は、図4及び図1に示したシリンダボア21とシリンダボア21との間を通る5−5線を含むとともにシリンダ配列方向に直交する平面にて可変圧縮比内燃機関10を切断した断面図である図5に示したように、シリンダヘッド40を備えている。シリンダヘッド40は、シリンダブロック20に対して移動しないようにシリンダブロック20の上面20a(即ち、シリンダブロック20に対してクランクケース30と反対側)に固定されている。
図4に示したように、シリンダヘッド40には、シリンダヘッド40のシリンダブロック20側の面(ヘッド下面)40aに開口するとともにシリンダボア21のそれぞれに1つずつ対応する複数の凹部40a1が形成されている。各凹部40a1は、シリンダヘッド40がシリンダブロック20に固定された状態において、同各凹部40a1に対応する1つのシリンダボア21を形成する壁面(ボア壁面)に連接するようになっている。即ち、シリンダヘッド40は、シリンダボア21の開口部分の一方(上側)を覆うようにシリンダブロック20に固定される。ヘッド下面40aの凹部40a1と、ボア壁面と、ピストン22のシリンダヘッド40側の面(ピストン頂面)と、はシリンダボア21毎(気筒毎)に燃焼室41を形成している。
シリンダヘッド40には、図4に示したように、燃焼室41に連通する吸気ポート42と、燃焼室41に連通する排気ポート43と、が気筒毎に形成されている。シリンダヘッド40には、吸気ポート42を開閉する吸気弁42aと、排気ポート43を開閉する排気弁43aと、燃焼室41にて火花を発生する点火プラグ44と、が気筒毎に配設されている。
加えて、可変圧縮比内燃機関10は、図示しない燃料噴射手段を備えていて、燃料噴射手段により燃料を噴射させることにより、燃料と空気とが含まれる混合ガスを吸気ポート42を経由して燃焼室41に供給するようになっている。
<<可変圧縮比機構>>
更に、可変圧縮比内燃機関10は、図1乃至図5に示したように、可変圧縮比機構50を備える。可変圧縮比機構50は、シリンダブロック20の両側面(外壁面)20cのそれぞれの近傍に1つずつ設けられた機構である。一方の側面(外壁面)20cの可変圧縮比機構50と、他方の側面20cの可変圧縮比機構50と、はすべての気筒のボア中心軸BCを含むボア中心軸配列平面に関して対称となっている。従って、一方の側面20cの可変圧縮比機構50についてのみ説明する。
可変圧縮比機構50は、図1に示したように、ケース側軸受形成部51と、ブロック側軸受形成部52と、軸状駆動部53と、を含む。なお、ケース側軸受形成部51は、ケース側受力部とも称呼される。また、ブロック側軸受形成部52は、ブロック側受力部とも称呼される。更に、軸状駆動部53は、連結部を構成している。
<ケース側軸受形成部>
ケース側軸受形成部51は、平板状の縦壁部51aと、複数のキャップ部51bと、からなる。
縦壁部51aは、クランクケース30の上部側壁を構成している。縦壁部51aは、シリンダブロック20がクランクケース30の上に配設された状態において、シリンダブロック20の側面(外壁面)20cと対向して外壁面20cの一部を覆うようになっている。
縦壁部51aには、厚さ方向に貫通するとともに、シリンダブロック20がクランクケース30の上に配設された状態においてシリンダボア21のそれぞれに1つずつ対応する複数(本例では、4つ)の貫通孔51a1が形成されている。各貫通孔51a1は、対応する1つのシリンダボア21の中心軸(ボア中心軸)BCを含む平面であってシリンダ配列方向と直交する平面と、縦壁部51aと、が交わる位置を含む領域に配置されている。縦壁部51aに形成された貫通孔51a1と貫通孔51a1との間の位置には、外方に向けて開口した凹部であってシリンダ配列方向に直交する平面により縦壁部51aを切断した断面において半円形状を有する凹部51a2が形成されている。各凹部51a2の半円形の中心は、同軸に配置されている。
キャップ部51bは、縦壁部51aの凹部51a2のそれぞれに1つずつ対応している。各キャップ部51bは、縦壁部51aの対応する1つの凹部51a2を覆うように縦壁部51aに固定されるようになっている。各キャップ部51bには、同キャップ部51bが縦壁部51aに固定された状態において、縦壁部51aに向けて開口した凹部であってシリンダ配列方向に直交する平面により同キャップ部51bを切断した断面において半円形状を有する凹部51b1が形成されている。凹部51b1の半円形の径は、凹部51a2の半円形の径と同径である。
このような構成により、ケース側軸受形成部51は、キャップ部51bが縦壁部51aに固定された状態において、縦壁部51aの凹部51a2とキャップ部51bの凹部51b1とにより、シリンダ配列方向に貫通するとともに同軸に配列された複数の円柱状の軸受孔51cを形成している。
<ブロック側軸受形成部>
ブロック側軸受形成部52は、縦壁部51aの貫通孔51a1のそれぞれに1つずつ対応する複数(本例では、4つ)の部材からなる。各ブロック側軸受形成部52は、縦壁部51aの貫通孔51a1に挿入された状態にてシリンダブロック20の外壁面20cの下端部に固定されている。即ち、各ブロック側軸受形成部52は、シリンダブロック20の外壁面20cから外方に延出するとともに、対応する1つのシリンダボア21の中心軸を含む平面であってシリンダ配列方向に直交する平面とシリンダブロック20の外壁面20cとの交線の一部を含む領域に配置されている。
ブロック側軸受形成部52の上下方向の長さは、縦壁部51aの貫通孔51a1の上下方向の長さよりも短い。このような構成により、ブロック側軸受形成部52は、縦壁部51aの貫通孔51a1内を上下方向に移動可能になっている。即ち、クランクケース30は、シリンダブロック20に対して上下方向(ボア中心軸方向)に相対移動可能になっている。
各ブロック側軸受形成部52には、シリンダ配列方向に貫通した円柱状の軸受孔52aが形成されている。各軸受孔52aは、同軸に配置されている。各軸受孔52aの径は、軸受孔51cの径よりも大きい径である。
<軸状駆動部>
軸状駆動部53は、図1、図4及び図5に示したように、棒状の偏心軸部53aと、ケース側軸受形成部51の軸受孔51cのそれぞれに1つずつ対応する複数の固定カム部53bと、ブロック側軸受形成部52の軸受孔52aのそれぞれに1つずつ対応する複数の可動カム部53cと、ウォームギヤ53dと、を備える。
各固定カム部53bは、ケース側軸受形成部51の軸受孔51cと略同径の円柱状の部材である。各固定カム部53bの軸線方向の長さは、ケース側軸受形成部51の対応する1つの軸受孔51cの軸線方向の長さと略同じ長さである。各固定カム部53bには、その中心軸から偏った(偏心した)位置にて軸線方向に貫通した貫通孔であって偏心軸部53aと略同径の円柱状の貫通孔が形成されている。
各可動カム部53cは、ブロック側軸受形成部52の軸受孔52aと略同径の円柱状の部材である。各可動カム部53cの軸線方向の長さは、ブロック側軸受形成部52の対応する1つの軸受孔52aの軸線方向の長さと略同じ長さである。各可動カム部53cには、偏心した位置にて軸線方向に貫通した貫通孔であって偏心軸部53aと略同径の円柱状の貫通孔が形成されている。
固定カム部53b及び可動カム部53cは、固定カム部53bと可動カム部53cとを一つずつ交互に配置するとともに固定カム部53bの貫通孔と可動カム部53cの貫通孔とを同軸に配置し、且つ、それぞれの貫通孔に偏心軸部53aを通した状態にて、偏心軸部53aに取り付けられている。固定カム部53b及び偏心軸部53aには、図示しないネジ孔が形成されている。固定カム部53b及び偏心軸部53aは、各固定カム部53bが偏心軸部53aに対して回転しないように、且つ、すべての固定カム部53bが同軸に配置されるように、前述のネジ孔を挿通する図示しないネジにより固定されている。一方、可動カム部53cは、偏心軸部53aに対して回転可能になっている。
ウォームギヤ53dは、偏心軸部53aに対して回転しないように、且つ、固定カム部53bと同軸となるように、固定カム部53bに固定されている。ウォームギヤ53dは、図示しないモータの出力部と噛み合うことにより、回転駆動されるようになっている。
軸状駆動部53は、各固定カム部53bがケース側軸受形成部51の対応する1つの軸受孔51cに収容されるとともに同軸受孔51cを形成する壁面と当接しながら同軸受孔51c内にて回転可能となるように、且つ、各可動カム部53cがブロック側軸受形成部52の対応する1つの軸受孔52aに収容されるとともに同軸受孔52aを形成する壁面と当接しながら同軸受孔52a内にて回転可能となるように、ケース側軸受形成部51及びブロック側軸受形成部52により支持されている。
<可変圧縮比機構の作動原理>
ここで、ウォームギヤ53dの回転に伴う圧縮比の変化について図6を参照しながら説明を加える。
図6の(A)に示したように、偏心軸部53aの中心軸が固定カム部53bの中心軸FCの真下の位置にある場合、即ち、偏心軸部53aの中心軸が固定カム部53bの中心軸FCに対して最も下方に位置している場合、偏心軸部53aの中心軸、固定カム部53bの中心軸FC及び可動カム部53cの中心軸MCがこの順に同一直線上に並び、固定カム部53bの中心軸FCと可動カム部53cの中心軸MCとの間の上下方向における距離は最短となっている。従って、クランクケース30とシリンダブロック20との間の上下方向における距離も最短となるので、圧縮比は最高となる。
この状態において、図6の(A)における右側のウォームギヤ53dが反時計方向(矢印Aの方向)に、且つ、左側のウォームギヤ53dが時計方向(矢印Bの方向)に回転駆動されると、右側の偏心軸部53aの中心軸が固定カム部53bの中心軸FC回りに反時計方向に移動するとともに、左側の偏心軸部53aの中心軸が固定カム部53bの中心軸FC回りに時計方向に移動する。このとき、シリンダブロック20の剛性によりすべての可動カム部53cは、左右方向に移動できない。
従って、右側の可動カム部53cは、ブロック側軸受形成部52の軸受孔52aを形成する壁面に当接しながら軸受孔52a内を反時計方向に回転して、ブロック側軸受形成部52を押し上げる。更に、左側の可動カム部53cは、ブロック側軸受形成部52の軸受孔52aを形成する壁面に当接しながら軸受孔52a内を時計方向に回転して、ブロック側軸受形成部52を押し上げる。そして、ウォームギヤ53dの回転駆動が継続されることにより、可変圧縮比機構50の状態は、図6の(B)に示したように、偏心軸部53aの中心軸と固定カム部53bの中心軸FCとが左右方向に並んだ状態に至る。
図6の(B)に示した状態においては、固定カム部53bの中心軸FCと可動カム部53cの中心軸MCとの間の上下方向における距離は、(A)に示した場合よりも長くなる。従って、圧縮比は(A)に示した場合よりも低くなる。
更に、ウォームギヤ53dの回転駆動を継続することにより、右側の偏心軸部53aの中心軸が固定カム部53bの中心軸FC回りに反時計方向に移動するとともに、左側の偏心軸部53aの中心軸が固定カム部53bの中心軸FC回りに時計方向に移動する。これにより、右側の可動カム部53cは、ブロック側軸受形成部52の軸受孔52aを形成する壁面に当接しながら軸受孔52a内を時計方向に回転して、ブロック側軸受形成部52を押し上げる。更に、左側の可動カム部53cは、ブロック側軸受形成部52の軸受孔52aを形成する壁面に当接しながら軸受孔52a内を反時計方向に回転して、ブロック側軸受形成部52を押し上げる。そして、可変圧縮比機構50の状態は、図6の(C)に示した状態に至る。
図6の(C)に示した状態においては、固定カム部53bの中心軸FC、偏心軸部53aの中心軸及び可動カム部53cの中心軸MCがこの順に同一直線上に並び、固定カム部53bの中心軸FCと可動カム部53cの中心軸MCとの間の上下方向における距離は、最長となる(即ち、図6の(A)に示した状態及び図6の(B)に示した状態よりも長くなる。)。従って、クランクケース30とシリンダブロック20との間の上下方向における距離も最長となるので、圧縮比は最低となる。
このように、右側のウォームギヤ53dが反時計方向に回転するとともに左側のウォームギヤ53dが時計方向に回転するにつれて(可変圧縮比機構50の状態が(A)に示した状態から(C)に示した状態へ向かうにつれて)、圧縮比は低くなる。
一方、ウォームギヤ53dの回転方向を上述した場合と逆方向にすると、上述した場合と逆に、ウォームギヤ53dの回転に伴って圧縮比は増大する。即ち、(C)に示した状態において、右側のウォームギヤ53dが時計方向に、且つ、左側のウォームギヤ53dが反時計方向に回転駆動されると、右側の偏心軸部53aの中心軸が固定カム部53bの中心軸FC回りに時計方向に移動するとともに、左側の偏心軸部53aの中心軸が固定カム部53bの中心軸FC回りに反時計方向に移動する。
従って、右側の可動カム部53cは、ブロック側軸受形成部52の軸受孔52aを形成する壁面に当接しながら軸受孔52a内を反時計方向に回転して、ブロック側軸受形成部52を押し下げる。更に、左側の可動カム部53cは、ブロック側軸受形成部52の軸受孔52aを形成する壁面に当接しながら軸受孔52a内を時計方向に回転して、ブロック側軸受形成部52を押し下げる。
従って、ウォームギヤ53dの回転駆動を継続することにより、可変圧縮比機構50の状態は、(B)に示した状態に至り、更に継続すると、(A)に示した状態に至る。
このように、右側のウォームギヤ53dが時計方向に回転するとともに左側のウォームギヤ53dが反時計方向に回転するにつれて(可変圧縮比機構50の状態が(C)に示した状態から(A)に示した状態へ向かうにつれて)、クランクケース30とシリンダブロック20との間の上下方向における距離が短くなるので、圧縮比は高くなる。
このようにして、ウォームギヤ53dを回転駆動することにより上下方向(ボア中心軸方向)におけるクランクケース30とシリンダブロック20との間の距離が変更されることによって、可変圧縮比内燃機関10の圧縮比が変更される。
<スリット状溝部>
更に、図3及び図4に示したように、シリンダブロック20には、応力低減手段としてのスリット状の応力低減用溝部24がブロック側軸受形成部52のそれぞれに1つずつ対応するように複数形成されている。各応力低減用溝部24は、シリンダブロック20の下面20b内の位置であって、下面20bをボア中心軸方向から見た場合における、同各応力低減用溝部24に対応する1つのブロック側軸受形成部52と、そのブロック側軸受形成部52と最も近い位置に配置されたシリンダボア21を形成するボア壁面と、の間の位置(領域)にて開口している。各応力低減用溝部24の開口部の形状は、ブロック側軸受形成部52のシリンダ配列方向における長さよりも僅かに長い長辺とその長辺に直交する極めて短い短辺とを有する細長い長方形状である。
各応力低減用溝部24の深さは、図4に示したように、ブロック側軸受形成部52の上下方向における長さの半分よりも僅かに長い深さである。
<作用>
上記のように構成された第1実施形態に係る可変圧縮比内燃機関10においては、燃焼室41内に形成された混合ガスが燃焼すると、燃焼室41内のガスの圧力は極めて高くなる。この圧力により、図7に示したように、ヘッド下面40aは力F0aにて上方向に押され、ピストン22の頂面は力F0bにて下方向に押される。これにより、シリンダヘッド40が固定されたシリンダブロック20には上方向に向かう力F1aが加えられ、一方、ピストン22に連結されたクランク軸31を支持するクランクケース30には下方向に向かう力F1bが加えられる。その結果、ブロック側軸受形成部52の軸受孔52aを形成する壁面のうちのクランクケース30側の部分は、軸状駆動部53による力F2を受けて下方向に押される。
この力F2は、ブロック側軸受形成部52が固定されている外壁面20cから外方に離れた位置にて作用しているので、シリンダブロック20の下端部をシリンダブロック20の内方に曲げようとする力(曲げモーメント)としてシリンダブロック20に作用する。換言すると、シリンダブロック20の外壁面20cのうちのブロック側軸受形成部52が固定されている領域のクランクケース30側の端(ブロック外壁面下端、押圧位置)には、シリンダブロック20の内方へ向かう向き(押圧方向)の押圧力F3が加えられる。即ち、ブロック側軸受形成部(ブロック側受力部)52がシリンダブロック20の外壁面20c内の下端部にて押圧方向に外壁面20cを押圧する。
これにより、上記押圧位置にて外壁面20cに発生する応力(外壁面応力)と略同じ大きさの応力がシリンダブロック20のうちの応力低減用溝部24よりも外壁面20c側の部分(外壁面側部分)にて発生し、この外壁面側部分は、点線DFにて示したように、変形する。これにより、外壁面側部分は、ブロック側軸受形成部52が外壁面20cを押圧する力(押圧力)F3に抗する力を発生する。
その結果、応力低減用溝部24よりもボア壁面側の部分(ボア壁面側部分)に伝わる応力は外壁面応力よりも小さくなる。これにより、上記押圧力F3によってシリンダブロック20内に発生する応力のうちの押圧位置を通る直線であって押圧方向に平行な直線である押圧直線がボア壁面と交わる位置にてボア壁面に発生する応力(ボア壁面応力)は、応力低減用溝部24が形成されていない場合と比較して小さくなる。この結果、ボア壁面応力によりボア壁面が変形する程度を小さくすることができる。
この結果、ボア壁面とピストン22との間の摩擦力が過大にならないので燃費が悪化することを防止することができるとともに、ピストンリングにより余分な潤滑油を確実に掻き落とすことができるので燃焼室41内に流入する潤滑油の量が過大となることを防止でき潤滑油が無駄に消費されることを防止することができる。
また、第1実施形態に係る可変圧縮比内燃機関10によれば、ボア壁面のクランクケース30側の端(ボア壁面下端)の上下方向における位置が、ブロック側軸受形成部52が延出するシリンダブロック20の外壁面20cのクランクケース30側の端(ブロック外壁面下端)の上下方向における位置と同じ位置となっている。従って、上記押圧力F3が極めて大きい場合において、シリンダブロック20のクランクケース30側の端部(ブロック下端部)のうちのボア壁面側部分がシリンダブロック20の内方に曲げられたとしても、ボア壁面下端がシリンダブロック20の内方に移動させられる距離を、ボア壁面下端がブロック外壁面下端よりもクランクケース30側に位置している場合よりも短くすることができる。この結果、上記押圧力F3によりボア壁面が変形する程度を小さくすることができる。
<第1実施形態の変形例>
上記第1実施形態においては、応力低減用溝部は、シリンダブロック20のうちのシリンダライナ20dから離れた位置に形成されていたが、シリンダライナ20dに隣接するように形成されていてもよい。
この場合、例えば、シリンダブロック20の下面20bの正面視である図8及び図8の9−9線を含むとともにシリンダ配列方向に直交する平面にてシリンダブロック20を切断した断面図である図9に示したように、シリンダブロック20の貫通穴を形成する壁面の下端部には、すべての気筒のボア中心軸BCを含むボア中心軸配列平面P1から同壁面までのボア中心軸配列平面P1と直交する方向における距離L1が同壁面の上端部における同距離L2よりも長くされた幅広部分61が形成されている。
この幅広部分61は、上記第1実施形態に係るシリンダブロック20に形成された円柱状の貫通穴と同じ貫通穴がシリンダブロック20に形成された状態において、ボア中心軸BCからボア中心軸配列平面P1と直交する方向に所定の距離だけ離れた直線であってボア中心軸BCに平行な直線BC1,BC1を中心軸とする円柱状の穴を形成するようにその貫通穴を形成する壁面を削ることによって、容易に形成することができる。
この幅広部分61とシリンダライナ20dの外壁面とにより、応力低減用溝部24−1が形成される。即ち、このような構成によれば、応力低減用溝部24−1を容易に形成することができる。
また、応力低減用溝部は、シリンダライナ20dを取り囲むように設けられていてもよい。この場合、例えば、シリンダブロック20の下面20bの正面視である図10に示したように、シリンダブロック20の貫通穴を形成する壁面の下端部は、同壁面の上端部の径よりも大きい径を有する大径部分62を構成している。
この大径部分62は、上記第1実施形態に係るシリンダブロック20に形成された円柱状の貫通穴と同じ貫通穴がシリンダブロック20に形成された状態において、ボア中心軸BCと同軸であり且つその貫通穴の径よりも大径の円柱状の穴を形成するようにその貫通穴を形成する壁面を削ることによって、容易に形成することができる。
この大径部分62とシリンダライナ20dの外壁面とにより、応力低減用溝部24−2が形成される。即ち、このような構成によれば、応力低減用溝部24−2を容易に形成することができる。
また、上記第1実施形態及びその変形例における応力低減用溝部には、ゴム等の弾性体を充填してもよい。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る可変圧縮比内燃機関について説明する。第2実施形態に係る可変圧縮比内燃機関は、応力低減用溝部24に代わる応力低減手段としての補強部材を備える点のみにおいて上記第1実施形態に係る可変圧縮比内燃機関10と相違している。以下、かかる相違点を中心として説明する。
この可変圧縮比内燃機関10のシリンダブロック20は、シリンダブロック20の下面20bの正面視である図11及び図11の12−12線を含むとともにシリンダ配列方向に直交する平面にてシリンダブロック20を切断した断面図である図12に示したように、シリンダブロック20に形成された複数の貫通穴のそれぞれを形成する壁面の下端部に、同壁面の上端部の径よりも大きい径を有する大径部分63を有している。
大径部分63の上下方向(ボア中心軸方向)における長さは、ブロック側軸受形成部52の上下方向における長さの略1/3の長さである。なお、大径部分63の上下方向における長さは、ブロック側軸受形成部52の上下方向における長さの1/4程度の長さからブロック側軸受形成部52の上下方向における長さの全長までの長さであってもよく、更に、同全長よりも長くてもよい。
大径部分63とシリンダライナ20dの外壁面とにより形成される空間には、この空間と同じ形状を有する補強部材64が圧入されている。即ち、補強部材64は、上記押圧直線上の位置であってブロック側軸受形成部52とシリンダライナ20dとの間の位置を通るように且つシリンダライナ20dの周囲をボア中心軸BC回りに取り囲むようにシリンダブロック20に配設されている。加えて、補強部材64は、シリンダブロック20のうちのシリンダライナ20dを除く部分(本例では、アルミニウムからなる部分)の剛性よりも高い剛性を有する材料(本例では、鋼鉄であって、鋳鉄等であってもよい)からなる。
上記のように構成された第2実施形態に係る可変圧縮比内燃機関10によれば、上述したようにブロック側軸受形成部52がシリンダブロック20の外壁面20cを押圧すると、シリンダブロック20のうちの補強部材64よりも外壁面20c側の部分(外壁面側部分)にて上記外壁面応力と略同じ大きさの応力が発生する。このとき、補強部材64の剛性がシリンダブロック20の剛性よりも高いので、この補強部材64の剛性により、補強部材64よりもボア壁面側の部分(ボア壁面側部分、即ち、シリンダライナ20d)に伝わる応力は外壁面応力よりも小さくなる。これにより、上記ボア壁面応力は、補強部材64が配設されていない場合と比較して小さくなる。この結果、ボア壁面応力によりボア壁面が変形する程度を小さくすることができる。
なお、上記第2実施形態は、更に、上述した第1実施形態が備える応力低減用溝部24を備えていてもよい。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る可変圧縮比内燃機関について説明する。第3実施形態に係る可変圧縮比内燃機関は、応力低減用溝部24が形成されていない点及びシリンダブロックが肉厚部と肉薄部とを有している点のみにおいて上記第1実施形態に係る可変圧縮比内燃機関10と相違している。以下、かかる相違点を中心として説明する。
この可変圧縮比内燃機関10のシリンダブロック20の外壁面20cには、シリンダブロック20の下面20bの正面視である図13及び図13の14−14線を含むとともにシリンダ配列方向に直交する平面にてシリンダブロック20を切断した断面図である図14に示したように、シリンダボア21のそれぞれに対応する複数の凸部65が形成されている。
各凸部65の頂面は、外壁面20cのうちの凸部65が形成されていない部分と平行な平面である。各凸部65は、同各凸部65に対応する1つのシリンダボア21の中心軸BCを含む平面であってシリンダ配列方向に直交する平面の一部と同各凸部65の頂面が交わるように且つ外壁面20cの下端部に位置している。各凸部65の頂面には、ブロック側軸受形成部52が固定されるようになっている。
即ち、各ブロック側軸受形成部52は、シリンダブロック20の外壁面20c(の凸部65の頂面)から外方に延出するとともに、同各ブロック側軸受形成部52に対応する1つのシリンダボア21の中心軸BCを含む平面であってシリンダ配列方向に直交する平面とシリンダブロック20の外壁面20cとの交線CLの一部を含む領域に配置されている。
このような構成により、図13に示したように、シリンダ配列方向と直交する平面であって外壁面20cのうちの凸部65が形成されていない部分を通る平面にてシリンダブロック20を切断した断面におけるシリンダ配列方向及びボア中心軸方向を含むボア中心軸配列平面P2とシリンダブロック20の外壁面20cとの間の距離D1は、シリンダ配列方向と直交する平面であって外壁面20cのうちの凸部65が形成されている部分を通る平面にてシリンダブロック20を切断した断面におけるボア中心軸配列平面P2とシリンダブロック20の外壁面20cとの間の距離D2よりも短くなっている。
更に、図14に示したように、シリンダ配列方向と直交する平面であって外壁面20cのうちの凸部65が形成されている部分を通る平面にてシリンダブロック20を切断した断面におけるボア中心軸配列平面P2とシリンダブロック20の外壁面20cのうちの凸部65が形成されていない部分との間の距離D1は、同断面におけるボア中心軸配列平面P2とシリンダブロック20の外壁面20cのうちの凸部65が形成されている部分との間の距離D2よりも短くなっている。
即ち、上記構成によれば、シリンダブロック20は、シリンダ配列方向と直交する平面にてシリンダブロック20を切断した断面におけるボア中心軸配列平面P2とシリンダブロック20の外壁面20cとの間の距離が、シリンダ配列方向と直交する平面であってブロック側軸受形成部52を通る平面にてシリンダブロック20を切断した断面におけるボア中心軸配列平面P2とブロック側軸受形成部52が延出している位置における外壁面20c(即ち、凸部65の頂面)との間の距離D2よりも短くなっている部分を含んでいる。
上記のように構成された第3実施形態に係る可変圧縮比内燃機関10によれば、シリンダブロック20は、ブロック側軸受形成部52が延出している位置にて他の位置よりも剛性が高くなっている。従って、上記押圧力F3が加えられても、シリンダブロック20は変形しにくい。即ち、シリンダブロック20の重量が増加することを抑制しつつ上記押圧力F3によりボア壁面が変形する程度を小さくすることができる。
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、ブロック側軸受形成部52は、シリンダブロック20と一体に形成されていてもよい。また、ブロック側軸受形成部52は、外壁面20cのクランクケース30側の端(下端)よりも上方に配置されていてもよい。
本発明の第1実施形態に係る可変圧縮比内燃機関の概略斜視図である。 図1に示したシリンダブロックの上方からの斜視図である。 図1に示したシリンダブロックの下方からの斜視図である。 図1の4−4線に沿った平面にて可変圧縮比内燃機関を切断した断面図である。 図1の5−5線に沿った平面にて可変圧縮比内燃機関を切断した断面図である。 図1に示した可変圧縮比機構が駆動されることによる圧縮比の変化を模式的に示した図である。 図1に示した燃焼室にて燃焼が発生した際にシリンダブロックに加えられる力とその力によるシリンダブロックの変形を模式的に示した図である。 本発明の第1実施形態の変形例に係る可変圧縮比内燃機関のシリンダブロックを下方から見た概略図である。 図8の9−9線に沿った平面にてシリンダブロックを切断した断面図である。 本発明の第1実施形態の変形例に係る可変圧縮比内燃機関のシリンダブロックを下方から見た概略図である。 本発明の第2実施形態に係る可変圧縮比内燃機関のシリンダブロックを下方から見た概略図である。 図11の12−12線に沿った平面にてシリンダブロックを切断した断面図である。 本発明の第3実施形態に係る可変圧縮比内燃機関のシリンダブロックを下方から見た概略図である。 図13の14−14線に沿った平面にてシリンダブロックを切断した断面図である。 従来の可変圧縮比内燃機関の概略斜視図である。 図15に示したシリンダブロックの上方からの斜視図である。 図15に示した可変圧縮比機構が駆動されることによる圧縮比の変化を模式的に示した図である。 図15に示した燃焼室にて燃焼が発生した際にシリンダブロックに加えられる力とその力によるシリンダブロックの変形を模式的に示した図である。
符号の説明
10…可変圧縮比内燃機関、20…シリンダブロック、20b…下面、20c…外壁面、20d…シリンダライナ、21…シリンダボア、22…ピストン、24…応力低減用溝部、30…クランクケース、31…クランク軸、40…シリンダヘッド、41…燃焼室、50…可変圧縮比機構、51…ケース側軸受形成部、51c…軸受孔、52…ブロック側軸受形成部、52a…軸受孔、53…軸状駆動部、53a…偏心軸部、53b…固定カム部、53c…可動カム部、53d…ウォームギヤ、61…幅広部分、62…大径部分、63…大径部分、64…補強部材、65…凸部、BC…ボア中心軸、F3…押圧力、FC…固定カム部の中心軸、MC…可動カム部の中心軸。

Claims (5)

  1. 所定のボア中心軸方向に貫通する円柱状の穴であるシリンダボアが形成されるとともに同シリンダボア内にピストンを収容するシリンダブロックと、前記シリンダボアの開口部分の一方を覆うように同シリンダブロックに固定されたシリンダヘッドと、前記シリンダブロックに対して前記シリンダヘッドと反対側に配置され且つ同シリンダブロックに対して前記ボア中心軸方向に相対移動可能であるとともに前記ピストンに連結されたクランク軸を回転可能に支持するクランクケースと、を備えるとともに、前記シリンダボアを形成するボア壁面と前記シリンダヘッドの前記シリンダブロック側の面であるヘッド下面と前記ピストンの同ヘッド下面側の面であるピストン頂面とにより形成される燃焼室の容積を変更する可変圧縮比機構を備えた可変圧縮比内燃機関であって、
    前記可変圧縮比機構は、前記シリンダブロックの外壁面から外方に延出したブロック側受力部と、同ブロック側受力部及び前記クランクケースのそれぞれと当接しながら同ブロック側受力部と同クランクケースとの間の前記ボア中心軸方向における距離を変更する連結部と、を含み、
    前記ブロック側受力部が前記連結部により前記シリンダブロックから前記クランクケースへ向かう方向の力を受けることによって同ブロック側受力部が所定の押圧位置にて所定の押圧方向に前記外壁面を押圧することにより、同押圧位置を通る直線であって同押圧方向に平行な直線である押圧直線が前記ボア壁面と交わる位置にて同ボア壁面に発生する応力であるボア壁面応力を、同押圧位置にて同外壁面に発生する応力である外壁面応力よりも小さくする応力低減手段を備える可変圧縮比内燃機関。
  2. 請求項1に記載の可変圧縮比内燃機関において、
    前記応力低減手段は、前記シリンダブロックの前記クランクケース側の面内の位置であって同面を前記ボア中心軸方向から見た場合における前記ブロック側受力部と前記ボア壁面との間の位置に開口するように同シリンダブロックに形成されたスリット状の溝部からなる可変圧縮比内燃機関。
  3. 請求項1に記載の可変圧縮比内燃機関において、
    前記シリンダブロックは、前記ボア壁面を構成する内壁面を有する中空円筒状のシリンダライナを含み、
    前記応力低減手段は、前記シリンダブロックのうちの前記シリンダライナを除く部分よりも高い剛性を有するとともに、前記押圧直線上の位置であって前記ブロック側受力部と前記シリンダライナとの間の位置を通るように且つ同シリンダライナの周囲を前記ボア中心軸回りに取り囲むように同シリンダブロックに配設された補強部材からなる可変圧縮比内燃機関。
  4. 所定のボア中心軸方向に貫通する円柱状の穴であるシリンダボアが形成されるとともに同シリンダボア内にピストンを収容するシリンダブロックと、前記シリンダボアの開口部分の一方を覆うように同シリンダブロックに固定されたシリンダヘッドと、前記シリンダブロックに対して前記シリンダヘッドと反対側に配置され且つ同シリンダブロックに対して前記ボア中心軸方向に相対移動可能であるとともに前記ピストンに連結されたクランク軸を回転可能に支持するクランクケースと、を備えるとともに、前記シリンダボアを形成するボア壁面と前記シリンダヘッドの前記シリンダブロック側の面であるヘッド下面と前記ピストンの同ヘッド下面側の面であるピストン頂面とにより形成される燃焼室の容積を変更する可変圧縮比機構を備えた可変圧縮比内燃機関であって、
    前記可変圧縮比機構は、前記シリンダブロックの外壁面から外方に延出したブロック側受力部と、同ブロック側受力部及び前記クランクケースのそれぞれと当接するとともに同ブロック側受力部と同クランクケースとの間の前記ボア中心軸方向における距離を変更する連結部と、を含み、
    前記シリンダブロックは、前記ボア壁面の前記クランクケース側の端であるボア壁面下端の位置が、前記ブロック側受力部が延出する前記シリンダブロックの外壁面の同クランクケース側の端であるブロック外壁面下端の位置と同じ位置、又は、同ブロック外壁面下端の位置よりも前記シリンダヘッド側の位置、となるように構成された可変圧縮比内燃機関。
  5. 所定のボア中心軸方向に貫通する円柱状の穴であるシリンダボアが同ボア中心軸方向と直交するシリンダ配列方向にて直線状に配置されるように複数形成されるとともに同各シリンダボア内にピストンを収容するシリンダブロックと、前記シリンダボアの開口部分の一方を覆うように同シリンダブロックに固定されたシリンダヘッドと、前記シリンダブロックに対して前記シリンダヘッドと反対側に配置され且つ同シリンダブロックに対して前記ボア中心軸方向に相対移動可能であるとともに前記ピストンに連結されたクランク軸を回転可能に支持するクランクケースと、を備えるとともに、前記シリンダボアを形成するボア壁面と前記シリンダヘッドの前記シリンダブロック側の面であるヘッド下面と前記ピストンの同ヘッド下面側の面であるピストン頂面とにより形成される燃焼室の容積を変更する可変圧縮比機構を備えた可変圧縮比内燃機関であって、
    前記可変圧縮比機構は、前記シリンダ配列方向と直交する平面であって前記シリンダボアの中心軸を通る平面と前記シリンダブロックの外壁面との交線の一部を含む領域にて同外壁面から外方に延出したブロック側受力部と、同ブロック側受力部及び前記クランクケースのそれぞれと当接するとともに同ブロック側受力部と同クランクケースとの間の前記ボア中心軸方向における距離を変更する連結部と、を含み、
    前記シリンダブロックは、前記シリンダ配列方向と直交する平面にて前記シリンダブロックを切断した断面における同シリンダ配列方向及び前記ボア中心軸方向を含むボア中心軸配列平面と前記シリンダブロックの外壁面との間の距離が、同シリンダ配列方向と直交する平面であって前記ブロック側受力部を通る平面にて同シリンダブロックを切断した断面における同ボア中心軸配列平面と同ブロック側受力部が延出している位置における同外壁面との間の距離よりも短くなっている部分を含むように構成された可変圧縮比内燃機関。
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