この種の内燃機関には、上述のように、圧縮比を変更するために駆動される機構(上述の例では前記スライド機構)が備えられている。しかしながら、従来の内燃機関においては、この種の機構の搭載性が必ずしも良好とはいえなかった。
例えば、この種の機構を設けるために、当該内燃機関が大型化してしまうという問題が生じ得る。あるいは、前記内燃機関の運転に伴う、燃料の燃焼や摩擦等によって、熱が生じる。この熱の影響により、この種の機構のうちの熱に弱い部分(例えば前記モータ等)において、誤作動などの不具合が発生するという問題が生じ得る。
本発明は、かかる課題を解決するためのなされたものである。すなわち、本発明の目的は、可変圧縮比内燃機関において、圧縮比を変更するために駆動される機構の搭載性を向上することにある。
かかる目的を達成するため、本発明の可変圧縮比内燃機関(以下、単に「内燃機関」と称する。)は、以下の構成を備えている。
・本発明の内燃機関は、シリンダブロックと、シリンダヘッドと、クランクケースと、連結機構と、駆動機構と、を備えている。
前記シリンダブロックには、ピストンを往復移動可能に収容するシリンダが形成されている。前記シリンダブロックにおける、前記ピストンの上死点側の端部には、シリンダヘッドが固定されている。前記クランクケースは、クランクシャフトを回転可能に支持するように構成されている。このクランクシャフトは、前記ピストンの往復移動に基づいて回転駆動されるように構成されている。
前記シリンダブロックと前記クランクケースとは、前記連結機構によって連結されている。この連結機構は、前記シリンダブロックと前記クランクケースとを、前記シリンダの中心軸に沿って相対移動させ得るように構成されている。
前記駆動機構は、アクチュエータを備えている。この駆動機構は、前記連結機構を駆動することで、前記シリンダブロックと前記クランクケースとを、前記中心軸に沿って相対移動させ得るように構成されている。
本発明の特徴は、前記駆動機構が、前記クランクケースの長手方向における中央寄りの位置に設けられていることにある。かかる構成によれば、当該内燃機関に対する前記駆動機構の搭載性が向上する。
・前記内燃機関は、以下のように構成され得る:前記アクチュエータは、前記クランクケースに装着されている。このアクチュエータは、前記クランクケースの外部に向けて露出されるように設けられている。また、このアクチュエータは、回転体と対向するように設けられている。この回転体は、前記クランクシャフトの回転に基づいて回転駆動されるように構成されている。
かかる構成においては、前記内燃機関の運転(前記シリンダ内での前記ピストンの往復運動)に伴って、前記クランクシャフトが回転駆動される。これにより、前記回転体が回転駆動される。すると、この回転体の回転に伴って、前記アクチュエータの周囲に、空気流が生じる。この空気流により、前記アクチュエータが良好に冷却され得る。
・前記アクチュエータは、他のエンジン補機と、駆動力出力部と、によって囲まれるように設けられ得る。ここで、当該エンジン補機は、外部に向けて突出するように、前記シリンダブロック及び/又は前記クランクケースに設けられている。また、前記駆動力出力部は、前記エンジン補機と同じ側に突出するように設けられている。
かかる構成によれば、前記エンジン補機の搭載状態に影響を与えることを可及的に抑制しつつ、前記駆動機構が当該内燃機関に搭載され得る。すなわち、既存の前記エンジン補機の搭載位置の変更をすることなく、あるいは、当該搭載位置の変更量を必要最小限としつつ、前記駆動機構(前記アクチュエータ)を当該内燃機関に搭載することができる。
あるいは、かかる構成によれば、前記アクチュエータが、前記エンジン補機と前記駆動力出力部とによって保護され得る。よって、圧縮比変更動作が確実に行われ得る。
・前記アクチュエータは、吸気マニホールド側に設けられ得る。この吸気マニホールドは、当該内燃機関の本体部を挟んで、排気マニホールドと対向するように設けられている。
かかる構成によれば、当該内燃機関の運転に伴って生じる熱(特に排気マニホールドからの放射熱)による、前記アクチュエータの過熱(オーバーヒート)が、可及的に抑制され得る。
・前記駆動機構は、以下のように構成され得る:この駆動機構は、前記アクチュエータとしてのモータと、前記モータにより回転駆動される駆動シャフトと、を備えている。この駆動シャフトは、隣り合う前記シリンダの間の位置に設けられている。また、この駆動シャフトは、前記中心軸と交差し、且つシリンダ配列方向と交差するように設けられている。ここで、前記シリンダ配列方向とは、複数の前記シリンダが配列されている方向である。
・前記駆動シャフトは、軸受部を貫通するように設けられ得る。この軸受部は、前記クランクシャフトを回転可能に支持するように構成されている。具体的には、この軸受部は、軸受キャップと、キャップ固定部、とから構成され得る。
前記軸受キャップは、半円柱状の凹部を有する略U字状の部材である。この凹部は、前記クランクシャフトの径に対応する径に形成されている。前記キャップ固定部は、前記クランクケースの本体側に設けられている。このキャップ固定部は、半円柱状の凹部を有し、前記軸受キャップが固定され得るように構成されている。この凹部も、前記クランクシャフトの径に対応する径に形成されている。
ここで、本内燃機関において、2つの前記シリンダブロックが略V字状に配置されている場合(いわゆるV型エンジン:バンク角が180度の水平対向エンジンを含む)、前記駆動シャフトは、前記軸受キャップを貫通するように設けられ得る。一方、本内燃機関において、前記シリンダブロックが1つだけしか設けられていないか、複数の前記シリンダブロックが長手方向に沿って一列に配列されている場合(いわゆる直列型エンジン)、前記駆動シャフトは、前記キャップ固定部を貫通するように設けられ得る。
かかる構成によれば、当該内燃機関の大型化を抑制しつつ、圧縮比変更動作のための前記駆動機構を設けることができる。すなわち、当該内燃機関に対する前記駆動機構の搭載性が向上する。
・前記駆動機構は、以下のように構成され得る:前記モータが2つ設けられている。そして、前記駆動シャフトの両端部のそれぞれに、前記モータが連結されている。
かかる構成によれば、前記駆動シャフトを駆動するための前記モータのトルクが低減され得る。よって、前記モータの小型化や、前記駆動シャフトの小径化が、良好に行われ得る。
あるいは、かかる構成によれば、一方の前記モータに異常が生じた場合であっても、圧縮比変更動作が良好に行われ得る。よって、圧縮比可変機構の信頼性が向上し得る。
・前記駆動シャフトは、前記モータの回転中心軸と同軸に設けられ得る。この場合、前記駆動機構が、簡略な装置構成によって実現され得る。
・前記駆動シャフトは、前記モータの回転中心軸と交差するように設けられ得る。この場合、前記モータの出力シャフト(これは前記回転中心軸と同軸に設けられている)と、前記駆動シャフトとは、ベベルギヤによって連結され得る。かかる構成によれば、圧縮比変更動作がスムーズに行われ得る。
・前記内燃機関は、以下のように構成され得る。
前記連結機構は、ブロック側支持部と、クランクケース側支持部と、一対のカムシャフトと、を備えている。前記カムシャフトは、ウォームホイールと、ジャーナル部と、カム部と、を備えている。
前記ウォームホイールは、円板状の歯車である。このウォームホイールは、前記カムシャフトの回転中心軸方向における略中央部に設けられている。前記ジャーナル部は、円柱状の部材であって、前記ウォームホイールとともに回転駆動されるように構成されている。前記カム部は、前記ジャーナル部から突出するように設けられている。
前記ブロック側支持部は、前記シリンダブロック側に設けられている。このブロック側支持部は、前記カム部及び前記ジャーナル部のうちの一方と当接し得るように構成されている。前記クランクケース側支持部は、前記クランクケース側に設けられている。このクランクケース側支持部は、前記カム部及び前記ジャーナル部のうちの他方(前記一方とは異なる方)と当接し得るように構成されている。
前記駆動機構は、ウォームを備えている。このウォームは、前記ウォームホイールと噛み合うように構成された円柱状の歯車である。このウォームは、前記駆動シャフトの両端部にそれぞれ設けられている。
ここで、前記ウォームホイールは、隣り合う前記シリンダの間の位置に設けられ得る。かかる構成によれば、当該内燃機関の大型化を抑制しつつ、前記駆動機構を設けることができる。すなわち、当該内燃機関に対する前記駆動機構の搭載性が向上する。
以下、本発明の実施形態(本願の出願時点において出願人が最良と考えている実施形態)について、図面を参照しつつ説明する。
なお、以下の実施形態に関する記載は、法令で要求されている明細書の記載要件(記述要件・実施可能要件)を満たすために、本発明の具体化の単なる一例を、可能な範囲で具体的に記述しているものにすぎない。よって、後述するように、本発明が、以下に説明する実施形態の具体的構成に何ら限定されるものではないことは、全く当然である。本実施形態に対して施され得る各種の変更(modification)は、当該実施形態の説明中に挿入されると、首尾一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
<実施形態の可変圧縮比内燃機関の概略構成>
図1及び図2は、本発明の可変圧縮比内燃機関の一実施形態であるエンジン1の概略構成を示す側断面図である。図3は、図1及び図2に示されているエンジン1の分解斜視図である。なお、図1は、図3におけるI−I断面図に相当する。また、図2は、図3におけるII−II断面図に相当する。以下、図1ないし図3を参照しつつ、本実施形態のエンジン1の構成について説明する。
本実施形態のエンジン1は、シリンダブロック2と、シリンダヘッド3と、クランクケース4と、連結機構5と、駆動機構6と、を備えている。
<<シリンダブロック>>
シリンダブロック2は、略直方体状に形成されている。このシリンダブロック2の内部には、シリンダ21が形成されている。シリンダ21は、略円柱形状の貫通孔である。このシリンダ21の内部には、ピストン22が、シリンダ中心軸CCAに沿って往復移動可能に収容されている。
図3に示されているように、本実施形態のエンジン1におけるシリンダブロック2には、4つのシリンダ21が、シリンダ配列方向ADに沿って一列に設けられている。すなわち、本エンジン1は、いわゆる直列4気筒エンジンである。このシリンダブロック2は、シリンダ配列方向ADと平行な長手方向を有するように形成されている。このシリンダ配列方向ADは、すべてのシリンダ21におけるシリンダ中心軸CCAと直交する方向である。
シリンダブロック2の内部には、ウォータージャケット23が設けられている。ウォータージャケット23は、エンジン1を冷却するための冷却媒体(冷却水)が通過し得る空間である。このウォータージャケット23は、シリンダ21の外側を囲むように設けられている。
シリンダブロック2の長手方向(シリンダ配列方向ADと平行な方向)における略中央部であって、隣り合う2番目のシリンダ21と3番目のシリンダ21との間の位置には、ウォームホイール収容部24が形成されている。ウォームホイール収容部24は、側断面視にて略D字状の凹部であって、側方に向けて開口するように設けられている。また、このウォームホイール収容部24は、ウォータージャケット23と連通しないように設けられている。
<<シリンダヘッド>>
シリンダブロック2の上端部(ピストン22の上死点側の、シリンダブロック2の端部)には、シリンダヘッド3が接合されている。シリンダヘッド3は、シリンダブロック2と相対移動しないように、シリンダブロック2の前記上端部に対して、図示しないボルトによって固定されている。
シリンダヘッド3には、複数の凹部31が形成されている。各凹部31は、各シリンダ21に対応する位置に設けられている。この凹部31は、シリンダ21と連通するように設けられている。すなわち、燃焼室CCは、シリンダヘッド3がシリンダブロック2に固定された状態における、ピストン22の頂面より上側のシリンダ21の内部の空間と、凹部31と、によって形成されている。
シリンダヘッド3には、上述の燃焼室CCに連通するように、吸気ポート32及び排気ポート33が形成されている。また、シリンダヘッド3には、これらの吸気ポート32及び排気ポート33を開閉するための、吸気バルブ34及び排気バルブ35が装着されている。
<<クランクケース>>
クランクケース4には、筒状のフレーム40aが設けられている。フレーム40aは、図中上方に向けて開口していて、その内部にシリンダブロック2を図中上方から挿入し得るように構成されている。このフレーム40aは、シリンダブロック2の下端部から上端部までを覆うように形成されている。
フレーム40aは、平面視にて略矩形状に形成されている。このフレーム40aは、シリンダ配列方向ADと平行な長手方向を有するように形成されている。すなわち、クランクケース4は、シリンダ配列方向ADと平行な長手方向を有するように形成されている。
フレーム40aは、シリンダブロック2の外表面を所定のクリアランスを隔てて囲むように構成されている。このクリアランスは、シリンダブロック2とクランクケース4との相対移動がスムーズに行われつつ、両者の間にガタつきが生じない程度(触れるか触れないか程度:例えば0.数ミリ程度)に設定されている。
フレーム40aの下方には、軸受部40bが設けられている。軸受部40bは、軸受キャップ40cと、キャップ固定部40dと、から構成されている。
軸受キャップ40cは、クランクシャフト41の径と対応する径の半円柱状の凹部40c1を有する、略U字状の部材である。この軸受キャップ40cは、クランクケース4の本体側に設けられたキャップ固定部40dに固定され得るように構成されている。
キャップ固定部40dは、クランクケース4の下端部の、板状(リブ状)の部分である。このキャップ固定部40dは、隣り合うシリンダ21の間の位置、及び、シリンダブロック2のシリンダ配列方向ADにおける両端部に対応する位置に設けられている。キャップ固定部40dの下端部には、半円柱状の凹部40d1が形成されている。この凹部40d1は、軸受キャップ40cの凹部40c1と同形状に形成されている。
クランクシャフト41は、軸受部40bによって回転可能に支持されている。すなわち、軸受キャップ40cがクランクシャフト41を挟んでキャップ固定部40dと対向するように配置された状態で、軸受キャップ40cがキャップ固定部40dに固定されることで、軸受キャップ40cの凹部40c1とキャップ固定部40dの凹部40d1とによって形成された軸受孔内にてクランクシャフト41が回転可能に支持されている。
クランクシャフト41は、ピストン22のシリンダ中心軸CCAに沿った往復移動に基づいて回転駆動されるように、コンロッド42を介してピストン22と機械的に連結されている。
<実施形態の可変圧縮比機構の具体的な構成>
シリンダブロック2とクランクケース4とは、連結機構5によって連結されている。この連結機構5は、シリンダブロック2とクランクケース4とを、シリンダ中心軸CCAに沿って相対移動させ得るように構成されている。駆動機構6は、連結機構5を駆動することで、シリンダブロック2とクランクケース4とをシリンダ中心軸CCAに沿って相対移動させ得るように構成されている。
すなわち、連結機構5及び駆動機構6によって、可変圧縮比機構が形成されている。以下、本実施形態の可変圧縮比機構における各部の詳細な構成について説明する。
<<連結機構>>
一対の連結機構5が、フレーム40aのシリンダ配列方向ADに沿った両側壁及びその近傍に設けられている。すなわち、一対の連結機構5が、シリンダブロック2を挟んで設けられている。一方の連結機構5と、他方の連結機構5とは、すべてのシリンダ21におけるシリンダ中心軸CCAを通る平面(以下、中心面と称する。)に関してほぼ対称に配置及び構成されている。
<<<カムシャフト>>>
連結機構5は、カムシャフト51の回転によって、シリンダブロック2とクランクケース4とをシリンダ中心軸CCAに沿って相対的に移動させ得るように構成されている。すなわち、連結機構5は、カムシャフト51の回転によって、シリンダブロック2をクランクケース4に対して図中上下方向に相対的にスライドさせ得るように構成されている。
図4は、図1ないし図3に示されているカムシャフト51を、その一部を分解して示す斜視図である。以下、図1ないし図4を参照すると、カムシャフト51は、ジャーナル部51aと、円形カム部51bと、偏心シャフト51cと、ウォームホイール51dと、から構成されている。
ジャーナル部51aは、円柱状の部材である。このジャーナル部51aは、カムシャフト51の回転中心軸(これはクランクシャフト41の回転中心軸と平行である)と同軸に設けられている。ジャーナル部51aは、隣り合う円形カム部51bの間、及びカムシャフト51の両端部に設けられている。
円形カム部51bは、ジャーナル部51aよりも径が太い円柱状の部材であって、シリンダ21に対応するように設けられている。すなわち、1つのカムシャフト51に対して、気筒数と同数(本実施形態では4つ)の円形カム部51bが設けられている。円形カム部51bは、カムシャフト51の回転中心軸から偏心して設けられている。すなわち、円形カム部51bの中心軸が、前記回転中心軸及びジャーナル部51aの中心軸からずれるように、円形カム部51bが配置されている。
偏心シャフト51cは、シリンダ配列方向ADに沿った長手方向を有する丸棒状の部材である。偏心シャフト51cは、ジャーナル部51aの中心軸及び円形カム部51bの中心軸から偏心した位置にて、これらを挿通するように設けられている。すなわち、偏心シャフト51cは、図1及び図4に示されているように、ジャーナル部51aの一端(図中下端)と円形カム部51bの一端(図中下端)とが一致した状態で、当該一端寄りの位置(下部)にてジャーナル部51a及び円形カム部51bを挿通するように設けられている。
1本のカムシャフト51には、1つのウォームホイール51dが設けられている。ウォームホイール51dは、略円板状のギヤであって、偏心シャフト51cと一体に形成されている。このウォームホイール51dは、その中心軸がカムシャフト51の回転中心軸と同軸となるように設けられている。
ウォームホイール51dは、カムシャフト51の長手方向における略中央部に設けられている。すなわち、ウォームホイール51dは、偏心シャフト51cの長手方向における略中央部に設けられている。また、ウォームホイール51dは、隣り合う2番目のシリンダ21と3番目のシリンダ21との間の位置に設けられている。
本実施形態のカムシャフト51においては、ジャーナル部51aは、偏心シャフト51cの回りを回転しないように、偏心シャフト51cに固定されている。すなわち、ジャーナル部51aは、ウォームホイール51dの回転に伴って、カムシャフト51の回転中心軸を中心として、ウォームホイール51dと一体的に回転駆動されるように構成されている。
一方、円形カム部51bは、偏心シャフト51cの回りを自由に回転し得るように構成されている。すなわち、円形カム部51bは、ジャーナル部51aに対して相対的に回転し得るように構成されている。
<<<ブロック側支持部>>>
再び図1ないし図3を参照すると、円形カム部51bは、ブロック側支持部52に収容されている。ブロック側支持部52には、軸受孔52aが形成されている。この軸受孔52aは、円形カム部51bの外径に対応する(円形カム部51bの周面と摺動し得るような)内径を有する貫通孔である。すなわち、ブロック側支持部52は、円形カム部51bの周面と当接(摺動)しつつ、当該円形カム部51bを回動可能に支持するように構成されている。
フレーム40aには、開口部53が設けられている。開口部53は、貫通孔であって、ブロック側支持部52がフレーム40aの外側に突出し得るように設けられている。また、開口部53は、ブロック側支持部52がシリンダ中心軸CCAに沿って往復移動し得るように、ブロック側支持部52の高さ寸法(シリンダ中心軸CCAに沿った方向の寸法)よりも大きい高さ寸法に形成されている。本実施形態においては、ブロック側支持部52と同数の複数の開口部53が、シリンダ配列方向ADに沿って配列されている。
<<<クランクケース側支持部>>>
フレーム40aには、複数のフレーム側支持部54が形成されている。各フレーム側支持部54は、開口部53に隣接するように設けられている。すなわち、複数のフレーム側支持部54が、各開口部53の両側に設けられ、且つシリンダ配列方向ADに沿って配列されている。
フレーム側支持部54には、ジャーナル支持凹部54aが設けられている。ジャーナル支持凹部54aは、ジャーナル部51aの外径に対応する内径を有する半円柱形状の凹部であって、外部に向けて開口するように形成されている。このジャーナル支持凹部54aは、ジャーナル部51aの周面と当接(摺動)し得るように構成されている。
フレーム40aには、カバー部55が装着されている。カバー部55は、カムシャフト51(ジャーナル部51a)を挟んでフレーム側支持部54と対向するように設けられている。このカバー部55は、カムシャフト51(ウォームホイール51dを含む)を覆うように構成及び配置されている。なお、図1及び図2においては、図示の複雑化を避けるため、カバー部55の断面図の図示が省略されている。
カバー部55は、複数のフレーム側支持部54(1つの連結機構5におけるすべてのフレーム側支持部54)に対応するように、一体(シームレス)に形成されている。このカバー部55には、ジャーナル支持凹部55aと、軸受収容部55bと、ウォームホイール収容部55cと、が形成されている。
ジャーナル支持凹部55aは、フレーム側支持部54におけるジャーナル支持凹部54aと対向する位置に設けられている。このジャーナル支持凹部55aは、ジャーナル支持凹部54aと対称な形状の、半円柱形状の凹部である。このジャーナル支持凹部55aは、その内径が、ジャーナル部51aの外径に対応するように形成されている。すなわち、ジャーナル支持凹部55aは、ジャーナル部51aの周面と当接(摺動)し得るように構成されている。
本実施形態においては、カバー部55がフレーム側支持部54に接合されて図示しないボルトによって固定されることで、これらの接合体の内側に、ジャーナル部51aを回転可能に支持する軸受孔が形成されるように、フレーム側支持部54及びカバー部55が構成されている。すなわち、フレーム側支持部54とカバー部55とによって、本発明のクランクケース側支持部が構成されている。
軸受収容部55bは、ブロック側支持部52と対向する位置に設けられた凹部である。この軸受収容部55bは、開口部53から突出したブロック側支持部52を、シリンダ中心軸CCAに沿って往復移動可能に収容し得るように形成されている。
ウォームホイール収容部55cは、フレーム40aに設けられたウォームギヤ収容部56と対向する位置に設けられた、側断面視にて略D字状の凹部である。ウォームギヤ収容部56は、クランクケース4の長手方向における略中央部に設けられた開口部であって、フレーム40aの上部からキャップ固定部40dにわたって形成されている。
ウォームギヤ収容部56は、ウォームホイール51dをフレーム40aの外部に向けて突出させ得るように形成されている。また、ウォームギヤ収容部56は、シリンダブロック2におけるウォームホイール収容部24と対向する位置に設けられている。すなわち、ウォームホイール収容部24、ウォームホイール収容部55c、及びウォームギヤ収容部56は、ウォームホイール51dを収容し得るように形成されている。
<<駆動機構>>
駆動機構6は、上述のクランクケース4の長手方向における略中央部に設けられている。この駆動機構6は、駆動シャフト61と、本発明のアクチュエータとしてのモータ62と、を備えている。
駆動シャフト61は、シリンダ配列方向AD及びシリンダ中心軸CCAと直交するように配置されている。この駆動シャフト61は、直列4気筒における2番目のシリンダ21と3番目のシリンダ21との間の位置に対応するキャップ固定部40dを貫通するように設けられている。本実施形態においては、駆動シャフト61は、モータ62の回転中心軸と同軸に設けられている。また、駆動シャフト61は、その両端部が、外側軸受63によって回動可能に支持されている。
モータ62は、駆動シャフト61を回転駆動し得るように構成されている。このモータ62は、一方の外側軸受63を介して、クランクケース4に固定されている。また、モータ62は、クランクケース4の外部に向けて露出されるように設けられている。なお、駆動シャフト61の長手方向における中央部分は、一対の内側軸受64によって回動可能に支持されている。この内側軸受64は、キャップ固定部40dに固定されている。
駆動シャフト61の一端部には、ウォーム65が設けられている。また、駆動シャフト61の他端部には、ウォーム66が設けられている。ウォーム65は、らせん状の歯が形成された円柱形状のギヤであって、ウォームホイール51dと噛み合うように形成されている。ウォーム66は、ウォーム65とは逆巻きのらせん状の歯が形成された円柱形状のギヤであって、ウォームホイール51dと噛み合うように形成されている。
ウォーム65及び66は、ウォームギヤ収容部56を介して、クランクケース4の外部に向けて露出されるように設けられている。すなわち、ウォーム65及び66は、ウォームホイール51dと噛み合うように、ウォームホイール51dと対向して設けられている。
また、本実施形態においては、駆動シャフト61における、ウォーム65の両側は、外側軸受63と内側軸受64とによって支持されている。同様に、駆動シャフト61における、ウォーム66の両側も、外側軸受63と内側軸受64とによって支持されている。
<実施形態の可変圧縮比機構の動作説明>
図5ないし図7は、図1に示されているエンジン1における圧縮比変化の様子を示す図である。以下、各図を参照しつつ、本エンジン1における圧縮比変更動作について、簡単に説明する。
エンジン回転数Neや負荷Te等のエンジンパラメータに基づいて、図示しないエンジンコントロールコンピュータによって、設定されるべき圧縮比が決定される。ここで、モータ62の回転位相と、カムシャフト51の回転位相と、圧縮比と、の間には、所定の対応関係がある。この対応関係は、上述のエンジンコントロールコンピュータにおけるROM(リードオンリーメモリ)に格納されている。
決定された圧縮比に応じて、上述のエンジンコントロールコンピュータによる制御下で、駆動シャフト61がモータ62によって適宜回転駆動される。これにより、ウォーム65及び66が回転駆動され、一対のカムシャフト51が互いに逆の方向に回転する。すなわち、例えば、図中右側のカムシャフト51が反時計回りに回転するとともに、図中左側のカムシャフト51が時計回りに回転する。
カムシャフト51の回転の際に、ジャーナル部51aは、当該カムシャフト51の回転中心軸を中心として回転する。偏心シャフト51cは、ジャーナル部51aと一体的に回転する。このとき、偏心シャフト51cは、当該回転中心軸の周りを回転する。
一方、円形カム部51bは、軸受孔52aの内面と当接(摺動)しながら、前記回転中心軸とは異なる軸を中心として回転する。また、円形カム部51bは、偏心シャフト51cに対して相対的に回転する。すなわち、円形カム部51bは、偏心シャフト51cの中心軸を中心として、ジャーナル部51aに対して相対的に回転する。これにより、円形カム部51bのジャーナル部51aに対する相対的な位置が変化する。
このとき、円形カム部51bは、ブロック側支持部52によって、エンジン幅方向(図5ないし図7における左右方向)についての移動が拘束されている。また、ジャーナル部51aの位置は不変である。よって、カムシャフト51が回転駆動されると、図5ないし図7に示されているように、カムシャフト51の回転中心軸の周りの偏心シャフト51cの回転による、偏心シャフト51cの上下動に伴って、円形カム部51bが上下動する。
エンジン1の圧縮比が最高である状態においては、図5に示されているように、偏心シャフト51cが最も下方に位置している。この場合、円形カム部51bも、最も下方に位置することとなる。
図5に示されている状態から、図中矢印で示されているようにカムシャフト51が回転駆動される(図中右側のカムシャフト51が反時計回りに回転駆動され且つ図中左側のカムシャフト51が時計回りに回転駆動される)。これにより、偏心シャフト51cが、図5に示されている位置から上昇するとともに、円形カム部51bが上昇する。
すると、図6に示されているように、カムシャフト51の回転による円形カム部51bの上昇に伴って、ブロック側支持部52が上昇する。これにより、シリンダブロック2がクランクケース4に対して相対的に上昇する。このシリンダブロック2の上昇によってシリンダヘッド3がクランクケース4から離隔すると、ピストン22の上死点位置とシリンダヘッド3の下端面との距離が伸びる。すなわち、エンジン1の圧縮比が低下する。
図6に示されているように、偏心シャフト51cの位置が最上方と最下方との間であると、圧縮比も最高値と最低値との間の値となる。図7に示されているように、偏心シャフト51cの位置が最も上方に達すると、圧縮比が最低となる。エンジン1の圧縮比が最低である図7に示されている状態から、圧縮比が高くされる場合、カムシャフト51がさらに上述と同方向に回転駆動されるか、あるいはカムシャフト51が上述と逆方向に回転駆動される。
<実施形態の構成による効果>
・本実施形態のエンジン1においては、連結機構5を駆動するための駆動機構6が、エンジン1(クランクケース4)の長手方向における中央寄りの位置に設けられている。
具体的には、駆動シャフト61及びモータ62が、クランクケース4の長手方向における略中央部に設けられている。また、駆動シャフト61が、隣り合う2番目のシリンダ21と3番目のシリンダとの間の位置に対応する軸受部40b(キャップ固定部40d)を貫通するように設けられている。すなわち、駆動シャフト61が、クランクケース4の長手方向における略中央部に設けられたリブ状のキャップ固定部40dによって収容され且つ回転可能に支持されている。
かかる構成によれば、駆動シャフト61を配置するための特別なスペースを設けることによる、クランクケース4の長手方向における冗長化が、可及的に回避され得る。すなわち、クランクケース4に通常設けられている、クランクシャフト41を回転可能に支持するための軸受部40bが、駆動シャフト61の配置に際して有効利用され得る。換言すれば、駆動シャフト61の配置のために、隣り合うシリンダ21の間の空間が、有効に活用され得る。したがって、可変圧縮比のエンジン1の小型化が、良好に実現され得る。
また、かかる構成によれば、駆動シャフト61がクランクケース4によって確実に支持される。よって、駆動機構6がスムーズに動作する。すなわち、圧縮比可変機構がスムーズに動作する。
さらに、かかる構成によれば、ウォームホイール51dがカムシャフト51の長手方向における略中央部に設けられる。これにより、ウォーム65又は66によるウォームホイール51dの回転駆動の際に、カムシャフト51の回転トルクがウォームホイール51dの両側でほぼ均等となる。また、最大トルクが小さくなる。よって、カムシャフト51の回転駆動がスムーズに行われる。
このように、本実施形態の構成によれば、エンジン1に対する駆動機構6の搭載性が向上する。また、当該駆動機構6を含む可変圧縮比機構及びその周りの剛性が良好に向上される。したがって、本実施形態の構成によれば、可変圧縮比機構がスムーズに動作し、圧縮比変更制御の応答性や確実性が向上する。
・本実施形態のエンジン1においては、シリンダブロック2の長手方向における略中央部であって、隣り合うシリンダ21の間の位置に、ウォームホイール51dを収容するためのウォームホイール収容部24が設けられている。また、フレーム40aの、ウォームホイール収容部24に対向する位置には、ウォームギヤ収容部56が設けられている。そして、ウォームホイール51dが、隣り合うシリンダ21の間の位置に設けられている。
かかる構成によれば、ウォームホイール51dを備えたカムシャフト51を設ける場合の、シリンダブロック2やクランクケース4の長手方向における冗長化が、可及的に回避され得る。したがって、可変圧縮比のエンジン1の小型化が、良好に実現され得る。
・本実施形態のエンジン1においては、駆動シャフト61が、モータ62の回転中心軸と同軸に設けられている。これにより、駆動機構6が、簡略な装置構成によって比較的安価に実現され得る。
・本実施形態のエンジン1においては、駆動シャフト61は、ウォーム65及び66の両側にて、外側軸受63及び内側軸受64によって支持されている。かかる構成によれば、駆動シャフト61の撓みが抑制される。よって、駆動機構6の動作がよりスムーズに行われる。
<変形例の例示列挙>
なお、上述の実施形態は、上述した通り、出願人が本願の出願時点において最良であると考えた本発明の具体的構成例を単に例示したものにすぎないのであって、本発明はもとより上述の実施形態によって何ら限定されるべきものではない。よって、上述の実施形態に示された具体的構成に対して、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、種々の変形が施され得ることは、当然である。
以下、変形例について幾つか例示する。ここで、以下の変形例の説明において、上述の実施形態における各構成要素と同様の構成・機能を有する構成要素については、当該変形例においても同一の名称及び同一の符号が付されているものとする。そして、当該構成要素の説明については、上述の実施形態における説明が、矛盾しない範囲で適宜援用され得るものとする。
もっとも、変形例とて、下記のものに限定されるものではないことは、いうまでもない。本発明を、上述の実施形態や下記変形例の記載に基づいて限定解釈することは、(特に先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、許されない。
また、上述の実施形態の構成、及び下記の各変形例に記載された構成は、技術的に矛盾しない範囲において、適宜複合して適用され得ることも、いうまでもない。
(1)本発明は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、メタノールエンジン、バイオエタノールエンジン、その他の任意のタイプの内燃機関に適用され得る。気筒数、気筒配列方式(直列、V型、水平対向)、エンジン積載方式(縦置き/横置き、FF/FR/RR/MR)も、特に限定はない。
(2)カムシャフト51の構成や、カムシャフト51の各部とブロック側支持部52及びフレーム側支持部54との対応関係は、上述の実施形態のものから適宜変更され得る。
例えば、上述の実施形態の場合とは逆に、ジャーナル部51aがブロック側支持部52に当接し、円形カム部51bがフレーム側支持部54及びカバー部55に当接するように、連結機構5が構成されていてもよい。
また、上述の実施形態の場合とは逆に、ジャーナル部51aが偏心シャフト51cに対して相対的に回転可能である一方、円形カム部51bが偏心シャフト51cに固定されていてもよい。
(3)ブロック側支持部52や、クランクケース側支持部(上述の実施形態ではフレーム側支持部54及びカバー部55)の構成も、特に限定はない。
例えば、ブロック側支持部52は、シリンダブロック2と一体且つシームレスにも形成され得る。
また、ブロック側支持部52における、カムシャフト51と対向する部分には、耐摩耗性を有する材料(例えば軸受鋼)からなる、コーティング、スリーブ、あるいはライナーが設けられていてもよい。フレーム側支持部54及びカバー部55における、カムシャフト51と対向する部分も同様である。
また、カバー部55は、複数のフレーム側支持部54に対応した数に分割されていてもよい。このとき、カバー部55に、軸受収容部55bやウォームホイール収容部55cが設けられないことがあり得る。
(4)図8は、図2に示されているエンジン1の一つの変形例の構成を示す側断面図である。
図8に示されているように、駆動シャフト61は、モータ62の回転中心軸と交差するように設けられ得る。具体的には、モータ62は、その回転中心軸が、駆動シャフト61と直交するように設けられ得る。換言すれば、モータ62の回転中心軸が、図3におけるシリンダ配列方向ADに沿った方向となるように(シリンダ配列方向ADと平行になるように)、モータ62が配置されている。
この場合、モータ62の出力シャフトには、ベベルギヤ67が装着されている。また、駆動シャフト61におけるモータ62側の端部には、ベベルギヤ68が装着されている。そして、ベベルギヤ67及び68を介して、モータ62の回転駆動力が駆動シャフト61に伝達されるようになっている。
かかる構成によれば、モータ62の回転駆動力が駆動シャフト61にスムーズに伝達される。よって、圧縮比変更動作がスムーズに行われ得る。また、モータ62の回転方向を適宜設定(最高圧縮比からの圧縮比の低下動作の場合の例:図8の場合は反時計回り)して、圧縮比変更の際にクランクケース4に作用する反力(図中下向きの力)と、モータ62の回転による反モーメント(図中上向きに作用)とを相殺させることで、圧縮比変更動作の際の衝撃の発生を軽減することが可能になる。
(5)図9は、図2に示されているエンジン1の他の変形例の構成を示す側断面図である。
図9に示されているように、駆動シャフト61は、側面視にて傾斜するように設けられ得る。かかる構成によれば、圧縮比変更動作に影響を与えることなく、モータ62の搭載位置が、他のエンジン補機との干渉を避けるように設定され得る。
(6)図10は、図2に示されているエンジン1のさらに他の変形例の構成を示す側断面図である。
図10に示されているように、2つのモータ62が、駆動シャフト61の両端部のそれぞれに連結されていてもよい。
かかる構成によれば、駆動シャフト61を駆動するための各モータ62のトルクが低減され得る。よって、圧縮比変更動作がスムーズ且つ確実に行われ得る。また、モータ62の小型化や、駆動シャフト61の小径化が、良好に行われ得る。
また、かかる構成においては、ウォーム65とウォーム66とが、駆動シャフト61によって結合されている。よって、2つのモータ62の動作がそれぞれ個別的に制御されていなくても、シリンダ中心軸CCAが図中左右方向に倒れるようなシリンダブロック2の傾きが発生し難い。よって、制御回路が簡略化され得る。
さらに、かかる構成においては、一方のモータ62に異常が生じた場合であっても、他方のモータ62を用いることで、圧縮比変更動作が行われ得る。よって、圧縮比可変機構の信頼性が向上する。
この場合、モータ62と駆動シャフト61との間にクラッチ又はトルクリミッタが設けられることが好適である。これにより、一方のモータ62に異常が生じて他方のモータ62のみで駆動機構6が駆動される場合に、他方のモータ62がクラッチ又はトルクリミッタによって切り離される。よって、モータ62の負荷が良好に軽減され得る。
なお、駆動シャフト61が、ウォーム65とウォーム66との間の位置にて、分割されていても差し支えない。この場合、上述のようなシリンダブロック2の傾きが発生しないように、2つのモータ62の動作が、それぞれ個別的に制御される。
(7)直列4気筒エンジンの場合、上述の実施形態のように、2番目のシリンダ21と3番目のシリンダ21との間の位置に駆動機構6が設けられることが好適である。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、1番目のシリンダ21と2番目のシリンダ21との間の位置、あるいは、3番目のシリンダ21と4番目のシリンダ21との間の位置に、駆動機構6が設けられ得る。
直列2気筒エンジンの場合は、1番目のシリンダ21と2番目のシリンダ21との間の位置に、駆動機構6が設けられる。直列3気筒エンジンの場合は、1番目のシリンダ21と2番目のシリンダ21との間の位置、あるいは、2番目のシリンダ21と3番目のシリンダ21との間の位置に、駆動機構6が設けられ得る。
直列5気筒エンジンの場合、2番目のシリンダ21と3番目のシリンダ21との間の位置、あるいは、3番目のシリンダ21と4番目のシリンダ21との間の位置に駆動機構6が設けられることが好適であるが、これに限定されない。また、直列6気筒エンジンの場合、3番目のシリンダ21と4番目のシリンダ21との間の位置に駆動機構6が設けられることが好適であるが、これに限定されない。
(8)図11は、図2に示されているエンジン1のさらに他の変形例の構成を示す側断面図である。
図11に示されているように、V型エンジンの場合、駆動シャフト61は、軸受キャップ40cによって回転可能に支持され得る。すなわち、この場合、駆動シャフト61は、軸受キャップ40cを貫通するように設けられている。本変形例の軸受キャップ40cの両端部には、内側軸受64が装着されている。外側軸受63は、クランクケース4(図11においては図示略)の外壁部に装着されている。
かかる構成によれば、V型エンジン(特にバンク角が7〜15度の狭角である場合)に対しても、駆動機構6が良好に搭載され得る。
なお、この場合、図10に示されている変形例のように、駆動シャフト61の両端部にそれぞれモータ62を設けることで、駆動シャフト61が良好に小径化され得る。これにより、V型エンジンにおける駆動機構6の搭載性がいっそう向上する。
(9)図12は、図2に示されているエンジン1における、モータ62の搭載例を示す外観図である。
図12を参照すると、本例におけるエンジン1は、その長手方向が車幅方向と平行となるように、車両に搭載されている(いわゆる「横置き」搭載)。
具体的には、エンジン1の前記長手方向における一端部には、本発明の駆動力出力部としてのトランスアクスル70が接続されている。トランスアクスル70の本体部における一端部である突出部70aは、車両の前後方向に沿ってエンジン1の外壁から突出するように設けられている。この突出部70aには、ドライブシャフト71と、ブーツ72と、が装着されている。
ドライブシャフト71は、平面視にて、車幅方向に沿って、すなわち、エンジン1の前記長手方向に沿って、配置されている。ブーツ72は、ドライブシャフト71が突出部70aから突出する部分を覆うように設けられている。
トランスアクスル70は、クランクシャフト41(図2参照)にて発生している回転駆動力をドライブシャフト71に伝達するように構成されている。すなわち、本発明の回転体としてのドライブシャフト71は、クランクシャフト41の回転に基づいて回転駆動されるように構成されている。また、本発明の回転体としてのブーツ72は、ドライブシャフト71とともに回転するように構成されている。
図12に示されているように、本例においては、モータ62は、エンジン1の外壁から、突出部70aと同じ側に突出するように設けられている。すなわち、モータ62は、ドライブシャフト71及びブーツ72と対向するように設けられている。
かかる構成においては、図2を参照すると、エンジン1の運転による、シリンダ21内でのピストン22の往復運動に伴って、クランクシャフト41が回転駆動される。
再び図12を参照すると、このようにしてクランクシャフト41に発生した回転駆動力が、トランスアクスル70を介して、ドライブシャフト71に伝達される。これにより、ドライブシャフト71及びブーツ72が回転する。
かかる構成においては、上述のようなドライブシャフト71及びブーツ72の回転に伴って、空気の流れが生じる。この空気の流れによって、モータ62が良好に冷却され得る。すなわち、モータ62の過熱(オーバーヒート)が、可及的に抑制され得る。また、モータ62が、トランスアクスル70における突出部70aによって保護される。
これにより、圧縮比変更動作の確実性が向上し得る。また、モータ62の過熱(オーバーヒート)が抑制されることで、比較的小型で出力及び熱容量の小さなモータ62が用いられ得る。よって、エンジン1の小型化が良好に行われ得る。
なお、図13に示されているように、ブーツ72の外壁にファン73が設けられていてもよい。これにより、ブーツ72の回転に伴う空気流がより強くなり、モータ62の冷却効果が向上する。
図14は、図2に示されているエンジン1における、モータ62の異なる搭載例を示す、モータ62の周囲の拡大外観図である。
図14に示されているように、モータ62は、トランスファ74と対向する位置に設けられていてもよい。ここで、トランスファ74は、4輪駆動車における前後輪の駆動力を分配する装置である。
かかる構成によれば、上述の図12の場合と同様に、トランスファ74の継手部分の回転に伴って発生する空気流によって、モータ62が良好に冷却され得る。
(10)図14を参照すると、モータ62は、吸気マニホールド81側に設けられ得る。
ここで、吸気マニホールド81は、吸気ポート32(図1参照)と接続された、吸気通路の一部であって、エンジン1の本体部(図2におけるシリンダブロック2、シリンダヘッド3、及びクランクケース4)の車両後方側(運転席側)に設けられている。
また、吸気マニホールド81は、エンジン1の前記本体部における車両前方側(ラジエータ側)に設けられた図示しない排気マニホールドと反対側に設けられている。すなわち、吸気マニホールド81は、エンジン1の前記本体部を挟んで、前記排気マニホールドと対向するように設けられている。換言すれば、吸気マニホールド81と前記排気マニホールドとは、上述の中心面を挟んで互いに対向するように設けられている。
かかる構成によれば、比較的高温な前記排気マニホールドからの放射熱によって、モータ62の温度が上昇することが、可及的に抑制される。したがって、エンジン1の運転に伴って生じる熱による、モータ62の過熱(オーバーヒート)が、可及的に抑制され得る。これにより、圧縮比変更動作の確実性が向上し得る。また、モータ62の小型化が良好に行われ得る。
(11)図14を参照すると、モータ62は、トランスアクスル70と、本発明のエンジン補機としてのオルタネータ82と同じ側に設けられている。すなわち、オルタネータ82は、トランスアクスル70における突出部70aと同じ側にて、エンジン1の外部に向けて突出するように、クランクケース4(図2参照)に設けられている。そして、モータ62は、トランスアクスル70とオルタネータ82とによって囲まれるように設けられている。
かかる構成によれば、オルタネータ82を含むエンジン補機の搭載状態に影響を与えることを可及的に抑制しつつ、モータ62(図2における駆動機構6)をエンジン1に良好に搭載することが可能になる。すなわち、オルタネータ82等のエンジン補機の搭載位置の変更をすることなく、あるいは、当該搭載位置の変更量を必要最小限としつつ、モータ62をエンジン1に搭載することができる。
また、かかる構成によれば、モータ62が、トランスアクスル70における突出部70a、及びオルタネータ82等のエンジン補機によって保護され得る。よって、圧縮比変更動作が確実に行われ得る。
(12)モータ62が配置される位置は、上述のような車両後方側(運転席側)に限定されない。
例えば、吸気マニホールド81が車両前方側(ラジエータ側)に設けられている場合、モータ62も吸気マニホールド81と同じ車両前方側(ラジエータ側)に設けられ得る。かかる構成によれば、車両走行時の空気流(ラジエータファンからの空気流を含む)によって、モータ62の過熱(オーバーヒート)抑制がより効果的に実現され得る。
(13)図12ないし図14に示されているように、モータ62がエンジン1の長手方向における略中央部に設けられることで、モータ62を含む圧縮比可変機構の搭載性が向上する。
すなわち、横置き搭載の場合に、車幅方向において、モータ62が、トランスアクスル70又はトランスファ74と、ドライブシャフトセンターベアリング又はエンジン補機と、の間に配置され得る。また、シリンダ中心軸CCA方向において、モータ62が、吸気マニホールド81と、ドライブシャフト71と、の間に配置され得る。さらに、車両前後方向において、モータ62が、シリンダブロック2と、排気管(排気通路の一部であって前記排気マニホールドとマフラーとの間を接続する部分)又はフロントサスペンションメンバーと、の間に配置され得る。
かかる構成によれば、特に横置き搭載のFF車において、駆動系部品やエンジンマウントやエンジン補機類の搭載状態への影響を最小限にしつつ、モータ62を搭載することができる。また、モータ62が外部からの外力から確実に保護される。
(14)その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。
例えば、材料の変更は、適宜行われ得る。また、一体(ワンピース)であったものは別体(ツーピース)にされ得るし、その逆もあり得る。さらに、一体であるものは、シームレスなものともされ得るし、シームレスでないもの(接合部あるいは接合媒体が介在するもの)ともされ得る。
また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。