図1から図6を参照して、実施の形態における内燃機関について説明する。本実施の形態においては、車両に配置されている内燃機関を例に取り上げて説明する。
図1は、実施の形態の内燃機関におけるシリンダブロックおよびシリンダヘッドの部分の概略断面図である。本実施の形態における内燃機関は、火花点火式である。内燃機関は、機関本体1を備える。機関本体1は、シリンダブロック2とシリンダヘッド4とを含む。シリンダヘッド4には、吸気ポートおよび排気ポートが形成されている。シリンダヘッド4にはカムキャリア21が固定されている。カムキャリア21は、吸気弁および排気弁を駆動するカムおよびカムを回転させるシャフトを支持している。
燃焼室5は、それぞれの気筒ごとに形成されている。燃焼室5には、機関吸気通路および機関排気通路が接続されている。シリンダブロック2は、シリンダボアと称される穴部2aを有する。穴部2aに面するシリンダブロック2の表面には、シリンダライナ15が固定されている。本実施の形態におけるシリンダライナ15は、円筒状に形成されている。
ピストン3は、ピストンリング3aを有し、ピストンリング3aがシリンダライナ15に接触している。また、ピストン3は、シリンダライナ15に対して摺動する。ピストン3は、コネクティングロッド58を介して、クランクシャフトに支持されている。
シリンダヘッド4は、本体部4bと、シリンダブロック2の穴部2aの内部に挿入される挿入部4aとを有する。挿入部4aは、本体部4bから突出している。挿入部4aは、シリンダライナ15の内面に対応した形状を有し、シリンダライナ15に対して摺動する。挿入部4aの端面は、燃焼室5の頂面を構成する。すなわち、シリンダヘッド4には、燃焼室5の頂面が形成されている。
挿入部4aの周方向の表面には、シール部材17が配置されている。本実施の形態におけるシール部材17は、金属にて円環状に形成されている。シール部材17は、挿入部4aとシリンダライナ15との間を密閉する。すなわち、燃焼室5の密閉された空間を形成する。本実施の形態におけるシール部材17は、ピストンリング3aと同様の構造を有する。シール部材としては、この形態に限られず、挿入部とシリンダライナとの間を密閉できる任意の部材を採用することができる。
本実施の形態における内燃機関は、制御装置として機能する電子制御ユニットを備える。電子制御ユニットは、クランク角センサやエアフロメータ等の信号が入力され、機関本体1を制御する。
図2に、可変圧縮比機構の部分を切断したシリンダブロックおよびシリンダヘッドの概略断面図を示す。図2は、図1におけるA−A線に沿って切断したときの概略断面図である。図3に、可変圧縮比機構の偏心軸を回転させる駆動装置の概略斜視図を示す。
図1から図3を参照して、本実施の形態における内燃機関は、可変圧縮比機構を備える。本実施の形態においては、ピストン3が圧縮上死点に位置したときにシリンダヘッド4およびピストン3の頂面に囲まれる空間を燃焼室5と称する。内燃機関の圧縮比は、燃焼室の容積等に依存して定まる。本実施の形態における可変圧縮比機構は、燃焼室の容積を変更することにより圧縮比を変更するように形成されている。燃焼室における実際の圧縮比である実圧縮比は、(実圧縮比)=(燃焼室の容積+吸気弁が閉じている期間にピストンが移動する容積)/(燃焼室の容積)で示される。
図1および図2は、可変圧縮比機構により低圧縮比になったときの概略図である。本実施の形態における内燃機関は、シリンダブロック2を含む支持構造物と、支持構造物の上側に配置されているシリンダヘッド4とが互いに相対移動する。本実施の形態におけるシリンダブロック2は、可変圧縮比機構を介してシリンダヘッド4を支持している。
シリンダヘッド4の両側の側壁には複数個の突出部80が形成されている。突出部80には、断面形状が円形のカム挿入孔81が形成されている。シリンダブロック2の上壁には、複数個の突出部82が形成されている。突出部82には、断面形状が円形のカム挿入孔83が形成されている。シリンダヘッド4の突出部80は、シリンダブロック2の突出部82同士の間に嵌合する。
本実施の形態における可変圧縮比機構は、シリンダヘッド4の支持軸としての一対のカムシャフト84,85を含む。カムシャフト84,85は、それぞれのカム挿入孔83内に回転可能に挿入される円形カム88を含む。円形カム88は、各カムシャフト84,85の回転軸線と同軸状に配置されている。一方で、円形カム88には、カムシャフト84,85の回転軸線に対して偏心して配置された偏心軸87が接続されている。この偏心軸87には、別の円形カム86が偏心して回転可能に取付けられている。円形カム86は対応するカム挿入孔81内に回転可能に挿入されている。円形カム86は、偏心軸87を介して円形カム88に支持されている。
可変圧縮比機構は、カムシャフト84,85を回転させる駆動装置を含む。駆動装置は、アクチュエータとしてのモータ89を含む。駆動装置は、モータ89から出力される動力を伝達する駆動シャフト90を含む。本実施の形態では、駆動シャフト90は、モータ89の出力軸に連結されている。駆動シャフト90には、ウォーム91,92が固定されている。2つのウォーム91,92は、ウォーム91の螺旋方向とウォーム92の螺旋方向が互いに逆向きとなるように構成される。それぞれのカムシャフト84,85は、ウォームホイール93,94に固定されている。ウォーム91,92およびウォームホイール93,94は、カムシャフト84,85を互いに反対方向に回転させるように形成されている。
なお、駆動シャフトとしては、この形態に限られず、アクチュエータの動力を伝達可能に形成されていれば構わない。たとえば、モータの出力軸に減速機に連結され、減速機の出力軸に駆動シャフトが接続されていても構わない。
モータ89が駆動して、駆動シャフト90が回転することにより、ウォーム91,92が回転する。ウォーム91,92の回転力は、ウォームホイール93,94に伝達され、カムシャフト84,85を互いに反対方向に回転させることができる。本実施の形態における可変圧縮比機構は、電子制御ユニットにより制御されている。駆動装置は、対応する駆動回路を介して電子制御ユニットに接続されている。
図1を参照して、駆動装置によりカムシャフト84,85上に配置された円形カム88を、矢印97に示すように互いに反対方向に回転させると、偏心軸87が円形カム88の下端に向けて移動する。円形カム86は、カム挿入孔81内において、矢印96に示すように円形カム88と反対方向に回転する。この結果、シリンダヘッド4は、シリンダブロック2に近づく向きに移動して、燃焼室5の容積は小さくなる。
図4に、本実施の形態の内燃機関におけるシリンダブロックおよびシリンダヘッドの部分の他の概略断面図を示す。図4は、可変圧縮比機構により高圧縮比になったときの概略図である。偏心軸87が円形カム88の下部まで移動すると、円形カム88の中心軸が偏心軸87よりも上方に位置する。シリンダブロック2とシリンダヘッド4との相対位置は、円形カム86の中心軸と円形カム88の中心軸との距離によって定まる。矢印98に示すようにシリンダヘッド4がシリンダブロック2に近づくほど、ピストン3が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積が小さくなる。この結果、圧縮比を高くすることができる。また、カムシャフト84,85を矢印97と反対向きに回転させることにより、シリンダヘッド4がシリンダブロック2から離れる向きに移動し、圧縮比を低下させることができる。
本実施の形態における可変圧縮比機構は、シリンダブロック2に対してシリンダヘッド4が相対的に移動することにより、燃焼室5の容積が可変に形成されている。本実施の形態においては、下死点から上死点までのピストンの行程容積と燃焼室の容積のみから定まる圧縮比を機械圧縮比と言う。機械圧縮比は、(機械圧縮比)=(燃焼室の容積+下死点から上死点までのピストンの行程容積)/(燃焼室の容積)で示される。
図4ではピストン3が圧縮上死点に到達しており、燃焼室5の容積が小さくなっている。吸入空気量が一定の場合には圧縮比が高くなる。この状態は、機械圧縮比が高い状態である。これに対して、図1ではピストン3が圧縮上死点に到達しており、燃焼室5の容積が大きくなっている。吸入空気量が一定の場合には圧縮比が低くなる。この状態は、機械圧縮比が低い状態である。このように、本実施の形態における内燃機関は、運転期間中に圧縮比を変更することができる。たとえば、内燃機関の運転状態に応じて、可変圧縮比機構により圧縮比を変更することができる。
なお、実際の圧縮比である実圧縮比は、機械圧縮比を変更する他にも、吸気弁の閉弁時期を変更することにより変化させることができる。内燃機関が吸気弁の閉弁時期を変更可能な可変動弁機構を備える場合には、可変動弁機構と可変圧縮比機構とを作動させることにより実圧縮比を変更することができる。
本実施の形態における可変圧縮比機構は、回転軸を偏心させた円形カムを回転させることにより、シリンダブロックに対してシリンダヘッドを相対的に移動させているが、この形態に限られず、シリンダブロックに対してシリンダヘッドを相対的に移動させる任意の機構を採用することができる。
図1および図4を参照して、機械圧縮比を変更すると、シリンダブロック2に対してシリンダヘッド4がピストン3の移動方向に相対的に移動する。この時に、シリンダヘッド4の挿入部4aは、穴部2aの延びる方向に沿って移動する。挿入部4aにシール部材17が配置されていることにより、シリンダブロック2に対してシリンダヘッド4が相対的に移動しても燃焼室5の密閉を維持することができる。燃焼室5の気体が機関本体1の外部に漏れることを抑制することができる。また、シリンダブロック2とシリンダヘッド4との境界の部分には、機関本体1の外周に沿ってブーツシール18が配置されている。ブーツシール18を配置することにより、燃焼室5の気体が機関本体1の外部に流出することを抑制できる。
ここで、クランクケースとシリンダブロックが個別に形成され、クランクケースに対してシリンダブロックが相対的に移動する可変圧縮比機構を備える内燃機関を比較例に取り上げる。比較例の内燃機関では、クランクケースが不動部になり、シリンダブロックおよびシリンダヘッドが一体的に移動する可動部になる。これに対して、本実施の形態の内燃機関は、シリンダブロックとクランクケースとを一体的に構成することができる。このために、シリンダブロックを含む不動部の剛性を高くすることができる。複数の気筒において燃料が燃焼する時期が異なるために、気筒の並ぶ方向において揺動するピッチング運動が生じる場合がある。本実施の形態の内燃機関ではシリンダブロックを含む不動部の剛性を高くすることができるために、ピッチング運動を低減することができる。この結果、ピッチング運動に起因する振動を低減することができる。
また、比較例における可変圧縮比機構を備える内燃機関では、ピストンの移動方向に垂直な方向のスラスト力が可動部のシリンダブロックに加わるために振動が生じ易くなる。一方で、本実施の形態の内燃機関においては、シリンダブロックが車両本体に固定されて不動部を構成している。ピストンの移動により生じるスラスト力は、不動部であるシリンダブロックに作用する。このために、複数の気筒が並ぶ方向と垂直な方向において揺動するローリング運動を抑制することができる。この結果、ローリング運動に起因する振動の発生を抑制することができる。
このように、シリンダブロックに対してシリンダヘッドが相対的に移動する可変圧縮比機構を備える内燃機関では、効果的に機関本体1の振動を抑制することができる。図2および図3を参照して、本実施の形態の可変圧縮比機構のカムシャフト84,85は、シリンダブロック2の上部に配置されている。また、モータ89および駆動シャフト90は、シリンダブロック2の上部に配置されている。モータ89および駆動シャフト90は、複数の穴部2aが並ぶ方向において、シリンダブロック2のほぼ中央に配置されている。すなわち、モータ89および駆動シャフト90は、シリンダブロック2の長手方向の中央部に配置されている。
図5に、本実施の形態におけるシリンダブロックの概略平面図を示す。図5は、シリンダヘッド4が配置される側から平面視した概略図である。本実施の形態の内燃機関は、複数の気筒を含む。本実施の形態の機関本体1は、第1の気筒74a、第2の気筒74b、第3の気筒74cおよび第4の気筒74dを有する。本実施の形態の内燃機関では、複数の気筒が1列に並んで配置されている。すなわち、穴部2aがシリンダブロック2の長手方向に並んで配置されている。
それぞれの穴部2aの周りには、シリンダライナ15、穴部2aの壁面およびピストン3を冷却するために冷却水流路が形成されている。シリンダブロック2は、冷却水流路としてのウォータジャケット72を含む。ウォータジャケット72は、複数の穴部2aを取り囲むように形成されている。ウォータジャケット72には機関冷却水が供給され、シリンダブロック2の燃焼室5の周りの部分を冷却することができる。
図6に、駆動シャフトに沿って切断したシリンダブロックとシリンダヘッドとの概略断面図を示す。図6は、図2におけるB−B線に沿って機関本体1を幅方向に切断したときの断面図である。本実施の形態の機関本体1は、クランクケース22とオイルパン23とを含む。クランクケース22は、シリンダブロック2に固定されている。オイルパン23は、クランクケース22に固定されている。オイルパン23の内部には、潤滑油としてのオイルが貯留されている。
図2、図5および図6を参照して、本実施の形態の可変圧縮比機構の駆動装置の駆動シャフト90は、シリンダブロック2の複数の穴部2a同士の間に配置されている。本実施の形態においては、第2の気筒74bと第3の気筒74cとの間に駆動シャフト90が配置されている。駆動シャフト90は、複数の穴部2aが延びる方向に垂直な方向に延びるように配置されている。すなわち、駆動シャフト90は、第2の気筒74bと第3の気筒74cとの間の領域を横切るように配置されている。
モータ89および駆動シャフト90は、シリンダブロック2に支持されている。シリンダブロック2は、駆動シャフト90を挿通する挿通穴2bを有する。挿通穴2bは、第2の気筒74bと第3の気筒74cとの間に形成されている。また、挿通穴2bの両側の端部には軸受部71が形成されている。軸受部71は、駆動シャフト90を支持する。モータ89および駆動シャフト90は、シリンダブロック2の上部に配置されている。シリンダブロック2の幅方向の両側の端部には、ウォーム91,92とウォームホイール93,94とが配置されている。
このような構成の可変圧縮比機構の場合に、駆動シャフト90が配置されている気筒同士の間の領域にウォータジャケット72を形成することは困難である。ウォータジャケット72は、ピストン3が圧縮上死点に到達して形成される燃焼室5の周りの部分を取り囲むように形成することが好ましい。このために、ウォータジャケット72は、所定の深さを有することが好ましい。ところが、第2の気筒74bと第3の気筒74cとの間の領域には、挿通穴2bが形成されているために、所定の深さのウォータジャケットを形成することが困難である。
さらに、複数の気筒同士の間の領域においては、互いに対向するウォータジャケット72の冷却水流路同士を連通させる冷却水流路73が形成される。本実施の形態では、冷却水流路73は、第1の気筒74aと第2の気筒74bとの間の領域に形成されている。また、冷却水流路73は、第3の気筒74cと第4の気筒74dとの間の領域に形成されている。冷却水流路73は、複数の気筒が並ぶ方向に垂直な方向に延びるように形成することができる。冷却水流路73は、例えば、ドリルによりシリンダブロックの斜め上方から反対側の斜め下方に向けて貫通穴を形成することができる。冷却水流路73を形成することにより、複数の気筒同士の間の領域にも機関冷却水が流通して、燃焼室5の周りの部分を効果的に冷却することができる。
ところが、駆動装置の駆動シャフト90が配置されている第2の気筒74bと第3の気筒74cとの間の領域では、気筒同士の間を横断する冷却水流路73を形成することが困難である。この結果、機関冷却水では、第2の気筒74bと第3の気筒74cとに挟まれる領域を十分に冷却することができない虞がある。
図5および図6を参照して、本実施の形態の内燃機関は、挿通穴2bの内径が駆動シャフト90の外径よりも大きく形成されている。駆動シャフト90の外面と挿通穴2bの内面との間には空間が形成されている。この空間は、潤滑油が流通するオイル流路67を構成する。挿通穴2bは、第2の気筒74bの燃焼室5の側方に形成され、更に、第3の気筒74cの側方に形成されている。オイル流路67にオイルを流通させることにより燃焼室5の周りの部分を冷却することができる。
本実施の形態における内燃機関は、可変圧縮比機構に潤滑油を供給する潤滑油供給手段としての潤滑油供給装置を含む。本実施の形態の潤滑油供給装置は、可変圧縮比機構の他にも機関本体1の各部分に潤滑油を供給するように形成されている。また、潤滑油供給装置は、電子制御ユニットに制御されている。
潤滑油供給装置は、オイルパン23の内部に貯留しているオイルを機関本体1の各部分に供給する。本実施の形態の潤滑油供給装置は、オイルストレーナ61、オイルポンプ62およびオイルフィルタ64を含む。オイルポンプ62により、オイルパン23に貯留するオイルがオイルフィルタ64に供給される。オイルストレーナ61およびオイルフィルタ64は、オイルの内部に残存する異物を除去する。異物が除去されたオイルは、主オイル流路としてのメインオイルギャラリ65に供給される。
メインオイルギャラリ65は、容積が大きな潤滑油流路である。機関本体1の各部分には、メインオイルギャラリ65からオイルが供給される。可変圧縮比機構にもメインオイルギャラリ65からオイルが供給される。たとえば、複数の円形カム86,88の摺動部分にオイルが供給される。また、本実施の形態の潤滑油供給装置は、オイルを冷却するためのオイルクーラ63を含む。オイルクーラ63は、例えば機関冷却水によりオイルを冷却可能に形成されている。
本実施の形態の潤滑油供給装置は、オイル流路66を含む。オイル流路66は、メインオイルギャラリ65とオイル流路67とを接続する。オイル流路66は、オイル流路67の一方の端部に接続されている。また、潤滑油供給装置は、オイル流路68を含む。オイル流路68は、シリンダブロック2の内部に形成されている。オイル流路68は、オイル流路67を流通したオイルをクランクケース22の内部に放出するように形成されている。オイル流路68は、オイル流路67の他方の端部に接続されている。
オイルポンプ62を駆動することにより、矢印101に示すように、オイルパン23に貯留するオイルが吸引されて、メインオイルギャラリ65にオイルが供給される。このときに、オイルクーラ63によりオイルが冷却される。
メインオイルギャラリ65に貯留するオイルは、矢印102に示すように、オイル流路66を通ってオイル流路67に流入する。矢印103に示すようにオイル流路67を流れるオイルは、第2の気筒74bと第3の気筒74cとの間の領域を流れる。この時にシリンダブロック2の上部を冷却することができる。シリンダブロック2の燃焼室5の周りの部分を冷却することができて、シリンダブロック2の穴部2aの壁面の温度上昇を抑制することができる。
第2の気筒74bと第3の気筒74cとの間の領域を冷却したオイルは、矢印104に示すように、オイル流路68を通ってシリンダブロック2の底面から放出される。オイルは、オイルパン23の内部に戻される。
駆動シャフト90の周りのオイル流路67は、潤滑油を溜める機能を有することが好ましい。シリンダブロック2から熱が伝達されるようにオイルは所定の時間をかけてオイル流路67を流れることが好ましい。また、オイル流路67の流路断面積は、除熱に十分な量のオイルが流通する大きさを有することが好ましい。すなわち、駆動シャフト90と挿通穴2bとの間には所定の間隔があることが好ましい。この間隔の大きさは内燃機関の大きさ等に依存するが、例えば、駆動シャフト90と挿通穴2bとの間には0.5mm以上の隙間があることが好ましい。更に好ましくは、駆動シャフト90と挿通穴2bとの間の間隔は1.0 mm以上である。このように、挿通穴2bを十分に大きく形成することにより燃焼室5の周りの部分を効果的に冷却することができる。
本実施の形態の内燃機関では、駆動シャフト90を支持する軸受部71は、挿通穴2bの端部に配置されている。また、軸受部71が挿通穴2bに連通している。この構成を採用することにより、軸受部71に潤滑油を供給して軸受部71を潤滑することができる。本実施の形態の内燃機関では、軸受部71にオイルを供給すると共にシリンダブロック2を冷却することができる。
本実施の形態の内燃機関では、複数の穴部2aが並ぶ方向において、シリンダブロック2の略中央に駆動シャフト90が配置されている。駆動シャフト90の一方の側には2つの気筒が配置され、他方の側には2つの気筒が配置されている。すなわち、駆動シャフト90は、シリンダブロック2の長手方向の中央部に配置されている。この構成を採用することにより、ウォームホイール93,94の一方の側に接続されるカムシャフト84,85の長さと、他方の側に接続されるカムシャフト84,85の長さとを、ほぼ同じにすることができる。この結果、一方の側のカムシャフト84,85が長くなることを回避することができて、カムシャフト84,85の捩じれを抑制することができる。
なお、駆動シャフトが配置される領域については、この形態に限られず、シリンダブロックの上部の穴部同士の間の領域に駆動シャフトを配置することができる。たとえば、第1の気筒と第2の気筒との間の領域に駆動シャフトを配置しても構わない。
本実施の形態の潤滑油供給装置では、温度が上昇したオイルがオイルパン23に戻された後に、オイルクーラ63により冷却されるが、この形態に限られず、潤滑油供給装置はオイルが冷却可能に形成されていれば構わない。例えば、オイルクーラが配置されておらずに、機関本体の各部分において、シリンダブロックやシリンダヘッドを流れる冷却水によりオイルが冷却されるように形成されていても構わない。
上記の実施の形態のシリンダヘッドは、シリンダブロックの穴部に挿入される挿入部を有するが、この形態に限られず、燃焼室の頂面を含んでいれば構わない。たとえば、シリンダヘッドに凹部が形成され、この凹部の内部にシリンダブロックから突出するシリンダライナが挿入されている内燃機関にも本発明を適用することができる。
なお、上記の実施の形態においては、シリンダヘッドに加えてカムキャリアを備える内燃機関を例示したが、この形態に限られず、シリンダヘッドにて吸気弁等を駆動するカムシャフトを支持し、カムキャリアを備えていない内燃機関にも本発明を適用することができる。
上述のそれぞれの図において、同一または相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に示される形態の変更が含まれている。