図1から図9を参照して、実施の形態における内燃機関について説明する。本実施の形態においては、車両に配置されている内燃機関を例に取り上げて説明する。
図1は、本実施の形態における内燃機関の概略図である。本実施の形態における内燃機関は、火花点火式である。内燃機関は、機関本体1を備える。機関本体1は、シリンダブロック2とシリンダヘッド4とを含む。シリンダブロック2の内部には穴部が形成されており、穴部にはピストン3が配置されている。ピストン3は、シリンダブロック2の内部で往復運動する。
燃焼室5は、それぞれの気筒ごとに形成されている。燃焼室5には、機関吸気通路および機関排気通路が接続されている。機関吸気通路は、燃焼室5に空気または燃料と空気との混合気を供給するための通路である。機関排気通路は、燃料の燃焼により生じた排気を燃焼室5から排出するための通路である。
シリンダヘッド4には、吸気ポート7および排気ポート9が形成されている。吸気弁6は吸気ポート7の端部に配置され、燃焼室5に連通する機関吸気通路を開閉可能に形成されている。排気弁8は、排気ポート9の端部に配置され、燃焼室5に連通する機関排気通路を開閉可能に形成されている。シリンダヘッド4には、点火装置としての点火プラグ10が固定されている。点火プラグ10は、燃焼室5にて燃料を点火するように形成されている。
本実施の形態における内燃機関は、燃焼室5に燃料を供給するための燃料噴射弁11を備える。本実施の形態における燃料噴射弁11は、吸気ポート7に燃料を噴射するように配置されている。燃料噴射弁11は、この形態に限られず、燃焼室5に燃料を供給できるように配置されていれば構わない。たとえば、燃料噴射弁は、燃焼室に直接的に燃料を噴射するように配置されていても構わない。
燃料噴射弁11は、電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプ29を介して燃料タンク28に接続されている。燃料タンク28内に貯蔵されている燃料は、燃料ポンプ29によって燃料噴射弁11に供給される。
各気筒の吸気ポート7は、対応する吸気枝管13を介してサージタンク14に連結されている。サージタンク14は、吸気ダクト15を介してエアクリーナ(図示せず)に連結されている。吸気ダクト15の内部には、吸入空気量を検出するエアフローメータ16が配置されている。吸気ダクト15の内部には、ステップモータ17によって駆動されるスロットル弁18が配置されている。一方、各気筒の排気ポート9は、対応する排気枝管19に連結されている。排気枝管19は、排気処理装置21に連結されている。本実施の形態における排気処理装置21は、三元触媒20を含む。排気処理装置21は、排気管22に接続されている。
本実施の形態における内燃機関は、電子制御ユニット31を備える。本実施の形態における電子制御ユニット31は、デジタルコンピュータを含む。電子制御ユニット31は、双方向バス32を介して相互に接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)33、ROM(リードオンリメモリ)34、CPU(マイクロプロセッサ)35、入力ポート36および出力ポート37を含む。
エアフローメータ16の出力信号は、対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。アクセルペダル40には、負荷センサ41が接続されている。負荷センサ41は、アクセルペダル40の踏込量に比例した出力電圧を発生する。この出力電圧は、対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。
クランク角センサ42は、クランクシャフトが、例えば所定の角度を回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスは入力ポート36に入力される。クランク角センサ42の出力により、機関回転数を検出することができる。また、クランク角センサ42の出力により、クランク角度を検出することができる。機関排気通路において、排気処理装置21の下流には、排気処理装置21の温度を検出する温度検出器としての温度センサ43が配置されている。温度センサ43の出力は、対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。
電子制御ユニット31の出力ポート37は、それぞれの対応する駆動回路39を介して燃料噴射弁11および点火プラグ10に接続されている。本実施の形態における電子制御ユニット31は、燃料噴射制御や点火制御を行うように形成されている。すなわち、燃料を噴射する時期および燃料の噴射量が電子制御ユニット31により制御される。更に点火プラグ10の点火時期が電子制御ユニット31により制御されている。また、出力ポート37は、対応する駆動回路39を介して、スロットル弁18を駆動するステップモータ17および燃料ポンプ29に接続されている。これらの機器は、電子制御ユニット31により制御されている。
吸気弁6は、吸気カム51が回転することにより開閉するように形成されている。排気弁8は、排気カム52が回転するようことにより開閉するように形成されている。本実施の形態における内燃機関は、可変動弁機構を備える。可変動弁機構は、吸気弁6の開閉時期を変更する可変バルブタイミング装置53を含む。本実施の形態における可変バルブタイミング装置53は、吸気カム51の回転軸に接続されている。可変バルブタイミング装置53は、電子制御ユニット31により制御されている。
本実施の形態における内燃機関は、圧縮比可変機構を備える。本発明においては、ピストンが圧縮上死点に達したときにピストンの冠面とシリンダヘッドとに囲まれる気筒内の空間を燃焼室と称する。内燃機関の圧縮比は、燃焼室の容積等に依存して定まる。本実施の形態における圧縮比可変機構は、燃焼室の容積を変更することにより圧縮比を変更するように形成されている。燃焼室における実際の圧縮比である実圧縮比は、(実圧縮比)=(燃焼室の容積+吸気弁が閉じている期間のピストンの行程容積)/(燃焼室の容積)で示すことができる。
図2は、本実施の形態における内燃機関の圧縮比可変機構の分解斜視図である。図3は、内燃機関の燃焼室の部分の第1の概略断面図である。図3は、圧縮比可変機構により高圧縮比になったときの概略図である。本実施の形態における内燃機関は、クランクケースを含む下部構造物と、下部構造物の上側に配置されているシリンダブロックとが互いに相対移動する。本実施の形態における下部構造物は、圧縮比可変機構を介してシリンダブロックを支持している。また、本実施の形態における下部構造物は、クランクシャフトを支持している。
図2および図3を参照して、シリンダブロック2の両側の側壁の下方には複数個の突出部80が形成されている。突出部80には、断面形状が円形のカム挿入孔81が形成されている。クランクケース79の上部には、複数個の突出部82が形成されている。突出部82には、断面形状が円形のカム挿入孔83が形成されている。クランクケース79の突出部82は、シリンダブロック2の突出部80同士の間に嵌合する。
本実施の形態における圧縮比可変機構は、シリンダブロックの支持軸としての一対のカムシャフト84,85を含む。カムシャフト84,85には、それぞれのカム挿入孔83内に回転可能に挿入される円形カム88が配置されている。円形カム88は各カムシャフト84,85の回転軸線と同軸状に配置されている。一方で、それぞれの円形カム88の両側には、カムシャフト84,85の回転軸線に対して偏心して配置された偏心軸87が延びている。この偏心軸87上には、別の円形カム86が偏心して回転可能に取付けられている。これらの円形カム86は円形カム88の両側に配置されている。円形カム86は対応するカム挿入孔81内に回転可能に挿入されている。
圧縮比可変機構は、モータ89を含む。モータ89の回転軸90には、螺旋方向が互いに逆向きの2つのウォームギヤ91,92が取付けられている。それぞれのカムシャフト84,85の端部には、歯車93,94が固定されている。歯車93,94は、ウォームギヤ91,92と噛み合うように配置されている。モータ89が回転軸90を回転させることにより、カムシャフト84,85を、互いに反対方向に回転させることができる。
図3を参照して、それぞれのカムシャフト84,85上に配置された円形カム88を、矢印97に示すように互いに反対方向に回転させると、偏心軸87が円形カム88の上端に向けて移動する。円形カム86は、カム挿入孔81内において、矢印96に示すように円形カム88と反対方向に回転する。
図4に、本実施の形態における内燃機関の燃焼室の部分の第2の概略断面図を示す。図4は、圧縮比可変機構により低圧縮比になったときの概略図である。図4に示されるように偏心軸87が円形カム88の上端まで移動すると、円形カム88の中心軸が偏心軸87よりも下方に移動する。図3および図4を参照して、クランクケース79とシリンダブロック2との相対位置は、円形カム86の中心軸と円形カム88の中心軸との距離によって定まる。円形カム86の中心軸と円形カム88の中心軸との距離が大きくなるほどシリンダブロック2はクランクケース79から離れる。矢印98に示すようにシリンダブロック2がクランクケース79から離れるほど、ピストン3が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積が大きくなる。
このように、本実施の形態における圧縮比可変機構は、クランクケースに対してシリンダブロックが相対的に移動することにより、燃焼室の容積が可変に形成されている。本実施の形態においては、下死点から上死点までのピストンの行程容積と燃焼室の容積のみから定まる圧縮比を機械圧縮比と言う。図3ではピストン3が圧縮上死点に到達しており、燃焼室5の容積が小さくなっている。吸入空気量が常時一定の場合には圧縮比が高くなる。この状態は、機械圧縮比が高い状態である。これに対して、図4ではピストン3が圧縮上死点に到達しており、燃焼室5の容積が大きくなっている。吸入空気量が常時一定の場合には圧縮比が低くなる。この状態は、機械圧縮比が低い状態である。本実施の形態における内燃機関は、運転期間中に圧縮比を変更することができる。たとえば、内燃機関の運転状態に応じて、圧縮比可変機構により圧縮比を変更することができる。
本実施の形態における圧縮比可変機構は、回転軸を偏心させた円形カムを回転させることにより、クランクケースに対してシリンダブロックを相対的に移動させているが、この形態に限られず、任意の機構によりクランクケースに対してシリンダブロックを相対的に移動させることができる。
内燃機関は、一般的に機関負荷が低いほど熱効率が悪くなる。従って、内燃機関の運転時における熱効率を向上させるためには、負荷が低いときの熱効率を向上させることが好ましい。本実施の形態における圧縮比可変機構にて圧縮比を高くすることにより熱効率を向上させることができる。特に、圧縮比を高くすると、ピストンが上死点から下死点に向かうときの膨張比が大きくなるために熱効率が向上する。ところが、圧縮比可変機構により圧縮比を上昇させると、所定の圧縮比でノッキング等の異常燃焼が発現する。
本実施の形態における内燃機関は、可変動弁機構としての可変バルブタイミング装置を備え、吸気弁の開閉時期が可変に形成されている。吸気弁を閉じる時期を遅くすることにより、燃焼室に流入する空気量を少なくすることができる。すなわち、吸気弁を閉じる時期を遅くすることにより、燃焼室において混合気が圧縮される時の実圧縮比を小さくすることができる。たとえば、機械圧縮比を大きくした状態で、吸気弁の閉じる時期を遅くすることにより、実圧縮比を略一定に保つことができる。吸気弁の閉じる時期を遅くしても機械圧縮比が大きいために膨張比は大きな状態である。このために負荷が小さい時の熱効率の向上を図ることができる。
図5に、本実施の形態における機関本体の各部位に潤滑油を供給する油路を説明する機関本体の概略断面図を示す。本実施の形態における内燃機関は、機関本体の各部位に潤滑油を供給する潤滑油供給装置を備える。
本実施の形態における下部構造物は、クランクケース79に固定されているオイルパン66を含む。オイルパン66の底部には、潤滑油が貯留される。ピストン3は、コネクティングロッド61を介してクランクシャフト62に支持されている。クランクケース79とオイルパン66とに囲まれる空間の内部において、クランクシャフト62が回転する。
本実施の形態における潤滑油供給装置は、オイルパン66に貯留する潤滑油を吸い上げて加圧するオイルポンプ64を備える。本実施の形態におけるオイルポンプ64は、ドライブチェーン65を介してクランクシャフト62の回転力が伝達されている。オイルポンプ64は、ドライブチェーン65により伝達された回転力により潤滑油を加圧する。オイルポンプとしては、この形態に限られず、潤滑油を加圧できるように形成されていれば構わない。
本実施の形態における潤滑油供給装置は、オイルストレーナ63とオイルフィルタ67とを有する。オイルストレーナ63は、潤滑油に含まれる大きな異物を除去する。オイルフィルタ67は、潤滑油に含まれる小さな異物を除去する。
オイルポンプ64が駆動することにより、オイルパン66の底部に貯留する潤滑油は、矢印101に示すように、オイルストレーナ63を通ってオイルポンプ64に流入する。オイルポンプ64により加圧された潤滑油は、矢印102に示すように、オイルフィルタ67に流入する。
クランクケース79の内部には、潤滑油が流れる油路が形成されている。本実施の形態におけるクランクケース79の油路には、主油路としてのメインオイルギャラリ71が含まれる。オイルフィルタ67を流通した潤滑油は、矢印103に示すように、メインオイルギャラリ71に供給される。
本実施の形態の内燃機関では、潤滑油は、メインオイルギャラリ71から機関本体1の各部位に供給される。例えば、クランクケース79の内部に配置される部材においては、矢印104に示すように、クランクシャフト62を回転可能に支持するクランクジャーナル部に潤滑油が供給される。また、コネクティングロッド61の大端部や、オイルポンプ64を駆動するドライブチェーン65などに潤滑油が供給される。メインオイルギャラリ71には、クランクケース79の内部に形成されているクランクケース内油路75が接続されている。
本実施の形態におけるシリンダブロック2は、潤滑油が流れるブロック内油路72を含む。ブロック内油路72は、シリンダブロック2の内部に形成されている。本実施の形態におけるブロック内油路72は、シリンダブロック2の上面に向かって延びている。
本実施の形態における内燃機関は、クランクケース79に形成されている油路と、シリンダブロック2に形成されている油路とを接続する油路接続機構60を備える。本実施の形態における油路接続機構60は、クランクケース内油路75とブロック内油路72とを接続する。
図2および図5を参照して、本実施の形態におけるクランクケース79は、壁部121を含む。壁部121は、突出部82から突出するように形成されている。シリンダブロック2とクランクケース79とが相対移動する方向に垂直な方向に、シリンダブロック2とクランクケース79とが対向する部分が形成されている。本実施の形態における油路接続機構60は、シリンダブロック2とクランクケース79の壁部121とが対向する部分に配置されている。
図6に、本実施の形態における油路接続機構の第1の拡大概略断面図を示す。図2、図5および図6を参照して、本実施の形態における油路接続機構60は、シリンダブロック2に配置されているブロック側摺動部としてのブロック側スライド部材122を含む。本実施の形態におけるブロック側スライド部材122は、シリンダブロック2の本体に固定されている。本実施の形態における油路接続機構60は、クランクケース79に配置されている構造物側摺動部としてのクランクケース側スライド部材123を含む。クランクケース側スライド部材123は、壁部121に固定されている。
本実施の形態におけるブロック側摺動部は、シリンダブロックの本体と別体で形成されているが、この形態に限られず、シリンダブロックの本体に一体的に形成されていても構わない。また、本実施の形態における構造物側摺動部は、クランクケースの壁部と別体で形成されているが、この形態に限らず、クランクケースに一体的に形成されていても構わない。
ブロック側スライド部材122およびクランクケース側スライド部材123は、シリンダブロック2とクランクケース79とが相対移動する方向にほぼ平行な接触面にて互いに接触している。また、ブロック側スライド部材122とクランクケース側スライド部材123とが互いに摺動するように形成されている。
ブロック側スライド部材122は、内部に油路122aを有する。油路122aは、ブロック側スライド部材122を貫通している。油路122aは、ブロック内油路72に接続されている。クランクケース側スライド部材123は、内部に油路123aを有する。油路123aは、クランクケース側スライド部材123を貫通している。油路123aは、クランクケース内油路75に接続されている。クランクケース79内のメインオイルギャラリ71に供給された潤滑油は、矢印105に示すように、クランクケース内油路75、クランクケース側スライド部材123の油路123a、およびブロック側スライド部材122の油路122aを通って、シリンダブロック2のブロック内油路72に供給される。
図7に、本実施の形態におけるブロック側スライド部材の概略平面図を示す。図7は、クランクケース側スライド部材と摺動する面を示している。ブロック側スライド部材122の油路122aは、矢印98に示されるシリンダブロック2がクランクケース79に対して相対移動する方向に延びるように形成されている。油路122aは、クランクケース側スライド部材123と接触する面において長穴になるように形成されている。
本実施の形態におけるブロック側スライド部材122の油路122aは、クランクケース79とシリンダブロック2とが相対移動したときに、クランクケース側の油路123aとシリンダブロック側の油路122aとが互いに接続された状態が維持されるように長く形成されている。
図8に、本実施の形態におけるクランクケース側スライド部材の概略平面図を示す。図8は、ブロック側スライド部材と摺動する面を示している。クランクケース側スライド部材123の油路123aは、平面形状がほぼ円形になるように形成されている。また、クランクケース側スライド部材123の摺動面には、油路123aから外側に向かって延びる油溝123bを有する。本実施の形態における油溝123bは、矢印98に示されるシリンダブロック2がクランクケース79に対して相対移動する方向に沿って延びるように形成されている。
図6に示す例では、機械圧縮比が高い状態を示している。すなわち、燃焼室5の容積が小さくなっているときの概略断面図である。クランクケース側スライド部材123の油路123aと、ブロック側スライド部材122の油路122aとは互いに連通している。圧縮機可変機構が駆動することにより、矢印98に示すように、壁部121に対してシリンダブロック2が相対的に移動する。
図9は、本実施の形態における油路接続機構の第2の拡大概略断面図である。図9に示す例では、機械圧縮比が低い状態を示している。すなわち、燃焼室5の容積が大きくなっているときの概略断面図である。図6および図9を参照して、シリンダブロック2が矢印98に示す向きに壁部121に対して相対的に移動する。この場合においても、ブロック側スライド部材122の油路122aが、相対移動する方向に長く形成されているために、油路122aはクランクケース側スライド部材123の油路123aに接続されている。
このように、本実施の形態における油路接続機構は、クランクケース79とシリンダブロック2とが相対移動した場合にも、シリンダブロック2からクランクケース79に対して潤滑油を供給することができる。本実施の形態における油路接続機構は、クランクケースに対するシリンダブロックの相対的な位置に関わらず、潤滑油を連続的にシリンダブロックに供給することができる。例えば、圧縮比可変機構が駆動してシリンダブロックがクランクケースに対して相対的に移動している期間中においても潤滑油を供給することができる。
本実施の形態においては、ブロック側スライド部材に長穴が形成されているが、この形態に限られず、クランクケース側スライド部材の油路およびブロック側スライド部材の油路のうち少なくとも一方が、クランクケース側スライド部材とブロック側スライド部材とが相対移動する範囲内において、互いの油路の接続が維持されるような相対移動の方向の長さを有していれば構わない。例えば、クランクケース側スライド部材123の油路123aが、相対移動する方向に延びる長穴状に形成され、ブロック側スライド部材122の油路122aが、断面形状が円形に形成されていても構わない。
図5を参照して、本実施の形態における内燃機関は、シリンダブロックの支持軸としてのカムシャフト84,85を介さずに、クランクケース79の油路からシリンダブロック2の油路に潤滑油を供給することができる。このために、潤滑油を供給する油路の流路断面積が小さくなることを回避でき、クランクケース79の油路からシリンダブロック2の油路に向かって十分な量の潤滑油を供給することができる。または、オイルポンプの大きな吐出圧力を必要とせずに、シリンダブロック2の油路に十分な量の潤滑油を供給することができる。更に、機関本体の外側に湾曲可能な潤滑油管を配設しなくても、シリンダブロックに十分な量の潤滑油を供給することができて、潤滑油管を配設する場合と比べて部品点数を少なくすることができる。
または、本実施の形態における内燃機関は、シリンダブロックの支持軸の軸受けとして、転がり軸受けを採用することができる。転がり軸受けの部分を通して、クランクケースからシリンダブロックに潤滑油を供給する内燃機関の場合には、転がり軸受けの部分で潤滑油の漏れが大きくなり、油圧が大幅に低下する。このために、各部位に十分な量の潤滑油を供給することができなくなる虞がある。本実施の形態の油路接続機構を採用することにより、シリンダブロックの支持軸を通らずに、クランクケース79の油路からシリンダブロック2の油路に潤滑油を供給できるために、転がり軸受けを採用しても、各部位に十分な量の潤滑油を供給することができる。
本実施の形態の内燃機関において、シリンダブロック2の支持軸の軸受け部には、メインオイルギャラリ71およびブロック内油路72のうち少なくとも一方の油路から潤滑油を供給することができる。また、シリンダブロックの軸受けとして、転がり軸受けを採用することにより、圧縮比可変機構が駆動するときの抵抗が小さくなり、圧縮比可変機構の応答性が向上する。または、圧縮比可変機構を駆動するための駆動トルクが小さくなり、圧縮比可変機構の駆動装置を小型にすることができる。
本実施の形態における潤滑油供給装置は、シリンダブロック2の内部に形成されたブロック内油路72を介して、矢印106に示すようにシリンダヘッド4のヘッド内油路73に潤滑油を供給している。ヘッド内油路73に供給された潤滑油は、シリンダヘッド4に配置されている各部材に供給することができる。例えば、吸気弁や排気弁を駆動するカムを含むカムシャフトを支持するカムジャーナル部、または可変動弁機構などに潤滑油を供給することができる。
シリンダブロック2に形成されているブロック内油路72は、機関本体の各部材に潤滑油を供給するように形成されていても構わない。例えば、ブロック内油路72は、シリンダブロック2の支持軸としてのカムシャフト84,85に潤滑油を供給する供給管、またはピストン3とシリンダボアとの摺動部分に潤滑油を噴射するオイルジェット管に接続されていても構わない。
図5を参照して、本実施の形態における内燃機関は、油路接続機構60が配置されている部分と反対側からシリンダブロック2を付勢する付勢機構59を備える。本実施の形態における付勢機構59は、付勢部材としてのコイルスプリング134を含む。
図2および図5を参照して、油路接続機構60が配置されている側と反対側のクランクケース79の突出部82には壁部131が形成されている。壁部131は、突出部82から突出するように形成されている。コイルスプリング134は、壁部131に固定されている。コイルスプリング134には、クランクケース側スライド部材133が固定されている。また、シリンダブロック2には、ブロック側スライド部材132が固定されている。
本実施の形態におけるブロック側スライド部材132およびクランクケース側スライド部材133は、それぞれが板状に形成されている。ブロック側スライド部材132およびクランクケース側スライド部材133は、クランクケース79とシリンダブロック2とが相対移動する方向に平行な接触面にて接触している。クランクケース79に対してシリンダブロック2が相対移動したときには、クランクケース側スライド部材133に対してブロック側スライド部材132が摺動するように形成されている。
本実施の形態の内燃機関においては、付勢機構59により、矢印107に示すようにシリンダブロック2が押圧される。シリンダブロック2が押圧されることにより、油路接続機構60のブロック側スライド部材122と、クランクケース側スライド部材123とを密着させることができる。ブロック側スライド部材122とクランクケース側スライド部材123との摺動部分に隙間が生じて摺動部分から潤滑油が多量に漏れ、シリンダブロック2のブロック内油路72に供給する油圧が低下することを抑制できる。
更に、シリンダブロック2の穴部において、ピストン3が上下方向に移動する。このときに、シリンダブロック2に対しては、ピストン3の移動方向に垂直な横方向の力が作用する。コイルスプリング134によりシリンダブロック2を押圧することにより、クランクケース79に対してシリンダブロック2が横方向に動くことを抑制できる。
本実施の形態においては、シリンダブロックを付勢する付勢部材として、コイルスプリングが採用されているが、この形態に限られず、シリンダブロックを付勢することができる任意の付勢部材を採用することができる。また、付勢機構は、シリンダブロックを付勢できる任意の機構を採用することができる。
図5を参照して、本実施の形態において、ヘッド内油路73はヘッド内油路74に接続されている。ヘッド内油路74は、潤滑油滴下管141に接続されている。潤滑油滴下管141は、ブロック側スライド部材132と、クランクケース側スライド部材133との摺動面に潤滑油を滴下するように形成されている。
潤滑油は、矢印106に示すように、シリンダブロック2のブロック内油路72からシリンダヘッド4のヘッド内油路73に供給される。さらに、潤滑油は、ヘッド内油路74を通って、潤滑油滴下管141に供給される。潤滑油は、矢印108に示すように、ブロック側スライド部材132と、クランクケース側スライド部材133との摺動部分に滴下される。このように付勢機構のブロック側スライド部材とクランクケース側スライド部材との摺動部分に潤滑油を供給することができる。
本実施の形態においては、シリンダヘッド4のヘッド内油路74から摺動部分に潤滑油を滴下しているが、この形態に限られず、ブロック側スライド部材132とクランクケース側スライド部材133との摺動部分に潤滑油を供給できる任意の機構を採用することができる。例えば、シリンダブロックの内部のブロック内油路を、付勢機構の近傍まで配設し、付勢機構の近傍から摺動部分に向けて潤滑油を噴射するように形成されていても構わない。
図8を参照して、本実施の形態における油路接続機構のクランクケース側スライド部材123の摺動面には、油路123aに連通する油溝123bが形成されている。この構成を採用することにより、油路123aを流れる潤滑油の一部を油溝123bに供給することができる。油路接続機構のブロック側スライド部材122とクランクケース側スライド部材123との摺動部分に潤滑油を供給することができる。
本実施の形態においては、クランクケース側スライド部材123に油溝123bが形成されているが、この形態に限られず、ブロック側スライド部材およびクランクケース側スライド部材のうち少なくとも一方の接触面に油溝を形成することができる。更に、油路接続機構の摺動部分に潤滑油を供給する機構としては、この形態に限られず、任意の潤滑油を供給する機構を採用することができる。
このように、潤滑油を供給する油路接続機構またはシリンダブロックを付勢する付勢機構において、ブロック側スライド部材と構造物側スライド部材との間に潤滑油を供給することにより、ブロック側スライド部材とクランクケース側スライド部材との摺動部分での摩擦を軽減することができる。圧縮機可変機構のモータの消費電力を小さくすることができる。このため、蓄電池からの電力供給量を少なくすることができて、内燃機関の燃料消費量を低減することができる。
本実施の形態における内燃機関は、ピストンが圧縮上死点に到達したときの燃焼室の容積を変更する圧縮比可変機構に加えて、吸気弁の閉弁時期を変更する可変動弁機構を備えるが、この形態に限られず、可変動弁機構を備えていない内燃機関にも本発明を適用することができる。
上述のそれぞれの図において、同一または相当する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に示される変更が含まれている。