JP5510372B2 - 可変圧縮比機構を備える内燃機関 - Google Patents

可変圧縮比機構を備える内燃機関 Download PDF

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Description

本発明は、可変圧縮比機構を備える内燃機関に関する。
シリンダブロックをクランクケースに対して相対移動させる可変圧縮比機構を備える内燃機関が公知である。このような可変圧縮比機構として、シリンダブロックとクランクケースとをカムシャフトを介して連結するものが提案されている(特許文献1参照)。
特開2009−024656 特開2005−220843
このような可変圧縮比機構を備える内燃機関において、機械圧縮比を最も高くするときにはシリンダブロックとクランクケースとが比較的広い面積において接触する場合があるが、このような場合を除けば、シリンダブロックはクランクケースから離間しており、クランクシャフトを支持する軸受において発生した摩擦熱は、クランクケースから可変圧縮比機構のカムシャフトを介して冷却水通路が設けられたシリンダブロックへ伝熱されるしかなく、クランクシャフト軸受の放熱が不十分となって焼付けが発生することがある。
従って、本発明の目的は、シリンダブロックをクランクケースに対して相対移動させる可変圧縮比機構を備える内燃機関において、クランクシャフト軸受におけるシリンダブロックへの放熱を良好にしてクランクシャフト軸受の焼付けを発生し難くすることである。
本発明による請求項1に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関は、シリンダブロックをクランクケースに対して相対移動させる可変圧縮比機構を備える内燃機関であって、前記クランクケースにはクランクシャフト軸受を固定するためのサポートが設けられ、前記サポートは、冷却水通路が設けられた前記シリンダブロックの底面に対向する端面を有し、互いに対向する前記サポートの前記端面及び前記シリンダブロックの前記底面の一方には突起部が設けられ、前記端面及び前記底面の他方には前記突起部が嵌合する穴部が設けられ、前記可変圧縮比機構により前記シリンダブロックを前記クランクケースに対して相対移動させる際には、前記突起部は前記穴部から外れることなく前記穴部内を摺動することを特徴とする。
本発明による請求項2に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関は、請求項1に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関において、前記突起部は、前記シリンダブロックの前記底面に設けられ、前記突起部の中心軸線は、シリンダヘッドを前記シリンダブロックに固定するためのボルトの中心軸線と略一致することを特徴とする。
本発明による請求項1に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関によれば、シリンダブロックをクランクケースに対して相対移動させる可変圧縮比機構を備える内燃機関であって、クランクケースにはクランクシャフト軸受を固定するためのサポートが設けられ、サポートは、冷却水通路が設けられたシリンダブロックの底面に対向する端面を有し、互いに対向するサポートの端面及びシリンダブロックの底面の一方には突起部が設けられ、端面及び底面の他方には突起部が嵌合する穴部が設けられ、可変圧縮比機構によりシリンダブロックをクランクケースに対して相対移動させる際には、突起部は穴部から外れることなく穴部内を摺動するようになっている。それにより、可変圧縮比機構によりシリンダブロックをクランクケースに対して相対移動させる際において、クランクシャフト軸受のサポートの端面及びシリンダブロックの底面の一方に設けられた突起部と他方に設けられた穴部とが摺動により常に接触し続けるために、クランクシャフト軸受の摩擦熱は、突起部及び穴部を介して、クランクシャフト軸受に密着するサポートから冷却水通路が設けられて良好に冷却されるシリンダブロックへ良好に放熱され、クランクシャフト軸受の焼付けを発生し難くすることができる。
本発明による請求項2に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関によれば、請求項1に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関において、突起部は、シリンダブロックの底面に設けられ、突起部の中心軸線は、シリンダヘッドをシリンダブロックに固定するためのボルトの中心軸線と略一致するようになっている。それにより、ボルトによりシリンダヘッドをシリンダブロックに締め付ける際に、ボルトの延長線上のシリンダブロック部分を引き上げる力が発生するが、突起部によりボルトの延長線上のシリンダブロック部分の剛性は高められており、ボルトの延長線上のシリンダブロックの変形を抑制することができる。
内燃機関の全体図である。 可変圧縮比機構の分解斜視図である。 図解的に表した内燃機関の側面断面図である。 可変バルブタイミング機構を示す図である。 吸気弁および排気弁のリフト量を示す図である。 機械圧縮比、実圧縮比および膨張比を説明するための図である。 理論熱効率と膨張比との関係を示す図である。 通常のサイクルおよび超高膨張比サイクルを説明するための図である。 機関負荷に応じた機械圧縮比等の変化を示す図である。 内燃機関のクランクシャフト軸受のサポート位置でのクランクシャフトの軸線に垂直な概略断面図である。
図1は本発明による可変圧縮比機構を備える内燃機関の側面断面図を示す。図1を参照すると、1はクランクケース、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は燃焼室5の頂面中央部に配置された点火栓、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートを夫々示す。吸気ポート8は吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、各吸気枝管11には夫々対応する吸気ポート8内に向けて燃料を噴射するための燃料噴射弁13が配置される。なお、燃料噴射弁13は各吸気枝管11に取付ける代りに各燃焼室5内に配置してもよい。
サージタンク12は吸気ダクト14を介してエアクリーナ15に連結され、吸気ダクト14内にはアクチュエータ16によって駆動されるスロットル弁17と例えば熱線を用いた吸入空気量検出器18とが配置される。一方、排気ポート10は排気マニホルド19を介して例えば三元触媒を内蔵した触媒装置20に連結され、排気マニホルド19内には空燃比センサ21が配置される。
一方、図1に示される実施例ではクランクケース1とシリンダブロック2との連結部にクランクケース1とシリンダブロック2のシリンダ軸線方向の相対位置を変化させることによりピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更可能な可変圧縮比機構Aが設けられており、更に実際の圧縮作用の開始時期を変更可能な実圧縮作用開始時期変更機構Bが設けられている。なお、図1に示される実施例ではこの実圧縮作用開始時期変更機構Bは吸気弁7の閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構からなる。
図1に示されるようにクランクケース1とシリンダブロック2にはクランクケース1とシリンダブロック2間の相対位置関係を検出するための相対位置センサ22が取付けられており、この相対位置センサ22からはクランクケース1とシリンダブロック2との間隔の変化を示す出力信号が出力される。また、可変バルブタイミング機構Bには吸気弁7の閉弁時期を示す出力信号を発生するバルブタイミングセンサ23が取付けられており、スロットル弁駆動用のアクチュエータ16にはスロットル弁開度を示す出力信号を発生するスロットル開度センサ24が取付けられている。
電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備する。吸入空気量検出器18、空燃比センサ21、相対位置センサ22、バルブタイミングセンサ23およびスロットル開度センサ24の出力信号は夫々対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して点火栓6、燃料噴射弁13、スロットル弁駆動用アクチュエータ16、可変圧縮比機構Aおよび可変バルブタイミング機構Bに接続される。
図2は図1に示す可変圧縮比機構Aの分解斜視図を示しており、図3は図解的に表した内燃機関の側面断面図を示している。図2を参照すると、シリンダブロック2の両側壁の下方には互いに間隔を隔てた複数個の突出部50が形成されており、各突出部50内には夫々断面円形のカム挿入孔51が形成されている。一方、クランクケース1の上壁面上には互いに間隔を隔てて夫々対応する突出部50の間に嵌合せしめられる複数個の突出部52が形成されており、これらの各突出部52内にも夫々断面円形のカム挿入孔53が形成されている。各突出部52の位置において、クランクケース1には、クランクシャフトを支持するクランクシャフト軸受を固定するためのサポートSが形成されている。
図2に示されるように一対のカムシャフト54,55が設けられており、各カムシャフト54,55上には一つおきに各カム挿入孔53内に回転可能に挿入される同心部分58が位置している。各同心部分58は各カムシャフト54,55の回転軸線と共軸をなす。一方、各同心部分58の両側には図3に示すように各カムシャフト54,55の回転軸線に対して偏心配置された偏心部57が位置しており、この偏心部57上に別の円形カム56が偏心して回転可能に取付けられている。すなわち、偏心部57は円形カム56に形成された偏心孔に嵌合し、円形カム56は偏心孔を中心として偏心部57回りに回動するようになっている。図2に示されるようにこれら円形カム56は各同心部分58の両側に配置されており、これら円形カム56は対応する各カム挿入孔51内に回転可能に挿入されている。また、図2に示されるようにカムシャフト55にはカムシャフト55の回転角度を表す出力信号を発生するカム回転角度センサ25が取付けられている。
図3(A)に示すような状態から各カムシャフト54,55の同心部分58を図3(A)において矢印で示される如く互いに反対方向に回転させると偏心部57が互いに離れる方向に移動するために円形カム56がカム挿入孔51内において同心部分58とは反対方向に回転し、図3(B)に示されるように偏心部57の位置が高い位置から中間高さ位置となる。次いで更に同心部分58を矢印で示される方向に回転させると図3(C)に示されるように偏心部57は最も低い位置となる。
なお、図3(A)、図3(B)、図3(C)には夫々の状態における同心部分58の中心線(すなわち、カムシャフトの中心線)aと偏心部57の中心線bと円形カム56の中心線cとの位置関係が示されている。
図3(A)から図3(C)とを比較するとわかるようにクランクケース1とシリンダブロック2の相対位置は同心部分58の中心線aと円形カム56の中心線cとの距離によって定まり、同心部分58の中心線aと円形カム56の中心線cとの距離が大きくなるほどシリンダブロック2はクランクケース1から離れる。即ち、可変圧縮比機構Aは回転するカムを用いたクランク機構によりクランクケース1とシリンダブロック2間の相対位置を変化させていることになる。シリンダブロック2がクランクケース1から離れるとピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積は増大し、従って各カムシャフト54,55を回転させることによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更することができる。
図2に示されるように各カムシャフト54,55を夫々反対方向に回転させるために駆動モータ59の回転軸には夫々螺旋方向が逆向きの一対のウォーム61,62が取付けられており、これらウォーム61,62と噛合するウォームホイール63,64が夫々各カムシャフト54,55の端部に固定されている。この実施例では駆動モータ59を駆動することによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を広い範囲に亘って変更することができる。
一方、図4は図1において吸気弁7を駆動するためのカムシャフト70の端部に取付けられた可変バルブタイミング機構Bを示している。図4を参照すると、この可変バルブタイミング機構Bは機関のクランク軸によりタイミングベルトを介して矢印方向に回転せしめられるタイミングプーリ71と、タイミングプーリ71と一緒に回転する円筒状ハウジング72と、吸気弁駆動用カムシャフト70と一緒に回転しかつ円筒状ハウジング72に対して相対回転可能な回転軸73と、円筒状ハウジング72の内周面から回転軸73の外周面まで延びる複数個の仕切壁74と、各仕切壁74の間で回転軸73の外周面から円筒状ハウジング72の内周面まで延びるベーン75とを具備しており、各ベーン75の両側には夫々進角用油圧室76と遅角用油圧室77とが形成されている。
各油圧室76,77への作動油の供給制御は作動油供給制御弁78によって行われる。この作動油供給制御弁78は各油圧室76,77に夫々連結された油圧ポート79,80と、油圧ポンプ81から吐出された作動油の供給ポート82と、一対のドレインポート83,84と、各ポート79,80,82,83,84間の連通遮断制御を行うスプール弁85とを具備している。
吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を進角すべきときは図4においてスプール弁85が右方に移動せしめられ、供給ポート82から供給された作動油が油圧ポート79を介して進角用油圧室76に供給されると共に遅角用油圧室77内の作動油がドレインポート84から排出される。このとき回転軸73は円筒状ハウジング72に対して矢印方向に相対回転せしめられる。
これに対し、吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を遅角すべきときは図4においてスプール弁85が左方に移動せしめられ、供給ポート82から供給された作動油が油圧ポート80を介して遅角用油圧室77に供給されると共に進角用油圧室76内の作動油がドレインポート83から排出される。このとき回転軸73は円筒状ハウジング72に対して矢印と反対方向に相対回転せしめられる。
回転軸73が円筒状ハウジング72に対して相対回転せしめられているときにスプール弁85が図4に示される中立位置に戻されると回転軸73の相対回転動作は停止せしめられ、回転軸73はそのときの相対回転位置に保持される。従って可変バルブタイミング機構Bによって吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を所望の量だけ進角させることができ、遅角させることができることになる。
図5において実線は可変バルブタイミング機構Bによって吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相が最も進角されているときを示しており、破線は吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相が最も遅角されているときを示している。従って吸気弁7の開弁期間は図5において実線で示す範囲と破線で示す範囲との間で任意に設定することができ、従って吸気弁7の閉弁時期も図5において矢印Cで示す範囲内の任意のクランク角に設定することができる。
図1および図4に示される可変バルブタイミング機構Bは一例を示すものであって、例えば吸気弁の開弁時期を一定に維持したまま吸気弁の閉弁時期のみを変えることのできる可変バルブタイミング機構等、種々の形式の可変バルブタイミング機構を用いることができる。
次に図6を参照しつつ本願において使用されている用語の意味について説明する。なお、図6の(A),(B),(C)には説明のために燃焼室容積が50mlでピストンの行程容積が500mlであるエンジンが示されており、これら図6の(A),(B),(C)において燃焼室容積とはピストンが圧縮上死点に位置するときの燃焼室の容積を表している。
図6(A)は機械圧縮比について説明している。機械圧縮比は圧縮行程時のピストンの行程容積と燃焼室容積のみから機械的に定まる値であってこの機械圧縮比は(燃焼室容積+行程容積)/燃焼室容積で表される。図6(A)に示される例ではこの機械圧縮比は(50ml+500ml)/50ml=11となる。
図6(B)は実圧縮比について説明している。この実圧縮比は実際に圧縮作用が開始されたときからピストンが上死点に達するまでの実際のピストン行程容積と燃焼室容積から定まる値であってこの実圧縮比は(燃焼室容積+実際の行程容積)/燃焼室容積で表される。即ち、図6(B)に示されるように圧縮行程においてピストンが上昇を開始しても吸気弁が開弁している間は圧縮作用は行われず、吸気弁が閉弁したときから実際の圧縮作用が開始される。従って実圧縮比は実際の行程容積を用いて上記の如く表される。図6(B)に示される例では実圧縮比は(50ml+450ml)/50ml=10となる。
図6(C)は膨張比について説明している。膨張比は膨張行程時のピストンの行程容積と燃焼室容積から定まる値であってこの膨張比は(燃焼室容積+行程容積)/燃焼室容積で表される。図6(C)に示される例ではこの膨張比は(50ml+500ml)/50ml=11となる。
次に図7および図8を参照しつつ本発明において用いられている超膨張比サイクルについて説明する。なお、図7は理論熱効率と膨張比との関係を示しており、図8は本発明において負荷に応じ使い分けられている通常のサイクルと超高膨張比サイクルとの比較を示している。
図8(A)は吸気弁が下死点近傍で閉弁し、ほぼ吸気下死点付近からピストンによる圧縮作用が開始される場合の通常のサイクルを示している。この図8(A)に示す例でも図6の(A),(B),(C)に示す例と同様に燃焼室容積が50mlとされ、ピストンの行程容積が500mlとされている。図8(A)からわかるように通常のサイクルでは機械圧縮比は(50ml+500ml)/50ml=11であり、実圧縮比もほぼ11であり、膨張比も(50ml+500ml)/50ml=11となる。即ち、通常の内燃機関では機械圧縮比と実圧縮比と膨張比とがほぼ等しくなる。
図7における実線は実圧縮比と膨張比とがほぼ等しい場合の、即ち通常のサイクルにおける理論熱効率の変化を示している。この場合には膨張比が大きくなるほど、即ち実圧縮比が高くなるほど理論熱効率が高くなることがわかる。従って通常のサイクルにおいて理論熱効率を高めるには実圧縮比を高くすればよいことになる。しかしながら機関高負荷運転時におけるノッキングの発生の制約により実圧縮比は最大でも12程度までしか高くすることができず、斯くして通常のサイクルにおいては理論熱効率を十分に高くすることはできない。
一方、このような状況下で機械圧縮比と実圧縮比とを厳密に区分しつつ理論熱効率を高めることが検討され、その結果理論熱効率は膨張比が支配し、理論熱効率に対して実圧縮比はほとんど影響を与えないことが見い出されたのである。即ち、実圧縮比を高くすると爆発力は高まるが圧縮するために大きなエネルギーが必要となり、斯くして実圧縮比を高めても理論熱効率はほとんど高くならない。
これに対し、膨張比を大きくすると膨張行程時にピストンに対し押下げ力が作用する期間が長くなり、斯くしてピストンがクランクシャフトに回転力を与えている期間が長くなる。従って膨張比は大きくすれば大きくするほど理論熱効率が高くなる。図7の破線ε=10は実圧縮比を10に固定した状態で膨張比を高くしていった場合の理論熱効率を示している。このように実圧縮比εを低い値に維持した状態で膨張比を高くしたときの理論熱効率の上昇量と、図7の実線で示す如く実圧縮比も膨張比と共に増大せしめられる場合の理論熱効率の上昇量とは大きな差がないことがわかる。
このように実圧縮比が低い値に維持されているとノッキングが発生することがなく、従って実圧縮比を低い値に維持した状態で膨張比を高くするとノッキングの発生を阻止しつつ理論熱効率を大巾に高めることができる。図8(B)は可変圧縮比機構Aおよび可変バルブタイミング機構Bを用いて、実圧縮比を低い値に維持しつつ膨張比を高めるようにした場合の一例を示している。
図8(B)を参照すると、この例では可変圧縮比機構Aにより燃焼室容積が50mlから20mlまで減少せしめられる。一方、可変バルブタイミング機構Bによって実際のピストン行程容積が500mlから200mlになるまで吸気弁の閉弁時期が遅らされる。その結果、この例では実圧縮比は(20ml+200ml)/20ml=11となり、膨張比は(20ml+500ml)/20ml=26となる。図8(A)に示される通常のサイクルでは前述したように実圧縮比がほぼ11で膨張比が11であり、この場合に比べると図8(B)に示される場合には膨張比のみが26まで高められていることがわかる。これが超高膨張比サイクルと称される所以である。
一般的に言って内燃機関では機関負荷が低いほど熱効率が悪くなり、従って機関運転時における熱効率を向上させるためには、即ち燃費を向上させるには機関負荷が低いときの熱効率を向上させることが必要となる。一方、図8(B)に示される超高膨張比サイクルでは圧縮行程時の実際のピストン行程容積が小さくされるために燃焼室5内に吸入しうる吸入空気量は少なくなり、従ってこの超高膨張比サイクルは機関負荷が比較的低いときにしか採用できないことになる。従って本発明では機関負荷が比較的低いときには図8(B)に示す超高膨張比サイクルとし、機関高負荷運転時には図8(A)に示す通常のサイクルとするようにしている。
次に図9を参照しつつ運転制御全般について概略的に説明する。図9には或る機関回転数における機関負荷に応じた吸入空気量、吸気弁閉弁時期、機械圧縮比、膨張比、実圧縮比およびスロットル弁17の開度の各変化が示されている。なお、図9は、触媒装置20内の三元触媒によって排気ガス中の未燃HC,COおよびNOXを同時に低減しうるように燃焼室5内における平均空燃比が空燃比センサ21の出力信号に基いて理論空燃比にフィードバック制御されている場合を示している。
さて、前述したように機関高負荷運転時には図8(A)に示される通常のサイクルが実行される。従って図9に示されるようにこのときには機械圧縮比は低くされるために膨張比は低く、図9において実線で示されるように吸気弁7の閉弁時期は図5において実線で示される如く早められている。また、このときには吸入空気量は多く、このときスロットル弁17の開度は全開に保持されているのでポンピング損失は零となっている。
一方、図9において実線で示されるように機関負荷が低くなるとそれに伴って吸入空気量を減少すべく吸気弁7の閉弁時期が遅くされる。またこのときには実圧縮比がほぼ一定に保持されるように図9に示される如く機関負荷が低くなるにつれて機械圧縮比が増大され、従って機関負荷が低くなるにつれて膨張比も増大される。なお、このときにもスロットル弁17は全開状態に保持されており、従って燃焼室5内に供給される吸入空気量はスロットル弁17によらずに吸気弁7の閉弁時期を変えることによって制御されている。
このように機関高負荷運転状態から機関負荷が低くなるときには実圧縮比がほぼ一定のもとで吸入空気量が減少するにつれて機械圧縮比が増大せしめられる。即ち、吸入空気量の減少に比例してピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積が減少せしめられる。従ってピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積は吸入空気量に比例して変化していることになる。なお、このとき図9に示される例では燃焼室5内の空燃比は理論空燃比となっているのでピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積は燃料量に比例して変化していることになる。
機関負荷が更に低くなると機械圧縮比は更に増大せしめられ、機関負荷がやや低負荷寄りの中負荷L1まで低下すると機械圧縮比は燃焼室5の構造上限界となる限界機械圧縮比(上限機械圧縮比)に達する。機械圧縮比が限界機械圧縮比に達すると、機械圧縮比が限界機械圧縮比に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域では機械圧縮比が限界機械圧縮比に保持される。従って低負荷側の機関中負荷運転時および機関低負荷運転時には即ち、機関低負荷運転側では機械圧縮比は最大となり、膨張比も最大となる。別の言い方をすると機関低負荷運転側では最大の膨張比が得られるように機械圧縮比が最大にされる。
一方、図9に示される実施例では機関負荷がL1まで低下すると吸気弁7の閉弁時期が燃焼室5内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期となる。吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達すると吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域では吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持される。
吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持されるともはや吸気弁7の閉弁時期の変化によっては吸入空気量を制御することができない。図9に示される実施例ではこのとき、即ち吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域ではスロットル弁17によって燃焼室5内に供給される吸入空気量が制御され、機関負荷が低くなるほどスロットル弁17の開度は小さくされる。
一方、図9において破線で示すように機関負荷が低くなるにつれて吸気弁7の閉弁時期を早めることによってもスロットル弁17によらずに吸入空気量を制御することができる。従って、図9において実線で示される場合と破線で示される場合とをいずれも包含しうるように表現すると、本発明による実施例では吸気弁7の閉弁時期は、機関負荷が低くなるにつれて、燃焼室内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期L1まで吸気下死点BDCから離れる方向に移動せしめられることになる。このように吸入空気量は吸気弁7の閉弁時期を図9において実線で示すように変化させても制御することができるし、破線に示すように変化させても制御することができる。
前述したように図8(B)に示す超高膨張比サイクルでは膨張比が26とされる。この膨張比は高いほど好ましいが図7からわかるように実用上使用可能な下限実圧縮比ε=5に対しても20以上であればかなり高い理論熱効率を得ることができる。従って本実施例では膨張比が20以上となるように可変圧縮比機構Aが形成されている。
図10は、内燃機関のクランクシャフト軸受のサポート位置でのクランクシャフトの軸線に垂直な概略断面図である。同図において、1はクランクケースであり、2はシリンダブロックであり、3はシリンダヘッドであり、CSがクランクシャフトであり、CBはクランクシャフト軸受である。シリンダブロック2には、シリンダボア回りの冷却水通路WJが形成されており、シリンダブロック2は、冷却水通路WJを通過する冷却水によって良好に冷却される。図2において説明したように、Sはクランクシャフト軸受CBをクランクケース1に固定するためのサポートであり、また、RはサポートSと共にクランクシャフト軸受CBを保持する保持部材であり、ボルト(図示せず)によりサポートSに固定される。図10に示す断面において、シリンダブロック2にはシリンダボアは存在しない。
一般的に、機械圧縮比を最も高くするときには、図1に示すように、シリンダブロック2とクランクケース1とは比較的広い面積において接触するために、クランクシャフト軸受CBにおいて発生する摩擦熱は、冷却水通路WJが設けられて良好に冷却されるシリンダブロック2へ容易に伝熱される。しかしながら、このような場合を除けば、シリンダブロック2はクランクケース1から離間するために、クランクシャフト軸受CBにおいて発生した摩擦熱は、クランクケース1から可変圧縮比機構のカムシャフト54、55を介してシリンダブロック2へ伝熱されることとなり、クランクシャフト軸受CBの放熱が不十分となって焼付けが発生することがある。
本実施例では、クランクシャフト軸受CBを固定するためのサポートSは、シリンダブロック2の底面F2に対向する端面F1を有し、シリンダブロックの底面F2には突起部Pが設けられ、サポートSの端面F1には突起部Pが嵌合する穴部Qが設けられ、可変圧縮比機構Aによりシリンダブロック2をクランクケース1に対して相対移動させる際には、突起部Pは穴部Qから外れることなく穴部Q内を摺動するようになっている。
それにより、可変圧縮比機構Aによりシリンダブロック2をクランクケース1から離間させても、シリンダブロック2の底面F2に設けられた突起部Pとクランクシャフト軸受CBのサポートSの端面F1に設けられた穴部Qとが摺動により常に接触し続けるために、クランクシャフト軸受CBの摩擦熱は、突起部P及び穴部Qを介して、クランクシャフト軸受CBに密着するサポートSからシリンダブロック2へ良好に放熱され、クランクシャフト軸受CBの焼付けを発生し難くすることができる。
図10において、DはサポートSに形成された穴部Qの底面とクランクケース1の内部空間とを連通するガス抜き孔であり、突起部Pが穴部Q内で摺動する際に、穴部Q内が高圧となったり負圧となったりすることを防止するためのものである。
また、本実施例において、突起部Pは、シリンダブロック2の底面F2に一体的に形成され、特に、突起部Pの中心軸線は、図10に示すように、シリンダヘッド3をシリンダブロック2に固定するためのボルトBLの中心軸線CLと略一致するようになっている。それにより、ボルトBLによりシリンダヘッド3をシリンダブロック2に締め付ける際に、ボルトBLの延長線上のシリンダブロック部分を引き上げる力が発生するが、突起部によりボルトBLの延長線上のシリンダブロック部分の剛性は高められており、ボルトBLの延長線上のシリンダブロック2の変形を抑制することができる。
突起部P及び穴部Qの断面形状は、例えば円形とすることができるが、特に円形に限定されることなく、矩形等のような任意の形状とすることができる。また、本実施例では、互いに対向するサポートSの端面F1及びシリンダブロック2の底面F2において、端面F1には穴部Qを設け、底面F2には突起部Pを設けたが、もちろん、端面F1に突起部Pを設けて、底面F2に穴部Qを設けるようにしても、クランクシャフト軸受CBの摩擦熱は、突起部P及び穴部Qを介して、クランクシャフト軸受CBに密着するサポートSからシリンダブロック2へ良好に放熱され、クランクシャフト軸受の焼付けを発生し難くすることができる。この場合においても、シリンダブロック2に形成された穴部Qにはガス抜き孔を形成することが好ましい。また、ガス抜き孔は、先端に開口するようにして突起部側に設けることもできる。
本実施例において、突起部Pと穴部Qとは、各サポートSにそれぞれ二つ形成するようにしたが、各サポートSに少なくとも一つ形成されれば良い。ところで、図10のように、シリンダブロック2の両側面近傍に互いに対向して配置された複数の対のボルトによりシリンダヘッド3をシリンダブロック2へ締め付けると、シリンダブロック2の底面を下側へ凸とするように変形させようとする力が発生し、また、本実施例のように、シリンダブロック2の両側に延在するカムシャフトによりシリンダブロック2がクランクケース1に連結されている場合には、各気筒の爆発力によって、シリンダブロック2の底面を上側へ凸とするように変形させようとする力が発生する。しかしながら、突起部Pと穴部Qとが各サポートSにそれぞれ二つ以上形成されていれば、穴部Qに嵌合する突起部Pによって、これらのシリンダブロック2の底面の変形を抑制することができる。
もちろん、突起部Pと穴部Qとは、可変圧縮比機構Aによりシリンダブロック2をクランクケース1に対して相対移動させる際にシリンダブロック2を傾き難くするガイドとしても機能する。
1 クランクケース
2 シリンダブロック
A 可変圧縮比機構
S サポート
CS クランクシャフト
CB クランクシャフト軸受
P 突起部
Q 穴部

Claims (2)

  1. シリンダブロックをクランクケースに対して相対移動させる可変圧縮比機構を備える内燃機関であって、前記クランクケースにはクランクシャフト軸受を固定するためのサポートが設けられ、前記サポートは、冷却水通路が設けられた前記シリンダブロックの底面に対向する端面を有し、互いに対向する前記サポートの前記端面及び前記シリンダブロックの前記底面の一方には突起部が設けられ、前記端面及び前記底面の他方には前記突起部が嵌合する穴部が設けられ、前記可変圧縮比機構により前記シリンダブロックを前記クランクケースに対して相対移動させる際には、前記突起部は前記穴部から外れることなく前記穴部内を摺動することを特徴とする可変圧縮比機構を備える内燃機関。
  2. 前記突起部は、前記シリンダブロックの前記底面に設けられ、前記突起部の中心軸線は、シリンダヘッドを前記シリンダブロックに固定するためのボルトの中心軸線と略一致することを特徴とする請求項1に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関。
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