JP4993103B2 - 可変圧縮比内燃機関 - Google Patents

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Description

本発明は、シリンダブロックとクランクケースとを相対移動させることで、圧縮比を変更可能に構成された、可変圧縮比内燃機関に関する。
この種の内燃機関として、例えば、特開2005−69181号公報、特開2005−90270号公報、特開2005−140090号公報、特開2006−316770号公報、特開2006−344560号公報、等に開示されたものが知られている。
かかる内燃機関においては、前記クランクケース(ロアケースとも称される)と、前記シリンダブロックとが、相対移動可能に連結されている。この連結部分には、圧縮比を変更するための可変圧縮比機構が設けられている。この可変圧縮比機構は、前記クランクケースに対して前記シリンダブロックをスライドさせるためのスライド機構から構成されている。
かかる構成を有する、この種の内燃機関においては、運転状態に応じて、前記スライド機構が駆動される。すると、前記シリンダブロックが前記クランクケースに対して、前記シリンダの中心軸に沿って相対的にスライドする。これにより、圧縮比が変更される。例えば、ノッキングの抑制等のために圧縮比が低く設定されたり、燃費向上のために圧縮比が高く設定されたりする。
特開2005−69181号公報 特開2005−90270号公報 特開2005−140090号公報 特開2006−316770号公報 特開2006−344560号公報
この種の内燃機関において、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動がスムーズに行われなくなる場合が生じ得る。このような場合、運転状態に応じた圧縮比の適切な制御が行われ難くなる。
本発明は、このような課題に対処するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動をスムーズに行うことで、運転状態に応じた圧縮比の適切な制御を行い得る、可変圧縮比内燃機関を提供することにある。
本発明の可変圧縮比内燃機関(以下、単に「本発明の内燃機関」あるいは「内燃機関」と称する。)は、シリンダブロックと、シリンダヘッドと、クランクケースと、移動機構と、を備えている。この内燃機関は、前記移動機構により前記シリンダブロック及び前記シリンダヘッドと前記クランクケースとを相対移動させることで、圧縮比を変更可能に構成されている。
前記クランクケースは、クランクシャフトを回転可能に支持するように構成されている。このクランクケースは、筒状のフレームを備えている。このフレームの内側には、シリンダブロック収容部が形成されている。
前記シリンダブロック収容部は、平面視にて略矩形状の空間である。このシリンダブロック収容部は、前記シリンダブロックを収容し得るように、シリンダの中心軸(以下、「シリンダ中心軸」と称する。)に沿って形成されている。このシリンダブロック収容部は、前記シリンダブロックを挿入し得る程度の大きさの、略矩形状の開口部を有している。この開口部は、前記シリンダブロック収容部の、前記シリンダ中心軸に沿った一方の端部に設けられている。
前記フレームは、前記シリンダブロック収容部内における前記シリンダブロックの移動をガイドし得るように構成され得る。すなわち、前記シリンダブロック収容部は、前記シリンダブロックの下端部から上部までを覆うように設けられ得る。また、前記フレームの内壁面(前記シリンダブロック収容部の内壁面)と、前記シリンダブロックの外壁面との間には、所定のクリアランスが設けられ得る。このクリアランスは、例えば、前記クランクケースと前記シリンダブロックとの相対移動がスムーズに行われつつ、両者の間にガタつきが生じない程度(具体的には、触れるか触れないか程度)に設けられ得る。
前記シリンダブロックは、前記シリンダブロック収容部の前記内壁面と摺動しつつ、前記クランクケースと相対移動し得るように、前記シリンダブロック収容部に収容されている。このシリンダブロックには、シリンダが形成されている。このシリンダには、ピストンが往復移動可能に収容されている。このピストンは、前記クランクシャフトと機械的に結合されている。すなわち、前記クランクシャフトは、前記シリンダ内での前記ピストンの往復移動に基づいて、回転駆動されるように構成されている。
前記シリンダヘッドは、前記シリンダブロックにおける、前記ピストンの上死点側の端部にて、当該シリンダブロックと接合されている。前記移動機構は、前記シリンダブロックと前記クランクケースとを、前記シリンダの中心軸に沿って相対移動させ得るように構成されている。
本発明の特徴は、前記内燃機関が、さらに、オイル供給機構を備えたことにある。このオイル供給機構は、前記フレームに対向する前記シリンダブロックの外壁面と、前記シリンダブロック収容部の前記内壁面と、の間に、潤滑用のオイルを供給し得るように構成されている。
かかる構成を備えた本発明の可変圧縮比内燃機関においては、前記移動機構の作動により、前記シリンダブロックが、前記クランクケースに対して、前記シリンダ中心軸に沿って相対移動する。これにより、圧縮比が変更される。この相対移動の際に、前記オイル供給機構により、前記シリンダブロックの前記外壁面と、前記シリンダブロック収容部の前記内壁面と、の間に、前記オイルが供給される。すなわち、前記クリアランスに、前記オイルが供給される。
かかる構成によれば、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動が、可及的にスムーズに行われる。したがって、かかる構成によれば、運転状態に応じた圧縮比の適切な制御が行われ得る。
・前記オイル供給機構は、オイル供給路を備えていてもよい。このオイル供給路は、前記シリンダヘッドから前記クランクケース側に環流する前記オイルを、前記外壁面と前記内壁面との間に供給し得るように形成されている。
かかる構成においては、前記シリンダヘッドにて潤滑に供された前記オイルが、当該シリンダヘッドから前記クランクケースに環流する。このとき、当該オイルの少なくとも一部が、前記オイル供給路を介して、前記シリンダブロックの前記外壁面と、前記シリンダブロック収容部の前記内壁面と、の間に供給される。
かかる構成によれば、前記シリンダブロックと前記クランクケースとの相対移動に際して、前記外壁面と前記内壁面との間に、前記オイルが安定的に供給され得る。よって、前記シリンダブロックと前記クランクケースとのスムーズ相対移動、及びこれによる圧縮比の適切な制御が、簡略な装置構成で、より確実に実現され得る。
・前記オイル供給機構は、オイルジェットを備えていてもよい。このオイルジェットは、前記クランクケースに設けられている。また、このオイルジェットは、前記ピストンよりも前記クランクケース側の位置から、前記オイルを噴射し得るように構成及び配置されている。
かかる構成においては、前記オイルジェットによって、前記オイルが、前記シリンダブロックの前記外壁面と、前記シリンダブロック収容部の前記内壁面と、の間に向けて噴射される。これにより、前記外壁面と前記内壁面との間に、前記オイルが供給される。
かかる構成によれば、前記シリンダブロックと前記クランクケースとのスムーズ相対移動、及びこれによる圧縮比の適切な制御が、良好に実現され得る。
・前記オイルジェットは、ピストン冷却ジェットと連動して、前記オイルを噴射し得るように構成されていてもよい。このピストン冷却ジェットは、前記ピストンを冷却するために、当該ピストンに向けて前記オイルを噴射し得るように構成されている。
ここで、前記オイルジェット及び前記ピストン冷却ジェットは、エンジン油圧が噴射開始油圧以上の場合に、前記オイルを噴射し得るように構成されていてもよい。
かかる構成においては、高回転時や高負荷時等に、前記ピストンの冷却のために、前記ピストン冷却ジェットから前記オイルが噴射される。このとき、これに連動して、前記オイルジェットからも前記オイルが噴射される。これにより、前記シリンダブロックの前記外壁面と、前記シリンダブロック収容部の前記内壁面と、の間に、前記オイルが供給される。一方、前記ピストンの冷却の必要がない低回転時且つ低負荷時等には、前記ピストン冷却ジェットからの前記オイルの噴射が停止される。このとき、これに連動して、前記オイルジェットからの前記オイルの噴射も停止される。
例えば、前記エンジン油圧は、一般に、エンジン回転数に応じて変化する。よって、前記エンジン回転数が基準回転数より低い低回転時には、前記エンジン油圧が前記噴射開始油圧より低くなる。このとき、前記オイルジェットからの前記オイルの噴射が停止される。一方、前記エンジン回転数が前記基準回転数以上である高回転時には、前記エンジン油圧が前記噴射開始油圧以上となる。このとき、前記オイルジェットから前記オイルが噴射される。
かかる構成によれば、例えば、高回転時又は高負荷時等の、前記シリンダブロック,前記クランクケース,及び前記ピストンが比較的高熱になりやすく且つ比較的大きな摩擦抵抗が発生しやすい運転状態にて、前記オイルが良好に供給され得る。
一方、例えば、低回転時且つ低負荷時等(特に始動直後のアイドリング中等)の、頻繁な圧縮比変更や前記ピストンの冷却の必要がない運転状態にて、前記オイルの供給が停止されることで、他の潤滑部位への前記オイルの供給量が良好に確保され得る。
したがって、かかる構成によれば、前記シリンダブロックと前記クランクケースとのスムーズ相対移動、及びこれによる圧縮比の適切な制御が実現され得るとともに、当該内燃機関の内部における前記オイルの使用状態が適切に制御され得る。
以下、本発明の実施形態(本願の出願時点において出願人が最良と考えている実施形態)について、図面を参照しつつ説明する。
なお、以下の実施形態に関する記載は、法令で要求されている明細書の記載要件(記述要件・実施可能要件)を満たすために、本発明の具体化の単なる一例を、可能な範囲で具体的に記述しているものにすぎない。よって、後述するように、本発明が、以下に説明する実施形態の具体的構成に何ら限定されるものではないことは、全く当然である。本実施形態に対して施され得る各種の変更(modification)は、当該実施形態の説明中に挿入されると、首尾一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
<実施形態の内燃機関の構成>
図1、本発明の内燃機関の一実施形態であるエンジン1の概略構成を示す側断面図である。図2は、図1に示されているエンジン1の分解斜視図である。ここで、図1は、図2におけるI−I断面図に相当する。
図1を参照すると、エンジン1は、シリンダブロック2と、シリンダヘッド3と、クランクケース4と、移動機構5と、を備えている。このエンジン1は、シリンダブロック2及びシリンダヘッド3を、クランクケース4に対して相対的に移動(スライド)させることで、圧縮比を変更可能に構成されている。
<<シリンダブロック>>
図1及び図2を参照すると、シリンダブロック2は、平面視にて略矩形状の、略直方体状の部材であって、アルミニウム合金によって一体に形成されている。
シリンダブロック2の内部には、シリンダ21が形成されている。シリンダ21は、略円柱形状の貫通孔である。複数(本実施形態においては4つ)のシリンダ21が、気筒配列方向ADに沿って一列に設けられている。シリンダブロック2は、気筒配列方向ADと平行な長手方向を有するように形成されている。シリンダ21の内部には、ピストン22が、シリンダ中心軸CCAに沿って往復移動可能に収容されている。
シリンダブロック2の内部には、ウォータージャケット23が設けられている。ウォータージャケット23は、エンジン1を冷却するための冷却媒体(冷却水)が通過し得る空間である。このウォータージャケット23は、シリンダ21の外側を囲むように設けられている。
また、シリンダブロック2の内部には、オイル環流路24が形成されている。オイル環流路24は、シリンダヘッド3に供給された潤滑用のオイルを、シリンダヘッド3からクランクケース4側に環流させ得るように設けられている。このオイル環流路24は、シリンダブロック2の上端面(ピストン22の上死点側の端面)から下端面まで設けられている。また、複数のシリンダ21のそれぞれに対応して、オイル環流路24が設けられている。
本実施形態においては、オイル環流路24は、ウォータージャケット23に近接するように設けられている。すなわち、シリンダブロック2は、その内部で、ウォータージャケット23内の前記冷却水とオイル環流路24内の前記オイルとの間で熱交換が行われ得るように構成されている。
図2に示されているように、オイル環流路24は、気筒配列方向ADについて、ボルト孔25とは異なる位置(ボルト孔25と重ならない位置)に設けられている。このボルト孔25は、シリンダヘッド3をシリンダブロック2に固定するためのボルト(図示せず)に対応して設けられたネジ穴である。
さらに、シリンダブロック2には、オイル供給路26が形成されている。オイル供給路26は、その一方の端部が、オイル環流路24と連通するように設けられている。また、オイル供給路26は、前記一方とは異なる他方の端部が、外壁面27(シリンダブロック2の側方の外表面)における、クランクケース4と摺動する部分の上端部にて、開口するように設けられている。
本発明のオイル供給機構を構成するオイル供給路26は、複数のシリンダ21のそれぞれに対応して設けられている。このオイル供給路26は、シリンダブロック2の外壁面27と、クランクケース4の内壁面(後述するフレーム41の内壁面41a2)との摺動部に、前記オイルを供給し得るように形成されている。
<<シリンダヘッド>>
図1を参照すると、シリンダブロック2の前記上端面には、シリンダヘッド3が接合されている。シリンダヘッド3は、アルミニウム合金によって一体に形成されている。
シリンダヘッド3は、シリンダ21における前記上死点側の一端(図中上側の端)を覆うように、シリンダブロック2に固定されている。すなわち、シリンダヘッド3は、シリンダブロック2と相対移動しないように(シリンダブロック2とともに上下動するように)、シリンダブロック2の上端部に、前記ボルト孔25に装着され得る前記ボルト(図示せず)によって固定されている。
シリンダヘッド3には、複数の凹部31が形成されている。各凹部31は、各シリンダ21に対応する位置に設けられている。この凹部31は、シリンダ21と連通するように設けられている。すなわち、シリンダヘッド3がシリンダブロック2に固定されることで、凹部31と、ピストン22の頂面より上側のシリンダ21の内部の空間とによって、燃焼室CCが形成されている。
シリンダヘッド3には、上述の燃焼室CCに連通するように、吸気ポート32及び排気ポート33が形成されている。また、シリンダヘッド3には、吸気バルブ34及び排気バルブ35が装着されている。吸気バルブ34は、吸気ポート32を開閉し得るように構成されている。排気バルブ35は、排気ポート33を開閉し得るように構成されている。
さらに、シリンダヘッド3には、オイル環流路36が形成されている。オイル環流路36は、シリンダブロック2に設けられたオイル環流路24と連通するように設けられている。このオイル環流路36は、吸気バルブ34や排気バルブ35の潤滑のためにシリンダヘッド3に供給された前記オイルを、シリンダブロック2のオイル環流路24に導入し得るように形成されている。
<<クランクケース>>
クランクケース4は、アルミニウム合金によって一体に形成されている。図1及び図2を参照すると、クランクケース4は、上述のフレーム41を備えている。このフレーム41は、平面視にて略矩形状の筒状部材であって、気筒配列方向ADと平行な長手方向を有するように形成されている。このフレーム41は、シリンダブロック2の外壁面27を囲むような形状に形成されている。
フレーム41の内部には、シリンダブロック収容部41aが形成されている。シリンダブロック収容部41aは、シリンダブロック2を収容し得るように設けられた、平面視にて略矩形状の空間である。このシリンダブロック収容部41aは、シリンダ中心軸CCAに沿って設けられている。
シリンダブロック収容部41aの、シリンダ中心軸CCAに沿った一方の端部(図中上端部)には、開口部41a1が設けられている。開口部41a1は、シリンダブロック2を図中上方から挿入し得る程度の大きさの、略矩形状の大きさに形成されている。
シリンダブロック収容部41aの内壁面41a2は、シリンダブロック2を収容した状態で、その外壁面27と、所定のクリアランスが設けられるように形成されている。このフレーム41の内壁面41a2と、シリンダブロック2の外壁面27と、のクリアランスは、シリンダブロック2とクランクケース4とがガタつきなくスムーズに摺動し得る程度(触れるか触れないか程度:例えば0.数ミリ程度)に設定されている。
フレーム41(シリンダブロック収容部41a)は、シリンダブロック2の下端部から上部までを覆うことで、シリンダブロック2とシリンダヘッド3との相対移動をスムーズにガイドし得るように形成されている。なお、シリンダブロック2の上端部は、シリンダヘッド3との接合のため、フレーム41よりも図中上方及び側方に若干突出するように設けられている。
クランクケース4の下端部には、クランクシャフト42が、軸受を介して、回転可能に支持されている。クランクシャフト42は、気筒配列方向ADと平行に配置されている。クランクシャフト42は、ピストン22のシリンダ中心軸CCAに沿った往復移動に基づいて回転駆動されるように、コンロッド43を介して、ピストン22と機械的に結合されている。また、クランクシャフト42には、バランスウエイト44が設けられている。
クランクケース4の内側であって、フレーム41の下端部には、本発明のオイル供給機構を構成するオイル噴射装置45が設けられている。このオイル噴射装置45は、シリンダブロック2よりも下方且つクランクシャフト42よりも上方の位置から、前記オイルを噴射し得るように構成及び配置されている。このオイル噴射装置45は、複数のシリンダ21のそれぞれに対応して設けられている。
具体的には、オイル噴射装置45は、細管状の部材である摺動面潤滑ノズル45a及びピストン噴射ノズル45bを備えている。摺動面潤滑ノズル45aとピストン噴射ノズル45bとは、互いの根本部分にて接続されている。すなわち、摺動面潤滑ノズル45aは、ピストン噴射ノズル45bと連動して、前記オイルを噴射し得るように構成されている。
本発明のオイルジェットとしての摺動面潤滑ノズル45aは、シリンダブロック2の外壁面27とフレーム41の内壁面41a2との摺動部に前記オイルを噴射し得るように構成されている。本発明のピストン冷却ジェットを構成するピストン噴射ノズル45bは、ピストン22の背面(燃焼室CCと対向する頂面とは反対側の面)に向けて前記オイルを噴射し得るように構成されている。
また、クランクケース4の内側であって、フレーム41の下端部には、本発明のオイル供給機構を構成するオイル噴射装置46が設けられている。このオイル噴射装置46も、上述のオイル噴射装置45と同様に構成及び配置されている。すなわち、オイル噴射装置46は、細管状の部材である摺動面潤滑ノズル46aを備えている。但し、オイル噴射装置46においては、ピストン噴射ノズル45bに対応する構成が省略されている。
オイル噴射装置45は、クランクケース4の内部に設けられたオイル通路であるオイルギャラリ47と接続されている。オイル噴射装置45とオイルギャラリ47との間には、噴射制御バルブ48が介装されている。この噴射制御バルブ48は、油圧によって作動するチェックバルブからなり、オイルギャラリ47内の油圧が所定の噴射開始油圧以上である場合に開弁するように構成されている。
同様に、オイル噴射装置46も、オイルギャラリ47と接続されている。オイル噴射装置46とオイルギャラリ47との間にも、噴射制御バルブ48が介装されている。
<<移動機構>>
図1及び図2を参照すると、一対の移動機構5が、フレーム41の気筒配列方向ADに沿った両側壁及びその近傍に設けられている。一方の移動機構5と、他方の移動機構5とは、すべてのシリンダ21におけるシリンダ中心軸CCAが通る平面に関して、ほぼ対称に配置及び構成されている。
<<<カムシャフト>>>
移動機構5は、カムシャフト51の回転駆動によって、シリンダブロック2とクランクケース4とをシリンダ中心軸CCAに沿って相対的に移動(スライド)させ得るように構成されている。カムシャフト51は、機械構造用炭素鋼(S45C等)からなり、ジャーナル部51aと、円形カム部51bと、偏心軸部51cと、ウォームホイール51dと、から構成されている。
図3は、図1及び図2に示されているカムシャフト51を、その一部を分解して示す斜視図である。以下、図1ないし図3を参照すると、ジャーナル部51aは、円柱状の部材であって、カムシャフト51の回転中心軸(これは気筒配列方向ADと平行、すなわちシリンダ中心軸CCAと垂直であって、図3にて一点鎖線で示されている。)と同軸に設けられている。
ジャーナル部51aの表面51a1は、円柱面状に形成されている。表面51a1には、摩擦及び摩耗を低減するための、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)のコーティングが施されている。ジャーナル部51aは、隣り合う円形カム部51bの間、及びカムシャフト51の両端部に設けられている。
円形カム部51bは、カムシャフト51の前記回転中心軸から偏心して設けられている。この円形カム部51bは、ジャーナル部51aよりも径が太い円柱状の部材であって、気筒数に応じて設けられている。すなわち、1つのカムシャフト51に対して、気筒数と同数(本実施形態では4つ)の円形カム部51bが設けられている。各円形カム部51bは、シリンダ中心軸CCAに対応する位置に配置されている。
円形カム部51bの表面51b1は、円柱面状に形成されている。この表面51b1にも、ジャーナル部51aの表面51a1と同様のコーティングが施されている。
偏心軸部51cは、気筒配列方向ADに沿った長手方向を有する丸棒状の部材である。この偏心軸部51cは、ジャーナル部51aの中心軸及び円形カム部51bの中心軸から偏心した位置にて、これらを挿通するように設けられている。すなわち、図1及び図3に示されているように、ジャーナル部51aの一端(図中下端)と円形カム部51bの一端(図中下端)とが一致した状態で、当該一端寄りの位置(下部)にてジャーナル部51a及び円形カム部51bを挿通するように、偏心軸部51cが設けられている。
ジャーナル部51aは、偏心軸部51cの回りを回転しないように、偏心軸部51cに固定されている。一方、円形カム部51bは、偏心軸部51cの回りを自由に回転し得るようになっている。すなわち、円形カム部51bは、ジャーナル部51aに対して相対的に回転し得るようになっている。
偏心軸部51cの前記長手方向における略中央には、ウォームホイール51dが設けられている。ウォームホイール51dは、偏心軸部51cと一体に形成されている。このウォームホイール51dは、その中心軸が前記回転中心軸と同軸となるように設けられている。このウォームホイール51dは、ウォームWと噛み合うことにより、回転駆動されるように構成されている。このウォームWは、モータMの回転駆動軸(これは前記回転中心軸及びシリンダ中心軸CCAと垂直である)に装着された円柱形状のギヤである。
このカムシャフト51は、ウォームホイール51dの回転に伴って、ジャーナル部51aが前記回転中心軸を中心としてウォームホイール51dと一体的に回転駆動されるように構成されている。また、このカムシャフト51は、ウォームホイール51dの回転に伴って、円形カム部51bが偏心軸部51cの回りを自由に回転することで、当該円形カム部51bがジャーナル部51aに対して相対的に回転するように構成されている。
<<<ブロック側支持部>>>
図1ないし図3を参照すると、円形カム部51bは、ブロック側支持部52によって回転可能に支持されている。ブロック側支持部52は、ブロック状の部材であって、軸受鋼によって一体(シームレス)に形成されている。ブロック側支持部52には、軸受孔52aが形成されている。この軸受孔52aは、円形カム部51bの外径に対応する(円形カム部51bの表面51b1と摺動し得るような)内径を有する貫通孔である。
ブロック側支持部52は、シリンダブロック2とは別体に形成されていて、ボルトを用いてシリンダブロック2の外壁面27に装着され得るように構成されている。また、ブロック側支持部52は、シリンダ中心軸CCAに対応する位置に設けられている。
フレーム41には、ブロック側支持部52と同数の複数の開口部53が設けられている。開口部53は、貫通孔であって、ブロック側支持部52が貫通し得るように設けられている。この開口部53は、ブロック側支持部52がシリンダ中心軸CCAに沿って往復移動し得るように、ブロック側支持部52の高さ寸法(シリンダ中心軸CCAに沿った方向の寸法)よりも大きい高さ寸法に形成されている。
<<<クランクケース側支持部>>>
図2に示されているように、フレーム41には、複数のフレーム側支持部54が形成されている。各フレーム側支持部54は、開口部53に隣接するように設けられている。すなわち、複数のフレーム側支持部54が、各開口部53の両側に設けられ、且つ気筒配列方向ADに沿って配列されている。
フレーム側支持部54は、フレーム41の、シリンダブロック2における外壁面27に対向する位置に設けられている。このフレーム側支持部54には、ジャーナル支持凹部54aが設けられている。ジャーナル支持凹部54aは、半円柱形状の凹部であって、ジャーナル部51aの外径に対応する内径を有するように形成されている。
図4A及び図4Bは、図3に示されているフレーム側支持部54の周辺を拡大した側断面図である。図4A及び図4Bを参照すると、ジャーナル支持凹部54aの、ジャーナル部51aと対向する部分には、ライナー54bが設けられている。ライナー54bは、フレーム側支持部54の他の部分(アルミニウム合金)よりも耐摩耗性に優れた軸受鋼からなり、半円筒形状に形成されている。
図2、図4A、及び図4Bを参照すると、フレーム41には、カバー部55が装着されている。カバー部55は、アルミニウム合金からなり、カムシャフト51(ジャーナル部51a)を挟んでフレーム側支持部54と対向するように設けられている。このカバー部55は、フレーム側支持部54に装着されることで、フレーム側支持部54とともにカムシャフト51(ジャーナル部51a)を回転可能に支持するように構成されている(図1においては図示の簡略化のためにカバー部55の図示が省略されている。)。
カバー部55は、複数のフレーム側支持部54に対応するように、一体(シームレス)に形成されている。このカバー部55には、ジャーナル支持凹部55aと、軸受収容部55bと、ギヤ収容部55cと、が形成されている。
ジャーナル支持凹部55aは、フレーム側支持部54のジャーナル支持凹部54aと対称な形状の、半円柱形状の凹部である。すなわち、カバー部55は、側断面視にて、シリンダ中心軸CCAに沿った略アーチ状に構成されている。このジャーナル支持凹部55aは、ジャーナル支持凹部54aと対向するように設けられている。
軸受収容部55bは、ブロック側支持部52と対向する位置に設けられた凹部である。この軸受収容部55bは、開口部53からフレーム41の外側に突出したブロック側支持部52を、シリンダ中心軸CCAに沿って往復移動可能に収容するように形成されている。ギヤ収容部55cは、ウォームホイール51dと対向する位置に設けられた凹部である。このギヤ収容部55cは、フレーム41の外側に突出したウォームホイール51dを収容し得るように形成されている。
図4A及び図4Bを参照すると、ジャーナル支持凹部55aの、ジャーナル部51aと対向する部分には、ライナー55dが設けられている。ライナー55dは、カバー部55の他の部分(アルミニウム合金)よりも耐摩耗性に優れた軸受鋼からなり、半円筒形状に形成されている。カバー部55がボルト56によってフレーム側支持部54に固定されて、ライナー55dがライナー54bと接合されることで、これらの接合体の内側に、ジャーナル部51aを回転可能に支持する軸受孔が形成されるようになっている。
<<オイル循環機構>>
図5は、図1に示されているエンジン1の潤滑油供給系の概略構成図である。図5を参照すると、エンジン1は、オイル循環機構60を備えている。このオイル循環機構60は、シリンダブロック2、シリンダヘッド3、及びクランクケース4の内部の、潤滑が必要な部位に、オイルLOを供給し得るように構成されている。
オイル循環機構60は、オイルパン61と、オイルストレーナー62と、オイルポンプ63と、オイルフィルタ64と、オイル輸送路65と、を備えている。
オイルパン61は、バスタブ状の部材であって、鋼板をプレス加工することによって一体に形成されている。このオイルパン61は、クランクケース4の下端部に固定されている。(図5においては、図示の便宜のため、シリンダブロック2、クランクケース4、及びクランクシャフト42は、オイルパン61からずれた位置に示されているが、実際は、オイルパン61は、これらの真下に配置されている。)
オイルパン61の内側の空間内には、オイルLOが貯留されている。この空間における底部には、オイルストレーナー62が配置されている。また、このオイルパン61は、シリンダブロック2(オイル環流路24の下端側の開口部や外壁面27と内壁面41a2との摺動部等)及びクランクシャフト42から滴り落ちてきたオイルLOを、当該クランクシャフト42の真下にて受容し得るように配置されている
オイルポンプ63は、オイルパン61内に貯留されたオイルLOを、オイルストレーナー62を介して吸い出して、上述の各被潤滑部材に向けて送出し得るように構成されている。このオイルポンプ63は、周知のロータリーポンプから構成されていて、クランクシャフト42と機械的に結合されている。すなわち、オイルポンプ63は、エンジン回転数に応じて、オイルLOの送出圧力が変化するように構成されている。
オイルパン61、オイルストレーナー62、オイルポンプ63、及びオイルフィルタ64は、オイル輸送路65を介して互いに接続されている。このオイル輸送路65は、オイル吸入路65aと、オイル送出路65bと、メインオイル流路65cと、サブオイル流路65dと、を備えている。
オイル吸入路65aは、オイルストレーナー62と、オイルポンプ63のオイル吸入口と、を接続するように設けられている。オイル送出路65bは、オイルポンプ63のオイル吐出口と、メインオイル流路65cと、を接続するように設けられている。このオイル送出路65bには、オイルフィルタ64が介装されている。
メインオイル流路65cは、複数のサブオイル流路65dと接続されている。各サブオイル流路65dは、上述の各部位にオイルLOを供給し得るように形成されている。クランクケース4の内部に設けられたオイルギャラリ47は、複数のサブオイル流路65dのうちの1つから構成されている。
<<制御部>>
制御部70は、エンジン1の運転状態を制御し得るように構成されている。この制御部70は、電気制御装置(ECU)71と、クランクポジションセンサ72と、アクセル開度センサ73と、を備えている。
ECU71は、クランクポジションセンサ72、アクセル開度センサ73、及びモータMと、電気的に接続されている。このECU71は、マイクロコンピュータからなり、クランクポジションセンサ72やアクセル開度センサ73等の各種のセンサからの信号に基づいて、モータMその他の各部の動作を制御し得るように構成されている。
クランクポジションセンサ72は、クランクシャフト42が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに、当該クランクシャフト42が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号(この信号はエンジン回転数Neを表す。)を出力するように構成されている。アクセル開度センサ73は、運転者によって操作されるアクセルペダルの操作量を表す信号を出力するように構成されている。
<実施形態の可変圧縮比動作の説明>
図6及び図7は、図1に示されているエンジン1における圧縮比変更動作の様子を示す図である。以下、図5ないし図7を参照しつつ、移動機構5による圧縮比変更動作について説明する。
エンジン1の圧縮比が最高である状態においては、図6に示されているように、偏心軸部51cが最も下方に位置している。この場合、円形カム部51bも、最も下方に位置することとなる。
圧縮比を最高値から下げる処理がなされる場合、図中矢印で示されているように、カムシャフト51が回転駆動される(図中右側のカムシャフト51が反時計回りに回転駆動され且つ図中左側のカムシャフト51が時計回りに回転駆動される)。
このとき、ジャーナル部51aは、ライナー54b及び55dの内面と摺動しながら、カムシャフト51の前記回転中心軸を中心として、フレーム側支持部54とカバー部55との間に形成された前記軸受孔の内側で回転する。また、偏心軸部51cは、ジャーナル部51aとともに、前記回転中心軸の周りを回転する。
一方、円形カム部51bは、軸受孔52aの内面と摺動しながら、前記回転中心軸とは異なる軸を中心として、ブロック側支持部52の内側で回転する。これとともに、円形カム部51bは、偏心軸部51cに対して相対的に回転する。
すると、偏心軸部51cが、図6に示されている位置から上昇するとともに、円形カム部51bが上昇する。よって、図7に示されているように、カムシャフト51の回転による円形カム部51bの上昇に伴って、ブロック側支持部52が上昇する。
したがって、シリンダブロック2が、クランクケース4に対して、シリンダ中心軸CCAに沿って相対的に上昇する。このシリンダブロック2の上昇に伴って、シリンダヘッド3がクランクケース4から離隔することで、ピストン22の上死点位置とシリンダヘッド3の下端面との距離が伸びる。すなわち、エンジン1の圧縮比が低下する。
エンジン1の圧縮比が、図7に示されている状態から高くされる場合、カムシャフト51が上述と逆方向に回転駆動される。
このように、圧縮比変更のためにシリンダブロック2とクランクケース4とがシリンダ中心軸CCAに沿って相対移動されるとき、シリンダブロック2の外壁面27と、フレーム41の内壁面41a2(シリンダブロック収容部41aの内壁面41a2)とが摺動する。
この摺動部の上部には、オイル供給路26から、前記オイルが供給される。このオイル供給路26には、シリンダヘッド3に供給されて潤滑に供された前記オイルが、オイル環流路24及び36を介して供給される。よって、前記摺動部の上部には、エンジン1の運転中のほぼ常時、前記オイルが供給される。
ところで、オイルポンプ63は、クランクシャフト42の回転によって駆動されるため、オイルポンプ63の吐出圧は、エンジン回転数Neに依存する。
よって、エンジン回転数Neが所定の基準回転数以上である高回転時には、オイルポンプ63の吐出圧が高くなり、エンジン油圧が所定の噴射開始油圧以上となる。このとき、オイルギャラリ47内の油圧も前記噴射開始油圧以上となり、噴射制御バルブ48が開弁する。この場合、オイル噴射装置45及び46から前記オイルが噴射される。
一方、エンジン回転数Neが前記基準回転数より低い低回転時には、オイルギャラリ47内の油圧も前記噴射開始油圧より低くなり、噴射制御バルブ48が閉弁する。この場合、オイル噴射装置45及び46からの前記オイルの噴射が停止される。
すなわち、高回転時には、オイル噴射装置45及び46からのオイル噴射により、ピストン22の背面が冷却されるとともに、前記摺動部の下部に前記オイルが供給される。一方、低回転時には、ピストン22の背面の冷却のための前記オイルの噴射、及び前記摺動部の下部の潤滑及び/又は冷却のための前記オイルの噴射が、停止される。
<実施形態の構成による効果>
以下、本実施形態の構成による効果について、各図面を参照しつつ説明する。
・本実施形態のエンジン1においては、シリンダブロック2の外壁面27と、クランクケース4におけるシリンダブロック収容部41aの内壁面41a2と、の摺動部に、前記オイルを良好に(強制的に)供給するための機構(オイル供給路26やオイル噴射装置45,46)が設けられている。
かかる構成によれば、圧縮比が変更される際に、前記摺動部に前記オイルが良好に供給された状態で、シリンダブロック2とクランクケース4とが、スムーズに相対移動する。また、前記摺動部におけるフレッティングの発生が、効果的に抑制される。したがって、かかる構成によれば、運転状態に応じた圧縮比の適切な制御が行われ得る。
・本実施形態のエンジン1においては、前記摺動部の上部に対して、オイル供給路26から前記オイルが、エンジン1の運転中、ほぼ常時供給される。これにより、当該摺動部に対する前記オイルの供給が安定的に行われ得る。
また、前記摺動部の下部に対しては、高回転時であってエンジン油圧が所定の噴射開始油圧以上となったときに、オイル噴射装置45及び46から前記オイルが噴射される。よって、前記摺動部にて比較的大きな摩擦抵抗が生じやすい運転状態にて、オイル噴射装置45及び46によって前記オイルが良好に前記摺動部に供給される。また、当該摺動部が、前記オイルの噴射によって良好に冷却される。これにより、当該摺動部にて、スムーズな摺動が実現されるとともに、フレッティングの発生がより効果的に抑制される。
一方、前記摺動部の下部に対する、オイル噴射装置45及び46による前記オイルの供給は、低回転時には必要ないので停止される。よって、他の潤滑部位への前記オイルの供給量が良好に確保され得る。
・本実施形態のエンジン1においては、オイル噴射装置45が、ピストン22の冷却用と前記摺動部への前記オイルの供給用とを兼ねた構成となっている。すなわち、従来よく用いられていた、ピストン22の冷却用のオイル噴射装置に、摺動面潤滑ノズル45aを追加するだけで、前記摺動部への前記オイルの供給が良好に行われる。
また、かかる構成によれば、ピストン22を冷却する必要がある、前記摺動部が比較的高温となったり比較的大きな摩擦抵抗が生じたりする運転状態にて、ピストン22の冷却とともに、前記摺動部に前記オイルが良好に供給される。
・本実施形態のエンジン1においては、前記摺動部にて、シリンダブロック2とクランクケース4との間での熱交換が行われ得る。この熱交換は、当該摺動部における両者の接触、及び/又は当該摺動部に供給される前記オイルを介して行われる。
かかる構成によれば、シリンダブロック2とクランクケース4との温度差が、良好に抑制され得る。よって、前記摺動部における、外壁面27と内壁面41a2とのクリアランスの変動、及びこれによる摩擦状態の変動が、可及的に抑制され得る。これにより、シリンダブロック2とクランクケース4との相対移動が、可及的にスムーズに行われる。したがって、運転状態に応じた圧縮比の適切な制御が行われ得る。
また、前記摺動部における前記オイルの漏出防止のためのオイルシールの信頼性が、良好に維持され得る。さらに、シリンダブロック2とフレーム41との当接あるいは衝突による打撃音等の、可変圧縮比機構の構造に起因する騒音が、可及的に抑制される。
・本実施形態のエンジン1においては、ウォータージャケット23内の前記冷却水と、オイル環流路24内の前記オイルとの間でも、熱交換が行われる。ここで、前記オイルの温度は、上述の通り、クランクケース4の温度に対応したものとなり得る。一方、前記冷却水の温度は、シリンダブロック2の温度に対応したものとなり得る。
かかる構成によれば、前記冷却水と前記オイルとの熱交換によっても、シリンダブロック2とクランクケース4との温度差が、より良好に抑制され得る。したがって、シリンダブロック2とクランクケース4とのスムーズな相対移動による、圧縮比の運転状態に応じた適切な制御が、より良好に行われ得る。
<変形例の例示列挙>
なお、上述の実施形態は、上述した通り、出願人が本願の出願時点において最良であると考えた本発明の具体的構成例を単に例示したものにすぎないのであって、本発明はもとより上述の実施形態によって何ら限定されるべきものではない。よって、上述の実施形態に示された具体的構成に対して、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、種々の変形が施され得ることは、当然である。
以下、変形例について幾つか例示する。ここで、以下の変形例の説明において、上述の実施形態における各構成要素と同様の構成・機能を有する構成要素については、当該変形例においても同一の名称及び同一の符号が付されているものとする。そして、当該構成要素の説明については、上述の実施形態における説明が、矛盾しない範囲で適宜援用され得るものとする。
もっとも、変形例とて、下記のものに限定されるものではないことは、いうまでもない。本発明を、上述の実施形態や下記変形例の記載に基づいて限定解釈することは、(特に先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、許されない。
また、上述の実施形態の構成、及び下記の各変形例に記載された構成は、技術的に矛盾しない範囲において、適宜複合して適用され得ることも、いうまでもない。
(1)本発明は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、メタノールエンジン、バイオエタノールエンジン、その他の任意のタイプの内燃機関に適用可能である。気筒数や気筒配列方式(直列、V型、水平対向)も、特に限定はない。
(2)オイル環流路24とボルト孔25との位置関係は、特に限定はない。例えば、オイル環流路24は、気筒配列方向ADについて、ボルト孔25と重なるような位置に設けられていてもよい。
この場合、オイル環流路24が、ボルト孔25よりも外側に設けられていてもよい。あるいは、逆に、オイル環流路24の方が、ボルト孔25よりも、よりウォータージャケット23寄りの位置に設けられていてもよい。
(3)オイル環流路24及びオイル供給路26は、図1に示されているように、エンジン幅方向(前記長手方向と直交する方向:図1における左右方向)について、シリンダ21の両側に設けられていてもよい。あるいは、図1の場合とは異なり、オイル環流路24及びオイル供給路26は、前記エンジン幅方向について、シリンダ21の一方にのみ設けられていてもよい。
(4)シリンダブロック2の外壁面27には、コーティング層が設けられていてもよい。このコーティング層としては、熱伝導性が高く、低摩擦の表面を有するものが良好に用いられ得る。例えば、このコーティング層としては、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、セラミック被膜(例えば、酸化クロム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、あるいはアルミナを主成分とするものであって、カーボン短繊維等の固体潤滑剤が適宜配合され得る。)、二硫化モリブデン、硬質炭化クロムめっき、等の固体潤滑膜が、良好に用いられ得る。
(5)複数気筒エンジンの場合、シリンダブロック2の気筒配列方向ADに沿ったピッチング振動(を抑制するために、オイル噴射装置45又は46は、シリンダブロック2の気筒配列方向ADにおける少なくとも一方(好ましくは両方)の端部に対応する位置に設けられていてもよい。
(6)上述の実施形態のように、エンジン回転数Neに応じてオイル噴射装置45及び46における前記オイルの噴射の開始及び停止の切り換えが行われる場合、エンジン回転数Neが噴射開始油圧に対応する基準回転数Ne1より低い場合に、ECU71が圧縮比変更動作を禁止するようになっていてもよい。
図8は、かかる処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチン800が起動されると、まず、ステップ810(以下、ステップは「S」と略称する。)にて、エンジン回転数Neが取得される。次に、S820にて、エンジン回転数Neが基準回転数Ne1以上であるか否かが判定される。
エンジン回転数Neが基準回転数Ne1より低い場合(S820=No)、処理がS430に進んで、圧縮比変更動作が禁止され、本ルーチンが終了する(S495)。一方、エンジン回転数Neが基準回転数Ne1以上である場合(S820=Yes)、S430の処理がスキップされ、本ルーチンが終了する(S495)。
(7)オイル噴射装置45及び46における前記オイルの噴射の開始及び停止の切り換えは、エンジン回転数Neとともに、あるいはエンジン回転数Neに代えて、エンジン負荷Lによっても行われ得る。このエンジン負荷Lは、例えば、アクセル開度センサ73の出力等によって取得され得る。
例えば、ピストン噴射ノズル45bからの前記オイルの噴射によるピストン22の冷却は、高回転時、及び低回転高負荷時に行われ得る。このピストン22の冷却のための、ピストン噴射ノズル45bからの前記オイルの噴射に連動して、摺動面潤滑ノズル45aからも前記オイルが噴射され得る。
あるいは、図8のフローチャートの処理は、エンジン回転数Neとともに、あるいはエンジン回転数Neに代えて、エンジン負荷Lをパラメータとして行われ得る。この場合、噴射制御バルブ48は、電磁弁からなり、その開閉がECU71によって制御され得る。
(8)オイル噴射装置45及びオイル噴射装置46の構成は、上述の実施形態で開示されているものに限定されない。図9は、図1に示されているエンジン1の一変形例の構成を示す側断面図である。
例えば、図9に示されているように、オイル噴射装置45におけるピストン噴射ノズル45bは、省略され得る。
また、オイル噴射装置45における摺動面潤滑ノズル45a及びピストン噴射ノズル45b、並びにオイル噴射装置46における摺動面潤滑ノズル46aは、クランクケース4の内部にて、オイルギャラリ47から延びるように設けられた、細い穴(オイル通路)であってもよい。
(9)オイル供給路26と、オイル噴射装置45と、オイル噴射装置46と、のうちの、少なくとも1つは、省略され得る。
例えば、図9に示されているように、オイル噴射装置46が省略され得る。この場合、オイル噴射装置45が、前記エンジン幅方向における一方であって、燃焼室CCによる燃料混合気の燃焼による圧力(図中下向きの矢印)に起因するサイドフォース(図中左向きの矢印)が加わる側(図中左側)のみに設けられ得る。
オイル噴射装置45及びオイル噴射装置46のいずれもが省略された場合、前記摺動部の下部には、当該摺動部の上部に供給された前記オイルが、前記クリアランス内を通って供給され得る。あるいは、クランクシャフト42の回転に伴うバランスウエイト44による前記オイルの跳ね上げや、クランクケース4内に充満するオイルミスト等によって、前記オイルが前記摺動部の下部に供給され得る。
(10)その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。例えば、材料の変更は、適宜行われ得る。また、一体(ワンピース)であったものは別体(ツーピース)にされ得るし、その逆もあり得る。また、前記摺動部には、適宜、オイル漏れ防止のためのオイルシール部材が設けられ得る。
さらに、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。
本発明の一実施形態であるエンジンの概略構成を示す側断面図(図2におけるI−I断面図)である。 図1に示されているエンジンの分解斜視図である。 図1及び図2に示されているカムシャフトを、その一部を分解して示す斜視図である。 図3に示されているフレーム側支持部の周辺を拡大した側断面図である。 図3に示されているフレーム側支持部の周辺を拡大した側断面図である。 図1に示されているエンジンの潤滑油供給系の概略構成図である。 図1に示されているエンジンにおける圧縮比変更動作の様子を示す図である。 図1に示されているエンジンにおける圧縮比変更動作の様子を示す図である。 図5に示されているECUによる処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。 図1に示されているエンジンの一変形例の構成を示す側断面図である。
符号の説明
1…エンジン
2…シリンダブロック 21…シリンダ 22…ピストン
24…オイル環流路 26…オイル供給路 27…外壁面
3…シリンダヘッド 4…クランクケース
41…フレーム 41a…シリンダブロック収容部 41a2…内壁面
42…クランクシャフト 45…オイル噴射装置
45a…摺動面潤滑ノズル 45b…ピストン噴射ノズル 46…オイル噴射装置
46a…摺動面潤滑ノズル 47…オイルギャラリ 48…チェックバルブ
5…移動機構 60…オイル循環機構 61…オイルパン
63…オイルポンプ 70…制御部 71…電気制御装置
AD…気筒配列方向 CC…燃焼室 CCA…シリンダ中心軸
M…モータ W…ウォーム

Claims (4)

  1. 平面視にて略矩形状の空間であるシリンダブロック収容部が内側に形成された筒状のフレームを備え、クランクシャフトを回転可能に支持するように構成された、クランクケースと、
    前記クランクシャフトと機械的に結合されたピストンを往復移動可能に収容するシリンダが形成され、前記シリンダブロック収容部の内壁面と摺動しつつ前記クランクケースと相対移動し得るように前記シリンダブロック収容部に収容された、シリンダブロックと、
    前記ピストンの上死点側の端部にて、前記シリンダブロックと接合された、シリンダヘッドと、
    前記シリンダブロックと前記クランクケースとを、前記シリンダの中心軸に沿って相対移動させ得るように構成された、移動機構と、
    前記フレームに対向する前記シリンダブロックの外壁面と、前記シリンダブロック収容部の前記内壁面と、の間に、潤滑用のオイルを供給し得るように構成された、オイル供給機構と、
    を備えていて、
    前記移動機構により、前記シリンダブロック及び前記シリンダヘッドと、前記クランクケースと、を相対移動させることで、圧縮比を変更可能に構成された、可変圧縮比内燃機関であって、
    前記オイル供給機構は、
    前記クランクケースに設けられていて、前記ピストンよりも前記クランクケース側の位置から前記オイルを噴射し得るように構成された、オイルジェットを備えた
    ことを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
  2. 請求項1に記載の、可変圧縮比内燃機関であって、
    前記オイル供給機構は、
    前記シリンダヘッドから前記クランクケース側に環流する前記オイルを、前記外壁面と前記内壁面との間に供給し得るように形成された、オイル供給路を備えたことを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の、可変圧縮比内燃機関であって、
    前記オイルジェットは、前記ピストンを冷却するために当該ピストンに向けて前記オイルを噴射し得るように構成されたピストン冷却ジェットと連動して、前記オイルを噴射し得るように構成されたことを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
  4. 請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の、可変圧縮比内燃機関であって、
    前記オイルジェットは、エンジン油圧が噴射開始油圧以上の場合に、前記オイルを噴射し得るように構成されたことを特徴とする、可変圧縮比内燃機関。
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