JP2008062668A - 車両の操舵装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 操舵ハンドルの操作に対して最適な反力を付与し、運転者に対して路面状況を把握させることができる車両の操舵装置を提供すること。
【解決手段】 電子制御ユニットは、アクティブステア制御中であればステップS53にて補正目標転舵角δdaの位相φonと目標転舵角δdの位相φoffとの位相差φを計算する。そして、ステップS54〜S57にて、差φが所定値φup以上であれば路面情報係数Kfを「0」に設定し、差φが所定値φlowと値φup間であれば係数Kfを差φに応じて「0」よりも大きく「1」よりも小さい値に計算して設定する。また、通常ステア制御中であるとき、または、差φが値φlow以下であるときは、ステップS58にて係数Kfを「1」に設定する。そして、ユニットは、ステップS61にて、設定した係数Kfを用いることにより、操舵反力トルクTma,Tfの比率を変更して目標操舵トルクTを計算する。
【選択図】 図8

Description

本発明は、車両を操舵するために運転者によって操作される操舵ハンドルと、同操舵ハンドルの操作に対して反力を付与するための反力アクチュエータと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、前記操舵ハンドルの操作に応じて、前記反力アクチュエータを駆動制御して所定の反力を付与するとともに、前記転舵アクチュエータを駆動制御して前記転舵輪を転舵する制御装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置に関する。
従来から、例えば、下記特許文献1に示されるような、ステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置は知られている。この従来の車両の操舵装置においては、操作部材の操作量に対応する反力成分と、操作部材の操作量に対応する指示舵角から車輪の実舵角を差し引いた舵角偏差に対応する反力成分とを含む操作部材の操作反力を演算するようになっている。そして、車両の挙動が不安定でない時には、この演算した操作反力を発生するように反力アクチュエータが制御され、車両の挙動が不安定である時には、演算された操作反力から舵角偏差に対応する反力成分を差し引いた操作反力を発生するように反力アクチュエータが制御されるようになっている。これにより、車両の挙動の安定化のための車両の姿勢制御を実行する場合でも操舵フィーリングが低下することを防止できるようになっている。
また、従来から、例えば、下記特許文献2に示されるような、ステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置も知られている。この従来の車両の操舵装置においては、操作部材の中立位置復帰方向へ作用する操作用アクチュエータの発生操作反力が車両の運転条件に応じて変化するようになっている。すなわち、車両の運転条件に相関する操作反力目標値と、路面反力の変動量に対応する値に相関する付加反力との和に対応する操作反力を発生するように、操作用アクチュエータが制御されるようになっている。これにより、ドライバーが路面状況を把握することができるとともに、車両の運転条件に適した操作反力を付与することにより操縦性能の向上を図ることができるようになっている。
特開2001−30931号公報 特開2003−182619号公報
ところで、上記特許文献1に示された車両の操舵装置においては、車両の挙動が安定である時には、操作部材(操舵ハンドル)の操作量に対応する反力成分と、操作部材(操舵ハンドル)の操作量に対応する指示舵角と車輪(転舵輪)の実舵角との舵角偏差に対応する反力成分とを含む操作反力が付与され、車両の挙動が不安定であるときには、舵角偏差を差し引いた操作反力が付与される。
しかしながら、車両の挙動の安定性は、路面状況に大きく依存するものであり、路面状況は車両の走行に伴って時々刻々と変化する。このため、単純に、車両の挙動の安定性に基づいて操作部材(操舵ハンドル)に付与する操作反力を変更する、より具体的には、付与する操作反力を切り替えるようにすると、操作反力の切り替えが急激に行われる場合がある。この場合、運転者は、操作部材(操舵ハンドル)を介して操作反力を知覚するため、操作反力の切り替えが急激に行われたり、操作反力の急激な切り替えが頻繁に行われたりすると、違和感を覚える可能性がある。
また、上記特許文献2に示された車両の操舵装置においては、車両の運転条件(例えば、車輪の舵角)に相関する操作反力と、路面反力の変動量に対応する値(例えば、吸振部材の振幅)に相関する付加反力との和に対応する操作反力が付与される。このように、路面反力の変動量に相関する付加反力を付加して、ドライバーに路面状況を把握させることは、ステアリングバイワイヤ方式を採用した車両の操舵装置において重要なことである。
しかしながら、常に付加反力を付加してドライバーに路面状況を把握させる場合には、操作部材(操舵ハンドル)に付与される操作反力が常に変動する状態となり得る。このように、操作部材(操舵ハンドル)に付与される操作反力が常に変動している状態においては、かえってドライバーに違和感を覚えさせる可能性がある。したがって、必要なときに、ドライバーに路面状況を把握させることが好ましい。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、運転者による操舵ハンドルの操作に対して最適な反力を付与できるとともに、必要なときに運転者に対して路面状況を把握させることができる車両の操舵装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車両を操舵するために運転者によって操作される操舵ハンドルと、同操舵ハンドルの操作に対して反力を付与するための反力アクチュエータと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、前記操舵ハンドルの操作に応じて、前記反力アクチュエータを駆動制御して所定の反力を付与するとともに、前記転舵アクチュエータを駆動制御して前記転舵輪を転舵する制御装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、前記制御装置を、前記操舵ハンドルに対する運転者の操作入力値を検出する操作入力値検出手段と、前記転舵輪の実転舵角を検出する転舵角検出手段と、旋回状態にある車両の運動状態を表す運動状態量を検出する運動状態量検出手段と、前記操舵ハンドルに対する操作入力値と予め定めた所定の関係にある前記転舵輪の第1目標転舵角を、前記検出された操作入力値を用いて計算する第1目標転舵角計算手段と、前記検出された運動状態量を用いて、車両の旋回挙動を安定化させるための第2目標転舵角を計算する第2目標転舵角計算手段と、前記計算された第1目標転舵角に対する前記計算された第2目標転舵角の偏差を計算する偏差計算手段と、前記操舵ハンドルに対する操作入力値と予め定めた所定の関係にある第1目標反力を、前記検出された操作入力値を用いて計算する第1目標反力計算手段と、前記転舵輪の転舵状態に応じて路面から入力される路面反力に対応する第2目標反力を、前記検出された実転舵角を用いて計算する第2目標反力計算手段と、前記計算された第1目標反力と前記計算された第2目標反力との比率を、前記計算された偏差に基づいて変更する比率変更手段と、前記計算された第1目標反力と前記計算された第2目標反力との和によって表される最終目標反力を、前記変更された比率を用いて計算する最終目標反力計算手段と、前記計算された最終目標反力に応じて前記反力アクチュエータを制御して前記操舵ハンドルの操作に対して同計算した最終目標反力を付与する反力制御手段とで構成したことにある。
この場合、前記偏差計算手段は、前記転舵輪が前記計算された第1目標転舵角に変化するときの変化特性と前記転舵輪が前記計算された第2目標転舵角に変化するときの変化特性との間の位相差に基づいて前記偏差を計算するとよい。また、前記比率変更手段は、前記偏差計算手段によって計算された偏差が大きくなるに従って、前記第1目標反力の比率が大きくなるように変更するとよい。
上記のように構成した本発明においては、まず、操舵ハンドルに対する運転者の操作入力値(例えば、操舵角)を用いて、例えば、べき乗関係または指数関係にある第1目標転舵角が計算されるとともに、旋回状態にある車両の運動状態を表す運動状態量(例えば、横加速度、ヨーレート、旋回曲率など)を用いて、車両の旋回挙動を安定化させるための第2目標転舵角が計算される。そして、この計算された第1目標転舵角と第2目標転舵角との偏差が、例えば、転舵輪が第1目標転舵角まで変化するときの時間に対する変化特性と第2目標転舵角まで変化するときの時間に対する変化特性との間の位相差に基づいて計算される。
また、操舵ハンドルに対する運転者の操作入力値(例えば、操舵角)を用いて、例えば、べき乗関係または指数関係にある第1目標反力が計算されるとともに、転舵輪の転舵状態に応じて路面から入力される路面反力に対応する第2目標反力が計算される。そして、操舵ハンドルに付与される第1目標反力と第2目標反力との比率が、第1目標転舵角と第2目標転舵角との偏差に基づいて変更され、同変更された比率を用いて第1目標反力と第2目標反力との和としての最終目標反力が計算される。ここで、第1目標転舵角と第2目標転舵角との偏差が大きい場合には、第1目標反力の比率が大きくされて、最終目標反力が計算される。そして、このように計算された最終目標反力が操舵ハンドルの操作に対して付与される。
したがって、例えば、車両の旋回挙動が安定しているときに付与される第1目標反力から車両の旋回挙動を安定化させるときに付与される第2目標反力に切り替える場合であっても、第1目標反力と第2目標反力との比率を連続的に滑らかに変更することができる。このため、反力の切り替えに伴って運転者が覚える違和感を小さくすることができる。
また、比率の変更に際しては、第1目標転舵角と第2目標転舵角との偏差に応じて変更することができる。これにより、操作入力値(例えば、操舵角)に基づいて決定される第1目標反力と路面反力に対応する第2目標反力とをバランスよく付与することができる。このため、運転者に対して、第2目標反力の適切な付与によって運転に必要な路面状況を適切に伝達することができる。
さらに、車両の旋回挙動を安定化させるために、第1目標転舵角と第2目標転舵角との偏差が大きくなった場合には、第1目標反力の比率が大きくなるように変更することができる。これにより、例えば、車両の挙動を安定化させるために、第2目標転舵角が第1目標転舵角に対して大きく変動している状況においては、第2目標反力の比率を小さくすることができ、転舵輪の転舵状態によって変動する第2目標反力の影響を小さくすることができる。したがって、運転者は、滑らかに変化する第1目標反力を主に知覚することができ、第2目標転舵角に基づいて車両が旋回していても、適切に操舵ハンドルを操作することができる。
また、本発明の他の特徴は、前記制御装置が、前記転舵輪を転舵させるための前記転舵アクチュエータの駆動に伴って発生する機械的な摩擦力を推定する摩擦力推定手段と、所定の基準摩擦力の大きさと前記推定された摩擦力の大きさを比較する摩擦力比較手段と、前記摩擦力比較手段による比較に基づき、前記推定された摩擦力の大きさが前記所定の基準摩擦力よりも大きいときに、前記推定された摩擦力に対応する第3目標反力を計算する第3目標反力計算手段とを備えており、前記最終目標反力計算手段は、前記変更された比率を用いた前記第1目標反力と前記第2目標反力との和に対して、さらに、前記第3目標反力を加えて最終目標反力を計算することにもある。
この場合、前記摩擦力推定手段は、例えば、前記転舵アクチュエータに流れる電流値の変化に基づいて前記機械的な摩擦力を推定するとよい。また、前記摩擦力比較手段は、前記摩擦力推定手段によって予め推定された摩擦力の大きさを用いて前記所定の基準摩擦力の大きさを決定するとよい。この場合、前記摩擦力比較手段は、例えば、前記転舵輪が所定の転舵状態にあるときに、前記摩擦力推定手段によって予め推定された前記機械的な摩擦力の大きさを用いて前記所定の基準摩擦力の大きさを決定するとよい。ここで、前記転舵輪の所定の転舵状態は、例えば、前記転舵輪が大きな実転舵角から小さな実転舵角に移行する状態、または、前記転舵輪が小さな実転舵角から大きな実転舵角に移行する状態である。
これらによれば、転舵輪を転舵させるために、転舵アクチュエータが駆動する際に通常発生する機械的な摩擦力すなわち転舵輪を転舵させるために設けられた各部材や各装置間で発生する摩擦力に対して、例えば、路面から大きな路面反力が転舵輪に入力し、転舵アクチュエータがより大きな摩擦力に抗して転舵輪を転舵させる状況となったときには、この大きな摩擦力に対応する第3目標反力を操舵ハンドルに付与することができる。このため、例えば、第1目標反力の比率が大きくされた最終目標反力が付与されている状況であっても、路面から入力される路面反力が大きくなった場合には、運転者に対して、路面状況の変化を的確に伝達することができる。
ここで、機械的な摩擦力は、転舵アクチュエータに流れる電流値変化に基づいて推定することができる。このため、摩擦力を検出するために別途装置(例えば、センサ)を設ける必要がない。また、所定の基準摩擦力の大きさは、これまでに推定された摩擦力の大きさを用いて決定することができる。これにより、転舵輪を転舵するための各部材や各装置の作動状況に応じた適切な基準摩擦力の大きさを決定することができ、その結果、転舵輪に入力される大きな路面反力を確実に判別することができる。したがって、運転者に対して、路面状況の変化を確実に伝達することができる。
a.第1実施形態
以下、本発明の実施形態に係る車両の操舵装置について図面を用いて説明する。図1は、第1ないし第3実施形態に共通の車両の操舵装置を概略的に示している。
この操舵装置は、転舵輪としての左右前輪FW1,FW2を転舵するために、運転者によって回動操作される操舵ハンドル11を備えている。操舵ハンドル11は、操舵入力軸12の上端に固定され、操舵入力軸12の下端は電動モータおよび減速機構からなる反力アクチュエータ13に接続されている。反力アクチュエータ13は、運転者の操舵ハンドル11の回動操作に対して反力を付与する。
また、この操舵装置は、電動モータおよび減速機構からなる転舵アクチュエータ21を備えている。この転舵アクチュエータ21による転舵力は、転舵出力軸22、ピニオンギア23およびラックバー24を介して左右前輪FW1,FW2に伝達される。この構成により、転舵アクチュエータ21からの回転力は転舵出力軸22を介してピニオンギア23に伝達され、ピニオンギア23の回転によりラックバー24が軸線方向に変位して、このラックバー24の軸線方向の変位により、左右前輪FW1,FW2は左右に転舵される。
次に、これらの反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21の回転を制御する電気制御装置について説明する。電気制御装置は、操舵角センサ31、転舵角センサ32、車速センサ33、横加速度センサ34および軸力センサ35を備えている。
操舵角センサ31は、操舵入力軸12に組み付けられて、操舵ハンドル11の中立位置からの回転角を検出して操舵角θとして出力する。転舵角センサ32は、転舵出力軸22に組み付けられて、転舵出力軸22の中立位置からの回転角を検出して実転舵角δ(左右前輪FW1,FW2の転舵角に対応)として出力する。ここで、本明細書において、中立位置とは、車両が直進状態を維持するための操舵ハンドル11、操舵入力軸12、転舵出力軸22および左右前輪FW1,FW2の位置をいう。そして、操舵角θおよび実転舵角δは、中立位置を「0」とし、左方向の回転角を正の値で表すとともに、右方向の回転角を負の値でそれぞれ表す。
車速センサ33は、車速Vを検出して出力する。横加速度センサ34は、車両の実横加速度Gを検出して出力する。なお、実横加速度Gも、左方向の加速度を正の値で表し、右方向の加速度を負の値で表す。軸力センサ35は、例えば、ラックバー24に組み付けられていて、路面から左右前輪FW1,FW2を介して入力する外力(横力)に起因してラックバー24に作用する軸力Fを検出して出力する。なお、軸力Fは、左右前輪FW1,FW2を右方向に転舵させる力を正の値で表し、左方向に転舵させる力を負の値で表す。
これらのセンサ31〜35は、電子制御ユニット36に接続されている。電子制御ユニット36は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするもので、プログラムの実行により反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21の作動をそれぞれ制御する。電子制御ユニット36の出力側には、反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21を制御するための駆動回路37,38がそれぞれ接続されている。駆動回路37,38内には、反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21内の電動モータに流れる駆動電流を検出するための電流検出器37a,38aが設けられている。電流検出器37a,38aによって検出された駆動電流は、両電動モータの駆動を制御するために、電子制御ユニット36にフィードバックされている。
次に、上記のように構成した第1実施形態の動作について説明する。図示しないイグニッションスイッチがオン状態とされると、電子制御ユニット36は、運転者による操舵ハンドル11の回動操作状態に応じて、転舵アクチュエータ21を駆動させることによって左右前輪FW1,FW2を転舵する転舵制御と、反力アクチュエータ13を駆動させることによって反力を付与する反力制御とを開始する。以下、転舵制御と反力制御について、まず、転舵制御から具体的に説明する。
運転者によって操舵ハンドル11が回動操作されると、電子制御ユニット36は、操舵角センサ31によって検出された操舵角θと車速センサ33によって検出された車速Vとを入力する。そして、電子制御ユニット36は、入力した操舵角θに対して、例えば、べき乗関数的に変化する第1目標転舵角としての目標転舵角δdを下記式1に従って計算する。
δd=a・θI …式1
ただし、前記式1中の係数aは、検出車速Vに依存して変化する車速係数であり、図2に示すように、検出車速Vが小さい範囲内で「1」よりも大きく、検出車速Vが大きい範囲内で「1」よりも小さく、検出車速Vの増加に伴って「1」を挟んで非線形に減少する特性を有している。また、前記式1中のθは、検出操舵角θの絶対値を表しており、検出操舵角θが正の値であれば係数aを正の値とするとともに検出操舵角θが負の値であれば係数aの値を前記正の値と同じ絶対値を有する負の値とする。さらに、前記式1中のIは、べき指数を表す定数であり、「1」よりも大きな値に設定されるものである。
したがって、前記式1に従って計算される目標転舵角δdは、検出車速Vが大きくなるに伴って、検出操舵角θに対して小さくなる。その結果、中高速域における車両の挙動安定性が良好に確保されるため、運転者は良好な操舵感覚を得ることができる。一方、前記式1に従って計算される目標転舵角δdは、検出車速Vが小さくなるに伴って、検出操舵角θに対して大きくなる。その結果、低速域において、小さな操舵角θで車両を容易に旋回させることができるため、運転者は良好な操舵感覚を得ることができる。
ここで、目標転舵角δdの計算においては、上述したべき乗関数によって計算されることに限定されるものではない。すなわち、操舵角θがある程度小さい範囲で変化するとき、言い換えれば、操舵ハンドル11が中立位置近傍で回動されるときには計算される目標転舵角δdの変化量が小さくなり、操舵角θがある程度大きい範囲で変化するとき、言い換えれば、操舵ハンドル11が中立位置近傍外で回動されるときには計算される目標転舵角δdの変化量が大きくなる関数(例えば、指数関数など)を採用することができる。なお、前記式1の演算に代えて操舵角θに対する目標転舵角δdを記憶した図3に示すような特性の変換テーブルを用いて、目標転舵角δdを計算するようにしてもよい。
また、電子制御ユニット36は、車両の旋回時における挙動変化を適切に安定化させるために、検出車速Vと、横加速度センサ34によって検出されて旋回状態に応じて時間変化する実横加速度Gとに基づいて、計算した目標転舵角δdを補正する。すなわち、電子制御ユニット36は、検出車速Vと実横加速度Gとを用いた下記式2に従って、計算した目標転舵角δdを補正して第2目標転舵角としての補正目標転舵角δdaを計算する。
δda=δd+J・(Gd−G) …式2
ただし、前記式2中の係数Jは予め決められた定数である。また、Gdは車両旋回時において車両の発生する目標横加速度を表すものであって、車速Vを変化させながら車両を走行させて、左右前輪FW1,FW2の転舵角δを変化させたときに発生する横加速度を実測したものである。また、係数Jおよび目標横加速度Gdは計算された目標転舵角δdが正であればそれぞれ正の値とされるとともに、計算された目標転舵角δdが負であればそれぞれ前記正の係数Jおよび目標横加速度Gdと同じ絶対値を有する負の値とされる。
これにより、車速Vで走行している車両が目標転舵角δdで旋回する状況において、旋回挙動の変化により、発生する実横加速度Gが目標横加速度Gdに対して小さい場合には、補正目標転舵角δdaが大きくなる側に補正される。また、旋回挙動の変化により、発生する実横加速度Gが目標横加速度Gdに対して大きい場合には、補正目標転舵角δdaが小さくなる側に補正される。さらに、旋回挙動が変化せず、発生する実横加速度Gと目標横加速度Gdとが等しい場合には、補正目標転舵角δdaと目標転舵角δdとは一致する。
ここで、以下の説明においては、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に合わせて、安定した挙動で車両を旋回させるために、前記式2に従って目標転舵角δdを補正、すなわち、目標転舵角δdよりも大きいまたは小さい補正目標転舵角δdaを計算し、この補正目標転舵角δdaに左右前輪FW1,FW2を転舵することをアクティブステア制御という。一方、実横加速度Gと目標横加速度Gdが等しい状態、すなわち、目標転舵角δdと補正目標転舵角δdaが等しい状態で、この補正目標転舵角δdaに左右前輪FW1,FW2を転舵することを通常ステア制御という。
そして、電子制御ユニット36は、転舵角センサ32によって検出された実転舵角δを入力し、左右前輪FW1,FW2が計算した補正目標転舵角δdaまたは目標転舵角δdに転舵されるように、転舵アクチュエータ21内の電動モータの回転をフィードバック制御する。また、電子制御ユニット36は、駆動回路38に設けられた電流検出器38aから転舵アクチュエータ21内の電動モータに流れる駆動電流も入力し、同電動モータに転舵力に対応した大きさの駆動電流が適切に流れるように駆動回路38をフィードバック制御する。この転舵アクチュエータ21内の電動モータの駆動制御により、同電動モータの回転は、転舵出力軸22を介してピニオンギア23に伝達され、ピニオンギア23の回転によりラックバー24が軸線方向に変位する。そして、このラックバー24の軸線方向への変位により、左右前輪FW1,FW2は補正目標転舵角δdaまたは目標転舵角δdに転舵される。
次に、反力制御について説明する。この第1実施形態においては、電子制御ユニット36は、左右前輪FW1,FW2がアクティブステア制御されている場合と通常ステア制御されている場合とに応じて、操舵ハンドル11に付与する反力を異ならせる。以下、電子制御ユニット36による反力制御を詳細に説明する。
ステアリングバイワイヤ方式を採用した車両の操舵装置においては、図1に示したように、操舵ハンドル11(操舵入力軸12)と左右前輪FW1,FW2(転舵出力軸22)との機械的な連結が解除される。一般的に、運転者が車両を運転する場合においては、操舵ハンドル11の回動操作に対する左右前輪FW1,FW2の転舵状態および路面状況が把握できることが望ましい。この点に関し、ステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置においては、従来から、路面から左右前輪FW1,FW2入力される外力であって、左右前輪FW1,FW2の転舵状態に応じて変化する路面反力を推定し、この路面反力に対応する操舵反力を操舵ハンドル11に付与するようになっている。
ところが、上述したように、左右前輪FW1,FW2がアクティブステア制御されている状況においては、左右前輪FW1,FW2の転舵状態が変化、より具体的には、左右前輪FW1,FW2の実転舵角δが時間関数的に変化する。すなわち、運転者が操舵ハンドル11を介して入力した操舵角θに対応する目標転舵角δdが計算されると、検出された実横加速度Gの大きさ応じて補正目標転舵角δdaが計算される。このとき、左右前輪FW1,FW2が目標転舵角δdまで転舵する目標変化特性が、図4にて実線で概略的に示すような曲線(以下、ベース特性線という)で表されるとする。これに対して、左右前輪FW1,FW2の補正目標転舵角δdaの変化特性は、実横加速度Gの大きさに応じて、破線で示すように、目標変化特性を表すベース特性線に対して偏差(以下、この偏差を位相差φという)を有するようになる。
この場合、推定される路面反力は、左右前輪FW1,FW2の転舵状態の変化に応じて変動することになる。このため、この変動する路面反力に対応する操舵反力が操舵ハンドル11に付与されると、運転者は、操舵ハンドル11を介して変動する操舵反力を知覚することになり、違和感を覚える可能性がある。このため、電子制御ユニット36は、図5に示す反力制御プログラムを実行することによって適切な操舵反力を決定し、操舵ハンドル11に適切な操舵反力を付与する。以下、この反力制御プログラムを詳細に説明する。
図示しないイグニッションスイッチがオン状態とされると、電子制御ユニット36は、図5に示す反力制御プログラムを所定の短い時間間隔により繰り返し実行する。すなわち、電子制御ユニット36は、反力制御プログラムのステップS10においてその実行を開始し、ステップS11にて各センサ31〜35により検出された操舵角θ、転舵角δ、車速V、横加速度Gおよび軸力Fを入力する。
続いて、電子制御ユニット36は、ステップS12にて、上述した転舵制御において、左右前輪FW1,FW2をアクティブステア制御しているか否かを判定する。すなわち、電子制御ユニット36は、現在、左右前輪FW1,FW2をアクティブステア制御していれば、すなわち、目標転舵角δdの目標変化特性(ベース特性線)に対して位相差φを有する補正目標転舵角δdaに左右前輪FW1,FW2を転舵していれば、「Yes」と判定してステップS13に進み、第1目標反力としてのアクティブステア制御時における操舵反力トルク(以下、この操舵反力トルクをアクティブ時操舵反力トルクTzaという)を計算して決定する。
すなわち、電子制御ユニット36は、目標転舵角δdの目標変化特性(ベース特性線)に基づき、検出操舵角θの変化に対して図6に示すような変化特性を有するアクティブ時操舵反力トルクTzaを計算する。具体的に説明すると、左右前輪FW1,FW2がアクティブステア制御されている状況においては、検出操舵角θの変化に対して、べき乗関数的(指数関数的)に変化するアクティブ時操舵反力トルクTzaを計算する。
これにより、目標転舵角δdの目標変化特性(ベース特性線)に対して補正目標転舵角δdaの変化特性が位相差φを有している場合であっても、操舵ハンドル11に付与される操舵反力に対して路面反力の変動が反映されることがない。したがって、運転者は、滑らかに変化する良好な操舵反力を知覚しながら、操舵ハンドル11を回動操作することができる。
一方、前記ステップS12にて、左右前輪FW1,FW2を通常ステア制御していれば、電子制御ユニット36は「No」と判定して、ステップS14に進む。ステップS14においては、電子制御ユニット36は、路面反力を推定するとともに、同推定した路面反力に対応する第2目標反力としての操舵反力トルク(以下、この操舵反力トルクを通常時操舵反力トルクTzuという)を計算して決定する。
具体的に説明すると、電子制御ユニット36は、軸力センサ35によって検出された軸力Fに基づいて、または、横加速度センサ34によって検出された実横加速度Gに基づいて、左右前輪FW1,FW2を転舵するために必要な転舵力すなわち路面反力を推定する。具体的に説明すると、路面摩擦係数が小さい状況では軸力Fや実横加速度Gは小さくなることに基づき、転舵力すなわち路面反力は小さいと推定される。一方、路面摩擦係数が大きい状況では軸力Fや実横加速度Gは大きくなることに基づき、転舵力すなわち路面反力は大きいと推定される。
そして、この路面反力の推定、言い換えれば、路面摩擦係数の大きさに基づき、電子制御ユニット36は、通常時操舵反力トルクTzuを計算する。すなわち、路面摩擦係数が小さい状況では、左右前輪FW1,FW2の実転舵角δが大きくなっても路面反力は小さいため、通常時操舵反力トルクTzuも小さく決定される。一方、路面摩擦係数が大きい状況では、左右前輪FW1,FW2の実転舵角δが大きくなるに伴って路面反力は大きくなるため、通常時操舵反力トルクTzuも大きく決定される。ここで、通常時操舵反力トルクTzuを決定するにあたっては、路面摩擦係数の大きさを考慮して実転舵角δに対する通常時操舵反力トルクTzuの変化特性を表した図7の特性テーブルを用いて計算することも可能である。
そして、電子制御ユニット36は、前記ステップS13またはステップS14の計算処理後、ステップS15にて、決定したアクティブ時操舵反力トルクTzaまたは通常時操舵反力トルクTzuにそれぞれ対応する操舵反力(以下、アクティブ時操舵反力トルクTzaに対応する操舵反力をアクティブ時操舵反力、通常時操舵反力トルクTzuに対応する操舵反力を通常時操舵反力という)を操舵ハンドル11に付与する。
具体的に説明すると、電子制御ユニット36は、駆動回路37に設けられた電流検出器37aから反力アクチュエータ13内の電動モータに流れる駆動電流を入力し、同電動モータにアクティブ時操舵反力トルクTzaまたは通常時操舵反力トルクTzuに対応した駆動電流が流れるように駆動回路37をフィードバック制御する。この反力アクチュエータ13内の電動モータの駆動制御により、同電動モータは、操舵入力軸12を介して操舵ハンドル11にアクティブ時操舵反力トルクTzaに対応するアクティブ時操舵反力または通常時操舵反力トルクTzuに対応する通常時操舵反力を付与する。これにより、運転者は、操舵ハンドル11の回動操作に対して、適切な操舵反力を知覚することができる。
このように、前記ステップS15における操舵反力付与処理を実行すると、続くステップS16にて、電子制御ユニット36は反力制御プログラムの実行を一旦終了する。そして、所定の短時間の経過後、電子制御ユニット36は、ふたたび、ステップS10にて、反力制御プログラムの実行を開始する。
以上の説明からも理解できるように、この第1実施形態によれば、左右前輪FW1,FW2がアクティブステア制御されているか、通常ステア制御されているかに応じて、操舵ハンドル11に付与する操舵反力を切り替えることができる。すなわち、左右前輪FW1,FW2がアクティブステア制御されている状況では、運転者による操舵ハンドル11の操舵角θの大きさに対応するアクティブ時操舵反力トルクTzaが計算されて決定される。これにより、アクティブステア制御により変動する路面反力を反映することなく、極めて滑らかに変化するアクティブ時操舵反力を操舵ハンドル11に付与することができ、運転者は、極めて良好な操舵感覚を知覚することができる。
一方、左右前輪FW1,FW2が通常ステア制御されている状況では、路面反力(路面摩擦係数)を考慮して、左右前輪FW1,FW2の実転舵角δの大きさに対応する通常時操舵反力トルクTzuが決定される。これにより、旋回状態において、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に対して路面反力を適切に反映した通常時操舵反力を付与することができ、運転者は、極めて容易に路面状況(すなわち、路面反力の大きさ)を把握することができる。
b.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態を説明する。上記第1実施形態においては、左右前輪FW1,FW2がアクティブステア制御状態にあるかまたは通常ステア制御状態にあるかに応じて、選択的にアクティブ時操舵反力(アクティブ時操舵反力トルクTza)と通常時操舵反力(通常時操舵反力トルクTzu)とを切り替えるように実施した。しかし、このように操舵反力を左右前輪FW1,FW2のステア制御状態に応じて切り替えるのみでは、この切り替えに伴って運転者が違和感を覚える可能性がある。特に、車両旋回時に路面摩擦係数が変化して路面反力が変化する場合には、ステア制御状態が切り替わりやすいため、運転者が違和感を覚える可能性が高くなる。
そこで、この第2実施形態においては、アクティブステア制御時の操舵反力と通常ステア制御時の操舵反力とを緩やかに(連続的に)切り替えるようにする。以下、この第2実施形態を具体的に説明するが、上記第1実施形態と同一部分には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
この第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、電子制御ユニット36は、左右前輪FW1,FW2をアクティブステア制御または通常ステア制御する。そして、この第2実施形態においては、電子制御ユニット36は、図8に示すフローチャートによって表される反力制御プログラムを実行する。以下、この反力制御プログラムについて詳細に説明する。
この第2実施形態における反力制御プログラムにおいても、図示しないイグニッションスイッチがオン状態とされると、電子制御ユニット36は、図8に示す反力制御プログラムを所定の短い時間間隔により繰り返し実行する。すなわち、電子制御ユニット36は、反力制御プログラムのステップS50においてその実行を開始し、ステップS51にて各センサ31〜35により検出された操舵角θ、転舵角δ、車速V、横加速度Gおよび軸力Fを入力する。
続いて、電子制御ユニット36は、ステップS52にて、左右前輪FW1,FW2をアクティブステア制御しているか否かを判定する。すなわち、電子制御ユニット36は、現在、左右前輪FW1,FW2をアクティブステア制御していれば、「Yes」と判定してステップS53に進む。
ステップS53においては、電子制御ユニット36は、現在のアクティブステア制御における補正目標転舵角δdaの変化特性と、アクティブステア制御していないすなわち通常ステア制御における補正目標転舵角δda(目標転舵角δd)の変化特性との間の位相差φを演算する。以下、この位相差φの計算について詳細に説明する。
上記第1実施形態にて図4を用いて説明したように、アクティブステア制御時においては、目標転舵角δdを補正した補正目標転舵角δdaの変化特性は、左右前輪FW1,FW2が目標転舵角δdまで転舵する目標変化特性(ベース特性線)に対して位相差φを有して変化する。そして、このように変化する補正目標転舵角δdaに基づいて操舵ハンドル11に操舵反力を付与すると、運転者は変動する操舵反力を知覚して違和感を覚える。ところが、運転者が覚える違和感は、位相差φが大きく変動する場合に知覚されるものであり、ある程度小さな変動は、路面状況(すなわち、路面反力の大きさ)を把握する上で有効な入力となる場合がある。
このため、電子制御ユニット36は、ステップS53にて、図4におけるベース特性線によって表される通常ステア制御しているときの位相φoffと、図4における破線で表されるアクティブステア制御しているときの位相φonとの差分すなわち位相差φを計算する。具体的には、下記式3に従って、位相φonと位相φoffとの差分値の絶対値としての位相差φを計算する。
φ=|φon−φoff| …式3
そして、電子制御ユニット36は、前記ステップS53にて位相差φを計算すると、ステップS54にて、計算した位相差φが、ある程度小さな変動であって路面状況を把握する上で有効な入力となる範囲を決定する位相差の上限値φup以上であるか否かを判定する。なお、位相差の上限値φupは、予め設定される所定値である。
すなわち、電子制御ユニット36は、計算した位相差φが上限値φup以上であれば、アクティブステア制御時における補正目標転舵角δdaの変化特性が目標変化特性(ベース特性線)に対して大きく変動しており、路面状況を把握する有効な入力とはならないため、ステップS54にて「Yes」と判定してステップS55に進む。
ステップS55においては、電子制御ユニット36は、路面情報を伝達するために、左右前輪FW1,FW2の転舵状態に応じて入力する路面反力に対応する操舵反力の伝達比率(伝達割合)を表す路面情報係数Kfを「0」に設定する。一方、前記ステップS53にて計算した位相差φが上限値φup未満であれば、電子制御ユニット36は「No」と判定してステップS56に進む。
ステップS56においては、電子制御ユニット36は、さらに、計算した位相差φが上限値φup未満であり、かつ、目標変化特性(ベース特性線)に対する補正目標転舵角δdaの変化特性の変動が路面状況を把握する上で有効となる範囲を決定する位相差の下限値φlowよりも大きいか否かを判定する。そして、計算した位相差φが前記範囲内であれば、電子制御ユニット36は「Yes」と判定してステップS57に進む。
ステップS57においては、電子制御ユニット36は、路面情報係数Kfを下記式4に従って計算する。
Kf=(φ−φup)/(φlow−φup) …式4
ただし、前記式4中のφupは目標変化特性(ベース特性線)に対する補正目標転舵角δdaの変化特性の変動が路面状況を把握する上で有効となる範囲を決定する上限値を表し、φlowは前記範囲を決定する下限値を表す所定値であって、予め設定される値である。
一方、前記ステップS52にて、左右前輪FW1,FW2を通常ステア制御していれば、電子制御ユニット36は「No」と判定してステップS58に進む。また、前記ステップS56にて、位相差φが下限値φlow以下であれば、電子制御ユニット36は「No」と判定してステップS58に進む。
ステップS58においては、電子制御ユニット36は、路面情報係数Kfを「1」に設定する。すなわち、左右前輪FW1,FW2が通常ステア制御されている状態および位相差φが下限値φlow以下である状態においては、適切な路面反力が得られる状態で車両が旋回している状態である。このため、左右前輪FW1,FW2の転舵状態に応じた路面反力に対応する操舵反力を積極的に伝達して、運転者に路面状況を正確に把握させるために、電子制御ユニット36は路面情報係数Kfを「1」に設定する。
このように、電子制御ユニット36は、前記ステップS55、ステップS57またはステップS58の計算処理によって、路面情報係数Kfを設定すると、ステップS59にて、操舵ハンドル11の操舵角θに基づく第1目標反力としての操舵反力トルクTmaを計算する。すなわち、電子制御ユニット36は、検出操舵角θの変化に対して、べき乗関数的(指数関数的)に変化する操舵反力トルクTmaを計算する。なお、この操舵反力トルクTmaの計算においては、例えば、上記第1実施形態において図6に示した検出操舵角θとアクティブ時操舵反力トルクTza(操舵反力トルクTma)の関係を表す特性テーブルを用いて計算することも可能である。そして、操舵反力トルクTmaを計算すると、電子制御ユニット36は、ステップS60に進む。
ステップS60においては、路面反力を推定するとともに、同推定した路面反力に対応する第2目標反力としての操舵反力トルクTfを計算する。すなわち、電子制御ユニット36は、軸力センサ35によって検出された軸力Fに基づいて、または、横加速度センサ34によって検出された実横加速度Gに基づいて、左右前輪FW1,FW2を転舵するために必要な転舵力すなわち路面反力を推定する。具体的には、路面摩擦係数が小さい状況では軸力Fや実横加速度Gは小さくなることに基づき、転舵力すなわち路面反力は小さいと推定される。一方、路面摩擦係数が大きい状況では軸力Fや実横加速度Gは大きくなることに基づき、転舵力すなわち路面反力は大きいと推定される。
そして、この路面反力の推定、言い換えれば、路面摩擦係数の大きさに基づき、電子制御ユニット36は、操舵反力トルクTfを計算する。すなわち、路面摩擦係数が小さい状況では、左右前輪FW1,FW2の実転舵角δが大きくなっても路面反力は小さいため、操舵反力トルクTfも小さく決定される。一方、路面摩擦係数が大きい状況では、左右前輪FW1,FW2の実転舵角δが大きくなるに伴って路面反力は大きくなるため、操舵反力トルクTfも大きく決定される。なお、この操舵反力トルクTfを計算するにあたっても、例えば、上記第1実施形態において図7に示した路面摩擦係数を考慮して実転舵角δに対する通常時操舵反力トルクTzu(操舵反力トルクTf)の変化特性を表した特性テーブルを用いて計算することも可能である。そして、電子制御ユニット36は、操舵反力トルクTfを計算すると、ステップS61に進む。
ステップS61においては、電子制御ユニット36は、操舵ハンドル11に付与する操舵反力に対応する最終目標反力としての目標操舵反力トルクTを計算する。具体的に説明すると、電子制御ユニット36は、前記ステップS55、ステップS57またはステップS58において設定した路面情報係数Kfと、前記ステップS59にて計算した操舵反力トルクTmaと、前記ステップS60にて計算した操舵反力トルクTfとを用いた下記式5に従って、目標操舵反力トルクTを計算する。
T=(1−Kf)・Tma+Kf・Tf …式5
前記式5によれば、前記ステップS55にて路面情報係数Kfが「0」に設定された場合には、目標操舵反力トルクTが操舵反力トルクTmaと等しくなり、この場合には、上記第1実施形態で説明したように、左右前輪FW1,FW2の転舵状態に関わらず、滑らかにべき乗関数的(指数関数的)に変化する目標操舵反力トルクTが計算される。また、前記ステップS58にて路面情報係数kfが「1」に設定された場合には、目標操舵反力トルクTが操舵反力トルクTfと等しくなり、この場合には、上記第1実施形態で説明したように、左右前輪FW1,FW2の転舵状態に基づいて、言い換えれば、路面状況を良好に反映した目標操舵反力トルクTが計算される。
さらに、前記ステップS57にて前記式4に従って路面情報係数Kfが計算された場合には、路面情報係数Kfは、位相差φに応じて「0」よりも大きくかつ「1」よりも小さい範囲内で連続的に変化する。これにより、位相差φが大きいアクティブステア制御状態から位相差φが極めて小さい通常ステア制御状態、または、通常ステア制御状態からアクティブステア制御状態に変化する場合であっても、操舵反力トルクTmaの割合と操舵反力トルクTfの割合とが連続的に変化する目標操舵反力トルクTを計算することができる。言い換えれば、操舵反力トルクTmaと操舵反力トルクTfとが急激に切り替わることがなく、運転者は、ステア制御状態に切り替わりに起因する違和感を覚えることがない。
前記ステップS61にて目標操舵反力トルクTを計算すると、電子制御ユニット36は、ステップS62に進む。そして、電子制御ユニット36は、計算した目標操舵反力トルクTに対応する操舵反力を操舵ハンドル11に付与する。具体的に説明すると、電子制御ユニット36は、駆動回路37に設けられた電流検出器37aから反力アクチュエータ13内の電動モータに流れる駆動電流を入力し、同電動モータに目標操舵反力トルクTに対応した駆動電流が流れるように駆動回路37をフィードバック制御する。この反力アクチュエータ13内の電動モータの駆動制御により、同電動モータは、操舵入力軸12を介して操舵ハンドル11に操舵反力を付与する。これにより、運転者は、操舵ハンドル11の回動操作に対して、適切な操舵反力を知覚することができる。
このように、前記ステップS62における操舵反力付与処理を実行すると、続くステップS63にて、反力制御プログラムの実行を一旦終了する。そして、所定の短時間の経過後、電子制御ユニット36は、ふたたび、ステップS50にて、反力制御プログラムの実行を開始する。
以上の説明からも理解できるように、この第2実施形態によれば、左右前輪FW1,FW2が通常ステア制御されるときの補正目標転舵角δda(目標転舵角δd)の変化特性に対するアクティブステア制御されるときの補正目標転舵角δdaの変化特性の変動幅すなわち位相差φに応じて、目標操舵反力トルクTを計算し、同計算したトルクTに対応する操舵反力を操舵ハンドル11に付与することができる。これにより、アクティブステア制御時における操舵反力トルクTmaと通常ステア制御時における操舵反力トルクTfとの割合を位相差φに応じて連続的に変化させることができる。したがって、アクティブステア制御と通常ステア制御との間で切り替えが実行された場合であっても、この切り替えに伴う操舵反力を連続的に(滑らかに)変化させることができ、運転者が覚える違和感を極めて小さくすることができる。
c.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態を説明する。上記第1実施形態および第2実施形態においては、左右前輪FW1,FW2がアクティブステア制御状態にある場合(特に、第2実施形態では位相差φが上限値φup以上の場合)には、左右前輪FW1,FW2の転舵状態によらず、操舵ハンドル11の操舵角θに対してべき乗関数的(指数関数的)に変化する操舵反力が付与されるように実施した。すなわち、アクティブステア制御状態においては、路面反力に対応した操舵反力が付与されないように実施した。しかしながら、アクティブステア制御状態であっても、例えば、路面摩擦係数が急激に大きく変化するような路面状況の変化が生じて左右前輪FW1,FW2に大きな路面反力が入力した場合などは、運転者に対して路面情報を積極的に伝達することが望ましい。
そこで、この第3実施形態においては、アクティブステア制御状態であっても、路面状況が大きく変化した場合には、この変化に対応する操舵反力を操舵ハンドル11に付与するようにする。以下、この第3実施形態を詳細に説明するが、上記第1実施形態および第2実施形態と同一部分には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
この第3実施形態においても、上記第1実施形態および第2実施形態と同様に、電子制御ユニット36は、左右前輪FW1,FW2をアクティブステア制御または通常ステア制御する。そして、この第3実施形態においては、電子制御ユニット36は、路面状況の変化に対応する操舵反力を計算する操舵反力計算プログラムを実行する。以下、この操舵反力計算プログラムについて詳細に説明する。
図示しないイグニッションスイッチがオン状態とされると、電子制御ユニット36は、図9に示す操舵反力計算プログラムを所定の短い時間間隔により繰り返し実行する。すなわち、電子制御ユニット36は、プログラムをステップS100においてその実行を開始する。そして、電子制御ユニット36は、ステップS101にて、転舵側システムの可動部位における摩擦抵抗(例えば、転舵アクチュエータ21内部やラックバー24などの摺動抵抗など)に抗して、転舵アクチュエータ21が駆動するときの電流値変化Ifを概算的に検出する。
具体的に説明すると、転舵アクチュエータ21が駆動すると、転舵出力軸22、ピニオンギア23、ラックバー24が回転し、また、軸線方向へ変位する。このとき、転舵アクチュエータ21は、これら構成部品の作動させるにあたり、構成部品間の摩擦力やアクチュエータ21内部の摩擦力に抗して駆動する。したがって、転舵アクチュエータ21が駆動するときには、常に前記摩擦力に相当する電流が必要となる。
そして、例えば、操舵ハンドル11が切込み操作や切戻し操作された場合には、転舵アクチュエータ21はこの操舵ハンドル11の操作に合わせて駆動し、このときの摩擦力に相当する電流値変化は、例えば、図10に示すような電流波形となる。ここで、転舵アクチュエータ21の通常の駆動においては、摩擦力に相当する電流値変化特性が大きく変化することがなく概算的にほぼ一定の電流値変化となる。
このため、電子制御ユニット36は、ステップS101にて、例えば、車両の始動直後において運転者が操舵ハンドル11を回動操作したときにおける転舵アクチュエータ21の電流値変化を検出し、この検出した電流値変化の平均値を概算的な電流値変化Ifとして計算する。具体的には、電子制御ユニット36は、駆動回路38に設けられた電流検出器38aからの駆動電流値を入力する。そして、入力した駆動電流値を、例えば、時間平均して転舵アクチュエータ21の電流値変化Ifとして検出する。
このように、概算的な電流値変化Ifを検出すると、電子制御ユニット36は、ステップS102にて、現在の転舵アクチュエータ21の電流値変化Idが上述した摩擦力に相当するものであるか否かを判定する。具体的に説明すると、電子制御ユニット36は、運転者によって操舵ハンドル11が切込み操作から切戻し操作、または、切戻し操作から切込み操作されたか否かを判定する。なお、以下の説明において、これらの操舵ハンドル11の操作状態の切り替わりを切返し操作という。
すなわち、電子制御ユニット36は、運転者によって操舵ハンドル11が切返し操作され、転舵アクチュエータ21に電流値変化Ifとほぼ等しい電流値変化Idが生じたときは、この電流値変化Idを摩擦力に相当する電流値変化であると判定する。そして、電子制御ユニット36は、ステップS102にて「No」と判定してステップS104に進み、操舵反力計算プログラムの実行を一旦終了する。そして、所定の短時間の経過後、電子制御ユニット36は、ふたたび、ステップS100にて、操舵反力計算プログラムの実行を開始する。
一方、運転者によって操舵ハンドル11が切返し操作されており現在の電流値変化Idが概算的な電流値変化Ifに比して極めて大きいとき、または、運転者によって操舵ハンドル11が切返し操作されていない状況で、現在の電流値変化Idが概算的な電流値変化Ifよりも大きいときには、路面状況が変化して左右前輪FW1,FW2の大きな路面反力が入力しているため、電子制御ユニット36は「Yes」と判定してステップS103に進む。
ステップS103においては、電子制御ユニット36は、下記式6に従って、路面状況が変化したことに対応する操舵反力トルクTsatを計算する。
Tsat=(Id−If)・Ksat …式6
ただし、前記式6中のIdは、電流検出器38aによって検出された転舵アクチュエータ21の現在の駆動電流の電流値変化を表し、Ifは、前記ステップS101にて概算的に検出された電流値変化を表すものである。また、前記式6中のKsatは、転舵アクチュエータ21の電流値変化に対するトルク変換定数を表す。
そして、電子制御ユニット36は、操舵反力トルクTsatを計算すると、ステップS104に進み、操舵反力計算プログラムの実行を一旦終了する。そして、所定の短時間の経過後、電子制御ユニット36は、ふたたび、ステップS100にて、操舵反力計算プログラムの実行を開始する。
このように、路面状況の変化に対応する操舵反力を計算する操舵反力計算プログラムを実行することにより、操舵反力トルクTsatを計算すると、電子制御ユニット36は、上述した第1実施形態における反力制御プログラムまたは第2実施形態における反力制御プログラムの実行に際して、操舵反力トルクTsatを考慮した操舵反力を操舵ハンドル11に付与する。以下、具体的に説明する。
まず、上記第1実施形態の反力制御プログラムにおいて、操舵反力トルクTsatを考慮する場合には、同プログラムにステップS20が追加されて、図11に示すように変形される。すなわち、電子制御ユニット36は、ステップS12にてアクティブステア制御していると判定し、ステップS13にてアクティブ時操舵反力トルクTzaを計算すると、ステップS20に進む。ステップS20においては、操舵反力計算プログラムの実行により計算した操舵反力トルクTsatを、前記ステップS13にて計算したアクティブ時操舵反力トルクTzaに対して加算した操舵反力トルクTnewを計算する。そして、電子制御ユニット36は、続くステップS16にて、前記計算した操舵反力トルクTnewに対応する操舵反力を操舵ハンドル11に付与する。
また、上記第2実施形態の反力制御プログラムにおいて、操舵反力トルクTsatを考慮する場合には、同プログラムにステップS70が追加されて、図12に示すように変形される。すなわち、電子制御ユニット36は、ステップS52にてアクティブステア制御していると判定し、ステップS61にて目標操舵反力トルクTを計算すると、ステップS70に進む。ステップS70においては、操舵反力計算プログラムの実行により計算した操舵反力トルクTsatを、前記ステップS61にて計算した目標操舵反力トルクTに対して加算した目標操舵反力トルクTnewを計算する。そして、電子制御ユニット36は、続くステップS62にて、前記計算した目標操舵反力トルクTnewに対応する操舵反力を操舵ハンドル11に付与する。
以上の説明からも理解できるように、この第3実施形態によれば、路面状況が大きく変化して、左右前輪FW1,FW2に大きな路面反力が入力した場合には、アクティブステア制御状態であっても、左右前輪FW1,FW2の転舵状態に基づく操舵反力を操舵ハンドル11に付与することができる。したがって、運転者は、操舵ハンドル11に付与される操舵反力に基づいて、路面状況の変化を的確に把握することができる。
本発明の実施にあたっては、上記第1ないし第3各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記第1ないし第3実施形態においては、車両に発生する実横加速度Gに応じて補正目標転舵角δdaを計算するように実施した。そして、この補正目標転舵角δdaに基づいて左右前輪FW1,FW2をアクティブステア制御するように実施した。これに対し、車両の運動状態に関連する物理量として、例えば、車両に発生するヨーレートや旋回時における車両の旋回曲率などを採用し、これらヨーレートや旋回曲率に応じて補正目標転舵角δdaを計算するように実施することも可能である。この場合においても、目標ヨーレートと実ヨーレートとの差分や、目標旋回曲率と実旋回曲率との差分を用いて、目標転舵角δdを補正して補正目標転舵角δdaを計算するとよい。これらの場合においても、左右前輪FW1,FW2をアクティブステア制御することにより、旋回時における車両の挙動を安定化させることができる。
また、上記第1ないし第3実施形態においては、車両を操舵するために回動操作される操舵ハンドル11を用いるようにした。しかし、これに代えて、例えば、直線的に変位するジョイスティックタイプの操舵ハンドルを用いてもよいし、その他、運転者によって操作されるとともに車両に対する操舵を指示できるものであれば、いかなるものを用いてもよい。
また、上記第1ないし第3実施形態においては、転舵アクチュエータ21を用いて転舵出力軸22を回転させることにより、左右前輪FW1,FW2を転舵するようにした。しかし、これに代えて、転舵アクチュエータ13を用いてラックバー23をリニアに変位させることにより、左右前輪FW1,FW2を転舵するようにしてもよい。
本発明の各実施形態に共通の車両の操舵装置の概略図である。 車速と車速係数の関係を示すグラフである。 操舵角と目標転舵角の関係を示すグラフである。 通常ステア制御時における変化特性とアクティブステア制御時における変化特性との間の位相差を説明するためのグラフである。 本発明の第1実施形態に係り、図1の電子制御ユニットにて実行される反力制御プログラムを表すフローチャートである。 操舵角と操舵反力トルクとの関係を示すグラフである。 転舵角と操舵反力トルクとの関係を示すグラフである。 本発明の第2実施形態に係り、図1の電子制御ユニットにて実行される反力制御プログラムを表すフローチャートである。 本発明の第3実施形態に係り、図1の電子制御ユニットにて実行される操舵反力計算プログラムを表すフローチャートである。 転舵アクチュエータに流れる電流の時間変化を示すグラフであって、切返し操作時に発生する摩擦相当分の電流値変化を説明するためのグラフである。 図5のフローチャートによって表される反力制御プログラムに対して、本発明の第3実施形態における操舵反力計算プログラムによって計算された操舵反力を付加して変形した反力制御プログラムを表すフローチャートである。 図8のフローチャートによって表される反力制御プログラムに対して、本発明の第3実施形態における操舵反力計算プログラムによって計算された操舵反力を付加して変形した反力制御プログラムを表すフローチャートである。
符号の説明
FW1,FW2…前輪、11…操舵ハンドル、12…操舵入力軸、13…反力アクチュエータ、21…転舵アクチュエータ、22…転舵出力軸、23…ピニオンギア、24…ラックバー、31…操舵角センサ、32…転舵角センサ、33…車速センサ、34…横加速度センサ、35…軸力センサ、36…電子制御ユニット、

Claims (8)

  1. 車両を操舵するために運転者によって操作される操舵ハンドルと、同操舵ハンドルの操作に対して反力を付与するための反力アクチュエータと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、前記操舵ハンドルの操作に応じて、前記反力アクチュエータを駆動制御して所定の反力を付与するとともに、前記転舵アクチュエータを駆動制御して前記転舵輪を転舵する制御装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、前記制御装置を、
    前記操舵ハンドルに対する運転者の操作入力値を検出する操作入力値検出手段と、
    前記転舵輪の実転舵角を検出する転舵角検出手段と、
    旋回状態にある車両の運動状態を表す運動状態量を検出する運動状態量検出手段と、
    前記操舵ハンドルに対する操作入力値と予め定めた所定の関係にある前記転舵輪の第1目標転舵角を、前記検出された操作入力値を用いて計算する第1目標転舵角計算手段と、
    前記検出された運動状態量を用いて、車両の旋回挙動を安定化させるための第2目標転舵角を計算する第2目標転舵角計算手段と、
    前記計算された第1目標転舵角に対する前記計算された第2目標転舵角の偏差を計算する偏差計算手段と、
    前記操舵ハンドルに対する操作入力値と予め定めた所定の関係にある第1目標反力を、前記検出された操作入力値を用いて計算する第1目標反力計算手段と、
    前記転舵輪の転舵状態に応じて路面から入力される路面反力に対応する第2目標反力を、前記検出された実転舵角を用いて計算する第2目標反力計算手段と、
    前記計算された第1目標反力と前記計算された第2目標反力との比率を、前記計算された偏差に基づいて変更する比率変更手段と、
    前記計算された第1目標反力と前記計算された第2目標反力との和によって表される最終目標反力を、前記変更された比率を用いて計算する最終目標反力計算手段と、
    前記計算された最終目標反力に応じて前記反力アクチュエータを制御して前記操舵ハンドルの操作に対して同計算した最終目標反力を付与する反力制御手段とで構成したことを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  2. 請求項1に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、
    前記偏差計算手段は、
    前記転舵輪が前記計算された第1目標転舵角に変化するときの変化特性と前記転舵輪が前記計算された第2目標転舵角に変化するときの変化特性との間の位相差に基づいて前記偏差を計算することを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  3. 請求項1に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、
    前記比率変更手段は、
    前記偏差計算手段によって計算された偏差が大きくなるに従って、前記第1目標反力の比率が大きくなるように変更することを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  4. 請求項1に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、
    前記制御装置は、さらに、
    前記転舵輪を転舵させるための前記転舵アクチュエータの駆動に伴って発生する機械的な摩擦力を推定する摩擦力推定手段と、
    所定の基準摩擦力の大きさと前記推定された摩擦力の大きさを比較する摩擦力比較手段と、
    前記摩擦力比較手段による比較に基づき、前記推定された摩擦力の大きさが前記所定の基準摩擦力よりも大きいときに、前記推定された摩擦力に対応する第3目標反力を計算する第3目標反力計算手段とを備えており、
    前記最終目標反力計算手段は、前記変更された比率を用いた前記第1目標反力と前記第2目標反力との和に対して、さらに、前記第3目標反力を加えて最終目標反力を計算することを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  5. 請求項4に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、
    前記摩擦力推定手段は、
    前記転舵アクチュエータに流れる電流値の変化に基づいて、前記機械的な摩擦力を推定することを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  6. 請求項4に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両において、
    前記摩擦力比較手段は、
    前記摩擦力推定手段によって予め推定された摩擦力の大きさを用いて、前記所定の基準摩擦力の大きさを決定することを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  7. 請求項6に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、
    前記摩擦力比較手段は、
    前記転舵輪が所定の転舵状態にあるときに、前記摩擦力推定手段によって予め推定された前記機械的な摩擦力の大きさを用いて、前記所定の基準摩擦力の大きさを決定することを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
  8. 前記転舵輪の所定の転舵状態は、
    前記転舵輪が大きな実転舵角から小さな実転舵角に移行する状態、または、前記転舵輪が小さな実転舵角から大きな実転舵角に移行する状態である請求項7に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
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