JP2007153158A - 車両の操舵装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 運転者の意図を反映させて車両を旋回させることができる車両の操舵装置を提供すること。
【解決手段】 電子制御ユニット35は、操舵ハンドル11が保舵操作されていれば転舵制御プログラムにおける保舵制御ルーチンを実行する。すなわち、電子制御ユニット35は、ステップS53にて操舵角θの絶対値がメカエンド位置θ_endと一致し、かつ、操舵トルクTが所定のトルクTsよりも大きいか否かを判定する。そして、ステップS53の「Yes」判定に基づきステップS57にて差分値Taのトルク変化速度dTa/dtを制限するためのトルク変化速度制限値(dTa/dt)_limを決定する。次に、電子制御ユニット35は、ステップS59にて操舵角速度制限値(dθ/dt)_limによって制限されたトルク転舵角指令値Wh_trqを計算し、この計算した指令値Wh_trqを用いてステップS60にて転舵角指令値Whを決定する。
【選択図】 図6
【解決手段】 電子制御ユニット35は、操舵ハンドル11が保舵操作されていれば転舵制御プログラムにおける保舵制御ルーチンを実行する。すなわち、電子制御ユニット35は、ステップS53にて操舵角θの絶対値がメカエンド位置θ_endと一致し、かつ、操舵トルクTが所定のトルクTsよりも大きいか否かを判定する。そして、ステップS53の「Yes」判定に基づきステップS57にて差分値Taのトルク変化速度dTa/dtを制限するためのトルク変化速度制限値(dTa/dt)_limを決定する。次に、電子制御ユニット35は、ステップS59にて操舵角速度制限値(dθ/dt)_limによって制限されたトルク転舵角指令値Wh_trqを計算し、この計算した指令値Wh_trqを用いてステップS60にて転舵角指令値Whを決定する。
【選択図】 図6
Description
本発明は、車両を操舵するために運転者によって予め設定された操作可能範囲内で操作される操舵ハンドルと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、前記操舵ハンドルの操作に応じて前記転舵アクチュエータを駆動制御して転舵輪を転舵する転舵制御装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置に関する。
近年、この種のステアリングバイワイヤ方式を採用した操舵装置の開発は、積極的に行われている。例えば、下記特許文献1には、応答性の良好な切込み操舵と、スムーズな切戻し操舵とを両立することができる車両用操舵装置が示されている。この従来の車両用操舵装置においては、舵取り制御部(転舵制御装置)が目標転舵角に基づいて転舵用アクチュエータを制御する。そして、この転舵用アクチュエータの制御にあたり、舵取り制御部は、ゲイン設定部によって適宜変更される制御ゲイン(操舵ゲイン)を用いる。ここで、ゲイン設定部は、切込み操舵検出部によって切込み操舵が検出されていると、制御ゲインを大きく設定する。一方、ゲイン設定部は、戻し操舵検出部によって戻し操舵が検出されていると、制御ゲインを小さく設定する。これにより、舵取り制御部は、切込み操舵時には良好な応答性で転舵用アクチュエータを作動させることができるとともに、切戻し操舵時にはスムーズに転舵用アクチュエータを作動させることができる。
特開2002−46639号公報
ところで、上述した従来の車両用操舵装置のように、切込み操舵時に制御ゲイン(操舵ゲイン)を大きく設定した場合には、運転者が操舵ハンドルの操作によって見込んだ転舵輪の転舵角よりも実際の転舵角が大きくなる場合がある。すなわち、ステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置においては、操舵ハンドルと転舵輪との機械的な連結が解除されているため、操舵ハンドルの操舵角と転舵輪の転舵角との間の関係を自由に設定することができる。この構成によって、操舵ハンドルの操舵角に対する転舵輪の転舵角の比、すなわち、制御ゲイン(操舵ゲイン)を自由に設定することができる。
このため、制御ゲイン(操舵ゲイン)を大きく設定した場合には、操舵ハンドルの操舵量が小さくても、転舵輪の転舵量を大きくすることができ、車両を容易に旋回させることができる。しかしながら、制御ゲイン(操舵ゲイン)が大きい場合には、急峻に転舵輪が転舵されることによって必要以上に操舵ハンドルを操作してしまい、かえって運転が難しくなる場合がある。このことは、例えば、ステアリングバイワイヤ方式以外の操舵装置の操作経験の長い運転者が、ステアリングバイワイヤ方式の操舵装置を操作した場合に起こりやすく、これまでの経験から操舵ハンドルを必要以上に操舵する可能性がある。
この問題に対して、例えば、制御ゲイン(操舵ゲイン)が大きい場合には、急峻な転舵輪の転舵を抑制するために、転舵アクチュエータの作動速度をある程度小さく制限して、運転を容易にすることが考えられる。ところが、転舵アクチュエータの作動速度を制限した場合においては、例えば、車両を駐車する際に、運転者が車両の旋回半径を小さくするために操舵ハンドルを素早く操作可能範囲の終点(所謂、メカエンド位置)まで操作したときに、転舵輪を十分に転舵できない場合がある。すなわち、転舵輪がゆっくり転舵することに加えて、メカエンド位置で機械的に操舵ハンドルの回動操作が規制されることによって転舵アクチュエータの作動が停止するため、転舵輪を十分に転舵させることができない。この場合、運転者の意図に反して車両が大きな半径で旋回することになり、運転者が煩わしさを感じる可能性がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、運転者の意図を反映させて車両を旋回させることができる車両の操舵装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、車両を操舵するために運転者によって予め設定された操作可能範囲内で操作される操舵ハンドルと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、前記操舵ハンドルの操作に応じて前記転舵アクチュエータを駆動制御して転舵輪を転舵する転舵制御装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、前記転舵制御装置を、前記操舵ハンドルに対する運転者の操作量を検出する操作量検出手段と、前記操舵ハンドルに対する運転者の操作力を検出する操作力検出手段と、前記操作量検出手段によって検出した操作量に基づき、前記操舵ハンドルの操作位置が前記予め設定された操作可能範囲内であれば前記転舵アクチュエータの駆動を指令するための転舵角指令値を前記検出した操作量を用いて決定し、前記操舵ハンドルの操作位置が前記予め設定された操作可能範囲の終点を表す操作位置と一致するとともに前記操作力検出手段によって検出した操作力が予め設定された所定の操作力よりも大きければ前記転舵角指令値を前記検出した操作力を用いて決定する転舵角指令値決定手段と、前記転舵角指令値決定手段により決定した転舵角指令値に基づいて前記転舵アクチュエータの駆動を制御して前記転舵輪を転舵する転舵制御手段とで構成したことにある。この場合、前記操作量検出手段を、例えば、前記操舵ハンドルの変位量を検出する変位量センサで構成するとよい。また、前記操作力検出手段を、例えば、前記操舵ハンドルに付与されるトルクを検出するトルクセンサで構成とよい。
これらによれば、操作量検出手段によって検出された操舵ハンドルの操作量(例えば、変位量としての操舵角)に基づいて、操舵ハンドルの操作位置が操作可能範囲内にあれば、操舵ハンドルの操作量を用いて転舵角指令値を決定することができる。そして、転舵輪を決定した転舵角指令値に基づいて転舵させることができる。これにより、操舵ハンドルの操作可能範囲内においては、運転者は、例えば、操舵ハンドルの操作量としての操舵角に応じて転舵輪を転舵させる、所謂、操舵角ステアによって転舵輪を転舵させることができる。したがって、操舵ハンドルの操作量によって表される運転者の意図を反映して転舵輪を転舵させることができる。
一方、操舵ハンドルの操作位置が操作可能範囲の終点、すなわち、メカエンド位置に一致するとともに、操作力検出手段によって検出される操作力(例えば、トルク)が所定の操作力よりも大きければ、運転者によって操舵ハンドルに入力された操作力を用いて転舵角指令値を決定することができる。これにより、操舵ハンドルをメカエンド位置まで操作した状況であって、同一方向に操舵ハンドルを操作できない状況であっても、運転者は、入力した操作力としてのトルクに応じて転舵輪を転舵させる、所謂、操舵トルクステアによって転舵輪の転舵を継続させることができる。したがって、例えば、駐車時のように、メカエンド位置まで操舵ハンドルが操作されていても、入力する操作力の大きさに応じて転舵輪を最大転舵位置まで転舵させることができる。このため、転舵輪をより大きく転舵させたいという運転者の意図を反映して転舵輪を転舵させることができる。
また、本発明の他の特徴は、車両を操舵するために運転者によって予め設定された操作可能範囲内で操作される操舵ハンドルと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、前記操舵ハンドルの操作に応じて前記転舵アクチュエータを駆動制御して転舵輪を転舵する転舵制御装置と、前記操舵ハンドルの操作に対して反力を付与する反力装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、前記転舵制御装置を、前記操舵ハンドルに対する運転者の操作量を検出する操作量検出手段と、前記反力装置が付与する反力に基づいて、前記操舵ハンドルに対する運転者の操作力を推定する操作力推定手段と、前記操作量検出手段によって検出した操作量に基づき、前記操舵ハンドルの操作位置が前記操作可能範囲内に設定された所定範囲内であれば前記転舵アクチュエータの駆動を指令するための転舵角指令値を前記検出した操作量を用いて決定し、前記操舵ハンドルの操作位置が前記設定された所定範囲の終点から前記操作可能範囲の終点までの間であれば前記転舵角指令値を前記操作力推定手段によって推定した操作力を用いて決定する転舵角指令値決定手段と、前記転舵角指令値決定手段により決定した転舵角指令値に基づいて前記転舵アクチュエータの駆動を制御して前記転舵輪を転舵する転舵制御手段とで構成したことにもある。この場合も、前記操作量検出手段を、例えば、前記操舵ハンドルの変位量を検出する変位量センサで構成するとよい。
これらによれば、操作量検出手段によって検出された操舵ハンドルの操作量(例えば、変位量としての操舵角)に基づいて、操舵ハンドルの操作位置が操作可能範囲のうちの所定範囲内であれば、操舵ハンドルの操作量を用いて転舵角指令値を決定することができる。これにより、操舵ハンドルが所定範囲内で操作された場合には、運転者は、例えば、操舵ハンドルの操作量としての操舵角に応じて転舵輪を転舵させる、所謂、操舵角ステアによって転舵輪を転舵させることができる。したがって、操舵ハンドルの操作量によって表される運転者の意図を反映して転舵輪を転舵させることができる。
一方、操舵ハンドルの操作位置が所定範囲の終点から操作可能範囲の終点(例えば、メカエンド位置)までの間にあれば、操作力推定手段によって推定される操舵力(例えば、トルク)を用いて転舵角指令値を決定することができる。これにより、操舵ハンドルの操作可能範囲の終点近傍では、運転者は入力した操作力としてのトルクに応じて転舵輪を転舵させる、所謂、操舵トルクステアによって転舵輪の転舵を継続させることができる。ここで、操作力推定手段が、反力装置によって付与される反力に基づいて、操作力を推定することができるため、例えば、操作力を直接検出するための手段(例えば、センサ類)を設ける必要がない。したがって、操作力を直接検出する手段を設けなくても、操舵トルクステアによって転舵輪を転舵させることができる。これにより、例えば、駐車時のように、メカエンド位置近傍まで操舵ハンドルが操作されていても、推定された操作力の大きさに応じて転舵輪を最大転舵位置まで転舵させることができる。このため、転舵輪をより大きく転舵させたいという運転者の意図を反映して転舵輪を転舵させることができる。また、操作力を直接検出するためのセンサ類を省略することができるため、装置自体の構造を簡略化することができる。
また、この場合、前記反力装置は、前記操舵ハンドルの操作位置が前記操作可能範囲の所定範囲内であれば前記検出した操作量の絶対値に応じて一様に増減する反力を付与するとともに、前記操舵ハンドルの操作位置が前記操作可能範囲の所定範囲の終点から前記操作可能範囲の終点までの間であれば前記検出した操作量の絶対値に応じて前記一様に増減する反力よりも大きく増減する反力を付与するとよい。
これによれば、操舵ハンドルの操作可能範囲の所定範囲内、言い換えれば、通常操作領域内では、適度な大きさの反力を付与することができるため、運転者は良好な操舵フィーリングを知覚することができる。一方、操舵ハンドルの操作位置が所定範囲の終点から操作可能範囲の終点(メカエンド位置)までの間では、通常操作領域内で付与される反力よりも大きな反力を付与することができる。このように、大きな反力を付与することによって、運転者は、極めて容易にメカエンド位置を知覚することができるとともに、運転者の意図をより明確に判断することができる。これにより、運転者の意図を確実に反映して、操舵トルクステアにより転舵輪を転舵させることができる。
以下、本発明の実施形態に係る車両の操舵装置について、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置を概略的に示している。
この操舵装置は、転舵輪としての左右前輪FW1,FW2を転舵するために、運転者によって回動操作される操舵ハンドル11を備えている。操舵ハンドル11は、操舵入力軸12の上端に固定されており、操舵入力軸12の下端は電動モータおよび減速機構からなる反力アクチュエータ13に接続されている。反力アクチュエータ13は、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に対して反力を付与する。さらに、操舵入力軸12の最下端部分には、運転者による操舵ハンドル11の回動操作可能範囲を機械的に制限するメカストッパ14が設けられている。ここで、以下の説明においては、操舵ハンドル11の回動操作可能範囲の終点をメカエンド位置θ_endという。
また、この操舵装置は、電動モータおよび減速機構からなる転舵アクチュエータ21を備えている。この転舵アクチュエータ21による転舵力は、転舵出力軸22、ピニオンギア23およびラックバー24を介して左右前輪FW1,FW2に伝達される。この構成により、転舵アクチュエータ21からの回転力は転舵出力軸22を介してピニオンギア23に伝達され、ピニオンギア23の回転によりラックバー24が軸線方向に変位して、このラックバー24の軸線方向の変位により、左右前輪FW1,FW2は左右に転舵される。
次に、これらの反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21の作動を制御する電気制御装置について説明する。電気制御装置は、操舵角センサ31、操舵トルクセンサ32、転舵角センサ33および車速センサ34を備えている。
操舵角センサ31は、操舵入力軸12に組み付けられて、操舵入力軸12すなわち操舵ハンドル11の中立位置からの回転角を検出して操舵角θとして出力する。操舵トルクセンサ32も、操舵入力軸12に組み付けられて、操舵ハンドル11に付与されたトルクを検出して操舵トルクTとして出力する。転舵角センサ33は、転舵出力軸22に組み付けられて、転舵出力軸22の中立位置からの回転角を検出して実転舵角δ(左右前輪FW1,FW2の転舵角に対応)として出力する。なお、上記中立位置とは、車両を直進状態に維持するための操舵ハンドル11、操舵入力軸12、転舵出力軸22および左右前輪FW1,FW2の位置をいう。そして、操舵角θおよび実転舵角δは、中立位置を「0」とし、左方向の回転角を正の値で表すとともに右方向の回転角を負の値で表す。また、操舵トルクTは、左方向に付与されるトルクを正の値で表すとともに右方向に付与されるトルクを負の値で表す。車速センサ34は、車速Vを検出して出力する。
これらのセンサ31〜34は、電子制御ユニット35に接続されている。電子制御ユニット35は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするもので、後述する各プログラムを含む各種プログラムの実行により反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21の作動をそれぞれ制御する。このため、電子制御ユニット35の出力側には、反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21を駆動制御するための駆動回路36,37がそれぞれ接続されている。駆動回路36,37内には、反力アクチュエータ13および転舵アクチュエータ21内の電動モータに流れる駆動電流を検出するための電流検出器36a,37aが設けられている。そして、電流検出器36a,37aによって検出された駆動電流は、両電動モータの駆動を制御するために、電子制御ユニット35にフィードバックされている。
次に、上記のように構成した第1実施形態の動作について詳細に説明する。運転者によって図示しないイグニッションスイッチがオン状態とされると、電子制御ユニット35(より詳しくは、CPU)は、図2に示す転舵制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。この転舵制御プログラムは、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に応じて転舵アクチュエータ21を作動制御し、左右前輪FW1,FW2を転舵するものである。
ここで、ステアリングバイワイヤ方式の操舵装置においては、操舵ハンドル11と左右前輪FW1,FW2との機械的な連結が解除されているため、操舵角θに対する転舵角δの比、すなわち、操舵ゲインGを自由に設定することができる。これにより、例えば、操舵ゲインGを大きく設定すれば、運転者が操舵ハンドル11を持ち替えることなく車両を旋回させることができ、操舵ハンドル11の回動操作量を低減することができる。
ところが、操舵ゲインGを大きく設定した場合には、運転者による操舵ハンドル11の回動操作量、言い換えれば、運転者が入力した操舵角θに対して左右前輪FW1,FW2が急峻に転舵するようになるため、運転が難しくなる場合がある。このため、電子制御ユニット35は、転舵制御プログラムを実行して、容易に運転できるように転舵アクチュエータ21の作動を制御する。
具体的に説明すると、電子制御ユニット35は、転舵制御プログラムの実行をステップS10にて開始し、ステップS11にて、操舵角センサ31から現在の操舵ハンドル11の操舵角θを入力する。そして、電子制御ユニット35は、操舵角θを入力すると、ステップS12に進む。
ここで、電子制御ユニット35は、操舵角センサ31から操舵角θを入力すると、この操舵角θに応じた反力トルクを操舵ハンドル11に付与するための図示しないプログラムを実行して反力アクチュエータ13を制御する。具体的に説明すると、電子制御ユニット35は、入力した操舵角θと予め定めた所定の関係(例えば、比例関係など)にある反力トルクを発生させるべく、駆動回路36を駆動制御する。
すなわち、電子制御ユニット35は、駆動回路36の電流検出器36aから反力アクチュエータ13内の電動モータに流れる駆動電流を入力する。そして、電子制御ユニット35は、操舵ハンドル11(より詳しくは、操舵入力軸12)に付与する反力トルクに対応した駆動電流が適切に流れるように駆動回路36をフィードバック制御する。これにより、操舵ハンドル11に対して反力トルクが付与されて、運転者は、適切な反力を知覚しながら操舵ハンドル11を回動操作する。
ステップS12においては、電子制御ユニット35は、前記ステップS11にて入力した検出操舵角θに基づいて、運転者による操舵ハンドル11の回動操作状態を判定する。ここで、運転者による操舵ハンドル11の回動操作状態とは、検出操舵角θの絶対値が大きくなる回動操作(以下、この回動操作を切込み操作という)、検出操舵角θの絶対値が一定となる保持操作(以下、この保持操作を保舵操作という)、検出操舵角θの絶対値が小さくなる回動操作(以下、この回動操作を切戻し操作という)である。そして、電子制御ユニット35は、これらの回動操作状態のうち、操舵ハンドル11が切込み操作されたか否かを判定する。以下、この判定について説明する。
今、操舵ハンドル11が右方向に回動されている場合を考えると、操舵角センサ31から出力された検出操舵角θは負の値となっている。この状態において、操舵ハンドル11が回動操作されたときに、電子制御ユニット35は、検出操舵角θの時間微分値dθ/dt(以下、この微分値を操舵角速度dθ/dtという)が負の値であれば、操舵角θの絶対値が増加するため、運転者によって切込み操作されていると判定する。一方、操舵ハンドル11が左方向に回動されている場合を考えると、操舵角センサ31から出力された検出操舵角θは正の値となっている。この状態において、操舵ハンドル11が回動されたときに、電子制御ユニット35は、操舵角速度dθ/dtが正の値であれば、操舵角θの絶対値が増加するため、運転者によって切込み操作されていると判定する。
なお、電子制御ユニット35は、操舵角速度dθ/dtが略「0」であれば、操舵角θの絶対値が略一定であるため、運転者によって保舵操作されていると判定することができる。また、電子制御ユニット35は、操舵ハンドル11が右方向に回動されている状況にて、操舵角速度dθ/dtが正の値であれば、操舵角θの絶対値が減少するため、運転者によって切込み操作されていると判定することができる。さらに、電子制御ユニット35は、操舵ハンドル11が左方向に回動されている状況にて、操舵角速度dθ/dtが負の値であれば、操舵角θの絶対値が減少するため、運転者によって切戻し操作されていると判定することができる。
そして、ステップS12の判定処理において、現在、操舵ハンドル11が運転者によって切込み操作されていれば、電子制御ユニット35は「Yes」と判定してステップS13に進む。ステップS13においては、電子制御ユニット35は、操舵ハンドル11の操舵角θ、より詳しくは、操舵角速度dθ/dtに対応して作動する転舵アクチュエータ21の作動速度を制限するための操舵角速度制限値(dθ/dt)_limを決定する。以下、この操舵角速度制限値(dθ/dt)_limの決定について詳細に説明する。
一般的に、ステアリングバイワイヤ方式の操舵装置における左右前輪FW1,FW2の転舵角δsは、適宜設定された操舵ゲインGと操舵角センサ31によって検出された操舵角θとを用いて下記式1に従って計算することができる。
δs=G・θ …式1
そして、前記式1が成立する状況においては、転舵アクチュエータ21が左右前輪FW1,FW2を転舵角δsまで転舵する作動速度dδs/dt(以下、転舵角速度dδs/dtという)は、操舵角速度dθ/dtに比例する。このため、例えば、運転者が操舵ハンドル11を速い操舵角速度dθ/dtで回動操作した場合には、転舵角速度dδs/dtも速くなり、左右前輪FW1,FW2は転舵アクチュエータ21によって急峻に転舵される。
δs=G・θ …式1
そして、前記式1が成立する状況においては、転舵アクチュエータ21が左右前輪FW1,FW2を転舵角δsまで転舵する作動速度dδs/dt(以下、転舵角速度dδs/dtという)は、操舵角速度dθ/dtに比例する。このため、例えば、運転者が操舵ハンドル11を速い操舵角速度dθ/dtで回動操作した場合には、転舵角速度dδs/dtも速くなり、左右前輪FW1,FW2は転舵アクチュエータ21によって急峻に転舵される。
このため、操舵角速度制限値(dθ/dt)_limは、運転者によって操舵ハンドル11が速い操舵角速度dθ/dtで回動操作された場合であっても、車両を安定して旋回させる転舵アクチュエータ21の作動速度dδ/dt(以下、転舵角速度dδ/dtという)で転舵アクチュエータ21が作動するように決定される。具体的には、操舵角速度制限値(dθ/dt)_limは、例えば、下記式2に従って決定することができる。
(dθ/dt)_lim=a・(dθ/dt) …式2
ただし、前記式2中のaは所定の係数である。
(dθ/dt)_lim=a・(dθ/dt) …式2
ただし、前記式2中のaは所定の係数である。
ここで、係数aは、例えば、図3に示すように、車速センサ34によって検出された車速Vに応じて変化するとよい。この場合には、検出車速Vが大きくなるに伴って係数aが小さい値に変化するため、同一の操舵角速度dθ/dtに対して、操舵角速度制限値(dθ/dt)_limは小さい値として決定される。また、検出車速Vが小さくなるに伴って係数aが大きな値に変化するため、同一の操舵角速度dθ/dtに対して、操舵角速度制限値(dθ/dt)_limは大きな値として決定される。これにより、高速域では、転舵アクチュエータ21によって左右前輪FW1,FW2がよりゆっくり転舵されるため、運転者はゆったりと車両を旋回させることができる。また、低速域では、転舵アクチュエータ21によって左右前輪FW1,FW2が比較的速く転舵されるため、運転者はきびきびと車両を旋回させることができる。したがって、運転者は、車速域に応じて、適切な操舵フィーリングを得ることができる。
また、係数aは、例えば、図4に示すように、操舵角センサ31によって検出された操舵ハンドル11の操舵角θに応じて変化してもよい。この場合には、検出操舵角θが大きくなるに伴って係数aが大きな値に変化するため、同一の操舵角速度dθ/dtに対して、操舵角速度制限値(dθ/dt)_limは大きな値として決定される。また、検出操舵角θが小さくなるに伴って係数aが小さな値に変化するため、同一の操舵角速度dθ/dtに対して、操舵角速度制限値(dθ/dt)_limは小さな値として決定される。これにより、大きな操舵角θとなるように操舵ハンドル11が回動操作されたときには、転舵アクチュエータ21によって左右前輪FW1,FW2が比較的速く転舵されるため、運転者はきびきびと車両を旋回させることができる。また、小さな操舵角θ(例えば、操舵ハンドル11の中立位置近傍)で操舵ハンドル11が回動操作されたときには、転舵アクチュエータ21によって左右前輪FW1,FW2がゆっくり転舵される。このため、例えば、運転者が操舵ハンドル11の中立位置近傍で無意識に行っている微小操舵入力を低減することができ、車両の直進安定性を向上させることができる。
なお、前記式2における係数aの決定に関しては、上述した車速Vに対する変化と、操舵角θに対する変化とを組み合わせて決定するようにしてもよい。また、操舵角速度制限値(dθ/dt)_limの決定に関しては、前記式2に従って決定することに代えて、例えば、操舵角速度dθ/dtを時間的に遅れさせる周知の一次遅れフィルタを用いて決定することも可能である。このように、一次遅れフィルタを用いて操舵角速度制限値(dθ/dt)_limを決定した場合であっても、転舵アクチュエータ21の転舵角速度dδ/dtを適切に制限することができる。
このように、操舵角速度制限値(dθ/dt)_limを決定すると、電子制御ユニット35は、ステップS14にて、左右前輪FW1,FW2の目標転舵角δfを決定するために、前記式1中の操舵角θに対応する転舵角指令値Whを決定する。すなわち、電子制御ユニット35は、前記ステップS13にて決定した操舵角速度制限値(dθ/dt)_limを用いて操舵角速度dθ/dtを制限、言い換えれば、転舵角速度dδ/dtを制限する。そして、この操舵角速度制限値(dθ/dt)_limのある時間tにおける操舵角θtを転舵角指令値Whとして決定する。ここで、転舵角指令値Whは、時間tの経過に伴って、検出操舵角θまで変化するようになっている。このように、転舵角指令値Whを、操舵角速度制限値(dθ/dt)_limを用いて決定すると、電子制御ユニット35はステップS15に進む。
ステップS15においては、電子制御ユニット35は、前記式1の操舵角θに代えて、転舵角指令値Whを用いた下記式3に従って目標転舵角δfを演算する。
δf=G・Wh …式3
ただし、前記式3中のGは、前記式1の操舵ゲインGと同様に適宜設定された値である。
δf=G・Wh …式3
ただし、前記式3中のGは、前記式1の操舵ゲインGと同様に適宜設定された値である。
前記ステップS16の計算処理後、電子制御ユニット35は、ステップS16およびステップS17を繰り返し実行して、左右前輪FW1,FW2が目標転舵角δfとなるまで、オーバーシュートさせることなく転舵アクチュエータ21内の電動モータを駆動制御する。具体的に説明すると、電子制御ユニット35は、ステップS16にて、駆動回路37の電流検出器37aから電動モータに流れる駆動電流を入力し、駆動電流が適切に電動モータに流れるようにフィードバック制御する。
これにより、転舵アクチュエータ21は、転舵出力軸22を回転させて、左右前輪FW1,FW2を転舵させる。そして、電子制御ユニット35は、ステップS17にて、転舵角センサ33から入力した転舵出力軸22(左右前輪FW1,FW2)の実転舵角δが目標転舵角δfと一致するまで「No」と判定し続け、実転舵角δが目標転舵角δfと一致すると、「Yes」と判定してステップS21に進む。そして、電子制御ユニット35は、ステップS21にて、転舵制御プログラムの実行を一旦終了し、所定の短時間が経過すると、ふたたび、転舵制御プログラムの実行を開始する。
このように、転舵角指令値Whに基づいて転舵アクチュエータ21が駆動制御されることにより、転舵アクチュエータ21による左右前輪FW1,FW2の転舵動作速度、より詳しくは、転舵アクチュエータ21の転舵角速度dδ/dtが適宜制限される。すなわち、上述した転舵アクチュエータ21の作動制御が行われない状況においては、切込み操作時の検出操舵角θ(より詳しくは、操舵角速度dθ/dt)を用いて転舵角δsが計算され、この転舵角δsに左右前輪FW1,FW2が転舵される。この場合、転舵アクチュエータ21の転舵角速度dδs/dtが大きくなって、左右前輪FW1,FW2が急峻に転舵する可能性がある。
これに対して、転舵角指令値Whを用いて前記式3により目標転舵角δfを計算し、この目標転舵角δfに左右前輪FW1,FW2を転舵した場合には、転舵アクチュエータ21の転舵角速度dδ/dtが小さく制限されるため、左右前輪FW1,FW2を緩やかに転舵させることができる。その結果、運転者は、知覚特性に合わせて車両を極めて容易に運転することができる。
ところで、上述したように、切込み操作時に転舵角指令値Whに基づいて転舵アクチュエータ21の作動を制御した場合には、運転者の切込み操作における操舵角速度dθ/dtよりも小さな転舵角速度dδ/dtで左右前輪FW1,FW2が転舵される。したがって、運転者による操舵ハンドル11の切込み操作に対して時間的な遅れを有して、言い換えれば、運転者の切込み操作に追従するように左右前輪FW1,FW2が転舵される。
このため、図5に示すように、運転者による切込み操作が終了して操舵ハンドル11を保舵操作しているにもかかわらず、転舵アクチュエータ21が転舵角指令値Whと操舵角θとが一致するまで左右前輪FW1,FW2を転舵し続ける状況が発生する。ここで、以下の説明においては、運転者による操舵ハンドル11の切込み操作が終了後に、転舵角指令値Whと操舵角θとが一致するまで転舵アクチュエータ21が転舵を継続することを遅れ追従という。このように、遅れ追従が発生する状況では、運転者が違和感を覚える可能性がある。
したがって、電子制御ユニット35は、運転者によって操舵ハンドル11が保舵操作されている場合には、この保舵操作に応じて転舵アクチュエータ21の作動を制御する。すなわち、電子制御ユニット35は、操舵ハンドル11が切込み操作されていなければ、図2に示した転舵制御プログラムの前記ステップS12にて「No」と判定し、ステップS18に進む。ステップS18においては、電子制御ユニット35は、上述したように、操舵角速度dθ/dtが略「0」であるか否かに基づいて、操舵ハンドル11が保舵操作されているか否かを判定する。すなわち、電子制御ユニット35は、現在、操舵ハンドル11が運転者によって保舵操作されていれば、「Yes」と判定してステップS19に進む。
ステップS19においては、電子制御ユニット35は、図6に示す保舵制御ルーチンを実行する。この保舵制御ルーチンは、操舵ハンドル11の保舵操作状態によって表される運転者の意図を反映して、転舵アクチュエータ21の作動を継続する制御ルーチンである。以下、この保舵制御ルーチンについて、詳細に説明する。
電子制御ユニット35は、ステップS50にて、保舵制御ルーチンの実行を開始し、ステップS51にて、転舵アクチュエータ21が継続して保舵制御されているか否かを判定する。すなわち、保舵制御ルーチンの実行開始時点で保舵制御されていない、言い換えれば、初めて保舵制御を実行するときには、電子制御ユニット35は「No」と判定してステップS52に進む。ステップS52においては、電子制御ユニット35は、図7に示すように、運転者によって操舵ハンドル11が保舵操作に移行された時点における転舵角指令値Wh0を転舵角指令値Whとして決定する。そして、電子制御ユニット35は、ステップS53に進む。
一方、前記ステップS51にて、保舵制御が継続中であれば、言い換えれば、現在の保舵操作において保舵制御ルーチンの実行が2回目以降であれば、電子制御ユニット35は「Yes」と判定してステップS53に進む。なお、この場合には、1回目における保舵制御ルーチンのステップS52が実行されることによって、転舵角指令値Whが転舵角指令値Wh0に設定されている。
ステップS53においては、電子制御ユニット35は、操舵ハンドル11がメカエンド位置θ_endまで回動されており、かつ、操舵トルクセンサ32によって検出された操舵トルクTの絶対値が予め設定されたトルクTsよりも大きいか否かを判定する。このように、操舵ハンドル11がメカエンド位置θ_endまで回動された状態で、運転者によって入力された操舵トルクTの大きさを判定することによって、運転者の意図を転舵アクチュエータ21の作動に反映させることができる。このことを具体的に説明する。
運転者によって操舵ハンドル11が保舵操作されている場合には、a)回動操作可能範囲内で操舵角速度dθ/dtが略「0」に保たれる状態と、b)回動操作可能範囲のメカエンド位置θ_endで機械的に操舵角速度dθ/dtが「0」に保たれる状態とが含まれる。そして、a)の保舵操作における運転者の意図としては、左右前輪FW1,FW2の転舵を止めることである。したがって、この場合には、電子制御ユニット35は、運転者の意図を反映して転舵アクチュエータ21の作動を停止させる。
一方、b)の保舵操作における運転者の意図としては、左右前輪FW1,FW2の転舵を止めること、または、左右前輪FW1,FW2の転舵を継続することが含まれる。ここで、b)の保舵操作に関しては、例えば、車両を低速で移動させて駐車するときのように、操舵ハンドル11が素早くメカエンド位置θ_endまで切込み操作される状況で起こり得る。すなわち、この状況においては、運転者による操舵ハンドル11の切込み操作は、メカストッパ14によって機械的に規制される。このとき、操舵ハンドル11の回動操作が規制された状態に対して、メカエンド位置θ_endにて操舵ハンドル11を意識的に維持する場合には、運転者の意図は、左右前輪FW1,FW2の転舵を止めることであると判断することができる。そして、この場合にも、電子制御ユニット35は、運転者の意図を反映して、転舵アクチュエータ21の作動を停止させる。
ところで、メカストッパ14によって操舵ハンドル11の回動操作が機械的に規制された場合には、操舵角θの変化が生じていないため、見かけ上、操舵ハンドル11の回動操作を止めた保舵操作と同じである。したがって、単に操舵角θのみを考慮した場合には、電子制御ユニット35は、上述したように、転舵アクチュエータ21の作動を停止させる。そして、このように転舵アクチュエータ21の作動を停止させた状況では、図7からも明らかなように、操舵ハンドル11の操舵角θと転舵角指令値Whすなわち転舵角δとの間に差が生じ、運転者が速い操舵角速度dθ/dtで操舵ハンドル11をメカエンド位置θ_endまで回動操作した場合には、この差がより大きくなる。このように、操舵角θと転舵角δとの間に差が生じている状態では、操舵ハンドル11が最大操舵位置まで回動操作されているにもかかわらず、左右前輪FW1,FW2が最大転舵位置まで転舵しておらず、したがって、車両の旋回半径が大きい状況が発生する。
この場合、運転者は、操舵ハンドル11の切込み操作がメカストッパ14によって機械的に規制されているにもかかわらず、左右前輪FW1,FW2がより転舵されるように、操舵ハンドル11を切込み操作しようとする。言い換えれば、運転者は、メカエンド位置θ_endにて、操舵ハンドル11に対して大きな操舵トルクTを入力するようになる。このように、メカエンド位置θ_endで大きな操舵トルクTが付与される場合における運転者の意図は、操舵ハンドル11の保舵、より詳しくは、左右前輪FW1,FW2の転舵停止ではなく、左右前輪FW1,FW2の転舵を継続することであると判断することができる。したがって、b)の保舵操作に関しては、操舵ハンドル11の操舵角θに加えて、操舵ハンドル11に入力される操舵トルクTの大きさを判定することによって、運転者の意図を判断することができる。
したがって、電子制御ユニット35は、操舵角θがメカエンド位置θ_endと一致し、かつ、検出操舵トルクTの絶対値が運転者の意図を判別できるように予め設定されたトルクTsよりも大きいか否かを判定する。すなわち、電子制御ユニット35は、操舵ハンドル11の操舵角θがメカエンド位置θ_endに一致しない(すなわち、回動操作可能範囲内で操舵ハンドル11が保舵されている)、または、操舵角θがメカエンド位置θ_endに一致していても操舵トルクTがトルクTs以下である場合には、「No」と判定してステップS61に進む。すなわち、これらの場合には、上述したように、運転者は左右前輪FW1,FW2の転舵を止めることを意図しているため、電子制御ユニット35は、ステップS61にて保舵制御ルーチンの実行を一旦終了し、ふたたび、図2の転舵制御プログラムのステップS15以降の各処理を実行する。
この場合、転舵角指令値Whは、上述した運転者の保舵操作が維持される限り、図7に示すように、保舵制御ルーチンの実行によって保舵操作開始時点の転舵角指令値Wh0に設定され続ける。これにより、転舵制御プログラムのステップS15にて演算される目標転舵角δfは、運転者の保舵操作に応じて、一定の値として計算される。そして、この目標転舵角δfに基づいて、ステップS16およびステップS17における転舵アクチュエータ21の作動制御が実行されることによって、左右前輪FW1,FW2の転舵動作が停止した状態が維持される。
一方、ステップS53にて、操舵角θがメカエンド位置θ_endに一致するとともに検出操舵トルクTがトルクTsよりも大きければ、運転者は、操舵ハンドル11がメカストッパ14によって回動操作が規制されているものの、左右前輪FW1,FW2の転舵を継続させることを意図している。したがって、電子制御ユニット35は、「Yes」と判定してステップS54に進む。ステップS54においては、電子制御ユニット35は、検出操舵トルクTがトルクTsよりも大きい状態で継続しているか否かを判定する。すなわち、ステップS54の実行時点にて、検出操舵トルクTがトルクTsよりも大きな状態で継続していなければ、言い換えれば、前記ステップS53にて検出操舵トルクTがトルクTsよりも大きな状態を初めて判定したときには、電子制御ユニット35は「No」と判定してステップS55に進む。
ステップS55においては、電子制御ユニット35は、前記ステップS54にて「No」と判定した時点における検出操舵トルクTを基準トルクToに設定する。そして、電子制御ユニット35は、ステップS56に進む。一方、前記ステップS54にて、検出操舵トルクTがトルクTsよりも大きな状態で継続していれば、言い換えれば、現在の保舵操作において検出操舵トルクTがトルクTsよりも大きな状態であるとの判定処理が2回目以降であれば、電子制御ユニット35は「Yes」と判定してステップS56に進む。
ステップS56においては、電子制御ユニット35は、順次検出される操舵トルクTと基準トルクToとの差分値Taを計算する。なお、この差分値Taの計算においては、現在の保舵操作に応じた前記ステップS54の実行における最初の「No」判定時に設定された基準トルクToが用いられる。そして、電子制御ユニット35は、差分値Taを計算すると、ステップS57に進む。
ステップS57においては、電子制御ユニット35は、差分値Taの変化速度を制限するためのトルク変化速度制限値(dTa/dt)_limを決定する。以下、このトルク変化速度制限値(dTa/dt)_limの決定について詳細に説明する。
運転者による操舵ハンドル11の回動操作状態に応じて、転舵アクチュエータ21の作動を制御する場合、操舵ハンドル11が回動操作可能範囲内で回動操作されていれば、操舵角θの変化に基づいて転舵アクチュエータ21の作動を制御することができる。すなわち、この場合には、操舵ハンドル11の回動操作量としての操舵角θに応じて、所謂、操舵角ステアによって、左右前輪FW1,FW2を転舵させる。しかしながら、上述したように、操舵ハンドル11がメカエンド位置θ_endまで回動されている状況では、機械的に回動操作が規制されている。このため、転舵アクチュエータ21は、操舵ハンドル11に入力される操舵トルクTの変化としての差分値Taに基づいて作動制御される。すなわち、この場合には、操舵ハンドル11に対する操作力としての差分値Ta(言い換えれば、操舵トルクT)に応じて、所謂、操舵トルクステアによって、左右前輪FW1,FW2を転舵させる。
ところで、操舵トルクステアによって左右前輪FW1,FW2を転舵させる場合の転舵角δtは、操舵角ステアによる転舵角δsを計算する前記式1と同様に、適宜設定された操舵ゲインGと前記ステップS56にて計算された差分値Taとを用いて、下記式4に従って計算することができる。
δt=G・Ta …式4
そして、前記式4が成立する状況においては、転舵アクチュエータ21が左右前輪FW1,FW2を転舵角δtまで転舵する転舵角速度dδt/dtは、差分値Taの時間変化量としてのトルク変化速度dTa/dtに比例する。これにより、例えば、運転者がメカエンド位置θ_endにて操舵ハンドル11に対して大きな操舵トルクTを加えることによって、トルク変化速度dTa/dtが大きくなった場合には、転舵角速度dδt/dtが速くなり、左右前輪FW1,FW2は転舵アクチュエータ21によって急峻に転舵される。
δt=G・Ta …式4
そして、前記式4が成立する状況においては、転舵アクチュエータ21が左右前輪FW1,FW2を転舵角δtまで転舵する転舵角速度dδt/dtは、差分値Taの時間変化量としてのトルク変化速度dTa/dtに比例する。これにより、例えば、運転者がメカエンド位置θ_endにて操舵ハンドル11に対して大きな操舵トルクTを加えることによって、トルク変化速度dTa/dtが大きくなった場合には、転舵角速度dδt/dtが速くなり、左右前輪FW1,FW2は転舵アクチュエータ21によって急峻に転舵される。
このため、トルク変化速度制限値(dTa/dt)_limは、運転者によって操舵ハンドル11に大きな操舵トルクTが付与されてトルク変化速度dTa/dtが大きくなった場合であっても、車両を安定して旋回させる転舵アクチュエータ21の転舵角速度dδ/dtで転舵アクチュエータ21が作動するように決定される。具体的には、トルク変化速度制限値(dTa/dt)_limは、例えば、下記式5に従って決定することができる。
(dTa/dt)_lim=b・(dTa/dt) …式5
(dTa/dt)_lim=b・(dTa/dt) …式5
ただし、前記式5中のbは所定の係数であって、前記式2中の係数aの車速V依存性と同様に変化するとよい。また、係数bは、操舵トルクT(差分値Ta)の増大に伴って一様に増大する変化特性を有するとよい。なお、トルク変化速度制限値(dTa/dt)_limの決定に関しては、前記式5に従って決定することに代えて、例えば、トルク変化速度dTa/dtを時間的に遅れさせる周知の一次遅れフィルタを用いて決定することも可能である。このように、一次遅れフィルタを用いてトルク変化速度制限値(dTa/dt)_limを決定した場合であっても、転舵アクチュエータ21のトルク変化速度dTa/dtを適切に制限することができる。
このように、トルク変化速度制限値(dTa/dt)_limを決定すると、電子制御ユニット35は、ステップS58にて、トルク変化速度dTa/dtをトルク変化速度制限値(dTa/dt)_limで制限する。そして、このトルク変化速度制限値(dTa/dt)_limのある時間tにおける差分値Tatを制限差分値Ta_limとして設定し、ステップS59に進む。ステップS59においては、制限差分値Ta_limに対して、所定のゲインcを乗算することによって、転舵アクチュエータ21を差分値Ta(すなわち、操舵トルクT)に基づいて駆動させるための、言い換えれば、左右前輪FW1,FW2を操舵トルクステアによって転舵させるためのトルク転舵角指令値Wh_trqを計算する。
続いて、電子制御ユニット35は、ステップS60にて、前記ステップS59にて計算したトルク転舵角指令値Wh_trqに対して、切込み操作時に前述した転舵制御プログラムのステップS14にて決定された転舵角指令値Wh(以下、保舵制御ルーチンにおいてこの転舵角指令値Whを特に転舵角指令値Wh_θという)を加算する。そして、トルク転舵角指令値Wh_trqと転舵角指令値Wh_θとを互いに加算することによって、保舵操作時における運転者の意図を反映して、左右前輪FW1,FW2の転舵を継続させるための転舵角指令値Whを決定する。このように転舵角指令値Whを決定すると、ステップS61にて、保舵制御ルーチンの実行を一旦終了し、ふたたび、図2の転舵制御プログラムのステップS15以降の各処理を実行する。
この場合、転舵角指令値Whは、運転者がメカエンド位置θ_endにてトルクTsよりも大きな操舵トルクTを加えている限り、見かけ上、操舵ハンドル11が保舵操作されていても、図8に示すように、保舵制御ルーチンの実行によって変化する。すなわち、操舵ハンドル11の回動操作がメカエンド位置θ_endよりも手前で行われている場合には、操舵角ステアにより左右前輪FW1,FW2を転舵させるための転舵角指令値Whが決定され、操舵ハンドル11の回動操作がメカエンド位置θ_endで規制された後は、操舵トルクステアにより左右前輪FW1,FW2を転舵させるための転舵角指令値Whが決定される。そして、運転者が操舵ハンドル11に加える操舵トルクTを小さくするとともに切戻し操作に移行した場合には、ふたたび操舵角ステアにより左右前輪FW1,FW2を転舵させるための転舵角指令値Whが決定される。
したがって、転舵制御プログラムのステップS15にて演算される目標転舵角δfは、操舵ハンドル11の回動操作が機械的に規制されて見かけ上保舵操作であっても、運転者の意図を反映して、左右前輪FW1,FW2の転舵を継続するように計算される。そして、この目標転舵角δfに基づいて、ステップS16およびステップS17における転舵アクチュエータ21の作動制御が実行されることによって、左右前輪FW1,FW2の転舵動作が継続される。
また、電子制御ユニット35は、転舵制御プログラムの実行において、運転者によって操舵ハンドル11が切戻し操作された場合には、この切戻し操作に応じて転舵アクチュエータ21の作動を制御する。すなわち、電子制御ユニット35は、操舵ハンドル11が切戻し操作されていれば、図2に示した転舵制御プログラムの前記ステップS12および前記ステップS18における「No」判定に基づき、ステップS20にて、図9に示す切戻し制御ルーチンを実行する。この切戻し制御ルーチンは、運転者による操舵ハンドル11の切戻し操作状態に応じて、転舵アクチュエータ21の作動を制御する制御ルーチンである。
具体的に説明すると、電子制御ユニット35は、ステップS100にて、切戻し制御ルーチンの実行を開始し、ステップS101にて、操舵ハンドル11の回動操作状態が切込み操作から切戻し操作に変化したか否か、すなわち、切込み操作から十分な保舵操作を介することなく切戻し操作に変化したか否かを判定する。そして、操舵ハンドル11の回動操作状態が切込み操作から切戻し操作に直接的に変化していれば、電子制御ユニット35は「Yes」と判定して、ステップS102に進む。ステップS102においては、電子制御ユニット35は、検出操舵角θを転舵角指令値Whとして決定する。このように、切戻し操作において、検出操舵角θを転舵角指令値Whとして決定することによって、言い換えれば、操舵角速度dθ/dtを操舵角速度制限値(dθ/dt)_limで制限しないことによって、運転者の知覚特性に合わせて素早く転舵アクチュエータ21を作動制御することができる。
すなわち、設定操舵ゲインGが大きいことによって大きく切込みすぎた左右前輪FW1,FW2の転舵角を適正な転舵角δsに修正するために、切戻し操作を行う場合には、速やかに左右前輪FW1,FW2が切戻し方向に転舵される必要がある。このとき、操舵角速度制限値(dθ/dt)_limによって制限された転舵角指令値Whを採用すると、転舵アクチュエータ21による左右前輪FW1,FW2の転舵角速度dδ/dtが小さくなるため、運転者は、操舵特性に対して違和感を覚える。このため、運転者によって切込み操作から直接的に切戻し操作された場合には、操舵角速度制限値(dθ/dt)_limによって制限された転舵角指令値Whは採用しない。そして、電子制御ユニット35は、転舵角指令値Whを決定すると、ステップS109に進み、切戻し制御ルーチンの実行を一旦終了する。そして、図2に示した転舵制御プログラムのステップS15〜ステップS17を実行することにより、転舵アクチュエータ21の作動を制御し、左右前輪FW1,FW2を転舵させる。
なお、本実施形態においては、この切戻し操作時に操舵角速度制限値(dθ/dt)_limによって制限しない転舵角指令値Whを採用して、転舵アクチュエータ21の作動を制御するように実施する。しかしながら、例えば、転舵アクチュエータ21が応答不能な操舵角速度dθ/dtで操舵ハンドル11が切戻し操作された場合には、車両の挙動が悪化する可能性がある。このため、転舵アクチュエータ21が応答可能で、かつ、車両の挙動を悪化させない程度に、切戻し操作時の転舵角指令値Whを制限して実施することも可能である。
一方、切込み操作から切戻し操作に直接的に変化していない、言い換えれば、切込み操作から切戻し操作間に十分な保舵操舵が存在する場合には、電子制御ユニット35は「No」と判定してステップS103に進む。ステップS103においては、電子制御ユニット35は、転舵アクチュエータ21が継続して切戻し制御されているか否かを判定する。すなわち、切戻し制御ルーチンの実行開始時点で切戻し制御がなされていない、言い換えれば、今回の切戻し操作に対応して初めて切戻し制御を実行するときには、電子制御ユニット35は「No」と判定してステップS104に進む。
ステップS104においては、電子制御ユニット35は、図10に示すように、運転者によって操舵ハンドル11が保舵操作から切戻し操作に移行された時点における検出操舵角θを操舵角θ0に設定する。そして、電子制御ユニット35は、続くステップS105にて、運転者によって操舵ハンドル11が保舵操作から切戻し操作に移行された時点における転舵角指令値Whを転舵角指令値Wh0に設定する。そして、電子制御ユニット35は、転舵角指令値Wh0を設定すると、ステップS106に進む。
一方、前記ステップS103にて、切戻し操作が継続中であれば、言い換えれば、現在の切戻し操作において切戻し制御ルーチンの実行が2回目以降であれば、電子制御ユニット35は「Yes」と判定してステップS106に進む。なお、この場合には、1回目の切戻し制御ルーチンを実行したときに、操舵角θ0と転舵角指令値Wh0とが設定されている。
ステップS106においては、電子制御ユニット35は、前記ステップS104にて設定した操舵角θ0と、操舵角センサ31によって検出された現在の操舵角θとの差分値を計算して同差分値を一旦転舵角指令値Wh1'に設定する。そして、電子制御ユニット35は、続くステップS107にて、前記設定した転舵角指令値Wh1'に所定のゲインGaを乗算して、転舵角指令値Wh1を計算する。
このように、転舵角指令値Wh1が計算されることによって、左右前輪FW1,FW2を緩やかに転舵させることができる。すなわち、操舵ハンドル11の切戻し操作に応じて、例えば、前記ステップS104にて設定した転舵角指令値Wh1'をそのまま採用して転舵アクチュエータ21を切戻し制御した場合には、単に操舵角θの変化に基づく作動制御となるため、左右前輪FW1,FW2が急峻に転舵して車両の挙動が急変する可能性がある。このため、電子制御ユニット35は、ステップS107にて、転舵角指令値Wh1'に対して所定のゲインGaを乗算して、左右前輪FW1,FW2が緩やかに転舵されるように、転舵角指令値Wh1を計算する。したがって、所定のゲインGaは、「1」未満の正の値として設定されるとよい。これにより、転舵角指令値Wh1は、転舵角指令値Wh1'の時間に対する変化(すなわち、傾き)よりも小さくなり、車両の挙動を緩やかに変化させることができる。
そして、電子制御ユニット35は、前記ステップS107の計算処理後、ステップS108に進む。ステップS108においては、電子制御ユニット35は、切戻し操作時の目標転舵角δfを計算するための転舵角指令値Whを計算する。具体的に説明すると、電子制御ユニット35は、前記ステップS105にて設定した転舵角指令値Wh0とステップS107にて計算した転舵角指令値Wh1との和を計算することにより、転舵角指令値Whを計算する。このとき、転舵角指令値Wh1は、負の値として計算されるため、転舵角指令値Whは、転舵角指令値Wh0から緩やかに減少するように計算される。このように、転舵角指令値Whを計算すると、電子制御ユニット35は、ステップS109に進み、切戻し制御ルーチンの実行を一旦終了する。そして、図2に示した転舵制御プログラムのステップS15〜ステップS17を実行することにより、転舵アクチュエータ21の作動を制御し、左右前輪FW1,FW2を転舵させる。
以上の説明からも理解できるように、この第1実施形態によれば、操舵角センサ31によって検出された操舵ハンドル11の操舵角θに基づいて、操舵ハンドル11の操作位置が操作可能範囲内にあれば、すなわち、メカエンド位置θ_endまでの回動操作であれば、操舵ハンドル11の操舵角θを用いて転舵角指令値Whを決定することができる。そして、左右前輪FW1,FW2を決定した転舵角指令値Whに基づいて転舵させることができる。これにより、操舵ハンドル11の操作可能範囲内においては、運転者は、操舵角ステアによって左右前輪FW1,FW2を転舵させることができる。したがって、操舵ハンドル11の操舵角θによって表される運転者の意図を反映して左右前輪FW1,FW2を転舵させることができる。
一方、操舵ハンドル11の操舵角θがメカエンド位置θ_endに一致するとともに、操舵トルクセンサ32によって検出される操舵トルクTが所定のトルクTsよりも大きければ、運転者によって操舵ハンドル11に入力された操舵トルクTを用いて転舵角指令値Whを決定することができる。これにより、操舵ハンドル11をメカエンド位置θ_endまで操作した状況であって、同一方向に操舵ハンドル11を操作できない状況であっても、言い換えれば、見かけ上保舵操作されている状況であっても、運転者は、操舵トルクステアによって左右前輪FW1,FW2の転舵を継続させることができる。したがって、例えば、駐車時のように、メカエンド位置θ_endまで操舵ハンドル11が操作されていても、操舵トルクTの大きさに応じて左右前輪FW1,FW2を最大転舵位置まで転舵させることができる。このため、左右前輪FW1,FW2をより大きく転舵させたいという運転者の意図を反映して左右前輪FW1,FW2を転舵させることができる。
上記実施形態においては、操舵入力軸12に組み付けられた操舵トルクセンサ32によって検出された操舵トルクTに基づいて運転者の意図を判断し、保舵操作時における左右前輪FW1,FW2を操舵トルクステアにより転舵するように実施した。ところで、運転者が操舵ハンドル11を回動操作する場合には、反力アクチュエータ13によって付加された反力トルクに釣り合う操舵トルクTを入力する。このため、反力アクチュエータ13を適宜制御することにより、運転者が操舵ハンドル11を介して入力する操舵トルクTの大きさを推定することができ、操舵トルクセンサ32を省略することができる。以下、この第2実施形態について説明するが、上記第1実施形態と同一部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
この第2実施形態においては、図1に示した第1実施形態車両の操舵装置のうち、操舵トルクセンサ32が省略されて構成される。そして、この第2実施形態における反力アクチュエータ13は、メカストッパ14によって機械的に規制されるメカエンド位置θ_endから所定回動量だけ手前に設定された操作位置θ_pよりも大きく操舵ハンドル11が回動操作されると、擬似反力トルクT_gimを付与するようになっている。この擬似反力トルクT_gimは、図11に示すように、中立位置すなわち操舵角θが「0」から操作位置θ_pまで「0」に設定され、操作位置θ_pからメカエンド位置θ_endに向けてその絶対値が急激に大きくなるように設定されている。このため、反力アクチュエータ13が操舵ハンドル11に付与する反力トルクTzの絶対値は、図12に示すように、操作位置θ_pまでは操舵角θに応じて一様に増減し、操作位置θ_pからメカエンド位置θ_endまでの間は急激に増減する変化特性を有する。
そして、この第2実施形態における保舵制御ルーチンは、図13に示すように、上述した第1実施形態における保舵制御ルーチンのステップS53〜ステップS56がステップS150〜ステップS154に変更されている。すなわち、電子制御ユニット35は、ステップS51またはステップS52の実行処理後、ステップS150にて、操舵角センサ31によって検出された操舵角θの絶対値が操作位置θ_pよりも大きいか否かを判定する。そして、操舵角θの絶対値が操作位置θ_p以下であれば、運転者の意図が左右前輪FW1,FW2の転舵動作を停止することであると判断し、電子制御ユニット35は「No」と判定してステップS61に進む。
したがって、この場合には、上記第1実施形態と同様に、転舵角指令値Whが保舵操作開始時点における転舵角指令値Wh0に設定され続けるため、転舵制御プログラムのステップS15にて演算される目標転舵角δfは、運転者の保舵操作に応じて、一定の値として計算される。そして、この目標転舵角δfに基づいて、左右前輪FW1,FW2の転舵動作を停止した状態が維持される。
一方、前記ステップS150にて、操舵角θの絶対値が操作位置θ_pよりも大きければ、運転者の意図が左右前輪FW1,FW2の転舵動作を継続することであると判断し、電子制御ユニット35は「Yes」と判定してステップS151に進む。ステップS151においては、電子制御ユニット35は、操舵角θを用いて上述した図11に示す特性を有する変換テーブルを参照して、擬似反力トルクT_gimを決定する。ここで、擬似反力トルクT_gimは、運転者による操舵ハンドル11の回動操作すなわち操舵角θに応じて決定されるため、運転者は、擬似反力トルクT_gim(より厳密には、反力トルクTz)と釣り合う操舵トルクTを操舵ハンドル11に付与することになる。したがって、電子制御ユニット35は、決定した擬似反力トルクT_gimの大きさから運転者が操舵ハンドル11に入力した操舵トルクTの大きさを推定することができる。そして、この推定した操舵トルクT(すなわち擬似反力トルクT_gim)に基づいて、電子制御ユニット35は、上記第1実施形態と同様に、運転者の意図を判断することができる。
このように、擬似反力トルクT_gimを決定すると、電子制御ユニット35は、ステップS152にて、擬似反力トルクT_gimの絶対値が「0」よりも大きな状態が継続しているか否かを判定する。すなわち、ステップS152の実行時点にて、擬似反力トルクT_gimが「0」よりも大きな状態で継続していなければ、言い換えれば、現在の保舵操作における前記ステップS151にて初めて擬似反力トルクT_gimを決定したときには、電子制御ユニット35は「No」と判定してステップS153に進む。
ステップS153においては、電子制御ユニット35は、前記ステップS152にて「No」と判定した時点における擬似反力トルクT_gim、言い換えれば、現在の保舵操作において初めて決定した擬似反力トルクT_gimを基準トルクToに設定する。そして、電子制御ユニット35は、ステップS154に進む。一方、前記ステップS152にて、擬似反力トルクT_gimが「0」よりも大きな状態で継続していれば、すなわち、現在の保舵操作において擬似反力トルクT_gimが「0」よりも大きい状態であるとの判定が2回目以降であれば、電子制御ユニット35は「Yes」と判定してステップS154に進む。
そして、電子制御ユニット35は、ステップS154にて、保舵制御ルーチンの実行ごとに決定される擬似反力トルクT_gimと基準トルクToとの差分値Taを計算する。このように、差分値Taを計算すると、電子制御ユニット35は、上記第1実施形態と同様に、ステップS57以降の各ステップの処理を実行する。
このように、この第2実施形態によれば、操舵角センサ31によって検出された操舵ハンドル11の操舵角θに基づいて、操舵角θが操作位置θ_p以下であれば、操舵ハンドル11の操舵角θを用いて転舵角指令値Whを決定することができる。これにより、操舵ハンドル11が操作位置θ_p以下で操作された場合には、運転者は、操舵角ステアによって左右前輪FW1,FW2を転舵させることができる。したがって、操舵ハンドル11の操舵角θによって表される運転者の意図を反映して左右前輪FW1,FW2を転舵させることができる。
一方、操舵ハンドル11の操舵角θが操作位置θ_pからメカエンド位置θ_endまでの間にあれば、擬似反力トルクT_gimに基づいて推定される操舵トルクTを用いて転舵角指令値Whを決定することができる。これにより、操舵ハンドル11のメカエンド位置θ_end近傍では、運転者は、操舵トルクステアによって左右前輪FW1,FW2の転舵を継続させることができる。ここで、操舵トルクが、反力アクチュエータ13によって付与される擬似反力トルクT_gimに基づいて推定されるため、操舵トルクセンサ32を設ける必要がない。したがって、操舵トルクセンサ32を設けなくても、操舵トルクステアによって左右前輪FW1,FW2を転舵させることができる。これにより、例えば、駐車時のように、メカエンド位置θ_end近傍まで操舵ハンドル11が操作されていても、推定された操舵トルクTの大きさに応じて左右前輪FW1,FW2を最大転舵位置まで転舵させることができる。このため、左右前輪FW1,FW2をより大きく転舵させたいという運転者の意図を反映して左右前輪FW1,FW2を転舵させることができる。また、このように、操舵トルクセンサ32を省略することができるため、操舵装置の構造を簡略化することができ、その結果、装置の製造コストを低減することもできる。
また、操舵ハンドル11の操舵角θが操作位置θ_p以下、言い換えれば、通常操作領域内では、適度な大きさの反力トルクTzを付与することができるため、運転者は良好な操舵フィーリングを知覚することができる。一方、操舵ハンドル11の操作位置が操作位置θ_pからメカエンド位置θ_endまでの間では、擬似反力トルクT_gimを加算することにより、通常操作領域内よりも大きな反力トルクTzを付与することができる。このように、大きな反力トルクTzを付与することによって、運転者は、極めて容易にメカエンド位置θ_endを知覚することができるとともに、運転者の意図をより明確に判断することができる。これにより、運転者の意図を確実に反映して、操舵トルクステアにより左右前輪FW1,FW2を転舵させることができる。
本発明の実施にあたっては、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記各実施形態においては、メカストッパ14によって、操舵ハンドル11の回動操作可能範囲を規制するように実施した。しかし、例えば、反力アクチュエータ13が回動操作可能範囲のエンド位置θ_endで極めて大きな反力トルクを付与することによって、操舵ハンドル11の回動操作を規制するように実施することも可能である。この場合には、メカストッパ14を省略して実施することができ、上記各実施形態と同様の効果が期待できる。
また、上記各実施形態においては、車両を操舵するために回動操作される操舵ハンドル11を用いるようにした。しかし、これに代えて、例えば、直線的に変位するジョイスティックタイプの操舵ハンドルを用いてもよいし、その他、運転者によって操作されるとともに車両に対する操舵を指示できるものであれば、いかなるものを用いてもよい。
また、上記各実施形態においては、転舵アクチュエータ21を用いて転舵出力軸22を回転させることにより、左右前輪FW1,FW2を転舵するようにした。しかし、これに代えて、転舵アクチュエータ21を用いてラックバー24をリニアに変位させることにより、左右前輪FW1,FW2を転舵するようにしてもよい。
FW1,FW2…前輪、11…操舵ハンドル、12…操舵入力軸、13…反力アクチュエータ、21…転舵アクチュエータ、22…転舵出力軸、31…操舵角センサ、32…転舵角センサ、33…車速センサ、35…電子制御ユニット
Claims (5)
- 車両を操舵するために運転者によって予め設定された操作可能範囲内で操作される操舵ハンドルと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、前記操舵ハンドルの操作に応じて前記転舵アクチュエータを駆動制御して転舵輪を転舵する転舵制御装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、前記転舵制御装置を、
前記操舵ハンドルに対する運転者の操作量を検出する操作量検出手段と、
前記操舵ハンドルに対する運転者の操作力を検出する操作力検出手段と、
前記操作量検出手段によって検出した操作量に基づき、前記操舵ハンドルの操作位置が前記予め設定された操作可能範囲内であれば前記転舵アクチュエータの駆動を指令するための転舵角指令値を前記検出した操作量を用いて決定し、前記操舵ハンドルの操作位置が前記予め設定された操作可能範囲の終点を表す操作位置と一致するとともに前記操作力検出手段によって検出した操作力が予め設定された所定の操作力よりも大きければ前記転舵角指令値を前記検出した操作力を用いて決定する転舵角指令値決定手段と、
前記転舵角指令値決定手段により決定した転舵角指令値に基づいて前記転舵アクチュエータの駆動を制御して前記転舵輪を転舵する転舵制御手段とで構成したことを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。 - 前記操作力検出手段を、前記操舵ハンドルに付与されるトルクを検出するトルクセンサで構成した請求項1に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
- 車両を操舵するために運転者によって予め設定された操作可能範囲内で操作される操舵ハンドルと、転舵輪を転舵するための転舵アクチュエータと、前記操舵ハンドルの操作に応じて前記転舵アクチュエータを駆動制御して転舵輪を転舵する転舵制御装置と、前記操舵ハンドルの操作に対して反力を付与する反力装置とを備えたステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、前記転舵制御装置を、
前記操舵ハンドルに対する運転者の操作量を検出する操作量検出手段と、
前記反力装置が付与する反力に基づいて、前記操舵ハンドルに対する運転者の操作力を推定する操作力推定手段と、
前記操作量検出手段によって検出した操作量に基づき、前記操舵ハンドルの操作位置が前記操作可能範囲内に設定された所定範囲内であれば前記転舵アクチュエータの駆動を指令するための転舵角指令値を前記検出した操作量を用いて決定し、前記操舵ハンドルの操作位置が前記設定された所定範囲の終点から前記操作可能範囲の終点までの間であれば前記転舵角指令値を前記操作力推定手段によって推定した操作力を用いて決定する転舵角指令値決定手段と、
前記転舵角指令値決定手段により決定した転舵角指令値に基づいて前記転舵アクチュエータの駆動を制御して前記転舵輪を転舵する転舵制御手段とで構成したことを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。 - 請求項3に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置において、
前記反力装置は、
前記操舵ハンドルの操作位置が前記所定範囲内であれば前記検出した操作量の絶対値に応じて一様に増減する反力を付与するとともに、前記操舵ハンドルの操作位置が前記所定範囲の終点から前記操作可能範囲の終点までの間であれば前記検出した操作量の絶対値に応じて前記一様に増減する反力よりも大きく増減する反力を付与することを特徴とするステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。 - 前記操作量検出手段を、前記操舵ハンドルの変位量を検出する変位量センサで構成した請求項1または請求項3に記載したステアリングバイワイヤ方式の車両の操舵装置。
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- 2005-12-06 JP JP2005351908A patent/JP2007153158A/ja not_active Withdrawn
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A761 | Written withdrawal of application |
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