JP2019206293A - 操舵制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】より適切な操舵反力を運転者に付与することができる操舵制御装置を提供する。【解決手段】操舵装置の制御装置は、反力モータを操舵状態に応じて演算される操舵反力指令値に基づき制御する。制御装置は、理想軸力演算部81、推定軸力演算部82、仮想ラックエンド軸力演算部83、軸力配分演算部84、および最大値選択部85を有する。演算部(81)は、目標ピニオン角θp*に基づき理想軸力F1を演算する。演算部(82)は、転舵モータの電流値Ibに基づき推定軸力F2を演算する。演算部(83)は、ステアリングホイールの操作範囲を仮想的に制限するための仮想ラックエンド軸力F3を演算する。演算部(84)は、理想軸力F1および推定軸力F2を所定の分配比率で分配した混合軸力を演算する。最大値選択部85は、混合軸力F4および仮想ラックエンド軸力F3のうち絶対値の大きい方を指令値に反映させるべき軸力として選択する。【選択図】図4
Description
本発明は、操舵制御装置に関する。
従来、ステアリングホイールと転舵輪との間の動力伝達を分離した、いわゆるステアバイワイヤ方式の操舵装置が知られている。この操舵装置は、ステアリングシャフトに付与される操舵反力の発生源である反力モータ、および転舵輪を転舵させる転舵力の発生源である転舵モータを有している。車両の走行時、操舵装置の制御装置は、反力モータを通じて操舵反力を発生させるとともに、転舵モータを通じて転舵輪を転舵させる。
ステアバイワイヤ方式の操舵装置においては、ステアリングホイールと転舵輪との間の動力伝達が分離されているため、転舵輪に作用する路面反力がステアリングホイールに伝わりにくい。したがって、運転者は路面状態を、ステアリングホイールを通じて手に感じる操舵反力(手応え)として感じにくい。
そこで、たとえば特許文献1に記載の制御装置は、目標転舵角に基づく理想的なラック軸力である理想軸力と、転舵モータの電流値に基づくラック軸力の推定値である路面軸力とを演算する。制御装置は、理想軸力と路面軸力とを所定の配分割合で合算し、この合算した軸力に基づくベース反力を使用して反力モータを制御する。路面軸力には路面状態(路面情報)が反映されるため、反力モータが発生する操舵反力にも路面状態が反映される。したがって、運転者は、路面状態を操舵反力として感じることができる。
また、制御装置は、ステアリングホイールの操作範囲を仮想的に制限するための制限用反力を演算する。制御装置は、目標操舵角および目標転舵角のうちの値の大きい方を選択し、その選択される目標操舵角または目標転舵角がしきい値に達したとき、制限用反力を発生させるとともにその制限用反力を急激に増大させる。しきい値は、転舵輪を転舵させるラック軸がその物理的な可動範囲の限界位置に達する直前、およびステアリングホイールがスパイラルケーブルから定まる操作範囲の限界位置に達する直前の双方において、操舵反力を急激に増大させる観点に基づき設定される。
制御装置は、ベース反力と制限用反力とを合算することにより最終的な反力を演算し、この最終的な反力を使用して反力モータを制御する。目標操舵角または目標転舵角がしきい値に達した以降、操舵反力が急激に増大することにより、運転者は操舵角の絶対値が大きくなる方向へ向けてステアリングホイールを操作することが難しくなる。したがって、ステアリングホイールの操作範囲、ひいてはラック軸の可動範囲を仮想的につくることができる。
ところが、特許文献1の制御装置においては、つぎのことが懸念される。すなわち、制御装置は、制限用反力が演算される場合、この制限用反力をベース反力に加算することにより、反力モータの制御に使用する最終的な反力を演算する。このため、ベース反力に制限用反力が上乗せされることによって、運転者に必要以上の操舵反力が付与されるおそれがある。この事象は、たとえば車両が低速で大きく旋回する場合など、ベース反力における路面軸力の配分割合がより大きな状態、すなわち路面軸力が支配的な状態で制限用反力が加算されるときに発生しやすい。
本発明の目的は、より適切な操舵反力を運転者に付与することができる操舵制御装置を提供することにある。
上記目的を達成し得る操舵制御装置は、転舵輪を転舵させる転舵シャフトを含む車両の操舵機構に付与される駆動力を発生するモータを操舵状態に応じて演算される指令値に基づき制御する。操舵制御装置は、操舵域軸力演算部と、制限軸力演算部と、選択部と、を有している。操舵域軸力演算部は、ステアリングホイールが定められた操作範囲内で操作されるときの前記転舵シャフトに作用する軸力である操舵域軸力を車両の状態量に基づき演算する。制限軸力演算部は、前記ステアリングホイールの操作を仮想的に制限すべく操舵状態または前記転舵輪の転舵状態が反映される車両の状態量に基づき前記転舵シャフトの軸力として制限軸力を演算する。選択部は、前記操舵域軸力および前記制限軸力のうち絶対値が最も大きい軸力を前記指令値に反映させるべき軸力として選択する。
この構成によれば、選択部によって、車両の状態量に基づき演算される操舵域軸力が指令値に反映させるべき軸力として選択された場合、この操舵域軸力が指令値に反映されることにより、モータは車両の状態が反映された駆動力を発生する。したがって、運転者はステアリングホイールを介して車両の状態に応じた手応えを得ることができる。また、選択部によって、ステアリングホイールの操作を仮想的に制限するための制限軸力が指令値に反映させるべき軸力として選択された場合、この制限軸力が指令値に反映されることにより、運転者は操舵反力として突き当り感を感じる。これにより、運転者によるステアリングホイールの操作を仮想的に制限することが可能である。さらに、操舵域軸力および制限軸力のうち絶対値が最も大きい軸力が指令値に反映させるべき軸力として選択される。このため、操舵域軸力および制限軸力の双方が指令値に反映される場合と異なり、指令値に過剰な軸力が反映されることを抑制することができる。したがって、運転者に対して、より適切な操舵反力を付与することができる。また、運転者に過度な操舵反力が付与されることも抑えられるため、過度な操舵反力が付与されることによる運転者の違和感を抑えることができる。
上記の操舵制御装置において、前記制限軸力演算部は、範囲制限軸力演算部と、操作制限軸力演算部と、を有していてもよい。範囲制限軸力演算部は、前記ステアリングホイールの操作範囲を仮想的な操作範囲に制限すべく前記制限軸力として範囲制限軸力を演算する。操作制限軸力演算部は、前記転舵輪の転舵動作が制限される状況である場合に前記ステアリングホイールの操作を仮想的に制限すべく前記制限軸力として操作制限軸力を演算する。
この構成によれば、選択部によって、ステアリングホイールの操作範囲を仮想的な操作範囲に制限するための範囲制限軸力が指令値に反映させるべき軸力として選択された場合、この範囲制限軸力が指令値に反映されることにより、運転者は操舵反力として突き当り感を感じる。このステアリングホイールを介した手応えを通じて、運転者はステアリングホイールがその仮想的な操作範囲の限界位置に達したことを認識することが可能となる。また、転舵輪の転舵動作が制限される状況である場合であって、選択部によってステアリングホイールの操作を仮想的に制限するための操作制限軸力が指令値に反映させるべき軸力として選択された場合、この操作制限軸力が指令値に反映されることにより、運転者は操舵反力として突き当り感を感じる。このステアリングホイールを介した手応えを通じて、運転者は転舵輪の転舵動作が制限されている状況であることを認識することが可能となる。さらに、操舵域軸力、ならびに制限軸力としての範囲制限軸力および操作制限軸力のうち、絶対値が最も大きい軸力が指令値に反映させるべき軸力として選択される。このため、指令値に過剰な軸力が反映されることを抑制することができる。したがって、運転者に過度な操舵反力が付与されることが抑えられる。
上記の操舵制御装置において、前記操作制限軸力演算部は、第1の制限軸力演算部を有していてもよい。第1の制限軸力演算部は、前記転舵輪が障害物に当たっている状況である場合に前記ステアリングホイールの操作を仮想的に制限すべく前記制限軸力として第1の制限軸力を演算する。
この構成によれば、転舵輪が障害物に当たっている状況である場合、選択部によって、ステアリングホイールの操作を仮想的に制限するための第1の制限軸力が指令値に反映させるべき軸力として選択されたとき、この第1の制限軸力が指令値に反映されることにより、運転者は操舵反力として突き当り感を感じる。このステアリングホイールを介した手応えを通じて、運転者は転舵輪が障害物に当たっている状況であることを認識することが可能となる。また、操舵域軸力、範囲制限軸力、ならびに操作制限軸力としての第1の制限軸力のうち、絶対値が最も大きい軸力が指令値に反映させるべき軸力として選択される。このため、指令値に過剰な軸力が反映されることを抑制することができる。したがって、運転者に過度な操舵反力が付与されることが抑えられる。
上記の操舵制御装置において、前記操舵機構は、前記ステアリングホイールと前記転舵輪との間の動力伝達が分離した構造あるいは断接可能とされた構造を有するものであること、ならびに前記駆動力としてステアリングホイールの操作方向と反対方向へ向けて作用する力である操舵反力を発生する前記モータとしての反力モータ、および前記転舵輪を転舵させる力である転舵力を前記転舵シャフトに付与する前記モータとしての転舵モータが設けられたものであることを前提として、前記操作制限軸力演算部は、第2の制限軸力演算部を有していてもよい。第2の制限軸力演算部は、前記転舵モータのトルクが本来よりも制限される状況である場合に前記ステアリングホイールの操作を仮想的に制限すべく前記制限軸力として第2の制限軸力を演算する。
この構成によれば、モータのトルクが制限される状況である場合、選択部によって、ステアリングホイールの操作を仮想的に制限するための第2の制限軸力が指令値に反映させるべき軸力として選択されたとき、この第2の制限軸力が指令値に反映されることにより、運転者は操舵反力として突き当り感を感じる。このステアリングホイールを介した手応えを通じて、運転者はモータのトルクが制限される状況であることを認識することが可能となる。また、操舵域軸力、範囲制限軸力、ならびに操作制限軸力としての第2の制限軸力のうち、絶対値が最も大きい軸力が指令値に反映させるべき軸力として選択される。このため、指令値に過剰な軸力が反映されることを抑制することができる。したがって、運転者に過度な操舵反力が付与されることが抑えられる。
ちなみに、前記操作制限軸力演算部として、第1の制限軸力演算部および第2の制限軸力演算部の両方を有する構成を採用する場合、選択部によって、操舵域軸力、範囲制限軸力、ならびに操作制限軸力としての第1の制限軸力および第2の制限軸力のうち、絶対値が最も大きい軸力が指令値に反映させるべき軸力として選択される。このため、指令値に過剰な軸力が反映されることを抑制することができる。
上記の操舵制御装置において、前記操舵域軸力演算部は、路面状態または車両挙動が反映される状態量に基づき前記転舵シャフトの軸力を推定軸力として演算する推定軸力演算部を有していてもよい。
この構成によれば、推定軸力には路面状態または車両挙動が反映される。このため、路面状態または車両挙動によっては、より大きな値の推定軸力が演算されやすい。したがって、操舵制御装置として、推定軸力(操舵域軸力)および制限軸力の双方を指令値に反映させる構成を採用した場合、指令値に過剰な軸力が反映されやすい。この点、上記の構成によれば、推定軸力(操舵域軸力)および制限軸力のうち絶対値が最も大きい軸力が指令値に反映させるべき軸力として選択される。このため、推定軸力(操舵域軸力)および制限軸力の双方が指令値に反映される場合と異なり、指令値に過剰な軸力が反映されることを抑制することができる。
上記の操舵制御装置は、理想軸力演算部と、配分演算部と、を有していてもよい。理想軸力演算部は、前記転舵輪の転舵動作に連動して回転する回転体の目標回転角に基づく理想的な軸力である理想軸力を演算する。ここで目標回転角は、操舵状態に応じて演算されるものである。配分演算部は、前記推定軸力および前記理想軸力に対して、それぞれ車両挙動あるいは路面状態が反映される状態量または操舵状態に応じて個別に設定される分配比率を乗算した値を合算することにより最終的な前記操舵域軸力として混合軸力を演算する。
この構成によれば、目標回転角に基づき演算される理想的な軸力、および車両挙動などが反映される状態量に基づき演算される推定軸力を、車両挙動などが反映される状態量に応じた分配比率で合算することにより、車両挙動などをより細やかに反映した軸力が得られる。
本発明の操舵制御装置によれば、より適切な操舵反力を運転者に付与することができる。
<第1の実施の形態>
以下、操舵制御装置をステアバイワイヤ方式の操舵装置に適用した第1の実施の形態を説明する。
以下、操舵制御装置をステアバイワイヤ方式の操舵装置に適用した第1の実施の形態を説明する。
図1に示すように、車両の操舵装置10は、ステアリングホイール11に連結されたステアリングシャフト12を有している。また、操舵装置10は、車幅方向(図1中の左右方向)に沿って延びる転舵シャフト14を有している。転舵シャフト14の両端には、それぞれタイロッド15,15を介して左右の転舵輪16,16が連結されている。転舵シャフト14が直線運動することにより、転舵輪16,16の転舵角θwが変更される。ステアリングシャフト12および転舵シャフト14は操舵機構を構成する。
<操舵反力を発生させるための構成:反力ユニット>
また、操舵装置10は、操舵反力を生成するための構成として、反力モータ31、減速機構32、回転角センサ33、およびトルクセンサ34を有している。ちなみに、操舵反力とは、運転者によるステアリングホイール11の操作方向と反対方向へ向けて作用する力(トルク)をいう。操舵反力をステアリングホイール11に付与することにより、運転者に適度な手応え感を与えることが可能である。
また、操舵装置10は、操舵反力を生成するための構成として、反力モータ31、減速機構32、回転角センサ33、およびトルクセンサ34を有している。ちなみに、操舵反力とは、運転者によるステアリングホイール11の操作方向と反対方向へ向けて作用する力(トルク)をいう。操舵反力をステアリングホイール11に付与することにより、運転者に適度な手応え感を与えることが可能である。
反力モータ31は、操舵反力の発生源である。反力モータ31としてはたとえば三相(U,V,W)のブラシレスモータが採用される。反力モータ31(正確には、その回転軸)は、減速機構32を介して、ステアリングシャフト12に連結されている。反力モータ31のトルクは、操舵反力としてステアリングシャフト12に付与される。
回転角センサ33は反力モータ31に設けられている。回転角センサ33は、反力モータ31の回転角θaを検出する。反力モータ31の回転角θaは、舵角(操舵角)θsの演算に使用される。反力モータ31とステアリングシャフト12とは減速機構32を介して連動する。このため、反力モータ31の回転角θaとステアリングシャフト12の回転角、ひいてはステアリングホイール11の回転角である舵角θsとの間には相関がある。したがって、反力モータ31の回転角θaに基づき舵角θsを求めることができる。
トルクセンサ34は、ステアリングホイール11の回転操作を通じてステアリングシャフト12に加わる操舵トルクThを検出する。トルクセンサ34は、ステアリングシャフト12における減速機構32よりもステアリングホイール11側の部分に設けられている。
<転舵力を発生させるための構成:転舵ユニット>
また、操舵装置10は、転舵輪16,16を転舵させるための動力である転舵力を生成するための構成として、転舵モータ41、減速機構42、および回転角センサ43を有している。
また、操舵装置10は、転舵輪16,16を転舵させるための動力である転舵力を生成するための構成として、転舵モータ41、減速機構42、および回転角センサ43を有している。
転舵モータ41は転舵力の発生源である。転舵モータ41としては、たとえば三相のブラシレスモータが採用される。転舵モータ41(正確には、その回転軸)は、減速機構42を介してピニオンシャフト44に連結されている。ピニオンシャフト44のピニオン歯44aは、転舵シャフト14のラック歯14bに噛み合わされている。転舵モータ41のトルクは、転舵力としてピニオンシャフト44を介して転舵シャフト14に付与される。転舵モータ41の回転に応じて、転舵シャフト14は車幅方向(図中の左右方向)に沿って移動する。
回転角センサ43は転舵モータ41に設けられている。回転角センサ43は転舵モータ41の回転角θbを検出する。
ちなみに、操舵装置10は、ピニオンシャフト13を有している。ピニオンシャフト13は、転舵シャフト14に対して交わるように設けられている。ピニオンシャフト13のピニオン歯13aは、転舵シャフト14のラック歯14aに噛み合わされている。ピニオンシャフト13を設ける理由は、ピニオンシャフト44と共に転舵シャフト14をハウジング(図示略)の内部に支持するためである。すなわち、操舵装置10に設けられる支持機構(図示略)によって、転舵シャフト14は、その軸方向に沿って移動可能に支持されるとともに、ピニオンシャフト13,44へ向けて押圧される。これにより、転舵シャフト14はハウジングの内部に支持される。ただし、ピニオンシャフト13を使用せずに転舵シャフト14をハウジングに支持する他の支持機構を設けてもよい。
ちなみに、操舵装置10は、ピニオンシャフト13を有している。ピニオンシャフト13は、転舵シャフト14に対して交わるように設けられている。ピニオンシャフト13のピニオン歯13aは、転舵シャフト14のラック歯14aに噛み合わされている。ピニオンシャフト13を設ける理由は、ピニオンシャフト44と共に転舵シャフト14をハウジング(図示略)の内部に支持するためである。すなわち、操舵装置10に設けられる支持機構(図示略)によって、転舵シャフト14は、その軸方向に沿って移動可能に支持されるとともに、ピニオンシャフト13,44へ向けて押圧される。これにより、転舵シャフト14はハウジングの内部に支持される。ただし、ピニオンシャフト13を使用せずに転舵シャフト14をハウジングに支持する他の支持機構を設けてもよい。
<制御装置>
また、操舵装置10は、制御装置50を有している。制御装置50は、各種のセンサの検出結果に基づき反力モータ31、および転舵モータ41を制御する。センサとしては、前述した回転角センサ33、トルクセンサ34および回転角センサ43に加えて、車速センサ501がある。車速センサ501は、車両に設けられて車両の走行速度である車速Vを検出する。
また、操舵装置10は、制御装置50を有している。制御装置50は、各種のセンサの検出結果に基づき反力モータ31、および転舵モータ41を制御する。センサとしては、前述した回転角センサ33、トルクセンサ34および回転角センサ43に加えて、車速センサ501がある。車速センサ501は、車両に設けられて車両の走行速度である車速Vを検出する。
制御装置50は、反力モータ31の駆動制御を通じて操舵トルクThに応じた操舵反力を発生させる反力制御を実行する。制御装置50は操舵トルクThおよび車速Vに基づき目標操舵反力を演算し、この演算される目標操舵反力、操舵トルクThおよび車速Vに基づきステアリングホイール11の目標舵角(目標操舵角)を演算する。制御装置50は、実際の舵角θsを目標舵角に追従させるべく実行される舵角θsのフィードバック制御を通じて舵角補正量を演算し、この演算される舵角補正量を目標操舵反力に加算することにより操舵反力指令値を演算する。制御装置50は、操舵反力指令値に応じた操舵反力を発生させるために必要とされる電流を反力モータ31へ供給する。
制御装置50は、転舵モータ41の駆動制御を通じて転舵輪16,16を操舵状態に応じて転舵させる転舵制御を実行する。制御装置50は、回転角センサ43を通じて検出される転舵モータ41の回転角θbに基づきピニオンシャフト44の実際の回転角であるピニオン角θpを演算する。このピニオン角θpは、転舵輪16,16の転舵角θwを反映する値である。制御装置50は、前述した目標操舵角を使用して目標ピニオン角を演算する。そして制御装置50は、目標ピニオン角と実際のピニオン角θpとの偏差を求め、当該偏差を無くすように転舵モータ41に対する給電を制御する。
<制御装置の詳細構成>
つぎに、制御装置50について詳細に説明する。
図2に示すように、制御装置50は、反力制御を実行する反力制御部50a、および転舵制御を実行する転舵制御部50bを有している。
つぎに、制御装置50について詳細に説明する。
図2に示すように、制御装置50は、反力制御を実行する反力制御部50a、および転舵制御を実行する転舵制御部50bを有している。
<反力制御部>
反力制御部50aは、目標操舵反力演算部51、目標舵角演算部52、舵角演算部53、舵角フィードバック制御部54、加算器55、および通電制御部56を有している。
反力制御部50aは、目標操舵反力演算部51、目標舵角演算部52、舵角演算部53、舵角フィードバック制御部54、加算器55、および通電制御部56を有している。
目標操舵反力演算部51は、操舵トルクThおよび車速Vに基づき目標操舵反力T1 *を演算する。目標操舵反力演算部51は、操舵トルクThの絶対値が大きいほど、また車速Vが遅いほど、より大きな値(絶対値)の目標操舵反力T1 *を演算する。
目標舵角演算部52は、目標操舵反力T1 *、操舵トルクThおよび車速Vを使用してステアリングホイール11の目標舵角θ*を演算する。目標舵角演算部52は、目標操舵反力T1 *および操舵トルクThの総和を入力トルクとするとき、この入力トルクに基づいて理想的な舵角(操舵角)を定める理想モデルを有している。この理想モデルは、ステアリングホイール11と転舵輪16,16との間が機械的に連結されている操舵装置を前提として、入力トルクに応じた理想的な転舵角に対応する舵角を予め実験などによりモデル化したものである。目標舵角演算部52は、目標操舵反力T1 *と操舵トルクThとを加算することにより入力トルクを求め、この入力トルクから理想モデルに基づいて目標舵角θ*(目標操舵角)を演算する。
舵角演算部53は、回転角センサ33を通じて検出される反力モータ31の回転角θaに基づきステアリングホイール11の実際の舵角θsを演算する。舵角フィードバック制御部54は、実際の舵角θsを目標舵角θ*に追従させるべく舵角θsのフィードバック制御を通じて舵角補正量T2 *を演算する。加算器55は、目標操舵反力T1 *に舵角補正量T2 *を加算することにより操舵反力指令値T*を算出する。
通電制御部56は、操舵反力指令値T*に応じた電力を反力モータ31へ供給する。具体的には、通電制御部56は、操舵反力指令値T*に基づき反力モータ31に対する電流指令値を演算する。また、通電制御部56は、反力モータ31に対する給電経路に設けられた電流センサ57を通じて、当該給電経路に生じる実際の電流値Iaを検出する。この電流値Iaは、反力モータ31に供給される実際の電流の値である。そして通電制御部56は、電流指令値と実際の電流値Iaとの偏差を求め、当該偏差を無くすように反力モータ31に対する給電を制御する(電流Iaのフィードバック制御)。これにより、反力モータ31は操舵反力指令値T*に応じたトルクを発生する。運転者に対して路面反力に応じた適度な手応え感を与えることが可能である。
<転舵制御部>
図2に示すように、転舵制御部50bは、ピニオン角演算部61、舵角比変更制御部62、微分ステアリング制御部63、ピニオン角フィードバック制御部64、および通電制御部65を有している。
図2に示すように、転舵制御部50bは、ピニオン角演算部61、舵角比変更制御部62、微分ステアリング制御部63、ピニオン角フィードバック制御部64、および通電制御部65を有している。
ピニオン角演算部61は、回転角センサ43を通じて検出される転舵モータ41の回転角θbに基づきピニオンシャフト44の実際の回転角であるピニオン角θpを演算する。前述したように、転舵モータ41とピニオンシャフト44とは減速機構42を介して連動する。このため、転舵モータ41の回転角θbとピニオン角θpとの間には相関関係がある。この相関関係を利用して転舵モータ41の回転角θbからピニオン角θpを求めることができる。さらに、これも前述したように、ピニオンシャフト44は、転舵シャフト14に噛合されている。このため、ピニオン角θpと転舵シャフト14の移動量との間にも相関関係がある。すなわち、ピニオン角θpは、転舵輪16,16の転舵角θwを反映する値である。
舵角比変更制御部62は、車両の走行状態(たとえば車速V)に応じて舵角θsに対する転舵角θwの比である舵角比を設定し、この設定される舵角比に応じて目標ピニオン角を演算する。舵角比変更制御部62は、車速Vが遅くなるほど舵角θsに対する転舵角θwがより大きくなるように、また車速Vが速くなるほど舵角θsに対する転舵角θwがより小さくなるように、目標ピニオン角θp *を演算する。舵角比変更制御部62は、車両の走行状態に応じて設定される舵角比を実現するために、目標舵角θ*に対する補正角度を演算し、この演算される補正角度を目標舵角θ*に加算することにより舵角比に応じた目標ピニオン角θp *を演算する。
微分ステアリング制御部63は、目標ピニオン角θp *を微分することにより目標ピニオン角θp *の変化速度(転舵速度)を演算する。また、微分ステアリング制御部63は、目標ピニオン角θp *の変化速度にゲインを乗算することにより目標ピニオン角θp *に対する補正角度を演算する。微分ステアリング制御部63は、補正角度を目標ピニオン角θp *に加算することにより最終的な目標ピニオン角θp *を演算する。舵角比変更制御部62により演算される目標ピニオン角θp *の位相が進められることにより、転舵遅れが改善される。すなわち、転舵速度に応じて転舵応答性が確保される。
ピニオン角フィードバック制御部64は、実際のピニオン角θpを、微分ステアリング制御部63により演算される最終的な目標ピニオン角θp *に追従させるべくピニオン角θpのフィードバック制御(PID制御)を通じてピニオン角指令値Tp *を演算する。
通電制御部65は、ピニオン角指令値Tp *に応じた電力を転舵モータ41へ供給する。具体的には、通電制御部65は、ピニオン角指令値Tp *に基づき転舵モータ41に対する電流指令値を演算する。また、通電制御部65は、転舵モータ41に対する給電経路に設けられた電流センサ66を通じて、当該給電経路に生じる実際の電流値Ibを検出する。この電流値Ibは、転舵モータ41に供給される実際の電流の値である。そして通電制御部65は、電流指令値と実際の電流値Ibとの偏差を求め、当該偏差を無くすように転舵モータ41に対する給電を制御する(電流値Ibのフィードバック制御)。これにより、転舵モータ41はピニオン角指令値Tp *に応じた角度だけ回転する。
<目標舵角演算部>
つぎに、目標舵角演算部52について詳細に説明する。
前述したように、目標舵角演算部52は、目標操舵反力T1 *および操舵トルクThの総和である入力トルクから理想モデルに基づいて目標舵角θ*を演算する。この理想モデルは、ステアリングシャフト12に印加されるトルクとしての入力トルクTin *が、次式(1)で表されることを利用したモデルである。
つぎに、目標舵角演算部52について詳細に説明する。
前述したように、目標舵角演算部52は、目標操舵反力T1 *および操舵トルクThの総和である入力トルクから理想モデルに基づいて目標舵角θ*を演算する。この理想モデルは、ステアリングシャフト12に印加されるトルクとしての入力トルクTin *が、次式(1)で表されることを利用したモデルである。
Tin *=Jθ*′′+Cθ*′+Kθ* …(1)
ただし、「J」はステアリングホイール11およびステアリングシャフト12の慣性モーメント、「C」は転舵シャフト14のハウジングに対する摩擦などに対応する粘性係数(摩擦係数)、「K」はステアリングホイール11およびステアリングシャフト12をそれぞればねとみなしたときのばね係数である。
ただし、「J」はステアリングホイール11およびステアリングシャフト12の慣性モーメント、「C」は転舵シャフト14のハウジングに対する摩擦などに対応する粘性係数(摩擦係数)、「K」はステアリングホイール11およびステアリングシャフト12をそれぞればねとみなしたときのばね係数である。
式(1)から分かるように、入力トルクTin *は、目標舵角θ*の二階時間微分値θ*′′に慣性モーメントJを乗じた値、目標舵角θ*の一階時間微分値θ*′に粘性係数Cを乗じた値、および目標舵角θ*にばね係数Kを乗じた値を加算することによって得られる。目標舵角演算部52は、式(1)に基づく理想モデルに従って目標舵角θ*を演算する。
図3に示すように、式(1)に基づく理想モデルは、ステアリングモデル71、および車両モデル72に分けられる。
ステアリングモデル71は、ステアリングシャフト12および反力モータ31など、操舵装置10の各構成要素の特性に応じてチューニングされる。ステアリングモデル71は、加算器73、減算器74、慣性モデル75、第1の積分器76、第2の積分器77および粘性モデル78を有している。
ステアリングモデル71は、ステアリングシャフト12および反力モータ31など、操舵装置10の各構成要素の特性に応じてチューニングされる。ステアリングモデル71は、加算器73、減算器74、慣性モデル75、第1の積分器76、第2の積分器77および粘性モデル78を有している。
加算器73は、目標操舵反力T1 *と操舵トルクThとを加算することにより入力トルクTin *を演算する。
減算器74は、加算器73により算出される入力トルクTin *から後述する粘性成分Tvi *およびばね成分Tsp *をそれぞれ減算することにより、最終的な入力トルクTin *を演算する。
減算器74は、加算器73により算出される入力トルクTin *から後述する粘性成分Tvi *およびばね成分Tsp *をそれぞれ減算することにより、最終的な入力トルクTin *を演算する。
慣性モデル75は、式(1)の慣性項に対応する慣性制御演算部として機能する。慣性モデル75は、減算器74により算出される最終的な入力トルクTin *に慣性モーメントJの逆数を乗ずることにより、舵角加速度α*を演算する。
第1の積分器76は、慣性モデル75により算出される舵角加速度α*を積分することにより、舵角速度ω*を演算する。
第2の積分器77は、第1の積分器76により算出される舵角速度ω*をさらに積分することにより、目標舵角θ*を演算する。目標舵角θ*は、ステアリングモデル71に基づくステアリングホイール11(ステアリングシャフト12)の理想的な回転角である。
第2の積分器77は、第1の積分器76により算出される舵角速度ω*をさらに積分することにより、目標舵角θ*を演算する。目標舵角θ*は、ステアリングモデル71に基づくステアリングホイール11(ステアリングシャフト12)の理想的な回転角である。
粘性モデル78は、式(1)の粘性項に対応する粘性制御演算部として機能する。粘性モデル78は、第1の積分器76により算出される舵角速度ω*に粘性係数Cを乗ずることにより、入力トルクTin *の粘性成分Tvi *を演算する。
車両モデル72は、操舵装置10が搭載される車両の特性に応じてチューニングされる。操舵特性に影響を与える車両側の特性は、たとえばサスペンションおよびホイールアライメントの仕様、および転舵輪16,16のグリップ力(摩擦力)などにより決まる。車両モデル72は、式(1)のばね項に対応するばね特性制御演算部として機能する。車両モデル72は、第2の積分器77により算出される目標舵角θ*にばね係数Kを乗ずることにより、入力トルクTin *のばね成分Tsp *(トルク)を演算する。
このように構成した目標舵角演算部52によれば、ステアリングモデル71の慣性モーメントJおよび粘性係数C、ならびに車両モデル72のばね係数Kをそれぞれ調整することによって、入力トルクTin *と目標舵角θ*との関係を直接的にチューニングすること、ひいては所望の操舵特性を実現することができる。
また、目標ピニオン角θp *は、入力トルクTin *からステアリングモデル71および車両モデル72に基づき演算される目標舵角θ*が使用されて演算される。そして、実際のピニオン角θpが目標ピニオン角θp *に一致するようにフィードバック制御される。前述したように、ピニオン角θpと転舵輪16,16の転舵角θwとの間には相関関係がある。このため、入力トルクTin *に応じた転舵輪16,16の転舵動作もステアリングモデル71および車両モデル72により定まる。すなわち、車両の操舵感がステアリングモデル71および車両モデル72により決まる。したがって、ステアリングモデル71および車両モデル72を調整することにより所望の操舵感を実現することが可能となる。
しかし、このように構成した制御装置50において、操舵反力(ステアリングを通じて感じる手応え)は目標舵角θ*に応じたものにしかならない。すなわち、車両挙動あるいは路面状態(路面の滑りやすさなど)によって操舵反力が変わらない。このため、運転者は操舵反力を通じて車両挙動あるいは路面状態を把握しにくい。そこで本実施の形態では、こうした懸念を解消する観点に基づき、車両モデル72をつぎのように構成している。
<車両モデル>
図4に示すように、車両モデル72は、理想軸力演算部81、推定軸力演算部82、仮想ラックエンド軸力演算部83、軸力配分演算部84、最大値選択部85、および換算部86を有している。
図4に示すように、車両モデル72は、理想軸力演算部81、推定軸力演算部82、仮想ラックエンド軸力演算部83、軸力配分演算部84、最大値選択部85、および換算部86を有している。
理想軸力演算部81は、目標ピニオン角θp *に基づき、転舵輪16,16を通じて転舵シャフト14に作用する軸力の理想値である理想軸力F1を演算する。理想軸力演算部81は、制御装置50の記憶装置に格納された理想軸力マップを使用して理想軸力F1を演算する。
図5のグラフに示すように、理想軸力マップM1は、横軸を目標ピニオン角θp *、縦軸を理想軸力F1とするマップであって、目標ピニオン角θp *と理想軸力F1との関係を車速Vに応じて規定する。理想軸力マップM1は、つぎの特性を有する。すなわち、理想軸力F1は、目標ピニオン角θp *の絶対値が増大するほど、また車速Vが遅いほど、より大きな絶対値に設定される。目標ピニオン角θp *の絶対値の増加に対して、理想軸力F1の絶対値は線形的に増加する。理想軸力F1は、目標ピニオン角θp *の符号(正負)と同符号に設定される。
図4に示すように、推定軸力演算部82は、転舵モータ41の電流値Ibに基づき、転舵シャフト14に作用する推定軸力F2(路面反力)を演算する。ここで、転舵モータ41の電流値Ibは、路面状態(路面摩擦抵抗)に応じた外乱が転舵輪16に作用することに起因して目標ピニオン角θp *と実際のピニオン角θpとの間の差が発生することによって変化する。すなわち、転舵モータ41の電流値Ibには、転舵輪16,16に作用する実際の路面反力が反映される。このため、転舵モータ41の電流値Ibに基づき路面状態の影響を反映した軸力を演算することが可能である。推定軸力F2は、車速Vに応じた係数であるゲインを転舵モータ41の電流値Ibに乗算することにより求められる。
仮想ラックエンド軸力演算部83は、ステアリングホイール11の操作範囲を仮想的に制限するための仮想ラックエンド軸力F3を演算する。仮想ラックエンド軸力F3は、ステアリングホイール11の操作位置がその操作範囲の限界位置に近づいたとき、および転舵シャフト14がその物理的な可動範囲の限界位置に近づいたとき、反力モータ31が発生する操舵方向と反対方向のトルク(操舵反力トルク)を急激に増大させる観点に基づき演算される。
ちなみに、ステアリングホイール11の操作範囲の限界位置は、たとえばステアリングホイール11に設けられるスパイラルケーブルの長さによって決まる。また、転舵シャフト14の物理的な操作範囲の限界位置とは、転舵シャフト14の端部(ラックエンド)が図示しないハウジングに突き当たる、いわゆる「エンド当て」が生じることによって、転舵シャフト14の移動範囲が物理的に規制される位置をいう。
仮想ラックエンド軸力演算部83は、目標舵角θ*および舵角比変更制御部62(図2を参照)により演算される目標ピニオン角θp *を取り込む。仮想ラックエンド軸力演算部83は、目標舵角θ*と目標ピニオン角θp *とを比較して、絶対値の大きい方を仮想ラックエンド角として、仮想ラックエンド軸力F3の演算に使用する。仮想ラックエンド軸力演算部83は、制御装置50の記憶装置に格納された仮想ラックエンドマップを使用して、仮想ラックエンド軸力F3を演算する。
図6のグラフに示すように、仮想ラックエンドマップM2は、横軸を仮想ラックエンド角θend、縦軸を仮想ラックエンド軸力F3とするマップであって、仮想ラックエンド角θendと仮想ラックエンド軸力F3との関係を規定する。仮想ラックエンドマップM2は、つぎの特性を有する。すなわち、仮想ラックエンド角θendの絶対値が「0」を基準としてエンド判定しきい値θthに達するまでは、仮想ラックエンド軸力F3は操舵中立位置あるいは転舵中立位置に対応する中立角である「0」に維持される。仮想ラックエンド角θendの絶対値がエンド判定しきい値θthに達した以降、仮想ラックエンド軸力F3が発生するとともに、その仮想ラックエンド軸力F3は絶対値が増加する方向へ向けて急激に増大する。
ちなみに、仮想ラックエンド軸力F3は、仮想ラックエンド角θendの符号(正負)と同符号に設定される。また、エンド判定しきい値θthは、ステアリングホイール11が操作範囲の限界位置に達するときの舵角θsの近傍値、あるいは転舵シャフト14が可動範囲の限界位置に達するときのピニオン角θpの近傍値に基づき設定される。
図4に示すように、軸力配分演算部84は、理想軸力F1、および推定軸力F2に対してそれぞれ個別に設定される分配比率(ゲイン)を乗算した値を合算することにより、混合軸力F4を演算する。分配比率は、車両挙動、路面状態あるいは操舵状態が反映される各種の状態量に応じて設定される。また、分配比率は、車両の状態量の一つである車速Vのみに基づき設定してもよい。この場合、たとえば車速Vが速いときほど、理想軸力F1の分配比率をより大きな値に設定する一方、推定軸力F2の分配比率をより小さな値に設定する。また、車速Vが遅いときほど、理想軸力F1の分配比率をより小さな値に設定する一方、推定軸力F2の分配比率をより大きな値に設定する。
最大値選択部85は、仮想ラックエンド軸力演算部83により演算される仮想ラックエンド軸力F3、および軸力配分演算部84により演算される混合軸力F4を取り込む。最大値選択部85は、これら取り込まれる仮想ラックエンド軸力F3および混合軸力F4のうち絶対値の大きい方を選択し、この選択される仮想ラックエンド軸力F3または混合軸力F4を、入力トルクTin *に対するばね成分Tsp *の演算に使用する最終的な軸力Fspとして設定する。
換算部86は、最大値選択部85により設定される最終的な軸力Fspに基づき入力トルクTin *に対するばね成分Tsp *を演算(換算)する。
最大値選択部85によって混合軸力F4が最終的な軸力Fspとして設定される場合、この最終的な軸力Fspに基づくばね成分Tsp *が入力トルクTin *に反映されることによって、車両挙動あるいは路面状態に応じた操舵反力をステアリングホイール11に付与することが可能となる。運転者は、ステアリングホイール11を介した操舵反力を手応えとして感じることにより車両挙動あるいは路面状態を把握することが可能となる。
最大値選択部85によって混合軸力F4が最終的な軸力Fspとして設定される場合、この最終的な軸力Fspに基づくばね成分Tsp *が入力トルクTin *に反映されることによって、車両挙動あるいは路面状態に応じた操舵反力をステアリングホイール11に付与することが可能となる。運転者は、ステアリングホイール11を介した操舵反力を手応えとして感じることにより車両挙動あるいは路面状態を把握することが可能となる。
また、最大値選択部85によって仮想ラックエンド軸力F3が最終的な軸力Fspとして設定される場合、この最終的な軸力Fspに基づくばね成分Tsp *が入力トルクTin *に反映されることによって操舵反力が急激に増大する。このため、運転者は舵角の絶対値が大きくなる方向へ向けてステアリングホイール11を操作することが難しくなる。したがって、運転者は操舵反力(手応え)として突き当り感を感じることによって、ステアリングホイール11が仮想的な操作範囲の限界位置に至ったことを認識することが可能となる。
<第1の実施の形態の作用>
つぎに、車両モデル72に最大値選択部85を設けたことによる作用を説明する。
まず比較例として、車両モデル72として、最大値選択部85を有しておらず、混合軸力F4と仮想ラックエンド軸力F3とを合算することによりばね成分Tsp *の演算に使用する最終的な軸力Fspを演算する構成を採用した場合について説明する。この構成を採用した場合、つぎのようなことが懸念される。
つぎに、車両モデル72に最大値選択部85を設けたことによる作用を説明する。
まず比較例として、車両モデル72として、最大値選択部85を有しておらず、混合軸力F4と仮想ラックエンド軸力F3とを合算することによりばね成分Tsp *の演算に使用する最終的な軸力Fspを演算する構成を採用した場合について説明する。この構成を採用した場合、つぎのようなことが懸念される。
図7のグラフに二点鎖線で示すように、たとえば仮想ラックエンド角θendとしての目標舵角θ*の絶対値がエンド判定しきい値θthに達することにより仮想ラックエンド軸力F3が演算される場合、この仮想ラックエンド軸力F3が混合軸力F4に加算(上乗せ)されることによって、ばね成分Tsp *の演算に使用する最終的な軸力Fspが演算される。このため、過剰な値の最終的な軸力Fsp、ひいては過剰な値のばね成分Tsp *が演算されることによって、運転者に必要以上の操舵反力が付与されるおそれがある。この事象は、たとえば車両が低速で大きく旋回する場合など、混合軸力F4に占める推定軸力F2の分配比率がより大きな状態、すなわち推定軸力F2が支配的な状態で仮想ラックエンド軸力F3が加算される場合に発生しやすい。これは、路面摩擦抵抗などの路面状態に応じて、目標舵角θ*(舵角θs)の絶対値の増加に対する推定軸力F2の増加割合(傾き)が変動するところ、たとえば路面摩擦抵抗が大きくなるほど、かつ舵角θsが大きくなるほど推定軸力F2はより大きな値になるからである。
この点、本実施の形態の車両モデル72においては、仮想ラックエンド軸力F3が演算される場合、この仮想ラックエンド軸力F3と混合軸力F4とは合算されない。すなわち、最大値選択部85によって、仮想ラックエンド軸力F3および混合軸力F4のうち絶対値の大きい方が、最終的な軸力Fspとして設定される。図7のグラフに示すように、ここではエンド判定しきい値θthの絶対値よりも大きな絶対値を有する角度θ1(θ1>θth)を境として、混合軸力F4と仮想ラックエンド軸力F3との大小関係が反転する場合について検討する。この場合、目標舵角θ*の絶対値がエンド判定しきい値θthに達してから角度θ1(θ1>θth)に達するまでの間においては、仮想ラックエンド軸力F3の絶対値よりも混合軸力F4の絶対値の方が大きいため、混合軸力F4が最終的な軸力Fspとして設定される。そして、目標舵角θ*の絶対値が角度θ1を超えた以降については、混合軸力F4の絶対値よりも仮想ラックエンド軸力F3の絶対値の方が大きいため、仮想ラックエンド軸力F3が最終的な軸力Fspとして設定される。このように、混合軸力F4に仮想ラックエンド軸力F3が上乗せされることがないため、過剰な値の最終的な軸力Fspが演算されることが抑制される。このため、運転者に必要以上の操舵反力が付与されることが抑制される。
<第1の実施の形態の効果>
したがって、第1の実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)仮想ラックエンド軸力F3が演算される場合、その仮想ラックエンド軸力F3および混合軸力F4のうち絶対値の大きい方がばね成分Tsp *の演算に使用する最終的な軸力Fspとして設定される。仮想ラックエンド軸力F3が混合軸力F4に上乗せされることがないため、最終的な軸力Fspが過剰な値になることを抑制することができる。したがって、運転者に過度な操舵反力が付与されることに起因する運転者の違和感を抑えることができる。
したがって、第1の実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)仮想ラックエンド軸力F3が演算される場合、その仮想ラックエンド軸力F3および混合軸力F4のうち絶対値の大きい方がばね成分Tsp *の演算に使用する最終的な軸力Fspとして設定される。仮想ラックエンド軸力F3が混合軸力F4に上乗せされることがないため、最終的な軸力Fspが過剰な値になることを抑制することができる。したがって、運転者に過度な操舵反力が付与されることに起因する運転者の違和感を抑えることができる。
特に、本実施の形態は、混合軸力F4に占める推定軸力F2の割合が大きいときほど、また推定軸力F2の値がより大きいときほど効果的である。すなわち、車両が低速で大きく旋回する場合など、仮想ラックエンド軸力F3が演算される状況と、混合軸力F4に占める推定軸力F2の割合が大きくなる状況(推定軸力F2が支配的となる状況)とは一致する。したがって、車両モデル72として、混合軸力F4に仮想ラックエンド軸力F3を加算する構成が採用されている場合、より大きな値の混合軸力F4に仮想ラックエンド軸力F3が加算されることになるため、最終的な軸力Fspの値が過剰に大きくなりやすい。これに対して、本実施の形態では、仮想ラックエンド軸力F3が混合軸力F4に加算されることがないため、最終的な軸力Fspが過剰な値になることを抑制することができる。
(2)理想軸力マップM1および仮想ラックエンドマップM2は、相互の調整を図ることなく、それぞれ個別に設定すればよい。たとえば、混合軸力F4に仮想ラックエンド軸力F3が加算される場合、最終的な軸力Fspが過剰な値にならないように理想軸力マップM1および仮想ラックエンドマップM2の特性を調整することが考えられる。この点、本実施の形態では、仮想ラックエンド軸力F3および混合軸力F4のうち絶対値の大きい方を最終的な軸力Fspとして使用することにより、最終的な軸力Fspを考慮しつつマップ特性の調整作業(マップの作り込み作業)を行う必要がない。このため、理想軸力マップM1および仮想ラックエンドマップM2の設定作業が簡単になる。
<但し書き>
ただし、本実施の形態において、理想軸力演算部81および推定軸力演算部82は、操舵域軸力演算部を構成する。操舵域軸力演算部は、車両の状態量に基づき操舵域軸力を演算する機能部分である。ここで、操舵域軸力とは、ステアリングホイール11が通常操作される操舵域として定められる操作範囲内で操作されるときの転舵シャフト14に作用する軸力をいう。本実施の形態では、理想軸力F1および推定軸力F2が操舵域軸力に相当する。
ただし、本実施の形態において、理想軸力演算部81および推定軸力演算部82は、操舵域軸力演算部を構成する。操舵域軸力演算部は、車両の状態量に基づき操舵域軸力を演算する機能部分である。ここで、操舵域軸力とは、ステアリングホイール11が通常操作される操舵域として定められる操作範囲内で操作されるときの転舵シャフト14に作用する軸力をいう。本実施の形態では、理想軸力F1および推定軸力F2が操舵域軸力に相当する。
また、仮想ラックエンド軸力演算部83は、制限軸力演算部を構成する。制限軸力演算部は、操舵状態または転舵輪16,16の転舵状態が反映される車両の状態量に基づき転舵シャフト14の軸力として制限軸力を演算する機能部分である。ここで、制限軸力とは、ステアリングホイールの操作を仮想的に制限するために演算される軸力をいう。本実施の形態では、仮想ラックエンド軸力F3が制限軸力に相当する。
また、仮想ラックエンド軸力演算部83は、範囲制限軸力演算部を構成する。範囲制限軸力演算部は、操舵状態または転舵輪16,16の転舵状態が反映される状態量に基づき、ステアリングホイール11の操作範囲を仮想的な操作範囲に制限するための範囲制限軸力を演算する機能部分である。本実施の形態において、仮想ラックエンド軸力F3が範囲制限軸力に相当する。
<第2の実施の形態>
つぎに、操舵制御装置をステアバイワイヤ方式の操舵装置に適用した第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には先の図1〜図4に示される第1の実施の形態と同様の構成を有している。
つぎに、操舵制御装置をステアバイワイヤ方式の操舵装置に適用した第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には先の図1〜図4に示される第1の実施の形態と同様の構成を有している。
操舵装置10あるいは制御装置50の仕様などによっては、ステアリングホイール11が仮想的な操作範囲の限界位置に至ったこと以外の状況についても、操舵反力を通じて運転者に伝えることが要求されることがある。運転者への伝達が要求される状況としては、たとえばつぎの2つの状況(A1),(A2)が考えられる。
(A1)車両が停車状態から発進する場合などにおいて、転舵輪16,16が縁石などの障害物に当たっている状況。
(A2)車載されるバッテリの電力不足などに起因して転舵モータ41へ供給される電流、ひいては転舵モータ41が発生するトルクが本来よりも小さな値に制限される(不足する)ことにより、転舵輪16,16の転舵角θw(ピニオン角θp)が目標値に追従できない状況。
(A2)車載されるバッテリの電力不足などに起因して転舵モータ41へ供給される電流、ひいては転舵モータ41が発生するトルクが本来よりも小さな値に制限される(不足する)ことにより、転舵輪16,16の転舵角θw(ピニオン角θp)が目標値に追従できない状況。
そこで、本実施の形態では、操舵反力を通じて2つの状況(A1),(A2)を運転者に伝えるために、車両モデル72としてつぎの構成を採用している。
図8に示すように、車両モデル72には、先の理想軸力演算部81、推定軸力演算部82、仮想ラックエンド軸力演算部83、軸力配分演算部84、最大値選択部85、および換算部86に加えて、第1の制限軸力演算部87、および第2の制限軸力演算部88が設けられている。
図8に示すように、車両モデル72には、先の理想軸力演算部81、推定軸力演算部82、仮想ラックエンド軸力演算部83、軸力配分演算部84、最大値選択部85、および換算部86に加えて、第1の制限軸力演算部87、および第2の制限軸力演算部88が設けられている。
第1の制限軸力演算部87は、転舵輪16,16が障害物に当たっている状況下において、さらなる切り込み操舵を制限するための第1の制限軸力F5を演算する。第1の制限軸力演算部87は、転舵モータ41の電流値Ib、目標舵角θ*、および目標ピニオン角θp *に基づき第1の制限軸力F5を演算する。
第2の制限軸力演算部88は、転舵モータ41に供給される電流、すなわち転舵モータ41が発生するトルクが本来よりも小さな値に制限されている状況下において、さらなる切り込み操舵を制限するための第2の制限軸力F6を演算する。第2の制限軸力演算部88は、目標舵角θ*、目標ピニオン角θp *および転舵モータ41に供給される電流の制限値Ilimに基づき第2の制限軸力F6を演算する。
ここで、制限値Ilimは、制御装置50に設けられる制限値演算部89により演算される。制限値演算部89は、車載されるバッテリの電圧(車両の電源電圧)Vbが電圧しきい値以下の値に至ったとき、転舵モータ41の定格電流値(本来)よりも小さな値の制限値Ilimを演算する。また、制限値演算部89は、電圧Vbの絶対値の低下に応じて、より小さな絶対値を有する制限値Ilimを演算する。
ちなみに、制限値Ilimは、転舵制御部50bにおける通電制御部65にも供給される。制限値演算部89により制限値Ilimが演算される場合、通電制御部65は転舵モータ41に供給しようとする電流の絶対値と制限値Ilimとを比較する。通電制御部65は、転舵モータ41へ供給しようとする電流の絶対値が制限値Ilimよりも大きいとき、転舵モータ41へ供給しようとする電流の絶対値を制限値Ilimに制限する。これにより、転舵モータ41が発生するトルクは、制限値Ilimに応じたトルクに制限される。通電制御部65は、転舵モータ41へ供給しようとする電流の絶対値が制限値Ilim以下であるとき、電流値Ibのフィードバック制御を通じて演算される本来の電流をそのまま転舵モータ41へ供給する。転舵モータ41が発生するトルクは本来のままであって制限されない。
<第1の制限軸力演算部>
つぎに、第1の制限軸力演算部87について詳細に説明する。
図9に示すように、第1の制限軸力演算部87は、減算器91,微分器92、電流ゲイン演算部93、角度ゲイン演算部94、速度ゲイン演算部95、乗算器96、および軸力演算部97を有している。
つぎに、第1の制限軸力演算部87について詳細に説明する。
図9に示すように、第1の制限軸力演算部87は、減算器91,微分器92、電流ゲイン演算部93、角度ゲイン演算部94、速度ゲイン演算部95、乗算器96、および軸力演算部97を有している。
減算器91は、目標舵角θ*から目標ピニオン角θp *を減算することにより角度偏差Δθを演算する。微分器92は、目標ピニオン角θp *を微分することによりピニオン角速度ωpを演算する。
電流ゲイン演算部93は、転舵モータ41の電流値Ibに基づき電流ゲインG1を演算する。電流ゲイン演算部93は、転舵モータ41の電流値Ibの絶対値が「0(零)」を起点として増大するほど、より大きな値の電流ゲインG1を演算する。電流ゲイン演算部93は、転舵モータ41の電流値Ibの絶対値が電流しきい値Ithに達した以降、転舵モータ41の電流値Ibの絶対値にかかわらず電流ゲインG1の値を「1」に設定する。ちなみに、電流しきい値Ithは、転舵輪16,16が障害物に当たっていなければ、転舵モータ41が転舵輪16,16を転舵させることができる程度のトルクを発生するときの電流値に基づき、実験あるいはシミュレーションによって設定される。
電流ゲインG1は、転舵輪16,16が障害物に当たっている状況の確からしさの度合いを示す値である。すなわち、転舵輪16,16が障害物に当たっている状況で、さらに転舵輪16,16を転舵しようとするほど、転舵モータ41の電流値Ibの絶対値が増大する。このため、転舵モータ41の電流値Ibの絶対値が大きいときほど、転舵輪16,16が障害物に当たっている蓋然性が高いといえる。ここでは、転舵モータ41の電流値Ibが電流しきい値Ith以上であるとき、転舵輪16,16が障害物に当たっている旨推定される。
角度ゲイン演算部94は、角度偏差Δθの絶対値に基づき角度ゲインG2を演算する。角度ゲイン演算部94は、角度偏差Δθの絶対値が「0」を起点として増大するほど、より大きな値の角度ゲインG2を演算する。角度ゲイン演算部94は、角度偏差Δθの絶対値が角度偏差しきい値Δθthに達した以降、角度偏差Δθの絶対値にかかわらず角度ゲインG2の値を「1」に設定する。
角度ゲインG2も、転舵輪16,16が障害物に当たっている状況の確からしさの度合いを示す値である。すなわち、転舵輪16,16が障害物に当たっている状況で、さらに転舵輪16,16を転舵しようとするほど、目標舵角θ*と目標ピニオン角θp *との偏差が増大する。このため、角度偏差Δθの絶対値が大きいときほど、転舵輪16,16が障害物に当たっている蓋然性が高いといえる。ここでは、角度偏差Δθが角度偏差しきい値Δθth以上であるとき、転舵輪16,16が障害物に当たっている旨推定される。ちなみに、角度偏差しきい値Δθthは、回転角センサ33,43のノイズなどによる公差を考慮しつつ、あらかじめ実験あるいはシミュレーションにより設定される。
速度ゲイン演算部95は、ピニオン角速度ωpの絶対値に基づき速度ゲインG3を演算する。速度ゲイン演算部95は、ピニオン角速度ωpの絶対値が「0」から所定値までの範囲であるとき、速度ゲインG3の値を「1」に設定する。速度ゲイン演算部95は、ピニオン角速度ωpの絶対値が所定値に達した以降、ピニオン角速度ωpの絶対値の増加に対して速度ゲインG3の値を急激に減少させる。速度ゲイン演算部95は、ピニオン角速度ωpの絶対値が速度しきい値ωthに達した以降、ピニオン角速度ωpの絶対値にかかわらず速度ゲインG3の値を「0」に設定する。
速度ゲインG3も、転舵輪16,16が障害物に当たっている状況の確からしさの度合いを示す値である。すなわち、転舵輪16,16が障害物に当たっている状況下においては、転舵輪16,16を転舵させることが困難である。このため、転舵輪16,16の転舵速度、ひいてはピニオン角速度ωpの絶対値が小さいときほど、転舵輪16,16が障害物に当たっている蓋然性が高いといえる。ここでは、角度偏差Δθが角度偏差しきい値Δθth以上であるとき、転舵輪16,16が障害物に当たっている旨推定される。ちなみに、速度しきい値ωthは、回転角センサ43のノイズなどによる公差を考慮しつつ、あらかじめ実験あるいはシミュレーションにより設定される。
乗算器96は、電流ゲイン演算部93により演算される電流ゲインG1、角度ゲイン演算部94により演算される角度ゲインG2、および速度ゲイン演算部95により演算される速度ゲインG3を乗算することにより、障害物当てゲインG4を演算する。障害物当てゲインG4は、転舵輪16,16が障害物に当たっている状況の確からしさの度合いを、転舵モータ41の電流値Ib、角度偏差Δθおよびピニオン角速度ωpを総合的に勘案した結果としての値である。
軸力演算部97は、障害物当てゲインG4に基づき第1の制限軸力F5を演算する。軸力演算部97は、障害物当てゲインG4が「0(零)」からゲインしきい値G4thまでの範囲内の値である場合、障害物当てゲインG4の増大に対して第1の制限軸力F5を緩やかに増加させる。軸力演算部97は、障害物当てゲインG4がゲインしきい値G4thに達した以降、障害物当てゲインG4の増大に対して第1の制限軸力F5を急激に増大させる。ちなみに、ゲインしきい値G4thは、転舵輪16,16が障害物に当たっている旨判定しても差し支えない値であって、あらかじめ実験あるいはシミュレーションにより設定される。また、第1の制限軸力F5は、運転者による切り込み操舵が困難となる程度の操舵反力を発生させる観点に基づき設定される。
<第2の制限軸力演算部>
つぎに、第2の制限軸力演算部88について詳細に説明する。
図10に示すように、第2の制限軸力演算部88は、減算器101、角度ゲイン演算部102、制限値ゲイン演算部103、乗算器104、および軸力演算部105を有している。
つぎに、第2の制限軸力演算部88について詳細に説明する。
図10に示すように、第2の制限軸力演算部88は、減算器101、角度ゲイン演算部102、制限値ゲイン演算部103、乗算器104、および軸力演算部105を有している。
減算器101は、減算器91は、目標舵角θ*から目標ピニオン角θp *を減算することにより角度偏差Δθを演算する。
角度ゲイン演算部102は、基本的には先の第1の制限軸力演算部87における角度ゲイン演算部94と同様の演算機能を有している。角度ゲイン演算部102は、角度偏差Δθの絶対値に基づき角度ゲインG5を演算する。角度ゲイン演算部102における角度偏差Δθの絶対値と角度ゲインG5との関係は、先の角度ゲイン演算部94における角度偏差Δθの絶対値と角度ゲインG2との関係と同じである。
角度ゲイン演算部102は、基本的には先の第1の制限軸力演算部87における角度ゲイン演算部94と同様の演算機能を有している。角度ゲイン演算部102は、角度偏差Δθの絶対値に基づき角度ゲインG5を演算する。角度ゲイン演算部102における角度偏差Δθの絶対値と角度ゲインG5との関係は、先の角度ゲイン演算部94における角度偏差Δθの絶対値と角度ゲインG2との関係と同じである。
角度ゲインG5は、転舵モータ41に供給される電流が制限されている状況の確からしさの度合いを示す値である。すなわち、転舵モータ41に供給される電流が制限されている状況下においては、転舵輪16,16を十分に転舵させることが困難であるため、転舵輪16,16を転舵させようとするほど、目標舵角θ*と目標ピニオン角θp *との偏差が増大する。したがって、角度偏差Δθの絶対値が大きいときほど、転舵モータ41に供給される電流が制限されている状況である蓋然性が高いといえる。ここでは、角度偏差Δθが角度偏差しきい値Δθth以上であるとき、転舵モータ41に供給される電流が制限されている状況である旨推定される。
制限値ゲイン演算部103は、制限値演算部89により演算される制限値Ilimに基づき制限値ゲインG6を演算する。制限値Ilimは、転舵モータ41に供給される電流の限界値である。制限値ゲイン演算部103は、制限値Ilimの絶対値が増加するにつれて、より小さな値の制限値ゲインG6を演算する。制限値Ilimは「1」から「0」までの範囲の値である。
制限値ゲインG6も、転舵モータ41に供給される電流が制限されている状況の確からしさの度合いを示す値である。すなわち、転舵モータ41に供給される電流の絶対値がより小さな値に制限されているときほど、制限値Ilimの絶対値はより小さな値に設定される。このため、制限値Ilimの絶対値が小さいときほど、転舵モータ41に供給される電流の絶対値がより小さな値に制限されている状況である蓋然性が高いといえる。
乗算器104は、角度ゲイン演算部102により演算される角度ゲインG5と、制限値ゲイン演算部103により演算される制限値ゲインG6とを乗算することにより、転舵電流ゲインG7を演算する。転舵電流ゲインG7は、転舵モータ41に供給される電流が制限されている状況の確からしさの度合いを、角度偏差Δθおよび制限値Ilimを総合的に勘案した結果としての値である。
軸力演算部105は、基本的には先の第1の制限軸力演算部87における軸力演算部97と同様の演算機能を有している。軸力演算部105は、転舵電流ゲインG7に基づき第2の制限軸力F6を演算する。軸力演算部105における転舵電流ゲインG7と第2の制限軸力F6との関係は、先の軸力演算部97における障害物当てゲインG4と第1の制限軸力F5との関係と同じである。軸力演算部105は、転舵電流ゲインG7がゲインしきい値G7thに達した以降、転舵電流ゲインG7の増大に対して第2の制限軸力F6を急激に増大させる。
<第2の実施の形態の作用>
つぎに、第2の実施の形態の作用を説明する。
図8に示すように、最大値選択部85は、仮想ラックエンド軸力演算部83により演算される仮想ラックエンド軸力F3、および軸力配分演算部84に加えて、第1の制限軸力演算部87により演算される第1の制限軸力F5および第2の制限軸力演算部88により演算される第2の制限軸力F6を取り込む。最大値選択部85は、これら取り込まれる仮想ラックエンド軸力F3、混合軸力F4、第1の制限軸力F5および第2の制限軸力F6のうち絶対値が最も大きい軸力を選択し、この選択される軸力を、入力トルクTin *に対するばね成分Tsp *の演算に使用する最終的な軸力Fspとして設定する。
つぎに、第2の実施の形態の作用を説明する。
図8に示すように、最大値選択部85は、仮想ラックエンド軸力演算部83により演算される仮想ラックエンド軸力F3、および軸力配分演算部84に加えて、第1の制限軸力演算部87により演算される第1の制限軸力F5および第2の制限軸力演算部88により演算される第2の制限軸力F6を取り込む。最大値選択部85は、これら取り込まれる仮想ラックエンド軸力F3、混合軸力F4、第1の制限軸力F5および第2の制限軸力F6のうち絶対値が最も大きい軸力を選択し、この選択される軸力を、入力トルクTin *に対するばね成分Tsp *の演算に使用する最終的な軸力Fspとして設定する。
換算部86は、最大値選択部85により設定される最終的な軸力Fspに基づき入力トルクTin *に対するばね成分Tsp *を演算(換算)する。
最大値選択部85によって混合軸力F4が最終的な軸力Fspとして設定される場合、この最終的な軸力Fspに基づくばね成分Tsp *が入力トルクTin *に反映されることによって、車両挙動あるいは路面状態に応じた操舵反力をステアリングホイール11に付与することが可能となる。運転者は、ステアリングホイール11を介した操舵反力を手応えとして感じることにより車両挙動あるいは路面状態を把握することが可能となる。
最大値選択部85によって混合軸力F4が最終的な軸力Fspとして設定される場合、この最終的な軸力Fspに基づくばね成分Tsp *が入力トルクTin *に反映されることによって、車両挙動あるいは路面状態に応じた操舵反力をステアリングホイール11に付与することが可能となる。運転者は、ステアリングホイール11を介した操舵反力を手応えとして感じることにより車両挙動あるいは路面状態を把握することが可能となる。
最大値選択部85によって仮想ラックエンド軸力F3が最終的な軸力Fspとして設定される場合、この最終的な軸力Fspに基づくばね成分Tsp *が入力トルクTin *に反映されることによって操舵反力が急激に増大する。このため、運転者は舵角θsの絶対値が大きくなる方向へ向けてステアリングホイール11を操作することが難しくなる。したがって、運転者は操舵反力として突き当り感を感じることによって、ステアリングホイール11が仮想的な操作範囲の限界位置に至ったことを認識することが可能となる。
最大値選択部85によって第1の制限軸力F5が最終的な軸力Fspとして設定される場合、この最終的な軸力Fspに基づくばね成分Tsp *が入力トルクTin *に反映されることによって操舵反力が急激に増大する。このため、運転者は舵角θsの絶対値が大きくなる方向へ向けてステアリングホイール11を操作することが難しくなる。したがって、運転者は操舵反力として突き当り感を感じることによって、転舵輪16,16が縁石などの障害物に当たっている状況であることを認識することが可能となる。
最大値選択部85によって第2の制限軸力F6が最終的な軸力Fspとして設定される場合、この最終的な軸力Fspに基づくばね成分Tsp *が入力トルクTin *に反映されることによって操舵反力が急激に増大する。このため、運転者は舵角θsの絶対値が大きくなる方向へ向けてステアリングホイール11を操作することが難しくなる。したがって、運転者は操舵反力として突き当り感を感じることによって、転舵モータ41に供給される電流、ひいては転舵モータ41が発生するトルクが制限されている状況であることを認識することが可能となる。
<第2の実施の形態の効果>
したがって、第2の実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(3)最大値選択部85によって、仮想ラックエンド軸力F3、混合軸力F4、第1の制限軸力F5および第2の制限軸力F6のうち絶対値が最も大きい軸力が、ばね成分Tsp *の演算に使用する最終的な軸力Fspとして設定される。このため、仮想ラックエンド軸力F3、混合軸力F4、第1の制限軸力F5、および第2の制限軸力F6を合算することにより、ばね成分Tsp *の演算に使用する最終的な軸力Fspを得る構成を採用する場合と異なり、過剰な値の最終的な軸力Fspが演算されることが抑制される。すなわち、運転者に必要以上の操舵反力が付与されることが抑制される。したがって、運転者にステアリングホイール11を介して過度な操舵反力が付与されることに起因する違和感を抑えることができる。
したがって、第2の実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(3)最大値選択部85によって、仮想ラックエンド軸力F3、混合軸力F4、第1の制限軸力F5および第2の制限軸力F6のうち絶対値が最も大きい軸力が、ばね成分Tsp *の演算に使用する最終的な軸力Fspとして設定される。このため、仮想ラックエンド軸力F3、混合軸力F4、第1の制限軸力F5、および第2の制限軸力F6を合算することにより、ばね成分Tsp *の演算に使用する最終的な軸力Fspを得る構成を採用する場合と異なり、過剰な値の最終的な軸力Fspが演算されることが抑制される。すなわち、運転者に必要以上の操舵反力が付与されることが抑制される。したがって、運転者にステアリングホイール11を介して過度な操舵反力が付与されることに起因する違和感を抑えることができる。
ちなみに、仮想ラックエンド軸力F3、第1の制限軸力F5、および第2の制限軸力F6を混合軸力F4に加算することにより、ばね成分Tsp *の演算に使用する最終的な軸力Fspを演算する構成を採用した場合、過剰な値の最終的な軸力Fspがより演算されやすくなる。たとえば、仮想ラックエンド角θendとしての目標舵角θ*の絶対値がエンド判定しきい値θthの近傍値に達している状態で転舵輪16,16が縁石などの障害物に当たったとき、仮想ラックエンド軸力F3および第1の制限軸力F5の双方が混合軸力F4に加算されることが懸念される。この場合、最終的な軸力Fspは、より大きな値になりやすい。
<但し書き>
ただし、本実施の形態において、理想軸力演算部81および推定軸力演算部82は、操舵域軸力を演算する操舵域軸力演算部を構成する。本実施の形態では、理想軸力F1および推定軸力F2が操舵域軸力に相当する。
ただし、本実施の形態において、理想軸力演算部81および推定軸力演算部82は、操舵域軸力を演算する操舵域軸力演算部を構成する。本実施の形態では、理想軸力F1および推定軸力F2が操舵域軸力に相当する。
また、仮想ラックエンド軸力演算部83、第1の制限軸力演算部87、および第2の制限軸力演算部88は、制限軸力を演算する制限軸力演算部を構成する。本実施の形態では、仮想ラックエンド軸力F3、第1の制限軸力F5および第2の制限軸力F6が制限軸力に相当する。
また、仮想ラックエンド軸力演算部83は、範囲制限軸力を演算する範囲制限軸力演算部を構成する。本実施の形態において、仮想ラックエンド軸力F3が範囲制限軸力に相当する。
また、第1の制限軸力演算部87および第2の制限軸力演算部88は、操作制限軸力演算部を構成する。操作制限軸力演算部は、転舵輪16,16の転舵動作が制限される状況である場合にステアリングホイール11の操作を仮想的に制限するための操作制限軸力を演算する機能部分である。本実施の形態において、第1の制限軸力F5および第2の制限軸力F6が操作制限軸力に相当する。
<他の実施の形態>
なお、第1および第2の実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・第1および第2の実施の形態において、目標操舵反力演算部51は、操舵トルクThおよび車速Vに基づいて目標操舵反力T1 *を求めるようにしたが、操舵トルクThのみに基づいて目標操舵反力T1 *を求めるようにしてもよい。
なお、第1および第2の実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・第1および第2の実施の形態において、目標操舵反力演算部51は、操舵トルクThおよび車速Vに基づいて目標操舵反力T1 *を求めるようにしたが、操舵トルクThのみに基づいて目標操舵反力T1 *を求めるようにしてもよい。
・第1および第2の実施の形態において、目標舵角演算部52は、目標操舵反力T1 *および操舵トルクThの総和である入力トルクTin *を使用してステアリングホイール11の目標舵角θ*を演算したが、操舵トルクThのみ、あるいは目標操舵反力T1 *のみを入力トルクTin *としてステアリングホイール11の目標舵角θ*を演算してもよい。
・第1および第2の実施の形態において、制御装置50として、微分ステアリング制御部63を割愛した構成を採用してもよい。この場合、ピニオン角フィードバック制御部64は、舵角比変更制御部62により演算される目標ピニオン角θp *を取り込み、当該取り込まれる目標ピニオン角θp *に実際のピニオン角θpを追従させるべくピニオン角θpのフィードバック制御を実行する。
・第1および第2の実施の形態において、制御装置50として、微分ステアリング制御部63および舵角比変更制御部62の双方を割愛した構成を採用してもよい。この場合、目標舵角演算部52により演算される目標舵角θ*がそのまま目標ピニオン角(θp *)として使用される。すなわち、ステアリングホイール11が操作された分だけ転舵輪16,16は転舵する。
・第1および第2の実施の形態において、理想軸力演算部81は、目標ピニオン角θp *および車速Vに基づき理想軸力F1を演算したが、理想軸力F1の演算に際して、車速Vは必ずしも考慮しなくてもよい。また、目標ピニオン角θp *に代えて、目標ピニオン角θp *に所定の換算係数を乗算することにより得られる目標転舵角を使用して理想軸力F1を求めてもよい。
・第1および第2の実施の形態において、推定軸力演算部82は、転舵モータ41の電流値Ibに基づき推定軸力F2を演算したが、たとえば車載されるセンサを通じて検出される横加速度あるいはヨーレートに基づき、転舵シャフト14に作用する軸力を推定演算してもよい。たとえば、車速Vに応じた係数であるゲインを横加速度に乗算することにより推定軸力を求めることができる。横加速度には路面摩擦抵抗などの路面状態あるいは車両挙動が反映されるため、横加速度に基づき演算される推定軸力には実際の路面状態が反映される。また、ヨーレートを微分した値であるヨーレート微分値に、車速Vに応じた係数である車速ゲインを乗算することにより推定軸力を求めることができる。ヨーレートにも路面摩擦抵抗などの路面状態あるいは車両挙動が反映されるため、ヨーレートに基づき演算される推定軸力にも実際の路面状態が反映される。
・第1および第2の実施の形態において、仮想ラックエンド軸力演算部83は、目標舵角θ*および目標ピニオン角θp *に代えて、舵角θsおよびピニオン角θpを使用して仮想ラックエンド軸力F3を演算するようにしてもよい。この場合、仮想ラックエンド軸力演算部83は、舵角θsおよびピニオン角θpのうち絶対値の大きい方を仮想ラックエンド角θendとして、仮想ラックエンド軸力F3の演算に使用する。
・第2の実施の形態において、第1の制限軸力演算部87の減算器91、および第2の制限軸力演算部の減算器101は、目標舵角θ*から目標ピニオン角θp *を減算することにより角度偏差Δθを演算したが、舵角θsからピニオン角θpを減算することにより角度偏差Δθを演算してもよい。また、減算器91,101は、目標舵角θ*から、ピニオン角θpに所定の換算係数を乗算することにより得られる転舵角を減算することにより角度偏差Δθを演算してもよい。
・第2の実施の形態において、第1の制限軸力演算部87の微分器92は、目標ピニオン角θp *を微分することによりピニオン角速度ωpを演算したが、ピニオン角θpを微分することによりピニオン角速度ωpを演算してもよい。
・第1および第2の実施の形態において、車両モデル72として、理想軸力演算部81および軸力配分演算部84を割愛した構成を採用してもよい。この場合、推定軸力演算部82により演算される推定軸力F2がそのまま最終的な軸力Fspとして使用される。また、第1の実施の形態において、車両モデル72として、仮想ラックエンド軸力演算部83に代えて、第1の制限軸力演算部87および第2の制限軸力演算部88の少なくとも一方を有する構成を採用してもよい。また、第2の実施の形態において、車両モデル72として、第1の制限軸力演算部87または第2の制限軸力演算部88を割愛した構成を採用してもよい。
・第1および第2の実施の形態において、制御装置50は、目標操舵反力T1 *に舵角補正量T2 *を加算することにより操舵反力指令値T*を算出するようにしたが、舵角補正量T2 *を操舵反力指令値T*として使用してもよい。この場合、制御装置50として加算器55を割愛した構成を採用することができる。目標操舵反力演算部51により演算される目標操舵反力T1 *は、目標舵角演算部52にのみ供給される。舵角フィードバック制御部54により演算される操舵反力指令値T*としての舵角補正量T2 *は、通電制御部56へ供給される。
・第1および第2の実施の形態において、操舵装置10にクラッチを設けてもよい。この場合、図2に二点鎖線で示すように、ステアリングシャフト12とピニオンシャフト13とをクラッチ21を介して連結する。クラッチ21としては、励磁コイルに対する通電の断続を通じて動力の断続を行う電磁クラッチが採用される。制御装置50は、クラッチ21の断続を切り替える断続制御を実行する。クラッチ21が切断されるとき、ステアリングホイール11と転舵輪16,16との間の動力伝達が機械的に切断される。クラッチ21が接続されるとき、ステアリングホイール11と転舵輪16,16との間の動力伝達が機械的に連結される。
・第1および第2の実施の形態における制御装置50は、車両の操舵機構にモータのトルクをアシスト力として付与するEPS(電動パワーステアリング装置)の制御装置に適用してもよい。EPSとしては、転舵シャフトに噛み合うピニオンシャフトを有するステアリングシャフトにアシスト力を付与するタイプでもよいし、ステアリングシャフトとは別個に設けられたピニオンシャフトを介して転舵シャフトにアシスト力を付与するタイプでもよい。EPSの制御装置は、操舵状態に応じて演算される指令値に基づきモータを制御する。指令値は、モータに発生させるべきトルクを示す。EPSの制御装置において、ピニオン角(転舵角)を目標ピニオン角(目標転舵角)に追従させるフィードバック制御の実行を通じて、指令値に反映させるべき転舵シャフトの軸力を演算するものが存在する。そして、このようなEPSの制御装置においても、ステアリングホイール11の操作範囲を仮想的に制限する第1の制御、転舵輪16,16が縁石などの障害物に当たっている状況下における切り込み操舵を制限する第2の制御、あるいは転舵モータ41に供給される電流が制限されている状況下における切り込み操舵を制限する第3の制御を実行する機能が持たせられることが考えられる。この場合であれ、第1〜第3の制御の少なくとも一つの制御が実行されるとき、ステアリングホイール11に過剰な操舵反力が付与される状況が想定される。
11…ステアリングホイール、12…操舵機構を構成するステアリングシャフト(回転体)、14…操舵機構を構成する転舵シャフト、16…転舵輪、31…反力モータ、41…転舵モータ、44…ピニオンシャフト(回転体)、50…制御装置(操舵制御装置)、81…理想軸力演算部(操舵域軸力演算部)、82…推定軸力演算部(操舵域軸力演算部)、83…仮想ラックエンド軸力演算部(制限軸力演算部、範囲制限軸力演算部)、84…軸力配分演算部(配分演算部)、85…最大値選択部(選択部)、87…第1の制限軸力演算部(操作制限軸力演算部)、88…第2の制限軸力演算部(操作制限軸力演算部)、F1…理想軸力(操舵域軸力)、F2…推定軸力(操舵域軸力)、F3…仮想ラックエンド軸力(制限軸力、範囲制限軸力)、F4…混合軸力、F5…第1の制限軸力(制限軸力、操作制限軸力)、F6…第2の制限軸力(制限軸力、操作制限軸力)、T*…操舵反力指令値(指令値)、θ*…目標舵角(目標回転角)、θp *…目標ピニオン角(目標回転角)。
Claims (6)
- 転舵輪を転舵させる転舵シャフトを含む車両の操舵機構に付与される駆動力を発生するモータを操舵状態に応じて演算される指令値に基づき制御する操舵制御装置であって、
ステアリングホイールが定められた操作範囲内で操作されるときの前記転舵シャフトに作用する軸力である操舵域軸力を車両の状態量に基づき演算する操舵域軸力演算部と、
前記ステアリングホイールの操作を仮想的に制限すべく操舵状態または前記転舵輪の転舵状態が反映される車両の状態量に基づき前記転舵シャフトの軸力として制限軸力を演算する制限軸力演算部と、
前記操舵域軸力および前記制限軸力のうち絶対値が最も大きい軸力を前記指令値に反映させるべき軸力として選択する選択部と、を有している操舵制御装置。 - 請求項1に記載の操舵制御装置において、
前記制限軸力演算部は、
前記ステアリングホイールの操作範囲を仮想的な操作範囲に制限すべく前記制限軸力として範囲制限軸力を演算する範囲制限軸力演算部と、
前記転舵輪の転舵動作が制限される状況である場合に前記ステアリングホイールの操作を仮想的に制限すべく前記制限軸力として操作制限軸力を演算する操作制限軸力演算部と、を有している操舵制御装置。 - 請求項2に記載の操舵制御装置において、
前記操作制限軸力演算部は、前記転舵輪が障害物に当たっている状況である場合に前記ステアリングホイールの操作を仮想的に制限すべく前記制限軸力として第1の制限軸力を演算する第1の制限軸力演算部を有している操舵制御装置。 - 請求項2または請求項3に記載の操舵制御装置において、
前記操舵機構は、前記ステアリングホイールと前記転舵輪との間の動力伝達が分離した構造あるいは断接可能とされた構造を有するものであること、ならびに前記駆動力としてステアリングホイールの操作方向と反対方向へ向けて作用する力である操舵反力を発生する前記モータとしての反力モータ、および前記転舵輪を転舵させる力である転舵力を前記転舵シャフトに付与する前記モータとしての転舵モータが設けられたものであることを前提として、
前記操作制限軸力演算部は、前記転舵モータのトルクが本来よりも制限される状況である場合に前記ステアリングホイールの操作を仮想的に制限すべく前記制限軸力として第2の制限軸力を演算する第2の制限軸力演算部を有している操舵制御装置。 - 請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の操舵制御装置において、
前記操舵域軸力演算部は、路面状態または車両挙動が反映される状態量に基づき前記転舵シャフトの軸力を推定軸力として演算する推定軸力演算部を有している操舵制御装置。 - 請求項5に記載の操舵制御装置において、
操舵状態に応じて演算される、前記転舵輪の転舵動作に連動して回転する回転体の目標回転角に基づく理想的な軸力である理想軸力を演算する理想軸力演算部と、
前記推定軸力および前記理想軸力に対して、それぞれ車両挙動あるいは路面状態が反映される状態量または操舵状態に応じて個別に設定される分配比率を乗算した値を合算することにより最終的な前記操舵域軸力として混合軸力を演算する配分演算部と、を有している操舵制御装置。
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