JP2008055250A - 乳化分散剤及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】シリコーン油の乳化安定性を保ちつつ粘度上昇を防止することが可能な乳化分散剤を提供する。
【解決手段】自発的に閉鎖小胞体を形成して油性基材表面に付着可能な両親媒性物質とシリコーン系界面活性剤との混合ベシクルを主成分とする乳化分散剤を用いる。また、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体を主成分とする乳化分散剤を用いて乳化された炭化水素油エマルションを主成分とする乳化分散剤を用いてもよい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、シリコーン油の安定なエマルションを形成しつつ、粘度の増大を回避することが可能な乳化分散剤とその製造方法に関する。
シリコーン油は、主骨格が−Si−O−Si−のシロキサン結合であり、側鎖にメチル基などの有機部位を有し、無機質と有機質の両方の性質を併せ持っているので、炭化水素系化合物のC−C結合では見られない、耐熱性、耐寒性、耐候性、電気特性、撥水性などの優れた機能性を有しており、多くの分野でエマルションとして利用され、例えば、消泡剤や、撥水剤、化粧品などに幅広く利用されている(特許文献1,2,3等)。
しかし、シリコーン油の水系における利用は、O/W型エマルションの利用が必要となるが、シリコーン油のシロキサン骨格部位は炭化水素型界面活性剤と相溶性がないため、炭化水素型界面活性剤で乳化・安定させることは非常に困難である。
このため、シリコーン油を乳化するには、製造過程において特殊な増粘剤を加えたり、相溶性があるシロキサン部位を含有したシリコーン型界面活性剤を用いること等が考えられている。
ところが、増粘剤を加えても短期間でシリコーン油が二層分離し、安定に保つことができない場合が多く、また、シリコーン系界面活性剤は、それぞれのシリコーン油の種類に適したものを選定しなければうまく乳化することができない。このため、本出願人は、特殊な増粘剤の使用やシリコーン油の種類に応じたシリコーン型界面活性剤の使用を不要とし、経時安定性に優れたシリコーン型エマルションを形成する技術を先に提案している。
即ち、従来の界面活性剤を用いた乳化法では、油と水との界面に界面活性剤が吸着し、その界面エネルギーを低下させることを乳化・分散法の基本としていたので、その界面張力を低下させるために界面活性剤の種類を選定し、また多量の界面活性剤を必要とするものであったが、本発明者らは、油/両親媒性化合物/水系の中で独立相として存在する両親媒性化合物のナノ粒子をファンデルワールス力によりシリコーン油に付着させることで乳化を行なう三相乳化法を見出し、経時安定性に優れたシリコーン型エマルションの形成を可能にしている。
特開平10−286404号公報 特開2000−288308号公報 特開2003−277735号公報
しかしながら、三相乳化法を用いることで、炭化水素型界面活性剤で乳化が困難であったシリコーン油を安定に乳化することができるが、調製したシリコーンエマルションは、経日すると粘度が増大する傾向にある。
実際、発明者らが実測した結果によれば、三相乳化法において、ポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体のうちエチレンオキシドの平均付加モル数(E)が10である誘導体(HCO−10)を乳化剤としてシリコーン油を乳化したところ、図1の破線に示されるように、経日によるシリコーンエマルションの粘度上昇が確認されている。
このようなシリコーンエマルションの粘度増大の原因を確認するため、HCO−10を用いたヘキサデカン(炭化水素油)のエマルションとシリコーンエマルションの経日変化
を観察したところ、それぞれの7日後のTEM写真から明らかなように(図2参照)、シリコーンエマルションにのみ多数のラメラ相が確認された。これは、ヘキサデカンはHCO−10の膜内に可溶化でき、ベシクルの安定化を保つことができるが、シリコーン油は、HCO−10の膜内に可溶化することができないためである。
換言すれば、炭化水素油エマルションは、油がHCO−10ベシクル中に可溶化するため,ベシクルが安定化してラメラ変移しなくなることから粘度上昇が生じないが、シリコーン油は、HCO−10との相溶性がないため可溶化が起こらず,乳化後でもHCO−10ベシクル単独の時と同様にラメラ変移するためである。
以上のことから、三相乳化法ではシリコーン油のように乳化剤と油の間に相溶性がなくてもエマルションを安定化させることができるが、相溶性がないシリコーン油ではラメラ化による粘度上昇が問題となっている。
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、シリコーン油の乳化安定性を保ちつつ、粘度上昇を防止することが可能な乳化分散剤を提供することを主たる課題としている。
本発明者らは、シリコーンエマルションの経時的な粘度増加は、乳化粒子であるHCO−10の形状変化により生じていると考察した。即ち、HCO−10 ベシクル粒子は水中で経時すると,より安定な針状のラメラ液晶に変移し、このラメラ液晶同士が絡み合うため粘度が上昇する。このため、HCO−10を乳化剤として相溶性がないシリコーン油を乳化すると、経日によるシリコーンエマルションの粘度上昇が起こる。これに対して、炭化水素油エマルションでは経時的な粘度増加現象は見られず、また、シリコーン系界面活性剤で乳化したシリコーンエマルションも粘度上昇しない。
これらのことから、本発明者らは、シリコーン系界面活性剤で乳化したシリコーンエマルションやHCO−10で炭化水素油を乳化した炭化水素油エマルションが経時的に粘度増加を示さない現象をうまく利用することで、経時安定性を維持しつつ経時的な粘度増加を避けることができると考えた。そして、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、自発的に閉鎖小胞体を形成して油性基材表面に付着可能な両親媒性物質とシリコーン系界面活性剤とを組み合わせた乳化分散剤や、前記両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体を主成分とする乳化分散剤で乳化された炭化水素エマルションが、シリコーン油の乳化に有用であるとの知見を得るに至り、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明に係る乳化分散剤は、自発的に閉鎖小胞体を形成して油性基材表面に付着可能な両親媒性物質とシリコーン系界面活性剤との混合ベシクルを主成分とすることを特徴としている。
また、本発明に係る乳化分散剤は、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体を主成分とする乳化分散剤を用いて乳化された炭化水素油エマルションを主成分とするものであってもよい。
前者の構成においては、両親媒性物質に対するシリコーン系界面活性剤の質量分率を約0.1とすることが好ましい。また、後者の構成においては、炭化水素油エマルション中の(両親媒性物質+炭化水素油)に対する炭化水素油の質量分率 (Wo) を約0.5とすることが好ましい。
また、両親媒性物質は、下記の一般式(化1)で表されるポリオキシエチレン硬化ひま
し油の誘導体のうちエチレンオキシドの平均付加モル数(E)が5〜15である誘導体が好ましい。
尚、前者の製造方法としては、自発的に閉鎖小胞体を形成して油性基材表面に付着可能な両親媒性物質とシリコーン系界面活性剤とを溶液で混合した後、溶媒を除去して混合結晶を形成する工程と、前記混合結晶に所定の濃度となるように水を添加し、攪拌して混合ベシクルを形成する工程とを含むようにするとよい。
以上述べたように、この発明によれば、自発的に閉鎖小胞体を形成して油性基材表面に付着可能な両親媒性物質とシリコーン系界面活性剤との混合ベシクルを主成分とする乳化分散剤や、前記両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体を主成分とする乳化分散剤を用いて乳化された炭化水素油エマルションを主成分とする乳化分散剤を用いることで、エマルションの経時的安定性と粘度増加しない特性を兼ね備えることができ、シリコーン油の乳化安定性を保ちつつ粘度上昇防止を図ることが可能となる。
以下、この発明の実施形態を説明する。
[HCO−10とシリコーン系界面活性剤(SiEO)との混合ベシクルでのシリコーン油乳化]
シリコーン油がナノ粒子に可溶化するようにするために、HCO−10とSiEOとの混合ベシクルでの乳化を試みた。
この混合ベシクルは、HCO−10とシリコーン系界面活性剤を溶媒で混合した後、溶媒除去して混合結晶を形成する工程と、この混合結晶に所定の濃度となるように水を添加し、攪拌により混合ベシクルを形成する工程とを経て形成されるものであり、この混合ベシクルを乳化剤分散液としてシリコーン油を乳化する。
HCO−10に対して、SiEOの質量分率Wsが0.01、0.05、0.1、0.5となるように調製した。これらの混合ベシクルをDSC測定したところ、Ws=0.01、0.05、0.1では、HCO−10の脱水和に由来するピークは確認でき、ベシクルの形成が認められた。しかし、0.5のみHCO−10の脱水和点が現れなかった。このことから、SiEOにHCO−10が取り囲まれナノ粒子が形成できなかったと考えられる。
次に、これらの混合ベシクルを用いてエマルションを調製した。いずれの混合ベシクルを用いても安定に乳化できた。いずれのエマルションも調製直後の粒子径1〜2μmであ
り、経日しても粒子径の変化は見れなかった。図3に調製したエマルションの経日による粘度変化を示す。比較としてHCO−10単独(Ws=0)の場合も示す。やはりWs=0.5では、数日後に水相の分離が見られ、SiEO単独の場合と同じ傾向が見られた。また、Ws=0.01や0.05の少量では、HCO−10 単独と同様に粘度上昇が見られたが、Ws=0.1では、30日経っても粘度上昇しなかった。
また、表1に、より仔細に質量分率を変化させた場合の経日による粘度変化とエマルション安定性の結果を示す。
これらのことから、HCO−10とSiEOとの混合ベシクルを用いることによりシリコーン油が可溶化でき、粘度増加しないエマルションの調製が可能であることが判る。
また、この結果から分かるように、HCO−10に対するシリコーン系界面活性剤(SiEO)の質量分率を約0.1にすることが好ましい。
[乳化剤HCO−10を用いて乳化した炭化水素油エマルションを乳化分散剤とした場合のシリコーン油乳化]
このシリコーン油乳化分散剤は、HCO−10ベシクル分散液を用いて,所定量の炭化水素油を乳化し,希薄なエマルションを調製する。その後、調製した炭化水素油エマルションを乳化分散剤として,所定量の油相を撹拌により乳化する。この方法で調製したシリコーン油エマルションの概念図を図4に示す。
この方法は、炭化水素油がエマルション化している場合,HCO−10ベシクルは安定
であり、炭化水素油エマルションが粘度上昇しないことから、このベシクルで安定化したエマルションの油滴粒子を乳化剤に使うもので、炭化水素油エマルション中の(両親媒性物質+炭化水素油)に対する炭化水素油の質量分率を実験によって決定した。
質量分率を変化させた場合の経日による粘度変化とエマルション安定性の結果を表2に示す。
この実験結果から、乳化剤HCO−10を用いて乳化した炭化水素油エマルションを乳化分散剤として用いることによりシリコーン油が可溶化でき、粘度増加しないエマルションの調整が可能であることが判る。また、この表から分かるように、炭化水素油エマルション中の(両親媒性物質+炭化水素油)に対する炭化水素油の質量分率 (Wo)を約0.5にすることが好ましい。
図1は、HCO−10ベシクル分散液及びそれを用いたエマルションの粘度の経日変化を示す特性線図である。 図2は、ヘキサデカンエマルションとシリコーンエマルションの経日7日後のTEM写真である。 図3は、HCO−10とシリコーン系界面活性剤との混合ベシクルを用いて調製したエマルションの経日による粘度変化を示す図である。 図4はヘキサデカンエマルションで安定化されたシリコーンエマルションの概念図を示す。

Claims (6)

  1. 自発的に閉鎖小胞体を形成して油性基材表面に付着可能な両親媒性物質と、シリコーン系界面活性剤との混合ベシクルを主成分とすることを特徴とする乳化分散剤。
  2. 前記両親媒性物質に対して、前記シリコーン系界面活性剤の質量分率を約0.1としたことを特徴とする請求項1記載の乳化分散剤。
  3. 自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体を主成分とする乳化分散剤を用いて乳化された炭化水素油エマルションを主成分とすることを特徴とする乳化分散剤。
  4. 前記炭化水素油エマルション中の(両親媒性物質+炭化水素油)に対する炭化水素油の質量分率を約0.5としたことを特徴とする請求項3記載の乳化分散剤。
  5. 前記両親媒性物質は、下記の一般式(化1)で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体のうちエチレンオキシドの平均付加モル数(E)が5〜15である誘導体である請求項1又は3記載の乳化分散剤。
  6. 自発的に閉鎖小胞体を形成して油性基材表面に付着可能な両親媒性物質とシリコーン系界面活性剤とを溶液で混合した後、溶媒を除去して混合結晶を形成する工程と、
    前記混合結晶に所定の濃度となるように水を添加し、攪拌して混合ベシクルを形成する工程と
    を含むことを特徴とする乳化分散剤の製造方法。
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