JP4178397B2 - 混合ベシクル、これを用いたエマルション、及びこれらの調製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、オリゴマー型の非イオン界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ひまし油誘導体を用いた混合ベシクル、並びにこの混合ベシクルを用いたエマルション(ベシクルエマルション)、及びこれらの調製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、機能性の油剤を固体表面に吸着させる場合、機能性の油剤を界面活性剤で乳化・安定化して使用するようにしていた。例えば、水中のセルロース表面に機能性の油剤を吸着させる場合、カチオン界面活性剤により乳化したO/W型エマルションをセルロース表面に直接吸着、固定させるようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のエマルションにあっては、図25に模式図に示されるように、固体表面に吸着させると破壊が起こり、内容物の油剤が残留固定されずに分離してしまい、機能が果せなくなるという欠点があった。
【0004】
このため、安定なカチオン性ベシクルを創製し、機能性油剤を内包させることで、固体表面、例えばセルロースなどに安定に吸着固定させることが可能となる吸着固定化技術の開発が強く望まれている。
【0005】
そこで、この発明においては、崩壊が起こりにくく、また固体表面への良好な吸着性を得ることができる乳化剤としての混合ベシクルならびにこれを用いたエマルション、およびこれらの調製方法を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、新規な吸着固定化技術を開発するために鋭意研究を重ねた結果、オリゴマー型の非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ひまし油誘導体のうち特定のものが水中で簡単に自己集合して二分子膜小胞体であるベシクルを形成し、水〜乳化剤相〜油相の三相乳化エマルションとなること、また、この三相乳化エマルションは通常のO/W型やW/O型などの二相乳化エマルションに比べて非常に高い安定性を示すという事実を見いだした。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
即ち、上記課題を達成するために、この発明に係る混合ベシクルは、下記の一般式(化2)で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体のうちエチレンオキシドの平均付加モル数(E)が6〜15である誘導体とカチオン界面活性剤とをベシクル形成成分とすることを特徴としている(請求項1)。
【0008】
【化2】
Figure 0004178397
【0009】
ここで、エチレンオキシドの付加モル数(E)を6〜15としたのは、誘導体の分散溶液中で層状構造(ラメラー相液晶)が観察されたのは、E=6〜15のみであったためである。ここで、カチオン界面活性剤のモル分率(XS )を0.1≦XS ≦0.33の範囲にすることが好ましい(請求項2)。カチオン界面活性の組成をXS <0.1にすると、混合ベシクルのカチオン性が一定に保たれないからであり、また、0.33<XS にすると、安定した混合ベシクルが得られないためである。
【0010】
上述した混合ベシクルの調製方法の一例としては、前記一般式(化2)で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体のうちエチレンオキシドの平均付加モル数(E)が6〜15である誘導体とカチオン界面活性剤とをカチオン界面活性剤のモル分率(XS )が0.1≦XS ≦0.33となるように混合し、前記誘導体がベシクルを形成し得る濃度となるように蒸留水を加え、攪拌した後に所定温度で熟成させる方法などが採用される(請求項3)。
【0011】
ここで、誘導体がベシクルを形成し得る濃度とは、前記誘導体の分散溶液中で安定したベシクルが形成されたのは5〜20wt%の濃度範囲であったので、この範囲で設定されることになる。また、カチオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩(炭素鎖長12〜20)などがあげられる(請求項4)。具体的には、炭素鎖長16のヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(Hexadecyltrimethylammonium Bromide)や炭素鎖長14のテトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(Tetradecyltrimethylammonium Bromide)などを用いるとよい。
【0012】
また、この発明に係るエマルションは、機能性油剤の一例としてヘキサデカンを添加した請求項1に記載の混合ベシクルによって形成されることを特徴としている(請求項5)。
【0013】
このようなエマルションの調製法としては、請求項1に記載の混合ベシクルの分散液に、油成分として機能性油剤であるヘキサデカンを前記誘導体に対するモル分率を0.5以上にして添加する方法が採用される(請求項7)。ここで、機能性油剤として用いたヘキサデカンの代わりにリモネンやトコフェロールなどの他の機能性油剤を用いるようにしてもよい(請求項6)。
【0014】
尚、上述のカチオン性混合ベシクル、及びこれにより形成されたエマルションは、乳化剤相の物性を適宜変更することにより、固体表面への新しい吸着固定化技術に応用可能である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。図1において、本発明に係る混合ベシクルが模式的に示されている。この混合ベシクルは、非イオン性両親媒性化合物で形成された閉鎖二分子膜からなるもので、全体として陽電荷が与えられている。
【0016】
非イオン性両親媒性化合物としては、オリゴマー型の非イオン界面活性剤である、下記する化3で示すポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体のうち、エチレンオキシド(EO)の平均付加モル数(E)が10である誘導体(以下、HCO−10という;分子量1380g/mol)であり, 日光ケミカル株式会社から購入したものを使用した。
【0017】
【化3】
Figure 0004178397
【0018】
このような化合物を用いて陽電荷を有する混合ベシクルを調製するためにカチオン界面活性剤を用いた。カチオン界面活性剤としては、下記する化4に示すヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(Hexadecyltrimethylammonium Bromide)[慣用名;セチルトリメチルアンモニウムブロミド(Cethyltrimethylammonium Bromide) ]《以下、CTABという;分子量364.46g/mol》を用いた。
【0019】
【化4】
Figure 0004178397
【0020】
次に、上記混合ベシクルの調製方法の一例を説明する。HCO−10は水への溶解性がほとんどなく、水中で自己集合してベシクル型組織体を形成してしまう。このため、均一な分散液を得るためにHCO−10とCTABとをエタノール溶媒を用いて混合した。この混合溶液をVORTEXで十分間攪拌した後、減圧乾燥によりエタノールを除去してHCO−10とCTABとの混合結晶を形成し、その後、この混合結晶にHCO−10が10wt%になるように蒸留水を加え、VORTEXで十分間攪拌した後、二日間20℃の恒温槽で熟成させることでHCO−10とCTABとの混合ベシクル(HCO−10〜CTAB混合ベシクル)を形成した。
【0021】
ここで、HCO−10の分散溶液の濃度が5〜20wt%の範囲であるときには安定した二重膜小胞体を形成することが発明者らの研究でわかっており、混合結晶にHCO−10が10wt%となるように蒸留水を加えているのは、混合ベシクルの形成を確実にするためである。
【0022】
以上の工程によって形成されたHCO−10とCTABとの混合ベシクルの物性を以下において示す。
1205123058671_0
は、混合ベシクルの示差走査熱量計(DSC)のピークチャートを示す。HCO−10分子の(EO)基の脱水和転移温度Tcは、混合ベシクル中のCTABの割合(CTABのモル分率X)が増加するごとに急激に低温側にシフトし、X=0.1で一定となった。これは、HCO−10分子間にCTAB分子が入り、長鎖中の(EO)基の分子間水素結合がCTAB分子中の炭素鎖により阻害されて疎水的になったため低温側にシフトしたものと考えられる。
【0023】
また、図3に示されるDSCのピークプロットを見ると、TcはXS =0.33まで検出可能であったが、それ以降で検出不可能であった。XS >0.66でCTABが過多になるためCTAB自身の結晶転移のピークが現れた。0.33≦XS ≦0.66でTc転移が消失したのは、CTAB分子が増加したことによりHCO−10の膜が疎水化したため、膜全体が流動し、CTAB分子がランダムに混合したためである。即ち、HCO−10分子独自の長鎖アルキル基による疎水結合が維持できなくなったためであると考えられる。
【0024】
さらに、図4に示される動的光散乱法(DLS)により測定した混合ベシクルの粒子径を見ると、平均粒子径はHCO−10単独ベシクルのとき約350nmであり、CTABのモル分率(XS )が増加すると急激に低下し、XS =0.1〜0.33まで約120nmで一定であった。これは、HCO−10分子間にCTAB分子が入ることによりTcが20℃まで低下し、混合ベシクルのHCO−10長鎖中の(EO)基が脱水和し、膜全体が流動し易くなり、粒子径の大きな多重膜ベシクルが維持できなくなったためと考えられる。
【0025】
さらにまた、CTABのモル分率XS を異ならせて形成した混合ベシクルの表面電位(ゼータ電位)を測定すると、図5に示される特性が得られた。XS =0.01で急激にゼータ電位が上昇し、XS =0.1で約+40mVとなり、それ以上にCTABの分量を増加させても、ゼータ電位はほぼ一定であった。このため、CTABの少量の添加でもHCO−10の二分子膜小胞体に陽電荷を与えることが可能であることが裏付けられた。
【0026】
以上のことから、混合ベシクル中のCTABのモル分率(XS )をXS <0.1にすると、混合ベシクルのカチオン性が一定に保たれなくなり、0.33<XS にすると、安定した混合ベシクルが得られなくなるので、混合ベシクルを形成するためには、0.1≦XS ≦0.33の範囲にすることが好ましいとの結論を得るに至った。
【0027】
尚、上述した混合ベシクルは、20℃で調製した場合であるが、これより高い温度で調製した場合にも同様の構成が得られた。また、これより低い温度で調製した場合には、図6及び図7に示されるように、直径(粒子径)の大きい単層構造の混合ベシクルや多層構造の混合ベシクルが得られることが確認されているが、いずれの場合もCTABを0.1≦XS ≦0.33の範囲で一定のカチオン性を有する安定した混合ベシクルが得られることが判明している。また、カチオン界面活性剤として、炭素鎖長16のヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(Hexadecyltrimethylammonium Bromide)を用いたが、これに代えて、炭素鎖長14のテトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(Tetradecyltrimethylammonium Bromide )などを用いた場合においても同様の結果が得られており、アルキルトリメチルアンモニウム塩(炭素鎖長12〜20)を用いればよいことが確認されている。
【0028】
次に、油溶性の物質を加えた際に油成分が混合ベシクル膜の物性や膜電位にどのように影響を与えるかを調べるために、内包物質の油に炭素鎖16のヘキサデカンをモデル物質(機能性油剤の一例)として用い、HCO−10に対して添加するキサデカンのモル分率(X)を変化させることで、混合ベシクルの膜物性、膜電位への影響を調べた。ここで用いたヘキサデカンは、ALDRICH CHEMICAL CO.から購入した純度99%、分子量226.45g/molのものをそのまま使用した。
【0029】
また、これを調べるにあたり、混合ベシクルの分散液は、CTABのモル分率XS =0.1の混合ベシクルを用いた。これは、XS =0.1で表面電荷が一定値である+40mVになったこと、CTABのモル分率が低いことから油の可溶化能にほとんど影響を与えないこと、また、CTABのモル分率が低いことでCTAB単独のエマルションと比べ、格段に生理的安全性が高いことなどの理由からである。
【0030】
図8は、XS =0.1の混合ベシクルにヘキサデカンを加えた場合の混合ベシクルの粒子径の変化を示す。混合ベシクルは、ヘキサデカンを加えると、ヘキサデカンがまずHCO−10の二分子膜中に可溶化するため膜が膨潤し、粒子径が徐々に増大する。XH >0.5になると、粒子径は急激に増大し、しかも粒子径に分布が現れてきた。
【0031】
HCO−10の炭化水素部位へのヘキサデカン(油成分)の可溶化は平衡に達するまでに時間がかかる。図9は経時変化によるHCO−10の可溶化量を示す。経日90日でどのヘキサデカンのモル分率でもほぼ一定となることから、経日90日での混合ベシクルのヘキサデカン可溶化量を限界可溶化量とみることができる。ここで、ベシクルへの可溶化量は、DSCによりヘキサデカンのピークからフリーのヘキサデカンの量を算出し、ヘキサデカンの全量よりフリーのヘキサデカンの量を差し引いて求めたものである。
【0032】
経日90日でのHCO−10に可溶化するヘキサデカンの量を見ると、図10に示されるように、XH >0.5で可溶化量は急激に増大した。これは、エマルションとなったヘキサデカンと接触した二分子膜のHCO−10分子の親水基部位にある(EO)基が脱水和して疎水化し、可溶化量が急激に増大したためであると考えられる。これを、添加したヘキサデカンをすべて可溶化したと仮定した場合の完全可溶化量と比較すると、図11に示されるようになり、これを図8に示される特性と考え合わせると、XH =0.5付近が混合ベシクルのもつ可溶化の最大値であると考えられる。
【0033】
これらの知見から、混合ベシクル分散液は、XH =0.5までの油成分はほぼ二分子膜中に可溶化し、飽和状態となる。そして、XH >0.5では過剰量の油は油滴となり、図12に模式的に示されるように、この油滴が可溶化ベシクルで安定されて三相エマルションを形成すると考えられる。
【0034】
図13に経日1日の可溶化ベシクル及び三相エマルション表面の表面電位を示す。どちらの状態でも多少のばらつきだけで大きな変化はなく、時間変化による影響も見られなかった。これらの知見から、ヘキサデカンは混合ベシクルの膜表面にはほとんど何も影響していないことがわかった。
【0035】
次に、上述したカチオン性可溶化ベシクル、又は、カチオン性エマルションのセルロース表面への吸着固定性について調べた。
【0036】
セルロースのような非イオン性の固体物質は、水中で流動すると通常その固体物表面と水との流動摩擦帯電により、固体表面はマイナスの電荷を持つ。セルロースのゼータ電位を測定した結果は、約−25mVであった。したがって、上記カチオン性可溶化ベシクル、又は、カチオン性エマルションは静電的相互作用により吸着固定することが予想される。そこで、ヘキサデカンの可溶化ベシクルとセルロース繊維とを水中で混合し、そのろ液の濁度(100%で完全に透過した状態を、0%で全く透過しない状態を示す)をUVにより測定した。
【0037】
図14において、その結果が示され、図中の実線は吸着後の濁度を示し、破線は、ヘキサデカンを可溶化したベシクル分散液単独の濁度を示している。尚、セルロースは乾燥重量1.57g一定、ベシクル分散液は30g一定、全量を31.57g一定(セルロース濃度4.97wt%)とし、ベシクル分散液中のHCO−10の重量濃度(XS =0.1およびXH =0.2は一定)を変化させて濁度を測定した。
【0038】
その結果、HCO−10の濃度が0.4wt%以上では吸着前後で濁度の差異は殆どなかった。これは、HCO−10濃度が高すぎ一定量のセルロース繊維が飽和吸着となり、過剰のHCO−10可溶化ベシクルが残存するためであると考えられる。HCO−10濃度が0.4wt%以下では、透過率に大きな差が出て、HCO−10濃度が0.15wt%で透過率がほぼ100%になった。また、このときの可溶化ベシクルの吸着前後のセルロース表面を走査顕微鏡で見ると、ベシクルが吸着していないセルロース表面は非常に滑らかだったが、可溶化ベシクルが吸着すると、100〜200nmの粒子が一面に吸着していることが確認できた。したがって、可溶化ベシクルのセルロース繊維への吸着メカニズムは、図15に示されるように、混合ベシクルの膜表面のプラス電荷とセルロースのマイナス電荷との静電的相互作用により、混合ベシクルとセルロースとが引き寄せられ、吸着していると考えられる。
【0039】
次に三相エマルション領域(XH >0.5)において、可溶化ベシクル領域と同様に吸着性を示すかを調べた。三相エマルション領域でも可溶化ベシクル領域と同様な方法を用い、セルロースは乾燥重量1.57g一定、分散液は30g一定、全量を31.57g一定(セルロース濃度4.97wt%)とし、分散液に対するHCO−10の重量濃度(XS =0.1およびXH =0.6は一定)を変化させて濁度を測定した。
【0040】
図16はその結果を示すものであり、この結果から、三相エマルションは可溶化ベシクルと同様にHCO−10濃度0.15wt%でほぼ完全に吸着することがわかった。よって、三相エマルションのセルロース繊維への吸着メカニズムも図17に示されるように、可溶化ベシクルと同様な吸着機構、即ち、エマルション表面のプラス電荷とセルロースのマイナス電荷と静電的相互作用により、エマルションとセルロースとが引き寄せられ、吸着していると考えられる。
【0041】
以上の知見より、HCO−10〜CTAB混合ベシクルが油で可溶化したベシクルまたは油滴が安定したエマルションの表面は、HCO−10の二分子膜層で覆われている。そのため、二分子膜の外側のHCO−10分子はセルロースなどの固体に接して吸着・固定する。また、二分子膜の内側の分子膜は内包の油相を安定化させている。したがって、図18に模式的に示されるように、通常のカチオン界面活性剤のO/W型エマルションで起こるような固体表面との静電的相互作用によるエマルションの崩壊は起こらず、固体表面に油相の油成分を安定して吸着固定することが可能となる。
【0042】
以上までは、HCO−10〜CTAB混合ベシクルの油成分にモデル物質(機能性油剤の一例)としてヘキサデカンを添加した場合であるが、このモデル物質に代替する機能性油剤の一例として、下記する(化5)に示すリモネン(1,8(9)−p−menthadiene) や(化6)に示すトコフェロール(5,7,8−trimethyltocopherol)を用いた場合について調べた。これらの場合においても、図19や図20に示されるように、それぞれの混合ベシクルの分散液で安定したゼータ電位を示しており、添加するリモネンモル分率(XLIMONEN )やトコフェロールモル分率(XVE)の変化に拘わらずゼータ電位はヘキサデカン分散液と同様に約40mV付近で一定であり、混合ベシクルの表面電位がほぼ一定に保持されることが確認された。したがって、乳化液としての吸着機能は損なわれていないことが推測される。
【0043】
【化5】
Figure 0004178397
【0044】
【化6】
Figure 0004178397
【0045】
図21にリモネンの可溶化領域(XLIMONEN =0.2)におけるセルロース繊維表面への吸着固定性を示し、図22にリモネンの三相エマルション領域(XLIMONEN =0.6)におけるセルロース繊維表面への吸着固定性を示す。また、図23にトコフェロールの可溶化領域(XVE=0.2)におけるセルロース繊維表面への吸着固定性を示し、図24にトコフェロールの三相エマルション領域(XVE=0.6)におけるセルロース繊維表面への吸着固定性を示す。
【0046】
いずれも、ヘキサデカンでの混合ベシクル油分散液と同様の吸着固定性を示し、セルロースに対してHCO−10が良好に吸着し、HCO−10濃度が0.15wt%でセルロースに完全に吸着することが確認できた。したがって、モデル物質であるヘキサデカンの代わりにリモネンやトコフェロールなどの他の機能性物質に代替させても安定した可溶性ベシクルや三相エマルションを形成することが可能となり、種々の薬剤の吸着固定化技術への利用が可能となる。
【0047】
尚、上述の例では、前記化3で示すポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体のうち、エチレンオキシド(EO)の平均付加モル数(E)が10である誘導体を用いたが、平均付加モル数(E)が6〜15の誘導体を用いても、同様な結果が得られることが確認されている。
【0048】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明に係るカチオン性の混合ベシクル、及び、これを用いたエマルションは、静電的相互作用による崩壊が起こりにくく、また良好な固体表面への吸着性を有する安定した可溶性ベシクルや三相乳化エマルションを形成するためなどに有用である。即ち、機能性油剤をセルロース繊維に安定して吸着させるために利用できるなど、固体表面への新たな吸着固定化技術を提供することが可能となり、さまざまな工業分野で応用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る混合ベシクルの一例を模式的に示した図である。
【図2】図2は、HCO−10とCTABとの混合ベシクルのDSCのピークチャートであり、CTABのモル分率XS を異ならせて測定した結果を示す。
【図3】図3は、HCO−10とCTABとの混合ベシクルのDSCのピークプロットを示す図である。
【図4】 4は、HCO−10とCTABとの混合ベシクルの粒子径とCTABのモル分率XS との関係を示す図である。
【図5】図5は、HCO−10とCTABとの混合ベシクルのCTABのモル分率XS と、ゼータ電位との関係を示す線図である。
【図6】図6は、本発明に係る粒子径の大きい単層構造の混合ベシクルの例を模式的に示した図である。
【図7】図7は、本発明に係る粒子径の大きい多層構造の混合ベシクルの例を模式的に示した図である。
【図8】図8は、XS =0.1の混合ベシクルにヘキサデカンを加えた場合の混合ベシクルの粒子径の変化を示す線図である。
【図9】図9は、経時変化によるHCO−10の可溶化量の変化を示す線図である。
【図10】図10は、経日90日後のHCO−10に可溶化するヘキサデカンの量とXH との関係を示す線図である。
【図11】図11は、完全可溶化量とXH との関係、及び、限界可溶化量とXH との関係を示す線図である。
【図12】図12は、三相エマルションを模式的に示した図である。
【図13】図13は、混合ベシクルにヘキサデカンを加えて1日経過した後の可溶化ベシクル及び三相エマルションの表面電位(ゼータ電位)とXH との関係を示す線図である。
【図14】図14は、ベシクル分散液中のHCO−10の重量濃度と分散液の濁度との関係を示す線図である。
【図15】図15は、可溶化ベシクルのセルロース繊維への吸着メカニズムを説明する図である。
【図16】図16は、三相エマルション領域における分散液中のHCO−10の重量濃度と分散液の濁度との関係を示す線図である。
【図17】図17は、三相エマルションのセルロース繊維への吸着メカニズムを説明する図である。
【図18】図18は、本発明に係るベシクル又はベシクルエマルションと従来の界面活性剤エマルションとの比較を説明する模式図である。
【図19】図19は、混合ベシクルにリモネンを加えた場合の可溶化ベシクル及び三相エマルションの表面電位(ゼータ電位)と添加するリモネンモル分率(XLIMONEN )との関係を示す図である。
【図20】図20は、混合ベシクルにトコフェロールを加えた場合の可溶化ベシクル及び三相エマルションの表面電位(ゼータ電位)と添加するトコフェロールモル分率(XVE)との関係を示す図である。
【図21】図21は、リモネン可溶化領域(XLIMONEN =0.2)におけるベシクル分散液中のHCO−10の重量濃度と分散液の濁度との関係を示す線図である。
【図22】図22は、リモネン三相エマルション領域(XLIMONEN =0.6)における分散液中のHCO−10の重量濃度と分散液の濁度との関係を示す線図である。
【図23】図23は、トコフェロール可溶化領域(XVE=0.2)におけるベシクル分散液中のHCO−10の重量濃度と分散液の濁度との関係を示す線図である。
【図24】図24は、トコフェロール三相エマルション領域(XVE=0.6)における分散液中のHCO−10の重量濃度と分散液の濁度との関係を示す線図である。
【図25】図25は、従来のカチオン界面活性剤により乳化したO/W型エマルションのセルロース繊維への吸着状態を説明する図である。

Claims (7)

  1. 下記の一般式(化1)で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体のうちエチレンオキシドの平均付加モル数(E)が6〜15である誘導体とカチオン界面活性剤とをベシクル形成成分とすることを特徴とする混合ベシクル。
    Figure 0004178397
  2. 前記カチオン界面活性剤のモル分率(X)が0.1≦X≦0.33の範囲であることを特徴とする請求項1記載の混合ベシクル。
  3. 下記一般式(化2)で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体のうちエチレンオキシドの平均付加モル数(E)が6〜15である誘導体とカチオン界面活性剤とを前記カチオン界面活性剤のモル分率(XS )が0.1≦XS ≦0.33となるように混合し、前記誘導体がベシクルを形成し得る濃度となるように蒸留水を加え、攪拌した後に所定温度で熟成させることを特徴とする混合ベシクルの調製方法。
    Figure 0004178397
  4. 前記カチオン界面活性剤として、アルキルトリメチルアンモニウム塩(炭素鎖長12〜20)が用いられることを特徴とする請求項3記載の混合ベシクルの調製方法。
  5. ヘキサデカンを添加した請求項1に記載の混合ベシクルで形成されることを特徴とするエマルション。
  6. 前記ヘキサデカンの代わりにリモネン、トコフェロール等の機能性油剤を添加したことを特徴とする請求項5記載のエマルション。
  7. 請求項1に記載の混合ベシクルの分散液に、油成分としてヘキサデカン、リモネン、トコフェロール等の機能性油剤を前記誘導体に対するモル分率を0.5以上にして添加させることを特徴とするエマルションの調製方法。
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