〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態である微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法について、図1〜図7を用いて以下に説明する。
図1は、本実施形態の微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を説明するための工程図である。また、図2(a)は、図1の成膜工程を経た状態の、樹脂基板(樹脂層)61上に凹部誘起層62が積層された製造途中の光記録媒体原盤51aの一部の断面構造図を示し、同図(b)は、図1の膜剥離工程を経た状態の、樹脂基板61に微細パターン(凹部)であるピット部及び/又は案内溝2が形成されている光記録媒体原盤51の一部の断面構造図である。
ここで、図2(a)中では、樹脂基板(樹脂層)61と凹部誘起層62とは隣接しているが、その間に他の薄い層、例えばAl5nm、が存在しても構わない。ただし、凹部形成という点においては、樹脂基板(樹脂層)61と凹部誘起層62とは隣接していることが好ましい。
また、後述する実施の形態2〜5における、樹脂層である樹脂基板或いは樹脂層と凹部誘起層と、または凹部誘起層と吸熱層と、または吸熱層と金属層とも実施形態中では隣接した図を用いているが、これも上記と同様で、隣接している必要はなく、それぞれの間に他の薄い層が存在しても構わない。ただし、凹部形成という点においては、樹脂層である樹脂基板或いは樹脂層と凹部誘起層と、または凹部誘起層と吸熱層と、または吸熱層と金属層とは、隣接していることが好ましい。
すなわち、特許請求の範囲において記述した「〜と〜を積層して」「〜と、〜と、〜とをこの順に積層して」という表現は、隣接させるという意味ではなく、その間に他の層が存在しても構わないことを意味する。ただし、凹部形成という点においては、それぞれは隣接していることが好ましい。
まず、S1の成膜工程において、樹脂層である樹脂基板61上に、誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層62を成膜する。これにより、樹脂基板61、凹部誘起層62よりなる積層体が形成され、この積層体が、製造途中の光記録媒体原盤51aである。
ここで樹脂基板61は、凹部誘起層62に適当な強度を付与しうるものであることが必要である。また、後続の記録工程において記録ビーム光(光ビーム)を凹部誘起層62側から入射する場合には、樹脂基板61を構成する材料の光学的特性は、特に限定されるものではなく、透明でも不透明でも良い。但し、記録工程において記録ビーム光を樹脂基板61側から入射する場合には、樹脂基板61を構成する材料の光学的特性は、光利用効率から考えて、記録ビーム光の波長で透明であり、記録ビーム光の入射を妨げないことが好ましい。
樹脂基板61を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、有機化合物が好ましく、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、熱可塑型ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエーテルニトリル)、PES(ポリエーテルサルホン)等の熱可塑性透明樹脂(プラスチック);熱硬化型ポリイミド、紫外線硬化型アクリル樹脂等の熱硬化性透明樹脂、およびそれらの組合せ等が挙げられる。これらのうちでも、特にポリオレフィン系樹脂がより好ましい。
樹脂基板61の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、0.1mm〜1.2mm程度が適当である。
樹脂基板61における内側の面(凹部誘起層62側の面)上には、記録情報に対応した凹凸形状のピットや案内用の溝があらかじめ形成されていてもよい。ピット及び溝は、両方とも形成されていてもよいし、いずれか一方のみが形成されていてもよい。
凹部誘起層62の材料は、上述したように誘電体或いは金属酸化物であるが、より具体的には、AlN、SiN等の誘電体やZnO、SnO2等の金属酸化物が挙げられる。これらのうちでも、ZnO(酸化亜鉛)が特に好ましい。凹部誘起層62は、使用する材料により、その膜厚を調整することができ、例えば、5nm〜800nm程度が適当であるが、ZnOを選択したときの層厚は、10nm〜500nmであることが好ましい。
次に、S2の記録工程にて、光源より出射された後、記録信号により強度変調された記録ビーム光を、対物レンズを通して、回転される上記光記録媒体原盤51a中の少なくとも凹部誘起層62に集光させる。このとき、記録ビーム光が照射された箇所の凹部誘起層62で熱が発生し、樹脂層である樹脂基板61上に記録信号に対応した潜像が形成される。ここで、集光された記録ビーム光は焦点深度(一般的にλ/(NA×NA)で表される。例えば、λ=408nm、NA=0.65の場合、焦点深度は約1μmで、λ=257nm、NA=0.9の場合、焦点深度は約300nmである。)を有しているので、焦点深度内に凹部誘起層62の一部が含まれている状態が、凹部誘起層62に集光させた状態である。
ここで、記録ビーム光の入射方向は、樹脂基板61側或いは凹部誘起層62側のどちらからでも構わない。
次に、S3の膜剥離工程にて、光記録媒体原盤51aにおける凹部誘起層62を樹脂基板61から剥離し、樹脂基板61のみとする。剥離の方法は、凹部誘起層62を選択的に完全に剥離することができればいかなる方法でもよい。例えば、樹脂基板61は不溶だが、凹部誘起層62は溶解する、NaOH等のアルカリ溶液やHNO3やH2SO4等の酸溶液に浸して剥離することができる。凹部誘起層62を剥離して樹脂基板61表面を露出させることで、先の記録工程にて形成された樹脂基板61のピット部及び/又は案内溝2が露出する。
このようにして、樹脂基板11に微細パターンであるピット部及び/又は案内溝2が形成され、これにて、光記録媒体原盤51を得ることができる。
本実施形態において、ピット部及び/又は案内溝2における案内溝の幅と深さ、及びプリピットの大きさ(幅)と深さとは、S2の記録工程における光記録媒体原盤51aの回転数や記録ビーム光のパワーによって最適化できる。また、プリピットの大きさと深さとは、記録信号のデューティーによっても最適化できる。
ここで、本実施形態の微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いた実施例を示す。
(実施例1)
まず、S1の成膜工程において、樹脂基板61としての膜厚0.5mm程度のポリオレフィン系樹脂基板上に、凹部誘起層62として膜厚100nm程度のZnO膜を、マグネトロンスパッタ法により成膜し、積層体である光記録媒体原盤51aを形成する。
ここで、樹脂基板61は、トラックピッチ0.8μm、溝幅約0.4μm、溝深さ約80nmの案内溝を有している。これは、本実施例のS2の記録工程において使用するレーザ記録装置の偏心精度が悪いため、上記案内溝を利用してトラッキングサーボをかけながら記録を行うためである。本実施例では、案内溝のうち、グルーブ(案内溝が形成されている面から見て凹側の溝)上に記録する。
次いで、S2の記録工程において、記録信号により強度変調された波長408nmの記録ビーム光を、開口数NAが0.65の対物レンズで、線速1.8m/sで回転される上記積層体51a中の凹部誘起層62であるZnO膜上に集光し、記録を行う。記録ビーム光は、凹部誘起層62側から入射する。
ここで、集光された記録ビーム光の光ビームスポット径は、0.8λ/NAの式を用いれば、およそ500nmである。また、周波数6.43MHz(線速1.8m/sでピットピッチ0.28μm)の矩形波を記録信号として記録する。矩形波のデューティーは35%とし、記録ビーム光のビームパワー強度は、矩形波のローレベルを0mW、ハイレベルを12.0mWとする。
次いで、S3の膜剥離工程において、上記光記録媒体原盤51aを濃度約15%のHNO3中に約1時間浸し、凹部誘起層62であるZnOをHNO3に溶解させることで、樹脂基板61から剥離する。これにより、グルーブ上に記録信号に対応した記録マーク(ピット)が形成される。この後、樹脂基板61を純水にて洗浄後、95℃で約1時間ベークする。
このようにして形成した光記録媒体原盤51におけるピットを形成した部位のAFM画像を、図3にそれぞれ示す。図3はピットピッチ0.28μmのピッチを形成した部位の平面画像である。図3中、黒色の円形状のものがピットであり、ストライプ状の灰色と黒色の各帯が、予め形成されているグルーブとランドに相当する。また、図4に図3の平面画像上の実線xyに沿った断面図を示す。
先にも述べたが、本実施例ではグルーブ上にピットを記録するが、記録する場所は、ランド(案内溝が形成されている面から見て凸側の溝)でも、プレーン部(案内溝がない所)でも構わないし、記録パターンは案内溝でも構わない。
図3、図4からわかるように、全体的に不均一ではあるものの、ピット長140nm以下、ピット深さ約20〜70nmのピットが形成されている。
以上のように、本実施形態における微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いれば、光ビーム径よりも小さなトラックピッチやピットピッチを有する微細パターンであるピット部及び/又は案内溝2を形成することができ、また、このようなピット部及び/又は案内溝2を有する光記録媒体原盤51を製造することができる。
そして、このようにして形成される上記ピット部及び/又は案内溝2は、特許文献1に開示されている方法にて製造される案内溝やプリピットよりも小さい。したがって、本実施形態における微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いることで、従来よりも小さなトラックピッチやピットピッチの案内溝やプリピットを形成することができ、このような案内溝やプリピットを有する光記録媒体原盤を製造することができる。
しかも、この場合、特許文献2に開示されている電子ビームを利用した方法のような高価な装置を用いることなく、現在利用可能で比較的安価である240〜700nmの光源を用いたレーザ記録装置で、小さな案内溝やプリピットを形成することができる。
図5に、S2の記録工程に用いることのできる既存のレーザ記録装置の一例を示す。図5において参照符号101が、240〜700nmの光源を用いたレーザ光源である。レーザ光源101より照射された記録ビーム光102は、2枚のミラー103−1・103−2を介して光変調器104に取り込まれ、記録信号に応じて強度変調される。変調後の記録ビーム光は、ミラー103−3及び対物レンズ105を介して、スピンドルモータ108にて回転駆動されているガラス基板107上に集光照射される。ガラス基板107の光照射面には、ポジ型フォトレジスト106が塗布されている。
S2の記録工程では、このようなレーザ記録装置を用い、ポジ型フォトレジスト106が塗布されたガラス基板107に代えて、上記光記録媒体原盤51aをスピンドルモータで回転駆動させながら記録ビーム光102を集光照射する。
また、図6に示すように、このようにして製造した光記録媒体原盤51を用いてNi電鋳を行えば、いわゆる転写により光記録媒体用スタンパ20を製造することができる。そして、さらに、図7に示すように、この光記録媒体用スタンパ20を用いて、ポリカーボネート樹脂等の樹脂材料を射出成形して光記録媒体基板22を製造し、この光記録媒体基板22上に記録層等の薄膜部24、並びに必要に応じてカバー層25等を形成することで、従来よりも小さなトラックピッチやピットピッチの案内溝やプリピットを有する光記録媒体26を製造することができる。図7において23は光記録媒体型である。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態である微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法について、図1、図5〜図14を用いて以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施の形態1で用いたと同じ機能を有する部材には同じ符号を付して説明を省略する。
図1は、本実施形態の微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を説明するための工程図である。また、図8(a)は、図1の成膜工程を経た状態の、樹脂基板(樹脂層)11上に中間層(凹部誘起層)12及び吸熱層13が順に積層された製造途中の光記録媒体原盤1aの一部の断面構造図を示し、同図(b)は、図1の膜剥離工程を経た状態の、樹脂基板11に微細パターン(凹部)であるピット部及び/又は案内溝2が形成されている光記録媒体原盤1の一部の断面構造図である。
まず、S1の成膜工程において、樹脂層である樹脂基板11上に、誘電体或いは金属酸化物からなる中間層12を成膜し、その上に吸熱層13を成膜する。これにより、樹脂基板11、中間層12、及び吸熱層13よりなる積層体が形成され、この積層体が、製造途中の光記録媒体原盤1aである。
ここで樹脂基板11は、前述の樹脂基板61と同様、中間層12、吸熱層13に適当な強度を付与しうるものであることが必要である。また、後続の記録工程において記録ビーム光を吸熱層13側から入射する場合には、樹脂基板11を構成する材料の光学的特性は、特に限定されるものではなく、透明でも不透明でも良い。但し、記録工程において記録ビーム光を樹脂基板11側から入射する場合には、樹脂基板11を構成する材料の光学的特性は、光利用効率から考えて、記録ビーム光の波長で透明であり、記録ビーム光の入射を妨げないことが好ましい。
樹脂基板11を構成する材料としても、前述の樹脂基板61と同様、特に限定されるものではないが、有機化合物が好ましく、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、熱可塑型ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエーテルニトリル)、PES(ポリエーテルサルホン)等の熱可塑性透明樹脂(プラスチック);熱硬化型ポリイミド、紫外線硬化型アクリル樹脂等の熱硬化性透明樹脂、およびそれらの組合せ等が挙げられる。これらのうちでも、特にポリオレフィン系樹脂が好ましい。
樹脂基板11の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、0.1mm〜1.2mm程度が適当である。
樹脂基板11における内側の面(中間層12側の面)上には、記録情報に対応した凹凸形状のピットや案内用の溝があらかじめ形成されていてもよい。ピット及び溝は、両方とも形成されていてもよいし、いずれか一方のみが形成されていてもよい。
中間層12を構成する材料の光学的特性は、記録工程において記録ビーム光を吸熱層13側から入射する場合には、特に限定されるものではなく、記録ビーム光の波長で透明でも不透明でも良い。但し、記録工程において記録ビーム光を樹脂基板11側から入射する場合には、上記樹脂基板11と同様に、光利用効率から考えて、記録ビーム光の波長で透明であり、記録ビーム光の入射を妨げないことが好ましい。
中間層12の材料は、上述したように誘電体或いは金属酸化物であるが、前述の凹部誘起層62と同様、より具体的には、AlN、SiN等の誘電体やZnO、SnO2等の金属酸化物が挙げられる。これらのうちでも、ZnO(酸化亜鉛)が特に好ましい。中間層12は、使用する材料により、その膜厚を調整することができ、例えば、5nm〜800nm程度が適当であるが、ZnOを選択したときの層厚は、10nm〜500nmであることが好ましい。
吸熱層13は、記録ビーム光を吸収し、熱に変換する材料が好ましい。具体的には、Si膜、Ge膜、AgInSbTe膜・GeSbTe膜等の相変化膜、TbFeCo膜・DyFeCo膜・GdFeCo膜等の光磁気膜等およびそれらの合金膜が挙げられ、特にSi膜であることが最も好ましい。
吸熱層13は、使用する材料により、その膜厚を調整することができ、例えば3nm〜300nm程度が適当であるが、吸熱層13としてSiを選択したときの層厚は、5nm〜100nmであることが好ましい。
次に、S2の記録工程にて、光源より出射された後、記録信号により強度変調された記録ビーム光を、対物レンズを通して、回転される上記光記録媒体原盤1a中の少なくとも吸熱層13に集光させる。このとき、記録ビーム光が照射された箇所の吸熱層13で熱が発生し、樹脂基板11上に記録信号に対応した潜像が形成される。ここで、集光された記録ビーム光は焦点深度(一般的にλ/(NA×NA)で表される。例えば、λ=408nm、NA=0.65の場合、焦点深度は約1μmで、λ=257nm、NA=0.9の場合、焦点深度は約300nmである。)を有しているので、焦点深度内に吸熱層13の一部が含まれている状態が、吸熱層13に集光させた状態である。
ここで、記録ビーム光の入射方向は、樹脂基板11側或いは吸熱層13側のどちらからでも構わないが、好ましくは、樹脂基板11側からである。その理由は、樹脂基板11側から記録ビーム光が入射した場合、吸熱層13で発生した熱が中間層12に伝わり易く、また記録ビーム光が中間層12中を透過することによる中間層12自身の吸収による発熱があるため、吸熱層13側から入射した場合に比して、膜剥離後のピット部及び/又は案内溝2の形状均一性が良く、かつ低パワーで記録できるというメリットがあるためである。また、記録ビーム光は、吸熱層13で吸収される必要があるため、光源の波長は吸熱層13で吸熱が起こる範囲であることが好ましい。
次に、S3の膜剥離工程にて、光記録媒体原盤1aにおける中間層12と吸熱層13とを樹脂基板11から剥離し、樹脂基板11のみとする。剥離の方法は、中間層12と吸熱層13を選択的に完全に剥離することができればいかなる方法でもよい。例えば、樹脂基板11は不溶だが、中間層12と吸熱層13は溶解する、NaOH等のアルカリ溶液やHNO3やH2SO4等の酸溶液に浸して剥離することができる。また、何も中間層12と吸熱層13との両方を溶解する必要はなく、樹脂基板11と接する中間層12を樹脂基板11から剥離できれば、中間層12上にある吸熱層13は同時に剥離されるので、少なくとも中間層12を樹脂基板11から剥離できればよい。中間層12と吸熱層13を剥離して樹脂基板11表面を露出させることで、先の記録工程にて形成された樹脂基板11のピット部及び/又は案内溝2が露出する。
このようにして、樹脂基板11に微細パターンであるピット部及び/又は案内溝2が形成され、これにて、光記録媒体原盤1を得ることができる。
前述した実施の形態1の場合、S2の記録工程において、記録ビーム光を照射した部分の凹部誘起層62での熱の発生効率が悪く、形状の整っていないピット部及び/又は案内溝2が形成される。
これに対し、本実施形態では、S1の成膜工程において、凹部誘起層である中間層12の上にさらに吸熱層13を成膜するため、この吸熱層13が記録ビーム光照射による発熱効率を改善し、中間層12により多くの熱が伝わるため、ピット部及び/又は案内溝2の形状より整ったものとなる。その結果、再生信号のジッターを小さくすることができ、その結果、再生信号のエラーレートを小さくすることができる。
なお、本実施形態においても、ピット部及び/又は案内溝2における案内溝の幅と深さ、及びプリピットの大きさ(幅)と深さとは、S2の記録工程における光記録媒体原盤1aの回転数や記録ビーム光のパワーによって最適化できる。また、プリピットの大きさと深さとは、記録信号のデューティーによっても最適化できる。
ここで、本実施形態の微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いた実施例を2例示す。
(実施例2)
まず、S1の成膜工程において、樹脂基板11としての膜厚0.5mm程度のポリオレフィン系樹脂基板上に、中間層12として膜厚100nm程度のZnO膜、及び吸熱層13として膜厚30nm程度のSi膜を順次、マグネトロンスパッタ法により成膜し、積層体である光記録媒体原盤1aを形成する。
ここで、樹脂基板11は、トラックピッチ0.8μm、溝幅約0.4μm、溝深さ約80nmの案内溝を有している。これは、本実施例のS2の記録工程において使用するレーザ記録装置の偏心精度が悪いため、上記案内溝を利用してトラッキングサーボをかけながら記録を行うためである。本実施例では、案内溝のうち、ランド(案内溝が形成されている面から見て凸側の溝)上に記録する。
次いで、S2の記録工程において、記録信号により強度変調された波長408nmの記録ビーム光を、開口数NAが0.65の対物レンズで、線速1.8m/sで回転される上記積層体中の吸熱層13であるSi膜上に集光し、記録を行う。記録ビーム光は、吸熱層13側から入射する。
ここで、集光された記録ビーム光の光ビームスポット径は、0.8λ/NAの式を用いれば、およそ500nmである。また、周波数2.25MHz(線速1.8m/sでピットピッチ0.8μm)及び9.00MHz(線速1.8m/sでピットピッチ0.2μm)の2種の矩形波を記録信号として記録する。矩形波のデューティーは35%とし、記録ビーム光のビームパワー強度は、矩形波のローレベルを0mW、矩形波のハイレベルを周波数2.25MHzのとき11.5mW、周波数9.00MHzのとき12.0mWとする。
次いで、S3の膜剥離工程において、上記光記録媒体原盤1aを濃度約15%のHNO3中に約1時間浸し、中間層12であるZnOと吸熱層13であるSiをHNO3に溶解させることで、樹脂基板11から剥離する。これにより、ランド上に記録信号に対応した記録マーク(ピット)が形成される。この後、樹脂基板11を純水にて洗浄後、95℃で約1時間ベークする。
このようにして形成した光記録媒体原盤1における2種のピットピッチのピットを形成した部位のAFM画像を、図9、図10にそれぞれ示す。このうち、図9がピットピッチ0.8μmのピッチを形成した部位の平面画像であり、図10がピットピッチ0.2μmのピットを形成した部位の平面画像である。図9、図10中、黒色の円形状のものがピットであり、ストライプ状の黒色と灰色の各帯が、予め形成されているグルーブとランドに相当する。また、図11に図9の平面画像上の実線xyに沿った断面図を、図12に図10の平面画像上の実線xyに沿った断面図をそれぞれ示す。
先にも述べたが、本実施例ではランド上にピットを記録するが、記録する場所は、グルーブ(案内溝が形成されている面から見て凹側の溝)でも、プレーン部(案内溝がない所)でも構わないし、記録パターンは案内溝でも構わない。
図9、図11からわかるように、ピットピッチ0.8μmでは、ピット長約400nm、ピット深さ約100nmのピットがほぼ均一に形成されている。また、図10、図12からわかるように、ピットピッチ0.2μmでは、全体的に不均一ではあるものの、ピット長200nm以下、ピット深さ約30〜150nmのピットが形成されている。
(実施例3)
実施例2においては、S2の記録工程における記録ビーム光の入射方向を、吸熱層13側からとしたが、本実施例では、樹脂基板11側からとする。また、記録ビーム光のビームパワー強度は、矩形波のハイレベルを周波数2.25MHzのとき6.5mW、周波数9.00MHzのとき6.0mWとする。S2の記録工程における記録ビーム光の入射方向とレーザパワー強度とが異なる以外は、実施例2と全く同様である。
このようにして形成した光記録媒体原盤1における2種のピットピッチのピットのうち、実施例2に比して均一性の改善効果の大きい、ピットピッチ0.2μmのピットした部位のAFM画像を図13に示す。図13でも、黒色の円形状のものがピットであり、ストライプ状の黒色と灰色の各帯が、予め形成されているグルーブとランドに相当する。また、図14に図13の平面画像上の実線xyに沿った断面図を示す。
なお、本実施例でも、ランド上にピットを記録するが、記録する場所は、グルーブ(案内溝が形成されている面から見て凹側の溝)でも、プレーン部(案内溝がない所)でも構わないし、記録パターンはピットでも案内溝でも構わない。
図10と図13、図12と図14とをそれぞれ比較するとよくわかるように、ピットピッチ0.2μmでは、実施例2の場合、ピット長もピット深さも不均一であったが、本実施例ではほぼ均一なピット長約110nm、ピット深さ約90nmのピットがより低パワーで形成されている。
本実施例にて、実施例2よりピットが均一に形成される理由は以下の通りであると思われる。実施例2では、S2の記録工程における記録ビーム光の入射方向を吸熱層13側からとしているため、吸熱層13で発生する熱が中間層12に伝わるためには、吸熱層13の膜厚分だけ伝わりにくく、伝わる熱のばらつきも大きいと思われる。それに対し、本実施例では、樹脂基板11側より記録ビーム光を入射しているため、吸熱層13で発生する熱が中間層12に伝わり易く、伝わる熱のばらつきも小さいと思われる。そのため、本実施例では均一なピットが形成されていると思われる。これにより、再生信号のジッターを小さくすることができ、実施例1よりも再生信号のエラーレートを小さくすることができる。
また、本実施例にて、実施例2より低パワーでピットが形成される理由は以下の通りであると思われる。実施例2では、S2の記録工程における記録ビーム光の入射方向を吸熱層13側からとしているため、吸熱層13で発生する熱が中間層12に伝わりにくいと思われる。それに対し、本実施例では、樹脂基板11側より記録ビーム光を入射しているため、吸熱層13で発生する熱が中間層12に伝わり易いと思われる。さらに、本実施例では、樹脂基板11側より記録ビーム光を入射しているので、記録ビーム光が中間層12を透過するため、中間層12自身で吸熱され発生する熱があると思われる。その結果、本実施例では、実施例2より低パワーで実施例2と同程度の熱が中間層12にかかるため、より低パワーでピットが形成されていると思われる。
以上のように、本実施形態における微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いれば、光ビーム径よりも小さなトラックピッチやピットピッチを有する微細パターンであるピット部及び/又は案内溝2を形成することができ、また、このようなピット部及び/又は案内溝2を有する光記録媒体原盤1を製造することができる。
そして、このようにして形成される上記ピット部及び/又は案内溝2は、特許文献1に開示されている方法にて製造される案内溝やプリピットよりも小さい。したがって、本実施形態における微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いることで、実施の形態1と同様に、従来よりも小さなトラックピッチやピットピッチの案内溝やプリピットを形成することができ、このような案内溝やプリピットを有する光記録媒体原盤を製造することができる。
また、この場合、特許文献2に開示されている電子ビームを利用した方法のような高価な装置を用いることなく、前述した図5に示すような、現在利用可能で比較的安価である240〜700nm、或いは、350〜450nmの光源を用いたレーザ記録装置を用いて、小さな案内溝やプリピットを形成することができる。
しかも、本実施形態における微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いれば、実施の形態1よりも、ピット部及び/又は案内溝2の形状を整ったものにできるので、再生信号のジッターを小さくすることができ、再生信号のエラーレートを小さくすることができる。
そして、図6に示すように、このようにして製造した光記録媒体原盤1を用いてNi電鋳を行えば、いわゆる転写により光記録媒体用スタンパ20を製造することができる。そして、さらに、図7に示すように、この光記録媒体用スタンパ20を用いて、ポリカーボネート樹脂等の樹脂材料を射出成形して光記録媒体基板22を製造し、この光記録媒体基板22上に記録層等の薄膜部24、並びに必要に応じてカバー層25等を形成することで、従来よりも小さなトラックピッチやピットピッチの案内溝やプリピットを有する光記録媒体26を製造することができる。図7において23は光記録媒体型である。
〔実施の形態3〕
本発明のその他の実施の形態である微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法について、図1、図15〜図17を用いて以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施の形態1で用いたと同じ機能を有する部材には同じ符号を付して説明を省略する。
図1は、本実施形態の微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を説明するための工程図である。また、図15(a)は、図1の成膜工程を経た状態の、樹脂基板(樹脂層)11上に中間層(凹部誘起層)12、吸熱層13、及び金属層14が順に積層された、製造途中の光記録媒体原盤3aの一部の断面構造図を示し、同図(b)は、図1の膜剥離工程を経た状態の、樹脂基板11にピット部及び/又は案内溝2が形成されている光記録媒体原盤3の一部の断面構造図である。
まず、S1の成膜工程において、樹脂基板11上に中間層12を成膜し、その上に吸熱層13を成膜する。そして、本実施形態では、さらにその上に金属層14を成膜して、光記録媒体原盤3aを作製する。
金属層14は、金属で形成されていれば特にその材料を限定されるものではないが、高反射率を有する金属膜により形成されていることが好ましい。高反射率を有する金属膜としては、具体的には、Al膜、Au膜、Ag膜、及び、それらの合金の膜が挙げられる。金属層14の層厚は、特に限定されるものではなく、所望の層厚に調整することができ、例えば、10nm〜100nm程度が挙げられる。
次いで、S2の記録工程にて、光源より出射された後記録信号により強度変調された記録ビーム光を、対物レンズを通して、回転される光記録媒体原盤3a中の少なくとも吸熱層13に集光させる。記録ビーム光の入射方向は、実施の形態1、2と異なり、樹脂基板11側からのみである。これは、本実施形態では金属層14が設けられているため、記録ビーム光を金属層14側から入射すると、金属層14で光が反射されてしまい、吸熱層13に光が届かず熱が発生しないからである。ここで、集光された記録ビーム光は焦点深度(一般的にλ/(NA×NA)で表される。例えば、λ=408nm、NA=0.65の場合、焦点深度は約1μmで、λ=257nm、NA=0.9の場合、焦点深度は約300nmである。)を有しているので、焦点深度内に吸熱層13の一部が含まれている状態が、吸熱層13に集光させた状態である。
次に、S3の膜剥離工程にて、中間層12、吸熱層13及び金属層14を樹脂基板11から剥離する。剥離の方法は、中間層12、吸熱層13及び金属層14を完全に剥離することができればいかなる方法でもよい。例えば、樹脂基板11は不溶だが、中間層12、吸熱層13及び金属層14は溶解する、NaOH等のアルカリ溶液やHNO3やH2SO4等の酸溶液に浸して剥離することができる。ここでも、何も中間層12と吸熱層13と金属層14との全てを溶解する必要はなく、樹脂基板11に接する中間層12を樹脂基板11から剥離できれば、中間層12上にある吸熱層13及び金属層14は同時に剥離されるので、少なくとも中間層12を樹脂基板11から剥離できればよい。中間層12、吸熱層13及び金属層14を剥離して樹脂基板11表面を露出させることで、先の記録工程にて形成された樹脂基板11のピット部及び/又は案内溝2が露出する。
このようにして、樹脂基板11に微細パターンであるピット部及び/又は案内溝2が形成され、これにて、光記録媒体原盤3を得ることができる。
前述した実施の形態2の場合、S2の記録工程において、記録ビーム光を照射した部分の吸熱層13が破裂することがあり、破裂が起こるとピット部及び/又は案内溝2の形状均一性が悪くなる。
これに対し、本実施形態では、S1の成膜工程において、吸熱層13の上にさらに金属層14を成膜するため、この金属層14が吸熱層13の破裂しようとする力を押さえ込んで、破裂を防止することができ、ピット部及び/又は案内溝2の形状均一性がより良くなる。その結果、再生信号のジッターを小さくすることができ、その結果、再生信号のエラーレートを小さくすることができる。
なお、本実施形態においても、ピット部及び/又は案内溝2における案内溝の幅と深さ、及びプリピットの大きさ(幅)と深さとは、S2の記録工程における光記録媒体原盤4aの回転数や記録ビーム光のパワーによって最適化できる。また、プリピットの大きさと深さとは、記録信号のデューティーによっても最適化できる。
ここで、本実施形態の微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いた実施例を示す。
(実施例4)
まず、S1の成膜工程において、樹脂基板11としての膜厚0.5mm程度のポリオレフィン系樹脂基板上に、凹部誘起層とである中間層12として膜厚100nm程度のZnO膜、及び吸熱層13として膜厚30nm程度のSi膜、及び金属層14として膜厚20nm程度のAl膜を順次、マグネトロンスパッタ法により成膜する。
ここで、樹脂基板11は、トラックピッチ0.8μm、溝幅約0.4μm、溝深さ約80nmの案内溝を有している。本実施例のS2の記録工程において使用するレーザ記録装置の偏心精度が悪いため、上記案内溝を利用してトラッキングサーボをかけながら記録を行うためである。本実施例では、案内溝のうち、ランド(案内溝が形成されている面から見て凸側の溝)上に記録する。
次いで、S2の記録工程において、記録信号により強度変調された波長408nmの記録ビーム光を、開口数NAが0.65の対物レンズで、線速1.8m/sで回転される光記録媒体原盤4a中の吸熱層13であるSi膜及び/又は金属層14であるAl膜上に集光し、記録を行う。記録ビーム光は、樹脂基板11側から入射する。
ここで、集光された記録ビーム光の光ビームスポット径は、0.8λ/NAの式を用いれば、およそ500nmである。また、周波数2.25MHz(線速1.8m/sでピットピッチ0.8μm)及び9.00MHz(線速1.8m/sでピットピッチ0.2μm)の2種の矩形波を記録信号として記録する。矩形波のデューティーは35%とし、記録ビーム光のビームパワー強度は、矩形波のローレベルを0mW、矩形波のハイレベルを周波数2.25MHzのとき8.8mW、周波数9.00MHzのとき10.2mWとする。
次いで、S3の膜剥離工程において、記録した光記録媒体原盤3aを濃度約15%のHNO3中に約1時間浸し、中間層12であるZnO、吸熱層13であるSi及び金属層14であるAlをHNO3に溶解させることで、樹脂基板11から剥離する。これにより、ランド上に記録信号に対応した記録マーク(ピット)が形成される。この後、樹脂基板11を純水にて洗浄後、95℃で約1時間ベークをする。
このようにして形成した光記録媒体原盤3における2種のピットピッチのピットのうち、実施例3と同様、ピットピッチ0.2μmのピットした部位のAFM画像を図16に示す。図16でも、黒色の円形状のものがピットであり、ストライプ状の黒色と灰色の各帯が、予め形成されているグルーブとランドに相当する。また、図17に図16の平面画像上の実線xyに沿った断面図を示す。
なお、本実施例でも、ランド上にピットを記録するが、記録する場所は、グルーブ(案内溝が形成されている面から見て凹側の溝)でも、プレーン部(案内溝がない所)でも構わないし、記録パターンはピットでも案内溝でも構わない。
図16、図17からわかるように、ピットピッチ0.2μmでは、ピット長約110nm、ピット深さ約60nmのピットがより均一に形成される。S2の記録工程において、吸熱層13であるSi膜の破裂を金属層14であるAl膜がSi膜を押さえることで防ぎ、実施例3よりもさらに均一性の高いピットが得られている。
以上のように、本実施形態における微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いれば、実施の形態1、2と同様に、従来よりも小さなトラックピッチやピットピッチの案内溝やプリピットを形成することができ、このような案内溝やプリピットを有する光記録媒体原盤を製造することができる。
また、実施の形態1、2と同様に、特許文献2に開示されている電子ビームを利用した方法のような高価な装置を用いることなく、図5に示したような、現在利用可能で比較的安価である240〜700nm、或いは、350〜450nmの光源を用いたレーザ記録装置を用いて、小さな案内溝やプリピットを形成することができる。
しかも、本実施形態における微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いれば、実施の形態1、2よりも、ピット部及び/又は案内溝2の形状均一性を良くできるので、再生信号のジッターを小さくすることができ、再生信号のエラーレートを小さくすることができる。
そして、実施の形態1、2と同様に、このようにして製造した光記録媒体原盤3を用いてNi電鋳を行えば、いわゆる転写により光記録媒体用スタンパを製造することができる。また、さらにこのようにして製造した光記録媒体用スタンパを用いて光記録媒体基板を製造し、その上に記録層等の薄膜部等を形成することで、従来よりも小さなトラックピッチやピットピッチの案内溝やプリピットを有し、再生信号のエラーレートの小さい光記録媒体を製造することができる。
〔実施の形態4〕
本発明の他の実施の形態である微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法について、図18〜図21を用いて以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施の形態1で用いたと同じ機能を有する部材には同じ符号を付して説明を省略する。
図18は、本実施形態の微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を説明するための工程図である。また、図19(a)は、図18の成膜工程を経た状態の、ガラス原盤(原盤用基板、基板)15上に、樹脂層53及び凹部誘起層62がこの順に積層された、製造途中の光記録媒体原盤52aの一部の断面構造図を示し、同図(b)は、図18の膜剥離工程を経た状態の、ガラス原盤15上の樹脂層53にピット部及び/又は案内溝2が形成されている光記録媒体原盤52bの一部の断面構造図である。同図(c)は、図18のエッチング工程を経た状態の、ガラス原盤15にまで及んでピット部及び/又は案内溝2が形成されている状態の光記録媒体原盤52cの一部の断面構造図を示し、同図(d)は、図18の樹脂層剥離(樹脂層剥離)工程を経た状態の、ガラス原盤15上にピット部及び/又は案内溝2が形成されている光記録媒体原盤52の一部の断面構造図を示している。
まず、S11の成膜工程において、ガラス原盤15上に、樹脂層53を成膜し、その上に凹部誘起層62を成膜することで、ガラス原盤15上に積層体を形成し、光記録媒体原盤52aとする。
ガラス原盤15は、その表面の平坦性が良いことが好ましい。ガラス以外の原盤としては、ダイヤモンド、サファイアなどが考えられるが、ガラスがコスト、加工のし易さという点で好ましい。
ガラス原盤15を構成する材料の光学的特性は、記録工程において記録ビーム光を凹部誘起層62側から入射する場合には、特に限定されるものではなく、透明でも不透明でも良い。但し、記録工程において記録ビーム光をガラス原盤15側から入射する場合には、光利用効率から考えて、ガラス原盤15は、記録ビーム光の波長で透明であり、記録ビーム光の入射を妨げないことが好ましい。
ガラス原盤15の厚みは、記録工程において記録ビーム光を凹部誘起層62側から入射する場合には、記録工程において記録時の回転中にガラス原盤の平坦性が保たれる厚みであることが必要であり、例えば、0.5mm以上が適当である。これに対し、記録工程において記録ビーム光をガラス原盤15側から入射する場合には、ガラス原盤15の厚みは、上記制限に加え、記録時に記録ビーム光を少なくとも凹部誘起層62に集光させることができる厚みであることが必要である。例えば、レーザ記録装置の開口数NAが大きくなるほど、ガラス原盤15の厚みが薄くなることが必要である。
また、ガラス原盤15における内側の面(樹脂層53側の面)上には、記録情報に対応した凹凸形状のピットや案内用の溝があらかじめ形成されていてもよい。ピット及び溝は、両方とも形成されていてもよいし、いずれか一方のみが形成されていてもよい。
樹脂層53を構成する材料の光学的特性は、実施の形態1の樹脂基板61と同様に、特に限定されるものではなく、透明でも不透明でも良い。
樹脂層53を構成する材料としても、実施の形態1の樹脂基板61と同様に、特に限定されるものではないが、有機化合物が好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、熱可塑型ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエーテルニトリル)、PES(ポリエーテルサルホン)等の熱可塑性透明樹脂(プラスチック);熱硬化型ポリイミド、紫外線硬化型アクリル樹脂等の熱硬化性透明樹脂、およびそれらの組合せ等が挙げられる。
また、実施の形態1の樹脂基板61では、ガラス原盤15を具備しないため、樹脂基板61には適当な強度を付与することが必要であり、そのため、樹脂層である樹脂基板61の材料としても強度を付与し得るものを選択する必要があった。しかしながら、本実施形態では、ガラス原盤15を具備することで強度上の制限を受けないため、樹脂層53の材料としては、フォトレジスト等を用いることができ、特にフォトレジスト及びポリオレフィン系樹脂が好ましい。ただし、ここでいうフォトレジストは樹脂に含まれるものとする。
また、樹脂層53の厚みとしても、ガラス原盤15を具備しない構成では、強度を付与し得る程度の厚みが必要であったが、ここではそのような制限も受けない。したがって、樹脂層53の厚みとしては、後のドライエッチング工程にて樹脂層53に形成されたピット部及び/又は案内溝2をガラス原盤15に転写する必要がある分を考慮した、例えば、0.02〜3.0μm程度が適当である。
次いで、S12の記録工程にて、光源より出射された後記録信号により強度変調された記録ビーム光を、対物レンズを通して、回転される光記録媒体原盤52a中の少なくとも凹部誘起層62に集光させる。このとき、記録ビーム光が照射された箇所の凹部誘起層62で熱が発生し、樹脂層53上に記録信号に対応したパターンが形成される。ここで、集光された記録ビーム光は焦点深度(一般的にλ/(NA×NA)で表される。例えば、λ=408nm、NA=0.65の場合、焦点深度は約1μmで、λ=257nm、NA=0.9の場合、焦点深度は約300nmである。)を有しているので、焦点深度内に凹部誘起層62の一部が含まれている状態が、凹部誘起層62に集光させた状態である。
記録ビーム光の入射方向は、ガラス原盤15側からでも、凹部誘起層62側からでもどちらからでも構わない。
次に、S13の膜剥離工程にて、凹部誘起層62を、ガラス原盤15及び樹脂層53から剥離する。剥離の方法は、凹部誘起層62を選択的に完全に剥離することができればいかなる方法でもよいが、例えば、ガラス原盤15及び樹脂層53は不溶だが、凹部誘起層62は溶解する、NaOH等のアルカリ溶液やHNO3やH2SO4等の酸溶液に浸して剥離することができる。凹部誘起層62を剥離して樹脂層53表面を露出させることで、先の記録工程にて形成された樹脂層53のピット部及び/又は案内溝2が露出する。このようにして、ガラス原盤15上の樹脂層53に微細パターンであるピット部及び/又は案内溝2が形成された、光記録媒体原盤52bを得ることができる。
本実施形態では、S13の膜剥離工程後に、引き続きS14のエッチング工程を行うが、このS13の剥離工程までを経た状態の光記録媒体原盤52bを、実施の形態1と同様に、光記録媒体原盤として扱うこともできる。この場合、樹脂層53の下にガラス原盤15が存在するため、記録時の光記録媒体原盤52aの回転において、樹脂基板61の場合よりもふらつきのない安定した回転が可能となる。その結果、実施の形態1よりもさらに均一な微細パターンからなるピット部及び/又は案内溝2の形成が可能となる。
S14のエッチング工程においては、光記録媒体原盤52bに対してエッチングを行うことで、樹脂層53に形成されたピット部及び/又は案内溝2をガラス原盤15上に転写する。ここでのエッチングは、ピット部及び/又は案内溝2の大きさを保持すべく深さ方向にのみ行いたいため、異方性のあるドライエッチング法が好ましい。最終的な光記録媒体原盤52c或いは光記録媒体原盤52としてのピット部及び/又は案内溝2の深さは、この工程におけるエッチングの条件によって決まるため、所望の深さに対応する条件でエッチングを行う。
このようにして、ガラス原盤15上に微細パターンであるピット部及び/又は案内溝2が形成された、光記録媒体原盤52cを得ることができる。なお、ここでは、S14のエッチング工程において樹脂層53を残存させ、S15の樹脂層剥離工程を引き続き行うこととしているが、このS4のエッチング工程にて樹脂層53を完全に無くしてしまい、樹脂層53を完全に除去した状態の光記録媒体原盤を、実施の形態1と同様に、光記録媒体原盤として扱うことができる。また、樹脂層53が残存している状態の光記録媒体原盤52cを、実施の形態1と同様に、光記録媒体原盤として扱うこともできる。何れのものも、ガラス原盤15にピット部及び/又は案内溝2が存在するため、温度や湿度のような環境変化に対して安定性の高い微細パターンの形成が可能となる。
S15の樹脂層剥離工程においては、S14のエッチング工程後にガラス原盤15上に残存した樹脂層53を剥離する。樹脂層53の剥離方法については、樹脂層53のみを選択的に除去できる方法であれば特に限定はないが、例えば、ガラス原盤15は不溶で、樹脂層53は溶解するNaOH等のアルカリ溶液やアセトン等の有機溶剤に浸して剥離することができる。このようにして、ガラス原盤15上に微細パターンであるピット部及び/又は案内溝2が形成された、光記録媒体原盤52を得ることができる。
エッチング工程で樹脂層53を完全に剥離する或いは残存させた状態で処理を終える手順に比べて、工定数は増加するが、このように、樹脂層剥離工程を別途設ける方が、ガラス原盤15が元来有している高い平坦性をそのまま維持することができ、より平坦性の高い微細パターンであるピット部及び/又は案内溝2の形成が可能となる。これは、エッチング工程で樹脂層53を剥離したものは、エッチングにてガラス原盤15の表面が損傷を受けてしまい、元来有する平坦性が損なわれてしまうためである。
ここで、本実施形態の微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いた実施例を示す。
(実施例5)
まず、S11の成膜工程において、膜厚1.2mm程度のガラス原盤15上に、樹脂層53として膜厚40nm程度のフォトレジスト膜をスピンコート法により塗布し、その後、凹部誘起層62として膜厚30nm程度のZnO膜をマグネトロンスパッタ法により成膜し、積層体である光記録媒体原盤52aを形成する。
次いで、S12の記録工程において、記録信号により強度変調された波長257nmの記録ビーム光を、開口数NAが0.9の対物レンズで、線速1.0m/sで回転される上記光記録媒体原盤52a中の凹部誘起層62であるZnO膜上に集光し、記録を行う。記録ビーム光は、凹部誘起層62側から入射する。
ここで、集光された記録ビーム光の光ビームスポット径は、0.8λ/NAの式を用いれば、およそ230nmである。また、周波数3.57MHz(線速1.0m/sでピットピッチ0.28μm)の矩形波を記録信号として記録する。矩形波のデューティーは35%とし、記録ビーム光のビームパワー強度は、上記光記録媒体原盤52a上で、矩形波のローレベルを0mW、矩形波のハイレベルを1.6mWとする。
次いで、S13の膜剥離工程において、上記光記録媒体原盤52aを濃度約15%のHNO3中に約2分浸し、凹部誘起層62であるZnOをHNO3に溶解させることで、樹脂層53であるフォトレジストから剥離する。これにより、ガラス原盤15上の樹脂層53に微細パターンである記録信号に対応した記録マーク(ピット)が形成され、光記録媒体原盤52bが作製される。この後、光記録媒体原盤52bを純水にて洗浄後、95℃で約10分ベークする。
本実施例においては、S14のエッチング工程及びS15の樹脂層剥離工程は行わない。
このようにして形成した光記録媒体原盤52cにおけるピットを形成した部位のAFM画像を、図20にそれぞれ示す。図20はピットピッチ0.28μmのピットを形成した部位の平面画像である。図20中、黒色の円形状のものがピットである。また、図21に図20の平面画像上の実線xyに沿った断面図を示す。
図20、図21からわかるように、ピットピッチ0.28μmにおいて、ピット長約160nm、ピット深さ約30nmのピットがほぼ均一に形成されている。
以上のように、本実施形態における微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いれば、実施の形態1〜3と同様に、従来よりも小さなトラックピッチやピットピッチの案内溝やプリピットを形成することができ、このような案内溝やプリピットを有する光記録媒体原盤を製造することができる。
また、実施の形態1〜3と同様に、特許文献2に開示されている電子ビームを利用した方法のような高価な装置を用いることなく、図5に示したような、現在利用可能で比較的安価である240〜700nmの光源を用いたレーザ記録装置を用いて、小さな案内溝やプリピットを形成することができる。
さらに、本実施形態における微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いれば、ガラス原盤15上に樹脂層53を設けたため、記録工程において光記録媒体原盤52aを回転させた場合に、ふらつきのない安定した回転が可能となり、樹脂基板61よりなる構成に比べて、ピット部及び/又は案内溝2をより均一に形成可能となり、これによっても、再生信号のエラーレートを小さくすることができる。
しかも、樹脂層53に形成されたピット部及び/又は案内溝2をエッチングにてガラス原盤15に転写するので、樹脂基板61に形成されたものよりも安定性の高いピット部及び/又は案内溝2を得ることができる。
加えて、エッチング工程で樹脂層53を完全に剥離せずに、別途、樹脂層剥離工程を設けているので、ガラス原盤15が元来有している高い平坦性をそのまま維持することができ、より平坦性の高いピット部及び/又は案内溝2の形成が可能となる。また、エッチング時のガラス原盤15の深さが凹部の深さとなるので、ピット部及び/又は案内溝2の深さを任意に設定できるといった利点もある。
そして、実施の形態1と同様に、このようにして製造した光記録媒体原盤52b・52c・52を用いてNi電鋳を行えば、いわゆる転写により光記録媒体用スタンパを製造することができる。また、さらにこのようにして製造した光記録媒体用スタンパを用いて光記録媒体基板を製造し、その上に記録層等の薄膜部等を形成することで、従来よりも小さなトラックピッチやピットピッチの案内溝やプリピットを有し、再生信号のエラーレートの小さい光記録媒体を製造することができる。
〔実施の形態5〕
本発明の他の実施の形態である微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法について、図18、図22〜図25を用いて以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施の形態2、3で用いたと同じ機能を有する部材には同じ符号を付して説明を省略する。
図18は、本実施形態の微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を説明するための工程図である。また、図22(a)は、図18の成膜工程を経た状態の、ガラス原盤(原盤用基板、基板)15上に、樹脂層である樹脂層30、凹部誘起層である中間層12、及び吸熱層13がこの順に積層された、製造途中の光記録媒体原盤4aの一部の断面構造図を示し、同図(b)は、図18の膜剥離工程を経た状態の、ガラス原盤15上の樹脂層30にピット部及び/又は案内溝2が形成されている光記録媒体原盤4bの一部の断面構造図である。同図(c)は、図18のエッチング工程を経た状態の、ガラス原盤15にまで及んでピット部及び/又は案内溝2が形成されている状態の光記録媒体原盤4cの一部の断面構造図を示し、同図(d)は、図18の樹脂層剥離工程を経た状態の、ガラス原盤15上にピット部及び/又は案内溝2が形成されている光記録媒体原盤4の一部の断面構造図を示している。
まず、S11の成膜工程において、ガラス原盤15上に、樹脂層30を成膜し、その上に中間層12を成膜し、その上に吸熱層13を成膜することで、ガラス原盤15上に積層体を形成し、光記録媒体原盤4aとする。
ガラス原盤15は、その表面の平坦性が良いことが好ましい。ガラス以外の原盤としては、ダイヤモンド、サファイアなどが考えられるが、ガラスがコスト、加工のし易さという点で好ましい。
ガラス原盤15を構成する材料の光学的特性は、記録工程において記録ビーム光を吸熱層13側から入射する場合には、特に限定されるものではなく、透明でも不透明でも良い。但し、記録工程において記録ビーム光をガラス原盤15側から入射する場合には、光利用効率から考えて、ガラス原盤15は、記録ビーム光の波長で透明であり、記録ビーム光の入射を妨げないことが好ましい。
ガラス原盤15の厚みは、記録工程において記録ビーム光を吸熱層13側から入射する場合には、記録工程において記録時の回転中にガラス原盤の平坦性が保たれる厚みであることが必要であり、例えば、0.5mm以上が適当である。これに対し、記録工程において記録ビーム光をガラス原盤15側から入射する場合には、ガラス原盤15の厚みは、上記制限に加え、記録時に記録ビーム光を吸熱層13に集光させることができる厚みであることが必要である。例えば、レーザ記録装置の開口数NAが大きくなるほど、ガラス原盤15の厚みが薄くなることが必要である。
また、ガラス原盤15における内側の面(樹脂層30側の面)上には、記録情報に対応した凹凸形状のピットや案内用の溝があらかじめ形成されていてもよい。ピット及び溝は、両方とも形成されていてもよいし、いずれか一方のみが形成されていてもよい。
樹脂層30を構成する材料の光学的特性は、実施の形態2,3の樹脂基板11と同様に、記録工程において記録ビーム光を吸熱層13側から入射する場合には、特に限定されるものではなく、透明でも不透明でも良い。但し、記録工程において記録ビーム光を樹脂層30側から入射する場合には、実施の形態2,3の樹脂基板11と同様に、光利用効率から考えて、記録ビーム光の波長で透明であり、記録ビーム光の入射を妨げないことが好ましい。
樹脂層30を構成する材料としても、実施の形態2,3の樹脂基板11と同様に、特に限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、熱可塑型ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエーテルニトリル)、PES(ポリエーテルサルホン)等の熱可塑性透明樹脂(プラスチック);熱硬化型ポリイミド、紫外線硬化型アクリル樹脂等の熱硬化性透明樹脂、およびそれらの組合せ等が挙げられる。これらのうちでも、特にポリオレフィン系樹脂が好ましい。
また、実施の形態2,3の樹脂基板11の場合は、ガラス原盤15を具備しないため、樹脂基板11には、中間層12、吸熱層13に適当な強度を付与しえる程度の厚みが必要であったが、樹脂層30については、その必要はない。そのため、樹脂層30の厚みとしては、特に限定されるものではないが、後のドライエッチング工程にて樹脂層30に形成されたピット部及び/又は案内溝2をガラス原盤15に転写する必要がある分を考慮した、例えば、0.2〜3.0μm程度が適当である。
次いで、S12の記録工程にて、光源より出射された後記録信号により強度変調された記録ビーム光を、対物レンズを通して、回転される光記録媒体原盤4a中の少なくとも吸熱層13に集光させる。このとき、記録ビーム光が照射された箇所の吸熱層13で熱が発生し、中間層12を介して樹脂層30上に記録信号に対応した潜像が形成される。ここで、集光された記録ビーム光は焦点深度(一般的にλ/(NA)2で表される。例えば、λ=408nm、NA=0.65の場合、焦点深度は約1μmで、λ=257nm、NA=0.9の場合、焦点深度は約300nmである。)を有しているので、焦点深度内に吸熱層13の一部が含まれている状態が、吸熱層13に集光させた状態である。
記録ビーム光の入射方向は、ガラス原盤15側からでも、吸熱層13側からでもどちらからでも構わないが、好ましくは、記録ビーム光の入射方向はガラス原盤15側からである。その理由は、ガラス原盤15側から記録ビーム光が入射した場合、吸熱層13で発生した熱が中間層12に伝わり易く、また記録ビーム光が中間層12中を透過することによる中間層12自身の吸収による発熱があるため、吸熱層13側から入射した場合に比して、膜剥離後のピット部及び/又は案内溝2の形状均一性が良く、かつ低パワーで記録できるためである。
次に、S13の膜剥離工程にて、中間層12と吸熱層13を、ガラス原盤15及び樹脂層30から剥離する。剥離の方法は、中間層12と吸熱層13を選択的に完全に剥離することができればいかなる方法でもよいが、例えば、ガラス原盤15及び樹脂基板11は不溶だが、中間層12及び吸熱層13は溶解する、NaOH等のアルカリ溶液やHNO3やH2SO4等の酸溶液に浸して剥離することができる。この場合も、何も中間層12と吸熱層13との両方を溶解する必要はなく、樹脂層30に接する中間層12を樹脂層30から剥離できれば、中間層12上にある吸熱層13は同時に剥離されるので、少なくとも中間層12を樹脂層30から剥離できればよい。中間層12及び吸熱層13を剥離して樹脂層30表面を露出させることで、先の記録工程にて形成された樹脂層30のピット部及び/又は案内溝2が露出する。このようにして、ガラス原盤15上の樹脂層30に微細パターンであるピット部及び/又は案内溝2が形成された、光記録媒体原盤4bを得ることができる。
本実施形態では、S13の膜剥離工程後に、引き続きS14のエッチング工程を行うが、このS13の剥離工程までを経た状態の光記録媒体原盤4bを、実施の形態2,3と同様に、光記録媒体原盤として扱うこともできる。この場合、樹脂層30の下にガラス原盤15が存在するため、記録時の光記録媒体原盤4aの回転において、樹脂基板11の場合よりもふらつきのない安定した回転が可能となる。その結果、実施の形態2,3よりもさらに均一な微細パターンからなるピット部及び/又は案内溝2の形成が可能となる。
S14のエッチング工程においては、光記録媒体原盤4bに対してエッチングを行うことで、樹脂層30に形成されたピット部及び/又は案内溝2をガラス原盤15上に転写する。ここでのエッチングは、ピット部及び/又は案内溝2の大きさを保持すべく深さ方向にのみ行いたいため、異方性のあるドライエッチング法が好ましい。最終的な光記録媒体原盤4c或いは光記録媒体原盤4としてのピット部及び/又は案内溝2の深さは、この工程におけるエッチングの条件によって決まるため、所望の深さに対応する条件でエッチングを行う。
このようにして、ガラス原盤15上に微細パターンであるピット部及び/又は案内溝2が形成された、光記録媒体原盤4cを得ることができる。なお、ここでは、S14のエッチング工程において樹脂層30を残存させ、S15の樹脂層剥離工程を引き続き行うこととしているが、このS4のエッチング工程にて樹脂層30を完全に無くしてしまい、樹脂層30を完全に除去した状態の光記録媒体原盤を、実施の形態2,3と同様に、光記録媒体原盤として扱うことができる。また、樹脂層30が残存している状態の光記録媒体原盤4cを、実施の形態2,3と同様に、光記録媒体原盤として扱うこともできる。何れのものも、ガラス原盤15にピット部及び/又は案内溝2が存在するため、温度や湿度のような環境変化に対して安定性の高い微細パターンの形成が可能となる。
S15の樹脂層剥離工程においては、S14のエッチング工程後にガラス原盤15上に残存した樹脂層30を剥離する。樹脂層30の剥離方法については、樹脂層30のみを選択的に除去できる方法であれば特に限定はないが、例えば、ガラス原盤15は不溶で、樹脂層30は溶解するアセトン等の有機溶剤に浸して剥離することができる。このようにして、ガラス原盤15上に微細パターンであるピット部及び/又は案内溝2が形成された、光記録媒体原盤4を得ることができる。
エッチング工程で樹脂層30を完全に剥離する或いは残存させた状態で処理を終える手順に比べて、工定数は増加するが、このように、樹脂層剥離工程を別途設ける方が、ガラス原盤15が元来有している高い平坦性をそのまま維持することができ、より平坦性の高い微細パターンであるピット部及び/又は案内溝2の形成が可能となる。これは、エッチング工程で樹脂層30を剥離したものは、エッチングにてガラス原盤15の表面が損傷を受けてしまい、元来有する平坦性が損なわれてしまうためである。
以上のように、本実施形態における微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いれば、実施の形態1〜4と同様に、従来よりも小さなトラックピッチやピットピッチの案内溝やプリピットを形成することができ、このような案内溝やプリピットを有する光記録媒体原盤を製造することができる。
また、実施の形態1〜4と同様に、特許文献2に開示されている電子ビームを利用した方法のような高価な装置を用いることなく、図5に示したような、現在利用可能で比較的安価である240〜700nm、或いは、350〜450nmの光源を用いたレーザ記録装置を用いて、小さな案内溝やプリピットを形成することができる。
さらに、本実施形態における微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いれば、ガラス原盤15上に樹脂層30を設けたため、記録工程において光記録媒体原盤4aを回転させた場合に、ふらつきのない安定した回転が可能となり、樹脂基板11よりなる構成に比べて、ピット部及び/又は案内溝2をより均一に形成可能となり、これによっても、再生信号のエラーレートを小さくすることができる。
しかも、樹脂層30に形成されたピット部及び/又は案内溝2をエッチングにてガラス原盤15に転写するので、樹脂基板11に形成されたものよりも安定性の高いピット部及び/又は案内溝2を得ることができる。また、エッチング時の深さが凹部の深さとなるので、ピット部及び/又は案内溝2の深さを任意に設定できるといった利点もある。
加えて、エッチング工程で樹脂層30を完全に剥離せずに、別途、樹脂層剥離工程を設けているので、ガラス原盤15が元来有している高い平坦性をそのまま維持することができ、より平坦性の高いピット部及び/又は案内溝2の形成が可能となる。
また、最終的な光記録媒体原盤4としてのピット部及び/又は案内溝2の深さは、この工程におけるエッチングの条件によって決まるため、所望の深さに対応する条件でエッチングを行う。
ここで、本実施形態の微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いた実施例を示す。
(実施例6)
まず、S11の成膜工程において、膜厚1.2mm程度のガラス原盤15上に、樹脂層30として膜厚40nm程度のフォトレジスト膜をスピンコート法により塗布し、その後、中間層12として膜厚50nm程度のZnO膜をマグネトロンスパッタ法により成膜し、Siが10nm、積層体である光記録媒体原盤5aを形成する。
次いで、S12の記録工程において、記録信号により強度変調された波長257nmの記録ビーム光を、開口数NAが0.9の対物レンズで、線速1.0m/sで回転される上記光記録媒体原盤4a中の吸熱層13であるSi膜上に集光し、記録を行う。記録ビーム光は、吸熱層13側から入射する。
ここで、集光された記録ビーム光の光ビームスポット径は、0.8λ/NAの式を用いれば、およそ230nmである。また、周波数6.25MHz(線速1.0m/sでピットピッチ0.16μm)の矩形波を記録信号として記録する。矩形波のデューティーは35%とし、記録ビーム光のビームパワー強度は、上記光記録媒体原盤4a上で、矩形波のローレベルを0mW、矩形波のハイレベルを2.5mWとする。
次いで、S13の膜剥離工程において、上記光記録媒体原盤4aを濃度約15%のHNO3中に約5分浸し、中間層12であるZnOをHNO3に溶解させることで、樹脂層30であるフォトレジストから剥離する。これにより、ガラス原盤15上の樹脂層30に微細パターンである記録信号に対応した記録マーク(ピット)が形成され、光記録媒体原盤4bが作製される。この後、光記録媒体原盤4bを純水にて洗浄後、95℃で約10分ベークする。
本実施例においては、S14のエッチング工程及びS15の樹脂層剥離工程は行わない。
このようにして形成した光記録媒体原盤4におけるピットを形成した部位のAFM画像を、図23に示す。図23はピットピッチ0.16μmのピットを形成した部位の平面画像である。図23中、黒色の円形状のものがピットである。また、図24に図23の平面画像上の実線xyに沿った断面図を示す。
図23、図24からわかるように、ピットピッチ0.16μmにおいて、ピット長約80nm、ピット深さ約25nmのピットがほぼ均一に形成されている。
以上のように、本実施形態における微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いれば、実施の形態4に比して、S1の成膜工程において、中間層12の上にさらに吸熱層13を成膜するため、この吸熱層13が記録ビーム光照射による発熱効率を改善し、中間層12により多くの熱が伝わるため、ピット部及び/又は案内溝2の形状より整ったものとなる。
また、実施の形態1,2,3,4と同様に、特許文献2に開示されている電子ビームを利用した方法のような高価な装置を用いることなく、図5に示したような、現在利用可能で比較的安価である240〜700nmの光源を用いたレーザ記録装置を用いて、小さな案内溝やプリピットを形成することができる。
さらに、本実施形態における微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法を用いれば、ガラス原盤15上に樹脂層30を設けたため、記録工程において光記録媒体原盤4aを回転させた場合に、ふらつきのない安定した回転が可能となり、樹脂基板11よりなる構成に比べて、ピット部及び/又は案内溝2をより均一に形成可能となり、これによっても、再生信号のエラーレートを小さくすることができる。
しかも、樹脂層30に形成されたピット部及び/又は案内溝2をエッチングにてガラス原盤15に転写するので、樹脂基板11に形成されたものよりも安定性の高いピット部及び/又は案内溝2を得ることができる。
加えて、エッチング工程で樹脂層30を完全に剥離せずに、別途、樹脂層剥離工程を設けているので、ガラス原盤15が元来有している高い平坦性をそのまま維持することができ、より平坦性の高いピット部及び/又は案内溝2の形成が可能となる。また、エッチング時のガラス原盤15の深さが凹部の深さとなるので、ピット部及び/又は案内溝2の深さを任意に設定できるといった利点もある。
また、ここでは金属層14を形成していなかったが、図25(a)〜(b)に示すように、実施の形態3と同様、ガラス原盤15上に樹脂層30、中間層12、吸熱層13と順に形成した上に、さらに金属層14を形成してもよい。これにより、上記したように吸熱層13の破裂を防止して、より一層均一な形状のピット部及び/又は案内溝2を、ガラス原盤15上に形成することができる。
図25(a)は、図18の成膜工程を経た状態の、ガラス原盤(原盤用基板、基板)15上に、樹脂層30、中間層12、吸熱層13、及び金属層14がこの順に積層された、製造途中の光記録媒体原盤5aの一部の断面構造図を示し、同図(b)は、図25の膜剥離工程を経た状態の、ガラス原盤15上の樹脂層30にピット部及び/又は案内溝2が形成されている光記録媒体原盤5bの一部の断面構造図である。同図(c)は、図18のエッチング工程を経た状態の、ガラス原盤15にまで及んでピット部及び/又は案内溝2が形成されている状態の光記録媒体原盤5cの一部の断面構造図を示し、同図(d)は、図25の樹脂層剥離工程を経た状態の、ガラス原盤15上にピット部及び/又は案内溝2が形成されている光記録媒体原盤5の一部の断面構造図を示している。
なお、金属層14を有するために、S13の剥離工程で用いる溶剤としては、ガラス原盤15及び樹脂層30は不溶で、中間層12、吸熱層13、及び金属層14を選択的に完全に剥離することができるもの(この場合も、中間層12と吸熱層13と金属層14との全てを溶解する必要はなく、樹脂像30と接する中間層12を樹脂層30から剥離できれば、中間層12上にある吸熱層13及び金属層14は同時に剥離されるので、少なくとも中間層12を樹脂層30から剥離できればよい)が用いられるが、これ以外の点は、図22(a)〜(d)を用いて説明したものと同じであるので、これ以上の説明は行わない。
そして、実施の形態1と同様に、このようにして製造した光記録媒体原盤5b・5c・5を用いてNi電鋳を行えば、いわゆる転写により光記録媒体用スタンパを製造することができる。また、さらにこのようにして製造した光記録媒体用スタンパを用いて光記録媒体基板を製造し、その上に記録層等の薄膜部等を形成することで、従来よりも小さなトラックピッチやピットピッチの案内溝やプリピットを有し、再生信号のエラーレートの小さい光記録媒体を製造することができる。
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、本発明の微細パターンの形成方法及び光記録媒体原盤の製造方法は、光記録媒体がいわゆる円盤状の光ディスクである場合のみならず、カード状またはシート状等の形状のものにも応用可能である。同様に、本発明の微細パターンの形成方法は、何も光記録媒体原盤の製造のためにのみ用いられるものではなく、光ビームを用いて露光による微細加工技術を用いるものであれば、例えば、半導体素子製造用マスク等、種々のものに適用可能である。
最後に、少なくとも樹脂層、及び誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層を積層して積層体とし、この積層体の誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層に光ビームを集光照射することで、樹脂層に凹部が形成されるメカニズムについて説明する。
先にも述べたが、メカニズムの詳細は判明しておらず、本願発明者らは、始め、樹脂層、誘電体或いは金属酸化物からなる中間層、及び光ビームの照射にて発熱する吸熱層をこの順に積層して積層体とし、この積層体の吸熱層に光ビームを集光照射することで、樹脂層に凹部が形成されることを見出し、そのメカニズムとして、樹脂層、中間層、及び吸熱層よりなる積層体に記録ビーム光を照射することで、吸熱層及び誘電体或いは金属酸化物からなる層(中間層)で発生した熱が樹脂層に伝わり、樹脂層の温度が樹脂のガラス転移温度を超えて樹脂が軟らかくなると共に、熱により、樹脂内に存在する水や空気が発生する、或いは中間層であるZnOからO2が発生し、軟らかくなった樹脂を押しのけ、その結果、凹部が形成されるのではないかと推測した。
しかしながら、その後、さらなる鋭意検討を重ねた結果、吸熱層は必ずしも必要ないことが判明し、本願発明者らは、少なくとも樹脂層と、誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層とが積層されてなる上記積層体に記録ビーム光を照射することで、誘電体或いは金属酸化物からなる層(凹部誘起層)で発生した熱が樹脂層に伝わり、樹脂層の温度が樹脂のガラス転移温度を超えて樹脂が軟らかくなると共に、熱により、樹脂内に存在する水や空気が発生する、或いは凹部誘起層であるZnOからO2が発生し、軟らかくなった樹脂を押しのけ、その結果、凹部が形成されるのではないかと推測している。また、吸熱層が存在する方がピットの均一性は良いことからも、ピットの形成には熱が関与しているのではないかと推測している。
また、記録工程を経た状態、つまり、凹部誘起層等を剥離していない状態の光記録媒体原盤を再生することで既に信号が見られること、樹脂層は安定で凹部誘起層等が溶解する液にて凹部誘起層等を剥離した際に凹部が露出されることから、樹脂層に凹部が形成されるのは、記録ビーム光を照射した時点であり、記録ビーム光の照射された個所の樹脂層にすでに凹部が形成されていると推測される。
本願発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、樹脂層と、誘電体或いは金属酸化物からなる中間層と、光ビームの照射にて発熱する吸熱層とをこの順に積層して積層体とし、この積層体の吸熱層に光ビームを集光照射することで、光ビーム照射装置として特別なものを使用することなく従来法で得られるものよりも小さい凹部を樹脂層に形成できることを見出し、本発明を行うに至った。
そして、本願発明者らは、さらに鋭意検討を重ねた結果、吸熱層は必ずしも必要ではなく、少なくとも凹部が形成される樹脂層と、誘電体或いは金属酸化物からなる凹部形成を誘起する凹部誘起層(上記中間層に相当)とを積層して積層体とし、この積層体の少なくとも上記凹部誘起層に光ビームを集光照射することで、光ビーム照射装置として特別なものを使用することなく簡単な材料を用いて従来法で得られるものよりも小さい凹部を樹脂層に形成できることを見出した。
本願発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、少なくとも樹脂層と、誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層とを積層して積層体とし、この積層体の少なくとも上記凹部誘起層に光ビームを集光照射することで、光ビーム照射装置として特別なものを使用することなく簡単な材料を用いて従来法で得られるものよりも小さい凹部を樹脂層に形成できることを見出し、本発明を行うに至った。
本発明の微細パターンの形成方法は、上記課題を解決するために、少なくとも樹脂層と、誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層とを積層して積層体を形成し、該積層体の少なくとも上記凹部誘起層に光ビームを集光照射させることにより上記樹脂層に凹部を形成させることを特徴としている。
これによれば、光ビーム径よりも小さな形状及び間隔を有する、例えば光ビーム径よりも小さなトラックピッチやピットピッチの案内溝やプリピット等に代表される微細パターンを、比較的安価である240〜700nmの光源を用いた既存のレーザ記録装置を利用して、従来法よりも微細に形成することができる。
但し、このような微細パターンが形成されるメカニズムは詳細には判明しておらず、後述する実施の形態の項において、推測の範囲ではあるが考察することとする。
本発明の微細パターンの形成方法は、少なくとも樹脂層と、誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層と、吸熱層とをこの順に積層して積層体を形成し、該積層体の少なくとも上記吸熱層に光ビームを集光照射させることにより上記樹脂層に凹部を形成させることを特徴とすることもできる。これによれば、少なくとも吸熱層に光ビームを集光照射することにより、吸熱層で熱が発生し、その熱が誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層に伝わるため、より微細で形状の整った微細パターンを樹脂層に形成することができる。
本発明の微細パターンの形成方法は、上記方法に加えて、上記積層体を上記樹脂層側から順に基板上に形成することを特徴とすることもできる。
これによれば、樹脂層に形成された光ビーム径よりも小さなトラックピッチやピットピッチの案内溝やプリピット等の微細パターン(凹部)が、基板上に存在することとなる。したがって、微細パターンを有する層の材質として樹脂が適当でない場合でも、これにより、用途にあった適切な素材に微細パターンを形成することができる。例えば、基板としてガラス基板を用いることで、平面度の高い微細パターンを得ることができる。
本発明の微細パターンの形成方法は、上記方法に加えて、上記積層体を上記樹脂層側から順に基板上に形成しておき、上記樹脂層に形成された凹部をエッチングにて上記基板に転写させることを特徴とすることもできる。
これによれば、樹脂層に形成された光ビーム径よりも小さなトラックピッチやピットピッチの案内溝やプリピット等の微細パターン(凹部)が、エッチングにて転写され、基板に存在することとなる。したがって、微細パターンを有する層の材質として樹脂が適当でない場合でも、これにより、用途にあった適切な素材に微細パターンを形成することができる。例えば、基板としてガラス基板を用い、これに微細パターンを転写することで、安定性の高い微細パターンを得ることができる。
本発明の微細パターンの形成方法は、さらに、このように基板に凹部を転写するにあたり、基板に凹部をエッチングにて転写する際に樹脂層を残存させた後、上記基板上の上記樹脂層を剥離させることを特徴とすることもできる。
これによれば、樹脂層を残してエッチングを終えることで、エッチングにて基板表面が損傷されず、基板が有する平坦性を維持することができ、より平坦性の高い微細パターンの形成が可能となる。また、エッチング時の基板の深さが凹部の深さとなるので、微細パターンの深さを任意に設定できるといった利点もある。
本発明の微細パターンの形成方法は、さらに、このように基板に凹部を転写するにあたり、異方性のあるドライエッチングを行うことを特徴とすることもできる。
これにより、樹脂層から基板へと微細パターンを転写する際に、微細パターンのサイズをそのまま良好に保持することができる。
本発明の微細パターンの形成方法では、さらに、上記吸熱層への光ビームの集光照射を上記樹脂層側より行うことを特徴とすることもできる。
これにより、吸熱層側から光ビームを入射させた場合に比して、吸熱層で発生した熱が誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層に伝わり易く、光ビームが凹部誘起層中を透過することによる凹部誘起層自身の吸収による発熱があるため、樹脂層に形成される微細パターンの形状均一性が良く、かつ低パワーで記録することができる。
本発明の微細パターンの形成方法では、さらに、上記吸熱層上に金属層を形成し、上記吸熱層への光ビームの集光照射を上記樹脂層側より行うことを特徴とすることができる。
これによれば、吸熱層の上に成膜される金属層にて吸熱層の破裂が押さえ込まれ、吸熱層の破裂がなくなり、微細パターンの形状均一性がより一層向上する。しかも、上記と同様に、吸熱層側から光ビームを入射させた場合に比して、吸熱層で発生した熱が誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層に伝わり易く、光ビームが凹部誘起層中を透過することによる凹部誘起層自身の吸収による発熱があるため、樹脂層に形成される微細パターンの形状均一性が良く、かつ低パワーで記録することができる。
本発明の微細パターンの形成方法では、上記樹脂層としては例えばフォトレジスト、ポリオレフィン系樹脂を用い、上記凹部誘起層には酸化亜鉛層を、また上記吸熱層にはケイ素層を用いることができる。
これにより、上記した本発明の微細パターンの形成方法を容易に実現することができる。
本発明の光記録媒体原盤の製造方法は、上記課題を解決するために、樹脂基板が原盤であって、上記樹脂基板上に、少なくとも、誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層を成膜する成膜工程と、少なくとも凹部誘起層に光ビームを集光照射させて上記樹脂基板に凹部を形成させる光照射工程と、上記樹脂基板上の凹部誘起層を除去して上記凹部を露出させる第1剥離工程とを有することを特徴としている。
これによれば、微細パターンの形成方法として既に説明したように、比較的安価である240〜700nmの光源を用いた既存のレーザ記録装置を利用して、かつ作製の簡単な材料を用いて、光ビーム径よりも小さなトラックピッチやピットピッチを有し、従来法にて得られるものよりも微細な案内溝やプリピットをもつ光記録媒体原盤を製造することができる。
本発明の光記録媒体原盤の製造方法は、上記課題を解決するために、ガラス基板等からなる原盤用基板上に、少なくとも樹脂層、誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層をこの順に成膜する成膜工程と、少なくとも上記凹部誘起層に光ビームを集光照射させて上記樹脂層に凹部を形成させる光照射工程と、上記樹脂層上の各層を除去して上記凹部を露出させる第1剥離工程とを有することを特徴としている。
これによれば、上記と同様に、既存のレーザ記録装置を利用して、従来法にて得られるものよりも微細な案内溝やプリピットをもつ光記録媒体原盤を製造することができると共に、さらに、樹脂層が原盤用基板上に形成されているので、光照射工程において原盤用基板を回転させたとしても、ふらつきのない安定した回転が可能となり、樹脂基板単独よりなる構成に比べて、より均一な微細パターンを形成が可能となり、エラーレートを小さくできる。
本発明の光記録媒体原盤の製造方法は、上記課題を解決するために、ガラス基板等からなる原盤用基板上に、少なくとも樹脂層、誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層をこの順に成膜する成膜工程と、少なくとも上記凹部誘起層に光ビームを集光照射させて上記樹脂層に凹部を形成させる光照射工程と、上記樹脂層上の各層を除去して上記凹部を露出させる第1剥離工程と、上記樹脂層上に形成された凹部をエッチングにて上記原盤用基板に転写させるエッチング工程とを有することを特徴としている。
これによれば、上記と同様に、既存のレーザ記録装置を利用して、従来法にて得られるものよりも微細な案内溝やプリピットをもつ光記録媒体原盤を製造することができると共に、樹脂層が原盤用基板上に形成されているので、光照射工程において原盤用基板を回転させたとしても、ふらつきのない安定した回転が可能となり、樹脂基板単独よりなる構成に比べて、より均一な微細パターンを形成が可能となり、エラーレートを小さくできる。
しかも、樹脂層に形成された光ビーム径よりも小さなトラックピッチやピットピッチの案内溝やプリピット等の微細パターンがエッチングにて原盤用基板に転写されるので、樹脂層に形成された微細パターンよりも安定性の高い微細パターンを得ることができる。
本発明の光記録媒体原盤の製造方法は、さらに、原盤用基板に凹部を転写させるにあたり、エッチング工程で、原盤用基板上に樹脂層を残存させ、この原盤用基板上に残存する上記樹脂層を除去する第2剥離工程をさらに有することを特徴とすることもできる。
これによれば、樹脂層を残してエッチングを終えることでエッチングにて原盤用基板の表面が損傷されず、原盤用基板表面が有する平坦性を維持することができ、より平坦性の高い微細パターンを有する光記録媒体原盤を製造することができる。また、エッチング時の原盤用基板の深さが凹部の深さとなるので、微細パターンの深さを任意に設定できるといった利点もある。
本発明の光記録媒体原盤の製造方法は、さらに、このように原盤用基板に凹部を転写するにあたり、エッチング工程では、異方性のあるドライエッチングを行うことを特徴とすることもできる。
これにより、樹脂層から基板へと微細パターンを転写する際に、微細パターンのサイズをそのまま良好に保持することができる。
本発明の光記録媒体原盤の製造方法は、また、上記成膜工程では、上記凹部誘起層上にさらに吸熱層を形成し、上記光照射工程では、少なくとも上記吸熱層に光ビームを集光照射して上記上記樹脂基板あるいは上記樹脂層に凹部を形成させることを特徴とすることもできる。
これによれば、上記と同様に、既存のレーザ記録装置を利用して、作製に簡単な材料を用いて、従来法にて得られるものよりも微細な案内溝やプリピットをもつ光記録媒体原盤を製造することができると共に、さらに、光照射工程にて吸熱層に光ビームを集光照射することにより、吸熱層で熱が発生し、その熱が誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層に伝わるため、より微細で形状の整った案内溝やプリピットをもつ光記録媒体原盤を製造することができる。
また、上記した本発明の光記録媒体原盤の製造方法においては、上記光照射工程では、上記吸熱層への光ビームの集光照射を、上記樹脂基板或いは樹脂層側より行うことを特徴とすることもできる。
これにより、吸熱層側から光ビームを入射させた場合に比して、吸熱層で発生した熱が誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層に伝わり易く、光ビームが凹部誘起層中を透過することによる凹部誘起層自身の吸収による発熱があるため、樹脂基板或いは樹脂層に形成される微細パターンの形状均一性が良く、かつ低パワーで記録することができる。
また、上記した本発明の光記録媒体原盤の製造方法においては、上記成膜工程では、上記吸熱層上にさらに金属層を形成し、上記光照射工程では、上記吸熱層への光ビームの集光照射を上記樹脂基板或いは樹脂層側より行うことを特徴とすることもできる。
これによれば、吸熱層の上に成膜される金属層にて吸熱層の破裂が押さえ込まれ、吸熱層の破裂がなくなり、微細パターンの形状均一性がより一層向上するので、より一層エラーレートを小さくできる。
上記した本発明の光記録媒体原盤の製造方法においては、上記樹脂層としては、例えばフォトレジスト、ポリオレフィン系樹脂を用い、上記凹部誘起層には酸化亜鉛層を、また上記吸熱層にはケイ素層を用いることで、上記した本発明の光記録媒体原盤の製造方法を容易に実現して、光記録媒体原盤を得ることができる。
そして、本発明には、上記した光記録媒体原盤の製造方法で製造された光記録媒体原盤、該光記録媒体原盤を用いて製造された光記録媒体用スタンパ、該スタンパを用いて製造された光記録媒体も含んでいる。
本発明の微細パターンの形成方法は、以上のように、少なくとも樹脂層と、誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層とを積層して積層体を形成し、該積層体の少なくとも上記凹部誘起層に光ビームを集光照射させることにより上記樹脂層に凹部を形成させることを特徴としている。
光ビーム径よりも小さな形状及び間隔を有する、例えば光ビーム径よりも小さなトラックピッチやピットピッチの案内溝やプリピット等に代表される微細パターンを、比較的安価である240〜700nmの光源を用いた既存のレーザ記録装置を利用して、従来法よりも微細に形成することができるという効果を奏する。
本発明の微細パターンの形成方法は、少なくとも樹脂層と、誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層と、吸熱層とをこの順に積層して積層体を形成し、該積層体の少なくとも上記吸熱層に光ビームを集光照射させることにより上記樹脂層に凹部を形成させることを特徴とすることもできる。
これによれば、少なくとも吸熱層に光ビームを集光照射することにより、吸熱層で熱が発生し、その熱が誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層に伝わるため、より微細で形状の整った微細パターンを樹脂層に形成することができるという効果を併せて奏する。
本発明の光記録媒体原盤の製造方法は、上記課題を解決するために、ガラス基板等からなる原盤用基板上に、少なくとも樹脂層、誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層をこの順に成膜する成膜工程と、少なくとも上記凹部誘起層に光ビームを集光照射させて上記樹脂層に凹部を形成させる光照射工程と、上記樹脂層上の各層を除去して上記凹部を露出させる第1剥離工程とを有することを特徴としている。
これによれば、上記と同様に、既存のレーザ記録装置を利用して、従来法にて得られるものよりも微細な案内溝やプリピットをもつ光記録媒体原盤を製造することができると共に、さらに、樹脂層が原盤用基板上に形成されているので、光照射工程において原盤用基板を回転させたとしても、ふらつきのない安定した回転が可能となり、樹脂基板単独よりなる構成に比べて、より均一な微細パターンを形成が可能となり、エラーレートを小さくできる。
本発明の光記録媒体原盤の製造方法は、また、上記成膜工程では、上記凹部誘起層上にさらに吸熱層を形成し、上記光照射工程では、少なくとも上記吸熱層に光ビームを集光照射させて上記樹脂層に凹部を形成させることを特徴とすることもできる。
これによれば、上記と同様に、既存のレーザ記録装置を利用して、作製に簡単な材料を用いて、従来法にて得られるものよりも微細な案内溝やプリピットをもつ光記録媒体原盤を製造することができると共に、さらに、光照射工程にて少なくとも吸熱層に光ビームを集光照射することにより、吸熱層で熱が発生し、その熱が誘電体或いは金属酸化物からなる凹部誘起層に伝わるため、より微細で形状の整った案内溝やプリピットをもつ光記録媒体原盤を製造することができる。