JP2008045225A - ゴム補強用前処理ポリエステル繊維およびその製造方法 - Google Patents

ゴム補強用前処理ポリエステル繊維およびその製造方法 Download PDF

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Masanao Kobashi
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Abstract

【課題】熱処理時に加熱されたローラーやプレート等の表面にエポキシ化合物等の熱劣化物堆積の発生による製糸操業性の悪化がなく、高い生産能力で製糸性良く製造でき、加えて、高次加工後の高い寸法安定性およびゴムとの良好な接着性を有するゴム補強材料として好適な前処理ポリエステル繊維の製造方法と前処理ポリエステル繊維を提供すること。
【解決手段】溶融紡糸し、表面温度を200〜250℃に設定した熱処理ローラーで延伸熱処理したポリエステル繊維糸条に、エポキシ化合物を含有する処理剤Aを付与するゴム補強用前処理ポリエステル繊維の製造方法。及び、エポキシ化合物を含有する処理剤Aが付与されてなる前処理ポリエステル繊維であって、熱収縮応力曲線における最大収縮応力点が200℃〜250℃の範囲に存在するゴム補強用前処理ポリエステル繊維。
【選択図】なし

Description

本発明はゴム補強用前処理ポリエステル繊維の製造方法とゴム補強用前処理ポリエステル繊維に関し、さらに詳しくはタイヤ、ホース、ベルト等のゴム・繊維複合体に好適に用いられるゴム補強用の前処理ポリエステル繊維の製造方法とゴム補強用の前処理ポリエステル繊維に関する。
ポリエチレンテレフタレートで代表されるポリエステル繊維は高強度、寸法安定性に優れる等の物理特性を有し、かつ耐疲労性にも優れているため、ゴム構造物の補強材料として好ましいものである。ポリエステル繊維をタイヤ、ホース、ベルト等のゴム構造物補強材として用いることは周知であり、これら用途での必要特性である強力、寸法安定性や耐疲労性を向上させたポリエステル繊維に関して提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
特開平3−97914号公報 特開昭59−15513号公報
しかし、ポリエステル繊維はナイロンやレーヨン等に比べゴム類との接着性が悪く、このことがポリエステル繊維のゴム構造物補強用途において大きな欠点であり、高い接着性を必要とする分野への展開を困難としている。この欠点を解決すべく、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、エチレンウレア化合物等を繊維に付与し、ゴム構造物との接着性を向上させる方法が提案されてきている。これらの方法として、未延伸のポリエステル繊維に、グリセリングリシジルエーテルとシアングアニジンを含有する処理液を付与した後、150℃以上で加熱延伸するといった技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。また、ポリエステル繊維の紡糸工程および/または延伸工程でエポキシ化合物を付与し、熱セットした後、平滑剤と活性剤および、これらの分離を防ぐ水を含有した油剤を付与する技術が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
特開昭49−25222号公報 特開昭61−12970号公報
これらの従来技術においては、熱処理時に加熱されたローラーやプレート等の表面にエポキシ化合物等の熱劣化物堆積が発生し、製糸操業性が悪化するといった問題が発生する。紡出した糸条を一旦巻き取ることなく延伸熱処理を施す直接紡糸延伸法での製造は困難であり、生産効率が非常に悪いといった問題があった。加えて、ゴム補強用途のポリエステル繊維において重要な特性である高次加工後の高寸法安定性を達成するためには、紡出糸条を2000m/分以上の高速で引取ることが必要であり、この糸条の延伸熱処理を一旦巻き取ることなく行う直接紡糸延伸法では走行糸条の延伸速度が4000〜7000m/分程度となり、更なる製糸性の悪化を導く。
3000m/分以上の引取速度で引取ったポリエステル未延伸糸の表面に接着活性を付与する処理剤で処理した後延伸する方法が提案されているが(例えば、特許文献5参照)、紡出糸条を一旦巻取り、別工程において低速(110〜560m/分)で延伸する2工程法が取られている。そのため、生産効率が非常に悪いことがわかる。また、この2工程法では、要求される繊維の高強度、高寸法安定性などの物性を得ることはできなかった。
特開昭52−96234号公報
これに対し、加熱水蒸気による熱処理を行った後、接触式加熱を行うといった方法が提案されているが(例えば、特許文献6参照)、高速紡糸においては水蒸気による処理時間が非常に短くなり、熱劣化物堆積抑制に大きな効果は得られない。
特開昭58−46178号公報
また、直接紡糸延伸法において延伸熱処理した後にエポキシ化合物を含有した仕上げ油剤を付与する方法が提案されている(例えば、特許文献7参照)。
特開平8−113877号公報
また、溶融紡糸されたポリエステル繊維糸条に、エポキシ化合物を含有する処理剤を付与し、紡出糸の引取速度が2000m/分以上であり、熱処理ローラーの表面温度が160〜210℃であることを特徴とするローラーによる延伸熱処理を施した直接紡糸延伸法が提案されている(例えば、特許文献8参照)。しかし、高速紡糸では、未延伸状態での結晶化が進んでしまい、繊維内へのエポキシ化合物の浸透が容易ではなくなり、十分な接着性が得られなくなる。さらに、高速紡糸では糸への張力が高く、また、エポキシ化合物によるローラー汚れが進み、製糸性が悪化してしまう。
特開2002−309458号公報
本発明は、熱処理時に加熱されたローラーやプレート等の表面にエポキシ化合物等の熱劣化物堆積の発生による製糸操業性の悪化がなく、高い生産能力で製糸性良く製造でき、加えて、高次加工後の高い寸法安定性およびゴムとの良好な接着性を有するゴム補強材料として好適な前処理ポリエステル繊維の製造方法と前処理ポリエステル繊維を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. 溶融紡糸し、表面温度を200〜250℃に設定した熱処理ローラーで延伸熱処理したポリエステル繊維糸条に、エポキシ化合物を含有する処理剤Aを付与することを特徴とするゴム補強用前処理ポリエステル繊維の製造方法。
2. 延伸熱処理したポリエステル繊維糸条にエポキシ硬化剤を含有する処理剤Bを付与することを特徴とする上記第1に記載のゴム補強用前処理ポリエステル繊維の製造方法。
3. 処理剤Aの付与後にエポキシ硬化剤を含有する処理剤Bを付与することを特徴とする上記第1又は第2に記載のゴム補強用前処理ポリエステル繊維の製造方法。
4. 紡糸連続延伸装置上で処理剤Aを付与することを特徴とする上記第1〜第3のいずれかに記載のゴム補強用前処理ポリエステル繊維の製造方法。
5. 延伸熱処理後にエポキシ化合物が付与されてなる前処理ポリエステル繊維であって、熱収縮応力曲線における最大収縮応力点が200℃〜250℃の範囲に存在することを特徴とするゴム補強用前処理ポリエステル繊維。
6. 150℃乾熱収縮率が8%以下であることを特徴とする上記第5に記載のゴム補強用前処理ポリエステル繊維。
7. ポリエステルが、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルであることを特徴とする上記第5又は第6に記載のゴム補強用前処理ポリエステル繊維。
本発明により、熱処理時に加熱されたローラーやプレート等の表面にエポキシ化合物等の熱劣化物堆積の発生による製糸操業性の悪化がなく、高い生産能力で製糸性良く製造でき、加えて、高次加工後の高い寸法安定性およびゴムとの良好な接着性を有するゴム補強材料として好適な前処理ポリエステル繊維の製造方法と前処理ポリエステル繊維を提供することができる。
以下、本発明について詳述する。
本発明において使用されるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどあるが、なかでもポリエチレンテレフタレートが好適である。具体的には、本発明のポリエステル繊維は、分子鎖中にエチレンテレフタレート繰り返し単位を90モル%以上含むポリエステルで構成されることが好ましく、より好ましくは95モル%以上である。また、本発明の構成要件および目的を損なわない範囲において、ポリエチレンテレフタレートに従来公知の酸成分、グリコール成分を共重合させても、また安定剤等の添加剤を添加しても差し支えない。前記共重合成分としては、例えばイソフタル酸、アジピン酸等が挙げられる。また、前記グリコール成分としては、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリメチレングリコール等が挙げられる。
上記の優れた特性を具備する本発明のゴム補強用前処理ポリエステル繊維は、以下に例示する製造方法により製造することができる。
まず、ポリエステルチップをエクストルーダ型押出機に供給して溶融し、続いて紡糸口金から紡出する。紡出されたフィラメントはチムニー冷風により冷却固化される。
次に紡出フィラメントを温度290〜310℃の口金下加熱域を通し、更により安定した品位で目的のポリエステル繊維を得るために、加熱域に続く無加熱域、つまり保温領域を長さ1〜30cmの範囲で設けることが好ましい方法である。続いて、油剤を付与し、引取速度は3000m/分以上で引取ることが好ましい。3000m/分を下回ると、目的とする繊維の寸法安定性を得ることが困難となり、あまり好ましくない。
前記の油剤は、一般的なポリエステル用紡糸油剤が好ましい。この時点でエポキシ化合物を付与すると、延伸ローラーやプレート等の表面にエポキシ化合物等の熱劣化物堆積の発生による操業性低下の恐れがあり、好ましくない。一般的なポリエステル用紡糸油剤としては、例えば、分子量700程度のポリエーテルを主成分として、POE硬化ひまし油や酸化防止剤などが適宜添加されたものなどを挙げることができる。
次に、引取られた未延伸糸は、生産効率向上のため一旦巻取られることなく延伸されることが好ましい。ここで、表面温度が75℃以下である引取ローラーと1対または複数対の延伸ローラー間にて延伸されることが好ましい。この延伸過程において該糸条は1.5〜2.6倍に延伸されることが好ましいが、目的とする繊維物性を得ることができれば、その限りではない。
この延伸終了時または終了後に、該糸条に表面温度が200〜250℃の熱処理ローラーにて熱処理を施すことが重要である。この温度が200℃未満では、目標とする強力および乾熱収縮率が得づらくなりあまり好ましくない。また、250℃を超えると、ローラー上で糸条が融着するか、単糸切れを起こすなどして、紡糸することが困難となり、あまり好ましくない。製糸できた場合でも、最適な原糸の力学特性を得づらく、ディップ処理等の後加工を施した後の強力利用率も低くなる傾向があり、あまり好ましくない。
延伸ローラーとは延伸繊維糸条に延伸を施すローラーのことであり、熱処理ローラーとは高温熱処理を施すものをいうが、設備簡略化の点から、延伸に使用する最後の延伸ローラーを熱処理ローラーに使用しても構わない。なお、この他に、若干のストレッチや緩和処理を施しても構わない。
前記熱処理の終了後にエポキシ化合物を含有する処理剤Aが付与されることが好ましい。熱処理前にエポキシ化合物を含有した処理剤Aを付与する場合、例えば繊維が未延伸状態、すなわち結晶化があまり進行していない状態にて付与する場合、加熱されたローラーやプレート等の表面にエポキシ化合物等の熱劣化物堆積を発生させ、製糸操業性の低化を導く恐れがあり好ましくない。さらに、熱処理後にエポキシ化合物を含有した処理剤Aを付与することで、目標原糸物性を得るための紡糸・延伸熱処理工程で、エポキシ化合物の影響を考慮する必要がなく、最適な原糸物性をデザインすることができる。
本発明で好ましく用いられるエポキシ化合物とは、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有するものであり、具体的には、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、レゾルシノール型ジグリシジルエーテル、ヒドロキノン型ジグリシジルエーテル、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルテレフタレート、N−グリシジルフタルイミド等の芳香族エポキシ化合物、及びポリブタジェンジグリシジルエーテル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の高分子エポキシ化合物等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
エポキシ化合物を含有する処理剤Aの付与形態は、特に限定されるものではなく、ニートの形でも付与しても良いし、溶液の形でも付与しても良い。油剤溶液の形での処理では、低粘度鉱物油等で希釈したストレート油剤の形で付与しても良いし、水性エマルジョンの形で付与しても良い。エポキシ化合物を含有する処理剤Aには、一般的な仕上げ油剤で用いられるような平滑剤、乳化剤、帯電防止剤やその他添加剤等を必要に応じて混合しても良い。また、エポキシ化合物を含有する処理剤Aの糸条への付与方法に特に限定はなく、例えばガイド方式、オイリングローラー、スプレー、浸漬等の方法で付与できる。
エポキシ化合物を含有する処理剤Aは、エポキシ化合物の繊維重量に対する付着量として、0.05〜0.5重量%付与することが好ましい。0.05重量%未満の場合、ディップ処理後のゴムとの接着性向上効果が薄くなり、あまり好ましくない。一方、0.5重量%を超えると、巻取装置などへの汚れの付着が目立つようになり、あまり好ましくない。更に好ましくは、0.1〜0.4重量%である。
さらに接着性を向上させるために、エポキシの硬化剤を含有する処理剤Bを付与することが好ましい。エポキシ化合物の硬化剤として用いられるものならば特に制限は無く、フェノール樹脂系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が使用できる。フェノール樹脂系硬化剤としては、例えば、フェノ−ルノボラック樹脂、ビスフェノ−ルノボラック樹脂、ポリp−ビニルフェノ−ル等が挙げられる。ポリアミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジシアンジアミド、ポリアミドアミン(ポリアミド樹脂)、ケチミン化合物、イソホロンジアミン、m−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6-エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサクロルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチル-3,6-エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。また、処理剤Bには、一般的な仕上げ油剤で用いられるような平滑剤、乳化剤、帯電防止剤やその他添加剤等を必要に応じて混合しても良い。
エポキシ化合物の硬化剤を含有する処理剤Bの糸条への付与は、糸条に対して熱処理が行われた後であり、エポキシ化合物を含有する処理剤Aの付与と同時、または前後に付与される。好ましくは、エポキシ化合物を含有する処理剤Aが付与された後に付与されることが好ましい。糸条に対して熱処理を行う以前にエポキシ化合物の硬化剤を含有する処理剤Bを付与すると、紡糸・延伸熱処理工程でその硬化剤を考慮せず、目標原糸物性を得るための最適な製糸条件をとりづらくなり、あまり好ましくない。また、エポキシ化合物を含有する処理剤Aを付与する前に付与すると、弛緩ローラー等がある場合に前記弛緩ローラー等でエポキシ化合物の熱劣化物堆積が促進されるために、該ローラーと繊維の摩擦抵抗が増加し、糸切れ、単糸切れの増加という製糸操業性の低下の恐れがあり、あまり好ましくない。エポキシの硬化剤を含有する処理剤Bの糸条への付与方法に特に限定はなく、例えばガイド方式、オイリングローラー、スプレー、浸漬等の方法で付与できる。また、エポキシの硬化剤を含有する処理剤Bの付与形態は、特に限定されるものではなく、ニートの形でも付与しても良いし、溶液の形でも付与しても良い。油剤溶液の形での付与では、低粘度鉱物油等で希釈したストレート油剤の形で付与しても良いし、水性エマルジョンの形で付与しても良い。
エポキシ化合物の硬化剤を含有する処理剤Bは、硬化剤の繊維重量に対する付着量として、0.0005〜0.1重量%付与することが好ましい。0.0005重量%未満の場合、ディップ処理後のゴムとの接着性向上効果が薄くなり、あまり好ましくない。一方、0.1重量%を超えると、原糸の硬化が進みやすくなり、ディップ処理後の耐疲労性を損なう恐れがあるのであまり好ましくない。更に好ましくは、0.001〜0.05重量%である。
本発明のポリエステル繊維の熱収縮応力曲線における最大収縮応力時温度は200〜250℃であることが好ましい。より好ましくは210〜230℃である。該温度が200℃未満の場合には、目標の乾熱収縮率を得づらくなりあまり好ましくない。一方、250℃を超えると、最適な原糸の力学特性が得づらく、ディップ処理等の後加工を施した後の強力利用率も下がる傾向があるのであまり好ましくない。
また、150℃乾熱収縮率が8%以下であることが好ましい。乾熱収縮率が8%を超える場合、ディップ処理等の後加工を施しても、必要とされる寸法安定性が得づらくなり、ゴム構造物の寸法の変化や形状の悪化が起こり易くなりのであまり好ましくない。
上記のような紡糸・延伸熱処理条件や処理剤の付与を採用することで、製糸操業性の悪化がなく、高い生産能力で製糸性良く製造でき、ゴム構造物との接着性および寸法安定性の優れたポリエステル繊維を得ることができる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例および比較例における各測定値は次の方法に従って測定したものである。
(1)破断強度
株式会社島津製作所社製引張試験機 オートグラフ AGS−100を用い、JIS L1017(2002)に従い、つかみ間隔40cm、引っ張り速度50cm/minとして測定した。
(2)150℃乾熱収縮率
試料をかせ状に取り、0.088cN/dtexの荷重をかけて測定された長さL0の試料を、無荷重で150℃のオーブン中で30分間熱処理する。その後、該オーブンから取り出して前記温調室にて30〜40分放冷し、再び上記荷重をかけて測定した長さL1から、次式により算出した。
乾熱収縮率ΔS(%)=[(L0−L1)/L0]×100
(3)熱収縮応力曲線における最大収縮応力時温度
発生応力測定が可能な加熱炉内に試長20cmでセットし、室温から溶融破断により応力を失うまで(通常250℃超)の間で昇温速度8℃/分で測定した熱収縮応力曲線より求めた。
(4)ローラー汚れの評価
加熱ローラー表面に熱劣化物が堆積し、製糸が困難となり、ローラー表面の清掃が必要となる間での時間を測定し、これにより評価した。
○:3日以上、 ×:3日未満
(5)製糸性の評価
24時間の製糸において、下記の通り糸切れ回数により製糸性を評価した。
○:0回、 △:1〜2回、 ×:3回以上
また、後述する方法にて得られたディップ処理コードの物性は以下の評価により得た。
(6)破断強度
処理コードの破断強度は上記した延伸糸の測定方法と同様の手法により測定した。
(7)乾熱収縮率
180℃のホットプレートの間で、長さ230mmの処理コードに標準初荷重29gを加え、120秒間の熱処理を行った。その時の長さの変動より算出した。
(8)H接着力
JIS−L1017 附属書1 3.1(2002)のTテスト(A法)を改良したHテストにより評価した。処理コードをタイヤ用ゴム中に1cmの長さで埋め込み、140℃で40分加硫した後、常温でゴムからコードを300mm/分で引き抜くのに要する力をN/cmで表した。
[実施例1、2]
ポリエチレンテレフタレートチップを、エクストルーダ型溶融紡糸装置に供給し、紡糸口金にてポリエチレンテレフタレート繊維を紡出した。その後、紡糸筒下ローラーオイリング設備を使って、通常のポリエステル繊維用油剤の水エマルジョン液を付与し、該糸条を表1中の条件にて、引取ローラーによって引取り、該糸条を一旦巻き取ることなく連続して延伸した。延伸は表1に示す温度にそれぞれ設定された延伸ローラーにおいて延伸し、次いで、弛緩処理を施し、巻取った。この間で、エポキシ化合物を含有する処理剤および、エポキシ硬化剤を含有する処理剤が付与される。それぞれ処理剤は、エポキシ化合物含有処理剤は延伸ローラーと弛緩ローラーとの間で、エポキシ硬化剤含有処理剤は、弛緩ローラーラップ途中で、それぞれガイド方式により糸条に付与した。
エポキシ化合物含有処理剤には、エポキシ化合物である”デナコール”EX−611(Sorbitol Polyglycidyl Ether:ナガセケミテックス株式会社)をポリエーテルを主体とする仕上げ油剤に40%配合されている。ここで、該仕上げ油剤の油剤付着量が繊維重量に対して約0.3重量%付着するようにガイドノズルより吐出させた。
エポキシ硬化剤含有処理剤には、エポキシ硬化剤である”バーサミド”V−125をエポキシ化合物含有処理剤と同様のポリエーテルを主体とする仕上げ油剤に3%配合されている。ここで、該仕上げ油剤の油剤付着量が繊維重量に対して約0.3重量%付着するようにガイドノズルより吐出させた。
[比較例1、2]
実施例1および2に対して、各ローラー温度を表1に示す温度に設定し、紡出未延伸糸にオイリングローラーにて、エポキシ化合物を5重量%含有させた紡糸油剤の20%水エマルジョン液を用いて付与する変更を行った。ここで、該紡糸油剤の油分付着量が繊維重量に対し約0.6重量%となるようにオイリングローラーの回転数を設定した。尚、該紡糸油剤は、紡糸筒下の引取ローラー以前の位置で付与した。
[比較例3]
比較例3として、実施例1に対して、エポキシ含有処理剤およびエポキシ硬化剤含有処理剤が紡出糸に付与されていないものを製造した。ただし、一般的な紡糸油剤は付与されている。
[比較例4]
比較例4として、実施例1の各ローラー温度を表1に示す温度に設定変更したものを製造した。
上記で得られた該延伸糸を合撚し、撚り数 37×38 t/10cmの撚りコードを得た。レゾルシン・ホルマリン-ラテックスと水酸化ナトリウムを混合して処理液とし、この処理液中に上記撚糸コードを浸漬し、次に140℃のオーブン内で90秒乾燥させた後、240℃のオーブン中で7.0%の伸長率を与えながら、45秒間で緊張熱処理を施した。次に、5.0%の弛緩率を与えながら、240℃のオーブン内を81秒間で弛緩熱処理を施し、処理コードを得た。表1に各実施例及び各比較例の評価結果を整理する。
Figure 2008045225
本発明により、前処理ポリエステル繊維を熱処理時に加熱されたローラーやプレート等の表面にエポキシ化合物等の熱劣化物堆積の発生による製糸操業性の悪化がなく、高い生産能力で製糸性良く製造することが可能となる。加えて、高次加工後の高い寸法安定性およびゴムとの良好な接着性を有するゴム補強材料として好適な前処理ポリエステル繊維を提供することができる。

Claims (7)

  1. 溶融紡糸し、表面温度を200〜250℃に設定した熱処理ローラーで延伸熱処理したポリエステル繊維糸条に、エポキシ化合物を含有する処理剤Aを付与することを特徴とするゴム補強用前処理ポリエステル繊維の製造方法。
  2. 延伸熱処理した繊維糸条にエポキシ硬化剤を含有する処理剤Bを付与することを特徴とする請求項1に記載のゴム補強用前処理ポリエステル繊維の製造方法。
  3. 処理剤Aの付与後にエポキシ硬化剤を含有する処理剤Bを付与することを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム補強用前処理ポリエステル繊維の製造方法。
  4. 紡糸連続延伸装置上で処理剤Aを付与することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴム補強用前処理ポリエステル繊維の製造方法。
  5. 延伸熱処理後にエポキシ化合物が付与されてなる前処理ポリエステル繊維であって、熱収縮応力曲線における最大収縮応力点が200℃〜250℃の範囲に存在することを特徴とするゴム補強用前処理ポリエステル繊維。
  6. 150℃乾熱収縮率が8%以下であることを特徴とする請求項5に記載のゴム補強用前処理ポリエステル繊維。
  7. ポリエステルが、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルであることを特徴とする請求項5又は6に記載のゴム補強用前処理ポリエステル繊維。
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