JP2009001917A - リオトロピック液晶ポリマーマルチフィラメントの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】単糸切れの発生を抑制して、マルチフィラメントからなるリオトロピックポリマー繊維の弾性率をより向上させる製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】リオトロピック液晶ポリマーと酸溶媒からなるドープを押出し、マルチフィラメントを製造する紡糸方法において、前記ドープを紡出して洗浄後、水分率が15%以上の状態で一度巻き取り、巻き取った状態で水分率10%以下になるまで乾燥させ、その後油剤を付与し、次いで張力下で熱処理を施すことを特徴とする、リオトロピック液晶ポリマーマルチフィラメントの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、リオトロピック液晶ポリマーマルチフィラメントの製造方法に関する。さらに詳しくは、単糸切れの発生が少なく、高弾性率化が可能なマルチフィラメント(フィラメント(または単糸ともいう)を多数本束ねた繊維束)からなるリオトロピック液晶ポリマーマルチフィラメントの製造方法に関する。
リオトロピックポリマーよりなるマルチフィラメントは優れた耐熱性、強度、弾性率を有するため、スーパー繊維として多くの用途に用いられている。
かかるリオトロピックポリマーフィラメントの製造方法は、一般にリオトロピックポリマーと酸溶媒を含むドープを多数の孔を有する紡糸口金より押し出した後、凝固性流体(水、または水と無機酸の混合液)中に浸漬させ、次いで酸溶媒を除去するために、水洗浴中で洗浄し、さらに無機塩基の水溶液槽を通して糸中に残っている酸を中和等した後、乾燥する方法によって製造されている(例えば、特許文献1参照)。
かかるリオトロピックポリマーフィラメントの製造プロセスでは、弾性率を向上させるため、張力下で熱処理を施すことが知られている(例えば特許文献2参照)。かかる熱処理工程においては、熱処理時の張力(ローラー速度の比で調整)が高いほど弾性率が向上するが、その一方で、単糸切れが増加し、更に張力を高くするとマルチフィラメントは破断してしまう。通常、製品の品位を保つために単糸切れがあまり発生しないローラー速度比で熱処理を実施するが、弾性率を向上させるためには、ローラー速度比を上げた方が好ましく、単糸切れの発生を抑制しながら、マルチフィラメントからなるポリベンザゾール繊維の弾性率をより向上させる製造方法が望まれていた。
特開平8−170222号公報 特開平6−173113号公報
本発明の課題は、単糸切れの発生を抑制し、且つ弾性率をより向上させるためのリオトロピックポリマーマルチフィラメントの製造方法を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに至った。即ち本発明は(1)リオトロピック液晶ポリマーと酸溶媒からなるドープを押出し、マルチフィラメントを製造する紡糸方法において、前記ドープを紡出して洗浄後、水分率が15%以上の状態で一度巻き取り、巻き取った状態で水分率10%以下になるまで乾燥させ、その後油剤を付与し、次いで張力下で熱処理を施すことを特徴とする、リオトロピック液晶ポリマーマルチフィラメントの製造方法、(2)前記マルチフィラメントのフィラメント数が50フィラメント以上であることを特徴とする(1)記載のリオトロピックポリマーマルチフィラメントの製造方法、(3)付与する油剤量が糸条に対して0.2重量%〜2重量%であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のリオトロピックポリマーマルチフィラメントの製造方法、(4)前記のリオトロピック液晶ポリマーがポリベンザゾールポリマーである(1)又は(2)に記載の製造方法、(5)前記張力下で熱処理温度を行う工程において、熱処理温度が400℃以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の製造方法、である。
本発明の製造方法によれば、単糸切れの発生を抑制して、リオトロピックポリマー繊維の弾性率をより向上させることが可能であり、製品の品位を保ちながら、より高い弾性率を有する、リオトロピックポリマーマルチフィラメントを提供することが可能である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法は、リオトロピック液晶ポリマーと酸溶媒からなるドープを押出し、マルチフィラメントを製造する紡糸方法において、前記ドープを紡出して洗浄後、水分率が15%以上の状態で一度巻き取り、巻き取った状態で水分率10%以下になるまで乾燥させ、その後、張力下で熱処理を施すことが好ましい。
すなわち、多量の水分を含んだ状態で一旦巻き取り、巻き取った状態(張力が低い状態)で乾燥し、その後張力下で熱処理を施すものである。かかるプロセスは、単糸切れの発生を抑止し、弾性率が向上するという2つの効果を発揮する。
まず単糸切れの発生抑止効果について説明する。従来、リオトロピック液晶ポリマーフィラメントの製造においては、工業的生産性の見地から、ドープ紡出後、洗浄及び乾燥(通常水分率2%以下)をオンラインで施していた。かかる工程において、単糸切れが発生する原因につき本願発明者等が分析した結果、乾燥の途中で糸が静電気を帯びるため、マルチフィラメント内で単糸同士が反発し合うようになり、この状態で乾燥オーブン中を走行すると、走行している乾燥オーブン中の空間において、また、接触するローラー上で走行方向と垂直方向の揺れが発生したとき、マルチフィラメント内に単糸同士の交絡が発生していることを突き止めた。そして、巻き取ったマルチフィラメント内に単糸同士の交絡が多いと、張力下での熱処理においてフィラメント内の単糸に均一に張力がかかりにくくなり、交絡部分、または、特定の単糸に張力が集中するため、単糸切れが発生していることを知見した。
次に弾性率向上効果について説明する。本製造方法によってリオトロピック液晶ポリマーフィラメントの弾性率が向上する理由は3つある。一つは、上記の通り、各フィラメント間の交絡が減少するため、欠陥が少なく、且つ各フィラメントに均一に張力がかかるためである。2つめは、交絡が少なく、毛羽が発生し難いため、高い張力で熱処理することになり、その結果弾性率が上がることである。そして、3つめは、交絡が少ないことにより、全てのフィラメントに適正な張力が加わり、低張力で熱処理されるフィラメント、すなわち弾性率が低いフィラメントが解消され、その結果マルチフィラメント全体としての弾性率も向上するものである。
そして、洗浄後のフィラメントを水分率が15%以上の状態で巻き取るプロセスとすることにより単糸切れ発生の現象を抑止することができる。すなわち、多量の水分を含む糸条は、帯びる静電気も少なく、さらに水分率が高いと、マルチフィラメントの周囲にまとわりついている水が収束の役目を果たし、マルチフィラメント内の単糸同士の交絡が起こりにくくなる。そして、フィラメント内の単糸同士の交絡が少ないと、熱処理においてフィラメント内の単糸により均一に張力がかかりやすくなり、交絡部分や特定の単糸に張力が集中した結果として発生する単糸切れが抑制されるのである。このような理由から、紡出後一度も水分率が15%未満となる履歴を受けていない状態で巻き取ることが好ましい。
紡出後、巻き取り時のフィラメント水分率は、より好ましくは、30%以上、更に好ましくは100%以上である。
また、紡出後、巻き取り時のフィラメント水分率の上限は特に限定されるものではないが、200%を超えても効果はそれほど変わらない一方で、後に説明する巻き取り状態での乾燥が困難となる。
このように、高い水分率で巻き取られたマルチフィラメントは、巻き取った状態で水分率5%以下、更には2%以下まで乾燥することが好ましい。水分率をかかる状態まで乾燥することにより、後に説明する油剤付与工程において、油剤が均一に付着するからである。巻き取った状態での乾燥後の水分率の下限は特に限定されるものではないが、0.5%以下とすることは困難である一方、効果はそれ以上の水分率のものと変わらなくなる。
上述のように、巻き取った状態で乾燥したマルチフィラメントは、熱処理前に油剤を付与することが好ましい。油剤を付与することにより、糸の静電気を低減できるため、熱処理直前に接触するローラー上を走行している間において、接触するローラー上で走行方向と垂直方向の揺れが発生したとき、マルチフィラメント内に単糸同士の交絡が発生するのを抑制することができ、その結果、張力下での熱処理においてフィラメント内の単糸に均一に張力がかかりやすくなり、単糸切れの発生を抑制して弾性率を向上させることができるからである。
油剤の種類は、本願発明の効果が得られる範囲であれば、特に限定されるものではなく、例えば、POE(ポリオキシエチレン)−ビスフェノールA・ジラウレート、ジイソステアリルチオジプロピオネート、硫黄芳香族エステル、EO(エチレンオキサイド)/PO(プロピレンオキサイド)共重合体、ポリブテン、ポリエーテル変性シリコーン、POE−硬化ヒマシ油、ポリエーテル、アルキルスルホネート・ナトリウム塩、アルキルホスフェート・カリウム塩、POE−アルキルスルホネート・ナトリウム塩、POE−アルキルホスフェート・ナトリウム塩等から選ばれた複数の成分を配合した工程油剤等が挙げられるが、熱処理工程で性能を維持することができる耐熱性を有するものが好ましく、例えばPOE(ポリオキシエチレン)−ビスフェノールA・ジラウレート、ジイソステアリルチオジプロピオネート、ポリブテン、ポリエーテル変性シリコーン、などが挙げられる。
また、熱処理工程においても均一に引き揃えられた状態を維持するため、油剤に静電気発生防止剤を付与することも好ましい形態の一つである。
糸条に油剤を付与する工程としては、本願発明の効果が得られる範囲であれば、特に限定されるものではなく、従来公知の方法、例えば、ローラーによる付与、溝型形状を持つガイドによる付与、ミスト状で噴霧する方法、などが挙げられる。
油剤付着量は、本願発明の効果が得られる範囲であれば、特に限定されるものではないが、本願発明の効果と、完成糸の取り扱い性、後工程での油剤除去必要性の観点から、糸条に対して0.2〜2重量%であることが好ましい。更に好ましくは0.2〜1重量%、特に好ましくは0.4〜1重量%である。
巻き取った状態での乾燥の方法については特に限定されるものではないが、工業的生産の観点からは、内外装差を低減するため、真空乾燥であることが好ましい。
上記巻き取った状態で乾燥されたマルチフィラメントは、熱処理されるが、その温度は、ポリマーにもよるが、400℃以上であることが弾性率向上効果という観点から望ましい。
本発明の製造方法で製造するフィラメントのフィラメント数は特に限定されるものではないが、50フィラメント以上では特にその効果が顕著に現れる。更に100フィラメントを超えると更に高い効果が現れる。
本発明でいうリオトロピック液晶ポリマーとは、臨界濃度点以上で液晶ドメインを形成することができるポリマーをいい、具体的には、P−アラミド、ポリベンズオキサゾール(PBO)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、poly{2,6−diimidazo[4,5−b:4’,5’−e]pyridinylene−1,4−(2,5−dihydroxy)phenylene}(PIPD)が挙げられる。本発明のリオトロピックポリマーはこれらに限定されるものではないが、公定水分率が低く、静電気が発生し易いPBO,PBTでは特に効果が顕著に現れる。
以下、本発明の製造方法を、ポリベンザゾール繊維を例として、更に詳しく説明する。
本発明でいうポリベンザゾール繊維とは、ポリベンザゾールポリマーよりなる繊維をいい、ポリベンザゾール(以下、PBZともいう)とは、ポリベンゾオキサゾール(以下、PBOともいう)、ポリベンゾチアゾール(以下、PBTともいう)、またはポリベンズイミダゾール(以下、PBIともいう)から選ばれる1種以上のポリマーをいう。本発明においてPBOは芳香族基に結合されたオキサゾール環を含むポリマーをいい、その芳香族基は必ずしもベンゼン環である必要はない。さらにPBOは、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)や芳香族基に結合された複数のオキサゾール環の単位からなるポリマーが広く含まれる。同様の考え方は、PBTやPBIにも適用される。また、PBO、PBT及び、またはPBIの混合物、PBO、PBT及びPBIのブロックもしくはランダムコポリマー等のような二つまたはそれ以上のポリベンザゾールポリマーの混合物、コポリマー、ブロックポリマーも含まれる。
PBZポリマーに含まれる構造単位としては、好ましくはポリリン酸中、特定濃度で液晶を形成するライオトロピック液晶ポリマーから選択される。当該ポリマーは構造式(a)〜(f)に記載されているモノマー単位から成る。
Figure 2009001917
ポリベンザゾール繊維は、ポリベンザゾールを含有するドープより製造されるが、当該ドープを調製するための好適な溶媒としては、クレゾールやそのポリマーを溶解しうる非酸化性の酸が挙げられる。好適な非酸化性の酸の例としては、ポリリン酸、メタンスルホン酸および高濃度の硫酸あるいはそれらの混合物などの無機酸類が挙げられる。中でもポリリン酸及びメタンスルホン酸が、特にポリリン酸が好適である。また、重合終了後、ベンザゾール共重合体を単離すること無く、そのまま紡糸用ドープとして使用することもできる。
ドープ中のポリマー濃度は好ましくは少なくとも約7質量%であり、より好ましくは少なくとも10質量%、特に好ましくは少なくとも14質量%である。最大濃度は、例えばポリマーの溶解性やドープ粘度といった実際上の取り扱い性により限定される。それらの限界要因のために、ポリマー濃度は通常では20質量%を越えることはない。
本発明において、好適なポリマーまたはコポリマーとドープは公知の方法で合成される。例えばWolfeらの米国特許第4,533,693号明細書(1985.8.6)、Sybertらの米国特許第4,772,678号明細書(1988.9.22)、Harrisの米国特許第4,847,350号明細書(1989.7.11)またはGregoryらの米国特許第5,089,591号明細書(1992.2.18)に記載されている。要約すると、好適なモノマーは非酸化性で脱水性の酸溶液中、非酸化性雰囲気で高速撹拌及び高剪断条件のもと約60℃から230℃までの段階的または一定昇温速度で温度を上げることで反応させられる。
このようにして得られるドープは、多数の孔を有する紡糸口金から押し出し、空間で引き伸ばしてフィラメントに形成される。その後、フィラメントは、ポリベンザゾールポリマーの凝固性液体中、あるいは、凝固性液体の蒸気中に導入され、洗浄され、適宜水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム等の無機塩基で中和され、ほとんどの溶媒は除去される。特に凝固性液体の蒸気中に導入するプロセスを採用した場合、本発明の絶大な効果が得られる。かかる理由については定かではないが、次のように考えられる。すなわち、凝固液体の蒸気中に紡糸口金から押し出されたフィラメントを導入することにより、より配向が抑制された状態(弾性率が低い状態)で一旦巻き取られる。そして、配向が抑制された状態で巻き取られたマルチフィラメントは、本発明の交絡が少ない未熱処理マルチフィラメントであれば、より高い張力を加えることが可能となり、その結果弾性率向上効果が高くなる。
ここでいう凝固性液体とは、ポリベンザゾールポリマーを溶解しているポリリン酸などの無機酸に対し相溶性であり、ポリベンザゾールポリマーに対して溶媒とならない液体であり、例えば、水、または水と無機酸の混合液である。
また、洗浄とは、ポリベンザゾールポリマーを溶解しているポリリン酸などの無機酸に対し相溶性であり、ポリベンザゾールポリマーに対して溶媒とならない液体に繊維またはフィラメントを接触させ、繊維またはフィラメントから溶媒を除去することである。洗浄液体としては、ポリベンザゾールの溶媒を除去可能な液体であれば特に限定されるものではないが、好適な洗浄液体としては、水や水と酸溶媒との混合物が挙げられる。酸がポリリン酸の場合、フィラメント中の残留リン濃度としては、リン原子濃度換算で、好ましくは8000ppm以下、更に好ましくは5000ppm以下に洗浄される。その後、フィラメントは、中和、乾燥、熱処理、巻き取り等が必要に応じて行われる。
凝固、洗浄されたフィラメントは、水分率が15%未満になる履歴を一度も受けていない段階で、マルチフィラメントからなるポリベンザゾール繊維を一度ボビンに巻き取り、ボビンに巻き取った状態で水分率10%以下になるまで乾燥させ、その後、400℃以上の温度で、張力下で熱処理を施す。洗浄されていない状態で巻き取り、乾燥すると、残留リンの除去が困難となる。通常、マルチフィラメントからなるポリベンザゾール繊維は、100〜300℃の温度雰囲気からなる乾燥オーブン中を走行させ、水分率2%以下になるまで乾燥させた後、巻き取られるが、上述の通り、水分率が高い状態で巻き取り、巻き取った状態で乾燥することにより、単糸切れの発生を抑制して、マルチフィラメントからなるポリベンザゾール繊維の弾性率をより向上させることができる。
一度ボビンに巻き取るまでに、マルチフィラメント内の単糸同士の交絡をできるだけ抑えるためには、水分率が30%未満になる履歴を一度も受けていない段階で一度ボビンに巻き取るのが好ましく、水分率が100%未満になる履歴を一度も受けていない段階で一度ボビンに巻き取るのがより好ましい。
かくして得られたマルチフィラメントは、熱処理が施される。熱処理の条件は、加熱媒体や処理方法にもよるが、400〜700℃で1〜60秒でよく、好ましくは、500〜600℃で2〜10秒である。繊維に与える張力は0.1〜10g/dが望ましい。
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより下記の実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の主旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術範囲に含まれる。
(繊維の強度、伸度、弾性率の測定方法)JIS L−1013に準じ、つかみ間隔20cm、引張速度100%/min、n=10で糸条の強伸度を測定した。
(繊維の水分率の測定方法)乾燥前重量:W0(g)、乾燥後重量:W1(g)から、下記の計算式に従って算出した。なお、乾燥後重量:W1(g)を測定する際の乾燥は250℃30分間の条件で実施した。
(式)水分率(%)=(W0−W1)/W1×100
(熱処理)熱処理温度650℃、熱処理時間3秒とし、フィラメントを走行させながら、熱処理オーブン前後のローラーの速度比を数点変更したサンプルを作製した。ローラーの速度比は、熱処理オーブン通過直前のローラー表面速度をR1(m/分)、熱処理オーブン通過直後のローラー表面速度をR2(m/分)として、下記の計算式に従って算出した。
(式)ローラーの速度比(%)=(R2−R1)/R1×100
(単糸切れ(毛羽)の評価方法)熱処理後に巻き取ったボビンの外観から単糸切れ(毛羽)の程度を3段階(○、△、×)で評価した。○は毛羽がほとんど見られない、△は少量の毛羽が見られる、×は多量の毛羽が見られる、とした。
(比較例1)
30℃のメタンスルホン酸溶液で測定した固有粘度〔η〕が27dL/gである、ポリリン酸を溶媒に用いたポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)ドープを用いて、単糸フィラメント径が11.5μm、1.5デニールになるような条件で紡糸を行った。紡糸温度170℃で孔径0.20mm、孔数166のノズルから紡糸ドープを押し出してフィラメントとした後、適当な位置で収束させてマルチフィラメントにするように配置された第1洗浄浴中に浸漬し、凝固させた。なお、紡糸ノズルと第1洗浄浴の間のエアギャップには、より均一な温度でフィラメントが引き伸ばされるように、クエンチ温度が65℃のクエンチチャンバーを設置した。
その後、ポリベンザゾール繊維中の残留リン濃度が5000ppm以下になるまで水洗し、1%NaOH水溶液で5秒間中和し、その後10秒水洗した。その後、水分率が2%以下になるまで乾燥させて巻き取った。巻取速度は200m/分で、糸長1000m巻き取った。巻き取った糸の水分率は1.6%であった。
巻き取った糸を用いて、油剤(EO(エチレンオキサイド)/PO(プロピレンオキサイド)共重合体5%水エマルジョン)をギアポンプで定量供給したセラミックノズル上で、糸条に対して油剤が0.7重量%付着するように、糸を巻きだして走行させながら付与し、続いて、上記の方法で熱処理を実施した。得られた糸の弾性率の結果を表1にまとめる。
(実施例1)
全く乾燥させずに巻き取ったことを除いては、比較例1と同様に巻き取った。巻き取った糸の水分率は243%であった。巻き取った糸をボビンごと80℃の静置乾燥器中で4時間乾燥させた。乾燥後の糸の水分率は1.3%であった。その後、油剤(EO(エチレンオキサイド)/PO(プロピレンオキサイド)共重合体5%水エマルジョン)をギアポンプで定量供給したセラミックノズル上で、糸条に対して油剤が0.7重量%付着するように、糸を巻きだして走行させながら付与し、続いて、上記の方法で熱処理を実施した。得られた糸の弾性率の結果を表1にまとめる。
(実施例2)
水分率50%以下になるまで乾燥させて巻き取ったことを除いては、比較例1と同様に巻き取った。巻き取った糸の水分率は46%であった。巻き取った糸をボビンごと80℃の静置乾燥器中で4時間乾燥させた。乾燥後の糸の水分率は1.1%であった。その後、油剤(EO(エチレンオキサイド)/PO(プロピレンオキサイド)共重合体5%水エマルジョン)をギアポンプで定量供給したセラミックノズル上で、糸条に対して油剤が0.7重量%付着するように、糸を巻きだして走行させながら付与し、続いて、上記の方法で熱処理を実施した。得られた糸の弾性率の結果を表1にまとめる。
(実施例3)
水分率20%以下になるまで乾燥させて巻き取ったことを除いては、比較例1と同様に巻き取った。巻き取った糸の水分率は18%であった。巻き取った糸をボビンごと80℃の静置乾燥器中で4時間乾燥させた。乾燥後の糸の水分率は1.4%であった。その後、油剤(EO(エチレンオキサイド)/PO(プロピレンオキサイド)共重合体5%水エマルジョン)をギアポンプで定量供給したセラミックノズル上で、糸条に対して油剤が0.7重量%付着するように、糸を巻きだして走行させながら付与し、続いて、上記の方法で熱処理を実施した。得られた糸の弾性率の結果を表1にまとめる。
(実施例4)
クエンチチャンバーを出たところから第1洗浄浴中に浸漬するまでの間において、温度90℃、相対湿度100%の水蒸気を噴きつけ、全く乾燥させずに巻き取ったことを除いては、比較例1と同様に巻き取った。巻き取った糸の水分率は256%であった。巻き取った糸をボビンごと80℃の静置乾燥器中で4時間乾燥させた。乾燥後の糸の水分率は0.9%であった。その後、油剤(EO(エチレンオキサイド)/PO(プロピレンオキサイド)共重合体5%水エマルジョン)をギアポンプで定量供給したセラミックノズル上で、糸条に対して油剤が0.7重量%付着するように、糸を巻きだして走行させながら付与し、続いて、上記の方法で熱処理を実施した。得られた糸の弾性率の結果を表1にまとめる。
(実施例5)
クエンチチャンバーを出たところから第1洗浄浴中に浸漬するまでの間において、温度90℃、相対湿度100%の水蒸気を噴きつけ、水分率50%以下になるまで乾燥させて巻き取ったことを除いては、比較例1と同様に巻き取った。巻き取った糸の水分率は49%であった。巻き取った糸をボビンごと80℃の静置乾燥器中で4時間乾燥させた。乾燥後の糸の水分率は1.1%であった。その後、油剤(EO(エチレンオキサイド)/PO(プロピレンオキサイド)共重合体5%水エマルジョン)をギアポンプで定量供給したセラミックノズル上で、糸条に対して油剤が0.7重量%付着するように、糸を巻きだして走行させながら付与し、続いて、上記の方法で熱処理を実施した。得られた糸の弾性率の結果を表1にまとめる。
(比較例2)
全く乾燥させずに巻き取ったことを除いては、比較例1と同様に巻き取った。巻き取った糸の水分率は237%であった。巻き取った糸をボビンごと80℃の静置乾燥器中で30分間乾燥させた。乾燥後の糸の水分率は15%であった。その後、油剤(EO(エチレンオキサイド)/PO(プロピレンオキサイド)共重合体5%水エマルジョン)をギアポンプで定量供給したセラミックノズル上で、糸条に対して油剤が0.7重量%付着するように、糸を巻きだして走行させながら付与し、続いて、上記の方法で熱処理を実施した。得られた糸の強度は、実施例1で得られた熱処理後の糸と比較して、10〜20%低かった。得られた糸の弾性率の結果を表1にまとめる。
(比較例3)
クエンチチャンバーを出たところから第1洗浄浴中に浸漬するまでの間において、温度90℃、相対湿度100%の水蒸気を噴きつけたことを除いては、比較例1と同様に巻き取った。巻き取った糸の水分率は1.4%であった。巻き取った糸を用いて、油剤(EO(エチレンオキサイド)/PO(プロピレンオキサイド)共重合体5%水エマルジョン)をギアポンプで定量供給したセラミックノズル上で、糸条に対して油剤が0.7重量%付着するように、糸を巻きだして走行させながら付与し、続いて、上記の方法で熱処理を実施した。得られた糸の弾性率の結果を表1にまとめる。
(比較例4)(先行特許3480128号の実施例1A)
30℃のメタンスルホン酸溶液で測定した固有粘度〔η〕が24.4dL/gのポリベンゾオキサゾール14.0(重量)%と五酸化リン含量率83.17%のポリリン酸からなる紡糸ドープを紡糸に用いて、単糸フィラメント径が11.5μm、1.5デニールになるような条件で紡糸を行った。紡糸温度170℃で孔径0.22mm、孔数167のノズルから紡糸ドープを押し出してフィラメントとした後、適当な位置で収束させてマルチフィラメントにするように配置された、温度22±2℃に保った10%のリン酸水溶液からなる第1洗浄浴中に浸漬し、凝固させた。紡糸ノズルと第1洗浄浴の間のエアギャップの長さは40cmとし、エアギャップには、より均一な温度でフィラメントが引き伸ばされるように、クエンチ温度が60℃のクエンチチャンバーを設置した。引き続いて第二の抽出浴中でイオン交換水で糸条を洗浄した後、0.1規定の水酸化ナトリウム溶液浸漬し中和処理した。さらに水洗浴で洗浄した後、巻取った。巻取り速度は600m/分とした。巻き取った糸をボビンごと80℃の乾燥オーブン中で乾燥した。その後、得られた糸を上記の方法で熱処理を実施した。得られた糸の弾性率の結果を表1にまとめる。
(比較例5)(先行特許3480128号の実施例2)
比較例4の繊維を水洗浴で水洗後、巻き取ることなく乾燥工程を通過せしめ、水分率が2%以下になるまで乾燥させて巻き取った。その後、得られた糸を上記の方法で熱処理を実施した。得られた糸の弾性率の結果を表1にまとめる。
Figure 2009001917
結果を表1にまとめる。本発明の製造方法により、単糸切れの発生を抑制して、マルチフィラメントからなるポリベンザゾール繊維の弾性率をより向上させることができることが分かる。
本発明のリオトロピックポリマー繊維の製造方法によると、単糸切れの発生を抑制しつつ、弾性率をより向上することができるめ、あらゆる分野での性能向上が可能となり、産業上の利用可能性が大である。

Claims (5)

  1. リオトロピック液晶ポリマーと酸溶媒からなるドープを押出し、マルチフィラメントを製造する紡糸方法において、前記ドープを紡出して洗浄後、水分率が15%以上の状態で一度巻き取り、巻き取った状態で水分率10%以下になるまで乾燥させ、その後油剤を付与し、次いで張力下で熱処理を施すことを特徴とする、リオトロピック液晶ポリマーマルチフィラメントの製造方法。
  2. 前記マルチフィラメントのフィラメント数が50フィラメント以上であることを特徴とする請求項1記載のリオトロピックポリマーマルチフィラメントの製造方法。
  3. 付与する油剤量が糸条に対して0.2重量%〜2重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリオトロピックポリマーマルチフィラメントの製造方法。
  4. 前記のリオトロピック液晶ポリマーがポリベンザゾールポリマーである請求項1又は2に記載の製造方法。
  5. 前記張力下で熱処理温度を行う工程において、熱処理温度が400℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
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