JP2008038945A - 密封装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の密封装置10は、ケーシング20に設けた凹部23の開口側を閉鎖して油圧室24を構成するとともに軸方向に往復摺動する環状のピストン部11aと、このピストン部11aの外周縁から軸方向に延びるとともにその端部で多板クラッチCを押圧する円筒部11bと、を有し、円筒部11bにおける周方向の一部を切り欠いてなる切り欠き部13が形成されたピストンシール11を有している。切り欠き部13を構成する円筒部11bの切り欠き端縁14には、径方向外方に突出した鍔部15が形成されている。
【選択図】 図3
Description
前記密封装置は、上記動力接続部のケーシングに設けられた凹部の開口側を閉塞して油圧室を構成するピストンシールを有している。このピストンシールは、前記油圧室を構成する環状のピストン部と、このピストン部の外周縁から軸方向に延びる円筒部とを有しており、前記密封装置は、前記油圧室に供給される作動油の油圧によって前記ピストンシールを、軸方向に移動させることができる。そして、このピストンシールが軸方向へ移動すると、前記ピストンシールの円筒部が多板クラッチを押圧もしくはその押圧を解除し、多板クラッチの動力伝達を断続できるように構成されており、前記密封装置は、前記多板クラッチを作動させるためのクラッチピストンの機能を備えている(例えば、特許文献1参照)。
前記ピストンシールにおいて、一様な円筒状の円筒部の一部を切り欠いて形成された当該切り欠き部は、周囲と比較してその強度が低下する。この局部的な強度低下は、ピストンシールの軸方向への移動に伴って作用する繰り返し応力の応力集中を招き、それに伴う金属疲労による亀裂の発生原因となり、当該密封装置の耐久性を低下させるおそれがあった。
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、耐久性の低下を抑制することができる密封装置を提供することを目的とする。
軸方向に往復動する環状のピストン部(ピストンシール)に作用する応力は主に軸方向に作用するため、上記のように切り欠き端縁が周方向端縁と一対の側方端縁とによって構成されている場合、特に、軸方向に対して直交する周方向端縁に応力集中が生じやすい。このため、鍔部を、切り欠き端縁全体に渡って形成しなくても、周方向端縁のみに形成することで、応力集中を効果的に抑制することができる。
図1において、動力接続部は、図示しないギヤセットの動力を断続するための多板クラッチCと、この多板クラッチCを作動させるためのクラッチピストンの機能を備えた密封装置10と、これらを内部に格納するケーシング20とを備えている。
ケーシング20は、その内側端面21から突出し図示しない回転軸等と同軸に接続される軸部22が形成されている。また、内側端面21において、軸部22の周囲には、当該内側端面21から軸方向に凹む環状の凹部23が形成されている。
この環状の凹部23には、その開口を閉塞するように密封装置10の一部が挿入されている。
また、凹部23の小径円筒面23a、及び、大径円筒面23bは、それぞれ軸部22に対して同心の円筒面として形成されており、凹部23に挿入された密封装置10が、後述するように、両円筒面23a,23bに沿って軸方向に往復動可能とされている。
また、ピストンシール11は、上述のように、突出部11cをケーシング20の凹部23に挿入して配置されており、密封装置10は、上記シール部12によって油圧室24を密封した状態で、軸方向に移動可能である。
一方、油圧室24の油圧を所定の値よりも高くすると、密封装置10は、油圧によって軸方向に押圧され、弾性部材25による付勢力に抗して多板クラッチC側に移動する。そして、円筒部11bによって、多板クラッチCを押圧する。
すなわち、本実施形態の密封装置10は、油圧室24の油圧の制御による軸方向への往復動によって、多板クラッチCを押圧もしくはその押圧を解除し、当該多板クラッチCによる動力の伝達を断続することができるように構成されており、クラッチピストンとしての機能を有している。
図4は、図2中、IV−IV線矢視断面図である。図4のように、周方向端縁14aには、径方向外方に突出した鍔部15が設けられている。この鍔部15は、周方向端縁14aを径方向外方に僅かに折り曲げることで形成されている。このように、周方向端縁14aを折り曲げることで鍔部15を形成したので、当該鍔部15をプレス加工等によって、容易に形成することができる。従って、鍔部15を形成することによって、当該密封装置10の製造コストを過大に上昇させることがない。
また、切り欠き部13における局部的な強度の低下による応力集中は、ピストンシール11の変形を生じさせ、ピストンシール11の周辺に配置される部材等に当該ピストンシール11が緩衝するおそれがあった。しかし、本実施形態の密封装置10によれば、上述のように切り欠き部13による強度の低下を抑制し応力集中を緩和できるので、ピストンシール11の変形を抑えることができ、前記部材等に緩衝するのを防止できる。
軸方向に往復動する環状のピストンシール11に作用する応力は主に軸方向に作用するため、上記のように切り欠き端縁14が周方向端縁14aと、一対の側方端縁14bとによって構成されている場合、特に、軸方向に対して直交する周方向端縁14aに応力集中が生じやすい。このため、鍔部15を、切り欠き端縁14全体に渡って形成しなくても、周方向端縁14aのみに形成することで、応力集中を効果的に緩和することができる。また、鍔部15を形成するための工数を大きく増やすことがないので、製造コストの上昇を抑えることができる。
また、上記実施形態では、切り欠き部13を構成する切り欠き端縁14が、周方向端縁14aと、一対の側方端縁14bとからなる場合を例示したが、例えば、切り欠き端縁14全体を一様な曲線で形成した場合等、切り欠き端縁14の形状に限定されることなく、本発明を適用することができる。なお、前記のように切り欠き端縁14全体を一様な曲線で形成した場合においても、切り欠き端縁14全体に鍔部15を設けることができるし、応力集中が大きくなる切り欠き端縁14の中央部分にのみに鍔部15を設けることもできる。
図5は、実施例に係る解析モデルを示した図であり、(a)は外径側から解析モデルを観た図、(b)は折曲部を上方として内径側から観た図である。前記実施例及び比較例について、図5に示すような、切り欠き部13の中心から90°の範囲のみを解析モデルとして構築し、図中、円筒部11bの折曲部11b1の下面S1を固定面、周方向の両切片S2,S3は円周方向のみ固定とし、ピストン部11aから一様に荷重2.0MPaを作用させたときの応力分布についてFEM解析を行い、最大応力値を算出し両者を比較した。
また、上記両解析モデルは、密封装置におけるピストンシールのみを対象とし、ピストンシールに接着されるシール部については、考慮していない。
このように、実施例及び比較例の解析モデルに基づいて応力集中の状態を比較検証した結果、本実施形態の密封装置は、周方向端縁に鍔部を設けることによって、応力集中が生じる部分における最大応力値を低減することができ、その応力集中が緩和できることが確認できた。
11 ピストンシール
11a ピストン部
11b 円筒部
13 切り欠き部
13a 周縁部
14 切り欠き端縁
14a 周方向端縁
14b 側方端縁
15 鍔部
20 ケーシング
23 凹部
24 油圧室
C 多板クラッチ
Claims (3)
- ケーシングに設けた凹部の開口側を閉鎖して油圧室を構成するとともに軸方向に往復摺動する環状のピストン部と、このピストン部の外周縁から軸方向に延びるとともにその端部で多板クラッチを押圧する円筒部と、を有し、前記円筒部における周方向の一部に切り欠き部が形成されたピストンシールを有する密封装置において、
前記切り欠き部を構成する円筒部の切り欠き端縁には、径方向外方に突出した鍔部が形成されていることを特徴とする密封装置。 - 前記切り欠き端縁は、前記円筒部の周方向に沿った周方向端縁と、この周方向端縁の両側から当該円筒部の端部に延びる一対の側方端縁と、を有しており、前記鍔部が前記周方向端縁に形成されている請求項1に記載の密封装置。
- 前記鍔部は、前記切り欠き端縁を径方向外方に折り曲げることで形成されている請求項1又は2に記載の密封装置。
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