JP2008038045A - イオン性基含有ポリマーの製造方法、該製造方法によって得られたポリマー及びその用途 - Google Patents

イオン性基含有ポリマーの製造方法、該製造方法によって得られたポリマー及びその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】ゲル化や固化を起こしやすい芳香族エーテルや芳香族スルフィド系ポリマーの製造において、ゲル化などの異常な反応を起こさない高分子量ポリマーの製造法を提供する。
【解決手段】芳香族エーテル構造及び/又芳香族スルフィド構造を有するポリマーの製造方法において、モノマーとして芳香族ジハロゲン化合物と、二価フェノール化合物及び/又は二価チオフェノール化合物の少なくとも1種の化合物にイオン性基を含有させ、二価フェノール化合物及び/又は二価チオフェノール化合物の少なくとも1種に、下記化学式1の化合物を選び、水と混和し常温で液体、常圧で沸点が200℃以上の有機極性溶媒を用い、不活性気体下で反応させ、副生水分を有機極性溶媒と共に留去させ、反応容器温度を180〜230℃とするイオン性基含有ポリマー製造方法。
Figure 2008038045

[化学式1において、ZはOH基、SH基など、Zは、O原子、S原子など、nは0以上の整数。]
【選択図】なし

Description

本発明は、芳香族エーテル構造や芳香族スルフィド構造を有するポリマーを製造する方法に関する。さらに詳しくは、芳香族ジハロゲン化合物と、特定の構造の化合物を含む二価フェノール化合物又は二価チオフェノール化合物とをモノマーとし、有機溶媒中で重縮合することによってイオン性基を有するポリマーを製造する方法に関する。さらには、イオン性基含有ポリマーを用いた高分子電解質膜、高分子電解質膜/電極接合体、燃料電池などの用途に関する。
アルカリ金属化合物の存在下、芳香族ジハロゲン化合物と、二価フェノール化合物又は二価チオフェノール化合物とを、有機極性溶媒中で重縮合することによって、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリスルフィドスルホンなどのポリマーを製造する方法は良く知られている。この重縮合反応において副生する水は、ポリマーを加水分解するため、反応系から取り除く必要がある。通常、水を除去するには、トルエン、ベンゼンなどの溶媒と共沸して除去する方法が取られている。しかしながら、これらの共沸溶媒には毒性が高かったり、引火しやすい性質を持つものが多かったりするため、その対策のために設備が複雑となるという欠点がある。
副生する水を取り除くために、モレキュラーシーブなどの乾燥剤をコンデンサーに取り付けて重合を行うことも行われている(例えば特許文献1を参照)。しかしながらこの方法では水分の除去はモレキュラーシーブへの水の吸着に依存するため、場合によっては水の脱着なども起こり、水分を充分に除去することは困難であった。
さらに、近年注目されている燃料電池の高分子電解質膜用のポリマーとして、スルホン酸基などのイオン性基を有するポリエーテルスルホンなどが、共沸脱水を用いる方法で製造されている(例えば特許文献2又は3を参照)。しかしながら、スルホン酸基などのイオン性基を有したモノマーを用いる場合、イオン性基の極性によって水分の除去が阻害され、共沸脱水を長時間行う必要があった。また、水分が十分に除去できないため、重合速度が遅く、製造効率がよくないという問題を有していた。
また、溶媒としてジフェニルスルホンを用いて240℃以上の高温で反応させることで、高分子量のポリエーテルスルホンを製造する方法も知られている(例えば特許文献4を参照)。しかしながらジフェニルスルホンは常温で固体であるため、生成したポリマーを含む組成物が固体なので、後処理のために粉砕が必要になり、取り扱いが煩雑になるという問題がある。また、イオン性基を有するモノマーについては、上記方法と同様の問題があった。
本出願人は、上記の課題を解決するため、簡便に高分子量のポリマーを得ることができるポリマーの製造方法を提案した(特許文献5〜7を参照)。しかしながら、燃料電池の高分子電解質膜に用いるためのポリマーとして、高分子電解質膜と電極との接合性を向上させるために特定構造のモノマーを用いた場合、条件によっては反応溶液がゲル化や固化してしまうなどの問題が起こる場合があった。
特開平5−255505号公報 特開平5−1149号公報 米国特許出願公開第2002/0091225号明細書 特開2004−107606号公報 特開2006−111663号公報 特開2006−111664号公報 特開2006−111665号公報
本発明は従来技術の課題を背景になされたものであって、その目的とするところは、特定構造の二価フェノール化合物又は二価チオフェノール化合物を用いるために、重合時にゲル化や固化を起こしやすい芳香族エーテルや芳香族スルフィド構造を有するポリマーの製造に関し、従来のトルエン、ベンゼンなどの毒性や危険性の高い共沸溶媒を使用せずに製造でき、かつ、イオン性基を有して結合水を持ち、反応性が低いモノマーを用いる場合でも、重合時のゲル化や固化を起こすことなく安全で簡便に、高分子量のポリマーが得られる製造方法を提供することであり、さらには、得られたポリマーを用いた高分子電解質膜、高分子電解質膜/電極接合体、燃料電池などを提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、ついに本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の構成を採用する。
(1) 芳香族ジハロゲン化合物と、二価フェノール化合物及び二価チオフェノール化合物のうちの少なくとも一方とを、アルカリ金属化合物の存在下、有機極性溶媒中で重縮合することによって芳香族エーテル構造及び芳香族スルフィド構造のうちの少なくとも一方を有するポリマー製造方法において、芳香族ジハロゲン化合物、二価フェノール化合物及び二価チオフェノール化合物のうちの少なくとも1種の化合物がイオン性基を有しており、二価フェノール化合物及び二価チオフェノール化合物のうちの少なくとも1種の化合物が、下記化学式1で表される構造であり、有機極性溶媒として、水と混和し常温で液体であり、常圧で沸点が200℃以上である溶媒を用い、フェノール基又はチオフェノール基のアルカリ金属塩化反応に際して副生する水分を、該有機極性溶媒の沸点より20℃低い温度から沸点までの範囲の温度で、不活性気体の気流下又は雰囲気下で有機極性溶媒と共に留去させ反応系外へ除去するとともに、重合反応時の反応容器温度を180〜230℃の範囲とすることを特徴とするイオン性基含有ポリマーの製造方法。
Figure 2008038045
[化学式1において、ZはOH基、SH基、及びそれらの基から誘導される基を、Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基のいずれかを、nは0以上の整数を表す。]
(2) 有機極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いることを特徴とする(1)に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
(3) イオン性基が、スルホン酸基、スルホン酸基の塩、ホスホン酸基、ホスホン酸基の塩、リン酸基、リン酸基の塩からなる群より選ばれる1種以上の基である(1)に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
(4) 芳香族ジハロゲン化物が、イオン性基を有している(1)に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法
(5) 芳香族ジハロゲン化物が、下記化学式2で表される構造の化合物を含む(1)に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
Figure 2008038045
(化学式2において、XはF、Cl、Br、Iのハロゲン元素のいずれかを、Yは、スルホニル基又はカルボニル基のいずれかを、Zは、スルホン酸基及びその塩、ホスホン酸基その塩、リン酸基及びその塩、アルキルスルホン酸基及びその塩からなる群より選ばれる基を表す。)
(6) イオン性基を含むモノマーが結合水を含む状態で重合に用いる(1)に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
(7) 水分を除去する際の加熱温度が、該有機極性溶媒の常圧での沸点から沸点よりも20℃高い温度までの温度の範囲である(1)に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
(8) 水分を除去する際の反応系の温度が、該有機極性溶媒の常圧における沸点から−20℃低い温度から沸点までの範囲である(1)に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
(9) 化学式1におけるnが1以上である(1)に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
(10) 化学式1におけるnが3以上である(1)に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
(11) 化学式1におけるZがOH基であり、ZがO原子であり、nが3以上で(1)に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
(12) 化学式1におけるZがOH基又はSH基であり、ZがO原子又はS原子であり、nが1である(1)に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
(13) 化学式1におけるZがOH基又はSH基であり、nが0である(1)に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
(14) (1)〜(13)に記載の方法によって得られるポリマーであって、0.5g/dlのN−メチルピロリドン溶液についてウベローデ型粘度計を用いて30℃で測定した対数粘度が、0.1〜3.0dl/gであるイオン性基含有ポリマー。
(15) (14)に記載のイオン性基含有ポリマーを含む高分子電解質膜。
(16) (14)に記載のイオン性基含有ポリマーを、高分子電解質膜及び/又は電極触媒層に含む高分子電解質膜/電極接合体。
(17) (16)に記載の膜/電極接合体を用いた燃料電池。
である。
本発明の方法によれば、特定構造の二価フェノール化合物又は二価チオフェノール化合物を用いるために、重合時にゲル化や固化を起こしやすい芳香族エーテルや芳香族スルフィド構造を有するポリマーを製造するに際し、ゲル化や固化などの異常反応を起こすことなく、イオン性基を有する高重合度の芳香族エーテルや芳香族スルフィド構造を有するポリマーを短時間で簡便に得ることが可能である。また、従来のトルエン、ベンゼンなどの毒性や危険性の高い共沸溶媒を使用しないため、安全に製造することができ、さらに、反応終了後は、ポリマー溶液として得られるため、後処理のための粉砕が不要で取り扱いやすく、精製なども簡便に行うことができる利点がある。また、得られたポリマーは、高分子電解質膜としたときに電極との接合性が良好であり、高分子電解質膜/電極接合体、燃料電池などの用途に好適である。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、重量とは、質量を意味する。
本発明におけるイオン性基含有ポリマーとは、芳香族エーテル構造及び芳香族スルフィド構造のうちの少なくとも一方を有するポリマーであり、その製造方法は、芳香族ジハロゲン化合物と、二価フェノール化合物及び二価チオフェノール化合物のうちの少なくとも一方とをモノマーとし、アルカリ金属化合物の存在下、有機極性溶媒中で重縮合させる方法であり、芳香族ジハロゲン化合物と、二価フェノール化合物や二価チオフェノール化合物として特定構造の化合物を選択し、かつ、原料モノマーを、アルカリ金属化合物の存在下、有機極性溶媒中で加熱し、フェノール基又はチオフェノール基をアルカリ金属塩化させる際の反応系内の脱水を特定の温度範囲と条件下で行い、かつ、重合反応時の反応温度を特定範囲とすることに特徴がある。
芳香族ジハロゲン化合物としては、公知の化合物を用いることができるがこれらに限定されるものではない。イオン性基を含まない化合物としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロジフェニルホスフィンオキシド、4,4’−ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ビフェニル、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジクロロ−1−トリフルオロメチルベンゼン、2,4−ジクロロ−1−トリフルオロメチルベンゼン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジフルオロジフェニルホスフィンオキシド、4,4’−ビス(4−フルオロフェニルスルホニル)ビフェニル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロ−1−トリフルオロメチルベンゼン、2,4−ジフルオロ1−トリフルオロメチルベンゼンを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。中でも、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンが好ましい。
イオン性基を含む芳香族ジハロゲン化合物としては以下のような化合物を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、3,3’−ジスルホブチル−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホブチル−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホブチル−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジスルホブチル−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、及びそれらのスルホン酸基が1価カチオン種との塩になったもの等が挙げられる。1価カチオン種としては、ナトリウム、カリウム、リチウムや他の金属種や各種アミン類等を挙げることができ、ナトリウム、カリウムなどが好ましいが、これらに限定されるものではない。好ましい例として、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを挙げることができる。
本発明のポリマーの製造方法においては、二価フェノール化合物、二価チオフェノール化合物が化学式1で表される化合物を含む。化学式1で表される化合物の二価フェノール化合物及び二価チオフェノールの全モル数に対する割合は、1〜100モル%であることが好ましく、5〜100モル%がより好ましく、さらに好ましくは25〜100モル%、最も好ましくは、50〜100モル%である。
Figure 2008038045
[化学式1において、ZはOH基、SH基、及びそれらの基から誘導される基を、Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基のいずれかを、nは0以上の整数を表す。]
化学式1において、ZがOH基であると化合物の毒性が低いことやポリマーの着色が少ないことなどの利点がある。ZがSH基であると、反応性が高いことや、ポリマーの耐酸化性が向上することなどの利点がある。Zは、OH基やSH基から誘導される基であってもよく、イソシアネート化合物と反応させたウレタン化合物や、NaやKなどの金属塩であってもよい。Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基のいずれかを表すが、O原子、S原子が好ましい。nは0以上の整数を表すが、1以上であることが好ましく、ZがS原子の場合には、nは3以上であることが好ましい。nが異なる複数の化合物を混合して用いることもできるが、そのような場合、nの平均値の小数点以下を四捨五入した値が、本発明の範囲であればよい。化学式1で表される化合物の例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ハイドロキノン、1,4−ジメルカプトベンゼン、4,4’−チオビスベンゼンチオール、4,4’−チオビスフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−オキシビスベンゼンチオール、4,4’−チオビスフェノール、4,4’−(4−ヒドロキシフェニルオキシ)ベンゼン、末端ヒドロキシル基含有フェニレンエーテルオリゴマー(下記化学式3でmが3以上のもの)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、ハイドロキノン、1,4−ベンゼンチオール、4,4’−オキシビスベンゼンチオール、4,4’−チオビスベンゼンチオール、4,4’−チオビスフェノール、末端ヒドロキシル基含有フェニレンエーテルオリゴマーが好ましい。
Figure 2008038045
化学式1で表される構造のモノマーは、ポリマーの軟化温度を低下させるため、例えば燃料電池の高分子電解質膜に用いた場合などにおいて、電極との接合性を向上させることができる。しかしながら、これらのモノマーを用いて重合を行うと、反応溶液のゲル化や固化などの異常反応が起こりやすいが、本発明の方法を用いることによって、化学式1のモノマーを用いる重合においても、ゲル化や固化などの問題を起こすことなく良好にポリマーを得ることが可能になる。
化学式1で表される構造のモノマーを共重合すると、ポリマーの軟化温度が低下し、高分子電解質膜としたときに電極との接合性が向上する点で好ましい。また、さらに、4,4’−ビフェノールや4,4’−ジメルカプトビフェニルを共重合すると、分子間の相互作用が強くなり、膨潤性が低下する点、膜の強靭性が向上する点でも好ましい。二価フェノール化合物及び二価チオフェノールの全モル数に対する4,4’−ビフェノールや4,4’−ジメルカプトビフェニルの割合は、5〜95モル%であることが好ましく、10〜90モル%がより好ましく、さらに好ましくは10〜80モル%である。
化学式1で表される構造のモノマー以外にも、他の二価フェノール化合物、二価チオフェノール化合物を用いることができる。例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−メルカプトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−メルカプトシフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、4,4’−ジメルカプトビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、レゾルシン、1,3−ジメルカプトベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3−メチル−4,4’−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、1,3−ビス(4−ヒドロキシ)アダマンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ)アダマンタン、フェノールフタレイン、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド、4−メチルレゾルシノール、4−ターシャリーブチルレゾルシノール、4−n−ヘキシルレゾルシノール、ナフタレンビスフェノール類を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。中でも4,4’−ビフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが好ましい。
これらの芳香族ジハロゲン化合物と、二価フェノール化合物又は二価チオフェノール化合物は、それぞれ1種類だけでなく、数種類を混合して用いてもよい。また、イオン性基を有していてもよい。イオン性基とは、イオン結合で結合した部分を有する基を意味し、例えば、スルホン酸基、スルホン酸基の塩、ホスホン酸基、ホスホン酸基の塩、リン酸基、リン酸基の塩など酸性基を挙げることができるが、その他の公知の基であってもよい。
上記のイオン性基は、モノマーのベンゼン環に直接結合していてもよいし、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、ベンジル基などを介して結合していてもよい。イオン性基は、芳香族ジハロゲン化合物と、二価フェノール化合物又は二価チオフェノール化合物のいずれに導入されていてもよいが、芳香族ジハロゲン化合物に導入されていると、反応性の低下が少なくて済むため、好ましい。二価フェノール化合物又は二価チオフェノール化合物にイオン性基が導入されていてもよいが、イオン性基が上記のような酸性基であると、イオン性基の電子吸引性によって、二価フェノール化合物又は二価チオフェノール化合物の反応性を低下させるので好ましくない。二価フェノール化合物又は二価チオフェノール化合物にイオン性基を導入する場合には、水酸基又はメルカプト基に対してメタ位の位置に導入されていることが好ましい。
イオン性基を含む二価フェノール化合物及び二価チオフェノール化合物としては、上記の二価フェノール化合物及び二価チオフェノール化合物のスルホン化物、アルキルスルホン化物、ホスホン化物、リン酸化物、及びこれらの塩を用いることができる。例えば、ハイドロキノンスルホン酸モノカリウム塩、3,7−ジスルホン酸ナトリウム−2,6−ジヒドロキシナフタレンなどを挙げることができるが、これらの化合物に限定することなく、公知の任意の化合物を用いることができる。
一般にイオン性基を含む化合物はイオン性基を含まない化合物よりも反応性が低い。この原因としては、イオン性基の立体障害、イオン性基に結合した水、イオン性基の極性による脱水の阻害などがあり、イオン性基を含む化合物が二価フェノール化合物又は二価チオフェノールの場合には、イオン性基の電子吸引性による反応性の低下も起こる。そのためイオン性基は、芳香族ジハロゲン化合物に導入されていることが好ましい。
本発明のポリマーの製造方法は、反応性の低いイオン性基を含む化合物をモノマーとして用いても、高分子量のポリマーを得ることができる優れた方法である。イオン性基を有するモノマーが結合水を有する場合、重合の前に乾燥しておくことが好ましいが、本発明の方法によれば、結合水を有した状態でも高重合度のポリマーを得ることができる。モノマーの乾燥は、公知の方法を用いることができ、特に限定されることはないが、加熱や減圧乾燥によってなされることが好ましい。乾燥温度は100〜200℃の間であることが好ましい。結合水を含むイオン性基含有モノマーを用いる場合には、前もってモノマー中の水分量を測定しておき、それに基づいて仕込み量を計算する必要がある。
芳香族ジハロゲン化合物と、二価フェノール化合物又は二価チオフェノール化合物は、上記のような化合物を用いることができ、イオン性基を有するものと有さないものを混合して用いることができる。
ポリマー中のイオン性基量は、イオン性基を含む芳香族ジハロゲン化合物とイオン性基を含まない芳香族ジハロゲン化合物のモル比やイオン性基を含む二価フェノール化合物及び二価チオフェノール化合物とイオン性基を含まない二価フェノール化合物及び二価チオフェノール化合物のモル比などによって調節することができる。イオン性基を含む芳香族ジハロゲン化合物の割合が10〜80モル%の間であると、燃料電池用高分子電解質膜に適したポリマーが得られる。
本発明で用いるアルカリ金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウムの化合物を挙げることができ、水酸化物、炭酸塩などを挙げることができる。中でも炭酸塩が好ましく、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムが好ましい化合物の例として挙げられる。これらのアルカリ金属化合物は、二価フェノール化合物又は二価チオフェノール化合物に対して、アルカリ金属原子と、水酸基又はメルカプト基に対して等モルから過剰に存在することが好ましい。水酸基又はメルカプト基に対する好ましいモル比は1.0〜1.2である。その他にも、二価フェノール化合物や二価フェノール化合物を活性なフェノキシド構造になしうる塩基性化合物であれば、これらに限定されず使用することができる。
本発明における重縮合反応溶媒である有機極性溶媒としては、水と混和することができ、常温で液体であり、沸点が200℃以上である溶媒である。そのような溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。中でもN−メチル−2−ピロリドンは高純度のものを安価に入手することができ、毒性や危険性も少なく取り扱いやすいため好ましい。溶媒の純度は98%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましく、99.9%以上であることがさらに好ましい。また、水分率は0.1%以下であることが好ましい。
使用する有機極性溶媒の量は、生成するポリマーに対して1.5〜10倍の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.8〜4倍の範囲である。有機極性溶媒の量が多すぎると反応速度が低下する場合や、反応終了後のポリマーの回収が困難になる場合がある。有機極性溶媒の量が少なすぎると、反応系の粘度が異常に大きくなって取り扱いが困難になる場合がある。
重縮合反応溶液の温度は、用いる有機極性溶媒の沸点又は沸点近傍の温度であり、有機極性溶媒の沸点に対して−10℃〜±0℃の範囲であることが好ましく、−5℃〜±0℃の範囲であることがより好ましい。例えば、N−メチル−2−ピロリドンを用いる場合、反応溶液の温度は193〜203℃の範囲にあることが好ましく、198〜203℃の範囲にあることがより好ましく、202〜203℃の範囲にあることがさらに好ましい。
反応容器の加熱方法は特に限定されないが、熱媒やヒーターなど公知の任意の方法によって加熱することができ、反応容器は180〜230℃の範囲で加熱することが好ましく、190〜220℃の範囲であるとより好ましい。230℃よりも高い温度で加熱すると、反応容器の器壁へのポリマーの固着や、ポリマー溶液のゲル化、固化などの問題起こりやすくなるため、好ましくない。
本発明の芳香族エーテル構造や芳香族スルフィド構造を有するポリマーの製造方法において、アルカリ金属化合物の存在下、芳香族ジハロゲン化合物と二価フェノール化合物又は二価チオフェノール化合物とを有機極性溶媒中で重縮合すると、フェノール基又はチオフェノール基のアルカリ金属塩化反応に際して副生物として水が生成して副反応による重合性の低下の原因となるので、水を反応系外に除去する必要があり、本発明では、不活性ガスの気流下、有機極性溶媒の沸点又は沸点近傍の温度に加熱して攪拌し、共沸溶媒を用いることなく、有機極性溶媒と副生する水とを同時に反応系外に除去することを必要とする。
本発明における反応系とは、上記の化合物を反応させる有機溶媒の溶液を有する反応容器内を意味し、コンデンサーやそれから溜出する溶媒を溜める部分は反応系外である。コンデンサーから溜出する溶媒は、連続した配管で接続された溶媒溜めに溜めてから1〜数回に分けて抜き出しても良いし、連続的に外部に抜き出しても良い。いずれにしても、水分や酸素などを含む外気が混入するのを防ぐようにすることが好ましい。
本発明の製造方法においては、反応性の低いイオン性基を含む化合物をモノマーとして用いても、高分子量のポリマーを得ることができる。また、イオン性基を有するモノマーが結合水を有する場合、重合の前に乾燥して結合水を除去しておくことが好ましいが、本発明の方法によれば、結合水を有した状態でも高重合度のポリマーを得ることができる。モノマーの乾燥は、公知の方法を用いることができ、特に限定されることはないが、加熱や減圧乾燥によってなされることが好ましい。乾燥温度は100〜200℃の間であることが好ましい。結合水を含むイオン性基含有モノマーを用いる場合には、前もってモノマー中の水分量を測定しておき、それに基づいて仕込み量を計算する必要がある。
本発明において、反応系内の水は有機極性溶媒と共に加熱によって気体もしくはミストとなって不活性ガスの気流によって反応系外に搬送され、コンデンサーで冷却して回収することができる。不活性ガスとしては、反応に影響を及ぼさないものであれば公知のガスを使用することができるが、窒素、アルゴンが好ましい。また使用する不活性ガスは、水分の含有量が少ないことが好ましい。また、酸素、二酸化窒素などの反応性のガスは、重合性を低下させる原因となるため、不活性ガスに混入していないことが好ましい。
本発明において、反応系外に除去される有機極性溶媒の量は、仕込み量に対して1〜30重量%の範囲であることが好ましく、3〜20重量%の範囲であるとより好ましい。除去量が多くなりすぎると、反応系の粘度が異常に大きくなって取り扱いが困難になる場合があり好ましくない。除去量が少なすぎると、水分が充分に除去できず反応性が低下する場合があり好ましくない。
有機極性溶媒の除去率は、有機極性溶媒の仕込み量に対する、反応系外に除去した有機極性溶媒の量の重量%で表される。有機極性溶媒の除去率は、不活性ガスの流量、コンデンサーの温度や大きさ及びその取り付け位置、除去時間などによって調整して、上記の範囲内に入るようにすることが好ましい。不活性ガスの流量を大きくしたり、コンデンサーの温度の入り口温度を高くしたりすると、除去率を大きくすることができる。不活性ガスの流量は、装置の構造や大きさ、モノマーの組成などによって、最適な量は異なるが、0.1〜100リットル/分の間であることが好ましい。不活性ガスを全く流さないと外部からの空気の混入によるモノマーの酸化劣化などによって重合度が上がらない場合があり好ましくない。コンデンサーの温度は低すぎると溜出量が多くなりすぎてしまう場合があり、高すぎると水の除去率が低下するという問題が起こりやすくなる。コンデンサーの入り口温度は100〜200℃の範囲にあることが好ましい。また、コンデンサーの冷却部の温度は0〜100℃の範囲にあることが好ましく、20〜50℃の範囲であることがより好ましい。
反応系からコンデンサーまでの距離が長いと途中で凝結が起こり、除去量が少なくなる傾向にある。逆に短すぎると除去が急激に起こり量の調節が困難になる。反応系からコンデンサーまでの経路に何らかの保温を施してやると、除去量を大きくすることができる。保温は断熱材や各種ヒーターを用いることができる。保温の温度は20〜200℃の範囲にあることが好ましい。
水の除去率は、反応系内の水の理論量に対する、反応系外に除去した水の量の重量%で表すことができる。反応系外に除去した水の量は、反応系外に除去したN−メチル−2−ピロリドンと水の混合物の質量と水分率を測定することで求めることができる。水分率は公知の任意の方法で測定することができ、例えばカールフィッシャー法を挙げることができる。水の除去率は50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であるとより好ましく、80〜100重量%であることがさらに好ましい。水の理論量とは、モノマーの仕込み量から計算できる反応による生成水の量と、モノマーの結合水などで反応系内に最初から存在する水の量の合計を表す。水の除去率が50%より小さいと、反応速度が低下し、高分子量のポリマーを得ることが困難になる。水の除去率は、有機極性溶媒と同様に、不活性ガスの流量、コンデンサーの温度や大きさ及びその取り付け位置、除去時間などによって調整することができる。系外に除去した水の量が所定の量になったところで、有機極性溶媒を反応系外に除去するのを停止し、還流して反応系内に戻すようにしてもよい。また、反応の間、常に有機極性溶媒と水を反応系外に除去し続けてもよい。
ポリマーの重合度は公知の任意の方法を用いて測定することができる。例えば、一般にポリマーの重合度は、時間と共に増大していくため、所定の重合度に達した時点で重合を停止しておくことで所望の重合度のポリマーを得ることができる。重合度は、重合溶液の粘度やGPC(サイズ排除クロマトグラフィー)によって求めることができる。粘度はサンプリングした溶液をオフラインで測定してもよいし、インライン粘度計で測定したり、攪拌翼にかかるトルクをモーターの電流値として検出して粘度に換算したりして、求めることができる。また、芳香族ジハロゲン化合物と、二価フェノール化合物及び/又は二価チオフェノール化合物とのモル比や、末端停止剤の添加などによって重合度を制御することもできる。末端停止剤としては、芳香族モノハロゲン化合物や一価フェノール化合物及び/又は一価チオフェノール化合物を用いることができる。末端停止剤は、重合の最初から加えておいてもよいし、反応の途中で加えてもよい。
ポリマーの重合度を測定する手段の一つに希薄溶液の対数粘度を測定する方法がある。精製したポリマーを、0.5g/dlの濃度でN−メチルピロリドンに溶解し、30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて粘度測定を行い、ln[ta/tb]/cで表される対数粘度(taは試料溶液の落下秒数、tbは溶媒のみの落下秒数、cはポリマー濃度)が0.1dl/g以下であると、ポリマーの成型物の機械特性が低下するなどして好ましくない。0.5dl/g以上であると好ましく、1.0dl/g以上であるとより好ましい。対数粘度が3.0dl/g以上であると、溶液の粘度が高くなりすぎるなど加工性に悪影響を及ぼすため好ましくない。2dl/g以下であることが好ましく、1.5dl/g以下であることがより好ましい。
重合時間は、用いるモノマーによって様々であるが、一般的にイオン性基を含むモノマーの割合が多くなると、高重合度のポリマーを得るためにはより長い時間を要する傾向がある。長時間重合する場合に、連続して行うことが好ましいが、一旦温度を下げて反応を停止させた後、再び加熱して反応を続けることもできる。温度を下げている間も不活性ガスを流して、反応容器内を不活性ガス雰囲気に保つことが好ましい。
得られたポリマーは公知の任意の方法で精製することができる。ポリマー溶液を、ポリマーを溶解せず有機極性溶媒と混和する溶媒に滴下、分散して再沈することが一般的である。再沈に用いる溶媒としては、副生する無機塩も同時に除去できるため水もしくは他の有機溶媒と水の混合物を用いることが好ましい。また、ポリマー溶液から濾過によって無機塩を除去した後、水以外の溶媒で再沈することもできる。この場合の再沈溶媒としてはアセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチルなどを用いることができる。ポリマー溶液の粘度が高い場合には、ポリマーを溶解できる溶媒で希釈することもできる。希釈に用いることのできる溶媒としてはN−メチル−2−ピロリドンの他に、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどを用いることができる。
高分子電解質膜を製造する場合は、再沈したポリマーを適当な溶媒に溶解した溶液や、重合溶液を濾過して得た溶液を用いてコーティング法などで製膜し、加熱や非溶媒への浸漬などによって溶媒を除去してフィルムを得た後、残留溶媒や残留塩などの不純物を水洗によって除去する方法を採用することができる。また、イオン性基が塩型のポリマーを用いて製膜した場合には、前記の処理方法に加えて、必要に応じて酸による処理を行ってイオン性基を塩型から酸型に変換し、残留溶媒や残留遊離酸を水洗で除去する方法を採用することができる。
本発明の膜/電極接合体は、本発明の高分子電解質膜を電極と接合することによって得ることができる。この接合体の作製方法としては、従来から公知の方法を用いて行うことができ、例えば、電極表面に接着剤を塗布し高分子電解質膜と電極とを接着する方法又は高分子電解質膜と電極とを加熱加圧する方法等がある。本発明のポリマーか、類似した構造のポリマーを主成分とした接着剤を電極表面に塗布して接着する方法が好ましい。本発明の高分子電解質膜及びポリマー組成物は適度な軟化温度を有するため、加圧加熱によって高分子電解質膜と電極とを接合する方法に特に適している。また、本発明の高分子電解質膜以外の膜に対して、電極や触媒との接着剤として、本発明のスルホン酸基含有ポリマーを用いることができる。本発明のイオン性基含有ポリマーを接着剤として用いる場合には、イオン性基が酸型であることが好ましい。イオン性基が陽イオンと塩を形成している状態で用いる場合には、接合後、酸処理によってイオン性基を酸型にすることもできる。
本発明の燃料電池は、本発明の高分子電解質膜又は高分子電解質膜/電極接合体を用いて作製することができる。本発明の燃料電池は、例えば酸素極と、燃料極と、それぞれの極に挟まれて配置された高分子電解質膜と、酸素極側に設けられた酸化剤の流路と、燃料極側に設けられた燃料の流路を有するものである。このような一つの単位セルを導電性のセパレーターで連結することによって燃料電池スタックを得ることができる。
本発明の高分子電解質膜は、固体高分子形燃料電池に適している。本発明の高分子電解質膜は、膨潤性が小さいため、メタノールを燃料とするダイレクトメタノール型燃料電池などの液体を燃料とする燃料電池に適している。また、本発明の高分子電解質膜は高分子電解質膜と電極との接合性に優れるため耐久性が高く、ダイレクトメタノール燃料電池などの液体を燃料とする燃料電池だけでなく、水素を燃料とする燃料電池に適している。また、ジメチルエーテル、水素。ギ酸など他の物質を燃料として用いる燃料電池にも好適に用いることができ、電解膜、分離膜など、高分子電解質膜として公知の任意の用途に用いることができる。
以下、本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
<溶液粘度>
ポリマー粉末を0.5g/dlの濃度でN−メチルピロリドンに溶解し、30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて粘度測定を行い、対数粘度ln[ta/tb]/cで評価した(taは試料溶液の落下秒数、tbは溶媒のみの落下秒数、cはポリマー濃度)。
<水分率の測定>
水を含む有機極性溶媒約10μlをマイクロシリンジに取り、平沼製作所社製水分率測定装置AQ−7を用いて水分率を測定した。
<電極との接合性評価>
得られたポリマー5gを15gのNMPに溶解し、ガラス板上に300μmの厚みでキャストし、100℃で1時間、150℃で1時間それぞれ加熱して、フィルムを得た。得られたフィルムは純水に浸漬して剥離し、2mol/リットルの硫酸に1時間ずつ2回浸漬してスルホン酸基を酸型に変換した。その後、純水で6回洗浄して遊離の硫酸を除去した後、ろ紙に挟んで荷重をかけながら室温で乾燥し、高分子電解質膜を得た。Pt/Ru触媒担持カーボン(田中貴金属工業社TEC61E54)に少量の超純水及びイソプロピルアルコールを加えて湿らせた後、デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液(品番:SE−20192)を、Pt/Ru触媒担持カーボンとナフィオンの重量比が2.5:1になるように加えた。次いで撹拌してアノード用触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、ガス拡散層となる東レ社製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が2mg/cmになるようにスクリーン印刷により塗布乾燥して、アノード用電極触媒層付きカーボンペーパーを作製した。また、Pt触媒担持カーボン(田中貴金属工業社TEC10V40E)に少量の超純水及びイソプロピルアルコールを加えて湿らせた後、デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液(品番:SE−20192)を、Pt触媒担持カーボンとナフィオンの重量比が2.5:1となるように加え、撹拌してカソード用触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、撥水加工を施した東レ社製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が1mg/cmとなるように塗布・乾燥して、カソード用電極触媒層付きカーボンペーパーを作製した。上記2種類の電極触媒層付きカーボンペーパーの間に、膜試料を、電極触媒層が膜試料に接するように挟み、ホットプレス法により160℃、9MPaにて3分間加圧、加熱した。高分子電解質膜と電極触媒層が剥離せず良好に接合した場合は「○」、接合しなかった場合は「×」とした。
<実施例1>
3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(略号:S−DCDPS)は2.8重量%の結合水を有していたため、重合の前に120℃で15時間減圧乾燥して結合水を取り除いた。乾燥後のS−DCDPSは窒素雰囲気下で保管した。窒素導入管、攪拌翼、温度検出端、コンデンサー、電気ヒータージャケットを取り付けたチタン製密閉容器(内容積12リットル)に、S−DCDPS 800.0g、2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN)356.5g、4,4’−ビフェノール(略号:BP) 606.5g、4,4’−チオビスフェノール(略号:BPS) 96.9g、炭酸カリウム 562.7g、N−メチル−2−ピロリドン(略号:NMP) 4624.3gを入れて、8リットル/分の流量で窒素を流し、攪拌しながらヒーター温度(反応容器温度)を220℃に設定して加熱を開始した。コンデンサーには約25℃の水を通して冷却した。反応容器からコンデンサーまでの約1mの配管はグラスウールで保温を施した。加熱を開始して35分後、溶液の温度は150℃に達し、激しく発泡して液面が上昇した。加熱を開始して1時間10分後、反応液の温度が190℃付近に達したところで、コンデンサーからNMPと水の溜出が始まった。このときのコンデンサー入り口部分の温度は約155℃であった。加熱を開始して2時間40分後に、反応溶液の温度が203℃に達し、そのまま反応を続けた。反応を開始して12時間後、ヒーターを停止し、容器を冷却して反応を停止させた。また、同時にコンデンサーからのNMPと水の除去も停止した。反応溶液は攪拌しながら放冷し、温度が30℃になったところで、溶液を取り出した。褐色で粘ちょうな溶液が得られた。重合溶液はガラス板に薄く延ばし、水に浸漬して1日放置しポリマーを凝固させた。得られたポリマー膜は数回新しい水に浸漬した後、沸騰水中で1時間洗浄して残留しているNMPを除去した後、120℃で乾燥した。得られたポリマーについて対数粘度を測定したところ、1.02dl/gであった。反応系外に除去されたNMPと水の混合物の総質量は734.4gであった。この混合物の水分率は8.22%だったことから、抜き出された水は60.4g、NMPは674.0gであると求められた。生成水の理論量はビスフェノール化合物1モルあたり1モルの水なので、66.7gと計算された。これより、水分の除去率は90.5%、NMPの除去率は14.6%とそれぞれ求められた。
<実施例2>
減圧乾燥したS−DCDPSの代わりに、減圧乾燥していないS−DCDPS(水分率2.8重量%)823.0g(乾燥したS−DCDPSとして800.0g)を用いた他は、実施例1と同様にして重合を行った。
<実施例3>
乾燥したS−DCDPS 360.0g、DCBN 504.2g、BPS 799.8g、炭酸カリウム 557.1g、NMP 4579.7gを用い、反応時間を8時間とした他は実施例1と同様にして重合を行った。
<実施例4>
乾燥したS−DCDPS 310.0g、DCBN 253.3g、末端ヒドロキシル基含有フェニレンエーテルオリゴマー(大日本インキ化学工業社製SPECIANOL DPE−PL;化学式3においてmが1〜8の成分を含む混合物でnの平均値は5である構造であるもの)(略号:DPE) 1156.6g、炭酸カリウム319.8g、NMP 5164.3gを用い、反応時間を8時間にした他は、実施例1と同様にして重合を行った。
<実施例5>
乾燥したS−DCDPS 370.0g、DCBN 518.2g、4,4’−チオビスベンゼンチオール(略号:TBT) 707.3g、炭酸カリウム 572.5g、NMP 4910.3gを用い、反応時間を8時間にした他は、実施例1と同様にして重合を行った。
<比較例1>
コンデンサーからNMPと水を抜き出すことなく還流させて反応を行った他は、実施例1と同様にして重合を行った。
<比較例2>
ヒーター温度(反応容器温度)を236℃に設定した他は実施例1と同様にして重合を行った。反応時間が9時間になった付近で反応溶液の粘度が著しく上昇した。冷却後の反応容器を観察したところ、反応容器壁面にポリマーが固着しており、ポリマー溶液を回収することが困難であった。
<比較例3>
ヒーター温度(反応容器温度)を236℃に設定した他は実施例4と同様にして重合を行った。反応時間が4時間になった付近で反応溶液の粘度が著しく上昇し、反応溶液が攪拌翼にまきつき、重合を停止した。反応溶液はゲル状で流動性を示さず、ポリマー溶液を回収することが困難であった。
<比較例4>
窒素導入管、攪拌翼、温度検出端、コンデンサー、電気ヒータージャケットを取り付けたチタン製密閉容器(内容積12リットル)に、前もって120℃で15時間減圧乾燥した−DCDPS 800.0g、DCBN 356.5g、BP 606.5g、BPS 96.9g、炭酸カリウム 562.7g、NMP 4624.3g、トルエン1860.5gを入れて、8リットル/分の流量で窒素を流し、攪拌しながらヒーター温度(反応容器温度)を160℃に設定して加熱を開始した。コンデンサーには約20℃の水を通して冷却した。加熱開始後、約40分後にヒーター温度(反応容器温度)が160℃に達した。コンデンサーから溜出してくるトルエンと水は再び反応系に戻して、4時間還流させた。その後、溜出してくるトルエン及び水を反応系内に戻さずに、反応系外に取り出すようにした。反応開始後、5時間30分後、トルエンが溜出しなくなったので、コンデンサーから溜出した溶媒が反応系内に還流するようにし、ヒーター温度(反応容器温度)を220℃に設定して、さらに昇温させた。反応を開始して7時間後、溶液温度が201℃に達し、そのまま12時間の間、反応を続けた。その後、ヒーターを停止し、容器を冷却して反応を停止させた。その後、実施例1と同様にしてポリマーを得た。
<比較例5>
減圧乾燥したS−DCDPS 730.0g、DCBN 338.8g、BP 643.5g、炭酸カリウム 525.4g、NMP 4681.9gを用いた他は実施例1と同様にして重合を行った。
実施例及び比較例の結果を表1に示す。
Figure 2008038045
表1から、本発明の方法によれば、脱水にトルエンのような危険性の高い溶媒を用いなくてもイオン性基を有する高重合のポリマーを得ることができることが分かる。また、本発明の方法によれば、燃料電池の高分子電解質膜とした場合に電極との接合性が良好であるポリマーを重合する場合において、ゲル化や固化などを起こさずに良好にポリマーを得ることができ、優れている。
本発明の方法によれば、従来、高分子量化が容易ではなかったイオン性基含有ポリマーの高分子量化が容易であるのみならず、特定構造の二価フェノール化合物や二価チオフェノール化合物を用いるために、重合時にゲル化や固化を起こしやすいことが問題であった芳香族エーテルや芳香族スルフィド構造を有するポリマーを、ゲル化や固化などを起こすことなく製造でき、また、トルエンなどの危険な薬品を用いることなく簡単な設備で簡便に製造することができ、工業的に有用である。得られたイオン性基含有ポリマーは、高分子電解質膜として電極との接合性が良好で燃料電池用に好適であり、産業上寄与すること大である。
本発明におけるポリマー重合装置の一例の概要を示す模式図である。
符号の説明
1:攪拌モーター
2:攪拌翼
3:ジャケットヒーター
4:反応容器
5:窒素導入管
6:溜出溶媒溜め
7:コンデンサー
8:排気口
9:重合溶液抜き出しバルブ
10:還流―溜出の切り替えバルブ。
11:流量計

Claims (17)

  1. 芳香族ジハロゲン化合物と、二価フェノール化合物及び二価チオフェノール化合物のうちの少なくとも一方とを、アルカリ金属化合物の存在下、有機極性溶媒中で重縮合することによって芳香族エーテル構造及び芳香族スルフィド構造のうちの少なくとも一方を有するポリマー製造方法において、芳香族ジハロゲン化合物、二価フェノール化合物及び二価チオフェノール化合物のうちの少なくとも1種の化合物がイオン性基を有しており、二価フェノール化合物及び二価チオフェノール化合物のうちの少なくとも1種の化合物が、下記化学式1で表される構造であり、有機極性溶媒として、水と混和し常温で液体であり、常圧で沸点が200℃以上である溶媒を用い、フェノール基又はチオフェノール基のアルカリ金属塩化反応に際して副生する水分を、該有機極性溶媒の沸点より20℃低い温度から沸点までの範囲の温度で、不活性気体の気流下又は雰囲気下で有機極性溶媒と共に留去させ反応系外へ除去するとともに、重合反応時の反応容器温度を180〜230℃の範囲とすることを特徴とするイオン性基含有ポリマーの製造方法。
    Figure 2008038045
    [化学式1において、ZはOH基、SH基、及びそれらの基から誘導される基を、Zは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基のいずれかを、nは0以上の整数を表す。]
  2. 有機極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いる請求項1に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
  3. イオン性基が、スルホン酸基、スルホン酸基の塩、ホスホン酸基、ホスホン酸基の塩、リン酸基、リン酸基の塩からなる群より選ばれる1種以上の基である請求項1に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
  4. 芳香族ジハロゲン化物がイオン性基を有している請求項1に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
  5. 芳香族ジハロゲン化物が、下記化学式2で表される構造の化合物を含む請求項1に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
    Figure 2008038045
    (化学式2において、XはF、Cl、Br、Iのハロゲン元素のいずれかを、Yは、スルホニル基又はカルボニル基のいずれかを、Zは、スルホン酸基及びその塩、ホスホン酸基その塩、リン酸基及びその塩、アルキルスルホン酸基及びその塩からなる群より選ばれる基を表す。)
  6. イオン性基を含むモノマーが結合水を含む状態で重合に用いる請求項1に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
  7. 水分を除去する際の加熱温度が、該有機極性溶媒の常圧での沸点から沸点よりも20℃高い温度までの温度の範囲である請求項1に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
  8. 水分を除去する際の反応系の温度が、該有機極性溶媒の常圧における沸点から−20℃低い温度から沸点までの範囲である請求項1に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
  9. 化学式1におけるnが1以上である請求項1に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
  10. 化学式1におけるnが3以上である請求項1に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
  11. 化学式1におけるZがOH基であり、ZがO原子であり、nが3以上である請求項1に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
  12. 化学式1におけるZがOH基又はSH基であり、ZがO原子又はS原子であり、nが1である請求項1に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
  13. 化学式1におけるZがOH基又はSH基であり、nが0である請求項1に記載のイオン性基含有ポリマーの製造方法。
  14. 請求項1〜13に記載の方法によって得られるイオン性基含ポリマーであって、0.5g/dlのN−メチルピロリドン溶液についてウベローデ型粘度計を用いて30℃で測定した対数粘度が、0.1〜3.0dl/gであるポリマー。
  15. 請求項14に記載のイオン性基含有ポリマーを含む高分子電解質膜。
  16. 請求項14に記載のイオン性基含有ポリマーを、高分子電解質膜及び/又は電極触媒層に含む高分子電解質膜/電極接合体。
  17. 請求項16に記載の膜/電極接合体を用いた燃料電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011219643A (ja) * 2010-04-12 2011-11-04 Tokyo Institute Of Technology トリアジン単位含有ポリ(フェニレンチオエーテル)

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