JP2008031223A - キラルな高分子化合物およびそれを用いたクロマトグラフィー用固定相、並びに光学異性体分離用クロマト充填剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
下記の構造式1で表されるキラルな高分子化合物。円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値が、溶液試料の測定において1000deg・cm2・dmol−1以上である点が特徴。
式中のArは芳香環、R1及びR2は水素原子又は有機基、R3及びR4は水素原子又は有機基(R3とR4が同時に水素原子となることはない)、nは2以上の整数、−X−は−(CH2)q−,芳香族基、ビニル基、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む基、qは0以上の整数である。
【選択図】なし
Description
本発明の第2の目的は、従来以上に分離能が高い上耐久性にも優れた、超臨界クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーの固定相に用いられる光学異性体分離用クロマト充填剤を提供することにある。
但し、式中のArは芳香環、R1およびR2は水素原子または有機基、R3およびR4は水素原子または有機基であり、R3とR4が同時に水素原子となることはない。nは2以上の整数であり、−X−は−(CH2)q−,芳香族基、ビニル基、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を含む基であり、qは0以上の整数である。尚、R3,R4はそれぞれ2−4個導入されていても良く、それぞれ同じであっても異なっていても良い。
但し、式中のR1、R2およびnは、構造式1のR1、R2およびnと同じであり、R3−R10は構造式1のR3およびR4と同じである。
また、上記構造式1中のR3およびR4の少なくとも1つが、枝分かれ構造を有する炭素数3〜20のアルキル基、炭素数6〜30の置換または無置換の芳香族基、ウレタン結合を有する基、またはヘテロ原子を介して芳香族基と結合している基から選択されることが好ましく、特に、前記枝分かれ構造を有する炭素数3〜20のアルキル基が、イソプロピル基またはイソペンチル基であり、前記炭素数6〜30の置換または無置換の芳香族基が、4−tert−ブチルフェニル基または4−ビニルフェニル基であり、前記ヘテロ原子を介して芳香族基と結合している基が、ジフェニルアミノ基またはフェニルエチルアミノ基であることが好ましい。
また、本発明のキラルな高分子化合物は、芳香族基のねじれたスタッキング螺旋構造によって光学活性を示すので、偏光吸収・発光材料、光電変換材料、電荷輸送材料、電荷蓄積材料としても有用である。
上記Arは芳香環、R1およびR2は水素原子または有機基であり、特に水素原子、アルキル基、芳香族基、−CNまたはエステル基であることが好ましく、更に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基または−CNであることが好ましい。
また、Xは、−(CH2)q−、芳香族基、ビニル基、ヘテロ原子またはヘテロ原子を含む基であり、qは0以上の整数である。Xのヘテロ原子の例としては、−O−、−S−など、ヘテロ原子を含む基としては、−NR−、−C(O)−等を挙げることができる。
尚、R3、R4はそれぞれ2〜4個導入されていても良い。この場合、R3およびR4の各々は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。
特に、円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値が、200−500nmの波長範囲において、テトラヒドロフラン、クロロホルムまたはこれらを含む混合溶媒中で1000deg・cm2・dmol−1以上であることが好ましい。
1.R*M
ここでR*は光学活性アルキル基、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、R*Mの具体例としては、例えば、(−)−メントキシカリウム、(+)−メントキシカリウムを挙げることが出来る。
ここでRはアルキル基、R*は光学活性アルキル基、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属、Nは窒素原子であり、その具体例としては、例えば下記の化合物が挙げられる。
(RR*NM)
(RR*RM)
ここで、Rはアルキル基、Oは酸素原子、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属である。キラルリガンドとは、光学活性基を含むジアミノ化合物であって、2座型の配位子となり得る化合物のことである。具体例としては、例えば(+)−或は(−)−スパルテイン、(+)−或は(−)−1,4−ビス(ジメチルアミノ)−2,3−ジメトキシブタン、(+)−或は(−)−(1−ピロリジニルメチル)ピロリジン、(+)−或は(−)−(4S)−2,2’−(1−エチルプロピリデン)ビス[4−(1−フェニルエチル)−4,5−ジハイドロオキサゾール]等が挙げられる。
ここで、Rはアルキル基、Xは酸素または窒素原子、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属である。R’は光学活性基である。M’はMと同一のあるいは異なるアルカリ金属またはアルカリ土類金属である。R’Xの具体例としては例えば、(+)−或は(−)−メントキシ基、1−フェニルエチルアミノ基、1−ナフチルエチルアミノ基、2−(1−ピロリジニルメチル)ピロリジン−1−イル基等である。
また、構造式1のR3、R4、または構造式2のR3〜R10として光学活性な置換基を導入したモノマーを使用する場合には、通常の光学活性でない重合開始剤を用いて重合しても良い。すなわち、光学活性でない重合開始剤を用いた場合でも、R3〜R10に導入された。光学活性な置換基同士の相互作用により、ポリマーの側鎖のスタッキング構造がねじれるので安定な光学活性を示すポリマーを得ることができる。しかしながら、光学活性である上記開始剤を用いる方が好ましい。
なお、メントキシカリウム系の開始剤としては、例えば、(+)−メントキシカリウム、(−)−メントキシカリウム、PMP−FlLi系の開始剤としてはフルオレニルリチウム−(+)−1−(2−ピロリジニルメチル)ピロリジン錯体およびフルオレニルリチウム−(−)−1−(2−ピロリジニルメチル)ピロリジン錯体などが挙げられる。また、Sp−FlLi系の開始剤としては、フルオレニルリチウム−(+)−スパルテイン錯体およびフルオレニルリチウム−(−)−スパルテイン錯体などが挙げられる。
1.請求項1、2に記載されたキラルな高分子化合物であって、溶剤に不溶なポリマーを粉砕した材料。特に粒径が均一であることが好ましい。
2.請求項1、2に記載されたキラルな高分子化合物を、シリカゲル、またはアルミナの表面に担持、もしくは化学結合させた材料。
3.請求項1、2に記載されたキラルな高分子化合物を、ポリスチレンビーズ表面に担持、若しくは化学結合させた材料。
1. i−Pr−DBFの合成実施例
1−1. 2,7−ジイソプロピルフルオレンの合成
フレームドライおよび窒素置換した滴下漏斗および冷却管付き2Lの3口フラスコ中で、2,7−ジブロモフルオレン(15.0g,46.2mmol)とNiCl2 dppp[ニッケル ジクロロビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン](1.67g,4.62mmol)を乾燥ジエチルエーテル(750mL)に溶解した。溶液を−78℃に冷却し、撹拌しながら1.1mol/Lのイソプロピルマグネシウムクロリドのジエチルエーテル溶液(210mL,231mmol)を滴下した。滴下終了後、反応混合物を6時間加熱還溜した。反応混合物を氷冷し、1Nの塩酸水溶液を加えて反応を停止した。生成物をジエチルエーテル(200mL)で3回抽出し、抽出液(有機層)をまず飽和重炭酸ナトリウム水溶液(200mL)で、次いで飽和食塩水(200mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。乾燥剤を濾別し溶媒を減圧留去してから残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,φ60×300mm,展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=9/2(v/v))によって精製し、減圧留去することにより目的物である2,7−ジイソプロピル−フルオレン(10.46g,39.9mmol)の薄黄色固体(収率86%)を得た。
フレームドライおよび窒素置換した滴下漏斗付き1Lの3口フラスコに2,7−ジイソプロピル−フルオレン(10.0g,40mmol)、乾燥トルエン(600mL)、TMEDA[N,N,N′,N′‐テトラメチルエチレンジアミン](16.3mL,108mmol)を入れ、均一になるまで撹拌した後氷冷した。攪拌しながら1.6mol/L n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(65.6mL,114mmol)をゆっくりと滴下した後5分間撹拌し、五酸化二リン存在下で減圧乾燥したパラホルムアルデヒド(13.4g,450mmol)を加え、さらに70分間撹拌した。反応系を室温に戻して水(150mL)を加え、反応を停止した後に生成物を酢酸エチル(200mL)で3回抽出した。抽出液を飽和食塩水(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧留去してから残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,φ60×300mm,展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=6/1(v/v))で精製し9−ヒドロキシメチル−2,7−ジイソプロピルフルオレン(5.79g,20.6mmol)の無色固体(収率52%)を得た。
還流管を取り付けた100mLの3口フラスコ中で、9−ヒドロキシメチル−2,7−ジイソプロピルフルオレン(2.00g,7.13mmol)をメタノール(27mL)−THF(27mL)混合溶媒に溶解し、溶液中の溶存酸素を除くために減圧脱気および窒素置換を3回繰り返した。溶液を0℃に冷却してtert−ブトキシカリウム(2.38g,21.4mmol)を加えた後、10分間加熱還溜した。反応溶液を氷冷し、脱気および窒素置換した水(30mL)を加えて反応を停止した後、生成物を脱気・窒素置換したヘキサン(30mL)を用いて3回抽出した。抽出液を飽和食塩水(15mL)で洗浄した後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,φ25×300mm,展開溶媒:ヘキサン)によって精製し、i−Pr−DBF(1.20g,4.57mmol)の黄色固体(収率64%)を得た。i−Pr−DBFは乾燥ヘキサン溶液とし、予めフレームドライおよび窒素置換したアンプル中に、水素化カルシウムと共に−20℃で遮光保存した。
2−1. メントキシカリウム系の開始剤を用いた重合
すべての反応を乾燥窒素雰囲気下で行った。真空下でフレームドライをし、次いで窒素置換した25mLのガラス製アンプルに、0.551mol/Lのi−Pr−DBFヘキサン溶液(1.81mL,1.00mmol)を入れ、ヘキサンを減圧留去した後、30分間脱気乾燥した。容器を窒素置換した後、乾燥THF2.241mLを加えてモノマーを溶解し、溶液を−78℃に冷却した。これにメントキシカリウム系の開始剤である(−)−メントキシカリウムの0.2mol/LTHF溶液2.5mL(0.5mmol)を加え重合反応を開始した。24時間後にメタノールを1mL加えて重合を停止し、反応混合物をメタノール(300mL)中に注いで再沈殿させ、遠心分離により不溶部のポリマーを回収した。収率は32.7%であった。これを、THFを用いて溶媒分別し、28%のTHF可溶部と4.7%のTHF不溶部を得た。
すべての反応を乾燥窒素雰囲気下で行った。真空下でフレームドライを行なった後、窒素置換した25mLのガラス製アンプルに0.386mol/L i−Pr−DBFのヘキサン溶液(2.59mL,1.0mmol)を入れ、ヘキサンを減圧留去させた後、30分間脱気乾燥した。容器を窒素置換した後、乾燥トルエン1.99mLを加えてモノマーを完全に溶解し、溶液を−78℃に冷却した。PMP−n−BuLi系の開始剤であるn−ブチルリチウム−(+)−1−(2−ピロリジニルメチル)ピロリジン錯体((+)−PMP−FlLi,[PMP]/[BuLi]=1.2)の0.2mol/Lトルエン溶液0.25mL(BuLi0.05mmol相当)を加え、重合反応を開始した。重合開始から36時間後に、少量の反応溶液をサンプリングして1H NMRを用いて分析し、i−Pr−DBFの転化率が73%であることを確認してから、メタノールを1mL加えて重合を停止させた。反応系が室温に戻った後、反応混合物をメタノール(300mL)中に注いで再沈殿させ、遠心分離により不溶部のポリマーを収率74%で回収した。これを、THFを用いて溶媒分別し、26.7%の可溶部と47.3%の不溶部を得た。
得られたpoly(i−Pr−DBF)について、CDおよびUVスペクトルを測定した。
1mLメスフラスコにpoly(i−Pr−DBF)2.21mgを採取し、これにスペクトル用のTHFを標線まで加え、得られた溶液を10倍希釈し調製し、CDおよびUV測定を行なった。測定にはセル長が1mmのセルを用い、室温(23℃)で測定した。なお、poly(i−Pr−DBF)の測定においては、波長285nmにおける吸光度が約1.0になることを確認した。
円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値は、メントキシカリウム系の開始剤を用いて得られたpoly(i−Pr−DBF)の場合が、4500deg・cm2・dmol−1[255nm]、PMP−n−BuLi系の開始剤を用いて得られたpoly(i−Pr−DBF)の場合が、2000deg・cm2・dmol−1[255nm]であり、何れも、従来のpoly(DBF)の場合より強いCD吸収を示すことが確認された。
1. i−Bu−DBFの合成実施例
1−1. 2,7−ビス(2−メチル−1−オキシ−n−プロピル)フルオレンの合成
メカニカルスターラーおよび塩化水素ガストラップ付き3Lの4口フラスコをフレームドライおよび窒素置換し、その中にフルオレン(30.07g,181mmol)、塩化アルミニウム(97.51g,731mmol)、二硫化炭素(400mL)を入れて撹拌した。混合物に塩化イソブチリル(57mL,543mmol)を30分以上かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、その反応溶液を室温で24時間撹拌し、その後反応溶液を氷の入った2Lのマイヤーにゆっくりと撹拌しながら注ぎ、クロロホルムで有機層を抽出した。次いで、これを2%水酸化ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、得られた溶液をセライトろ過し、溶媒を減圧留去することにより、粗生成物(61.01g)を茶色の固体として得た。得られた個体を酢酸エチルから再結晶し、2,7−ビス(2−メチル−1−オキシ−n−プロピル)フルオレン(34.25g,112mmol)の茶色の固体を得た(収率62%)。
Dean−Starkトラップおよびジムロート冷却管を取り付けた1Lの3口フラスコに2,7−ビス(2−メチル−1−オキシ−n−プロピル)フルオレン(30.0g,98.0mmol)、ジエチレングリコール(400mL)およびヒドラジン1水和物(48mL,980mmol)をこの順序で入れ、130℃で2時間撹拌した。その後水酸化カリウム(22.6g,343mmol(85%))を加え、200℃で3時間撹拌した。1H NMRで原料がなくなったことを確認した後、室温まで冷却してから水(200mL)を加えた。それからこの反応溶液をジエチルエーテル(150mL)で2回抽出し、この有機層を水(100mL)で2回洗い、硫酸マグネシウムにて乾燥した。乾燥剤をろ過により除去した後、溶媒を減圧留去してから残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,φ60×300mm,展開溶媒:ヘキサン)によって精製し、目的物である2,7−ビス(2−メチル−n−プロピル)フルオレン(23.77g,85.4mmol)の無色固体を得た(収率87%)。
フレームドライおよび窒素置換した滴下漏斗付き1Lの3口フラスコに、2,7−ビス(2−メチル−n−プロピル)フルオレン(10.0g,36.0mmol)、乾燥トルエン(600mL)およびTMEDA(16.3mL,107.5mmol)を入れ、撹拌および氷冷した。次いで、1.6mol/Lのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(65.6mL,105mmol)をゆっくりと滴下し、氷浴中で5分間撹拌した後、5酸化2リン存在下で減圧乾燥したパラホルムアルデヒド(3.06g,102mmol)を加え、氷浴中で70分間撹拌させた。それから室温に戻し、水(150mL)を加えて反応を停止させた後、酢酸エチル(200mL)で3回抽出し、飽和食塩水(50mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤をろ過して取り除いた後、溶媒を減圧留去してから、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,φ60×300mm,展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=9/2(v/v))によって精製し、減圧留去して、目的物である9−ヒドロキシメチル−2,7−ビス(2−メチル−n−プロピル)フルオレン(9.0g,29.2mmol)の無色固体を得た(収率81%)。
還流管を取り付けた300mLの3口フラスコに、9−ヒドロキシメチル−2,7−ビス(2−メチル−n−プロピル)フルオレン(5.0g,16.2mmol)とメタノール(60mL)およびTHF(60mL)をいれ、この溶液中の溶存酸素を除くために脱気および窒素置換を3回繰り返した。この溶液を0℃に冷却してから、tert−ブトキシカリウム(5.4g,48.6mmol)を加え、10分間還流させた。この反応溶液を氷水浴で冷却してから、窒素バブリングした水(70mL)を加えて反応を停止させた後、窒素バブリングしたヘキサン(70mL)で3回抽出し、次いで飽和食塩水(15mL)で洗浄した後、硫酸マグネシウムにより乾燥させた。乾燥剤をろ過して取り除いた後、溶媒を減圧留去してから、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,φ30×300mm,展開溶媒:ヘキサン)によって精製した。溶媒を減圧留去した後真空乾燥し、目的物であるi−Bu−DBF(4.12g,14.2mmol)を薄黄色固体として得た(収率88%)。その後、i−Bu−DBFを乾燥ヘキサンに溶解し、予めフレームドライしたアンプル管に水素化カルシウムと共にいれ、重合に用いるまで−20℃で遮光保存した。
2−1. メントキシカリウム系の開始剤を用いた重合
すべての反応を乾燥窒素雰囲気下で行った。真空下フレームドライの後、窒素置換した25mLのガラス製アンプルに、0.551mol/Lのi−Bu−DBFのヘキサン溶液を1.81mL(1.00mmol)入れ、ヘキサンを減圧留去した後、30分間脱気乾燥した。容器を窒素置換した後、乾燥THF2.241mLを加えてモノマーを完全に溶解し、溶液を−78℃に冷却した。別途調製したメントキシカリウム系の開始剤である(−)−メントキシカリウムの0.2mol/LTHF溶液2.5mL(0.5mmol)を加え、重合反応を開始させた。重合開始から24時間後に、少量の反応溶液をサンプリングして1H NMRにより分析し、i−Bu−DBFの転化率が95%であることを確認してから、メタノールを1mL加えて重合を停止させた。反応系が室温に戻った後、反応混合物をメタノール(300mL)中に注いで再沈殿させ、遠心分離により不溶部のポリマーを回収した。収率は32.7%であった。これをTHFで溶媒分別し、28%のTHF可溶部と4.7%のTHF不溶部を得た。
すべての反応を乾燥窒素雰囲気下で行った。真空下でフレームドライを行なった後、窒素置換した25mLのガラス製アンプルに、0.595mol/Lのi−Bu−DBFのヘキサン溶液1.68mL(1.0mmol)を入れ、ヘキサンを減圧留去させた後、30分間脱気乾燥した。容器を窒素置換した後、乾燥トルエン4.21mLを加えてモノマーを完全に溶解し、溶液を−78℃に冷却した。PMP FlLi系の開始剤であるフルオレニルリチウム−(+)−1−(2−ピロリジニルメチル)ピロリジン錯体((+)−PMP−FlLi,[PMP]/[FlLi]=1.2)の0.2mol/Lトルエン溶液0.5mL(FlLi0.1mmol相当)を加え、重合反応を開始させた。重合開始から36時間後に、少量の反応溶液をサンプリングして1H NMRにより分析し、i−Bu−DBFの転化率が73%であることを確認してから、メタノールを1mL加えて重合を停止させた。反応系が室温に戻った後、反応混合物をメタノール(300mL)中に注いで再沈殿させ、遠心分離により不溶部のポリマーを収率54%で回収した。得られたポリマーは全てTHFに可溶であった。
得られたpoly(i−Bu−DBF)について、CDおよびUVスペクトルを測定した。測定は、実施例1−3と同様にして行った。
図4、図5に、それぞれ、実施例2−2−1のメントキシカリウム系の開始剤を用いて得られたpoly(i−Bu−DBF)と、実施例2−2−2のPMP−FlLI系の開始剤を用いて得られたpoly(i−Bu−DBF)のTHF溶液中でのCDスペクトルを示す。
円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値は、メントキシカリウム系の開始剤を用いて得られたpoly(i−Bu−DBF)が、15000deg・cm2・dmol−1[290nm]、PMP−FlLi系の開始剤を用いて得られたpoly(i−Bu−DBF)が、2400deg・cm2・dmol−1[250nm]であり、何れも、従来のpoly(DBF)の場合(図3)より強いCD吸収を示すことが確認された。
1. n−Pe−DBFの合成実施例
1−1. 2,7−ビス(1−オキシ−n−ペンチル)フルオレンの合成
フレームドライおよび窒素置換した、メカニカルスターラーおよび塩化水素ガストラップ付きの3Lの4口フラスコに、フルオレン(30.09g,181mmol)、塩化アルミニウム(100.16g,753mmol)、および二硫化炭素(400mL)を入れて撹拌し、次いで、その溶液に塩化バレロイル(64mL,543mmol)を30分以上かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、その反応溶液を室温で8時間撹拌した後、反応溶液を氷の入った2Lのマイヤーフラスコにゆっくりと撹拌しながら注ぎ、塩化メチレンで有機層を抽出した。得られた抽出物を2%の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した後、更に飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。得られた溶液をセライトでろ過した後、溶媒を減圧留去することにより粗生成物(61.01g)を茶色の固体として得た。これを酢酸エチルから再結晶し、目的物である2,7−ビス(1−オキシ−n−ペンチル)フルオレン(52.45g,157mmol)を赤色固体として得た(収率87%)。
Dean−Starkトラップおよびジムロート冷却管を取り付けた1Lの3口フラスコに2,7−ビス(1−オキシ−n−ペンチル)フルオレン(32.5g,97.3mmol)、ジエチレングリコール(400mL)、ヒドラジン1水和物(48mL,980mmol)をこの順序で入れ、130℃で2時間撹拌した。更に、水酸化カリウム(22.6g,343mmol(85%))を加え、80℃で6時間撹拌した。1H NMRを用いて原料がなくなったことを確認した後、室温まで冷却してから水(200mL)を加えた。それからこの反応溶液をジエチルエーテル(200mL)を用いて3回抽出し、この有機層を1NのHCl水溶液(100mL)で2回、次いで飽和重炭酸ナトリウム水溶液(100mL)で2回、更に飽和食塩水(100mL)で1回洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。乾燥剤をろ過して除去した後溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒:ヘキサン)によって精製し、目的物である2,7−ジ−n−ペンチル−フルオレン(26.21g,85.5mmol)を白色固体として得た(収率94%)。
フレームドライおよび窒素置換した滴下漏斗付き1Lの3口フラスコに、2,7−ジ−n−ペンチル−フルオレン(5.09g,16.6mmol)、乾燥トルエン(280mL)およびTMEDA(7.14mL,49.0mmol)を入れ、撹拌しながら氷冷した。次いで1.6mol/Lのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(15.5mL,49.0mmol)をゆっくりと滴下し、氷浴中で5分間撹拌した後、5酸化2リン存在下で減圧乾燥したパラホルムアルデヒド(1.58g,52.7mmol)を加え、氷浴中で80分間撹拌し、溶液を室温に戻し、水(100mL)を加えて反応を停止させた後、酢酸エチル(200mL)で2回抽出し、次いで飽和食塩水(50mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ過して取り除いた後溶媒を減圧留去し、次いで残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,φ60×300mm,展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=15/1(v/v))によって精製し、減圧留去して、目的物である9−ヒドロキシメチル−2,7−ジ−n−ペンチル−フルオレン(3.81g,11.2mmol)を、白色固体として得た(収率68%)。
還流管を取り付けた100mLの3口フラスコに、9−ヒドロキシメチル−2,7−ジ−n−ペンチル−フルオレン(1.66g,4.96mmol)とTHF(30mL)をいれ、この溶液中の溶存酸素を除くために脱気および窒素置換を3回ずつ繰り返した。この溶液に予め脱気および窒素置換をしたtert−ブトキシカリウム(1.72g,15.3mmol)のメタノール溶液(30mL)を、シリンジを用いて一気に加え、60℃で20分間加熱した。溶液を氷水浴で冷却してから、窒素バブリングした蒸留水(100mL)を加えて反応を停止させた後、窒素バブリングしたヘキサン(100mL)で3回抽出し、飽和食塩水(50mL)で洗浄した後、硫酸マグネシウムにより乾燥した。乾燥剤をろ過して取り除いた後、溶媒を減圧留去してから、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,φ25×200mm,展開溶媒:ヘキサン)によって精製し、溶媒を減圧留去した後真空乾燥し、目的物であるn−Pe−DBF(1.51g,4.76mmol)を黄色の粘稠な液体として得た(収率85%)。その後、n−Pe−DBFを水素化アルミニウムリチウム存在下のTrap−to−Trap法で蒸留したTHFに溶解させ、予めフレームドライしたアンプル管に水素化カルシウムと共にいれ、重合に用いるまで−20℃の冷蔵庫で遮光保存した。
2−1. メントキシカリウム系の開始剤を用いた重合
すべての反応を乾燥窒素雰囲気下で行った。真空下におけるフレームドライに続いて、窒素置換した25mLのガラス製アンプルに、0.301mol/Lのn−Pe−DBFのヘキサン溶液3.32mL(1.00mmol)を入れ、ヘキサンを減圧留去させた後、30分間脱気乾燥した。容器を窒素置換した後、乾燥THF4.18mLを加えてモノマーを完全に溶解し、溶液を−78℃に冷却した。別途調製したメントキシカリウム系の開始剤である(−)−メントキシカリウムの0.2mol/LTHF溶液0.5mL(0.1mmol)を加えて重合反応を開始した。重合開始から144時間後に、少量の反応溶液をサンプリングして1H NMRにより分析し、n−Pe−DBFの転化率が71%であることを確認してから、メタノールを1mL加えて重合を停止した。反応系が室温に戻った後、反応混合物をメタノール(300mL)中に注いで再沈殿させ、遠心分離によって不溶部のポリマーを回収した。収率は70.7%であった。これをTHFで溶媒分別し、20.4%の可溶部と59.1%の不溶部を得た。
すべての反応を乾燥窒素雰囲気下で行った。真空下におけるフレームドライに続いて、窒素置換した50mLのガラス製アンプルに、0.113mol/Lのn−Pe−DBFのTHF溶液14.3mL(1.62mmol)を入れ、ヘキサンを減圧留去させた後、30分間脱気乾燥した。容器を窒素置換した後、乾燥トルエン5.6mLを加えてモノマーを完全に溶解し、溶液を−78℃に冷却した。PMP FlLi系の開始剤であるフルオレニルリチウム−(+)−1−(2−ピロリジニルメチル)ピロリジン錯体((+)−PMP−FlLi,[PMP]/[FlLi]=1.2)の0.1mol/Lトルエン溶液2.1mL(FlLi0.21mmol相当)を加えて重合反応を開始させた。重合開始から42時間後に、少量の反応溶液をサンプリングして1H NMRにより分析し、n−Pe−DBFの転化率が77%であることを確認してから、メタノールを1mL加えて重合を停止した。反応系が室温に戻った後、反応混合物をメタノール(300mL)中に注いで再沈殿させ、遠心分離により不溶部のポリマーを回収した。収率は73%であった。得られたポリマーはTHFに完全に溶解した。
得られたpoly(n−Pe−DBF)について、CDおよびUVスペクトルを測定した。測定方法は、実施例1−3と同様にして行った。
図6、図7に、それぞれ、実施例3−2−1のメントキシカリウム系の開始剤を用いて得られたpoly(n−Pe−DBF)と、実施例3−2−2のPMP FlLi系の開始剤を用いて得られたpoly(n−Pe−DBF)のTHF溶液中でのCDスペクトルを示す。
円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値は、メントキシカリウム系の開始剤を用いて得られたpoly(n−Pe−DBF)が、1600deg・cm2・dmol−1[250nm,275nm]、PMP FlLi系の開始剤を用いて得られたpoly(n−Pe−DBF)が、1500deg・cm2・dmol−1[260nm]であり、何れも、従来のpoly(DBF)(図3)より強いCD吸収を示すことが確認された。
1. i−Pe−DBFの合成実施例
1−1. 2,7−ビス(3−メチル−1−オキシ−n−ブチル)フルオレンの合成
フレームドライおよび窒素置換した、メカニカルスターラーおよび塩化水素ガストラップ付き3Lの4口フラスコに、フルオレン(40.04g,241mmol)、塩化アルミニウム(129g,968mmol)、および二硫化炭素(500mL)を入れて撹拌した。得られた溶液に塩化イソバレリル(64mL,723mmol)を30分以上かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応溶液を室温で24時間撹拌した後、反応溶液を、氷の入った2Lのマイヤーフラスコにゆっくりと撹拌しながら注ぎ、クロロホルムで有機層を抽出し、これを2%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、更におよび飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液をセライトろ過した後、溶媒を減圧留去することにより粗生成物(61.01g)を茶色の固体として得た。得られた粗生成物を酢酸エチルから再結晶し、目的物である2,7−ビス(3−メチル−1−オキシ−n−ブチル)フルオレン(65.0g,195mmol)を赤色固体として得た(収率81%)。
Dean−Starkトラップおよびジムロート冷却管を取り付けた1Lの3口フラスコに、2,7−ビス(3−メチル−1−オキシ−n−ブチル)フルオレン(32.5g,97.3mmol)、ジエチレングリコール(400mL)およびヒドラジン1水和物(48mL,980mmol)をこの順序で入れ、130℃で2時間撹拌した。その後80℃まで冷却し、水酸化カリウム(23.7g,0.503mmol(85%))を加え、再度200℃まで加熱し、この温度で8時間撹拌した。1H NMRで原料がなくなったことを確認した後、室温まで冷却してから水(200mL)を加えた。次いで、この反応溶液をジエチルエーテル(200mL)で3回抽出し、有機層を1NのHCl水溶液(100mL)で2回、次いで蒸留水(100mL)で2回、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(100mL)で2回、蒸留水(100mL)で2回、飽和食塩水(100mL)で1回洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥した。乾燥剤をろ過により除去した後、溶媒を減圧留去してから残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,φ25×200mm,展開溶媒:ヘキサン)で精製し、溶媒を減圧留去することにより、目的物である2,7−ビス(2−メチル−n−ブチル)フルオレン(27.45g,89.6mmol)を薄黄色針状結晶として得た(収率92%)。
フレームドライおよび窒素置換した滴下漏斗付き1Lの3口フラスコに、2,7−ビス(2−メチル−n−ブチル)フルオレン(10.02g,32.7mmol)、乾燥トルエン(600mL)およびTMEDA(15mL,99.4mmol)を入れ、撹拌しながら氷冷した。次いで、1.6mol/L n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(62mL,99.2mmol)をゆっくりと滴下し、氷浴中で5分間撹拌した後、5酸化2リン存在下で減圧乾燥したパラホルムアルデヒド(3.06g,102mmol)を加え、氷浴中で3時間撹拌した。反応液を室温に戻し、水(150mL)を加えて反応を停止させた後、酢酸エチル(200mL)で2回抽出し、次いで飽和食塩水(50mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤をろ過して取り除いた後、溶媒を減圧留去してから残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,φ60×300mm,展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=20/1(v/v))によって精製し、減圧留去することにより、目的物である9−ヒドロキシメチル−2,7−ビス(2−メチル−n−ブチル)フルオレン(5.12g,15.2mmol)を白色固体として得た(収率47%)。
還流管を取り付けた300mLの3口フラスコに、9−ヒドロキシメチル−2,7−ビス(2−メチル−n−ブチル)フルオレン(4.06g,12.1mmol)とTHF(48mL)をいれ、次いで溶液中の溶存酸素を除くために、脱気および窒素置換を3回繰り返した。この溶液に、予め脱気・窒素置換をしたtert−ブトキシカリウム(4.03g,36mmol)のメタノール溶液(48mL)を、シリンジを用いて一気に加え、60℃で20分間加熱した。溶液を氷水浴で冷却してから、窒素バブリングした蒸留水(100mL)を加えて反応を停止させた後、窒素バブリングしたヘキサン(100mL)で3回抽出し、飽和食塩水(50mL)で洗浄した後、MgSO4により乾燥した。乾燥剤をろ過して取り除き、溶媒を減圧留去した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,φ25×200mm,展開溶媒:ヘキサン)によって精製し、溶媒を減圧留去し、次いで真空乾燥することにより、目的物であるi−Pe−DBF(3.26g,10.2mmol)を黄色固体として得た(収率85%)。その後、i−Pe−DBFを水素化アルミニウムリチウム存在下におけるTrap−to−Trap法で蒸留したTHFに溶解させ、予めフレームドライしたアンプル管に水素化カルシウムと共にいれ、重合に用いるまで−20℃で遮光保存した。
すべての反応を乾燥窒素雰囲気下で行った。真空下でフレームドライした後更に窒素置換した100mLのガラス製アンプルに、0.418mol/Lのi−Pe−DBFのヘキサン溶液(9.56mL,4.00mmol)を入れ、ヘキサンを減圧留去させた後、30分間脱気乾燥した。容器を窒素置換した後、乾燥THF17.7mLを加えてモノマーを完全に溶解し、溶液を−78℃に冷却した。別途調製したメントキシカリウム系の開始剤である(−)−メントキシカリウムの0.2mol/LTHF溶液1mL(0.2mmol)を加えて重合反応を開始した。重合開始から48時間後に、少量の反応溶液をサンプリングして1H NMRにより分析し、i−Pe−DBFの転化率が72.8%であることを確認してから、ヨウ化メチルを2mL加えて重合を停止(−78℃で1日放置)させた。反応系が室温に戻った後、反応混合物をメタノール(300mL)中に注いで再沈殿させ、遠心分離によりメタノール不溶部のポリマーを回収した。収率は70.4%(仕込みのモノマーからの収率)であった。得られたポリマーをTHFで分別し、THF可溶部32mg(2.5%)(Mn<2900)とTHF不溶部864mg(67.9%)(Mn>2900)を得た。
得られたpoly(i−Pe−DBF)について、CDおよびUVスペクトルを測定した。測定は、実施例1−3と同様にして行なった。
図8に、実施例4−2のメントキシカリウム系の開始剤を用いて得られたpoly(i−Pe−DBF)のTHF溶液中におけるCDスペクトルを示す。
メントキシカリウム系の開始剤を用いて得られたpoly(i−Pe−DBF)の円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値は、3600deg・cm2・dmol−1[250nm]であり、従来のpoly(DBF)(図3)より強いCD吸収を示すことが確認された。
1. PhA−DBFの合成実施例
1−1. 2−N,N−ジフェニルアミノ−フルオレンの合成
あらかじめ、フレームドライおよび窒素置換した30mLの2口フラスコ(冷却器付)に、tert−ブトキシナトリウム223.2mg(2.32mmol)をいれ、脱気した後ヒートガンで暖め、試薬に存在するわずかな湿気を取り除いた。次いで、窒素置換した後に、酢酸パラジウム7.1mg(0.032mmol)、2−ブロモフルオレン372.4mg(1.52mmol)およびジフェニルアミン307.2mg(1.82mmol)をこの順でいれ、1時間真空乾燥した後、窒素を充填した。更に、トリ−tert.−ブチルホスフィン24.8mg(0.123mmol)と蒸留トルエン15mLを加え、80℃で19時間加熱した。TLC(シリカゲルプレート,展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=9/1(v/v))によって原料の2−ブロモフルオレンが完全に消費されたことを確認してから、反応系を室温まで冷却し、水を加えて反応を停止させた。この溶液をクロロホルムで抽出した後水で3回洗浄し、更に飽和食塩水で1回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ過して取り除き、ろ液を減圧留去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、φ20×250mm、ヘキサン/酢酸エチル=9/1(v/v))により精製し、溶媒を減圧留去することにより、目的物である2−N,N−ジフェニルアミノ−フルオレン(0.4821g,1.45mmol)を、薄茶色の固体として得た(収率95%)。
フレームドライおよび窒素置換した滴下漏斗付き1Lの3口フラスコに2−N,N−ジフェニルアミノ−フルオレン(6.7124g,20.1mmol)、乾燥トルエン(300mL)およびTMEDA(8.2mL,5.43mmol)を入れ、撹拌および氷冷した。それから1.6mol/Lのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(25mL,40.0mmol)をゆっくりと滴下し、氷浴中で5分間撹拌した後、5酸化2リン存在下で減圧乾燥したパラホルムアルデヒド(6.1357g,204.5mmol)を加え、氷浴中で3時間撹拌した。溶液を室温に戻し、水(100mL)を加えて反応を停止させた後酢酸エチル(200mL)で2回抽出し、次いで飽和食塩水(50mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤をろ過して取り除いた後、溶媒を減圧留去してから残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,φ60×300mm,展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=7/3(v/v))で精製し、減圧留去して、目的物である2−N,N−ジフェニルアミノ−9−ヒドロキシメチル−フルオレン(4.22g,11.6mmol)を薄茶色の固体として得た(収率58%)。
還流管を取り付けた100mLの2口フラスコに、2−N,N−ジフェニルアミノ−9−ヒドロキシメチル−フルオレン(1.0619g,2.92mmol)とTHF(20mL)をいれ、この溶液中の溶存酸素を除くために脱気と窒素置換を3回繰り返した。この溶液に、予め脱気および窒素置換をしたtert−ブトキシカリウム(1.1022g,9.82mmol)のメタノール溶液(20mL)を、シリンジを用いて一気に加え、60℃で60分間加熱した。TLC(シリカゲルプレート,展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=9/1(v/v))によって、原料が消費されたことを確認した後、溶液を氷水浴で冷却してから、窒素バブリングした蒸留水(50mL)を加えて反応を停止させた。得られた溶液を窒素バブリングしたヘキサン(100mL)を用いて3回抽出し、飽和食塩水(50mL)で洗浄して、硫酸マグネシウムにより乾燥させた。乾燥剤をろ過して取り除いた後、溶媒を減圧留去してから残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,φ25×200mm,展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=9/1(v/v))によって精製し、溶媒を減圧留去にした後真空乾燥して、目的物であるPhA−DBF(0.7563g,2.17mmol)を黄色のフィルム状の固体として得た(収率74%)。得られたPhA−DBFを、水素化アルミニウムリチウム存在下におけるTrap−to−Trap法で蒸留したTHFもしくはトルエンに溶解し(1H NMRより濃度は0.270M)、予めフレームドライしたアンプル管に水素化カルシウムと共にいれ、重合に用いるまで−20℃の冷蔵庫で遮光保存した。
すべての反応を乾燥窒素雰囲気下で行った。真空下におけるフレームドライに続けて、窒素置換した25mLのガラス製アンプルに、0.260mol/LのPhA−DBFのトルエン溶液(4mL,1.04mmol)、および乾燥トルエン1.89mLを入れ、溶液を−78℃に冷却した。別途調製したPMP FlLi系の開始剤であるフルオレニルリチウム−(+)−1−(2−ピロリジニルメチル)ピロリジン錯体((+)−PMP−FlLi,[PMP]/[BuLi]=1.2)の0.1mol/Lトルエン溶液1.04mL(FlLi0.104mmol相当)を加え、重合反応を開始させた。重合開始から71時間後に、少量の反応溶液をサンプリングして1H NMRにより分析し、PhA−DBFの転化率が84%以上であることを確認してから、少量の塩酸を含むメタノールを1mL加えて重合を停止させた。反応系が室温に戻った後、反応混合物をメタノール(300mL)中に注いで再沈殿させ、遠心分離によって不溶部のポリマーを回収した。収率は76.8%であった。得られたポリマーをヘキサンで分別し(ヘキサン不溶部収率75.2%)、ヘキサン不溶分をさらにTHFで分別した(ヘキサン不溶−THF可溶部収率62.2%)。
得られたpoly(PhA−DBF)について、CDおよびUVスペクトルを測定した。測定は、実施例1−3と同様にして行なった。
図9に、実施例5−2のPMP−FlLi系の開始剤を用いて得られたpoly(PhA−DBF)〔ヘキサン不溶−THF可溶部のポリマー〕の、THF溶液中でのCDスペクトルを示す。
PMP−FlLi系の開始剤を用いて得られたpoly(PhA−DBF)の円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値は、4500deg・cm2・dmol−1[300nm]であり、従来のpoly(DBF)(図3)より強いCD吸収を示すことが確認された。
1. PhEA−DBFの合成実施例
1−1. 2−((R)−1−フェニルエチルアミノ)フルオレンの合成
あらかじめ、フレームドライと窒素置換をした500mLの3口フラスコ(冷却器付)に、tert−ブトキシナトリウム8.83g(91.9mmol)をいれ、脱気した後ヒートガンで暖め、試薬に存在するわずかな湿気を取り除いた。その後、窒素置換してから、酢酸パラジウム309.7mg(1.38mmol)および2−ブロモフルオレン15.94g(65.0mmol)をいれ、1時間真空乾燥した後、窒素を充填した。次いで、蒸留トルエン350mL,(R)−1−フェニルエチルアミン10mL(77.6mmol)、トリ−tert.−ブチルホスフィン834.9mg(4.13mmol)をこの順で加え、80℃で5時間加熱した。TLC(シリカゲルプレート,展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=9/1(v/v))および1H NMRにより原料の2−ブロモフルオレンが完全に消費されたことを確認した後、反応系を室温まで冷却し、水を加えることにより反応を停止させた。トルエンを減圧留去してから、この系にクロロホルム(200mL)と水(100mL)を加え、クロロホルムで抽出した後、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤をろ過して取り除き、ろ液を減圧留去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、Φ60×350mm、ヘキサン/酢酸エチル=7/3(v/v))により精製し、溶媒を減圧留去することにより、目的物である2−((R)−1−フェニルエチルアミノ)フルオレン(13.55g,47.5mmol)を薄茶色の固体として得た(収率73%)。
フレームドライおよび窒素置換した、滴下漏斗付き500mLの3口フラスコに2−((R)−1−フェニルエチルアミノ)フルオレン(6.10g,21.4mmol)、乾燥トルエン(300mL)およびTMEDA(8.7mL,5.76mmol)を入れ、撹拌しながら氷冷した。次いで、1.61mol/Lのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(33mL,5.28mmol)をゆっくりと滴下し、氷浴中で15分間撹拌した後、5酸化2リン存在下で減圧乾燥したパラホルムアルデヒド(6.41g,213.5mmol)を加え、氷浴中で3時間撹拌した。次に、溶液を室温に戻し、水(100mL)を加え反応を停止させた後、酢酸エチル(200mL)を加えてから、水(100mL)で2回洗浄した後、次いで飽和食塩水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤をろ過して取り除いた後溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,φ60×350mm,展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=7/3(v/v))によって精製し、減圧留去して、目的物である2−((R)−1−フェニルエチルアミノ)−9−ヒドロキシメチル−フルオレン(5.47g,17.3mmol)を薄茶色の固体として得た(収率81%)。
還流管を取り付けた100mLの2口フラスコに、2−((R)−1−フェニルエチルアミノ)−9−ヒドロキシメチル−フルオレン(1.011g,3.21mmol)とTHF(25mL)をいれ、この溶液中の溶存酸素を除くために脱気と窒素置換を3回繰り返した。この溶液に、予め脱気および窒素置換をしたtert−ブトキシカリウム(1.233g,10.99mmol)のメタノール溶液(25mL)をシリンジにて一気に加え、60℃で60分間加熱した。TLC(シリカゲルプレート,展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=9/1(v/v))により、原料が消費されたことを確認した後、溶液を氷水浴で冷却してから、窒素バブリングした蒸留水(50mL)を加えて反応を停止させた。少量の酢酸エチル(約10mL程度)を加えた後、窒素バブリングしたヘキサン(100mL)で3回抽出し、飽和食塩水(50mL)で洗浄して、硫酸マグネシウムにより乾燥させた。乾燥剤をろ過で取り除いた後、溶媒を減圧留去してから残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,φ25×200mm,展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=9/1(v/v))で精製し、溶媒を減圧留去した後真空乾燥し、目的物であるPhEA−DBFを0.769g(2.59mmol)得た(収率80.5%)。得られたPhEA−DBFを、n−ブチルリチウム存在下におけるTrap−to−Trap法で蒸留したトルエンに溶解し、予めフレームドライしたアンプル管に水素化カルシウムと共にいれ、重合に用いるまで−20℃の冷蔵庫で遮光保存した。
すべての反応を乾燥窒素雰囲気下で行った。真空下におけるフレームドライに続けて、窒素置換した25mLのガラス製アンプルに、0.170mol/LのPhEA−DBFトルエン溶液(12mL,2.04mmol)をいれ、一度溶媒を減圧留去によって完全に取り除いた後、30分間脱気乾燥した。容器を窒素置換した後、AIBN(16.89mg,0.103mmol)、ついで乾燥トルエン(1.95mL)を窒素雰囲気下で加えた。次に、凍結−乾燥−融解のサイクルを三回繰り返すことによって系内の溶存酸素を除き、最後に乾燥窒素を導入した後、60℃に温めたオイルバス中に静置した。加熱開始から48時間後に、反応溶液の一部をサンプリングして1H NMRにより分析したところ、モノマーのビニリデンプロトンの消費量から求めた転化率は74.7%であった。そこで、重合開始から48時間後に反応混合液を冷却することにより、重合を停止させた。この溶液をヘキサン(300mL)中に注いで再沈殿させ、その不溶部を遠心分離により回収した。次に、ヘキサンで3回洗浄した後、THFで3回洗浄し、それぞれの溶媒の可溶部と不溶部の溶媒を減圧留去により除いた後真空乾燥することにより、poly(PhEA−DBF)のポリマーを得た。得られたポリマー中のヘキサン可溶部は34.3%、ヘキサン不溶−THF可溶部は65.1%、ヘキサン不溶−THF不溶部は0.2%であった。
得られたpoly(PhEA−DBF)について、CDおよびUVスペクトルを測定した。測定方法については、実施例1−3の場合と同様とした。なお、サンプル量は、2.32mg、石英セルのセル長は0.1mm、測定温度は室温(約25℃)として測定を行なった。
図10に、実施例6−2のラジカル重合させて得られたpoly(PhEA−DBF)のCDおよびUVスペクトルを示す。
ラジカル重合させて得られたpoly(PhEA−DBF)の円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値は、14,000deg・cm2・dmol−1[305nm]であり、従来のpoly(DBF)(図3)より強いCD吸収を示すことが確認された。
1. BPhEA−DBFの合成実施例
1−1. 2,7−ビス((R)−1−フェニルエチルアミノ)フルオレンの合成
あらかじめ、フレームドライおよび窒素置換した500mLの3口フラスコ(冷却器付)に、tert−ブトキシナトリウム9.7892g(102mmol)をいれ、脱気した後ヒートガンで暖め、試薬中に存在するわずかな湿気を取り除いた。更に窒素置換した後、酢酸パラジウム325.9mg(1.66mmol)および2,7−ジブロモフルオレン8.8932g(27.6mmol)をいれ、1時間真空乾燥した後、窒素を充填した。次いで、蒸留トルエン350mL、(R)−1−フェニルエチルアミン10mL(77.6mmol)およびトリ−tert−ブチルホスフィン942.5mg(4.66mmol)をこの順で加え、80℃で12時間加熱した。TLC(シリカゲルプレート,展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=9/1(v/v))および1H NMRにより、原料の2−ブロモフルオレンが完全に消費されたことを確認してから、反応系を氷水で冷却し、水を加えることにより反応を停止させた。トルエンを減圧留去してから、この系にクロロホルム(200mL)と水(100mL)を加え、クロロホルムで抽出した後、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ過して取り除き、ろ液を減圧留去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、φ60×50mm、酢酸エチル)によりPd触媒を除去し、酢酸エチルをある程度減圧留去してから、この溶液をヘキサン(400mL)に再沈殿させた。沈殿物をろ過して回収し、真空乾燥して、固体状の薄茶色の粗生成物6.3258g(15.64mmol)を得た。収率は56.7%であった。得られた粗生成物をカラム(シリカゲル、クロロホルム/酢酸エチル=9/1(v/v))、Φ60×350mm)を用いて精製し、溶媒を減圧留去した後真空乾燥することにより、目的物である2,7−ビス((R)−1−フェニルエチルアミノ)フルオレン(4.3285g,10.7mmol)を茶色の固体として得た(収率38.8%)。
フレームドライおよび窒素置換した100mLの2口ナスフラスコに、2,7−ビス((R)−1−フェニルエチルアミノ)フルオレン(5.8744g,14.52mmol)、乾燥THF(水素化カルシウム存在下から蒸留)(50mL)およびトリエチルアミン(4.15mL(29.9mmol))を入れ、室温で撹拌した。次いで、クロロトリメチルシラン(3.83mL(30.2mmol))を加えてから、60℃で3時間攪拌した。その後、この溶液にヘキサンを加えることにより、塩を析出させた。セライトを用いて吸引ろ過をすることによりこの塩を除去した後、ろ液を減圧濃縮し、次いで真空乾燥することにより、目的物である2,7−ビス(N−(R)−1−フェニルエチル−N−トリメチルシリル−アミノ)フルオレン(7.802g,14.23mmol)を黒緑色の固体として得た(収率98%)。この物質は水分に不安定であると思われたので、次の反応では、この固体を、窒素雰囲気下で乾燥トルエンに溶解させて使用した。
フレームドライおよび窒素置換した300mLの2口ナスフラスコに、2,7−ビス(N−(R)−1−フェニルエチル−N−トリメチルシリル−アミノ)フルオレン(6.8818g,12.54mmol)のトルエン溶液(300mL)、およびTMEDA(12.7mL(84mmol))を入れ、撹拌しながら氷冷した。次に、1.6mol/L n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(22.4mL(35.8mmol))を加え、氷浴中で30分間撹拌した後、5酸化2リンの存在下で減圧乾燥したパラホルムアルデヒド(3.0687g(102.29mmol))を加え、氷浴中で3時間撹拌した。溶液を室温に戻し、水(50mL)を加えて反応を停止させた後酢酸エチル(200mL)を加え、水(100mL)で2回洗浄した後飽和食塩水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ過して取り除いた後、溶媒を減圧留去した。得られた物質をカラム(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=8/2(v/v))、φ60×350mm)を用いて精製し、溶媒を減圧留去した後真空乾燥することにより、目的物である2,7−ビス((R)−1−フェニルエチルアミノ)−9−ヒドロキシメチル−フルオレン(4.5386g,10.45mmol)を茶色の固体として得た(収率83.3%)。
還流管を取り付けた100mLの2口フラスコに、2,7−ビス((R)−1−フェニルエチルアミノ)−9−ヒドロキシメチル−フルオレン(1.3238g,3.05mmol)とTHF(30mL)をいれ、この溶液中の溶存酸素を除くために脱気・窒素置換を3回繰り返した。この溶液に、予め脱気および窒素置換をしたtert−ブトキシカリウム(1.6717g,14.26mmol)のメタノール溶液(30mL)をシリンジを用いて一気に加え、60℃で90分間加熱した。その後、溶液を氷水浴で冷却し、窒素バブリングした蒸留水(50mL)を加えて反応を停止させた。次いで、窒素バブリングした酢酸エチル(100mL)で3回抽出し、飽和食塩水(50mL)で洗浄した後、硫酸マグネシウムにより乾燥させた。乾燥剤をろ過して取り除いた後溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,φ60×300mm,展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=9/1(v/v))で、クロマト分画した。次に、溶媒を減圧留去した後真空乾燥し、目的物であるBPhEA−DBFをオレンジ色の固体として0.3720g(0.893mmol)得た(収率29.3%)。得られたモノマーを、n−ブチルリチウム存在下のTrap−to−Trap法で蒸留したトルエンに溶解(15mL)し、予めフレームドライしたアンプル管に水素化カルシウムと共にいれ、重合に用いるまで−20℃の冷蔵庫で遮光保存した。
すべての反応を乾燥窒素雰囲気下で行った。真空下におけるフレームドライに続けて窒素置換した50mLのガラス製アンプルに、BPhEA−DBFのトルエン溶液をいれ、溶媒を減圧留去した後(減圧留去後のモノマーの量:0.4814g(1.16mmol))AIBN9.32mg(0.058mmol)をいれ、30分間真空乾燥した。容器を窒素置換した後、乾燥DMFを7.2mL加えてモノマーとAIBNを完全に溶解させ、凍結−乾燥−融解のサイクルを3回行なうことにより、系内にごくわずかに存在している溶存酸素を除去し、最後に系内を再び乾燥窒素に置換した。次いで、60℃に温めたオイルバス中に静置し重合を行った。重合開始から48時間後に、少量の反応溶液をサンプリングして1H NMRにより分析したところ、転化率が80%であった。そこで、重合系を氷水浴で冷却させることにより重合を停止し、反応系が室温に戻った後、反応溶液をヘキサン(200mL)に注いで再沈殿させ、遠心分離により不溶部を回収した。ヘキサン不溶部の収率は91.2%であり、ヘキサン不溶部を更にTHFで溶媒分別したヘキサン不溶−THF可溶部の収率は90.9%であった。
得られたpoly(BPhEA−DBFについて、CDおよびUVスペクトルを測定した。測定は、実施例1−3と同様にして行なった。
図11に、実施例7−2のラジカル重合させたpoly(BPhEA−DBF)〔ヘキサン不溶−THF可溶部のポリマー〕のTHF溶液中でのCDスペクトルを示す。
ラジカル重合させたpoly(BPhEA−DBF)の円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値は、55000deg・cm2・dmol−1[330nm]であり、従来のpoly(DBF)(図3)より強いCD吸収を示すことが確認された。
図12に、モノマー単位モデル化合物として2,7−ビス((R)−1−フェニルエチルアミノ)フルオレンのCDスペクトルを示す。図11と図12のスペクトルパターンが大きく異なることから、図11のポリマーのCDスペクトルがモノマー単位のキラリティーによるものではなく、ポリマー鎖に誘起されたキラルコンホメーションによるものであることが明らかである。
1. t−BuPh−DBFの合成実施例
1−1. 2,7−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−9−フルオレノンの合成
フレームドライおよび窒素置換した還流管付き500mLの3口フラスコに、塩化亜鉛(20.3g,149mmol)、TMEDA(20.8mL,138mmol)およびTHF(200mL)と、別途調製した0.6mol/Lの4−tert−ブチルフェニルマグネシウムブロミドのTHF溶液(195mL,117mmol)とを入れて10分間攪拌した。次いで、2,7−ジブロモフルオレノン(10.3g、27.2mmol)とPd(PPh3)4(3.44g、2.31mmol)を加えて加熱還流した。還流5時間後、反応溶液を室温まで冷却し、水(200mL)と1Nの塩酸水溶液(100mL)の混合溶液に反応溶液を加えることにより、反応を停止させた。更に、有機層をクロロホルムで抽出した後、その有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ過して取り除き、溶媒を減圧留去することにより粗生成物を得た。得られた組成生物をベンゼン/ヘキサン=8/2(v/v)の混合溶媒で再結晶することにより、目的物である2,7−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−9−フルオレノン(10.8g,24.3mmol)を山吹色の固体として得た(収率89%)。
フレームドライと窒素置換した2Lの3口フラスコに、2,7−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−9−フルオレノン(4.10g,9.22mmol)とTHF(1000mL)を加えた。更に、3.0mol/Lメチルマグネシウムブロミドのジエチルエーテル溶液(9.0mL,27mmol)を0℃で加え、この温度で3時間攪拌し、メタノールおよび水を加えて反応を停止させた。次いで、溶媒を減圧留去し、残渣に塩化メチレンおよび1Nの塩酸水溶液を加えた後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ過して取り除き、減圧留去した後真空乾燥することによって目的物である2,7−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−9−メチル−9−フルオレノール(4.24g,9.22mmol)を淡黄色固体として得た(収率>99%)。
還流管を取り付けた200mLの3口フラスコに、2,7−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−9−メチル−9−フルオレノール(1.0g,2.2mmol)とベンゼン(100mL)を加えて還流し、更に、p−トルエンスルホン酸(200mg)を加えた後、20分還流させた。氷浴で系内を冷却し、さらに塩化メチレン(400mL)を加え、有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ過して取り除き、溶媒を減圧留去した後真空乾燥することにより、粗生成物として黄色い固体を得た。粗生成物を塩化メチレン/ヘキサン(1/5(v/v))から再結晶することにより、目的物であるt−BuPh−DBF(0.62g,1.41mmol)を淡黄色固体として得た(収率64%)。
すべての反応を乾燥窒素雰囲気下で行った。真空下におけるフレームドライに続けて窒素置換した25mLのガラス製アンプルに、0.551mol/Lのt−BuPh−DBFのヘキサン溶液(1.81mL,1.00mmol)を入れ、ヘキサンを減圧留去した後、30分間脱気乾燥した。容器を窒素置換した後、乾燥THF2.241mLを加えてモノマーを完全に溶解し、溶液を−78℃に冷却した。別途調製したメントキシカリウム系の開始剤である(−)−メントキシカリウムの0.2mol/LTHF溶液2.5mL(0.5mmol)を加え重合反応を開始させた。重合開始から24時間後に、少量の反応溶液をサンプリングして1H NMRにより分析し、t−BuPh−DBFの転化率が95%であることを確認してから、メタノールを1mL加えて重合を停止させた。反応系が室温に戻った後、反応混合物をメタノール(300mL)中に注いで再沈殿させ、遠心分離により不溶部のポリマーを回収した。収率は88%であった。得られたポリマーはクロロホルム、THFに可溶であり、メタノールとヘキサンには不溶であった。
得られたpoly(t−BuPh−DBF)について、CDおよびUVスペクトルを測定した。測定は、実施例1−3と同様にして行なった。
図13に、実施例8−2のメントキシカリウム系の開始剤を用いて得られた得られたpoly(t−BuPh−DBF)のTHF溶液中でのCDおよびUV−VISスペクトルを示す。
メントキシカリウム系の開始剤を用いて得られたpoly(t−BuPh−DBF)の円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値は、5500deg・cm2・dmol−1[320nm]であり、従来のpoly(DBF)(図3)より強いCD吸収を示すことが確認された。
1. VPh−DBFの合成実施例
1−1. 2,7−ビス(4−ビニルフェニル)−9−フルオレノンの合成
フレームドライおよび窒素置換した還流管付き3Lの3口フラスコに、塩化亜鉛(72.75g,720mmol)、TMEDA(107mL,708mmol)およびTHF(2000mL)と、別途調製した1.0mol/L 4−ビニルフェニルマグネシウムブロミドのTHF溶液(708mL,708mmol)とを入れて10分間攪拌した。次いで、2,7−ジブロモフルオレノン(40.15g,119mmol)とPd(PPh3)4(13.8g,11.9mmol)を加えて加熱還流し、還流15時間後、反応溶液を室温まで冷却した。溶媒を減圧留去した後メタノールで溶媒分別し、さらに塩化メチレンに溶解させ、フロリジルを用いて触媒を除去した後、溶媒を減圧留去した。得られた固体をクロロホルム/ヘキサン=3/2(v/v)の混合溶媒で再結晶することにより、2,7−ビス(4−ビニルフェニル)−9−フルオレノン(48.3g,126mmol)を山吹色の固体として得た(収率91%)。
フレームドライおよび窒素置換した滴下漏斗付き2Lの3口フラスコに、2,7−ビス(4−ビニルフェニル)−9−フルオレノン(25.0g,65.1mmol)と乾燥THF(1600mL)を加え、さらに、3.0mol/Lメチルマグネシウムブロミドのジエチルエーテル溶液(9.0mL,27mmol)を0℃で加え、この温度で3時間撹拌した。次いで、メタノールおよび水を順次加えることにより反応を停止させ、溶媒を減圧留去した後、残渣に塩化メチレンと1Nの塩酸水溶液を加えて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、MgSO4により乾燥した。乾燥剤をろ過して取り除き、溶媒を減圧留去した後真空乾燥することによって、目的物である9−メチル−2,7−ビス(4−ビニルフェニル)−9−フルオレノール(25.9g,64.7mmol)を淡黄色固体として得た(収率99%)。
還流管を取り付けた1Lの3口フラスコに、9−メチル−2,7−ビス(4−ビニルフェニル)−9−フルオレノール(10.0g,25.0mmol)、ベンゼン(200mL)およびクロロホルム(200mL)を加えて還流した。さらにp−トルエンスルホン酸(2.10g,10.5mmol)を加え、40分間還流した。反応終了後系を氷浴で冷却し、塩化メチレン(400mL)を加えた後有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ過して取り除き、溶媒を減圧留去して得られた物質を真空乾燥することにより粗生成物として黄色い固体を得た。粗生成物を塩化メチレン/ヘキサン(1/5(v/v))から再結晶することにより、VPh−DBF(6.45g,16.9mmol)を黄色固体として得た(収率67%)。
フレームドライおよび乾燥窒素置換した500mLのアンプル管にVPh−DBFを加え、脱気および乾燥窒素置換した後、THFを加えて−78℃に冷却した。次いで、メントキシカリウム系の開始剤である(−)−メントキシカリウムのTHF溶液を加えて重合を開始させ、48時間後に1Nの塩酸を加えて重合を停止させた。遠心分離によりTHF不溶部を回収し、メタノールで3回洗浄した後、ベンゼンで1回洗浄した。不溶部をベンゼンに懸濁させ、凍結乾燥することにより粉末状の淡黄色固体を得た。可溶部がある系については、これをベンゼンから凍結乾燥することにより不溶部と同様に粉末状の淡黄色固体を得た。ポリマーは、THFとクロロホルムには可溶であったが、ヘキサンおよびメタノールには不溶であった。
得られたpoly(VPh−DBF)について、CDおよびUVスペクトルを測定した。測定は、実施例1−3と同様にして行なった。
図14に、実施例9−2のメントキシカリウム系の開始剤を用いて得られたpoly(VPh−DBF)のCDおよびUVスペクトルを示す。
メントキシカリウム系の開始剤を用いて得られたpoly(VPh−DBF)の円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値は、9500deg・cm2・dmol−1[325nm]であり、従来のpoly(DBF)(図3)より強いCD吸収を示すことが確認された。
1. poly(VPh−DBF)への水酸基の導入
1−1 poly(Ph−1OH−DBF)合成例
メントキシカリウムを用い不斉アニオン重合により合成したpoly(VPh−DBF)(0.4g,1.5mmol)にTHF(50mL)を加え、0℃に冷却した。冷却後、1.0M BH3・THFのTHF溶液(4.5mL,4.5mmol)を加え、0℃で1時間攪拌した後、室温で24時間攪拌した。反応混合物を0℃に冷却した後、3NのNaOH水溶液205mL(615mmol)を滴下し、1時間攪拌した。さらに30%過酸化水素水205mL(1.78mol)を滴下し、0℃で1時間攪拌した後、室温で4時間攪拌した。次いで、分液ロートを用いて有機層を回収し、遠心分離によりTHF不溶部を回収した後、水−メタノール(2/1)で5回洗浄し、さらにメタノールで2回洗浄た後、ベンゼンで1回洗浄した。不溶部をベンゼンに懸濁させ、凍結乾燥することにより、poly(Ph−1OH−DBF)(4.09g,9.77mmol)を粉末状の淡黄色固体としてを得た(収率93%)。得られたpoly(Ph−1OH−DBF)は、THF、ピリジンに可溶であり、クロロホルム、メタノール、ベンゼンおよびヘキサンに不溶であった。
得られたpoly(Ph−1OH−DBF)について、CDおよびUVスペクトルを測定した。測定は、実施例1−3と同様にして行なった。
図15に、poly(Ph−1OH−DBF)のCD、UV−VIスペクトルを示す。poly(Ph−1OH−DBF)の円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値は、6000deg・cm2・dmol−1[310nm]であり、何れも、従来のpoly(DBF)(図3)より強いCD吸収を示すことが確認された。
2−1 poly(ClPhI−Ph−DBF)合成例
poly(Ph−1OH−DBF)(300mg,0.717mmol)にTHF(20mL)およびピリジン(0.3mL)を加え、1時間攪拌した後、3,5−ジクロロフェニルイソシアナート(812mg,4.30mmol)をTHF(5mL)に溶かした溶液をシリンジで加えた。室温で24時間攪拌した後、遠心分離によりTHF不溶部を回収し、メタノールで3回洗浄した後、ベンゼンで1回洗浄した。次いで、不溶部をベンゼンに懸濁させ、凍結乾燥することによりpoly(ClPhI−Ph−DBF)を粉末状の淡黄色固体として得た(収量340mg;収率59.6%)。得られたpoly(ClPhI−Ph−DBF)は、THF、クロロホルムには可溶であり、ベンゼン、ヘキサン、メタノールには不溶であった。
得られたpoly(ClPhI−Ph−DBF)について、CDおよびUVスペクトルを測定した。測定は、実施例1−3と同様にして行なった。
図16に、poly(ClPhI−Ph−DBF)のCD−UVスペクトルを示す。poly(ClPhI−Ph−DBF)の円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値は、4000deg・cm2・dmol−1[340nm]であり、従来のpoly(DBF)(図3)より強いCD吸収を示すことが確認された。
3−1 poly(MePhI−Ph−DBF)合成例
poly(Ph−1OH−DBF)(300mg,0.717mmol)にTHF(20mL)およびピリジン(0.3mL)を加え、1時間攪拌した後、3,5−ジメチルフェニルイソシアナート(633mL)をTHF(5mL)に溶かした溶液をシリンジで更に加え、60℃で48時間攪拌した。THF不溶部を回収し、メタノールで3回洗浄した後ベンゼンで1回洗浄し、次いで不溶部をベンゼンに懸濁させて凍結乾燥することにより、poly(MePhI−Ph−DBF)を粉末状の淡黄色固体として得た(収量373mg;収率73%)。得られたpoly(MePhI−Ph−DBF)は、THF、クロロホルムには可溶であり、ベンゼン、ヘキサン、メタノールには不溶であった。
得られたpoly(MePhI−Ph−DBF)について、CDおよびUVスペクトルを測定した。測定は、実施例1−3と同様によって行なった。
図17にpoly(MePhI−Ph−DBF)のCD−UVスペクトルを示す。poly(MePhI−Ph−DBF)の円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値は、6500deg・cm2・dmol−1[345nm]であり、従来のポリジベンゾフルベン(図3)より強いCD吸収を示すことが確認された。
4−1.合成例
フレームドライおよび窒素置換した還流管付き20mLの2つ口フラスコにpoly(Ph−1OH−DBF)(100mg,0.239mmol)を入れ、30分間脱気した後窒素雰囲気下に戻し、THF(10mL)とピリジン(0.5mL)を加えてポリマーを完全に溶解した。次いで、イソシアン酸(R)−(−)−(1−ナフチル)エチルエステル(0.125mL,0.717mmol)を加えて、還流温度で24時間攪拌した。次に、反応系を室温に戻し、ヘキサン(300ml)に注いで再沈殿させ、不溶部をヘキサン(30mL)で2回洗浄した後、真空乾燥して、薄黄色の固体117.2mgを得た(収率60.4%)。
上記実施例10の4−1で得られたポリマーについて、CDおよびUVスペクトルを測定した。測定は、実施例1−3と同様にして行なった。
図18に、上記実施例10の4−1で得られたポリマーのCDおよびUVスペクトルを示す。このポリマーの円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値は、7000deg・cm2・dmol−1[280nm]であり、従来のpoly(DBF)(図3)より強いCD吸収を示すことが確認された。
1. 合成実施例
1−1. 2,7−ビス(2−イソブチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)フルオレンの合成
Dean−Starkトラップおよびジムロート冷却管を取り付けた200mLの3口フラスコに、2,7−ジ−(1−オキシイソペンチル)フルオレン(6.72g,20.1mmol)、エチレングリコール(3.9mL,69.9mmol)、TsOH・H2O(68mg,0.36mmol)およびベンゼン(100mL)を入れ、24時間還流した。反応終了後水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。乾燥剤をろ過して取り除いた後、溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=9/1(v/v))によって精製し、目的物である2,7−ビス(2−イソブチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)フルオレン(7.98g,18.9mmol)を黄色固体として得た(収率94.4%)。
予め、乾燥および窒素置換した500mLの3口フラスコに、2,7−ビス(2−イソブチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)フルオレン(7.73g,18.3mmol)、乾燥トルエン(300mL)およびTMEDA(8.2mL,54.0mmol)を入れ、撹拌および氷冷した。次いで、n−ブチルリチウム33mL(52.8mmol)をゆっくりと滴下し、氷浴中で5分間撹拌した後、乾燥したパラホルムアルデヒド(2.98g,9.94mmol)を加え、氷浴中で70分間撹拌した。次に、室温に戻して、水(150mL)を加え、酢酸エチル(200mL)で3回抽出した後、飽和食塩水(50mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。乾燥剤をろ過して取り除いた後、溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=6.5/3.5(v/v))によって精製し、目的物である9−ヒドロキシメチル−2,7−ビス(2−イソブチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)フルオレン(6.02g,13.3mmol)を黄色の粘稠な液体として得た(収率72.7%)。
300mLの3口フラスコに、9−ヒドロキシメチル−2,7−ビス(2−イソブチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)フルオレン(9.0740g,20.8mmol)、クロロホルム(138ml)および6Nの塩酸(29mL,174mmol)を入れ、60℃で3時間加熱した。さらに、これを水で洗浄した後、Na2SO4で乾燥した。乾燥剤をろ過して取り除いた後、溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレンを2L流した後、酢酸エチルを2L流した。目的物は酢酸エチルを展開溶媒としたときに得られた)によって精製した。次いで、溶媒を減圧留去した後真空乾燥することによって、目的物である9−ビドロキシメチル−2,7−ビス(1−オキソ−3−メチルブチル)フルオレン(4.23g,12mmol)を黄色の固体として得た(収率55.8%)。
300mLの3口フラスコに、9−ビドロキシメチル−2,7−ビス(1−オキソ−3−メチルブチル)フルオレン(2.03g,5.57mmol)およびTHF(20mL)をいれ、脱気および窒素置換の操作を3回繰り返した。次に、この溶液に予め脱気および窒素置換をしたt−ブトキシカリウム(1.96g,17.4mmol)のメタノール溶液(20mL)をシリンジを用いて加え、60℃で20分間加熱した。次いで、窒素バブリングした水(50mL)を加え、予め窒素バブリングしたヘキサン(50mL)で3回抽出した後、飽和食塩水(50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥した。乾燥剤をろ過して取り除いた後、溶媒を減圧留去し、poly(iPe=ODBF)2.00g(>99%)を得た(Mn 930)。
2−1. ケトンの還元反応による水酸基の導入
100mL 2口フラスコに、poly(iPe=ODBF)984.0mg(モノマー単位換算で2.84mmol)およびTHF50mLを加え撹拌した。次いで、NaBH4 482mg(12.7mmol)をその溶液に加え、3日間加熱撹拌し、水20mLを加えて反応を停止させた後、クロロホルム100mLを加えて抽出した。次いで、得られた溶液を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで1時間乾燥した。乾燥剤をろ過して取り除いた後、溶媒を減圧流去し、得られた固体を五酸化二リン存在下で乾燥し、側鎖に水酸基を有するpoly(iPeOHDBF)89.5mgを得た。
2−2−1. (S)−(−)−1−フェニルエチルイソシアネートとの反応
フレームドライおよび窒素置換した蛇管冷却器を取り付けた20mLの2口フラスコに、poly(iPeOHDBF)(100.8mg,0.288mmol)をいれ、30分間脱気した。窒素パージした後、THF(10mL)およびピリジン(0.5mL)を入れ撹拌した。ポリマーが溶解した後、(S)−(−)−1−フェニルエチルイソシアネート(0.120mL,0.858mmol)をいれ、3日間還流させた。反応終了後、得られた溶液をすぐにヘキサンに注ぎ再沈殿させた後、遠心分離を行い、続いてクロロホルム/ヘキサン系で3回再沈殿させて得られた物質を減圧乾燥し、淡黄色の固体を(152.3mg,0.236mmol)得た(収率81.9%,Mm=1690(Pst),Mw/Mn=1.81)。
フレームドライおよび窒素置換した蛇管冷却器を取り付けた20mLの2口フラスコに、poly(iPeOHDBF)(100.5mg,0.287mmol)をいれて、30分間脱気した。窒素パージした後、THF(10mL)およびピリジン(0.5mL)をいれて撹拌した。ポリマーが溶解した後、(S)−(−)−1−フェニルエチルイソシアネート(0.150mL,0.878mmol)を入れ、3日間還流させた。反応終了後、得られた溶液をすぐにヘキサンに注いで再沈殿させた後、遠心分離を行い、続いてクロロホルム/ヘキサン系で3回再沈殿させ、得られた物質を減圧乾燥して、無色の固体(189.2mg,0.254mmol)を得た(収率88.5%,Mn 1810)。
上記実施例11の2−2−1および2−2−2で得られたポリマーについて、CDおよびUVスペクトルを測定した。測定は、実施例1−3と同様にして行なった。
図19に、実施例11の2−2−1および2−2−2で得られたポリマーのCDスペクトルを示す。
円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値は、実施例11の2−2−1で得られたポリマーが1800deg・cm2・dmol−1[260nm]、実施例11の2−2−2で得られたポリマーが、15000deg・cm2・dmol−1[277nm]であり、何れも、従来のpoly(DBF)(図3)より強いCD吸収を示すことが確認された。
1.PhA−DBFの重合
すべての反応を乾燥窒素雰囲気下で行なった。真空下におけるフレームドライに続いて窒素置換した25mLのガラス製アンプルに、上記実施例5−1−3の製造方法により得られた0.270mol/LのPhA−DBFのTHF溶液(4mL,1.08mmol)および乾燥THF(0.1mL)を加えてモノマーを完全に溶解し、溶液を−78℃に冷却した。別途調整したメントキシカリウム系の開始剤である(−)−メントキシカリウムの0.102mol/L THF溶液1.05mL(0.108mmol)を加え重合反応を開始させた。重合開始から24時間後に、少量の反応溶液をサンプリングして1H NMRにより分析し、PhA−DBFの転化率が99%以上であることを確認した後、メタノール1mLを加えて重合を停止させた。反応系が室温に戻った後、反応混合物をメタノール(300mL)中に注いで再沈殿させ、遠心分離により不溶部のポリマーを回収した。収率は89.5%であった。得られた不溶部のポリマーをヘキサンで分別し(ヘキサン不溶部収率87.4%)、ヘキサン不溶部をさらにTHFで分別した(ヘキサン不溶−THF可溶部収率86.7%)。
上記比較例の1で得られたpoly(PhA−DBF)について、CDおよびUVスペクトルを測定した。測定は、実施例1−3と同様にして行なった。
図20に、比較例の1で得られたポリマーのCDスペクトル測定結果を示す。比較例1で得られたポリマーでは、円偏光二色性スペクトル吸収を検出できないことが確認された。
また、”Tamaki Nakano et al.,ChemComm.,2004,144-145”に示されているように、開始剤として(−)−SpFlLi、(+)−DDB−FlLiおよび(−)−DDB−FlLiを用いたpoly(n−Pe−DBF)については、溶液試料の測定において円偏光二色性スペクトル吸収が検出できなかった(表1)。
1. 光学分割用カラムの調製
1−1.本発明のpoly(iPeDBF)を担持させたカラムの調整
実施例4と同様の方法で合成したpoly(iPeDBF)(Mn>2900,THF不溶部)0.8gをTHF(5mL)に膨潤させ、メノウ乳鉢でよく粉砕した後、HPLC用のシリカゲル(ダイソー製 粒径7μm)に担持した(担持率:18wt%)。得られたポリマー担持ゲルをスラリー法(溶媒:アセトニトリル/水=2/1(v/v))でステンレスカラム(Φ0.46cm×25cm)に充填した。本発明のカラムの理論段数は7190段(基準物質アセトン;溶離液アセトニトリル/水=2/1(v/v);流速0.5mL/分)。
PMP−FlLiを開始剤として[M]/[I]=30でのトルエン中−78℃での不斉アニオン重合により合成したpoly(TrMA)(Mn24500)を、ジフェニルジクロロシラン処理したHPLC用のシリカゲル(ダイソー製;粒径7μm)に担持した(担持率22.5wt%)。得られたポリマー担持ゲルをスラリー法によりステンレスカラムに充填した。
(−)−メントキシカリウムを開始剤として[M]/[I]=20でのテトラヒドロフラン中−78℃でのアニオン重合により合成した分子量の異なるpoly(DBF)試料をHPLC用のシリカゲル(ダイソー製 粒径7μm)に担持した(担持率:14wt%)。得られたポリマー担持ゲルをスラリー法によりステンレスカラムに充填した。
なお、Mn1900のpoly(DBF)(THF可溶部)から調製した固定相はΦ0.22cm×25cmのステンレスカラムに、Mn>1900のpoly(DBF)(THF不溶部)から調製した固定相はΦ0.46cm×25cmおよびMn>1900のステンレスカラムに充填した。
trans−スチルベンオキシド、1,2−ジフェニルシクロペンタン、および1,2−ジフェニルエチレンジアミンの分割を、各種溶媒を用いたHPLCおよび超臨界CO2を用いたSFCにより行った。
結果を表3−5に示す。本発明のpoly(iPeDBF)を担持させたカラムは、従来技術の分離材料であるpoly(TrMA)を担持させたカラムおよび側鎖に置換基のないpoly(DBF)を担持させたカラムより高い不斉識別能を示した。
なお、図21および図22に、trans−スチルベンオキシドの代表的な分割クロマトグラムを示す。いずれの場合も完全分割が達成されている。
a)trans−stilbene oxideに対するSFC条件:モディファイアエタノール、温度30℃、流速0.5mL/分(超臨界CO2)0.05mL/分(エタノール)、圧力10MPa(超臨界CO2)10.2MPa(エタノール)、基準物質 ベンゼン(溶出時間6.332分)。その他のラセミ体に対するSFC条件:モディファイアエタノール、温度30℃、流速1.0mL/分(超臨界CO2)0.1mL/分(エタノール)、圧力10MPa(超臨界CO2)9.9MPa(エタノール)、基準物質 ベンゼン(溶出時間3.058分)。
b)HPLC条件:流速0.5mL/分、基準物質 アセトン(溶出時間7.76分)。
a)HPLC条件:温度25℃、流速0.5mL/分、基準物質 アセトン(溶出時間7.76分)。
a)HPLC条件:温度25℃、流速0.5mL/分(poly(iPeDBF),poly(DBF)Mn>1900)0.1mL/分(poly(DBF)Mn1900)、基準物質 アセトン。
b)Mn1900のポリマー。
c)Mn>1900のポリマー。
3−1.本発明のpoly(iPeDBF)の反応溶液の調製
サンプル瓶に、poly(iPeDBF)〔(−)−メントキシカリウム開始、M/I=20、Mn=2930(PSt std.)〕を6.33mg(0.0199mmol)量りとり、これに重クロロホルムを0.6mLおよび重メタノール0.06mL加えた後、NMRチューブに移した。それから60℃に設定したオイルバス中に静置した。反応の進行(1,30h)は1H NMRにて確認した。30時間加熱後、室温で10日間放置した。
なお、1H NMRの測定条件は次の通りである:500MHz 1H NMR、溶媒CDCl3、Point数16384、90°パルス14.4μs(測定は45°パルスを使用)、パルス遅れ時間4秒。
比較のためポリメタクリル酸トリフェニルメチル(poly(TrMA))についても同様の実験を行った。
表6に、このスペクトルにより算出した加メタノール分解の反応進行度をまとめた。poly(TrMA)は5時間で90%以上が分解したのに対し、poly(iPeDBF)は実験した範囲では全く分解せず、優れた加溶媒耐性を有することが確認された。
また、本発明のキラルな高分子化合物は、芳香族基のねじれたスタッキング螺旋構造によって光学活性を示すので、偏光吸収・発光材料、光電変換材料、電荷輸送材料、電荷蓄積材料としても有用である。
Claims (12)
- 下記の構造式1で表される、重合性エキソメチレン基を有する1,1−芳香族環状置換エチレンモノマーの光学活性な重合体であって、円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値が、溶液試料の測定において1000deg・cm2・dmol−1以上であるキラルな高分子化合物;
但し、式中のArは芳香環、R1およびR2は水素原子または有機基、R3およびR4は水素原子または有機基であり、R3とR4が同時に水素原子となることはない。nは2以上の整数であり、−X−は−(CH2)q−,芳香族基、ビニル基、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を含む基であり、qは0以上の整数である。尚、R3,R4はそれぞれ2−4個導入されていても良く、それぞれ同じであっても異なっていても良い。 - 下記の構造式2で表される、ジベンゾフルベン誘導体を含む重合性エキソメチレン基を有する1,1−芳香族環状置換エチレンモノマーの重合体であって、請求項1に記載されたキラルな高分子化合物;
但し、式中のR1、R2およびnは、構造式1のR1、R2およびnと同じであり、R3−R10は構造式1のR3およびR4と同じである。 - 円偏光二色性スペクトル吸収のモル楕円率最大値の絶対値が、200−500nmの波長範囲において、テトラヒドロフラン、クロロホルムまたはこれらを含む混合溶媒中で1000deg・cm2・dmol−1以上である請求項1または2に記載されたキラルな高分子化合物。
- 前記構造式1中のR3およびR4の少なくとも1つが、枝分かれ構造を有する炭素数3〜20のアルキル基、炭素数6〜30の置換または無置換の芳香族基、ウレタン結合を有する基、またはヘテロ原子を介して芳香族基と結合している基から選択されることを特徴とする請求項1に記載されたキラルな高分子化合物。
- 前記枝分かれ構造を有する炭素数3〜20のアルキル基が、イソプロピル基またはイソペンチル基であることを特徴とする請求項4に記載されたキラルな高分子化合物。
- 前記炭素数6〜30の置換または無置換の芳香族基が、4−tert−ブチルフェニル基または4−ビニルフェニル基であることを特徴とする請求項4に記載されたキラルな高分子化合物。
- 前記ヘテロ原子を介して芳香族基と結合している基が、ジフェニルアミノ基またはフェニルエチルアミノ基であることを特徴とする請求項4に記載されたキラルな高分子化合物。
- 前記構造式1で表されるキラルな高分子化合物が、メントキシカリウム系またはPMP−FlLi系の開始剤を用いて重合させた2,7−ビス(2−メチル−n−プロピル)ジベンゾフルベンであることを特徴とする請求項1に記載されたキラルな高分子化合物。
- 前記構造式1で表されるキラルな高分子化合物が、メントキシカリウム系またはPMP−FlLi系の開始剤を用いて重合させた2,7−ジ−n−ペンチル−ベンゾフルベンであることを特徴とする、請求項1に記載されたキラルな高分子化合物。
- 前記構造式1で表される高分子化合物が、ポリ2,7−ビス(3−メチル−n−ブチル)ベンゾフルベンであることを特徴とする請求項1に記載されたキラルな高分子化合物。
- 請求項1に記載されたキラルな高分子化合物を用いてなるクロマトグラフィー用固定相。
- 請求項1に記載されたキラルな高分子化合物を用いた光学異性体分離用クロマト充填剤。
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