JP2008027791A - 燃料電池用膜・電極接合体及び燃料電池 - Google Patents

燃料電池用膜・電極接合体及び燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】固体電解質として、高分子電解質樹脂及びフラーレン誘導体を用い、優れた発電性能(I−V特性)を発現する燃料電池用膜・電極接合体及びこれを備えた燃料電池を提供する。
【解決手段】プロトン解離性の極性基を有する高分子電解質樹脂を含む電解質膜と、プロトン解離性の極性基を有する高分子電解質樹脂及び触媒成分を含有し、且つ、前記電解質膜の両面に設けられた触媒層と、を備える燃料電池用膜・電極接合体であって、前記電解質膜の両面に設けられた触媒層のうち少なくとも一方は、プロトン解離性の極性基を有するフラーレン誘導体を含有し、該触媒層に含有される前記高分子電解質樹脂と該フラーレン誘導体の合計量を100wt%としたときに、該フラーレン誘導体の含有量が35wt%〜75wt%であることを特徴とする燃料電池用膜・電極接合体。
【選択図】なし

Description

本発明は、燃料電池用膜・電極接合体及びこれを備える燃料電池に関する。
燃料電池は、電気的に接続された2つの電極に燃料と酸化剤を供給し、電気化学的に燃料の酸化を起こさせることで、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。火力発電とは異なり、燃料電池はカルノーサイクルの制約を受けないので、高いエネルギー変換効率を示す。燃料電池は、通常、電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体を基本構造とする単セルを複数積層して構成されている。中でも、電解質膜として固体高分子電解質膜を用いた固体高分子電解質型燃料電池は、小型化が容易であること、低い温度で作動すること、などの利点があることから、特に携帯用、移動体用電源として注目されている。
固体高分子電解質型燃料電池において、アノード(燃料極)では(1)式の反応が進行する。
→ 2H + 2e ・・・(1)
(1)式で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、カソード(酸化剤極)に到達する。そして、(1)式で生じたプロトンは、水と水和した状態で、電気浸透により固体高分子電解質膜内をアノード側からカソード側に移動する。
一方、カソードでは(2)式の反応が進行する。
4H + O + 4e → 2HO ・・・(2)
各電極における反応は、式(1)、(2)に示すように、反応ガス(H又はO)の他、プロトン(H)及び電子(e)の授受を行うことができる三相界面において進行する。
固体高分子電解質型燃料電池において、電解質膜の両面に設けられる電極は、一般的に、電解質膜側から順に、触媒層、ガス拡散層が積層した構造を有しているものが多い。触媒層は、各電極反応の場となる部分であり、通常、触媒成分を担持させた導電性材料の他、高分子電解質樹脂(プロトン伝導性材料)を含み、一般的な構成としては、触媒成分を担持させた導電性材料間の空隙に、高分子電解質樹脂が適度に空隙を残した状態で浸透した多孔質構造を有する。このような触媒層において、高分子電解質樹脂によりプロトン伝導路が形成され、導電性材料により電子伝導路が形成され、多孔質構造の空隙が反応ガスの通路となる。
高出力の燃料電池を得るためには、電解質膜と触媒層間のプロトン伝導性及び触媒層内におけるプロトン伝導性の向上が重要である。例えば、触媒層におけるプロトン伝導性の制御方法として、一般的には、触媒層中の高分子電解質樹脂量をコントロールすることが行われている。
触媒層中の高分子電解質樹脂量を増加させ、触媒層内に存在するプロトン伝導性基(プロトン解離性の極性基)の量を増やすと、触媒層内におけるプロトン伝導性が向上する。しかしながら、高分子電解質樹脂の増加によって、多孔質構造の空隙が埋まったり、親水性を有する高分子電解質樹脂に保持される水分量が増加することに起因して、触媒層の反応ガス透過性や排水性が低下するという問題が生じてしまう。その結果、フラッディングが発生しやすくなり、高電流域での発電性能が低下する。一方、触媒層中の高分子電解質樹脂量を減少させると、触媒層におけるプロトン伝導性が低下し、三相界面量が減って、低電流域での発電性能が低下する。
以上のように、触媒層中の高分子電解質樹脂量の増減によるプロトン伝導性の制御だけでは、低電流域から高電流域にわたる広い電流域において高い発電性能を達成することが困難と考えられる。
近年、フラーレンにスルホン酸基等のプロトン解離性の極性基を導入したフラーレン誘導体が、プロトン伝導性を有する固体電解質材料として注目されている。例えば、特許文献1には、酸素原子又は硫黄原子から選ばれるヘテロ原子を介して、フラーレン分子に特定の解離性酸性基を有する有機基が少なくとも1つ結合されてなるフラーレン誘導体からなるプロトン伝導体が開示されており、燃料電池における固体電解質としての用途が提案されている。
また、特許文献2には、表面結合した複数の一般式−SO3M(Mは水素又はカチオン種)のスルホネート置換基を特定量含む表面改変フラーレンが開示されている。
さらに、特許文献3には、フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン解離性の基を導入してなるフラーレン誘導体と、電子伝導性の触媒とを含有する混合物からなるプロトン伝導性電極が開示されている。この特許文献3の電極は、プロトン解離性の基を導入したフラーレン誘導体のみをプロトン伝導体として用いており、ナフィオン(商品名)等に代表される高分子電解質樹脂は用いていない。
特開2005−251505号公報 特表2005−527957号公報 再公表WO02/013295号公報 特開2004−185863号公報
上記のようなプロトン解離性基を有するフラーレン誘導体は、多くのプロトン解離性基を導入することが可能であり、高いプロトン伝導性を発現しうる。しかしながら、触媒層において、フラーレン誘導体のみを電解質として用いる場合、充分な電池性能を得ることは困難である。
一方で、フラーレン誘導体を従来燃料電池において用いられている高分子電解質樹脂と共に用いた燃料電池も提案されており、例えば、特許文献2では、上記した表面改変フラーレンを導電性ポリマーと共に燃料電池等のデバイスに用いることが提案されている。
また、特許文献4には、触媒粒子と、該触媒粒子を担持する担体と、イオン交換樹脂を含む触媒層と、該触媒層を支持する導電性多孔質基材とを備え、前記触媒層中にプロトン伝導性物質を備える燃料電池用電極が開示されており、プロトン伝導性物質としてプロトン解離性の極性基を含むフラーレン誘導体が例示されている。
本発明者らの知見によれば、燃料電池の発電性能を充分に向上させるためには、イオン交換樹脂とフラーレン誘導体との比率が重要であるにもかかわらず、特許文献2や特許文献4では、イオン交換樹脂とフラーレン誘導体の比率について充分検討されていない。
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、固体電解質として、高分子電解質樹脂及びフラーレン誘導体を用い、優れた発電性能(I−V特性)を発現する燃料電池用膜・電極接合体及びこれを備えた燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の燃料電池用膜・電極接合体は、プロトン解離性の極性基を有する高分子電解質樹脂を含む電解質膜と、プロトン解離性の極性基を有する高分子電解質樹脂及び触媒成分を含有し、且つ、前記電解質膜の両面に設けられた触媒層と、を備える燃料電池用膜・電極接合体であって、前記電解質膜の両面に設けられた触媒層のうち少なくとも一方は、プロトン解離性の極性基を有するフラーレン誘導体を含有し、該触媒層に含有される前記高分子電解質樹脂と該フラーレン誘導体の合計量を100wt%としたときに、該フラーレン誘導体の含有量が35wt%〜75wt%であることを特徴とするものである。
以上のような特定の割合で前記高分子電解質樹脂と前記フラーレン誘導体とを含有する触媒層においては、高電流域から低電流域にわたって、プロトン伝導性及びガス透過性と排水性が両立される。従って、本発明の燃料電池用膜・電極接合体は、高電流域から低電流域にわたる広い電流範囲において、優れた発電性能を発現するものである。
前記フラーレン誘導体としては、例えば、スルホン酸基を有するスルホン化フラーレンが好適である。
本発明の燃料電池用膜・電極接合体を用いることによって、広い電流範囲において高出力の燃料電池を得ることができる。
本発明によれば、触媒層に含有される固体電解質として、特定の比率で混合された高分子電解質樹脂及びフラーレン誘導体を用いることによって、低電流域でも高いプロトン伝導性を示し、且つ、高電流域でも高いガス透過性及び排水性を有し、優れた発電性能を発現する燃料電池用膜・電極接合体を得ることができる。
本発明の燃料電池用膜・電極接合体は、プロトン解離性の極性基を有する高分子電解質樹脂を含む電解質膜と、プロトン解離性の極性基を有する高分子電解質樹脂及び触媒成分を含有し、且つ、前記電解質膜の両面に設けられた触媒層と、を備える燃料電池用膜・電極接合体であって、前記電解質膜の両面に設けられた触媒層のうち少なくとも一方は、プロトン解離性の極性基を有するフラーレン誘導体を含有し、該触媒層に含有される前記高分子電解質樹脂と該フラーレン誘導体の合計量を100wt%としたときに、該フラーレン誘導体の含有量が35wt%〜75wt%であることを特徴とするものである。
ここで、プロトン解離性の極性基とは、水素原子がプロトン(H)として解離し、離脱しうる基を意味する。プロトン解離性の極性基は、分子鎖(主鎖、側鎖)の末端部に存在していても、分子鎖の中間部に存在していてもよい。末端部に導入されるプロトン解離性の極性基として、具体的には、−OH、−OSOH、−COOH、−SOH、−OPO(OH)等が挙げられるがこれらに限定されない。中でも、プロトン伝導性が高く、また、樹脂やフラーレン分子等への導入が容易であることから、スルホン酸基(−SOH)又はスルホン酸エーテル基(−OSOH)が好ましい。
以下、本発明の燃料電池用膜・電極接合体(以下、単に膜・電極接合体ということがある)について、図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の膜・電極接合体を備える単セルの一形態例を示す断面図である。図1に示すように、電解質膜1は、一方の面にカソード(酸化剤極)4a、他方の面にアノード(燃料極)4bが設けられ、膜・電極接合体5を形成している。本実施形態において、両電極4(カソード4a、アノード4b)は、それぞれ電解質膜側から順に、カソード触媒層2aとカソードガス拡散層3a、アノード触媒層2bとアノードガス拡散層3bとが積層した構造を有している。尚、本発明の膜・電極接合体において、カソード及びアノードの構造は本実施形態に限定されるものではなく、例えば、触媒層のみからなる単層構造であってもよいし、触媒層とガス拡散層以外にその他の層を有していてもよい。
膜・電極接合体5は、カソードセパレータ6a及びアノードセパレータ6bで挟持され、単セル100を構成している。セパレータ6は、各電極4に反応ガス(燃料ガス、酸化剤ガス)を供給する流路7(7a、7b)を画成し、各単セル間をガスシールすると共に、集電体としても機能するものである。カソード4aは、流路7aから酸化剤ガス(酸素を含む又は酸素を発生させるガス。通常は空気。)が供給され、アノード4bは、流路7bから燃料ガス(水素を含む又は水素を発生させるガス。通常、水素ガス。)が供給される。
本発明において、電解質膜は、プロトン解離性の極性基を有する高分子電解質樹脂(以下、単に高分子電解質樹脂ということがある)を含むものである。ここで、プロトン解離性の極性基を有する高分子電解質樹脂とは、上記したようなプロトン解離性の極性基を有する樹脂であり、ナフィオン(商品名、デュポン社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜に代表されるフッ素系高分子電解質樹脂の他、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル等のエンジニアリングプラスチックや、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等の汎用プラスチックに上記したようなプロトン解離性の極性基を導入した炭化水素系高分子電解質等が挙げられる。炭化水素系高分子電解質は、典型的には、フッ素を全く含まないが、部分的にフッ素置換されていてもよく、また、フッ素以外の異種原子を含んでいてもよい。
電解質膜は、上記のような高分子電解質樹脂を1種のみ含むものであっても、又は2種以上含むものであってもよい。また、高分子電解質樹脂が有するプロトン解離性の極性基は、1種であっても、2種以上であってもよい。また、電解質膜は、高分子電解質樹脂以外に必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。
電解質膜の膜厚は、通常、10〜100μm程度が好ましいが、これに限定されない。
電解質膜の表面に設けられる触媒層には、プロトン解離性の極性基を有する高分子電解質樹脂及び触媒成分が含有される。
高分子電解質樹脂としては、電解質膜を構成する高分子電解質樹脂として例示したものが挙げられるが、これに限定されない。
触媒成分は、燃料極における水素の酸化反応、酸化剤極における酸素の還元反応に対して触媒作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、白金、又は、ルテニウム、鉄、ニッケル、マンガン、コバルト、金、イリジウム等の金属と白金との合金等が挙げられる。触媒成分は、通常、導電性材料に担持させた状態で触媒層内に含有される。導電性材料としては、炭素質粒子、炭素質繊維のような炭素質材料、金属粒子や金属繊維等が挙げられる。
本発明の膜・電極接合体は、触媒層に、固体電解質として上記高分子電解質樹脂と共に、プロトン解離性の極性基を有するフラーレン誘導体を含有し、該触媒層に含有される高分子電解質樹脂と該フラーレン誘導体の合計量に対する該フラーレン誘導体の量[フラーレン誘導体/(フラーレン誘導体+高分子電解質樹脂)×100%]が35wt%〜75wt%である点を特徴とする。
プロトン解離性の極性基を有するフラーレン誘導体とは、フラーレン分子を構成する炭素原子に、上記したようなプロトン解離性の極性基を直接又は連結基を介して導入したものである。フラーレン誘導体のフラーレン分子としては特に限定されず、代表的なC60以外にも、C36、C70、C76、C78、C80、C82、C84、C90、C96等の球状炭素クラスター分子を用いることができる。また、上記したようなフラーレン分子が複数連結したものを用いることもできる。
フラーレン分子に導入されるプロトン解離性の極性基は、1種であっても2種以上であってもよい。また、フラーレン誘導体の炭素原子とプロトン解離性の極性基とを連結する連結基としては、特に限定されず、例えば、−(CH)n−や、−(CF)m−、−O−(CH)n−等が挙げられる。ここで、n=1〜6程度、m=1〜8程度であることが好ましい。
フラーレン誘導体としては、プロトン伝導性が高いことから、フラーレン分子にスルホン酸基を導入したスルホン化フラーレンが好適である。
本発明者らは、優れた発電性能を有する膜・電極接合体を得るべく鋭意検討した結果、上記のようなフラーレン誘導体を、特定の比率で高分子電解質樹脂と混合して触媒層内に含有させることによって、低電流域及び高電流域での発電性能が向上することを見出した。
触媒層にプロトン伝導性を付与するプロトン解離性の極性基は、触媒層内に存在する数が多ければ多いほど、触媒層のプロトン伝導性が高くなる。しかしながら、高分子電解質樹脂の量を増やすことで、触媒層内のプロトン解離性の極性基量を増やそうとすると、上述したように、触媒層のガス拡散性や排水性が低下し、特にフラッディングが発生しやすい高電流域での発電性能が著しく低下するという問題が生じる。
そこで、本発明においては、触媒層に含有させる固体電解質として、高分子電解質樹脂とフラーレン誘導体とを併用することによって、触媒層のガス拡散性や排水性を確保しつつ、触媒層内のプロトン解離性の極性基の量を増やす。
フラーレン誘導体は、多くのプロトン解離性の極性基を導入することが可能であり、触媒層の単位面積当りのプロトン解離性極性基の量を多くすることができる。また、フラーレン誘導体は、凝集したとしてもフラーレン誘導体間に隙間が形成されるため、高分子電解質樹脂のように触媒層の空隙を閉塞してしまうおそれがなく、触媒層のガス拡散性や排水性を大きく低下させることがない。ゆえに、フラーレン誘導体を用いることによって、触媒層のガス拡散性や排水性を確保しつつ、触媒層内に存在するプロトン解離性の極性基量を増やすことができる。
従って、本発明に係る膜・電極接合体における触媒層では、高電流域や高加湿条件下の運転等、電極内の水分量が比較的多くなる状態においても、フラッディングが生じにくく、充分な量の反応ガスが触媒成分に供給される。
また、高分子電解質樹脂を含む電極内には、高分子電解質樹脂によりプロトン伝導路であるクラスターが形成されることが知られているが、電極構成成分としてフラーレン誘導体と高分子電解質と併用することにより、上記クラスター内にフラーレン誘導体が入り込むことによってクラスターが押し広げられ、電極のプロトン伝導性を向上させることができると推測される。さらに、高分子電解質樹脂のみで形成されたクラスターは、電極内の湿潤状態等の変化に伴う高分子電解質樹脂の伸縮によってそのサイズが変化しやすいが、フラーレン誘導体がクラスターに入り込むことによって、クラスターのサイズが固定され、安定したプロトン伝導性を発現する電極が得られると考えられる。
さらに、フラーレン誘導体は、高分子電解質樹脂とは異なり、触媒成分や触媒成分を担持した導電性材料の表面を過度に覆うことがないため、触媒成分が電極反応に有効に働く表面積や、導電性材料による電子伝導性が確保されやすい。また、フラーレン誘導体が電解質膜と電極の界面に存在することによって、電解質膜と電極間の接合性が向上するという利点もある。電解質膜と電極間の接合性の向上は、電解質膜と電極間におけるプロトン伝導性や膜・電極接合体の耐久性を向上させる。
一方、高分子電解質樹脂は、触媒成分を担持した導電性材料と絡みやすいので、フラーレン誘導体よりも三相界面を形成しやすい。ゆえに、電解質としてフラーレン誘導体のみを含有させた触媒層では、プロトン解離性の極性基量が増えても、プロトン解離性極性基の量に見合った三相界面を形成することができないが、フラーレン誘導体と高分子電解質樹脂を併用することによって、充分な三相界面を形成することができる。
従って、本発明にかかる膜・電極接合体における触媒層では、低電流域でも、触媒成分へのプロトン供給(カソード)及び触媒成分から電解質膜側へのプロトン移動(アノード)が効率よく行われ、高い電極反応性が維持される。
以上のように、触媒層内の固体電解質として、高分子電解質樹脂とフラーレン誘導体とを併用することによって、高電流域から低電流域にわたる広い電流域で優れた発電性能を示す膜・電極接合体を得ることができる。
さらに、本発明者らは、触媒層にフラーレン誘導体及び高分子電解質樹脂を用いることにより以上のような効果を得るためには、触媒層に含有させるフラーレン誘導体と高分子電解質樹脂との割合が重要であり、触媒層中のフラーレン誘導体と高分子電解質樹脂の合計量を100wt%としたときに、フラーレン誘導体を35wt%〜75wt%[フラーレン誘導体/(フラーレン誘導体+高分子電解質樹脂)×100wt%=35〜75wt%]とすることによって、低電流域から高電流域にわたる広い電流域で高い発電性能を示す燃料電池が得られることを見出した。
フラーレン誘導体の割合を35wt%以上とすることによって、低電流域での電圧低下を抑制することができ、75wt%以下とすることによって、高電流域における生成水によるフラッディングを抑制することができる。フラーレン誘導体は、特に40wt%以上、さらに45wt%以上含有されていることが好ましく、また、特に70wt%以下、さらに、65wt%以下含有されることが好ましい。
触媒層は、例えば、[フラーレン誘導体/(フラーレン誘導体+高分子電解質樹脂)×100wt%]が35〜75wt%となる量のフラーレン誘導体及び高分子電解質樹脂と、任意の量の触媒成分を担持した導電性材料とを、溶媒に混合・分散させて得られる触媒インクを用いて形成することができる。触媒インクの溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、プロピレングリコール等のアルコール類、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン等の有機溶媒、水又はこれらの混合物等を用いることができるが、これらに限定されない。触媒層の膜厚は、特に限定されないが、3〜50μm程度とすればよい。また、触媒層は、上記高分子電解質樹脂、フラーレン誘導体、触媒成分、導電性材料の他、必要に応じて撥水性高分子や結着剤等その他の材料を含んでいてもよい。
本発明の膜・電極接合体において、フラーレン誘導体と高分子電解質樹脂を上記のような割合で含有する触媒層は、カソード側及びアノード側のうちのどちらか一方のみに設けられてもよいが、より効果的に発電性能を高めるためには、カソード側及びアノード側の両方に設けることが好ましい。
以下、本発明の膜・電極接合体の製造方法について説明する。
電解質膜の両面に一対の電極が設けられた膜−電極接合体を形成する方法は特に限定されず、一般的な方法を採用することができる。例えば、(1)まず、電解質膜の両面に触媒インクを塗布、乾燥することによって、電解質膜の表面に触媒層を形成し、次に、ガス拡散層を構成するガス拡散層シートを触媒層上に接合する方法がある。或いは、(2)予めガス拡散層シートの触媒層側の面に、触媒インクを塗布・乾燥して触媒層を形成したものを、触媒層が電解質膜とガス拡散層に挟まれるように、電解質膜と接合する方法がある。或いは、(3)触媒インクをポリテトラフルオロエチレン等の基材上に塗布、乾燥させた触媒層シートを電解質膜又はガス拡散層シートと接合し、基材を剥離後、触媒層が電解質膜とガス拡散層に挟まれるように、ガス拡散層シート又は電解質膜と接合する方法がある。
ガス拡散層は、触媒層に効率良くガスを供給することができるガス拡散性、導電性、及びガス拡散層を構成する材料として要求される強度を有するもの、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等の炭素質多孔質体や、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、ニッケル−クロム合金、銅及びその合金、銀、アルミ合金、亜鉛合金、鉛合金、チタン、ニオブ、タンタル、鉄、ステンレス、金、白金等の金属から構成される金属メッシュ又は金属多孔質体等の導電性多孔質体からなるガス拡散層シートを用いて形成することができる。導電性多孔質体の厚さは、15〜100μm程度であることが好ましい。
ガス拡散層は、上記したような導電性多孔質体の単層からなるものであってもよいが、触媒層に面する側に撥水層を設けることもできる。撥水層は、通常、炭素粒子や炭素繊維等の導電性粉粒体、ポリテトラフルオロエチレン等の撥水性樹脂等を含む多孔質構造を有するものである。撥水層は、必ずしも必要なものではないが、触媒層及び電解質膜内の水分量を適度に保持しつつ、ガス拡散層の排水性を高めることができる上に、触媒層とガス拡散層間の電気的接触を改善することができるという利点がある。
また、導電性多孔質体は、触媒層と面する側に、ポリテトラフルオロエチレン等の撥水性樹脂をバーコーター等によって含浸塗布することによって、触媒層内の水分がガス拡散層の外へ効率良く排出されるように加工してもよい。
上記方法において、電解質膜、ガス拡散層シート、基材の表面に触媒インクを塗布する方法は特に限定されず、例えば、スプレー法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、グラビア印刷法、ダイコート法等が挙げられる。また、電解質膜、各層間の加熱圧着による接合は、例えば、ホットプレス等によって行うことができる。
このように電解質膜を一対の電極で接合した膜・電極接合体は、さらにセパレータ挟持され単セルを形成する。セパレータとしては、例えば、炭素繊維を高濃度に含有し、樹脂との複合材からなるカーボンセパレータや、金属材料を用いた金属セパレータ等を用いることができる。金属セパレータとしては、耐腐食性に優れた金属材料からなるものや、表面をカーボンや耐腐食性に優れた金属材料等で被覆し、耐腐食性を高めるコーティングが施されたもの等が挙げられる。そして、このような単セルは、通常、複数を積層させて燃料電池内に組み込まれる。
上記したように、低電流域においてもプロトン伝導性に優れ、電極反応性が高く、高電流域においてもガス透過性及び排水性に優れる本発明の燃料電池用膜・電極接合体を用いることで、広い電流域において高い発電性能を発現し、高出力の燃料電池を得ることができる。
[スルホン化フラーレン(フラーレン誘導体)の合成]
フラーレン(C60)1gに発煙硫酸15mlを加え、窒素雰囲気下、60℃で3日間加熱還流した。得られた懸濁溶液にジエチルエーテル200mlを加えて、氷浴で激しく攪拌した。析出した沈殿物を遠心分離器を用いて分取し、40℃で24時間減圧乾燥してC60(SOを得た。
得られたC60(SO2gに精製水40mlを加えて85℃で10〜15時間加熱還流を行った。得られた茶褐色の懸濁溶液に精製水を少量加えて遠心分離し、40℃で24時間減圧乾燥してC60(OH)2nを得た。
次に、C60(OH)2n200mgに対して発煙硫酸12mlを加えて、氷浴で3日間攪拌した。得られた橙色溶液にジエチルエーテル120mlを加えて、氷浴で激しく攪拌した。析出した沈殿物を遠心分離器を用いて分取し、40℃で24時間減圧乾燥して、スルホン化フラーレンC60(OSOH)2nを得た。
[膜・電極接合体の作製]
(実施例1)
まず、60wt%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)水溶液10gを、水110gに加え、5wt%のPTFE水溶液を調製した。このPTFE水溶液にカーボンペーパーを3分間浸漬させた後、10分間乾燥させた。風乾後、予め350℃に加熱したホットプレート上に置き、30分間加熱処理を行った。
次に、白金を重量比で50%担持したカーボン粒子10gと、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(商品名:Nafion、Dupont製)2.5gと、上記にて合成したフラーレン誘導体2.5gとを、水とエタノールの混合液(水:エタノール=1:1)100mlに分散させ、フラーレン誘導体とパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の比率[フラーレン誘導体/(フラーレン誘導体+パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂)×100wt%]が50wt%である触媒インクを調製した。
上記にて得られた触媒インクを、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜(商品名:Nafion、Dupont製、10cm×10cm)の両面にスプレー塗布、乾燥させて触媒層(3.6cm×3.6cm)を形成した。
得られた触媒層付き電解質膜を、上記撥水処理を施したカーボンペーパー2枚で挟み、ホットプレスして、膜・電極接合体を作製した。
さらに、膜・電極接合体をセパレータで狭持し、実施例1の単セルとした。
(比較例1)
実施例1において、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂2.5gとフラーレン誘導体2.5gの代わりに、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(商品名:Nafion、Dupont製)5gを用い、[フラーレン誘導体/(フラーレン誘導体+パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂)×100wt%]が0wt%である触媒インクを調製した以外は、同様にして単セルを作製した。
(比較例2)
実施例1において、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂2.5gとフラーレン誘導体2.5gの代わりに、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(商品名:Nafion、Dupont製)4gとフラーレン誘導体1gを用い、[フラーレン誘導体/(フラーレン誘導体+パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂)×100wt%]が20wt%である触媒インクを調製した以外は、同様にして単セルを作製した。
(比較例3)
実施例1において、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂2.5gとフラーレン誘導体2.5gの代わりに、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(商品名:Nafion、Dupont製)1gとフラーレン誘導体4gを用い、[フラーレン誘導体/(フラーレン誘導体+パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂)×100wt%]が80wt%である触媒インクを調製した以外は、同様にして単セルを作製した。
[発電試験]
上記にて得られた実施例1及び比較例1〜3の単セルについて、以下(1)〜(3)の条件下、I−V試験及びインピーダンス測定を行った。結果を図2(I−V試験)〜図3(インピーダンス測定)に示す。
<発電評価条件>
・燃料(水素ガス):300ml/min
・酸化剤(空気):1000ml/min
(1)条件1
・セル温度:80℃
・バブラー温度:80℃
(2)条件2
・セル温度:80℃
・バブラー温度:60℃
(3)条件3
・セル温度:90℃
・バブラー温度:80℃
<インピーダンス条件>
・周波数域:1kHz〜100kHz
・直流バイアス電圧:0.5V
<I−V特性>
図2に示すように、フラーレン誘導体を50wt%、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(高分子電解質樹脂)を50wt%含有する実施例1は、比較例1〜3と比較して、(1)〜(3)のいずれの条件下においても、低電流域から高電流域にわたる全域で、高電圧を示した。また、各(1)〜(3)の条件において、比較例1〜3よりも限界電流値が大きかった。
また、フラーレン誘導体を含有しない比較例1と比べて、フラーレン誘導体を20wt%、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を80wt%含有する比較例2は発電性能が低いことから、フラーレン誘導体を20wt%含有させても、フラーレン誘導体による効果は得られず、むしろ逆効果であることがわかる。これは、触媒層内のスルホン酸基量不足のためであると考えられる。
さらに、フラーレン誘導体を80wt%、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を20wt%含有する比較例3は、400mA/cm程度までしか運転することができなかった。これは、三相界面量の減少のためであると考えられる。
<インピーダンス測定>
図3より、インピーダンス測定により得られた円弧の左端とX軸との交点及び円弧の直径の大きさから、フラーレン誘導体を50wt%、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(高分子電解質樹脂)を50wt%含有する実施例1は、比較例1〜3と比較して、(1)〜(3)のいずれの条件下においても、IR抵抗が低く、且つ、濃度過電圧が小さいことがわかる。この結果は、上記I−V試験において、実施例1が全電流域において優れたI−V性能を示した結果を支持している。
[白金有効表面積]
上記にて得られた実施例1及び比較例1〜3の単セルについて、触媒層に含有される白金(Pt)の有効表面積をサイクリックボルタンメトリー(CV)により算出した。CVによる白金の有効表面積Sの算出は、図4のようなCV曲線において、0.05〜0.4Vの酸化電流の面積S’(電気量:斜線部分)を算出し、この得られた酸化電流の面積S’を、0.05〜0.4VにおけるPtからの水素脱離の電気量E(210μC/cm)で割った値(S’/E)とした。すなわち、図4における斜線部分の面積の大きさがPt有効表面積の大きさを示す。
サイクリックボルタンメトリー測定の結果を図4に示す。図4より、実施例1は、比較例1〜3と比較して、いずれよりも白金有効表面積が大きいことがわかる。すなわち、実施例1は、三相界面量が大きく、電極反応が活発に進行することを示す。この結果は、上記I−V試験において、実施例1が全電流域において優れたI−V性能を示した結果を支持している。
本発明の膜・電極接合体を備える単セルの一形態例を示す図である。 実施例におけるI−V試験の結果を示すグラフである。 実施例におけるインピーダンス測定の結果を示すグラフである。 実施例におけるCVの結果を示すグラフである。
符号の説明
1…電解質膜
2…触媒層(2a:カソード側触媒層、2b:アノード側触媒層)
3…ガス拡散層(3a:カソード側ガス拡散層、3b:アノード側ガス拡散層)
4…電極(4a:カソード、4b:アノード)
5…膜・電極接合体
6…セパレータ(6a:カソード側セパレータ、6b:アノード側セパレータ)
7…流路(7a、7b)
100…単セル

Claims (3)

  1. プロトン解離性の極性基を有する高分子電解質樹脂を含む電解質膜と、プロトン解離性の極性基を有する高分子電解質樹脂及び触媒成分を含有し、且つ、前記電解質膜の両面に設けられた触媒層と、を備える燃料電池用膜・電極接合体であって、
    前記電解質膜の両面に設けられた触媒層のうち少なくとも一方は、プロトン解離性の極性基を有するフラーレン誘導体を含有し、該触媒層に含有される前記高分子電解質樹脂と該フラーレン誘導体の合計量を100wt%としたときに、該フラーレン誘導体の含有量が35wt%〜75wt%であることを特徴とする燃料電池用膜・電極接合体。
  2. 前記フラーレン誘導体は、スルホン酸基を有するスルホン化フラーレンである、請求項1に記載の燃料電池用膜・電極接合体。
  3. 請求項1又は2に記載の膜・電極接合体を備える燃料電池。
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