JP2008024843A - 内外装塗料用アクリル系共重合体エマルジョン、該エマルジョンを含有する内外装塗料用被覆組成物、及びパテ組成物 - Google Patents

内外装塗料用アクリル系共重合体エマルジョン、該エマルジョンを含有する内外装塗料用被覆組成物、及びパテ組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】内外装用のパテ、目止材、下地調整塗材、建築仕上塗材の下塗材や中塗材、天井ボード用塗料等のような、いわゆる顔料配合濃度(PVC:通常75〜95%)の高い塗料に使用した場合、酢酸ビニル共重合体エマルジョンと同等以上に良好な顔料混和安定性を有するエマルジョンを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸アルキルエステル、不飽和カルボン酸およびアミド基含有アクリル系単量体を含有するエチレン性不飽和単量体混合物を、アニオン界面活性剤、好ましくはアニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤を用いて乳化重合してなる内外装塗料用アクリル系共重合体エマルジョン。
【選択図】なし

Description

本発明は、建築物内外装用のパテ、目止材、下地調整塗材、建築仕上塗材の下塗材や中塗材、天井ボード用塗料等、顔料配合濃度の比較的高い内装塗料や内外装用下地調整材に用いられるアクリル系共重合体エマルジョンに関する。
建築物内外装用塗料に使用される水性エマルジョンには、長い間、酢酸ビニル重合体、酢酸ビニル/アクリル共重合体、酢酸ビニル/エチレン共重合体、酢酸ビニル/ベオバ共重合体、酢酸ビニル/アクリル/ベオバ共重合体等のエマルジョンが広く使用されている。これらのエマルジョンには、乳化剤としてアニオン性やノニオンの界面活性剤の他に、保護コロイドとしてポリビニルアルコール(PVA)やヒドロキシエチルセルロース(HEC)が使用されることが多く、内外装用塗料として実際に刷毛やローラーで塗装される際には、良好な塗装作業性、肉厚感、レベリング性、隠蔽力を保持する意味で、これらの保護コロイドが重要な役割を果たしている。
しかしながら、一般的に塗料用の酢酸ビニル共重合体エマルジョンは、最低造膜温度(MFT(Minimum Film-Forming Temperature))が比較的高く、内外装用塗料にするためには何らかの造膜助剤を使用しなければならない。また酢酸ビニルは内部可塑化成分と共重合していても、分解物である酢酸を放散する性質があり、塗料の乾燥過程にて「酢酸臭」がどうしてもついて回る。すなわち低VOC(Volatile organic compound、揮発性有機化合物)で低臭気塗料を設計するのには、ふさわしいバインダーとは言えなくなっている。
一方で、オールアクリルやアクリル/スチレンエマルジョンの場合、最低造膜温度(MFT)を0℃よりも低くするのは容易であるものの、内外装用のパテ、目止材、下地調整塗材、建築仕上塗材の下塗材や中塗材、天井ボード用塗料等のような、いわゆる顔料配合濃度(PVC(Pigment volume concentration)の高い(顔料容積濃度:通常75〜95重量%)塗料に使用した場合は、塗料用の酢酸ビニル共重合体エマルジョンに比較して、顔料混和安定性が悪く、塗料作成時に顔料をうまく混練することができなかったり、うまく塗料化できたとしても、経時の粘度上昇が著しく、1〜3日後になって容器に充填しようとしてもうまく充填できない事態になることがある。
顔料混和安定性を向上させる手段としては、塗料配合中に顔料分散剤や湿潤剤を多く配合することが一般的ではあるものの、このような手法では、時としてその塗料に粘り気が出てきて、これまでの塗装作業性が変化してしまい、所望の仕上りが得られなくなる恐れがある。
本発明は、内外装用のパテ、目止材、下地調整塗材、建築仕上塗材の下塗材や中塗材、天井ボード用塗料等のような、いわゆる顔料配合濃度の高い塗料に使用した場合に、酢酸ビニル共重合体エマルジョンと同等以上に良好な顔料混和安定性を有する内外装塗料用アクリル系共重合体エマルジョンを提供することを目的とするものである。
本発明は、顔料混和安定性向上のために必須成分として保護コロイド性のあるアミド基を有するアクリル系単量体を用い、乳化剤として、アニオン界面活性剤を使用する、もしくはアニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤を併用することにより、顔料分散性に優れ、被覆組成物とした時の顔料混和安定性に優れることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明の要旨は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、不飽和カルボン酸およびアミド基含有アクリル系単量体を含有するエチレン性不飽和単量体混合物を、アニオン界面活性剤を用いて乳化重合してなる内外装塗料用アクリル系共重合体エマルジョンに関する。
前記乳化重合においてさらにノニオン界面活性剤を用いることが好ましい。
前記エチレン性不飽和単量体混合物が、さらに芳香族ビニル化合物を含有してもよい。
前記エチレン性不飽和単量体混合物の混合比が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル49〜99重量%、不飽和カルボン酸0.5〜8重量%、アミド基含有アクリル系単量体0.5〜8重量%、芳香族ビニル化合物0〜35重量%であることが好ましい。
前記内外装塗料用アクリル系共重合体のガラス転移点が−25〜+5℃であることが好ましい。
また、本発明は、内外装塗料用アクリル系共重合体エマルジョンを含有する内外装塗料用被覆組成物に関する。
前記内外装塗料用被覆組成物に、さらに顔料を含有することができる。
さらに、本発明は、前記内外装塗料用被覆組成物を含有するパテ組成物に関する。
本発明の内外装塗料用アクリル系共重合体エマルジョンは、顔料混和安定性が極めて良好で、内外装用のパテ、目止材、下地調整塗材、建築仕上塗材の下塗材や中塗材、天井ボード用塗料等のような、いわゆる顔料配合濃度の高い(PVC:通常75〜95重量%)塗料に使用した場合、酢酸ビニル共重合体エマルジョンと同等以上に良好な顔料混和安定性を有する効果を示す。
さらに、前記エマルジョンにおけるアクリル系共重合体のガラス転移点(Tg)を所望の温度に設定することにより、造膜助剤である高沸点溶剤を使用することなく、室温および低温時の皮膜形成性にも優れた効果を示す。よって、本発明のエマルジョンは内装塗料や内外装用下地調整材、特にパテ組成物として好適に用いられる。
本発明の内外装塗料用アクリル系共重合体エマルジョンは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、不飽和カルボン酸およびアミド基含有アクリル系単量体を含有するエチレン性不飽和単量体混合物を、アニオン界面活性剤好ましくはアニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤を用いて乳化重合して得られる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることによって、該エステルを共重合させて得られるエマルジョンの耐候性、耐水性、ガラス転移点(Tg)をコントロールし塗膜硬度を調整することができる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。かかるアルキル基は、直鎖、分枝、環状のいずれでもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数が大きすぎると、反応性が悪くなり未反応モノマーが多くなる傾向がある。
前記炭素数1〜12のアルキル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の脂肪族(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香族(メタ)アクリル酸アルキルエステル等があげられる。これらのなかでも、塗膜硬度を充分に調整できる点から(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルの等の脂肪族(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、用いる全エチレン性不飽和単量体混合物中、49〜99重量%であることが好ましく、70〜90重量%がより好ましい。前記アルキルエステルの含有量が少なすぎると耐候性が充分ではなく、ガラス転移点(Tg)を所望の温度に調整できない傾向があり、多すぎると、他成分の含有量が少なくなり、所望の物性が得られなくなる傾向がある。
ここで、本発明において(メタ)アクリルは、「アクリル」および「メタクリル」をいう。
本発明において、不飽和カルボン酸は、アルカリサイドで電離し電気二重層を形成させエマルジョン粒子を安定化させるために用いるものであり、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等の脂肪族カルボン酸が挙げられる。これらのなかでもエチレン性不飽和単量体との反応性の点から(メタ)アクリル酸が好ましい。
不飽和カルボン酸の含有量は、用いる全エチレン性不飽和単量体混合物中、0.5〜8重量%が好ましく、1〜5重量%がより好ましい。不飽和カルボン酸の含有量が、少なすぎると粒子が不安定となる傾向があり、多すぎると耐水性が不良となる傾向がある。
本発明において、アミド基含有アクリル系単量体は、エマルジョンポリマー粒子への保護コロイド作用を有し、顔料混和安定性をより向上させるために使用される。一般的にオールアクリルやスチレン/アクリルエマルジョンは、不飽和カルボン酸や、アニオン性やノニオンの界面活性剤を用いて乳化重合することにより得ることができるが、乳化重合時にポリビニルアルコール(PVA)やヒドロキシエチルセルロース(HEC)のような保護コロイドを使用することができず、いわゆる顔料配合濃度の高い塗料に使用した場合、乳化重合時にPVAやHECのような保護コロイドを使用した酢酸ビニル共重合体エマルジョンに比較すると顔料混和安定性に劣る欠点がある。本発明では、アミド基含有アクリル系単量体を用いることによって該安定性を著しく改善することが可能となるのである。
アミド基含有アクリル系単量体としては、具体的には、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の2置換(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の1置換(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドt−ブチルスルホン酸ナトリウムなどの親水性のスルホン酸基と重合性のビニル基を持った(メタ)アクリルアミド誘導体およびその塩等が挙げられる。なかでも、汎用性の点から、(メタ)アクリルアミドなどが好ましい。
アミド基含有アクリル系単量体の含有量は、用いる全エチレン性不飽和単量体混合物中、0.5〜8重量%であることが好ましく、1〜5重量%がより好ましい。アミド基含有アクリル系単量体の含有量が、少なすぎると顔料混和安定性の効果が得られ難い傾向があり、多すぎると得られるエマルジョンの粘度が非常に高くなって顔料混和安定性が不良になる傾向がある。
なお、アミド基含有アクリル系単量体として、N−メチロール(メタ)アクリルアミドも使用可能であるが、このようなホルムアルデヒド放散の可能性が高いものはできるだけ使用しないことが望ましい。
本発明においては、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル、不飽和カルボン酸およびアミド基含有アクリル系単量体のほかに、さらに芳香族ビニル化合物を使用することができる。前記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、4−クロロスチレン、2−メチルスチレン等があげられ、ガラス転移点(Tg)を調整できる点から、特にスチレンが好ましい。
芳香族ビニル化合物の含有量は、用いる全エチレン性不飽和単量体混合物中、0〜35重量%であることが好ましく、0〜30重量%であることがより好ましい。芳香族ビニル化合物の含有量が多すぎると耐候性が低下する傾向がある。
本発明のエマルジョンを構成する前記単量体と共重合可能な単量体をさらに用いてもよい。例えば、親水性を調整する(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル;粒子内部を架橋させ、耐水性、耐アルカリ性を向上させるビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有不飽和単量体、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有不飽和単量体、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセト酢酸アリル等のアセトアセチル基含有不飽和単量体などの官能性単量体、その他、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等も使用できる。
また、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリルオキシエタン、テレフタル酸ジアリル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和結合を2以上持つ単量体も使用できる。
前記その他の単量体の含有量は、特に限定されるものではなく目的に応じて適宜選択することができるが、本発明におけるエチレン性不飽和単量体混合物全体の0〜10重量%であることが好ましく、0〜5重量%であることがより好ましい。
本発明の内外装塗料用アクリル系共重合体エマルジョンは、前記エチレン性不飽和単量体混合物を、乳化剤を用いて乳化重合して得られる。
本発明における乳化剤は、アニオン界面活性剤、好ましくはアニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤の組合せで使用される。アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを併用することにより、顔料混和安定性や内装用塗料としての発色性を向上させる効果が顕著に得られるので好ましい。
これらの界面活性剤としては、通常の非反応性のアニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤のほか、共重合性(反応性とも言う)のアニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤を使用することができる。
非反応性の界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、等のアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等のノニオン界面活性剤などが例示される。
共重合性の界面活性剤としては、α―スルホ−ω−((1−((ノニルフェノキシ)メチル−2−(2プロペニルオキシ)エトキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)塩、α―スルホ−ω−((1−((アルコキシ)メチル−2−(2プロペニルオキシ)エトキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)塩、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルアリルスルホコハク酸塩等のアニオン界面活性剤、α―[1−(アリルオキシメチル)2−(ノニルフェノキシ)エチル−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン、α―ヒドロ−ω−(1−(アルコキシ)メチル2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル等のノニオン界面活性剤等が例示される。
上記の中でも、ノニオン界面活性剤については、そのHLBが6〜19であることが好ましく、特にはモノマーの反応性の観点から12〜18であることが好ましい。 なお、本発明の効果を損なわない範囲内で、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤を適宜使用することも可能である。
乳化重合時に使用するアニオン界面活性剤の使用量、もしくはアニオン界面活性剤および非イオン性界面活性剤を併用する場合の使用量は全単量体に対し、0.5〜10重量%が好ましく、1〜6重量%がより好ましい。かかる含有量が少なすぎる場合は、反応系の乳化剤が不足して良好なエマルジョンとならない傾向があり、多すぎる場合は、未反応の乳化剤が多くなり、耐水性を低下させてしまう傾向がある。
また、アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤との配合比率については、アニオン界面活性剤1に対して、ノニオン界面活性剤を0〜20であることが好ましく、特にはエマルジョンの皮膜の耐水性の点から0〜10であることが好ましい。
前記乳化重合におけるラジカル重合開始剤としては、通常の乳化重合に用いられるものであればいずれも使用することができ、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アゾビスアミノジプロパンの塩酸塩等の水溶性タイプ、ベンゾイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート、アゾビスイソブチニトリル等の油溶性タイプなどが挙げられる。さらにかかるラジカル重合開始剤として酸性亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸等の還元剤を組み合わせたレドックス系も使用できる。ただしロンガリットは、ホルムアルデヒドを放散するので、環境対応型の見地から使用しないことが望ましい。
ラジカル重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、用いる全単量体に対して、0.05〜3重量%であることが好ましく、0.1〜1重量%がより好ましい。
重合は、通常の乳化重合でよく、全単量体を一括にて反応缶に仕込むバッチ式、単量体を反応中随時滴下する滴下式、また滴下式において単量体、水および乳化剤を予め乳化してモノマーエマルジョンとして滴下する方法などが、適宜使用できる。所望により、重合度の調整に用いる連鎖移動剤、最低造膜温度を調整する造膜助剤、塗膜の柔軟性を改良する可塑剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、凍結防止剤、ホルムアルデヒドキャッチャー剤などの添加剤を使用することができる。
本発明においては、アクリル系共重合体エマルジョンは、予め単量体と水とを界面活性剤を用いて乳化分散させモノマーエマルジョンを作製しておき、次いで、反応缶に水と界面活性剤を仕込み、昇温した後に、先に作製したモノマーエマルジョンを滴下し、ラジカル重合開始剤を適宜に添加して乳化重合して得られる。但し、これに限定されるものではない。
前記単量体を共重合して得られる本発明のアクリル系共重合体エマルジョン中のアクリル共重合体のガラス転移点は、−25〜+5℃であることが好ましく、−20〜0℃であることがより好ましい。ポリマーのガラス転移点は塗膜の伸び、および汚染性に大きく影響し、ガラス点移転(Tg)が高すぎると、最低造膜温度(MFT)を0℃以下に調整するためにかなり多量の造膜助剤が必要となる傾向があり、これらの造膜助剤類はVOC成分となることから、環境対応型とは言えなくなってくる。ガラス転移点(Tg)が低すぎると、塗膜のタックが強くなり、汚れが吸着し易くなり好ましくない傾向がある。
ガラス転移点(Tg)はエマルジョンフィルムからも実測できるが、計算上求めることもできる。ここで、ガラス転移温度(Tg)とは、下記のようなFOXの式を用いて計算することにより乳化重合前に使用するモノマー組成からガラス転移温度(Tg)を求めることができ簡便である。
(FOXの式)
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・+Wn/Tgn
1+W2+W3+・・・+Wn=1
[式中、Wnは各モノマーの重量分率、Tgnは各ホモポリマーのガラス転移点(絶対温度)を表わす。ただし、nは整数である。]
本発明のアクリル系共重合体エマルジョンの固形分濃度は、通常20〜65重量%、好ましくは40〜60重量%である。固形分濃度が高すぎると、アクリル系共重合体エマルジョンが高粘度となり生産性が劣る傾向があり、低すぎると顔料配合濃度の高い塗料が得難くなる傾向がある。
また、本発明のアクリル系共重合体エマルジョン中のアクリル系共重合体の平均粒子径としては、50〜500nmであることが好ましく、100〜300nmであることがより好ましい。平均粒子径が大きすぎるとアクリル系共重合体エマルジョン粒子が沈降しやすくなる傾向があり、小さすぎるとアクリル系共重合体エマルジョンの粘度が高くなり取り扱いが悪くなる傾向がある。
かくして得られる本発明のアクリル系共重合体エマルジョンは、内外装塗料として使用した場合に、顔料配合濃度が高く、かつ低VOCで低臭気塗料の設計が可能となり好ましい。
また、本発明は、前記アクリル系共重合体エマルジョンを含有する内外装塗料用被覆組成物に関する。
前記内外装塗料用被覆組成物における本発明のアクリル系共重合体エマルジョン中のアクリル系共重合体の含有量は、前記組成物中1〜50重量%であることが好ましく、1〜40重量%がより好ましい。含有量が多すぎるとコスト的メリットが低下する傾向があり、少なすぎると本発明の効果が得難くなる傾向がある。
該被覆組成物には、前記アクリル系共重合体エマルジョンのほかに、防腐剤、凍結防止剤、防かび剤、顔料分散剤、湿潤剤、増粘剤、造膜助剤、可塑剤、顔料などを含むことができる。
また、本発明は、前記内外装被覆組成物を含有するパテ組成物に関する。
パテ組成物には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、水酸化アルミニウム、カオリン、クレー、ホワイトカーボン、タルク、ベントナイトなどの体質顔料、増粘剤、顔料分散剤、凍結防止剤などを目的に応じて含むことができる。
本発明のパテ組成物は、前記内外装塗料用アクリル系共重合体エマルジョンを含有するので、顔料配合濃度の高い(PVC:通常75〜95重量%)塗料に使用した場合、良好な顔料混和安定性を示す。顔料混和安定性(貯蔵安定性)は、パテ組成物の粘度を基準として示すことができ、顔料混合後、50℃で3週間放置した後のパテ組成物の粘度が、200〜600Pa.sであることが好ましく、300〜600Pa・sがより好ましい。前記パテ組成物の粘度が高すぎる場合は、パテ組成物の分散が不十分となり顔料混和安定性が劣る傾向があり、低すぎる場合では、パテ組成物を塗装するときの作業性が低下する傾向がある。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、実施例および比較例中「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
実施例1
攪拌機、還流冷却器、温度計、および滴下装置を備えた2.4Lの反応缶に、水450部、酢酸ソーダ2.5部、アニオン界面活性剤(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩、HLB15)(実質分)3部、ノニオン界面活性剤(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、HLB15)(実質分)8部を仕込み、これに水400部、前記アニオン界面活性剤(実質分)10部、前記ノニオン界面活性剤(実質分)25部、メチルメタクリレート400部、n−ブチルアクリレート600部、アクリル酸15、アクリルアミド10部を乳化混合したものを滴下し、温度を80℃にコントロールして、開始剤として5%過硫酸アンモニウム水溶液62部を滴下して乳化重合を行った。重合終了後、アンモニア水、苛性ソーダ水溶液にて中和し、不揮発分50%のアクリル系共重合体エマルジョンを得た。得られたアクリル系共重合体エマルジョンのFOXの式による計算上のTgは、−5.6℃であった。
実施例2〜4
表1の重合組成に基づき、実施例1と同様の方法で各アクリル系共重合体エマルジョンを得た。得られたアクリル系共重合体エマルジョンについて求めたFOXの式による計算上のTgを表1に示す。
比較例1
アミド基含有アクリル系単量体を使用しなかった場合について、表1の重合組成に基づき、実施例1と同様の方法でアクリル系共重合体エマルジョンを得た。得られたアクリル系共重合体エマルジョンについて求めたFOXの式による計算上のTgを表1に示す。
Figure 2008024843
評価
(塗料の作製)
表2に示す塗料処方にて内装用パテ組成物を作製した。
Figure 2008024843
パテ組成物は、体質顔料が非常に多く配合される非常に高粘度なチキソトロピー粘性であるので、Lab mixerでは、体質顔料類を混練できないケースがあり、その場合にはパテ台とパテへらを使用して、手練りで強引に練り上げた。
(評価試験)
パテ組成物の粘度は、BH型粘度計4rpm(ローターNo.7)にて測定した。さらに、50℃で3週間放置後のパテ組成物の貯蔵安定性を調べた。
評価結果を表3に示す。
Figure 2008024843
パテ組成物作製の容易さ
良:パテ組成物をLab mixerで混練作製することができる。
不良:パテ組成物の粘度が高くなってLab mixerで混練作製することができず、パテ台とパテへらを使用して手練りで強引に練り上げた。
パテ組成物の貯蔵安定性(顔料混和安定性)
パテ組成物製造直後の粘度と50℃×3週間放置後の粘度を測定することにより、貯蔵安定性を評価した。
ここで、実施例3は、アニオン界面活性剤を単独で使用した場合のアクリル系共重合体エマルジョンであり、該エマルジョンから得られたパテ材料の顔料混和安定性が優れるのは、比較的疎水性のシクロヘキシルメタクリレートを使用しており、かつメタクリルアミドより親水性の高いアクリルアミドを使用しているので、アミド基含有モノマーの粒子表面への分布が大きくなるためであると考えられる。
本発明の内外装塗料用アクリル系共重合体エマルジョンは、内装塗料や内外装用下地調整材などに好適に用いることができ、とりわけパテ組成物として非常に有効である。

Claims (8)

  1. (メタ)アクリル酸アルキルエステル、不飽和カルボン酸およびアミド基含有アクリル系単量体を含有するエチレン性不飽和単量体混合物を、アニオン界面活性剤を用いて乳化重合してなることを特徴とする内外装塗料用アクリル系共重合体エマルジョン。
  2. さらにノニオン界面活性剤を用いて乳化重合してなることを特徴とする請求項1記載の内外装塗料用アクリル系共重合体エマルジョン。
  3. エチレン性不飽和単量体混合物が、さらに芳香族ビニル化合物を含有することを特徴とする請求項1または2記載の内外装塗料用アクリル系共重合体エマルジョン。
  4. エチレン性不飽和単量体混合物の混合比が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル49〜99重量%、不飽和カルボン酸0.5〜8重量%、アミド基含有アクリル系単量体0.5〜8重量%、芳香族ビニル化合物0〜35重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内外装塗料用アクリル系共重合体エマルジョン。
  5. 前記アクリル系共重合体のガラス転移点が−25〜+5℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内外装塗料用アクリル系共重合体エマルジョン。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の内外装塗料用アクリル系共重合体エマルジョンを含有することを特徴とする内外装塗料用被覆組成物。
  7. さらに顔料を含有することを特徴とする請求項6記載の内外装塗料用被覆組成物。
  8. 請求項6または7記載の内外装塗料用被覆組成物を含有することを特徴とするパテ組成物。
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