JP2011241388A - 水性被覆材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリオルガノシロキサン重合体(A)と、重合体(B)とを含む水性被覆材であって、ポリオルガノシロキサン重合体(A)と重合体(B)との質量比(A)/(B)が0.015〜2であり、重合体(B)は、ポリオルガノシロキサン重合体(C)を含む水性分散液中において、ガラス転移温度が0℃以下となる共重合体が得られるエチレン性不飽和単量体混合物(i)を重合した後に、ガラス転移温度が20℃以上となる共重合体が得られるエチレン性不飽和単量体混合物(ii)を重合して得られた重合体である。
【選択図】なし
Description
特許文献2には、特定のポリオルガノシロキサン重合体を含む水性分散体の存在下で、エチレン性不飽和単量体を2段重合して得られた水性被覆組成物が記載されている。
特許文献3には、3量体から6量体の環状オルガノシロキサンオリゴマーを重合して得られたポリオルガノシロキサン重合体が水に分散したエマルションの製造方法が記載されている。
特許文献2に記載の方法では、ポリオルガノシロキサン重合体を配合していないため、撥水性、耐候性、耐水性の発現が不十分であった。
特許文献3に記載のポリオルガノシロキサン重合体のみからなる水性エマルションでは、成膜性が不十分であった。
Tgi≦0℃・・・(1)
Tgii≧20℃・・・(2)
Tgi:エチレン性不飽和単量体混合物(i)を重合して得られる共重合体のFoxの計算式から求められるガラス転移温度。
Tgii:エチレン性不飽和単量体混合物(ii)を重合して得られる共重合体のFoxの計算式から求められるガラス転移温度。
本発明で使用されるポリオルガノシロキサン重合体(A)は、ジアルキルジアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、あるいはジメチルシロキサン環状オリゴマー等を重縮合することによって得られる。
ジメチルジアルコキシシランの具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等が挙げられ、アルキルトリアルコキシシランの具体例としてはメチルトリアルコキシシラン等が、テトラアルコキシシランの具体例としては、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
ジメチルシロキサン環状オリゴマー類としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン、ジメチルサイクリックス(ジメチルシロキサン環状オリゴマー3〜7量体混合物)等が挙げられる。
アルキルトリアルコキシシランの具体例としては、前記記載のメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等が挙げられ、テトラアルコキシシランの具体例としては、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
分子内にトリアルコキシシリル基を有する化合物の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン類、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の3−(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン類、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等の3−メルカプトアルキルトリアルコキシシラン類が挙げられる。これらの成分は必要に応じて単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。
この酸触媒の使用量は、目的とするポリオルガノシロキサン重合体(A)の分子量、固形分量および重合温度等の重合条件により任意に設定できるものであるが、オルガノシロキサンの100質量部に対して2質量部以上12質量部以下とすることが好ましい。酸触媒の使用量を2質量部以上とすることによって、ポリオルガノシロキサン重合体Aの分散安定性が良好となり、12質量部以下とすることによって、得られる塗膜の耐水性が良好となる。
重合体(B)は、ポリオルガノシロキサン重合体(C)を含む水性分散液中でエチレン性不飽和単量体混合物(i)を重合した後に、エチレン性不飽和単量体混合物(ii)を重合して得られる。
ポリオルガノシロキサン重合体(C)は、オルガノシロキサンとグラフト交叉剤を重合して得られる。
グラフト交叉剤の具体例としては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン類、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルシラン類、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプトアルキルシラン類等が挙げられる。
これらの成分は必要に応じて単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。
トリアルコキシシリル基を有するグラフト交叉剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン類、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の3−(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン類、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等の3−メルカプトアルキルトリアルコキシシラン類が挙げられる。これらの成分は必要に応じて単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。
ポリオルガノシロキサン重合体(C)の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオルガノシロキサン重合体(A)で例示した製造方法と同様の製造方法が挙げられる。
単量体混合物(i)としては、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されないが、単量体混合物(i)を重合して得られる共重合体は、Foxの計算式から求められるガラス転移温度(Tgi)が0℃以下(上記式(1))となるように単量体混合物(i)を選択する必要がある。より好ましくは−70℃以上−10℃以下であり、さらに好ましくは−50℃以上−20℃以下である。Tgiが0℃以下であれば、塗膜の柔軟性が向上する。
ここで、Foxの式とは、下記の関係式である。
1/(273+Tg)=Σ(Wn/(273+Tgn))
[式中、Wnはモノマーnの質量分率、TgnはモノマーnのホモポリマーのTg(℃)を示す。]
n−ブチルアクリレートは、単量体混合物(i)中に65質量%以上用いることで、水性被覆材の成膜性が向上し、塗膜の柔軟性、耐候性、耐水性、非粘着性および耐汚染性が向上する。より好ましくは80質量%以上である。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチルメタアクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシルメタクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体;アクリル酸、メタクリル酸等のラジカル重合性カルボン酸単量体;ヒドロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート等の末端ヒドロキシ型ポリアルキレンオキシド基含有ラジカル重合性単量体;メトキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート等のアルキル基末端型ポリアルキレンオキシド基含有ラジカル重合性単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のオキシラン基含有ラジカル重合性単量体;ダイアセトンアクリルアミド等のカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体;1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート等の光安定化作用を有する(メタ)アクリレート;2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性成分を有する(メタ)アクリレート;2−アミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ラジカル重合性単量体;ジ(メタ)アクリル酸亜鉛等の金属含有ラジカル重合性単量体;(メタ)アクリロニトリル、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート等のその他の(メタ)アクリル系単量体;スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系単量体;酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン等のラジカル重合性単量体。
0.01≦W(C)/(W(C)+W(i))≦0.45・・・(3)
W(C):ポリオルガノシロキサン重合体(C)の質量。
W(i):エチレン性不飽和単量体混合物(i)の質量。
この関係を満たすことにより、塗膜の耐候性、耐水性、柔軟性、および耐汚染性が向上する。質量比が0.01未満であると、塗膜の撥水性、柔軟性、耐侯性、および耐水性が低下する。また、0.45を超えると、塗膜の耐侯性、耐水性、非粘着性、および耐汚染性が低下する傾向にある。より好ましくは、0.02以上0.4以下である。
単量体混合物(ii)としては、単量体混合物(ii)を重合して得られる共重合体は、Foxの計算式から求められるガラス転移温度(Tgii)が、Foxの計算式で20℃以上(上記式(2))とすることが必要である。また、110℃以下となるように選択することが好ましい。より好ましくは100℃以下であり、さらに好ましくは30℃以上50℃以下である。Tgiiが20℃以上であれば、特に低温伸度が向上する。塗膜の耐候性、耐水性、非粘着性、および耐汚染性が向上し、110℃以下であれば、塗膜の柔軟性の低下が抑制できる。
ことができる。
全単量体中の含有量が5質量%以上であれば効果が得られ、35質量%以下であれば塗膜の柔軟性の低下が抑制できる。
0.2≦W(ii)/(W(C)+W(i)+W(ii))≦0.8・・・(4)
W(C):ポリオルガノシロキサン重合体Cの質量。
W(i):エチレン性不飽和単量体混合物(i)の質量。
W(ii):エチレン性不飽和単量体混合物(ii)の質量。
この質量比が0.2未満であると、塗膜の耐侯性、耐水性、非粘着性および耐汚染性が低下する傾向にあるためである。また、0.8を超えると、塗膜の柔軟性が低下する傾向にあるためである。塗膜の非粘着性および耐汚染性と柔軟性のバランスから、0.3以上0.7以下とすることが好ましい。
ラジカル開始剤としては、一般的にラジカル重合に使用されるものが使用可能であり、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、アゾビスイソブチロニトリルに代表される油溶性アゾ化合物類、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類が挙げられる。
また、水性被覆材の貯蔵安定性、塗膜の耐水性、および耐候性の点から、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類と硫酸第一鉄、アスコルビン酸塩等の還元剤と組み合わせて用いることが好ましい。
ラジカル重合開始剤の添加量は、通常、エチレン性不飽和単量体混合物100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下であるが、重合の進行や反応の制御を考慮に入れると、0.02質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
ポリオルガノシロキサン重合体(C)を含む水性分散液中で、エチレン性不飽和単量体混合物を重合する場合の重合開始温度は75℃以下とすることが好ましい。75℃以下とすることで、水性被覆材の成膜性が向上し、塗膜の柔軟性、耐候性、耐水性、非粘着性および耐汚染性が向上する。これはポリオルガノシロキサン重合体(C)をエチレン性不飽和単量体混合物からなる重合体で被覆し易くなるためと考えられる。より好ましくは65℃以下であり、さらに好ましくは55℃以下である。75℃以下で重合を開始した後は、必要に応じて75℃以上としても構わないが、ポリオルガノシロキサン重合体(C)を含む水性分散液中で、エチレン性不飽和単量体混合物を重合する際に重合発熱が見られる場合は、その発熱のピークを確認した後、75℃以上にすることが重合安定性の点から好ましい。
界面活性剤としては、各種アニオン性、カチオン性、又はノニオン性の界面活性剤、高分子乳化剤や反応性界面活性剤などが使用できる。さらに、塗膜の耐候性および耐水性の観点から反応性界面活性剤を使用することが好ましい。界面活性剤を2種以上併用して用いる場合、塗膜の耐候性および耐水性を向上させるために、界面活性剤成分のうち反応性界面活性剤を50質量%以上用いることが好ましい。
本発明の水性被覆材は、ポリオルガノシロキサン重合体(A)と重合体(B)との質量比(A)/(B)が0.015〜2であることが必要である。ポリオルガノシロキサン重合体(A)と重合体(B)の質量比が、0.015以上であると、撥水性、柔軟性、耐候性、耐水性が向上し、2/1以下であると、塗膜の非粘着性および耐汚染性を低下することなく、撥水性、柔軟性、耐候性、耐水性が向上する。好ましくは、0.05以上1以下であり、より好ましくは0.2以上0.5以下である。
ポリオルガノシロキサン重合体(A)と重合体(B)の混合方法は、十分に混合可能であれば特に規定されず、ホットブレンドでも、コールドブレンドでも良い。
水性被覆材は、必要に応じて各種顔料、消泡剤、顔料分散剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、スリップ剤、防腐剤等を含有してもよい。また、他のエマルション樹脂、水溶性樹脂、粘性制御剤、メラミン類等の硬化剤と混合して使用してもよい。
本発明の塗装物は、前述の水性被覆材が塗布された塗装物である。
本発明の水性被覆材を塗布することにより得られる塗膜としては、特にその塗膜形成箇所に制約はなく、種々の物品(以下、便宜的に「基体」と称する。)に成膜して塗装物とすることができる。
基体としては、例えば、セメントモルタル、スレート板、石膏ボード、押し出し成形板、発泡性コンクリート、金属、ガラス、磁器タイル、アスファルト、木材、防水ゴム材、プラスチック、珪酸カルシウム基材、塩ビシート、FRP(Fiber Reinforced Plastics)基材等が挙げられる。本発明の水性被覆材による塗膜は、これらの各種基体の表面仕上げ等に位置付けることができる。
水性被覆材を各種基体の表面に塗布する方法としては、例えば、噴霧コート法、ローラーコート法、バーコート法、刷毛塗り法、ディッピング法等の各種塗装法を適宜選択することができる。また、塗布後は、常温乾燥、又は40〜200℃で加熱乾燥することで充分に成膜した塗膜を得ることができる。
以上説明した本発明の塗装物は、本発明の水性被覆材が塗布されているため、優れた撥水性、柔軟性(低温伸度)、耐汚染性、耐候性、耐水性を発現することができる。
本実施例における水性被覆材の物性試験は、以下に示す方法で行った。
アルミ皿に得られた共重合体の水性分散体3gを計りとり、恒温槽(70℃)内で30分間予備乾燥し、更に恒温槽(150℃)内で4時間乾燥後の重量変化より求めた。
加熱残分(質量%)=乾燥後重量(g)/乾燥前重量(g)×100
下記条件にて測定を実施した。
測定装置:最低成膜温度測定装置(高林理化(株)製)
測定方法:ASTM D2354,Wet膜厚200μm
DM−500型自動接触角計(協和界面科学(株)製)を用い、評価用塗板に0.9μLの水滴を滴下し、5秒経過後の水接触角を測定し、以下の基準で判定した。
◎:水接触角110°以上
○:水接触角100°以上、110°未満
△:水接触角90°以上、100°未満
×:水接触角90°以下
タイペークCR−97(石原産業(株)社製)196.3g、OROTAN SG(ローム&ハース(株)社製、顔料分散剤)2.1g、サーフィノール DF−58(エア・プロダクツ(株)社製、消泡剤)0.08g、プロピレングリコール29.4g、脱イオン水34.3g、28%アンモニア水溶液1.8gを十分に混合した後、ガラスビーズを加えて高速分散機で30分間顔料分散を行い、ガラスビーズ等を300メッシュナイロン紗で濾別したものを評価用のミルベースとした。ついで、水性被覆材100g(固形分45%基準)に対し、上記の評価用ミルベース40.3g、キョウワノールM(協和発酵(株)社製、造膜助剤)を最低造膜温度が0℃になるように適量加えて、十分攪拌した後、塗料粘度がフォードカップ#4で100秒〜140秒程度になるように、RHEOLATE 350(RHEOX(株)社製、増粘剤)と、水を加えて調整した。その後100メッシュナイロン紗で濾過を行い、白エナメル水性塗料を作成した。
得られた白エナメル水性塗料をアプリケーター(乾燥膜厚=60〜80μm)を用いて離型紙上に塗布し、20℃×65%Rhの環境下で30分間セッティングを行った後に80℃の乾燥機中にて30分乾燥して塗膜を得た。この塗膜からJIS K 6301に規定するダンベル状2号型(幅10mm、標線間距離20mm)に打ち抜き、離型紙を取り除いたものを塗膜伸び試験サンプルとして用いた。
試験サンプルを恒温槽付きテンシロン引張試験機(RTC−1250A オリエンテック(株)製)を用いて、温度−10℃、チャック間距離30mm、引張速度200mm/min.にて測定し、以下の基準で判定した。
◎:塗膜伸度50%以上
○:塗膜伸度25%以上、50%未満
△:塗膜伸度10%以上、25%未満
×:塗膜伸度10%未満
(4)で作成した水性塗料を100mm×100mmのガラス板に、4MLのアプリケーターで塗装し、20℃×65%Rhの環境下で30分間セッティングを行った後に80℃の乾燥機中で2時間乾燥を行い、耐汚染性試験用の塗装板を作成した。この塗装板に、水で分散させた10%カーボンブラック溶液を塗装面に刷毛にて塗布し、50℃の乾燥機中で2時間乾燥させた。その後、塗布したカーボンブラックを、刷毛にて流水中で洗い流し、試験前後の白さの差△L(△L=試験後L値−試験前L値)を色差計により測定し、耐汚染性の指標とした。以下の基準で判断した。
◎:△Lが−50以上
○:△Lが−60以上−50未満
△:△Lが−70以上−60未満
×:△Lが−70未満
(4)で作成した水性塗料をリン酸亜鉛処理鋼鈑(ボンデライト#100処理鋼鈑、板厚0.8mm、縦150mm×横70mm)にバーコーター#40で塗装し、20℃×65%Rhの環境下で30分間セッティングを行った後に80℃の乾燥機中で1時間乾燥を行い、耐候性試験用の塗装板を作成した。
この塗装板の塗装面以外にポリエステルテープを張り付け、耐候性試験時にかかる水滴等が塗装面以外のところへ付着することを防止した後に、ダイプラ・メタルウエザーKU−R4−W型(ダイプラ・ウィンテス(株)社製)に評価用試験板を入れ、試験サイクル:照射4時間(噴霧5秒/15分)/結露4時間、UV強度:85mW/cm2、ブラックパネル温度:照射時63℃/結露時30℃、湿度:照射時50%RH/結露時96%RH、の条件で、360時間(45サイクル)経過後の60°グロスの保持率を耐候性の指標とし、以下の基準で判定した。
◎:90%以上である。
○:70%以上、90%未満である。
△:50%以上、70%未満である。
×:50%未満、もしくは塗膜の剥離・クラックが生じた。
水性被覆材に造膜助剤としてキョーワノールMを最低造膜温度が0℃となるように適量添加し、十分に攪拌した後に100メッシュナイロン紗で濾過を行いクリヤー水性塗料を作成した。このクリヤー水性塗料をリン酸亜鉛処理鋼鈑(ボンデライト#100処理鋼鈑、板厚0.8mm、縦150mm×横70mm)にバーコーター#40で塗装し、20℃×65%Rhの環境下で30分間セッティングを行った後に80℃の乾燥機中で1時間乾燥を行い耐水性試験用の塗装板を作成した。この塗装板の塗装面以外にポリエステルテープを張付け、耐水性試験時にかかる水滴等が塗装面以外のところへ付着することを防止した後に、50℃の温水中に7日間浸漬した。次いで常温水中に30分浸漬した後に取り出し、2時間室温乾燥後の塗膜の白化およびブリスターの有無を目視で確認し、以下の基準で判定した。
◎:塗膜に温水に浸漬した部分と浸漬しなかった部分の境界が見られず、塗膜の白化およびブリスターもない。
○:塗膜に温水に浸漬した部分と浸漬しなかった部分の境界がわずかに見られるが、塗膜の白化およびブリスターはない。
△:塗膜にわずかではあるが、白化またはブリスターがある。
×:塗膜にあきらかな白化やブリスターがある。
水性被覆材を、密閉できるガラス容器に入れ、これを50℃の恒温水槽中に保存し、分離や凝集などの経時変化が無いかを目視で確認し、以下の基準で判定した。
◎:30日後、分離・凝集がない。
○:15日後、分離・凝集がない(30日以内に分離・凝集がみられる)。
×:15日以内に、分離・凝集がみられる。
下記原料組成物をホモミキサーで予備混合し、圧力式ホモジナイザーを用いて200kg/cm2の圧力で強制乳化して、原料プレエマルションを得た。
次いで、水(55部)およびドデシルベンゼンスルホン酸(5部)を、攪拌機、還流冷却管、温度制御装置および滴下ポンプを備えたフラスコに仕込み、攪拌下に、フラスコの内温を85℃に保ちながら、上述の原料プレエマルションを4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間重合を進行させ、冷却して、ドデシルベンゼンスルホン酸と当モル量のアンモニアを加えてポリオルガノシロキサン共重合体水分散液(SiEm)を調製した。固形分は20質量%であった。
原料組成物:
環状ジメチルシロキサンオリゴマーの3〜7量体混合物 95部
γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン 5部
脱イオン水 290部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.4部
ドデシルベンゼンスルホン酸 0.4部
原料組成物を下に示す通りに変更した以外は、製造例1と同様にしてポリオルガノシロキサン重合体水分散液(SiEm)を調製した。固形分は20質量%であった。
原料組成物:
環状ジメチルシロキサンオリゴマーの3〜7量体混合物 95部
γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン 5部
脱イオン水 290部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.4部
ドデシルベンゼンスルホン酸 0.4部
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、および滴下ポンプを備えたフラスコに下記第1原料混合物を仕込み、フラスコの内温を48℃に昇温した後に、下記還元剤水溶液を添加した。また、重合発熱によるピークトップ温度を確認後、フラスコの内温を80℃に保持した。
第1原料混合物:
製造例1のSiEm 50部
(固形分10部)
単量体1 ノルマルブチルアクリレート 25.5部
メチルメタクリレート 3.5部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 1部
脱イオン水 17.7部
開始剤 パーブチルH69(商品名、日本油脂(株)製) 0.09部
還元剤水溶液:
硫酸第一鉄 0.0001部
エチレンジアミン(EDTA) 0.00025部
アスコルビン酸ナトリウム 0.02部
脱イオン水 2部
次いで、還元剤水溶液を添加してから0.5時間後に、2段目の共重合体の構成成分を含む第2原料混合物(予め乳化分散させたプレエマルション液)と下記開始剤水溶液とを1.5時間かけて滴下した。この滴下中はフラスコの内温を80℃に保持し、滴下終了後は80℃で1時間保持した。
第2原料混合物:
単量体2 ターシャリーブチルメタクリレート 20部
メチルメタクリレート 18部
2−エチルヘキシルアクリレート 18.5部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 2部
アクリル酸 1.5部
界面活性剤 アデカリアソープSR−10(商品名、ADEKA(株)製)
1.5部
脱イオン水 26部
開始剤水溶液:
開始剤 過硫酸アンモニウム 0.1部
脱イオン水 2部
その後、室温まで冷却し、28%アンモニア水(1.85部)を添加した。
製造例1で得られたSiEmをポリシロキサン重合体(A)分散液として用い、この分散液と製造例3で得られた重合体(B)の分散液を、それぞれ固形分の質量比で1/5となるように混合して水性被覆材を得た。本塗料(水性被覆材)の評価結果を表1に示した。撥水性、低温伸度、耐汚染性、耐候性、耐水性、貯蔵安定性の何れも良好であった。
各成分の量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして水性被覆材を得た。本塗料(水性被覆材)の評価結果を表1〜2に示した。
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、および滴下ポンプを備えたフラスコに製造例1のSiEmを50部(固形分10部)を仕込み、フラスコの内温を80℃に昇温した。
次いで、共重合体の構成成分を含む第1原料混合物(予め乳化分散させたプレエマルション液)と下記開始剤水溶液とを2.25時間かけて滴下した。この滴下中はフラスコの内温を80℃に保持し、滴下終了後は80℃で1時間保持した。
第1原料混合物:
単量体1 ノルマルブチルアクリレート 25.5部
メチルメタクリレート 21.5部
ターシャリーブチルメタクリレート 20部
2−エチルヘキシルアクリレート 18.5部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 3部
アクリル酸 1.5部
界面活性剤 アデカリアソープSR−10(商品名、ADEKA(株)製)
1.5部
脱イオン水 43.7部
開始剤水溶液:
開始剤 過硫酸アンモニウム 0.2部
脱イオン水 4部
その後、室温まで冷却し、28%アンモニア水(1.85部)を添加後、製造例2のSiEmを100部(固形分20部)添加して水性被覆材を得た。本塗料(水性被覆材)の評価結果を表3に示した。
ポリオルガノシロキサン重合体(重合体(A))水分散液を最終工程で添加せず、製造例3で得られた重合体(B)のみを用いた以外は、実施例1と同様にして水性被覆材を得た。本塗料(水性被覆材)の評価結果を表3に示した。
製造例1で得られたSiEm(ポリオルガノシロキサン重合体(重合体(A)))を水性被覆材とした。本塗料(水性被覆材)の評価結果を表3に示した。
最終工程で添加するポリオルガノシロキサン重合体(重合体(A))水分散液の量を表2に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして水性被覆材を得た。本塗料(水性被覆材)の評価結果を表3に示した。
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、および滴下ポンプを備えたフラスコに下記第1原料混合物を仕込み、フラスコの内温を48℃に昇温した後に、下記還元剤水溶液を添加した。また、重合発熱によるピークトップ温度を確認後、フラスコの内温を80℃に保持した。
第1原料混合物:
単量体1 ノルマルブチルアクリレート 25.5部
メチルメタクリレート 3.5部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 1部
界面活性剤 アデカリアソープSR−10(商品名、ADEKA(株)製)
1.5部
脱イオン水 45部
開始剤 パーブチルH69(商品名、日本油脂(株)製) 0.09部
還元剤水溶液:
硫酸第一鉄 0.0001部
エチレンジアミン(EDTA) 0.00025部
アスコルビン酸ナトリウム 0.02部
脱イオン水 2部
次いで、還元剤水溶液を添加してから0.5時間後に、2段目の共重合体の構成成分を含む第2原料混合物(予め乳化分散させたプレエマルション液)と下記開始剤水溶液とを1.5時間かけて滴下した。この滴下中はフラスコの内温を80℃に保持し、滴下終了後は80℃で1時間保持した。
第2原料混合物:
単量体2 ターシャリーブチルメタクリレート 20部
メチルメタクリレート 18部
2−エチルヘキシルアクリレート 18.5部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 2部
アクリル酸 1.5部
界面活性剤 アデカリアソープSR−10(商品名、ADEKA(株)製)
1.5部
脱イオン水 26部
開始剤水溶液:
開始剤 過硫酸アンモニウム 0.1部
脱イオン水 2部
その後、室温まで冷却し、28%アンモニア水(1.85部)を添加後、製造例1のSiEmを150部(固形分30部)を添加して水性被覆材を得た。本塗料(水性被覆材)の評価結果を表3に示した。
第1原料混合物と第2原料混合物を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして水性被覆材を得た。本塗料(水性被覆材)の評価結果を表3に示した。
n−BA :ノルマルブチルアクリレート
MMA :メチルメタクリレート
2−HEMA :2−ヒドロキシエチルメタクリレート
t−BMA :ターシャリーブチルメタクリレート
2−HEMA :2−ヒドロキシエチルメタクリレート
2−EHA :2―エチルヘキシルアクリレート
AA :アクリル酸
アデカリアソープSR−10:反応性アニオン性界面活性剤(商品名、ADEKA(株)製)
一方、比較例1は、ポリオルガノシロキサン重合体(C)を含む水性分散液中で、エチレン性不飽和単量体混合物を1段階で重合しているため、撥水性、柔軟性(特に低温伸度)、耐汚染性、耐候性、耐水性が劣っていた。
比較例2はポリオルガノシロキサン重合体(A)を添加していないため、撥水性が特に低位であった。
比較例3は、重合体(B)を添加していないため、成膜不良を起こし、塗膜評価を実施できなかった。
比較例4は、ポリオルガノシロキサン重合体(A)の添加量が少なすぎるため、撥水性、柔軟性(特に低温伸度)、耐候性、耐水性が劣っていた。
比較例5は、ポリオルガノシロキサン重合体(A)の添加量が多すぎるため、貯蔵安定性、撥水性、柔軟性(特に低温伸度)、耐汚染性、耐候性、耐水性が劣っていた。
比較例6は、重合体(B)にポリオルガノシロキサン重合体(C)を含有していないため、撥水性、柔軟性(特に低温伸度)、耐汚染性、耐候性、耐水性が劣っていた。
比較例7は、エチレン性不飽和単量体混合物(ii)のTgiiが低すぎる例であり、耐汚染性、耐候性、耐水性に劣る結果であった。
比較例8は、エチレン性不飽和単量体混合物(i)のTgiが高すぎる例であり、低温伸度が劣る結果であった。
Claims (3)
- ポリオルガノシロキサン重合体(A)と、重合体(B)とを含む水性被覆材であって、
前記ポリオルガノシロキサン重合体(A)と前記重合体(B)との質量比(A)/(B)が0.015〜2であり、
前記重合体(B)は、ポリオルガノシロキサン重合体(C)を含む水性分散液中において、下記式(1)を満足するエチレン性不飽和単量体混合物(i)を重合した後に、下記式(2)を満足するエチレン性不飽和単量体混合物(ii)を重合して得られた重合体である水性被覆材。
Tgi≦0℃・・・(1)
Tgii≧20℃・・・(2)
Tgi:エチレン性不飽和単量体混合物(i)を重合して得られる共重合体のFoxの計算式から求められるガラス転移温度。
Tgii:エチレン性不飽和単量体混合物(ii)を重合して得られる共重合体のFoxの計算式から求められるガラス転移温度。 - 前記ポリオルガノシロキサン重合体(A)が、アルキルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、および分子内にトリアルコキシシリル基を有する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を重合して得られた重合体である請求項1記載の水性被覆材。
- 請求項1又は2に記載の水性被覆材が塗装された塗装物。
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