JP2008024838A - スクラッチ発色用インキおよび不可視情報印刷シート - Google Patents

スクラッチ発色用インキおよび不可視情報印刷シート Download PDF

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Abstract

【課題】不可視情報印刷部分が通常の取り扱い時の擦れでは発色しにくいにもかかわらず、爪で擦ることで不可視情報の可視化が容易に行え、発色濃度が高く、不可視情報を可視化する際に削りカスの発生が無く、不可視情報を印刷した部分をスクラッチ発色せずに視認することが極めて困難なスクラッチ発色用インキおよびそれを用いた不可視情報印刷シートを提供する。
【解決手段】
電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物およびワニスを含み、内在する固体粒子成分の平均粒径が0.3〜25μmであることを特徴とするスクラッチ発色用インキおよび該スクラッチ発色用インキによって不可視情報が支持体上に印刷されてなることを特徴とする不可視情報印刷シートである。
【選択図】なし

Description

本発明は、予め形成された不可視情報を外部からの摩擦により発色させることで可視化するスクラッチ発色用インキおよびそれを用いた不可視情報印刷シートに関するものである。
従来、くじ等に用いられる不可視情報印刷シートとして、当落を示す文字、数字、図柄等の情報を紙などのシートに印刷し、さらに隠蔽層で覆うことで情報を不可視の状態としたものが一般的に用いられていた。具体的には、紙等のシートに可視情報等を印刷し、さらに不可視化すべき情報を印刷した後、 不可視化すべき情報を覆うように剥離剤層を設け、その上に隠蔽性の銀色等の隠蔽インキ層を設けたものを挙げることができ、硬貨等により剥離剤層を削り取ることで不可視情報が現れるようにしている。このような不可視情報印刷シートとして、可視情報が印刷された面に隠蔽インキ層や金属蒸着層などの隠蔽層を設けたものと、反対面に設けたものとがあり、後者の不可視情報印刷シートは、支持体が透明である事が前提条件となる(例えば、特許文献1参照)。
また、支持体上に顕色剤により不可視化すべき情報を印刷し、それを覆うように電子供与性染料前駆体内包カプセルを分散したスクラッチ層を設けた印刷体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、隠蔽インキ層などの隠蔽層を用いた不可視情報印刷シートは、隠蔽層を取り除く際に発生する削りカスがゴミとなってしまう欠点が有り、使用される用途や場所が限定される。また、不可視化すべき情報を隠蔽するために隠蔽インキ層の厚さを大きくする必要から擦れや堅い尖ったものとの接触により隠蔽インキ層が剥がれやすい欠点が有る。さらに隠蔽インキの色は暗色や金属光沢であり、暗い感じや特異な外観になりやすくデザイン上の問題となりやすい。
一方、電子供与性染料前駆体内包カプセルと電子受容性化合物を用いた不可視情報印刷シートは、電子供与性染料前駆体内包カプセルが加工工程や取り扱い時の擦れによって破壊されることにより、汚れが発生したり不可視情報が可視化されやすいという問題がある。また、擦れによらずとも、筆圧程度の圧力によりその部分が発色してしまうという問題がある。さらに、元々は、スクラッチを念頭に置いていない複写紙技術の転用であるため、不注意により強い力でこすった場合には、情報印刷部分まで削られてしまう恐れがある。不可視情報印刷シートという用途においては、不可視情報を早く知ろうと扱いが荒くなりがちであるため、不可視情報印刷シートとして適当であるとは言い難かった。
また、硬貨を構成する金属材料よりも硬度の高い顔料(二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム等)を主成分として含むインキを用いて、支持体上に文字・図柄を印刷し、この上を硬貨で擦ることにより、金属材料が削り取られて可視化されるものもある(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、硬貨等の道具が必要で不便であり、幼い子供に硬貨を使用させることは、誤って飲み込んでしまったり、手が汚れてしまう等、安全面、衛生面からも望ましくない。多くの用途において、使用者が成人であっても、周囲に子供や高齢者が居て手を出す状況が想定出来るにもかかわらず、配慮がされていない状況にある。また、この方法では、可視化時における印刷情報の発色濃度が低く、ようやく視認できる程度の発色濃度しか得られない。
特開平8−150796号公報 特開平10−16386号公報 特公平6−78039号公報
本発明は、不可視情報印刷部分が通常の取り扱い時の擦れでは発色しにくいにもかかわらず、爪で擦ることで不可視情報の可視化が容易に行え、発色濃度が高く、不可視情報を可視化する際に削りカスの発生が無く、不可視情報を印刷した部分をスクラッチ発色せずに視認することが極めて困難なスクラッチ発色用インキおよびそれを用いた不可視情報印刷シートを提供することを目的とするものである。
本発明者等が鋭意検討したところ、電子供与性染料前駆体(以下、単に染料と呼ぶ場合がある)、電子受容性化合物(以下、単に顕色剤と呼ぶ場合がある)およびワニスを含み、内在する固体粒子成分の平均粒径が所定範囲内にあるスクラッチ発色用インキにより、上記課題を解決し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物およびワニスを含み、内在する固体粒子成分の平均粒径が0.3〜25μmであることを特徴とするスクラッチ発色用インキ、
(2)さらに顔料を含む上記(1)に記載のスクラッチ発色用インキ、
(3)電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物の含有質量比が1:0.5〜1:5である上記(1)または(2)に記載のスクラッチ発色用インキ、
(4)電子供与性染料前駆体がキサンテン系化合物を含み、電子受容性化合物がジフェニルスルホン系化合物を含むものである上記(1)〜(3)のいずれかに記載のスクラッチ発色用インキ、
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のスクラッチ発色用インキによって不可視情報が支持体上に印刷されてなることを特徴とする不可視情報印刷シート、
(6)不可視情報がインキ膜厚2.0μm以下で印刷されてなる上記(5)に記載の不可視情報印刷シート、
(7)支持体表面における非印刷部分の光沢度に対する印刷部分の光沢度の比がJIS−K5701−1による60度鏡面光沢度の比で65%〜150%である上記(5)または上記(6)に記載の不可視情報印刷シート、
(8)支持体表面における非印刷部分の光沢度に対する印刷部分の光沢度の比がJIS−K5701−1による75度鏡面光沢度の比で44%〜105%である上記(5)〜(7)のいずれかに記載の不可視情報印刷シート、および
(9)不可視情報がオフセット印刷により印刷されてなる上記(5)〜(8)のいずれかに記載の不可視情報印刷シート
を提供するものである。
本発明によれば、不可視情報印刷部分が通常の取り扱い時の擦れ、熱、静的圧力、水分付着等によっては発色しにくいにもかかわらず、爪で擦ることで不可視情報の可視化が容易に行え、発色濃度が高く、不可視情報を可視化する際に削りカスの発生が無く、不可視情報を印刷した部分をスクラッチ発色せずに視認することが極めて困難なスクラッチ発色用インキおよびそれを用いた不可視情報印刷シートを提供することができる。
先ず、本発明のスクラッチ発色用インキについて説明する。
本発明のスクラッチ発色用インキは、電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物および
ワニスを含み、内在する固体粒子成分の平均粒径が0.3〜25μmであることを特徴とするものである。
本発明のスクラッチ発色用インキに用いられる電子供与性染料前駆体は、酸により発色する物質であれば特に限定されないが、通常の取り扱い時における擦れ等によるインキ着色を防止するためには、結晶質のものを用いることが好ましい。また、通常の取り扱い時におけるインキ着色防止のため、融点も高い方が好ましく、融点160℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、220℃以上であることがさらに好ましい。インキが着色するとそれを用いた印刷シートの印刷部もその程度に応じて不可視性が低下することになる。
電子供与性染料前駆体の具体例としては、
(1)トリアリールメタン系化合物:3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド(エチルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド(マラカイトグリーンラクトン)、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド等、
(2)ジフェニルメタン系化合物:4,4′−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等、
(3)キサンテン系化合物:ローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−フェネチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン等、
(4)チアジン系化合物:ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等、
(5)スピロ系化合物:3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3′−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピラン等から選ばれる1種以上を挙げることができる。スクラッチ発色用インキの変色防止性や発色感度を考慮した場合、キサンテン系化合物を用いることが好ましい。
本発明のスクラッチ発色用インキに用いられる電子受容性化合物は、酸性物質であれば、特に制限されることはなく、例えば、フェノール誘導体、芳香族カルボン酸誘導体、N,N′−ジアリールチオ尿素誘導体、アリールスルホニル尿素誘導体、スルホンアミド誘導体、有機化合物の亜鉛塩などの多価金属塩、ベンゼンスルホンアミド誘導体等から選ばれる1種以上を挙げることができる。
ただし、通常の取り扱い時における擦れ等によるインキ着色を防止するためには、結晶質のものを用いるのが好ましい。また、通常の取り扱い時におけるインキ着色を防止するためには融点も高い方が好ましく、融点が140℃以上であることが好ましく、170℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。インキが着色するとそれを用いた印刷シートの印刷部もその程度に応じて不可視性が低下することになる。
電子受容性化合物の具体例としては、
4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4´−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンジルオキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−プロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、3,4−ジヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンゼンスルホニルオキシジフェニルスルホン、2,4−ビス(フェニルスルホニル)フェノール等のジフェニルスルホン系化合物から選ばれる1種以上を挙げることができ、
その他の具体例としては、p−フェニルフェノール、p−ヒドロキシアセトフェノン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ジ−〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、1,3−ジ−〔2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、1,4−ジ−〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、4,4′−ヒドロキシジフェニルエーテル、
3,3′−ジクロロ−4,4′−ヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、4,4′−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、
N−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシナフチル)ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシナフチル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレンスルホンアミド、
N−(2−ヒドロキシナフチル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシナフチル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−クロロベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−メトキシベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−アリルベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−フェニルベンゼンスルホンアミド、4,4′−ビス(2−ヒドロキシフェニルアミノスルホニル)ジフェニルメタン、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−メチルベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−メチル−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−ベンジル−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−アリル−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−フェニルベンゼンスルホンアミド、
4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、没食子酸ベンジル、没食子酸ステアリル、N,N′−ジフェニルチオ尿素、4,4′−ビス(3−(4−メチルフェニルスルホニル)ウレイド)ジフェニルメタン、N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N′−フェニル尿素、サリチルアニリド、5−クロロサリチルアニリド、サリチル酸、3,5−ジ−ターシャリーブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、4−[2′−(4−メトキシフェノキシ)エチルオキシ]サリチル酸、3−(オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸あるいはこれらサリチル酸誘導体の金属塩、N−(4−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)ベンゼンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレンスルホンアミドなどから選ばれる1種以上を挙げることができる。特にスクラッチ発色用インキの変色防止性や発色感度を考慮した場合、ジフェニルスルホン系化合物を用いることが好ましい。
本発明のスクラッチ発色用インキに使用されるワニスは、バインダー樹脂を含むものであって、必要に応じて油、溶剤、ドライヤー等を含むものである。ワニスは、印刷層を構成するマトリックス成分となるものであるので、インキから固体粒子成分(染料、顕色剤、必要に応じて用いる顔料)を除いたものがワニスであるともいえる。
なお、本明細書においては、スクラッチ発色用インキ中に含まれるものをワニスと呼ぶものとし、スクラッチ発色用インキ作製前のものをワニスベースと呼ぶこととする。
ワニスに含まれるバインダー樹脂としては、ロジンなどの天然樹脂、硬化ロジン、ロジンエステルなどの天然樹脂誘導体、そしてアルキド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース誘導体、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ケトン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、オレフィンやジシクロペンタジエン等の不飽和炭化水素を原料とした石油樹脂などの合成樹脂から選ばれる1種以上が挙げられる。
バインダー樹脂は、酸価が0〜30mgKOH/gであることが好ましく、0〜20mgKOH/gであることがより好ましい。バインダー樹脂によっては酸価を測定できないものもあるが、本明細書において、このようなバインダー樹脂は、酸価が0mgKOH/gであるとみなすものとする。バインダー樹脂の酸価が上記範囲内にあれば、スクラッチ発色用インキやそれを用いた不可視情報印刷シートの不可視性がより向上する。
酸価は、ワニスベース或いはスクラッチ発色用インキを対象として測定することもでき
、得られた測定結果に基づいて、所望の不可視性が得られるように、適宜ワニスベース或いはスクラッチ発色用インキの酸価を調節することが好ましい。
ワニスベースまたはスクラッチ発色用インキの酸価は、0〜30mgKOH/gであることが好ましく、0〜20mgKOH/gであることがより好ましく、0〜12mgKOH/gであることがさらに好ましい。
スクラッチ発色用インキを対象にして酸価を測定する場合、スクラッチ発色用インキに含まれる顕色剤も酸価測定に用いるKOHを消費するため、得られた酸価から顕色剤が消費するKOH量を差し引くことによりスクラッチ発色用インキの酸価が求められる。
顕色剤が消費するKOH量は、酸価測定済みのワニスベースに一定量の顕色剤を含有させた試料の酸価を測定し、得られた酸価からワニスベースの酸価を差し引くことにより求めることができる。簡便法としては、KOHを消費しない成分のみを含有した試料の酸価と、この試料に顕色剤を含有させた試料の酸価との差を求める方法を挙げることができる。
ワニスが含み得る油は、常温で不揮発性の非水液体を意味し、ワニスが含み得る溶剤は、常温で揮発性の非水液体を意味する。このうち、溶剤は、安全面、衛生面、環境面を考慮すると、用いないことが好ましく、用いる場合も、スクラッチ発色用インキ中、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。スクラッチ発色用インキに含まれるワニスの溶剤量が30質量%を超えると、安全、衛生、環境面に悪影響が出る恐れがある。
ワニスが含み得る油としては、アマニ油、菜種油、ヤシ油、オリ−ブ油、大豆油、桐油等の植物油、およびこれらを再生処理した植物油、水素添加処理した植物油、スピンドル油、マシーン油、モビル油等の鉱物油から選ばれる1種以上を挙げることができ、用途により適宜選択されて使用される。
ワニスが含み得る溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール系溶剤、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶剤、パラフィン、ナフテン系を主成分とした芳香族成分1%以下の石油系溶剤等から選ばれる1種以上を挙げることができる。
ワニスが含み得るドライヤーとしては、例えばナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン等のカルボン酸金属塩から選ばれる1種以上を挙げることができ、上記金属塩を形成する金属の具体例としては、上記コバルト、マンガン以外に、セリウム、銅、ニッケル、バナジウム、クロム、カルシウム、アルミニウム、カドミウム、亜鉛、スズ等を挙げることができる。
本発明のスクラッチ発色用インキに、光沢調節や、スクラッチ発色感度およびスクラッチ発色濃度調節などのため、好ましく含有される顔料としては、一般に各種の印刷インキ、塗料、塗工紙等に用いられる顔料が挙げられるが、これらに制限されることはない。例えば、スクラッチ発色用インキを印刷する支持体が通常白色であるため、顔料も通常は白色であることが好ましい。但し、支持体表面の色との兼ね合いで有色顔料を用いてもよい。
顔料の具体例としては、カオリン、ケイソウ土、タルク、焼成カオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、非晶質シリカ、結晶質二酸化ケ
イ素、非晶質ケイ酸カルシウム、コロイダルシリカ、アルミナ等の無機顔料、メラミン樹脂フィラー、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、ポリエチレンパウダー、ナイロンパウダー、でんぷん等から選ばれる1種以上の有機顔料を挙げることができる。また、顔料の好ましいモース硬度は、印刷機の磨耗防止の観点から7以下である。
本発明のスクラッチ発色用インキは、更に各種の補助剤を含んでもよい。例えば、乾燥促進剤として、上記ワニスの説明で述べたナフテン酸コバルト、オクチル酸マンガン等のカルボン酸金属塩からなるドライヤーが好ましく用いられる。また、一般的にアルミニウムキレートと呼ばれるキレート化剤、インキの粘度を調整する石油系溶剤等の調整剤、印刷後の滑りを調節するワックス、界面活性剤、有機や無機の微粒子類等が適宜用いられる。更に、脂肪酸アミド類、脂肪族尿素化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ビフェニル誘導体等も発色濃度を上げるために使用してもよい。なお、ドライヤーを添加した場合は、印刷部がセットし易くなり、爪などで擦った場合、発色部が周辺に広がるのを防止したり、汚れ発生を防ぎより優れた効果が得られる傾向がある。
印刷面の光沢度を下げたい場合は、スクラッチ発色用インキを印刷する支持体に対してインキの浸透が大きくなるようにインキ成分を調整すればよく、具体的には、石油系溶剤やワニスベース等の選択によりインキを低粘度化すること等が挙げられ、特に乾燥促進剤、例えばカルボン酸金属塩からなるドライヤーの添加量を減少し、または添加しないことにより支持体に浸透し易くする方法が好ましい。
逆に、印刷面の光沢度を上げたい場合は、支持体に対してインキの浸透が小さくなるようにインキ成分を調整すればよく、インキを高粘度化し、ドライヤーの添加量を増し、支持体に浸透しにくくする方法が好ましい。
不可視情報印刷部の目視による判別ができないようにするため、スクラッチ発色用インキを印刷する支持体が蛍光増白剤や紫外線吸収剤等を含む場合に、スクラッチ発色用インキへも蛍光増白剤や紫外線吸収剤等を必要に応じて加えることが好ましい。また、必要に応じて酸化防止剤を加えてもよい。
必要に応じて用いられる紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール誘導体などが挙げられる。その具体的な例としては、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミノフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−t−ブチルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−ドデシル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−エチルヘキシル)オキシフェニル]ベンゾトリアゾール、メチル−3−(3−t−ブチル−5−ベンゾトリアゾリル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート−ポリエチレングリコール(分子量約300)との縮合物、5−t−ブチル−3−(5−クロロベンゾトリアゾリル)−4−ヒドロキシベンゼン−プロピオン酸オクチル、2−(2−ヒドロキシ−3−sec−ブチル−5−t−ブチルフェニル)−5−t−ブチルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホフェニル)ベンゾトリアゾールナトリウム塩、2−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシ−5−スルホフェニル)ベンゾトリアゾールナトリウム塩、2,2´−メチレンビス(4−メチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2,2´−メチレンビス[4−メチル−6−(5−メチルベンゾトリアゾリル)フェノール]、2,2´−メチレンビス[4−メチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾリル)フェノール]、2,2´−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テト
ラメチルブチル)−6−ベンゾトリアゾリルフェノール]、2,2´−メチレンビス(4−t−ブチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2,2´−プロピリデンビス(4−メチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2,2´−イソプロピリデンビス(4−メチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2,2´−イソプロピリデンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−ベンゾトリアゾリルフェノール]、2,2´−オクチリデンビス[4−メチル−6−(5−メチルベンゾトリアゾリル)フェノール]等を挙げることができる。
また、必要に応じて用いられる酸化防止剤としては、ヒンダードアミン類、例えば、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4´−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1,2,2−テトラキス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3−トリス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(5−フェニル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,3,3−テトラキス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,5,5−テトラキス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ペンタン、1,1,3,3−テトラキス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,3,3−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(5−フェニル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)プロパン、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、2,2´−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、2,2´−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノ−ル)、4,4´−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、4,4´−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、4,4´−チオビス(2−メチルフェノ−ル)、4,4´−チオビス(2,6−ジメチルフェノ−ル)、4,4´−チオビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノ−ル)、2,2´−チオビス(4−t−オクチルフェノ−ル)、2,2´−チオビス(3−t−オクチルフェノ−ル)、1−[α−メチル−α−(4´−ヒドロキシフェニル)エチル]4−[α´,α´−ビス(4´´−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、トリス(2,6−ジメチル)−4−t−ブチル−3−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
本発明のスクラッチ発色用インキにおいて、インキ中に内在する固体粒子成分(染料、顕色剤、必要に応じて用いる顔料等)の平均粒径は0.3〜25μmであり、0.8〜20μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。
固体粒子成分の平均粒径を0.3μm以上にすることは、通常の取り扱い時における擦れ等によるインキ着色を防止する上で好ましい。また、固体粒子成分の平均粒径が25μmより大きくなると、印刷部がざらついたり、不可視性が低下する恐れがある。
なお、本明細書においては、特に断らない限り、平均粒径とは体積平均粒径を意味するものとし、上記平均粒径は、粒度分布測定器等で測定することができる。
電子供与性染料前駆体および/または電子受容性化合物の平均粒径は、0.3μm以上が好ましく、0.8μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましく、1.4μm以上が一層好ましく、2.0μm以上が特に好ましい。電子供与性染料前駆体および/または電子受容性化合物の平均粒径を0.3μm以上にすることは、通常の取り扱い時における擦れ等によるインキ着色を防止する上で好ましい。また、電子供与性染料前駆体および/または電子受容性化合物の平均粒径は25μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましく、5.0μm以下が特に好ましい。電子供与性染料前駆体および電子受容性化合物の平均粒径を25μm以下にすることは、印刷部の不可視性を得る上で好ましい。平均粒径が25μmより大きいと、印刷部がざらついたり、不可視性が低下する恐れがある。
電子供与性染料前駆体および/または電子受容性化合物は、スクラッチ発色用インキの製造前に所望の平均粒径に粉砕または造粒しておくことが好ましいが、スクラッチ発色用インキの製造時に所望粒径になるように粉砕してもよい。あるいは、スクラッチ発色用インキの製造前に電子供与性染料前駆体および/または電子受容性化合物を所望の平均粒径よりもやや大きな平均粒径まで粉砕または造粒しておき、スクラッチ発色用インキの製造時に所望の平均粒径になるように粉砕してもよい。
顔料の平均粒径は、スクラッチ発色用インキを印刷する支持体の光沢度とのバランスを考慮して適宜選定すればよく、平均粒径0.015〜5μmが好ましく、0.02〜5μmがより好ましく、0.3〜1.5μmがさらに好ましい。5μmを超えると、インキ印刷面がザラザラした外観となり、不可視性が得られない(視認できてしまう)場合がある。また、平均粒径が0.015μm未満の顔料は入手が困難である。
インキの光沢度を低くしたい場合は、インキ中に平均粒径の大きな顔料を添加したり、または顔料の含有比率を高めることで達成することができ、光沢度を高くしたい場合は、逆に顔料の平均粒径を小さくし、顔料の含有比率を低くするか、顔料を配合しないことで達成することができる。
なお、固体粒子成分(染料、顕色剤、必要に応じて用いる顔料等)の粒径については、上記平均粒径の観点に加え、粒径30μm以上の粗大粒子の存在数も考慮することが好ましい。すなわち、スクラッチ発色用インキ1g中、粒径30μm以上の粗大粒子の数が30000個以下であることが好ましく、10000個以下であることがより好ましく、1000個以下であることがさらに好ましく、100個以下であることが特に好ましい。粒径30μm以上の粗大粒子の数が30000個を超えるとスクラッチ発色用インキをベタ印刷で印刷した場合、印刷部分表面の外観が悪くなり、また、不可視情報が読み取られる恐れもある。なお、インキ1g中に粒子30000個というのは一見多い様であるが、インキ盛り量が1平方メートル当たり1gの場合を例に説明すると、1平方メートルの印刷部中に、30000個という事であり、1平方センチメートル当たりなら3個である。粗大粒子数がスクラッチ発色用インキ1g中30000個以下であれば、仮にインキ盛り量を1平方メートル当たり1gより多くしても、情報が読み取られる恐れがかなり少なくなる。このため、ベタ印刷面積をより広くすることも可能になる。
本発明のスクラッチ発色用インキにおいて、印刷部分の汚れや発色性を考慮すると、電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物の含有質量比は1:0.5〜1:5であることが好ましく、1:1〜1:3であることがより好ましい。
スクラッチ発色用インキ中のワニス含有量は、印刷方法により異なるが、スクラッチ発色用インキの10〜90質量%が好ましく、20〜85質量%がより好ましく、30〜85質量%がさらに好ましく、60〜85質量%が特に好ましい。ワニスが10質量%より少ないと各種の印刷不良(印刷時点での汚れなど)が発生しやすく、また、90質量%より多いと、スクラッチ発色時の発色濃度の低下を招く恐れがある。
上記範囲においては、スクラッチ発色用インキ中にワニスが多量含まれる場合もあり得、このようにワニス量が多い場合は、電子供与性染料前駆体(染料)や電子受容性化合物(顕色剤)がワニス中に散在することになるため、発色に不利になると考えられたが、本発明者等が検討したところ、意外にも良好な発色感度や発色濃度が得られることが分った。
顔料の含有量範囲は、発色濃度の観点から定められ、染料に対し、400質量%以下が好ましく、200質量%以下がより好ましく、100質量%以下がさらに好ましい。顔料の含有量が染料に対して400質量%を超えると発色濃度が低下する恐れがある。
次に、本発明のスクラッチ発色用インキを製造する方法について説明する。
スクラッチ発色用インキの製造方法は、特に限定されないが、電子供与性染料前駆体(染料)および/または電子受容性化合物(顕色剤)をワニスベース(ワニスベースを主成分とするビヒクル(賦形剤)を含む。以下、同様。)で混練りし、ワニスベース中に電子供与性染料前駆体および電子受容性化合物を固体粒子として含有させる方法が好ましい。なお、電子供与成染料前駆体、電子受容性化合物および顔料のいずれか1種以上を含むワニスベースを、以下インキベースと呼ぶこととする。
また、染料と顕色剤を所定の割合で同時にワニスベースに添加し、混練りすると、染料が発色してインキの着色を招く恐れがあるため、別々に混練りしてインキベース化した後に、撹拌機等により所定の割合で十分に混ぜ合わせる方が、染料と顕色剤の接触等によるインキ着色を低減することができ、印刷部の不可視化には好ましい。
顔料も染料や顕色剤の場合と同様に、ワニスベースで混練りし、ワニスベース中に固体粒子として含有させることが好ましい。その際、顔料のみをワニスベースで混練りして顔料を含むインキベースを得てもよく、染料または顕色剤と、顔料とを共に混練りしてインキベースを得てもよい。また、染料または顕色剤と顔料とを共に混練りしてインキベースを得た場合でも、インキ製造時に更に顔料のみを混練りした顔料を含むインキベースを加えてもよい。
ここで、染料、顕色剤、顔料の3成分に着目して、改めて、インキベースの分類と組合せを列挙しておく。インキベースの名称末尾の符号a,b,cは含有成分に対応しており、染料=a、顕色剤=b、顔料=cである。
染料と顕色剤とを含有するインキベース(ab)。
染料と顕色剤と顔料とを含有するインキベース(abc)。
染料を含有するインキベース(a)。
染料と顔料とを含有するインキベース(ac)。
顕色剤を含有するインキベース(b)。
顕色剤と顔料とを含有するインキベース(bc)。
顔料を含有するインキベース(c)。
スクラッチ発色用インキの製造に際しては、上記7種類のインキベースを任意に組み合わせて用いればよいが、インキベース製造工程短縮のためにはインキベースの数は3種以下が好ましい。その代表的な組み合わせを以下に列挙する。
(1) インキベース(ab)のみか、あるいはインキベース(abc)のみ。
(2) インキベース(ab)と、インキベース(c)の組合せか、あるいはインキベース(abc)と、インキベース(c)の組合せ。
(3) インキベース(a)と、インキベース(b)の組合せ。
(4) インキベース(a)と、インキベース(b)と、インキベース(c)の組合せ。(5) インキベース(ac)と、インキベース(b)の組合せ。
(6) インキベース(a)と、インキベース(bc)の組合せ。
(7) インキベース(ac)と、インキベース(bc)の組合せ。
(8) インキベース(ac)と、インキベース(b)と、インキベース(c)との組合せ。
(9) インキベース(a)と、インキベース(bc)と、インキベース(c)との組合せ。
(10)インキベース(ac)と、インキベース(bc)と、インキベース(c)との組合せ。
上記(1)〜(10)に列挙した組合せ以外にも、必要であれば、4種類以上のインキベースの組合せでもよい。最も多い場合として、上記7種類のインキベースすべての組合せでもよい。なお、同じ符号で表されるインキベースについては2種以上組み合わせてもよい(例えば、インキベース(ab)を2種など)が、やはりインキベース製造工程短縮のため、同じ符号で表されるインキベースは1種のみ用いることが好ましい。但し、インキベース(c)については他の汎用の印刷インキ用などのインキベースを転用できたり、逆に転用したりする事情もあり、2種以上組合せることが有利な場合もある。
なお、念のため、本発明において選択し得るこの他の主な組合せを示す。
(11)インキベース(ab)と、インキベース(a)の組合せ。
(12)インキベース(ab)と、インキベース(b)の組合せ。
(13)インキベース(ab)と、インキベース(a)と、インキベース(b)の組合せ。
(14)インキベース(ab)と、インキベース(a)と、インキベース(c)の組合せ。
(15)インキベース(ab)と、インキベース(b)と、インキベース(c)の組合せ。
(16)インキベース(ab)と、インキベース(a)と、インキベース(b)と、インキベース(c)の組合せ。
あるいは、上記(11)〜(16)の組み合わせそれぞれに、インキベース(abc)、インキベース(ac)、インキベース(bc)、インキベース(c)の一種あるいは二種以上を更に組み合わせたもの。
なお、本発明のスクラッチ発色用インキにおけるワニスは、従来公知の方法で得ることができ、例えばバインダー樹脂、油等の成分を加熱溶解させた後、必要に応じて、溶剤、アルミキレート剤等を添加反応して得ることができる。
次に、本発明の不可視情報印刷シートについて、説明する。
本発明の不可視情報印刷シートは、本発明のスクラッチ発色用インキによって不可視情報が支持体上に印刷されてなることを特徴とする。
本発明の不可視情報印刷シートに用いる支持体は、紙(板紙も含む)が主として用いられるが、紙の他に各種織布、不織布、合成樹脂フィルム、合成樹脂ラミネート紙、合成紙、金属泊、蒸着シート、或いはこれらを貼り合わせ等で組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることができる。支持体は、必要に応じて蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を含んでもよく、紫外線吸収剤および酸化防止剤としては、上記スクラッチ発色用インキが必要に応じて含み得るものと同様のものが挙げられる。
支持体の厚みに特に制約はないが、スクラッチ操作時にしわがよらないなどの取り扱い容易性の観点から、坪量40g/m以上が好ましく、80g/m以上がより好ましく、120g/m以上が更に好ましい。折り曲げ防止が特に要求される場合は、200g/m以上が特に好ましい。
また、不可視情報が透かし読みできないように、支持体の可視光線透過率は20%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下が更に好ましい。なお、可視光線透過率は、ISO 2470により測定して求められる不透明度(%)から求められる。すな
わち、可視光線透過率(%)は、100から、不透明度(%)を差し引いた値である。
また、透かし読み防止のための手段としては地紋印刷や、紙支持体の場合に透かし模様を入れる事も効果的であり必要に応じて用いられる。
更にまた、支持体に、インクジェット記録に適したインクジェットインキ受容層や、粘着剤層など、通常の支持体が予定している用途に即した層が設けられていてもよい。それらの層とスクラッチ用発色インキを印刷する部分とが重なっていてもよいし、スクラッチ用発色インキを印刷する部分が片面の場合、その同じ側の面でも、反対側の面でも、両面に設けられていてもよい。
また、特に、不可視情報を設ける面に少なくとも顔料とバインダーを含有する塗工層を有する支持体を用いることで、美装性、不透明性が良好でスクラッチ性(こすりやすさ)やスクラッチによる発色性(発色感度)が向上し、取り扱い時の発色汚れも改良されるので好ましい。顔料としては、カオリン、ケイソウ土、タルク、焼成カオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、非晶質シリカ、非晶質ケイ酸カルシウム、コロイダルシリカ、アルミナ等の無機顔料、メラミン樹脂フィラー、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、ポリエチレンパウダー、ナイロンパウダー、でんぷん等の有機顔料から選ばれる1種以上を挙げることができる。通常は白色顔料が用いられるが、有色顔料も用いてよい。
塗工層のバインダーとしては、デンプン類、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、アルギン酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、ポリアクリル酸のアルカリ塩、ポリマレイン酸のアルカリ塩、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩などの水溶性バインダー、およびスチレン/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル/ブタジエン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン三元共重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタンなどの水分散性バインダー等から選ばれる1種以上が挙げられる。
支持体の光沢度を調整する方法としては、例えば光沢度を低くしたい場合は、塗工層に平均粒径の大きい顔料を使用したり、顔料の含有比率を高めることで達成される。但し、顔料の平均粒径が大きすぎるとスクラッチ発色用インキを印刷した面も粗くなり印刷情報が不鮮明となりやすい。逆に光沢度を高くしたい場合は、顔料の平均粒径を小さくすることで達成されるが、極端に小さい平均粒径のものは入手困難である。好ましい顔料の平均粒径は0.02〜5μm、より好ましくは0.3〜4μmである。
顔料が多く、バインダーが少なすぎると強度が低下して粉落ち等の問題が発生しやすいので顔料に対するバインダーの固形分が10〜500質量%であることが好ましく、10〜100質量%であることがより好ましい。塗工量は粉落ち等から固形分で30g/m2以下、特に2〜20g/m2が好ましい。支持体の塗工層の表面処理を行う場合には、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等により処理条件により光沢度を調整する。なお、塗工層を設けない場合は、支持体の選択が大きなポイントになる。
本発明の不可視情報印刷シートにおいては、支持体表面におけるスクラッチ発色用インキを印刷した不可視情報部分をより判別困難にするために、印刷部におけるインキ膜厚を2.0μm以下とすることが好ましく、1.4μm以下とすることがより好ましく、1.
0μm以下とすることがさらに好ましく、0.8μm以下とすることが特に好ましい。スクラッチ発色用インキの膜厚が2.0μmを越えると、該インキ印刷部色が淡い色から濃度を徐々に増してくる傾向があるので、支持体表面の色とのコントラストが徐々に発現してしまい、不可視性が損なわれる傾向があるためである。また、本発明の検討途上ではじめて得られた知見であるが、上記インキ膜厚が2.0μmを超えると、スクラッチにより発色させるのに強い力が必要となる(発色感度が低下する)恐れがある。一方、発色濃度を得るためには、インキ膜厚0.3μm以上であることが好ましく、0.4μm以上であることがより好ましい。
インキ膜厚は、シート上のスクラッチ発色用インキ印刷部分の厚みを直接測定することによっても得られるが、シート作成段階において、評価するインキのベタ印刷物(以下、印刷物を展色物とも呼ぶ)を作成し、ベタ印刷面積Aおよび転移インキ体積量Bを測定して、B/Aにて算出をすることもできる。ベタ展色物の作成には、RIテスターまたはオフセット印刷機のインキ供給機構を模した、金属ローラーとゴムローラーで構成されたインキ練り機構を有する印刷機(これを以下、展色機と呼ぶ)を用いることができる。また、この展色機に供給するインキ量は、正確に図り取れるインキピペットを使用する等により測定することができる。展色機から被印刷物へのインキ転移率に関しては、予め複数のベタ展色物を作成し、転移インキ質量の平均値を測定し求めておくのが一般的である。
なお、不可視情報印刷シートのスクラッチ発色用インキ印刷部分のインキ膜厚を測定するのが困難な場合等は、インキ膜厚に代え、あるいはインキ膜厚とともに、単位面積当たりの染料の含有量を規定することもできる。単位面積当たりの染料の含有量は、0.02〜0.30g/mが好ましく、0.05〜0.20g/mがより好ましく、0.06〜0.15g/mがさらに好ましい。
本発明の不可視情報印刷シートは、支持体表面における非印刷部分の光沢度に対する印刷部分の光沢度の比がJIS−K5701−1による60度鏡面光沢度の比で65%〜150%であることが好ましく、75%〜140%であることがより好ましい。また、支持体表面における非印刷部分の光沢度に対する印刷部分の光沢度の比がJIS−K5701−1による75度鏡面光沢度の比で44%〜105%であることが好ましく、48%〜103%であることがより好ましい。
光沢度の比を上記範囲とすることで、支持体表面におけるスクラッチ発色用インキを印刷した不可視情報部分がより判別困難になる。なお、ここでいう光沢度の比は以下の式1により求められるものである。
(式1)光沢度の比(%)=(スクラッチ印刷面の光沢度/支持体の光沢度)×100
次に、本発明の不可視情報印刷シートを製造する方法について説明する。
本発明の不可視情報印刷シートのスクラッチ部(不可視情報印刷部とその周囲一帯の領域)およびその周辺に印刷を設ける場合には、スクラッチ発色用インキに加えて各種印刷用インキが使用可能であり、スクラッチ発色用インキの発色色相や、支持体面の色相と異なる色相のインキを使用することもできる。支持体表面の色相が白色で、スクラッチ発色用インキの発色色相が黒や青色であれば、黄色、橙等の明度の高い色相のインキが好ましい。以下の説明において、60度(または75度)鏡面光沢度の比はスクラッチ部の中のスクラッチ印刷をしていない部分と、スクラッチ発色印刷部の光沢度の比を意味する。
スクラッチ発色用インキや必要に応じて用いる各種印刷用インキによる印刷には、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷等の各種印刷方法が用いられるが、各種印刷用インキを用いて印刷する場合も、スクラッチ発色用インキと同一工程で印刷することが効率的で好ましい。印刷順序は特に制限されないが、各種印刷用インキを用いてスクラッチ部およびその周辺を印刷した後にスクラッチ発色用インキを用いて不可視情報を印刷する場合、発色性(スクラッチ発色感度)が良好となり、逆に不可視情報を先に印刷する場合、各
種印刷用インキにより不可視情報を保護する効果(光学的隠蔽という意味ではなく、水や人体由来の油脂や空気等からの化学的影響や微小な外力による影響からの物理的保護効果)が得られる。
なお、本発明の不可視情報印刷シートにおいては、不可視情報印刷部を含むスクラッチ部がシート状のどこにあるかを判別する事が困難ないし不可能なので、各種印刷用インキにより、適宜スクラッチ部の位置を示す枠線や目印、模様などの印刷を設けることが好ましい。
また、不可視情報印刷シートの一方の面のみにスクラッチ部がある場合、その面をオモテ面とすると、オモテ面とウラ面を区別できる表示を各種印刷用インキにより、適宜印刷等しておくことが好ましい。
なお、不可視情報印刷シートの両面に不可視情報を印刷してもよい。その情報(例えば抽選に用いる場合などの当落情報)は同種でもよいが、趣向により相違していてもよい。
本発明の不可視情報印刷シートの不可視情報を印刷するには、本発明のスクラッチ発色用インキにより、オフセット印刷、凸版印刷等の各種印刷方法を用いて作成されるが、印刷精度や印刷特性からは特にオフセット印刷により作成することが好ましい。また、2種以上の発色色相または発色濃度などの相違するインキを用い、多色や諧調などに発色可能としてもよい。
本発明の不可視情報印刷シートは、水、油脂、湿度、熱等により不可視性が低下する事はほとんど無く、長期保管後も使用に耐え得るものである。一方、光に対しては、室内の通常の照明(蛍光灯など)なら特に問題無いが、紫外線を多く含む日光に長期間さらす様な取り扱い方法だと不可視情報印刷部の黄変によりわずかながら不可視性が低下する恐れがある。そこで、不可視情報印刷シートに、スクラッチ発色用インキから染料と顕色剤のいずれか一方を除いたダミーインキを用い適当な模様またはベタで印刷する事が好ましい。ダミーインキの製造方法は、染料と顕色剤のいずれか一方を含むインキベースを除く以外は、スクラッチ発色用インキの製造方法と同様である。スクラッチ発色用インキの日光による黄変もダミーインキの日光による黄変も同条件ならほぼ同様のため、黄変部が視認出来たとしても、スクラッチ発色によりはじめて分かる不可視情報はなお読み取れない。なお、スクラッチ発色用インキの含有成分によっては日光により黄以外に変色する場合もあるが、この場合は、ダミーインキの変色時の色を変更、調整することより、同様の効果を得ることができる。
本発明の不可視情報印刷シートは、熱的に発色させようとすると相当な高温を必要とするため、発色をスクラッチ操作時の摩擦熱のみにより説明することには一定の疑念がある。
一方、従来、感圧複写紙を応用した不可視情報印刷シートは、その発色機構が圧力によると説明されてきたところ、本発明の不可視情報印刷シートは、筆圧やさらに強いシート上方からの圧力によっても発色しにくいにもかかわらず、爪で擦ることにより、容易かつ高い発色濃度で不可視情報を可視化できる。このため、本発明の不可視情報印刷シートは、圧力の面のみから発色機構を説明することが困難なものであり、従来の不可視情報印刷シートとは全く発色機構が異なるものである可能性を有している。
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数や%は、断り書きが無い場合、それぞれ質量部、質量%である。
なお、以下の実施例、比較例において、平均粒径、酸価、スクラッチ発色用インキ中の粗大粒子数、不可視情報印刷シートのインキ膜厚および光沢度、支持体の可視光線透過率は、以下に示す方法により測定した。
<平均粒径>
スクラッチ発色用インキないしインキベースを、後述するスクラッチ発色用インキの製造に用いたものと同種の油で希釈して、市販の粒度分布測定器により各平均粒径を測定した。
<酸価>
JISK5601−2−1により測定した。
なお、スクラッチ発色用インキの酸価は、得られた酸価から顕色剤が消費するKOH量を差し引くことにより求めた。
<粗大粒子数>
スクラッチ発色用インキを支持体上に塗布した後、光学顕微鏡で塗布部の拡大写真を得、一定面積内において長径が30μm以上のものの数をカウントした。
上記一定面積内における粗大粒子のカウント数とスクラッチ発色用インキ1gあたりの塗布面積から、スクラッチ発色用インキ1gあたりの粗大粒子数を求めた。
<インキ膜厚>
評価するインキのベタ印刷物を作成し、ベタ印刷面積Aおよび転移インキ体積量Bを測定して、B/Aにてインキ膜厚を算出した。上記ベタ印刷物の作成には、展色機を使用した。また、転移インキ体積量Bを求めるために、正確に図り取れるインキピペットを使用して展色機に供給するインキ量を測定するとともに、予め複数のベタ展色物を作成して転移インキ質量の平均値を求めておき、これを展色機から被印刷物へのインキ転移率として用いた。
<光沢度>
JIS−K5701−1により、日本電色工業株式会社製ハンディー光沢計PG−1を使用して測定した。
<可視光線透過率>
ISO 2470の方法により、日本電色工業社製分光式白色度計・分光色差計を用いて不透明度(%)を求め、得られた数値を100から差し引いて可視光線透過率の値とした。
まず、ワニスベースや各インキベースの調製例から述べる。
(ワニスベースの作製)
バインダー樹脂であるロジン変性フェノール樹脂(質量平均分子量60000、酸価20mgKOH/g)50質量部、植物油であるアマニ油20質量部、スピンドル油20質量部を配合して約200℃で約1時間加熱して樹脂を溶解させた後、さらにスピンドル油10質量部、アルミニウムキレート剤1質量部を添加して約180℃で約1時間加熱し、ワニスベースを得た。以下、特に断りが無ければ以下に示す実施例および比較例で用いたワニスベースはここに示した方法で得たものである。得られたワニスベースについても酸価を測定したところ、12mgKOH/gであった。
(インキベース(a−1)の調製)
上記ワニスベース50質量部、電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン30質量部、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで、電子供与性染料前駆体の平均粒径が2.0μmになるまで練肉し、さらに上記ワニスベース10質量部、スピンドル油5質量部を添加することによってインキベース(a−1)を調製した。
(インキベース(a−2)の調製)
電子供与性染料前駆体として、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン30質量部に替えて、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン30質量部を用いた以外は、インキベース(a−1)の調製と同様にしてインキベース(a−2)を調製した。
(インキベース(a−3)の調製)
電子供与性染料前駆体として、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン30質量部に替えて、クリスタルバイオレットラクトン30質量部を用いた以外は、インキベース(a−1)の調製と同様にしてインキベース(a−3)を調製した。
(インキベース(a−4)の調製)
電子供与性染料前駆体として、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン30質量部に替えて、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン30質量部を用いた以外は、インキベース(a−1)の調製と同様にしてインキベース(a−4)を調製した。
(インキベース(ac−1)の調製)
上記ワニスベース50質量部、電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン20質量部、顔料である水酸化アルミニウム(平均粒径0.3μm)10質量部、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで、電子供与性染料前駆体の平均粒径が2.0μmになるまで練肉し、さらに上記ワニスベース10質量部、スピンドル油5質量部を添加することによってインキベース(ac−1)を調製した。
(インキベース(ac−2)の調製)
電子供与性染料前駆体として、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン20質量部に替えて、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン20質量部を用いた以外は、インキベース(ac−1)の調製と同様にしてインキベース(ac−2)を調製した。
(インキベース(ac−3)の調製)
電子供与性染料前駆体として、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン20質量部に替えて、クリスタルバイオレットラクトン20質量部を用いた以外は、インキベース(ac−1)の調製と同様にしてインキベース(ac−3)を調製した。
(インキベース(ac−4)の調製)
上記ワニスベース50質量部、電子供与性染料前駆体である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン20質量部、顔料である軽質炭酸カルシウム10質量部(平均粒径1.0μm)、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで、電子供与性染料前駆体の平均粒径が2.0μmになるまで練肉し、さらに上記ワニスベース10質量部、スピンドル油5質量部を添加することによってインキベース(ac−4)を調製した。
(インキベース(ac−5)の調製)
電子供与性染料前駆体として、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン20質量部に替えて、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン20質量部を用いた以外は、インキベース(ac−4)の調製と同様にしてインキベース(ac−5)を調製した。
(インキベース(ac−6)の調製)
電子供与性染料前駆体として、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオ
ラン20質量部に替えて、クリスタルバイオレットラクトン20質量部を用いた以外は、インキベース(ac−4)の調製と同様にしてインキベース(ac−5)を調製した。
粒径追加
(インキベース(b−1)の調製)
上記ワニスベース50質量部、電子受容性化合物である4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン30質量部、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで、電子受容性化合物の平均粒径が2.0μmになるまで練肉し、さらに上記ワニスベース10質量部、スピンドル油5質量部を添加することによってインキベース(b−1)を調製した。
(インキベース(b−2)の調製)
電子受容性化合物として、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン30質量部に替えて、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン30質量部を用いた以外はインキベース(b−1)の調製と同様にしてインキベース(b−2)を調製した。
(インキベース(b−3)の調製)
電子受容性化合物として、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン30質量部に替えて4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン30質量部を用いた以外はインキベース(b−1)の調製と同様にしてインキベース(b−3)を調製した。
(インキベース(b−4)の調製)
電子受容性化合物として、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン30質量部に替えて4−ヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン30質量部を用いた以外はインキベース(b−1)の調製と同様にしてインキベース(b−4)を調製した。
(インキベース(b−5)の調製)
電子受容性化合物として、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン30質量部に替えて1,1−ビス(4−ヒドロキシジフェニル)シクロヘキサン30質量部を用いた以外はインキベース(b−1)の調製と同様にしてインキベース(b−5)を調製した。
(インキベース(bc−1)の調製)
上記ワニスベース50質量部、電子受容性化合物である4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン20質量部、顔料である水酸化アルミニウム(平均粒径0.3μm)10質量部、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで、電子受容性化合物の平均粒径が2.0μmになるまで練肉し、さらに上記ワニスベース10質量部、スピンドル油5質量部を添加することによってインキベース(bc−1)を調製した。
(インキベース(bc−2)の調製)
電子受容性化合物として、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン30質量部に替えて、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン30質量部を用いた以外はインキベース(bc−1)の調製と同様にしてインキベース(bc−2)を調製した。
(インキベース(bc−3)の調製)
電子受容性化合物として、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン30質量部に替えて、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン30質量部を用いた以外はインキベース(bc−1)の調製と同様にしてインキベース(bc−3)を調製した。
(インキベース(bc−4)の調製)
上記ワニスベース50質量部、電子受容性化合物である4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン20質量部、顔料である軽質炭酸カルシウム(平均粒径1.0μm)10質量部、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで、電子受容性化合物の平均粒径が2.0μmになるまで練肉し、さらに上記ワニスベース10質量部、スピンドル油5質量部を添加することによってインキベース(bc−4)を調製した。
(インキベース(bc−5)の調製)
電子受容性化合物として、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン30質量部に替えて、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン30質量部を用いた以外はインキベース(bc−4)の調製と同様にしてインキベース(bc−5)を調製した。
(インキベース(bc−6)の調製)
電子受容性化合物として、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン30質量部に替えて、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン30質量部を用いた以外はインキベース(bc−4)の調製と同様にしてインキベース(bc−6)を調製した。
(インキベース(c−1)の調製)
上記ワニスベース65質量部、顔料である水酸化アルミニウム(平均粒径0.3μm)30質量部、スピンドル油5質量部、大豆油5質量部を3本ロールミルで練肉し、インキベース(c−1)を調製した。
(インキベース(c−2)の調製)
顔料として、平均粒径が0.3μmの水酸化アルミニウム30質量部に替えて、平均粒径が1.0μmの軽質炭酸カルシウム30質量部を用いた以外はインキベース(c−1)の調製と同様にしてインキベース(c−2)を調製した。
(実施例1)
インキベース(a−1)100質量部、インキベース(b−1)200質量部を混合し、ドライヤー(ナフテン酸マンガン)を上記インキベース合計量の0.2質量%添加するとともに、スピンドル油10質量部を添加し、十分撹拌して均質化することによって、スクラッチ発色用インキを得た。インキ中に含有される固体粒子の平均粒径は2.0μmであった。また、粒径30μm以上の粗大粒子は、得られたスクラッチ発色用インキ1g中には100個しか認められなかった。
なお、得られたスクラッチ発色用インキの酸価をワニスベースと同様にして測定したところ、7mgKOH/gであった(但し、別途測定した、インキベース(b−1)とインキベース(a−1)の酸価の差が電子受容性化合物によって消費されたKOH量であると考え、その分を除いた値である。)
(実施例2)
インキベース(a−1)100質量部に替えて、インキベース(a−2)100質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た(インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数100個)。
(実施例3)
インキベース(a−1)100質量部に替えて、インキベース(a−3)100質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た(インキ1gあた
りの粒径30μm以上の粗大粒子数100個)。
(実施例4)
インキベース(a−1)100質量部に替えて、インキベース(a−4)100質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た(インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数100個)。
(実施例5)
インキベース(b−1)200質量部に替えて、インキベース(b−2)200質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た(インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数100個)。
(実施例6)
インキベース(b−1)200質量部に替えて、インキベース(b−3)200質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た(インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数100個)。
(実施例7)
インキベース(b−1)200質量部に替えて、インキベース(b−4)200質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た(インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数100個)。
(実施例8)
インキベース(b−1)200質量部に替えて、インキベース(b−5)200質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た(インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数100個)。
(実施例9)
インキベース(a−1)100質量部、インキベース(b−1)100質量部を混合し、ドライヤー(ナフテン酸マンガン)を上記インキベース合計量の0.2質量%添加するとともに、スピンドル油10質量部を添加し、十分撹拌して均質化することによって、スクラッチ発色用インキを得た。インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数は100個、インキ中に含有される固体粒子の平均粒径は2.0μmであった。なお、得られたスクラッチ発色用インキの酸価を実施例1と同様にして測定したところ、7mgKOH/gであった。
(実施例10)
インキベース(a−1)100質量部、インキベース(b−1)300質量部を混合し、ドライヤー(ナフテン酸マンガン)を上記インキベース合計量の0.2質量%添加するとともに、スピンドル油10質量部を添加し、十分撹拌して均質化することによって、スクラッチ発色用インキを得た。インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数は100個、インキ中に含有される固体粒子の平均粒径は2.0μmであった。なお、得られたスクラッチ発色用インキの酸価を実施例1と同様にして測定したところ、7mgKOH/gであった。
(実施例11)
インキベース(a−1)200質量部、インキベース(b−1)100質量部を混合し、ドライヤー(ナフテン酸マンガン)を上記インキベース合計量の0.2質量%添加するとともに、スピンドル油10質量部を添加し、十分撹拌して均質化することによって、スクラッチ発色用インキを得た。インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数は10
0個、インキ中に含有される固体粒子の平均粒径は2.0μmであった。なお、得られたスクラッチ発色用インキの酸価を実施例1と同様にして測定したところ、7mgKOH/gであった。
(実施例12)
インキベース(a−1)50質量部、インキベース(b−1)250質量部を混合し、ドライヤー(ナフテン酸マンガン)を上記インキベース合計量の0.2質量%添加するとともに、スピンドル油10質量部を添加し、十分撹拌して均質化することによって、スクラッチ発色用インキを得た。インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数は100個、インキ中に含有される固体粒子の平均粒径は2.0μmであった。なお、得られたスクラッチ発色用インキの酸価を実施例1と同様にして測定したところ、7mgKOH/gであった。
(実施例13)
インキベース(a−1)100質量部、インキベース(b−1)200質量部およびインキベース(c−1)100質量部を混合し、ドライヤー(ナフテン酸マンガン)を上記インキベース合計量の0.2質量%添加するとともに、スピンドル油10質量部を添加し、十分撹拌して均質化することによって、スクラッチ発色用インキを得た。インキ1gあたり粒径30μm以上の粗大粒子数は100個、インキ中に含有される固体粒子の平均粒径は1.8μmであった。なお、得られたスクラッチ発色用インキの酸価を実施例1と同様にして測定したところ、7mgKOH/gであった。
(実施例14)
インキベース(c−1)100質量部に替えて、インキベース(c−2)100質量部を用いた以外は実施例13と同様にしてスクラッチ発色用インキを得た。インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数が100個、インキ中に含有される固体粒子の平均粒径は1.9μmであった。
(実施例15)
インキベース(ac−1)150質量部、インキベース(bc−1)300質量部を混合し、ドライヤー(ナフテン酸マンガン)を上記インキベース合計量の0.2質量%添加するとともに、スピンドル油10質量部を添加し、十分撹拌して均質化することによって、スクラッチ発色用インキを得た。得られたスクラッチ発色用インキにおいて、インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数は100個、インキ中に含有される固体粒子の平均粒径は1.8μmであった。なお、得られたスクラッチ発色用インキの酸価を実施例1と同様にして測定したところ、7mgKOH/gであった。
(実施例16)
インキベース(ac−1)150質量部に替えて、インキベース(ac−2)150質量部を用いた以外は実施例15と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た。得られたスクラッチ発色用インキにおいて、インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数は100個であった。
(実施例17)
インキベース(ac−1)150質量部に替えて、インキベース(ac−3)150質量部を用いた以外は実施例15と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た。得られたスクラッチ発色用インキにおいて、インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数は100個であった。
(実施例18)
インキベース(ac−1)150質量部に替えて、インキベース(ac−4)150質量部を用いた以外は実施例15と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た。得られたスクラッチ発色用インキにおいて、インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数は100個であった。
(実施例19)
インキベース(ac−1)150質量部に替えて、インキベース(ac−5)150質量部を用いた以外は実施例15と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た。得られたスクラッチ発色用インキにおいて、インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数は100個であった。
(実施例20)
インキベース(ac−1)150質量部に替えて、インキベース(ac−6)150質量部を用いた以外は実施例15と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た。得られたスクラッチ発色用インキにおいて、インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数は100個であった。
(実施例21)
インキベース(bc−1)300質量部に替えて、インキベース(bc−2)300質量部を用いた以外は実施例15と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た。得られたスクラッチ発色用インキにおいて、インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数は100個であった。
(実施例22)
インキベース(bc−1)300質量部に替えて、インキベース(bc−3)300質量部を用いた以外は実施例15と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た。得られたスクラッチ発色用インキにおいて、インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数は100個であった。
(実施例23)
インキベース(bc−1)300質量部に替えて、インキベース(bc−4)300質量部を用いた以外は実施例15と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た。得られたスクラッチ発色用インキにおいて、インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数は100個であった。
(実施例24)
インキベース(bc−1)300質量部に替えて、インキベース(bc−5)300質量部を用いた以外は実施例15と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た。得られたスクラッチ発色用インキにおいて、インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数は100個であった。
(実施例25)
インキベース(bc−1)300質量部に替えて、インキベース(bc−6)300質量部を用いた以外は実施例15と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た。得られたスクラッチ発色用インキにおいて、インキ1gあたりの粒径30μm以上の粗大粒子数は100個であった。
(比較例1)
インキベース(a−1)100質量部、インキベース(c−1)50質量部を混合し、ドライヤー(ナフテン酸マンガン)を上記インキベース合計量の0.2質量%添加すると
ともに、スピンドル油5質量部を添加し、十分撹拌して均質化することによって、スクラッチ発色用インキのダミーインキを得た。インキ中に含有される固体粒子の平均粒径は1.9μmであった。なお、得られたダミーインキの酸価を上記ワニスベースと同様にして測定したところ、7mgKOH/gであった。
(比較例2)
インキベース(a−1)100質量部に替えて、インキベース(a−2)100質量部を用いた以外は比較例1と同様にして、スクラッチ発色用インキのダミーインキを得た。
(比較例3)
インキベース(a−1)100質量部に替えて、インキベース(a−3)100質量部を用いた以外は比較例1と同様にして、スクラッチ発色用インキのダミーインキを得た。
(比較例4)
インキベース(a−1)100質量部に替えて、インキベース(a−4)100質量部を用いた以外は比較例1と同様にして、スクラッチ発色用インキのダミーインキを得た。
(比較例5)
インキベース(a−1)100質量部に替えて、インキベース(b−1)100質量部を用いた以外は比較例1と同様にして、スクラッチ発色用インキのダミーインキを得た。
(実施例26)
(塗工紙支持体の作製)
坪量80g/mの紙支持体の表面に下記の組成の塗工層を乾燥状態で7g/mとなるようにブレードコーターにより塗工乾燥し、スーパーカレンダー(剛性ロール:外径500mmのチルドロール、弾性ロール:外径500mmの樹脂ロール、線圧:150kg/cm、温度60℃)処理して支持体である塗工紙を得た。
カオリン(平均粒径1.5μm) 30質量部
軽質炭酸カルシウム(平均粒径1.8μm) 70質量部
リン酸エステル化デンプン 5質量部
スチレン/ブタジエン系ラテックス 10質量部
得られた塗工紙の可視光線透過率は9%であった。
(不可視情報印刷シートの作製)
得られた塗工紙の塗工層表面に実施例1で得たスクラッチ発色用インキを用い、インキ膜厚が0.6μmになるように0から9までの1ケタの算用数字および三角、四角、丸の幾何学模様(三角、四角、丸の模様内部もインキ印刷。例えば、丸なら、黒発色だとスクラッチにより黒丸が見えてくる図柄設計)をオフセット印刷し、不可視情報印刷シートを得た。
(実施例27〜50)
実施例1で得たスクラッチ発色用インキに替えて、実施例2〜実施例25までのスクラッチ発色用インキをそれぞれ用いた以外は、実施例26と同様にして、実施例27〜実施例50の不可視情報印刷シートを得た。用いたスクラッチ発色用インキの実施例番号と不可視情報印刷シートの実施例番号との対応は次の通り(上述の実施例26も対応一覧に含めておく)。
スクラッチ発色用インキ 不可視情報印刷シート
実施例1 実施例26
実施例2 実施例27
実施例3 実施例28
実施例4 実施例29
実施例5 実施例30
実施例6 実施例31
実施例7 実施例32
実施例8 実施例33
実施例9 実施例34
実施例10 実施例35
実施例11 実施例36
実施例12 実施例37
実施例13 実施例38
実施例14 実施例39
実施例15 実施例40
実施例16 実施例41
実施例17 実施例42
実施例18 実施例43
実施例19 実施例44
実施例20 実施例45
実施例21 実施例46
実施例22 実施例47
実施例23 実施例48
実施例24 実施例49
実施例25 実施例50
(比較例6〜10)
実施例1で得たスクラッチ発色用インキに替えて、比較例1〜比較例5で得たダミーインキをそれぞれ用いた以外は、実施例26と同様にして、比較例6〜比較例10の不可視情報印刷シートを得た。用いたダミーインキの比較例番号と不可視情報印刷シートの比較例番号との対応は次の通りである。
ダミーインキ 不可視情報印刷シート
比較例1 比較例6
比較例2 比較例7
比較例3 比較例8
比較例4 比較例9
比較例5 比較例10
(実施例51〜60)
実施例26におけるインキ膜厚をそれぞれ次の様に変更した以外は実施例26と同様にして実施例51〜60の不可視情報印刷シートを得た(実施例26も下記一覧に含めておく)。
インキ膜厚(μm) 不可視情報印刷シート
0.3 実施例51
0.4 実施例52
0.5 実施例53
0.6 実施例26
0.8 実施例54
1.0 実施例55
1.2 実施例56
1.4 実施例57
1.6 実施例58
1.8 実施例59
2.0 実施例60
(実施例61〜70)
実施例26において用いた紙支持体の坪量をそれぞれ次の様に変更した以外は、実施例26と同様にして実施例61〜70の不可視情報印刷シートを得た(実施例26も下記一覧に含めておく)。
紙支持体坪量(g/m) 不可視情報印刷シート
30 実施例61
40 実施例62
50 実施例63
80 実施例26
100 実施例64
120 実施例65
150 実施例66
170 実施例67
200 実施例68
250 実施例69
300 実施例70
なお、それぞれ紙支持体から実施例26と同様にして塗工紙支持体を得たが、これらの塗工紙の可視光線透過率は、いずれも20%以下であり、対応する紙支持体の坪量が80g/m以上であれば10%以下であった。更に、対応する紙支持体の坪量100g/m以上であれば5%以下であった。
(実施例71〜77)
実施例26において用いた塗工紙に替えて、それぞれ下記の支持体を用い、塗工層を設けずにオフセット印刷した以外は、実施例26と同様にして実施例71〜77の不可視情報印刷シートを得た(実施例26も下記一覧に含めておく)。
支持体種類と坪量(g/m) 不可視情報印刷シート
塗工紙 80 実施例26
上質紙 50 実施例71
上質紙 100 実施例72
中質紙 100 実施例73
白色PETフィルム 100 実施例74
発泡PETフィルム 100 実施例75
ポリプロピレン合成紙 80 実施例76
ポリエチレン樹脂被覆紙 200 実施例77
なお、上記支持体の可視光線透過率は、白色PETフィルム、発泡PETフィルム、ポリプロピレン合成紙、ポリエチレン樹脂被覆紙の場合は5%以下、塗工紙では9%、坪量100g/mの上質紙や中質紙の場合は9%、坪量50g/mの上質紙では20%であった。
(比較例11)
(染料前駆体内包マイクロカプセル液の作製)
染料前駆体として、クリスタルバイオレットラクトン10部を、疎水性溶媒であるジアリールエタン系溶媒(ハイゾールSASN−296:日本石油化学社製)90部に溶解し、染料溶液とした。スチレン−無水マレイン酸共重合体5%水溶液100部に、上記染料溶液100部を強撹拌下で徐々に添加し、コールター・カウンターでの体積平均粒径が5μmになるまで撹拌を続け乳化液を得た。別に、メラミン7部、37%ホルムアルデヒド水溶液18部、水30部を加熱溶解して得たメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液を、乳化液中に添加し、75℃の温度下で3時間撹拌して染料前駆体内包マイクロカプセル液を得た。
上記の染料前駆体内包マイクロカプセル液100部、p−フェニルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂(PPPレジン:住友デュレッズ社製)100部、小麦澱粉20部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを60部添加して作成した自己発色用インキを用いて、実施例26で使用の紙支持体上に膜厚0.6μmになるように印刷して比較例11の不可視情報印刷シートを得た。印刷内容(数字や幾何学模様)は実施例26と同様とした。
(比較例12)
実施例26で用いたのと同じ支持体上に通常の黒色オフセット印刷インキにて、実施例26と同一内容の情報を印刷し、この上にアルミペーストオフセットインキをベタ印刷して不可視情報印刷シートを得た。
実施例26〜77、比較例6〜12で得た不可視情報印刷シートの構成を、表1−1および表1−2に示す。
評価1 (印刷部分の不可視性評価)
実施例26〜77および比較例6〜11で得られた不可視情報印刷シートの支持体表面におけるスクラッチ発色用インキによる非印刷部分および印刷部分のJIS−K5701−1による60度鏡面光沢度および75度鏡面光沢度を測定するとともに、60度鏡面光沢度の比と75度鏡面光沢度の比を算出した。結果を表2〜表5に示す。
また、実施例26〜77および比較例6〜12で得られた不可視情報印刷シートの目視観察により、不可視性を以下の4段階で評価した。◎は全く情報が視認されなかった。○は実用上殆ど視認されなかった。△はやや光沢度比か色差は有るが情報は視認されにくかった。×は情報が視認された。結果を表6〜表9に示す。
なお、この評価を含め、評価2の削りカス評価を除く以下のモニター評価は、視力や注意力が良好で既存の隠蔽型スクラッチカードの扱いにも慣れている年齢20代のモニター20人による評価結果である。上記で言えば、◎は9割以上が視認できず、○は8割以上が視認できず、△は6割以上が視認できず、×は6割未満しか視認できなかったことを意味する(モニター各自のコメント(光沢や濃度等)も参考にした)。
評価2 (印刷部分の発色感度および発色濃度評価)
実施例26〜77および比較例6〜12で得られた不可視情報印刷シートの印刷部分を爪で擦り、発色感度および発色濃度を評価した。また、100円硬貨を用いて擦り、爪の場合と同様に評価した。爪と100円硬貨での評価結果を、それぞれ、爪感度、爪濃度、硬貨感度、硬貨濃度と表現する。結果を表6〜表9に示す。
発色感度(爪感度、硬貨感度)について、◎は9割以上のモニターが軽い力で発色させ得たことを意味し、○は、8割以上のモニターが軽い力で発色させ得たことを意味し、△は、軽い力で発色させたモニター数が8割未満であり、他の者は強い力でようやく発色させ得たことを意味する。×は5割以上の者が発色させられなかったことを意味する。発色濃度(爪濃度、硬貨濃度)については、◎は9割以上の者が良好な発色が得られ、かつ情報の読み取り(発色させた数字や幾何学模様の判別)も良好であったことを意味し、○は8割以上の者が良好な発色が得られ、かつ情報の読み取り(発色させた数字や幾何学模様の判別)も良好であったことを意味する。△はモニター全員が情報の読み取りは可能であるが、やや不鮮明であり2割以上の者が数字や幾何学模様を読み間違えた(数字の場合で言えば、8を3と間違えるなど)ことを意味し、×は5割以上の者が情報の読み取りは不可能ないし読み間違いをしたことを意味する。
スクラッチ発色用インキによる印刷部分の削りカス評価については、スクラッチをていねいにできるモニター5人を選び、幾何学模様の部分およびその周囲を全面にスクラッチ発色してもらい評価した。結果を表6〜表9に示す。
削り屑(削りカス)の評価結果をここで述べておく。表中、○が削りカスが発生しないことを意味し、×が削り屑が発生したことを意味する。スクラッチ発色の際、各実施例お
よび比較例6〜11については削りカスの発生は認められなかった。これに対し、比較例12については、削りカスが発生した。
評価3 (印刷部分の汚れ評価)
実施例26〜77および比較例6〜12で得られた不可視情報印刷シートの印刷部分どうしを接触させて上下で重ね、上のシートを2回往復させて擦った後、印刷面の発色汚れを以下の4段階で評価した。結果を表6〜表9に示す。◎は9割以上のモニターが発色汚れを認めなかったことを意味し、○は8割以上のモニターが発色汚れを認めなかったことを意味し、△は発色汚れを認めた者が2割以上だが、不可視情報の視認(読み取り)が8割以上の者にできなかったことを意味し、×は発色汚れが有り、2割以上の者に不可視情報の読み取りが可能であったことを意味する。
評価4 (印刷部分の耐熱性評価)
実施例26〜77および比較例6〜12で得られた不可視情報印刷シートの印刷部分を100℃の熱スタンプに5秒間接触させた後、評価1と同じ内容のモニター評価を行なった。結果を表6〜表9に示す。表中の◎、○、△、×は評価1の評価基準と同様である。
評価5 (印刷部分の耐筆圧性評価)
実施例26〜77および比較例6〜12で得られた不可視情報印刷シートの幾何学模様印刷部分の上にコピー用紙を乗せ、その上からボールペンで算用数字を筆記した。その後、不可視情報印刷シートの幾何学模様印刷部分中の算用数字の発色程度について、評価した。◎は9割以上が視認出来ず、○は8割以上、△は6割以上が視認できなかったことを意味し、×は6割未満しか視認できなかったことを意味する。結果を表6〜表9に示す。
評価6 (印刷部分の耐光性評価)
実施例26〜77および比較例6〜12で得られた不可視情報印刷シートを日光の下に12時間さらした後、評価1と同じ内容のモニター評価を行なった。結果を表6〜表9に示す。表中の◎、○、△、×は評価1の評価基準と同様である。
評価7 (印刷部分の耐水性評価)
実施例26〜77、および比較例6〜12で得られた不可視情報印刷シートを水に浸した後、自然乾燥し、評価1と同じ内容のモニター評価を行なった。結果を表6〜表9に示す。表中の◎、○、△、×は評価1の評価基準と同様である。
Figure 2008024838
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以上の表2〜9より実施例26〜77の不可視情報印刷シートが実用的水準(モニター評価△以上)にあった。以下、個々の評価項目について述べる。
不可視性については、各実施例が良好であるのに対し、比較例11は劣っていた。対応する物性である60度鏡面光沢度比は、各実施例が65%以上であるのに対し、比較例1
1は60%未満であった。75度鏡面光沢度比は、各実施例が44%以上であるのに対し、比較例11は36%未満であった。
不可視性に関係する要素としては、顔料は配合されている方が無い場合よりより良好な不可視性が得られた。膜厚は上記実施例の範囲(0.3μm〜2.0μm)では良好な結果が得られた。
次に、発色感度と発色濃度について述べる。爪感度と硬貨感度、爪濃度と硬貨濃度はほぼ相関していたので、以下、爪での結果を元に述べる。
爪感度は各実施例でいずれも良好であった。爪濃度もやはり良好であった。なお、比較例6〜10は元々、発色に必要な成分のいずれかが抜けている事もあり、感度、濃度とも×となった。
次に汚れ、耐熱性、耐筆圧性、耐光性、耐水性について述べる。
各実施例はいずれの評価も全般に良好であったが、比較例11は発色ないし、塗布した層がくずれること(評価7の耐水性の結果等)により情報が可視化されてしまった。なお、評価には記載していないが、耐熱性の場合、支持体が耐熱性のもの(上質紙、中質紙、塗工紙、白色PETフィルム、発泡PETフィルム)なら、110℃での熱スタンプでも各実施例とも不可視性はなお良好であった。
次に上記結果より本発明の不可視情報印刷シートの特徴を更に引き出す試みを行った。結果を以下の実施例で述べる。
(実施例78〜82)
下記に示したスクラッチ発色用インキをそれぞれ用い不可視情報を奇数の1ケタの数字のみを実施例26と同じ要領で塗工紙上に印刷し、更に比較例1〜5のダミーインキをそれぞれ用いて、比較例6と同様の要領で、1ケタの偶数の数字を上記と同じ塗工紙上に印刷し実施例78〜82)の不可視情報印刷シートを得た。
実施例78〜82)にそれぞれ用いたスクラッチ発色用インキの実施例番号およびダミーインキの比較例番号を示す。
実施例 スクラッチ発色用インキ ダミーインキ
実施例78 実施例1 比較例1
実施例79 実施例2 比較例2
実施例80 実施例3 比較例3
実施例81 実施例4 比較例4
実施例82 実施例5 比較例5
(実施例78〜82の評価)
得られた各不可視情報印刷シートにおいて、評価1〜7までの評価を行なった。いずれも、おおむね、実施例26の評価と同等であったが、耐光性については、実施例78〜82のものは実施例26に比べ、格段に優れた結果となった。耐光性試験後、実施例78〜82の不可視情報が奇数の1ケタの数字である事に気がついたモニターは居なかった。
(実施例83)
実施例26における不可視情報印刷シートの不可視情報を1ケタの数字のみとし、それに更に、実施例4のスクラッチ発色用インキを用いて、実施例29と同様の要領で、1ケタの偶数の数字を同じ塗工紙上に印刷して不可視情報印刷シートを得た。
(実施例84)
実施例28における不可視情報印刷シートの不可視情報を1ケタの数字のみとし、それに更に、実施例4のスクラッチ発色用インキを用いて、実施例29と同様の要領で、1ケ
タの偶数の数字を同じ塗工紙上に印刷して不可視情報印刷シートを得た。
(実施例85)
実施例26における不可視情報印刷シートの不可視情報を1ケタの数字のみとし、それに更に、実施例4のスクラッチ発色用インキを用いて、実施例29と同様の要領で、1ケタの偶数の数字を同じ塗工紙上に印刷し、これに更に実施例3のスクラッチ発色用インキを用いて、幾何学模様(三角、四角、丸)を実施例28と同じ要領で同じ塗工紙上に印刷して不可視情報印刷シートを得た。
(実施例83〜85の評価)
得られた各不可視情報印刷シートにおいて、評価1〜7までの評価を行なった。良好な結果に変わりはないが、スクラッチして得られる色が実施例83では、無彩色と赤(正確には橙ないし赤橙)の2通り、実施例84では青と赤(正確には橙ないし赤橙)の2通りであり、いずれもモニターには好評であった。
実施例85では、3色が得られ、更に好評であった。また、色の識別も容易であった。
(実施例86)
インキベース(a−1)100質量部を、インキベース(a−1)50質量部とインキベース(a−2)50質量部の混合物100質量部に替えた以外は実施例1と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た。
(実施例87)
インキベース(b−1)200質量部を、インキベース(b−2)100質量部とインキベース(b−3)10質量部の混合物200質量部に替えた以外は実施例1と同様にして、スクラッチ発色用インキを得た。
(実施例88)
実施例1で用いたスクラッチ発色用インキを実施例86のスクラッチ発色用インキに替えた以外は実施例26と同様にして不可視情報印刷シートを得た。
(実施例89)
実施例1で用いたスクラッチ発色用インキを実施例87のスクラッチ発色用インキに替えた以外は実施例26と同様にして不可視情報印刷シートを得た。
(実施例88〜89の評価)
得られた各不可視情報印刷シートにおいて、評価1〜7までの評価を行なった。いずれも実施例26と同等の結果を得た。
本発明によれば、不可視情報印刷部分が通常の取り扱い時の擦れでは発色しにくいにもかかわらず、爪で擦ることで不可視情報の可視化が容易に行え、発色濃度が高く、不可視情報を可視化する際に削りカスの発生が無く、不可視情報を印刷した部分をスクラッチ発色せずに視認することが極めて困難なスクラッチ発色用インキおよびそれを用いた不可視情報印刷シートを提供することができる。
本発明の活用例として、特別の用具(硬貨等)を用いることなく、不可視情報の可視化が可能であり、使用者の手を汚すことがなく、遊び、ゲーム、教育、抽選券、金券、くじ等に本発明のシートは広く用いられる。また、一般の印刷物や物品が真正品かどうかを機器を用いずスクラッチにより識別するため、本発明のスクラッチ発色用インキをそれら真正品またはその包装に印刷しておく用い方もある。
また、本発明のシートは使用時、指先を使うものである事から、各種の派生用途も期待
出来る。例えば、幼児教育用や高齢者の認知症予防/進行防止用、指先の運動機能回復訓練(リハビリ)といった分野での教材やリハビリ材料等にも好適である。使用者が発色して得られる情報に注目し、退屈や苦痛を感じず、やる気が持続する利点は大きい。
更に、削り屑(削りカス)の発生も無いので用いる場所も、特に乗り物(飛行機、車、列車、バス、船舶など居室を有する交通機関)、オフィス、金融機関、公共施設、家庭、店内等の室内での用途にも有効である。清掃や空調メンテナンスの手間が省ける。
なお、本発明のスクラッチ発色用インキを用いた印刷物は、光沢等の外観が通常のオフセット印刷用インキを用いた印刷物同様であるので、各種印刷物と併用したり、印刷物や印刷用紙等に本発明のスクラッチ発色用インキを印刷して本発明の不可視情報印刷シートとしてもよい。

Claims (9)

  1. 電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物およびワニスを含み、内在する固体粒子成分の平均粒径が0.3〜25μmであることを特徴とするスクラッチ発色用インキ。
  2. さらに顔料を含む請求項1に記載のスクラッチ発色用インキ。
  3. 電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物の含有質量比が1:0.5〜1:5である請求項1または請求項2に記載のスクラッチ発色用インキ。
  4. 電子供与性染料前駆体がキサンテン系化合物を含み、電子受容性化合物がジフェニルスルホン系化合物を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載のスクラッチ発色用インキ。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のスクラッチ発色用インキによって不可視情報が支持体上に印刷されてなることを特徴とする不可視情報印刷シート。
  6. 不可視情報がインキ膜厚2.0μm以下で印刷されてなる請求項5に記載の不可視情報印刷シート。
  7. 支持体表面における非印刷部分の光沢度に対する印刷部分の光沢度の比がJIS−K5701−1による60度鏡面光沢度の比で65%〜150%である請求項5または請求項6に記載の不可視情報印刷シート。
  8. 支持体表面における非印刷部分の光沢度に対する印刷部分の光沢度の比がJIS−K5701−1による75度鏡面光沢度の比で44%〜105%である請求項5〜7のいずれかに記載の不可視情報印刷シート。
  9. 不可視情報がオフセット印刷により印刷されてなる請求項5〜8のいずれかに記載の不可視情報印刷シート。
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