JP2008024734A - 熱可塑性樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水中においてシランカップリング剤で処理した膨潤性層状ケイ酸塩を、乾燥させずに含水状態のまま熱可塑性樹脂と溶融混錬することを特徴とする。樹脂と溶融混錬するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩の水含有率は20〜95質量%が好適である。また、シランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩は水に加えて多価アルコールを含むことができ、多価アルコール含有率は10〜30質量%が好適である。シランカップリング剤処理率は30〜100%が好適である。
【選択図】 なし
Description
層状ケイ酸塩は樹脂との親和性に乏しく、樹脂マトリックス中に高分散させることは難しい。このため種々の工夫がなされており、例えば有機シラン化合物で表面処理した膨潤性層状ケイ酸塩粉末を熱可塑性樹脂と溶融混錬することが知られている(例えば特許文献1等)。
しかしながら、このようなシラン処理膨潤性層状ケイ酸塩粉末を溶融混錬しても、樹脂組成物中における分散性は十分とは言えず、さらなる改善が望まれていた。
すなわち、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、水中においてシランカップリング剤で処理した膨潤性層状ケイ酸塩を、乾燥させずに含水状態のまま熱可塑性樹脂と溶融混錬することを特徴とする。
本発明の方法において、熱可塑性樹脂と溶融混錬するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩の水含有率が20〜95質量%であることが好適である。
また、熱可塑性樹脂と溶融混錬するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩の含有する水を多価アルコールで置換することができる。
また、熱可塑性樹脂と溶融混錬するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩の多価アルコール含有率は10〜30質量%であることが好適である。
また、本発明の方法において、シランカップリング剤による処理率が膨潤性層状ケイ酸塩の表面積の30〜100%であることが好適である。
また、シランカップリング剤が水溶性アミノシラン系カップリング剤であることが好適である。
また、熱可塑性樹脂樹脂がポリオレフィン系樹脂であることが好適である。
本発明においては、膨潤性層状ケイ酸塩が水膨潤性であり、水中で表面処理するので、水溶性シランカップリング剤が好適に使用でき、特に水溶性アミノシラン系カップリング剤が好適に使用できる。水溶性アミノシラン系カップリング剤としては、例えばN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
処理温度は、シランカップリング剤の脱水縮合反応が起こらない温度範囲とすることができるが、通常10〜60℃、好ましくは20〜40℃である。
処理時間は原料の種類や濃度、処理温度などにより適宜設定可能であるが、通常10分〜5時間である。
なお、シランカップリング剤による処理の際には、水とともに、水に相溶性があり溶融混錬中に揮散し得るその他の溶媒、例えばメタノール、エタノールなどの低級アルコール、アセトンなどを特に問題のない限り併用することもできる。
なお、本発明において、膨潤性無機層状珪酸塩表面のシランカップリング剤による処理率は、以下のように規定される。
A(eq/g)の陽イオン交換容量(以下CEC)を持つ膨潤性層状ケイ酸塩が有する単位g当りの交換性陽イオン数(個/g)は、次の式1で表される[NA:アボガドロ数6.02×1023]。
A×NA ・・・(式1)
(a×b)/2x ・・・(式2)
膨潤性層状ケイ酸塩結晶は交換性陽イオンを上下から挟んでいるので、交換性陽イオン1個が占有する膨潤性層状ケイ酸塩の表面積は実際には式2の2倍となり、下記式3で表される。
(a×b)/x ・・・(式3)
従って、CECがA(eq/g)の膨潤性層状ケイ酸塩1g当たりのシランカップリング剤が吸着し得る面の表面積Smは、次の式4で示される。
Sm=A×NA×(a×b)/x ・・・(式4)
R=(Ss×Ms)/(Sm×Mm)×100 ・・・(式5)
100meq/100g×6.02×1023
=1.0×10−3×6.02×1023=6.02×1020個/g
Na型四ケイ素雲母の格子定数はa=5.3Å、b=9.2Åであり、その一般式において交換性陽イオン数xは1であるので、交換性陽イオン1個が占めるNa型四ケイ素雲母の表面積は、前記式3より次のように計算できる。
5.3Å×9.2Å=4.88×10−19m2/個
従って、このNa型四ケイ素雲母1g当たりの表面積Smは、前記式4より次のように計算できる。
Sm=6.02×1020個/g×4.88×10−19m2/個≒294m2/g
よって、例えば上記Na型四ケイ素雲母37.5gを12.5gのKBM−903で処理したときの処理率Rは、前記式5より次のように算出できる。
(436m2/g×12.5g)/(294m2/g×37.5g)×100
=49.4%
このように、シランカップリング剤の使用量は、膨潤性層状ケイ酸塩の種類や量、あるいはシランカップリング剤の種類によって変化するが、通常、膨潤性層状ケイ酸塩1質量部に対して0.1〜1質量部、さらには0.2〜0.7質量部が使用できる。
シランカップリング剤処理後乾燥させると、熱可塑性樹脂への分散性が低く機械的特性が十分に改善されない。これは、乾燥時の加熱及び/又は脱水により、膨潤性層状ケイ酸塩表面とシランカップリング剤とが脱水縮合反応して強固に結合してしまい、層状ケイ酸塩の剥離や分散が阻害されるためと考えられる。
上記のような含水率範囲にあるシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩は、通常粘土状〜ペースト状を呈し、流動性はほとんどない。
さらに、例えば、水と多価コールとを含有するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩から水の少なくとも一部を除去すれば、シランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩を粉末化することができる。また、熱可塑性樹脂にはポリエステルやポリ乳酸など水に弱いものがあり、このような樹脂に対しては水を除去して使用することが好適である。なお、このような粉末においても分散性や機械的性質の向上が認められるが、これは、水が多価アルコールで置換され、この多価アルコールによって膨潤性層状ケイ酸塩の層間が広がっているためと考えられる。
なお、水を除去する場合には、脱水縮合反応を生じない低温の温度範囲で行うべきであり、例えば、20〜60℃、さらには20〜40℃で行うことが好ましい。また、凍結乾燥法などの加熱を伴わない方法も使用できる。
シランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩が多価アルコールを含む場合、多価アルコールの含有率は10〜30質量%であることが好適である。多価アルコール含有率が低くなると分散性が低下し、高すぎると樹脂組成物の剛性が低下し、本発明の効果が十分に得られない。
溶融混錬後、射出成形や押し出し成形など公知の方法により成形して樹脂組成物を得ることができる。また、混錬と成形を同時にあるいは連続して行うこともできる。樹脂組成物中に水分が残存している場合には、乾燥を行なうことができ、必要に応じて加熱してもよい。通常は溶融混錬中に水分は揮散するので、この場合は乾燥工程を省略することができる。
酸変性樹脂とは、ベース樹脂を酸で変性してなる樹脂であり、このようなベース樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン酢酸−アクリル酸エチル共重合樹脂、ポリプロピレンなどである。
本発明の樹脂組成物は、ペレット、フィルム、シート、エンジニアリングプラスティックなど、用途に応じて種々の形態に成形できる。
実施例1 表面処理膨潤性層状ケイ酸塩(含水)を用いたPP溶融混錬
膨潤性層状ケイ酸塩(Na四ケイ素雲母:トピー工業(株)NTS−5)37.5gを、室温にて3質量%濃度で水に膨潤させ、懸濁液を得た。
シランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学(株)KBM−903)12.5gを水で3倍希釈し、1時間室温で静置して十分に加水分解させ、シランカップリング剤水溶液を得た。
層状ケイ酸塩懸濁液をスリーワンモーターで攪拌しながら、シランカップリング剤水溶液を添加し、さらに室温で3時間攪拌した。その後、懸濁液を吸引濾過により水分含量40質量%にまで絞り、シランカップリング剤で処理された膨潤性層状ケイ酸塩の含水ケーキ84gを得た。
実施例1と同様にして得た含水ケーキ84gに、80℃に加温して溶かした分子量1000のポリエチレングリコール(ライオン(株)PEG#1000)10gを加え十分に混ぜた後、60℃に設定した送風乾燥機中で24時間置いて水分を蒸発させた。
この乾燥物をコーヒーミルで粉砕し、得られた粉体60gを二軸押出機で溶融しているポリプロピレン((株)サンアロマー、PM870A)878gに投入し、195℃で溶融混錬し、実施例1と同様にして試験片を得た。
実施例1と同様にして得られた含水ケーキ84gを、加圧ニーダーで溶融しているポリカーボネート[PCで示す](帝人化成(株)、パンライトL−1250)865kgに投入し、270℃で溶融混錬し、実施例1と同様にして試験片を得た。
実施例1と同様にして得られた含水ケーキの水分をさらに絞り、120℃で乾燥、粉砕して、シランカップリング剤で処理された膨潤性層状ケイ酸塩の乾燥粉末を得た。
この乾燥粉末を樹脂に投入して溶融混錬し、実施例1と同様にして試験片を得た。
膨潤性層状ケイ酸塩(Na四ケイ素雲母:トピー工業(株)NTS−5)50gを室温にて3質量%濃度で水に膨潤させ、懸濁液を得た。懸濁液を吸引濾過により水分含量40質量%にまで絞り、膨潤性層状ケイ酸塩の含水ケーキを得た。
この含水ケーキを樹脂に投入して溶融混錬し、実施例1と同様にして試験片を得た。
膨潤性層状ケイ酸塩(Na四ケイ素雲母:トピー工業(株)NTS−5)37.5gを室温にて3質量%濃度で水に膨潤させ、懸濁液を得た。懸濁液を吸引濾過により水分含量40質量%にまで絞り、膨潤性層状ケイ酸塩の含水ケーキを得た。
シランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学(株)KBM−903)12.5gに水9gを添加し、1時間室温で静置して十分に加水分解させて、シランカップリング剤水溶液を得た。
上記含水ケーキとシランカップリング剤水溶液とを別々に樹脂に投入して溶融混錬し、実施例1と同様にして試験片を得た。
実施例1において、膨潤性層状ケイ酸塩、シランカップリング剤、水は投入せずにポリプロピレンのみを溶融混錬し、実施例1と同様にして試験片を得た。
比較例1と同様にして得られたシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩の乾燥粉末50gを、加圧ニーダーで溶融しているポリカーボネート865gに投入し、270℃で溶融混錬し、実施例1と同様にして試験片を得た。
実施例3において、膨潤性層状ケイ酸塩、シランカップリング剤、水は投入せずにポリカーボネートのみを溶融混錬し、実施例1と同様にして試験片を得た。
前記のようにして得られた試験片について、評価試験を行った。結果を表1〜2に示す。なお、試験方法は次の通りである。
(灰分)
組成物中に含まれる灰分(%)をJIS K 6228に従って測定した。
(剛性)
曲げ弾性率(MPa)をJIS K7171に従って測定した。
厚さ1mmに調製した試験片を光に透かして目視により層状ケイ酸塩の分散性を下記の基準で評価した。
○:凝集なく均質
△:部分的に凝集が見られる
×:凝集が確認できる
(IZOD衝撃強さ)
IZOD衝撃強さ(kJ/m2)をJIS K 7110に従って測定した。
また、シランカップリング剤処理した膨潤性層状ケイ酸塩に含まれる水を多価アルコールに置換した場合(実施例2)も、高い分散性・剛性・靭性を示した。なお、膨潤性層状ケイ酸塩と、多価アルコールと、シランカップリング剤とを別々に熱可塑性樹脂に添加して溶融混錬した場合には、実施例2よりも効果は劣っていた。
このような傾向は、何れの熱可塑性樹脂においても同様に認められた。
また、これらの結果から、樹脂に投入する膨潤性層状ケイ酸塩の層間距離は20Å以上であることが好ましいことも示唆された。
実施例1において、膨潤性層状ケイ酸塩とシランカップリング剤の量を変えて同様に試験片を作製し、試験を行った。
表3からわかるように、膨潤性層状ケイ酸塩に対するシランカップリング剤量が少なく処理率が小さいと十分な効果が得られない。また、シランカップリング剤を過剰に使用しても効果の顕著な向上は認められない。
以上のことから、シランカップリング剤による処理率は膨潤性無機層状珪酸塩の表面積の30〜100%、さらには40〜70%であることが好適である。
実施例1において、含水ケーキの含水率を変えて同様に試験片を作製し、試験を行った。
表4からわかるように、含水率が低いと十分な効果が得られない。また、含水率が高すぎると、分散が不十分となり、また、得られた樹脂組成物の乾燥にも時間がかかる。
以上のことから、含水率は20〜95質量%、さらには60〜90質量%とすることが好適である。
実施例2において、含水ケーキに添加する多価アルコール量を変えて同様に試験片を作製し、試験を行った。
表5からわかるように、多価アルコール含有率が低いと十分な効果が得られない。また、多価アルコール含有率が高すぎると、剛性が低下してしまう。
以上のことから、シランカップリング剤処理膨潤性無機層状珪酸塩の多価アルコール含有率は10〜30質量%、さらには15〜20質量%とすることが好適である。
Claims (8)
- 水中においてシランカップリング剤で処理した膨潤性層状ケイ酸塩を、乾燥させずに含水状態のまま熱可塑性樹脂と溶融混錬することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1記載の方法において、熱可塑性樹脂と溶融混錬するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩の水含有率が20〜95質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1又は2記載の方法において、熱可塑性樹脂と溶融混錬するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩が多価アルコールを含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項3記載の方法において、熱可塑性樹脂と溶融混錬するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩の含有する水が多価アルコールで置換されていることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項3又は4記載の方法において、熱可塑性樹脂と溶融混錬するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩の多価アルコール含有率が10〜30質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜5の何れかに記載の方法において、シランカップリング剤による処理率が膨潤性層状ケイ酸塩の表面積の30〜100%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜6の何れかに記載の方法において、シランカップリング剤が水溶性アミノシラン系カップリング剤であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜7の何れかに記載の方法において、熱可塑性樹脂樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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