JP2008016267A - 非水電解液二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高容量であり、かつ過充電時の安全性に優れた非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】 リチウム複合酸化物を正極活物質として含有する正極合剤層を有する正極を備えてなる非水電解液二次電池であって、4.4±0.1Vの電圧に充電したときの電池の体積あたりの電気容量が125mAh/cm以上であり、5.0Vの電圧を印加したときに測定される発熱速度が、正極活物質1gあたり0.2W/g以下であり、電池の体積(V)(cm)と外表面積(S)(cm)との比(V)/(S)が、0.185以下であることを特徴とする非水電解液二次電池である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、非水電解液二次電池に関し、更に詳しくは、高電圧で充電されて使用される高容量の非水電解液二次電池に関するものである。
現在、非水電解液二次電池は小型化、高容量化が進んでいるが、高容量化を達成するにあたり、充電電圧の高電圧化が有効な手段であると考えられている。
非水電解液二次電池において、高電圧充電を可能とするには、特に正極活物質の安定性を高めて、過充電となった場合の電池の安全性を向上させる必要がある。例えば、高電圧下での安定性に優れる正極活物質として、スピネルマンガンやリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物などが知られており、これらを用いて電池を構成することが提案されている(例えば、特許文献1など)。しかしながら、これらの活物質は真比重が小さいため、特に電池の体積あたりの容量が大きいことが望まれる小型電池においては、採用は難しい。
他方、高電圧充電が可能な非水電解液二次電池を構成するにあたっては、コバルト酸リチウムに異種元素を固溶させてなるものを正極活物質として用いることも有効であることが知られている(例えば、特許文献2)。しかし、この場合、コバルト酸リチウムに固溶させる異種元素量を多くすると、高電圧下における安定性は向上するものの容量低下を招くため、正極活物質において、電池に要求される高電圧充電時の安全性と容量とを両立させ得るような組成範囲の設定が困難である。
特開2002−110253号公報 特開2001−167763号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高容量であり、かつ過充電時の安全性に優れた非水電解液二次電池を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明の非水電解液二次電池は、リチウム複合酸化物を正極活物質として含有する正極合剤層を有する正極を備えてなる電池であって、4.4±0.1Vの電圧に充電したときの電池の体積あたりの電気容量(以下、単に「容量」という)が125mAh/cm以上であり、5.0Vの電圧を印加したときに測定される発熱速度が、正極活物質1gあたり0.2W/g以下であり、電池の外寸より求められる体積(V)(cm)と外表面積(S)(cm)との比(V)/(S)が、0.185以下であることを特徴とするものである。
本発明者らは、非水電解液二次電池において、過充電となった場合の電池の安全性を向上させるにあたり、過充電時の発熱に着目し、かかる過充電の際の発熱速度と、電池内から電池外への放熱速度とのバランスを調整することで、過充電の際に電池温度を一定値以下に保って、その安全性を確保し得ることを見出した。
すなわち、電池内から電池外への放熱の速度は、電池外装体の形状を調整して、電池の外寸より求められる体積(V)と、電池の外寸より求められる外表面積(S)との比(V)/(S)を特定値以下に制御することで調節できる。そして、過充電時を想定した条件下での電池の発熱速度を特定値以下として、上記の放熱速度とのバランスを調整すれば、過充電時における電池の温度を一定値以下(例えば、100℃以下)に保つことが可能となる。
本発明では、上記の知見に基づき、(V)/(S)値が上記特定値以下となるような電池の形状とし、また、4.4±0.1Vといった高電圧での充電時における容量を高めつつ、過充電時を想定した条件下での発熱速度を上記特定値以下とすることによって、非水電解液二次電池の高容量化と過充電時の安全性の向上を達成している。
本発明によれば、高容量で、かつ過充電時における安全性に優れた非水電解液二次電池を提供できる。
本発明の非水電解液二次電池は、4.4±0.1Vの電圧で充電したときの容量が、電池の体積あたり、125mAh/cm以上、好ましくは127mAh/cm以上といった高容量の電池である。なお、4.4±0.1Vの電圧で充電したときの電池の体積あたりの容量は、300mAh/cm以下であることが好ましい。
本発明の非水電解液二次電池は、電池の外寸より求められる体積(V)(cm)と電池の外寸より求められる外表面積(S)(cm)との比(V)/(S)が、0.185以下である。例えば、電池が、高さHmm、幅Wmm、厚みDmmの角形の形態を有している場合、体積(V)は、0.1H×0.1W×0.1D(cm)で表され、外表面積(S)は、0.1H×0.1W×2+0.1H×0.1D×2+0.1W×0.1D×2(cm)で表される。このとき、(V)と(S)との比(V)/(S)が、0.185以下であればよい。
電池内部が発熱した場合、その熱の一部は電池外装体を通じて外部に放出される。よって、電池の体積あたりの外表面積が大きいほど、すなわち(V)/(S)の値が小さいほど、その電池は、内部の熱を放出する能力が大きくなる。(V)/(S)の値は、0.18以下であることがより好ましい。なお、電池の放熱能力の観点からは、(V)/(S)の値は小さいほど好ましいが、あまり小さいと電池としての構造をとり難くなるため、その下限は、通常、0.10程度である。
また、本発明の非水電解液二次電池は、5.0Vの電圧を印加したときに測定される発熱速度が、正極活物質1gあたり0.2W/g以下である。上記の発熱速度を求める際の条件は、電池が過充電された場合を想定した条件であり、このような条件での電池の発熱速度が、上記所定値以下であれば、上記(V)/(S)値の制御により確保される電池の放熱能力との兼ね合いにより、過充電時における電池温度の上昇を防ぐことができ、電池の安全性を確保することができる。ここで、上記発熱速度を、正極活物質1gあたりの値としているのは、電池が過充電された際に発熱の主な原因となるのが正極活物質だからである。上記発熱速度は、0.15W/g以下であることが好ましい。なお、上記発熱速度は、例えば、正極活物質の選択により制御でき、電池の安全性確保の観点からは小さいほど好ましい(例えば、0W/gや、それ以下とすることも可能である)。
上記発熱速度は、次のようにして測定される。
(1)電池の外装缶のみを使用し、これに水を満たして外気温と水温の変化を測定することにより、電池と外気温との差に対する熱量変化を評価する。この関係の経時変化を計測することにより、外気温度と電池温度との差に対応する放熱速度を求める。
(2)内容物を含む電池の見かけ比熱を、ジュワー瓶に満たした水中で、一定熱量を加えたときの温度変化を測定する通常のカロリーメーター法により測定する。
(3)電池を0.5Aで4.4Vまで定電流充電し、続いて4.4Vで定電圧充電し(定電流定電圧充電の総充電時間を2時間30分とする)、その後4.5V〜5.0Vまで0.1V刻みで電圧を上昇させ、かつそれぞれの電圧で10分間保持し、5.0Vで10分間保持後の電流値、電圧、電池温度、外気温を測定する。
(4)上記(3)の電池温度および外気温と、上記(1)の放熱速度とから、電池の放熱速度を算出する。
(5)上記(2)の電池の見かけ比熱から、電池温度変化に対応する熱量消費を算出する。
(6)上記(3)の電流値および電圧から、外部電源から供給される熱量を算出する。
(7)上記(4)〜(6)の熱量(放熱速度、熱量消費、熱量)に加えて電池の発熱量は釣り合う関係にあるから、これらにより10分間の電池の発熱量(正極活物質1gあたりの発熱量)を求めることができる。これを時間(10分)で除することにより、電池を5.0Vに印加したときの発熱速度を求めることができる。
本発明の非水電解液二次電池に係る正極は、正極活物質などを含有する正極合剤層を有しており、この正極合剤層が、例えば、集電体の片面または両面に形成されてなるものである。
本発明に係る正極活物質は、リチウム複合酸化物であるが、具体的には、一般式Li(1−s−α)Co(1−t−u)MgAl(ただし、Mは、Tiおよび/またはGeで、0.01<s<0.1、0.01<t+u<0.1、0<α<0.05である)で表されるリチウム複合酸化物(A)を用いることが好ましい。このようなリチウム複合酸化物(A)を使用することで、上記発熱速度を上記所定値以下としつつ、電池を高容量化して、4.4±0.1Vの電圧に充電したときの電池の体積あたりの容量を、125mAh/cm以上とすることができる。
また、上記発熱速度の制御をより容易にする観点からは、一般式Li(1+δ)MnNiCo(1−x−y−z)M’(ただし、M’は、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Al、Si、Ga、GeおよびSnよりなる群から選択される少なくとも1種の元素で、−0.15<δ<0.15、0.1<x≦0.5、0.6<x+y+z≦1.0、0≦z≦0.1である)で表されるリチウム複合酸化物(B)を、リチウム複合酸化物(A)と共に使用することがより好ましい。
リチウム複合酸化物(B)をリチウム複合酸化物(A)と共に使用する場合には、リチウム複合酸化物(A)とリチウム複合酸化物(B)との合計に対するリチウム複合酸化物(A)の比率が、質量比率で0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。リチウム複合酸化物(A)とリチウム複合酸化物(B)との合計中のリチウム複合酸化物(A)の量が少なすぎると、真比重の小さなリチウム複合酸化物(B)の量が多くなりすぎて、正極合剤層の密度を高め難くなり、電池の高容量化が困難となることがある。なお、正極活物質をリチウム複合酸化物(A)のみとしてもよいため、リチウム複合酸化物(A)とリチウム複合酸化物(B)との合計に対するリチウム複合酸化物(A)の比率の上限に制限はない(すなわち、1であってもよい。)。
正極の導電助剤としては黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックなどを用いることができるが、主成分としてカーボンブラックを用いることがより好ましい。
正極のバインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ディスパージョンや、粉末のPTFE、ゴム系バインダ、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などを用いることができるが、PVDFを用いることがより好ましい。
正極の集電体としては、アルミニウム、チタンなどからなる箔、平織り金網、エキスパンドメタル、ラス網、パンチングメタルなどを用いることができるが、アルミニウム箔を用いることがより好ましい。集電体の厚みは、10〜20μmであることが好ましい。
正極は、例えば、上記の正極活物質、導電助剤およびバインダなどからなる正極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に分散させてなる正極合剤含有ペーストを調製し(バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥させ、必要に応じてプレス処理などを施して正極合剤層を形成することにより製造できる。なお、本発明に係る正極の製法は、上記の製法に限定される訳ではなく、他の製法により製造してもよい。
正極に係る正極合剤層においては、正極活物質の含有量が95〜99質量%、導電助剤の含有量が0.5〜2質量%、バインダの含有量が0.5〜3質量%であることが好ましい。また、正極合剤層の厚みは、40〜100μmであることが好ましい。
また、正極合剤層の密度は、3.5g/cm以上とすることが好ましく、3.7g/cm以上とすることがより好ましい。正極合剤層をこのように高密度とすることで、上記のような高容量の電池とすることができる。なお、正極合剤層の密度が高すぎると、非水電解液の濡れ性が損なわれて、電池特性の低下を招くことがあるため、正極合剤層の密度は、4.1g/cm以下とすることが好ましく、4.0g/cm以下とすることがより好ましい。正極合剤層を上記の密度とするには、上で説明した構成および製法を採用すればよい。
なお、本明細書でいう正極合剤層の密度は、以下の測定方法により求められる値である。正極を所定面積で切り取り、その重量を、最小目盛り1mgの電子天秤を用いて測定し、この重量から集電体の重量を差し引いて正極合剤層の重量を算出する。また、正極の全厚を最小目盛り1μmのマイクロメーターで10点測定し、この厚みから集電体の厚みを差し引いた値の平均値と面積から正極合剤層の体積を算出し、この体積で上記の正極合剤層の重量を割ることにより、正極合剤層の密度を算出する。
本発明に係る負極としては、例えば、負極活物質などを含有する負極合剤層が、集電体の片面または両面に形成されてなるものが挙げられる。
負極に用いる活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質カーボンなどの炭素材料が好ましく、これらの炭素材料を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
負極のバインダとしては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などのセルロース;スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリルゴムなどのゴム系バインダ;などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
負極の集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼などからなる箔、平織り金網、エキスパンドメタル、パンチングメタルなどを用いることができるが、銅箔を用いることがより好ましい。集電体の厚みは、5〜15μmであることが好ましい。
負極は、例えば、上記の負極活物質およびバインダなどからなる正極合剤を、NMPや水などの溶剤に分散させてなる負極合剤含有ペーストを調製し(バインダは溶剤に溶解していてもよい)、これを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥させて負極合剤層を形成することで製造できる。なお、本発明に係る負極の製法は、上記の製法に限定される訳ではなく、他の製法により製造してもよい。
負極に係る負極合剤層においては、負極活物質の含有量が90〜99.9質量%、バインダの含有量が0.1〜10質量%であることが好ましい。また、負極合剤層の厚みは、40〜100μmであることが好ましい。
非水電解液二次電池に係る非水電解液としては、従来公知の非水電解液二次電池で使用されている非水電解液、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液などが用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiN(CFSOなどが挙げられる。また、有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキソランなどが例示できる。非水電解液におけるリチウム塩濃度は、例えば、0.2〜1.5mol/lであることが好ましい。
非水電解液二次電池に係るセパレータとしては、従来公知の非水電解液二次電池で用いられているセパレータ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレンなどのポリオレフィン製の微孔性フィルムや不織布などが挙げられる。
なお、電池の高容量化の観点からは、セパレータの厚みは、20μm以下とすることが好ましく、18μm以下とすることがより好ましい。このような厚みのセパレータを用いることで、上記の容量(4.4±0.1Vの電圧に充電したときに、電池の体積あたりの容量が、125mAh/cm以上)を確保することが容易となる。しかし、セパレータを薄くしすぎると、取り扱い性が損なわれたり、正負極間の隔離が不十分となって短絡が生じやすくなるため、厚みの下限は10μmであることが好ましい。
非水電解液二次電池は、例えば、上記正極と上記負極とを、上記セパレータを介して積層した積層電極体としたり、更にこれを渦巻き状に巻回して巻回電極体とし、このような電極体を電池容器(外装体)に装填し、非水電解液を注入した後に電池容器を封止する工程を経て得ることができる。なお、本発明の電池では、高容量化の観点から、正極や負極を巻回電極体として用いることが好ましく、また、巻回電極体は、2周以上巻回してなるものであることがより好ましい。
電池容器(外装体)も、従来公知の非水電解液二次電池で採用されているものを用いることができる。具体的には、アルミニウム製またはステンレス製の容器(例えば、有底筒状のもの)で、電池蓋は、電池容器にレーザー溶接されるか、またはパッキングを介したクリンプシールにより密封されるものが使用できる。また、正極や負極(電極体)は、電池容器内において、ガラス製や樹脂製の絶縁体によって、容器から隔離される。
なお、電池蓋や電池容器の底には、薄肉部からなるベントを設けて、電池内圧が急激に上昇した際の安全性を確保し得る構造としてもよい。
本発明の非水電解液二次電池は、高容量で、高電圧で作動可能であり、かつ過充電時の安全性にも優れており、例えば、小型の形態としても良好な特性を有している。本発明の電池は、こうした特性を生かして、従来公知の非水電解液二次電池が用いられていた各種用途、特に高作動電圧が要求される用途や、小型の形態の電池が要求される用途に好ましく用いられる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
<正極の作製>
正極活物質であるLiCo0.99Al0.004Mg0.004Ti0.002:97.3質量%、カーボンブラック:1.5質量%、およびPVDF:1.2質量%を、適量のNMPを溶剤として十分に混合して正極合剤含有ペーストを調製した。この正極合剤含有ペーストを、厚みが15μmのアルミニウム箔の両面に塗布した。なお、塗布の際には、正極の最終厚みが120μmとなるように塗布量を調節し、また、集電体の片面の一部には正極合剤含有ペーストを塗布せずに、集電体表面が露出するようにした。その後、110±10℃で乾燥させ、プレス処理を施した後、両面塗布長の合計が683mm、幅36mmとなるようにスリットして、正極を得た。得られた正極における正極合剤層の密度は、3.92g/cmであった。
<負極の作製>
カーボン:97.8質量%、CMC:1.2質量%およびSBR:1質量%を、水を溶剤として十分に混合して負極合剤含有ペーストを調製した。この負極合剤含有ペーストを、厚みが8μmの銅箔の両面に塗布した。なお、負極合剤含有ペーストの塗布量は、乾燥後の量で10.6mg/cmとなるようにした。その後、110±10℃で乾燥させ、プレス処理を施して厚みを120μmとした後、両面塗布長の合計が698mm、幅37mmとなるようにスリットして、負極を得た。
<電池の組み立て>
厚みが0.020mmで幅が40mmのPE製微多孔膜からなるセパレータを介して、上記正極と上記負極とを重ね、正極の集電体の露出部が最外周となるように渦巻き状に6周巻回して巻回電極体とした。この巻回電極体をアルミニウム製の金属容器(電池容器)に装填し、公知の手法により正負極のそれぞれを外部端子と接続した後、電池蓋を被せて電池容器と電池蓋とをレーザー溶接し、電池蓋に設けた電解液注入口から非水電解液を注入した。非水電解液には、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートとを1:1:3(体積比)で混合した混合溶媒に、LiPFを1.2mol/lの濃度で溶解させた溶液を用いた。その後、電解液注入口を封口して、高さ43mm、幅34mm、厚み4.6mmの角形の非水電解液二次電池を得た。得られた非水電解液二次電池の(V)/(S)値は、0.1851であった。
実施例2
正極活物質を、LiCo0.9795Al0.01Mg0.01Ti0.0005に変更した以外は、実施例1と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.70g/cmであった。
実施例3
正極活物質を、LiCo0.9795Al0.015Mg0.005Ti0.0005に変更した以外は、実施例1と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.60g/cmであった。
実施例4
正極活物質を、LiCo0.99Al0.004Mg0.004Ti0.002とLiNiMnCoOとの0.9:0.1(質量比)の混合物に変更した以外は、実施例1と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.92g/cmであった。
実施例5
正極活物質を、LiCo0.9650Al0.03Ge0.005に変更した以外は、実施例1と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.89g/cmであった。
比較例1
正極活物質を、LiCo0.996Zr0.04に変更した以外は、実施例1と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.95g/cmであった。
比較例2
正極活物質を、LiCo0.99Mg0.01に変更した以外は、実施例1と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.90g/cmであった。
比較例3
正極活物質を、LiCo0.989Mg0.005Zr0.006に変更した以外は、実施例1と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.97g/cmであった。
比較例4
正極活物質を、LiCo0.962Mg0.038に変更した以外は、実施例1と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.83g/cmであった。
比較例5
正極活物質を、LiCo0.962Mg0.033Zr0.005に変更した以外は、実施例1と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.97g/cmであった。
比較例6
正極活物質を、LiCo0.972Al0.023Zr0.005に変更した以外は、実施例1と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.89g/cmであった。
比較例7
正極活物質を、LiCo0.996Zr0.04とLiNiMnCoOとの0.8:0.2(質量比)の混合物に変更した以外は、実施例1と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.85g/cmであった。
比較例8
正極活物質を、LiCo0.996Zr0.04とLiNiMnCoOとの0.5:0.5(質量比)の混合物に変更した以外は、実施例1と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.75g/cmであった。
比較例9
正極活物質を、LiCo0.996Zr0.04とLiNiMnCoOとの0.3:0.7(質量比)の混合物に変更した以外は、実施例1と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.68g/cmであった。
比較例10
正極活物質を、LiNiMnCoOに変更した以外は、実施例1と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.60g/cmであった。
比較例11
正極活物質を、LiCo0.99Al0.004Mg0.004Ti0.002とLiNiMnCoOとの0.5:0.5(質量比)の混合物に変更した以外は、実施例1と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。
比較例12
電池の形状を、高さ50mm、幅34mm、厚み4.6mmの角形に変更した以外は、実施例1と同様にして非水電解液二次電池を作製した。得られた非水電解液二次電池の(V)/(S)値は、0.1874であった。また、、正極における正極合剤層の密度は、3.92g/cmであった。
比較例13
正極活物質を、LiCo0.99Al0.004Mg0.004Ti0.002とLiNiMnCoOとの0.9:0.1(質量比)の混合物に変更した以外は、比較例12と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.90g/cmであった。
比較例14
正極活物質を、LiCo0.99Al0.004Mg0.004Ti0.002とLiNiMnCoOとの0.5:0.5(質量比)の混合物に変更した以外は、比較例12と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.73g/cmであった。
比較例15
正極活物質を、LiCo0.996Zr0.04に変更した以外は、比較例12と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.95g/cmであった。
比較例16
正極活物質を、LiCo0.996Zr0.04とLiNiMnCoOとの0.8:0.2(質量比)の混合物に変更した以外は、比較例12と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.85g/cmであった。
比較例17
正極活物質を、LiCo0.996Zr0.04とLiNiMnCoOとの0.5:0.5(質量比)の混合物に変更した以外は、比較例12と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.75g/cmであった。
比較例18
正極活物質を、LiCo0.996Zr0.04とLiNiMnCoOとの0.3:0.7(質量比)の混合物に変更した以外は、比較例12と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.68g/cmであった。
比較例19
正極活物質を、LiNiMnCoOに変更した以外は、比較例12と同様にして角形の非水電解液二次電池を作製した。なお、正極における正極合剤層の密度は、3.60g/cmであった。
実施例1〜5および比較例1〜19の非水電解液二次電池について、下記の方法により、発熱速度測定、放電容量測定、および過充電試験を行った。結果を表1に示す。
<発熱速度>
(1)各電池の製造に用いた外装缶のみを使用し、これに水を満たして外気温と水温の変化を測定することにより、電池と外気温との差に対する熱量変化を評価した。この関係の経時変化を計測することにより、外気温度と電池温度との差に対応する放熱速度を求めた。
(2)実施例1〜5または比較例1〜19の電池の見かけ比熱を、ジュワー瓶に満たした水中で、一定熱量を加えたときの温度変化を測定する通常のカロリーメーター法により測定した。
(3)各電池を0.5Aで4.4Vまで定電流充電し、続いて4.4Vで定電圧充電し(定電流定電圧充電の総充電時間を2時間30分とする)、その後4.5V〜5.0Vまで0.1V刻みで電圧を上昇させ、かつそれぞれの電圧で10分間保持し、5.0Vで10分間保持後の電流値、電圧、電池温度、外気温を測定した。
(4)上記(3)の電池温度および外気温と、上記(1)の放熱速度とから、電池の放熱速度を算出した。
(5)上記(2)の電池の見かけ比熱から、電池温度変化に対応する熱量消費を算出した。
(6)上記(3)の電流値および電圧から、外部電源から供給される熱量を算出した。
(7)上記(4)〜(6)の熱量(放熱速度、熱量消費、熱量)から10分間の電池の発熱量(正極活物質1gあたりの発熱量)を求め、これを時間(10分)で除することにより、電池を5.0Vに印加したときの発熱速度を求めた。
<放電容量>
実施例1〜5および比較例1〜19の各非水電解液二次電池について、0.5Aの電流値で4.4Vになるまで定電流充電を行い、その後、4.4Vで定電圧充電を行った。なお、定電流充電と定電圧充電の総充電時間は、2時間30分とした。その後、各電池を放電させて、3.0Vになるまでの時間から放電容量を求め、これを電池の外寸から求められる体積で除して、電池の体積あたりの放電容量を算出した。
<過充電試験>
実施例1〜5および比較例1〜19の各非水電解液二次電池について、充電電流1A、上限電圧5Vの条件で過充電を行い、2時間以内の電池の最高温度を測定した。この最高温度が100℃を超えない場合に、安全性が良好であると評価できる。この過充電の条件は、電池が用いられる機器に通常備えられている保護回路が故障した場合を想定したものである。
Figure 2008016267
表1に示す結果から以下のことが分かる。実施例1〜5の非水電解液二次電池では、放電容量が大きく、また、(V)/(S)値が0.185以下で、5Vの電圧を印加したときの発熱速度も小さいことから、過充電試験時の電池温度が低く、安全性に優れている。
また、実施例1〜3および5の電池では、正極活物質にリチウム複合酸化物(A)のみを用い、実施例4の電池では、正極活物質にリチウム複合酸化物(A)とリチウム複合酸化物(B)との混合物を用いているが、このような正極活物質の使用によって、高容量化を達成しつつ、電池の発熱速度を小さくすることが可能である。なお、比較例11は、実施例4と同様に、正極活物質にリチウム複合酸化物(A)とリチウム複合酸化物(B)との混合物を用いているが、真比重の小さなリチウム複合酸化物(B)の比率が大きいために、一定体積内に充填できる活物質量が制限されることにより、容量が小さくなっている。
比較例1〜7の電池では、正極活物質にリチウム複合酸化物(A)を用いておらず、電池の発熱速度が大きく、過充電時の安全性が劣っている。また、比較例8〜10の電池は、正極活物質として、リチウム複合酸化物(A)とは異なるリチウム複合酸化物を、リチウム複合酸化物(B)と併用した例であり、このリチウム複合酸化物(B)の使用によって、電池の発熱速度を下げることはできているが、十分な放電容量を確保できていない。
比較例12〜19の電池は、(V)/(S)値が大きすぎる例である。このうち、比較例12および比較例13の電池、(V)/(S)値が異なることを除き、それぞれ実施例1および実施例4の電池と同じ構成を有しているが、過充電試験時の電池温度が高くなった。
また、比較例14、比較例18、比較例19の電池は、リチウム複合酸化物(B)の使用によって、電池の発熱速度を下げ、過充電試験時の電池温度を低くしているが、リチウム複合酸化物(A)の比率が小さいか、またはリチウム複合酸化物(A)を使用していないため、十分な放電容量を確保できていない。更に、比較例17の電池も、リチウム複合酸化物(B)の使用によって、電池の発熱速度は下がっているものの、過充電試験時の電池温度が高く、また、十分な放電容量の確保もできていない。
この他、比較例15および比較例16の電池は、(V)/(S)値が大きすぎることに加えて、電池の発熱速度も大きすぎ、過充電試験時の電池温度が高くなった。

Claims (5)

  1. リチウム複合酸化物を正極活物質として含有する正極合剤層を有する正極を備えてなる非水電解液二次電池であって、
    4.4±0.1Vの電圧に充電したときの電池の体積あたりの電気容量が125mAh/cm以上であり、
    5.0Vの電圧を印加したときに測定される発熱速度が、正極活物質1gあたり0.2W/g以下であり、
    電池の外寸から求められる体積(V)(cm)と外表面積(S)(cm)との比(V)/(S)が、0.185以下であることを特徴とする非水電解液二次電池。
  2. 正極合剤層の密度が3.5〜3.9g/cmである請求項1に記載の非水電解液二次電池。
  3. 正極活物質として、一般式Li(1−s−α)Co(1−t−u)MgAl(ただし、Mは、Tiおよび/またはGeで、0.01<s<0.1、0.01<t+u<0.1、0<α<0.05である)で表されるリチウム複合酸化物(A)を、少なくとも含有している請求項1または2に記載の非水電解液二次電池。
  4. 正極活物質として、一般式Li(1+δ)MnNiCo(1−x−y−z)M’(ただし、M’は、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Al、Si、Ga、GeおよびSnよりなる群から選択される少なくとも1種の元素で、−0.15<δ<0.15、0.1<x≦0.5、0.6<x+y+z≦1.0、0≦z≦0.1である)で表されるリチウム複合酸化物(B)を、リチウム複合酸化物(A)と共に含有する請求項3に記載の非水電解液二次電池。
  5. リチウム複合酸化物(A)とリチウム複合酸化物(B)との合計に対するリチウム複合酸化物(A)の比率が、質量比率で0.6以上である請求項4に記載の非水電解液二次電池。
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