JP2008013750A - ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】流動性、機械的性質、耐加水分解性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる成形品に関する。
【解決手段】(A)末端カルボキシル基濃度が40eq/ton以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(B)エポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合してなるポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレ−ト複合ゴムグラフト共重合体を1〜100重量部、(C)無機充填材0〜150重量部配合してなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及びそれを用いた成形品。
【選択図】なし

Description

本発明はポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及びそれからなる成形品に関する。さらに詳しくは、特定のポリブチレンテレフタレート樹脂に、ポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレ−ト複合ゴムグラフト共重合体を配合した、流動性、機械的性質、耐加水分解性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる成形品に関する。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、機械的性質、電気的性質、その他物理的・化学的特性に優れ、かつ、加工性が良好であるがゆえに、エンジニアリングプラスチックとして自動車、電気・電子部品等の広汎な用途に使用されている。しかし、更に広い分野において展開するために、従来より熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂の耐衝撃性等の機械的性質を改善することが試みられ、その方法として多くの検討がなされてきた。その中でも、ポリアルキレンテレフタレート樹脂にアクリル系多層複合共重合体(いわゆるアクリルゴム)を配合する方法(特許文献1)、飽和ポリエステル樹脂にα−オレフィン−グリシジルメタクリレ−ト又はα−オレフィン−グリシジルメタクリレ−ト−酢酸ビニ共重合体を配合する方法(特許文献2)、熱可塑性樹脂に、ポリオルガノシロキサン系重合体にエポキシ含有ビニルモノマーと他のビニルモノマーをグラフト重合して得られるグラフト共重合体を配合する方法(特許文献3)等は比較的優れた方法である。
しかし、特許文献1の方法で得られた樹脂組成物は、耐衝撃性が未だ不十分であり、耐加水分解性も低下する傾向にあった。特許文献2の方法で得られた樹脂組成物は、室温付近での耐衝撃性は優れているものの、0℃以下の低温では衝撃強度の向上が十分でなく、また流動性が低下するため、大型成形品又は薄肉成形品に於いては、成形トラブルが発生しやすいという問題があった。また、特許文献3の方法で得られた樹脂組成物は、衝撃強度の向上が不十分で、成形品の外観も低下する問題をも有している。
上記のような問題を解決できるポリエステル樹脂組成物として、例えば、特許文献4には、熱可塑性ポリエステル樹脂に、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムに、エポキシ基含有ビニル系単量体又はエポキシ基含有ビニル系単量体を含有するビニル系単量体混合物をグラフト重合してなるポリオルガノシロキサン系グラフト共重合体を配合する方法が記載されている。しかし、該樹脂組成物は、該グラフト共重合体中に含まれるエポキシ基が、ポリエステル樹脂と化学結合性を有するため、鎖延長作用により樹脂組成物全体の流動性を低下させる傾向にあり、特許文献4の技術を用いても薄肉成形等の高い流動性を要求される用途には不向きであった。
特許文献4における課題を解決するために、特許文献5では、複合ゴムの重量平均粒子径が0.2〜1.0μmであって、かつ、該グラフト共重合体中に占めるエポキシ基含有ビニル系単量体成分の比率が0.1〜10重量%であることを特徴とするポリオルガノシロキサン系グラフト共重合体を使用することにより、流動性を改善できることが提案されている。
一方、最近の自動車分野においては、環境対策の一環としての燃費向上目的で、車両搭載部品の軽量化が求められており、樹脂部品の薄肉化、軽量化が進行し、材料としては、薄肉部品に対応できる流動性が重要視されるようになってきた。また、部品の品質の面では、耐衝撃強度等の機械的性質や、耐加水分解性等の湿熱安定性のさらなる向上がより強く求められており、この様な薄肉化に対応する流動性や製品の品質の観点でみると、特許文献5に記載の技術も未だ十分ではなかった。
特開昭52−150466号公報 特公昭58−47419号公報 特開平2−138360号公報 特開平5−5055号公報 特開2003−277450号公報
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであり、その目的は、優れた流動性、機械的性質、耐加水分解性の全てを同時に発現することができる、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及びそれからなる成形品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の末端カルボキシル基濃度のポリブチレンテレフタレート樹脂、さらに好ましくは、特定の触媒を用いて重合されたポリブチレンテレフタレート樹脂に、エポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合してなるポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレ−ト複合ゴムグラフト共重合体を配合することにより、本発明の目的を達成できることを見出した。
すなわち、本発明の第1の発明の要旨は、
(A)末端カルボキシル基濃度が40eq/ton以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(B)エポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合してなるポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレ−ト複合ゴムグラフト共重合体を1〜100重量部、(C)無機充填材を0〜150重量部配合してなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物にある。
次に、本発明の第2の発明の要旨は、
第1の発明に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品にある。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、流動性に優れているため、大型成形や薄肉成形においても成形トラブルが少ない。さらに、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品は、耐衝撃性等の機械的性質や、耐加水分解性に優れているので、成形品の破損等の懸念が著しく改善され、品質、信頼性が高く、その商品価値が高まる。そのため、本発明の樹脂組成物は、電気・電子機器分野、自動車分野、精密機械分野、医療分野等、幅広い分野の樹脂成形体に好適であり、特に、ランスやロック機構部等を有するコネクター用途に最適である。
以下、本発明を詳細に説明する。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂:
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、「PBT樹脂」と略記することがある)とは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分として1,4−ブタンジオールがエステル結合した構造を有し、ジカルボン酸成分の50モル%以上がテレフタル酸から成り、ジオール成分の50モル%以上が1,4−ブタンジオールから成る高分子を言う。全ジカルボン酸成分中のテレフタル酸成分の割合は、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、最適には98%以上であり、全ジオール成分中の1,4-ブタンジオール成分の割合は、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、最適には98モル%以上である。テレフタル酸成分が全ジカルボン酸成分の50モル%より少ない場合又は1,4−ブタンジオール成分が全ジオール成分の50モル%より少ない場合は、PBT樹脂の結晶化速度が低下し、成形性の悪化を招く場合がある。
本発明において、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分には特に制限はなく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができる。これらのジカルボン酸成分は、ジカルボン酸として、又は、ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸ハライド等のジカルボン酸誘導体として、ポリマー骨格に導入できる。これらテレフタル酸以外のジカルボン酸成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明において、1,4−ブタンジオール以外のジオール成分には特に制限はなく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ジブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオール等を挙げることができる。これら1,4−ブタンジオール以外のジオール成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、さらに、乳酸、グリコール酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能成分等を共重合成分として使用することができる
本発明の(A)PBT樹脂の末端カルボキシル基濃度は、40eq/ton以下であることが必要であり、好ましくは2〜35eq/ton、さらに好ましくは5〜30eq/tonである。末端カルボキシル基濃度が40eq/tonを超えると耐加水分解性、流動性が悪化する傾向にある。なお、本発明における末端カルボキシル基濃度の測定は、ポリブチレンテレフタレート樹脂0.5gをベンジルアルコール25mlに溶解し、水酸化ナトリウム濃度が0.01モル/Lのベンジルアルコール溶液を使用して滴定することにより求めた値であり、10g当たりのカルボキシル基当量である。
末端カルボキシル基濃度を調整する方法としては、例えば、重合時の原料仕込み比、重合触媒種と量、重合温度、減圧方法等の重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法など、任意の方法を適用することができるが、本発明においては、段落番号[0030]〜[0043]で詳説するが、重合条件を調整する方法を採用することが好ましい。
重合方法としては、例えば、ジカルボン酸を主原料とする直接重合法、エステル化反応及び重縮合反応を連続的に行う連続法を用いることが好ましい。原料であるテレフタル酸と1,4−ブタンジオールの仕込み比としては、テレフタル酸1モルに対し1,4−ブタンジオールが1.1〜5.0モルの範囲であることが好ましく、1.5〜4.5モルの範囲であることがより好ましい。
重合触媒を用いる場合は、(a)チタン化合物及び(b)1族金属化合物及び/又は2族金属化合物を選択することが好ましい。(a)チタン化合物としては、例えば、段落番号[0021]に記載の化合物を、(b)1族金属化合物及び/又は2族金属化合物としては、例えば、段落番号[0022]に記載のような化合物、特にマグネシウム化合物を用いることが好ましい。これらの重合触媒は、水、1,4−ブタンジオール等の溶液として供給し、供給量としては、PBT樹脂の理論収量当たり、各々の金属原子換算で(a)成分が好ましくは80ppm以下、より好ましくは70ppm以下、(b)成分が好ましくは50ppm以下、より好ましくは40ppm以下である。
エステル化反応において反応温度を調整する場合は、好ましくは180〜260℃、より好ましくは200〜245℃、さらに好ましくは210〜235℃に調整する。圧力を調整する場合は、好ましくは10〜133kPa、より好ましくは13〜101kPa、さらに好ましくは60〜90kPaに調整する。反応は、好ましくは0.5〜10時間、より好ましくは1〜6時間連続的に行うことが好ましい。
重縮合反応において反応温度を調整する場合は、好ましくは210〜280℃、より好ましくは220〜250℃、さらに好ましくは230〜245℃に調整する。圧力を調整する場合は、好ましくは27kPa以下、より好ましくは20kPa以下、さらに好ましくは13kPaに減圧する。反応は、好ましくは1〜12時間、より好ましくは3〜10時間行うことが好ましい。
上記、好適な重合条件のいずれかを調整することにより、又は、これら好適な範囲内の2以上の条件を組み合わせることにより、PBT樹脂の末端カルボキシル基濃度を40eq/ton以下にすることがより容易となる。
本発明の(A)PBT樹脂の固有粘度は特に制限はないが、1,1,2,2−テトラクロロエタン/フェノール=1/1(重量比)の混合溶媒を用いて、温度30℃で測定した値として、0.70〜3.0dL/gであることが好ましく、0.80〜1.5dL/gがより好ましく、0.80〜1.2dL/gであることが特に好ましい。固有粘度が0.70dL/gより小さいと良好な機械的性質が発揮できなかったり、3.0dL/gより大きいと成形加工が困難になったりする場合がある。また、2種類以上の固有粘度のPBT樹脂を併用し、上記固有粘度範囲内としてもよい。
本発明に用いる(A)PBT樹脂は、1,4−ブタンジオールとテレフタル酸(又はテレフタル酸ジアルキル)とのエステル化反応(又はエステル交換反応)で得られたオリゴマーを重縮合したものである。この重縮合の際に用いる触媒(重縮合触媒)としては、種々の公知の触媒を使用することが可能であるが、中でも、(a)チタン化合物と、(b)1族金属化合物及び/又は2族金属化合物を用いることが好ましい。これら(a)及び(b)の重縮合触媒は、他の触媒に比べ、重合時の原料混合物中での分散性に優れているため、PBT樹脂の重合をより効果的に進めることができる。
これらの重縮合触媒の使用時期は任意であり、その使用時期として、例えば、以下の(1)〜(4)等の方法が挙げられる。尚、以下、(a)チタン化合物を「チタン触媒」、(b)1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の1族金属化合物、2族金属化合物を、各々、「1族金属触媒」、「2族金属触媒」と言うことがある。
(1)エステル化反応(又はエステル交換反応)時に(a)及び(b)成分の両方を使用し、重縮合反応に持ち込む方法。
(2)エステル化反応(又はエステル交換反応)時に(a)及び(b)成分の両方を一部使用し、重縮合反応開始時又は重縮合反応の途中に残りの両成分を使用する方法。
(3)エステル化反応(又はエステル交換反応)時では(a)又は(b)成分のどちらか一方の触媒を使用し、重縮合反応開始時又は重縮合反応の途中に他方を使用する方法。
(4)エステル化反応(又はエステル交換反応)時では(a)及び(b)成分のどちらも使用せず、重縮合反応開始時に両成分を使用する方法。
本発明に用いる(a)チタン化合物としては特に制限はなく、具体的には、例えば、酸化チタン、四塩化チタン等の無機チタン化合物類、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート類、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート類等が挙げられる。中でも、チタンアルコラート類が好ましく、さらにはテトラアルキルチタネート類が好ましく、特にテトラブチルチタネートが好ましい。
本発明に用いる(b)1族金属化合物及び/又は2族金属化合物としては特に制限はなく、具体的には、例えば、1族金属化合物としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの水酸化物類、酸化物類、アルコラート類、有機酸塩類(酢酸塩、リン酸塩、炭酸塩等)等の各種化合物が挙げられ、これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また2族金属化合物としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの水酸化物類、酸化物類、アルコラート類、有機酸塩類(酢酸塩、リン酸塩、炭酸塩等)等の各種化合物が挙げられ、これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
中でも、取り扱いや入手の容易さ、触媒効果の点から、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の化合物が好ましく、さらには触媒効果と色調に優れる、リチウム又はマグネシウムの化合物が好ましく、特にマグネシウム化合物が好ましい。マグネシウム化合物としては、具体的には、例えば、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム等が挙げられる。中でも有機酸塩類が好ましく、特に酢酸マグネシウムが好ましい。
本発明に用いる(A)PBT樹脂は、(a)チタン化合物が残存する場合、その残存量は少ないことが好ましい。(a)チタン化合物は、チタン原子換算で80ppm以下であることが好ましく、70ppm以下、中でも60ppm以下、さらには50ppm以下、特に40ppm以下であることが好ましい。チタン化合物の残存量が多過ぎると、PBT樹脂の色調や耐加水分解性が低下したり、溶液ヘイズや異物が増加する場合がある。
本発明に用いる(A)PBT樹脂は、(b)1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が残存する場合、その残存量は少ないことが好ましい。(b)1族金属化合物及び/又は2族金属化合物は、各々の金属原子換算で、50ppm以下であることが好ましく、40ppm以下、中でも30ppm以下、さらには20ppm以下、特に15ppm以下であることが好ましい。この1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の残存量が多過ぎると、本発明のPBT樹脂組成物の成形性や、得られる樹脂成形品の耐加水分解性が低下する場合がある。
チタン原子等の金属含有量は、湿式灰化などの方法でポリマー中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光、Inductively Coupled Plasma(ICP)等の方法を使用して測定することができる。
本発明に用いる(A)PBTの重縮合触媒としては、上述したような(a)チタン化合
物や(b)1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が挙げられるが、その他の重縮合触
媒として、例えば、スズやスズ化合物を使用してもよい。スズは通常、スズ化合物として
使用され、具体的には、例えば、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイ
ド、テトラエチルスズオキサイド、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸等が挙げられる。
該スズやスズ化合物はPBT樹脂の色調を悪化させる場合があるため、本発明に用いるPBT樹脂中におけるスズやスズ化合物の残存量は低い方が好ましく、残存しないことがより好ましい。具体的には、通常、スズ化合物の残存量が、スズ原子換算で200ppm以下、中でも100ppm以下、さらには10ppm以下であることが好ましい。
また本発明に用いる(A)PBT樹脂の製造においては、先述のチタン触媒や、1族金属触媒、2族金属触媒の他に、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、マンガン化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、コバルト化合物、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸等や、これらのエステル化合物や金属塩等の燐化合物などの反応助剤を用いてもよい。
次に、本発明に用いる(A)PBT樹脂の製造方法について説明する。
本発明に用いる(A)PBT樹脂の製造方法は任意であり、一般的には、使用する原料によって、ジカルボン酸を主原料とする方法(直接重合法)と、ジカルボン酸ジアルキルエステルを主原料とする方法(エステル交換法)とがある。前者は初期のエステル化反応で主に水が生成し、後者は初期のエステル交換反応で主にアルコールが生成するという違いがある。
また、本発明に用いる(A)PBT樹脂の製造方法は、一般的に、原料供給または生成ポリマーであるポリブチレンテレフタレート樹脂の抜き出し形態(反応槽等から生成(溶融)ポリマーを抜き出す方法)により、回分法と連続法に大別される。初期のエステル化反応またはエステル交換反応を連続操作で行い、それに続く重縮合反応を回分操作で行う方法や、初期のエステル化反応またはエステル交換反応を回分操作で行い、それに続く重縮合反応を連続操作で行う方法等が知られている。
本発明に用いる(A)PBT樹脂の製造方法としては、原料原単位の優位性、副生成物の処理の容易さ等から、直接重合法を用いることが好ましく、また、得られる(A)PBT樹脂の品質安定性や、製造に係るエネルギー効率の面から、エステル化反応及び重縮合反応を連続的に行う、いわゆる連続法を用いることが好ましい。
本発明に用いる(A)PBT樹脂の製造に際して用いる、先述の1族金属触媒及び/又は2族金属触媒は、エステル化反応槽またはエステル交換反応槽に供給することができるが、その供給位置に特に制限はなく、これら反応槽の反応液気相部から反応液上面へ供給してもよいし、反応液液相部に直接供給してもよい。また、この場合、原料であるテレフタル酸や、チタン触媒と共に供給してもよいし、独立して供給してもよい。中でも、触媒の安定性の観点から、テレフタル酸やチタン触媒とは独立して、且つ、反応液気相部から反応液上面に供給することが好ましい。
(b)1族金属触媒及び/又は2族金属触媒の供給方法としては、例えば、1族金属触媒及び/又は2族触媒が常温で固体の場合には、固体のまま反応液へ供給することもできるが、供給量を安定化させ、熱による変性などの悪影響を軽減するためには、水、1,4−ブタンジオール等の溶媒に溶解し、溶液として供給することが好ましい。この溶液中の1族金属触媒及び/又は2属金属触媒の濃度は、通常0.01重量%以上、中でも0.05重量%以上、特に0.08重量%以上であることが好ましく、その上限は20重量%以下、中でも10重量%以下、特に8重量%以下であることが好ましい。
また、1族金属触媒及び/又は2族金属触媒は、エステル化反応槽またはエステル交換反応槽に続く重縮合反応槽や、それに付帯したオリゴマー配管に添加してもよい。この場合の添加方法も、供給量を安定化させ、熱による変性などの悪影響を軽減するために、水、1,4−ブタンジオール等の溶媒や、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の共重合成分に溶解し、溶液として供給することが好ましく、この際の濃度は、上述の溶液濃度と同様である。
本発明に用いる(A)PBT樹脂の製造方法の具体例として、例えば、直接重合法を用いる連続エステル化法の場合には、以下の様な方法により行えばよい。原料であるテレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、原料混合槽で混合してスラリーとし、単数または複数のエステル化反応槽内で、好ましくはチタン触媒と1族金属触媒及び/又は2族金属触媒との存在下に、通常、温度条件として180〜260℃、好ましくは200〜245℃、さらに好ましくは210〜235℃の条件下、圧力(絶対圧力を示す。以下、同様である。)条件として、通常、10〜133kPa、好ましくは13〜101kPa、さらに好ましくは60〜90kPaの圧力下で、通常0.5〜10時間、好ましくは1〜6時間、連続的にエステル化反応させる。
エステル化反応槽又はエステル交換反応槽としては、従来公知の任意のものを使用でき
る。具体的には例えば、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽等が挙げられる。これらは単数槽としても、また、同種又は異種の反応槽を直列または並列させた複数反応槽として用いてもよい。中でも攪拌装置を有する反応槽を用いることが好ましく、攪拌装置としては、動力部、軸受、軸、攪拌翼等を含む通常の攪拌装置の他、タービンステーター型高速回転式攪拌機や、ディスクミル型攪拌機、ローターミル型攪拌機等の高速回転が可能なものを用いてもよい。
次に、得られたエステル化反応生成物(又はエステル交換反応生成物)としてのオリゴマーを重縮合反応槽に移送する。このオリゴマーのエステル化率は任意だが、通常90%以上、好ましくは95%以上であり、また数平均分子量は通常300〜3000、好ましくは500〜1500である。
重縮合反応槽の形態は任意であり、例えば、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽などが挙げられ、またこれらを組み合わせて用いてもよい。中でも、少なくとも1つの重縮合反応槽においては攪拌装置を有することが好ましく、攪拌装置としては上述したエステル化反応層と同様のものを使用することができる。
攪拌の形態は、特に制限されず、反応槽中の反応液を反応槽の上部、下部、横部等から直接攪拌する通常の攪拌方法の他、配管などで反応液の一部を反応器の外部に持ち出してラインミキサー等で攪拌し、反応液を循環させる方法も用いてもよく、さらには、水平方向に回転軸を有する表面更新とセルフクリーニング性に優れた横型の反応器を用いてもよい。
重縮合反応は、チタン触媒と、1族金属触媒及び/又は2族金属触媒との存在下に行うことが好ましい。反応温度は、通常210〜280℃、中でも220〜250℃、特に230〜245℃の範囲で行うことが好ましい。例えば、複数の反応槽を用いる場合には、そのうちの少なくとも一つの反応槽の温度を230〜240℃とすることが好ましい。また、反応は攪拌条件下にて行うことが好ましい。重縮合反応時間は、通常1〜12時間、好ましくは3〜10時間である。また、反応雰囲気の圧力条件は、通常27kPa以下、中でも20kPa以下、特に13kPa以下の減圧状態で行うことが好ましい。例えば、複数の反応槽を用いる場合には、生成物の着色や劣化を抑えるため、そのうちの少なくとも一つの反応槽内の圧力を、通常1.3kPa以下、中でも0.5kPa以下、特に0.3kPa以下の高真空下とすることが好ましい。
重縮合反応により得られたポリマーは、通常、重縮合反応槽の底部からポリマー抜き出しダイに移送されてストランド状に抜き出され、水冷されながら又は水冷後、カッターで切断され、ペレット状、チップ状などの粒状体とされる。
さらに、(A)PBT樹脂の重縮合反応工程は、一旦、溶融重縮合で比較的分子量の小さい、例えば、固有粘度0.1〜0.9dL/g程度のPBT樹脂を製造した後、引き続き、PBT樹脂の融点以下の温度で固相重縮合(固相重合)させてもよい。
(B)エポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合してなるポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレ−ト複合ゴムグラフト共重合体(以下、「グラフト共重合体」と略記することがある)
本発明で用いるグラフト共重合体はポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレ−トゴムとからなる複合ゴムに、エポキシ基含有ビニル系単量体又はエポキシ基含有ビニル系単量体を含有するビニル系単量体混合物を該複合ゴムにグラフト重合してなるものであり、その製造方法は、例えば、特許文献4及び5に詳説されている。
本発明に用いるポリオルガノシロキサンゴムは、オルガノシロキサンとポリオルガノシロキサンゴム用架橋剤及び所望によりポリオルガノシロキサンゴム用グラフト交叉剤を乳化重合し、微粒子として得たものを用いることができる。
ポリオルガノシロキサンゴムの調製に用いられるオルガノシロキサンとしては、3員環以上の環状オルガノシロキサンが用いられ、3〜6員環のものが好ましく用いられる。このような環状オルガノシロキサンの例としては、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等を挙げることができ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ポリオルガノシロキサンゴム用架橋剤及びポリオルガノシロキサンゴム用グラフト交叉剤としては、例えば、特許文献4及び5に記載のものを使用することができる。
本発明に用いるポリアルキル(メタ)アクリレートゴムは、以下に示すアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム用架橋剤及びポリアルキル(メタ)アクリレートゴム用グラフト交叉剤からなるアクリルゴム原料混合物を共重合することにより得られる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート及び、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート等のアルキルメタクリレート等が挙げられ、これらは単独でも混合しても使用することができる。これらの中でもn−ブチルアクリレートは特に好ましい。
ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム用架橋剤及びポリアルキル(メタ)アクリレートゴム用グラフト交叉剤としては、例えば、特許文献4及び5に記載のものを使用することができる。
本発明に用いる複合ゴムは、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなるものであり、前述したポリオルガノシロキサンゴムラテックス存在下で、前記アクリルゴム原料混合物を乳化重合して得ることができる。アルキル(メタ)アクリレート、架橋剤及びグラフト交叉剤からなるアクリルゴム原料混合物は、一括してポリオルガノシロキサンゴムラテックスへ添加してもよく、連続的に滴下しても良い。重合の進行とともにポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分がポリオルガノシロキサンゴム成分と両者の界面において相互に絡み合った架橋網目を形成し、グラフト交叉剤の存在によりポリオルガノシロキサンゴム成分へのポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分のグラフトも生じて、実質上相互に分離できない複合ゴムラテックスが得られる。
本発明に用いられる複合ゴムの組成としては、ポリオルガノシロキサンゴム成分が1〜99重量%、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分が99〜1重量%(ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分との合計量が100重量%)であるものが好ましく、ポリオルガノシロキサンゴム成分が5〜95重量%、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分が95〜5重量%であることがさらに好ましい。ポリオルガノシロキサンゴム成分が99重量%を越えると、得られる樹脂組成物の表面外観が低下する傾向にあり、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分が99重量%を越えると、得られる樹脂組成物の耐衝撃性が低下する傾向にある。
本発明に用いる複合ゴムの重量平均粒子径は0.2〜1.0μmの範囲にあることが好ましく、0.3〜0.7μmの範囲がより好ましい。重量平均粒子径は、例えば、ラテックスを蒸留水で固形分濃度約3%に希釈したもの0.1mlを測定用試料とし、米国MATEC社製CHDF2000型粒度分布計により、流速1.4ml/min、圧力約2.76MPa(約4000psi)、温度35℃の条件下で、粒子分離用キャピラリー式カートリッジ及びキャリア液を用いて測定することができる。粒子径の検量線は、例えば、米国DUKE社製の粒子径既知の単分散ポリスチレンを標準粒子径物質として、0.02〜1.0μmの合計13点の粒子径を測定して作成することができる。重量平均粒子径が0.2μm未満では、熱可塑性樹脂に配合した際のゴムの総表面積が増大するために、耐衝撃性向上に必要なエポキシ基の量が増加し、樹脂組成物の流動性が低下する傾向にある。一方、重量平均粒子径が1.0μmを超えると、十分な耐衝撃性の改善に必要なゴム配合量が増える傾向にある。
本発明においては、前述した複合ゴムに、エポキシ基含有ビニル系単量体又はエポキシ基含有ビニル系単量体を含有するビニル系単量体混合物をグラフト重合する。本発明に用いるエポキシ基含有ビニル系単量体としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、グリシジルイタコネート等が挙げられ、これらの中でもグリシジルメタクリレ−トの使用がより好ましい。これらは単独で用いても2種以上組み合わせて用いても良い。グラフト共重合体全体に占めるエポキシ基含有ビニル系単量体成分の比率は、0.1〜10重量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜8重量%の範囲がより好ましい。0.1重量%未満ではグラフト共重合体の耐衝撃性が低下する傾向にあり、10重量%を超えると流動性が低下する傾向にある。
また、ビニル系単量体混合物に含有されるエポキシ基含有ビニル系単量体以外のビニル系単量体としては、エポキシ基含有ビニル系単量体と同様の条件でラジカル重合できるものであれば特に制限なく、目的に応じて適切な単量体を選択して使用することができる。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド等のマレイミド誘導体、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の窒素含有単量体、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系単量体、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体などが挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
グラフト共重合体において、グラフトされたエポキシ基含有ビニル系単量体又はエポキシ基含有ビニル系単量体を含有するビニル系単量体混合物の量は、グラフト共重合体の重量を100重量%としたときに5〜50重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。グラフト共重合体は、前述した複合ゴムラテックス存在下で、エポキシ基含有ビニル系単量体又はエポキシ基含有ビニル系単量体を含有するビニル系単量体混合物を、一段又は多段で乳化グラフト重合することにより得ることができる。なお、グラフト重合においては、グラフト共重合体の枝にあたる成分(ここではエポキシ基含有ビニル系単量体を含むビニル系単量体に由来する成分)が幹成分(ここでは複合ゴム)にグラフトせずに、枝成分だけで重合して得られる所謂フリ−ポリマ−も副生し、グラフト共重合体とフリ−ポリマ−の混合物として得られるが、本発明においてはこの両者を合わせてグラフト共重合体という。
グラフト共重合体の配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜80重量部、より好ましくは5〜60重量部である。配合量が1重量部未満であると、耐衝撃性の改良効果が発揮されず、100重量部より多いと、弾性率及び耐熱性が低下する。
(C)無機充填材:
本発明の樹脂組成物には、樹脂組成物の剛性等の機械的性質向上を主目的に、無機充填材を配合してもよい。無機充填材は、特に定めるものではなく、通常樹脂用として知られている充填材のいずれも使用可能であり、使用目的に応じ種類を選定すればよい。本発明において使用可能な無機充填材としては、例えば、繊維状、板状、粒状の無機充填材及びこれらの混合物が挙げられる。
繊維状の無機充填材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、シリカアルミナ繊維、ジルコニア繊維、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、鉱物繊維、金属繊維、セラミックスウィスカー等の無機繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維等の有機繊維等が挙げられる。
板状の無機充填材としては、例えば、ガラスフレーク、マイカ(雲母)、タルク、黒鉛、セリサイト、金属箔等が挙げられる。
粒状の無機充填材としては、例えば、セラミックスビーズ、クレー、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、ゼオライト、カオリン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
これら無機充填材の選定の基準は製品に必要とされる特性によるが、剛性等の機械的性質改善の目的には繊維状の無機充填材、特にガラス繊維が選定され、成形品の異方性及びソリの低減が重要な場合は板状の無機充填材、特にマイカが選ばれる。また、粒状の無機充填材としては、成形時の流動性も加味し、樹脂組成物の機械的性質、流動性等の全体的なバランスを考慮し最適なものが選ばれる。
本発明においては、これらの無機充填材の中で繊維状のものが好ましく用いられる。
(C)無機充填材の形状が繊維状である場合、その平均繊維径は6〜15μmが一般的である。このような繊維径のものを採用することにより、機械的性質をより優れたものとすることができる。また、平均繊維長は、特に制限されないが、0.1〜20mmが好ましく、1〜10mmがより好ましい。平均繊維長を0.1mm以上とすることにより、繊維状充填材による補強効果がより効果的に発現され、平均繊維長を20mm以下とすることにより、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂との溶融混練や強化ポリエステル樹脂組成物の成形がより容易になる。
さらに、本発明で用いる(C)無機充填材は、ポリブチレンテレフタレート樹脂と無機充填材の親和性を増し界面密着性を向上させるため、表面処理されているものが好ましい。表面処理には、例えば、集束剤(例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル等)、カップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ボロン系カップリング剤等)、及び/又はエポキシ樹脂等のその他の表面処理剤を使用することができる。本発明においては、シラン系カップリング剤及び/又はエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
シラン系カップリング剤としては、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系のものが挙げられる。これらの中では、アミノシラン系が好ましい。アミノシラン系カップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい例として挙げられる。表面処理剤中のシラン系カップリング剤の含有量は0.1〜8重量%が好ましく、0.5〜5重量%がより好ましい。
エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂およびクレゾールノボラック型のエポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂が好ましい。表面処理剤中のエポキシ樹脂の含有量は1〜20重量%が好ましく、2〜10重量%がより好ましい。
本発明においては、表面処理剤に含有される成分として、アミノシラン系カップリング剤とノボラック型エポキシ樹脂の組み合わせが特に好ましい。表面処理剤をこのような構成とすることにより、アミノシラン系カップリング剤の無機官能基は(C)無機充填材表面と、アミノシラン系カップリング剤の有機官能基はエポキシ樹脂のグリシジル基と、エポキシ樹脂のグリシジル基は(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂とそれぞれ反応性に富み、(C)無機充填材と(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂との界面密着力が向上する。この結果、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の機械的性質及び耐加水分解性をより向上させることができる。
(C)無機充填材に用いられる表面処理剤には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、その他の成分、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、帯電防止剤、潤滑剤および撥水剤などを含めることができる。
表面処理剤での処理方法としては、例えば、特開2001−172055号公報、特開昭53−106749号公報等に記載の方法のように、表面処理剤により予め表面処理しておくこともできるし、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物調製の際に、未処理の(C)無機充填材とは別に表面処理剤を添加して表面処理することもできる。(C)無機充填材に対する処理剤の付着量は、0.01〜5重量%が好ましく、0.05〜2重量%がさらに好ましい。0.01重量%以上とすることにより、機械的強度がより効果的に改善される傾向にあり、5重量%以下とすることにより、必要十分な効果が得られ、経済的である。
本発明における(C)無機充填材の材質としてはガラスが好ましい。具体的には、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラス粉末である。また、本発明で採用するガラスは、機械的強度、剛性付与の観点からガラス繊維が好ましく、長繊維タイプ(ロービング)のものや短繊維タイプ(チョップドストランド)のものがより好ましく用いられる。
(C)無機充填材の配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して0〜150重量部であり、本発明において必須成分ではないが、配合する場合、例えば、剛性または寸法安定性が必要とされる場合には、5〜100重量部が好ましく、5〜70重量部がより好ましい。配合量を150重量部以下とすることにより、成形品表面への無機充填材の浮きをより抑えやすい傾向にあり好ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、本発明の樹脂組成物の特性を阻害しない範囲で、周知の種々の添加剤を配合してもよい。他の添加剤としては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸及びそのエステル、シリコンオイル等の離型剤、ヒンダードフェノール系、亜燐酸エステル系、硫黄含有エステル化合物系等の熱安定剤、ハロゲン系、リン系、窒素系、アンチモン系等の公知の難燃剤、紫外線吸収剤あるいは耐候性付与剤、染料、顔料、発泡剤、帯電防止剤等が挙げられる。これらの添加剤は、(A)PBT樹脂の重合途中に添加してもよいし、重合後、樹脂組成物の調製の際に添加してもよい。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の一部として、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂以外のポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ABS、AS、MS樹脂等のスチレン系樹脂、各種アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂や、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂を配合しても良い。これらの熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
これらの樹脂の配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂中の50重量%以下であることが好ましく、45重量%以下であることがさらに好ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、特に限定されないが、例えば、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)グラフト共重合体、並びに必要に応じて用いられる各種添加剤成分を配合し、溶融混練することによって製造することができる。これらの各成分は溶融混練の前に予め混合しておくことが好ましい。予め混合する場合は、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、ドラムブレンダー等を用いて混合することが好ましい。溶融混練には、ベント口から脱揮できる設備を有する1軸又は2軸の押出機、ブラベンダープラストグラフ、ラボプラストミル、ニーダー、バンバリーミキサー等が使われる。溶融混練に際しての加熱温度は、通常230〜290℃であり、混練時の分解を抑制する為、前記の熱安定剤を配合しておくことが好ましい。(A)成分、(B)成分、及び必要に応じて用いられる他の成分は、混練機に一括して供給してもよいし、(A)成分及び(B)成分の樹脂成分に他の配合成分を順次供給してもよい。また、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合、混練しペレットとした後、残りの成分と溶融混練して本発明の樹脂組成物ペレットを製造してもよい。具体的には、例えば、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の一部に所定の配合比率より多い(B)グラフト重合体を練り込んだマスターペレットを予め調整し、これを残りの配合成分と溶融混合押出して所定の配合比率とすることによっても、本発明における樹脂組成物を得ることができる。また、ガラス繊維等の繊維状無機充填材を配合する際は、押出機の途中から樹脂が溶融した後に添加することにより、破砕を避け、より高い機械的特性を発揮させることができる。
本発明の樹脂組成物を用いた成形品の製造方法は、既知の種々の成形方法、例えば、射出成形、中空成形、押出成形、圧縮成形、カレンダー成形、回転成形等の成形法を適用することができ、特に好ましい成形方法は、流動性の良さから、射出成形である。射出成形に当たっては、樹脂温度を240〜280℃にコントロールするのが好ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、流動性、耐衝撃性、耐加水分解性に優れているので、電気・電子機器分野、自動車分野、精密機械分野、医療分野等、幅広い分野の樹脂成形体、特に、ランスやロック機構部等を有するコネクター用途に好適である。また、本発明の樹脂組成物は、優れた流動性を有しているため、上述の部品の中でも、特に薄肉である部品用途に最適である。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
<実施例、比較例に使用した成分>
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂:
下記の製造例に従って製造した。
(A−1):
図1に示すエステル化工程と、図2に示す重縮合工程を用い、以下の方法によりPBT樹脂を製造した。
先ず、テレフタル酸1.00モルに対して、1,4−ブタンジオール1.80モルの割合で混合した60℃のスラリーを、スラリー調製槽から原料供給ライン1を通じ、予め、エステル化率99%のPBTオリゴマーを充填したスクリュー型攪拌機を有するエステル化のための反応槽Aに、40kg/hとなる様に連続的に供給した。同時に、再循環ライン2から185℃の精留塔Cの塔底成分(98重量%以上が1,4−ブタンジオール)を18.4kg/hで供給し、チタン触媒供給ライン3から触媒として65℃のテトラブチルチタネートの6.0重量%1,4−ブタンジオール溶液を132g/hで供給した(理論ポリマー収量に対し40ppm)。この触媒溶液中の水分は0.2重量%であった。2族金属触媒供給ライン15から触媒として65℃の酢酸マグネシウム・4水塩の6.0重量%1,4−ブタンジオール溶液を41g/hで供給した(理論ポリマー収量に対し10ppm)。この触媒溶液中の水分は10.0重量%であった。
反応槽Aの内温は230℃、圧力は78kPaとし、生成する水とテトラヒドロフラン及び余剰の1,4−ブタンジオールを、留出ライン5から留出させ、精留塔Cで高沸成分と低沸成分とに分離した。系が安定した後の塔底の高沸成分は、98重量%以上が1,4−ブタンジオールであり、精留塔Cの液面が一定になる様に、抜出ライン8を通じてその一部を外部に抜き出した。一方、低沸成分は塔頂よりガスの形態で抜き出し、コンデンサGで凝縮させ、タンクFの液面が一定になる様に、抜出ライン13より外部に抜き出した。
反応槽Aで生成したオリゴマーの一定量は、ポンプBを使用し、抜出ライン4から抜き出し、反応槽A内液の平均滞留時間が180分になる様に液面を制御した。抜出ライン4から抜き出したオリゴマーは、図2に示す第1重縮合反応槽aに連続的に供給した。系が安定した後、反応槽Aの出口で採取したオリゴマーのエステル化率は96.5%であった。
第1重縮合反応槽aの内温は246℃、圧力2.4kPaとし、滞留時間が120分になる様に液面制御を行った。減圧機(図示せず)に接続されたベントラインL2から、水、テトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、初期重縮合反応を行った。抜き出した反応液は第2重縮合反応槽dに連続的に供給した。
第2重縮合反応槽dの内温は239℃、圧力150Paとし、滞留時間が130分になる様に液面制御を行い、減圧機(図示せず)に接続されたベントラインL4から、水、テトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、さらに重縮合反応を進めた。得られたポリマーは、抜出用ギヤポンプeにより抜出ラインL3を経由し、第3重縮合反応槽kに連続的に供給した。第3重縮合反応槽kの内温は238℃、圧力は130Pa、滞留時間は70分とし、さらに重縮合反応を進めた。得られたポリマーはダイスヘッドgからストランド状に連続的に抜き出し、回転式カッターhでカッティングした。得られたPBT樹脂の分析値は表1に記した。
(A−2):
(A−1)において、ポリマー中のチタン及びマグネシウム含有量が表1の通りとなる様にテトラブチルチタネート及び酢酸マグネシウム・4水塩の供給量を調節し、第2重縮合反応槽dの内温は238℃、圧力200Pa、滞留時間を140分にし、得られたポリマーを抜き出しラインL3を経由し、ダイヘッドgからストランド状に連続的に抜き出し、回転式カッターhでカッティングした以外は(A−1)と同様の方法で行った。得られたPBT樹脂の分析値は表1に記した。
(A−3):
(A−1)において、酢酸マグネシウム・4水塩を用いず、またポリマー中のチタン含有量が表1の通りとなる様にテトラブチルチタネートの供給量を調節し、第1重縮合反応槽aの内温を240℃、圧力を2.7kPa、滞留時間を120分、第2重縮合反応槽dの内温を245℃、圧力を140Pa、滞留時間を60分、第3重縮合反応槽kの内温を239℃、圧力を600Pa、滞留時間を80分にした以外は(A−1)と同様の方法で行った。得られたPBT樹脂の分析値は表1に記した。
(A−4):
(A−2)において、ポリマー中のチタン及びマグネシウム含有量が表1の通りとなる様にテトラブチルチタネート及び酢酸マグネシウム・4水塩の供給量を調節し、反応槽A内液の平均滞留時間を150分、第1重縮合反応槽aの内温を240℃、圧力を2.1kPa、第2重縮合反応槽dの内温を240℃、圧力を130Pa、滞留時間を90分にした以外は、(A−2)と同様の方法で行った。得られたPBT樹脂の分析値は表1に記した。
(A−5):
タービン型攪拌翼を具備した内容積200Lのステンレス製反応容器に、テレフタル酸ジメチル272.9mol、1,4−ブタンジオール327.5mol、テトラブチルチタネート0.126モル(チタン量として理論収量ポリマー当たり100ppm)を仕込み、十分窒素置換させた。続いて、系を昇温し、60分後に温度210℃、窒素下大気圧で、生成するメタノール、1,4−ブタンジオール、THFを系外に留出させながら、120分エステル交換反応させた(反応開始時間は、所定温度、所定圧力に達した時点とした)。
ベント管およびダブルヘリカル型攪拌翼を有する内容積200Lのステンレス製反応器に、上記で得られたオリゴマーを移送した後、温度245℃、圧力100Paまで60分かけて到達させ、その状態のまま150分重縮合反応を行った。反応終了後、ポリマーをストランド状に抜き出し、ペレット状に切断した。得られたPBT樹脂の分析表は表1に記した。
(A−6):
(A−2)において、ポリマー中のチタン及びマグネシウム含有量が表1の通りとなる様にテトラブチルチタネート及び酢酸マグネシウム・4水塩の供給量を調節し、反応槽A内液の平均滞留時間を150分、第1重縮合反応槽aの内温を240℃、圧力を2.1kPa、第2重縮合反応槽dの内温を240℃、圧力を130Pa、滞留時間を75分にした以外は、(A−2)と同様の方法で行った。得られたPBT樹脂の分析値は表1に記した。
(B)耐衝撃性改良剤:
(B−1)エポキシ基含有ビニル系単量体をグラフトしたポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレ−ト複合ゴムグラフト共重合体:グリシジルメタクリレートを3重量部とした以外は、特許文献5の参考例1と同様の方法で製造した。特許文献5の実施例に記載の方法に従って測定した複合ゴムの重量平均粒子径は0.65μmであった。
(B−2)α−オレフィン/グリシジルメタクリレ−ト/酢酸ビニル共重合体:住友化学社製「商品名:ボンドファーストBF−7M」、グリシジルメタクリレート比率6重量%(B−3)コアシェルタイプアクリルゴム:ローム・アンド・ハース・ジャパン社製「商品名:パラロイドKM336P」
(C)無機充填材:
(C−1)Eガラス繊維:表面処理剤で処理されてなるチョップドストランド、日本電気硝子社製「商品名:ECS03T−187」、繊維径13μm、カット長(繊維長)3mm
<ポリブチレンテレフタレート樹脂特性の評価法>
(1)エステル化率:
下記の計算式(1)によって酸価及びケン化価から算出した。酸価は、ジメチルホルムアミドにオリゴマーを溶解させ、0.1NのKOH/メタノール溶液を使用して滴定により求めた。ケン化価は0.5NのKOH/エタノール溶液でオリゴマーを加水分解し、0.5Nの塩酸で滴定し求めた。
エステル化率=((ケン化価−酸価)/ケン化価)×100 (1)
(2)末端カルボキシル基濃度:
ベンジルアルコール25mlにPBT樹脂又はオリゴマー0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を使用して滴定した。
(3)固有粘度(IV):
ウベローデ型粘度計を使用し次の要領で求めた。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において、濃度1.0g/dlのポリマー溶液および溶媒のみの落下秒数を測定し、下記の式(2)より求めた。
IV=((1+4Kηsp0.5−1)/(2KC) (2)
但し、式(2)中、ηsp=(η/η)−1であり、ηはポリマー溶液落下秒数、ηは溶媒の落下秒数、Cはポリマー溶液濃度(g/dl)、Kはハギンズの定数であり、0.33とした。
(4)PBT樹脂中のチタン、及び1族、2族金属濃度:
電子工業用高純度硫酸及び硝酸でPBT樹脂を湿式分解し、高分解能ICP−MS(Inductively Coupled Plasma−Mass Spectrometer)(サーモクエスト社製)を使用して測定した。
Figure 2008013750
<実施例1〜7、比較例1〜5>
(A)成分、(B)成分及び(C)成分を表2、3に示す割合で秤量し、2軸押出機((株)日本製鋼所社製「型式:TEX30C」、スクリュー径30mm)を用いて、シリンダー設定温度255℃、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練した。(C)無機充填材を配合する場合は、(C)無機充填材をホッパーから数えて5番目のブロックからサイドフィード方式で供給し、溶融混練して、樹脂組成物ペレットを得た。得られた樹脂組成物ペレットを用い、下記の評価を行った。結果を表2、3に示す。
<流動性の評価>
上記の方法にて得られた樹脂組成物ペレットを120℃で5時間乾燥後、キャピラリーレオメーター(東洋精機社製「キャピログラフ1C」)を使用し、温度270℃、せん断速度6080sec−1における溶融粘度を測定した。数値が小さいほど流動性は良好であることを示す。
<引張、曲げ、シャルピー衝撃試験>
上記の方法にて得られた樹脂組成物ペレットを120℃で5時間乾燥後、住友重機械工業社製、射出成形機「SG−75SYCAP−MIII」を使用して、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で、機械的物性測定用ISO試験片を成形し、ISO527規格に従って引張試験、ISO178規格に従って曲げ試験、ISO179規格に従って室温(23℃)でシャルピー衝撃試験を実施した。また、−30℃にISO試験片を4時間保持した後、低温シャルピー衝撃試験を実施した。
<耐加水分解性試験>
耐加水分解性は、湿熱試験後の引張強度保持率により評価した。上記ISO引張試験片を、121℃、飽和水蒸気中、203kPaで100時間湿熱処理し、処理前後の引張強度を測定し、下記式(3)に従い、引張強度保持率を求めた。
引張強度保持率(%)=(処理後の引張強度/処理前の引張強度)×100 (3)
Figure 2008013750
Figure 2008013750
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、良好な流動性を保持し、かつ、曲げ弾性率、引張伸度、耐(低温)衝撃性及び耐加水分解性に優れていることが分かる(実施例1〜7)。
末端カルボキシル基濃度が本発明の範囲内である固有粘度が1.00のPBT樹脂(A−3)を用いた樹脂組成物の例(実施例3)は、固有粘度が同じで末端カルボキシル基濃度が本発明の範囲を超えるPBT樹脂(A−5)を用いた樹脂組成物の例(比較例1)に比べ、溶融粘度が低く(流動性が良好)、引張伸度、シャルピー衝撃強度、低温シャルピー衝撃強度、及び耐加水分解性が良好である。また、2種の異なる固有粘度のPBT樹脂を併用し、固有粘度を比較例1で用いたPBT樹脂(A−5)と同等に調整した樹脂組成物の例(実施例1)も、比較例1に比べ、流動性、引張伸度、耐衝撃性、及び耐加水分解性に優れている。
末端カルボキシル基濃度が本発明の範囲内であるPBT樹脂に、本発明のポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレ−ト複合ゴムグラフト共重合体を配合した場合の例(実施例1)は、同じPBT樹脂を用いα−オレフィン/グリシジルメタクリレ−ト/酢酸ビニル共重合体を配合した場合の例(比較例2)に比べ、流動性、曲げ弾性率、引張伸度、シャルピー衝撃強度、耐加水分解性が改善されていることが分かる。また、上記と同じPBT樹脂にコアシェルタイプアクリルゴムを配合した場合の例(比較例3)とを比較すると、特に、引張伸度、耐衝撃性、耐加水分解性が大きく改善されていることが分かる。
Eガラス繊維を配合した強化樹脂組成物の場合も、上記と同様の傾向であることが、実施例6、7及び比較例4、5の比較から分かる。
また、末端カルボキシル基濃度が本発明の範囲内のPBT樹脂を用いた場合においては、チタン及びマグネシウム含有量がより少ない方が、耐加水分解性がより優れることが分かる(実施例1〜7)。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、良好な流動性を保持し、同時に優れた耐(低温)衝撃性等の機械的性質、耐加水分解性を有しているため、ランスやロック機構部等を有するコネクター等の電気・電子機器分野部品、エンジン部品等の自動車分野部品、精密機械分野、医療分野等、幅広い分野の樹脂成形体に好適である。
(A)PBT樹脂製造における、エステル化反応工程の一例の説明図。 (A)PBT樹脂製造における、重縮合工程の一例の説明図。
符号の説明
1:原料供給ライン
2:再循環ライン
3:チタン触媒供給ライン
4:抜出ライン
5:留出ライン
6:抜出ライン
7:循環ライン
8:抜出ライン
9:ガス抜出ライン
10:凝縮液ライン
11:抜出ライン
12:循環ライン
13:抜出ライン
14:ベントライン
15:1族金属触媒及び/又は2族金属触媒供給ライン
A:反応槽
B:抜出ポンプ
C:精留塔
D:ポンプ
E:ポンプ
F:タンク
G:コンデンサ
L1:抜出ライン
L2:ベントライン
L3:抜出ライン
L4:ベントライン
L5:抜出ライン
L6:ベントライン
a:第1重縮合反応槽
c:抜出用ギヤポンプ
d:第2重縮合反応槽
e:抜出用ギヤポンプ
k:第3重縮合反応槽
m:抜出用ギヤポンプ
g:ダイスヘッド
h:回転式カッター

Claims (7)

  1. (A)末端カルボキシル基濃度が40eq/ton以下であるポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(B)エポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合してなるポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレ−ト複合ゴムグラフト共重合体を1〜100重量部、(C)無機充填材を0〜150重量部配合してなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  2. (B)ポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレ−ト複合ゴムの重量平均粒子径が0.2〜1.0μmであって、かつ、グラフト共重合体中に占めるエポキシ基含有ビニル系単量体成分の比率が0.1〜10重量%である、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  3. (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂が、(a)チタン化合物と、(b)1族金属化合物及び/又は2族金属化合物とを含有し、(a)チタン化合物の含有量が、チタン原子換算で80ppm以下であり、(b)1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の含有量が、その金属原子換算で50ppm以下である、請求項1又は2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  4. (a)チタン化合物と、(b)1族金属化合物及び/又は2族金属化合物とが、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂を製造するための重縮合触媒由来の化合物である、請求項3に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  5. (b)1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の金属元素がマグネシウムである、請求項3又は4に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  6. (C)無機充填材がガラス繊維である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010016443A1 (ja) * 2008-08-08 2010-02-11 国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 強化エステル系ポリマー組成物
JP2010144154A (ja) * 2008-12-22 2010-07-01 Mitsubishi Engineering Plastics Corp 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物およびその車両用成形品

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