JP2008012492A - 化粧塗膜の形成方法、塗材及び化粧塗膜 - Google Patents

化粧塗膜の形成方法、塗材及び化粧塗膜 Download PDF

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Abstract

【課題】豊かな凹凸感と寄りが少ない状態で分散された着色フレークにより優れた自然石調の外観を有する化粧塗膜を提供する。
【解決手段】空隙に富む3次元網目状の空間形態を持つ塗装材で塗装面を構成した塗装ローラを用いて、前記塗装面の網目孔径Aと同じかこれより小さい短径Bを持つ偏平な1色又は2色以上の着色フレークを含ませた塗材を塗装することにより、塗装時における塗装ローラの網目孔相当部位に形成される塗膜凸部に対する着色フレークの寄りが少ない自然石調の化粧塗膜を形成する。
【選択図】図3

Description

本発明は、化粧塗膜の形成方法、塗材及び化粧塗膜に関する。更に詳しくは、本発明は、偏平な着色フレークを含ませた塗材を塗装するに当り、いわゆる「砂骨ローラ」等の空隙に富む3次元網目状の空間形態を持つ塗装材で塗装面を構成した塗装ローラであって、その網目孔径が前記着色フレークのサイズと一定の関係にあるものを用いることによって、塗膜の凸部に対する着色フレークの寄りが少ない優れた自然石調の化粧塗膜を形成する方法と、この方法に用いる塗材と、この方法により形成された化粧塗膜とに関する。
近年、着色した骨材(例えば、ガラス、陶磁器等の断片、天然石の砕粒等)を含有した塗材の需要が伸びている。これらの塗材は、任意の粗粒模様(とりわけ、自然石調の粗粒模様)を美しく表現するために、各種の建材や建築物の壁面等に塗装される。
特許第2993159号公報 例えば上記の特許文献1には、合成樹脂バインダー20〜55重量%、粒子径400μm以下の着色骨材30〜80重量%及び粒子径10〜100μmの透明合成樹脂ビーズ1〜15重量%を含んでなる、天然石に近似した外観とともに柔らかい触感を有する塗膜を与える塗料組成物が開示されている。
特許第3400878号公報 又、例えば上記の特許文献2は、一定の色彩上のパラメーターに合致する複数色からなる粒子径分布1〜15mmの模様色形成分散粒子と、該模様色形成分散粒子を粒子状態で分散可能な透明の分散媒を主要構成成分とする自然石調塗料組成物を一定の色調の下塗層上に塗装する自然石調塗装方法を開示している。
ところで、この種の粗粒模様のための着色骨材を含有する塗料は、上記の特許文献1や特許文献2では「塗装ガンを用いたスプレー塗装を行う」としているが、多量の骨材を含むためにローラ塗装が困難であって、塗装用のスプレーを用いて塗装せざるを得ない場合も多い。
一方、塗料に含有させる粗粒模様発現用の骨材や粒子として、通常は立体的な(偏平ではない)形状のものを用いている。例えば、特許文献1で用いる着色骨材と合成樹脂ビーズ、又は特許文献2で用いる模様色形成分散粒子は、いずれも立体的な形状のものと考えられ、少なくとも「偏平な形状の粒子である」旨の記載はない。
植毛式の塗装ローラを用いる場合には、着色骨材の寄りが大きいと言う問題があった。ここに「寄り」とは、塗膜中の着色骨材が部分的に凝集し、均一に分散していない状態を言う。寄りの大きい塗膜は、粗粒模様としてはまだらに見え、工業製品としては「外観上のムラ」と評価され、更に、化粧塗膜(特に自然石調の化粧塗膜)としては不自然な外観を呈する。
本願発明者は、自然石調の粗粒模様が美しく表現された化粧塗膜を得るために以下の手段1〜手段4等を採用する点に想到し、本願発明を完成した。
手段1:塗装用のローラとして、砂骨ローラのような、空隙に富む3次元網目状の空間形態を持つ塗装材で塗装面を構成した塗装ローラを用いる。
手段2:上記の手段1に伴い、粗粒模様を形成するための要素として、偏平な着色フレークを塗材に含有させる。
手段3:上記の塗装用ローラの網目孔径Aと偏平な着色フレークの短径Bとの間に、BがAと同じか、これより小さいと言うサイズ上の関係を持たせる。
手段4:塗材中に立体形状の骨材は含有させない。あるいは含有させるとしても、その含有量を低く抑える。これにより、塗材中の固形成分量を可及的に低減させ、塗材(クリア塗料)の粘度を上げて、塗材中における着色フレークの沈降を更に有効に防止できる。
特許第2832424号公報 なお、上記の特許文献3には、柔軟性を有する3種以上の異なる色の樹脂フレーク群と、乾燥又は硬化するとほぼ無色透明になる結合材とを混練した多彩模様形成用の塗材と、この塗材に用いる一定の特徴的形状を備えた樹脂フレークとが開示されている。しかし、特許文献3には砂骨ローラ等を用いた塗装方法は開示されていないし、当然ながらローラの網目孔径と偏平な樹脂フレークの短径との関係についても開示していない。
(第1発明)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、空隙に富む3次元網目状の空間形態を持つ塗装材で塗装面を構成した塗装ローラを用い、着色フレークと、造膜後に透明となる結合材とを主成分として含む塗材を塗装する方法であって、前記着色フレークとして、少なくとも、以下の(1)及び(2)の条件を備える特定着色フレークが包含される、化粧塗膜の形成方法である。
(1)短径が前記塗装ローラの塗装面の網目孔径と同じか又はこれより小さく、かつ、0.3mmを超える。
(2)粒子偏平率(フレークの短径/厚み)が4.0以上である。
上記の第1発明において、着色フレークは、上記の定義に合致する特定着色フレークのみからなる場合と、特定着色フレーク及びその定義に合致しない着色フレークからなる場合とがある。
着色フレークの「短径」とは、JIS Z−8801のa.(細粒に対する網ふるいのふるい目開き)に規定する各目開き寸法の篩のうち、着色フレークの篩通過量が100%となる篩の次に小さい目開き寸法の篩の目開き(mm)で定義されるものを言う。
特定着色フレークについて、その平面図を示す図1(a)、及びその側面図を示す図1(b)に即して説明する。図1(a)のように特定着色フレークの長軸方向の長さがX、短軸方向の長さがY(但し、X=Yの場合もあり得る)、図1(b)のように厚みがtとすると、篩通過によって規定されるサイズである「短径」は短軸方向の長さYに相当する概念である。又、特定着色フレークは粒子偏平率(フレークの短径/厚み)が4.0以上であるから、Y/t≧4.0の関係にある。
特定着色フレークの調整時には、短径が0.3mm以下である細かなフレーク粉砕物(骨材フレーク)も生成するが、本発明の見地からは、これらの骨材フレークは骨材と同等に見なす(骨材の一種とみなす)ことができる。
上記の塗装ローラは、空隙に富む3次元網目状の空間形態を持つ塗装材で塗装面を構成したものである限りにおいて限定されないが、その代表的なものとして、いわゆる砂骨ローラを挙げることができる。
第1発明によれば、空隙に富む3次元網目状の空間形態を持つ塗装材で塗装面を構成した塗装ローラを用いるので、塗膜に単なる粗粒模様を与えるだけでなく、塗膜表面に自然石に類似した豊かな凹凸感を与えることができる。
「空隙に富む3次元網目状の空間形態を持つ塗装材」とは、例えば後述する砂骨ローラーのように、3次元的に網羅された網目状の空間形態を持ち、網目部の構成材料が細く形成され(例えば、網目部構成材料の平均的な太さが、平均的な網目孔径の5分の1以下)、塗装材における空隙部の容積比率が80%以上であるような空間形態を持つ塗装材を言う。網目部の構成材料は限定されないが、弾性的変形能を有する材料であることが好ましい。
次に、粗粒模様を形成するための要素として、塗材中に偏平な特定着色フレークを含ませる。更に、偏平なフレークを含有する塗材の塗装には、スプレー塗装に比べて飛散によるロスを軽減でき、フレークを塗装面に効率的に塗着できると言う理由から、上記のような塗装ローラが好適である。
更に、特定着色フレークの短径は塗装ローラの塗装面の網目孔径と同じか又はこれより小さいので、塗膜表面に形成される凸部における着色フレークの寄りを有効に防止することができる。着色フレークの「寄り」とは、塗膜の凸部において着色フレークが外観上不自然に凝集している状態を言う。
(第2発明)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る特定着色フレークの短径B(mm)が塗装ローラの塗装面の網目孔径A(mm)に対してA:B=1:1〜1:0.3の範囲内にある、化粧塗膜の形成方法である。
短径Bの値は、網目孔径Aの値に対して、より好ましくは50〜99%の範囲内の値であり、特に好ましくは70〜99%の範囲内の値であり、とりわけ好ましくは80〜95%の範囲内の値である。
特定着色フレークにおける短径の値Bが、塗装ローラの塗装面の網目孔径の値Aに対して上記の範囲内にある場合は、その逆の場合(網目孔径Aよりも着色フレークの短径Bが大きい場合)に比較して、着色フレークの寄りが顕著に少ないことを実験的に確認している。
(第3発明)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る塗材が、2色以上の特定着色フレークを含む、化粧塗膜の形成方法である。
第3発明によれば、塗材が2色以上の特定着色フレークを含むので、「寄り」の少ない条件を満足し、かつ、化粧塗膜の色彩感に多様な変化を持たせることができる。
(第4発明)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る塗材が1色の特定着色フレークを含む場合にはその色彩の特定着色フレークが、前記塗材が2色以上の特定着色フレークを含む場合にはその内の少なくとも1色の特定着色フレークが、メッシュパスにより規定される粒度分布において、単一のピークあるいは相対的に大小関係にある2つ以上のピークを有する、化粧塗膜の形成方法である。
第4発明によれば、少なくとも1色の特定着色フレークが、その粒度分布において大小関係にある2つ以上のピークを有するので、粒度分布における大きい方の特定着色フレークが粗粒模様の大きな模様点を形成し、小さい方の特定着色フレークが粗粒模様の小さな模様点を形成することにより、よりキメの細かな粗粒模様を構成することができる。
(第5発明)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、前記第1発明〜第4発明のいずれかに係る塗材において、短径が0.3mm以下である着色フレーク(骨材フレーク)と、必要に応じて配合された場合の骨材との合計配合量が、塗材中の20重量%以下である、化粧塗膜の形成方法である。
化粧塗膜形成用塗材は、偏平でない立体的な形状の固形成分の含有をなるべく避けるために、通常の骨材を含まない組成とし、あるいは必要に応じて通常の骨材を含む場合でも、それと上記の骨材フレークとの合計含有量を塗材中の20重量%以下とすることが好ましい。第5発明により、塗材の粘度低下が良好に防止される結果、特定着色フレークの偏平な形状とも相まって、特定着色フレークが沈降し難く、良好な粗粒模様の化粧塗膜を形成することができる。
(第6発明)
上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、前記第1発明〜第5発明のいずれかに係る特定着色フレークが、厚みが0.01〜2.5mmの範囲内にあり、かつ、短径が0.3〜10mmの範囲内にある、化粧塗膜の形成方法である。より好ましくは、特定着色フレークの厚みが0.01〜1.0mmの範囲内にあり、短径が0.3〜4.0mmの範囲内にある。
特定着色フレークの短径及び厚みに関して第6発明に規定する範囲はローラによる塗装が可能な範囲であり、「外観上のムラ」のない仕上りを期待できる。
(第7発明)
上記課題を解決するための本願第7発明の構成は、第1発明〜第6発明のいずれかに係る1色又は2色以上の特定着色フレークと結合材とを主成分として含む、塗材である。
第7発明によって、第1発明〜第6発明の化粧塗膜の形成方法を有効に実施できる手段が提供される。
(第8発明)
上記課題を解決するための本願第8発明の構成は、第1発明〜第6発明のいずれかに係る特定着色フレーク、又は特定着色フレーク及び骨材フレークからなる2色以上の着色フレークと、造膜後に透明となる結合材とを主成分として含む塗材によって形成された、薄膜部分と厚膜部分とを伴う化粧塗膜であって、薄膜部分の厚みが着色フレークの厚みよりも厚い、化粧塗膜である。
第8発明の化粧塗膜は、第1発明〜第6発明に係る化粧塗膜の形成方法によって形成されるものであって、塗膜の外観が単なる粗粒模様だけでなく、自然石に類似した豊かな凹凸感(薄膜部分と厚膜部分)を伴い、しかも塗膜表面の凸部における着色フレークの寄りが少ない。従って、工業製品として「外観上のムラ」がなく、化粧塗膜(特に自然石調の化粧塗膜)としては不自然さのない良好な外観を呈する。更に、化粧塗膜の薄膜部分の厚みが着色フレークの厚みよりも厚いので、全体としてなだらかで、骨材が突起してあらわれないものである。
本発明によれば、豊かな凹凸感を伴う美しい粗粒模様を持ち、かつ着色フレークの寄りが少なく均一に分散された自然石調の化粧塗膜を得ることができる。
次に、本発明の実施形態を、その最良の形態を含めて説明する。
〔化粧塗膜の形成方法〕
本発明に係る化粧塗膜の形成方法においては、空隙に富む3次元網目状の空間形態を持つ塗材で塗装面を構成した塗装ローラを用いる点と、この塗装ローラを用いて少なくとも特定着色フレークが含まれる塗材を塗装する点と、に基本的な特徴がある。
特定着色フレークは、粒子偏平率が4.0以上であり、短径が塗装ローラの塗装面の網目孔径と同じか又はこれより小さく、かつ0.3mmを超えるものである点に特徴がある。着色フレークとしては、特定着色フレークと共に、「特定着色フレーク」の定義に合致しない着色フレークも含むことができる。これらの両タイプの着色フレークを通じて、塗材は1色の着色フレークのみを含むものでも良いが、より好ましくは2色以上の着色フレークを含む。更に塗材は1色の特定着色フレークのみを含むものでも良いが、より好ましくは2色以上の特定着色フレークを含む。
ここにおいて、「網目孔径」とは、3次元網目状の空間形態を持つ塗装材において形成されている多数の網目孔の平均的な網目孔径を言う。又、着色フレークの短径とは、実質的に偏平な着色フレークの平面形状における短軸方向の長さを意味し、前記したようにJIS Z−8801のa.に規定する各目開き寸法の篩のうち、着色フレークの篩通過量が100%となる篩の次に小さい目開き寸法の篩の目開き(mm)で定義されるものを言う。
以上に定義した短径を有し、かつ粒子偏平率が4.0以上である偏平な着色フレークを「特定着色フレーク」と言う。塗装ローラの塗装面の網目孔径Aと特定着色フレークの短径Bとは、A:B=1:1〜1:0.3の範囲内の関係にあることが、より好ましい。
〔塗装ローラ〕
本発明で用いる塗装ローラは、その塗装面(ローラ表面部)が空隙に富む3次元網目状の塗装材で構成されている必要がある。このような塗装ローラの代表的な例として図2に示すような大塚刷毛製造株式会社製の砂骨ローラを挙げることができるが、図2においてハンドルやローラ軸等の構成は任意に変更できる。
図2において、砂骨ローラ1は、ハンドル2を備え所定形状に屈曲形成されたローラ軸3の先端に、ローラ部4を回転可能に軸支したものである。このローラ部4の塗装面は空隙に富む3次元網目状の多孔材料5をもって構成されている。この多孔材料5は、やや硬質の線状材が空隙に富む3次元網目状に連絡されたものであって、平均的に一定の網目孔径を持っている。多孔材料5の外観の正確な図示は困難であるため、図2では、多孔材料5の外観をランダムな不規則模様で象徴的に表現しており、正確な図示ではない。
このような砂骨ローラ1の他にも、塗装材として例えば多孔質発泡体を用いた塗装ローラも例示できる。このような多孔質発泡体は、適宜な硬さを持ち、平均的に一定の網目孔径を持つことが好ましく、連泡式の発泡体であることが更に好ましく、空泡部の容積比の大きな発泡体であることがとりわけ好ましい。
砂骨ローラその他の塗装ローラの網目孔径は、基本的に特定着色フレークの短径との関係においてのみ制約を受けるが、市販されている代表的な砂骨ローラには、平均的な網目孔径Aが5mm程度のもの、3mm程度のもの、2mm程度のもの、等が見られる。これらの網目孔径Aを持つ砂骨ローラを使用する場合、塗材に含まれる特定着色フレークの短径は前記した関係にあることが好ましい。
〔化粧塗膜形成用塗材〕
本発明に係る化粧塗膜形成用塗材は、この種の塗材として必要な最低限の機能を持つ限りにおいて、造膜後に透明となる結合材、及び1色又は2色以上の特定着色フレーク以外の含有成分については特段の限定がない。塗材には、特定着色フレークに由来する骨材フレークが含有されることがある。骨材フレークは着色フレークの調製工程において特定着色フレークが破砕され、その短径が0.3mm以下となったものである。
塗材のベースとしては、クリア塗料、即ち塗膜となったときに透明となるビヒクル成分のみからなる塗料(塗装後フィルムを形成したときに透明となるタイプの塗料)が好ましいが、これには限定されない。塗材の種類は水性塗材であっても油性塗材であっても良く、塗材のタイプとしてはエマルションタイプ、溶液タイプ、反応硬化タイプ、無溶剤タイプ等が限定なく含まれる。
塗料のバインダとしては、例えばエマルションタイプの結合材としてアクリル樹脂系、アクリルスチレン共重合系、酢酸ビニル共重合系、各種合成ゴムラテックス、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系を挙げることができる。無溶剤系のウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等も使用可能である。
塗材には、他の任意の各種の配合成分、例えば天然の又は人工の骨材、増粘剤、界面活性剤、消泡剤、凍結防止剤、防腐剤等を任意に含むことができる。
しかし、骨材については一般的には含有しない方が好ましく、含有するとしても粒径0.5mm以下の骨材を最大限で5重量%以下に抑えることが好ましい。又、顔料については、塗材による粗粒模様の色彩効果を阻害しない範囲で、白色顔料や任意の着色顔料を単独で又は組み合わせて任意に使用できる。
塗材中の着色フレークの沈降を防止する点、塗装ローラへの塗材の含み量を多くする点、塗装面への転写性を良くする点等から、塗材の粘度、及びそのベース塗料の粘度は一定の重要な意味を持つ。ベース塗料の粘度は10〜200dPa・s(デシパスカル・秒)程度が好ましく、必要により増粘剤の添加等により調整できる。又、ベース塗料に対して着色フレークその他の上記の任意の成分を添加した後の、塗材としての粘度は、10〜300dPa・s程度が好ましい。
一般論として、塗材に対する固形成分の添加量によって、塗材の粘度が影響を受ける。本発明の塗材においては、結合材成分である樹脂固形分を除いた、フレークあるいは骨材による固形分配合量を10重量%以下、より好ましくは5重量%以下に制限し、塗材の粘度を高く維持する点に特徴の一つがある。そのために、前記したように骨材の含有量をなるべく抑えるか、あるいは含有させない。
又、塗材全体の固形分は10〜65重量%、より好ましくは40〜60重量%の範囲内から選択される。
〔着色フレーク〕
本発明の塗材に含有させる特徴的な着色フレークは、その短径が塗装ローラの塗装面の網目孔径と同じか又はこれより小さく、かつ0.3mmを超え、しかも粒子偏平率(フレークの短径/厚み)が4.0以上のもの、即ち特定着色フレークである。より好ましくは、粒子偏平率は5.0以上である。偏平な特定着色フレークの平面形状は限定されず、例えば、円形、角形、各種の長細い形状あるいはランダムな破片形状であり得る。
本発明の塗材は2色以上の着色フレークを含み、この着色フレークとしては、少なくとも特定着色フレークが包含される。特定着色フレークとしては、1色又は2色以上の特定着色フレークが用いられる。2色以上の特定着色フレークの例として、白色の特定着色フレークと黒色の特定着色フレークの組合わせを好ましく例示できる。又、白色の特定着色フレークと、黒色の特定着色フレークと、任意の有彩色の特定着色フレークとの組合わせも好ましく例示できる。これらに限らず、無彩色及び有彩色から任意に選ばれた2色以上の特定着色フレークの組合わせがあり得る。
以上の特定着色フレークにおいて、各色彩の特定着色フレークは、前記のサイズの規定に合致することを前提に、粒度分布として大小2種類以上の短径のピークを示すものであっても良く、粒度分布として単一のピークを示すものであっても良い。但し、1色又は2色以上の特定着色フレークの内、少なくとも1色の特定着色フレークにおいて、粒度分布として大小2種類以上の短径のピークを示すことが好ましい。
着色フレークは、無機質材料のフレークであっても良いし、樹脂フレークであっても良い。
無機質材料のフレークとしては、限定はされないが、ガラス片、陶磁器片、あるいは雲母等から選ばれる天然石砕片、板状の金属片、金属箔等が例示される。無機質材料のフレークは、そのまま用いても良いし、適宜な手段で一定の色彩を付与してから用いても良い。但し、無機質材料のフレークは樹脂フレークより比重が大きく、塗材中で沈降して均一に混ざり難く、又、塗材自体も重くなるため厚塗りし難いと言う傾向(言い換えれば、比較的サイズの大きな無機質フレークは使い難いと言う傾向)がある。その点、樹脂フレークは比重が小さいため有利である。
樹脂フレークを構成する樹脂の種類は限定されないが、アクリル系、クロロプレン系、エチレンアクリル共重合系、アクリルブタジエン系、軟質ウレタン樹脂系、軟質シリコーン樹脂系等の樹脂を好ましく例示できる。着色樹脂フレークの形成方法は特段に限定されず、例えば、顔料、染料により着色された樹脂フィルム体を細かく破砕する方法や、前記の特許文献3に開示された樹脂フレーク用組成材料をスプレーガンで吹付ける方法等、公知の任意の方法を採用できる。
〔化粧塗膜〕
本発明の化粧塗膜は、上記した特定着色フレークからなり、又は特定着色フレーク及び骨材フレークからなる2色以上の着色フレークと、造膜後に透明となる結合材とを主成分として含む塗材によって形成された化粧塗膜であって、自然な凹凸感を表現する薄膜部分と厚膜部分とを伴い、かつ、塗膜の凸部に対する着色フレークの寄りが小さい自然石調の外観を呈する化粧塗膜である。この化粧塗膜の薄膜部分の厚みは着色フレークの厚みよりも厚い。化粧塗膜は、好ましくは、上記化粧塗膜形成用塗材を用いて上記化粧塗膜形成方法により形成される。
本発明の化粧塗膜は「寄りが小さい」と言う特徴を持つが、この点を図3によって説明する。図3(a)、(b)にそれぞれ、任意の被塗装物6上に形成された塗膜7の断面図を示す。図3(a)に示す塗膜7は寄りが大きい例であって、塗膜7の凸部8に多くの着色フレーク9が集中し、凸部8を形成していない部分では着色フレーク9が余り見られない。このような塗膜は、前記したように、粗粒模様として不自然なムラを感じさせる。
一方、図3(b)に示す塗膜7は寄りが小さい例であって、塗膜7の凸部8に対する着色フレーク9の集中はみられず、全体として着色フレーク9は塗膜7全体にバランス良く分布している。このような塗膜は、粗粒模様として自然な感じを与える。
本発明の化粧塗膜は任意の対象物(被塗装面)に対して形成される。好ましくは、例えば、板状又はシート状の建築材の表面に形成される。又、建築物の床面、天井面又は壁面に形成される。より具体的には、例えば、コンクリート構造物その他の任意の種類の構造物の床面、天井面又は壁面、ALC板、PC板、スレート板、押し出し成形板、GRC板、珪酸カルシウム板、石膏ボード、サイディングボード、各種シート建材等を例示できる。
次に、本発明の実施例及び比較例について説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施例及び比較例によって限定されない。
(実施例1)
塗材の調製:
クリヤ塗料300重量部と、平均短径が約1mm以下で粒子偏平率が4の小サイズ着色フレーク8重量部と、平均短径が約2mm以下で約1mmを超え、粒子偏平率が8の大サイズ着色フレーク2重量部とからなる化粧塗膜形成用塗材を調製した。これらの着色フレークは、酸化アルミナ系の無機フレークである。小サイズ着色フレークは、白色の着色フレーク90重量%と、黒色の着色フレーク10重量%とからなり、大サイズ着色フレークは、白色の着色フレーク67重量%と、黒色の着色フレーク33重量%とからなるものである。
又、リオン株式会社製のビスコテスターVT−04 1号ローターを使用して測定したところ、ベース塗料であるクリヤ塗料の粘度は60 dPa・Sであり、組成後の塗材の粘度は70 dPa・Sであった。
塗装方法:
砂骨ローラーとして、網目孔径を標準目として表記したもの(約3〜5mm)、細目として表記したもの(約2〜4mm)、極細目として表記したもの(約1〜2mm)の3種類を準備した。
化粧塗膜の形成に当たり、まず、薄い黄色の調色されたアクリルエマルションを主結合材とした艶消しエマルションペイントを、下塗塗料として、被塗装面に対して100g/m塗り付けた。下塗塗料の塗装手段としては大塚刷毛製造株式会社製のウールローラーである「ウーローラー中毛」(商品名)を用いた。
下塗塗料が十分に乾燥し成膜した後、上記の標準目、細目、極細目の砂骨ローラーをそれぞれ用いて本実施例の塗材を塗装した。塗装においてむらなく(着色フレークが均一に分散した状態で)塗装できた場合を「○」、幾らかむらが発生した場合を「△」、明瞭にむらが発生した場合を「×」として評価したが、いずれの砂骨ローラーを用いた場合にも、評価結果は「○」であった。
以上の、標準目、細目、極細目の砂骨ローラーをそれぞれ用いた塗膜作成例における化粧塗膜サンプルの原寸大の表面写真を図4に示す。図4はこれら3例の作成例に係る塗膜を1枚の基板上に境目なしに隣接して形成したものであって、図4中の1点鎖線によって各塗膜の境界を示す。図4における上方の領域10が極細目の砂骨ローラーを用いた塗膜作成例、中央の領域11が細目の砂骨ローラーを用いた塗膜作成例、下方の領域12が標準目の砂骨ローラーを用いた塗膜作成例である。
なお、化粧塗膜が乾燥した後の最も膜厚が大きい部分での塗膜厚は、標準目の砂骨ローラーを用いた場合で2mm以下、細目の砂骨ローラーを用いた場合で1.5mm以下、極細目の砂骨ローラーを用いた場合で1mm以下であった。
(比較例1)
本比較例は、化粧塗膜形成用塗材が、特定着色フレークではなく、粒子偏平率において特定着色フレークとは異なる着色骨材を含む場合の例である。
塗材の調製:
クリヤ塗料300重量部と、平均短径が約1mm以下で粒子偏平率(前記参照)が6以下の小サイズ着色骨材8重量部と、平均短径が約2mm以下で約1mmを超え、粒子偏平率が10以下の大サイズ着色骨材2重量部とからなる化粧塗膜形成用塗材を調製した。小サイズ着色骨材は90重量%の白色骨材と10重量%の黒色骨材からなり、大サイズ着色骨材は67重量%の白色骨材と33重量%の黒色骨材からなる。白色骨材としては陶磁器を細かく砕いた陶磁器細粒を用い、黒色骨材としては珪砂、寒水砂、陶磁器細粒に対して顔料等を用いて黒色に着色した着色骨材を用いた。
又、リオン株式会社製のビスコテスターVT−04 1号ローターを使用して測定したところ、ベース塗料であるクリヤ塗料の粘度は実施例1と同じであり、組成後の塗材の粘度は70 dPa・Sであった。
塗装方法:
実施例1と同様に下塗塗料を塗布し、下塗塗料が十分に乾燥し成膜した後に、実施例1と同様に標準目、細目、極細目の砂骨ローラーをそれぞれ用いて本比較例の塗材を塗装した。塗装における「むら」の有無を実施例1と同様に評価したところ、いずれの砂骨ローラーを用いた場合にも評価結果は「×」であった。
以上の、標準目、細目、極細目の砂骨ローラーをそれぞれ用いた塗膜作成例における化粧塗膜サンプルの原寸大の表面写真を図5に示す。図5はこれら3例の作成例に係る塗膜を1枚の基板上に境目なしに隣接して形成したものであって、図5中の1点鎖線によって各塗膜の境界を示す。図5における上方の領域13が極細目の砂骨ローラーを用いた塗膜作成例、中央の領域14が細目の砂骨ローラーを用いた塗膜作成例、下方の領域15が標準目の砂骨ローラーを用いた塗膜作成例である。
化粧塗膜が乾燥した後の、最も膜厚が大きい部分での塗膜厚は、標準目、細目、極細目のいずれの砂骨ローラーを用いた場合でも、約2mmであった。
(比較例2)
本比較例は、塗材の塗装手段が、砂骨ローラー等の「空隙に富む3次元網目状の空間形態を持つ塗装材で塗装面を構成した塗装ローラ」ではない場合についての例である。
実施例1の「塗装方法」の項と同様にして下塗塗料を塗布し、下塗塗料が十分に乾燥し成膜した後に、それぞれ実施例1に係る化粧塗膜形成用塗材と、比較例1に係る化粧塗膜形成用塗材とを、前記した大塚刷毛製造株式会社製の「ウーローラー中毛」を用いて塗装した。
この塗装における「むら」の有無を実施例1と同様に評価したところ、実施例1に係る化粧塗膜形成用塗材を塗装した場合の評価結果は「△」であった。従って、実施例1における前記の「○」評価との差異の原因は、砂骨ローラーではなく「ウーローラー中毛」を用いた点に求められる。又、比較例1に係る化粧塗膜形成用塗材を塗装した場合の評価結果は「×」であった。
(比較例3)
本比較例は、塗材の塗装手段が砂骨ローラーであるが、その網目孔径よりも着色フレークの短径がかなり大きい場合の例である。
塗材の調製:
クリヤ塗料300重量部と、平均短径が約5〜10mmで粒子偏平率が25の着色樹脂フレーク10重量部とからなる化粧塗膜形成用塗材を調製した。着色樹脂フレークは、白色の着色樹脂フレーク70重量%と、黒色の着色樹脂フレーク30重量%とからなるものである。実施例1と同様に行った粘度測定ではベース塗料であるクリヤ塗料の粘度は実施例1と同じであり、組成後の塗材の粘度は70 dPa・Sであった。
塗装方法:
化粧塗膜の形成に当たり、まず実施例1と同様の下塗塗料を塗布し、下塗塗料が十分に乾燥し成膜した後、実施例1と同様の標準目、細目、極細目の砂骨ローラーをそれぞれ用いて化粧塗膜形成用塗材を塗装した。
これらの場合について、「むら」の有無を実施例1と同様に評価したところ、いずれの砂骨ローラーを用いた場合にも、評価結果は「×」であった。従って、着色フレークの短径は、砂骨ローラの塗装面の網目孔径と同じか、又はこれより小さいことが必要である点が分かる。
本発明によって、塗膜の凸部に対する着色フレークの寄りが少ない優れた自然石調の化粧塗膜を形成する方法と、この方法により形成された化粧塗膜とが提供される。
特定着色フレークの形状及び3次元サイズの関係を示す図である。
砂骨ローラを示す図である。
化粧塗膜における「寄り」の概念を説明する図である。
実施例1に係る化粧塗膜の原寸大の写真を示す図である。
比較例1に係る化粧塗膜の原寸大の写真を示す図である。
符号の説明
1 砂骨ローラ
5 多孔材料
6 被塗装物
7 塗膜
8 凸部
9 着色フレーク


Claims (8)

  1. 空隙に富む3次元網目状の空間形態を持つ塗装材で塗装面を構成した塗装ローラを用い、着色フレークと、造膜後に透明となる結合材とを主成分として含む塗材を塗装する方法であって、
    前記着色フレークとして、少なくとも、以下の(1)及び(2)の条件を備える特定着色フレークが包含されることを特徴とする化粧塗膜の形成方法。
    (1)短径が前記塗装ローラの塗装面の網目孔径と同じか又はこれより小さく、かつ、0.3mmを超える。
    (2)粒子偏平率(フレークの短径/厚み)が4.0以上である。
  2. 前記特定着色フレークの短径B(mm)が、前記塗装ローラの塗装面の網目孔径A(mm)に対してA:B=1:1〜1:0.3の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の化粧塗膜の形成方法。
  3. 前記塗材が2色以上の特定着色フレークを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧塗膜の形成方法。
  4. 前記塗材が1色の特定着色フレークを含む場合にはその色彩の特定着色フレークが、前記塗材が2色以上の特定着色フレークを含む場合にはその内の少なくとも1色の特定着色フレークが、メッシュパスにより規定される粒度分布において、単一のピークあるいは相対的に大小関係にある2つ以上のピークを有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の化粧塗膜の形成方法。
  5. 前記塗材において、短径が0.3mm以下である着色フレーク(骨材フレーク)と、必要に応じて配合された場合の骨材との合計配合量が、塗材中の20重量%以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の化粧塗膜の形成方法。
  6. 前記特定着色フレークが、厚みが0.01〜2.5mmの範囲内にあり、かつ、短径が0.3〜10mmの範囲内にあることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の化粧塗膜の形成方法。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の1色又は2色以上の特定着色フレークと結合材とを主成分として含むことを特徴とする塗材。
  8. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の特定着色フレーク、又は特定着色フレーク及び骨材フレークからなる2色以上の着色フレークと、造膜後に透明となる結合材とを主成分として含む塗材によって形成された、薄膜部分と厚膜部分とを伴う化粧塗膜であって、薄膜部分の厚みが着色フレークの厚みよりも厚いことを特徴とする化粧塗膜。
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