JP2008009015A - 定着ベルトおよび定着装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ウオームアップ時間が短く、且つ、高速な電子写真装置に適用できる安価な定着装置を提供する。
【解決手段】ハロゲンランプ2と金属ベルトとを定着部材に用いたベルト定着方式に於いて、定着ベルト1である金属ベルト(1)の周の内側に固定された支持部材3を配置し、その支持部材3に摺動する金属ベルト(1)の内周面は、有色の不動態皮膜処理を施したものとする。これによって、定着装置は、ベルト(1)内周面の耐磨耗性を高く取った上で、その金属ベルト(1)の内周面の熱輻射率が高められて、ウオームアップ時間が短く、且つその性能が長期に渡って維持できる。
【選択図】図1
【解決手段】ハロゲンランプ2と金属ベルトとを定着部材に用いたベルト定着方式に於いて、定着ベルト1である金属ベルト(1)の周の内側に固定された支持部材3を配置し、その支持部材3に摺動する金属ベルト(1)の内周面は、有色の不動態皮膜処理を施したものとする。これによって、定着装置は、ベルト(1)内周面の耐磨耗性を高く取った上で、その金属ベルト(1)の内周面の熱輻射率が高められて、ウオームアップ時間が短く、且つその性能が長期に渡って維持できる。
【選択図】図1
Description
本発明は、電子写真記録装置に用いられて、その記録がなされる用紙上に形成されたトナー画像をその用紙に固着させる定着装置に関するものである。
電子写真記録装置において、用紙上に形成されたトナー画像を定着させる定着装置には、ヒータ(抵抗発熱体。単に発熱体とも呼ぶ)を内蔵する一対のローラで定着する熱ローラ定着が一般的な技術方式としてよく知られている。
熱ローラ定着は、ローラ対を互いに押圧せしめて一定の圧力長さ(ニップ)を形成し、ニップ内を用紙が通過する際の熱伝導によって、用紙表面のトナーを熱と圧力でもって溶融、固着させるものである。本方式は、ローラ対の押圧力によってローラが撓み変形をするので、その中央部でのニップ長さが短くなってしまうことがあり、一方、ローラ対の押圧力が小さいと、ニップ長さ(ニップ部のローラ周方向長さ)が短くなり、トナーを溶融させる加熱時間が短くなってしまう。その対策の為に、加熱時間を、トナーを十分に溶融させるだけの時間とすべく、ローラ対の剛性を十分なものにすると、ローラ対の熱容量が大きくなるので、ヒータでローラを暖める時間(ウオームアップ時間)が長くなり、結果として電子写真装置の起動時間が長くなってしまうという課題があった。
本課題を解決する為に、サーフ定着方式(単にサーフ方式とも呼ぶ)が提案され実用化がされている。
サーフ方式は、従来の熱ローラ対を用いた上述のローラ方式に比べて熱容量が小さいフィルム様のベルト(フィルム様のベルトを単にフィルムとも呼ぶ)を裏面から面ヒータ(発熱体)にて直接加熱する方式故、電源投入からフィルムが温まるまでの時間を短くすることができる。一方で、トナー層が多層の部分と単層の部分とが混在するカラーの印刷の場合には、それらの層厚の差を吸収させる為にトナー層と接触する加熱側にはゴム弾性体が必要になる。サーフ方式では、ニップ部でフィルムを介して用紙上のトナーに熱を伝達させる方式ゆえ、発熱体からの熱を、ニップ部のみでフィルム及びゴム層を熱伝導させて、定着温度にしなければならない。そして、カラーの印刷の場合にはゴム層が熱抵抗となってしまうので、原理的にカラー印刷や高速印刷には不向きな方式である。また、面ヒータには熱伝導性が優れたものが必須である為、抵抗発熱体の上層に耐磨耗層を設けるには薄くて熱伝導の優れたものしか配置することができない。従って、面ヒータの表層の磨耗が定着装置の寿命を短くする原因の一つになっている。
これらの背景から、上記2つの方式の中間的な方式が幾つか提案されている。
特開2001−215829(特許文献1)に提案がなされた方法は、薄肉の弾性円筒体を定着ロールに用い、定着ロールの内側に押圧部材を配置してニップを形成するというものである。薄肉弾性定着ロールの欠点であるニップ部での圧力が低いこと克服することができるという。
また、特開2003−223064(特許文献2)には、赤外線を透過可能な耐熱性基層と外側に配置した赤外線吸収層とを有する定着ロールや定着フィルムを用いて、オンデマンド定着を実現するという提案がなされている。
また、特開2004−94146(特許文献3)には、輻射光を吸収する発熱層を有するベルトを金属製の支持部材で定着ニップを形成するという提案がある。
特開2001−215829号公報
特開2003−223064号公報
特開2004−94146号公報
しかしながら、特許文献1に示された上記従来の方法では、ハロゲンランプの輻射熱が支持部材にも吸収され、その分ベルトを加熱する効率が低下する。また、支持部材とベルトとの接触部ではベルトの熱が押圧部材に伝達されてベルトの温度が低下してしまうので、結果的に押圧支持部材がベルトと等価な温度にならないと、ニップ部での温度は定着可能温度に達し得ない。
また、特許文献2に示された上記従来の方式では、定着ロールには熱線を透過する耐熱ガラスが必要で、また定着フィルムの場合にも耐熱ガラスからなる押圧部材と耐熱性樹脂フィルム(ポリイミドやポリアミドイミド)とが必要である。どちらも加工性、量産性といった観点から高コストな構造である。加えて、耐熱性基層を透過した熱線は赤外線吸収層で吸収されて発熱するが、その熱が一方で耐熱層基層に熱伝導するので、ロールの場合もフィルムの場合も、耐熱ガラスの持つ熱容量がウオームアップ時間を長くしてしまうという課題もある。
また、特許文献3に示された上記従来の方式も、基本的に、特許文献1の方法と同様に、ハロゲンランプの輻射熱が押圧部材にも吸収されること、及び、ニップ部においてベルトの熱が支持部材に伝導して、結果的に温度上昇速度が遅くなってしまうという課題がある。特許文献3にはその対策の為、フィルム(ベルト)内面にカーボンやグラファイトなどの黒色塗装を施すことが開示されているが、フィルム(ベルト)の内面は高温環境下で支持部材と摺動するので、単に黒色塗装を施しただけでは剥がれや磨耗によって、性能を維持することは困難である。同文献には、ハロゲンランプの下側半周分にアルミニウムからなる金属反射膜を設けて、輻射熱を押圧部材側よりもフィルム側に高い割合で輻射光を照射させるといった工夫の提案も開示されている。しかし、本工夫のみでは支持部材への熱の逃げを抑制することは不十分であり、結果的にオンデマンドの定着装置を提供することは困難であるという課題があった。
以上のように、ハロゲンランプを薄肉の定着ベルトに内包させてオンデマンドの定着装置を提供する様々な方法が提案されてきたが、それぞれ一長一短であり、全ての問題を解決できる方法は存在しなかった。本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、具体的には高速化が容易でオンデマンド定着が可能な定着ベルトおよび装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、被加熱体を加熱しつつ押圧する定着装置を、周を成して自転するベルト様の定着部材と、前記定着部材の内周面が摺動接触しそれによってその定着部材を支持すると共にその定着部材の外周面を被加熱体と圧接させる支持部材と、前記定着部材の周の内側にそれと前記支持部材とのそれぞれの間に空間をもって配置された発熱体とを含み備え、前記定着部材は、その内周面が有色の不動態皮膜で覆われたステンレスを基材としたものであることを特徴としたものとする。
また、定着装置を、前記定着部材は、その内周面が有色とされたステンレスを基材としたものであり、その外周の形状において最小半径が6mm以上12mm以下である部分を有したことを特徴としたものとしてもよい。
本発明は、靭性の高いステンレス鋼からなるベルトを基材に用いているので疲れ強さが高く、耐久性の高い定着ベルトとすることができる。さらに、発熱体と非接触状態で配置されたステンレスベルトの内周面を有色の不動態皮膜で覆うことによって輻射率を高めることができ、発熱体からの輻射熱を定着部材に効率よく伝播させることができる。加えて、不動態皮膜は、樹脂等を基材に用いた従来の黒色塗装に比べて耐磨耗性に優れているので、高い輻射率を長期間に渡って維持させることができる。また、定着ベルトの外周の形状において最小半径が6mm以上12mm以下である部分を有することで、ニップ通過後の定着がされた用紙を定着ベルトから剥離させることが、実用上十分に確実・安定に行うこともできる。
このように、本発明は、前述した全ての問題を並立解決し、高速化が容易でオンデマンド定着が可能な定着ベルトおよび装置の提供を可能にする。
本発明の実施の第1の形態は、被加熱体を加熱しつつ押圧する定着装置であって、周を成して自転するベルト様の定着部材と、前記定着部材の内周面が摺動接触しそれによってその定着部材を支持すると共にその定着部材の外周面を被加熱体と圧接させる支持部材と、前記定着部材の周の内側にそれと前記支持部材とのそれぞれの間に空間をもって配置された発熱体とを含み備え、前記定着部材は、その内周面が有色の不動態皮膜で覆われたステンレスを基材としたものであることを特徴としたものである。
このような構成によって、靭性の高いステンレス鋼からなるベルトを基材に用いているので疲れ強さが高く、耐久性の高い定着ベルトとすることができる。さらに、発熱体と非接触状態で配置されたステンレスベルトの内周面を有色の不動態皮膜で覆うことによって輻射率を高めることができ、発熱体からの輻射熱を定着部材に効率よく伝播させることができる。加えて、不動態皮膜は、樹脂等を基材に用いた従来の黒色塗装に比べて耐磨耗性に優れているので、高い輻射率を長期間に渡って維持させることができる。
本発明の実施の第2の形態は、被加熱体を加熱しつつ押圧する定着装置であって、周を成して自転するベルト様の定着部材と、前記定着部材の内周面が摺動接触しそれによってその定着部材を支持すると共にその定着部材の外周面を被加熱体と圧接させる支持部材と、前記定着部材の周の内側にそれと前記支持部材とのそれぞれの間に空間をもって配置された発熱体とを含み備え、前記定着部材は、その内周面が有色とされたステンレスを基材としたものであり、その外周の形状において最小半径が6mm以上12mm以下である部分を有したことを特徴としたものである。
このような構成によっても、靭性の高いステンレス鋼からなるベルトを基材に用いているので疲れ強さが高く、耐久性の高い定着ベルトとすることができる。さらに、発熱体と非接触状態で配置されたステンレスベルトの内周面を有色とすることによって輻射率を高めることができ、発熱体からの輻射熱を定着部材に効率よく伝播させることができる。加えて、定着ベルトの外周の形状において最小半径が6mm以上12mm以下である部分を有することで、ニップ通過後の定着がされた用紙を定着ベルトから剥離させることが、実用上十分に確実・安定に行うことができる。
本発明の実施の第3の形態は、実施の第1又は第2の形態において、前記定着部材は、その内周面を黒色としたものである。
このような構成によって、定着部材の内周面を黒色とすると、より高い輻射率とすることができる。
本発明の実施の第4の形態は、実施の第1又は第2の形態において、前記定着部材の周面への熱伝播量に指向性が付与され、前記支持部材側への熱伝播量が小さくなる向きに取り付けられたものである。
このような構成によって、発熱体の定着部材の周面への熱伝播量に指向性が付与され、発熱体を、支持部材側への熱伝播量が小さくなる向きに取り付けることで、発熱体の輻射熱を定着部材側により多く伝播させると共に、支持体側への熱の伝播を少なくしロスを低減して、ウオームアップ時間を更に短縮することができる。
本発明の実施の第5の形態は、実施の第1又は第2の形態において、前記支持部材を、前記定着部材の摺動接触面と対向する側により熱伝達率が低い断熱部材を含むものとしたものである。
このような構成によって、支持部材を、定着部材の摺動接触面と対向する側により熱伝達率が低い断熱部材を含むものとすることで、定着部材から支持部材への伝熱速度を遅くすることができ、支持部材への熱の伝播による連続印刷時の温度低下を防止することができる。
本発明の実施の第6の形態は、実施の第1又は第2の形態において、前記支持部材を、前記発熱体へ対向する側の側により熱伝達率が低い断熱部材を含むものとしたものである。
このような構成によって、支持部材を、発熱体へ対向する側の面により熱伝達率が低い断熱部材を含むものとすることで、発熱体から支持部材への空気を媒体した熱伝導速度を遅くするこことができ、支持体側への熱の伝播を少なくしてロスを低減して、ウオームアップ時間を短縮することができる。
本発明の実施の第7の形態は、実施の第1又は第2の形態において、前記支持部材を、前記発熱体へ対向する側の面に定着部材である定着ベルト内周面の不動態皮膜より熱反射率の高い熱反射部材を含むものとしたものである。
このような構成によって、支持部材を、発熱体へ対向する側の面に定着部材内周面の不動態皮膜より熱反射率の高い熱反射部材を含むものとすることで、支持部材への輻射熱を反射させ、支持体側への熱の伝播を少なくしてロスを低減して、ウオームアップ時間を短縮することができる。
本発明の実施の第8の形態は、実施の第1又は第2の形態において、当該装置は、前記支持部材に、前記定着部材である定着ベルトの温度を検知する手段が配置されたものである。
仮に定着部材の外周面に温度検知手段を配置した場合には、温度検知手段と定着部材との摺動によって、定着部材の離型層が磨耗してオフセットなどの画像欠陥をもたらすが、このような構成によって、定着部材の温度検知手段が支持部材に配置されることで定着部材の内周面に配置されるので、そのようなトラブルを防ぐことができる。更に、定着部材の内周面は不動態皮膜で覆われているので、その磨耗を防止することが出来る。加えて、耐熱樹脂による塗料の場合には、塗布厚さのムラや磨耗による膜厚変化によって熱抵抗が変化するので、検知温度の誤差が生じるが、不動態皮膜は薄くかつ熱伝導係数が基材と大きく変わらないので、検知温度の誤差の変動を極めて小さくすることができる。
本発明の実施の第9の形態は、略筒状の基材に、その内周面について有色の不動態皮膜又はクロム酸化皮膜を形成する処理が施されたもので構成された定着ベルトである。
このような構成によって、定着ベルトの内周面を不動態皮膜又はクロム酸化皮膜で覆うことで、輻射率を高めることができ、その周の内側に配置される発熱体からの輻射熱を定着ベルトに効率よく伝播させることができる。さらに、不動態皮膜は、樹脂等を基材に用いた従来の黒色塗装に比べて耐磨耗性に優れているので、高い輻射率を長期間に渡って維持させることができる。
本発明の実施の第10の形態は、実施の第9の形態において、前記不動態皮膜処理又はクロム酸化皮膜を交番電解発色法によって前記基材に直接形成されたことを特徴としたものである。
このような構成によって、不動態皮膜処理を交番電解発色法によることで、溶出した金属イオンが陰極電解時に不動態皮膜として析出され、均一な皮膜を形成することが出来るので、形成される膜は、厚さを極めて薄くでき、また緻密な膜が形成されるので耐腐食性も優れ、耐磨耗性もそこそこの性能とすることができる。
本発明の実施の第11の形態は、実施の第9の形態において、内周面の前記不動態皮膜又はクロム酸化皮膜が、前記基材外周面にフッ素皮膜を形成する処理が施された後に、形成されたことを特徴としたものである。
このような構成によって、フッ素樹脂での皮膜を施すことで、アルカリや酸性の薬品に対して侵食されないものとすることができる。
本発明の実施の第12の形態は、実施の第11の形態において、前記不動態皮膜又はクロム酸化皮膜の形成処理後に筒両端をカットして作成されたことを特徴としたものである。
このような構成によって、定着ベルトを少し長めに作成し、不動態皮膜処理後に両端をカットして作成することで、酸化膜処理の際に中間層の弾性層に酸化処理溶液が浸透しても差し支えないので、その浸透を防ぐシールをせずに酸化膜処理を行うことができる。
本発明の実施の第13の形態は、実施の第9の形態において、前記不動態皮膜又はクロム酸化皮膜の形成処理後に加熱処理が施されたものである。
塑性加工によって加工硬化された定着ベルトは、塑性変形組織の界面に水素が侵入して水素脆化することがあっても、このような構成によって、不動態皮膜処理後に加熱処理を施すことで、その吸蔵された水素は加熱処理することで除去することができるので、繰り返し応力負荷を受ける使用においても、水素脆化による疲労強度の著しい低下を抑えることができる。
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。なお、各図において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
(実施例1)
本実施例は、本発明に係る、不動態皮膜を施した金属ベルトの内側に発熱体を内包し、金属ベルトに被加熱体を圧接させて被加熱体を加熱させる定着装置(単に装置とも呼ぶ)に関するものである。
本実施例は、本発明に係る、不動態皮膜を施した金属ベルトの内側に発熱体を内包し、金属ベルトに被加熱体を圧接させて被加熱体を加熱させる定着装置(単に装置とも呼ぶ)に関するものである。
図1は、本発明に係る定着装置(本定着装置と呼ぶ)の構成を示しており、(a)は全体の斜視図、(b)は中央部の断面図である。
図1において、本定着装置は、定着ベルト(単にベルトとも呼ぶ)1が、その内側にハロゲンランプ(単にランプとも呼ぶ)2と支持部材3とを内包し、その外側から押圧ロール4で支持部材3へ押圧されて、定着ニップを形成する構造となっている。ハロゲンランプ2には熱線反射膜5が形成され、その熱反射膜が支持部材3に対向するように配置されている。
ここで、支持部材3は、梁6、定着パッド7、及び断熱パッド8、によって構成され、さらに、断熱パッド8の下方に定着ベルト1の温度を検知する温度検知手段(サーミスタ)9が配置されている。そして、定着ベルト1は、支持部材3と押圧ロール5との間で挟まれて、押圧ロール5の回転によって(b)における反時計回りに摩擦回転する。
このような構成において、本定着装置は、トナー画像が形成された用紙を、定着ベルト1と押圧ロール5との間において搬送し、そのトナー像を加熱し、溶融させることで定着像を得る。
以下、本装置における各部材の作用についてさらに詳しく述べる。
ハロゲンランプ2は、そこからの熱線が、ハロゲンランプ2に設けられた熱線反射膜5にて支持部材3の反対側へ主に照射されるので、それによって、熱容量の大きな支持部材3を加熱することが抑制され、定着ベルト1の温度上昇速度を速くすることができるようにされている。
ここで、ハロゲンランプ2に設けられた熱線反射膜5は、ランプ表面との接着性、昇温時の線膨張係数の差による剥がれや、変色を考慮して白色セラミックス膜とした。二酸化珪素と酸化アルミニウムとを主成分とするセラミックス微粉末を水に分散し、スプレイにて塗布後乾燥処理後、300℃の高温で硬化させて形成した。熱線反射膜5を通じて支持部材3側へ漏れて輻射される熱線は10%程度に抑えることができ、90%程度が定着ベルト1側へ直接照射される。
次に、定着ベルト1は、ステンレス鋼板SUS304を基材とした直径30mmの円筒状の金属薄肉管である金属ベルトを用いた。
ここで、金属ベルトは、ポリイミドや、ポリアミドイミドといった材料に比べ、加工性の良い安価なステンレスを用いて、深絞りや、スピニング工法で安価に製造することが出来るので、装置の低価格化が実現できる。
また、図1に示すように、定着ベルト1は、ニップの前後で大きく曲率が変化する。これは、ニップ部(本実施例では、そのニップ長さを8mmとしている。)で定着がされた用紙をニップ通過後の位置で定着ベルト1から剥離させるために、その位置での定着ベルト1の曲率を大きくしている(本実施例では、曲率が最大となるその位置での外周の形状における最小半径を10mmとしている。)ことによるものである。この曲率の大きな変化によって、定着ベルト1は、繰り返し変形負荷を受けている。特に定着ニップ部の形状を押圧ロール5に沿うようにすると、変形応力が引っ張り側と圧縮側とへの両方向変形になる。それゆえ、そのような定着ベルトは、普通には、疲労破壊が起こりやすい。このようなところ、ニッケル電鋳ベルトは硫黄を含有すると高温で脆化することが知られている。それに対し、ステンレス鋼板は優れた靭性を有し耐熱性も高く、加工性も優れているので、本実施例における定着ベルト1の基材に好適である。
また、金属ベルトは、熱伝導性も良いので、小サイズ紙の連続印刷時に、通紙部と非通紙部との温度差が大きくなることを抑制する効果もある。このとき、一方で、金属ベルトは、本実施例のような、輻射が熱伝達の主体になるハロゲンランプや、カーボンヒータに対して適用するとき、普通には、熱の輻射率が低く、金属ベルトに輻射された熱線を反射してしまう。しかし本実施例では、後述するようにベルト1は、その内周面に不動態皮膜が形成され、その発色がされて輻射率が高くされているので、効率よく熱線を吸収することができる。
ここで、輻射率を高める他の手段としては樹脂塗装膜や、黒色ニッケル、黒色クロム等の鍍金(メッキ)による方法や、また酸化物を付着させる方法等もあるが、これらの方法はいずれも、熱容量を増加させることになりウオームアップ時間を長くしてしまう。さらに、小径の長手円筒体の内面に均一に施すことについて、前述の方法では難しく、その不均一は定着温度のムラを引き起こし、量産時の歩留まりを悪くする。加えて、基材をそれと異なる材質でなる薄肉体の層で覆うことは、それを、急激に温度上昇し且つ繰り返し応力が生じる定着ベルトに適用すると、その層剥離を引き起こす。このとき、耐熱樹脂をバインダーにしたとしても、高い定着荷重下で摺動する定着ベルトでは磨耗してしまい、その層の性能を維持することが困難である。
それに対し、本実施例では、基材自体を酸化させることで輻射率を高めているので、熱容量はその処理前と変わらない。加えて、基材と異なる素材での薄肉体(層)を形成するのではなく、基材を直接酸化させた膜なので、その膜は、薄くて基材との密着性が高く、線膨張係数の差等によって剥がれる懸念がない。
このように、本装置は、定着ベルト1の内周面の輻射率を高めることで、ハロゲンランプ2の熱を効率よく定着ベルト1に伝導させると共に、ベルト1内部に内包された支持部材3への熱伝導量を減らすことができ、支持部材3の温度上昇を抑制することができる。
また、定着ベルトは、支持部材や、用紙、押圧ロールと摩擦摺動することにより帯電することがありえ、高い電位に帯電すると、用紙上のトナー像を乱したり、静電オフセットという問題を引き越しかねない。しかし、金属ベルトである本実施例の定着ベルト1は、導電性を有し、且つ、内周面に設けられた不動態皮膜が薄いので巨視的には導電体であるので、内周面に電気接点を設けて容易に電荷を逃がすことができる。
次に、断熱パッド8は、そこに支持部材3よりも熱伝達係数が小さいものを用いることで、ハロゲンランプ2からの熱が支持部材3に伝達する際の熱抵抗となる。従って、断熱パッド8を配置することで、支持部材3への熱流速を遅くしてハロゲンランプ2の熱を定着ベルト1に効率良く伝導させることができる。このようなことから、断熱パッド8には支持部材3よりも熱伝導係数が小さいものを用いるのがよい。
また、定着ベルト1内部の空気は温度上昇することで対流し、外気との熱交換が起こるが、断熱材であるこのような断熱パッド8を定着ベルト1内部に配置することで、対流する空気を少なくすることができ、結果、支持部材3の温度上昇を抑制することができる。
ここで、ハロゲンランプ2の表面温度は600℃程度になっており、断熱パッド8は耐火性断熱材が望ましい。断熱パッド8にはグラスファイバーや、セラミックファイバーなどを用いることができる。本実施例では、シリカ−マグネシア−カルシア系の生分解性繊維を紙状に成型した耐火断熱材を用いた。
また、断熱パッド8は、熱反射率の高い金属箔で包むことで、ハロゲンランプ2からの輻射熱を定着ベルト1側へ反射させることができる。厚さ5から20μmのニッケル箔、アルミ箔等を用いると、0.9以上の高い熱反射率を得ることができ、金属箔の熱容量も小さいので良い。金属箔で反射された熱線は、定着ベルト1内周面の不動態皮膜に効率よく吸収されて、定着ベルト1を加熱する。
次に、定着ベルト1の温度検知手段9にはサーミスタを用い、それを断熱パッド8の下方に配置し、定着ベルト1内周面と摺動接触させた。このように配置することで、温度検知手段へのハロゲンランプ2からの熱輻射が防止されて、温度検知の誤差を小さくすることができ、加えて、温度検知手段の電気ハーネスにも高い耐熱性を有する特殊な電線を選択する必要がないという利点もある。
このとき、温度検知手段を、仮に定着ベルトの外側に配置すると、定着ベルトの離型層と温度検知手段とが摺動し磨耗することがある。そして、離型層表面の傷はトナーのオフセットや、光沢のムラを生じる。それに対し、本実施例では温度検知手段9を定着ベルト1内周面に配置したので、そのような問題を生じることはない。
また、定着ベルト内周面に、仮に樹脂の塗装膜を用いた場合には、その塗装膜は、熱容量を増加させるだけでなく、熱抵抗として作用するので、温度検知に時間遅れを生じ、また、塗装膜ムラや、膜そのものの磨耗などによって、量産時のバラツキや経時的な温度検知誤差を生じることがある。それに対し、本実施例では、定着ベルト1は、ベルト内周面に酸化膜処理を施した金属ベルトを使用しているので、サーミスタ(温度検知手段9)への熱伝達速度も高く、また磨耗も少なくすることができている。
次に、梁6は、押圧ロール5からの押圧を支持する構造部材であり、厚さ2.5mm、長さ240mmの低炭素鋼板にて作成した。
ここで、梁6は図のようにコの字型として、押圧ロール5の加圧力による変形を小さくしている。梁6の寸法を幅14mm、高さ12mmとして梁6の体積を0.02m^3とすることで、押圧ロール5圧力を200Nとした際の最大変形量を50μm以下とすることができている。
また、梁6は、そこに前述のとおり低炭素鋼を用いて、比重が7800kg/m^3、比熱が0.46kJ/kgK程度、熱伝導率が大凡40W/mKである。
ここで、ステンレス鋼を基材とした薄肉管状の金属ベルト(以下、ステンレスベルト又はSUSベルトとも呼ぶ)(1)は、直径を30mm、厚さを40μm、長さを240mmとした。そして、SUSベルト(1)の体積は0.0009m^3程度となる。そこで、熱容量は、比重、比熱が低炭素鋼とSUSとでは大差がないので、梁6と定着ベルト1との比率が、体積の比率にほぼ等しい22倍にもなる。
また、一般的な紙の熱伝導率は大凡0.2W/mK程度であり、梁6の熱伝導率よりも極めて小さい。従って、SUSベルト(1)をランプ2で加熱しても、熱伝導率の高い梁6が直接定着ベルト1に接触していると、熱が主に梁6側へ逃げてしまい良好な定着性が得られなくなる。それゆえ本実施例では、梁6よりも熱伝導率の低い定着パッド7を設けている。
ここで、定着パッド7は、ガラス強化ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの耐熱性の高い熱可塑性樹脂や、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマーなどの耐熱性樹脂を用いることができる。これら樹脂材料の熱伝導係数は大凡0.1から0.3W/mKと梁6よりも2桁以上低く、紙の熱伝導率に近い。定着パッド7には中空無機ビーズなど更に熱伝導係数を小さくして、紙の熱伝導率よりも小さくすると尚好適である。
また、定着ベルト1とが摺動する定着パッド7の面には、摩擦係数を低減させる為、潤滑層を配置するとよい。潤滑層には四フッ化エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂(ETFE)等の材料を用いることができ、摩擦係数を低減することができて且つ、熱伝導係数が小さなものがよい。
また、定着ベルト1と用紙との均一な密着性を確保する為に、上記潤滑層と定着パッド7との間にゴム弾性部材を配置するとよい。ゴム弾性部材は、梁6の弾性変形によるニップ長さの減少分や、梁6、定着パッド7の平面度誤差などによる圧力ムラを軽減させることができる。ゴム弾性部材は耐熱性が良好で、熱伝導率が低いものが望ましく、シリコーンゴムや、フッ素ゴム、それらの発泡体等が好適である。本実施例では厚さ1mm、ゴム硬度20度(JIS−A)、熱伝導率0.3W/mKのシリコーンゴムを用いた。
次に、定着ベルト1について、さらにその詳細を説明する。
定着ベルト1に使用している金属ベルトは、その基材がステンレス鋼板SUS304からなる薄肉パイプであり、厚さ40μmとなるように塑性加工にて作成した。
ここで、薄肉パイプの工法には、溶接管を伸ばす方法や、深絞り工法、また一旦深絞りにて作成したキャップをスピニング工法にて伸ばす方法がある。これらのうち前者の溶接管を用いた場合には、溶接熱の影響で溶接部付近の結晶粒界に炭化クロムの析出物が形成され、クロム欠乏層を生じて粒間腐食を起こしたり、疲労破壊の起点となって疲労強度を低下させることになる。それゆえ、溶接後に再度、固溶化処理を施すとよいが、工数が増えるので高コストになってしまう。また、溶接管の加工精度が悪いと、スピニング加工後のステンレスベルトの精度も悪くなる。
そこで、本実施例では、溶接管ではなく深絞りにて作成したキャップをスピニングにて引き伸ばす後者を選択した。スピニング加工後のSUSベルト(1)の表面は熱輻射率が0.6程度と低い。
ところで、ステンレス鋼は元々、クロム酸化物を主体とした数十オングストロームオーダーの不動態皮膜で覆われている。不動態皮膜は電気絶縁体ゆえ、熱輻射率は高い。しかし、余りにも薄いので、巨視的には熱輻射率も低くまた導電性を示す。本実施例では、ステンレスベルト(1)の内周側を化成処理よって酸化させ、不動態皮膜を成長させて発色させる電解発色法を用いた。不動態皮膜を1μm程度まで成長させると黒色に発色し0.9以上の熱輻射率を有する内周面を得ることができる。
このとき、電解発色法は、皮膜形成を途中で終了すると、赤や、青の色彩を帯びた膜を得ることができる。
なお、輻射率を高めることが主目的のときには、皮膜は黒色を呈するまで成長させるのがよい。また、2μm程度以上に成長させると、生膜に時間が掛かり、発色ムラを引き起こすことに加え、定着ベルトとして使用した際の繰り返し応力によって膜が剥がれたりすることになるので、1μm程度までがよい。これによって、ニップ通過後の定着がされた用紙を定着ベルトから剥離させるために一般に必要と考えられている定着ベルトの外周の形状における所定の曲率である12mm以下の最小半径に対しても、実用上十分と考えられる6mm以上の範囲において、ステンレスベルト(1)の表面上に形成されたその皮膜は、剥がれることなく、定着ベルトとしての使用に耐えるものとすることができる。ここで、本発明に係る装置構成において、直径30mm、厚さ40μmのステンレスベルトで最小半径を6mmとしたとき、ニップ長さは20mmとすることができ、ニップ長さについても定着ベルとして実用上十分なものである。
また、電解発色法による酸化不動態皮膜は、形成される膜厚さが極めて薄いこと、また緻密な膜が形成されるため耐腐食性も優れ、耐磨耗性もそこそこの性能を有している。本実施例のような高温環境下で、摺動する定着部材に好適である。さらに、多孔質なので、ベルト1内周面に潤滑剤を塗布した際には、その潤滑剤の保持力を高める作用もある。
次に、管(パイプ)状のステンレスベルト(1)への不動態皮膜の形成方法の詳細について説明する。
図2は、本実施例で用いたステンレスベルト(1)への不動態皮膜の形成による発色方法を説明するための概略構成図である。
図2において、先ず、塑性加工にて作成されたステンレスベルト1を酸性溶液10中に浸漬し、対向電極11をSUSベルト1の管(パイプ)内に管内面から所定の間隔をおいて配置し、交番電源装置12から電線13にてつながれたSUSベルト1と対向電極11との間に交番電流を印加する。ここで、対向電極11にはカーボン電極を用い、処理溶液には酸化剤としてクロム酸を硫酸溶液に加えて用いる。
次に、交流電源をオン(ON)状態にして電流を印加すると陽極側では鉄およびクロムが溶出し、陰極側では溶出した金属イオンが酸化物として析出し、多孔質の皮膜が成長する。生成される酸化物は主にクロムの酸化物(Cr2O3)やクロムの水酸化物(Cr(OH)3)であって、残りは鉄の酸化物で占められる。そして、一定サイクルの交流電流を印加すると、不動態皮膜が成長し1μm以下の皮膜を形成し、黒色の表面を得ることができる。
ここで、溶出し、析出するイオンは電流に比例するので、交番電源は定電流制御が可能なものがよい。そして、このとき、電源に直流電流を用いると、溶出したクロムや鉄のイオンがステンレス鋼の表面に近いほど高濃度に分布して、ステンレス鋼の場所による電気抵抗に分布ができやすい。それにより、このイオンや電気抵抗の分布は水溶液の不均一性を生じ、結果、不動態皮膜に不均一性をもたらすことになる。一方、交流の電源を用いて陰極―陽極処理を繰り返し行うと、溶出した金属イオンが陰極電解時に不動態皮膜として析出され、均一な皮膜を形成することが出来る。
定着ベルトでは輻射率の不均一性は、ベルト温度の不均一性を招く為好ましくない。このような理由から本実施例では交番電解法によりステンレスベルト表面に不動態皮膜を成長させている。
なお、ステンレスへの不動態皮膜の成長させる方法には上述の方法以外にも、様々な方法があり、湿式酸化法と、高温酸化法に大別できる。
高温酸化方法は、400℃から700℃程度の大気中にて高温酸化させて十数nmオーダの酸化皮膜を生成させ、その後、酸で表面を洗い流して酸化皮膜中の酸化鉄を除去してクロム濃度の高い不動態膜を得る方法である。本方法によって得られる不動態皮膜は、テンパーカラーと言われ金色の色調である。加熱処理の雰囲気ガスの種類や温度を適宜変更すれば形成される不動態皮膜厚さを調整できる。また、高温酸化法にはさらに別の方法としてクロム酸酸化法と呼ばれるものもある。本方法は400から500℃程度のクロム酸塩の高温溶融塩中に浸漬して、表面を強制的に酸化させる方法である。本方法は漆黒の黒色表面が得られる利点がある。しかし、これら両方法共に高温での処理になるので薄く延伸された定着ベルトを変形させてしまうことがあり、本定着ベルト1の不動態皮膜処理には不向きである。
次に、湿式酸化法にはインコ法に代表される陰極酸化処理がある。本方法は硫酸―クロム酸溶液中にステンレス鋼を浸漬させ発色処理を施し、その後、カソード処理を施してクロム硬膜を得るというものである。発色処理時の浸漬電位を管理することで一定の不動態皮膜厚さを得ることができ、黒色に発色する。本方法で得られた表面は、膜厚さは1μm以下と薄く、剥離しにくいという特徴を有している。本方法は比較的低温(80℃前後)で処理できるので、ステンレスベルトの熱変形をもたらすことがなく好適である。加えて、陰極処理時にクロム硬膜が形成されるので耐磨耗性も比較的良好であり、本実施例のように摺動を受ける定着ベルトに不動態皮膜処理を施すのには適している。
また、別の湿式酸化法として陽極−陰極クロメート処理と呼ばれる方法もある。本方法は重クロム酸アンモニウムと硫酸クロム、クエン酸鉄アンモニウムの電解水溶液中で陰極、陽極電解処理を施すもので処理時間と電流密度を調整することで、任意の厚さの不動態皮膜を形成することができる。陰極電解処理を伴うので、インコ法と同様にクロム硬膜が形成され摺動を伴う定着ベルトには好適である。
また、さらに別の方法である太陽熱選択吸収皮膜処理法と呼ばれるものでも良い。本方法もインコ法と類似しており、100〜140℃程度の硫酸と重クロム酸ナトリウムあるいは重クロム酸カリウムの混合酸溶液中にステンレス鋼を一定時間浸漬して黒色の不動態皮膜を成長させる湿式酸化法の一種である。本方法ではクロム硬膜は形成されないが、インコ法と同様に陰極処理を施して硬膜化することは可能である。
また、さらに別の方法であるアルカリ不動態皮膜法と呼ばれる方法でもよい。これは水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液中に、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、重クロム酸ナトリウム、過酸化ナトリウムなどの酸化剤を混合させて140℃付近に加熱して不動態皮膜を形成する方法である。本方法は電源が不要な方法であるが、同溶液と図2に示した装置を用いて交番電解処理によって均一な皮膜を形成する変形例も考えられる。このとき、酸化剤を用いずに水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム水溶液にステンレス鋼を浸漬して、交番電解処理によって不動態皮膜を成長させてもよい。酸化剤を用いないので、反応は遅くなるが電解作用によって均一な不動態皮膜を形成することができる。
なお、ステンレス不動態皮膜の成長処理は、いずれも酸やアルカリ溶液にステンレス鋼を浸漬し、また場合によっては電解処理を施すものであり、水素に暴露される環境で酸化処理が実施されている。これはステンレスに不動態皮膜を形成させる上述の全ての場合に共通した問題である。定着ベルトに用いるステンレス薄肉円筒は、塑性加工によって加工硬化しており、塑性変形組織の界面に水素が侵入して水素脆化することがある。定着ベルトとして用いる場合には、繰り返し応力負荷を受けるため、水素脆化は疲労強度を著しく低下させる原因となる。しかし、吸蔵された水素は加熱処理することで除去することができる。その為、高温環境中で一定時間保管して、脱水素処理を施すのがよい。脱水素処理の温度は400〜500℃程度の高温とするとステンレスベルトに熱歪みを生じることがあるので、200〜300℃程度の比較的低温で、1〜2時間程度保存するのが好適である。
以上、述べたように、ステンレス鋼の不動態皮膜を成長させ、有色の皮膜を形成する方法を定着ベルト1に適用すると、剥離の問題が生じにくく、且つ、熱容量も増加させずに熱輻射率を高くする皮膜を得ることが出来る。また、定着ベルト1は支持部材3と摺動回転するが、摺動によるベルトの帯電を防止することが容易である。また、ステンレスベルトの温度検知手段9をベルト1の内周面に接触させた場合には、温度検知の時間遅れや磨耗、膜厚バラツキなどによる誤差を生じにくく検知精度を高くすることができる。
なお、SUSベルトの外周面には、厚さ200μmの弾性層と離型層とを形成して、定着ベルト1が完成する。本実施例では、ステンレスベルトは、その不動態膜成長処理において、外周面にはマスキング処理を施していないので外周面にも有色不動態皮膜が形成される。ここで、ステンレスの不動態皮膜は、多孔質構造なので、弾性層や、離型層を形成する際に接着強度がアンカー効果によって高められる利点がある。接着性を更に高めるにはSUSベルトの外周面にプライマーを塗布するとよい。
弾性層には、液状シリコーンゴム、熱加硫型シリコーンゴム等から選択することができ、またフッ素ゴム等も用いることができる。弾性層にシリコーンゴムを選択した場合には、SUSベルトに施すプライマーもシリコーン系とするのがよい。
離型層には、PFA、PTFE、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、ETFEなどの耐熱性フッ素樹脂が好適である。本実施例では、厚さ30μmのPFAチューブをシリコーンゴム層の上に被せて形成した。PFAチューブとシリコーンゴムとの接着性を高める為に、PFAチューブには内面を(株)潤工社製テトラエッチ(登録商標)(金属ナトリウム溶液)等で化学処理して接着性を改良したものを選択するとよい。PFAチューブの内面処理には化学処理以外にも、コロナ放電処理や紫外線処理、プラズマ等のドライプロセスを用いてもよい。
また、離型層に用いるフッ素樹脂はアルカリや酸性の薬品に対して侵食されないので、本実施例とは逆に、SUSベルトの外周面にフッ素皮膜を形成した後に酸化膜処理を行うこともできる。その場合には、酸化膜処理の際に、中間層の弾性層に酸化処理溶液が浸透し、酸化処理液で弾性層が膨潤しないように、ベルトの両端部をシールするのが望ましい。シールをしない場合には、定着ベルトを少し長めに作成して酸化処理後に両端をカットするとよい。
ここで、フッ素皮膜は、スプレイなどでコートされたものでなく、チューブ状の連続体を被せるようにすると、下層の弾性層が酸化溶液で侵されることを確実に防止できる。この場合には特に弾性層には熱加硫型のゴムを用いると、ゴムの架橋反応を促進させる為の加熱処理と同時に、脱水素処理も実施することが出来、製造工程を簡略化できるため良い。特に離型層にPFAやPTFEの粉末をコートして、350℃程度の高温で焼成する場合には、改めて脱水素の為の加熱処理を施す必要がなく合理的である。
以上、述べたように、不動態皮膜に覆われた金属薄肉管からなる定着ベルトを用いることで、内周面の輻射率を高め、且つ耐磨耗性を向上させることができ、オンデマンド定着を可能としつつ定着装置の寿命を延ばすことができる。
本発明にかかる定着装置は、ハロゲンランプを熱源として、薄肉金属ベルトの内周面の熱輻射率を高めるようにしているので、ウオームアップ時間が短く、且つ高速な電子写真装置に適用することができる。具体的には、レーザプリンタ、複合機、ファクシミリ等の画像記録装置に有用である。
1 定着ベルト
2 ハロゲンランプ
3 支持部材
5 押圧ロール
6 梁
7 定着パッド
8 断熱パッド
9 温度検知手段(サーミスタ)
2 ハロゲンランプ
3 支持部材
5 押圧ロール
6 梁
7 定着パッド
8 断熱パッド
9 温度検知手段(サーミスタ)
Claims (13)
- 被加熱体を加熱しつつ押圧する定着装置であって、
周を成して自転するベルト様の定着部材と、
前記定着部材の内周面が摺動接触しそれによってその定着部材を支持すると共にその定着部材の外周面を被加熱体と圧接させる支持部材と、
前記定着部材の周の内側にそれと前記支持部材とのそれぞれの間に空間をもって配置された発熱体と、
を含み備え、
前記定着部材は、その内周面が有色の不動態皮膜で覆われたステンレスを基材としたものであることを特徴とする定着装置。 - 被加熱体を加熱しつつ押圧する定着装置であって、
周を成して自転するベルト様の定着部材と、
前記定着部材の内周面が摺動接触しそれによってその定着部材を支持すると共にその定着部材の外周面を被加熱体と圧接させる支持部材と、
前記定着部材の周の内側にそれと前記支持部材とのそれぞれの間に空間をもって配置された発熱体と、
を含み備え、
前記定着部材は、その内周面が有色とされたステンレスを基材としたものであり、その外周の形状において最小半径が6mm以上12mm以下である部分を有したことを特徴とする定着装置。 - 前記定着部材は、その内周面が黒色であることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
- 前記発熱体は、前記定着部材の周面への熱伝播量に指向性が付与され、前記支持部材側への熱伝播量が小さくなる向きに取り付けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
- 前記支持部材は、前記定着部材の摺動接触面と対向する側にはより熱伝達率が低い断熱部材を含むことを特徴とした請求項1又は2に記載の定着装置。
- 前記支持部材は、前記発熱体へ対向する側の面にはより熱伝達率が低い断熱部材を含むことを特徴とした請求項1又は2に記載の定着装置。
- 前記支持部材は、前記発熱体へ対向する側の面に前記定着部材内周面の不動態皮膜より熱反射率の高い熱反射部材を含むことを特徴とした請求項1又は2に記載の定着装置。
- 当該装置は、前記支持部材に前記定着部材の温度を検知する手段が配置されたことを特徴とした請求項1又は2に記載の定着装置。
- 略筒状の基材に、その内周面について有色の不動態皮膜又はクロム酸化皮膜を形成する処理が施されたもので構成された定着ベルト。
- 前記不動態皮膜又はクロム酸化皮膜は、交番電解発色法によって前記基材に直接形成されたことを特徴とした請求項9記載の定着ベルト。
- 内周面の前記不動態皮膜又はクロム酸化皮膜は、前記基材外周面にフッ素皮膜を形成する処理が施された後に、形成されたことを特徴とした請求項9記載の定着ベルト。
- 前記不動態皮膜又はクロム酸化皮膜の形成処理後に筒両端をカットして作成されたことを特徴とした請求項11記載の定着ベルト。
- 前記不動態皮膜又はクロム酸化皮膜の形成処理後に加熱処理が施された請求項9記載の定着ベルト。
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-
2006
- 2006-06-28 JP JP2006177642A patent/JP2008009015A/ja not_active Withdrawn
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