JP2008000778A - ハット型金属製部品とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な加工上の手段によって、捩りや変形のない形状凍結性に優れたハット型金属製部品及びそれを製造する方法を提供すること。
【解決手段】天井部、縦壁部及びフランジ部よりなり、コの字型又はハの字型の断面形状にプレス成形されたハット型金属製部品の、少なくとも縦壁部の一部に、プレス成形後の残留応力を緩和する幅10mm以下の穴を複数形成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、自動車の車体パネルなどの構成部品として用いられている、金属の薄板材からプレス成形されたハット型金属製部品及びその製造方法に関する。
自動車の車体パネルなどの構成部品として、コの字型又はハの字型の断面形状を有する長尺のハット型金属製部品が多く用いられている。そのような部品は、例えば冷延鋼板よりなるブランク材を、プレス装置によりコの字型などに曲げて製造される。ハット型の金属製部品は、図1に示すように途中に屈曲部を有するものも多く、プレス成形後に、残留応力によるスプリングバック、そり、ねじれなどの形状凍結不良が発生しやすい問題があった。
従来、そのような問題を解決するための方法として、例えば特許文献1に示されているように、プレス金型に特別な工夫をしてスプリングバックを抑制する手段があったが、この手段では、対象製品ごとに特別なプレス金型を使用しなければならず、汎用性やコストの面で問題があった。
またプレス金型によらず、加工上の工夫によって発生する歪や残留応力を逃がす方法も知られている。
特許文献2には、曲げ成形部を曲げ加工するようにしたプレス成形方法において、曲げ部に予め複数の下穴をあけて曲げ加工し、曲げ加工後に下穴にバーリング加工を施すようにし、予め曲げ部に形成した下穴の作用で、材料の弾性回復によって曲げ角が減少するスプリングバック量が減少し、かつ、この下穴に施したバーリング加工により下穴周辺の剛性が増して成形精度が保持されるようにする技術が開示されている。
この技術は曲げ部の下穴による強度低下を、バーリング加工により補う必要があり、強度上やコスト上の問題がある。
特許文献3には、多数の孔をあけて軽量化したプレス成形用の板材に、さらに、X字形の孔パターンの応力緩和孔を一定の間隔で板材全面に多数設けることにより、応力緩和孔がプレス成形の際に変形して、局部応力の増加を抑える技術が開示されている。
この技術は、軽量化には有効であるが、強度を必要とする部材には使用できないという問題がある。
特許文献4には、板厚の異なる板材同士を互いに溶接して構成された集合ブランク部材において、厚板側の板材には、薄板側の板材との溶接部位端縁部に近接して複数の孔部を設けることにより、この集合ブランク部材にプレス成形作業を施す際に、厚板側の第1板材側から薄板側の第2板材側に伸びが集中することがなく、第1板材と第2板材との板厚差に起因する部分的な応力集中の発生を阻止する技術が開示されている。
この技術は、特定の製品に限定される技術であり、他の製品への応用の点で問題がある。
以上のように、特許文献2〜4に開示されている技術は、それぞれ上記のような問題があり、かつ、特定の製品に対する技術であり、図1に示すようなハット型部品の形状凍結不良の解消にそのまま適用できないという問題がある。また、特許文献1〜4には、形状凍結不良を、プレス成形後に簡単な手段によって低減することについては考慮されていないという問題がある。
特開平11−290951号公報 特開平7−148528号公報 特開平5−337580号公報 特開平6−218540号公報
そこで、本発明は、簡単な加工上の手段によって、ねじれや変形のない形状凍結性に優れたハット型金属製部品及びそれを製造する方法を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明は次のようにしたことを特徴とする。
請求項1の形状凍結性に優れたハット型金属製部品の発明は、天井部、縦壁部及びフランジ部よりなり、コの字型又はハの字型の断面形状にプレス成形されたハット型金属製部品であって、少なくとも縦壁部の一部に、プレス成形後の残留応力を緩和した幅10mm以下の穴を複数有することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、さらに、天井部及びフランジ部の少なくとも一方の一部にも前記穴を複数有することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1、2の発明において、さらに、穴の総面積が縦壁部、天井部及びフランジ部を合わせた総面積の10%以下であることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1〜3の発明において、1枚のブランクから一体成形されたものであることを特徴とする。
請求項5の形状凍結性に優れたハット型金属製部品の製造方法の発明は、金属帯をコイルから巻き戻した後、金属帯のプレス成形用のブランクとなる部分の一部に、プレス成形時に発生する応力を緩和する幅10mm以下の穴を複数形成した後、再度コイルに巻取り、その後、コイルを巻き戻し、巻き戻された金属帯からプレス成形用のブランクを切り出し、前記穴を有するブランクをコの字型又はハの字型の断面形状にプレス成形をすることを特徴とする。
請求項6の形状凍結性に優れたハット型金属製部品の製造方法の発明は、金属板あるいは金属帯からプレス成形用のブランクを切り出す際に、ブランクとなる部分の一部に、プレス成形時に発生する応力を緩和する幅10mm以下の穴を複数形成した後、該穴を有するブランクをコの字型又はハの字型の断面形状にプレス成形をすることを特徴とする。
請求項7の形状凍結性に優れたハット型金属製部品の製造方法の発明は、金属板あるいは金属帯からプレス成形用のブランクを切り出した後、ブランクの一部にプレス成形時に発生する応力を緩和する幅10mm以下の穴を複数形成し、該穴を有するブランクをコの字型又はハの字型の断面形状にプレス成形をすることを特徴とする。
請求項8の形状凍結性に優れたハット型金属製部品の製造方法の発明は、ブランクをコの字型又はハの字型の断面形状にプレス成形をした後、成形品の一部にプレス成形によって発生した応力を緩和する幅10mm以下の穴を複数形成することを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項5〜8の発明において、成形しようとするハット型金属製部品のプレス成形後の応力分布あるいは歪分布を求め、該応力分布あるいは歪分布から前記穴を複数形成する位置を求めることを特徴とする。
請求項1〜4の発明によれば、プレス部品の一部に穴を開けるという簡単な手段によって形状凍結性に優れたハット型金属製プレス部品を得ることができる。
請求項5〜7の発明によれば、あらかじめ穴があけられたブランクからハット型金属製部品が製造されるから、形状凍結性に優れたハット型金属製部品を容易に大量生産することができる。
請求項8の発明によれば、成形後のハット型金属製プレス部品に対して、該部品の一部に穴を開けるという簡単な手段によって該部品の形状不良の修復をすることができる。
請求項9の発明によれば、あらかじめ効率的に穴を形成する位置を決定することができる。
図1に示すようなプレス成形された長尺のハット型部品では、特にプレス成形後に発生するそりやねじれなどの形状凍結不良が問題になる。本発明者らは、そのようなそりやねじれの発生は、プレス成形後のハット型部品の長手方向における残留応力分布に基づくものであり、特に、ねじれの発生は、ハット型部品の縦壁部における長手方向応力の不均一に基づくものであることを見出した。
そして、特許文献2〜4によって示されているような、素材にあけた穴の変形を利用して、加工後に発生する残留応力を緩和する方法を、ハット型部品の長手方向応力の不均一の解消に応用することについて検討し、残留応力が偏析している部分に穴をあけることによって、形状凍結不良が低減できることを見出した。
以下、図2〜4を参照して本発明の実施の形態を説明する。
最初にプレス成形後のハット型部品の残留応力の分布を調べる。図2(a)に、フランジ部及び天井部の稜線が水平方向に不連続に曲がっているハット型部品について、3次元CADを利用したFEM応力解析による残留応力の分布を模式的に示す。図2(a)で、線で囲った部分が応力の偏析した部分であり、1は引張残留応力、2は圧縮残留応力の部分を示す。斜線の部分はそれぞれにおいてより応力の偏析が強い部分を表している。
なお、歪ゲージなどを用いて、実際にハット型部品に成形した後の歪の分布を調べ、歪値の偏析した部分を抽出するようにしてもよい。
そして、応力が偏析した部分について、例えば、成形後応力が引張強度の50%以上になる部分を計算で求め、図2(b)に示すように穴3をあける位置を決定する。
特に、縦壁には、ねじれを解消するために、圧縮と引張の残留応力が対になっている場所に穴を開ける必要がある。また、上ぞりの発生したハット型部品では、上面の残留応力が偏析している箇所に必要な穴を開けるようにする。
また、穴3は、図2(c)に示すように、上記の結果に基づいてあらかじめブランクにあけることもできる。
穴をあけることにより、圧縮残量応力の存在する箇所では、穴が圧縮応力の方向と直角方向に変形し、引張り残量応力の存在する箇所では、穴が引張り応力の方向に平行な方向に変形し、それぞれ応力を緩和できる。
形成する穴の形状は、全ての方向の応力に対応する点や、加工の容易さから円形が望ましいが、特許文献2に記載されているような長円形のものでもよく、穴の大きさは、小さいと応力緩和作用が低いので幅3mm以上が望ましく、また、大き過ぎると形成する個数が限られて効果的に穴を形成できなくなるから、10mm以下とする必要がある。大きさとしては8mm程度が好適である。なお、幅は穴の最大幅とする。
穴の個数は、多いほど応力緩和の効果が大きいが、ハット型部品に必要な強度を確保する点から制限される。ハット型部品の縦壁部のみに穴をあける場合には、縦壁部の面積の10%以下とし、天井部及びフランジ部にも穴を開ける場合でも、縦壁部、天井部及びフランジ部の総面積の10%以下とする。
次に、素材にあけた穴によって形状凍結不良を低減した本発明のハット型金属製部品の製造方法について説明する。
本発明のハット型金属製部品は図2を用いて説明したように、残留応力の解析結果をもとにハット型部品の穴を開ける位置を決定する。そして、決定された位置に基づいて実際に穴をあけてハット型部品の形状凍結不良を低減する方法には、穴のあいていないブランク材を用いてハット型部品を成形し、成形後に決定した穴位置に基づいて図2(b)のようにハット型部品に穴をあける方法と、ハット型部品に成形する前のブランクを準備する段階で、決定した穴位置に基づいてあらかじめ穴をあけて、図2(c)のようなブランク材を準備し、そのブランク材をハット型部品に成形する方法がある。
穴あけ手段としては、穴の形状や個数などに応じて、パンチやドリルあるいはレーザなどの周知の加工手段が適宜採用できる。
成形後のハット型部品に穴をあける方法は、連続的に生産する部品個数が少なく、かつ穴あけ箇所が少ない場合に好適である。あらかじめ穴をあけられたブランク材を用いる方法は、ハット型部品にプレス成形する時に穴が変形して応力を緩和できるので、形状凍結不良の低減により有効であるとともに、生産性が良いので、部品個数が多い場合や穴あけ箇所が多い場合に好適である。
あらかじめ穴をあけられたブランク材を得る方法については、図3(a)、(b)、(c)に示す方法がある。
(a)は、ブランク4に切り出された後に穴3をあける方法であり、(b)は、ブランク取りする前の金属板5の状態で穴3をあける方法である。
(c)は、板に切断する前のコイルの状態で穴3をあける方法であり、コイル6を巻き戻しながら金属帯に穴あけし、穴あけ後金属帯を再度巻取ってコイルの状態とする。その後、ハット型部品の製造時に、コイルは再度巻き戻され、巻き戻された金属帯は通常のブランキングラインを経てプレス成形される。この方法では、ハット型部品の製造時に穴あけ工程がないので、形状凍結不良のないハット型部品を生産性良く製造することができる。
以下に、本発明の実施例を説明する。
引張強さ780MPa級のTS780MP材と、980MPa級のTS980MP材より製造された板厚0.8mmと1.2mmの鋼板1〜鋼板4をプレス成形して、図4(a)に示す寸法のフランジ部及び天井部の稜線が水平方向に不連続に曲がっているハット型部品を作成した。
成形後の応力分布をそれぞれFEM解析で調べ、長手方向成形後応力が引張強度の50%以上である部分の範囲を求め、それぞれの範囲において、応力の大きさによって穴あけ個数を求め、それぞれの範囲において穴あけ位置を決めた。
そして、鋼板1〜4を用いて、それぞれ次の(1)〜(5)の5種類の試料を作成した。
(1)穴あけせずに成形のままのもの(穴あけなし)。
(2)上記解析結果に基づいて、図2(b)のように、成形後に少なくとも側壁部に、更に場合により天井部及びフランジ部の一方又は両方に穴を開ける形状不良を軽減する処理をしたもの(成形後穴あけ)。
(3)ハット型部品に成形後に上記のようにして求めた位置に穴が来るように、ブランクの状態での穴の位置をCADなどを用いて解析して求め、その位置に基づいて図3(a)のようにあらかじめブランクに穴を開け、そのブランクをプレス成形して新たにハット型部品を作成したもの(ブランクに穴あけ)。
(4)コイルからブランク取りするための板材を切り出した後に、上記(3)のようにして求めた位置に穴が来るように、板材のブランクとなる部分の一部に図3(b)のように穴を開け、その後板材からブランクを切り出してプレス成形し、新たにハット型部品を作成したもの(切り出し時に穴あけ)。
(5)コイルから巻き戻した金属帯のブランクとして切り出される部分に、ブランクに切り出し後に上記(3)のようにして求めた位置に穴が来るように、金属帯での穴の位置を求めておき、この穴位置に基づいてコイルから巻き戻された金属帯の一部に図3(c)のように穴をあけた後、一旦コイルに巻取り、その後再度コイルを巻き戻して、巻き戻した後の金属帯からCADなどを用いてブランクを切り出す位置を調整してブランクを切り出し、そのブランクをプレス成形して、新たにハット型部品を作成したもの(コイルに穴あけ)。
鋼板1〜4のそれぞれについて、上記(1)〜(5)のようにしたハット型部品のねじれ角θを測定した。なお、図4(b)に示すように、端部Aの天井部が水平になるようにしたときの端部Bの天井部が水平からなす角をねじり角θとした。
結果を鋼板の板厚ごとにまとめて表1、2に示す。本発明によるハット型部品は、ねじれθが低減されており、特に、あらかじめブランクの状態で穴があけられている(3)〜(5)の場合は、より形状凍結性に優れるハット型部品を得ることができた。
Figure 2008000778
Figure 2008000778
以上では、図1に示されるようなハット型金属製部品を例にして本発明の実施の形態を説明したが、その実施の形態は本発明の例であり、本発明は、該実施の形態により制限されるものではなく、特許請求の範囲の請求項に記載される事項によってのみ規定されており、上記以外の実施の形態も実施可能である。
ハット型金属製部品の一例を示す図である。 本発明に基づいて形状凍結製に優れたハット型金属製部品を得るための説明図である。 本発明の製造方法の一例を説明するための図である。 本発明の実施例を説明するための図である。
符号の説明
1 引張残留応力の偏析した範囲
2 圧縮残留応力の偏析した範囲
3 残留応力を緩和するための穴
4 ブランク
5 ブランクを切り出す前の板材
6 コイル

Claims (9)

  1. 天井部、縦壁部及びフランジ部よりなり、コの字型又はハの字型の断面形状にプレス成形されたハット型金属製部品であって、少なくとも縦壁部の一部に、プレス成形後の残留応力を緩和した幅10mm以下の穴を複数有することを特徴とする形状凍結性に優れたハット型金属製部品。
  2. 天井部及びフランジ部の少なくとも一方の一部にも前記穴を複数有することを特徴とする請求項1に記載のハット型金属製部品。
  3. 前記穴の総面積が縦壁部、天井部及びフランジ部を合わせた総面積の10%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハット型金属製部品。
  4. 1枚のブランクから一体成形されたものであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の形状凍結性に優れたハット型金属製部品。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載のハット型金属製部品を製造する方法であって、金属帯をコイルから巻き戻した後、金属帯のプレス成形用のブランクとなる部分の一部に、プレス成形時に発生する応力を緩和する幅10mm以下の穴を複数形成した後、再度コイルに巻取り、その後、コイルを巻き戻し、巻き戻された金属帯からプレス成形用のブランクを切り出し、前記穴を有するブランクをコの字型又はハの字型の断面形状にプレス成形をすることを特徴とする形状凍結性に優れたハット型金属製部品の製造方法。
  6. 請求項1〜4の何れか1項に記載のハット型金属製部品を製造する方法であって、金属板あるいは金属帯からプレス成形用のブランクを切り出す際に、ブランクとなる部分の一部に、プレス成形時に発生する応力を緩和する幅10mm以下の穴を複数形成した後、該穴を有するブランクをコの字型又はハの字型の断面形状にプレス成形をすることを特徴とする形状凍結性に優れたハット型金属製部品の製造方法。
  7. 請求項1〜4の何れか1項に記載のハット型金属製部品を製造する方法であって、金属板あるいは金属帯からプレス成形用のブランクを切り出した後、ブランクの一部にプレス成形によって発生する応力を緩和する幅10mm以下の穴を複数形成し、該穴を有するブランクをコの字型又はハの字型の断面形状にプレス成形をすることを特徴とする形状凍結性に優れたハット型金属製部品の製造方法。
  8. 請求項1〜4の何れか1項に記載のハット型金属製部品を製造する方法であって、ブランクをコの字型又はハの字型の断面形状にプレス成形をした後、成形品の一部にプレス成形によって発生した応力を緩和する幅10mm以下の穴を複数形成することを特徴とする形状凍結性に優れたハット型金属製部品の製造方法。
  9. 成形しようとするハット型金属製部品のプレス成形後の応力分布あるいは歪分布を求め、該応力分布あるいは歪分布から前記穴を複数形成する位置を求めることを特徴とする請求項5〜8の何れか1項に記載のハット型金属製部品の製造方法。
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