JP2007523976A - 潤滑油組成物の高速大量処理審査方法 - Google Patents

潤滑油組成物の高速大量処理審査方法 Download PDF

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Abstract

【課題】潤滑油組成物の堆積物生成傾向を決定するための高速大量処理審査方法を提供する。
【解決手段】複数の異なる組成物の液体試料の堆積物生成傾向を決定する方法を提供する。各試料は、一種以上の潤滑粘度の基油と一種以上の潤滑油添加剤とからなる一種以上の潤滑油組成物を含んでいる。その方法は有利にはコンビナトリアル・ケミストリを使用して最適化することができ、それにより潤滑油組成物の組合せのデータベースが生成する。市場の状況が変化したり、および/または製品要求条件または顧客仕様が変わっても、所望の製品を製造するのに適した条件を中断時間無しか又は僅かの中断時間で確定することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、一般的には潤滑油組成物を高速大量処理により審査する方法に関するものである。
物質合成にコンビナトリアル(組み合わせ)合成を使用することは、迅速な合成及び審査(スクリーニング)方法を使用して高分子、無機又は固体物質のライブラリを構築することを目的とした、比較的新しい研究領域である。例えば、反応器技術の進歩によって、化学者や技術者は、新規な薬品の発見を追求して別々の有機分子の大量ライブラリを迅速に作製する能力が与えられ、それによりコンビナトリアル・ケミストリと呼ばれる成長過程にある研究部門の発展に至っている。コンビナトリアル・ケミストリとは一般に、多様性のある物質または化合物の収集群(普通はライブラリとして知られている)を作製するための方法および物質、並びに所望の特性についてライブラリを評価または審査するための技術および機器を意味している。
今日、潤滑剤産業における研究には、候補の潤滑油組成物を別個に製造すること、次に大量の候補組成物を用いて試験することにより候補の巨視的分析を行うことが含まれる。さらに、各候補組成物を試験するのに用いられる方法では人手による操作が要求される。これによって、試験して中心的な組成物と確定することができる組成物の数は順次、著しく減少する。
従来の審査操作に関連した欠点は、次のように理解することができる。一例として、例えば客車用やヘビーデューティ用ディーゼルエンジン油として使用される潤滑油組成物のリン及び硫黄分を低減することに対する行政および自動車産業からの圧力が、例えば酸化試験、摩耗試験および適合性試験など一定の試験を満足しながら同時にリン及び硫黄を低レベルで含む油組成物を確定する新しい研究を導いている。このような状況で、米軍規格MIL−L−46152Eおよび日米自動車工業会が規定したILSAC規格は、現在、エンジン油のリン分を0.10質量%かそれ未満にするように要求していて、将来的にはリン分を更に低いレベル、例えば2004年6月には0.08質量%未満、2006年1月には0.05質量%未満にするように提案している。また、現在、エンジン油の硫黄分については工業規格要求が無いものの、2007年6月の排出ガス要求値を満たすために硫黄分を0.3質量%未満にすることが提案されている。従って、潤滑油中のリン及び硫黄の量を更にもっと減少させ、それにより将来の工業規格が提案するエンジン油のリン及び硫黄分を満たしながら、同時に高リン及び硫黄分エンジン油が有する酸化又は腐食防止性および耐摩耗性をなお保持していることが望ましい。これを達成するためには、多数の提案された潤滑油組成物を試験してどの組成物が有用であるかを決定しなければならない。
さらに、例えば変速機液、油圧作動液、ギヤ油、船舶用シリンダ油、圧縮機油および冷凍機潤滑剤等のような他の潤滑剤用途でも、同様の仕様の変化や変わる顧客要求が再配合に向けて奮闘を駆り立てている。
しかしながら、上述したように、潤滑剤産業における今日の研究では再配合を迅速なやり方で実施することは不可能である。このように当該分野では、潤滑油組成物の製造およびそのような組成物の審査のためのより効率的で経済的で組織だった方法を必要としている。例えば、多数の潤滑油組成物は堆積物を生成する傾向がある。一般に、エンジンの熱した部分や冷えた部分における堆積物生成には、(褐色又は黒色の)ガム状の層や主として炭素系堆積物であるもっと硬い堆積物の生成が含まれる。これらの堆積物は、例えばピストンリングの自由運動、過給機の空気搬送部材の圧縮等のような個々の部材の機能を害する。その結果、排出ガスの増加に加えて重大なエンジン損傷や動力損失を被る。さらに、油空間の水平表面には率先してスポンジ状の堆積物層が形成され、極端な場合にはエンジンのオイルフィルタやオイルダクトも目詰りさせて、エンジン損傷を招く可能性がある。
また、例えば自動車やトラックの内燃機関が使用中過酷な環境に置かれても、堆積物が生成する。この環境の結果、例えば鉄化合物など油中の不純物種の存在が触媒として作用し、また使用中に油が受けた高温によっても促進される酸化を油が被ることになる。油の触媒酸化は、腐食酸化生成物やスラッジが油中に生成する原因となるが、油の粘度の増加、あるいは固化までも引き起こすことがある。
従って、複数の試料候補の潤滑油組成物を、各試料を少量で用いて堆積物生成傾向について迅速に審査することが望まれている。このようにして、膨大な数の多様性のある組成物の高速大量処理(ハイスループット)による製造及び審査を遂行して、どの添加剤および/または組成物で堆積物生成傾向が減じたかを確定することができる。
本発明では、潤滑油組成物の堆積物生成傾向を決定するための高速大量処理審査方法を提供する。本発明の一態様に従って、潤滑油組成物をプログラム制御下で審査する高速大量処理方法であって、下記の工程からなる方法を提供する:
(a)複数の異なる潤滑油組成物試料であって、各試料が(i)主要量の少なくとも一種の潤滑粘度の基油と(ii)少量の少なくとも一種の潤滑油添加剤とからなる試料を用意する工程、(b)各試料の堆積物生成を測定して、各試料についての堆積物生成データとする工程、そして(c)工程(b)の結果を出力する工程。
本発明の第二の態様では、潤滑油組成物試料の堆積物生成傾向を決定するためのシステムであって、下記の手段を含むシステムを提供する:
(a)複数の試料受け器であって、各受け器には、(i)主要量の少なくとも一種の潤滑粘度の基油と(ii)少量の少なくとも一種の潤滑油添加剤とからなる異なる潤滑油組成物試料が含まれている、
(b)試料受け器を、試料それぞれの堆積物生成を測定するための試験ステーションに別々に位置させる受け器移動手段、
(c)試験ステーションにて各試料の堆積物生成を測定して試料に関連した堆積物生成データを得て、そして堆積物生成データをコンピュータ制御装置に転送する手段。
本発明の方法およびシステムによって、有利なことには、多数の異なる組成物試料を効率的なやり方で審査して、試料の堆積物生成傾向、例えばどの位の速度で堆積物が生成するか、何度の温度で堆積物が生成するか、および堆積物の質量を決定することが可能になる。
以下に、様々な態様について図面を参照しながら説明する。
本発明は、潤滑油組成物の堆積物生成傾向を決定するための高速大量処理審査方法に関する。「高速大量処理」なる表現は、本明細書で使用するとき、比較的多数の異なる潤滑油組成物を迅速に製造して分析できることを意味すると理解されたい。本発明の審査方法の一態様の第一工程では、少なくとも一種の潤滑油組成物を複数の試料受け器それぞれに導入し、それにより各受け器は、各受け器内で混ぜ合わせた少なくとも一種の基油および/または少なくとも一種の添加剤の量百分率及び/又は種類に応じて、組成が違っている異なる潤滑油組成物を含んでいる。
各試料の組成物に関するデータはデータライブラリに保存される。保存された組成物の各々の堆積物生成データに関係した情報を加えることにより、所望の作動条件または法定要求条件で堆積物生成試験を行ってうまくいくことが可能な候補組成物の選択が実質的に容易になる。従って、この情報をコンビナトリアル・ライブラリに保存することは、ある試験の新しい要求値に応じて多数の潤滑油組成物を迅速に選択することを可能にするだけではなく、例えばライブラリに載った組成物の貯蔵安定度、酸化安定度、摩耗安定度、分散性データ、エラストマー適合性等に加えて、情報の別の断片ともなる。また、この情報によって、必要な添加剤の変更を最低原価で算定することも可能になる。操作は、プログラム制御下で有利に遂行され、例えばマイクロプロセッサ又は他のコンピュータ制御装置により自動制御される。「プログラム制御」なる表現は、本明細書で使用するとき、本発明で複数の潤滑油組成物を供給するのに使用される装置が、マイクロプロセッサ又は他のコンピュータ制御装置により自動化され制御されることを意味すると理解されたい。
本発明の高速大量処理審査方法に使用される潤滑油組成物は、少なくとも一種の潤滑粘度の基油と少なくとも一種の潤滑油添加剤とを含有している。一般に本発明の高速大量処理審査方法に使用される潤滑油組成物は、少なくとも一種の潤滑粘度の基油を主要量で、例えば組成物の全質量に基づき50質量%以上、好ましくは約70質量%以上、より好ましくは約80乃至約99.5質量%、そして最も好ましくは約85乃至約98質量%の量で、それと共に少なくとも一種の前記潤滑油添加剤を少量で含有している。
「基油」なる表現は、本明細書で使用するとき、単一の製造者により同一の仕様で(供給原料や製造者の所在地とは無関係に)製造され、同一の製造者の仕様を満たし、そして独特の処方、製造物確認番号またはその両方により確認される潤滑剤成分である基材油または基材油のブレンドを意味すると理解されたい。本発明に使用される基油は、任意のあらゆる用途で、例えばエンジン油、船舶用シリンダ油、天然ガスエンジン油、鉄道油、二サイクルエンジン油、トラクタ油、ヘビーデューティディーゼルエンジン油、トラック油、および油圧作動油、ギヤ油、変速機液などの機能液等として潤滑油組成物を配合するのに使用される、現在知られているか、もしくは後年発見される如何なる潤滑粘度の基油であってもよい。さらに、本発明に使用される基油は任意に、高分子量アルキルメタクリレート、エチレン−プロピレン共重合体またはスチレン−ブタジエン共重合体などのオレフィン共重合体等、およびそれらの混合物のような粘度指数向上剤を含有することができる。
当該分野の熟練者であれば容易に理解できるように、基油の粘度は用途に依存する。よって、本発明に用いられる基油の粘度は通常は、摂氏100度(℃)で約2乃至約2000センチストークス(cSt)の範囲にある。エンジン油として用いられる個々の基油は、100℃の動粘度範囲が一般に約2cSt乃至約30cStであり、好ましくは約3cSt乃至約16cSt、最も好ましくは約4cSt乃至約12cStであり、そして所望とする最終用途および完成油の添加剤に応じて選択もしくはブレンドされて、所望のグレードのエンジン油、例えばSAE粘度グレードが0W、0W−20、0W−30、0W−40、0W−50、0W−60、5W、5W−20、5W−30、5W−40、5W−50、5W−60、10W、10W−20、10W−30、10W−40、10W−50、15W、15W−20、15W−30または15W−40である潤滑油組成物とされる。ギヤ油として用いられる油の粘度は、100℃で約2cSt乃至約2000cStの範囲にある。
基材油は、種々様々な方法を使用して製造することができ、その例としては、これらに限定されるものではないが、蒸留、溶剤精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化および再精製を挙げることができる。再精製油は、製造中に、汚染により、あるいは以前の使用中に混入した物質を実質的に含むことはない。本発明の潤滑油組成物の基油は、任意の天然または合成の潤滑基油であってよい。好適な炭化水素合成油としては、これらに限定されるものではないが、エチレンの重合によりまたは1−オレフィンの重合により合成されてポリアルファオレフィン又はPAO油のような重合体とされた油、または一酸化炭素ガスと水素ガスを用いてフィッシャー・トロプシュ法などの炭化水素合成法により合成された油を挙げることができる。例えば、好適な基油は、重質留分を含む場合でもその量が僅かである、例えば100℃粘度が20cStか、それ以上である潤滑油留分を殆ど含むことのない油である。
基油は、天然の潤滑油、合成の潤滑油またはそれらの混合物から誘導することができる。好適な基油としては、合成ろうおよび粗ろうの異性化により得られた基材油、並びに原油の芳香族及び極性成分を(好ましくは溶剤抽出ではなく)水素化分解して製造した水素化分解基材油を挙げることができる。好適な基油としては、API公報1509、第14版、補遺I、1998年12月に規定されている全API区分I、II、III、IV及びVに含まれるものが挙げられる。IV種基油はポリアルファオレフィン(PAO)である。V種基油には、I、II、III又はIV種に含まれなかったその他全ての基油が含まれる。II、III及びIV種基油が本発明に使用するのに好ましいが、これらの好ましい基油は、I、II、III、IV及びV種基材油又は基油を一種以上混ぜ合わせることにより製造することができる。
使用できる天然油としては、鉱油系潤滑油、例えば液体石油、パラフィン系、ナフテン系又は混合パラフィン−ナフテン系の溶剤処理又は酸処理した鉱油系潤滑油、石炭や頁岩から誘導された油、動物油および植物油(例えばナタネ油、ヒマシ油およびラード油)等を挙げることができる。
使用できる合成潤滑油としては、これらに限定されるものではないが、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油、具体的には重合及び共重合オレフィン、例えばポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレン共重合体、塩素化ポリブチレン、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)等およびそれらの混合物;アルキルベンゼン、例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)−ベンゼン等;ポリフェニル、例えばビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル等;アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似物および同族体等を挙げることができる。
他の使用できる合成潤滑油としては、これらに限定されるものではないが、炭素原子数5以下のオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブテン、ペンテンおよびそれらの混合物を重合することにより製造された油が挙げられる。そのような重合体油の製造方法も当該分野の熟練者にはよく知られている。
別の使用できる合成炭化水素油としては、適正な粘度を有するアルファオレフィンの液体重合体が挙げられる。特に有用な合成炭化水素油は、C6−C12アルファオレフィンの水素化液体オリゴマー、例えば1−デセン三量体である。
使用できる合成潤滑油の別の部類としては、これらに限定されるものではないが、アルキレンオキシド重合体、すなわち単独重合体、共重合体、および末端ヒドロキシル基が例えばエステル化またはエーテル化により変性したそれらの誘導体を挙げることができる。これらの油の例示としては、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合により合成された油、これらポリオキシアルキレン重合体のアルキル及びフェニルエーテル(例えば、平均分子量1000のメチルポリプロピレングリコールエーテル、分子量500−1000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量1000−1500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテル等)、またはそれらのモノ及びポリカルボン酸エステル、例えば酢酸エステル、混合C3−C8脂肪酸エステル、またはテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルがある。
使用できる合成潤滑油の別の部類としては、これらに限定されるものではないが、ジカルボン酸、例えばフタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸等と、各種アルコール、例えばブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等とのエステルが挙げられる。これらエステルの具体例としては、ジブチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ−n−ヘキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソデシルアゼレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジエイコシルセバケート、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、および1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルヘキサン酸と反応させて生成した複合エステル等を挙げることができる。
また、合成油として使用できるエステルとしては、これらに限定されるものではないが、炭素原子数約5〜約12のカルボン酸と、アルコール、例えばメタノール、エタノール等、ポリオールおよびポリオールエーテル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール等とから製造されたものも挙げることができる。
ケイ素系の油、例えばポリアルキル、ポリアリール、ポリアルコキシ又はポリアリールオキシ−シロキサン油及びシリケート油は、合成潤滑油の別の有用な部類を構成する。これらの具体例としては、以下に限定されるものではないが、テトラエチルシリケート、テトラ−イソプロピルシリケート、テトラ−(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ−(4−メチル−ヘキシル)シリケート、テトラ−(p−t−ブチルフェニル)シリケート、ヘキシル−(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン、およびポリ(メチルフェニル)シロキサン等を挙げることができる。更に別の使用できる合成潤滑油としては、これらに限定されるものではないが、リン含有酸の液体エステル、例えばリン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、デカンホスフィン酸のジエチルエステル等、および高分子量テトラヒドロフラン等が挙げられる。
潤滑油は、天然、合成または上に開示したこれら種類のうちの任意の二種以上の混合物の未精製、精製及び再精製の油から誘導することができる。未精製油は、天然原料または合成原料(例えば、石炭、頁岩またはタール・サンド・ビチューメン)から直接に、それ以上の精製や処理無しに得られた油である。未精製油の例としては、これらに限定されるものではないが、レトルト操作により直接得られた頁岩油、蒸留により直接得られた石油、またはエステル化処理により直接得られたエステル油が挙げられ、各々その後それ以上の処理無しに使用される。精製油は、一以上の性状を改善するために一以上の精製工程で更に処理されたことを除いては、未精製油と同じである。これらの精製技術は、当該分野の熟練者には知られているが、例えば溶剤抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、ろ過、パーコレート、水素化処理、脱ろう等が挙げられる。再精製油は、使用済の油を精製油を得るのに用いたのと同様の処理で処理することにより得られる。そのような再精製油は、再生又は再処理油としても知られていて、使用された添加剤や油分解生成物の除去を目的とする技術によりしばしば更に処理される。
ろうの水素異性化から誘導された潤滑基材油も、単独で、あるいは前記天然及び/又は合成基材油と組み合わせて使用することができる。そのようなろう異性体油は、天然又は合成ろうまたはそれらの混合物を水素異性化触媒上で水素異性化することにより製造される。
天然ろうは一般に、鉱油を溶剤脱ろうすることにより回収された粗ろうであり、合成ろうは一般に、フィッシャー・トロプシュ法により製造されたろうである。
本発明に係る潤滑油組成物の第二成分は、少なくとも一種の潤滑油添加剤である。本発明に使用される潤滑油添加剤は、潤滑油組成物を配合するのに使用される現在知られているか、もしくは後年発見される任意の添加剤であってよい。本発明に使用される潤滑油添加剤としては、これらに限定されるものではないが、酸化防止剤、耐摩耗性添加剤、金属清浄剤などの清浄剤、さび止め添加剤、曇り除去剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、摩擦緩和剤、流動点降下剤、消泡剤、補助溶剤、パッケージ混合剤、腐食防止剤、無灰分散剤、染料、極圧剤等、およびそれらの混合物を挙げることができる。グリースには、適当な増粘剤を添加する必要がある。各種の添加剤が知られていて市販もされている。本発明に係る種々の潤滑油組成物の製造にも、これらの添加剤またはその類似化合物を用いることができる。好ましくは、少なくとも一種の添加剤は酸化防止剤、清浄剤、無灰分散剤またはそれらの混合物である。
あるいは、潤滑油添加剤(類)は更に希釈油を含んで添加剤濃縮物を形成することができる。これら濃縮物は通常、希釈油を少なくとも約98質量%乃至約10質量%、好ましくは約98質量%乃至約25質量%、最も好ましくは約97質量%乃至約50質量%、および上記添加剤(類)を約2質量%乃至約90質量%、好ましくは約2乃至約75質量%、最も好ましくは約3質量%乃至約50質量%含有している。濃縮物に適した希釈剤としては任意の不活性希釈剤、好ましくは潤滑粘度の油、例えば後述する基油が挙げられ、それにより濃縮物を容易に潤滑油と混合して潤滑油組成物を製造することができる。希釈剤として使用することができる好適な潤滑油は、任意の潤滑粘度の油であってよい。
酸化防止剤の例としては、これらに限定されるものではないが、アミン型、フェノール系、立体障害のあるヒンダードフェノール、第二級芳香族アミン系酸化防止剤、硫化フェノール系酸化防止剤、油溶性銅化合物、リン含有酸化防止剤、および有機硫化物、二硫化物及び多硫化物等を挙げることができる。
立体障害のあるヒンダードフェノール系酸化防止剤の例としては、これらに限定されるものではないが、オルト−アルキル化フェノール系化合物、例えば2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、2,6−ジイソプロピルフェノール、2−メチル−6−t−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4−(N,N−ジメチルアミノメチル)−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−メチル−6−スチリルフェノール、2,6−ジスチリル−4−ノニルフェノール、およびそれらの類似物及び同族体を挙げることができる。そのような単核フェノール系化合物の二種以上の混合物も適している。
本発明の潤滑油組成物に使用される他のフェノール系酸化防止剤の例としては、これらに限定されるものではないが、一以上のメチレンで架橋したアルキルフェノール、一以上の立体障害のある非架橋フェノール系化合物、およびそれらの混合物を挙げることができる。メチレン架橋化合物の例としては、これらに限定されるものではないが、4,4’−メチレンビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)、4,4’−メチレンビス(2−t−アミル−o−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、および4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)等を挙げることができる。特に好ましいのはメチレン架橋アルキルフェノールの混合物であり、例えば米国特許第3211652号明細書に記載されているものがあり、その内容も参照内容として本明細書の記載とする。
アミン系酸化防止剤も本発明の潤滑油組成物に使用することができる。その例としては、これらに限定されるものではないが、油溶性芳香族第二級アミン、芳香族第二級ポリアミン等、およびそれらの組合せが挙げられ、芳香族第二級アミンが好ましい。芳香族第二級モノアミンの例としては、ジフェニルアミン、アルキル置換基1又は2個を含み、各アルキル基の炭素原子数が約16までであるアルキルジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、フェニル−ベータ−ナフチルアミン、アルキル又はアラルキル基を少なくとも1又は2個含み、各基の炭素原子数が約16までであるアルキル又はアラルキル置換フェニル−アルファ−ナフチルアミン、およびアルキル又はアラルキル基を少なくとも1又は2個含み、各基の炭素原子数が約16までであるアルキル又はアラルキル置換フェニル−ベータ−ナフチルアミン等を挙げることができる。
芳香族アミン系酸化防止剤の好ましい種類は、下記一般式のアルキル化ジフェニルアミンである:

1−C6−H4−NH−C64−R2

式中、R1は、炭素原子数6〜12、好ましくは炭素原子数8又は9のアルキル基(好ましくは、分枝アルキル基)であり、そしてR2は、水素原子、または炭素原子数6〜12、好ましくは炭素原子数8又は9のアルキル基(好ましくは、分枝アルキル基)である。最も好ましくは、R1とR2は同じである。そのような好ましい一化合物は、ノーガルベ(Naugalube)438Lとして市販されていて、主としてノニル基が分枝の4,4’−ジノニルジフェニルアミン、すなわち、ビス(4−ノニルフェニルアミン)であると分かっている物質である。
本発明の潤滑油組成物に使用される別の酸化防止剤は、一種以上の液体の部分硫化フェノール系化合物からなり、例えば一塩化硫黄をフェノールの液体混合物と反応させることにより製造されたものがある、ただし、フェノール混合物のうちの少なくとも約50質量%は一種以上の反応性ヒンダードフェノールからなり、そして液体生成物が生成するように、反応性ヒンダードフェノールモル当り一塩化硫黄約0.3乃至約0.7グラム原子となるような割合である。そのような液体生成物の組成物を製造するのに使用できる代表的なフェノール混合物としては、2,6−ジ−t−ブチルフェノール約75%(質量で)、2−t−ブチルフェノール約10%、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール約13%、および2,4−ジ−t−ブチルフェノール約2%を含む混合物が挙げられる。反応は発熱であり、約15℃乃至約70℃の範囲内に維持することが好ましくは、最も好ましくは約40℃から約60℃の間に維持する。
種々の酸化防止剤の混合物も本発明の潤滑油組成物に使用することができる。好適な一混合物は、(i)少なくとも三種の異なった立体障害のある第三級ブチル化一価フェノールの油溶性混合物であって、25℃で液体状態にあるもの、(ii)少なくとも三種の異なった立体障害のある第三級ブチル化メチレン架橋ポリフェノールの油溶性混合物、および(iii)アルキル基が炭素原子数8〜12の分枝アルキル基である少なくとも一種のビス(4−アルキルフェニル)アミンの組合せからなり、(i)、(ii)および(iii)の割合は質量に基づき、(iii)成分の質量部当り(i)成分約3.5乃至約5.0部で、(ii)成分約0.9乃至約1.2部の範囲にある。上記のそのような酸化防止剤の例は米国特許第5328619号明細書に開示されていて、その内容も参照内容として本明細書の記載とする。他の有用な酸化防止剤としては米国特許第4031023号明細書に開示されているものがあり、その内容も参照内容として本明細書の記載とする。
耐摩耗性添加剤の例としては、これらに限定されるものではないが、ジアルキルジチオリン酸亜鉛およびジアリールジチオリン酸亜鉛、例えばボーン(Born)、外著、「種々の潤滑メカニズムにおけるある種の金属ジアルキル及びジアリールジチオリン酸塩の化学構造と有効性との関係」、ルブリケーション・サイエンス(Lubrication Science)、第4−2号、1992年1月(例えばp.97−100参照)掲載の論文に記載されているもの;アリールリン酸エステル及び亜リン酸エステル、硫黄含有エステル、リン硫黄化合物、金属又は無灰ジチオカルバメート、キサントゲン酸エステル、硫化アルキル等、およびそれらの混合物を挙げることができる。
清浄剤の例としては、これらに限定されるものではないが、スルホネート清浄剤のような過塩基性又は中性清浄剤、例えばアルキルベンゼンと発煙硫酸から製造されたもの、II族金属過塩基性硫化アルキルフェノール等;フェネート(高過塩基性又は低過塩基性);高過塩基性フェネートステアレート;フェノレート;サリチレート;ホスホネート;チオホスホネート;イオン性界面活性剤等、およびそれらの混合物を挙げることができる。低過塩基性金属スルホネートは、一般に全塩基価(TBN)が約0乃至約30、好ましくは約10乃至約25である。低過塩基性金属スルホネートおよび中性金属スルホネートが当該分野ではよく知られている。
さび止め添加剤の例としては、これらに限定されるものではないが、非イオン性ポリオキシアルキレン添加剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート;ステアリン酸および他の脂肪酸;ジカルボン酸;金属石鹸;脂肪酸アミン塩;重質スルホン酸の金属塩;多価アルコールの部分カルボン酸エステル;リン酸エステル;(短鎖)アルケニルコハク酸;それらの部分エステルおよびそれらの窒素含有誘導体;合成アルカリールスルホネート、例えば金属ジノニルナフタレンスルホネート等;およびそれらの混合物を挙げることができる。
摩擦緩和剤の例としては、これらに限定されるものではないが、アルコキシル化脂肪アミン;ホウ酸化脂肪エポキシド;脂肪亜リン酸エステル;脂肪エポキシド;脂肪アミン;ホウ酸化アルコキシル化脂肪アミン;脂肪酸の金属塩;脂肪酸アミド;グリセロールエステル;ホウ酸化グリセロールエステル;および米国特許第6372696号明細書に開示されている脂肪イミダゾリン(その内容も参照内容として本明細書の記載とする);C4−C75、好ましくはC6−C24、最も好ましくはC6−C20の脂肪酸エステルと、アンモニアおよびアルカノールアミン、例えば米国特許出願第10/402170号(2003年3月28日出願)の明細書に開示されているもの(その内容も参照内容として本明細書の記載とする)からなる群より選ばれた窒素含有化合物との反応生成物から得られた摩擦緩和剤等、およびそれらの混合物を挙げることできる。
消泡剤の例としては、これらに限定されるものではないが、アルキルメタクリレートの重合体;ジメチルシリコーンの重合体等、およびそれらの混合物を挙げることができる。
無灰分散剤の例としては、これらに限定されるものではないが、ポリアルキレンコハク酸無水物;ポリアルキレンコハク酸無水物の非窒素含有誘導体;コハク酸イミド、カルボン酸アミド、炭化水素モノアミン、炭化水素ポリアミン、マンニッヒ塩基、ホスホンアミド、チオホスホンアミドおよびリンアミドからなる群より選ばれる塩基性窒素化合物;チアゾール、例えば2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾールおよびそれらの誘導体;トリアゾール、例えばアルキルトリアゾールおよびベンゾトリアゾール;アミン、アミド、イミン、イミド、ヒドロキシルおよびカルボキシル等を含む一以上の追加極性官能基を持つカルボン酸エステルを含む共重合体等、例えば長鎖アルキルアクリレート又はメタクリレートと上記官能基を持つ単量体との共重合により製造された生成物;およびそれらの混合物を挙げることができる。
ポリアルキレンコハク酸無水物分散剤は、ポリイソブテニルコハク酸無水物(PIBSA)であることが好ましい。本発明に使用されるポリアルキレンコハク酸無水物のポリアルキレン尾の数平均分子量は、少なくとも350であり、好ましくは約750乃至約3000、最も好ましくは約900乃至約1100である。本発明に使用するのに適したポリアルキレンコハク酸無水物の例としては、米国特許第3361673号明細書に記載の熱的PIBSA(ポリイソブテニルコハク酸無水物)、米国特許第3172892号明細書に記載の塩素化PIBSA、米国特許第3912764号明細書に記載の熱的及び塩素化PIBSAの混合物、米国特許第4234435号明細書に記載の高コハク酸比PIBSA、米国特許第5112507号及び第5175225号明細書に記載のポリPIBSA、米国特許第5565528号及び第5616668号明細書に記載の高コハク酸比ポリPIBSA、米国特許第5286799号、第5319030号及び第5625004号明細書に記載の遊離基PIBSA、米国特許第4152499号、第5137978号及び第5137980号明細書に記載の高メチルビニリデンポリブテンから製造されたPIBSA、欧州特許出願公開第EP355895号明細書に記載の高メチルビニリデンポリブテンから製造された高コハク酸比PIBSA、米国特許第5792729号明細書に記載の三元共重合体PIBSA、米国特許第5777025号及び欧州特許出願公開第EP542380号明細書に記載のスルホン酸PIBSA、および米国特許第5523417号及び欧州特許出願公開第EP602863号明細書に記載の精製PIBSAがある。これら文献の各々の内容も全て参照内容として本明細書の記載とする。
ポリアルキレンコハク酸無水物の非窒素含有誘導体としては、これらに限定されるものではないが、コハク酸、コハク酸のI族及び/又はII族一又は二金属塩、ポリアルキレンコハク酸無水物、酸塩化物又は他の誘導体とアルコール(例えばHOR1、ただし、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基である)との反応により生成したコハク酸エステル等、およびそれらの混合物を挙げることができる。
所望により、上記のポリアルキレンコハク酸無水物及び/又はその非窒素含有誘導体を、各種の後処理試薬を用いて後処理することができる。例えば、上記ポリアルキレンコハク酸無水物及び/又はその誘導体を、ホウ素またはエチレンカーボネートなどの環状カーボネートと反応させて、ホウ酸塩後処理及びエチレンカーボネート後処理生成物とすることができる。
本発明に使用される塩基性窒素化合物は、例えばASTM D664試験又はD2896で測定して塩基性の窒素を含んでいなければならない。塩基性窒素化合物は、コハク酸イミド、ポリコハク酸イミド、カルボン酸アミド、炭化水素モノアミン、炭化水素ポリアミン、マンニッヒ塩基、リンアミド、チオリンアミド、ホスホンアミド、分散型粘度指数向上剤およびそれらの混合物からなる群より選ばれる。これらの塩基性窒素含有化合物について、(各々が少なくとも1個の塩基性窒素を持たなければならないとの条件に留意しながら)以下に説明する。窒素含有化合物のいずれも、組成物が塩基性窒素を継続して含む限りは、当該分野で公知の操作を用いて例えばホウ素またはエチレンカーボネートで後処理してもよい。
本発明に使用することができるコハク酸イミドおよびポリコハク酸イミドについては、多数の文献に開示されていて当該分野でもよく知られている。「コハク酸イミド」に包含されるコハク酸イミドのある基本的な種類および関連物質については、米国特許第3219666号、第3172892号及び第3272746号明細書に教示されていて、その内容も参照内容として本明細書の記載とする。「コハク酸イミド」には、多数のアミド、イミドおよび生成しうるアミジン種も含まれると当該分野では解釈されている。しかし、主要な生成物はコハク酸イミドであり、この用語は一般に、アルケニル置換コハク酸又は無水物と窒素含有化合物との反応の生成物を意味すると受け取られている。好ましいコハク酸イミドは、その商業的入手性ゆえに、炭化水素基が炭素原子約24〜約350個を含む炭化水素コハク酸無水物と、特にエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミンおよび高分子量ポリエチレンアミンで特徴付けられるエチレンアミンとから製造されるようなコハク酸イミドである。特に好ましいのは、炭素原子数70〜128のポリイソブテニルコハク酸無水物と、テトラエチレンペンタアミンまたは高分子量ポリエチレンアミンまたは混合物の平均分子量が約205ダルトンであるようなポリエチレンアミンの混合物とから製造されるようなコハク酸イミドである。
また、「コハク酸イミド」には、炭化水素コハク酸又は無水物と、2個以上の第二級アミノ基に加えて少なくとも1個の第三級アミノ窒素を含むポリ第二級アミンとのコオリゴマーも含まれる。通常、この組成物の平均分子量は1500から50000の間にある。代表的な化合物としては、ポリイソブテニルコハク酸無水物とエチレンジピペラジンを反応させることにより製造されたものがある。
カルボン酸アミド化合物も、本発明のコロイド状分散物を製造するの使用できる窒素含有化合物である。そのような化合物の代表的なものとしては、米国特許第3405064号明細書に開示されているものがあり、その内容も参照内容として本明細書の記載とする。これらの化合物は通常、脂肪族主鎖の脂肪族炭素原子数が少なくとも12乃至約350で、所望により分子を油溶性とするのに充分なほどの脂肪族側基を持つカルボン酸又はその無水物又はエステルと、アミンまたはエチレンアミンなどの炭化水素ポリアミンとを反応させて、モノ又はポリカルボン酸アミドとすることにより製造される。好ましいのは、(1)一般式R2COOH(ただし、R2はC12-20アルキルである)を有するカルボン酸、またはこの酸とポリイソブテニル基が炭素原子72〜128個を含むポリイソブテニルカルボン酸との混合物と、(2)エチレンアミン、特にはトリエチレンテトラアミンまたはテトラエチレンペンタアミンまたはそれらの混合物とから製造されるようなアミドである。
使用できる窒素含有化合物の別の部類は、炭化水素モノアミンおよび炭化水素ポリアミンであり、例えば米国特許第3574576号明細書に開示されているものがあり、その内容も参照内容として本明細書の記載とする。炭化水素基は、アルキルまたは1又は2箇所に不飽和があるオレフィンであることが好ましいが、通常は炭素原子9〜約350個、好ましくは炭素原子約20〜約200個を含んでいる。特に好ましい炭化水素ポリアミンは、例えば、ポリ塩化イソブテニルと、エチレンアミンなどのポリアルキレンポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタアミン、2−アミノエチルピペラジン、1,3−プロピレンジアミンおよび1,2−プロピレンジアミン等とを反応させることにより誘導されたものである。
使用できる窒素含有化合物のまた別の部類は、マンニッヒ塩基化合物である。これらの化合物は、フェノールまたはC9-200アルキルフェノールと、アルデヒド、例えばホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド前駆体と、アミン化合物とから製造される。アミンはモノ又はポリアミンであってよく、そして代表的な化合物は、アルキルアミン、例えばメチルアミン、もしくはジエチレントリアミンまたはテトラエチレンペンタアミンなどのエチレンアミン等から製造される。フェノール系物質は硫化されていてもよく、好ましくはドデシルフェノールまたはC80-100アルキルフェノールである。本発明に使用することができる代表的なマンニッヒ塩基は、米国特許第3539663号、第3649229号、第3368972号及び第4157309号明細書に開示されていて、その内容も参照内容として本明細書の記載とする。
使用できる窒素含有化合物の更に別の部類は、リンアミドおよびホスホンアミドであり、例えば米国特許第3909430号及び第3968157号明細書に開示されているものがあり、その内容も参照内容として本明細書の記載とする。これらの化合物は、少なくとも1個のP−N結合を持つリン化合物を生成させることにより製造することができる。例えば、オキシ塩化リンと炭化水素ジオールをモノアミンの存在下で反応させることにより、あるいはオキシ塩化リンと二官能価第二級アミンおよび一官能価アミンとを反応させることにより製造することができる。チオリンアミドは、炭素原子2〜450個かそれ以上を含む不飽和炭化水素化合物、例えばポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、エチレン、1−ヘキセン、1,3−ヘキサジエン、イソブチレンおよび4−メチル−1−ペンテン等と、五硫化リンと、上記に規定した窒素含有化合物、特にはアルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルポリアミンまたはアルキレンアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミンおよびテトラエチレンペンタアミン等とを反応させることにより製造することができる。
使用できる窒素含有化合物の別の部類としては、いわゆる分散型粘度指数向上剤(VI向上剤)が挙げられる。これらVI向上剤は普通は、任意に脂環式又は脂肪族オレフィン又はジオレフィンなどの一以上のコモノマーから誘導された追加単位を含む、炭化水素重合体、特にはエチレンおよび/またはプロピレンから誘導された重合体を官能化することにより製造される。
所望により、後述するように少なくとも一種の基油と少なくとも一種の潤滑油添加剤を分配して本発明に係る組成物とする前に、組成物(すなわち配合物)に使用することが提案された化合物の分子モデリングを行って、どの化合物が可能性のある中心的な候補組成物となるかを判断することが有利であると言える。例えば、化合物の遷移状態、結合の長さ、結合角、双極子モーメント、疎水性等のような因子を含む計算を実施することができる。これは、例えばアクセルリス(Accelrys)社(カリフォルニア州サンディエゴ)製のクアンタム・メカニックス(Quantum Mechanics)のような公知のソフトウェアを使用して実施することができる。
上記の実験プログラム(群)の入力に基づいて最初の化合物テスト・ライブラリを設計するのに、テスト・ライブラリの設計用ソフトウェアを使用することができる。このソフトウェアを使用して、所望の実験空間を包含し統計実験設計法を利用するテスト・ライブラリを効率的に設計することができる。次に、別のソフトウェアを使用して実験のデータを解析し、そしてそのデータを化合物の構造および/または化合物処理条件および/または反応条件と相関させることができる。そのような相関関係はしばしば、アクセルリス社(カリフォルニア州サンディエゴ)製のQSARソフトウェア(定量的構造活性相関)と呼ばれている。次に、ソフトウェアによりそのようなQSARプログラムを使用して、それ以後の化合物テスト・ライブラリを更なる審査に向けて設計することができる。
そのようなQSARプログラムの使用によって審査の効率を高めることができる。より多くのデータが集まるにつれて、これらQSARプログラムは化合物ライブラリを発展させる効率がもっと良くなり、所望の化合物を見つける確率も高まる。例えば、後述するように解析した化合物を種々の潤滑油組成物に配合することができ、その後、例えば回帰及び解析技術により、アクセルリス社(カリフォルニア州サンディエゴ)製のC2−QSARなど公知のソフトウェアを使用して更に解析することができる。このように、分子モデリングから得られたデータの確認を遂行することができ、次いでこのデータもデータ収集装置に保存することができる。このようにして、当該分野の熟練者が考えた新規な化合物を、化合物の実際の合成に先立ってQSARソフトウェアで調べてその活性度を予測することができる。さらに、そのようなソフトウェアツールを利用して、合成を考えている可能な化合物の一覧表に当該分野の熟練者が成功する確率が高い順に優先順位を付けることが可能である。
ここで図1に言及すると、複数の試料受け器それぞれに入った前記組成物を供給するためのシステムの例を、システム100として概括的に図示している。複数の試料受け器それぞれに入った前記組成物を供給するこのようなシステムと方法の代表的なものとしては、同時係属出願中の米国特許出願第10/699510号明細書(ウォレンベルグ、外、2003年10月31日出願、題名「コンビナトリアル・ライブラリのための潤滑油組成物の高速大量処理製造」、本出願と共通の譲受人を有する)に開示されているものがあり、その内容も参照内容として本明細書の記載とする。本発明がこのシステムに限定されないこと、そして複数の試料受け器それぞれに入った前記組成物を供給するための他のシステムも考えられることを理解されたい。
一般に容器110は、前記潤滑粘度の基油Bの供給物を含んでいる。容器120は、添加剤Aの供給物を含んでいて、基油の性状を改良するのに有用な前記添加剤のうちのいずれかであってよい。当該分野の熟練者であれば容易に理解できるように、一種以上の基油および/または一種以上の添加剤をそれぞれ分配するときは、一個以上の容器110および容器120を使用することができる。
管路111は、基油Bをノズル部分113まで導く導管であり、後述するようにノズル部分から選択した試料溜めに分配することができる。分配する基油の量は計量ポンプ112で定量するが、コンピュータで制御することができる。
管路121は、潤滑油添加剤Aをノズル部分123まで導く導管であり、後述するようにノズル部分から選択した試料溜めに分配することができる。分配する潤滑油添加剤の量は計量ポンプ122で定量するが、これもコンピュータで制御することができる。予め選択したプロトコルに従って予め決めた量の物質を自動的に計量するためのコンピュータプログラムとシステムが当該分野では知られているが、本発明でも使用することができる。
ノズル113及び123は極めて接近していることが好ましく、それにより基油Bと添加剤Aを同時に試料溜めに分配することができる。あるいは、基油Bと添加剤Aを順次試料溜めに添加することもできる。ノズル113及び123は、多チャンネルピペットまたは一個以上の注射針から構成することができる。
容器110及び120は加圧することができる。任意に、二個以上の容器を用いることができる。本発明に使用するのに適した計量ポンプも知られていて市販もされている。粘性の高い潤滑基材油または添加剤を使用する場合には、容器110及び120および/または管路111及び121、計量ポンプ112及び122、および/またはノズル113及び123を加熱して液流の通過を容易にすることができる。
試験フレーム130は、分配した添加剤もしくは基油と添加剤を受け入れる複数のくぼみ132を有する透明な材料(例えば、ガラス)でできたブロック131を包含している。くぼみは試料溜め(試験溜め)になり、各溜めには予め決めた異なる組成の潤滑油添加剤組成物または潤滑油組成物が入る、すなわち、各組成物の基油及び/又は添加剤の百分率及び/又は種類が溜め毎に互いに違うことになる。任意に溜めは、ブロックに設けられたくぼみの代わりにラックに取り付けられた別個の受け器(例えば、試験管)であってもよい。試料受け器は透明なガラス管から構成されることが好ましい。図1には5個の溜め、すなわちくぼみ132a、132b、132c、132d、132eが図示されているが、本発明には任意の個数の溜めを用いることができる。例えば、要求次第でシステムは20個、50個、100個又はそれ以上の試料受け器と試料を用いることができる。
個々の溜めは、比較的少量の潤滑油試料を保持するように作られている。各溜めの試料サイズは、一般には約50mL以下であってよく、好ましくは約20mL以下、好ましくは約15mL以下、より好ましくは約10mL以下、そして更に好ましくは約5mL以下である。
試験フレーム130および分配ノズル113及び123は、互いに相対的に移動できる。装置操作者による手動での装置移動も本発明の範囲に含まれるが、プログラム可能な移動を伴うロボット機構が好ましい。ある態様では試験フレーム130は、選択したくぼみが分配ノズル113及び123の下に順次位置するように、横及び/又は縦方向に移動できる滑り移動可能なキャリジに取り付けられている。別の態様では、ノズル113及び123および任意に容器110及び120が横及び/又は縦に滑り移動できて、ノズル113及び123の位置決めを遂行する。
試験の操作では、容器110及び120をそれぞれ選択した潤滑油基油および添加剤(類)で満たす。システム100の装置が、分配ノズル113及び123がくぼみ132aの上部一直線上に位置するように移動する。計量した量の基油Bと計量した量の添加剤Aが同時にくぼみ132aに分配される。その後、分配ノズル113及び123は次のくぼみ132bの一直線上に再び位置して、そして予め決めた変動計画に従ってくぼみ132bの潤滑油がくぼみ132aの潤滑油とは添加剤の組成百分率が異なるように、添加剤Aおよび/または基油Bの計量する量が変わる。ノズル113及び123が順次、連続したくぼみ132c、132d及び132eの一直線上にあるようにしながらこのパターンが繰り返されて、各くぼみには予め決めた組成の潤滑油が含まれることになる。
成分AとBは、混合することにより、例えばフレーム131の撹拌、静的混合、溜めの内容物個々の撹拌(機械的または磁気的撹拌)により、および/または溜めに窒素などのガスを吹き込むことにより、溜め内で混ぜ合わせることが好ましい。任意に、基油Bと添加剤(類)Aを溜めそれぞれに分配する前に混ぜ合わせることもできる。例えば、混合室を有する単一の分配ノズルを使用することができ、基油Bと添加剤(類)Aは計量されて混合室に入ったのちノズルより溜めに分配される。
一旦潤滑油組成物を含む複数の受け器が供給されたら、次に複数の液体試料を堆積物生成傾向について分析することができる。ここで図2に言及すると、複数の液体試料の堆積物生成を順次分析するためのシステムを概略的に図示している。整列した試料受け器212がホルダ215に取り付けられているシステム200を概略的に図示している。システム200は、任意の数の試料受け器212(と試料)を収納できるように作られている。各試料は、例えばホルダ215内に規則正しく整列したその試料受け器の位置によって、より好ましくは試料に関連した識別の印を有することにより識別できる。例えば、各試料受け器212は、その外側表面に付けられた識別バーコード213を有することができる。バーコード読取装置225は、試料受け器212それぞれの個々のバーコードを読み取って、バーコードデータ信号をデータ送信回線226を介してコンピュータ制御装置230に送信することができるように位置して、試料を電子的に識別する。バーコード読取装置225は、選択した個々の試料受け器212と一直線上に位置できるように、コンピュータ制御装置230からの信号に応答してホルダ215に対して移動できることが好ましい。
ロボット装置250は、把握機構252を備えた可動アーム251を包含している。ロボット装置は、コンピュータ制御装置230からの選択命令に従って個々の試料受け器212をしっかり掴んで、試料受け器を試験ステーション220の位置に移動させるように作られていて、それにより受け器内の試料の堆積物生成データを測定することができる。コンピュータ制御装置230は、制御信号送信回線231を介してロボット装置の制御に操作的に関与して、予め測定の決まった試料受け器を選択的に取り出したのちホルダ215の定められた位置それぞれに再び置くようにする。
試験ステーション220は、試料の堆積物生成を試験する手段を包含している。試験の堆積物生成データ結果は、電気又は光信号に変換され、信号送信回線223を介してコンピュータ制御装置230に送信される。堆積物生成を試験する種々の手段が知られているが、一般的には、試料を堆積物生成環境に置いて予め決めた期間に渡って試料の堆積物生成を測定することが含まれる。
例えば、本発明に使用される一試験法では、試料を計量して好適な試験装置に装填し、堆積物生成を測定するのに適した計測器、例えばガラス管又は棒のような透明な基板を少なくとも部分的に装置内の試料に挿入し、そして試料を適当な温度、例えば約150℃乃至約400℃、好ましくは約200℃乃至約350℃の範囲の温度に、試料の酸化が進むのに充分な時間、約8時間乃至約48時間の範囲の時間加熱する。予め決めた時間が経過した後、試験装置から透明な管を取り出し、ペンタンなどの適当な溶媒ですすぎ、そして管の堆積物の色の濃さによって堆積物の量を測定する。ここで、濃さは堆積物の量および酸化の量を示す。測定値を予め求めた標準管セットと比較する。所望により、酸化の促進を助けるために液体触媒を試料に添加してもよく、触媒は一般に内燃機関に見られる金属イオンの種類をシミュレートするように選ばれる。
堆積物生成を測定するのに光源と光電セルを用いることができる。光源からの光のビームを管に向けて通過させ、管を透過した光の量を光電セルで測定することにより、堆積物の量を測定することができる。管の不透明度は堆積物の量を示し、よって試料の酸化の量を示す。
例えば図3に言及すると、試験装置の試験管224を光源221と光電セル222の間の位置に置く。光源からの光のビームが試験管224に向かって通過し、光電セル222で測定され、光電セル222では透過した光の量が測定されてこの読取値は電気信号に変換され、そして信号は回線223を介してコンピュータ制御装置230に送信される。コンピュータ制御装置230には、標準管セットの光透過率(または不透明度)の値が保存されていて、標準セットとの比較で試験試料の堆積物生成が評価される。堆積物生成評点が試験試料(バーコードで識別できる)に帰属され、そしてその情報はデータライブラリの構成部分として保存される。その後、コンピュータ制御装置は選択命令を変更することができる。コンピュータ制御装置230の種々の機能を遂行するためのプログラミングも当該分野の熟練者の範囲内にある。
本発明の方法の別の態様では、試料をガラスペトリ皿のような透明な試験装置に入れ、そして例えば熱板を用いて予め決めた温度、例えば150℃乃至約400℃、好ましくは約200℃乃至約350℃に、予め決めた時間加熱する。予め決めた時間は広い範囲で変えることができるが、約8時間乃至約48時間、好ましくは約10時間乃至約18時間の範囲にある。予め決めた時間が経過した後、透明な試験装置をペンタンなどの軽質炭化水素溶媒で洗って如何なる可溶性潤滑油も取り除き、残った酸化堆積物は如何なるものであれ、試験装置に残す。次に、如何なる堆積物も含む透明な試験装置を例えば分析用天秤を利用して測定し、そして測定値を予め求めた透明な試験装置の質量と比較して堆積物の質量を決定する。次に、そのデータをデータベースに記録する。
本発明の別の堆積物生成試験法(完成油のコーキング傾向試験−アメリカ連邦試験法規格3462−791A(パネルコーカー試験法)として知られている)では、上記試料の各々を堆積物生成を決定するのに適したチャンバに装填することができる。ここで図4に言及すると、チャンバ400は例えばステンレス鋼製チャンバであってよく、チャンバの片側にはチャンバの開口部があり、堆積物生成を測定するのに適したアルミニウムなどの試験パネル410が、開口部の上を覆うようにチャンバに操作的に接続され、それにより材料のチャンバに面した側は開口部で露出している。チャンバ400には回転軸420が操作的に連結していて、チャンバ400内に位置する回転軸の端部に例えば剛毛を有する。さらに、チャンバ400には試験対照の組成物試料を保持する溜め430が連結できて、試料を計量してチャンバ400に導入する管と共に、試料を再循環させて溜め430に戻す装置(図示なし)を備えている。あるいは、試料を保持する溜めはチャンバ内の回転軸420の下方にあってもよく、それにより回転軸420の剛毛が試料に接触する(図示なし)。
使用に際しては、試験パネル410および試料を予め決めた温度で、例えばパネル410を約100℃乃至約400℃、好ましくは約175℃乃至約275℃で、また試料を約80℃乃至約250℃、好ましくは約160℃乃至約200℃で維持し、回転軸420を予め決めた動力を掛けることで回転させ、そして試料を計量しチャンバ400に導入して回転軸420の剛毛と接触させ、それにより試料が熱した試験パネル410に予め決めた時間噴霧される。予め決めた時間は広い範囲で変えることができるが、例えば約1時間乃至75時間、好ましくは約24時間乃至約50時間である。所望により、空気または他の一般的な燃焼雰囲気(例えば、NOX)を一定の流速でチャンバに吹き込んで、チャンバを標準大気状態で維持することができる。空気の流速は当該分野の熟練者が決定することができる。
予め決めた時間が経過した後に、試験パネルをチャンバから取り出し、任意にペンタンまたは石油エーテルなどの適当な溶媒ですすぎ、そして予め決めた時間乾燥させる。次いで、分析用天秤などの好適な測定装置によって、堆積物を含むパネルの重量を予め求めたパネルそれ自体の重量と比較することにより、堆積物の量を測定することができる。次に、そのデータをデータベースに記録する。
本発明の別の態様では、例えば透明な管に形成された堆積物生成を決定する方法を使用する(例えば、コマツ・ホットチューブ試験)。この方法では、透明なガラス管をアルミニウム加熱ブロックなどの金属加熱ブロックの内部に配置することができ、そしてガラス管の底のホルダには細い空気ホースを取り付ける。次に、適当なノズル、例えば約5mLのシリンジと適当なホース、例えば約12インチのフレキシブルチューブに油試料を充填する。
チューブを、ガラス管の空気ホースより上方にあるホルダに取り付け、そしてノズルにより油をガラス管に安定して導入する。試験期間中、空気が加熱ブロックに通したガラス管内の試験油を押し上げる。試料全部が予め決めた時間内で、例えば16時間で挿入されるように、空気流および試料導入の速度を制御する。油の酸化によってガラス管の内壁には徐々に濃い色の堆積物が形成される。加熱ブロックは狭い範囲内で制御した温度であり、試験条件は一般に例えば約230℃乃至約330℃の温度範囲から選ばれ、そして様々な温度で試験を実施して温度の変動範囲にわたって堆積物生成を測定することができる。予め決めた時間(例えば、16時間)が経過した後、ガラス管を試験装置から取り出し、適当な溶媒ですすぎ、そして管の堆積物の色の濃さによって堆積物の量を測定する。ここで、濃さは堆積物の量および酸化の量を示す。測定値を予め求めた標準管セットと比較する。
本発明の別の態様では、例えばDIN51392などのウォルフ・ストリップ試験を利用する。図5に言及すると、システム500は有利には、試料510が容器505から、予め決めた温度、例えば約100℃乃至約400℃、好ましくは約200℃乃至約300℃に加熱した基板上を通り、容器500に戻って循環するように構成される。例えばマイクロポンプを用いる従来技術により試料510を循環させることができる。さらに、容器500には、管540を用いて空気を一定流速、例えば約25mL/時乃至約75mL/時で吹き込む。予め決めた時間、例えば約8時間乃至約24時間、好ましくは約10時間乃至約18時間が経過した後、試験基板をチャンバから取り出し、ペンタンまたは石油エーテルなどの適当な溶媒ですすぎ、次いで分析用天秤などの好適な測定装置によって、堆積物を含むパネルの質量を予め求めたパネル自体の質量と比較することにより、堆積物の量を測定することができる。次に、そのデータをデータベースに記録する。
本発明の別の態様は図6Aに示すことができて、図6Aでシステム600は、少なくともガラス基板などの基板610を含み、基板610は、少なくともその一部に凹みを有し、そして加熱ブロック620A及び620B上に配置されている。加熱ブロック620Aを予め決めた第一温度、例えば約200℃乃至約300℃に加熱し、また加熱ブロック620Bを予め決めた第二温度、例えば約300℃乃至約400℃に加熱して、加熱ブロック620Bの温度が加熱ブロック620Aの温度よりも高くなるようにする。加熱ブロック620A及び620Bは、基板610が例えば約45乃至90度で傾斜して配置されるように構成されることが好ましい(図6B参照)。試料を、加熱ブロック620A上に配置された基板610の凹み630の上端に入れて、凹みに沿って加熱ブロック620Bの方へ流れて行くようにする。次に、種々の試料についてどの温度で堆積物生成が起こるかを、二つの温度点間の距離に基づいて温度を直線外挿することで決定することにより、堆積物生成データを集めることができる。次に、そのデータをデータベースに記録する。
所望により、「合格/不合格」決定のためにコンピュータ制御装置に堆積物生成の指定値をプログラムしておく。合格/不合格指定値は、特定の潤滑剤用途または燃料用途に対する性能要求条件および予測される作動環境に基づいて選択することができる。試験試料が過度に高い堆積物生成値を示すことで不合格であるなら、試験試料に電子的に印を付けることができ、そしてその試料と同じ組成を有する潤滑油配合物の以後の試験を、他の性能特性についてのそれ以上の試験から除外することができる。不合格試料を再試験しないことでシステムを更に効率良く稼働させて、所望の製品仕様を満たすと予測される試料だけにエネルギーと時間を費やすことができる。
所望により、本発明の方法の結果を遠隔地、すなわち本発明の方法を実施するシステムと直接の接触がない、あるいは少なくとも目に見える接触がない場所から監視することができる。遠隔地は、例えば本発明に使用されるシステム全体の一部として、システムを監視し制御すると共に実施した試験の結果の各々の出力を記録する中央プロセス制御システム又は室であってよい。このようにして、システムの場所に配置された職員とあまり相互接触がなくても監視することが可能になる。制御コマンドのみならず出力した結果も送信できる好適なデータ回線も知られている。
上述した組成物の各々に関する堆積物生成データを関係データベースに保存して、コンビナトリアル潤滑油組成物ライブラリとすることができる。あるいは、システム操作及び制御用のコンピュータ・マイクロプロセッサを含む信号データ収集装置にシステムを電気的に接続して、長期間に渡って種々の試験のデータを収集し、コンビナトリアル潤滑油組成物ライブラリにコンパイルしてもよい。データベースは、所望される製品の動向に最適な組合せを見つけるのに使用することができ、特に所望される製品の動向が市場要因によって変わる場合に役立つと言える。製品要求条件が変更になったときに、適切な組合せを選択して所望の製品を製造することができる。
潤滑油組成物の識別点とそれから得られた堆積物生成の分析データとを相関させるのに、関係データベース・ソフトウェアを使用することができる。多数の市販の関係データベース・ソフトウェア・プログラムが、例えばオラクル(Oracle)、トリポス(Tripos)、MDL、オックスフォード・モレキュラー(Oxford Molecular)(「ケミカル・デザイン」)、IDBS(「アクティビティ・ベース」)、および他のソフトウェア業者から入手できる。
関係データベース・ソフトウェアは、上述した方法の過程で得られたデータを管理するための好ましいタイプのソフトウェアである。しかし、上述した組成物の各々の「メモリマップ」を作製して、その情報を堆積物生成測定値から得られた情報と相関させることができる任意のソフトウェアを使用することができる。このタイプのソフトウェアも当該分野の熟練者にはよく知られている。
以上の記述には数多くの詳細事項が含まれているが、これら詳細事項は、本発明を限定するものとみなすべきではなく、単に本発明の好ましい態様の例示とみなすべきである。例えば、上述したもの以外の堆積物生成傾向試験を使用して、複数の異なる潤滑油組成物試験試料の堆積物生成データを与えることができる。当該分野の熟練者であれば、添付した特許請求の範囲で規定したように本発明の範囲および真意内でその他多数の態様を考えつくであろう。
複数の異なる潤滑油組成物を製造するためのシステムを示す概略図である。 複数の潤滑油組成物の試料の堆積物生成傾向を測定するためのシステムを示す概略図である。 基板上の堆積物生成を測定するための光電セル装置を示す概略図である。 パネルコーカー試験法を用いて、複数の潤滑油組成物の試料の堆積物生成傾向を測定するための装置を示す概略図である。 ウォルフ・ストリップ試験法を用いて、複数の潤滑油組成物の試料の堆積物生成傾向を測定するための装置を示す概略図である。 図6Aは、温度勾配法を用いて、複数の潤滑油組成物の試料の堆積物生成傾向を測定するための装置を示す概略上面図であり、そして図6Bは、図6Aの装置を示す概略側面図である。
符号の説明
100 システム
110 基油の容器
111 管路
112 計量ポンプ
113 ノズル(部分)
120 添加剤の容器
121 管路
122 計量ポンプ
123 ノズル(部分)
130 試験フレーム
131 フレーム
132 くぼみ
200 システム
212 試料受け器
213 識別バーコード
215 ホルダ
220 試験ステーション
221 光源
222 光電セル
223 信号送信回線
224 試験管
225 バーコード読取装置
226 データ送信回線
230 コンピュータ制御装置
231 制御信号送信回線
250 ロボット装置
251 可動アーム
252 把握機構

400 チャンバ
410 試験パネル
420 回転軸
430 溜め
500 システム
510 試料
505 容器
540 管
600 システム
610 基板
620A 加熱ブロック
620B 加熱ブロック
630 凹み

Claims (34)

  1. 潤滑油組成物試料をプログラム制御下で審査する高速大量処理方法であって、下記の工程からなる方法:
    (a)複数の異なる潤滑油組成物試料であって、各試料が(i)主要量の少なくとも一種の潤滑粘度の基油と(ii)少量の少なくとも一種の潤滑油添加剤とからなる試料を用意する工程、
    (b)各試料の堆積物生成を測定して、各試料についての堆積物生成データとする工程、そして
    (c)工程(b)の結果を出力する工程。
  2. 基油が天然油または合成油である請求項1に記載の方法。
  3. 少なくとも一種の潤滑油添加剤が、酸化防止剤、耐摩耗性添加剤、清浄剤、さび止め添加剤、曇り除去剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、摩擦緩和剤、流動点降下剤、消泡剤、補助溶剤、パッケージ混合剤、腐食防止剤、無灰分散剤、染料、極圧剤およびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項1に記載の方法。
  4. 少なくとも一種の潤滑油添加剤が、酸化防止剤、清浄剤、無灰分散剤およびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項1に記載の方法。
  5. 各試料の堆積物生成を測定する工程が、試料を基板の存在下で予め決めた温度に加熱し、そして予め決めた時間経過後に基板上に生成した堆積物の量を決定することからなる請求項1に記載の方法。
  6. 基板が透明な材料である請求項5に記載の方法。
  7. 透明な基板上に生成した堆積物の量を決定する工程が、試料の不透明度または光散乱を決定し、そして決定した不透明度または光散乱を基準試料の不透明度または光散乱と比較することからなる請求項6に記載の方法。
  8. 試料の不透明度を、試料を透過した光の強度を測定することにより決定する請求項7に記載の方法。
  9. 複数の試料を、線状に配列して、光源と光電セルの間にある、各試料の堆積物生成を別々に測定するための測定ステーションに順次移動させる請求項7に記載の方法。
  10. 基板上に形成された堆積物の量を測定する工程が、堆積物を含む基板の質量を測定し、そして決定した質量と基板の質量を比較することからなる請求項5に記載の方法。
  11. 各試料の堆積物生成を測定する工程が、基板を予め決めた第一温度に、また試料を予め決めた第二温度に加熱し、基板を試料と接触させ、そして予め決めた時間経過後に基板上に生成した堆積物の量を測定することからなる請求項1に記載の方法。
  12. 基板がアルミニウムである請求項11に記載の方法。
  13. 予め決めた第一温度が約100℃乃至約400℃であり、そして予め決めた第二温度が約80℃乃至約250℃である請求項11に記載の方法。
  14. 各試料の堆積物生成を測定する工程が、基板の一方の端部を予め決めた第一温度に、また基板の反対側端部を予め決めた第二温度に加熱し、基板を試料と接触させ、そして基板上に堆積物が生成した温度を決定することからなる請求項1に記載の方法。
  15. ロボット組立装置が、整列した試料から試料を選択的に取り出して、試料を堆積物生成を測定するための試験ステーションに別々に位置させる請求項1に記載の方法。
  16. 該ロボット組立装置をコンピュータで制御する請求項15に記載の方法。
  17. 出力工程が、工程(c)の結果をデータ媒体に保存することを含む請求項1に記載の方法。
  18. さらに、工程(c)の結果を更なる算定の結果を得るための基礎として使用する工程を含む請求項1に記載の方法。
  19. 少なくとも一種の潤滑油添加剤が、更に希釈油を含んで添加剤濃縮物を形成している請求項1に記載の方法。
  20. 潤滑油組成物試料の容量が約50mL以下である請求項1に記載の方法。
  21. 潤滑油組成物試料の容量が約20mL以下である請求項1に記載の方法。
  22. 潤滑油組成物試料の容量が約15mL以下である請求項1に記載の方法。
  23. 潤滑油組成物試料の容量が約10mL以下である請求項1に記載の方法。
  24. 潤滑剤性能をプログラム制御下で審査するためのシステムであって、下記の手段を含むシステム:
    (a)複数の試料受け器であって、各受け器には、(i)主要量の少なくとも一種の潤滑粘度の基油と(ii)少量の少なくとも一種の潤滑油添加剤とからなる異なる潤滑油組成物試料が含まれている、
    (b)試料受け器を、試料それぞれの堆積物生成を測定するための試験ステーションに別々に位置させる受け器移動手段、
    (c)試験ステーションにて各試料の堆積物生成を測定して試料に関連した堆積物生成データを得て、そして堆積物生成データをコンピュータ制御装置に転送する手段。
  25. 受け器移動手段が可動キャリジから構成される請求項24に記載のシステム。
  26. 受け器移動手段が、選択した個々の受け器を把持して移動させる可動アームを有するロボット組立装置から構成される請求項24に記載のシステム。
  27. 受け器移動手段が試料受け器を撹拌する手段を含む請求項24に記載のシステム。
  28. 試験ステーションが、光源および光源と一直線上にある光電セルを含む請求項24に記載のシステム。
  29. 各試料受け器の外側表面にバーコードが付けられている請求項24に記載のシステム。
  30. さらに、バーコード読取装置を含む請求項29に記載のシステム。
  31. 潤滑粘度の基油が天然油または合成油である請求項24に記載のシステム。
  32. 少なくとも一種の潤滑油添加剤が、酸化防止剤、耐摩耗性添加剤、清浄剤、さび止め添加剤、曇り除去剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、摩擦緩和剤、流動点降下剤、消泡剤、補助溶剤、パッケージ混合剤、腐食防止剤、無灰分散剤、染料、極圧剤およびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項24に記載のシステム。
  33. 少なくとも一種の潤滑油添加剤が、酸化防止剤、清浄剤、無灰分散剤およびそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項24に記載のシステム。
  34. (a)主要量の少なくとも一種の潤滑粘度の基油と(b)少量の少なくとも一種の潤滑油添加剤とからなる複数の異なる潤滑油組成物についての、潤滑油組成物堆積物生成データを含むコンビナトリアル潤滑油組成物ライブラリ。
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