JP2007519417A - 形質転換サッカロマイセス・セレビシエ菌株及びそれを使用したlk8蛋白質の生産方法 - Google Patents

形質転換サッカロマイセス・セレビシエ菌株及びそれを使用したlk8蛋白質の生産方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、LK8蛋白質の生産方法に関する。具体的には、新生血管生成阻害剤のLK8蛋白質をコードする遺伝子で形質転換させたサッカロマイセス・セレビシエを使用したLK8蛋白質の大量生産方法に関する。本発明の形質転換した菌株とLK8蛋白質の生産方法は、新規な新生血管生成阻害剤としてLK8蛋白質を常用化するのに有用に使用できる。

Description

本発明は、LK8蛋白質の生産方法に関するものである。より詳細には、血管生成抑制活性を有するLK8蛋白質をコードする遺伝子で形質転換したサッカロマイセス・セレビシエを使用したLK8蛋白質の生産方法に関するものである。
新生血管生成(angiogenesis)は、組織や臓器に新規の血管を提供する生物学的過程で、詳細には既存の微細血管から新しい毛細血管が生成されることで、成長後に体内で血管が生成される根本的な過程である。人体で正常的に観察される生理的新生血管生成は、胎児及び胚芽の発達、子宮の成熟、胎盤の増殖黄体の形成及び傷の治癒のような非常に制限された状況でのみ起きる。その時期にも非常に厳格に調節され、必要な機能が達成されると血管新生は中断される。新規な血管生成は、新生血管生成調節因子(Folkman, J.Nature Med., 1995年, 第1巻, 27-31頁)(非特許文献1)によって厳格に調節され、新生血管生成の表現型は、新生血管生成刺激因子の上向き調節(up-regulation)及び新生血管生成抑制因子の下向き調節(down-regulation)間の全体的な均衡によって変ると報告されてきた。
新生血管が生成される過程は、非常に複雑で精巧ですが、要約すると次のようになります。第一に、新生血管生成の為の刺激が既存の血管に伝達されると血管が膨張して膜透過度が増加する。第二に、膨張した血管を通じてフィブリン(fibrin)が血管の外に抜け出て血管周囲の細胞質基質に沈積される。第三に、既存血管の基底膜を分解するための酵素が活性化され、第四に、基底膜が破壊されてその間に内皮細胞が血管を抜け出して周囲の細胞の基質で増殖して移動する。最後に、一列に配列した内皮細胞が脈管をなすことにより新しい血管を生成する。
このような血管新生と関連がある疾患を大きく分類してみると、関節炎のような炎症性疾患、糖尿病性網膜症のような眼科疾患、乾癬(psoriasis)のような皮膚科疾患及び最も代表的な疾患の癌に分けられる(Folkman, J., Nature Med., 1995年, 第1巻, 27-31頁)(非特許文献1)。特に、原発性腫瘍と転移性腫瘍はその成長のために新生血管の生成を必要とする(Folkman, J., New Engl. J. Med., 1971年, 第285巻, 1182-1186頁; Folkman, J., J. Biol. Chem., 1992年, 第267巻, 10931-10934頁)(非特許文献2;非特許文献3)。したがって、腫瘍は新生血管生成活性が抑制されたり除去されたりすると成長できなきので、腫瘍の新生血管生成阻害が前記疾患の長期的な治療に効果的であることを提案した多数の報告がある。
ゆえに、新生血管生成を抑制したり除去したりできる新規な新生血管生成阻害剤の開発が求めれられているだけではなく、前記阻害剤の効果的な大量生産を通じてより手頃な価格で一般需要者に供給する必要性がある。
特に、癌治療において癌細胞に直接的に作用しないで腫瘍に営養分を供給する血管を目標とする血管生成抑制剤は、癌細胞の薬物耐性を避けることができる長所があり、現在最も有望な抗癌治療方法中の一つとされている。腫瘍で血管生成を抑制するために生体内に自然存在する抑制剤、合成抑制剤、インテグリン(integrin)抑制剤、シグナル伝達抑制剤、そして蛋白分解抑制剤等の多数の物質が現在、効能検証を受けるため臨床試験中である(Brower, V., Nat. Biotechnol., 1999年, 第17巻, 963-8頁; Carmeliet, P. and Jain, R.K., Nature, 2000年, 第407巻, 249-57頁)(非特許文献4;非特許文献5)。前記臨床試験中の新生血管生成阻害剤の中で、国際公開特許WO 01/19868(特許文献1)に開示されたヒトアポリポ蛋白質(apolipoprotein)中、アポ(a)[Apo(a)]内の36番目、37番目及び38番目クリングル(kringle)単位体のLK6、LK7及びLK8蛋白質は各単位体毎に上皮細胞成長及び移動に対する抑制効能と共に新生血管生成阻害の効能があることが報告されていて、特に、LK8蛋白質の場合に最も強い活性があることが立証された。このようなLK8蛋白質の効能検査、臨床試験実施及び常用化のための生産単価節減等のためには、LK8遺伝子で形質転換された組換え菌株の培養を通じた大量生産体系の開発が切望されている実情である。
以上のことを鑑みて、本発明者らは、LK8蛋白質の機能とLK8蛋白質の効果的な商業的利用方法を研究した。そして、本発明者らは、LK8蛋白質遺伝子を含むプラスミドベクターを宿主に形質転換し、LK8遺伝子が宿主細胞の染色体に挿入された組換えサッカロマイセス・セレビシエ菌株を提供した。前記菌株からLK8蛋白質を大量生産する菌株を選別した。また、本発明者らは、菌株生長時の最適培養条件を決定し、該培養条件で高濃度LK8蛋白質が大量に生産されることを確認して本発明を完成した。
国際公開特許WO 01/19868 Folkman, J.Nature Med., 1995年, 第1巻, 27-31頁 Folkman, J., New Engl. J. Med., 1971年, 第285巻, 1182-1186頁; Folkman, J., J. Biol. Chem., 1992年, 第267巻, 10931-10934頁 Brower, V., Nat. Biotechnol., 1999年, 第17巻, 963-8頁 Carmeliet, P. and Jain, R.K., Nature, 2000年, 第407巻, 249-57頁
本発明の目的は、新生血管生成阻害剤のLK8蛋白質を大量生産できる形質転換酵母菌株の製造及び前記菌株の培養によるLK8蛋白質の大量生産方法を提供することである。
前記目的を達成するために、本発明は、プロモーター、分泌配列、配列番号:1で記載されるLK8 cDNA及びターミネーターの順序からなるLK8発現カセットを含むMδLK8 組換え発現ベクターを提供する。
また、本発明は、前記組換えベクターを宿主菌株に導入した形質転換サッカロマイセス・セレビシエ菌株を提供する。
また、本発明は、(1)前記組換えベクターを宿主菌株に形質転換させる工程、(2)G418スルファート抗生剤を処理して、工程1の形質転換体を培養する工程、(3)免疫検定法でLK8高発現形質転換体を選別する工程を含む、LK8の高発現形質転換体の製造方法を提供する。
さらに、本発明は、(1)LK8遺伝子組換え発現ベクターMdLK8を宿主菌株に導入して形質転換菌株を製造する工程、(2)工程1の形質転換菌株を種培養した後、空気供給量及び/または撹拌速度を調節して溶存酸素量を一定に維持して、炭素源にグルコース及びガラクトースを含む液体培地でバッチ培養する工程、(3)工程2の培養液を炭素源にガラクトースを含む液体培地で流加培養する工程、及び(4)工程3の培養液からLK8蛋白質を精製する工程を含むLK8蛋白質の大量生産方法を提供する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、プロモーター、分泌配列、配列番号:1で記載されるLK8 cDNA及びターミネーター順序からなるLK8発現カセット、宿主菌株の染色体にLK8発現カセットを多重に挿入するためのδ塩基配列及び多重挿入後、選別の為のネオマイシン抵抗遺伝子(neo)を含むMδLK8組換え発現ベクターを提供する。ここで、MδLK8組換え発現ベクターは、該プロモーターはGAL1プロモーターで、分泌配列は配列番号:2で記載されるα-因子分泌シグナルで、ターミネーターはCYC1ターミネーターであることが好ましい。
詳細には、本発明者らがピキア・パストリス(Pichia pastoris)酵母菌株でLK8蛋白質を生産するのに利用したpMBRI-LK8発現ベクター(大韓民国公開特許 第2004-0069840号)に制限酵素を処理して、α-因子分泌シグナルとLK8 cDNAを有するDNA切片を確保した後(図1参照)、それをp426GAL1ベクターに挿入して酵母で組換えLK8発現カセットを生産するために使用できる発現ベクターpMCLK8(6.9kb)(図2参照)を製造する。以後、プロモーター、分泌配列、LK8 cDNA塩基配列、ターミネーターを含む組換えLK8発現カセットを酵母の染色体内に挿入させるためのMδLK8組換え発現ベクター(図5参照)を製造して、それを酵母内の染色体内に多量に挿入する。
また、本発明は、前記組換え発現ベクターを宿主菌株に導入した形質転換されたサッカロマイセス・セレビシエ菌株を提供する。ここで、前記宿主菌株は、サッカロマイセス・セレビシエBJ3501、サッカロマイセス・セレビシエBY4742、サッカロマイセス・セレビシエCEN.PK2-1D、サッカロマイセス・セレビシエ2805からなる群から選択されることが好ましく、サッカロマイセス・セレビシエBJ3501であることがさらに好ましい。
本発明では、前記サッカロマイセス・セレビシエBJ3501を使用してLK8遺伝子を含む組換え発現ベクターで形質転換され、LK8遺伝子が酵母染色体内に多量導入された形質転換酵母菌株を選別した。ここで、コロニーイムノブロット、ドットブロット及びELISA(酵素結合免疫測定法)のスクリーニング過程(図6及び図7参照)を通じてLK8蛋白質を大量生産する菌株を選別してサッカロマイセス・セレビシエBJ3501//MδLK8#36と命名し、それを2004年1月13日付で大韓民国大田広域市儒城区魚隠洞52番地所在の韓国生命工学研究院生物資源センターに寄託した(寄託番号: KCTC 10582BP)。
また、本発明は、(1)前記組換えベクターを宿主菌株に形質転換させる工程、(2)G418スルファート抗生剤を処理して、工程1の形質転換体を培養する工程、(3)免疫検定法でLK8高発現形質転換体を選別する工程を含むLK8の高発現形質転換体の製造方法を提供する。ここで、工程2におけるG418スルファート抗生剤は、特別にこれに制限されないが、G418スルファートの5〜20g/Lの量で処理することが好ましく、工程3における免疫検定法は特別にこれに制限されないが、コロニーイムノブロットアッセイ法、ドットブロットアッセイ法またはELISA(酵素結合免疫測定法)であることが好ましく、工程3を追加的に遂行することがさらに好ましく、工程3はまず、コロニーイムノブロットで1次選別を遂行し、選別された菌株を対象にドットブロットアッセイ法で2次選別を遂行して、前記2次 選別された菌株を対象にELISAで3次選別を遂行することが最も好ましい。
前記製造方法により製造された本発明のLK8遺伝子が酵母染色体内に多量導入された形質転換酵母菌株を使用してLK8を発現分泌させる場合、エピソーム(episome)形態で導入して外来蛋白質を発現して分泌する一般的な発現方法(episomal expression)に比べて、外来蛋白質LK8の分泌能力が2〜3倍程度増加したことを確認できた。
また、本発明は、(1)LK8遺伝子組換え発現ベクターを宿主菌株に導入して形質転換菌株を製造する工程、(2)工程1の形質転換菌株を種培養した後、空気供給量及び/または撹拌速度を調節して溶存酸素量を一定に維持して、炭素源にグルコース及びガラクトースを含む液体培地でバッチ培養する工程、(3)工程2の培養液を炭素源にガラクトースを含む液体培地で流加培養する工程、及び(4)工程3の培養液からLK8蛋白質を精製する工程を含むLK8蛋白質の大量生産方法を提供する。
以下、本発明のLK8蛋白質の大量生産方法を段階別に詳細に説明する。
本発明の工程1は、LK8遺伝子組換え発現ベクターを宿主菌株に導入して形質転換菌株を製造する工程である。ここで、前記形質転換菌株は、LK8発現カセットを含む組換え発現ベクターを宿主菌株に導入してプラスミド上で発現及び分泌させ、染色体にLK8遺伝子と分泌配列を多重に導入した後、最上のLK8発現/分泌菌株に選別された形質転換サッカロマイセス・セレビシエ菌株である。
本発明の工程2は、前記工程1の形質転換菌株を種培養した後、空気供給量及び/または撹拌速度を調節して溶存酸素量を一定に維持して、炭素源にグルコース及びガラクトースを含む液体培地でバッチ培養する工程である。ここで、前記工程2の種培養液は5乃至10%(w/v)濃度で接種することが好ましい。本発明のバッチ培養は、1乃至3 vvm(5乃至80L/分)の空気供給量及び/または200乃至1000rpmの撹拌速度で最大溶存酸素量の40乃至90%の溶存酸素量を維持して、炭素源に1乃至5%(w/v)のグルコース及び1乃至5%(w/v)のガラクトースを含む液体培地を使用することが好ましい。ここで、前記液体培地は追加的に1乃至50g/lの酵母抽出物、1乃至10g/Lのカサミノ酸(casamino acid)、0.1乃至5g/Lのウラシル)及び0.1乃至5g/Lのヒスチジンを含むことが好ましい。
本発明の好ましい実施例では、本発明の形質転換酵母菌株を一定の滅菌保管容器に数百個乃至数千個分注する。同一条件下において、ワーキングセルバンクシステム(working cell bank system)は、対照株を、組換え蛋白質生産時の種菌として使用できるように、維持管理するように構築される。
本発明の工程2は、前記ワーキングセルバンクから24時間適切な菌体量と活性度を得られるように種培養する。本発明のバッチ培養工程は、細胞成長工程であり発現及び分泌にちょうど良い細胞量になるまで細胞を量的に増大させて発現誘導物質に使用されるガラクトースの適応期間を与える過程である。バッチ培養後半部では、菌体の旺盛な呼吸作用によって溶存酸素量が減少する。これを防止するために空気供給量及び撹拌速度の物理的条件をバッチ培養終了時まで調節することにより溶存酸素量を40%以上に維持する。
本発明の工程3は、前記工程2の培養液を炭素源にガラクトースを含む液体培地で流加培養する工程である。ここで、流加培養は最大溶存酸素量の20乃至80%の溶存酸素量を維持して、炭素源に20乃至50%(w/v)のガラクトースを含む液体培地を使用することが好ましく、培地内の残存ガラクトース濃度が0.5乃至5%(w/v)になるように液体培地の供給速度を調節することが好ましい。また、前記液体培地は追加的に、1乃至50g/lの酵母抽出物、1乃至30g/lのペプトン、0.1乃至5g/lのウラシル及び0.1乃至5g/lのヒスチジンを含むことが好ましい。
詳細には、本発明では、流加培養工程の初期から培地内ガラクトースの残存濃度を一定範囲内に維持する方式でガラクトースを供給する。即ち、前記ガラクトース供給方式は、溶存酸素量を注視し適切な値でガラクトースを添加すると同時に残存ガラクトースの量を5%(w/v)以下に維持しながらLK8蛋白質の発現を増加させる。前記流加培養過程を通じて培養上澄み液1l当たり数百mg以上のLK8蛋白質を収得できる(図8及び図9参照)。
本発明の工程4は、前記工程3の培養液からLK8蛋白質を精製する工程である。LK8蛋白質は、分子量9乃至10kDの親水性(hydrophilic)分子で、中性pHで溶解度が低い特徴があり、培養液に発現する過程で元来のLK8の分子量より小さいか大きい誘導体が生成されたりする。したがって、培養液内でLK8蛋白質を純粋分離するためには、LK8の物理化学的性質を利用して培養液からLK8蛋白質を分離させる精製工程の開発が必要である。
本発明のLK8蛋白質の精製は、蛋白質精製過程に該当するものなら特別に制限されるものではなく、クロマトグラフィー方法からなることが好ましい。前記クロマトグラフィー方法は、イオン交換クロマトグラフィー及び疎水性結合クロマトグラフィー(hydrophobic interaction chromatography)方法を含むことがさらに好ましい(図10乃至図13参照)。ここで、前記イオン交換クロマトグラフィーは、陽イオン交換クロマトグラフィーで、pH4.0乃至8.0、0乃至5MのNaClを含む溶出バッファーでLK8蛋白質を溶出させることが好ましい。また、前記疎水性結合クロマトグラフィーは、0.1〜5Mの 硫酸アンモニウム及び0乃至500mMのNaClを含むpH4〜8、0〜100mMのリン酸ナトリウム溶出バッファーでLK8蛋白質を溶出させることが好ましい。
詳細には、本発明は、陽イオン交換クロマトグラフィーを使用してLK8蛋白質を陽イオン交換樹脂に付けた後、pHまたは塩濃度を調節して不純物を除去して適正蛋白質濃度のLK8が溶出するように誘導する。ここで、使用したpHと塩濃度は、利用する陽イオン交換樹脂の種類によって異なる。本発明の好ましい実施例では、SP(sulpho propyl)の強イオン交換樹脂を使用したが、一般的に強陽イオン交換樹脂クロマトグラフィー(strong cation exchange chromatography)が、弱陽イオン交換樹脂クロマトグラフィー(week cation exchange chromatography)よりイオン結合が強いので、比較的高い濃度の塩とpH条件を使用して洗浄とLK8溶出が進行するようにすることは、当該技術分野の通常の知識を有する者なら容易に応用できる。ゆえに、本発明の範囲は、実施例で使用したSP陽イオン交換樹脂とバッファー条件にのみ限定されるものではなく、実質的には通常の陽イオン交換樹脂を使用してLK8から不純物を除去してLK8を濃縮させる精製工程を含む。
また、前記陽イオン交換樹脂で精製された試料は、疎水性結合クロマトグラフィー方法を使用して親水性LK8蛋白質を高い塩濃度で疎水性樹脂に結合させ、不純物をより低い塩濃度で除去して適正塩濃度でLK8を溶出する。また、強い疎水性不純物は、溶出適正塩濃度以下で除去される。一般的な疎水性蛋白質を精製する時、疎水性結合クロマトグラフィー方法を使用するが、陽イオン交換樹脂で除去されない不純物は上記のように疎水性の特徴を利用して除去することは、通常の精製過程であるといえる。これを通じて精製されたLK8蛋白質を大量生産できる。しかし、本発明の範囲は、前記疎水性結合樹脂とバッファー条件にのみ限定されるのではなく、実質的には通常の疎水性結合樹脂を使用してLK8から不純物を除去する精製工程を含む。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
但し、下記の実施例は本発明を例示するだけのもので、本発明の内容が下記の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>組換えLK8発現ベクターの製造と発現
ヒトアポリポ蛋白質(a)[apolipoprotein (a)]クリングル(kringle)領域V38のアミノ酸配列からなるLK8 cDNAを含む遺伝子を酵母内で発現させるための発現ベクターを下記のように製造した。
詳細には、α-因子分泌シグナルとLK8 cDNAを共に分離するために本発明者らが、ピキア・パストリスで組換えLK8を生産するのに使用したpMBRI-LK8発現ベクター(大韓民国公開特許第2004-0069840号)を使用した。前記pMBRI-LK8発現ベクターは、基本ベクターにインビトロゲン(Invitrogen, オランダ)社から購入したpPIC9ベクター(8.0kb)を使用した。即ち、pPIC9発現ベクターのAOX1プロモーターを使用してメタノールによってLK8遺伝子の発現が誘導され、またα-因子分泌シグナルすぐ後ろに目的蛋白質の遺伝子のLK8 cDNAを結合させて発現したLK8蛋白質が細胞外へ効果的に分泌されるようにした。そのために、pET15b/LK8(国際公開特許WO 01/19868参照)を鋳型(template)にPCR方法によりLK8遺伝子を大量増幅し、それを制限酵素Xho IとEcoR Iで切断した後、pPIC9ベクターに挿入するサブクローニング(subcloning)を遂行して、LK8遺伝子の最終発現ベクターであるpMBRI-LK8(8.25 kb)を製造した。
以後、前記pMBRI-LK8発現ベクターにEcoR I制限酵素を7時間処理して、PCR精製キット(Purification Kit, Qiagen, 米国)を使用して洗浄した。以後、BamH I制限酵素を7時間処理した後、電気泳動を通じてDNAを分離してゲル抽出キット(Gel Extraction Kit)(QIAGEN)を使用して配列番号:2で記載されるα-因子分泌シグナルと配列番号:1で記載されるLK8 cDNA塩基配列を有するDNA切片を収得した(図1)。前記収得したDNA切片をp426GAL1(ATCC 87833, 米国)ベクターのGAL1プロモーターとCYC1ターミネーター間に挿入して酵母で組換えLK8を生産するのに使用できる発現ベクターpMCLK8(6.9kb)を製造した(図2)。前記発現ベクターは、GAL1プロモーターを有していて、ガラクトース(galactose)によって蛋白質発現が誘導される。酵母の形質転換後、選択培地での選別のためにURA3 マーカーを使用した。
<実施例2>LK8蛋白質の発現の為の宿主菌株の選別
LK8蛋白質の発現の為の最適宿主菌株を選別するためにサッカロマイセス・セレビシエ菌株中でBJ3501(ATCC 208280, 米国)、BY4742(EUROSCARF Y10000, ドイツ)、CEN.PK2-1D(EUROSCARF 30000B, ドイツ)及び2805(Sohn, J.H., J. Microbiol. Biotechnol., 1991年, 第1巻, 266-273頁)を対象に実験を行なった。
詳細には、アルカリ陽イオン酵母キット(Alkali Cation Yeast Kit, Q-Biogene, カナダ)を使用して前記各菌株を実施例1で製造した発現ベクターで形質転換させた。形質転換の有無を確認するためにウラシルが欠如している酵母窒素塩基培地[(yeast nitrogen base without amino acid, Difco, 米国)0.67%及び(yeast synthetic drop-out medium supplement without uracil, Difco, 米国)0.192%]で培養した。組換えLK8を生産するために各菌株を30℃、pH5.5で700rpmの速度で撹拌して生物反応機(Biostat Q, B. Braun Biotech International, ドイツ)で培養した。ここで、YPDG培地(ペプトン2%、酵母抽出物1%、グルコース2%、ガラクトース3%)を使用した。醗酵過程中、4時間間隔で培養液を回収した。15,000rpmで5分間遠心分離して分泌したLK8蛋白質が含まれている上澄み液だけを別に収集した。収得したLK8蛋白質を液体クロマトグラフィー(liquid chromatography)を使用して糖分析を遂行して(図3)、イムノブロット(immunoblotting)方法を通じて分泌した組換えLK8蛋白質の量を確認した(図4)。
その結果、各形質転換された菌株全てでLK8蛋白質が分泌されることによりpMCLK8発現ベクターが効率的に導入されたことを確認できた。その中でも単位細胞当 たりLK8蛋白質の分泌量が最も高い最適菌株は、サッカロマイセス・セレビシエBJ3501であることを確認した。
<実施例3>LK8発現カセットを酵母染色体内に挿入させるためのベクターの製造及び形質転換酵母菌株の選別
GAL1プロモーター、α-因子分泌シグナル、LK8 cDNA塩基配列及びCYC1ターミネーターを含むLK8発現カセットを酵母の染色体内に挿入させるための組換えベクターを製造した。前記ベクターで形質転換された酵母菌株を収得した。
詳細には、酵母の染色体に存在する転移要素の一つであるδ配列内に所望する遺伝子を挿入できるpδneoベクター(Lee, FWF., Appl. Microbiol. Biotechnol., 1997年, 第48巻, 339頁)を母ベクターに使用した。即ち、前記pδneoベクターには、相同組換え(homologous recombination)方法でベクターを多重挿入するためのδ配列及び挿入されたベクターの選別の為のネオマイシン抵抗遺伝子(neo)を含む。ここで、LK8発現カセットとpδneoベクターの配列内にはすべてSal I制限酵素認識部位が存在するように、組換えベクターに存在するSal I制限酵素認識部位は酵母染色体への挿入のために必須的に必要であるのでDNAブラントキット(DNA Blunt Kit, タカラ社, 日本)を使用してLK8発現カセットに存在するSal I制限酵素認識部位を除去した。一方、前記実施例1で製造したpMCLK8ベクターでGAL1プロモーターとCYC1ターミネーター両端を各々切断するSac I及びKpn I制限酵素を使用してLK8発現カセットを分離した。ここで、pδneoベクターにはKpn I制限酵素認識部位が存在しないので、pδneoベクターのXba I制限酵素認識部位と分離されたLK8発現カセットのKpn I制限酵素認識部位をすべて平滑末端(blunt end)にした。以後、前記LK8発現カセットを前記のように組換えられたpδneoベクターに導入した組換えベクターを製造した。それをMδLK8組換え発現ベクターと命名した(図5)。
MδLK8をSal I制限酵素処理で直線化した。次に、アルカリ陽イオン酵母キット(Q-Biogene, カナダ)を使用して前記製造したMδLK8組換え発現ベクターで酵母を形質転換させた。ここで、LK8発現カセットが酵母染色体内に多量に挿入されるようにするために、組換え発現ベクターDNAの濃度を3μg/μlに濃縮して形質転換に使用した。
本発明のMδLK8組換え発現ベクターで形質転換された酵母をG418スルファート(sulfate)抗生剤を含有したYPDプレート(ペプトン2%、酵母抽出物1%、グルコース2%、アガー2%)を使用して選別した。ここで、G418スルファート抗生剤の濃度を各々5g/L、10g/L及び15g/Lに調整して前記形質転換酵母菌株を培養した。
その結果、LK8発現カセットが酵母の染色体に多量に挿入された場合、高い濃度のG418スルファート抗生剤培地でも成長することができ、LK8活性も高く現れた(図6)。したがって、LK8遺伝子が酵母染色体内に多量導入され15g/L以上のG418スルファート抗生剤に耐性を有する形質転換酵母菌株を数万コロニー確保した。
<実施例4>コロニーイムノブロットを使用したLK8蛋白質を多量発現する菌株の1次菌株スクリーニング
前記実施例3で選別した形質転換酵母菌株をコロニーイムノブロットを通じてLK8蛋白質を多量発現する菌株を1次選別した。
詳細には、YPD固体培地に前記形質転換サッカロマイセス・セレビシエ菌株を塗抹して30℃、24時間培養した後、コロニー生成を確認した。滅菌したセルロース膜を前記コロニー上に置いた後、注意深くセルロース膜をコロニー 上から取り除いた。一方、YPG固体培地上にニトロセルロース膜を載せておいた後、その上に前記セルロース膜をコロニーが付着した方が上になるようにしながら気泡が生じないように注意して載せておいた。以後、コロニーがある固体培地を30℃、48時間培養した後、セルロース膜を注意して取り除き新しいYPD固体培地上に置いた。残されたニトロセルロース膜は、取り除いた後、ブロットに利用した。
ここで、ブロットは、0.1%(v/v)のツイーン20(Tween 20)を添加したPBS緩衝液と5%(w/v)の無脂肪粉乳を添加した溶液にニトロセルロース膜を入れて、常温で2時間弱く撹拌した。以後、前記と同じ溶液にウサギLK8抗体(Rabbit LK8 Ab)を入れ、1時間常温で弱く撹拌した後、0.1%のツイーン20を添加したPBS緩衝液で5回反復して洗浄した。抗ウサギIgG-HRP(Anti rabbit IgG-horseradish peroxidase, Sigma, 米国)を0.1%のツイーン20を添加したPBS緩衝液及び5%の無脂肪粉乳を添加した溶液に入れた後、前記処理されたニトロセルロース膜を入れて1時間常温で弱く撹拌した。以後、0.1%のツイーン20を添加したPBS緩衝液で5回反復して洗浄した後、前記ニトロセルロース膜を取り出して検索キット(SuperSignalTM West Pico kit, Pierce, 米国)に検索溶液(Pierce, 米国)を添加して発光させたフイルムに固定した後、フイルムに現れた点滴の陰影程度を観察した。
その結果、LK8発現量により点滴の陰影程度に差が見られ(図6)、前記点滴の中で強い陰影を有する点滴を示す菌株を1次選別した。
<実施例5>ドットブロットを使用したLK8蛋白質を多量発現する菌株の2次菌株スクリーニング
前記実施例4の1次コロニースクリーニングで選別した菌株を対象にドットブロットでLK8蛋白質をさらに多く発現する菌株を2次選別した。
詳細には、実施例4で1次選別した形質転換菌株をYPG液体培地(2%ペプトン、1%酵母エキス、2%ガラクトース)があるテストチューブに接種して30℃で48時間180rpmで撹拌して培養した。48時間経過後、培養液を5,000rpmで5分間遠心分離して上澄み液だけを採取した。これをPBSで10倍に稀釈してニトロセルロース膜上にドットブロットキット(Dot blot kit, Bio-Rad, 米国)を使用して滴定した。滴定したニトロセルロース膜を0.5%(v/v)のグルタルアルデヒド(glutaraldehyde)溶液に5分乃至10分間置いた後、再び50mMのグリシン(glycine)溶液に入れた後、PBS緩衝液で洗浄した。以後、前記ニトロセルロース膜を前記実施例4で遂行した過程と同様に検索キットを使用してフイルムに現れた点滴の陰影程度を観察した。
その結果、LK8発現量により点滴の陰影程度に差が見られ(図7)、前記点滴の中で強い陰影を有する点滴を示す菌株を2次選別した。
<実施例6>ELISAを使用したLK8蛋白質を多量発現する菌株の3次菌株スクリーニング
前記実施例5の2次スクリーニングで選別した菌株を対象にELISA(酵素結合免疫測定法)をしてLK8蛋白質を多く発現する最終菌株を3次選別した。
詳細には、2次で選択した菌株をYPD液体培地があるテストチューブに接種して30℃で48時間180rpmで撹拌して培養した。その後、前記培養液を50mlのYPG液体培地があるフラスコに接種した後、YPG液体培地でODを合わせてフラスコ当たり最終 50mlに容量を合わせた。以後、30℃で48時間180rpmで撹拌して培養した後、前記培養液を遠心分離して上澄み液だけを採取した。
ELISAのために免疫反応モジュール(MaxisorpTM Immunomodule, Nunc, 米国)に0.25μg/ウェル(well)ずつウサギ抗-LK8抗体(Rabbit anti-LK8 Ab)をコーティングバッファー[0.1Mのナトリウムカーボネート(sodium carbonate), pH9.6バッファー]でコーティングした。コーティングした免疫反応モジュールに1%のBSA(bovine serum albumin)と0.1%のツイーン20(登録商標)を添加したPBS緩衝溶液を処理して室温で2時間程度置いた、以後、前記分離した上澄み液を0.1%のツイーン20(登録商標)を添加したPBS緩衝溶液で1000倍に稀釈した後、準備しておいた免疫反応モジュールに入れて37℃で1時間程度反応させた。以後、前記免疫反応モジュールを1%のBSAと0.1%のツイーン20(登録商標)を添加したPBS緩衝溶液で洗浄した。
一方、1%のBSAと0.1%のツイーン20(登録商標)を添加したPBS緩衝溶液にラット抗-LK8抗体(Rat anti-LK8 Ab)を稀釈した後、前記溶液を免疫反応モジュールに入れて37℃で1時間反応させた。以後、前記免疫反応モジュールを1%のBSAと0.1%のツイーン20(登録商標)を添加したPBS緩衝溶液で洗浄した。
すべての反応は、免疫反応モジュールにTMB発色試薬(TMB Peroxidase Substrates, KPL, 米国)で15分間発色させた後、1Mのリン酸溶液で発色反応を停止させた後、OD405で吸光度を測定して発色程度によってLK8蛋白質の発現量を確認した。
(表1)標準曲線を使用したLK8蛋白質の発現量
Figure 2007519417
LK8発現量を標準曲線(standard curve)を使用して定量化した(表1)。最終的に最高のLK8蛋白質の分泌量を示した菌株はB36で、これをサッカロマイセス・セレビシエBJ3501//MδLK8#36と命名し、2004年1月13日付で大韓民国大田広域市儒城区魚隠洞52番地所在の韓国生命工学研究院生物資源センターに寄託した(寄託番号: KCTC 10582BP)。
前記菌株の組換えLK8 cDNAの複製数を確認するためにサザンブロットハイブリダイゼーション反応を遂行した。その結果、約8コピーのLK8遺伝子が挿入されていることを確認した。
<実施例7>サッカロマイセス・セレビシエBJ3501//MδLK8#36の種培養、バッチ培養及び流加培養方法
<実施例7-1>種菌培養
本発明では、サッカロマイセス・セレビシエBJ3501//MδLK8#36形質転換菌株を一定な滅菌保管容器に数百個乃至数千個分注した後、同一状態で保管管理しながら組換え蛋白質生産時に種菌として種培養に使用できるよう維持管理する体系(本発明者らは、それを「ワーキングセルバンクシステム」という)を構築した。前記形質転換菌株を種菌に使用して24時間適切な菌体量と活性度(20倍に稀釈した時、OD600=0.8乃至1.2)を得られるようにYPD(酵母抽出物1%、ペプトン2%、グルコース2%を含む)培地で種菌培養した。
<実施例7-2>バッチ培養
前記YPD培地で種菌培養を遂行した後、初期開始培地に前記実施例7-1で収得した種培養液を接種してバッチ培養を遂行した。本発明のバッチ培養及び流加培養工程は、細胞成長工程で、まずバッチ培養工程は、細胞成長及びガラクトースの適応工程として、種培養液を1%以上接種し、炭素源にグルコース及びガラクトースを使用して細胞を量的に増大させながらガラクトース適応期間を与えた。ここで、使用した初期培養培地は、グルコース1乃至5%(w/v)、ガラクトース1乃至5%(w/v)、酵母抽出物1乃至50g/L、カサミノ酸(casamino acid)1乃至10g/L、ウラシル0.1乃至5g/L、ヒスチジン0.1乃至5g/Lからなる。
バッチ培養工程後半部で菌体の旺盛な呼吸作用によって溶存酸素量が急激に枯渇し、一般的に純酸素を供給する方法を使用するが、本発明では、前記培地組成により1乃至3vvmの空気供給量、200乃至1000rpmの撹拌速度の物理的条件を調節することをバッチ培養工程後半部から培養終了時まで適用することにより、溶存酸素量を40%以上に維持することができた。これによって大規模醗酵槽で純酸素を使用しなくても溶存酸素値を一定水準以上に維持して生産費用を減少させることができた。
その結果、菌体量は、600nmでの吸光光度量30以上を得ることができた。
<実施例7-3>流加培養
流加培養工程は、発現誘導物質でありながら細胞の唯一な炭素源として使用されるガラクトースを添加して流加培養させて醗酵物質を収得する工程である。
詳細には、ガラクトース20乃至50%(w/v)、酵母抽出物1乃至50g/l、ペプトン 1乃至30g/l、ウラシル0.1乃至5g/l及びヒスチジン0.1乃至5g/lからなる培地を使用した。ここで、LK8蛋白質の大量分泌を誘導するためにガラクトースを1ml/hrで30ml/hrの速度で供給することにより培地内に残存するガラクトースの量を5%(w/v)以下に維持させた。
前記ガラクトース供給方式は、培養液内残存ガラクトースの濃度を測定してそれを基準に適切な値でガラクトースを添加することにより、残存ガラクトースの量を適切な値に維持させる方式を使用した。前記ガラクトースの添加速度を調節して醗酵期間中の醗酵槽内に残存するガラクトース濃度を5%(w/v)以下水準に維持しながら、LK8の発現及び分泌を持続的に増加させることができた(図8)。前記流加培養過程を通じて分泌したLK8蛋白質は、培養上澄み液1L当たり数百mg以上を得ることができた(図9)。
<実施例8>LK8の遺伝エピソーム性発現(episomal expression)と染色体性発現(chromosomal expression)の分泌量比較分析
酵母でLK8蛋白質のエピソーム性発現(episomal expression)と染色体性発現(chromosomal expression)時、LK8蛋白質の分泌効率を比較するために、前記実施例2でLK8の発現効率が最も高かった菌株サッカロマイセス・セレビシエBI3501/pMCLK8と前記実施例6で製造したサッカロマイセス・セレビシエBI3501//MδLK8#36を前記実施例7に示したバッチ式培養方法で培養した後、最大LK8分泌量を測定した(図10)。その結果、図10に示したようにバッチ培養30時間以後のLK8分泌量が染色体性発現(chromosomal expression, サッカロマイセス・セレビシエBI3501//MδLK8#36)の場合、エピソーム性発現(eipsomal expression, サッカロマイセス・セレビシエBI3501/pMCLK8)に比べて約2倍以上増加したことを確認することができた。
<実施例9>クロマトグラフィーによるLK8蛋白質の精製
LK8蛋白質は、分子量9乃至10kDaの親水性(hydrophilic)が強い分子で、中性pHまたは有機溶媒には溶解度が低い特徴がある。また、培養液にLKタンパク質が発現される過程で正確なLK8蛋白質の分子量より小さいか大きい誘導体が発見された。これらは、LK8蛋白質のC-末端またはN-末端部位のアミノ酸がカットされたりまたは化学的な誘導体であると思料される。本工程は、LK8蛋白質のこのような物理化学的性質と培養上の特徴を考慮して高純度のLK8蛋白質を生産するために、陽イオン交換 クロマトグラフィー及び疎水性結合クロマトグラフィー(Hydrophobic interaction chromatography)を使用する精製工程を確立した。即ち、陽イオン交換樹脂クロマトグラフィーを使用してpHと塩濃度を調節して、不純物を除去して適正な蛋白質濃度のLK8蛋白質が溶出されるように誘導した。そして、疎水性結合クロマトグラフィーを使用して親水性(hydrophilic)が強いLK8蛋白質が固定相の樹脂(resin)に高い塩濃度を使用して結合させて、さらに低い塩濃度で不純物を除去して適正塩濃度でLK8蛋白質を溶出した後、疎水性が強い不純物即ち、疎水性が強い蛋白質、脂質またはエンドトキシン(endotoxin)等の非蛋白質性物質(nonproteineous contaminant)をさらに低い塩濃度で除去した。前記のクロマトグラフィー精製過程を下記に詳しく述べる。
<実施例9-1>陽イオン樹脂クロマトグラフィーによる精製
前記実施例7で収得した培養液を8,000rpmで遠心分離して上澄み液を採取した。前記上澄み液を0.1乃至1Mのリン酸ナトリウム(monobasic)で4倍に稀釈してpH4以下に調整した後、0.45μmのフィルター膜(filter membrane)でろ過した。SP-セファロースFF(SP-sepharose fast flow)樹脂をカラムに充填した後、0.1乃至1Mのリン酸ナトリウム溶液(monobasic)で平衡させた。以後、稀釈した上澄み液をSP-セファロースカラムに積載した。その後、0.1乃至1Mのリン酸ナトリウム溶液を通過させて基底ラインまで移動させた後、0.1乃至1Mのリン酸ナトリウムをpH5乃至7に合わせた溶液で再び洗浄して不純物を除去した。続けて、0乃至2Mのを含むpH5乃至9、0.1乃至1Mのリン酸ナトリウム溶液を流し送ってLK8蛋白質を溶出させた。
図11のクロマトグラムと図12のSDS-アクリルアミドゲル電気泳動で確認したように、0.1乃至1Mのリン酸ナトリウム溶液の洗浄で大部分の不純物が除去され、0乃至2MのNaClを含むリン酸ナトリウム溶液による溶出分画でLK8蛋白質だけが溶出した。
<実施例9-2>疎水性結合クロマトグラフィーによる精製
SP-セファロース 6FF(SP-sepharose 6 fast flow)樹脂をカラムに充填して、0.1乃至3Mの硫酸アンモニウムと0乃至2MのNaClを含むpH5乃至9、0.1乃至1Mのリン酸ナトリウム溶液で平衡させた。前記実施例9-1で溶出した試料を最終濃度0.1乃至3Mになるように硫酸アンモニウムを添加して溶解させた後、SP-セファロースカラムに積載し、0.1乃至3Mの硫酸アンモニウムと0乃至2MのNaClを含むpH5乃至9、0.1乃至1Mのリン酸ナトリウム溶液を通過させて基底ラインまで移動させた。続けて、0.1乃至3Mの硫酸アンモニウムと0乃至2MのNaClを含むpH5乃至9、0.1乃至1Mのリン酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、0.1乃至2Mの硫酸アンモニウムと0乃至2MのNaClを含むpH5乃至9、0.1乃至1Mのリン酸ナトリウム溶液を通過させてLK8蛋白質を溶出させた。溶出したLK8蛋白質を分子量10,000Dろ過膜(Sigma, 米国)で0.1乃至1Mのリン酸ナトリウム溶液を使用して透析(dialysis)した。
図13のクロマトグラムと図14のSDS-アクリルアミドゲル電気泳動で確認したように、0乃至2MのNaClを含むpH5乃至9、0.1乃至1Mのリン酸化ナトリウム溶液の洗浄で大部分の不純物が除去され、硫酸アンモニウム及びNaCl溶液による溶出分画では、LK8蛋白質だけが溶出した。
(表2)
Figure 2007519417
前記で詳しく見たように、実施例7で収得した菌株培養液でLK8蛋白質を精製する際に、陽イオン樹脂クロマトグラフィーで精製時の回収率は80.1%で、疎水性結合クロマトグラフィーで精製時の回収率は66%であることを確認した(表2)。
前記で詳しく見たように、本発明のサッカロマイセス・セレビシエ菌株にLK8遺伝子発現の為の染色体挿入カセットを導入した形質転換菌株を開発して、前記菌株のバッチ培養及び流加培養条件の最適化を通じて大規模醗酵槽でLK8遺伝子を低費用で大量発現させて、効率的な精製工程を通じて大量のLK8蛋白質の製造が可能であるので、本願発明の形質転換菌株およびLK8タンパク質の製造方法は、LK8蛋白質の新生血管生成阻害剤としての常用化に大きく寄与できると期待できる。
当業者は、本願発明と同じ目的を実行するための改変および他の態様の設計の基礎として、上述の考案および特定の態様を容易に活用することができることを理解すると思われる。また、このような態様が、添付の特許請求の範囲に記載の発明の精神および範囲から離れていないということも、当業者は理解すると思われる。
配列表
配列番号:1は、LK8蛋白質をコードするcDNA配列である。
配列番号:2は、S.cerevisiae菌株のα-因子分泌シグナルをコードするcDNA配列である。
pMBRI-LK8発現ベクターにEcoR I及びBamH I 制限酵素を処理して配列番号:2で記載されるMATα(α-factor secretion signal)と配列番号:1で記載されるLK8 cDNAを有するDNA切片(500bp)及びGAL1プロモーターのDNA切片(6.4kbp)を確認したアガロースゲル電気泳動写真である。 酵母で組換えLK8蛋白質を生産するのに利用できる配列番号:2で記載されるα-因子分泌シグナル(MATα)と配列番号:1で記載されるLK8 cDNAを有するDNA切片をp426GAL1ベクターのGAL1プロモーターとCYC1ターミネーター間に挿入した発現ベクターpMCLK8(6.9kb)の遺伝子地図である。 組換えLK8蛋白質生産において、最適宿主を選別するためにサッカロマイセス・セレビシエBJ3501、BY4742、CEN.PK2-1D及び2805を宿主にしてLK8発現ベクター、pMCLK8(6.9kb)で形質転換させた酵母をバッチ式培養でエピソーム形態で(episomally)LK8発現を誘導した後、液体クロマトグラフィーを遂行して、LK8蛋白質の分泌及び残存する糖を分析比較した結果を示したグラフである。 各菌株で生産されたLK8蛋白質の量を30時間、40時間経過後にイムノブロットを通じて確認した電気泳動写真である。 GAL1プロモーター、配列番号:2で記載されるα-因子分泌シグナル、配列番号:1で記載されるLK8 cDNA及びCYC1ターミネーターを含むLK8発現カセットを酵母の染色体内に挿入させるために製造した組換えベクターMδLK8の遺伝子地図である。 LK8発現カセットを酵母の染色体内に挿入させた形質転換酵母菌株中、G418スルファート(sulfate)抗生剤に強い耐性を有する菌株を選別するためにコロニーブロットをし、検索溶液を添加して発光させたフイルムに固定した後、フイルムに現れた点滴の陰影程度を調べた1次菌株スクリーニング写真である: A : 5g/LのG418スルファート処理、B : 10g/LのG418スルファート処理、C : 15g/LのG418スルファート処理。 1次菌株スクリーニングにより選別した菌株をニトロセルロース膜上にドットプロットキット(dot blot kit)を使用して点滴した後、検索キットを使用してフイルムに現れた点滴の陰影程度を調べた2次菌株スクリーニング写真である。 形質転換酵母菌株サッカロマイセス・セレビシエBJ3501//MδLK8#36の醗酵工程中、時間による菌体の成長(●)、ガラクトース投入蓄積量(▼)及び残留ガラクトース量(■)を示したグラフである。 形質転換酵母菌株サッカロマイセス・セレビシエBJ3501//MδLK8#36の醗酵工程中、培養上澄液のSDS-PAGE電気泳動写真である: ライン1 : ラダーマーカー、ライン2 :培養38時間経過後、ライン3 :培養86時間経過後、ライン4 :培養110時間経過後、ライン5 :培養134時間経過後、ライン6 :培養158時間経過後、ライン7 :培養184時間経過後、ライン8 :培養211時間経過後、ライン9 : 対照群としてのLK8蛋白質(200mg/l)、ライン10 : 対照群としてのLK8蛋白質(100mg/l)。 LK8遺伝子のプラスミド発現方法と染色体挿入後の発現方法がLK8蛋白質発現及び分泌に及ぼす影響を比較するために、形質転換酵母菌株サッカロマイセス・セレビシエBJ3501/pMCLK8とサッカロマイセス・セレビシエBJ3501/MδLK8#36菌株をバッチ培養した後、分泌されたLK8をイムノブロットを通じて時間により確認した電気泳動写真である: ライン1: LK8 standard, 10mg/L、ライン2: LK8 standard, 50mg/L、ライン3: サッカロマイセス・セレビシエBJ3501/pMCLK8バッチ培養開始後20時間経過 ライン4: サッカロマイセス・セレビシエBJ3501/pMCLK8バッチ培養開始後30時間経過 ライン5: サッカロマイセス・セレビシエBJ3501/pMCLK8バッチ培養開始後40時間経過 ライン6: サッカロマイセス・セレビシエBJ3501/pMCLK8バッチ培養開始後20時間経過 ライン7: サッカロマイセス・セレビシエBJ3501/pMCLK8バッチ培養開始後30時間経過 ライン8: サッカロマイセス・セレビシエBJ3501/pMCLK8バッチ培養開始後40時間経過 ライン9: サッカロマイセス・セレビシエBJ3501//MδLK8#36バッチ培養開始後20時間経過 ライン10: サッカロマイセス・セレビシエBJ3501//MδLK8#36バッチ培養開始後30時間経過 ライン11: サッカロマイセス・セレビシエBJ3501//MδLK8#36バッチ培養開始後40時間経過。 LK8蛋白質の分離、精製工程中で陽イオン交換を通じて前記蛋白質が精製されることを示したクロマトグラムである: 洗浄(washing): 0.1乃至1Mのリン酸ナトリウム溶液、溶出(elution): 0.1乃至1Mのリン酸ナトリウム、0乃至2MのNaCl溶液、クリーニング(cleaning): 0乃至2MのNaCl溶液。 SPセファロース陽イオン交換クロマトグラフィーの各分画におけるLK8蛋白質濃度を示すSDS-PAGEの写真である: ライン1 : ラダーマーカー、ライン2 : 最終培養液の上澄み液、ライン3 : 最終培養液上澄み液を5倍に稀釈した試料、ライン4 : 稀釈した試料が樹脂に付着しないで通過した試料、ライン5 : 樹脂を洗浄した試料、ライン6 : 溶出した試料分画#1、ライン7 : 溶出した試料分画#2、ライン8 : 溶出した試料分画#3、ライン9 : 溶出した試料分画#4、およびライン10 : NaOHで溶出した試料。 LK8蛋白質の分離、精製工程中で疎水性結合クロマトグラフィーによりLK8蛋白質が精製されることを示したクロマトグラムである: 洗浄(washing): 0.1乃至1Mのリン酸ナトリウム溶液、溶出(elution): 0.1乃至3Mの硫酸アンモニウム、0.1乃至1Mのリン酸ナトリウム、NaCl溶液、クリーニング(cleaning): NaCl溶液。 SP フェニルセファロース 6FF(SP-phenylsepharose 6 fast flow)疎水性結合クロマトグラフィーの各分画によるLK8蛋白質濃度を示したPAGE写真である: ライン1 : マーカー、ライン2 : SP-セファロース陽イオン交換樹脂で溶出した試料、ライン3 : 試料が樹脂に付着しないで通過した試料、ライン4 : 溶出した試料分画#1、ライン5 : 溶出した試料分画#2、ライン6 : 溶出した試料分画#3、ライン7 : リン酸ナトリウム溶液に溶出した試料、ライン8 : 蒸留水に溶出した試料、およびライン9 : ラダーマーカー。

Claims (18)

  1. プロモーター、分泌配列、配列番号:1に記載されたLK8 cDNA、及びターミネーターの順に含まれるLK8発現カセット、宿主菌株の染色体に該LK8発現カセットを多重挿入するためのδ塩基配列、ならびに多重挿入後、選別する為のネオマイシン抵抗遺伝子(neo)を含む、MδLK8組換え発現ベクター。
  2. プロモーターがGAL1プロモーターであって、分泌配列が配列番号:2で記載されるα-因子分泌シグナルであって、ターミネーターがCYC1ターミネーターであることを特徴とする、請求項1に記載のMδLK8組換え発現ベクター。
  3. 請求項1のベクターを宿主菌株にトランスフェクトすることにより作製された形質転換サッカロマイセス・セレビシエ菌株。
  4. 前記宿主菌株が、サッカロマイセス・セレビシエBJ3501、サッカロマイセス・セレビシエBY4742、サッカロマイセス・セレビシエCEN.PK2-1D、及びサッカロマイセス・セレビシエ2805からなる群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の形質転換サッカロマイセス・セレビシエ菌株。
  5. 前記菌株が、サッカロマイセス・セレビシエBJ3501/MδLK8#36(寄託番号:KCTC 10582BP)であることを特徴とする、請求項3に記載の菌株。
  6. 以下の工程を含む、LK8蛋白質を高発現する形質転換体を製造する方法:
    (1)請求項1の組換えベクターを宿主菌株に形質転換させる工程、
    (2)G418スルファート抗生剤を処理して、工程(1)の形質転換体を培養する工程、及び
    (3)免疫検定法でLK8高発現形質転換体を選別する工程。
  7. 前記G418を、5〜20g/Lで処理することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
  8. 前記免疫検定法が、コロニーイムノブロットアッセイ法、ドットブロットアッセイ法、及びELISA(酵素結合免疫測定法)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
  9. 前記工程3)を、1〜3回反復することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
  10. 前記工程3)が以下うからなる、請求項6に記載の方法:
    (a)コロニーイムノブロットによる1次選別、
    (b)ドットブロットによる1次選別菌株の2次選別、及び
    (c)ELISAによる2次選別菌株の最終選別。
  11. 以下の工程を含む、LK8蛋白質の大量生産方法:
    (1)請求項1の組換えLK8遺伝子発現ベクターを宿主菌株に挿入して形質転換菌株を製造する工程、
    (2)工程(1)の形質転換菌株を種培養した後、空気供給量及び/または撹拌速度の調節により溶存酸素量を一定に維持しながら、炭素源としてグルコース及びガラクトースを含む液体培地にバッチ培養する工程、
    (3)工程(2)の培養液を、ガラクトースを含むフィード培地(feed medium)に流加培養する工程、及び
    (4)工程(3)の培養液でLK8蛋白質を精製する工程。
  12. 前記工程(1)の形質転換菌株が、請求項3の形質転換サッカロマイセス・セレビシエ菌株であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
  13. 工程(2)のバッチ培養を、1〜3vvm(5〜80L/分)の空気供給量及び/または200〜1000rpmの撹拌速度で、炭素源として1〜5%(w/v)のグルコース及び1〜5%(w/v)のガラクトースを含む液体培地中で、最大溶存酸素量の40〜90%に溶存酸素量を調整して、実施することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
  14. 工程(3)の流加培養を、炭素源としてガラクトース10〜50%(W/V)を含んだ液体培地を用いて、培地内のガラクトース濃度が0.5〜5%(W/V)に維持されるようにフィード培地の供給速度を調節して、実施することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
  15. 工程(4)のLK8蛋白質精製を、クロマトグラフィーによって実施することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
  16. 前記クロマトグラフィーが、イオン交換クロマトグラフィー及び疎水性結合クロマトグラフィーを含む、請求項15に記載の方法。
  17. 前記イオン交換クロマトグラフィーが、陽イオン交換クロマトグラフィーであって、0〜5M NaClを含む溶出バッファー(pH4.0〜8.0)でLK8蛋白質を溶出することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
  18. 前記疎水性結合クロマトグラフィーが0.1〜5M 硫酸アンモニウム及び0〜500mM NaClを含む0〜100mMリン酸ナトリウム溶出バッファー(pH4〜8)でLK8蛋白質を溶出させることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
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